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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】コンクリート構造物の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 23/00 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
E02D23/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020151506
(22)【出願日】2020-09-09
(65)【公開番号】P2022045748
(43)【公開日】2022-03-22
【審査請求日】2022-10-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 正美
(72)【発明者】
【氏名】中村 広規
(72)【発明者】
【氏名】林 晋
(72)【発明者】
【氏名】永倉 健二郎
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-305319(JP,A)
【文献】特開平02-125021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三つ以上のプレキャストコンクリート製のユニット函体を多方向に接合してコンクリート構造物を構築するコンクリート構造物の構築方法であって、
前記ユニット函体を仮支持する土台を水中に形成する土台構築工程と、
第一の前記ユニット函体を前記土台上に沈設する先行配設工程と、
第一の前記ユニット函体の近傍に第二の前記ユニット函体を配設する後行配設工程と、
第一の前記ユニット函体と第二の前記ユニット函体とを接合する接合工程と、を備えており、
前記土台は、前記ユニット函体を載置可能な平面形状を有した受台と前記受台を支持する複数本の杭からなり、
前記先行配設工程では、前記土台の上方の水上に配設された第一の前記ユニット函体内に水を供給して前記土台に上載させ、
前記接合工程では、
第二の前記ユニット函体を第一の前記ユニット函体に引き寄せるとともに第二の前記ユニット函体内に水を供給する作業と、
第一の前記ユニット函体と第二の前記ユニット函体とを一体化する作業と、を行うことを特徴とする、コンクリート構造物の構築方法。
【請求項2】
前記接合工程において、
前記ユニット函体同士の間に介設された止水パネルと、前記ユニット函体同士の外面とにより囲まれた接合空間を前記ユニット函体同士の間に形成する作業と、
前記接合空間内の水を排水する作業と、
前記接合空間内にセメント系材料を打設して接合部を形成する作業と、をさらに行うことを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート構造物の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海上等にコンクリート製浮体構造物を構築する方法として、陸上で製作したコンクリート製浮体構造物を半潜水式台船、フローティングドック、ドライドック、斜路、クレーン等を用いて進水させる方法や、水上の半潜水式台船上やフローティングドック上でコンクリート製浮体を構築する方法等がある。
ところが、大規模なコンクリート製浮体構造物を陸上で製作する場合には、製作ヤードや資材置き場を確保できない可能性がある。また、陸上で製作したコンクリート製浮体構造物を進水させる際、所要の水深を確保できないおそれがある。さらに、コンクリート製浮体構造物を進水させる際には、大規模な設備が必要となるため、設備を整えるための費用と時間がかかる。
また、半潜水式台船上やフローティングドック上でコンクリート製浮体を構築する方法により大規模なコンクリート製浮体構造物を構築する際には、既存の設備で対応できない場合がある。この場合には、新たな設備を整える必要があるが、そのためには多大な費用と時間がかかる。
【0003】
さらに、特許文献1には、予め水底に立設した杭によって側方から支持されたプレキャスト部材同士を前後に接合する構造物の構築方法が開示されている。
ところが、特許文献1の構造物の構築方法では、プレキャスト部材の周囲に杭が配設されているため、杭が存在する方向から他のプレキャスト部材を接合することはできない。すなわち、特許文献1の方法では、プレキャスト部材同士を多方向から接合できないため、構築可能な構造物の形状が限定されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-114719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水上施工により多方向からコンクリート部材同士を接合する場合において、水上施工における施工性と安全性の向上を可能としたコンクリート構造物の構築方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明のコンクリート構造物の構築方法は、三つ以上のプレキャストコンクリート製のユニット函体を多方向に接合してコンクリート構造物を構築するものであって、前記ユニット函体を仮支持する土台を水中に形成する土台構築工程と、第一の前記ユニット函体を前記土台上に沈設する先行配設工程と、第一の前記ユニット函体の近傍に第二の前記ユニット函体を配設する後行配設工程と、前記ユニット函体同士を接合する接合工程とを備えている。前記土台は、前記ユニット函体を載置可能な平面形状を有した受台と前記受台を支持する複数本の杭からなる。前記先行配設工程では、前記土台の上方の水上に配設された第一の前記ユニット函体内に水を供給して前記土台に上載させる。前記接合工程では、第二の前記ユニット函体を第一の前記ユニット函体に引き寄せるとともに第二の前記ユニット函体内に水を供給する作業と、前記ユニット同士を一体化する作業とを行う。
前記接合工程では、前記ユニット函体同士の間に介設された止水パネルおよび前記ユニット函体同士の外面により囲まれた接合空間を前記ユニット函体同士の間に形成し、前記接合空間内の水を排水するとともに、前記接合空間内にセメント系材料を打設して接合部の函体構造を形成することでユニット函体同士を接合することができる。この他のユニット函体同士の接合方法としては、前記ユニット函体同士の間にゴムガスケットを介設させた状態で接合する。
【0007】
本発明は、水上施工(ユニット函体を水上に浮かせた状態、またはユニット函体を水底もしくは水中の土台等に載置した状態での施工)によりコンクリート構造物を構築するものである。本発明は、複数のユニット函体を多方向に接合するものであるため、様々な形状のコンクリート構造物に適用できる。
また、施工後、ユニット函体内の水を排水すれば、浮体構造物として、所定の位置に曳航して使用することもできる。陸上で製作するユニット函体を既存の設備に合わせた規模とすれば、既存設備を利用して製作から進水までを実施できるため、新たな設備を整える必要がなく、また、製作ヤード等の用地を確保しやすい。
また、水中に土台を形成、土台により支持した状態でユニット函体同士を接合するため、安定性に優れている。そのため、波や風などにより影響を少なくすることができ、その結果、作業性が向上し、かつ、波や風に対する安全性を高めることができる。ユニット函体(第一のユニット函体および第二のユニット函体)内に水を供給することで波や風に対して動揺しないようにする。このとき、水の供給量を必要最小限にすることで、土台が過度に大型化しないようにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコンクリート構造物の構築方法によれば、水上施工により多方向からコンクリート部材同士を接合する場合において、陸上における製作用の用地を最小限にし、かつ、水上施工における施工性と安全性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るコンクリート構造物を示す斜視図である。
図2】コンクリート構造物の一部を示す分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係るコンクリート構造物の構築方法を示すフローチャートである。
図4】土台構築工程を示す断面図である。
図5】先行配設工程を示す断面図である。
図6】後行配設工程を示す断面図である。
図7】接合工程の各作業を示すフローチャートである。
図8】接合工程におけるバラスト供給作業を示す断面図である。
図9】接合工程における空間形成作業を示す断面図である。
図10】接合工程における排水作業を示す断面図である。
図11】接合工程における打設作業を示す断面図である。
図12】接合工程における一体化作業を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態では、水上施工によって複数のプレキャストコンクリート製のユニット函体2を多方向に接合することにより、コンクリート製浮体構造物(コンクリート構造物1)を構築する場合について説明する。図1に本実施形態のコンクリート構造物1を示す。本実施形態のコンクリート構造物1は、図1に示すように、四つのユニット函体2と、ユニット函体2同士の間に形成された接合部3とを備えている。ユニット函体2は、縦横に二体ずつ接合されている。接合部3は、水上施工によりユニット函体2同士の間に打設されたコンクリートからなる。ユニット函体2は、接合部3と一体化されている。
【0013】
図2に本実施形態のユニット函体2を示す。ユニット函体2は、図2に示すように、箱型を呈している。ユニット函体2の内部には、水(バラスト水)を貯留可能な中空部21が形成されている。また、ユニット函体2の他のユニット函体2側の側面には、接合部3を囲う止水パネル22が延設されている。止水パネル22は、ユニット函体2の側面に一体に形成されている。止水パネル22は、接合部3の側面および底面を囲うように、凹字状を呈している。二つのユニット函体2,2を接合する際には、止水パネル22の端面同士を突き合せることで、ユニット函体2の側面と、止水パネル22によって囲まれた接合空間31を形成した後、この接合空間31にコンクリート(セメント系材料)を打設することで接合部3を形成する。
【0014】
次にコンクリート構造物1の構築方法について詳細に説明する。図3はコンクリート構造物1の構築方法を示すフローチャートである。図3に示すように、コンクリート構造物1の構築方法は、土台構築工程S1、先行配設工程S2、後行配設工程S3および接合工程S4を備えている。
【0015】
土台構築工程S1は、図4に示すように、土台4を水中に形成する工程である。なお、図4は、土台構築工程S1の断面図である。本実施形態の土台4は、受台41と、受台41を支持する複数本の杭42とを備えている。受台41は、ユニット函体2を載置可能な平面形状を有している。受台41の構成は、ユニット函体2を支持することが可能であれば限定されるものではなく、例えば、平板状であってもよいし、格子状であってもよい。受台41は、上面が略水平になるように、杭42により支持されている。杭42は、水底GLに打設されている。杭42の断面寸法、本数、配置等は、ユニット函体2の形状や重量などに応じて適宜決定すればよい。
土台4は、接合するユニット函体2の数や配置に応じて設置する。本実施形態では、ユニット函体2の数に合わせて四つの土台4を配置するものとする。土台4(受台41)の天端レベル(高さ)は、ユニット函体2を載置した際に、ユニット函体2が潮位変動や波浪による影響を受けない(受けにくい)高さに設定する。また、土台4には、受台41上の所定の位置にユニット函体2が載置されるように、ユニット函体2を誘導するためのガイドを必要に応じて設置しておく。
【0016】
先行配設工程S2は、図5に示すように、水上に配設された第一のユニット函体2aを土台4上に載置(所定の位置に配設)する工程である。なお、図5は、先行配設工程S2の断面図である。先行配設工程S2では、まず、第一のユニット函体2aを土台4の上方に配置する。本実施形態では、第一のユニット函体2aを、曳船等により土台4の上方に牽引する。このとき、第一のユニット函体2aに浮き材等を設置して、牽引時の安定性を確保する。第一のユニット函体2aを土台4の上方に配置したら、第一のユニット函体2aを仮係留する。次に、第一のユニット函体2aの中空部21にバラスト水5を供給する。そして、第一のユニット函体2aの自重とバラスト水5の重量により第一のユニット函体2aを沈降させ、土台4に上載させる。すなわち、先行配設工程S2では、土台4によってユニット函体2を仮支持する。なお、浮き材は、先行配設工程S2の前後または先行配設工程S2中の適宜なタイミングで撤去する。第一のユニット函体2aは全体が水中に沈むことはなく、第一のユニット函体2aの上部が水面WLから突出した状態となっている。第一のユニット函体2aは、必要に応じて土台4に係止(係留)させてもよい。バラスト水5の注水量は、波浪等による動揺に対して、安定性を確保できる量とする。バラスト水5を過度に注水すると、土台4の大型化の原因となるため、必要以上に注水しないようにする。
【0017】
後行配設工程S3は、第一のユニット函体2aの近傍に第二のユニット函体2bを配設する工程である。図6は、後行配設工程S3の断面図である。後行配設工程S3では、第二のユニット函体2bを第一のユニット函体2aの近傍まで曳船等により牽引する。このとき、ユニット函体2に浮き材等を設置して、牽引時の安定性を確保する。第二のユニット函体2bは、第一のユニット函体2aの近傍(第二の土台4bの上方)において仮係留する。
【0018】
接合工程S4は、第一のユニット函体2aと第二のユニット函体2bとを接合する工程である。図7は、接合工程S4の各作業を示すフローチャートである。接合工程S4は、図7に示すように、バラスト供給作業S41と、空間形成作業S42と、排水作業S43と、打設作業S44と、一体化作業S45とを備えている。
【0019】
図8は、バラスト供給作業S41の断面図である。第二のユニット函体2bを仮係留したら、図8に示すように、ウィンチ6を利用して、第二のユニット函体2bを第一のユニット函体2aに引き寄せて位置調整を行う。そして、第二のユニット函体2bの中空部21にバラスト水5を供給することにより沈降させるとともに浮き材を撤去して、第二の土台4b上に第二のユニット函体2bを沈設する。第二のユニット函体2bは、全体が水中に沈むことはなく、上部が水面から突出した状態で土台4上に仮置きする。第二のユニット函体2bは、必要に応じて土台4に係止(係留)させてもよい。バラスト水5の注水量は、波浪等による動揺に対して、安定性を確保できる量とする。バラスト水5を過度に注水すると、土台4の大型化の原因となるため、必要以上に注水しないようにする。本実施形態では、後行配設工程S3において第二のユニット函体2bに注水するバラスト水5の注水量は、先行配設工程S2において第一のユニット函体2aに注水されるバラスト水5の注水量よりも少なくし、第一のユニット函体2aと接合する際に、第一のユニット函体2a側に移動しやすくする。なお、第二のユニット函体2bの位置調整に使用する装置は、ウィンチ6に限定されるものではなく、例えば、ジャッキであってもよい。
【0020】
図9は、空間形成作業S42の断面図である。空間形成作業S42では、図9に示すように、隣り合うユニット函体2同士の間に接合空間31を形成する。接合空間31は、ユニット函体2に形成された止水パネル22とユニット函体2の外面とにより囲まれた空間である。本実施形態では、隣り合うユニット函体2の止水パネル22の端面同士を突き合せることにより接合空間31を形成する。本実施形態では第二のユニット函体2bをジャッキ61により第一のユニット函体2a側に引き寄せることにより、止水パネル22同士を密着させる。このとき、第二のユニット函体2bには、ジャッキ61による引張力が作用する。なお、第二のユニット函体2bを第一のユニット函体2a側に引き寄せる際に使用する装置はジャッキ61に限定されるものではなく、例えば、ウィンチを使用してもよい。
一方のユニット函体2(本実施形態では第一のユニット函体2a)の止水パネル22の端面には、ゴムガスケット23が設けられていて(図8参照)、止水パネル22同士を突き合せることでゴムガスケット23が圧縮される。こうすることで、止水パネル22同士の境界部は、ゴムガスケット23によって密閉(止水)される。このとき、接合空間31内には、周囲の水位と同様の水位(HWL~LWL)の水Wが貯水されている。
【0021】
図10は、排水作業S43の断面図である。排水作業S43では、図10に示すように、接合空間31内の水Wを排水する。接合空間31内の排水は、図示しない排水ポンプにより行う。水Wを排水すると、両ユニット函体2に作用する外水圧により、接合部のゴムガスケット23が徐々に圧縮される。なお、止水パネル22同士の接合部には、図示しないストッパーを設けることで、ゴムガスケット23が過圧縮しないようにゴムガスケット23の変形量を制御することが望ましい。接合空間31の排水に伴い、第二のユニット函体2bの内部にバラスト水5の注水を行い、第二のユニット函体2b内のバラスト水5の量を第一のユニット函体2a内のバラスト水5の量に合わせる。このとき、第二のユニット函体2b内に注水するバラスト水5の量は、ユニット函体2同士の接合時よりも安定性を向上させることが可能な量(安定性が向上する自重を確保できる量)であればよく、必ずしも第一のユニット函体2a内のバラスト水5の量に合わせる必要はない。
【0022】
図11は、打設作業S44の断面図である。打設作業S44では、図11に示すように、接合空間31内にコンクリート(セメント系材料)を打設する。まず、接合空間31内に必要な鉄筋を配筋するとともに、緊張材用のシース管(図示せず)を配管する。また、必要に応じて型枠の組み立ても行う。本実施形態では、中空の接合部(函体)3が形成されるように型枠を設ける。次に、接合空間31内にコンクリートを打設して、中空の接合部(函体)3を形成する。
【0023】
図12は、一体化作業S45の断面図である。一体化作業S45では、図12に示すように、ユニット函体2と接合部3とを一体化する。一体化作業S45は、セメント系材料の養生後に行う。一体化作業S45では、シース管内に配設された緊張材(例えばPC鋼線やPC鋼棒等)7に緊張力を作用させるとともに、シース管内にグラウトを注入することで、ユニット函体2と接合部3とを一体化する。
同様に、後行配設工程S3および接合工程S4を繰り返すことにより、所定の数(本実施形態では全部で四つ)のユニット函体2を接合して、コンクリート構造物1を形成する。
【0024】
本実施形態のコンクリート構造物1は、複数のユニット函体2を多方向に接合するものであるため、様々な形状のコンクリート構造物1に適用できる。
また、施工後、バラスト水5を排水すれば、浮体構造物として、所定の位置に曳航して使用することもできる。陸上で製作するユニット函体2を既存の設備に合わせた規模とすれば、既存設備を利用して製作から進水までを実施できるため、新たな設備を整える必要がなく、また、製作ヤード等の用地を確保しやすい。
【0025】
また、ユニット函体2同士を、接合部3を介して接合するため、ユニット函体2の接合面に特別な加工(凹凸面や傾斜面の形成)を施す必要がなく、製造コストの低減化を図ることができる。また、ユニット函体2同士の間に接合空間31を確保するため、ユニット函体2同士の接触を避けることができ、したがって、施工中にユニット函体2が破損する可能性が低い。
コンクリート構造物1を構築する際は、土台4により支持した状態でユニット函体2同士を接合するため、施工時の安定性に優れている。そのため、波や風などにより影響を少なくすることができ、その結果、作業性が向上し、かつ、波や風などに対する安全性が高まる。
【0026】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は前述の実施形態に限らず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、水中に形成した土台4を利用してコンクリート構造物1を構築するものとしたが、土台4は必要に応じて使用すればよい。例えば、水底が平らな場合には、ユニット函体2を水底に載置させた状態でユニット函体2同士を接合してもよい。また、ユニット函体2を水上に浮かせた状態でユニット函体2同士を接合してもよい。この場合、ユニット函体2内部にバラスト水5を給水して、波や風の影響を最低限に抑えるのが望ましい。
また、前記実施形態では、土台4として、水底に架台を形成したが、土台4は水底に土砂等を盛り立てることにより形成したマウンド(盛土)であってもよい。
【0027】
コンクリート構造物1を構成するユニット函体2の数は、三つ以上であれば限定されるものではなく、例えば三つであってもよいし、六つであってもよい。また、コンクリート構造物1の形状は平面視矩形状に限定されるものではなく、例えば、平面視円形や枠状であってもよい。
前記実施形態では、ユニット函体2を曳船により所定の位置まで牽引するものとしたが、ユニット函体2の輸送方法は限定されるものではなく、例えば、押船により押してもよいし、台船により運んでもよい。
【0028】
前記実施形態では、後行配設工程S3において、第二のユニット函体2bにバラスト水5を給水するものとしたが、第二のユニット函体2bにバラスト水5を注水するタイミングはこれに限定されるものではなく、接合工程S4において、第二のユニット函体2bを第一のユニット函体2aに十分に引き寄せてから(止水パネル22同士を突き合せてから)行ってもよい。
前記実施形態では、二つのユニット函体2同士の間に接合部3を形成する度に一体化作業を実施するものとしたが、一体化作業は、全てのユニット函体2同士の間に接合部3を形成してから実施してもよい。
接合部3を構成する材料はセメント系材料であれば限定されるものではなく、例えばモルタルであってもよい。
【0029】
前記実施形態では、隣り合うユニット函体2の他のユニット函体2側の側面に、止水パネル22がそれぞれ形成されており、止水パネル22同士を突き合せることで接合部3を覆うものとしたが、止水パネル22は、一方のユニット函体2のみに形成されていてもよい。このとき、止水パネル22は、他のユニット函体2の側面に当接させる。
前記実施形態では、止水パネル22がユニット函体2に一体に形成されている場合について説明したが、止水パネル22は、別途、接合部3(接合空間31)を囲うように配設された別部材であってもよい。このように接合部3(接合空間31)を別途確保する分、ユニット函体2の小型化または少数化が可能となり、ユニット函体2の製作ヤードや仮置ヤード等の省スペース化が可能である。
また、止水パネル22の背面には、当該止水パネル22の変形を抑制する補強材が設けられているのが望ましい。
また、ユニット函体2同士は、一方のユニット函体2に設けられたガスケットを他方のユニット函体2に押し付けた状態で一体に接合してもよい。
前記実施形態では、一方のユニット函体2(止水パネル22)のみにゴムガスケット23が設けられている場合について説明したが、ゴムガスケット23は、接合するユニット函体2(止水パネル22)の両方に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 コンクリート構造物
2 ユニット函体
21 中空部
22 止水パネル
3 接合部
31 接合空間
4 土台
5 バラスト水
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12