(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】水回り用内装材
(51)【国際特許分類】
A01N 43/653 20060101AFI20240408BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240408BHJP
E04F 13/18 20060101ALI20240408BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240408BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20240408BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240408BHJP
A01N 47/18 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
A01N43/653 C
A01P3/00
E04F13/18 A
E04F15/02 A
E04F13/08 G
B32B27/18 F
A01N47/18 101C
(21)【出願番号】P 2020148079
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松元 務
(72)【発明者】
【氏名】西山 知也
(72)【発明者】
【氏名】増田 知里
【審査官】土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-211004(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/080973(JP,A1)
【文献】特開平11-262980(JP,A)
【文献】特開平11-165380(JP,A)
【文献】特開2006-052205(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N
A01P
E04F
B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル系樹脂を含む表層と、
前記表層の少なくとも一部を被覆し且つ前記塩化ビニル系樹脂を含まない、表面が露出したコート層と、を備え、
前記表層がメチル-2-ベンツイミダゾールカルバメートを0.2質量部以上含まず、
トリアゾール系抗菌剤、イソチアゾリン系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤及び銀系抗菌剤のうちの少なくとも1種を含み、
前記コート層がイミダゾール系抗菌剤を含む、水回り用内装材。
【請求項2】
前記コート層が、電離放射線硬化型樹脂を含む、請求項
1に記載の水回り用内装材。
【請求項3】
前記表層の一部が、前記コート層に被覆されずに露出している、請求項1
又は2に記載の水回り用内装材。
【請求項4】
前記表層は、表面に凹凸を形成する凹部と凸部とを有し、該凹部が前記コート層に被覆されずに露出している、請求項1乃至
3の何れか1項に記載の水回り用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水回り用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水回り用内装材には、安価であり加工性、耐久性、及び強度が優れる塩化ビニル系樹脂製のものが汎用されている。また、前記水回り用内装材は、通常、使用者が直接触れる部分や使用者に視認される部分を構成することとなるため、抗菌性に優れ且つ意匠性に優れることが好ましい。
【0003】
例えば、特許文献1では、基材層と、該基材層を被覆するトップフィルムとを備え、前記トップフィルムが塩化ビニル系樹脂と抗菌剤と紫外線吸収剤とを含む水回り用内装材が提案されている。かかる水回り用内装材は、トップフィルムが抗菌剤を含むことによって表面に抗菌性が付与されるとともに、トップフィルムが紫外線吸収剤を含むによって表面の変色が抑制される。
【0004】
また、特許文献1には、前記抗菌剤として種々の抗菌剤を使用可能であることが記載されている。これらの中でも、イミダゾール系抗菌剤は、抗菌効果、安全性に優れることから、水回り用部材に好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記のような水回り用内装材は、その表面を殺菌処理するために、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤が用いられることがある。
しかしながら、本発明者らが検討したところ、水回り用内装材の表面を構成する部分が塩化ビニル系樹脂を含み且つイミダゾール系抗菌剤であるメチル-2-ベンツイミダゾールカルバメートを含む場合に、該表面に前記塩素系殺菌剤が接触すると、該表面に大きな変色が生じることが判明した。このため、該変色に起因して水回り用内装材の外観が損なわれるおそれがあり、特に、意匠性に優れた水回り用内装材の場合には、変色が視認され易く、その意匠性が損なわれるおそれがある。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、イミダゾール系抗菌剤を使用しつつ、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤による変色が抑制された水回り用内装材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る水回り用内装材は、
塩化ビニル系樹脂を含む表層と、
前記表層の少なくとも一部を被覆し且つ前記塩化ビニル系樹脂を含まない、表面が露出したコート層と、を備え、
前記表層がメチル-2-ベンツイミダゾールカルバメートを0.2質量部以上含まず、且つ、前記コート層がイミダゾール系抗菌剤を含む。
【0009】
斯かる構成によれば、塩化ビニル系樹脂を含む基材層がイミダゾール系抗菌剤であるメチル-2-ベンツイミダゾールカルバメートを0.2質量部以上含まないことによって、塩化ビニル系樹脂とメチル-2-ベンツイミダゾールカルバメートとの組み合わせに起因する、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤による変色が抑制される。また、塩化ビニル系樹脂を含まないコート層には、メチル-2-ベンツイミダゾールカルバメートを含めてイミダゾール系抗菌剤を使用することができる。
【0010】
また、本発明に係る水回り用内装材は、好ましくは、
前記表層が、トリアゾール系抗菌剤、イソチアゾリン系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤及び銀系抗菌剤のうちの少なくとも1種を含む。
【0011】
斯かる構成によれば、表層がトリアゾール系抗菌剤、イソチアゾリン系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤及び銀系抗菌剤のうちの少なくとも1種を含むため、抗菌性により優れたものとなる。
【0012】
また、本発明に係る水回り用内装材は、好ましくは、
前記コート層が、電離放射線硬化型樹脂を含む。
【0013】
斯かる構成によれば、コート層が比較的透明性に優れた電離放射線硬化型樹脂を含むため、表層上のコート層形成箇所が目立たなくなり、意匠性に優れたものとなるとともに、耐汚れ性、耐久性を付与することができる。
【0014】
また、本発明に係る水回り用内装材は、好ましくは、
前記表層の一部が、前記コート層に被覆されずに露出している。
【0015】
斯かる構成によれば、表層の一部がコート層に被覆されずに露出していることによって、表層に含まれる抗菌剤が使用初期から抗菌性を発揮し易くなる。
【0016】
また、本発明に係る水回り用内装材は、好ましくは、
前記表層は、表面に凹凸を形成する凹部と凸部とを有し、該凹部が前記コート層に被覆されずに露出している。
【0017】
水回り用内装材は、菌やカビが繁殖しにくくなるように、表面の水が乾燥され易くなるように構成されることが好ましい。これに関し、上記構成によれば、表面に凹凸が形成されることによって、表面の凹んだ箇所が水の通路を形成するため、表面全体において、水が溜まりにくく乾燥され易いものとなる。一方、凹んだ箇所は水の通路を形成するため、比較的水が残存し易く乾燥されにくい箇所となり得る。これに対しては、凸部を被覆するコート層に含まれるイミダゾール系抗菌剤が凹んだ箇所に残存した水に溶出することによって、この凹んだ箇所において、イミダゾール系抗菌剤と表層から溶出した他の抗菌剤とが組み合わされ、比較的高い抗菌性が発揮され得る。
また、水回り用内装材が浴室用床材など、人の足裏が接触し得る箇所に敷設される場合には、凸部を被覆するコート層は、人の足裏が直接接触し易い箇所となり、これに起因してカビなどが発生し易い箇所となり得る。これに対して、コート層に含まれるイミダゾール系抗菌剤が、人の足裏に存在し得る白癬菌などの菌に対して比較的高い抗菌性を有するため、上記のようなカビの発生が抑制され得る。
【発明の効果】
【0018】
以上の通り、本発明によれば、イミダゾール系抗菌剤を使用しつつ、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤による変色が抑制された水回り用内装材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る水回り用内装材の概略断面図である。
【
図2】
図2は、表層が複数の層を有する水回り用内装材の概略断面図である。
【
図3】
図3は、表面が凹凸状の水回り用内装材を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、表面が凹凸状の水回り用内装材の変形例を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、表面が凹凸状の水回り用内装材の別の変形例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、
図1~5を参照しつつ、本発明の実施形態に係る水回り用内装材について説明する。
【0021】
図1~5に示されるように、一実施形態に係る水回り用内装材1は、主体となる層である基材層11と、基材層11に積層されたシート状の表層12と、表層12の少なくとも一部を被覆し且つ表面131が露出したコート層13とを備え、表層12が塩化ビニル系樹脂と抗菌剤とを含み、コート層13が前記塩化ビニル系樹脂を含まず且つイミダゾール系抗菌剤を含む。また、表層12が、前記抗菌剤としてメチル-2-ベンツイミダゾールカルバメート(カルベンダジムとも呼ばれ、以下ではMBCとも称する)を0.2質量部以上含まないことが好ましい。
【0022】
水回り用内装材1は、その施工性を向上させる上での柔軟性を有することが好ましい。柔軟性を有するとは、例えば、水回り用内装材1が直径10cmの円柱状の巻芯に巻き取ることが可能な柔軟性を有することを意味する。
【0023】
水回り用内装材1の厚みは、通常、0.5mm~10mmであり、好ましくは1mm~7mmであり、より好ましくは2mm~5mmである。
【0024】
基材層11の材質は、特に限定されないが、樹脂製であることが好ましい。基材層11を構成する樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体などの酢酸ビニル系樹脂、エチレン-メタクリレート樹脂などのアクリル系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂が好ましく、これによって、基材層11と塩化ビニル系樹脂を含む表層12とが接合され易くなる。
【0025】
基材層11は、発泡樹脂又は非発泡樹脂のいずれにより形成されてもよいが、水回り用内装材1が浴室用床材に用いられる場合の防痛性、防滑性に優れ、柔軟性も向上することから、発泡樹脂により形成されることが好ましい。また、基材層11は、単層構造であってもよく複層構造であってもよい。前記複層構造は、例えば、表面側から順に、上側発泡層、補強層及び下側発泡層で構成される。前記上側発泡層及び前記下側発泡層の形成には、前述した基材層11を構成する樹脂を用いることができ、前記塩化ビニル系樹脂が好適に用いられる。
前記補強層の形成には、特に限定されないが、例えば、不織布、織布などが好適に用いられる。前記不織布や前記織布を構成する繊維の材質は、特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィンなどの合成樹脂繊維;ガラス、カーボンなどの無機繊維;天然繊維などが挙げられる。特に、温度による寸法変化が小さいことから、前記補強層としては、ガラス繊維を含む不織布又は織布を用いることが好ましい。また、寸法安定性、表写りの抑制、施工面の不陸隠蔽性などの観点から不織布を用いることがより好ましい。特に、ガラスマットは、寸法安定性、表写りの抑制、施工面の不陸隠蔽性に優れ、さらに、ペースト塩化ビニル系樹脂などの樹脂材料がこれに含浸されるとガラス繊維の周辺に該樹脂が一体的に結合して強固な層を形成するため、とりわけ好適に使用され得る。
前記補強層を構成する不織布又は織布の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.1mm~1mmであり、その目付量は、10g/m2~100g/m2である。
【0026】
基材層11の厚みは、通常、0.45mm~9mmであり、好ましくは0.95mm~6mmであり、より好ましくは1.5mm~4.5mmである。
【0027】
表層12は、その表面121の全体がコート層13によって被覆されていてもよい(
図1及び2)。この場合、水回り用内装材1は、コート層13の表面131で構成された表面14を備えたものとなる。
【0028】
また、表層12は、その表面121の一部がコート層13によって被覆されていてもよい(
図3~5)。この場合、表層12は、コート層13に被覆されずに露出した露出面と、コート層13に被覆された被覆面とを有するものとなる。これによって、水回り用内装材1は、表層12の露出面と、コート層13の表面131とで構成された表面14を備えたものとなる。
【0029】
水回り用内装材1は、通常、表面14が露出するように敷設される。よって、表面14は、使用者に視認され且つ該使用者が接触し得る部分となる。このため、水回り用内装材1の表面14を構成する表層12及び/又はコート層13は、変色が抑制され且つ抗菌性が付与されるように構成されることが重要である。なお、抗菌性と抗カビ性を分けて定義することもあるが、本明細書において、抗菌性とは、抗菌性と抗カビ性を併せた性能を意味し、細菌の生育や繁殖を阻止する性能に加えて、カビや藻の生育や繁殖を阻止する性能も含む。
【0030】
具体的には、表層12が、メチル-2-ベンツイミダゾールカルバメート(MBC)以外の抗菌剤と、前記塩化ビニル系樹脂とを含む。すなわち、前記塩化ビニル系樹脂を含む表層12が、MBCを含まないことが重要である。また、コート層13が、前記イミダゾール系抗菌剤と、前記塩化ビニル系樹脂以外の樹脂とを含む。すなわち、前記塩化ビニル系樹脂を含まないコート層13が、前記イミダゾール系抗菌剤を含むことが重要であり、前記イミダゾール系抗菌剤としてMBCを含むことが好ましい。かかる構成によって、前記塩化ビニル系樹脂とMBCとの組み合わせに起因する、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系殺菌剤による表面14の変色が抑制されるとともに、前記イミダゾール系抗菌剤の抗菌性が表面14に付与される。言い換えれば、表面14の変色を抑制するために、前記塩化ビニル系樹脂を含む表層12がMBCを含ませることができない代わりに、前記塩化ビニル系樹脂を含まないコート層13が前記イミダゾール系抗菌剤の抗菌性を補うように、表面14に抗菌性が付与される。
【0031】
表層12がMBCを含まないとは、表層12に含まれる樹脂100質量部に対して、MBCの含有量が0.4質量部未満であれば前記変色の抑制に有効であると考えられるが、MBCの含有量が0.2質量部以下であることが好ましく、MBCの含有量が0質量部であることがより好ましい。これによって、前記塩素系殺菌剤による表面14の変色が確実に抑制される。
【0032】
また、表層12は、イミダゾール系抗菌剤である2-(4-チアゾリル)-ベンツイミダゾール(チアベンタゾールとも呼ばれ、以下ではTBZとも称する)を含まないことが好ましく、より具体的には、表層12に含まれる樹脂100質量部に対して、TBZを0.4質量部以上含まないことが好ましい。前記塩化ビニル系樹脂を含む表層12にTBZを含ませると、TBZのブルーム(粉吹き)が生じ、水回り用内装材1の意匠性が低下し得るからである。なお、表層12は、ブルームを抑制し得る範囲でTBZを含んでいてもよく、この場合、TBZの含有量は、0.4質量部未満であることが好ましく、0.3量部以下であることがより好ましい。
【0033】
前記塩素系殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウムなどの次亜塩素酸塩及びこれらの水容液、亜塩素酸ナトリウムなどの亜塩素酸塩及びこれの水溶液、ジクロロイソシアヌル酸塩及びこれの水溶液などが挙げられる。
【0034】
表層12は、その他の有機系抗菌剤及び無機系抗菌剤を1種以上含むことが好ましく、2種以上含むことがより好ましく、3種以上含むことがさらに好ましい。より具体的には、表層12は、トリアゾール系抗菌剤、イソチアゾリン系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤(ジンクピリチオン:ZPT)及び銀系抗菌剤のうち、1種以上含むことが好ましく、2種以上含むことがより好ましく、3種以上含むことがさらに好ましい。特に、表層12は、前記イミダゾール系抗菌剤以外の有機系抗菌剤であるトリアゾール系抗菌剤、イソチアゾリン系抗菌剤及びピリジン系抗菌剤を、1種以上含むことが好ましく、2種以上含むことがより好ましく、3種以上含むことがさらに好ましい。
【0035】
前記有機系抗菌剤としては、例えば、トリアゾール系抗菌剤、チアゾリン系抗菌剤、ピリジン系抗菌剤、アルデヒド系抗菌剤、塩素系抗菌剤、カルボン酸系抗菌剤、カーバメイト系抗菌剤、スルファミド系抗菌剤、フェノール系抗菌剤、ヨウ素系抗菌剤、フタルイミド系抗菌剤、キノリン系抗菌剤、チアゾール系抗菌剤などが挙げられる。表層12は、2種以上の前記有機系抗菌剤を含んでいてもよい。
【0036】
前記無機系抗菌剤としては、例えば、銀系抗菌剤、亜鉛系抗菌剤又は銅系抗菌剤などが挙げられる。表層12は、2種以上の前記無機系抗菌剤を含んでいてもよい。
【0037】
表層12は、前記トリアゾール系抗菌剤、前記ピリジン系抗菌剤(ジンクピリチオン:ZPT)、イソチアゾリン系抗菌剤(OIT等)及び前記銀系抗菌剤を含むことが好ましく、少なくとも前記トリアゾール系抗菌剤及び前記ピリジン系抗菌剤を含むことがより好ましい。これによって、コート層13に含まれる前記イミダゾール系抗菌剤との組み合わせによって抗菌スペクトルが拡がり、水回り用内装材1の表面14が抗菌性に優れたものとなる。
【0038】
前記トリアゾール系抗菌剤としては、例えば、α-ブチル-α-(2,4-ジクロロフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノール(ヘキサコナゾール)、α-[2-(4-クロロフェニル)エチル]-α-(1,1-ジメチルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノール(テブコナゾール)、α-(4-クロロフェニル)-α-(1-シクロプロピルエチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-エタノール(シプロコナゾール)、1-[[2-(2,4-ジクロロフェニル)-4-n-プロピル-1,3-ジオキソラン-2-イル]メチル]-1H-1,2,4-トリアゾール(プロピコナゾール)などが挙げられる。
【0039】
前記チアゾリン系抗菌剤としては、例えば、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、5-クロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4-クロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、4,5-ジクロロ-2-n-オクチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4,5-トリメチレン-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン、N-n-ブチル-1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0040】
前記ピリジン系抗菌剤としては、例えば、2-ピリジンチオール-1-オキシドナトリウム(ピリチオンナトリウム)、ビス(2-ピリジチオ-1-オキシド)亜鉛(ジンクピリチオン、ZPT)、デンシル(2,3,5,6,-テトラクロロ-4-(メチルスルフォニル)ピリジン)、ビス(2-ピリジチオ-1-オキシド)銅(カッパーピリチオン)などが挙げられる。
【0041】
前記アルデヒド系抗菌剤としては、例えば、α-ブロモシンナムアルデヒド(BCA)などが挙げられる。
【0042】
前記塩素系抗菌剤としては、例えば、3,4,4’-トリクロロカルバニリド(トリクロカルバン)、4,4-ジクロロ-3-(3-フルオロメチル)-カルバニリド(ハロカルバン)、2,4,5,6-テトラクロロイソフタロニトリル、ジクロロイソシアヌル酸、トリクロロイソシアヌル酸などが挙げられる。
【0043】
前記カルボン酸系抗菌剤としては、例えば、安息香酸、ソルビン酸、カプリル酸、プロピオン酸、10-ウンデシレン酸、ウンデシレン酸亜鉛などが挙げられる。
【0044】
前記カーバメイト系抗菌剤としては、例えば、N-メチルジチオカルバミン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0045】
前記スルファミド系抗菌剤としては、例えば、ジクロフルアニド、トリフルアニドなどが挙げられる。
【0046】
前記フェノール系抗菌剤としては、例えば、2-イソプロピル-5-メチルフェノール(チモール)、3-メチル-4-イソプロピルフェノール(ビオゾール)、オルトフェニルフェノール(OPP)、フェノール、ブチル-p-ヒドロキシベンゾエート(ブチルパラベン)、エチル-p-ヒドロキシベンゾエート(エチルパラベン)、メチル-p-ヒドロキシベンゾエート(メチルパラベン)、プロピル-p-ヒドロキシベンゾエート(プロピルパラベン)、メタクレゾール、オルトクレゾール、パラクレゾール、オルトフェニルフェノールナトリウム、2-ベンジル-4-クロロフェノール(クロロフェン)、2-メチル-3-クロロフェノール(クロロクレゾール)などが挙げられる。
【0047】
前記ヨウ素系抗菌剤としては、例えば、ジヨードメチル-p-トリル-スルフォン(アミカル48ヨウ素)、ポリビニルピロリドンヨード、p-クロロフェニル-3-ヨードプロパギルフォーマル、3-ブロモ-2,3-ジヨード-プロペニルエチルカーボネート、3-ヨード-2-プロピニルブチルーカルバマートなどが挙げられる。
【0048】
フタルイミド系抗菌剤としては、(N-フルオロジクロロメチルチオ)-フタルイミド(フルオロフォルペット)などが挙げられる。
【0049】
キノリン系抗菌剤としては、8-ヒドロキシキノリン、ビス(キノリン-8-オラート-O,N)カッパー(キノリン銅)などが挙げられる。
【0050】
チアゾール系抗菌剤としては、2-(チアシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール(TCMTB)、トリシクラゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0051】
前記銀系抗菌剤としては、例えば、銀と銀以外の無機酸化物との複合体を用いることができる。より具体的には、銀-リン酸ジルコニウム、銀-酸化チタン、塩化銀-酸化チタン、銀-リン酸亜鉛カルシウム、銀亜鉛アルミのケイ酸塩などが挙げられる。
【0052】
表層12に含まれる前記抗菌剤の総量は、表層12に含まれる樹脂100質量部に対して、通常0.1~4.0質量部であり、0.5~1.5質量部であることが好ましい。また、表層12が、前記有機系抗菌剤及び前記無機系抗菌剤を含む場合、前記有機系抗菌剤の含有量の方が前記無機系抗菌剤の含有量よりも多いことが好ましく、具体的には、前記有機系抗菌剤の含有量は、0.05~3.0質量部であることが好ましく、0.5~1.5質量部であることがより好ましい。前記無機系抗菌剤の含有量は、0.05~1.0質量部であることが好ましく、0.2~0.5質量部であることがより好ましい。
【0053】
前記塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニル樹脂;部分架橋塩化ビニル;塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体などの塩化ビニルを含む共重合体などが挙げられる。
【0054】
また、前記塩化ビニル系樹脂は、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法などで製造されたものを用いることができる。加工し易く且つ取り扱い易いことから、乳化重合法、又は、懸濁重合法で得られる塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0055】
表層12には前記塩化ビニル系樹脂以外の樹脂成分が含まれていてもよいが、表層12に含まれる樹脂の全体質量に対する前記塩化ビニル系樹脂の含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0056】
表層12の厚みは、通常、0.05mm~1.5mmであり、好ましくは、0.10mm~1.0mである。
【0057】
表層12は、基材層11と接着剤によって接合されていてもよく、融着によって接合されていてもよい。前記融着としては、加熱・加圧することによる熱融着が挙げられる。
【0058】
表層12は、水回り用内装材1の表面14における意匠性を高めるための意匠層12として構成されてもよい。意匠層12は、
図1に示されるような1つの層のみから構成されてもよく、
図2に示されるような複数の層から構成されてもよい。
【0059】
1つの層のみから構成される意匠層12は、通常、顔料と前記樹脂とを含む樹脂組成物がシート状に成形され、該シートが基材層11に接合されることによって形成される。また、2色以上の粒柄を表出させるために、前記顔料に変えて又は前記顔料とともに、2色以上の塩化ビニル系樹脂粉砕物(チップ)と前記樹脂とを含む樹脂組成物がシート状に成形され、該シートが基材層11に接合されることによって形成されてもよい。
【0060】
複数の層から構成される意匠層12は、通常、基材層11側に配された柄層124と、表面14側に配された透明なクリア層125とを含む。柄層124は、インクなどで柄を表すための層であり、例えば、印刷フィルムや、インクそのものが層状になったインク層により構成されている。前記印刷フィルムは、樹脂製の原反シートにインクで任意の柄が描かれたものである。前記インク層は、基材層11の表面にインクを直接載せて柄を形成してなるものであり、このインクが薄い層状となっている。前記インク層は、転写紙による転写や、インクジェットプリンタで描くことで形成される。柄層124は、クリア層125を介して前記柄を表出させる。
クリア層125は、前記塩化ビニル系樹脂によって構成されている。クリア層125は、半透明であってもよいが、透明であることが好ましい。このような意匠層12の場合、クリア層125が前記抗菌剤を含むことが好ましく、透明性の維持という観点から、液状の前記抗菌剤を含むことがより好ましい。
【0061】
なお、前記粉状の抗菌剤及び前記液状の抗菌剤とは、常温常圧(25℃、101325Pa)において、粉状又は液状である抗菌剤を意味するものとする。
【0062】
コート層13は、上記のように、前記塩化ビニル系樹脂を実質的に含まないことが重要である。コート層13が前記塩化ビニル系樹脂を実質的に含まないとは、コート層13に含まれる樹脂の全体質量に対して、該塩化ビニル系樹脂の含有量が10質量%以下であればよいが、前記塩化ビニル系樹脂の含有量が0質量%であることがより好ましい。これによって、前記塩素系殺菌剤による表面14の変色が抑制される。
【0063】
本実施形態のコート層13は、硬化性樹脂を含む。より具体的には、本実施形態のコート層13は、前記抗菌剤と前記硬化性樹脂とを含む樹脂組成物が表層12の表面121に塗工され硬化されることによって形成されている。
【0064】
コート層13は、前記イミダゾール系抗菌剤を含むことが重要である。これによって、水回り用内装材1が、MBCに起因する表面14の前記変色が抑制されつつ、前記イミダゾール系抗菌剤による抗菌性も発揮することができる。コート層13に含有される前記イミダゾール系抗菌剤としては、表層12に含ませることができないMBCや、表層12に含ませることが好ましくないTBZが好ましい。これによって、表層12の抗菌性を補完するような形で、表面14にMBCやTBZの抗菌性を発揮させることができる。
【0065】
また、コート層13は、その他の抗菌剤を含んでいてもよく、表層12に含まれ得る上記の抗菌剤を含んでいてもよい。その他の抗菌剤としては、前記有機系抗菌剤が好ましい。
【0066】
コート層13に含まれる前記抗菌剤の総量は、コート層13を形成する樹脂100質量部に対して、通常0.1~3.0質量部であり、0.5~1.5質量部であることが好ましい。コート層13に含まれる前記抗菌剤のうち前記イミダゾール系抗菌剤の割合は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。さらに、コート層13に含まれる前記抗菌剤のうちMBC又はTBZの割合が、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0067】
前記硬化性樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂や熱硬化性樹脂が挙げられる。前記電離放射線硬化性樹脂は、荷電粒子線又は電磁波の中でモノマー等を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有する樹脂、すなわち、電子線又は紫外線等を照射することにより、架橋、硬化する樹脂を意味する。これらの中でも、比較的透明性に優れコート層13を形成し易いという観点から、紫外線硬化性樹脂が好ましい。
【0068】
前記紫外線硬化性樹脂としては、特に限定されないが、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、シリコーンアクリレート系樹脂などが挙げられる。前記塩化ビニル系樹脂を含む基材層11に対する密着性に優れつつ、耐光性、柔軟性にも優れることから、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂及びシリコーンアクリレート系樹脂が好ましく、特に、ウレタンアクリレート系樹脂が好ましい。
【0069】
コート層13の厚みは、通常、1μm~100μmであり、好ましくは、10μm~40μmである。
【0070】
図1及び2のように、コート層13が表層12の表面121の全体を被覆している態様では、コート層13の表面131が水回り用内装材1の表面14の全てを構成することとなる。この場合、使用による経時劣化によってコート層13の一部が剥離した際に、表層12の表面121の一部が露出することで、表層12に含まれる抗菌剤の抗菌性が表面14において発揮されることとなる。また、コート層13の剥離によって露出した表層12の表面121における前記塩素系殺菌剤に起因する前記変色が抑制されることとなる。
【0071】
一方、
図3~5のように、コート層13が表層12の表面121の一部を被覆している態様では、表層12が、表面14に凹凸面を形成するための複数の凹部122と複数の凸部123とを有していることが好ましい。また、表層12は、複数の凹部122における表面121がコート層13に被覆されずに露出し、且つ、複数の凸部123における表面121がコート層13に被覆されていることが好ましい。複数の凹部122及び複数の凸部123が形成する前記凹凸面は曲線状であってもよく(
図3)、この場合、コート層13は、その表面131が前記曲線状の凸面に沿うように凸状に形成されていることが好ましい。また、前記凹凸面は直線状であってもよく、この場合、コート層13は、その表面131が前記直線状の凸面のうちの積層方向に直交する方向に沿うように平坦状に形成されていることが好ましい(
図4)。
【0072】
本実施形態では、表層12は、表面14の全体にわたって前記凹凸面を形成するように、複数の凹部122と複数の凸部123とを有しており、複数の凹部122における表面121がコート層13に被覆されずに露出し、且つ、複数の凸部123における表面121がコート層13に被覆されている。これによって、表層12及びコート層13に含まれる抗菌剤による抗菌性が、表面14全体にわたって発揮され易くなる。
【0073】
複数の凹部122及び複数の凸部123は、表層12の表面121にエンボス加工が施されることによって形成されていることが好ましく、これによって、水回り用内装材1が量産され易くなる。
【0074】
さらに、
図5に示されるように、凸部123は、凹部122よりも平面視における面積が大きくなるように且つ断面において丸みを帯びた台形状に形成され、その表面121には複数の突起が形成されていてもよい。この場合、該突起を被覆するようにコート層13が形成されていることが好ましい。複数の突起を被覆するように形成されたコート層13は、その構成成分が突起の間に入り込むように形成されるため、表層12からの剥離が抑制されたものとなる。
【0075】
凹部122及び凸部123の形状は、水回り用内装材1の用途に応じて適宜変更可能である。例えば、水回り用内装材1が浴室用床材である場合、1つの凹部122及び1つの凸部123の平面視における面積は、0.01~1.0mm2であることが好ましい。また、凸部123の高さは、0.05~1.0mmであることが好ましい。なお、凸部123の高さは、水回り用内装材1を水平方向に沿うように設置したときに、凹部122の底点(鉛直方向における最も低い点)から凸部123の頂点(鉛直方向における最も高い点)までの高さを意味するものとする。また、凸部123の高さは、水回り用内装材1の表面14のうちの任意の10cm角の領域内の、互いに隣り合う凹部122及び凸部123の関係における凸部123の高さを全て求め、これらを算術平均することによって求められる。
【0076】
また、凹部122は、水が流れる水路としても機能する。凹部122の幅は、特に限定されないが、水が円滑に流れるようにする観点から、例えば、0.5mm~5.0mmの範囲に設定され、好ましくは、1.0mm~3.0mmの範囲に設定される。
また、平面視での水回り用内装材1における凸部123の面積割合は、例えば、60~99%であり、好ましくは、70~95%である。凸部123の面積割合が、この範囲内であると、防滑性、排水性及び乾燥性が良好となり得る。
なお、
図3のように表層12の表面121が曲線状に形成されている場合には、次のようにして、凹部122と凸部123との境界を定めるものとする。すなわち、凸部123の前記高さを二等分し且つ水平方向に平行する仮想平面を描いたときに、該仮想平面よりも鉛直方向下側を凹部122とし且つ該仮想平面よりも鉛直方向上側を凸部123として各面積を測定し、凸部123の前記面積割合を測定するものとする。
【0077】
図3~
図5に示すように、凸部123の表面にのみコート層13が形成される場合、凹部122の表面はコート層13で覆われず露出している。この場合、コート層13の占有面積率は、60~99%であり、好ましくは、70~95%である。コート層13の占有面積率は、鉛直方向から水回り用内装材1の表面14を見たときの、単位面積当たりのコート層13が占める面積の割合をいう。例えば、水回り用内装材1の表面14のうち任意の10cm角の領域内に存在するコート層13の総面積を測定し、コート層13の占有面積率(%)=コート層13の総面積(cm
2)/100(cm
2)×100、にて求めることができる。具体的には、前記占有面積率は、公知の画像処理装置を用い、コート層13と表層12との間で閾値を決めて二値化し、水回り用内装材1の表面14の任意の10cm角を撮影した中からコート層13の部分の総面積を測定することによって求めることができる。
なお、凹部122及び凸部123の平面視形状が比較的大きく且つそれらの部分が平面視で矩形状や三角形状などの曲線を有さない形状である場合、コート層13の面積を目視にて計測し、前記式に代入して占有面積率を求めてもよい。
【0078】
表層12及びコート層13は、その他の添加剤を含有していてもよい。かかる添加剤としては、例えば、樹脂の劣化を抑制するための光安定剤や酸化防止剤、着色のための顔料、柔軟性を付与するための可塑剤、物理的補強や艶消しのための無機充填剤、各成分を均一に分散させるための分散剤、消臭剤、紫外線吸収剤などが挙げられる。特に、コート層13には、無機充填剤として、アルミナ、シリカ、酸化チタンが好適に用いられる。
【0079】
本実施形態の水回り用内装材1は、上記のように、前記塩素系殺菌剤による表面14の変色が抑制され、且つ、抗菌性を有することから、浴室、トイレ、洗面所などに好適に用いられ得る。より具体的には、水回り用内装材1は、浴室、トイレ、洗面所などの床材、壁材、天井材若しくはこれらのドア、又は、便器、シンクなどの部品に用いられることが好ましく、これらの中でも、浴室用床材、壁材、天井材に用いられることが特に好ましい。
【0080】
なお、本発明に係る水回り用内装材は、上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係る水回り用内装材は、上記の作用効果によって限定されるものではない。本発明に係る水回り用内装材は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、上記実施形態では、基材層11と表層12とを有する水回り用内装材1を示したが、水回り用内装材1は、これに限定されず、基材層11を備えていなくてもよい。より具体的には、水回り用内装材1は、リフォームなどの際の交換に用いられ易いように、表層12とコート層13とからなるシート材であってもよい。この場合、該シート材は、施工性の向上のために、表層12の裏面(表面14とは反対側の面)に粘着剤層を備えていることが好ましい。
【実施例】
【0082】
次に、実施例を示すことによって、本発明についてさらに具体的に説明する。
【0083】
下記表1の配合に従って各原料を混練した混練物を、ロール温度150℃に設定したカレンダー成形機にて、厚み0.4mmのシート状に成形することによって、表層としてのシート体を製造した。製造した表層は、全体的に濃いベージュ色を呈していた。
また、実施例1並びに比較例2及び4については、エンボスなどによる凹凸が形成されていない平坦なシート体の表面に、平面視において複数の正方形が格子状に並んでなるコート層を形成した。該正方形は、一辺が約30mmであり、上下及び左右に隣接する各正方形の間の幅は、約5mmであった。コート層は、表層の表面に、紫外線硬化性塗工液、又は抗菌剤を含む紫外線硬化性塗工液を、グラビアローラを用いて塗工し、紫外線を照射することによって形成した。また、紫外線硬化性塗工液は、ウレタンアクリレートとアクリレートモノマーとを含む紫外線硬化性樹脂を用いた。このようにして表層の表面に厚み20μmの無色透明なコート層を形成した。
【0084】
[評価1:変色試験]
上記で製造した各シート上に厚み2cmの脱脂綿をコート層側に積層し、1mLの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を脱脂綿に滴下し、時計皿をかぶせて1日放置した各シートを水洗し、その表面の変色を目視により確認した。また、別途、変色の度合いを、JIS L0804「変退色用グレースケール」に準拠して測定した。
(評価基準)
○:変色は認められない。
△:わずかに変色(グレースケール3.5級以上)が認められる。
×:明らかに変色が認められる。
【0085】
[評価2:カビ抵抗性試験]
JIS Z 2911のプラスチック製品の試験方法A及びJIS Z 2911のプラスチック製品の試験方法Bに準拠して試験した。
(評価基準)
○:肉眼ではカビの発育が認められない。
△:肉眼でカビの発育が認められる。
×:菌糸の発育が激しく、試料全体を覆っている。
【0086】
[試験3:抗菌剤のブルーム]
各シートの表面における抗菌剤に起因するブルーム(粉吹き)を目視により観察した。
○:ブルームの発生が認められない。
×:明らかにブルームが発生している。
【0087】
表1に示す試験結果より、塩化ビニル系樹脂を含む表層にMBCを0.4質量部以上含有させると、表面に次亜塩素酸ナトリウムに起因する変色が認められた。一方、表層のMBCの含有量が0.10質量部以下であると、表面の変色が抑制されることが認められた。一方、塩化ビニル系樹脂を含む表層にトリアゾール系抗菌剤であるテブコナゾールが含有させた場合には、表面に次亜塩素酸ナトリウムに起因する変色は認められなかった。
また、塩化ビニル系樹脂を含む表層にTBZを含有させると、MBCのような変色は認められないが、ブルームの発生が認められた。
【0088】
【0089】
実施例及び比較例の結果から、表層がMBCを含まないことによって、次亜塩素酸ナトリウム水溶液による変色を抑制できることが判った。
また、参考例の結果から、表層がMBCを含む場合であっても、MBCが0.10質量部以下であれば、次亜塩素酸ナトリウム水溶液による変色を抑制することができ、特に、0.05質量部以下であることが好ましいことが判った。よって、参考例1乃至3の表層の表面に、実施例1のコート層を形成した場合にも、次亜塩素酸ナトリウム水溶液による変色が抑制され、また、カビ抵抗性にも優れる水回り用内装材を得ることができると推測される。
【符号の説明】
【0090】
1:水回り用内装材、
11:基材層、
12:表層、121:表面、122:凹部、123:凸部、
124:柄層、125:クリア層、
13:コート層、131:表面、
14:表面