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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20240408BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20240408BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
F21S2/00 431
F21S2/00 433
F21S2/00 435
G02B5/02 C
G02B6/00 331
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020116282
(22)【出願日】2020-07-06
(65)【公開番号】P2022014113
(43)【公開日】2022-01-19
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 延幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真文
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-026543(JP,A)
【文献】特開2001-093316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0084518(US,A1)
【文献】特開2013-229286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 8/00
G02B 5/02
G02B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面に複数の第1凸部と、前記第1主面と反対側の第2主面に複数の第2凸部と、を有する導光板と、
前記導光板の側面に隣接して配置された、複数の光源素子と、
前記第1主面に対向する第3主面、及び前記第3主面と反対側の第4主面とを有する、プリズムシートと、
前記プリズムシートの第4主面と対向する第5主面、及び前記第5主面と反対側の第6主面とを有する、レンチキュラーレンズと、
を備え、
前記導光板の前記複数の第1凸部は、第1方向に沿って配列され、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延伸し、
前記導光板の前記複数の第2凸部は、前記第1方向に沿って延伸し、前記第2方向に沿って配列し、
前記プリズムシートは、前記第1方向に沿って延伸し、前記第2方向に配列される、複数の第3凸部を備え、
前記レンチキュラーレンズは、前記第1方向に沿って配列され、前記第2方向に沿って延伸する、複数の第4凸部を備え、
前記光源素子の出光面は前記第2方向に向かって配置され、
前記複数の第4凸部の断面形状は、弧を有しており、前記弧の曲率半径は24.7μm以上33.4μm以下である、発光装置。
【請求項2】
前記プリズムシートの前記複数の第3凸部のそれぞれは、前記第2方向に沿った断面形状が、頂角が底辺の下方に位置する二等辺三角形である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記導光板の前記第2主面に対向して配置される、反射シートをさらに有する、請求項1又は請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記導光板の側面は、第1側面及び第2側面を含み、
前記複数の光源素子は、前記導光板の第1側面に隣接して配置された複数の第1光源素子と、前記導光板の第2側面に隣接して配置された複数の第2光源素子と、を含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
面状発光が可能な発光装置が開発されている。
【0003】
導光板の側面に光源を配置し、側面に対して角度をもって配置された主面から光を出射する発光装置は面光源として用いられている。例えば、このような発光装置は液晶表示装置のバックライトに用いられる。
【0004】
液晶表示装置のバックライト用発光装置は、表示装置の視角による輝度変化を抑制するために光の出射角を広くする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-045778号公報
【文献】特開2012-069409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本実施形態は、コリメート光を照射可能な発光装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る発光装置は、第1主面に複数の第1凸部と、前記第1主面と反対側の第2主面に複数の第2凸部と、を有する導光板と、前記導光板の側面に隣接して配置された、複数の光源素子と、前記第1主面に対向する第3主面、及び前記第3主面と反対側の第4主面とを有する、プリズムシートと、前記プリズムシートの第4主面と対向する第5主面、及び前記第5主面と反対側の第6主面とを有する、レンチキュラーレンズと、を備え、前記導光板の前記複数の第1凸部は、第1方向に沿って配列され、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延伸し、前記導光板の前記複数の第2凸部は、前記第1方向に沿って延伸し、前記第2方向に沿って配列し、前記プリズムシートは、前記第3主面に、前記第1方向に沿って延伸し、前記第2方向に配列される、複数の第3凸部を備え、前記レンチキュラーレンズは、前記第6主面に、前記第1方向に沿って配列され、前記第2方向に沿って延伸する、複数の第4凸部を備える。
【0008】
また一実施形態に係る発光装置は、第1主面に複数の第1凸部と、前記第1主面と反対側の第2主面に複数の第2凸部と、を有する導光板と、前記導光板の側面に隣接して配置された、複数の光源素子と、前記第1主面に対向する第3主面、及び前記第3主面と反対側の第4主面とを有する、プリズムシートと、前記プリズムシートの第4主面と対向する第5主面、及び前記第5主面と反対側の第6主面とを有する、レンチキュラーレンズと、を備え、前記導光板の前記複数の第1凸部は、第1方向に沿って配列され、前記第1方向と交差する第2方向に沿って延伸し、前記導光板の前記複数の第2凸部は、前記第1方向に沿って延伸し、前記第2方向に沿って配列し、前記プリズムシートは、前記第1方向に沿って延伸し、前記第2方向に配列される、複数の第3凸部を備え、前記レンチキュラーレンズは、前記第1方向に沿って配列され、前記第2方向に沿って延伸する、複数の第4凸部を備え、前記光源素子の出光面は前記第2方向に向かって配置され、前記複数の第4凸部の断面形状は、曲率35.21±15%の弧を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る表示装置の構成を示す分解斜視図である。
図2図2は、実施形態の発光装置ILDの断面図である。
図3図3は、出射光の配光角を説明する図である。
図4図4は、レンチキュラーレンズと配光角を説明する図である。
図5図5は、配光角分布特性を示す図である。
図6図6は、配光角分布特性を示す図である。
図7図7は、配光角分布特性を示す図である。
図8図8は、配光角分布特性を示す図である。
図9図9は、基準の曲率からの差分を示す図である。
図10図10は、照明装置の一構成例を示す図である。
図11図11は、集光装置の概略断面図である。
図12図12は、集光装置の電極の形状を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の各実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
以下、図面を参照しながら一実施形態に係る発光装置について詳細に説明する。
【0011】
本実施形態においては、第1方向X、第2方向Y、及び、第3方向Zは、互いに直交しているが、90度以外の角度で交差していてもよい。第3方向Zの矢印の先端に向かう方向を上又は上方と定義し、第3方向Zの矢印の先端に向かう方向とは反対側の方向を下又は下方と定義する。
【0012】
また、「第1部材の上方の第2部材」及び「第1部材の下方の第2部材」とした場合、第2部材は、第1部材に接していてもよく、又は第1部材から離れて位置していてもよい。後者の場合、第1部材と第2部材との間に、第3の部材が介在していてもよい。一方、「第1部材の上の第2部材」及び「第1部材の下の第2部材」とした場合、第2部材は第1部材に接している。
【0013】
また、第3方向Zの矢印の先端側に表示装置DSPを観察する観察位置があるものとし、この観察位置から、第1方向X及び第2方向Yで規定されるX-Y平面に向かって見ることを平面視という。第1方向X及び第3方向Zによって規定されるX-Z平面、あるいは第2方向Y及び第3方向Zによって規定されるY-Z平面における発光装置の断面を見ることを断面視という。
【0014】
図1は、実施形態に係る表示装置の構成を示す分解斜視図である。図1に示す発光装置ILDは、第3方向Zに沿って、反射シートREF、導光板LG、プリズムシートPRM、レンチキュラーレンズLLSを備えている。また発光装置ILDは、導光板LGの側面LG1s及びLG2sにそれぞれ隣接して配置された光源素子LS1(第1光源素子LS1ともいう)及び光源素子LS2(第2光源素子LS2ともいう)を備える。導光板LGの側面LG1s及びLG2sは、対向して配置されている。よって光源素子LS1及びLS2も対向して配置されている。なお本実施形態では、光源素子LS1及びLS2を区別しない場合は、単に光源素子LSと呼ぶ。
【0015】
導光板LGは、プリズムシートPRMに対向する主面LGa(第1主面LGaともいう)、及び反射シートREFと対向する主面LGb(第2主面LGbともいう)を有している。主面LGaは、主面LGbより上方に位置しており、導光板LGの出光面である。また主面LGbは、主面LGaと対向し、反対側に設けられている。主面LGa及び主面LGbには、後述する三角形柱形状の凸部が設けられている。
【0016】
導光板LGは、主面LGaに、複数の三角柱形状の凸部TRVa(第1凸部TRVaともいう)が設けられている。凸部TRVaはそれぞれ、第2方向Yに沿って延伸している。複数の凸部TRVaは、第2方向Yに交差する第1方向Xに沿って配列している。1つの凸部TRVaの第1方向Xに沿った断面形状は、例えば、二等辺三角形であり、第2方向Yに沿った断面形状は、長方形である。さらに具体的には、該二等辺三角形の頂点は、底辺より上方に位置している。
【0017】
また、導光板LGは、主面LGbに、複数の三角柱形状の凸部TRVb(第2凸部TRVbともいう)が設けられている。凸部TRVbはそれぞれ、第1方向Xに沿って延伸している。複数の凸部TRVbは、第2方向Yに沿って配列している。1つの凸部TRVbの第2方向Yに沿った断面形状は、例えば二等辺三角形であり、第1方向Xに沿った断面は、長方形である。さらに具体的は、該二等辺三角形の頂点は、底辺より下方に位置している。
なお凸部TRVaが延伸する方向(第2方向Y)と、凸部TRVbが延伸する方向(第1方向X)は、90°以外で交差しているが、直交していることがより好ましい。
【0018】
導光板LGは、例えば透光性を有する樹脂材料により形成されている。凸部TRVa及びTRVbは、例えば透光性を有する樹脂材料により導光板LGと一体成型されている。よって上記を換言すると、導光板LGの主面LGaは、複数の凸部TRVaを含むプリズム形状を有しており、導光板LGの主面LGbは、複数の凸部TRVbaを含むプリズム形状を有していると言える。
【0019】
導光板LGの上方には、導光板LGと対向して、プリズムシートPRMが設けられている。プリズムシートPRMは、導光板LGと対向する主面PRMb(第3主面PRMbともいう)、及び主面PRMbと反対側の主面PRMa(第4主面PRMaともいう)を有している。第4主面PRMaは、第3主面PRMbの上方に位置している。
主面PRMbには、第1方向Xに沿って延伸し、第2方向Yに沿って配列する、複数の三角柱形状の凸部TRVp(第3凸部TRVpともいう)が設けられている。1つの凸部TRVpの第2方向Yに沿った断面形状は、二等辺三角形であり、第1方向Xに沿った断面は、長方形である。さらに具体的は、該二等辺三角形の頂点は、底辺より下方に位置している。プリズムシートPRMは、いわゆる逆プリズムシートである。
【0020】
プリズムシートPRM上には、レンチキュラーレンズLLSが設けられている。レンチキュラーレンズLLSは、プリズムシートPRMと対向する主面LLSb(第5主面LLSbともいう)、及び主面LLSbと反対側の主面LLSa(第6主面LLSa)を有している。第6主面LLSaは、第5主面LLSbより上方に位置している。
主面LLSaには、例えば複数の半円柱形状の凸部CVX(第4凸部CVXともいう)が設けられている。凸部CVXはそれぞれ、第2方向Yに沿って延伸している。レンチキュラーレンズLLSの凸部CVXが延伸する方向は、導光板LGの凸部TRVaが延伸する方向、及び光源素子LSからの光が導光板LGに入射する方向と同じ第2方向Yである。
また複数の凸部CVXは、第2方向Yに交差する第1方向Xに沿って配列している。
【0021】
レンチキュラーレンズLLSにおいて、1つの凸部CVXの第1方向Xに沿った断面形状、すなわちX-Z平面における断面形状は、例えば、上に向かって突出した半円形状であり、第2方向Yに沿った断面形状、すなわちY-Z平面における断面形状は、長方形である。なお凸部CVXの断面形状は、半円に限らず、円の一部(弧)であればよい。凸部CVXのX-Z平面における断面形状である円の一部、例えば半円が含まれる円の半径を、半径Rとすると、当該凸部CVXの曲率CRはRの逆数である。
【0022】
図1に示す反射シートREFは、導光板LGの主面LGbから漏出した光を反射し、導光板LG内に戻す機能を有する。これにより光取り出し効率を向上させることができる。反射シートREFは、例えば導光板LGと対向する面が鏡面となっており、金属、例えば銀を蒸着したシートにより形成されている。ただし反射シートREFは、金属を蒸着したシートに限定されず、例えば金属薄膜を複数積層したシート、又は光学吸収体から形成されるシート、例えば黒色シート等であってもよい。
【0023】
光源素子LS1から出射された光は、第2方向Yに沿って、導光板LGの側面LG1s(第1側面LG1sともいう)から導光板LGに入射する。光源素子LS2から出射された光は、第2方向Yの逆方向に沿って、導光板LGの側面LG2s(第2側面LG2sともいう)から導光板LGに入射する。導光板LGの側面LG1sは光源素子LS1の入光面であり、側面G2sは光源素子LS1の入光面である。光源素子LS1の面のうち、導光板LGの側面LG1sに第2方向Yに向かって対向する面は、光源素子LS1の出光面である。また光源素子LS2の面のうち、導光板LGの側面LG2sに第2方向Yに向かって対向する面は、光源素子LS2の出光面である。なお側面LG1s(第1側面LG1s)及び側面LG2s(第2側面LG2s)を区別しない場合は、単に側面という。
【0024】
導光板LGに入射した光は、導光板LG内部を伝播し、かつ上方に出射される。このとき導光板LGから出射された光は、複数の傾斜角を有してプリズムシートPRMに入射する。プリズムシートPRMに入射した光は、プリズムシートPRMにより第3方向Zに平行な方向に出射される。以上のようにして、発光装置ILDは、第3方向Zに平行な光が揃ったコリメート光を出射することが可能である。
【0025】
プリズムシートPRMから出射される光は、上述したように第3方向Zにほぼ平行な光であるが、それでも第3方向Zと傾斜角をなす光が含まれている。しかしながら、本実施形態の発光装置ILDでは、プリズムシートPRM上にさらにレンチキュラーレンズLLSを設ける。これによりさらに狭配光角化を実現可能である。
【0026】
図2は、実施形態の発光装置ILDの断面図である。図2(A)は、発光装置ILDのX-Z平面における断面図であり、図2(B)は、発光装置ILDのY-Z平面における断面図である。図2(A)及び(B)に示すように、光源素子LS1及びLS2には、それぞれ配線基板PC1及びPC2が接続されている。光源素子LS1及びLS2は、配線基板PC1及びPC2を介して外部から入力される信号に基づいて駆動される。
なお図2(A)及び(B)において、図1と重複する説明はこれを援用し、詳細は省略する。
【0027】
上述したように、本実施形態ではレンチキュラーレンズLLSを発光装置ILDの最上部に設けている。レンチキュラーレンズLLSを介して上方に出射される出射光において、第3方向Zとなす角度を配光角φとすると、理想的なコリメート光は、配光角φ=0である。つまり発光装置ILDとして、出射光の配光角φが0に近ければ近いほど、コリメート光を出射する発光装置として好適である。本実施形態では、レンチキュラーレンズLLSによる狭配光化の効果、すなわち、レンチキュラーレンズLLSが、発光装置ILDが出射する光の配光角φをどの程度小さくすることが可能であるかについて、以下に詳述する。
【0028】
図3は、出射光の配光角を説明する図である。図3(A)は、第1方向X、第2方向Y、第3方向Zに対する出射光Lの配光角φを説明する図である。図3(B)は、配光角φv及びφhを説明する図である。図3(A)に示すように、光源素子LSから光が入射する入射方向と平行な方向(Horizontal)である第2方向Y、及び、入射方向と垂直な方向(Vertical)である第1方向Xにおいて、導光板LG上の空間に半立体球を仮定する。図3(A)及び図3(B)において、発光装置ILDから出射する出射光Lが、X-Z平面において第3方向Zとなす角を配光角φvとする。同様に、出射光Lが、Y-Z平面において第3方向Zとなす角を配光角φhとする。配光角φvは、-90°以上90°以下(-90°≦φv≦90°)、配光角φhは、-90°以上90°以下(-90°≦φh≦90°)の範囲を有する。上述のように理想的なコリメート光では、φv=φh=0°であるが、実際の出射光Lにおいては、配光角φの分布が存在する。配光角φの分布については、後に詳述する。
【0029】
図2(A)及び(B)に戻って、配光角φv及び配光角φhの許容される限界値を、それぞれ配光角φv_lmt及び配光角φh_lmtとする。レンチキュラーレンズLLSを設けることにより、配光角φv_lmtをより小さくすることが可能である。その理由について述べる。
【0030】
図4は、レンチキュラーレンズと配光角を説明する図である。図4においては、説明を分かりやすくするために、発光装置ILDのうち、レンチキュラーレンズLLS及びプリズムシートPRMのみを示し、他の構成要素は省略している。図4(A)は、レンチキュラーレンズLLSが設けられた場合の配光角を説明する図である。図4(B)は、レンチキュラーレンズが設けられない場合の配向角を説明する図である。より詳細には、図4(A)は、発光装置ILDのうち、プリズムシートPRM及びレンチキュラーレンズLLSのX-Z断面を示す図である。図4(B)は、プリズムシートPRMのみのX-Z断面を示す図である。
【0031】
なお図4(C)は、図4(A)のレンチキュラーレンズLLSの部分的拡大図である。上述したように、レンチキュラーレンズLLSの凸部CVXの断面形状は、半円に限らず、円の一部(弧)であればよい。図4(C)に示すように、凸部CVXのX-Z断面(入射方向と垂直な平面の断面)は、半径Rを有する円の一部(弧)、例えば半円である。当該半径Rの逆数がレンチキュラーレンズLLSの曲率CRである。
【0032】
図4(A)及び(B)において、プリズムシートPRMから出射される光において、プリズムシートPRMのX-Z平面における配光角を配光角φa1及びφb1とする。配光角φa1及びφb1は、第3方向Zに対して対称であり、φa1=-φb1の関係が成り立つ。なお配光角φa1、φb1、後述する配光角φa2、φb2は、上述の配光角φvの取り得る角度に相当する。
【0033】
図4(A)において、プリズムシートPRMから出射される光は、レンチキュラーレンズLLSにより屈折し、配光角φa1及びφb1とは異なる角度で出射する。レンチキュラーレンズLLSに配光角φa1で入射した光は、レンチキュラーレンズLLSを通り、配光角φa2で出射する。レンチキュラーレンズLLSに配光角φb1で入射した光は、レンチキュラーレンズLLSを通り、配光角φb2で出射する。配光角φa2及び配光角φb2は、レンチキュラーレンズLLSからの出射光において、レンチキュラーレンズLLSのX-Z平面における配光角である。配光角φa2及びφb2は、第3方向Zに対して対称であり、φa2=-φb2の関係が成り立つ。
【0034】
本実施形態に示す発光装置ILDでは、配光角φa1の絶対値が配光角φa2の絶対値より大きく、かつ配光角φb1の絶対値が配光角φb2の絶対値より大きくなる(|φa1|>|φa2|、及び|φb1|>|φb2|)ように、レンチキュラーレンズLLSを設ける。このようなレンチキュラーレンズLLSをプリズムシートPRM上に設けることにより、プリズムシートPRM単体から光が出射する場合(図4(B)参照)に比べて、発光装置ILDは配光角がより小さいコリメート光を出射することが可能である。
【0035】
このようなレンチキュラーレンズLLSとして、凸部CVXの曲率CRが35.21を中央値として±15%内であることが好適である。ここで凸部CVXの曲率CRとは、凸部CVXのX-Z平面での断面形状の曲率を指す。以下に凸部CVXの曲率CRが35.21±15%内である理由について述べる。
【0036】
図5図6図7、及び図8は、配光角分布特性を示す図である。図5は凸部CVXの曲率CRが35.21、半径Rが28.4μmのときの配光角分布特性である。図6は曲率CRが29.94、半径Rが33.4μmのときの配光角分布特性である。図7は曲率CRが26.04、半径Rが38.4μmのときの配光角分布特性である。図8は曲率CRが54.34、半径Rが18.4μmのときの配光角分布特性である。図9は、基準の曲率からの差分を示す図である。より詳細には、図9は、図5から図8までに示す曲率、及び曲率CR35.21(図5参照)を基準としたときの差分(%)を示している。
【0037】
図5(A)は、図3で述べた発光装置ILDの出射光Lの配光角φv及びφhに対する、等輝度曲線である。図5(A)において、横軸は配光角φh、縦軸は配光角φvを示しており、図中同一線は等輝度の部分を示している。図5(B)は、図5(A)に基づいた、配光角φv及びφh、並びに輝度の関係を示すグラフである。図5(B)において、横軸は配光角φv及びφh、縦軸は配光角φv及びφhの輝度を規格化した規格化輝度である。図5(B)において、配光角φvは実線、配光角φhは点線で表している。なお図6から図8においても、曲率CRは異なるが、縦軸や横軸等は図5と同様である。
【0038】
図5(A)及び(B)に示すように、曲率CRが35.21の場合は、規格化輝度0.7で配光角φvの取り得る範囲は0°±5°、すなわち-5°以上5°以下(-5°≦φv≦5°)となる。このような配光角φvを持つ出射光は、コリメート光として好適な範囲の光である。よって本実施形態の発光装置ILDでは、当該範囲の出射角φvの出射光を多く含んでいることが好ましい。
【0039】
ここで本実施形態におけるノイズについて説明する。本実施形態においてノイズとは、X-Y平面に対して浅い角度で出射する光の光量とする。例えば、図7(B)(CR=26.04)において、出射角φv及びφhの両方において、30°以上90°以下、並びに、-90°以上-30°の領域に、出射光があることが分かる。このように浅い角度(Z軸を0°としたときに30°から90°の範囲、又は-30°から-90°の範囲)で出射する光(ノイズ)が多いということは、横に広がる出射光が多いということである。コリメート光を照射する発光装置ILDは、ノイズの割合が少ないことが好ましい。
【0040】
図5(B)に戻り、曲率CRが35.21の場合のノイズについて述べる。図5(B)では、30°以上90°以下、並びに、-90°以上-30°範囲の光の輝度は低い。すなわち、曲率CRが35.21の場合では、ノイズが小さいということである。よって曲率CR35.21のレンチキュラーレンズLLSを用いることにより、配光角φをより小さくできることは明らかである。
【0041】
図6(A)及び(B)に示すように、曲率CRが29.94の場合は、配光角φvの取り得る範囲は、0°±6°、すなわち-6°以上6°以下(-6°≦φv≦6°)となる。図6(A)及び(B)についても図5と同様、このような配光角φvを持つ出射光は、コリメート光として好適な範囲の光である。
また図6(B)では、図5(B)と同様に、30°以上90°以下、並びに、-90°以上-30°範囲の光の輝度は低い。すなわち、曲率CRが29.94の場合でも、ノイズが小さく、配光角φは十分小さいことが分かる。
【0042】
一方図7(A)及び(B)に示す、曲率CR26.04の場合、配光角φvの取り得る範囲は、0°±8°、すなわち-8°以上8°以下(-8°≦φv≦8°)となる。この場合は、配光角φvが十分小さいと言えず、レンチキュラーレンズLLSが十分に効果を奏さない。
また図7(B)では、30°以上90°以下、並びに、-90°以上-30°範囲の光の輝度が高い。すなわち、曲率CRが26.04では、ノイズが多いことが分かる。上述したように、ノイズが多いということは、横に広がる出射光が多いということである。よって曲率CRが26.04のレンチキュラーレンズLLSを有する発光装置は、コリメート光を出射するのには適していない。
【0043】
図8(A)及び(B)に示す、曲率CR54.34の場合、配光角φvの取り得る範囲は、0°±10°、すなわち-10°以上10°以下(-10°≦φv≦10°)となる。この場合は、配光角φvが十分小さいと言えない。
さらに、図8(A)に示す配光角φvは、0°が最大値ではなく、0°付近で2つのピーク(極大値)が見られる。よって曲率CR54.34の場合では、レンチキュラーレンズLLSが十分に効果を奏していない。
【0044】
また図8(B)では、30°以上90°以下、並びに、-90°以上-30°範囲の光の輝度が高い。すなわち、曲率CR54.34では、ノイズが多いことが分かる。上述したように、ノイズが多いということは、横に広がる出射光が多いということである。
また図8(B)では、-50°以上30°以下、並びに30°以上50°以下の範囲で、それぞれピークが見られる。つまり図8(B)に示す配光角φvは、合計4つのピークを有している。このようにピークが複数存在する光は、コリメート光としては不適である。
以上から曲率CRが26.04のレンチキュラーレンズLLSを有する発光装置では、出射光がコリメート光ではない恐れがある。
【0045】
図9は、上述したように、曲率CR35.21(図5参照)を基準としたときの差分(%)を示している。曲率CR35.21を基準とすると、曲率CR26.04、29.96、54.34の差分は、それぞれ-26.04、-14.97、+54.33となる。
上述の通り、曲率CR29.96及び35.21を有するレンチキュラーレンズLLSは、本実施形態のレンチキュラーレンズとして好適である。一方、曲率CR26.04及び54.34では、コリメート光を出射できない恐れがある。
よって本実施形態のレンチキュラーレンズLLSの曲率は、曲率35.21を中央値として±15%に範囲内であることが好ましいと言える。当該範囲の曲率を有するレンチキュラーレンズLLSを設けることにより、発光装置ILDはコリメート光を出射可能である。
【0046】
本実施形態の発光装置ILDは、上述したようにコリメート光を出射することが可能である。このような発光装置ILDに集光装置を積層すると、光の照射方向が制御可能な照明装置を得ることができる。以下に本実施形態の照明装置について説明する。
【0047】
図10は、照明装置ILMの一構成例を示す図である。図10に示す照明装置ILMは、上述した発光装置ILD、及び発光装置ILDに第3方向Zで重畳する集光装置LSMを有している。
照明装置ILMは、制御部CTを有している。制御部CTは、制御部ICT及びLCTを有している。制御部ICTは発光装置ILDを制御する制御部であり、制御部LCTは集光装置LSMを制御する制御部である。制御部ICTは、例えば図1に示す光源素子LS1への電流を制御する。制御部LCTについては後述する。
【0048】
図11は、集光装置LSMの概略断面図である。集光装置LSMは、第1基板SUB1と、第2基板SUB2と、複数の液晶分子からなる液晶層LCと、第1制御電極ELE1と、第2制御電極ELE2とを備えている。図示した例では、第1制御電極ELE1は第1基板SUB1に設けられ、第2制御電極ELE2は第2基板SUB2に設けられている。しかし第1制御電極ELE1及び第2制御電極ELE2がいずれも同一基板、つまり第1基板SUB1又は第2基板SUB2に設けられていてもよい。
【0049】
第1基板SUB1は、透光性を有する基材BA1と、第1制御電極ELE1と、配向膜ALA1と、給電線SPLとを備えている。第1制御電極ELE1は、基材BA1と液晶層LCとの間に位置している。複数の第1制御電極ELE1は、第1方向Xに間隔をおいて並んでいる。一例では、第1制御電極ELE1の第1方向Xに沿った幅は、隣り合う第1制御電極ELE1の第1方向Xに沿った間隔と同等以下である。配向膜ALA1は、第1制御電極ELE1を覆い、液晶層LCに接触している。給電線SPLは、有効領域AAの外側の非有効領域NAに位置している。
【0050】
第2基板SUB2は、透光性を有する基材BA2と、第2制御電極ELE2と、配向膜ALA2とを備えている。第2制御電極ELE2は、基材BA2と液晶層LCとの間に位置している。第2制御電極ELE2は、例えば、有効領域AAの略全面に位置するとともに非有効領域NAにも延在した単一の平板電極である。第2制御電極ELE2は、有効領域AAにおいて、液晶層LCを介して第1制御電極ELE1と対向している。第2制御電極ELE2は、非有効領域NAにおいて給電線SPLと対向している。配向膜ALA2は、第2制御電極ELE2を覆い、液晶層LCに接触している。
【0051】
基材BA1及びBA2は、例えばガラス基板または樹脂基板である。第1制御電極ELE1及び第2制御電極ELE2は、インジウム錫酸化物(ITO)やインジウム亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料によって形成されている。配向膜ALA1及びALA2は、例えば、水平配向膜であり、いずれも第1方向Xに沿って配向処理されている。
第1基板SUB1及び第2基板SUB2は、非有効領域NAにおいて、シール材SALによって接着されている。シール材SALは、導通材CDPを備えている。導通材CDPは、給電線SPLと第2制御電極ELE2との間に介在し、給電線SPLと第2制御電極ELE2とを電気的に接続している。
【0052】
液晶層LCは、第1基板SUB1と第2基板SUB2との間に保持されている。液晶層LCは、例えば、正の誘電率異方性を有する液晶材料によって形成されている。第1制御電極ELE1及び第2制御電極ELE2は、液晶層LCに電圧を印加することにより、液晶層LCに含まれる液晶分子LCMの配向方向を変化させる。液晶分子LCMの配向方向が変化することにより、液晶層LCに液晶レンズLNSが形成される。
【0053】
制御部LCTは、液晶層LCに印加する電圧を制御する。制御部LCTは、第1制御電極ELE1及び第2制御電極ELE2にそれぞれ供給する電圧を制御することにより、液晶層LCに含まれる液晶分子LCMの配向方向の変化の度合を制御することができる。また制御部LCTは、第1制御電極ELE1の各々に供給する電圧を制御することにより、液晶レンズLNSの半径、焦点距離、形成位置等を制御することができる。
【0054】
図12は、集光装置LSMの第1制御電極ELE1の形状を示す平面図である。図12に示す第1制御電極ELE1は、多数の円弧電極ELE1a(中心部のみ円形)及び引出電極WLを有している。円弧電極ELE1aはそれぞれ引出電極WLを介して制御部ICTに接続されている。
上述したように、制御部LCTから第1制御電極ELE1に供給する電圧を変化させることにより、液晶レンズLNSの半径、焦点距離、形成位置等を変化させることが可能である。
【0055】
以上本実施形態により、コリメート光を照射可能な発光装置、及び当該発光装置を備える照明装置を得ることが可能である。このような照明装置では、指向性を有する光を照射可能であり、照射方向がより詳細な制御が可能である。
【0056】
本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
CR…曲率、CVX…凸部、DSP…表示装置、ILD…発光装置、ILM…照明装置、L…出射光、LG…導光板、LLS…レンチキュラーレンズ、LNS…液晶レンズ、LS…光源素子、LSM…集光装置、PRM…プリズムシート、TRVa…凸部、TRVb…凸部、TRVba…凸部、TRVp…凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12