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特許7467269信号処理装置、切削装置、および信号処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】信号処理装置、切削装置、および信号処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 22/00 20060101AFI20240408BHJP
   G01S 7/41 20060101ALI20240408BHJP
   E01C 23/12 20060101ALI20240408BHJP
   E01C 23/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G01N22/00 S
G01S7/41
G01N22/00 U
G01N22/00 W
E01C23/12 Z
E01C23/00 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020130713
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022026978
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100111121
【弁理士】
【氏名又は名称】原 拓実
(74)【代理人】
【識別番号】100149629
【弁理士】
【氏名又は名称】柘 周作
(74)【代理人】
【識別番号】100200148
【弁理士】
【氏名又は名称】今野 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100139538
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 航介
(74)【代理人】
【識別番号】100200115
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 元勇
(74)【代理人】
【識別番号】100200137
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 良介
(72)【発明者】
【氏名】森 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】依田 大輝
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106491(JP,A)
【文献】特開2019-164060(JP,A)
【文献】特開2018-081007(JP,A)
【文献】特開2016-139950(JP,A)
【文献】特開平03-233008(JP,A)
【文献】特開平03-231183(JP,A)
【文献】特開平04-006399(JP,A)
【文献】特開平03-241105(JP,A)
【文献】特開平09-059918(JP,A)
【文献】特表平10-504079(JP,A)
【文献】特開平04-313091(JP,A)
【文献】特開平06-230142(JP,A)
【文献】特開平06-281725(JP,A)
【文献】特開平04-276582(JP,A)
【文献】特開2008-064743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B、G01C,G01D、G01F、G01G、G01H、G01J、G01K、G01L、G01M、G01N、G01P、G01Q、G01R、G01S、G01T、G01V、G01W
E01C21/00-23/24
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面の切削を停止させるか否か決定する信号処理装置であって、
路面に向けて複数の電磁波信号を送信する送信部と、
前記複数の電磁波信号に対応する反射波に基づく複数の受信信号を受信する受信部と、
前記複数の受信信号から、隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の差分を複数算出し、
前記複数の信号強度の差分に基づいて、前記路面における、アスファルトや白線よりも反射した信号強度が高い対象物の有無を決定し、
前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるか否か決定する処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記複数の信号強度の差分が、前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第1条件を満たしてから、前記対象物の長さに基づく距離を前記信号処理装置が移動する第1時間以内に前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定し、
前記対象物の長さに基づく距離は、前記受信部から前記路面の切削を行う切削部までの距離よりも小さい、
信号処理装置。
【請求項2】
前記第1条件及び前記第2条件は、前記アスファルトに反射した信号強度と前記対象物に反射した信号強度との差分に応じて定められ、
前記第1条件と前記第2条件は、正負が反転した条件である、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記送信部は、複数の第1電磁波信号を送信する第1送信部および前記第1送信部とは異なる複数の時刻に第2電磁波信号を送信する第2送信部を含み、
前記複数の第1電磁波信号及び前記複数の第2電磁波信号は前記複数の電磁波信号に含まれ、
前記受信部は、前記複数の第1電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第1受信信号および前記複数の第2電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第2受信信号を受信し、
前記複数の第1受信信号及び前記複数の第2受信信号は前記複数の受信信号に含まれる、
請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記複数の第1受信信号から隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の第1差分を複数算出し、
前記複数の第2受信信号から隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の第2差分を複数算出し、
前記複数の第1差分及び前記複数の第2差分の少なくとも一方が、前記第1条件を満たしてから前記第1時間以内に前記第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定し、
前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるか否か決定する、
請求項3に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記送信部は、第1周波数の複数の第1電磁波信号を送信する第1送信部および第2周波数の複数の第2電磁波信号を送信する第2送信部を含み、
前記受信部は第1受信部および第2受信部を含み、
前記第1受信部は、前記複数の第1電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第1受信信号および前記複数の第2電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第2受信信号の少なくとも一方を受信し、
前記第2受信部は、前記複数の第1電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第3受信信号および前記複数の第2電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第4受信信号の少なくとも一方を受信し、
前記複数の第1受信信号および前記複数の第2受信信号の少なくとも一方、並びに前記複数の第3受信信号および前記複数の第4受信信号の少なくとも一方は、前記複数の受信信号に含まれる、
請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記送信部は、第1符号を有する複数の第1電磁波信号を送信する第1送信部、および
前記複数の第1電磁波信号の送信に応じて、前記第1符号を有する複数の第2電磁波信号および前記第1符号が反転した第2符号を有する複数の第3電磁波信号の少なくとも一方を送信する第2送信部を含み、
前記受信部は、前記第1電磁波信号と前記第2電磁波信号とが重畳した第1重畳信号を複数、および前記第1電磁波信号と前記第3電磁波信号とが重畳した第2重畳信号を複数受信し、
前記処理部は、前記複数の第1重畳信号および前記複数の第2重畳信号に基づいて、前記複数の受信信号を算出する、
請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、
前記複数の第1重畳信号および前記複数の第2重畳信号に基づいて、前記受信信号に含まれる複数の第1受信信号および複数の第2受信信号を算出し、
前記複数の第1受信信号から隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の第1差分を複数算出し、
前記複数の第2受信信号から隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の第2差分を複数算出し、
前記複数の第1差分及び前記複数の第2差分の少なくとも一方が、前記第1条件を満たしてから前記第1時間以内に前記第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定し、
前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるか否か決定する、
請求項6に記載の信号処理装置。
【請求項8】
前記送信部は、第1位相の複数の第1電磁波信号を送信する第1送信部および前記第1位相と直交する第2位相の複数の第2電磁波信号を送信する第2送信部を含み、
前記受信部は第1受信部および第2受信部を含み、
前記第1受信部は、前記複数の第1電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第1受信信号および前記複数の第2電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第2受信信号の少なくとも一方を受信し、
前記第2受信部は、前記複数の第1電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第3受信信号および前記複数の第2電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第4受信信号の少なくとも一方を受信し、
前記複数の第1受信信号および前記複数の第2受信信号の少なくとも一方、並びに前記複数の第3受信信号および前記複数の第4受信信号の少なくとも一方は、前記複数の受信信号に含まれる、
請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項9】
前記送信部は、垂直偏波の複数の第1電磁波信号を送信する第1送信部および水平偏波の複数の第2電磁波信号を送信する第2送信部を含み、
前記受信部は、垂直偏波を受信する第1受信部および水平偏波を受信する第2受信部を含み、
前記第1受信部は、前記複数の第1電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第1受信信号および前記複数の第2電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第2受信信号の少なくとも一方を受信し、
前記第2受信部は、前記複数の第1電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第3受信信号および前記第2電磁波信号の前記路面における反射波に基づく複数の第4受信信号の少なくとも一方を受信し、
前記複数の第1受信信号および前記複数の第2受信信号の少なくとも一方、並びに前記複数の第3受信信号および前記複数の第4受信信号の少なくとも一方は、前記複数の受信信号に含まれる、
請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項10】
前記処理部は、
前記複数の第1受信信号及び前記複数の第3受信信号から隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の第1差分を複数算出し、
前記複数の第2受信信号及び前記複数の第4受信信号から隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の第2差分を複数算出し、
前記複数の第1差分及び前記複数の第2差分の少なくとも一方が、前記第1条件を満たしてから前記第1時間以内に前記第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定し、
前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるか否か決定する、
請求項5、8、及び9のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項11】
路面の切削を停止させるか否か決定する信号処理装置であって、
路面に向けて第1角度から第2角度まで複数の電磁波信号を送信する送信部と、
前記複数の電磁波信号に対応する反射波に基づく複数の受信信号を受信する受信部と、
前記複数の受信信号に基づいて、前記受信部からの距離および前記第1角度から第2角度までにおける受信信号の信号強度の角度分布を複数算出し、
前記複数の角度分布から、隣り合う送信時刻の角度分布における信号強度の差分を複数算出し、
前記複数の信号強度の差分に基づいて、前記路面における、アスファルトや白線よりも反射した信号強度が高い対象物の有無を決定し、
前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるか否か決定する処理部と、
を備え、
前記処理部は、
前記複数の角度分布の差分が、前記対象物に基づいて定められる角度分布に関する第1条件を満たしてから、前記対象物の長さに基づく距離を前記信号処理装置が移動する第1時間以内に前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定し、
前記対象物の長さに基づく距離は、前記受信部から前記路面の切削を行う切削部までの距離よりも小さい、
信号処理装置。
【請求項12】
前記処理部は、前記信号強度の角度分布または前記信号強度の角度分布の差分に基づいて、前記対象物の候補の長さを前記対象物の長さとして推定する、
請求項11に記載の信号処理装置。
【請求項13】
前記第1条件及び前記第2条件は、前記アスファルトに反射した信号強度と前記対象物に反射した信号強度との差分に応じて定められ、
前記第1条件と前記第2条件は、正負が反転した条件である、
請求項11または12に記載の信号処理装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記複数の電磁波信号の主方向が前記路面に対して略垂直となるように前記送信部の角度を指令する、および
前記路面の傾斜角に基づいて、前記受信部の受信面が前記複数の受信信号の主方向に対して略垂直となるように前記受信部の角度を指令する、の少なくとも一方を行う、
請求項1乃至13のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項15】
前記処理部は、前記対象物の有無に応じて前記路面の切削の停止を通知する通知信号を生成し、
前記通知信号に基づいて、前記路面の切削の停止を通知する通知部をさらに備える、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項16】
路面の切削を行う切削装置であって、
路面に向けて複数の電磁波信号を送信する送信部と、
前記複数の電磁波信号に対応する反射波に基づく複数の受信信号を受信する受信部と、
前記複数の受信信号から、隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の差分を複数算出し、
前記複数の信号強度の差分に基づいて、前記路面における、アスファルトや白線よりも反射した信号強度が高い対象物の有無を決定し、
前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるまたは前記路面の切削を行う指示を含む制御信号を生成する処理部と、
前記制御信号に基づいて、前記路面の切削を停止するまたは前記路面の切削を行う切削部
を備え、
前記処理部は、
前記複数の信号強度の差分が、前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第1条件を満たしてから、前記対象物の長さに基づく距離を前記切削装置が移動する第1時間以内に前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定し、
前記対象物の長さに基づく距離は、前記受信部から前記切削部までの距離よりも小さい、
切削装置。
【請求項17】
路面の切削を行う切削装置であって、
路面に向けて第1角度から第2角度まで複数の電磁波信号を送信する送信部と、
前記複数の電磁波信号に対応する反射波に基づく複数の受信信号を受信する受信部と、
前記複数の受信信号に基づいて、前記受信部からの距離および前記第1角度から第2角度までにおける受信信号の信号強度の角度分布を複数算出し、
前記複数の角度分布から、隣り合う送信時刻の角度分布における信号強度の差分を複数算出し、
前記複数の信号強度の差分に基づいて、前記路面における、アスファルトや白線よりも反射した信号強度が高い対象物の有無を決定し、
前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるまたは前記路面の切削を行う指示を含む制御信号を生成する処理部と、
前記制御信号に基づいて、前記路面の切削を停止するまたは前記路面の切削を行う切削部
を備え、
前記処理部は、
前記複数の角度分布の差分が、前記対象物に基づいて定められる角度分布に関する第1条件を満たしてから、前記対象物の長さに基づく距離を前記切削装置が移動する第1時間以内に前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定し、
前記対象物の長さに基づく距離は、前記受信部から前記切削部までの距離よりも小さい、
切削装置。
【請求項18】
路面の切削を停止させるか否か決定する信号処理装置の方法であって、
路面に向けて複数の電磁波信号を送信し、
前記複数の電磁波信号に対応する反射波に基づく複数の受信信号を受信し、
前記複数の受信信号から、隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の差分を複数算出し、
前記複数の信号強度の差分に基づいて、前記路面における、アスファルトや白線よりも反射した信号強度が高い対象物の有無を決定し、
前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるか否か決定し、
前記複数の信号強度の差分が、前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第1条件を満たしてから、前記対象物の長さに基づく距離を前記信号処理装置が移動する第1時間以内に前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定し、
前記対象物の長さに基づく距離は、前記複数の受信信号を受信する受信部から前記路面の切削を行う切削部までの距離よりも小さい、
方法。
【請求項19】
路面の切削を停止させるか否か決定する信号処理装置の方法であって、
路面に向けて第1角度から第2角度まで複数の電磁波信号を送信し、
前記複数の電磁波信号に対応する反射波に基づく複数の受信信号を受信し、
前記複数の受信信号に基づいて、前記複数の受信信号を受信する受信部からの距離および前記第1角度から第2角度までにおける受信信号の信号強度の角度分布を複数算出し、
前記複数の角度分布から、隣り合う送信時刻の角度分布における信号強度の差分を複数算出し、
前記複数の信号強度の差分に基づいて、前記路面における、アスファルトや白線よりも反射した信号強度が高い対象物の有無を決定し、
前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるか否か決定し
前記複数の角度分布の差分が、前記対象物に基づいて定められる角度分布に関する第1条件を満たしてから、前記対象物の長さに基づく距離を前記信号処理装置が移動する第1時間以内に前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定し、
前記対象物の長さに基づく距離は、前記受信部から前記路面の切削を行う切削部までの距離よりも小さい、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、信号処理装置、切削装置、および信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
劣化した路面の修繕のために、路面の切削を行う切削装置が開発されている。路面の切削の際には、路面上に切削してはならない対象物(例えば、マンホールの蓋)がある場合がある。この対象物を切削すると、対象物の損傷や切削装置の損傷が起こる可能性がある。したがって、対象物が切削されないように作業員などにより移動させる必要がある。また、切削による粉塵や廃材、時間帯や天候によっては、作業員などによる対象物の見落としが発生する場合がある。路面上の対象物の有無を決定し、対象物の有無に応じて路面の切削を停止させるか否かを決定する装置が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-50415号公報
【文献】特開2011-18214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、路面上の対象物の有無を決定し、対象物の有無に応じて路面の切削を停止させることを決定する信号処理装置、切削装置、および信号処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、実施形態の信号処理装置は、路面の切削を停止させるか否か決定する信号処理装置であって、路面に向けて複数の電磁波信号を送信する送信部と、前記複数の電磁波信号に対応する反射波に基づく複数の受信信号を受信する受信部と、前記複数の受信信号から、隣り合う送信時刻の受信信号における信号強度の差分を複数算出し、前記複数の信号強度の差分に基づいて、前記路面における、アスファルトや白線よりも反射した信号強度が高い対象物の有無を決定し、前記対象物の有無に応じて前記路面の切削を停止させるか否か決定する処理部とを備える。前記処理部は、前記複数の信号強度の差分が、前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第1条件を満たしてから、前記対象物の長さに基づく距離を前記信号処理装置が移動する第1時間以内に前記対象物に基づいて定められる信号強度に関する第2条件を満たすか否かにより、前記対象物の有無を決定する。前記対象物の長さに基づく距離は、前記受信部から前記路面の切削を行う切削部までの距離よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態における切削装置100の構成図。
図2】切削装置100の機能ブロック図。
図3】時刻ごとの切削装置100の位置の模式図。
図4図3における電磁波信号の反射波に基づく受信信号の信号強度および信号強度の差分を表す図。
図5】切削装置100の動作のフローチャート。
図6】第1の実施形態に適用可能な切削装置150の構成図。
図7】第1の実施形態に適用可能な切削装置160の構成図。
図8】センサ部120aおよび120bが時分割による送信を行う場合を説明する図。
図9図8において、受信部122aおよび122bが受信する場合を説明する図。
図10】センサ部120aおよび120bが周波数分割による送信を行う場合を説明する図。
図11図10において、受信部122aおよび122bが周波数f0およびf1の受信信号を受信する場合を説明する図。
図12】センサ部120aおよび120bが符号分割による送信を行う場合を説明する図。
図13】センサ部120aおよび120bが位相変調による送信を行う場合を説明する図。
図14図13において、受信部122aおよび122bが位相φ0およびφ1の受信信号を受信する場合を説明する図。
図15】第1の実施形態に適用可能な切削装置170の構成図。
図16】センサ部120aおよび120cが異なる偏波の電磁波信号の送信を行う場合を説明する図。
図17図16において、受信部122aおよび122cが偏波の向きが変わった受信信号をも受信する場合を説明する図。
図18】第2の実施形態における、センサ部120’による電磁波信号の送信範囲および反射波に基づく受信信号の受信範囲を表す図。
図19図18の場合における信号強度の角度分布を表す図。
図20図3における信号強度の角度分布および信号強度の角度分布の差分を表す図。
図21】電磁波信号の周波数を時刻に応じて変化させる場合を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明を実施するための実施形態について図面を参照して説明する。開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態における切削装置100の構成図である。図1(a)は切削装置100のxz平面図、図1(b)は切削装置100のxy平面図を表している。切削装置100は路面の切削機能を備えた移動体であり、路面上を移動しながら路面を切削する。切削装置100は、本実施形態では一例として路面切削車両としているが、ロボットなどでもよい。切削装置100は移動しながら所定の時間ごとに電磁波信号を路面に向けて送信する。この路面に対する反射波に基づく受信信号を受信し、受信信号に基づいて路面における対象物の有無を決定する。対象物とは、切削装置100が路面の切削にあたって切削を回避したい路面における物体である。例えば、路面に設置されたマンホールの蓋などである。切削装置100は、対象物が存在すると決定された場合に路面の切削を停止する。
【0009】
図2は、切削装置100の機能ブロック図である。図1および図2を用いて、切削装置100の構成要素を説明する。切削装置100は、車体101、駆動部102、コンベア部103、切削部104、記憶部105、および信号処理装置110を備える。信号処理装置110はセンサ部120、処理部130、通知部140を備える。センサ部120は送信部121および受信部122を備える。処理部130は算出部131、決定部132、制御部133、信号生成部134を備える。
【0010】
車体部101は、切削装置100の外装である。本実施形態では一例として切削装置100を路面切削車両としているため、車両の外装部、ボディ部に相当する。
【0011】
駆動部102は、切削装置100を駆動する。例えばエンジンやモータ、車輪などである。駆動部102は、制御信号(駆動信号)を処理部130の信号生成部134から受けて、切削装置100を移動体として例えばX方向へ移動させる。
【0012】
コンベア部103は、路面の切削により生じる廃材を運搬する。図1(a)および(b)では隠れているが、コンベア部103は-X方向に伸びており、切削部104まで続く。コンベア部103に運ばれた廃材は、コンベア部103の先端より廃材の収集装置や収集場所に移される。コンベア部103は、制御信号(運搬信号)を処理部130の信号生成部134から受けて動作する。
【0013】
切削部104は、路面を切削する。切削部104は、路面を切削する刃であるカッタービットを備えるカッタードラム、カッタードラムの周囲を覆うカッターフレーム、カッタードラムを昇降、回転させる油圧ポンプや油圧シリンダなどを備える。切削部104は、制御信号(切削信号)を処理部130の信号生成部134から受けて路面の切削の実行または停止する。
【0014】
送信部121は1つ以上のアンテナを含み、路面に向けて電磁波信号を送信する。電磁波信号は例えば、パルス信号である。送信部121が送信した電磁波信号は、路面によって反射し、反射波となる。本実施形態では、送信部121は、電磁波信号の主方向が路面に対して垂直(Z方向に)になるように送信する。なお垂直とは厳密な垂直に限定されず、受信信号の主方向が同じセンサ部120に含まれる受信部122に向かう程度のずれを許容するものとする。
【0015】
受信部122は1つ以上のアンテナを含み、送信部121が送信した電磁波信号に対応する反射波に基づく受信信号を受信する。受信信号は、算出部131に送られ、受信信号の強度(以降、単に信号強度とも称する)の算出に使われる。
【0016】
なお、送信部121および受信部122を含むセンサ部120は切削部104よりも進行方向(X方向)に対して所定の距離だけ前方に位置する。切削部104が切削する前に、切削部104が今後切削する路面に対象物が存在するか否かを決定する必要があるためである。また、送信部121が用いるアンテナと受信部122が用いるアンテナは、共用であってもよいし別々に設けられていてもよい。
【0017】
算出部131は受信部122から送られる受信信号に基づいて、信号強度を算出する。詳細には、算出部131は送信部121が電磁波信号を送信してから、受信部122が受信信号を受信するまでの時間を距離に換算し、受信部からの距離に対する信号強度を算出する。受信信号は、電磁波信号が反射する路面の状態によって強度が異なる。例えば、路面のアスファルトに反射した場合の受信信号と、路面の対象物としてマンホールの蓋に反射した場合の受信信号では、マンホールの蓋に反射した場合の受信信号の方が、信号強度が高い。算出部131は、算出した信号強度を記憶部105に保持させる。
【0018】
また、算出部131は受信部122から送られる複数の受信信号間における信号強度の差分を算出する。送信部121が時刻に応じて複数の電磁波信号を送信した場合、受信部122は時刻に応じた複数の受信信号を受信する。算出部131はこの複数の受信信号それぞれの信号強度を算出し記憶部105に保持する。算出部131は、複数の信号強度の差分を取ることで、複数の受信信号間における信号強度の差分(以降、単に信号強度の差分とも称する)を算出する。信号強度の差分は決定部132に送られ、路面における対象物の有無の決定に使われる。
【0019】
決定部132は、受信部122が受信した受信信号に基づいて、路面における対象物の有無を決定する。より詳細には、決定部132は、算出部131から送られた信号強度の差分に基づいて、信号強度の差分とあらかじめ設定されるしきい値とを比較して路面における対象物の有無の決定に使われる。決定部132は、算出部131から送られた信号強度の差分を記憶部105に保持する。決定部132は、決定した路面における対象物の有無に関する情報を制御部133に送る。
【0020】
処理部130は、駆動部102、コンベア部103、切削部104の動作を指令する。制御部133は信号生成部134に対して、この指令を含む制御信号の生成を指示し、指令の対象となる構成要素に伝達するように指令する。制御信号は、駆動部102への指令を含む駆動信号、コンベア部103への指令を含む運搬信号。切削部104への指令を含む切削信号を包括して称される。
【0021】
制御部133は、送信部121が電磁波信号を路面に向けて送信するように電磁波信号を生成するよう信号生成部134に指令する。また、制御部133は信号生成部134に電磁波信号の生成を開始、停止するよう指令する。
【0022】
また、制御部133は、決定部132から送られた路面における対象物の有無に関する情報に基づいて、対象物の有無に応じて切削部104による路面の切削を停止させるまたは行うかを決定する。対象物が存在する場合は切削部104による路面の切削を停止させ、対象物が存在しない場合は切削部104に路面の切削を行わせる。制御部133は信号生成部134に対して、路面の切削を停止させるまたは行わせる指示を含む切削信号を生成するように指令する。また、制御部133は、切削部104による路面の切削を停止させると決定した場合、信号生成部134に対して、路面の切削の停止を通知する通知信号を生成するように指令する。
【0023】
信号生成部134は、制御部133からの指令に応じて、電磁波信号、制御信号、通知信号を生成し、指令の対象となる構成要素に伝達する。信号生成部134は、路面に向けて送信する電磁波信号を生成する。電磁波信号は送信部121に送られる。信号生成部134は、駆動部102、コンベア部103、および切削部104のそれぞれの動作を指令する制御信号を生成する。生成された制御信号は指令の対象となる構成要素(駆動部102、コンベア部103、または切削部104)に送られる。切削部104に送られる切削信号には、制御部133にて対象物の有無に応じて決定された、路面の切削を停止させるまたは行わせる指示が含まれる。信号生成部134は、路面の切削の停止を通知する通知信号を生成し、通知部140に送る。
【0024】
通知部140は、通知信号に基づいて、周囲に路面の切削の停止を通知する。通知部140は、ランプなどの光を用いて通知してもよいし、サイレンなどの音を用いて通知してもよいし、モニタなどの操作ディスプレイ上への表示を用いて通知してもよいし、これらを組み合わせて通知してもよい。通知部140の通知により、切削装置100の周囲の作業員は切削部104による路面の切削を停止したことや、切削部104の周囲に対象物が存在することを認識することができる。
【0025】
記憶部105は、算出部131によって算出された、信号強度および信号強度の差分を保持する。記憶部105はメモリ等であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、EEPROM(Electrically EPROM)、フラッシュメモリ、レジスタなどである。また、記憶部103は無線通信装置100Aの内部の他、外部に設けられてもよい。外部に設けられる場合、記憶部103はインターネットを経由して情報を保持するクラウドでもよい。
【0026】
以上、切削装置100の構成を説明した。信号処理装置110の構成要素の少なくとも一部は、物理的に統合された半導体集積回路(LSI等)に実装されてもよい。また図2では、算出部131、決定部132、制御部133、信号生成部134は処理部130に含まれる。処理部130は、制御装置と演算装置を含む1つ以上の電子回路である。電子回路は、アナログまたはディジタル回路等で実現される。例えば、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、マイクロプロセッサ、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、ASIC、FPGA、およびその組合せが可能である。また、処理部130はソフトウェアによってこれらの電子回路で実行されてもよい。また、処理部130のうち、駆動部102、コンベア部103に指令する部は別途設けられてもよい。
【0027】
図3は、時刻ごとの切削装置100の位置の模式図である。図3図5を用いて、切削装置100の動作を説明する。切削装置100は所定の時間ごとに電磁波信号を路面に向けて送信し、この路面に対する反射波に基づく受信信号を受信する。切削装置100は受信信号に基づいて、路面における対象物の有無を決定する。切削装置100は、この対象物の有無に応じて路面の切削を停止するか否かを決定する。切削装置100は、切削する路面において対象物が存在する場合は路面の切削を停止し、対象物が存在しない場合は路面の切削を行うまたは継続する。図3では、時刻t0、t1、t2、t3、t4、t5に電磁波信号の送信が行われる。切削装置100(信号処理装置110を含む)は、路面を切削しながら移動速度VでX方向に進んでおり、時刻t0における切削装置100の位置をX0、時刻t1における切削装置100の位置をX1、…、時刻t5における切削装置100の位置をX5とする。したがって、時刻t0と位置X0、時刻t1と位置X1、…時刻t5と位置X5は対応している。
【0028】
なお、本実施形態では、切削装置100の位置はセンサ部120の位置(電磁波信号を送信する路面のX座標)と規定する。また、センサ部120から路面までのZ方向の距離をZr、対象物のX方向の長さをL、センサ部120から切削部104までの距離をdとする。距離dを取るにあたり、切削部104はセンサ部120に近い端を基準としている。対象物は、X2~X4を含む位置に存在するとする。また、対象物以外の路面はアスファルトとし、対象物に反射した反射波に基づく受信信号はアスファルトに反射した反射波に基づく受信信号よりも高い強度を有するとする。
【0029】
図4図3の時刻t0、t1、…、t5に送信された電磁波信号の反射波に基づく受信信号の信号強度(以降、時刻txの信号強度または時刻txにおける信号強度とも称する)および信号強度の差分を表す図である。時刻t0~t5のそれぞれにおいて、切削装置100は位置X0~X5のそれぞれに電磁波信号を送信する。本実施形態では、電磁波信号はパルス信号とする。切削装置100はこの電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信する。切削装置100は、電磁波信号を送信してから受信信号を受信するまでの時間を距離に変換することにより、Z方向と信号強度の関係を算出する(単に信号強度とも称する)。
【0030】
時刻t0~t5のそれぞれの信号強度は、Z=Zrにおいてピークが立つ形となっている。図3から、センサ部120から路面までの距離をZrとしているため、このZ=Zrにおけるピークは電磁波信号の反射波に基づいていることが表されている。
【0031】
ここで、位置X0、X1、X5についてはZ=Zrにおける信号強度のピークがSr(以降、強度Srとも称する)となっている。位置X0、X1、X5の路面はアスファルトであるため、強度Srは比較的小さい値を取る。
【0032】
一方、位置X2、X4についてはZ=Zrにおける信号強度のピークがSm1(以降、強度Sm1とも称する)、位置X3についてはZ=Zrにおける信号強度のピークがSm2(以降、強度Sm2とも称する)である。位置X2~X4の路面は対象物が存在するため、強度Sm1、Sm2は強度Srよりも高い。
【0033】
信号強度の差分は、隣り合う時刻における信号強度をZ方向において差分を取ることで算出できる。例えば、時刻t0の信号強度と時刻t1の信号強度の差分を取ると、信号強度の変化は見られない。これは時刻t0~t1の間で、反射する路面の種類に変化がないことを表す。このため時刻t1では、切削装置100は、路面に対象物があると決定しないため、切削を継続する。
【0034】
時刻t2において、時刻t1の信号強度と時刻t2の信号強度の差分を取ると、信号強度の変化がZ=Zrをピークとして現れる。このピークは所定のしきい値+DSより大きい。しきい値+DSは、信号強度に関する第1条件として設定される。なお、第1条件は、信号強度の差分に関する第1条件と称されてもよい。この条件を満たすことで、切削装置100(センサ部120)の位置では時刻t1~t2の間に、アスファルトから対象物と同様に反射する物体に切り替わったことを表す。切削装置100は、信号強度の差分のピークがしきい値+DSより大きくなった時刻t2に、切削装置100の位置が対象物上である可能性を表すフラグ(以降、単にフラグとも称する)を生成する。切削装置100は、このフラグを保持する。なお、時刻t2では対象物かどうかを決定する、後述する第2条件の判断ができていないため、切削部104は切削を継続する。
【0035】
時刻t3において、時刻t2の信号強度と時刻t3の信号強度の差分、および時刻t4において、時刻t3の信号強度と時刻t4の信号強度の差分を取ると、同様に信号強度の変化がZ=Zrをピークとして現れる。しかし、これらのピークは所定のしきい値-DSより大きく、しきい値+DSよりも小さい。このとき、しきい値-DSは、信号強度に関する第2条件として設定される。なお、第2条件は、信号強度の差分に関する第2条件と称されてもよい。この条件を満たすことで、切削装置100の位置が2つの時刻の間に、対象物と同様に反射する物体からアスファルトに切り替わったことを表す。したがって、切削装置100は時刻t3およびt4において未だ対象物と同様に反射する物体上であることを表す。切削装置100は時刻t2に生成したフラグを変わらず保持する。このように、時刻t3およびt4では切削装置100の位置は対象物と同様に反射する物体上にあるものの、対象物であると断定できないため、切削を継続する。
【0036】
ここで、このフラグの保持期間はあらかじめ設定されている。フラグの保持期間は、対象物として決定する最大の長さLmax、切削装置100の移動速度Vから算出される時間に基づいて設定される。長さLmaxは例えば、マンホールの蓋として存在する最大の直径などである。なお、長さLmaxはセンサ部120から切削部104の一端までの距離dよりも短い。長さLmaxが距離dよりも長いと、切削部104による切削に対象物が巻き込まれる可能性があるためである。フラグの保持期間中に第2条件を満たさない場合、切削装置100は対象物ではないと決定してフラグを解消する。フラグの保持期間が設定されていることにより、切削部104にて切削される前に対象物の有無を決定することができる。
【0037】
時刻t5において、時刻t4の信号強度と時刻t5の信号強度の差分を取ると、同様に信号強度の変化がZ=Zrをピークとして現れる。このピークは所定のしきい値-DSより小さい。切削装置100の位置が2つの時刻の間に、対象物と同様に反射する物体からアスファルトに切り替わっている。ここで、時刻t5はフラグの保持期間内の場合、切削装置100はフラグの保持期間内に第2条件を満たしたとして、路面に対象物が存在すると決定する。切削装置100は、路面の切削を停止し、路面の切削を停止することを通知する。
【0038】
以上により、切削装置100は、路面を切削しながら移動速度Vで路面上を移動する場合でも、対象物を切削せずに、対象物の有無に応じて路面の切削を停止または行うことができる。図3でも、時刻t5において対象物は切削部104に接触しないことが表されている。
【0039】
図5は、切削装置100の動作のフローチャートである。図5を用いて、切削装置100の切削部104による路面の切削の停止に関する動作の詳細を説明する。前提として、切削装置100は移動速度Vで進行方向に進みながら、路面の切削を行っているものとする。以降に説明するステップS101~S114の処理は、電磁波信号が送信されるたびに行われ、次の電磁波信号が行われる前にステップS101に戻るか動作を終了する。
【0040】
送信部121は、路面に向けて電磁波信号を送信する(ステップS101)。この電磁波信号は、制御部133の指令を受けた信号生成部134が生成し、送信部121に送られたものである。送信部121は、電磁波信号を所定の時間ごとに送信する。この所定の時間は、対象物の有無の決定の精度、切削装置100の移動速度V、切削装置100の信号処理能力などに応じて任意に決定される。例えば図3図4では、送信部121は時刻t0、t1、…、t5に電磁波信号を送信する。
【0041】
受信部122は、送信部121が送信した電磁波信号の路面に対する反射波に基づく受信信号を受信する(ステップS102)。受信した受信信号は算出部131に送られる。
【0042】
算出部131は、受信部122から送られる受信信号から、信号強度を算出する(ステップS103)。算出部131は、算出した信号強度を記憶部105に保持させる。例えば図4では、算出部131は時刻t0、t1、…、t5における信号強度を算出する。
【0043】
算出部131は、記憶部105に過去の信号強度が保持されているかを確認する(ステップS104)。過去の信号強度は、電磁波信号の送信時刻が隣り合う信号強度が望ましいが、電磁波信号の送信時刻が所定の時間の範囲内の信号強度であってもよい。算出部131は、記憶部105に過去の信号強度が保持されていない場合(ステップS104:No)、ステップS101に戻る。例えば図3図4では、算出部131が時刻t0の信号強度を算出した際、記憶部105には過去の受信信号における信号強度が保持されていない。このような場合は、ステップS101に戻る。
【0044】
一方、記憶部105に過去の信号強度がある場合(ステップS104:Yes)、算出部131は複数の信号強度間における信号強度の差分を算出する。例えば図4では、時刻t1~t5において、算出部131が信号強度を算出した際、記憶部105には過去の信号強度が保持されている。算出部131は、時刻t0の信号強度および時刻t1の信号強度の差分を算出する。算出部131は、時刻t2~t5も同様に、過去の隣り合う電磁波信号の送信時刻における信号強度との差分を算出する。算出部131は、算出した信号強度の差分を決定部132に送る。
【0045】
決定部132は、算出部131から送られる信号強度の差分から、路面における対象物の有無を決定する。対象物の有無の決定は、ステップS106~ステップS112にかけて行われる。まず、決定部132は記憶部105に、信号強度の差分に関する第1条件を満たしていることを表すフラグが保持されているかを確認する(ステップS106)。本実施形態では一例として、このフラグは切削装置100の位置が対象物上である可能性を表すフラグとして、信号強度の差分が+側のしきい値(+DS)より大きいことを表す。フラグが保持されていない場合(ステップS106:No)、決定部132は信号強度の差分が第1条件を満たしているかを確認する(ステップS107)。本実施形態では一例として、決定部132は信号強度の差分が+側のしきい値(+DS)より大きいかを比較して確認する。信号強度の差分が第1条件を満たしている場合(ステップS108:Yes)、決定部132はフラグを生成し、フラグの生成時刻とともに記憶部105に保持させ(ステップS108)、ステップS101に戻る。信号強度の差分が第1条件を満たしていない場合(ステップS108:No)、ステップS101に戻る。
【0046】
一方、記憶部105にフラグが保持されている場合(ステップS106:Yes)、決定部132は、現在の時刻がこのフラグの生成時刻から、フラグの保持期間以内かを確認する(ステップS109)。現在の時刻がフラグの保持期間以内でない場合(ステップS109:No)、決定部132は記憶部105からフラグを消去し(ステップS110)、ステップS101へ戻る。
【0047】
決定部132がフラグの保持期間以内かを確認する理由は、フラグの保持期間を超えている場合、対象物の誤認識が生じる可能性が高いためである。例えば、路面の白線によって反射された受信信号の信号強度を用いた差分が、しきい値+DSより大きくなる場合があるが、この白線が切削装置100の進行方向に伸びている場合、マンホールの蓋として想定される最大の長さLmaxを超える場合がある。この場合、その後にしきい値-DSより小さくなる場合があったとしても、決定部132は対象物(マンホールの蓋)が路面に存在すると決定してはならない。決定部132は、フラグの保持期間以内かを確認することで、対象物の誤認識を回避することができる。
【0048】
現在の時刻がフラグの保持期間以内である場合(ステップS109:Yes)、決定部132は信号強度の差分が信号強度の差分に関する第2条件を満たしているかを確認する(ステップS111)。本実施形態では一例として、決定部132は信号強度の差分が-側のしきい値(-DS)より小さいかを比較して確認する。信号強度の差分が第2条件を満たしている場合(ステップS111:No)、ステップS101に戻る。
【0049】
一方、信号強度の差分が第2条件を満たしていない(ステップS111:No)、決定部132は路面に対象物が存在すると決定する(ステップS112)。決定部132は、対象物の有無に関する情報として、路面に対象物が存在することを表す情報を制御部133に送る。
【0050】
制御部133は、決定部132から路面に対象物が存在することを表す情報を受けて、切削部104を停止させる切削信号および切削部104の停止を通知する通知信号を生成するよう信号生成部134に指令する(ステップS113)。信号生成部134は制御部133の指令を受けて、切削部104を停止させる切削信号を生成して切削部104に送り、通知信号を生成して通知部140に送る。
【0051】
切削部104は、信号生成部134からの切削信号を受けて路面の切削を停止し、通知部140は信号生成部134からの通知信号を受けて、切削部104の停止を通知する(ステップS114)。通知部140は例えば光や音、ディスプレイ上への表示などを用いて通知し、切削装置100の周囲の作業員などに切削部104の停止を通知する。
【0052】
制御部133は、切削装置100の動作を終了させる終了指令が届いているか否かを確認する(ステップS115)。この終了指令は、切削装置100の動作を本フローで終了させる指令である。この終了指令は、作業員などによる切削装置100への入力や、終了指令を含んだ信号を切削装置100が取得するなどして制御部133に伝えられる。この終了指令は、直ちに切削装置100の動作を終了させる指令であってもよい。
【0053】
制御部133にこの終了指令が届いていない場合(ステップS115:No)、ステップS101に戻る。一方、制御部133にこの終了指令が届いている場合(ステップS115:Yes)、フローは終了し、切削装置100は動作を終了する。
【0054】
以上に本実施形態における切削装置100の動作を説明した。本実施形態で説明した切削装置100は一例であり、変形例は様々に実装、実行可能である。以下に本実施形態の変形例を説明する。
【0055】
(変形例1)
送信部121が路面に向けて電磁波信号を送信する場合、路面からの反射波が強くなるように、電磁波信号の主方向が路面に対して垂直となることが望ましい。また、受信部122が電磁波信号に対応する反射波に基づく受信信号を受信する場合、受信しやすくするため、受信部122の受信面が受信信号の主方向に対して垂直となることが望ましい。
【0056】
送信部121および受信部122について、制御部133の指令に応じて角度を変更可能であってもよい。制御部133は、角度センサからの角度情報や写真など任意の方法を用いて、路面、送信部121、および受信部122の角度を認識する。制御部133は、認識した角度に基づいて、送信部121が送信する電磁波信号の主方向が路面に対して垂直となるように送信部121の角度を指令し、受信部122の受信面が受信信号の主方向に対して垂直となるように受信部122の角度を指令してもよい。これらの指令を含んだ信号は信号生成部134によって生成され、送信部121および受信部122に送られる。
【0057】
(変形例2)
本実施形態では、ステップS103において、算出部131が受信信号に基づいて信号強度を算出し、記憶部105に保持させていた。算出部131は、信号強度を算出した結果、信号強度のピークがZ=Zrから所定の範囲より離れている場合は、その信号強度を記憶部105に保持させず破棄してもよい。図3に表されるように、本実施形態では、センサ部120から路面までの距離をZrとしている。この場合、信号強度のピークがZ=Zrから所定の範囲より離れている場合、電磁波信号が路面(対象物を含む)以外の物体と反射した受信信号であることが考えられる。この場合、路面における対象物の有無の決定に悪影響を及ぼす可能性があるため、算出部131はピークがZ=Zrから所定の範囲より離れている信号強度を破棄してもよい。
【0058】
(変形例3)
本実施形態では、算出部131はステップS105において信号強度の差分を算出し、決定部132は信号強度の差分に基づいて対象物の有無を決定していた。決定部132は、算出部131がステップS103で算出した信号強度に基づいて、対象物の有無を決定してもよい。
【0059】
この場合、信号強度が所定のしきい値(例えばしきい値DS’とする)を超えた場合に、決定部132は第1条件を満たしたとしてフラグを生成する。決定部132は、フラグの保持期間以内に信号強度がしきい値DS’を下回った場合、第2条件を満たしたとして対象物が存在すると決定してもよい。
【0060】
(変形例4)
本実施形態では、ステップS107およびステップS111において、信号強度の差分に関する第1条件としてしきい値+DSより大きいか、信号強度の差分に関する第2条件としてしきい値-DSより小さいかを比較したが、これらの条件はしきい値より大きい、またはしきい値より小さいことに限定されない。例えば、信号強度の差分について評価値を算出し、評価値が小さいほど信号強度の差分が大きいといった場合、第1条件として評価値がしきい値より小さいかが比較され、第2条件として評価値がしきい値より大きいかが比較されることとなる。また、評価値の変動によって第1条件および第2条件が設定される場合もある。第1条件は、信号強度の差分から、切削装置100の位置が路面(アスファルト)から対象物と同様に反射する物体に移動したことが分かるのであれば任意の条件が適用可能である。また第2条件は、信号強度の差分から、切削装置100の位置が対象物と同様に反射する物体から路面(アスファルト)に移動したことが分かるのであれば任意の条件が適用可能である。また、信号強度の差分を絶対値とした場合、第1条件と第2条件は同じとなってもよい。
【0061】
(変形例5)
本実施形態では、ステップS113において、制御部133は決定部132から路面に対象物が存在することを表す情報を受けて切削部104による路面の切削を停止させることを決定していた。制御部133は、決定部132から路面に対象物が存在することを表す情報を受けていないうちは、切削部104による路面の切削を行う(継続も含む)ことを決定していてもよい。制御部133は、切削部104による路面の切削を行う切削信号を生成するよう信号生成部134に指令する。信号生成部134は路面の切削を行う指示を含む切削信号を生成し、切削部104に送る。切削部104はこの切削信号を受けて、路面の切削を行う。
【0062】
(変形例6)
本実施形態では、センサ部120の送信部121から電磁波信号を路面に対して垂直に送信し、同じセンサ部120に含まれる受信部122が受信信号を受信していた。センサ部120が取り付けられる車体部101によっては、センサ部120を路面に対して平行に設置できず、送信部121から送信される電磁波信号が路面に対して垂直に送信できない場合がある。この場合、センサ部120を複数とし、一方のセンサ部120aから電磁波信号を路面に向けて送信し、もう一方のセンサ部120bで受信信号を受信してもよい。
【0063】
図6は、センサ部120を複数として、センサ部120aおよび120bを備える切削装置150の構成図である。以降、センサ部120aは本実施形態のセンサ部120と同様であり、送信部121aおよび受信部122aが含まれる。以降、センサ部120bも同様に、送信部121bおよび受信部122bが含まれる。送信部121aから路面に電磁波信号を送信する。受信部122bはこの電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信するために、電磁波信号の路面に対する入射角および路面による反射角を考慮して設置される。図6では、コンベア部103に備えられている。受信部122bは、この電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信する。以降の動作は本実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
このようにすることで、センサ部120が取り付けされる車体部101の傾きなどにより、センサ部120を路面に対して平行に設置できない場合でも、本実施形態と同様に信号処理を行うことができる。
【0065】
なお、送信部121bから電磁波信号を送信し、受信部122aが受信信号を受信してもよい。また、センサ部120が複数でない場合でも、送信部121および受信部122を離して設置する場合でも本変形例と同様に信号処理を行うことができる。
【0066】
(変形例7)
本実施形態では、センサ部120は切削装置100の幅(Y方向)の中央部に設置されていた。送信部121が送信する電磁波信号には指向性があるため、センサ部120から路面までの距離Zrによっては、切削装置の幅をカバーできない可能性がある。この場合、センサ部120を複数とし、切削装置100の幅方向(Y方向)が異なる位置に設置してもよい。
【0067】
図7は、センサ部120を複数として、センサ部120aおよび120bを備える切削装置160の構成図である。送信部121a、121bのそれぞれが電磁波信号を送信し、受信部122a、122bはそれぞれ、送信部121aが送信した電磁波信号の反射波に基づく受信信号と、送信部121aが送信した電磁波信号の反射波に基づく受信信号の少なくとも一方を受信する。
【0068】
以下、複数の送信部121a、121bが電磁波信号を送信する際の例を説明する。送信部121a、121bが電磁波信号を送信する場合、時分割による送信、周波数による送信、符号分割による送信、位相変調による送信などが存在する。いずれを本実施形態に適用してもよいし、組み合わせて適用してもよい。
【0069】
(変形例7.1)
図8は、センサ部120aおよび120bが時分割による送信を行う場合を説明する図である。送信部121aおよび121bは、送信する電磁波信号が同様の周波数である場合、同時に送信するとお互いに干渉を起こし、対象物の有無の決定に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0070】
そこで、送信部121aおよび121bが電磁波信号を送信する時刻を分ける(時分割)ことにより、電磁波信号間の干渉を抑制する。送信部121aおよび121bがそれぞれ電磁波信号を送信する時刻は制御部133により決定され、信号生成部134を通じて送信部121aおよび121bに指令される。
【0071】
例えば図8(a)では、時刻t0において送信部121aは電磁波信号を送信する。受信部122aは、この電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信する。時刻t0では送信部121bは電磁波信号を送信しない。一方、図8(b)では、時刻t1において送信部121bは電磁波信号を送信する。受信部122bは、この電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信する。時刻t1では送信部121aは電磁波信号を送信しない。以降同様に、時刻2n(nは0以上の整数)では送信部121aが、時刻2n+1では送信部121bが電磁波信号を送信する。
【0072】
受信信号の受信以降の切削装置160の動作は、切削装置100と同様である。ここで、算出部131による信号強度および信号強度の差分の算出は、受信信号を複数のグループに分けてもよい。例えば送信部121aが電磁波信号を送信する時刻2nにおける受信信号のグループAと、送信部121bが電磁波信号を送信する時刻2n+1における受信信号のグループBに分けて、算出部131は信号強度および信号強度の差分の算出を行う。これにより、センサ部120aおよび120bがそれぞれ設置されるY方向の位置において、対象物の有無の決定することができる。決定部132は、グループAおよびグループBの少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0073】
また、時分割の方法において、受信部122aおよび122bは、同じセンサ部120に属する送信部120aおよび120bが電磁波信号を送信しない場合でも、受信してもよい。図9は、受信部122aおよび122bが受信する場合を説明する図である。
【0074】
図9(a)では、時刻t0において送信部121aが電磁波信号を送信し、受信部122aおよび122bは、この電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信する。図9(b)では、時刻t1において送信部121bが電磁波信号を送信し、受信部122aおよび受信部122bは、この電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信する。以降の動作は図8で説明した場合と同様である。
【0075】
受信部122bは送信部121aからは受信部122aと比較して距離があり、受信部122aは送信部121bからは受信部122bと比較して距離があるが、路面の凹凸または対象物の凹凸によっては受信信号の主方向が変わる可能性がある。受信部122aだけでなく受信部122bでも受信することで受信信号の受信ミスを低減させることができる。
【0076】
算出部131は、信号強度および信号強度の差分の算出において、時刻2nにおける受信信号のグループAと、時刻2n+1における受信信号のグループBから、さらに複数のグループに分けてもよい。例えば、算出部131はグループAを受信部122aが受信した受信信号のグループA1および受信部122bが受信した受信信号のグループA2に分けてもよい。算出部131はグループBを受信部122aが受信した受信信号のグループB1および受信部122bが受信した受信信号のグループB2に分けてもよい。
【0077】
算出部131は、グループA1、A2、B1、B2それぞれ信号強度および信号強度の差分の算出を行い、決定部132はこれらのグループの信号強度の差分に基づいて対象物の有無を決定してもよい。例えば、決定部132はグループA1、A2、B1、およびB2の少なくとも1つが第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0078】
また、算出部131は、グループA1およびA2の同じ時刻における2つの受信信号のうち、信号強度が高い受信強度を選択し、グループA’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。算出部131はグループB1およびB2も同様に、同じ時刻において信号強度が高い受信信号を選択したグループB’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。決定部132はグループA’およびグループB’の少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0079】
また、算出部131は、グループA’の生成の際、グループA1およびA2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。算出部131は、グループB’の生成の際、グループB1およびB2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。
【0080】
(変形例7.2)
図10は、センサ部120aおよび120bが周波数分割による送信を行う場合を説明する図である。送信部121aおよび121bは、送信する電磁波信号の周波数を異なる周波数とする(周波数分割)ことにより、電磁波信号間の干渉によらず受信信号を得ることができる。
【0081】
例えば図10では、送信部121aは周波数f0の電磁波信号を送信し、送信部121bは周波数f1の電磁波信号を送信する。受信部122aは周波数f0の電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信し、受信部122bは周波数f1の電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信する。ここで、受信部122aは信号の受信処理の過程で、周波数f0の信号を取り出して受信することができ、受信部122bは周波数f1の信号を取り出して受信することができる。したがって送信部121aおよび121bが同時に電磁波信号を送信する場合でも、周波数f0の電磁波信号の反射波に基づく受信信号と、周波数f1の電磁波信号の反射波に基づく受信信号が区別されて受信される。
【0082】
受信信号の受信以降の切削装置160の動作は、切削装置100と同様である。ここで、算出部131による信号強度および信号強度の差分の算出は、受信信号を複数のグループに分けてもよい。例えば周波数f0の電磁波信号の反射波に基づく受信信号のグループCと、周波数f1の電磁波信号の反射波に基づく受信信号のグループDに分けて、算出部131は信号強度および信号強度の差分の算出を行う。これにより、センサ部120aおよび120bがそれぞれ設置されるY方向の位置において、対象物の有無の決定することができる。決定部132は、グループCおよびグループDの少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0083】
また、周波数分割の方法において、受信部122aおよび122bは、周波数f0の受信信号および周波数f1の受信信号を受信してもよい。図11は、受信部122aおよび122bが周波数f0の受信信号および周波数f1の受信信号を受信する場合を説明する図である。受信部122aおよび122bは、信号の受信処理の過程で、周波数f0の信号とf1の信号をそれぞれ分けて受信することが可能である。これにより、路面の凹凸または対象物の凹凸によっては受信信号の主方向が変わる場合でも、受信部122aだけでなく受信部122bでも受信することで受信信号の受信ミスを低減させることができる。
【0084】
算出部131は、信号強度および信号強度の差分の算出において、受信信号のグループCとグループBから、さらに複数のグループに分けてもよい。例えば、算出部131はグループCを受信部122aが受信した受信信号のグループC1および受信部122bが受信した受信信号のグループC2に分けてもよい。算出部131はグループDを受信部122aが受信した受信信号のグループD1および受信部122bが受信した受信信号のグループD2に分けてもよい。
【0085】
算出部131は、グループC1、C2、D1、D2それぞれ信号強度および信号強度の差分の算出を行い、決定部132はこれらのグループの信号強度の差分に基づいて対象物の有無を決定してもよい。例えば、決定部132はグループC1、C2、D1、およびD2の少なくとも1つが第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0086】
また、算出部131は、グループC1およびC2の同じ時刻における2つの受信信号のうち、信号強度が高い受信強度を選択し、グループC’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。算出部131はグループD1およびD2も同様に、同じ時刻において信号強度が高い受信信号を選択したグループD’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。決定部132はグループC’およびグループD’の少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0087】
また、算出部131は、グループC’の生成の際、グループC1およびC2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。算出部131は、グループD’の生成の際、グループD1およびD2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。
【0088】
(変形例7.3)
図12は、センサ部120aおよび120bが符号分割による送信を行う場合を説明する図である。送信部121aおよび121bは、送信する電磁波信号が同様の周波数であって、同時に送信する場合でも、それぞれが送信する電磁波信号に特定の符号を付与する(符号分割)ことで、それぞれが送信する電磁波信号の反射波に基づく受信信号を取り出すことができる。
【0089】
送信部121aおよび121bがそれぞれ電磁波信号を送信する時刻は制御部133により決定され、信号生成部134を通じて送信部121aおよび121bに指令される。
【0090】
時刻t0において送信部121aおよび121bは電磁波信号を送信する。これらの電磁波信号には同じ符号が付与されている。例えば図12(a)では、送信部121aおよび121bが送信する電磁波信号には、時刻t0における符号として+1の符号が付与されている(CodeA_t0=+1、CodeB_t0=+1)。+の符号は、信号が重畳された場合にその信号の強度を強める符号である。
【0091】
時刻t1において送信部121aおよび121bは電磁波信号を送信する。これらの電磁波信号にはそれぞれ反転した符号が付与されている。例えば図12(b)では、送信部121aが送信する電磁波信号には、時刻t1における符号として+1の符号が付与されている(CodeA_t1=+1)。一方、送信部121bが送信する電磁波信号には、時刻t1における符号として、+1の符号が反転した-1の符号が付与されている(CodeB_t1=-1)-の符号は、信号が重畳された場合にその信号の強度を弱める符号である。
【0092】
受信部122aおよび122bは、送信部121aが送信した電磁波信号の反射波に基づく受信信号aと、送信部121bが送信した電磁波信号の反射波に基づく受信信号bとが重畳された重畳信号を受信する。
【0093】
ここで、時刻によらず送信する電磁波信号の強度が同様であれば、その電磁波信号の反射波に基づく受信信号の強度も同様であると仮定する。この場合、送信部121aが送信した電磁波信号の反射波に基づく受信信号(取り出したい受信信号)の強度の絶対値をYa(以降、受信信号Yaとも称する)、送信部121bが送信した電磁波信号の反射波に基づく受信信号(取り出したい受信信号)の強度の絶対値をYb(以降、受信信号Ybとも称する)とする。受信部122aおよび122bが受信する、時刻t0における重畳信号の強度をYt0(以降、重畳信号Yt0とも称する)、時刻t1における重畳信号の強度をYt1(以降、重畳信号Yt1とも称する)とする。受信信号Ya、Yb、重畳信号Yt0、Yt1の関係は以下の式(1)に表される。
【数1】
【0094】
算出部131は、重畳信号Yt0およびYt1から、受信信号YaおよびYbを算出して取り出す。式(1)を受信信号YaおよびYbについて解くと以下の式(2)となる。
【数2】
【0095】
式(2)の算出により、算出部131は、時刻t0~t1における受信信号YaおよびYbを算出することになる。時刻t2において、送信部121aおよび121bがともに符号が+1の電磁波信号を送信し、受信部122aおよび122bが重畳信号(Yt2)を受信することで、式(2)と同様に、算出部131は時刻t1~t2における受信信号Ya’およびYb’を算出する。以降は本実施形態と同様に、算出部131は信号強度および信号強度の差分の算出を行い、決定部132は対象物の有無を決定する。
【0096】
ここで、算出部131による信号強度および信号強度の差分の算出は、算出した受信信号を複数のグループに分けてもよい。受信信号YaのグループEと、受信信号YbのグループFに分けて、算出部131は信号強度および信号強度の差分の算出を行う。これにより、センサ部120aおよび120bがそれぞれ設置されるY方向の位置において、対象物の有無の決定することができる。決定部132は、グループEおよびグループFの少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0097】
また、算出部131は、重畳信号を受信した受信部ごとに受信信号YaおよびYbの算出を行ってもよい。これにより、路面の凹凸または対象物の凹凸によっては受信信号の主方向が変わる場合でも、受信部122aだけでなく受信部122bでも受信することで受信信号の受信ミスを低減させることができる。
【0098】
例えば算出部131は、グループEを受信部122aが受信した重畳信号に基づいて算出された受信信号YaのグループE1、および受信部122bが受信した重畳信号に基づいて算出された受信信号YaのグループE2に分けてもよい。算出部131は、グループFを受信部122aが受信した重畳信号に基づいて算出された受信信号YbのグループF1、および受信部122bが受信した重畳信号に基づいて算出された受信信号YbのグループF2に分けてもよい。
【0099】
算出部131は、グループE1、E2、F1、F2それぞれ信号強度および信号強度の差分の算出を行い、決定部132はこれらのグループの信号強度の差分に基づいて対象物の有無を決定してもよい。例えば、決定部132はグループE1、E2、F1、およびF2の少なくとも1つが第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0100】
また、算出部131は、グループE1およびE2の同じ時刻における2つの受信信号のうち、信号強度が高い受信強度を選択し、グループE’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。グループF1およびF2も同様に、同じ時刻において信号強度が高い受信信号を選択したグループF’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。決定部132はグループF’およびグループF’の少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0101】
また、算出部131は、グループE’の生成の際、グループE1およびE2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。算出部131は、グループF’の生成の際、グループF1およびF2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。
【0102】
(変形例7.4)
図13は、センサ部120aおよび120bが位相変調による送信を行う場合を説明する図である。送信部121aおよび121bは、送信する電磁波信号の位相を直交させることにより、電磁波信号間の干渉によらず受信信号を得ることができる。
【0103】
送信部121aおよび121bがそれぞれ送信する電磁波信号の位相は制御部133により決定され、信号生成部134を通じて送信部121aおよび121bに指令される。
【0104】
例えば図13では、送信部121aは位相φ0の電磁波信号を送信し、送信部121bは位相φ0と直交する(90度異なる)位相φ1の電磁波信号を送信する。受信部122aは位相φ0の電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信し、受信部122bは位相φ1の電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信する。ここで、受信部122aは信号の受信処理の過程で、位相φ0の信号を取り出して受信することができ、受信部122bは位相φ1の信号を取り出して受信することができる。したがって送信部121aおよび121bが同時に電磁波信号を送信する場合でも、位相φ0の電磁波信号の反射波に基づく受信信号と、位相φ1の電磁波信号の反射波に基づく受信信号が区別されて受信される。
【0105】
受信信号の受信以降の切削装置160の動作は、切削装置100と同様である。ここで、算出部131による信号強度および信号強度の差分の算出は、受信信号を複数のグループに分けてもよい。例えば位相φ0の電磁波信号の反射波に基づく受信信号のグループGと、位相φ1の電磁波信号の反射波に基づく受信信号のグループHに分けて、算出部131は信号強度および信号強度の差分の算出を行う。これにより、センサ部120aおよび120bがそれぞれ設置されるY方向の位置において、対象物の有無の決定することができる。決定部132は、グループGおよびグループHの少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0106】
また、位相変調の方法において、受信部122aおよび122bは、位相φ0の受信信号および位相φ1の受信信号を受信してもよい。図11は、受信部122aおよび122bが位相φ0の受信信号および位相φ1の受信信号を受信する場合を説明する図である。受信部122aおよび122bは、信号の受信処理の過程で、位相φ0の信号とφ1の信号をそれぞれ分けて受信することが可能である。これにより、路面の凹凸または対象物の凹凸によっては受信信号の主方向が変わる場合でも、受信部122aだけでなく受信部122bでも受信することで受信信号の受信ミスを低減させることができる。
【0107】
算出部131は、信号強度および信号強度の差分の算出において、受信信号のグループGとグループBから、さらに複数のグループに分けてもよい。例えば、算出部131はグループGを受信部122aが受信した受信信号のグループG1および受信部122bが受信した受信信号のグループG2に分けてもよい。算出部131はグループHを受信部122aが受信した受信信号のグループH1および受信部122bが受信した受信信号のグループH2に分けてもよい。
【0108】
算出部131は、グループG1、G2、H1、H2それぞれ信号強度および信号強度の差分の算出を行い、決定部132はこれらのグループの信号強度の差分に基づいて対象物の有無を決定してもよい。例えば、決定部132はグループG1、G2、H1、およびH2の少なくとも1つが第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0109】
また、算出部131は、グループG1およびG2の同じ時刻における2つの受信信号のうち、信号強度が高い受信強度を選択し、グループG’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。算出部131はグループH1およびH2も同様に、同じ時刻において信号強度が高い受信信号を選択したグループH’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。決定部132はグループG’およびグループH’の少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0110】
また、算出部131は、グループG’の生成の際、グループG1およびG2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。算出部131は、グループH’の生成の際、グループH1およびH2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。
【0111】
以上、これらの変形例7により、複数のセンサ部120を用いて対象物の有無を決定することができる。複数のセンサ部120を用いることにより、対象物の有無を決定することができる範囲を広げることができ、対象物を認識し損ねる可能性を低減させることができる。
【0112】
(変形例8)
本変形例では、変形例7のセンサ部120を複数とした場合において、垂直偏波および水平偏波を用いる変形例である。図15は、センサ部120を複数として、センサ部120a、120b、120c、および120dを備える切削装置170の構成図である。
【0113】
送信部121aおよび121bのそれぞれは垂直偏波の電磁波信号を送信し、送信部121cおよび121dのそれぞれは水平偏波の電磁波信号を送信する。受信部122aおよび122bのそれぞれは、電磁波信号の反射波に基づく、垂直偏波の受信信号を受信する。受信部122aおよび122bのそれぞれは、電磁波信号の反射波に基づく、水平偏波の受信信号を受信する。
【0114】
以下、センサ部120aおよび120cの電磁波信号の送信および受信信号の受信について説明する。センサ部120bおよび120dはセンサ部120aおよび120cと同様なので、説明を省略する。
【0115】
図16は、センサ部120aおよび120cが異なる偏波の電磁波信号の送信を行う場合を説明する図である。送信する電磁波信号を異なる偏波とすることにより、凹凸の影響を低減させることができる。
【0116】
例えば図16では、送信部121aは垂直偏波の電磁波信号を送信し、送信部121cは水平偏波の電磁波信号を送信する。受信部122aは、送信部121aが送信した電磁波信号の反射波に基づく、垂直偏波の受信信号を受信する。受信部122cは、送信部121cは、電磁波信号の反射波に基づく、水平偏波の受信信号を受信する。
【0117】
受信信号の受信以降の切削装置170の動作は、切削装置100と同様である。ここで、算出部131による信号強度および信号強度の差分の算出は、受信信号を複数のグループに分けてもよい。例えば垂直偏波の受信信号のグループIと、水平偏波の受信信号のグループJに分けて、算出部131は信号強度および信号強度の差分の算出を行う。これにより、対象物の有無の決定の精度を向上させることができる。決定部132は、グループIおよびグループJの少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0118】
ここで、路面の凹凸または対象物の凹凸によっては、受信信号の主方向および偏波の向きが一部変わる場合がある。この場合、偏波の向きが変わった受信信号を他の受信部122が受信する。図17は、受信部122aおよび122cが偏波の向きが変わった受信信号をも受信する場合を説明する図である。
【0119】
受信部122aは、送信部121aが送信した垂直偏波の電磁波信号の反射波に基づく垂直偏波の受信信号と、送信部121cが送信した水平偏波の電磁波信号が、反射によって垂直偏波に変わった受信信号を受信する。受信部122cは、送信部121cが送信した水平偏波の電磁波信号の反射波に基づく水平偏波の受信信号と、送信部121aが送信した垂直偏波の電磁波信号が、反射によって水平偏波に変わった受信信号を受信する。受信部122aだけでなく受信部122cでも受信することで、凹凸の影響を低減し、受信信号の受信ミスを低減させることができる。
【0120】
この場合、垂直偏波同士、または水平偏波同士で干渉を起こす可能性があるため、送信部121aおよび121cがそれぞれ電磁波信号を送信する時刻は制御部133により決定され、信号生成部134を通じて送信部121aおよび121cに指令される。
【0121】
図17(a)では、時刻t0において送信部121aが垂直偏波の電磁波信号を送信する。受信部122aは、この電磁波信号の反射波に基づく、垂直偏波の受信信号を受信し、受信部122cは、この電磁波信号の反射波に基づく、水平偏波に変わった受信信号を受信する。図17(b)では、時刻t1において送信部121aが水平偏波の電磁波信号を送信する。受信部122cは、この電磁波信号の反射波に基づく、水平偏波の受信信号を受信し、受信部122aは、この電磁波信号の反射波に基づく、垂直偏波に変わった受信信号を受信する。
【0122】
以降同様に、時刻2n(nは0以上の整数)では送信部121aが、時刻2n+1では送信部121bが電磁波信号を送信する。
【0123】
算出部131は、信号強度および信号強度の差分の算出において、垂直偏波の受信信号のグループIと、垂直偏波の受信信号のグループJから、さらに複数のグループに分けてもよい。例えば、算出部131はグループIを時刻2nにおける受信信号のグループI1および時刻2n+1における受信信号のグループI2に分けてもよい。算出部131はグループJを時刻2nにおける受信信号のグループJ1および時刻2n+1における受信信号のグループJ2に分けてもよい。
【0124】
算出部131は、グループI1、I2、J1、J2それぞれ信号強度および信号強度の差分の算出を行い、決定部132はこれらのグループの信号強度の差分に基づいて対象物の有無を決定してもよい。例えば、決定部132はグループI1、I2、J1、およびJ2の少なくとも1つが第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0125】
また、算出部131は、グループI1およびI2の同じ時刻における2つの受信信号のうち、信号強度が高い受信強度を選択し、グループI’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。算出部131はグループJ1およびJ2も同様に、同じ時刻において信号強度が高い受信信号を選択したグループJ’として信号強度および信号強度の差分の算出を行ってもよい。決定部132はグループI’およびグループJ’の少なくとも一方が第1条件および第2条件を満たす場合、対象物が存在すると決定する。
【0126】
また、算出部131は、グループI’の生成の際、グループI1およびI2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。算出部131は、グループJ’の生成の際、グループJ1およびJ2の同じ時刻における2つの受信信号を合成してもよい。
【0127】
以上、これらの変形例8により、偏波の異なるセンサ部120を用いて対象物の有無を決定することができる。偏波の異なるセンサ部120を用いることにより、対象物の有無を決定することができる範囲を広げることができ、対象物を認識し損ねる可能性を低減させることができる。
【0128】
以上、本実施形態の変形例を説明した。これらの変形例は、組み合わせて適用されてもよい。本実施形態の切削装置100(信号処理装置110)は、移動しながら電磁波信号を路面に向けて送信する。この路面に対する反射波に基づく受信信号を受信し、受信信号に基づいて路面における対象物の有無を決定する。このようにすることで、路面における対象物の見落としリスクの低減や、天候および時間帯の影響を低減した対象物の検知を行うことができる。
【0129】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、センサ部120’が電磁波信号を送信する。切削装置200(信号処理装置110’)は、この電磁波信号の反射波に基づく受信信号に基づいて、受信信号の強度の角度分布(以降、信号強度の角度分布とも称する)を算出し、この信号強度の角度分布に基づいて、路面における対象物の有無を決定する。詳細には、切削装置200は、信号強度の角度分布に基づいて信号強度の角度分布の差分を算出し、信号強度の角度分布の差分に基づいて路面における対象物の有無を決定する。
【0130】
これにより、路面における対象物の有無を決定する範囲を拡大することができる。切削装置200の構成要素は、センサ部120がセンサ部120’となった以外は切削装置100と同様である。センサ120’としては例えば、パッチアンテナ、ホーンアンテナ、平面アンテナ、周期構造漏れ波アンテナ、メタマテリアルアンテナなどが用いられる。センサ部120’は、送信部121’および受信部122’を含む。
【0131】
切削装置200の動作は、図5で説明した切削装置100の動作において、信号強度を信号強度の角度分布、信号強度の差分を信号強度の角度分布の差分と変更する以外は同様である。図18は、本実施形態におけるセンサ部120’の電磁波信号の送信範囲および反射波に基づく受信信号の受信範囲を表す図である。送信部121’は切削装置100の幅方向(Y方向)に角度θの範囲に電磁波信号を送信する。角度θの範囲は、例えば路面と垂直な方向を基準として角度θ1からθ2までの範囲である。例えば図18では、路面に垂直な方向を基準として+40度から-40度までの範囲に電磁波信号を送信し、受信部122’はこの電磁波信号の反射波に基づく受信信号を受信する。
【0132】
算出部131は、この受信信号に基づいて、送信部121’による電磁波信号の送信角度とセンサ部120’からの距離を軸とした信号強度の角度分布を算出する。信号強度の角度分布を算出する方法は任意の方法が適用可能である。例えば、算出部131は、MIMOレーダ方式を用いたディジタル領域のアレー信号処理を用いて角度ごとに走査を行い(以降、角度ごとの走査を角度走査とも称する)、信号強度の角度分布を算出してもよい。算出部131は、フェーズドアレーアンテナ方式を用いて、あらかじめ定められた所定の角度に電磁波信号を送信する送信ビームフォーミング、またはあらかじめ定められた所定の角度の受信信号を受信する受信ビームフォーミングにより角度走査を行い、信号強度の角度分布を算出してもよい。算出部131は、制御部133の指令に応じて切り替えられる、センサ部120’のアンテナの指向性パターンに応じた受信信号に基づいて角度走査を行い、信号強度の角度分布を算出してもよい。
【0133】
図19は一例として、図18の場合における信号強度の角度分布である。図19のZ方向の軸は、送信部121’が電磁波信号を送信してから、受信部122’が受信するまでの時間を距離に変換して区切られて設定されており、Z1~Z8が設定されている。図19のθ方向は、+40度から-40度までの範囲が10度ごとに区切られて設定されている。Z方向の区切りとθ方向の区切りはセンサ部120’の分解能に応じて設定可能である。以降、Z方向の区切りとθ方向の区切りによって設定される範囲をエリアとも称する。エリアごとに信号強度が表されており、図19では信号強度が強いほど黒く表されている。白のエリアは電磁波信号の反射物が存在しないことを意味する。
【0134】
図19では、Z=Z5、θ=0度のエリアにおいて信号強度が最も強く、Z=Z5、θ=±10度のエリア、Z=Z6、θ=±20度のエリア、Z=Z7、θ=±30度、±40度のエリアの順番で信号強度が弱くなっている。図18を確認すると、Z=Z5、θ=0度のエリア、Z=Z5、θ=±10度のエリア、Z=Z6、θ=±20度のエリアは対象物によって反射した受信信号であることが表されており、Z=Z7、θ=±30度、±40度のエリアは路面のアスファルトによって反射した受信信号であることが表されている。
【0135】
図20は、第1の実施形態で説明した図3の同様の場合において、それぞれの時刻における信号強度の角度分布および信号強度の角度分布の差分を表す図である。なお、信号強度の角度分布の差分において、差分の絶対値が大きいほどエリアを黒く表している。
【0136】
算出部131は時刻t1~t5において、受信信号に基づいて信号強度の角度分布を算出し、信号強度の角度分布に基づいて、信号強度の角度分布の差分を算出する。決定部132は、信号強度の角度分布において、信号強度の角度分布に関する第3条件を満たす場合、フラグを生成する。第3条件は、信号強度の角度分布においていずれかのエリアで、第1の実施形態で説明した第1条件を満たすこととする。なお、第3条件は、信号強度の角度分布の差分に関する第3条件と称されてもよい。
【0137】
決定部132は、フラグの保持期間以内における信号強度の角度分布から、信号強度の角度分布に関する第4条件を満たす場合、路面に対象物が存在することを決定する。第4条件は、信号強度の角度分布においていずれかのエリアで、第1の実施形態で説明した第2条件を満たすこととする。なお、第4条件は、信号強度の角度分布の差分に関する第4条件と称されてもよい。
【0138】
また、第3条件は、信号強度の角度分布おいて所定の数のエリアで第1条件を満たすこととしてもよいし、第4条件は、信号強度の角度分布において所定の数のエリアで第2条件を満たすこととしてもよい。
【0139】
例えば図20では、決定部132は時刻t1およびt2における信号強度の角度分布の差分のうち、第1条件を満たすエリア(破線で囲まれた部分)が存在することを認識し、第3条件を満たしたとしてフラグを生成する。決定部132は、フラグの保持期間以内である時刻t4およびt5における信号強度の角度分布の差分のうち、第4条件を満たすエリア(破線で囲まれた部分)が存在することを認識する。決定部132は、第3条件および第4条件を満たしたとして、路面に対象物が存在することを決定する。
【0140】
以上に本実施形態における切削装置200を説明した。本実施形態で説明した切削装置200は一例であり、変形例は様々に実装、実行可能である。例えば、第1の実施形態で説明した変形例は切削装置200にも適用可能である。第1の実施形態の信号強度は信号強度の角度分布、信号強度の差分は信号強度の角度分布の差分に読み替えて適用してもよい。以下に本実施形態の変形例を説明する。
【0141】
(変形例9)
本実施形態では、送信部121’は切削装置100の幅方向(Y方向)に角度θの範囲に電磁波信号を送信する。角度θの範囲に電磁波信号を送信する方法は任意でよい。例えば電磁波信号を広角に送信可能な装置を用いてもよいし、角度θ1からθ2まで電磁波信号を複数送信してもよいし、電磁波信号の周波数を時刻に応じて変化させながら送信することにより、角度θ1からθ2まで電磁波信号を送信してもよい。算出部131は、本実施形態で説明した信号強度の角度分布を算出する方法を用いて、信号強度の角度分布を算出する。
【0142】
送信部121’は、角度θ1からθ2まで電磁波信号を複数送信することにより、角度θの範囲に電磁波信号を送信してもよい。センサ部120’のアンテナとして、複数のアンテナを用いる。例えば、送信部121’は、フェーズドアレーアンテナ方式を用いて、本実施形態で説明した送信ビームフォーミングにより角度θの範囲に電磁波信号を送信する。なお、角度θ1からθ2までの電磁波信号の送信間隔は、時刻tx~tx+1までの時間と比較して短くする。この場合、角度θ1からθ2までの一連の電磁波信号の送信は、時刻txにおける送信とみなす。
【0143】
図21は、電磁波信号の周波数を時刻に応じて変化させる場合の一例を表す図である。センサ部120’のアンテナとして、送信する電磁波信号の主方向が周波数に依存するアンテナが用いられる。例えば、周期構造漏れ波アンテナやメタマテリアルアンテナなどである。図21では、時刻taに周波数faの電磁波信号を送信し、時刻の経過に応じて周波数を変化させながら時刻tbに周波数fbの電磁波信号を送信する。周波数faの電磁波信号は角度θ1に送信され、周波数fbの電磁波信号は角度θ2に送信される場合、角度θの範囲に電磁波信号を送信することができる。なお、時刻taからtbまでの時間は時刻tx~tx+1までの時間と比較して十分小さいため、時刻ta~tbまでの一連の送信を時刻txにおける送信とみなす。
【0144】
(変形例10)
本実施形態では、信号強度の角度分布および信号強度の角度分布の差分から、切削装置200の幅方向(Y方向)における対象物の候補の長さを認識することが可能である。例えば図20では、決定部132は信号強度の角度分布の差分から対象物の候補が3エリア分存在することを認識可能である。
【0145】
決定部132は、信号強度の角度分布または信号強度の角度分布の差分に基づいて、対象物のY方向における長さを推定してもよい。例えば図20では、対象物の候補が存在するエリアはZ=Z5、θ=±10度であるので、決定部132は半径Z5の20度分の弧の長さが対象物の候補のY方向における長さであることが推定できる。決定部132は、推定した長さに基づいて、フラグの生成および対象物の有無の少なくとも一方を決定してもよい。
【0146】
例えば、記憶部105には対象物として決定する最大の長さLmaxを表す情報が保持されているとする。決定部132は、対象物のY方向における長さを推定し、長さLmaxと比較する。推定した長さがLmaxを超えている場合、決定部132は対象物ではないとしてフラグを生成しない、対象物が存在すると決定しない。このようにすることで、対象物の有無の決定の精度を向上させることができる。
【0147】
以上、本実施形態の変形例を説明した。本実施形態の切削装置200(信号処理装置110’)は、移動しながら電磁波信号を路面に向けて角度θ1からθ2まで送信する。切削装置200は、この路面に対する反射波に基づく受信信号を受信し、受信信号に基づいて信号強度の角度分布を算出し、路面における対象物の有無を決定する。このようにすることで、路面における対象物の有無を決定する範囲を拡大することができる。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0149】
100:切削装置
101:車体部
102:駆動部
103:コンベア部
104:切削部
105:記憶部
110、110’:信号処理装置
120、120a、120b、120c、120d、120’:センサ部
121、121a、121b、121c、121’:送信部
122、122a、122b、122c、122’:受信部
130:処理部
131:算出部
132:決定部
133:制御部
134:信号生成部
140:通知部
150:切削装置
160:切削装置
200:切削装置
図1
図2
図3
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図5
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