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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】カメラスタビライザ
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/56 20210101AFI20240408BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20240408BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G03B17/56 A
G03B5/00 J
H04N5/222 100
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020121203
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022018239
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121706
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128705
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 幸雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147773
【弁理士】
【氏名又は名称】義村 宗洋
(72)【発明者】
【氏名】中谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】大田 有純
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-508109(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0176752(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0101182(KR,A)
【文献】特開2006-085530(JP,A)
【文献】特開2002-369046(JP,A)
【文献】特開2008-059362(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/56
G03B 5/00-5/08
H04N 5/222
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バネ軸受けで支持されたジンバルを有するカメラスタビライザであって、
前記ジンバルを回転させるモータと、
前記ジンバルに取り付けられ、前記ジンバルの角速度を検出するジンバル用ジャイロと、
目標とする前記ジンバルの角速度である目標角速度と前記ジンバル用ジャイロで検出した角速度との差に基づいて前記モータを制御する制御部と、
外乱に起因したデータを含む前記ジンバルの角度を求めるためのデータを取得する検出部と、
を備え、
前記制御部は、前記ジンバル用ジャイロで検出した角速度の積分値と前記検出部で取得したデータに基づいて求めた角度である検出角度との差に基づいて、前記モータの制御を補正する
ことを特徴とするカメラスタビライザ。
【請求項2】
請求項1記載のカメラスタビライザであって、
前記検出部は、前記バネ軸受けが取り付けられている筐体に取り付けられ、前記筐体の角速度を検出する外乱検出用ジャイロを有し、
前記検出角度は、前記外乱検出用ジャイロで検出した角速度の積分値である
ことを特徴とするカメラスタビライザ。
【請求項3】
請求項1記載のカメラスタビライザであって、
前記検出部は、前記モータに生じる逆起電圧を検出し、
前記検出角度は、検出された逆起電圧から求めた角速度の積分値である
ことを特徴とするカメラスタビライザ。
【請求項4】
請求項1記載のカメラスタビライザであって、
前記検出部は、前記ジンバルの角度を検出する角度センサを有し、
前記検出角度は、前記角度センサで検出した角度である
ことを特徴とするカメラスタビライザ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のカメラスタビライザであって、
前記制御部は、前記ジンバル用ジャイロで検出した角速度の積分値と前記検出角度との差にあらかじめ定めたバネ定数を乗算し、あらかじめ定めたトルク定数で除算し、あらかじめ定めたゲインを乗算した値を前記モータへの入力の補正値とする
ことを特徴とするカメラスタビライザ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のカメラスタビライザであって、
2つの回転軸を有する外部ジンバルと、2つの回転軸を有する内部ジンバルを備え、
前記のバネ軸受けで支持されたジンバルは、内部ジンバルである
ことを特徴とするカメラスタビライザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラを安定に保持するためのカメラスタビライザに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されたようなカメラスタビライザが従来技術として知られている。図7に特許文献1の図1を示す。図1のカメラスタビライザでは、ヘリコプタなどのボディに固定されるカバー7aと、カバー7aに対する回転軸(外部アジマス軸部19)を有する外部ジンバルと、外部ジンバルに対して3つの回転軸(ロール軸部31、内部アジマス軸部32、内部エレベーション軸部33)を有する内部ジンバルとを備えている。カメラスタビライザでは、このように複数の軸を外部ジンバルと内部ジンバルに配置することでカメラの視軸を目標とする視軸に安定させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-297324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、カメラスタビライザは、空力などの大きな外乱を受ける。特に、外部ジンバルが受けた外力を内部ジンバルに伝えない工夫が求められる。この工夫として、外部ジンバルの軸受けにはボールベアリングを用い、内部ジンバルの軸受けにはバネ軸受けを用いることがある。しかし、バネ軸受けの場合、バネの反力により防振性能(空間安定性能)が劣化するという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、バネ軸受けで支持されたジンバルを有するカメラスタビライザにおいて、ジンバルの防振性能を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカメラスタビライザは、バネ軸受けで支持されたジンバルを有する。本発明のカメラスタビライザは、ジンバルを回転させるモータと、ジンバル用ジャイロと、制御部と、検出部とを備える。ジンバル用ジャイロは、ジンバルに取り付けられ、ジンバルの角速度を検出する。制御部は、目標とするジンバルの角速度である目標角速度とジンバル用ジャイロで検出した角速度との差に基づいてモータを制御する。検出部は、ジンバルの角度を求めるためのデータを取得する。制御部は、ジンバル用ジャイロで検出した角速度の積分値と検出部で取得したデータに基づいて求めた角度である検出角度との差に基づいて、モータの制御を補正する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のカメラスタビライザによれば、ジンバル用ジャイロで検出した角速度の積分値と検出部で取得したデータに基づいて求めた角度である検出角度との差に基づいて、モータの制御を補正するので、外乱による角度のずれを考慮してモータを制御できる。したがって、ジンバルの防振性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】カメラスタビライザの構成例を示す図。
図2】カメラスタビライザの制御ブロック図。
図3】検出部500が外乱検出用ジャイロ510を有する場合のカメラスタビライザの制御ブロック図。
図4】検出部500が逆起電圧検出手段520を有する場合のカメラスタビライザの制御ブロック図。
図5】検出部500が角度センサ530を有する場合のカメラスタビライザの制御ブロック図。
図6】外乱に対する制御がない場合と外乱に対する制御がある場合の違いをシミュレーションした結果を示す図。
図7】特許文献1の図1を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0009】
<カメラスタビライザ全体の構成>
図1にカメラスタビライザの構成例を示す。カメラスタビライザ100は、ヘリコプタなどのボディに固定されるカバー110と、カバー110に対して2つの回転軸(外部第1軸211,外部第2軸212)を有する外部ジンバル210と、外部ジンバル210に対して2つの回転軸(内部第1軸311,内部第2軸312)を有する内部ジンバル310と、制御部400と、検出部500を備える。例えば、外部第1軸211をアジマス軸、外部第2軸212をエレベーション軸、内部第1軸311をアジマス軸、内部第2軸312をロール軸とするなど、軸の方向は適宜軸を定めればよい。
【0010】
カバー110は、外部第1軸211の軸受けである外部第1軸受け121と、外部第2軸212の軸受けである外部第2軸受け122と、外部第1軸211回りに外部ジンバル210を回転させる外部第1モータ131、外部第2軸212回りに外部ジンバル210を回転させる外部第2モータ132を有する。外部第1軸受け121と外部第2軸受け122は、ボールベアリングである。外部ジンバル210は、内部第1軸311の軸受けである内部第1軸受け221と、内部第2軸312の軸受けである内部第2軸受け222と、内部第1軸311回りに内部ジンバル310を回転させる内部第1モータ231、内部第2軸312回りに内部ジンバル310を回転させる内部第2モータ232、外部ジンバル210の角速度を3軸方向で検出する外部ジャイロ240を有する。内部ジンバル310は、内部ジンバル310の角速度を3軸方向で検出する内部ジャイロ340を有する。カメラ600は、内部ジンバル310内に配置される。
【0011】
制御部400は、目標とする外部ジンバル210の角速度である目標角速度と外部ジャイロ240で検出した角速度との差に基づいて外部第1モータ131と外部第2モータ132を制御する。また、制御部400は、目標とする内部ジンバル310の角速度である目標角速度と内部ジャイロ340で検出した角速度との差に基づいて内部第1モータ231と内部第2モータ232を制御する。検出部500は、内部ジンバル310の角度を求めるためのデータを取得する。検出部500は、外乱検出用ジャイロ510、逆起電圧検出手段520、角度センサ530のいずれかを有する。
【0012】
カメラスタビライザ100の場合、外部第1軸211と外部第2軸212は空力などの大きな外乱を受けるが、内部第1軸311と内部第2軸312は慣性空間に保持しやすい。しかし、外乱は、外部第1軸211と外部第2軸212から、ある程度は内部第1軸311と内部第2軸312に伝達してしまう。そこで、本発明では、内部第1軸受け221と内部第2軸受け222をバネ軸受けとする。バネ軸受けにすることで、内部第1軸311と内部第2軸312に伝達される外乱に起因するトルクを線形にできる。その一方で、バネ軸受けの場合、バネの反力により防振性能(空間安定性能)が劣化する。そこで、後述するように、バネ軸受けで支持された内部ジンバル310の軸ごとに、以下のように制御する。
【0013】
<バネ軸受けで支持されたジンバルの軸ごとの制御>
ここでは、バネ軸受けで支持されたジンバルの1軸の制御について説明する。そこで、以下の説明では、「内部ジンバル310」を「ジンバル310」、「内部ジャイロ340」を「ジンバル用ジャイロ340」、「内部第1モータ231」を「モータ231」と呼び方を変えることで、一般化して説明する。以下の説明は、「内部第2モータ232」についても同様に適用できる。
【0014】
図2に、カメラスタビライザの制御ブロック図を示す。実施例1のカメラスタビライザ100は、ジンバル310を回転させるモータ231と、ジンバル用ジャイロ340と、制御部400と、検出部500とを備える。ジンバル用ジャイロは340、ジンバル310に取り付けられ、ジンバル310の角速度を検出する。制御部400は、目標とするジンバル310の角速度である目標角速度ωcmdとジンバル用ジャイロ340で検出した角速度との差に基づいてモータ231を制御する。検出部500は、ジンバル310の角度を求めるためのデータを取得する。制御部400は、ジンバル用ジャイロ340で検出した角速度の積分値と検出部500で取得したデータに基づいて求めた角度である検出角度との差に基づいて、モータ231の制御を補正する。
【0015】
制御部400は、補償器410を有し、ジンバルの回転軸回りの慣性モーメントJ(kg・m)、モータ231のインダクタンス(H)と抵抗値(Ω)とトルク定数Kt(Nm/A)、逆起電圧定数Ke(V/(rad/sec))、バネ軸受けのバネ定数を記録している。また、図2中の「1/s」は時間積分を意味している。
【0016】
制御部400は、目標とするジンバル310の角速度である目標角速度ωcmd(rad/sec)とジンバル用ジャイロ340で検出した角速度との差を補償器410に入力する。補償器410は制御を安定化させる機能を有する。補償器410については、周知な技術なので説明を省略する。制御部400は、補償器410からの出力電圧と、モータ231の逆起電圧233によって生じる電圧と、ジンバル用ジャイロ340で検出した角速度の積分値と検出部500で取得したデータに基づいて求めた角度である検出角度との差に基づく補正用の電圧から、モータ231に入力される電圧を求める。制御部400は、モータ231のインダクタンス(H)と抵抗値(Ω)とトルク定数Kt(Nm/A)を用いてモータ231で生じるトルク(Nm)を求める。そして、制御部400は、慣性モーメントJで除算し、時間積分することでジンバル310の角速度(rad/sec)を求める。この角速度をもう一度時間積分すれば、カメラ600の視軸の角度(あらかじめ定めた基準に対する角度)を求めることができる。
【0017】
実際の角速度は、ジンバル用ジャイロ340で検出され、補償器410の入力にフィードバックされる。検出部500は、ジンバル310の角度を求めるためのデータを取得する。検出部500が取得するデータには、外乱に起因したデータが含まれている。制御部400は、ジンバル用ジャイロ340で検出した角速度の積分値と検出部500で取得したデータに基づいて求めた角度である検出角度との差(角度の差450)を求める。制御部400は、角度の差にバネ定数を乗算し、トルク定数Ktで除算することでモータ231に流す電流の補正値を求める。制御部400は、さらに、ゲインを乗算し、モータ231の制御を補正するための電圧を求める。ゲインは、モータの抵抗値を考慮しながら補正の程度を調整するために乗算している。
【0018】
つまり、制御部400は、ジンバル用ジャイロ340で検出した角速度の積分値と検出角度との差にあらかじめ定めたバネ定数を乗算し、あらかじめ定めたトルク定数で除算し、あらかじめ定めたゲインを乗算した値をモータ231への入力の補正値としている。外乱は、ジンバル310の角速度とモータ231から出力されるトルクに影響を与えているが、図2の点線で示した情報は、制御部400の計算には含まれない。制御部400は、外乱による影響を検出部500が取得するデータに基づいて低減する。
【0019】
図3に、検出部500が外乱検出用ジャイロ510を有する場合のカメラスタビライザの制御ブロック図を示す。検出部500は、外乱検出用ジャイロ510を有する。外乱検出用ジャイロ510は、バネ軸受けが取り付けられている筐体に取り付けられ、筐体の角速度を検出する。筐体とは、例えば、バネ軸受けで支持されたジンバルが「内部ジンバル」のときは「外部ジンバル」であり、バネ軸受けで支持されたジンバルが「外部ジンバル」のときはヘリコプタのボディに固定される「カバー」である。また、バネ軸受けで支持されたジンバルが「内部ジンバル」のときは外部ジャイロを外乱検出用ジャイロ510として利用してもよい。前述の検出角度は、外乱検出用ジャイロ510で検出した角速度の積分値である。
【0020】
図4に、検出部500が逆起電圧検出手段520を有する場合のカメラスタビライザの制御ブロック図を示す。検出部500は、逆起電圧検出手段520を用いてモータ231に生じる逆起電圧Vを検出する。制御部400は、記録している逆起電圧定数Keで検出された逆起電圧を除算して角速度を求め、角速度の積分値を前述の検出角度とする。
【0021】
図5に、検出部500が角度センサ530を有する場合のカメラスタビライザの制御ブロック図を示す。検出部500は、ジンバルの角度(あらかじめ定めた基準に対する角度)を検出する角度センサ530を有する。制御部400は、角度センサ530で検出した角度を前述の検出角度とする。
【0022】
図6は、外乱に対する制御がない場合と外乱に対する制御がある場合の違いをシミュレーションした結果を示す図である。外乱に対する制御がない場合とは、図5の検出部500、角度センサ530、角度の差450,451、バネ定数452、1/Kt453、ゲイン454がない場合である。外乱に対する制御がある場合は、図5に示した制御ブロックの場合である。横軸は時間(sec)、縦軸は視軸がずれた角度(°)を示しており、一定の周期で外乱を与えた結果が示されている。外乱に対する制御がない場合に比べ、外乱に対する制御がある場合の方が、角度の変動を半分以下にできていることが分かる。
【0023】
本発明のカメラスタビライザによれば、ジンバル用ジャイロで検出した角速度の積分値と検出部で取得したデータに基づいて求めた角度である検出角度との差に基づいて、モータの制御を補正するので、外乱による角度のずれを考慮してモータを制御できる。したがって、ジンバルの防振性能を向上できる。
【0024】
特に、図1に示したような2つの回転軸(外部第1軸211,外部第2軸212)を有する外部ジンバル210と、2つの回転軸(内部第1軸311,内部第2軸312)を有する内部ジンバル310を備えるカメラスタビライザ100において、内部ジンバル310の回転軸(内部第1軸311,内部第2軸312)の軸受けをバネ軸受けとすれば、内部ジンバル310に伝達される外乱に起因するトルクを線形にできる。そして、バネ軸受けのバネの反力による制御への影響を、図2~5に示した制御ブロックを用いた制御によって低減すれば、外乱に起因するトルクの影響を低減しやすい。その結果、防振性能(空間安定性能)の向上が期待できる。
【符号の説明】
【0025】
100 カメラスタビライザ 110 カバー
131 外部第1モータ 132 外部第2モータ
210 外部ジンバル 211 外部第1軸
212 外部第2軸 231 内部第1モータ,モータ
232 内部第2モータ 240 外部ジャイロ
310 内部ジンバル,ジンバル 311 内部第1軸
312 内部第2軸 340 内部ジャイロ,ジンバル用ジャイロ
400 制御部 410 補償器
500 検出部 510 外乱検出用ジャイロ
520 逆起電圧検出手段 530 角度センサ
600 カメラ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7