(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】蓄電池の管理装置、蓄電池の管理方法、蓄電システム及び電池搭載機器
(51)【国際特許分類】
H02J 7/02 20160101AFI20240408BHJP
H02J 7/04 20060101ALI20240408BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240408BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240408BHJP
H01M 4/485 20100101ALI20240408BHJP
【FI】
H02J7/02 J
H02J7/04 A
H01M10/48 P
H01M10/44 Q
H01M4/485
(21)【出願番号】P 2020147501
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】八木 亮介
(72)【発明者】
【氏名】石井 恵奈
(72)【発明者】
【氏名】原田 康宏
(72)【発明者】
【氏名】高見 則雄
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102226(JP,A)
【文献】特開2019-016571(JP,A)
【文献】国際公開第2015/137222(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0054303(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0023571(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J7/00-7/36
H01M10/42-10/48
H01M4/00-4/62
B60L1/00-3/12
B60L5/00-5/42
B60L7/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60M1/00-7/00
B60R16/00-17/02
G01R31/36-31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続され、前記第1の回路と前記第2の回路との間にDC/DCコンバータが配置される状態で前記第1の回路及び前記第2の回路が電気的に並列に接続される蓄電池の管理装置であって、
前記蓄電池の充電における前記蓄電池への
入力電力、前記第1の電池のSOCである第1のSOC、前記第2の電池のSOCである第2のSOC、及び、前記第2のSOCに対応した前記第2の電池の充電における
最大許容入力電力に基づいて、前記第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換する前記DC/DCコンバータの動作を制御するコントローラを具備する、
管理装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1のSOCを前記第2のSOCより低くし、かつ、前記第1のSOCを前記第2のSOCより低く維持する状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、請求項1の管理装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1のSOCが前記第2のSOC以上であることに基づいて、前記蓄電池への前記
入力電力を前記第2の電池への前記
最大許容入力電力以下に低下させる、請求項2の管理装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第2のSOCから前記第1のSOCを減算したSOC減算値を下限値以上かつ上限値以下の基準範囲内にし、かつ、前記SOC減算値を前記基準範囲内で維持する状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、請求項1の管理装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記SOC減算値が前記基準範囲の前記下限値より小さいことに基づいて、前記蓄電池への前記
入力電力を前記第2の電池への前記
最大許容入力電力以下に低下させる、請求項4の管理装置。
【請求項6】
前記第1の電池は、チタン複合酸化物の一種である単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を負極活物質として備え、
前記第2の電池は、炭素質物を負極活物質として備え、
前記コントローラは、前記SOC減算値の前記基準範囲について前記下限値を0.10とし、かつ、前記上限値を0.35として、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
請求項4又は5の管理装置。
【請求項7】
前記第1の電池は、チタン複合酸化物を負極活物質として備え、
前記第2の電池は、炭素質物を負極活物質として備え、
前記コントローラは、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御することにより、前記第1の電池及び前記第2の電池のそれぞれの充電を制御する、
請求項1ないし5のいずれか1項の管理装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項の管理装置と、
前記第1の電池及び前記第2の電池を備え、前記管理装置によって管理される前記蓄電池と、
前記第2の電池が接続される前記第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換し、前記管理装置の前記コントローラによって前記動作が制御される前記DC/DCコンバータと、
を具備する蓄電システム。
【請求項9】
前記蓄電池が搭載される電池搭載機器をさらに具備する、
請求項8の蓄電システム。
【請求項10】
請求項1ないし7のいずれか1項の管理装置と、
前記第1の電池及び前記第2の電池を備え、前記管理装置によって管理される前記蓄電池と、
前記第2の電池が接続される前記第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換し、前記管理装置の前記コントローラによって前記動作が制御される前記DC/DCコンバータと、
を具備する電池搭載機器。
【請求項11】
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続され、前記第1の回路と前記第2の回路との間にDC/DCコンバータが配置される状態で前記第1の回路及び前記第2の回路が電気的に並列に接続される蓄電池の管理方法であって、
前記蓄電池の充電における前記蓄電池への
入力電力、前記第1の電池のSOCである第1のSOC、前記第2の電池のSOCである第2のSOC、及び、前記第2のSOCに対応した前記第2の電池の充電における
最大許容入力電力に基づいて、前記第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換する
前記DC/DCコンバータの動作を制御することを具備する、管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池の管理装置、蓄電池の管理方法、蓄電システム及び電池搭載機器に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電池は、小型の携帯機器の電源、モビリティ分野において車両に搭載される電源、及び、スマートグリッド等の送電網における定置用の電源等、幅広く用いられている。このような蓄電池を備える蓄電システムでは、蓄電池の充電及び放電を制御する等の蓄電池を管理する管理装置が設けられる。そして、特に、蓄電池が車両用の電源として用いられる場合においては、蓄電池の充電及び放電等を制御することによって、大電流で安全に蓄電池を急速充電可能にするとともに、長時間継続して蓄電池から出力可能(放電可能)にすることが、求められている。
【0003】
チタン複合酸化物を負極活物質として備える非水電解質セルから形成される蓄電池では、大電流での急速充電における安全性が高くなる。また、炭素質物を負極活物質として備える非水電解質セルは蓄電容量が大きいため、炭素質物を負極活物質として備える非水電解質セルから形成される蓄電池では、SOCが高い状態から放電を行うことにより、長時間継続して放電可能(出力可能)となる。蓄電システムでは、活物質となる材料が互いに対して異なる2種類以上のセルを組み合わせた蓄電池の充電及び放電等を管理装置等によって制御することにより、大電流で安全に蓄電池を急速充電可能にするとともに、長時間継続して蓄電池から出力可能にすることが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-118627号公報
【文献】特開2008-98149号公報
【文献】国際公開第2019/187132号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、大電流で安全に蓄電池を急速充電可能にするとともに、長時間継続して蓄電池から出力可能にする蓄電池の管理装置、蓄電池の管理方法、蓄電システム及び電池搭載機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態では、第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の管理装置が提供される。蓄電池では、第1の回路と第2の回路との間にDC/DCコンバータが配置される状態で、第1の回路及び第2の回路が電気的に並列に接続される。管理装置は、コントローラを備える。コントローラは、蓄電池の充電における蓄電池への入力電力、第1の電池のSOCである第1のSOC、第2の電池のSOCである第2のSOC、及び、第2のSOCに対応した第2の電池の充電における最大許容入力電力に基づいて、第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御する。
【0007】
実施形態では、第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の管理方法が提供される。蓄電池では、第1の回路と第2の回路との間にDC/DCコンバータが配置される状態で、第1の回路及び第2の回路が電気的に並列に接続される。管理方法では、蓄電池の充電における蓄電池への入力電力、第1の電池のSOCである第1のSOC、第2の電池のSOCである第2のSOC、及び、第2のSOCに対応した第2の電池の充電における最大許容入力電力に基づいて、第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る蓄電システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態の第1のセル及び第2のセルのそれぞれについて、SOCに対する充電時のDC抵抗の関係を示す概略図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る蓄電池の充電における第1の電池の第1のSOC及び第2の電池の第2のSOCの経時的な変化の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第1のSOC及び第2のSOCが
図3のように変化した場合における、蓄電池への入力電力、第1の電池への入力電力、及び、第2の電池への入力電力の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係る蓄電池の充電において、管理装置のコントローラによって行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態の第1の電池及び第2の電池のそれぞれについてSOCに対する開回路電圧の関係の一例を示す概略図である。
【
図7】
図7は、実施形態の第1の電池及び第2の電池のそれぞれについてSOCに対する開回路電圧の関係の
図6とは別の一例を示す概略図である。
【
図8】
図8は、実施形態の第1の電池及び第2の電池のそれぞれについてSOCに対する開回路電圧の関係の
図6及び
図7とは別の一例を示す概略図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る蓄電池の充電において、管理装置のコントローラによって行われる処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る蓄電システムの構成を示す概略図である。蓄電システム1は、蓄電池2を備える。蓄電池2は、電池搭載機器3に搭載される。電池搭載機器3としては、スマートフォン、車両、定置用電源装置、ロボット及びドローン等が挙げられ、電池搭載機器3となる車両としては、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車及び電動バイク等が、挙げられる。また、蓄電池2が搭載されるロボットとしては、工場等で使用される無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)等の搬送ロボットが挙げられる。
【0011】
蓄電池2は、第1の電池10及び第2の電池20を備える。第1の電池10は、1つ以上の第1のセル11を備え、第2の電池20は、1つ以上の第2のセル21を備える。本実施形態では、第1の電池10は、複数の第1のセル11を備える組電池であり、第1の電池10では、複数の第1のセル11が電気的に直列に接続される。
図1の一例では、第1の電池10にM個の第1のセル11が設けられ、第1の電池10における第1のセル11の直列数はMとなる。また、本実施形態では、第2の電池20は、複数の第2のセル21を備える組電池であり、第2の電池20では、複数の第2のセル21が電気的に直列に接続される。
図1の一例では、第2の電池20にN個の第2のセル21が設けられ、第2の電池20における第2のセル21の直列数はNとなる。
【0012】
第2のセル21は、第1のセル11より蓄電容量が大きい。また、第2のセル21は、第1のセル11より許容Cレート(許容充電レート及び許容放電レート)が小さい。すなわち、第2のセル21は、第1のセル11よりも、単位蓄電容量当たりの許容入力、及び、単位蓄電容量当たりの許容出力のそれぞれが小さい。ここで、単位蓄電容量当たりの許容入力、及び、単位蓄電容量当たりの許容出力のそれぞれの単位は、[W/L]等で示される。第1のセル11のそれぞれは、例えば、チタン複合酸化物が負極活物質として用いられる非水電解質セルである。第2のセル21のそれぞれは、例えば、炭素質物が負極活物質として用いられる非水電解質セルである。
【0013】
第1の電池10の複数の第1のセル11のそれぞれにおいて負極活物質として用いられるチタン複合酸化物としては、単斜晶型ニオブチタン複合酸化物、直方晶型チタン含有複合酸化物、ラムスデライト構造を有するチタン酸リチウム、スピネル構造を有するチタン酸リチウム、単斜晶型二酸化チタン、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン及びホランダイト型チタン複合酸化物等が挙げられる。
【0014】
また、複数の第1のセル11のそれぞれでは、正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物を用いることができる。複数の第1のセル11のそれぞれにおいて正極活物質として用いられるリチウム遷移金属複合酸化物としては、層状構造を有するLiuMeO2(0<u≦1、かつ、Meは、Ni、Co及びMnからなる群より選択される1種以上)が挙げられ、例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を用いることができる。また、複数の第1のセル11のそれぞれにおいて正極活物質として用いられるリチウム遷移金属複合酸化物としては、リチウム鉄リン酸化物も挙げられる。複数の第1のセル11に用いられる負極活物質及び正極活物質としては、特許文献3(国際公開第2019/187132号)と同様の活物質を用いることができる。
【0015】
本実施形態では、第1の電池10は、複数の第1のセル11が直列に接続されたセル群から構成される。第1の電池10では、複数の第1のセル11は、容量、サイズ及び重量等が互いに対して同一及び略同一である。また、第1の電池10では、複数の第1のセル11の間は、バスバー12を介して電気的に接続される。
【0016】
第2の電池20の複数の第2のセル21のそれぞれにおいて負極活物質として用いられる炭素質物としては、黒鉛及び非晶質炭素等が挙げられる。また、複数の第2のセル21のそれぞれでは、正極活物質として、第1のセル11の正極活物質と同様の活物質を用いることができる。
【0017】
本実施形態では、第2の電池20は、複数の第2のセル21が直列に接続されたセル群から構成される。第2の電池20では、複数の第2のセル21は、容量、サイズ及び重量等が互いに対して同一及び略同一である。また、第2の電池20では、複数の第2のセル21の間は、バスバー22を介して電気的に接続される。
【0018】
前述のように、第2のセル21は、第1のセル11より蓄電容量が大きく、第1のセル11より許容Cレートが小さい。そして、本実施形態では、第1の電池10においては、複数の第1のセル11が電気的に直列に接続され、第2の電池20において、複数の第2のセル21が電気的に直列に接続される。このため、第2の電池20は、第1の電池より蓄電容量が大きく、第1の電池より許容Cレートが小さい。なお、ある一例では、第1の電池10が1つの第1のセル11から形成され、第2の電池20が1つの第2のセル21から形成されてもよい。この場合も、第2の電池20は、第1の電池10より蓄電容量が大きく、第1の電池10より許容Cレートが小さい。
【0019】
第1の電池10は、第1の回路13に接続される。また、第2の電池20は、第2の回路23に接続される。蓄電池2では、第1の電池10及び第2の電池20が電気的に並列に接続される。また、蓄電システム1では、第1の回路13と第2の回路23との間にDC/DCコンバータ5が設けられる。このため、第1の電池10と第2の電池20との間に、DC/DCコンバータ5が配置される。DC/DCコンバータ5には、例えば、昇降圧チョッパ等が組み込まれる。DC/DCコンバータ5は、第2の回路23に入出力される電力の電圧を変換する。したがって、DC/DCコンバータ5は、第2の回路23から出力される電力の電圧、及び、第2の回路23へ入力される電力の電圧を、変換する。
【0020】
また、蓄電池2は、一対の外部端子7を備える。蓄電池2では、外部端子7を通して、外部の充電器等から電力が入力される。また、蓄電池2では、外部端子7を通して、外部の負荷等へ電力が出力される。蓄電池2では、第1の電池10は、DC/DCコンバータ5を間に介することなく、第1の回路13のみを介して外部端子7に接続される。また、第2の電池20は、DC/DCコンバータ5を間に介して、外部端子7に接続される。
【0021】
蓄電池2へ入力された電力は、電圧変換されることなく、第1の電池10に入力される。そして、第1の電池10から出力された電力は、電圧変換されることなく、外部端子7から出力される。一方、蓄電池2へ入力された電力は、DC/DCコンバータ5によって電圧変換され、電圧変換された電力が、第2の電池20に入力される。そして、第2の電池20から出力された電力は、DC/DCコンバータ5によって電圧変換され、電圧変換された電力が、外部端子7から出力される。したがって、第2の電池20への充電においては、DC/DCコンバータ5は、第1の回路13の電圧に対して第2の回路23へ入力される電圧を変換する。そして、第2の電池20からの放電においては、DC/DCコンバータ5は、第1の回路13の電圧に対して第2の回路23から出力される電圧を変換する。
【0022】
第2の電池20の電圧は、DC/DCコンバータ5の動作を制御することにより、調整可能である。例えば、DC/DCコンバータ5の動作を制御することにより、第2の電池20の電圧を第1の電池10の電圧より高くすることが可能になる。第2の電池20の電圧が第1の電池10の電圧より高くなることにより、第2の電池20に流れる電流が小さく抑えられる。
【0023】
また、蓄電システム1は、第1のスイッチ15及び第2のスイッチ25を備える。第1のスイッチ15は、外部端子7と第1の電池10との間を電気的に接続するライン上に設けられ、ON状態及びOFF状態に切替わり可能である。第1のスイッチ15がOFF状態になることにより、第1の電池10への電力の入力、及び、第1の電池10からの電力の出力が遮断される。すなわち、第1のスイッチ15がOFF状態になることにより、第1の電池10の充電及び放電が停止される。
【0024】
また、第2のスイッチ25は、外部端子7と第2の電池20との間を電気的に接続するライン上に設けられ、ON状態及びOFF状態に切替わり可能である。第2のスイッチ25がOFF状態になることにより、第2の電池20への電力の入力、及び、第2の電池20からの電力の出力が遮断される。すなわち、第2のスイッチ25がOFF状態になることにより、第2の電池20の充電及び放電が停止される。
【0025】
また、蓄電システム1には、第1の電池管理部(第1のBMU(Battery Management Unit))17、第2の電池管理部(第2のBMU)27、通信部30、データ管理部31及びデータ記憶部32が設けられる。蓄電システム1では、電池管理部17,27、通信部30、データ管理部31及びデータ記憶部32等によって、蓄電池2を管理する管理装置が構成される。管理装置によって、第1の電池10及び第2の電池20のそれぞれの充電及び放電等が制御される。
【0026】
蓄電池2の管理装置は、コントローラを備え、コントローラは、プロセッサ及び記憶媒体を備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)及びDSP(Digital Signal Processor)等のいずれかを含む。記憶媒体には、メモリ等の主記憶装置に加え、補助記憶装置が含まれ得る。記憶媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD等)、光磁気ディスク(MO等)、及び、半導体メモリ等が挙げられる。コントローラでは、プロセッサ及び記憶媒体のそれぞれは、1つであってもよく、複数であってもよい。コントローラでは、プロセッサは、記憶媒体等に記憶されるプログラム等を実行することにより、処理を行う。
【0027】
図1の一例では、第1の電池管理部17、第2の電池管理部27、通信部30及びデータ管理部31は、管理装置のプロセッサ等によって行われる処理の一部を実施し、管理装置の記憶媒体が、データ記憶部32として機能する。また、
図1の一例では、電池管理部17,27、通信部30、データ管理部31及びデータ記憶部32等は、電池搭載機器3に搭載され、管理装置は、電池搭載機器3に搭載される処理装置等から構成される。このため、管理装置による処理は、電池搭載機器3に搭載される処理装置等によって実施される。例えば、第1の電池管理部17の処理は、第1の電池10用に設けられた制御回路によって実施され、第2の電池管理部27の処理は、第2の電池20用に設けられた制御回路によって実施される。
【0028】
なお、管理装置のコントローラのプロセッサによって実行されるプログラムは、インターネット等のネットワークを介してプロセッサに接続されたコンピュータ(サーバ)、又は、クラウド環境のサーバ等に格納されてもよい。この場合、例えば、管理装置のプロセッサは、ネットワーク経由でプログラムをダウンロードする。
【0029】
また、管理装置の少なくとも一部が、電池搭載機器3の外部の処理装置から構成されてもよい。電池搭載機器3の外部の処理装置は、例えば、電池搭載機器3の外部のサーバであり、プロセッサ及び記憶媒体を備える。電池搭載機器3の外部の処理装置が管理装置の少なくとも一部を構成する場合、管理装置の処理の少なくとも一部は、電池搭載機器3の外部の処理装置のプロセッサ等によって行われ、電池搭載機器3の外部の処理装置の記憶媒体等に処理に必要なデータ等が記憶される。また、電池搭載機器3の外部の処理装置が管理装置の少なくとも一部を構成される場合、電池搭載機器3に搭載される処理装置(コンピュータ)が、電池搭載機器3の外部の処理装置と、ネットワークを介して通信可能である。
【0030】
また、管理装置の少なくとも一部が、クラウド環境のクラウドサーバによって構成されてもよい。ここで、クラウド環境のインフラは、仮想CPU等の仮想プロセッサ及びクラウドメモリによって、構成される。このため、クラウドサーバが管理装置の一部を構成する場合、管理装置の処理の少なくとも一部は、仮想プロセッサによって行われ、クラウドメモリに処理に必要なデータ等が記憶される。また、クラウドサーバが管理装置の一部を構成する場合、電池搭載機器3に搭載される処理装置(コンピュータ)は、クラウドサーバと通信可能である。
【0031】
第1の電池管理部17は、第1の電池10のSOC(State of charge)である第1のSOCを検出及び取得する(矢印L1)。また、第2の電池管理部27は、第2の電池20のSOCである第2のSOCを検出及び取得する(矢印L2)。このため、第1の電池管理部17は、第1のSOCを検出する第1のSOC検出部として機能し、第2の電池管理部27は、第2のSOCを検出する第2のSOC検出部として機能する。第1のSOC及び第2のSOCのそれぞれは、例えば所定のタイミングで、定期的に検出される。第1の電池10及び第2の電池20のそれぞれのSOCは、電流積算法、電池(10又は20)の端子間電圧とSOCとの関係を用いた算出法、及び、カルマンフィルタを用いた推定法等のいずれかによって、算出可能である。
【0032】
また、通信部30は、蓄電池2の充電における蓄電池2への入力値を取得する。このため、通信部30は、蓄電池2への入力値を取得する入力値取得部として機能する。蓄電池2への入力値は、蓄電池2への入力電力(充電電力)又は蓄電池2の充電レート(Cレート)等で規定される。例えば、充電ステーションに設置された充電器等の電池搭載機器3の外部の充電器を用いて充電する場合、通信部30は、充電器と通信する等して、蓄電池2への入力値を取得する。また、電池搭載機器3に搭載された発電機を用いて充電する場合、通信部30は、発電機を制御するコントローラと通信する等して、蓄電池2への入力値を取得する。通信部30は、取得した蓄電池2への入力値を、第1の電池管理部17に伝達する(矢印L3)。これにより、第1の電池管理部17は、蓄電池2の充電において、蓄電池2への入力値(入力電力又は充電レート等)を取得する。蓄電池2への入力値は、例えば所定のタイミングで、定期的に取得される。
【0033】
また、第1の電池管理部17は、蓄電池2への入力値に関する制御指令を生成する。蓄電池2への入力値に関する制御指令は、第1の電池管理部17から通信部30へ伝達され(矢印L4)、通信部30から充電器等に伝達される。伝達された制御指令に基づいて、充電器等からの出力(出力電力)が制御され、蓄電池2への入力が制御される。
【0034】
データ管理部31は、データ記憶部32に記憶されるデータを管理する。データ管理部31は、データ記憶部32へデータを書込み可能であるとともに(矢印L5)、データ記憶部32からデータを読出し可能である(矢印L6)。データ記憶部32には、第2の電池20の第2のSOCと第2の電池20の充電における最大許容入力値との関係を示すデータが、記憶される。第2の電池20の最大許容入力値は、充電における第2の電池20への入力の許容範囲の上限値であり、入力電力(充電電力)又は第2の電池20の充電レート(Cレート)等で規定される。ある一例では、第2の電池20の第2のSOCと第2の電池20の最大許容入力値との関係を示すテーブルデータが、データ記憶部32に予め記憶される。
【0035】
なお、データ管理部31は、蓄電池2の運転時間及び第2の電池20の劣化状態の少なくとも一方に対応させて、第2の電池20の第2のSOCと第2の電池20の最大許容入力値との関係を示すデータを更新してもよい。また、第2の電池20の第2のSOCと第2の電池20の最大許容入力値との関係を第2の電池20の温度ごとに定めたデータが、データ記憶部32に記憶されてもよい。この場合、データ管理部31は、蓄電池2の運転時間及び第2の電池20の劣化状態の少なくとも一方に対応させて、第2の電池20の第2のSOCと第2の電池20の最大許容入力値との関係を第2の電池20の温度ごとに定めたデータを更新してもよい。
【0036】
データ管理部31は、第2の電池管理部27から第2の電池20の第2のSOCの検出結果を取得する(矢印L7)。そして、データ管理部31は、取得した第2のSOC、及び、データ記憶部32に記憶された第2のSOCと第2の電池20の最大許容入力値との関係を示すデータに基づいて、取得した第2のSOCに対応した第2の電池20の充電における最大許容入力値を取得する。そして、データ管理部31は、取得した第2のSOC、及び、第2のSOCに対応した第2の電池20の最大許容入力値を、第1の電池管理部17に送信する(矢印L8)。これにより、第1の電池管理部17は、第2のSOC、及び、第2のSOCに対応した第2の電池20の最大許容入力値を取得する。ここで、データ管理部31では、第2のSOCの取得、及び、第2のSOCに対応した第2の電池20の最大許容入力値の取得は、例えば所定のタイミングで、定期的に行われる。このため、第1の電池管理部17は、第2のSOC及び第2のSOCに対応した第2の電池20の最大許容入力値を、例えば所定のタイミングで、定期的に取得する。
【0037】
第1の電池管理部17は、第1の電池10の第1のSOC等に基づいて、第1のスイッチ15の動作を制御し(矢印L9)、第2の電池管理部27は、第2の電池20の第2のSOC等に基づいて、第2のスイッチ25の動作を制御する(矢印L10)。また、第1の電池管理部17は、DC/DCコンバータ5の動作を制御する(矢印L11)。DC/DCコンバータ5の動作の制御は、蓄電池2の充電における蓄電池2への入力値、第1のSOC、第2のSOC、及び、第2のSOCに対応した第2の電池20の最大許容入力値に基づいて、行われる。
【0038】
図2は、実施形態の第1のセル及び第2のセルのそれぞれについて、SOCに対する充電時のDC抵抗(DCR:direct current resistance)の関係を示す概略図である。
図2では、横軸がセル単体のSOCを示し、縦軸がセル単体のDC抵抗を示す。そして、チタン酸リチウムが負極活物質として用いられた場合の第1のセル11のDC抵抗の変化を変化パターンα1で示し、ニオブチタン複合酸化物が負極活物質として用いられた場合の第1のセル11のDC抵抗の変化を変化パターンα2で示す。また、黒鉛が負極活物質として用いられ、かつ、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が正極活物質として用いられた場合の第2のセル21のDC抵抗の変化を変化パターンβ1で示し、黒鉛が負極活物質として用いられ、かつ、リチウム鉄リン酸化物が正極活物質として用いられた場合の第2のセル21のDC抵抗の変化を変化パターンβ2で示す。また、
図2では、変化パターンα1,α2,β1,β2のそれぞれにおいて、DC抵抗は、複数の計測点の中で最もDC抵抗が高い計測点での値を1とする相対値で示される。なお、充電時のDC抵抗は、HPPC(hybrid pulse power characterization)試験により求めることができ、
図2は25℃における測定結果である。
【0039】
図2に示すように、セル単体におけるSOCに対するDC抵抗の関係は、負極活物質及び正極活物質の種類、及び、負極活物質及び正極活物質の容量等に対応して、ばらつく。ただし、多くの種類のセルでは、SOCが70%以上100%以下の範囲(
図2の範囲ε1)において、すなわち、SOCが高い領域において、抵抗が高くなる傾向にある。すなわち、多くの種類のセルでは、SOCが70%以上100%以下の範囲で、SOCが30%~70%の範囲に比べて、抵抗が高くなる傾向にある。特に、チタン複合酸化物を負極活物質として備える第1のセル11では(
図2の変化パターンα1,α2参照)、SOCが高い領域において、抵抗が大きく上昇する。このため、充電器等を外部端子7に接続して大電流で急速に蓄電池2を充電する場合等は、SOCが70%未満の状態、すなわち、SOCが高い領域から外れる状態で、第1のセル11を備える第1の電池10が使用されることが好ましい。
【0040】
電池10,20のそれぞれでは、前述した充電における最大許容入力値として、最大許容入力電力Pimaxが規定される。電池10,20のそれぞれでは、最大許容入力電力Pimaxは、式(1)のようにして算出される。式(1)において、Vmaxは電池の電圧の電圧上限値を示し、Vocpは電池の開回路電圧を示し、Rは電池の抵抗を示す。最大許容入力電力Pimaxの単位は、例えば[W]であり、電圧上限値Vmax及び開回路電圧Vocpの単位は、例えば[V]であり、抵抗Rの単位は、例えば[Ω]である。
【0041】
Pimax=((Vmax-Vocp)/R)×Vmax (1)
【0042】
ここで、電池10,20のそれぞれでは、SOCが低いほど、開回路電圧Vocpが低く、かつ、SOC30~70%となると抵抗Rも下がる。このため、電池10,20のそれぞれでは、SOC(第1のSOC及び第2のSOCの対応する一方)が低いほど、最大許容入力電力Pimaxが大きくなり、最大許容入力値が大きくなる。
【0043】
また、電池10,20のそれぞれでは、放電における最大許容出力値が規定される。最大許容出力値は、放電における電池からの出力の許容範囲の上限値であり、出力電力(放電電力)又は電池の放電レート(Cレート)等で規定される。そして、電池10,20のそれぞれでは、放電における最大許容出力値として最大許容出力電力Pomaxが規定される。電池10,20のそれぞれでは、最大許容出力電力Pomaxは、式(2)のようにして算出される。式(2)において、Vminは電池の電圧の電圧下限値を示し、Vocpは電池の開回路電圧を示し、Rは電池の抵抗を示す。最大許容出力電力Pomaxの単位は、例えば[W]であり、電圧下限値Vminの単位は、例えば[V]である。
【0044】
Pomax=((Vocp-Vmin)/R)×Vmin (2)
【0045】
ここで、電池10,20のそれぞれでは、SOCが高いほど、開回路電圧Vocpが高い。このため、電池10,20のそれぞれでは、SOC(第1のSOC及び第2のSOCの対応する一方)が高いほど、最大許容出力電力Pomaxが大きくなり、最大許容出力値が大きくなる。
【0046】
式(1)及び式(2)の関係等で前述したように、電池10,20のそれぞれでは、SOCを低下させることにより、入力特性(充電能力)が上昇し、SOCを上昇させることにより、出力特性(放電能力)が上昇する。また、炭素質物を負極活物質として備える第2のセル21から形成される第2の電池20の充電では、第2の電池20の劣化の抑制、及び、安全性の確保の観点から、第2のセル21のそれぞれにおけるリチウムの析出等を防止する必要がある。このため、第2の電池20の充電では、特にリチウムの析出が発生し易い第2のSOCが高い領域での充電において、第2の電池20への入力(入力電力又は充電レート等)を抑制し、第2のセル21でのリチウムの析出を防止する必要がある。
【0047】
このため、本実施形態では、第2の電池20の第2のSOCに対する第2の電池20の充電条件(入力電力又は充電レート等)の関係を示すデータが、データ記憶部32に記憶される。そして、第1の電池管理部17等から構成されるコントローラは、第2のSOCと第2の電池20の充電条件との関係に基づいて、DC/DCコンバータ5の動作を制御し、第2の電池20への入力電力(充電電力)又は充電レート等の第2の電池20への入力を制御する。これにより、第2の電池20の充電では、第2のセル21でのリチウムの析出が防止される範囲に、第2の電池20への入力(充電能力)が抑制される。
【0048】
第1の電池管理部17等から構成されるコントローラは、第1の電池10の第1のSOCを第2の電池20の第2のSOCより低くし、かつ、第1のSOCを第2のSOCより低く維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作等を制御する。第1のSOCが第2のSOCより低く維持されることにより、大電流で蓄電池2を充電する場合等の第2の電池20の最大許容入力値より大きい入力値で蓄電池2を充電する場合でも、蓄電池2への入力値から第2の電池20の最大許容入力値を減算した残りの入力(充電電流等)を、第1の電池10に入力可能(充電可能)になる。この際、コントローラは、DC/DCコンバータ5の動作を制御することにより、蓄電池2への入力から、第2の電池20の最大許容入力値だけ第2の電池20に充電させ、残りの入力を第1の電池10に充電させる。第2の電池20への入力が最大許容入力値以下に抑制されるため、大電流で蓄電池2を急速充電しても、第2のセル21でのリチウムの析出が有効に防止される。これにより、大電流で安全に蓄電池2を急速充電可能になる。
【0049】
第2の電池20の放電では、第2の電池20の充電とは異なり、第2のセル21においてリチウムが析出し難い。また、第2の電池20は、前述のように蓄電容量が大きい。このため、第2の電池20の第2のSOCが高い領域において蓄電池2から放電させることにより、長時間継続して蓄電池2から出力可能(放電可能)となる。これにより、蓄電池2が搭載される電池搭載機器3を長時間継続して駆動可能となる。
【0050】
以下、本実施形態の蓄電池2の運転方法について詳細に説明するとともに、管理装置のコントローラによる蓄電池2の充電の制御を含む、コントローラによる蓄電池2の管理について詳細に説明する。
【0051】
図3は、第1の実施形態に係る蓄電池の充電における第1の電池の第1のSOC及び第2の電池の第2のSOCの経時的な変化の一例を示す概略図である。
図4は、第1のSOC及び第2のSOCが
図3のように変化した場合における、蓄電池への入力電力、第1の電池への入力電力、及び、第2の電池への入力電力の一例を示す概略図である。
図3の一例では、状態γ1、状態γ2及び状態γ3の順に、第1のSOC及び第2のSOCが経時的に変化する。また、
図4では、横軸が蓄電池の充電開始時t0を基準とする時間を示し、縦軸が電力を示す。そして、
図4では、蓄電池2への入力値として入力電力P0iが、第1の電池10への入力値として入力電力P1iが、第2の電池20への入力値として入力電力P2iが示される。
【0052】
本実施形態では、第1の電池管理部17等から構成されるコントローラは、第1のSOC及び第2のSOCに少なくとも基づいて、充電器等からの出力を制御し、蓄電池2への入力電力P0iを制御する。また、コントローラは、第1のSOC及び第2のSOCに少なくとも基づいて、DC/DCコンバータ5の駆動を制御し、第2の電池20への入力電力P2iを制御する。
【0053】
図3及び
図4の一例では、充電器等が蓄電池2に接続された充電開始時t0において、第1のSOCη1及び第2のSOCη2は状態γ1のようになる。したがって、充電開始時t0では、第1のSOCη1は、第2のSOCη2より低く、第1のSOCη1と第2のSOCη2との差(SOC減算値)Δηは、大きい。この際、管理装置のコントローラは、充電器等と通信することにより、蓄電池2への入力電力P0iを大きくし、大電流で蓄電池2を充電する。また、コントローラは、DC/DCコンバータ5の駆動を制御することにより、第2の電池20への入力電力P2iを第2のSOCη2に対応した第2の電池20の最大許容入力電力P2imaxに抑制し、最大許容入力電力P2imaxで第2の電池20を充電する。そして、コントローラは、蓄電池2への入力電力P0iから第2の電池20の最大許容入力電力P2imaxを減算した残りの電力(P0i-P2imax)を第1の電池10に入力し、残りの電力(P0i-P2imax)で第1の電池10を充電する。これにより、第1の電池10の第1のSOCη1が急速に増加する。
【0054】
そして、充電開始時t0からある程度の時間が経過した時間t1又は時間t1の直前又は直後において、第1のSOCη1及び第2のSOCη2は状態γ2のようになる。状態γ2では、第1のSOCη1は、第2のSOCη2より低いが、第1のSOCη1と第2のSOCη2との差Δηは、小さい。このため、管理装置のコントローラは、時間t1又は時間t1の直前又は直後において、制御指令等によって充電器等からの出力を低下させ、蓄電池2への入力電力P0iを低下させる。これにより、蓄電池2への入力が、抑制される。また、入力電力P0iを低下させた後も、コントローラは、DC/DCコンバータ5の駆動を制御することにより、第2の電池20への入力電力P2iを第2の電池20の最大許容入力電力P2imaxに抑制し、最大許容入力電力P2imaxで第2の電池20を充電する。そして、コントローラは、蓄電池2への入力電力P0iから第2の電池20の最大許容入力電力P2imaxを減算した残りの電力(P0i-P2imax)で、第1の電池10を充電する。前述のように、入力電力P0i及びP2iを制御することにより、コントローラは、入力電力P0iを低下させた後において、第1のSOCη1を第2のSOCη2より低く維持する。
【0055】
そして、時間t1からある程度の時間が経過した時間t2又は時間t2の直前又は直後において、第1のSOCη1及び第2のSOCη2は状態γ3のようになる。状態γ3では、第2のSOCη2がSOC上限値η2maxになる。状態γ3でも、第1のSOCη1は、第2のSOCη2より低い。管理装置のコントローラは、第2のSOCη2がSOC上限値η2maxまで上昇したことに基づいて、スイッチ15,25をOFF状態に切替え、第1の電池10及び第2の電池20への入力を遮断する。そして、コントローラは、第2のSOCη2がSOC上限値η2maxまで上昇したことに基づいて、充電器等からの出力を停止させ、蓄電池2への電力の入力を停止させる。これにより、蓄電池2の充電が停止される。なお、SOC上限値η2maxは、100%であってもよく、
図3及び
図4の一例のように100%より低くてもよい。また、
図3及び
図4の一例では、時間t2又は時間t2の直前又は直後において、蓄電池2の充電が停止される。
【0056】
図5は、第1の実施形態に係る蓄電池の充電において、管理装置のコントローラによって行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図5の処理は、蓄電池2の充電開始から充電終了(充電停止)までの間に、コントローラによって行われる。
【0057】
図5に示すように、蓄電池2の充電においては、第1の電池管理部17は、充電器等に電力の出力を開始させる指令を送信する等して、蓄電池2への入力電力P0iの入力(充電)を開始させる(S101)。そして、第1の電池管理部17は、通信部30等を介して、蓄電池2への入力値として、蓄電池2への入力電力P0iを取得する(S102)。また、第1の電池管理部17は、第1の電池10の第1のSOCη1を取得する(S103)。そして、第2の電池管理部27は、第2の電池20の第2のSOCη2を取得する(S104)。そして、データ管理部31は、取得した第2のSOCη2、及び、データ記憶部32に記憶された第2のSOCη2と第2の電池20の最大許容入力電力P2imaxとの関係を示すデータに基づいて、第2のSOCη2に対応した第2の電池20の最大許容入力電力P2imaxを取得する(S105)。
図5の一例では、最大許容入力電力P2imaxは、第2の電池20の充電における最大許容入力値として、取得される。
【0058】
そして、第1の電池管理部17等は、蓄電池2への入力電力P0iと第2の電池20の最大許容入力電力P2imaxとを比較し、入力電力P0iが最大許容入力電力P2imaxより大きいか否かを判定する(S106)。入力電力P0iが最大許容入力電力P2imaxより大きい場合は(S106-Yes)、第1の電池管理部17は、DC/DCコンバータ5の動作を制御することにより、蓄電池2への入力電力P0iから、第2の電池20の最大許容入力電力P2imaxだけを第2の電池20に充電させ、残りの電力(P0i-P2imax)を第1の電池10に充電させる(S107)。すなわち、第1の電池10への入力電力P1iが電力(P0i-P2imax)になり、かつ、第2の電池20への入力電力P2iが最大許容入力電力P2imaxになる状態に、DC/DCコンバータ5の動作が制御される。
【0059】
一方、入力電力P0iが最大許容入力電力P2imax以下の場合は(S106-No)、第1の電池管理部17は、第1のスイッチ15をOFF状態に切替える等して、第1の電池10への入力(充電)を停止させ、入力電力P0iの全てを第2の電池20に充電させる(S108)。すなわち、第1の電池10への入力電力P1iがゼロなり、第2の電池20への入力電力P2iが蓄電池2への入力電力P0iになる。これにより、蓄電池2において第2の電池20が優先的に充電され、第2の電池20の第2のSOCが上昇する。
【0060】
そして、第1の電池管理部17等は、第1の電池10の第1のSOCη1と第2の電池20の第2のSOCη2とを比較し、第1のSOCη1が第2のSOCη2より低いか否かを判定する(S109)。第1のSOCη1が第2のSOCη2より低い場合は(S109-Yes)、処理は、S111へ進む。一方、第1のSOCη1が第2のSOCη2以上の場合は(S109-No)、第1の電池管理部17等は、充電器等からの出力を制御する等して、蓄電池2への入力値である入力電力P0iを第2の電池20への最大許容入力値である最大許容入力電力P2imax以下に低下させる(S110)。そして、処理は、S111へ進む。
【0061】
そして、電池管理部17,27等は、第2の電池20の第2のSOCη2がSOC上限値η2max以上であるか否か、すなわち、第2のSOCη2がSOC上限値η2maxまで上昇したか否かを判定する(S111)。第2のSOCη2がSOC上限値η2max以上である場合は(S111-Yes)、第1の電池管理部17は、充電器等に電力の出力を停止させる指令を送信する等して、蓄電池2への入力電力P0iの入力(充電)を停止させる(S112)。この際、電池管理部17,27は、スイッチ15,25のそれぞれをOFF状態に切替える。一方、第2のSOCη2がSOC上限値η2maxより低い場合は(S111-No)、処理はS102に戻る。そして、電池管理部17,27等から構成される管理装置のコントローラは、S102以降の処理を順次に実施する。
【0062】
前述のような処理が行われるため、本実施形態では、蓄電池2への入力値が第2の電池20の最大許容入力値より大きい場合でも、DC/DCコンバータ5の動作が制御されることにより、第2の電池20の最大許容入力値だけ第2の電池20に充電され、残りの入力が第1の電池10に充電される。このため、第2の電池20への入力が、最大許容入力値以下に抑制される。これにより、第2のセル21でのリチウムの析出が有効に防止され、大電流で安全に蓄電池2を急速充電可能になる。また、第2のセル21でのリチウムの析出が有効に防止されるため、蓄電池2の劣化が有効に抑制される。
【0063】
また、前述のような処理が行われるため、本実施形態では、第1の電池10の第1のSOCη1を第2の電池20の第2のSOCη2より低くし、かつ、第1のSOCη1を第2のSOCη2より低く維持する制御が、適切に行われる。そして、第1のSOCη1が第2のSOCη2以上の場合は、蓄電池2への入力値が、第2の電池20への最大許容入力値以下に低下される。これにより、蓄電池2への入力が第2の電池20へのみ入力される状態になり、第2の電池20が優先的に充電される。したがって、第1のSOCη1が第2のSOCη2以上になっても、第2の電池20の第2のSOCのみが上昇する状態に充電が行われるため、第1のSOCη1は、迅速に第2のSOCη2より低い状態になる。
【0064】
第1のSOCη1が第2のSOCη2より低い状態で適切に維持されることにより、第2の電池20の第2のSOCη2が高い状態で蓄電池2から放電させることが可能になる。第2の電池20の第2のSOCη2が高い状態で蓄電池2から放電されるにより、長時間継続して蓄電池2から出力可能(放電可能)となる。これにより、蓄電池2が搭載される電池搭載機器3を長時間継続して駆動可能となる。
【0065】
以上のように、本実施形態では、大電流で安全に蓄電池2を急速充電可能になるとともに、長時間継続して蓄電池2から出力可能になる。すなわち、充電等における安全性の確保、及び、電池搭載機器3の駆動時間の長期化が、両立される。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、第1の実施形態等と同様の部分については、説明を省略する。
【0067】
前述の実施形態等では、管理装置のコントローラは、第1の電池10の第1のSOCを第2の電池20の第2のSOCより低くし、かつ、第1のSOCを第2のSOCより低く維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作、及び、蓄電池2への入力等を制御する。これに対し、本実施形態では、第2のSOCη2から第1のSOCη1を減算したSOC減算値Δηに関して、下限値Δηmin以上かつ上限値Δηmax以下の基準範囲が規定される。そして、管理装置コントローラは、SOC減算値Δηを基準範囲内にし、かつ、SOC減算値Δηを基準範囲内で維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作、及び、蓄電池2への入力等を制御する。SOC減算値Δηの基準範囲は、第1のセル11及び第2のセル21の活物質の種類等に対応させて、設定される。SOC減算値Δηの基準範囲の情報は、例えば、データ記憶部32に記憶される。
【0068】
図6は、実施形態の第1の電池及び第2の電池のそれぞれについてSOCに対する開回路電圧の関係の一例を示す概略図である。
図7は、実施形態の第1の電池及び第2の電池のそれぞれについてSOCに対する開回路電圧の関係の
図6とは別の一例を示す概略図である。
図8は、実施形態の第1の電池及び第2の電池のそれぞれについてSOCに対する開回路電圧の関係の
図6及び
図7とは別の一例を示す概略図である。
図6ないし
図8では、横軸がSOCを示し、縦軸が電圧を示す。また、
図6ないし
図8の一例のいずれでも、第1の電池10を構成する第1のセル11は、チタン複合酸化物の一種である単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を負極活物質として備え、第2の電池20を構成する第2のセル21は、炭素質物の一種である黒鉛を負極活物質として備える。
【0069】
図6ないし
図8の一例のいずれでも、第2の電池20における第2のセル21の直列数Nは、99である。ただし、
図6ないし
図8の一例では、第1の電池10における第1のセル11の直列数Mが、互いに対して異なる。第1の電池10における第1のセル11の直列数Mは、
図6の一例で160、
図7の一例で150、
図8の一例で182である。
【0070】
図6ないし
図8の一例では、第1の電池10は、第2の電池20に比べて、SOCの変化に対応して電圧が大きく変化する。また、
図6の一例では、第1の電池10の第1のSOC及び第2の電池20の第2のSOCのいずれもが70%以上の状態で蓄電池2が充電されている場合、第1の電池10の電圧は、第2の電池20の電圧より高い。第1の電池10の電圧が第2の電池20の電圧より高い状態でDC/DCコンバータ5に不具合等が発生すると、第1の電池10の電圧と第2の電池20の電圧とが同一になる状態に、第1の電池10と第2の電池20との間で充電及び放電が行われる。この際、電圧が高い第1の電池10から放電された電力等が、電圧が低い第2の電池20に充電される。蓄電池2では、DC/DCコンバータ5に不具合等に起因して前述のように第1の電池10と第2の電池20との間で充電及び放電が行われても、第2のSOCが100%の状態を超えて第2の電池20が充電される第2の電池20の過充電を、防止する必要がある。
【0071】
このため、本実施形態では、第2のSOCη2から第1のSOCη1を減算したSOC減算値Δηに関して、下限値Δηmin以上かつ上限値Δηmax以下の基準範囲が規定される。そして、SOC減算値Δηを基準範囲内にし、かつ、SOC減算値Δηを基準範囲内で維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作、及び、蓄電池2への入力等が制御される。これにより、蓄電池2の充電において、第1の電池10の電圧と第2の電池20の電圧との電圧差ΔVが、低減される。電圧差ΔVが低減されることにより、DC/DCコンバータ5に不具合等に起因して前述のように第1の電池10と第2の電池20との間で充電及び放電が行われても、第2の電池20の過充電等が有効に防止される。
【0072】
また、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれの負極活物質が
図6ないし
図8の一例と同様になる場合、第1の電池10の電圧の変動範囲及び第2の電池20の電圧の変動範囲が以下の関係を満たす状態に、第1の電池10での第1のセル11の直列数M、及び、第2の電池20での第2のセル21の直列数Nが設定されることが、望ましい。すなわち、第1のSOCが10%以上90%以下における第1の電池10の電圧の変動範囲ΔX1、及び、第2のSOCが10%以上90%以下における第2の電池20の電圧の変動範囲ΔX2を規定した場合に、電圧の変動範囲ΔX2が電圧の変動範囲ΔX1内に収まる状態に、第1のセル11の直列数M及び第2のセル21の直列数Nが決定されることが、望ましい。この場合、第2のSOCが90%における第2の電池20の電圧は、第1のSOCが90%における第1の電池10の電圧以下になり、第2のSOCが10%における第2の電池20の電圧は、第1のSOCが10%における第1の電池10の電圧以上になる。なお、電圧の変動範囲ΔX1,ΔX2は、
図6ないし
図8に示される。
【0073】
第2のSOCが90%における第2の電池20の電圧が第1のSOCが90%における第1の電池10の電圧以下であることにより、蓄電池2の充電及び放電等において、第1の電池10の電圧が第2の電池20の電圧に対して大幅に低下することが、有効に防止される。これにより、蓄電池2からの出力電圧の低下が有効に防止され、蓄電池2からの放電において、負荷に十分な電力を供給可能になる。
【0074】
また、第2のSOCが10%における第2の電池20の電圧が第1のSOCが10%における第1の電池10の電圧以上であることにより、蓄電池2の充電及び放電等において、第1の電池10の電圧が第2の電池20の電圧に対して大幅に高くなることが、有効に防止される。これにより、第1の回路13からDC/DCコンバータ5への入力電圧が過度に高くなることが有効に防止され、DC/DCコンバータ5の耐電圧を大幅に高くする必要がなくなる。また、第2のSOCが10%における第2の電池20の電圧が第1のSOCが10%における第1の電池10の電圧以上であることにより、第1の電池10での第1のセル11の直列数Mが、過度に多くならない。これにより、第1の電池10及び蓄電池2の製造におけるコスト等が抑えられる。
【0075】
ここで、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれの負極活物質が
図6ないし
図8の一例と同様で、かつ、第2のセル21の直列数Nが
図6ないし
図8の一例と同様に99であるとする。この場合、第2の電池20の電圧の変動範囲ΔX2を第1の電池10の電圧の変動範囲ΔX1内に収めるには、第1のセル11の直列数Mを150以上182以下にすることが条件となる。すなわち、直列数Nが99の場合、電圧の変動範囲ΔX2を電圧の変動範囲ΔX1内に収める直列数Mの条件範囲は、150以上182以下となる。
【0076】
また、第2のSOCが100%における第2の電池20の電圧と第1の電池10の電圧が同一になる場合の第1の電池10の第1のSOCη1を、パラメータη1aとして規定する。そして、100%(又は1.00)からパラメータη1aを減算したパラメータΔηaを、規定する。セル11,21のそれぞれの負極活物質が
図6ないし
図8の一例と同様となる場合、SOC減算値Δηに関する基準範囲の下限値Δηmin及び上限値Δηmaxは、パラメータη1a,Δηaに基づいて、設定される。なお、パラメータη1a,Δηaは、
図6ないし
図8に示される。
【0077】
ある一例では、第2のセル21の直列数Nを
図6ないし
図8の一例と同様に99として、基準範囲の下限値Δηmin及び上限値Δηmaxを設定する。この場合、SOC減算値Δηの基準範囲の下限値Δηminの設定では、第1のセル11の直列数Mを前述した条件範囲の下限値である150として、前述のパラメータη1a,Δηaを算出する。すなわち、直列数M,Nを
図7の一例と同様に設定して、パラメータη1a,Δηaを算出する。直列数Mが150で、かつ、直列数Nが99の場合、第1のSOCが90%程度における第1の電池10の電圧が、第2のSOCが100%における第2の電池20の電圧と同一になる。このため、パラメータη1aは90%程度となり、パラメータΔηaは10%程度(0.10程度)になる。本一例では、SOC減算値Δηの基準範囲の下限値Δηminを、算出したパラメータΔηaと同一又は略同一の値に設定する。このため、基準範囲の下限値Δηminは、例えば0.10(10%)に設定される。
【0078】
また、本一例では、Δηの基準範囲の上限値Δηmaxの設定において、第1のセル11の直列数Mを前述した条件範囲の上限値である182として、前述のパラメータη1a,Δηaを算出する。すなわち、直列数M,Nを
図8の一例と同様に設定して、パラメータη1a,Δηaを算出する。直列数Mが182で、かつ、直列数Nが99の場合、第1のSOCが65%程度における第1の電池10の電圧が、第2のSOCが100%における第2の電池20の電圧と同一になる。このため、パラメータη1aは65%程度となり、パラメータΔηaは35%程度(0.35程度)になる。本一例では、SOC減算値Δηの基準範囲の上限値Δηmaxを、算出したパラメータΔηaと同一又は略同一の値に設定する。このため、基準範囲の上限値Δηmaxは、例えば0.35(35%)に設定される。
【0079】
本実施形態のある一例では、第1のセル11及び第2のセル21のそれぞれの負極活物質が
図6ないし
図8の一例と同様になり、第2のSOCη2から第1のSOCη1を減算したSOC減算値Δηに関して、0.10以上かつ0.35以下の基準範囲が規定される。そして、管理装置のコントローラ(第1の電池管理部17等を含む)は、SOC減算値Δηを基準範囲内にし、かつ、SOC減算値Δηを基準範囲内で維持する状態に、DC/DCコンバータ5の動作、及び、蓄電池2への入力等を制御する。これにより、蓄電池2の充電等において、DC/DCコンバータ5に不具合等に起因して第1の電池10と第2の電池20との間で充電及び放電が行われても、第2の電池20の過充電等が有効に防止される。
【0080】
また、本実施形態では、第1のセル11及び第2のセル21の活物質の種類等がいずれであっても、SOC減算値Δηに関する基準範囲の下限値Δηminは、0より大きい値に設定される。このため、SOC減算値Δηを基準範囲内にし、かつ、SOC減算値Δηを基準範囲内で維持する状態に、DC/DCコンバータ5の駆動等が制御されることにより、第1の電池10の第1のSOCη1が第2の電池20の第2のSOCη2より低く維持される。
【0081】
図9は、第2の実施形態に係る蓄電池の充電において、管理装置のコントローラによって行われる処理の一例を示すフローチャートである。
図9の処理は、蓄電池2の充電開始から充電終了(充電停止)までの間に、コントローラによって行われる。
【0082】
図9に示すように、本実施形態でも第1の実施形態等と同様に、管理装置のコントローラは、S101~S108,S111,S112の処理を行う。ただし、本実施形態では、S109,S110の処理の代わりに、以下に説明するS115~S118の処理が行われる。
【0083】
本実施形態では、S107又はS108の処理を行うと、第1の電池管理部17等は、第2の電池20の第2のSOCη2から第1の電池10の第1のSOCη1を減算したSOC減算値Δηを算出する。そして、第1の電池管理部17等は、算出したSOC減算値Δηが下限値Δηmin以上かつ上限値Δηmax以下の基準範囲内であるか否かを判定する。この際、第1の電池管理部17等は、SOC減算値Δηが下限値Δηmin以上であるか否かを判定する(S115)。SOC減算値Δηが下限値Δηmin以上である場合は(S115-Yes)、第1の電池管理部17等は、SOC減算値Δηが上限値Δmax以下であるか否かを判定する(S116)。そして、SOC減算値Δηが上限値Δηmax以下である場合は(S116-Yes)、第1の電池管理部17等は、SOC減算値Δηが基準範囲内であると判定し、処理は、S111へ進む。
【0084】
S115において、SOC減算値Δηが基準範囲の下限値Δηminより小さい場合は(S115-No)、第1の電池管理部17等は、充電器等からの出力を制御する等して、蓄電池2への入力値である入力電力P0iを第2の電池20への最大許容入力値である最大許容入力電力P2imax以下に低下させる(S117)。そして、処理は、S111へ進む。また、S116において、SOC減算値Δηが基準範囲の上限値Δηmaxより大きい場合は(S116-No)、第1の電池管理部17等は、充電器等からの出力を制御する等して、第1の電池10への入力電力P1iが第2の電池20への入力電力P2iより大きくなる状態に、蓄電池2への入力電力P0iを増加させる(S118)。この際、第1の電池管理部17等は、蓄電池2への入力電力P0iを第2の電池20の最大許容入力電力P2imaxの2倍より大きくする等して、第1の電池10への入力電力P1iを第2の電池20への入力電力P2iより大きくする。そして、処理は、S111へ進む。
【0085】
前述のような処理が行われるため、本実施形態でも第1の実施形態等と同様に、蓄電池2への入力値が第2の電池20の最大許容入力値より大きい場合、DC/DCコンバータ5の動作が制御されることにより、第2の電池20の最大許容入力値だけ第2の電池20に充電され、残りの入力が第1の電池10に充電される。このため、第2の電池20への入力が、最大許容入力値以下に抑制される。このため、本実施形態でも、大電流で安全に蓄電池2を急速充電可能になるとともに、蓄電池2の劣化が有効に抑制される。
【0086】
また、前述のような処理が行われるため、本実施形態では、第2のSOCη2から第1のSOCη1を減算したSOC減算値Δηを下限値Δηmin以上かつ上限値Δηmax以下の基準範囲内にし、かつ、SOC減算値Δηを基準範囲内で維持する制御が、適切に行われる。そして、SOC減算値Δηが基準範囲の下限値Δηminより小さい場合は、蓄電池2への入力値が、第2の電池20への最大許容入力値以下に低下される。これにより、蓄電池2への入力が第2の電池20へのみ入力される状態になり、第2の電池20が優先的に充電される。したがって、SOC減算値Δηが下限値Δηminより小さくなっても、第2の電池20の第2のSOCのみが上昇する状態に充電が行われるため、SOC減算値は、迅速に基準範囲内になる。
【0087】
また、SOC減算値Δηが基準範囲の上限値Δηmaxより大きい場合は、第1の電池10への入力が第2の電池20への入力より大きくなる状態に、蓄電池2への入力値が増加される。これにより、第1の電池10が優先的に充電される。したがって、SOC減算値Δηが上限値Δηmaxより大きくなっても、第2の電池20の第2のSOCに比べて第1の電池10の第1のSOCが大きく上昇する状態に充電が行われるため、SOC減算値は、迅速に基準範囲内になる。SOC減算値Δηが基準範囲内で適切に維持されることにより、DC/DCコンバータ5に不具合等に起因して第1の電池10と第2の電池20との間で充電及び放電が行われても、第2の電池20の過充電等が有効に防止される。
【0088】
また、本実施形態では、SOC減算値Δηに関する基準範囲の下限値Δηminが0より大きい値であるため、SOC減算値Δηが基準範囲内で適切に維持されることにより、第1の電池10の第1のSOCη1が第2の電池20の第2のSOCη2より低い状態で適切に維持される。第1のSOCη1が第2のSOCη2より低い状態で適切に維持されることにより、本実施形態でも、第2の電池20の第2のSOCη2が高い状態で蓄電池2から放電させることが可能になる。このため、本実施形態でも、長時間継続して蓄電池2から出力可能(放電可能)となる。
【0089】
以上のように、本実施形態でも、大電流で安全に蓄電池2を急速充電可能になるとともに、長時間継続して蓄電池2から出力可能になる。すなわち、充電等における安全性の確保、及び、電池搭載機器3の駆動時間の長期化が、両立される。また、本実施形態では、DC/DCコンバータ5に不具合等に起因して第1の電池10と第2の電池20との間で充電及び放電が行われても、第2の電池20の過充電等が有効に防止される。
【0090】
なお、実施形態では、コンピュータに前述した処理を実行させる管理プログラムが提供されてもよい。管理プログラムは、コンピュータに、蓄電池の充電における蓄電池への入力値、第1の電池のSOCである第1のSOC、第2の電池のSOCである第2のSOC、及び、第2のSOCに対応した第2の電池の充電における最大許容入力値に基づいて、第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御させる。
【0091】
前述の少なくとも一つの実施形態又は実施例の蓄電池では、蓄電池の充電における蓄電池への入力値、第1の電池のSOCである第1のSOC、第2の電池のSOCである第2のSOC、及び、第2のSOCに対応した第2の電池の充電における最大許容入力値に基づいて第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作が制御される。これにより、大電流で安全に蓄電池を急速充電可能にするとともに、長時間継続して蓄電池から出力可能にする蓄電池の管理装置、蓄電池の管理方法及び蓄電システムを提供することができる。
【0092】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、付記を記載する。
(付記項1)
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の管理装置であって、
前記蓄電池の充電における前記蓄電池への入力値、前記第1の電池のSOCである第1のSOC、前記第2の電池のSOCである第2のSOC、及び、前記第2のSOCに対応した前記第2の電池の充電における最大許容入力値に基づいて、前記第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御するコントローラを具備する、
管理装置。
(付記項2)
前記コントローラは、前記第1のSOCを前記第2のSOCより低くし、かつ、前記第1のSOCを前記第2のSOCより低く維持する状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、付記項1の管理装置。
(付記項3)
前記コントローラは、前記第1のSOCが前記第2のSOC以上であることに基づいて、前記蓄電池への前記入力値を前記第2の電池への前記最大許容入力値以下に低下させる、付記項2の管理装置。
(付記項4)
前記コントローラは、前記第2のSOCから前記第1のSOCを減算したSOC減算値を下限値以上かつ上限値以下の基準範囲内にし、かつ、前記SOC減算値を前記基準範囲内で維持する状態に、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、付記項1の管理装置。
(付記項5)
前記コントローラは、前記SOC減算値が前記基準範囲の前記下限値より小さいことに基づいて、前記蓄電池への前記入力値を前記第2の電池への前記最大許容入力値以下に低下させる、付記項4の管理装置。
(付記項6)
前記第1の電池は、チタン複合酸化物の一種である単斜晶型ニオブチタン複合酸化物を負極活物質として備え、
前記第2の電池は、炭素質物を負極活物質として備え、
前記コントローラは、前記SOC減算値の前記基準範囲について前記下限値を0.10とし、かつ、前記上限値を0.35として、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御する、
付記項4又は5の管理装置。
(付記項7)
前記第1の電池は、チタン複合酸化物を負極活物質として備え、
前記第2の電池は、炭素質物を負極活物質として備え、
前記コントローラは、前記DC/DCコンバータの前記動作を制御することにより、前記第1の電池及び前記第2の電池のそれぞれの充電を制御する、
付記項1ないし5のいずれか1項の管理装置。
(付記項8)
前記蓄電池への前記入力値は、前記蓄電池の前記充電における前記蓄電池への入力電力又は充電レートであり、
前記第2の電池の前記最大許容入力値は、前記第2の電池の充電における前記第2の電池への入力電力又は充電レートで規定される、
付記項1ないし7のいずれか1項の管理装置。
(付記項9)
付記項1ないし8のいずれか1項の管理装置と、
前記第1の電池及び前記第2の電池を備え、前記管理装置によって管理される前記蓄電池と、
前記第2の電池が接続される前記第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換し、前記管理装置の前記コントローラによって前記動作が制御される前記DC/DCコンバータと、
を具備する蓄電システム。
(付記項10)
前記蓄電池が搭載される電池搭載機器をさらに具備する、付記項9の蓄電システム。
(付記項11)
第1の電池が第1の回路に接続されるとともに、前記第1の電池より蓄電容量が大きく、かつ、前記第1の電池より許容Cレートが小さい第2の電池が第2の回路に接続される蓄電池の管理方法であって、
前記蓄電池の充電における前記蓄電池への入力値、前記第1の電池のSOCである第1のSOC、前記第2の電池のSOCである第2のSOC、及び、前記第2のSOCに対応した前記第2の電池の充電における最大許容入力値に基づいて、前記第2の回路へ入出力される電力の電圧を変換するDC/DCコンバータの動作を制御することを具備する、管理方法。
【符号の説明】
【0093】
1…蓄電システム、2…蓄電池、3…電池搭載機器、5…DC/DCコンバータ、10…第1の電池、11…第1のセル、13…第1の回路、17…第1の電池管理部、20…第2の電池、21…第2のセル、23…第2の回路、27…第2の電池管理部、30…通信部、31…データ管理部、32…データ記憶部。