(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】薬液塗布装置および粘度調整ボトル
(51)【国際特許分類】
B05C 11/10 20060101AFI20240408BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240408BHJP
B01F 25/44 20220101ALI20240408BHJP
B01F 25/45 20220101ALI20240408BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240408BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B05C11/10
B05C5/00 101
B01F25/44
B01F25/45
H01L21/304 643A
H01L21/304 648K
H01L21/30 564C
H01L21/30 564D
(21)【出願番号】P 2020138231
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福住 高則
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-321512(JP,A)
【文献】特開平09-131524(JP,A)
【文献】米国特許第06672756(US,B1)
【文献】特表2009-523576(JP,A)
【文献】特開平11-008177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00-21/00
B01F 21/00-25/90
H01L 21/027
21/30
21/304
21/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希釈液によって薬液が希釈された混合液を基板
に塗布する処理部と、
前記薬液の供給源を接続可能な薬液供給部と、
前
記希釈液の供給源を接続可能な希釈液供給部と、
前記薬液供給部および前記希釈液供給部から前記薬液および前記希釈液がそれぞれ供給され、前記薬液および前記希釈液を混合する粘度調整ボトルを有する粘度調整部と、
前記薬液および前記希釈液が混合された
前記混合液を前記処理部に供給する混合液供給部と、を備え、
前記粘度調整ボトルは、
前記薬液が導入される第1の導入口と、
前記薬液を希釈する希釈液が導入される第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口に接続され、前記第1及び第2の導入口から導入された前記薬液および前記希釈液が流通可能な多孔質ボディと、
前記多孔質ボディに接続され、前
記混合液が排出される排出口と、を有
し、
前記多孔質ボディは、
上流側から下流側に向かって並ぶ複数のサブボディを有し、
前記複数のサブボディのそれぞれにおいて、
前記多孔質ボディの複数の孔の径は、上流側から下流側へ向かって小さくなる、
薬液塗布装置。
【請求項2】
希釈液によって薬液が希釈された混合液を基板
に塗布する薬液塗布装置に装着可能な粘度調整ボトルであって、
前記薬液が導入される第1の導入口と、
前
記希釈液が導入される第2の導入口と、
前記第1及び第2の導入口に接続され、前記第1及び第2の導入口から導入された前記薬液および前記希釈液が流通可能な多孔質ボディと、
前記多孔質ボディに接続され、前
記混合液が排出される排出口と、を備
え、
前記多孔質ボディは、
上流側から下流側に向かって並ぶ複数のサブボディを有し、
前記複数のサブボディのそれぞれにおいて、
前記多孔質ボディの複数の孔の径は、上流側から下流側へ向かって小さくなる、
粘度調整ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、薬液塗布装置および粘度調整ボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造装置の1つに、基板上に薬液を塗布して塗布膜を形成する薬液塗布装置がある。基板上に塗布膜を形成する際、例えば薬液の粘度を異ならせることで、塗布膜の膜厚を調整可能である。しかしながら、異なる膜厚の塗布膜を形成するごとに、粘度の異なる薬液を装置にセットしなければならず、手間がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6481598号公報
【文献】特開2002-239434号公報
【文献】特許第3559144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
1つの実施形態は、粘度の異なる複数の薬液を簡便に供給可能な薬液塗布装置および粘度調整ボトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の薬液塗布装置は、希釈液によって薬液が希釈された混合液を基板に塗布する処理部と、前記薬液の供給源を接続可能な薬液供給部と、前記希釈液の供給源を接続可能な希釈液供給部と、前記薬液供給部および前記希釈液供給部から前記薬液および前記希釈液がそれぞれ供給され、前記薬液および前記希釈液を混合する粘度調整ボトルを有する粘度調整部と、前記薬液および前記希釈液が混合された前記混合液を前記処理部に供給する混合液供給部と、を備え、前記粘度調整ボトルは、前記薬液が導入される第1の導入口と、前記薬液を希釈する希釈液が導入される第2の導入口と、前記第1及び第2の導入口に接続され、前記第1及び第2の導入口から導入された前記薬液および前記希釈液が流通可能な多孔質ボディと、前記多孔質ボディに接続され、前記混合液が排出される排出口と、を有し、前記多孔質ボディは、上流側から下流側に向かって並ぶ複数のサブボディを有し、前記複数のサブボディのそれぞれにおいて、前記多孔質ボディの複数の孔の径は、上流側から下流側へ向かって小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる薬液塗布装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる粘度調整ボトルの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる薬液塗布装置による薬液塗布処理の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0008】
(薬液塗布装置の構成例)
図1は、実施形態にかかる薬液塗布装置1の構成の一例を示す図である。
図1に示すように、薬液塗布装置1は、薬液供給部10、希釈液供給部20、粘度調整部30、混合液供給部40、処理部50、及び制御部70を備える。これらの構成により、薬液塗布装置1は、基板としてのウェハW上に薬液を塗布して塗布膜を形成する。
【0009】
薬液塗布装置1により形成される塗布膜としては、例えばフォトレジスト膜等のマスク膜、SOC(Spin On Carbon)膜等の下層膜、SOG(Spin On Glass)膜等の中間膜/絶縁膜、及びウェハWの表面を平坦化する平坦化膜等がある。
【0010】
処理部50は、スピナ51、複数のノズル52a,52b,52c、及びカップ54を備える。
【0011】
スピナ51は、支持台51a及びスピンモータ51bを備える。支持台51aは、概略円板状の上面形状を有している。支持台51aの上面にはウェハWが載置される。支持台51aは、図示しないスピンチャックを備えている。スピンチャックは、例えば真空吸着によってウェハWを固定保持する。
【0012】
スピンモータ51bは、支持台51aの下方に設けられている。スピンモータ51bは、支持台51aを回転軸Roに沿って所定回転数で回転させることにより、支持台51aに支持されたウェハWを回転させる。スピンモータ51bは、ウェハWを回転させることによって、ウェハW上に供給された薬液を遠心力によってウェハWの径方向(エッジ側)に向かって広げさせる。スピンモータ51bは、また、ウェハWを所定速度で回転させることによって、ウェハW上に残った薬液を遠心力で振りきる。
【0013】
カップ54は、支持台51aのエッジ側に配置されている。カップ54は、ウェハWから振り切られた薬液を受けることができるよう、円環状をなしている。これにより、カップ54は、ウェハWで振り切られた薬液を回収する。
【0014】
複数のノズル52a,52b,52cは、それぞれが所定の薬液等をウェハW上に送出するよう構成される。ノズル52aは、例えば塗布膜の原料となる薬液53aをウェハW上に滴下する。ノズル52bは、例えば余分な薬液をウェハW上から除去するシンナー53bをウェハW上に滴下する。ノズル52cは、例えばN2ガス等の不活性ガス53cをウェハW上に吹きつけて、更に余分な薬液等を除去する。
【0015】
各ノズル52a,52b,52cは、図示しないスキャンアームの先端部に設置されており、スキャンアームによって移動させられる。これらのスキャンアームは、ウェハWの中心位置とエッジ位置との間を移動可能に設けられている。
【0016】
また、各ノズル52a,52b,52cは、それぞれが供給管に接続されており、これらの供給管には、それぞれボトルが接続されている。
図1には、ノズル52aに接続される供給管11,31、41等および薬液ボトルCBのみを例示的に示す。このような構成により、各ノズル52a,52b,52cは、ウェハWの径方向に沿って移動しつつ、所定の薬液等を供給できるようになっている。
【0017】
以上のように、処理部50は、例えばスピンコーティング法によってウェハW上に塗布膜を形成する。ただし、処理部50によるウェハW上への塗布膜の形成は、ラスタスキャン法等のスピンコーティング法以外の方式で行われてもよい。
【0018】
薬液供給部10、希釈液供給部20、粘度調整部30、及び混合液供給部40は、ノズル52aに接続され、薬液ボトルCBから薬液を処理部50へ送出する。
【0019】
薬液供給部10は、薬液の供給源となる薬液ボトルCBを接続可能な供給管11、供給管11に接続されたポンプ12、供給管11の薬液ボトルCBとポンプ12との間に設けられたガス抜きタンク13、及びガス抜きタンク13に接続される排気管14を備える。
【0020】
薬液ボトルCBには塗布膜の原料となる薬液が収容されている。ポンプ12を駆動させることにより、薬液は薬液ボトルCBから供給管11へと流入する。また、薬液は、ガス抜きタンク13内に一時的に貯留されてガス抜きされた後、ポンプ12によって粘度調整部30へと送出される。薬液から生じた気泡等のガスは排気管14から排気される。
【0021】
希釈液供給部20は、希釈液の供給源となる希釈液ボトルTBを接続可能な供給管21を備える。希釈液ボトルTBには薬液を希釈する希釈液が収容されている。後述するように、薬液を所定の比率で希釈液により希釈することで、薬液の粘度を様々に異ならせることができる。通常、希釈前の薬液の粘度が最も高く、希釈率が高まるほど薬液の粘度は低下していく。希釈液は供給管21を通って粘度調整部30へと送出される。
【0022】
ここで、希釈液としては、例えばシクロヘキサノン(CAS No.108-94-1)、γ-ブチロラクトン(CAS No.96-48-0)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME:CAS No.107-98-2)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA:CAS No.108-65-6)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE:CAS No.1569-02-4)、3-メトキシプロピオン酸メチル(MMP:CAS No.3852-09-3)、酢酸ブチル(CAS No.123-86-4)、2-ヘプタノン(CAS No.110-43-0)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP:CAS No.872-50-4)等の種々の溶剤を用いることができる。
【0023】
粘度調整部30は、粘度調整ボトル装着部ATT、粘度調整ボトル300、ポンプ12と粘度調整ボトル300とを接続する供給管31、粘度調整ボトル300に接続される供給管32及び排気管33、供給管32に設けられた粘度計34、並びにポンプ12と後述のバルブ43とを接続する供給管35を備える。粘度調整ボトル300には、また、上述の供給管21が接続される。なお、バルブ43が、粘度調整部30に含まれることとしてもよい。
【0024】
粘度調整ボトル300は、粘度調整部30が備える粘度調整ボトル装着部ATTに装着可能に構成される。粘度調整ボトル装着部ATTは、粘度調整ボトル300に接続される供給管21,31,32,33等から構成される。粘度調整ボトル装着部ATTの詳細構成については後述する。
【0025】
粘度調整ボトル300には、供給管31から薬液が供給され、供給管21から希釈液が供給される。粘度調整ボトル300は、供給されたこれらの薬液および希釈液を混合して所定の粘度の混合液を生成する。薬液および希釈液を混合する際、これらの液から生じた気泡等のガスは、排気管33から排気される。粘度調整ボトル300の詳細の構成については後述する。
【0026】
粘度調整ボトル300で生成された混合液は供給管32から粘度計34へと流入する。粘度計34は、流入してきた混合液の粘度を計測する。混合液が所望の粘度であった場合には、バルブ43が切り替わることにより、混合液は下流の処理部50側へと送出される。混合液が所望の粘度に達していなかった場合には、バルブ43が切り替わることにより、混合液は供給管35を通ってポンプ12へと戻り、所望の粘度となるまで供給管31、粘度調整ボトル300、供給管32、バルブ43、供給管35による経路を循環する。このように、バルブ43は、例えば三方弁のような構成を有していてよい。
【0027】
混合液供給部40は、ノズル52aに接続される供給管41と、供給管41に設けられる構成であって、上流側からフィルタ42、バルブ43、ポンプ44、及びバルブ45と、フィルタ42に接続される排気管46とを備える。ただし、バルブ43がフィルタ42よりも上流側に設けられてもよい。また、バルブ43は、粘度調整部30に含まれることとしてもよい。
【0028】
粘度調整部30から送出された混合液は、フィルタ42を通ってバルブ43へと到達する。混合液がフィルタ42を通過する際に生じた気泡等のガスは、フィルタ42に接続された排気管46を通って排気される。
【0029】
バルブ43に到達した混合液は、バルブ43の切り替えにより、処理部50側へと送出され、あるいは、供給管35を通ってポンプ12側へと戻される。処理部50側へと送出された混合液は、ポンプ44が駆動することにより、バルブ45を通り、ノズル52aを介して処理部50へと供給される。
【0030】
なお、上述のように、
図1にはノズル52aに薬液を供給する機構のみを示したが、ノズル52bにシンナーを供給する機構も、破線の四角枠で示す希釈液供給部20、粘度調整部30、及びバルブ43を有さない以外は、上記のノズル52aに薬液を供給する機構と同様に構成されてよい。
【0031】
制御部70は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等を備え、薬液塗布装置1の全体を制御するコンピュータとして構成される。
【0032】
すなわち、制御部70は、ノズル52a,52b,52cからの薬液(混合液)53a、シンナー53b、及び不活性ガス53cのウェハWへの滴下量を制御する。また、制御部70は、ノズル52a,52b,52cのウェハW上での位置および移動速度を制御する。また、制御部70は、スピナ51の回転開始/停止のタイミング及び回転速度を制御する。
【0033】
また、制御部70は、薬液ボトルCB及び希釈液ボトルTBからの薬液および希釈液の送出量を制御する。また、制御部70は、ポンプ12,44及びバルブ43,45を制御して、薬液、希釈液、及びこれらの混合液を送出させる。また、制御部70は、粘度計34を制御して、粘度調整ボトル300から排出された混合液の粘度を計測させ、混合液の粘度に基づき、薬液および希釈液の送出量を調整し、また、バルブ43を制御して混合液を処理部50に供給させ、または、ポンプ12に送り戻させる。
【0034】
(粘度調整ボトルの構成例)
次に、
図2を用いて粘度調整ボトル300の構成例について説明する。
図2は、実施形態にかかる粘度調整ボトル300の構成の一例を示す図である。
図2(a)は、粘度調整ボトル300の縦方向の断面図であり、
図2(b)は、粘度調整ボトル300の上面図である。
図2(c)は、粘度調整ボトル300が備える多孔質ボディ310の横方向の断面図である。
【0035】
図2(a)(b)に示すように、粘度調整ボトル300は、導入口321a,331a、排出口332a、流路321,331,332、及び多孔質ボディ310を備える。また、粘度調整ボトル300は、内部で生じた気泡等のガスを排気する排気口333a及び流路333を備えていることが好ましい。
【0036】
導入口321a,331a、排出口332a、及び排気口333aは、粘度調整ボトル300の上面に設けられ、薬液塗布装置1が備える粘度調整ボトル装着部ATTに接続される。ただし、導入口321a,331a、排出口332a、及び排気口333aの粘度調整ボトル300上面における数と配置とは
図2(b)の例に限られず、様々に異なる構成とすることができる。
【0037】
粘度調整ボトル装着部ATTは、供給管21,31,32、排気管33、供給管21の下流端に取り付けられた送出口21a、供給管31の下流端に取り付けられた送出口31a、供給管32の上流端に取り付けられた流入口32a、及び排気管33の上流端に取り付けられた排気口33aを備える。
【0038】
粘度調整ボトル300に向けて、送出口21aからは希釈液が送出され、送出口31aからは薬液が送出される。粘度調整ボトル300からは、流入口32aに混合液が流入し、排気口33aに気泡等のガスが流入する。
【0039】
第2の導入口としての導入口321aは、供給管21に取り付けられた第2の送出口としての送出口21aに接続される。これにより、導入口321aを介して粘度調整ボトル300に希釈液が導入される。第1の導入口としての導入口331aは、供給管31に取り付けられた第1の送出口としての送出口31aに接続される。これにより、導入口331aを介して粘度調整ボトル300に薬液が導入される。
【0040】
排出口332aは、供給管32に取り付けられた流入口32aに接続される。排出口332aから流入口32aへは、粘度調整ボトル300で混合された混合液が排出される。これにより、流入口32aを介して混合液が薬液塗布装置1に流入する。
【0041】
排気口333aは、排気管33に取り付けられた排気口33aに接続される。排気口333aから排気口33aへは、粘度調整ボトル330内で生じた気泡等のガスが排気される。これにより、排気口33aを介して排気管33へとガスが排気される。
【0042】
導入口321a,331aは、それぞれ流路321,331によって多孔質ボディ310の上流端に接続される。これにより、導入口321a,331aから導入された希釈液および薬液は、流路321,331を通って多孔質ボディ310へと流入する。
【0043】
ここで、導入口321a,331aの数および配置を様々に異ならせることにより、
図2(c)~(e)に示すように、多孔質ボディ310の上流端近傍の様々な位置に、薬液および希釈液を導入することができる。
【0044】
図2(c)においては、薬液10cと希釈液20tとが、多孔質ボディ310の上流端近傍のランダムな位置に導入される。
図2(d)においては、多孔質ボディ310の上流端近傍の中心位置を含む略円形の領域に薬液10cが導入され、希釈液20cは、その領域を取り囲む円周上に、互いに所定距離離隔して配置された複数位置に導入される。
図2(e)においては、多孔質ボディ310の上流端近傍の中心位置を含む略円形の領域に薬液10cが導入され、希釈液20cは、その領域を取り囲む円周状の連続した領域に導入される。
【0045】
このように、薬液および希釈液は、多孔質ボディ310の異なる流路内に分かれて導入された後、以下に述べるように、多孔質ボディ310内で合流し、混合される。
【0046】
図2(a)に示すように、多孔質ボディ310は、例えば多孔質性の樹脂等から構成され、複数の微細な孔310pを備えている。これらの複数の孔310pが連続的あるいは断続的に連なることで、多孔質ボディ310の上流端から下流端へと通じ、薬液および希釈液が流通可能な複数の流路が形成される。
【0047】
また、多孔質ボディ310が備えるこれらの孔310pの径は、多孔質ボディの上流端から下流端までの位置に応じて異なっている。このとき、孔径が、上流側から下流側へ向かって小さくなっていくことが好ましい。
【0048】
これらの構成により、多孔質ボディ310の上流側から下流側へと流通していくうちに、薬液と希釈液とが混合されて混合液が生成される。このときに生じた気泡等のガスは、多孔質ボディ310の上流端と排気口333aとを接続する流路333によって、粘度調整ボトル300の外部へと排気される。
【0049】
なお、多孔質ボディ310が、上流側から下流側に向かって並ぶ複数のサブボディ311,312を備えることにより、上流側から下流側への孔径の変化が複数回、繰り返されてもよい。
図2(a)の例では、多孔質ボディ310は、上流側から下流側に向かって孔径が小さくなっていく2つのサブボディ311,312を備えるが、サブボディ311,312の数は3つ以上であってもよい。
【0050】
また、サブボディ311,312は、上流側から下流側に向かって孔径が大きくなっていく構成であってもよい。また、上流側のサブボディ311では、上流側から下流側に向かって孔径が小さくなっていき、下流側のサブボディ312では、上流側から下流側に向かって孔径が大きくなっていくように構成されていてもよい。
【0051】
上流側から下流側に向かって孔径が大きくなっていく構成では、薬液の粘度が高い上流側においては素早く薬液を流通させることができ、下流側においては、薬液と希釈液とがより精密に混合される。一方、上流側から下流側に向かって孔径が大きくなっていく構成では、混合初期において薬液と希釈液とが素早く混合されることが期待できる。
【0052】
多孔質ボディ310の下流端には、複数に分岐した流路332が接続される。分岐した流路332は集約されて多孔質ボディ310の側方を上方へと延び、排出口332aに接続される。これにより、多孔質ボディ310で生成された混合液が、排出口332aから薬液塗布装置1へと流入する。
【0053】
(薬液塗布装置の処理例)
次に、
図3を用いて、実施形態の薬液塗布装置1における薬液塗布の処理例について説明する。
図3は、実施形態にかかる薬液塗布装置1による薬液塗布処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0054】
図3に示すように、制御部70は、薬液塗布装置1の図示しない搬送系によって、ウェハWを処理部50内に搬入する(ステップS101)。制御部70は、ウェハWに形成する塗布膜の所望の膜厚に適合する比率で、薬液ボトルCBから薬液を送出し、希釈液ボトルTBから希釈液を送出する(ステップS102)。
【0055】
薬液ボトルCB及び希釈液ボトルTBからそれぞれ送出された薬液および希釈液は、粘度調整ボトル300内に導入されて、多孔質ボディ310内で粘度が調整された混合液として、粘度調整ボトル300から排出される(ステップS103)。
【0056】
制御部70は、粘度計34により混合液の粘度を計測し(ステップS104)、混合液が所望の粘度となっているか否かを判定する(ステップS105)。混合液が所望の粘度となっていなかった場合には(ステップS105:No)、制御部70は、バルブ43を切り替えて混合液をポンプ12へと戻し(ステップS109)、ステップS103からの処理を繰り返す。
【0057】
混合液が所望の粘度となっていた場合には(ステップS105:Yes)、制御部70は、バルブ43を切り替えて混合液を処理部50へと供給する(ステップS106)。制御部70は、ノズル52aを制御して混合液をウェハWに塗布する(ステップS107)。制御部70は、混合液を塗布されたウェハWを処理部50から搬出させる(ステップS108)。
【0058】
その後、ウェハWは、薬液塗布装置1の図示しないベーク機構によって加熱され、ウェハW上に所望の膜厚の塗布膜が形成される。
【0059】
以上により、実施形態の薬液塗布装置1における薬液塗布の処理が終了する。
【0060】
(概括)
薬液塗布装置による処理においては、ウェハ上に所望の膜厚の塗布膜を形成するため、粘度が調整された薬液が用いられることがある。しかしながら、塗布膜の膜厚を変更する際には、異なる薬液が収容されたボトルを薬液処理装置に装着し直さなければならない。また、膜厚の異なる複数種類の塗布膜を形成する際には、それぞれの塗布膜に対応する複数種類の薬液ごとに、薬液塗布装置にボトルを装着しなければならず、薬液塗布装置が大型化し高価格化してしまう場合がある。
【0061】
実施形態の薬液塗布装置1によれば、粘度調整部30が、薬液および希釈液を混合する粘度調整ボトル300を有する。これにより、粘度の異なる複数の薬液を簡便に供給することができる。したがって、塗布膜の膜厚を変更するたびに薬液ボトルCBを交換する必要が無く、薬液塗布装置1のダウンタイムを短縮し、工数を削減することができる。また、膜厚の異なる複数種類の塗布膜を形成するために、複数個の薬液ボトルCBを装着しておく必要が無く、薬液塗布装置1を小型化し、低価格化することができる。
【0062】
実施形態の薬液塗布装置1によれば、粘度調整部30は、粘度調整ボトル300が装着可能な粘度調整ボトル装着部ATTを含む。これにより、簡便に粘度調整ボトル300を装着することができる。
【0063】
実施形態の薬液塗布装置1によれば、粘度計34による計測結果に基づいて、制御部70が、バルブ43を切り替えて混合液の送出先を制御する。これにより、所望の粘度に達していない混合液が処理部50に供給されてしまうのを抑制することができる。
【0064】
実施形態の粘度調整ボトル300によれば、薬液および希釈液が流通可能な多孔質ボディ310を備える。これにより、多孔質ボディ310を流通した薬液および希釈液が混合された混合液を生成することができる。
【0065】
実施形態の粘度調整ボトル300によれば、多孔質ボディ310の複数の孔310pの径は、上流側から下流側までの位置に応じて異なっている。これにより、薬液および希釈液を精密に混合することができる。
【0066】
実施形態の粘度調整ボトル300によれば、多孔質ボディ310は、複数の孔310pの径が上流側から下流側へ向かって小さくなる複数のサブボディ311,312を備える。これにより、薬液および希釈液の混合が所定周期で繰り返され、これらの薬液および希釈液をより精密に混合することができる。
【0067】
実施形態の粘度調整ボトル300によれば、導入口321a,331a、排出口332a、及び排気口333aを、粘度調整ボトル300の上面に有する。このように、これらの導入口321a,331a、排出口332a、及び排気口333aが、粘度調整ボトル300の1つの面に集約されていることで、薬液塗布装置1への粘度調整ボトル300の装着が容易となる。また、薬液塗布装置1の粘度調整ボトル装着部ATTの構成をシンプルにすることができ、薬液塗布装置1を小型化することができる。
【0068】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
1…薬液塗布装置、10…薬液供給部、20…希釈液供給部、30…粘度調整部、40…混合液供給部、50…処理部,70…制御部,300…粘度調整ボトル、310…多孔質ボディ、310p…孔、311,312…サブボディ、ATT…粘度調整ボトル装着部、W…ウェハ。