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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】X線CTシステム及び医用処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
A61B6/03 573
A61B6/03 550F
A61B6/03 550X
A61B6/03 560T
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020107894
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2021010727
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-04-25
(31)【優先権主張番号】P 2019126685
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】プラブ ベーレカー アクシャイ
(72)【発明者】
【氏名】田口 博基
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-178517(JP,A)
【文献】特開2007-111525(JP,A)
【文献】特開2014-223289(JP,A)
【文献】特開2018-140165(JP,A)
【文献】特開2011-245117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の第1の領域にX線を照射することで第1のX線エネルギーに対応する第1の被検体データセットを収集する第1のスキャンを実行し、前記第1のスキャンの後で、前記第1の領域に含まれる第2の領域にX線を照射することで2以上の数のX線エネルギーそれぞれに対応する複数の被検体データセットを収集する第2のスキャンを実行するスキャン部と、
前記第1の被検体データセットと前記複数の被検体データセットに含まれる少なくとも1つの被検体データセットとに基づき得られる被検体データセットと、前記複数の被検体データセットのうち前記少なくとも1つの被検体データセットを除いた被検体データセットとに基づいて、前記2以上の数の基準物質による物質弁別を行なう処理部と
を備えた、X線CTシステム。
【請求項2】
前記スキャン部は、前記第2のスキャンとして、前記第2の領域にX線を照射することで第2のX線エネルギーに対応する第2の被検体データセット及び前記第2のX線エネルギーとは異なる第3のX線エネルギーに対応する第3の被検体データセットを収集するスキャンを実行し、
前記処理部は、前記第1の被検体データセットと前記第2及び第3の被検体データセットの一方とに基づき得られる第4の被検体データセットと、前記第2及び第3の被検体データセットの他方とに基づいて、2つの基準物質による物質弁別を行なう、請求項1に記載のX線CTシステム。
【請求項3】
前記スキャン部は、
前記被検体の体軸方向に沿った前記第1の領域にX線を照射することで前記第1のスキャンを実行して、前記第1の被検体データセットとして第1の投影データセットを収集し、
前記第1のスキャンの後で、前記体軸方向に沿った前記第1の領域より狭い第2の領域にX線を照射することで前記第2のスキャンを実行して、記第2の被検体データセットとして第2の投影データセットを収集し、前記第3の被検体データセットとして第3の投影データセットを収集し、
前記処理部は、
前記第1の投影データセットに基づいて、前記第2のX線エネルギーに対応する第4の投影データセット、及び前記第3のX線エネルギーに対応する第5の投影データセットのうち少なくとも一方を生成し、
前記第4の投影データセット及び前記第2の投影データセットと、前記第5の投影データセット及び前記第3の投影データセットとの一方に基づき得られる前記第4の被検体データセットと、前記第2及び第3の投影データセットの他方とに基づいて前記物質弁別を行なう、請求項に記載のX線CTシステム。
【請求項4】
前記第1のX線エネルギーは、前記第2のX線エネルギー及び前記第3のX線エネルギーとは異なる、請求項2又は3に記載のX線CTシステム。
【請求項5】
前記第2のX線エネルギーは、前記第3のX線エネルギーより小さく、
前記処理部は、
前記第1の投影データセットに基づいて、前記第2のX線エネルギーに対応する前記第4の投影データセットを生成し、
前記第2の投影データセット及び前記第4の投影データセットに基づいて、前記第2のX線エネルギーに対応する第6の投影データセットを生成し、
前記第3の投影データセット及び前記第6の投影データセットに基づいて、前記物質弁別を行なう、請求項に記載のX線CTシステム。
【請求項6】
前記処理部は、
前記第1の投影データセットに基づいて、前記第2のX線エネルギーに対応する前記第4の投影データセット及び前記第3のX線エネルギーに対応する前記第5の投影データセットを生成し、
前記第2の投影データセット及び前記第4の投影データセットに基づいて、前記第2のX線エネルギーに対応する第6の投影データセットを生成し、
前記第3の投影データセット及び前記第5の投影データセットに基づいて、前記第3のX線エネルギーに対応する第7の投影データセットを生成し、
前記第6の投影データセット及び前記第7の投影データセットに基づいて、前記物質弁別を行なう、請求項に記載のX線CTシステム。
【請求項7】
前記処理部は、前記第1の投影データセットに基づいて3次元の第1画像データを生成し、X線吸収係数に応じて前記第1画像データをセグメンテーションし、セグメンテーションした前記第1画像データを前記第2のX線エネルギーに応じて順投影することで前記第4の投影データセットを生成する、請求項に記載のX線CTシステム。
【請求項8】
前記処理部は、前記第1の投影データセットに基づいて3次元の第1画像データを生成し、X線吸収係数に応じて前記第1画像データをセグメンテーションし、セグメンテーションした前記第1画像データを前記第2のX線エネルギーに応じて順投影することで前記第4の投影データセットを生成し、セグメンテーションした前記第1画像データを前記第3のX線エネルギーに応じて順投影することで前記第5の投影データセットを生成する、請求項に記載のX線CTシステム。
【請求項9】
前記処理部は、同一対象から収集された2つの投影データセットの入力を受けて高品質の投影データセットを出力するように機能付けられた学習済みモデルに対して、前記第4の投影データセットと前記第2の投影データセットとを入力することにより、前記第6の投影データセットを生成する、請求項5又は7に記載のX線CTシステム。
【請求項10】
前記処理部は、同一対象から収集された2つの投影データセットの入力を受けて高品質の投影データセットを出力するように機能付けられた学習済みモデルに対して、前記第4の投影データセットと前記第2の投影データセットとを入力することにより前記第6の投影データセットを生成し、前記第5の投影データセットと前記第3の投影データセットとを入力することにより前記第7の投影データセットを生成する、請求項6又は8に記載のX線CTシステム。
【請求項11】
前記スキャン部は、1又は複数のビューごとに、前記第2のX線エネルギーと前記第3のX線エネルギーとの間でX線のエネルギーを変化させることで、前記第2のスキャンを実行する、請求項2~10のいずれか一項に記載のX線CTシステム。
【請求項12】
前記スキャン部は、第1のX線管から前記第2のX線エネルギーのX線を照射させ、第2のX線管から前記第3のX線エネルギーのX線を照射させることで、前記第2のスキャンを実行する、請求項2~10のいずれか一項に記載のX線CTシステム。
【請求項13】
前記スキャン部は、前記第2のX線エネルギーのX線を検出する第1の層と、前記第3のX線エネルギーのX線を検出する第2の層とを有する積層型のX線検出器を用いて、前記第2のスキャンを実行する、請求項2~10のいずれか一項に記載のX線CTシステム。
【請求項14】
前記スキャン部は、透過したX線を前記第2のX線エネルギーまで減衰させる第1のX線フィルタと、透過したX線を前記第3のX線エネルギーまで減衰させる第2のX線フィルタとを用いて、前記第2のスキャンを実行する、請求項2~10のいずれか一項に記載のX線CTシステム。
【請求項15】
前記スキャン部は、透過したX線を前記第2のX線エネルギーから前記第3のX線エネルギーまで減衰させるX線フィルタを用いて、被検体に照射されるX線の一部を減衰させることで、前記第2のスキャンを実行する、請求項2~10のいずれか一項に記載のX線CTシステム。
【請求項16】
第1のスキャンにおいて被検体の第1の領域にX線を照射することで収集された第1のX線エネルギーに対応する第1の被検体データセットと前記第1のスキャンの後で実行された第2のスキャンにおいて前記第1の領域に含まれる第2の領域にX線を照射することで収集された2以上の数のX線エネルギーそれぞれに対応する複数の被検体データセットに含まれる少なくとも1つの被検体データセットとに基づき得られる被検体データセットと、前記複数の被検体データセットのうち前記少なくとも1つの被検体データセットを除いた被検体データセットとに基づいて、前記2以上の数の基準物質による物質弁別を行なう処理部
を備えた、医用処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線CTシステム及び医用処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)スキャナで収集した2種類以上のX線エネルギーに対応する投影データに基づいて、複数の基準物質による対象物の物質弁別を行い、その結果を画像として表示する技術がある。2種類のX線エネルギーを利用する場合、この技術はデュアルエナジー(Dual Energy:DE)と呼ばれ、2種類の基準物質による物質弁別が可能である。
【0003】
例えば、デュアルエナジーの技術によれば、被検体の体内における腎臓結石や脂肪、軟組織、骨といった物質を弁別することが可能である。また、デュアルエナジーの技術によれば、被検体の体内における腎臓結石がカルシウムタイプの結石であるか尿酸タイプの結石であるかを判定することができる。
【0004】
ここで、X線CTスキャナが収集する投影データには、種々の要因により、ノイズやアーチファクトが含まれてしまう場合がある。特に、被検体の体格が大きいとX線が減衰しやすく、投影データの質の低下が顕著である。ここで、高エネルギー且つ高線量のX線を使用することで投影データの質を向上させることはできるものの、被検体の被ばく量は増加する。また、デュアルエナジーにおける低エネルギー側のX線についてエネルギーを高くする場合、エネルギー差が小さくなることにより、物質弁別の精度の低下も懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平04-347143号公報
【文献】特開2005-143948号公報
【文献】特開平08-294485号公報
【文献】特開2008-229161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、物質弁別の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態のX線CTシステムは、スキャン部と、処理部とを備える。スキャン部は、被検体の第1の領域にX線を照射することで第1のX線エネルギーに対応する第1の被検体データセットを収集する第1のスキャンを実行し、前記第1のスキャンの後で、前記第1の領域に含まれる第2の領域にX線を照射することで第2のX線エネルギーに対応する第2の被検体データセット及び前記第2のX線エネルギーとは異なる第3のX線エネルギーに対応する第3の被検体データセットを収集する第2のスキャンを実行する。処理部は、前記第1の被検体データセットと前記第2及び第3の被検体データセットの一方とに基づき得られる第4の被検体データセットと、前記第2及び第3の被検体データセットの他方とに基づいて、複数の基準物質による物質弁別を行なう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の実施形態に係るX線CTシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、第1の実施形態に係るX線CTシステムの処理の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る投影データセットの補正処理について説明するための図である。
図4A図4Aは、第1の実施形態に係るセグメンテーションについて説明するための図である。
図4B図4Bは、第1の実施形態に係るセグメンテーションについて説明するための図である。
図4C図4Cは、第1の実施形態に係るセグメンテーションについて説明するための図である。
図5図5は、第1の実施形態に係るX線CTシステムの処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
図6図6は、第2の実施形態に係る医用情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、X線CTシステム及び医用処理装置の実施形態について詳細に説明する。なお、本願に係るX線CTシステム及び医用処理装置は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
まず、図1を参照しながら、第1の実施形態に係るX線CTシステム10の構成について説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線CTシステム10の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、X線CTシステム10は、架台装置110と、寝台装置130と、コンソール装置140とを有する。なお、X線CTシステム10は、X線CT装置又はX線CTスキャナとも呼ばれる。
【0011】
図1においては、非チルト状態での回転フレーム113の回転軸又は寝台装置130の天板133の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、図1は、説明のために架台装置110を複数方向から描画したものであり、X線CTシステム10が架台装置110を1つ有する場合を示す。
【0012】
架台装置110は、X線管111と、X線検出器112と、回転フレーム113と、X線高電圧装置114と、制御装置115と、ウェッジ116と、コリメータ117と、DAS118とを有する。
【0013】
X線管111は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管111は、X線高電圧装置114からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体P1に対し照射するX線を発生する。
【0014】
X線検出器112は、X線管111から照射されて被検体P1を通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS118へと出力する。X線検出器112は、例えば、X線管111の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャンネル方向(チャネル方向)に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器112は、例えば、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0015】
例えば、X線検出器112は、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオード等の光センサを有する。なお、X線検出器112は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0016】
回転フレーム113は、X線管111とX線検出器112とを対向支持し、制御装置115によってX線管111とX線検出器112とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム113は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム113は、X線管111及びX線検出器112に加えて、X線高電圧装置114やウェッジ116、コリメータ117、DAS118等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム113は、図1において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。以下では、架台装置110において、回転フレーム113、及び、回転フレーム113と共に回転移動する部分を、回転部とも記載する。
【0017】
X線高電圧装置114は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管111に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管111が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行なうX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置114は、回転フレーム113に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
【0018】
制御装置115は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置115は、入力インターフェース143からの入力信号を受けて、架台装置110及び寝台装置130の動作制御を行なう。例えば、制御装置115は、回転フレーム113の回転や架台装置110のチルト、寝台装置130の動作等について制御を行なう。一例を挙げると、制御装置115は、架台装置110をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム113を回転させる。なお、制御装置115は架台装置110に設けられてもよいし、コンソール装置140に設けられてもよい。
【0019】
ウェッジ116は、X線管111から照射されたX線量を調節するためのX線フィルタである。具体的には、ウェッジ116は、X線管111から被検体P1へ照射されるX線が予め定められた分布になるように、X線管111から照射されたX線を減衰させるX線フィルタである。例えば、ウェッジ116は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工して作製される。
【0020】
コリメータ117は、ウェッジ116を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ117は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、図1においては、X線管111とコリメータ117との間にウェッジ116が配置される場合を示すが、X線管111とウェッジ116との間にコリメータ117が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ116は、X線管111から照射され、コリメータ117により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0021】
DAS118は、X線検出器112が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS118は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行なう増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS118は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0022】
DAS118が生成したデータは、回転フレーム113に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置110の非回転部分(例えば、固定フレーム等。図1での図示は省略している)に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置140へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム113を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム113から架台装置110の非回転部分へのデータの送信方法は、光通信に限らず、非接触型の如何なるデータ伝送方式を採用してもよいし、接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0023】
寝台装置130は、スキャン対象の被検体P1を載置、移動させる装置であり、基台131と、寝台駆動装置132と、天板133と、支持フレーム134とを有する。基台131は、支持フレーム134を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置132は、被検体P1が載置された天板133を、天板133の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム134の上面に設けられた天板133は、被検体P1が載置される板である。なお、寝台駆動装置132は、天板133に加え、支持フレーム134を天板133の長軸方向に移動してもよい。
【0024】
コンソール装置140は、メモリ141と、ディスプレイ142と、入力インターフェース143と、処理回路144とを有する。なお、コンソール装置140は架台装置110とは別体として説明するが、架台装置110にコンソール装置140又はコンソール装置140の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0025】
メモリ141は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ141は、被検体P1に対するスキャンを実行することで収集される各種のデータを記憶する。また、例えば、メモリ141は、X線CTシステム10に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ141は、X線CTシステム10とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0026】
ディスプレイ142は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ142は、処理回路144が生成した表示用のCT画像を表示したり、物質弁別の結果を示す画像を表示したりする。また、例えば、ディスプレイ142は、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。例えば、ディスプレイ142は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ142は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0027】
入力インターフェース143は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路144に出力する。例えば、入力インターフェース143は、CT画像データを再構成する際の再構成条件や、CT画像データから表示用のCT画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。例えば、入力インターフェース143は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース143は、架台装置110に設けられてもよい。また、入力インターフェース143は、コンソール装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース143は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置140とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路144へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース143の例に含まれる。
【0028】
処理回路144は、スキャン機能144a、処理機能144b、及び制御機能144cを実行することで、X線CTシステム10全体の動作を制御する。なお、スキャン機能144aは、スキャン部の一例である。また、処理機能144bは、処理部の一例である。
【0029】
例えば、処理回路144は、スキャン機能144aに相当するプログラムをメモリ141から読み出して実行することにより、被検体P1に対するスキャンを実行する。例えば、スキャン機能144aは、X線高電圧装置114を制御することにより、X線管111に高電圧を供給する。これにより、X線管111は、被検体P1に対し照射するX線を発生する。また、スキャン機能144aは、寝台駆動装置132を制御することにより、被検体P1を架台装置110の撮影口内へ移動させる。また、スキャン機能144aは、ウェッジ116の位置、及び、コリメータ117の開口度及び位置を調整することで、被検体P1に照射されるX線の分布を制御する。また、スキャン機能144aは、制御装置115を制御することにより回転部を回転させる。また、スキャン機能144aによってスキャンが実行される間、DAS118は、X線検出器112における各検出素子からX線の信号を収集し、検出データを生成する。また、スキャン機能144aは、DAS118から出力された検出データに対して、前処理を施す。例えば、スキャン機能144aは、DAS118から出力された検出データに対して、対数変換処理やオフセット補正処理、チャンネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施す。なお、前処理を施した後のデータについては生データとも記載する。また、前処理を施す前の検出データ及び前処理を施した後の生データを総称して、投影データとも記載する。
【0030】
また、処理回路144は、処理機能144bに相当するプログラムをメモリ141から読み出して実行することにより、前処理後の投影データに基づいて画像データを生成する。例えば、処理機能144bは、投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法、逐次近似応用再構成法等を用いた再構成処理を行なうことにより、CT画像データ(ボリュームデータ)を生成する。また、処理機能144bは、AI(Artificial Intelligence)による再構成処理を行なって、CT画像データを生成することもできる。例えば、処理機能144bは、DLR(Deep Learning Reconstruction)法により、CT画像データを生成する。また、処理機能144bは、投影データに基づいて、複数の基準物質による物質弁別を行なう。なお、処理機能144bは、再構成処理を施す前の段階(投影データの段階)で物質弁別を行なってもよいし、再構成処理を施した後の段階(CT画像データの段階)で物質弁別を行なってもよい。処理機能144bによる弁別処理については後述する。
【0031】
また、処理回路144は、制御機能144cに対応するプログラムをメモリ141から読み出して実行することにより、ディスプレイ142における表示の制御を行なう。例えば、制御機能144cは、入力インターフェース143を介してユーザから受け付けた入力操作等に基づいて、処理機能144bにより生成されたCT画像データを、公知の方法により表示用のCT画像(任意断面の断層像データや3次元画像データ等)に変換する。そして、制御機能144cは、変換した表示用のCT画像をディスプレイ142に表示させる。また、例えば、制御機能144cは、処理機能144bによる物質弁別の結果を示す画像をディスプレイ142に表示させる。また、制御機能144cは、ネットワークを介して各種のデータを送信する。一例を挙げると、制御機能144cは、処理機能144bにより生成されたCT画像データや物質弁別の結果を示す画像を、図示しない画像保管装置に送信して保管させる。
【0032】
図1に示すX線CTシステム10においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ141へ記憶されている。処理回路144は、メモリ141からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路144は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0033】
なお、図1においては単一の処理回路144にて、スキャン機能144a、処理機能144b、及び制御機能144cが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路144を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路144が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0034】
また、処理回路144は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路144は、メモリ141から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、X線CTシステム10とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図1に示す各機能を実現する。
【0035】
以上、X線CTシステム10の構成例について説明した。以下、X線CTシステム10が行なう処理について詳細に説明する。
【0036】
まず、図2を用いて、X線CTシステム10が行なう処理について説明する。図2においては、kVスイッチング方式のスキャンA12を実行し、2種類の基準物質による物質弁別を行なう場合について説明する。図2は、第1の実施形態に係るX線CTシステム10の処理の一例を示す図である。
【0037】
図2に示すように、スキャン機能144aは、まず、スキャンA11を実行する。具体的には、スキャン機能144aは、図2に示すように、X線の焦点位置を被検体P1の周囲で回転させながら、被検体P1の体軸方向に沿った範囲R1に対してエネルギーE11のX線を照射させることで、複数の照射方向(ビュー)のそれぞれについて投影データを収集する。以下では、複数の投影データをまとめて、投影データセットとも記載する。
【0038】
即ち、スキャン機能144aは、範囲R1にX線を照射することで、エネルギーE11に対応する投影データセットB11を収集する。例えば、スキャン機能144aは、コンベンショナルスキャン、ヘリカルスキャン、ステップアンドシュートといった方式のスキャンを実行することで、投影データセットB11を収集する。また、処理機能144bは、スキャンA11により収集された投影データセットB11に基づいて、3次元の画像データC11を再構成する。
【0039】
なお、スキャンA11は、第1のスキャンの一例である。また、範囲R1は、第1の範囲又は第1の領域の一例である。また、エネルギーE11は、第1のX線エネルギーの一例である。また、投影データセットB11は、第1の投影データセット及び第1の被検体データセットの一例である。また、画像データC11は、第1画像データの一例である。
【0040】
次に、制御機能144cは、画像データC11に対するレンダリング処理を実行することで参照画像を生成し、生成した参照画像をディスプレイ142に表示させる。ここで、レンダリング処理の例としては、断面再構成法(MPR:Multi Planar Reconstruction)により、画像データC11から任意断面の2次元画像を生成する処理が挙げられる。また、レンダリング処理の他の例としては、ボリュームレンダリング(Volume Rendering)処理や、最大値投影法(MIP:Maximum Intensity Projection)により、画像データC11から、3次元の情報を反映した2次元画像を生成する処理が挙げられる。また、制御機能144cは、参照画像を参照したユーザからの入力操作を受け付けることで、スキャンA12のスキャン範囲である範囲R2を設定する。なお、スキャンA12は、第2のスキャンの一例である。また、範囲R2は、第2の範囲又は第2の領域の一例である。
【0041】
即ち、スキャンA11は、範囲R2を設定するための位置決め撮影であり、画像データC11は、範囲R2の設定に使用される位置決め画像データである。従って、スキャンA11の範囲R1は、診断対象の臓器等を含むように、比較的広域に設定されることが好ましい。また、範囲R2は、範囲R1において設定されるものであるため、通常は図2に示すように、範囲R1より狭い範囲となる。言い換えると、範囲R2は、範囲R1に含まれる範囲である。なお、位置決め画像データは、スキャノ画像データやスキャノグラム、スカウト画像データと呼ばれる場合もある。また、3次元のスキャノグラムである画像データC11については、3Dスキャノグラムとも記載する。
【0042】
次に、スキャン機能144aは、参照画像に設定された範囲R2に対して、スキャンA12を実行する。具体的には、スキャン機能144aは、1又は複数のビューごとに、X線管111から被検体P1に対して照射するX線のエネルギーをエネルギーE12とエネルギーE13との間で変化させることで、スキャンA12を実行する。これにより、スキャン機能144aは、エネルギーE12に対応する投影データセットB12、及び、エネルギーE13に対応する投影データセットB13を収集する。
【0043】
なお、エネルギーE12は、第2のX線エネルギーの一例である。また、投影データセットB12は、第2の投影データセット及び第2の被検体データセットの一例である。また、エネルギーE13は、第3のX線エネルギーの一例である。また、投影データセットB13は、第3の投影データセット及び第3の被検体データセットの一例である。ここで、エネルギーE12は、エネルギーE13より小さいエネルギーである。また、エネルギーE11は、エネルギーE12及びエネルギーE13とは異なるエネルギーであってもよいし、エネルギーE12及びエネルギーE13のいずれかと同じエネルギーであってもよい。
【0044】
次に、処理機能144bは、投影データセットB11に基づいて、エネルギーE12に対応する投影データセットB14を生成する。また、処理機能144bは、投影データセットB14に基づいて投影データセットB12を補正することで、エネルギーE12に対応する投影データセットB16を生成する。即ち、処理機能144bは、投影データセットB12及び投影データセットB14に基づいて投影データセットB16を生成する。なお、投影データセットB14は第4の投影データセットの一例であり、投影データセットB16は第6の投影データセット及び第4の被検体データセットの一例である。投影データセットB14及び投影データセットB16の生成処理については後述する。
【0045】
そして、処理機能144bは、エネルギーE12に対応する投影データセットB16と、エネルギーE13に対応する投影データセットB13とに基づいて、2種類の基準物質による物質弁別を実行し、物質弁別画像を生成する。
【0046】
一例を挙げると、処理機能144bは、投影データセットB16及び投影データセットB13を用いて、範囲R2内に存在する2つの基準物質を分離する。具体的には、処理機能144bは、投影データセットB16及び投影データセットB13それぞれについて線減弱係数の分布を求め、線減弱係数の各位置(各画素)について、以下の式(1)の連立方程式を解くことで、各位置における2つの基準物質の混合量や混合割合を算出する。
【0047】
【数1】
【0048】
ここで、「μ(E1)」は単色X線エネルギー「E1」における各位置の線減弱係数を示し、「μ(E2)」は単色X線エネルギー「E2」における各位置の線減弱係数を示す。また、「μα(E)」は基準物質αの線減弱係数を示し、「μβ(E)」は基準物質βの線減弱係数を示す。また、「cα」は基準物質αの混合量を示し、「cβ」は基準物質βの混合量を示す。なお、各基準物質のエネルギーごとの線減弱係数は既知である。例えば、処理機能144bは、「E1」にエネルギーE11を代入し、「E2」にエネルギーE12を代入して式(1)の連立方程式を解くことで、2種類の基準物質「α、β」による物質弁別を行なう。
【0049】
そして、処理機能144bは、物質弁別の結果を示す画像を生成する。例えば、処理機能144bは、基準物質ごとに物質弁別画像を生成する。一例を挙げると、処理機能144bは、基準物質αを強調した物質弁別画像と、基準物質βを強調した物質弁別画像とをそれぞれ生成する。また、処理機能144bは、基準物質ごとに生成した複数の物質弁別画像を用いて、各基準物質の混合割合に基づく重み付け計算処理を行なうことにより、所定のエネルギーにおける仮想単色X線画像(モノクロマティック画像とも記載する)や、密度画像、実効原子番号画像等、種々の画像を生成することもできる。また、制御機能144cは、これら物質弁別の結果を示す画像を、ディスプレイ142に表示させる。
【0050】
なお、再構成処理を施す前の段階で物質弁別を行なうものとして説明したが、処理機能144bは、再構成処理を施した後の段階で物質弁別を行なってもよい。即ち、処理機能144bは、投影データセットB16及び投影データセットB13の各画素について式(1)の連立方程式を解くことで物質弁別を行なってもよいし、投影データセットB16に基づくCT画像データ及び投影データセットB13に基づくCT画像データの各画素について式(1)の連立方程式を解くことで物質弁別を行なってもよい。
【0051】
また、上記した式(1)について「μ」を線減弱係数、「c」を混合量として説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理機能144bは、各物質における「μ」を質量減弱係数とし、「c」を密度として、式(1)を解くこととしても構わない。
【0052】
次に、投影データセットB14及び投影データセットB16の生成処理について、図3を用いてより詳細に説明する。具体的には、X線CTシステム10は、図3に示すように、スキャンA11により収集された投影データセットB11から投影データセットB14を生成し、スキャンA12により収集された投影データセットB12を投影データセットB14を用いて補正することで投影データセットB16を生成する。即ち、図3は、第1の実施形態に係る投影データセットB12の補正処理について説明するための図である。
【0053】
より具体的には、スキャン機能144aは、まず、スキャンA11を実行し、エネルギーE11に対応する投影データセットB11を収集する。ここで、投影データセットB11は、図3に示すように、チャンネル方向及びビュー方向の軸を有するデータとして表現することができる。また、スキャンA11は単一エネルギー(エネルギーE11)のX線を用いて実行されたものであるため、投影データセットB11は、いずれのビューについてもエネルギーE11のデータとなる。即ち、スキャンA11は、エネルギーE11のX線を用いたシングルエナジーのスキャンである。
【0054】
なお、図3では記載を省略しているものの、投影データセットB11は、被検体P1の体軸方向(Z軸方向)を含む3次元データである。例えば、投影データセットB11は、チャンネル方向に「P」、ビュー方向に「Q」、体軸方向に「R」のマトリクスサイズを有する。
【0055】
次に、処理機能144bは、投影データセットB11に基づく再構成処理を実行して、3次元の画像データC11を生成する。ここで、画像データC11は、CT値(単位:HU)の分布を示した3次元データである。
【0056】
次に、処理機能144bは、CT値に応じて画像データC11をセグメンテーションする。具体的には、処理機能144bは、画像データC11における各画素を、CT値に応じて、空気や水、軟組織、骨などに組織分類する。なお、CT値は、X線吸収係数に比例した値である。即ち、処理機能144bは、X線吸収係数に応じて、画像データC11をセグメンテーションする。
【0057】
ここで、処理機能144bによる画像データC11のセグメンテーションについて、図4A図4B及び図4Cを用いてより詳細に説明する。図4A図4B及び図4Cは、第1の実施形態に係るセグメンテーションについて説明するための図である。
【0058】
図4Aは、セグメンテーションされた画像データC11を示す。例えば、処理機能144bは、画像データC11における画素のそれぞれを、空気や水、軟組織、骨といった組織のいずれかに分類する。ここで、異なる組織は、それぞれ、異なる減弱係数を示す。例えば、図4Bに示すように、同一のエネルギーE11のX線が照射された場合でも、骨と軟組織とでは減弱係数は異なる。即ち、「μbone(E11)≠μsoft tissue(E11)」となる。また、異なるX線エネルギーは、それぞれ、異なる減弱係数を示す。また、例えば、図4Cに示すように、同一の組織「骨」に対してX線を照射する場合でも、エネルギーE11のX線とエネルギーE12のX線とでは減弱係数は異なる。即ち、「μbone(E11)≠μbone(E12)」となる。なお、画素ごとにセグメンテーションするものとして説明したが、処理機能144bは、複数の画素を束ねた画素群ごとにセグメンテーションを行なってもよい。
【0059】
次に、処理機能144bは、画像データC11をエネルギーE12に応じて順投影することで、投影データセットB14を生成する。即ち、各組織のエネルギーごとの減弱係数は既知であることから、処理機能144bは、組織ごとにセグメンテーションした画像データC11をエネルギーE12に応じて順投影することで、エネルギーE12で収集された投影データセットをシミュレーションし、投影データセットB14を生成することができる。即ち、投影データセットB11はスキャンA11により実際に収集された投影データセットであるのに対して、投影データセットB14はシミュレーションされた投影データセットである。例えば、処理機能144bは、エネルギーE12のX線が各種の組織を透過する際に生じるX線の減衰を計算することで、投影データセットB14を生成する。
【0060】
次に、処理機能144bは、投影データセットB14についてリサンプリングを行なう。即ち、順投影して生成された投影データセットB14は投影データセットB11と同じ「P×Q×R」のマトリクスを有するところ、投影データセットB14のマトリクスと、スキャンA12により収集される投影データセットのマトリクスとは異なっている場合がある。そこで、処理機能144bは、投影データセットB14のマトリクスと、スキャンA12により収集される投影データセットのマトリクスとを揃えるように、投影データセットB14についてリサンプリングを行なう。
【0061】
例えば、スキャンA12により収集された投影データセットは、「P×M×N」のマトリクスを有する。即ち、チャンネル方向のマトリクスサイズは通常は変化しないため、スキャンA12により収集される投影データセットは、投影データセットB14と同じく、チャンネル方向に「P」のマトリクスサイズを有する。一方で、ビュー方向及び体軸方向のマトリクスサイズはスキャンごとに変化しうるものである。例えば、投影データセットB14がビュー方向に「Q」、体軸方向に「R」のマトリクスサイズを有するのに対し、スキャンA12により収集される投影データセットは、ビュー方向に「M」、体軸方向に「N」のマトリクスサイズを有する。そこで、処理機能144bは、投影データセットB14のマトリクスが「P×M×N」となるように、リサンプリングを行なう。
【0062】
次に、処理機能144bは、投影データセットB14をスパースな状態に加工する。具体的には、処理機能144bは、エネルギーE12に対応する投影データセットB12と同様にスパースな状態となるように、順投影して生成された投影データセットB14を加工して、スパースな投影データセットB14を生成する。
【0063】
即ち、スキャンA12により収集された投影データセットは、図3に示すように、複数エネルギー(エネルギーE12及びエネルギーE13)が混合した投影データセットである。ここで、スキャンA12により収集された投影データセットから分離された投影データセットB12は、エネルギーE13のビューに対応するデータが欠損したスパースなデータとなる。そこで、処理機能144bは、投影データセットB12と同様のスパースな状態となるように、投影データセットB14を加工する。
【0064】
なお、図3はあくまで一例であり、処理フローについては適宜の変更が可能である。例えば、処理機能144bは、先に投影データセットB14をスパースな状態に加工してから、「P×Q×R」から「P×M×N」へのリサンプリングを行なってもよい。また、例えば、処理機能144bは、投影データセットB11についてリサンプリングを行なってから、画像データC11を再構成してもよい。また、例えば、処理機能144bは、画像データC11についてリサンプリングを行なってから、セグメンテーションを行なうこととしてもよい。また、例えば、処理機能144bは、セグメンテーションされた画像データC11についてリサンプリングを行なってから、順投影を行なうこととしてもよい。また、図3においては、順投影によってスパースでないフルデータを生成した後、これを加工してスパースなデータを生成するものとして説明したが、処理機能144bは、順投影によってスパースなデータを生成してもよい。
【0065】
上述したように、処理機能144bは、画像データC11を順投影して投影データセットB14を生成し、更に、投影データセットB14について種々の加工を行なう。例えば、処理機能144bは、投影データセットB14について、投影データセットB12とマトリクスを揃えるとともに、投影データセットB12と同様のスパースな状態に加工する。即ち、処理機能144bは、投影データセットB12とデータ形式を揃えるように、投影データセットB14を加工する。
【0066】
次に、処理機能144bは、投影データセットB14と投影データセットB12とをブレンディングして、投影データセットB16を生成する。例えば、処理機能144bは、投影データセットB14と投影データセットB12との位置合わせを行なうとともに、所定の割合で投影データセットB14と投影データセットB12とを重み付き加算して、投影データセットB16を生成する。換言すると、処理機能144bは、投影データセットB14により投影データセットB12を補正して、投影データセットB16を生成する。
【0067】
或いは、処理機能144bは、AIにより、投影データセットB14に基づく投影データセットB12の補正を行なってもよい。一例を挙げると、処理機能144bは、同一対象から収集された2つの投影データセットの入力を受けて高品質の投影データセットを出力するように機能付けられた学習済みモデルM1を事前に生成して、メモリ141に記憶させる。そして、スキャンA11及びスキャンA12が実行された際、処理機能144bは、メモリ141から読み出した学習済みモデルM1に対して、投影データセットB14及び投影データセットB12を入力することにより、投影データセットB16を生成する。
【0068】
以下、学習済みモデルM1の生成処理の一例を説明する。まず、処理機能144bは、学習データとして、同一対象から収集された投影データセットの組を取得する。以下、学習データの例として、投影データセットB21、投影データセットB22及び投影データセットB23の組について説明する。例えば、投影データセットB21、投影データセットB22及び投影データセットB23は、被検体P1や、被検体P1と異なる被検体P2、人体を模したファントム等について3回のスキャンを行なうことで収集される。また、投影データセットB23は、投影データセットB21及び投影データセットB22と比較して、高線量のX線を使用して収集された高品質の投影データセットである。投影データセットB21、投影データセットB22及び投影データセットB23は、X線CTシステム10において収集されてもよいし、他のシステムにおいて収集されてもよい。
【0069】
例えば、処理機能144bは、投影データセットB21及び投影データセットB22を入力側データ、高品質の投影データセットB23を出力側データとする機械学習を実行することにより、学習済みモデルM1を生成する。
【0070】
ここで、学習済みモデルM1は、例えば、ニューラルネットワーク(Neural Network)により構成することができる。ニューラルネットワークとは、層状に並べた隣接層間が結合した構造を有し、情報が入力層側から出力層側に伝播するネットワークである。例えば、処理機能144bは、上述した学習データを用いて多層のニューラルネットワークについて深層学習(ディープラーニング)を実行することで、学習済みモデルM1を生成する。なお、多層のニューラルネットワークは、例えば、入力層と、複数の中間層(隠れ層)と、出力層とにより構成される。
【0071】
一例を挙げると、処理機能144bは、投影データセットB21及び投影データセットB22を入力側データとしてニューラルネットワークに入力する。ここで、ニューラルネットワークにおいては、入力層側から出力層側に向かって一方向に隣接層間でのみ結合しながら情報が伝播し、出力層からは、投影データセットB23を推定した投影データセットが出力される。
【0072】
例えば、ニューラルネットワークにおいては、投影データセットB21と投影データセットB22とを位置合わせするとともに、投影データセットB21及び投影データセットB22それぞれの重みを決定して、投影データセットB21と投影データセットB22とをブレンディングする処理が行なわれる。なお、投影データセットB21及び投影データセットB22それぞれの重みは、画素ごとに決定されてもよい。そして、ニューラルネットワークの出力層からは、質の高い投影データセットB23を推定した投影データセットが出力される。なお、入力層側から出力層側に向かって一方向に情報が伝播するニューラルネットワークについては、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convlutional Neural Network)とも呼ばれる。
【0073】
処理機能144bは、入力側データを入力した際にニューラルネットワークが好ましい結果を出力することができるよう、ニューラルネットワークのパラメータを調整することで、学習済みモデルM1を生成する。例えば、処理機能144bは、投影データセット間の近さを表す関数(誤差関数)を用いて、ニューラルネットワークのパラメータを調整する。
【0074】
一例を挙げると、処理機能144bは、投影データセットB23と、ニューラルネットワークが推定した投影データセットとの間の近さを示す誤差関数を算出する。そして、処理機能144bは、算出した誤差関数が極小となるように、ニューラルネットワークのパラメータを調整する。これにより、処理機能144bは、同一対象から収集された2つの投影データセットの入力を受けて高品質の投影データセットを出力するように機能付けられた学習済みモデルM1を生成する。また、処理機能144bは、生成した学習済みモデルM1を、メモリ141に記憶させる。
【0075】
なお、学習済みモデルM1は、入力された2つの投影データセットのブレンディングの前処理を更に行なうよう機能付けられたものであってもよい。例えば、学習済みモデルM1は、入力された2つの投影データセットのマトリクスが異なる場合に、入力された2つの投影データセットの少なくとも一方についてリサンプリングを行なう。また、例えば、学習済みモデルM1は、入力された2つの投影データセットの一方がスパースなデータである場合に、他方の投影データセットが同様のスパースなデータとなるように加工する。
【0076】
また、学習済みモデルM1がニューラルネットワークにより構成されるものとして説明したが、処理機能144bは、ニューラルネットワーク以外の機械学習手法により、学習済みモデルM1を生成してもよい。また、処理機能144bが学習済みモデルM1を生成するものとして説明したが、学習済みモデルM1は、他の装置において生成されるものであっても構わない。
【0077】
投影データセットB12及び投影データセットB14に基づいて投影データセットB16を生成した後、処理機能144bは、エネルギーE12に対応する投影データセットB16と、エネルギーE13に対応する投影データセットB13とに基づいて、2種類の基準物質による物質弁別を実行する。
【0078】
例えば、処理機能144bは、まず、各投影データセットの欠損部分のデータを補間する。即ち、投影データセットB16及び投影データセットB13はいずれもスパースなデータであるため、処理機能144bは、それぞれの欠損部分のデータを補間してフルデータとする。なお、処理機能144bによる補間処理の例としては、線形補間、ラグランジェ補間、シグモイドなどが挙げられる。そして、処理機能144bは、フルデータの状態にした投影データセットB16と投影データセットB13とに基づいて、物質弁別を実行する。例えば、処理機能144bは、物質弁別の処理により、軟組織から腎臓結石を分離することができる。
【0079】
更に、処理機能144bは、物質弁別の結果を示す画像を生成する。例えば、処理機能144bは、「カルシウム」を強調した物質弁別画像と、「水」を強調した物質弁別画像とをそれぞれ生成する。また、処理機能144bは、所定のエネルギーにおけるモノクロマティック画像や、密度画像、実効原子番号画像等、種々の画像を生成することもできる。また、制御機能144cは、物質弁別の結果を示す画像を、ディスプレイ142に表示させる。
【0080】
なお、図3において、処理機能144bは、投影データセットB14と投影データセットB12とのブレンディングの前に、投影データセットB12について欠損部分の補間処理尾を行なってもよい。即ち、処理機能144bは、投影データセットB14をスパースなデータに加工する処理を省略するとともに、フルデータの状態の投影データセットB14と投影データセットB12とをブレンディングしてもよい。
【0081】
また、図3においては、スキャンA11により収集された投影データセットとスキャンA12により収集された投影データセットとでマトリクスが異なるものとして説明したが、スキャン機能144aは、投影データセットのマトリクスが同じになるように、スキャンA11及びスキャンA12を実行してもよい。この場合、処理機能144bは、リサンプリングの処理を省略することができる。
【0082】
また、エネルギーE11とエネルギーE12とが同じエネルギーである場合、スキャン機能144aは、再構成、セグメンテーション及び順投影の処理を省略することとしてもよい。即ち、エネルギーE11とエネルギーE12とが同じエネルギーである場合、スキャン機能144aは、スキャンA11により収集された投影データセットB11をそのまま用いて、投影データセットB12の補正を行なうこともできる。
【0083】
次に、X線CTシステム10による処理の手順の一例を、図5を用いて説明する。図5は、第1の実施形態に係るX線CTシステム10の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【0084】
ステップS101及びステップS107は、スキャン機能144aに対応する。ステップS102、ステップS103、ステップS108及びステップS109は、処理機能144bに対応する。ステップS104、ステップS105、ステップS106及びステップS110は、制御機能144cに対応する。
【0085】
まず、処理回路144は、被検体P1の体軸方向に沿った範囲R1にX線を照射することでスキャンA11を実行し、エネルギーE11に対応する投影データセットB11を収集する(ステップS101)。次に、処理回路144は、投影データセットB11に対する再構成処理を実行し、画像データC11を生成する(ステップS102)。
【0086】
次に、処理回路144は、投影データセットB11に基づいて、エネルギーE12に対応する投影データセットB14を生成する(ステップS103)。具体的には、処理回路144は、投影データセットB11に基づく画像データC11をX線吸収係数に応じてセグメンテーションし、セグメンテーションした画像データC11をエネルギーE12に応じて順投影することで、投影データセットB14を生成する。
【0087】
また、処理回路144は、画像データC11に対するレンダリング処理を行なうことで参照画像を生成し(ステップS104)、生成した参照画像をディスプレイ142に表示させる(ステップS105)。ここで、処理回路144は、参照画像を参照したユーザにより、スキャンA12のスキャン範囲である範囲R2が設定されたか否かを判定し(ステップS106)、スキャン範囲が設定されていない場合には待機状態となる(ステップS106否定)。
【0088】
一方で、スキャン範囲が設定された場合(ステップS106肯定)、処理回路144は、参照画像に設定されたスキャン範囲に対してスキャンA12を実行する(ステップS107)。具体的には、処理回路144は、被検体P1の体軸方向に沿った範囲R2にX線を照射することで、エネルギーE12に対応する投影データセットB12及びエネルギーE13に対応する投影データセットB13を収集する。
【0089】
次に、処理回路144は、投影データセットB12及び投影データセットB14に基づいて、エネルギーE12に対応する投影データセットB16を生成する(ステップS108)。次に、処理回路144は、エネルギーE12に対応する投影データセットB16と、エネルギーE13に対応する投影データセットB13とに基づいて、2種類の基準物質による物質弁別を行なう(ステップS109)。そして、処理回路144は、物質弁別の結果を示す物質弁別画像をディスプレイ142に表示させ(ステップS110)、処理を終了する。
【0090】
なお、ステップS103と、ステップS104、ステップS105、ステップS106及びステップS107とを行なう順序は任意であり、並行して行なってもよい。
【0091】
また、図3では、スキャンA12において1つのビューごとにX線のエネルギーを変化させるものとして説明したが、スキャン機能144aは、複数のビューごとにX線のエネルギーを変化させることとしても構わない。
【0092】
また、図3では、スキャンA12がデュアルエナジー(エネルギーE12及びエネルギーE13)であるものとして説明したが、スキャン機能144aは、スキャンA12として、3種類以上のエネルギーのX線を用いたマルチエナジーのスキャンを実行してもよい。この場合、処理回路144は、3種類以上の基準物質による物質弁別を行なうことができる。
【0093】
上述したように、第1の実施形態によれば、スキャン機能144aは、被検体P1の体軸方向に沿った範囲R1にX線を照射することでエネルギーE11に対応する投影データセットB11を収集するスキャンA11を実行する。また、スキャン機能144aは、被検体P1の体軸方向に沿った範囲R2にX線を照射することでエネルギーE12に対応する投影データセットB12、及びエネルギーE13に対応する投影データセットB13を収集するスキャンA12を実行する。また、処理機能144bは、投影データセットB11に基づいて、エネルギーE12に対応する投影データセットB14を生成する。また、処理機能144bは、投影データセットB14と、投影データセットB12及び投影データセットB13とに基づいて、複数の基準物質による物質弁別を行なう。従って、第1の実施形態に係るX線CTシステム10は、物質弁別の精度を向上させることができる。
【0094】
特に、低エネルギー側のデータである投影データセットB12は、高エネルギー側のデータである投影データセットB13よりも質が低くなる場合が多い。ここで、X線CTシステム10は、投影データセットB14に基づいて投影データセットB12を補正し、低エネルギー側のデータの質を向上させることができる。これにより、X線CTシステム10は、低エネルギー側のデータ及び高エネルギー側のデータに基づく物質弁別の精度を向上させることができる。
【0095】
また、処理機能144bは、投影データセットB11に基づいて画像データC11を生成し、X線吸収係数に応じて画像データC11をセグメンテーションし、セグメンテーションした画像データC11をエネルギーE12に応じて順投影することで、投影データセットB14を生成する。ここで、投影データセットB11に含まれていたノイズは、再構成及び順投影の処理の中で少なくとも一部が除去される。即ち、投影データセットB14は、投影データセットB11よりもノイズが少ないデータとなる。従って、X線CTシステム10は、投影データセットB14を生成することにより、投影データセットB11をそのまま用いて投影データセットB12を補正する場合と比較して、投影データセットB12を精度よく補正することができる。
【0096】
また、スキャンA11は、スキャンA12を実行するための位置決めスキャンであり、一般的な処理フローに含まれるものである。即ち、スキャンA11を実行するとしても、処理フローを複雑化させるものではなく、また、被検体P1の被ばく量を増加させるものでもない。
【0097】
また、X線CTシステム10は、スキャンA11の結果を、スキャンA12の位置決めに使用するとともに、物質弁別の処理にも使用する。即ち、X線CTシステム10は、スキャンA11による被検体P1の被ばくをより有意義なものとすることができる。
【0098】
(第2の実施形態)
さて、これまで第1の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0099】
例えば、上述した実施形態では、スキャンA11により収集された投影データセットB11に基づいて、スキャンA12により収集された投影データセットB12及び投影データセットB13のうち、投影データセットB12のみを補正するものとして説明した。しかしながら実施形態はこれに限定されるものではなく、処理機能144bは、投影データセットB11に基づいて、投影データセットB13の補正を行なってもよい。
【0100】
例えば、処理機能144bは、まず、投影データセットB11に基づいて画像データC11を生成し、X線吸収係数に応じて画像データC11をセグメンテーションする。次に、処理機能144bは、セグメンテーションした画像データC11をエネルギーE13に応じて順投影することで、投影データセットB15を生成する。なお、投影データセットB15は、第5の投影データセットの一例である。
【0101】
次に、処理機能144bは、投影データセットB13と投影データセットB15とに基づいて、エネルギーE13に対応する投影データセットB17を生成する。即ち、処理機能144bは、投影データセットB15に基づいて投影データセットB13を補正することで、投影データセットB17を生成する。例えば、処理機能144bは、学習済みモデルM1に対して投影データセットB13と投影データセットB15とを入力することにより、投影データセットB17を生成する。なお、投影データセットB17は、第7の投影データセット及び第4の被検体データセットの一例である。そして、処理機能144bは、エネルギーE12に対応する投影データセットB12と、エネルギーE13に対応する投影データセットB17とに基づいて、物質弁別を行なう。
【0102】
高エネルギー側のデータである投影データセットB13は一般に高品質であるものの、被検体P1の体格が大きいときには、投影データセットB13にもノイズが含まれる場合がある。また、X線管111において生じる放電現象、被検体P1の体動といった種々の要因により、投影データセットB13にアーチファクトが生じる場合もある。これに対し、処理機能144bは、スキャンA11により収集された投影データセットB11に基づいて、投影データセットB13の補正を行なうことができる。
【0103】
或いは、処理機能144bは、スキャンA11により収集された投影データセットB11に基づいて、投影データセットB12及び投影データセットB13の両方を補正することもできる。
【0104】
例えば、処理機能144bは、まず、投影データセットB11に基づいて画像データC11を生成し、X線吸収係数に応じて画像データC11をセグメンテーションする。次に、処理機能144bは、セグメンテーションした画像データC11をエネルギーE12に応じて順投影することで、投影データセットB14を生成する。また、処理機能144bは、セグメンテーションした画像データC11をエネルギーE13に応じて順投影することで、投影データセットB15を生成する。
【0105】
次に、処理機能144bは、投影データセットB12と投影データセットB14とに基づいて、エネルギーE12に対応する投影データセットB16を生成する。例えば、処理機能144bは、学習済みモデルM1に投影データセットB12と投影データセットB14とを入力することにより、投影データセットB16を生成する。また、処理機能144bは、投影データセットB13と投影データセットB15とに基づいて、エネルギーE13に対応する投影データセットB17を生成する。例えば、処理機能144bは、学習済みモデルM1に投影データセットB13と投影データセットB15とを入力することにより、投影データセットB17を生成する。そして、処理機能144bは、エネルギーE12に対応する投影データセットB16と、エネルギーE13に対応する投影データセットB17とに基づいて、物質弁別を行なう。
【0106】
また、上述した実施形態では、再構成、セグメンテーション及び順投影の処理により、投影データセットB11から投影データセットB14及び投影データセットB15を生成するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0107】
例えば、処理機能144bは、スケーリング処理により、投影データセットB11から投影データセットB14及び投影データセットB15を生成することもできる。ここで、スケーリング処理は、X線のエネルギーに応じてX線の透過量が変化することに基づいて、異なるエネルギーのデータを生成する処理である。例えば、処理機能144bは、エネルギーE11とエネルギーE12との差に応じた係数を投影データセットB11に乗じることで、投影データセットB11におけるX線の透過量を、X線のエネルギーがエネルギーE12である場合のX線の透過量に近似させ、エネルギーE12に対応する投影データセットB14を生成する。また、例えば、処理機能144bは、エネルギーE11とエネルギーE13との差に応じた係数を投影データセットB11に乗じることで、投影データセットB11におけるX線の透過量を、X線のエネルギーがエネルギーE13である場合のX線の透過量に近似させ、エネルギーE13に対応する投影データセットB15を生成する。
【0108】
また、上述した実施形態では、スキャンA12のスキャン範囲である範囲R2をユーザが設定するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、制御機能144cは、画像データC11、又は画像データC11に基づいて生成した参照画像を解析し、診断対象の臓器等を抽出することで、範囲R2を自動設定してもよい。
【0109】
また、上述した実施形態では、スキャンA11が、スキャンA12のスキャン範囲である範囲R2を設定するための位置決めスキャンであるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、スキャンA11は、スキャンA12とは異なる日に実行されたスキャンであってもよい。また、スキャンA11は、スキャンA12よりも後に実行されるスキャンであってもよい。
【0110】
また、上述した実施形態では、kVスイッチング方式のスキャンA12を実行することで、投影データセットB12と投影データセットB13とを収集する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。
【0111】
例えば、スキャン機能144aは、スキャンA12に代えて、積層型検出器方式(デュアルレイヤー方式とも記載する)のスキャンA13を実行してもよい。この場合、X線CTシステム10は、X線検出器112として、積層型検出器を備える。例えば、X線検出器112は、第1の層112aと、第2の層112bとから構成され、X線管111から照射されたX線を分光して検出する。そして、スキャン機能144aは、スキャンA13を実行することにより、第1の層112aの検出結果に基づく投影データセットB12と、第2の層112bの検出結果に基づく投影データセットB13とを収集することができる。
【0112】
また、例えば、スキャン機能144aは、スキャンA12又はスキャンA13に代えて、デュアルソース方式のスキャンA14を実行してもよい。この場合、X線CTシステム10は、X線管111として、X線管1111及びX線管1112を備える。また、X線CTシステム10は、X線検出器112として、X線管1111から照射されたX線を検出するX線検出器1121と、X線管1112から照射されたX線を検出するX線検出器1122とを備える。そして、スキャン機能144aは、スキャンA14を実行することにより、X線検出器1121の検出結果に基づく投影データセットB12と、X線検出器1122の検出結果に基づく投影データセットB13とを収集することができる。
【0113】
また、例えば、スキャン機能144aは、スキャンA12、スキャンA13又はスキャンA14に代えて、スプリット方式のスキャンA15を実行してもよい。この場合、X線CTシステム10は、ウェッジ116として、X線管111から照射されたX線を、エネルギーの異なる複数のX線に分割するフィルタを備える。
【0114】
一例を挙げると、X線CTシステム10は、ウェッジ116として、X線フィルタ116a及びX線フィルタ116bを備える。X線フィルタ116a及びX線フィルタ116bは、材質や厚み等が異なり、同一エネルギーのX線を、エネルギーの異なる複数のX線に分割する。この場合、スキャン機能144aは、X線管111から照射されたX線を、X線フィルタ116aによってエネルギーE12まで減衰させ、X線フィルタ116bによってエネルギーE13まで減衰させて、スキャンA15を実行する。より具体的には、スキャン機能144aは、X線フィルタ116a及びX線フィルタ116bを図1に示したZ軸方向(列方向)に並べた状態において、X線フィルタ116a及びX線フィルタ116bに対してX線管111からX線を照射させる。これにより、スキャン機能144aは、列方向にエネルギーE12のX線とエネルギーE13のX線とを分布させた状態においてスキャンA15を実行し、エネルギーE12に対応する投影データセットB12とエネルギーE13に対応する投影データセットB13とを収集することができる。
【0115】
別の例を挙げると、X線CTシステム10は、ウェッジ116として、X線フィルタ116cのみを備える。例えば、スキャン機能144aは、X線管111からエネルギーE13のX線を照射させるとともに、X線の一部をX線フィルタ116cによってエネルギーE12まで減衰させて、スキャンA15を実行する。より具体的には、スキャン機能144aは、列方向の所定範囲のX線を、X線フィルタ116bによってエネルギーE13からエネルギーE12まで減衰させて、被検体P1に照射させる。なお、X線フィルタ116bによる減衰を受けなかったX線については、エネルギーE13のまま被検体P1に照射される。これにより、スキャン機能144aは、列方向にエネルギーE12のX線とエネルギーE13のX線とを分布させた状態においてスキャンA15を実行し、エネルギーE12に対応する投影データセットB12とエネルギーE13に対応する投影データセットB13とを収集することができる。
【0116】
なお、デュアルレイヤー方式、デュアルソース方式、又はスプリット方式で収集された投影データセットB12及び投影データセットB13はスパースなデータではないため、処理機能144bは、投影データセットB12及び投影データセットB13について補間処理を行なったり、投影データセットB11に基づく投影データセットB14及び投影データセットB15をスパースなデータに加工したりすることを要しない。
【0117】
また、上述した実施形態では、投影データセットB12や投影データセットB13を補正対象として説明した。即ち、上述した実施形態では、投影データ領域で補正を行なう場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、処理機能144bは、画像領域で補正を行なうこととしても構わない。
【0118】
例えば、処理機能144bは、スキャンA11により収集された投影データセットB11に基づいて、エネルギーE11に対応する3次元の画像データC11を再構成する。また、処理機能144bは、スキャンA12により収集された投影データセットB12に基づいて、エネルギーE12に対応する3次元の画像データC12を再構成する。また、処理機能144bは、スキャンA12により収集された投影データセットB13に基づいて、エネルギーE13に対応する3次元の画像データC13を再構成する。ここで、画像データC11は、第1の被検体データセットの一例である。また、画像データC12は、第2の被検体データセットの一例である。また、画像データC13は、第3の被検体データセットの一例である。
【0119】
次に、処理機能144bは、画像データC11に基づいて、画像データC12及び画像データC13の少なくとも一方を補正する。ここで、画像データC11は、画像データC12及び画像データC13と異なるX線エネルギーに対応したものであるとしても、被検体P1におけるX線の減衰や解剖学的構造に関して価値ある情報を有している。従って、処理機能144bは、画像データC11に基づいて、画像データC12や画像データC13といった再構成画像の品質を向上させることができる。そして、処理機能144bは、少なくとも一方が補正された画像データC12及び画像データC13に基づいて、物質弁別の処理を実行する。
【0120】
なお、画像領域で補正を行なう場合、処理機能144bは、上述した投影データセットB14及び投影データセットB15の生成処理を省略することができる。即ち、処理機能144bは、別エネルギーの投影データセットをシミュレーションする処理を省略することができる。
【0121】
また、上述した画像領域での補正処理については、機械学習の手法により実現することも可能である。例えば、処理機能144bは、第1のスキャンに基づく画像データと第2のスキャンに基づく画像データとの入力を受けて第2のスキャンに基づく画像データの補正を行なうように機能付けられた学習済みモデルM2を事前に生成し、メモリ141に記憶させる。また、スキャンA11及びスキャンA12が実行された際、処理機能144bは、メモリ141から読み出した学習済みモデルM2に対して、スキャンA11に基づく画像データC11と、スキャンA12に基づく画像データC12とを入力することにより、画像データC12を補正した画像データC12’を生成する。そして、処理機能144bは、エネルギーE12に対応する画像データC12’と、エネルギーE13に対応する画像データC13とに基づいて、物質弁別の処理を実行する。ここで、画像データC12’は、第4の被検体データセットの一例である。即ち、処理機能144bは、第1の被検体データセットと第2の被検体データセットとに基づき得られる第4の被検体データセットと、第3の被検体データセットとに基づいて、物質弁別の処理を実行する。
【0122】
或いは、処理機能144bは、学習済みモデルM2に対して、スキャンA11に基づく画像データC11と、スキャンA12に基づく画像データC13とを入力することにより、画像データC13を補正した画像データC13’を生成する。そして、処理機能144bは、エネルギーE12に対応する画像データC12と、エネルギーE13に対応する画像データC13’とに基づいて、物質弁別の処理を実行する。ここで、画像データC13’は、第4の被検体データセットの一例である。即ち、処理機能144bは、第1の被検体データセットと第3の被検体データセットとに基づき得られる第4の被検体データセットと、第2の被検体データセットとに基づいて、物質弁別の処理を実行する。
【0123】
或いは、処理機能144bは、学習済みモデルM2を用いて、画像データC12を補正した画像データC12’、及び、画像データC13を補正した画像データC13’の双方を生成する。そして、処理機能144bは、エネルギーE12に対応する画像データC12’と、エネルギーE13に対応する画像データC13’とに基づいて、物質弁別の処理を実行する。即ち、処理機能144bは、第1の被検体データセットと第2の被検体データセットとに基づき得られる第4の被検体データセットと、第1の被検体データセットと第3の被検体データセットとに基づき得られる第4の被検体データセットとに基づいて、物質弁別の処理を実行する。
【0124】
なお、学習済みモデルM2は学習済みモデルM1と同様に構成することができる。例えば、学習済みモデルM2は、ニューラルネットワークにより構成することができる。一例を挙げると、処理機能144bは、多層のニューラルネットワークについて深層学習(ディープラーニング)を実行することで、学習済みモデルM2を生成する。ここで、ニューラルネットワークの種別については特に限定されるものではなく、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)であってもよいし、全結合ニューラルネットワークや再帰型ニューラルネットワーク(Recurrent Neural Network:RNN)等の他種のニューラルネットワークであってもよい。或いは、処理機能144bは、ニューラルネットワーク以外の機械学習手法により、学習済みモデルM2を生成してもよい。また、処理機能144bは、学習済みモデルM2の生成処理を行わず、他の装置において生成された学習済みモデルM2を取得して使用することとしても構わない。
【0125】
また、これまで、第2のスキャンにおいて、少なくともエネルギーE12に対応する投影データセットB12、及びエネルギーE13に対応する投影データセットB13を収集するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、スキャン機能144aは、第2のスキャンにおいて、投影データセットB12及び投影データセットB13のいずれか一方のみを収集してもよい。この場合、処理機能144bは、投影データセットB11に基づいて、投影データセットB12及び投影データセットB13のいずれか一方の補正を行なうとともに、補正後の投影データセットに基づいて質の高いCT画像データを再構成することができる。或いは、処理機能144bは、投影データセットB11から再構成した画像データC11に基づいて、投影データセットB12から再構成した画像データC12及び投影データセットB13から再構成した画像データC13のいずれか一方を補正し、品質を向上させることができる。
【0126】
また、これまで、物質弁別をX線CTシステム10が実行するものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、物質弁別は、X線CTシステム10と異なる他の装置において実行されても構わない。以下、この点について、図6に示す医用情報処理システム1を例として説明する。図6は、第2の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。医用情報処理システム1には、X線CTシステム10、及び、物質弁別を実行する医用処理装置20が含まれる。
【0127】
図6に示すように、X線CTシステム10と医用処理装置20とは、ネットワークNWを介して相互に接続される。ここで、ネットワークNWを介して接続可能であれば、X線CTシステム10及び医用処理装置20が設置される場所は任意である。例えば、医用処理装置20は、X線CTシステム10と異なる病院に設置されてもよい。即ち、ネットワークNWは、院内で閉じたローカルネットワークにより構成されてもよいし、インターネットを介したネットワークでもよい。また、図6においてはX線CTシステム10を1つ示すが、医用情報処理システム1は複数のX線CTシステム10を含んでもよい。
【0128】
医用処理装置20は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。例えば、医用処理装置20は、図6に示すように、メモリ21と、ディスプレイ22と、入力インターフェース23と、処理回路24とを有する。
【0129】
メモリ21は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ21は、X線CTシステム10から送信された各種のデータを記憶する。また、例えば、メモリ21は、医用処理装置20に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ21は、医用処理装置20とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0130】
ディスプレイ22は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ22は、処理回路24による物質弁別の結果を示す画像を表示したり、ユーザからの各種操作を受け付けるためのGUI等を表示したりする。例えば、ディスプレイ22は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。ディスプレイ22は、デスクトップ型でもよいし、医用処理装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0131】
入力インターフェース23は、ユーザからの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路24に出力する。例えば、入力インターフェース23は、CT画像データを再構成する際の再構成条件や、CT画像データから表示用のCT画像を生成する際の画像処理条件等をユーザから受け付ける。例えば、入力インターフェース23は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行なうタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース23は、医用処理装置20本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース23は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用処理装置20とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路24へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース23の例に含まれる。
【0132】
処理回路24は、処理機能24a及び制御機能24bを実行することで、医用処理装置20全体の動作を制御する。なお、処理機能24aは、処理部の一例である。処理回路24による処理については後述する。
【0133】
図6に示す医用処理装置20においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ21へ記憶されている。処理回路24は、メモリ21からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、プログラムを読み出した状態の処理回路24は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0134】
なお、図6においては単一の処理回路24にて、処理機能24a及び制御機能24bが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路24を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路24が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0135】
また、処理回路24は、ネットワークNWを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路24は、メモリ21から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用処理装置20とネットワークNWを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、図6に示す各機能を実現する。
【0136】
例えば、まず、X線CTシステム10におけるスキャン機能144aは、被検体P1の体軸方向に沿った範囲R1にX線を照射してスキャンA11を実行し、エネルギーE11に対応する投影データセットB11を収集する。また、スキャン機能144aは、被検体P1の体軸方向に沿った範囲R2にX線を照射してスキャンA12を実行し、エネルギーE12に対応する投影データセットB12、及びエネルギーE13に対応する投影データセットB13を収集する。なお、スキャン機能144aは、kVスイッチング方式のスキャンA12に代えて、デュアルレイヤー方式のスキャンA13、デュアルソース方式のスキャンA14、又はスプリット方式のスキャンA15を実行してもよい。また、制御機能144cは、投影データセットB11、投影データセットB12及び投影データセットB13を、ネットワークNWを介して、医用処理装置20に送信する。
【0137】
次に、医用処理装置20における処理機能24aは、投影データセットB11に基づいて、エネルギーE12に対応する投影データセットB14及びエネルギーE13に対応する投影データセットB15の少なくとも一方を生成する。また、処理機能24aは、投影データセットB14及び投影データセットB15の少なくとも一方と、投影データセットB12及び投影データセットB13とに基づいて、物質弁別を行なう。
【0138】
例えば、処理機能24aは、投影データセットB12及び投影データセットB14に基づいて、エネルギーE12に対応する投影データセットB16を生成し、投影データセットB16及び投影データセットB13に基づいて物質弁別を行なう。また、例えば、処理機能24aは、投影データセットB13及び投影データセットB15に基づいて、エネルギーE13に対応する投影データセットB17を生成し、投影データセットB12及び投影データセットB17に基づいて物質弁別を行なう。また、例えば、処理機能24aは、投影データセットB12及び投影データセットB14に基づいて投影データセットB16を生成し、投影データセットB13及び投影データセットB15に基づいて投影データセットB17を生成し、投影データセットB16及び投影データセットB17に基づいて物質弁別を行なう。
【0139】
また、制御機能24bは、処理機能24aによる物質弁別の結果を示す画像をディスプレイ22に表示させる。或いは、制御機能24bは、物質弁別の結果を示す画像をX線CTシステム10に送信する。この場合、X線CTシステム10における制御機能144cは、物質弁別の結果を示す画像をディスプレイ142に表示させる。
【0140】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ141又はメモリ21に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0141】
なお、図1においては、単一のメモリ141が処理回路144の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。また、図6においては、単一のメモリ21が処理回路24の各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、複数のメモリ141を分散して配置し、処理回路144は、個別のメモリ141から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。同様に、複数のメモリ21を分散して配置し、処理回路24は、個別のメモリ21から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ141又はメモリ21にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0142】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現されうる。
【0143】
また、上述した実施形態で説明した処理方法は、予め用意された処理プログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。この処理プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、この処理プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な非一過性の記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0144】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、物質弁別の精度を向上させることができる。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0146】
1 医用情報処理システム
10 X線CTシステム
140 コンソール装置
144 処理回路
144a スキャン機能
144b 処理機能
144c 制御機能
20 医用処理装置
24 処理回路
24a 処理機能
24b 制御機能
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6