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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】アンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20240408BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20240408BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q1/24 C
H01Q1/12 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020140761
(22)【出願日】2020-08-24
(65)【公開番号】P2022036513
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】玉城 克彰
(72)【発明者】
【氏名】太田 俊博
(72)【発明者】
【氏名】新渡戸 祐二
(72)【発明者】
【氏名】星 則光
【審査官】白井 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-098936(JP,A)
【文献】特開2003-092509(JP,A)
【文献】特開2005-124013(JP,A)
【文献】特開2007-189612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00
H01Q 1/24
H01Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルと、支持部材とを備えるアンテナモジュールであって、
前記支持部材は、前記アンテナコイルを支持しており、
前記アンテナコイルは、巻回部を有しており、
前記巻回部は、上下方向に沿って延びる巻軸の周りを巻回しており、
前記支持部材は、壁部と、下側支持部と、第1上側支持部と、第2上側支持部と、コイルガイドとを有しており、
前記壁部は、前記上下方向と直交する水平面において、前記巻回部に囲まれており、
前記下側支持部は、前記壁部から、前記水平面において外側に張り出しており、且つ、前記巻回部の下方に位置しており、
前記第1上側支持部は、前記上下方向と直交する前後方向において前記第2上側支持部の前方に位置しており、
前記コイルガイドは、前記下側支持部から上方に突出しており、且つ、前記水平面において前記巻回部を部分的に囲んでおり、
前記壁部は、外周面を有しており、
前記外周面は、前記水平面における前記壁部の外周に位置しており、凹壁面を有しており、
前記凹壁面は、前記水平面において内側に凹んでおり、
前記第1上側支持部は、前記外周面から、前記前後方向において前記第2上側支持部から離れるように張り出しており、且つ、前記巻回部の上方に位置しており、
前記第2上側支持部は、前記外周面から、前記前後方向において前記第1上側支持部から離れるように張り出しており、且つ、前記巻回部の上方に位置しており、
前記コイルガイドは、主ガイド部を有しており、
前記主ガイド部は、前記コイルガイドのうち前記水平面において前記凹壁面の少なくとも一部に沿って延びる部位であり、
前記コイルガイドは、前記第1上側支持部に対応する部位を有しておらず、且つ、前記第2上側支持部に対応する部位を有していない
アンテナモジュール。
【請求項2】
請求項1記載のアンテナモジュールであって、
前記凹壁面には、前記第1上側支持部及び前記第2上側支持部のいずれも形成されていない
アンテナモジュール。
【請求項3】
請求項2記載のアンテナモジュールであって、
前記水平面において前記壁部全体を最短距離で囲む1本の閉じた仮想線を描画したとき、前記外周面のうち前記水平面において前記仮想線の内側に位置する部位には、前記第1上側支持部及び前記第2上側支持部のいずれも形成されていない
アンテナモジュール。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のアンテナモジュールであって、
前記第1上側支持部は、前記前後方向に沿って前方に張り出しており、
前記主ガイド部は、少なくとも部分的に前記前後方向に沿って延びている
アンテナモジュール。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のアンテナモジュールであって、
前記主ガイド部全体が前記前後方向に沿って延びている
アンテナモジュール。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載のアンテナモジュールであって、
前記第1上側支持部は、前記外周面から前記前後方向において第1距離だけ張り出しており、
前記主ガイド部は、所定部を有しており、
前記所定部は、前記主ガイド部のうち前記凹壁面のまっすぐ前方に位置する部位であり、且つ、前記主ガイド部のうち前記前後方向において前記凹壁面に最も近い部位であり、
前記第1距離は、前記前後方向における前記所定部と前記凹壁面との間の距離以下である
アンテナモジュール。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載のアンテナモジュールであって、
前記第2上側支持部は、前記外周面から第2距離だけ張り出しており、
前記第2距離は、前記アンテナコイルの線径の半分以上かつ2倍以下である
アンテナモジュール。
【請求項8】
請求項7記載のアンテナモジュールであって、
前記第2距離は、前記アンテナコイルの前記線径以下である
アンテナモジュール。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載のアンテナモジュールであって、
前記主ガイド部は、少なくとも部分的に前記凹壁面に向かって傾斜している
アンテナモジュール。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載のアンテナモジュールであって、
前記第1上側支持部及び前記第2上側支持部のうちの少なくとも一つは、少なくとも部分的に下方に傾斜している
アンテナモジュール。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかに記載のアンテナモジュールであって、
前記凹壁面には、窪みが形成されており、
前記窪みは、前記水平面において内側に窪んでいる
アンテナモジュール。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれかに記載のアンテナモジュールであって、
前記アンテナコイルは、2つの端部を有しており、
前記巻回部は、2以上のターンを有しており、
前記ターンは、前記上下方向において互いに固着されており、
前記支持部材は、収容部を有しており、
前記収容部は、前記水平面において前記壁部に囲まれた空間であり、
前記収容部は、開口部を有しており、
前記収容部は、前記開口部において前記壁部の外部に開口しており、
前記収容部には、傾斜部が設けられており、
前記傾斜部は、前記収容部の前記開口部から、下方に傾斜しつつ前記水平面において内側に延びており、
前記アンテナコイルの前記端部のうちの一方は、前記傾斜部に沿って延びている
アンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナコイルと、アンテナコイルを支持する支持部材とを備えるアンテナモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、このタイプのアンテナモジュールが開示されている。
【0003】
特許文献1のアンテナモジュールは、アンテナコイルと、アンテナコイルを支持する支持部材とを備えている。支持部材は、壁部を有している。アンテナコイルは、水平面において壁部を囲むようにして、支持部材に取り付けられている。特許文献1のアンテナモジュールによれば、予め形成されたアンテナコイルを支持部材に簡単に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6171064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の実施形態に示された壁部は、水平面において角丸四角形状といった比較的単純な形状を有している。しかしながら、アンテナモジュールを取り付ける場所等の様々な条件に応じて、壁部が複雑な形状を有する場合がある。例えば、壁部の外周面は、水平面において内側に凹んだ凹壁面を有する場合がある。この場合、アンテナコイルのうち凹壁面を囲む部位は、水平面において凹壁面から離れ易い。即ち、アンテナコイルの一部が、水平面における設計された所定位置からずれ易い。アンテナコイルの位置がずれると、アンテナモジュールが設計値と異なるインダクタンスを有するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、支持部材の壁部が複雑な形状を有する場合でもアンテナコイルを水平面における所定位置に維持可能なアンテナモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1のアンテナモジュールとして、
アンテナコイルと、支持部材とを備えるアンテナモジュールであって、
前記支持部材は、前記アンテナコイルを支持しており、
前記アンテナコイルは、巻回部を有しており、
前記巻回部は、上下方向に沿って延びる巻軸の周りを巻回しており、
前記支持部材は、壁部と、下側支持部と、第1上側支持部と、第2上側支持部と、コイルガイドとを有しており、
前記壁部は、前記上下方向と直交する水平面において、前記巻回部に囲まれており、
前記下側支持部は、前記壁部から、前記水平面において外側に張り出しており、且つ、前記巻回部の下方に位置しており、
前記第1上側支持部は、前記上下方向と直交する前後方向において前記第2上側支持部の前方に位置しており、
前記コイルガイドは、前記下側支持部から上方に突出しており、且つ、前記水平面において前記巻回部を部分的に囲んでおり、
前記壁部は、外周面を有しており、
前記外周面は、前記水平面における前記壁部の外周に位置しており、凹壁面を有しており、
前記凹壁面は、前記水平面において内側に凹んでおり、
前記第1上側支持部は、前記外周面から、前記前後方向において前記第2上側支持部から離れるように張り出しており、且つ、前記巻回部の上方に位置しており、
前記第2上側支持部は、前記外周面から、前記前後方向において前記第1上側支持部から離れるように張り出しており、且つ、前記巻回部の上方に位置しており、
前記コイルガイドは、主ガイド部を有しており、
前記主ガイド部は、前記コイルガイドのうち前記水平面において前記凹壁面の少なくとも一部に沿って延びる部位であり、
前記コイルガイドは、前記第1上側支持部に対応する部位を有しておらず、且つ、前記第2上側支持部に対応する部位を有していない
アンテナモジュールを提供する。
【0008】
本発明は、第2のアンテナモジュールとして、第1のアンテナモジュールであって、
前記凹壁面には、前記第1上側支持部及び前記第2上側支持部のいずれも形成されていない
アンテナモジュールを提供する。
【0009】
本発明は、第3のアンテナモジュールとして、第2のアンテナモジュールであって、
前記水平面において前記壁部全体を最短距離で囲む1本の閉じた仮想線を描画したとき、前記外周面のうち前記水平面において前記仮想線の内側に位置する部位には、前記第1上側支持部及び前記第2上側支持部のいずれも形成されていない
アンテナモジュールを提供する。
【0010】
本発明は、第4のアンテナモジュールとして、第1から第3までのいずれかのアンテナモジュールであって、
前記第1上側支持部は、前記前後方向に沿って前方に張り出しており、
前記主ガイド部は、少なくとも部分的に前記前後方向に沿って延びている
アンテナモジュールを提供する。
【0011】
本発明は、第5のアンテナモジュールとして、第1から第4までのいずれかのアンテナモジュールであって、
前記主ガイド部全体が前記前後方向に沿って延びている
アンテナモジュールを提供する。
【0012】
本発明は、第6のアンテナモジュールとして、第1から第5までのいずれかのアンテナモジュールであって、
前記第1上側支持部は、前記外周面から前記前後方向において第1距離だけ張り出しており、
前記主ガイド部は、所定部を有しており、
前記所定部は、前記主ガイド部のうち前記凹壁面のまっすぐ前方に位置する部位であり、且つ、前記主ガイド部のうち前記前後方向において前記凹壁面に最も近い部位であり、
前記第1距離は、前記前後方向における前記所定部と前記凹壁面との間の距離以下である
アンテナモジュールを提供する。
【0013】
本発明は、第7のアンテナモジュールとして、第1から第6までのいずれかのアンテナモジュールであって、
前記第2上側支持部は、前記外周面から第2距離だけ張り出しており、
前記第2距離は、前記アンテナコイルの線径の半分以上かつ2倍以下である
アンテナモジュールを提供する。
【0014】
本発明は、第8のアンテナモジュールとして、第7のアンテナモジュールであって、
前記第2距離は、前記アンテナコイルの前記線径以下である
アンテナモジュールを提供する。
【0015】
本発明は、第9のアンテナモジュールとして、第1から第8までのいずれかのアンテナモジュールであって、
前記主ガイド部は、少なくとも部分的に前記凹壁面に向かって傾斜している
アンテナモジュールを提供する。
【0016】
本発明は、第10のアンテナモジュールとして、第1から第9までのいずれかのアンテナモジュールであって、
前記第1上側支持部及び前記第2上側支持部のうちの少なくとも一つは、少なくとも部分的に下方に傾斜している
アンテナモジュールを提供する。
【0017】
本発明は、第11のアンテナモジュールとして、第1から第10までのいずれかのアンテナモジュールであって、
前記凹壁面には、窪みが形成されており、
前記窪みは、前記水平面において内側に窪んでいる
アンテナモジュールを提供する。
【0018】
本発明は、第12のアンテナモジュールとして、第1から第11までのいずれかのアンテナモジュールであって、
前記アンテナコイルは、2つの端部を有しており、
前記巻回部は、2以上のターンを有しており、
前記ターンは、前記上下方向において互いに固着されており、
前記支持部材は、収容部を有しており、
前記収容部は、前記水平面において前記壁部に囲まれた空間であり、
前記収容部は、開口部を有しており、
前記収容部は、前記開口部において前記壁部の外部に開口しており、
前記収容部には、傾斜部が設けられており、
前記傾斜部は、前記収容部の前記開口部から、下方に傾斜しつつ前記水平面において内側に延びており、
前記アンテナコイルの前記端部のうちの一方は、前記傾斜部に沿って延びている
アンテナモジュールを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の支持部材の壁部は、水平面において内側に凹んだ凹壁面を含む複雑な形状を有している。一方、支持部材は、水平面において凹壁面に沿って延びる主ガイド部を有している。アンテナコイルの巻回部のうち凹壁面を囲む部位を、凹壁面と主ガイド部との間に位置させることで、巻回部を凹壁面から離れないように支持できる。即ち、本発明によれば、支持部材の壁部が複雑な形状を有する場合でもアンテナコイルを水平面における所定位置に維持可能なアンテナモジュールを提供できる。
【0020】
本発明の下側支持部は、壁部から張り出しており、巻回部の下方に位置している。一方、本発明の第1上側支持部及び第2上側支持部は、壁部から張り出しており、巻回部の上方に位置している。上述のように形成された下側支持部、第1上側支持部及び第2上側支持部は、アンテナコイルの脱落や上下方向における位置ずれを防止できる。
【0021】
本発明のコイルガイドは、壁部から張り出した第1上側支持部に対応する部位を有しておらず、且つ、壁部から張り出した第2上側支持部に対応する部位を有していない。上述のように形成されたコイルガイドは、アンテナコイルの支持部材への取り付けを邪魔しない。即ち、本発明によれば、特許文献1の発明と同様に、予め形成されたアンテナコイルを支持部材に簡単に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態によるアンテナモジュールを示す斜視図である。アンテナコイルの仮想的な巻軸を1点鎖線で描画している。
図2図1のアンテナモジュールを示す別の斜視図である。アンテナモジュールの一部(破線で囲んだ部分)を拡大して描画している。拡大図において、第1上側支持部の輪郭を1点鎖線で描画し、下方に傾斜したときの第1上側支持部の輪郭を実線で描画している。
図3図1のアンテナモジュールを示す更に別の斜視図である。アンテナモジュールの一部(破線で囲んだ部分)を拡大して描画している。
図4図1のアンテナモジュールを示す上面図である。磁性シートの隠れた輪郭を1点鎖線で描画している。
図5図1のアンテナモジュールの一部(破線Aで囲んだ部分)を拡大して示す斜視図である。凹壁面に向かって傾斜したときの主ガイド部の輪郭を1点鎖線で描画している。
図6図4のアンテナモジュールの一部(破線Bで囲んだ部分)を拡大して示す斜視図である。変形例による主ガイド部の輪郭の一部を1点鎖線で描画している。
図7図1のアンテナモジュールを示す分解斜視図である。アンテナモジュールの一部(破線で囲んだ2つの部位)を拡大して描画している。アンテナコイルの仮想的な巻軸を1点鎖線で描画している。アンテナコイルを作製した際の巻回部の輪郭を2点鎖線で描画している。
図8図7のアンテナモジュールの支持部材を示す上面図である。FPCの端部の輪郭を波線で描画している。水平面において支持部材の壁部全体を最短距離で囲む1本の閉じた仮想線を1点鎖線で描画している。
図9図8の支持部材の壁部の変形例を模式的に示す上面図である。
図10】アンテナコイルの支持部材への取り付け方法を説明するための図である。アンテナコイルの巻回部の概略形状を破線で描画している。FPC及びアンテナコイルの端部を描画していない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1を参照すると、本発明の実施の形態によるアンテナモジュール10は、電子機器(図示せず)に組み込まれて、電子機器の通信アンテナとして機能する。但し、本発明は、これに限られず、様々なアンテナモジュールに適用可能である。
【0024】
本実施の形態のアンテナモジュール10は、アンテナコイル20と、樹脂等の絶縁体からなる支持部材30と、軟磁性体からなる磁性シート70と、FPC(Flexible Printed Circuits)80とを備えている。アンテナモジュール10は、上述した部材(アンテナコイル20、支持部材30、磁性シート70及びFPC80)のみを備えている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、アンテナモジュール10は、FPC80を備えていなくてもよい。一方、アンテナモジュール10は、上述した部材に加えて、更に別の部材を備えていてもよい。
【0025】
以下、本実施の形態のアンテナコイル20、FPC80及び磁性シート70について、この順番に説明する。
【0026】
図7を参照すると、本実施の形態のアンテナコイル20は、1本の電線を巻回して形成した空芯コイルである。本実施の形態の電線は、自己融着線である。自己融着線は、導電体からなる芯線(図示せず)と、芯線を覆う絶縁体からなる絶縁層(図示せず)と、絶縁層を覆う融着層(図示せず)とを備えている。自己融着線は、上下方向(Z方向)において2段以上に巻回されており、且つ、Z方向と直交する水平面(XY平面)において1列に巻回されている。Z方向に重なった自己融着線は、互いに融着されている。
【0027】
本実施の形態のアンテナコイル20は、上述のように形成されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、アンテナコイル20は、自己融着線以外の電線から形成してもよい。この場合、Z方向に重なった電線を接着剤等の固定材料によって互いに固着してもよい。また、自己融着線等の電線は、Z方向だけでなくXY平面においても2列以上に巻回してもよい。
【0028】
上述のように形成されたアンテナコイル20は、巻回部22と、2つの端部28とを有している。本実施の形態の巻回部22及び端部28の夫々は、一体に形成された単一のアンテナコイル20の一部である。但し、本発明は、これに限られない。例えば、端部28の夫々は、巻回部22と別体に形成されていてもよく、巻回部22に溶接されていてもよい。
【0029】
巻回部22は、Z方向に沿って延びる巻軸AXの周りを巻回している。詳しくは、巻回部22は、互いに繋がった2以上のターン220を有している。ターン220は、Z方向において互いに重なっており且つ互いに固着されている。ターン220の夫々は、巻軸AXの周りを1周だけ巻回している。即ち、巻回部22は、巻軸AXの周りを2回以上巻回している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、巻回部22は、巻軸AXの周りを1回だけ巻回していてもよい。換言すれば、ターン220の数は、1であってもよい。
【0030】
本実施の形態のターン220は、1つの上側ターン(ターン)22Uと、1つの下側ターン(ターン)22Lと、2つの中間ターン(ターン)22Mとを含んでいる。上側ターン22Uは、巻回部22の最も上に位置している。下側ターン22Lは、巻回部22の最も下に位置している。中間ターン22Mは、Z方向において上側ターン22Uと下側ターン22Lとの間に位置している。上側ターン22U及び下側ターン22Lの夫々は、接続端222を有している。2つの接続端222は、Z方向と直交する前後方向(X方向)において、アンテナコイル20の後端(-X側の端)に位置しており、X方向及びZ方向の双方と直交する横方向(Y方向)において、互いに離れている。
【0031】
上側ターン22Uの接続端222は、2つの端部28のうちの一方と繋がっている。下側ターン22Lの接続端222は、2つの端部28のうちの他方と繋がっている。端部28のうちの一方は、上側ターン22Uの接続端222からX方向に沿って延びており、巻回部22のXY平面における内側に位置している。端部28のうちの他方は、下側ターン22Lの接続端222からX方向に沿って延びており、巻回部22のXY平面における内側に位置している。
【0032】
本実施の形態の巻回部22及び端部28は、上述の構造を有している。但し、本発明は、これに限られず、巻回部22及び端部28の構造は、必要に応じて様々に変形可能である。
【0033】
本実施の形態のFPC80は、アンテナコイル20を電子機器(図示せず)の通信回路(図示せず)に接続するための回路部材である。FPC80は、絶縁体からなる基体86と、導電体からなる2つの導電パターン82とを備えている。
【0034】
基体86は、被収容部862と、連結部864と、端部866とを有している。被収容部862は、X方向に沿って延びている。被収容部862には、2つの被固定孔88が形成されている。被固定孔88の夫々は、被収容部862をZ方向に貫通している。連結部864は、被収容部862の前端(+X側の端)から、全体として下方(-Z方向)に延びている。端部866は、連結部864の下端(-Z側の端)から前方(+X方向)に延びている。
【0035】
導電パターン82の夫々は、基体86に形成されており、電極84を有している。2つの導電パターン82は、Y方向に並んでおり、被収容部862と端部866との間を基体86に沿って延びている。導電パターン82の大部分は、基体86によって覆われている。一方、導電パターン82は、端部866において部分的に基体86から露出している。また、電極84は、被収容部862から露出している。アンテナコイル20の2つの芯線(図示せず)は、端部28の前端から夫々露出しており、FPC80の電極84に半田付け等によって夫々固定され接続されている。
【0036】
本実施の形態のFPC80は、上述の構造を有している。アンテナモジュール10が電子機器(図示せず)に組み込まれたとき、端部866の導電パターン82は、通信回路(図示せず)に接続され、これにより、アンテナコイル20は、通信回路と電気的に接続される。但し、本発明は、これに限られず、FPC80の構造は、特に限定されない。また、アンテナコイル20は、FPC80以外の部材によって通信回路に接続してもよい。
【0037】
本実施の形態の磁性シート70は、XY平面に沿って延びる薄いシートである。磁性シート70は、軟磁性金属粉末(図示せず)を樹脂バインダ(図示せず)によって結着して形成されており、これにより軟磁性を有している。磁性シート70には、貫通孔72が形成されている。貫通孔72は、磁性シート70をZ方向に貫通している。
【0038】
図4を参照すると、アンテナモジュール10が電子機器(図示せず)に組み込まれたとき、磁性シート70は、支持部材30を介してアンテナコイル20の巻回部22の真下に位置する。このように配置されたアンテナコイル20及び磁性シート70は、電子機器の通信アンテナとして機能する。
【0039】
本実施の形態の磁性シート70は、支持部材30の下面(-Z側の面)に、接着剤等の固定材料によって固定されている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、磁性シート70を支持部材30に取り付ける方法は、特に限定されない。また、支持部材30を樹脂から成型する際に、樹脂に軟磁性金属粉末を混合してもよい。この場合、アンテナモジュール10は、磁性シート70を備えていなくてもよい。
【0040】
以下、本実施の形態の支持部材30の基本的な構造について説明する。
【0041】
図1及び図2を参照すると、本実施の形態の支持部材30は、壁部32と、収容部34と、下側支持部50と、2つの第1上側支持部52と、2つの第2上側支持部54と、コイルガイド60とを有している。
【0042】
壁部32は、1枚の滑らかな平板であり、XY平面と平行に延びている。壁部32は、XY平面において支持部材30の大部分を占めている。壁部32は、外周面40を有している。外周面40は、XY平面における壁部32の外周に位置している。外周面40は、Z方向と平行に延びる曲面である。収容部34は、XY平面において壁部32に囲まれた空間である。
【0043】
下側支持部50、第1上側支持部52及び第2上側支持部54の夫々は、壁部32から、XY平面において外側に張り出している。第1上側支持部52及び第2上側支持部54の夫々は、下側支持部50の上方(+Z側)に位置している。第1上側支持部52は、第2上側支持部54の前方に位置している。壁部32及び収容部34は、X方向において、第1上側支持部52と第2上側支持部54との間に位置している。コイルガイド60は、XY平面において、壁部32の外側に位置している。
【0044】
支持部材30は、後に詳しく説明するように、アンテナコイル20を支持している。例えば、アンテナコイル20は、巻回部22がXY平面において壁部32を巻回するようにして、支持部材30に取り付けられている。即ち、壁部32は、XY平面において、巻回部22に囲まれている。また、下側支持部50は、巻回部22の下方に位置している。即ち、下側支持部50は、巻回部22を下方から支持している。
【0045】
本実施の形態の支持部材30は、上述した構造を有する上述した部位(壁部32、収容部34、下側支持部50、第1上側支持部52、第2上側支持部54及びコイルガイド60)のみを有している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、支持部材30は、上述した部位に加えて更に別の部位を有していてもよい。一方、後述するように、収容部34は、必要に応じて設ければよい。また、壁部32の上面(+Z側の面)には、凹凸が形成されていてもよい。
【0046】
以下、本実施の形態の支持部材30の収容部34について説明する。
【0047】
図3を参照すると、収容部34は、上方に開口している。一方、収容部34には、底部38が形成されている。底部38は、収容部34の下端に位置している。即ち、収容部34は、壁部32に形成された底のある凹みである。底部38は、下側支持部50と共に、支持部材30の下端を規定している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、Z方向における底部38の位置及び下側支持部50の位置は、互いに異なっていてもよい。
【0048】
本実施の形態の収容部34は、全体としてX方向に沿って延びている。収容部34は、Y方向両側及び前方から壁部32に囲まれている。一方、収容部34は、後方(-X方向)に開口している。詳しくは、収容部34は、開口部342を有している。開口部342は、X方向において収容部34の後端に位置している。収容部34は、開口部342において壁部32の外部に開口している。即ち、開口部342は、収容部34と外部空間との間に位置する境界部である。開口部342のY方向における両端は、壁部32の外周面40と繋がっている。
【0049】
収容部34は、FPC80の被収容部862を収容するための空間である。収容部34は、XY平面において、被収容部862に対応した形状を有しており、且つ、被収容部862よりも大きなサイズを有している。収容部34の底部38には、2つの固定突起346が形成されている。固定突起346は、XY平面において、被収容部862の被固定孔88と夫々対応する位置に形成されている。固定突起346は、被固定孔88に夫々挿入され固定されており、これにより、被収容部862は、底部38の上に固定されている。
【0050】
図4を参照すると、収容部34の底部38には、貫通孔382が形成されている。貫通孔382は、底部38をZ方向に貫通している。貫通孔382は、XY平面において、FPC80の端部866に対応した形状を有しており、且つ、端部866よりも大きなサイズを有している。また、磁性シート70の貫通孔72は、XY平面において、貫通孔382に対応した形状を有しており、且つ、貫通孔382よりも大きなサイズを有している。磁性シート70は、XY平面において貫通孔382が貫通孔72の内側に位置するようにして、支持部材30の下面に固定されている。FPC80の連結部864は、貫通孔382及び貫通孔72を通過して下方に延びている。FPC80の端部866は、支持部材30の下方に位置している。
【0051】
図3を参照すると、本実施の形態の収容部34には、傾斜部344が設けられている。傾斜部344は、収容部34のY方向における一方側(+Y側)に位置しており、壁部32からY方向に沿って収容部34の内部に張り出すようにして形成されている。傾斜部344は、収容部34の開口部342(即ち、収容部34の後端)から、下方に傾斜しつつXY平面において内側に延びている。傾斜部344の後端は、X方向において、開口部342と同じ位置にあり、Z方向において、底部38の上方に位置している。傾斜部344の前端は、X方向において、FPC80の電極84のうちの一つから僅かに離れて真後ろに位置しており、Z方向において、底部38の上面(+Z側の面)と同じ位置にある。
【0052】
図4を参照すると、アンテナコイル20の端部28は、収容部34の開口部342を通過して、収容部34の内部に受容されている。端部28の夫々は、収容部34の内部において、前方に向かって延びている。端部28の前端は、FPC80の電極84に夫々接続されている。
【0053】
図3を参照すると、アンテナコイル20の上側ターン22Uは、Z方向において、傾斜部344の後端と略同じ位置にある。端部28のうちの一方は、上側ターン22Uから傾斜部344に沿って延びた後、底部38の上面に沿ってFPC80の電極84まで延びている。即ち、上側ターン22Uに繋がった端部28は、Z方向において上側ターン22Uから底部38まで徐々に下りつつ延びている。図1を参照すると、アンテナコイル20の下側ターン22Lは、Z方向において、底部38の上面と略同じ位置にある。端部28のうちの他方は、下側ターン22Lから底部38の上面に沿ってFPC80の電極84まで延びている。即ち、下側ターン22Lに繋がった端部28は、Z方向において一定の位置を延びている。
【0054】
図3を参照すると、仮に、傾斜部344が形成されていない場合、上側ターン22Uに繋がった端部28は、下方から支持されることなく、電極84まで傾斜して延びる。この端部28に力が加わると、接続端222に負荷がかかり、これにより、上側ターン22Uのうちの端部28に繋がった部位が、直下の巻回部22から剥がれるおそれがある。即ち、巻回部22が破損して変形するおそれがある。この結果、アンテナモジュール10は、設計値と異なるインダクタンスを有するおそれがある。
【0055】
一方、本実施の形態によれば、上側ターン22Uに繋がった端部28は、下方から傾斜部344によって支持されている。端部28は、このように支持されているため、端部28に力が加わった場合にも、上側ターン22Uは剥がれ難く、巻回部22は変形し難い。従って、アンテナモジュール10のインダクタンスを設計値に維持できる。但し、本発明は、これに限られず、傾斜部344は、必要に応じて設ければよい。例えば、アンテナコイル20の巻回部22が壁部32の周りを1回だけ巻回している場合(即ち、ターン220の数が1である場合)、傾斜部344を設ける必要はない。また、傾斜部344の構造は、必要に応じて変形可能である。
【0056】
本実施の形態の収容部34は、上述の構造を有しており、アンテナコイル20に接続されたFPC80の被収容部862を収容するのに適している。但し、本発明は、これに限られず、収容部34は、必要に応じて設ければよい。また、収容部34を設ける場合でも、収容部34の構造は、様々に変形可能である。例えば、アンテナモジュール10がFPC80を備えていない場合、本実施の形態のような収容部34を設ける必要がない。また、被収容部862は、収容部34の固定突起346を使用せずに底部38に固定してもよい。即ち、固定突起346は、必要に応じて設ければよい。
【0057】
以下、本実施の形態の支持部材30の壁部32及びアンテナコイル20の巻回部22について説明する。
【0058】
図1及び図2を参照すると、壁部32をZ方向に沿って上方から見たとき、外周面40は、収容部34の開口部342の一端(+Y側の端)から開口部342の他端(-Y側の端)まで、凹凸を描きつつ時計回りに延びている。即ち、壁部32は、XY平面において凹凸のある複雑な形状を有している。電子機器(図示せず)に組み込まれるアンテナモジュール10の壁部32は、アンテナモジュール10を取り付ける場所等の様々な条件に応じて、本実施の形態のような複雑な形状になり易い。
【0059】
図1を参照すると、本実施の形態の外周面40は、2つの凹壁面42を有している。凹壁面42は、Y方向における外周面40の両側に夫々位置している。凹壁面42の夫々は、XY平面において内側に凹んでいる。詳しくは、本実施の形態の凹壁面42の夫々は、前側面422と、後側面424とを有している。凹壁面42の夫々において、前側面422は、後側面424の前方に位置している。前側面422の夫々は、垂直面(XZ平面)と平行な平面である。即ち、前側面422の夫々は、X方向に沿って延びている。後側面424の夫々は、XZ平面と斜交する平面である。凹壁面42の夫々において、後側面424は、前側面422からY方向外側に離れつつ、後方に延びている。
【0060】
本実施の形態の凹壁面42の夫々は、上述の構造を有している。一方、2つの凹壁面42は、XY平面において互いに異なるサイズを有している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、凹壁面42がXY平面において内側に凹んでいる限り、凹壁面42の構造は、特に限定されない。凹壁面42は、XY平面において互いに同一のサイズを有していてもよい。また、外周面40は、1つの凹壁面42のみを有していてもよく、3つ以上の凹壁面42を有していてもよい。
【0061】
図7を参照すると、アンテナコイル20の巻回部22は、XY平面において、壁部32の外周面40に対応した形状を有している。即ち、巻回部22は、XY平面において、凹凸のある複雑な形状を有している。このような形状の巻回部22を機械的に巻回するだけで形成するのは難しく、巻回部22は、以下のように形成される。まず、凹部のない金型(図示せず)を準備する。次に、電線(図示せず)を、巻線機(図示せず)を使用して金型の周囲に巻回して初期形状の巻回部22(図7の2点鎖線参照)を形成する。次に、巻回部22のターン220を互いに融着する。次に、初期形状の巻回部22の一部(図7の2点鎖線参照)をXY平面の内側に曲げて、巻回部22の凹凸を形成する。
【0062】
図4を参照すると、上述のように形成された巻回部22は、バネ性を有しており、スプリングバックし易い。より具体的には、巻回部22は、XY平面の内側に曲げる前の初期形状(図7の2点鎖線参照)に戻ろうとする。特に、巻回部22のうち凹壁面42に対応する部位は、XY平面において外側に膨らむように弾性変形し易い。一方、アンテナモジュール10のインダクタンスは、巻回部22が凹壁面42を含む外周面40全体に亘って外周面40に沿って延びることを前提として設計されている。巻回部22が初期形状に戻ろうとしてXY平面における形状及び位置が変わると、アンテナモジュール10が設計値と異なるインダクタンスを有するおそれがある。
【0063】
図1及び図2を参照すると、支持部材30のコイルガイド60は、上述したスプリングバックを防止するための部位である。以下、本実施の形態のコイルガイド60について説明する。
【0064】
コイルガイド60は、下側支持部50から上方に突出しており、且つ、XY平面において巻回部22を部分的に囲んでいる。本実施の形態のコイルガイド60は、2つの主ガイド部62と、2つの付加的ガイド部64とを有している。
【0065】
図1及び図4を参照すると、2つの主ガイド部62は、2つの凹壁面42に夫々対応して設けられている。主ガイド部62の夫々は、XY平面において、対応する凹壁面42からアンテナコイル20の線径WDよりも大きな距離だけ離れており、対応する凹壁面42の一部に沿って延びている。アンテナコイル20の巻回部22は、XY平面において、部分的に凹壁面42と主ガイド部62との間に挟まれており、これにより、巻回部22のXY平面における移動が規制されている。
【0066】
図4を参照すると、外周面40は、2つの凹壁面42に夫々対応した2つの凸壁面45を有している。凸壁面45の夫々は、対応する凹壁面42の後方に位置している。2つの付加的ガイド部64は、2つの凸壁面45に夫々対応して設けられている。付加的ガイド部64の夫々は、XY平面において、対応する凸壁面45からアンテナコイル20の線径WDよりも大きな距離だけ離れており、対応する凸壁面45に沿って延びている。巻回部22は、部分的に凸壁面45と付加的ガイド部64との間の溝の内部に位置しており、これにより、巻回部22のXY平面における移動が規制されている。
【0067】
前述したように、本実施の形態の支持部材30の外周面40は、XY平面において内側に凹んだ凹壁面42を含む複雑な形状を有している。また、アンテナコイル20の巻回部22は、凹壁面42に対応した部位を含む複雑な形状を有している。一方、本実施の形態のコイルガイド60は、巻回部22のXY平面における移動を規制し、これにより、巻回部22は、XY平面の内側に曲げられた形状に維持される。
【0068】
特に、支持部材30は、XY平面において凹壁面42に沿って延びる主ガイド部62を有している。詳しくは、主ガイド部62は、コイルガイド60のうちXY平面において凹壁面42の少なくとも一部に沿って延びる部位である。アンテナコイル20の巻回部22のうち凹壁面42を囲む部位を、凹壁面42と主ガイド部62との間に位置させることで、巻回部22を凹壁面42から離れないように支持できる。即ち、本実施の形態によれば、支持部材30の壁部32が複雑な形状を有する場合でもアンテナコイル20をXY平面における所定位置に維持可能なアンテナモジュール10を提供できる。
【0069】
本実施の形態のコイルガイド60は、主ガイド部62に加えて、付加的ガイド部64を有しており、アンテナコイル20の巻回部22の形状を、より確実に維持できる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、コイルガイド60は、主ガイド部62のみを有していてもよい。一方、コイルガイド60は、主ガイド部62及び付加的ガイド部64に加えて、更に別のガイド部を有していてもよい。
【0070】
図5及び図6を参照すると、本実施の形態の凹壁面42の夫々には、窪み44が形成されている。窪み44は、XY平面において内側に窪んでいる。前述のように、アンテナコイル20の巻回部22のうち凹壁面42に沿って延びる部位は、XY平面において外側に膨らむように変形し易い。本実施の形態によれば、巻回部22がXY平面において外側に膨らむように変形した場合、巻回部22に対して窪み44に押し込むような力を加えることで、巻回部22を設計された形状に戻すことができる。但し、本発明は、これに限られず、窪み44は、必要に応じて形成すればよい。
【0071】
以上に説明したように、支持部材30のコイルガイド60は、アンテナコイル20の巻回部22のXY平面における移動を規制している。一方、支持部材30の第1上側支持部52、第2上側支持部54及び下側支持部50は、以下に説明するように、巻回部22のZ方向における移動を規制している。
【0072】
図1及び図7を参照すると、第1上側支持部52は、壁部32の外周面40から、X方向において第2上側支持部54(図2参照)から離れるように張り出している。詳しくは、本実施の形態の外周面40は、2つの第1所定面46を有している。第1所定面46の夫々は、外周面40の前面(+X側の面)の一部である。即ち、第1所定面46の夫々は、凹壁面42の前方に位置している。第1所定面46の夫々は、X方向と直交する直交平面(YZ平面)と平行に延びる平面である。本実施の形態の2つの第1上側支持部52は、第1所定面46に夫々設けられている。第1上側支持部52の夫々は、Y方向において第1所定面46全体に亘って延びており、第1所定面46の上端(+Z側の端)から前方に張り出している。
【0073】
図2を参照すると、第2上側支持部54は、外周面40から、X方向において第1上側支持部52から離れるように張り出している。詳しくは、本実施の形態の外周面40は、2つの第2所定面48を有している。第2所定面48の夫々は、外周面40の後面(-X側の面)の一部である。即ち、第2所定面48の夫々は、凹壁面42の後方に位置している。第2所定面48の夫々は、YZ平面と平行に延びる平面である。本実施の形態の2つの第2上側支持部54は、第2所定面48に夫々設けられている。詳しくは、第2上側支持部54の夫々は、Y方向において第2所定面48全体に亘って延びており、第2所定面48の上端から後方に張り出している。
【0074】
図1及び図2を参照すると、本実施の形態の下側支持部50は、第1上側支持部52及び第2上側支持部54の直下には形成されていない。下側支持部50は、XY平面において、第1上側支持部52及び第2上側支持部54の直下の場所を除いて、外周面40及び収容部34の開口部342から外側に張り出している。但し、本発明は、これに限られない。例えば、下側支持部50は、XY平面において、外周面40及び開口部342全体から外側に張り出していてもよい。
【0075】
図4を参照すると、アンテナコイル20の巻回部22は、XY平面において全周に亘って外周面40に近接している。第1上側支持部52及び第2上側支持部54は、巻回部22の一部を上方から覆っており、下側支持部50は、巻回部22の大部分を下方から覆っている。この構造から理解されるように、アンテナコイル20をZ方向に沿った移動のみによって支持部材30に取り付けることはできない。
【0076】
図10図4と共に参照すると、FPC80に固定されたアンテナコイル20は、磁性シート70を取り付けた支持部材30に対して、以下に説明するように、第1上側支持部52及び第2上側支持部54を使用して取り付けられており、これによりアンテナモジュール10が形成されている。
【0077】
まず、FPC80に接続されたアンテナコイル20を、巻回部22のうち後側に位置する部位(後側部26)が巻回部22のうち前側に位置する部位(前側部24)の上方に移動するようにして、前側部24を中心に傾ける。次に、FPC80の端部866を、支持部材30の貫通孔382及び磁性シート70の貫通孔72を通過させつつ、FPC80の被収容部862を、支持部材30の収容部34に収容する。このとき、巻回部22の前側部24の一部(2つの支点部242)を、第1上側支持部52の真下に位置させる。即ち、2つの支点部242を第1上側支持部52に夫々引っ掛ける。
【0078】
次に、巻回部22を、支点部242を支点として支持部材30に向かって倒す。このとき、巻回部22の後側部26を後方に向かって引いて弾性変形させつつ、第2上側支持部54の下方に移動させる。また、巻回部22のうちの前側部24及び後側部26を除く部位を、外周面40とコイルガイド60との間の溝に挿入する。後側部26が第2上側支持部54の下方に移動したとき、後側部26を引くのを止める。後側部26は、元の形状に戻り、部分的に第2上側支持部54の真下に位置する。次に、固定突起346をFPC80の被固定孔88に嵌める。次に、固定突起346を超音波溶着機等を使用して変形させ、これにより、FPC80の被収容部862を、支持部材30に固定する。
【0079】
図4を参照すると、アンテナモジュール10が形成されたとき、アンテナコイル20のZ方向における移動は、下側支持部50、第1上側支持部52及び第2上側支持部54によって規制されている。詳しくは、下側支持部50は、アンテナコイル20の巻回部22の大部分の真下に位置しており、第1上側支持部52及び第2上側支持部54の夫々は、巻回部22の真上に位置している。即ち、下側支持部50は、巻回部22の下方に位置している。第1上側支持部52は、巻回部22の上方に位置している。第2上側支持部54は、巻回部22の上方に位置している。
【0080】
上述のように形成された下側支持部50、第1上側支持部52及び第2上側支持部54は、巻回部22を接着剤等の固定材料によって支持部材30に固定することなく、アンテナコイル20の脱落やZ方向における位置ずれを防止できる。
【0081】
本実施の形態の第2上側支持部54の夫々は、外周面40から第2距離D2だけ張り出している。第2距離D2は、アンテナコイル20の線径WDと等しい。図4および図10を参照すると、この構造によれば、アンテナコイル20を支持部材30に取り付ける際、巻回部22の前側部24を第1上側支持部52に引っ掛けつつ、巻回部22の後側部26を後方に線径WDだけ僅かに引くことで、巻回部22の後側部26を塑性変形させることなく支持部材30に取り付けられる。加えて、第2上側支持部54は、取り付けた巻回部22の上方への移動を確実に規制する。
【0082】
巻回部22の上方への移動を規制するという観点から、第2距離D2は、長いことが好ましい。一方、巻回部22の塑性変形を防止するという観点から、第2距離D2は、短いことが好ましい。より具体的には、第2距離D2は、アンテナコイル20の線径WDの半分以上かつ2倍以下であることが好ましく、アンテナコイル20の線径WD以下であることが更に好ましい。但し、本発明は、これに限られない。例えば、第1上側支持部52の第1距離D1をアンテナコイル20の線径WD以下とし、第2上側支持部54の第2距離D2をアンテナコイル20の線径WDの2倍よりも大きくしてもよい。
【0083】
本実施の形態の支持部材30は、アンテナコイル20を取り付け易い構造を有している。以下、この構造について説明する。
【0084】
図1及び図2を参照すると、コイルガイド60は、第1上側支持部52に対応する部位を有しておらず、且つ、第2上側支持部54に対応する部位を有していない。詳しくは、コイルガイド60は、第1上側支持部52の直下に位置する第1所定面46に沿って延びる部位を有しておらず、且つ、第2上側支持部54の直下に位置する第2所定面48に沿って延びる部位を有していない。上述のように形成されたコイルガイド60は、アンテナコイル20の支持部材30への取り付けを邪魔しない。即ち、本実施の形態によれば、従来技術と同様に、予め形成されたアンテナコイル20を支持部材30に簡単に取り付けられる。
【0085】
本実施の形態のコイルガイド60は、外周面40の前面に沿って延びる部位を有しておらず、且つ、外周面40の後面に沿って延びる部位を有していない。この構造によれば、アンテナコイル20を支持部材30に更に簡単に取り付けられる。但し、本発明は、これに限られない。例えば、コイルガイド60は、外周面40の前面のうちY方向における端部に沿って延びる部位を有していてもよい。また、コイルガイド60は、外周面40の後面のうちY方向における端部に沿って延びる部位を有していてもよい。
【0086】
本実施の形態の凹壁面42の夫々には、第1上側支持部52及び第2上側支持部54のいずれも形成されていない。詳しくは、凹壁面42の夫々には、XY平面において外側に張り出してアンテナコイル20の上方に位置する部位が設けられていない。この構造によれば、必要性の低い部位を設けることなく、アンテナコイル20を支持部材30に更に簡単に取り付けられる。但し、本発明は、これに限られず、凹壁面42に、第1上側支持部52及び第2上側支持部54と同様な部位を形成してもよい。
【0087】
図8を参照すると、本実施の形態によれば、XY平面において壁部32全体を最短距離で囲む1本の閉じた仮想線CLを描画したとき、外周面40のうちXY平面において仮想線CLの内側に位置する部位には、第1上側支持部52及び第2上側支持部54のいずれも形成されていない。例えば、外周面40が凹壁面42に加えてXY平面において内側に凹んだ部位(付加的凹部)を更に有していたとしても、付加的凹部には、第1上側支持部52及び第2上側支持部54のいずれも形成されない。但し、本発明は、これに限られず、付加的凹部に、第1上側支持部52及び第2上側支持部54と同様な部位を形成してもよい。
【0088】
図4を参照すると、本実施の形態の支持部材30には、2つの第1上側支持部52と、2つの第2上側支持部54と、2つの主ガイド部62とが設けられている。第1上側支持部52の夫々は、外周面40の前端からX方向に沿って前方に張り出しており、Y方向に沿って延びている。第2上側支持部54の夫々は、外周面40の後端からX方向に沿って後方に張り出しており、Y方向に沿って延びている。主ガイド部62の夫々は、X方向において第1上側支持部52と第2上側支持部54との間に位置しており、主ガイド部62全体が、凹壁面42の前側面422と平行にX方向に沿って延びている。この構造によれば、アンテナコイル20を支持部材30に取り付け易い。加えて、アンテナコイル20のXY平面およびZ方向における移動を確実に規制できる。
【0089】
但し、上述した構造は様々に変形可能である。例えば、第1上側支持部52、第2上側支持部54、主ガイド部62の夫々の数は、1であってもよいし、3以上であってもよい。主ガイド部62の夫々は、凹壁面42の前側面422と平行に延びる部位に加えて、凹壁面42の後側面424と平行に延びる部位(図6の1点鎖線参照)を有していてもよい。この2つの部位は、互いに繋がっていてもよいし、互いに離れていてもよい。即ち、主ガイド部62は、少なくとも部分的にX方向に沿って延びていてもよい。
【0090】
図9図8と比較すると、支持部材30の壁部32は、壁部32Aのように変形してもよい。壁部32Aは、壁部32と異なる形状を有している。壁部32Aは、外周面40と異なる形状の外周面40Aを有している。外周面40Aには、2つの第1上側支持部52Aと、2つの第2上側支持部54Aとが形成されている。
【0091】
第1上側支持部52Aは、第1上側支持部52と同様に、X向において第2上側支持部54Aの前方に位置している。第1上側支持部52Aは、第1上側支持部52と同様に、外周面40Aから、X方向において第2上側支持部54Aから離れるように張り出している。第2上側支持部54Aは、第2上側支持部54と同様に、外周面40Aから、X方向において第1上側支持部52Aから離れるように張り出している。但し、第1上側支持部52Aの夫々は、第1上側支持部52と異なり、前方及びY方向外側に張り出している。第2上側支持部54Aの夫々は、第2上側支持部54と異なり、後方及びY方向外側に張り出している。
【0092】
本変形例によっても、前述した実施の形態と同様に、アンテナコイル20(図1参照)の脱落やZ方向における位置ずれを防止でき、且つ、アンテナコイル20を支持部材30に簡単に取り付けられる。
【0093】
図8を参照すると、本実施の形態の第1上側支持部52の夫々は、外周面40からX方向において第1距離D1だけ張り出している。図6及び図8を参照すると、本実施の形態の主ガイド部62の夫々は、所定部622を有している。所定部622の夫々は、主ガイド部62のうち凹壁面42のまっすぐ前方に位置する部位であり、且つ、主ガイド部62のうちX方向において凹壁面42に最も近い部位である。第1距離D1は、X方向における所定部622と凹壁面42との間の距離D0以下である。
【0094】
上述の距離関係によれば、アンテナコイル20を支持部材30に取り付ける際、巻回部22が壁部32又は主ガイド部62に突き当たって変形することを防止しつつ、巻回部22を、外周面40と主ガイド部62との間の溝にスムーズに挿入できる。即ち、アンテナコイル20の変形を防止しつつ、アンテナコイル20を支持部材30に取り付けられる。但し、本発明は、これに限られず、第1距離D1と距離D0との距離関係は、必要に応じて変形可能である。
【0095】
本実施の形態は、既に述べた様々な変形例に加えて、更に様々に変形可能である。以下、これらの変形例について説明する。
【0096】
図5の1点鎖線を参照すると、主ガイド部62の変形例による主ガイド部62Xは、少なくとも部分的に凹壁面42に向かって傾斜している。変形例のように主ガイド部62Xを傾斜させることで、アンテナコイル20の上方への移動及び脱落を更に確実に規制できる。主ガイド部62Xは、例えば、アンテナコイル20を支持部材30に取り付けた後に、主ガイド部62を超音波溶着機で変形させて形成できる。本変形例の主ガイド部62Xは、凹壁面42から離れている。但し、本発明は、これに限られない。例えば、主ガイド部62Xは、凹壁面42と接触していてもよいし、凹壁面42に溶着されていてもよい。
【0097】
図2の拡大図における1点鎖線を参照すると、アンテナコイル20を支持部材30に取り付けた後に、例えば、第1上側支持部52を超音波溶着機で変形させて第1上側支持部52Xを形成してもよい。同様に、第2上側支持部54の第2距離D2(図4参照)を長くした上で、アンテナコイル20を支持部材30に取り付けた後に、第2上側支持部54を超音波溶着機で変形させてもよい。このように変形した後の第1上側支持部52X及び第2上側支持部54は、少なくとも部分的に下方に傾斜しており、これにより、アンテナコイル20の上方への移動及び脱落を更に確実に防止できる。即ち、第1上側支持部52及び第2上側支持部54のうちの少なくとも一つは、少なくとも部分的に下方に傾斜していてもよい。
【符号の説明】
【0098】
10 アンテナモジュール
20 アンテナコイル
22 巻回部
220 ターン
22U 上側ターン(ターン)
22L 下側ターン(ターン)
22M 中間ターン(ターン)
222 接続端
24 前側部
242 支点部
26 後側部
28 端部

30 支持部材
32,32A 壁部
34 収容部
342 開口部
344 傾斜部
346 固定突起
38 底部
382 貫通孔
40,40A 外周面
42 凹壁面
422 前側面
424 後側面
44 窪み
45 凸壁面
46 第1所定面
48 第2所定面
50 下側支持部
52,52A,52X 第1上側支持部
54,54A 第2上側支持部
60 コイルガイド
62,62X 主ガイド部
622 所定部
64 付加的ガイド部
70 磁性シート
72 貫通孔
80 FPC(Flexible Printed Circuits)
82 導電パターン
84 電極
86 基体
862 被収容部
864 連結部
866 端部
88 被固定孔
AX 巻軸
CL 仮想線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10