(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240408BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20240408BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240408BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240408BHJP
C08F 265/02 20060101ALI20240408BHJP
C08F 283/00 20060101ALI20240408BHJP
C08F 283/10 20060101ALI20240408BHJP
C08F 283/06 20060101ALI20240408BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G03F7/004 503B
G03F7/004 512
G03F7/038 601
H05K1/03 610H
H05K3/28 D
H05K3/28 F
C08F265/02
C08F283/00
C08F283/10
C08F283/06
C08F2/44 C
(21)【出願番号】P 2020212203
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】P 2019232239
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】寺田 究
(72)【発明者】
【氏名】鍔本 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】水口 貴文
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-105749(JP,A)
【文献】国際公開第2019/168113(WO,A1)
【文献】特開2019-196444(JP,A)
【文献】特開2012-36117(JP,A)
【文献】特開2019-52268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/038
H05K 1/03
H05K 3/28
C08F 265/02
C08F 283/00
C08F 283/10
C08F 283/06
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)
【化1】
(式(1)中、R
1は水素原子、水酸基、アルコキシ基又は前記の置換基以外の有機基を表す。R
2、R
3、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は前記の置換基以外の有機基を表し、複数存在するそれぞれのR
2、R
3、R
5及びR
6は互いに同じでも異なっていてもよい。また、同一のベンゼン環上に存在するR
2とR
3が結合して環構造を形成してもよく、同一のベンゼン環上に存在するR
5とR
6が結合して環構造を形成してもよい。R
4はそれぞれ独立に、水素原子又はチオエーテル結合を含む有機基を表すが、R
4の少なくとも一方はチオエーテル結合を含む有機基である。また、R
4が表すチオエーテル結合を含む有機基とR
3又はR
5が結合して環構造を形成してもよい。Aは下記式(1-1)又は(1-2)
【化2】
(式(1-1)中、R
7及びR
8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基若しくは複素環基を表すか、又はR
7とR
8が結合して複素環を形成してもよい。式(1-2)中、R
9及びR
10はそれぞれ独立にアミノ基又は置換アミノ基を表す。)で表される置換基を表す。)で表される化合物を含む光塩基発生剤、
(B)アルカリ現像性樹脂、(C)熱反応性化合物及び(D)光重合性モノマーを含有する感光性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の感光性樹脂組成物であって、選択的な光照射後の加熱で(B)アルカリ現像性樹脂と(C)熱反応性化合物が付加反応し、アルカリ現像によるネガ型のパターン形成が可能な感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物からなるドライフィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物の硬化物。
【請求項5】
請求項3に記載のドライフィルムの硬化物。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の硬化物を有するプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造の光塩基発生剤を含み、現像によるパターン形成が可能なアルカリ現像型の感光性樹脂組成物、該感光性樹脂組成物の硬化物、該感光性樹脂を含むドライフィルム、該硬化物を有するプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化が進み、回路層数の増加や配線の微細化による多層プリント配線板の高密度化が進行している。特に半導体チップが搭載されるBGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)等の半導体パッケージ基板の高密度化は著しく、配線の微細化に加え、絶縁膜の薄膜化、層間接続用のビアの小径化が進行している。このような半導体パッケージ基板では、回路の微細化に伴い、回路をめっきにより形成するセミアディティブ工法が主流となっている。
【0003】
セミアディティブ工法では、例えば、(1)導体回路上に絶縁膜を形成した後、レーザー照射により層間接続用のビア加工を行い、次いで樹脂の残渣除去を目的としたデスミア処理を行う、(2)その後、基板に無電解銅めっき処理を施し、ドライフィルムレジストでパターンを形成した後に、電解銅めっきを行うことにより銅の回路層を形成する、(3)最後にレジスト剥離し、無電解層のフラッシュエッチングにより銅の回路を形成する、という流れで半導体パッケージ基板が形成される。
しかしながら、最近では高密度化のために必要なビアサイズが、レーザー照射により加工し得る限界に達しており、より小径のビアをフォトリソ法により一括で形成するフォトビア法が注目を集めている。
【0004】
しかしながら、フォトリソ法に用いられてきた従来の感光性樹脂組成物は、高信頼性が要求される半導体パッケージ基板に必要とされる特性、特に絶縁信頼性(HAST耐性)を満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-212258号公報
【文献】特開2016-38587号公報
【文献】特開2018-36651号公報
【文献】特許第5852633号
【文献】特開2019-066511号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「ネットワークポリマー」Vol. 35 No.4(2014)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた絶縁信頼性(HAST耐性)を有する硬化膜を形成することのできる感光性樹脂組成物、フォトビア材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討の結果、特定構造の化合物を含む光塩基発生剤、アルカリ現像性樹脂、熱反応性化合物、及び光重合性モノマーを含有する感光性樹脂組成物を用いることにより上記の課題が解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(1)(A)下記式(1)
【0009】
【0010】
(式(1)中、R1は水素原子、水酸基、アルコキシ基又は前記の置換基以外の有機基を表す。R2、R3、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は前記の置換基以外の有機基を表し、複数存在するそれぞれのR2、R3、R5及びR6は互いに同じでも異なっていてもよい。また、同一のベンゼン環上に存在するR2とR3が結合して環構造を形成してもよく、同一のベンゼン環上に存在するR5とR6が結合して環構造を形成してもよい。R4はそれぞれ独立に、水素原子又はチオエーテル結合を含む有機基を表すが、R4の少なくとも一方はチオエーテル結合を含む有機基である。また、R4が表すチオエーテル結合を含む有機基とR3又はR5が結合して環構造を形成してもよい。Aは下記式(1-1)又は(1-2)
【0011】
【0012】
(式(1-1)中、R7及びR8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基若しくは複素環基を表すか、又はR7とR8が結合して複素環を形成してもよい。式(1-2)中、R9及びR10はそれぞれ独立にアミノ基又は置換アミノ基を表す。)で表される置換基を表す。)で表される化合物を含む光塩基発生剤、(B)アルカリ現像性樹脂、(C)熱反応性化合物及び(D)光重合性モノマーを含有する感光性樹脂組成物、
(2)前項(1)に記載の感光性樹脂組成物であって、選択的な光照射後の加熱で(B)アルカリ現像性樹脂と(C)熱反応性化合物が付加反応し、アルカリ現像によるネガ型のパターン形成が可能な感光性樹脂組成物、
(3)前項(1)又は(2)に記載の感光性樹脂組成物からなるドライフィルム、
(4)前項(1)又は(2)に記載の感光性樹脂組成物の硬化物、
(5)前項(3)に記載のドライフィルムの硬化物、及び
(6)前項(4)又は(5)に記載の硬化物を有するプリント配線板、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の感光性樹脂組成物が含有する光塩基発生剤に含まれる式(1)で表される化合物は、活性エネルギー線の照射により塩基とラジカルを発生することができ、該化合物を含有する感光性樹脂組成物は優れた絶縁信頼性(HAST耐性)を有する、具体的には高抵抗率であり、かつ抵抗率の減衰率が低いという特徴を有する硬化膜を形成することができる。本発明の感光性樹脂組成物はアルカリ現像により微細なパターンを形成することが可能であり、プリント配線基板等のビルドアップ構造の層間絶縁層、ソルダーレジスト、カバーレイとしても適用可能な材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。なお、本発明における活性エネルギー線とは、波長を特定した場合を除き、可視光だけでなく、電子線のような粒子線、及び、電磁波と粒子線を総称する放射線又は電離放射線等も含むものとする。本明細書では、活性エネルギー線の照射を露光ともいう。なお、波長365nm、405nm、436nmの活性エネルギー線をそれぞれ、i線、h線、g線とも表記することがある。
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、(A)下記式(1)で表される化合物を含む光塩基発生剤を含有する。
【0016】
【0017】
式(1)中、R1は水素原子、水酸基、アルコキシ基又は前記の置換基以外の有機基を表す。
式(1)のR1が表すアルコキシ基としては炭素数1乃至18のアルコキシ基であることが好ましく、その具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、t-ブトキシ基、n-ペントキシ基、iso-ペントキシ基、neo-ペントキシ基、n-ヘキシルオキシ基及びn-ドデシルオキシ基等が挙げられる。
【0018】
式(1)のR1が表す有機基の具体例としては、炭素数1乃至18のアルキル基、炭素数2乃至18のアルケニル基、炭素数2乃至18のアルキニル基、炭素数6乃至12のアリール基、炭素数1乃至18のアシル基、炭素数7乃至18のアロイル基、ニトロ基、シアノ基、炭素数1乃至18のアルキルチオ基及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0019】
式(1)のR1が表す有機基の具体例としての炭素数1乃至18のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基及びn-ドデシル基等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、並びにシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状のアルキル基が挙げられ、炭素数2乃至6のアルキル基であることが好ましく、炭素数2乃至6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることがより好ましい。
【0020】
式(1)のR1が表す有機基の具体例としての炭素数2乃至18のアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、1-ブテニル基、iso-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、2-メチル-1-ブテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、2-メチル-2-ブテニル基、2,2-ジシアノビニル基、2-シアノ-2-メチルカルボキシルビニル基及び2-シアノ-2-メチルスルホンビニル基等が挙げられる。
【0021】
式(1)のR1が表す有機基の具体例としての炭素数2乃至18のアルキニル基としては、エチニル基、1-プロピニル基及び1-ブチニル基等が挙げられる。
式(1)のR1が表す有機基の具体例としての炭素数6乃至12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基及びトリル基等が挙げられ、炭素数6乃至10のアリール基であることが好ましい。
式(1)のR1が表す有機基の具体例としての炭素数1乃至18のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基、エチルカルボニル基、n-プロピルカルボニル基、iso-プロピルカルボニル基、n-ブチルカルボニル基、n-ペンチルカルボニル基、iso-ペンチルカルボニル基、neo-ペンチルカルボニル基、2-メチルブチルカルボニル基及びニトロベンジルカルボニル基等が挙げられる。
【0022】
式(1)のR1が表す有機基の具体例としての炭素数7乃至18のアロイル基としては、ベンゾイル基、トルオイル基、ナフトイル基及びフタロイル基等が挙げられる。
式(1)のR1が表す有機基の具体例としての炭素数1乃至18のアルキルチオ基としてはメチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、iso-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、iso-ブチルチオ基、sec-ブチルチオ基、t-ブチルチオ基、n-ペンチルチオ基、iso-ペンチルチオ基、2-メチルブチルチオ基、1-メチルブチルチオ基、neo-ペンチルチオ基、1,2-ジメチルプロピルチオ基及び1,1-ジメチルプロピルチオ基等が挙げられる。
【0023】
式(1)のR1が表す有機基の具体例としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
式(1)におけるR1としては、水酸基又はアルコキシ基であることが好ましく、水酸基又は炭素数1乃至6のアルコキシ基であることがより好ましく、水酸基又は炭素数1乃至4のアルコキシ基であることが更に好ましく、水酸基であることが特に好ましい。
【0024】
式(1)中、R2、R3、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基又は前記の置換基以外の有機基を表し、複数存在するそれぞれのR2、R3、R5及びR6は互いに同じでも異なっていてもよい。また、同一のベンゼン環上に存在するR2とR3が結合して環構造を形成してもよく、同一のベンゼン環上に存在するR5とR6が結合して環構造を形成してもよく、該環構造はヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。
【0025】
式(1)のR2、R3、R5及びR6が表すハロゲン原子としては、式(1)のR1が表す有機基の具体例としてのハロゲン原子と同じものが挙げられる。
式(1)のR2、R3、R5及びR6が表すアルコキシ基としては、式(1)のR1が表すアルコキシ基と同じものが挙げられる。
【0026】
式(1)のR2、R3、R5及びR6が表す有機基の具体例としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、ハロゲン化アルキル基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、カルボキシ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、ヒドロキシイミノ基等が挙げられる。
式(1)のR2、R3、R5及びR6が表す有機基の具体例としてのアルキル基、アリール基及びアシル基としては、式(1)のR1が表す有機基の具体例としてのアルキル基、アリール基及びアシル基と同じものが挙げられる。
【0027】
これらの有機基は、当該有機基中に炭化水素以外のヘテロ原子等の結合を含んでいてもよく、また、当該有機基は炭化水素基以外の置換基を有していてもよく、これらは直鎖状でも分岐状でも構わない。R2、R3、R5及びR6における有機基は、通常、1価の有機基であるが、後述する環状構造を形成する場合等には、二価以上の有機基となり得る。
【0028】
前記R2、R3、R5及びR6が表す有機基中に含んでいてもよい炭化水素以外の結合は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されないが、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。耐熱性の点から、有機基中の炭化水素以外の結合としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(-N=C(-R)-、-C(=NR)-:ここでRは水素原子又は有機基を表す)、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
【0029】
前記R2、R3、R5及びR6が表す有機基が有していてもよい炭化水素基以外の置換基は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されないが、例えばハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(-NH2、-NHR、-NRR’:ここで、R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基を表す)、及びアンモニオ基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。中でも、R2、R3、R5及びR6の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、飽和又は不飽和アルキルエーテル基、飽和又は不飽和アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、及びアリールチオエーテル基が好ましい。
【0030】
同一のベンゼン環上に存在するR2とR3が結合して形成する環状構造、及び同一のベンゼン環上に存在するR5とR6が結合して形成する環状構造は、飽和又は不飽和の脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環、並びに当該脂環式炭化水素、複素環、及び縮合環よりなる群から選ばれる2種以上が組み合されてなる構造であってもよい。例えば、R2とR3が結合して、及び/又はR5とR6が結合して、R2、R3、R5及びR6が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成していてもよい。
【0031】
R2、R3、R5及びR6が表す有機基の好ましい具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1乃至20のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数4乃至23のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数4乃至23のシクロアルケニル基;フェノキシメチル基、2-フェノキシエチル基、4-フェノキシブチル基等の炭素数7乃至26のアリールオキシアルキル基(-ROAr基);ベンジル基、3-フェニルプロピル基等の炭素数7乃至20のアラルキル基;シアノメチル基、β-シアノエチル基等のシアノ基をもつ炭素数2乃至21のアルキル基;ヒドロキシメチル基等の水酸基をもつ炭素数1乃至20のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1乃至20のアルコキシ基、アセトアミド基、ベンゼンスルホナミド基(C6H5SO2NH-)等の炭素数2乃至21のアミド基、メチルチオ基、エチルチオ基等の炭素数1乃至20のアルキルチオ基(-SR基)、アセチル基、ベンゾイル基等の炭素数1乃至20のアシル基、メトキシカルボニル基、アセトキシ基等の炭素数2乃至21のエステル基(-COOR基及び-OCOR基)、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、トリル基等の炭素数6乃至20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6乃至20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、及びメチルチオ基(-SCH3)が挙げられる。また、上記のアルキル部分は直鎖でも分岐状でも環状でもよい。
【0032】
また、R2、R3、R5及びR6の少なくとも1つが水酸基である化合物の場合、R2、R3、R5及びR6に水酸基を含まない化合物と比べ、塩基性水溶液等に対する溶解性が向上すると共に、式(1)で表される化合物の吸収波長の長波長化が可能である。
式(1)におけるR2、R3、R5及びR6としては、全てが水素原子であることが好ましい。
【0033】
式(1)中、R4はそれぞれ独立に、水素原子又はチオエーテル結合を含む有機基を表すが、R4の少なくとも一方はチオエーテル結合を含む有機基である。また、R4が表すチオエーテル結合を含む有機基とR3又はR5が結合して環構造を形成してもよい。なお、チオエーテル結合を含む有機基とは、「-S-X(Xは有機基)」の態様を含むものであり、この場合、チオエーテル結合の硫黄原子が、式(1)の化学式を構成する骨格のベンゼン環に直接結合することになる。
R4で表される有機基としては、上記した式(1)のR2、R3、R5及びR6が表す有機基と同じものが挙げられるが、アルキル基又はアリール基が好ましい。即ち、式(1)のR4としては、アルキルチオ基又はアリールチオ基が好ましく、炭素数1乃至20のアルキルチオ基がより好ましい。
【0034】
式(1)中、Aは下記式(1-1)又は(1-2)で表される置換基を表す。
【0035】
【0036】
式(1-1)中、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基若しくは複素環基を表すか、又はR7とR8が結合して複素環を形成してもよい。なお、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基若しくは複素環基を表す場合、R7及びR8は互いに同じでも異なってもよい。
式(1-1)のR7及びR8が表すアルキル基の具体例としては、式(1)のR1が表す有機基の具体例としての炭素数1乃至18のアルキル基や、後述する式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としてのアルキル基と同じものが挙げられる。
【0037】
式(1-1)のR7及びR8が表すアルキル基は置換基を有していてもよい。
式(1-1)のR7及びR8が表すアルキル基が有していてもよい置換基に制限はないが、例えばアルコキシ基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アルキル置換アミノ基、アリール置換アミノ基、非置換アミノ基(NH2基)、シアノ基、イソシアノ基等が挙げられ、これらの具体例は後述する式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基と同じであるが、例えば2-アクリロイルオキシ基又は2-メタクリロイルオキシ基が好ましく、2-メタクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0038】
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基としては、複素環化合物の複素環から水素原子を一つ除いた残基であれば特に限定されず、例えばフラニル基、チエニル基、チエノチエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、N-メチルイミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、ピリジル基、ピラジル基、ピリミジル基、キノリル基、インドリル基、ベンゾピラジル基、ベンゾピリミジル基、ベンゾチエニル基、ナフトチエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチアゾリル基、ピリジノチアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ピリジノイミダゾリル基、N-メチルベンゾイミダゾリル基、ピリジノ-N-メチルイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ピリジノオキサゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ピリジノチアジアゾリル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ピリジノオキサジアゾリル基、カルバゾリル基、フェノキサジニル基及びフェノチアジニル基等が挙げられ、ピリジル基、イミダゾリル基、N-メチルイミダゾリル基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。
【0039】
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基は置換基を有していてもよい。
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基に制限はないが、例えばアルキル基、アルコキシ基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、メルカプト基、ニトロ基、アルキル置換アミノ基、アリール置換アミノ基、非置換アミノ基(NH2基)、シアノ基、イソシアノ基等が挙げられ、アルキル基、芳香族基、複素環基、ハロゲン原子がより好ましく、芳香族基、複素環基がさらに好ましい。
【0040】
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としてのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、iso-ペンチル基、t-ペンチル基、sec-ペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、n-ヘプチル基、sec-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、sec-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基及びn-エイコシル基等の炭素数1乃至20のアルキル基であることが好ましく、炭素数1乃至12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1乃至6のアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1乃至4のアルキル基であることが特に好ましい。
【0041】
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としてのアルコキシ基とは、酸素原子とアルキル基が結合した置換基であり、アルコキシ基が有するアルキル基の具体例としては、例えば式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としてのアルキル基の項に記載したアルキル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
【0042】
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としての芳香族基としては、芳香族化合物の芳香環から水素原子を一つ除いた残基であれば特に限定されず、例えばフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、トリル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、フルオレニル基、ピレニル基、フェナンスニル基及びメスチル基等が挙げられ、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、ナフチル基又はアントリル基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基又はナフチル基がより好ましい。
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としての複素環基の具体例としては、式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基の項に記載した複素環基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
【0043】
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としてのハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としてのアルキル置換アミノ基は、モノアルキル置換アミノ基及びジアルキル置換アミノ基の何れにも制限されず、これらアルキル置換アミノ基におけるアルキル基としては、例えば式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としてのアルキル基の項に記載したアルキル基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
【0044】
式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としてのアリール置換アミノ基は、モノアリール置換アミノ基及びジアリール置換アミノ基の何れにも制限されず、これらアリール置換アミノ基におけるアリール基としては、例えば式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としての芳香族基および複素環基の項に記載した芳香族基および複素環基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じものが挙げられる。
【0045】
式(1-1)のR7とR8が結合して形成する複素環は、2種類以上の元素により構成される環構造であれば特に限定されないが、例えばチオフェン環、フラン環、ピロール環、ピリジン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピラジン環、チアジン環等が挙げられ、ピリジン環、イミダゾール環が好ましく、ピリジン環がより好ましい。
式(1-1)のR7とR8が結合して形成する複素環は、置換基を有していてもよい。
式(1-1)のR7とR8が結合して形成する複素環が有する置換基に制限はないが、例えば式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基と同じものが挙げられる。
【0046】
式(1-1)におけるR7及びR8としては、それぞれ独立に水素原子若しくは炭素数1乃至18のアルキル基であることが好ましく、一方が水素原子であって他方が炭素数1乃至18のアルキル基であることがより好ましい。尚、前記R7及びR8の一方が水素原子であって他方が炭素数1乃至18のアルキル基である化合物の範疇には、以下に述べる式(2)又は(3)で表される化合物も含まれる。
【0047】
尚、式(1)で表されかつAが式(1-1)で表される化合物の範疇には、例えば下記式(2)で表される化合物も含まれる。
【0048】
【0049】
式(2)中、R1乃至R6は式(1)におけるR1乃至R6と同じ意味を表し、好ましいものも式(1)におけるR1乃至R6と同じである。A1はシクロアルキレン基を表す。Dはアルキレン基を表す。
式(2)のA1が表すシクロアルキレン基とは、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環及びアダマンタン環等の飽和の環状炭化水素から2つの水素原子を除いた二価の連結基であり、1,3-シクロペンチレン基又は1,4-シクロヘキシレン基であることが好ましく、1,4-シクロヘキシレン基であることがより好ましい。
式(2)のDが表すアルキレン基とは、飽和の脂肪族炭化水素(例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン及びオクタン等)から2つの水素原子を除いた二価の連結基であり、炭素数1乃至18のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1乃至12のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1乃至8の直鎖状のアルキレン基(具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基及びオクチレン基)であることが更に好ましく、炭素数1乃至4のアルキレン基であることが特に好ましく、炭素数1のアルキレン基(即ち、メチレン基)であることが最も好ましい。
即ち、式(2)で表される化合物としては、下記式(3)で表される化合物がより好ましい。
【0050】
【0051】
式(3)中、R1乃至R6は式(2)におけるR1乃至R6と同じ意味を表し、好ましいものも式(2)におけるR1乃至R6と同じである。
【0052】
式(1-2)中、R9及びR10はそれぞれ独立にアミノ基又は置換アミノ基を表す。
式(1-2)のR9及びR10が表す置換アミノ基の具体例としては、式(1-1)のR7及びR8が表す複素環基が有する置換基としてのアルキル置換アミノ基及びアリール置換アミノ基と同じものが挙げられる。
【0053】
式(1-2)のR9及びR10としては、それぞれ独立にアルキル置換アミノ基又はアリール置換アミノ基であることが好ましく、アルキル置換アミノ基であることがより好ましい。なお、R9及びR10は互いに同じでも異なってもよい。
【0054】
式(1)中の置換基Aとしては、式(1-1)で表される置換基がより好ましい。
また、式(1)で表される化合物としては、上記したR1乃至R6及びA(Aが表す式(1-1)又は(1-2)で表される置換基中のR7乃至R10)それぞれの好ましいものを組合せた化合物がより好ましい。
【0055】
式(1)で表される化合物は、活性エネルギー線が照射されることにより、下記式で示されるように開裂反応と脱炭酸反応をともなってラジカルと塩基性化合物を生成し、該発生したラジカルによって、ラジカル重合性基を有する高分子前駆体のラジカル重合を開始することができる。
【0056】
【0057】
次に式(1)で表される化合物の合成方法について説明する。
式(1)で表される化合物は、公知の方法の応用で合成できる。例えば、先ず下記式(21)で表されるベンゾイン誘導体に、金属水酸化物の存在下でパラホルムアルデヒド類を室温下で30分間反応させて式(22-1)で表される中間体化合物とした後、硫酸等の存在下で亜硝酸ナトリウムを反応させて下記式(23)で表される中間体化合物を得る。次いで、前記で得られた式(23)で表される中間体化合物に触媒の存在下で一酸化炭素及び塩素を反応させて下記式(24)で表される中間体化合物とし、最後にアミン化合物AHを反応させることにより式(1)で表される化合物を得ることができる。精製法は、合成により得られた化合物の結晶性が高い晶析法が適しているが、溶剤などで洗浄することによって精製することもできる。尚、式(21)乃至(24)及びアミン化合物AH中のR1乃至R6及びAは式(1)におけるR1乃至R6及びAと同じ意味を表す。
【0058】
【0059】
また、式(1)におけるAが式(1-1)で表される置換基の化合物の場合は、J.Photopolym.Sci.Technol 27,2,2014に記載の方法を応用して、例えば、下記式(21)で表されるベンゾイン誘導体に、金属水酸化物の存在下でパラホルムアルデヒド類を室温下で30分間反応させて式(22-2)で表される中間体化合物とした後、該中間体化合物に、スズや鉛等の有機化合物の触媒の存在下でイソシアネート類を反応させることにより式(1)で表される化合物を得ることができる。精製法は上記と同様である。尚、式(21)、(22-2)及びイソシアネート類中のR1乃至R8は、式(1)におけるR1乃至R8と同じ意味を表す。なお、Aが式(1-2)を表す場合についても、WO2019/168089号公報の実施例2に記載の方法などの公知方法を用いて、合成することができる。
【0060】
【0061】
式(1)で表される化合物の具体例を下記式(a)乃至(g)に示すが、式(1)で表される化合物はこれらに限定されるものではない。
【0062】
【0063】
式(1)で表される化合物を光塩基発生剤として用いる場合、アルカリ現像性樹脂、熱反応性化合物及び光重合性モノマーのラジカル重合と重(縮)合反応に充分に寄与し得るラジカルと塩基性化合物を発生させるために、露光波長の少なくとも一部に対して吸収を有する必要がある。一般的な露光光源である高圧水銀灯の波長は、365nm、405nm及び436nmであるため、これらの波長の活性エネルギー線のうちの少なくとも1つに対して吸収を有することが好ましい。
【0064】
式(1)で表される化合物を光塩基発生剤として用いる場合、そのモル吸光係数が、波長365nmの活性エネルギー線に対して100以上であるか、又は波長405nmの活性エネルギー線に対して1以上であることが好ましい。
【0065】
尚、式(1)で表される化合物が前記波長領域に吸収を有することは、当該波長領域に吸収をもたない溶剤(例えば、アセトニトリル)に、式(1)で表される化合物を1×10-4mol/L以下の濃度(通常、1×10-5乃至1×10-4mol/L程度。適度な吸収強度となるように、適宜、調節してもよい。)で溶解し、紫外可視分光光度計(例えば、UV-2550(株)島津製作所製)により吸光度を測定することにより確認することができる。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物は(B)アルカリ現像性樹脂を含有する。
(B)アルカリ現像性樹脂は、アルカリ溶液に可溶な感光性樹脂組成物には必須成分である。(B)アルカリ現像性樹脂は、フェノール性水酸基、チオール基およびカルボキシ基から選択される少なくとも1種以上の官能基を含有し、アルカリ溶液で現像可能な樹脂(アルカリ溶液に溶解し得る樹脂)であり、好ましくはフェノール性水酸基を2個以上有する化合物、カルボキシ基含有樹脂、フェノール性水酸基およびカルボキシ基を有する化合物、チオール基を2個以上有する化合物が挙げられる。
【0067】
フェノール性水酸基を2個以上有する化合物としては、フェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、ポリビニルフェノール類、ビスフェノールF、ビスフェノールS型フェノール樹脂、ポリ-p-ヒドロキシスチレン、ナフトールとアルデヒド類の縮合物、ジヒドロキシナフタレンとアルデヒド類との縮合物など公知慣用のフェノール樹脂が挙げられる。
また、フェノール樹脂として、ビフェニル骨格、或いはフェニレン骨格、又はその両方の骨格を有する化合物と、フェノール性水酸基含有化合物としてフェノール、オルソクレゾール、パラクレゾール、メタクレゾール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6-ジメチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール等とを用いて合成した、様々な骨格を有するフェノール樹脂を用いてもよい。
これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
カルボキシ基含有樹脂としては、公知のカルボキシ基を含む樹脂を用いることができる。カルボキシ基の存在により、感光性樹脂組成物をアルカリ現像性とすることができる。また、カルボキシ基の他に、分子内にエチレン性不飽和結合を有する化合物を用いてもよいが、本発明においては、エチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシ基含有樹脂のみを用いることが好ましい。
【0069】
本発明に用いることができるカルボキシ基含有樹脂の具体例としては、以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)が挙げられる。
【0070】
(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と、スチレン、α-メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシ基含有樹脂。なお、低級アルキルとは、炭素原子数1乃至5のアルキル基を指す。
【0071】
(2)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシ基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシ基及びアルコール性ヒドロキシ基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシ基含有ウレタン樹脂。
【0072】
(3)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネート化合物と、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性ヒドロキシ基及びアルコール性ヒドロキシ基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるウレタン樹脂の末端に酸無水物を反応させてなる末端カルボキシ基含有ウレタン樹脂。
【0073】
(4)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシ基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応によるカルボキシ基含有ウレタン樹脂。
【0074】
(5)上記(2)又は(4)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端を(メタ)アクリル化したカルボキシ基含有ウレタン樹脂。
【0075】
(6)上記(2)又は(4)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など、分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え、末端を(メタ)アクリル化したカルボキシ基含有ウレタン樹脂。
【0076】
(7)前述するような多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシ基含有樹脂。
【0077】
(8)前述するような多官能(固形)エポキシ樹脂に飽和モノカルボン酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシ基含有樹脂。
【0078】
(9)2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ、生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシ基含有樹脂。
【0079】
(10)後述するような多官能オキセタン樹脂にジカルボン酸を反応させ、生じた1級の水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシ基含有ポリエステル樹脂。
【0080】
(11)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基含有樹脂。
【0081】
(12)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に飽和モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基含有樹脂。
【0082】
(13)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基含有樹脂。
【0083】
(14)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に飽和モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基含有樹脂。
【0084】
(15)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基含有樹脂。
【0085】
(16)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基含有樹脂。
【0086】
(17)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基含有樹脂。
【0087】
(18)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に、p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と、(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ、得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシ基含有樹脂。
【0088】
(19)上記(1)乃至(18)のいずれかの樹脂にさらにグリシジル(メタ)アクリレート、α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシ基含有樹脂。
【0089】
上記のようなアルカリ現像性樹脂は、バックボーン・ポリマーの側鎖に複数のカルボキシ基やヒロドキシ基等を有するため、アルカリ水溶液による現像が可能になる。
また、上記カルボキシ基含有樹脂のヒドロキシ基当量又はカルボキシ基当量は、80乃至900g/eq.であることが好ましく、さらに好ましくは、100乃至700g/eq.である。ヒドロキシ基当量又はカルボキシ基当量が900g/eq.を超えた場合、パターン層の密着性が得られなかったり、アルカリ現像が困難となることがある。一方、ヒドロキシ基当量又はカルボキシ基当量が80g/eq.未満の場合には、現像液による光照射部の溶解が進むために、必要以上にラインが痩せたり、場合によっては、光照射部と未照射部の区別なく現像液で溶解剥離してしまい、正常なレジストパターンの描画が困難となることがあるので好ましくない。また、カルボキシ基当量やフェノール基当量が大きい場合、(B)アルカリ現像性樹脂の含有量が少ない場合でも、感光性樹脂組成物の現像が可能となるため、好ましい。
【0090】
また、本発明で用いる(B)アルカリ現像性樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、2,000乃至150,000の範囲が好ましく、5,000乃至100,000の範囲が好ましい。重量平均分子量が2,000未満であると、タックフリー性能が劣ることがあり、光照射後の樹脂層の耐湿性が悪く、現像時に膜減りが生じ、解像度が大きく劣ることがある。一方、重量平均分子量が150,000を超えると、現像性が著しく悪くなることがあり、貯蔵安定性が劣ることがある。
尚、本明細書における重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定結果に基づいて、ポリスチレン換算で算出した値を意味する。
【0091】
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
【0092】
チオール基を有する化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリスチオプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキスチオプロピオネート、エチレングリコールビスチオグリコレート、1,4-ブタンジオールビスチオグリコレート、トリメチロールプロパントリスチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート、ジ(2-メルカプトエチル)エーテル、1,4-ブタンジチオール、1,3,5-トリメルカプトメチルベンゼン、1,3,5-トリメルカプトメチル-2,4,6-トリメチルベンゼン、末端チオール基含有ポリエーテル、末端チオール基含有ポリチオエーテル、エポキシ化合物と硫化水素との反応によって得られるチオール化合物、ポリチオール化合物とエポキシ化合物との反応によって得られる末端チオール基を有するチオール化合物等が挙げられる。
【0093】
(B)アルカリ現像性樹脂は、カルボキシ基含有樹脂やフェノール性水酸基を有する化合物であることが好ましい。
また、(B)アルカリ現像性樹脂は、エポキシアクリレートなどの光硬化性構造を有さない非感光性であることが好ましい。このような非感光性アルカリ現像性樹脂は、エポキシアクリレートに由来するエステル結合を有さないので、デスミア液に対する耐性が高い。したがって、感光性樹脂組成物が(B)アルカリ現像性樹脂を含むことによって、硬化特性に優れたパターン層を形成できる。また、光硬化性構造を有さないため、硬化収縮を抑制できる。
(B)アルカリ現像性樹脂がカルボキシ基含有樹脂の場合、フェノール性樹脂の場合と比べて感光性樹脂組成物を弱アルカリ性水溶液で現像できる。弱アルカリ性水溶液としては、炭酸ナトリウム等が溶解したものを挙げられる。弱アルカリ性水溶液で現像することにより、光照射部が現像されてしまうことを抑制できる。また、下記工程(b)における光照射時間や工程(d)における加熱時間を短縮できる。
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(B)アルカリ現像性樹脂としては、(7)に記載したカルボキシ基含有樹脂が特に好ましい。
【0094】
本発明の感光性樹脂組成物は(C)熱反応性化合物を含有する。
(C)熱反応性化合物は、熱による硬化反応が可能な官能基(熱反応性基)を有する樹脂であり、例えばエポキシ樹脂、多官能オキセタン化合物等が挙げられる。
【0095】
エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する樹脂であり、公知のものをいずれも使用できる。分子中にエポキシ基を2個有する2官能性エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を多数有する多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、水素添加された2官能エポキシ化合物であってもよい。
【0096】
多官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ブロム化エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂又はそれらの混合物、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、ジグリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートの共重合エポキシ樹脂、CTBN変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0097】
その他の液状2官能性エポキシ樹脂としては、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、(3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル)-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、(3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキシルメチル)-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート等の脂環族エポキシ樹脂を挙げることができる。ナフタレン基含有エポキシ樹脂は、硬化物の熱膨張を抑えることができるため、好ましい。
【0098】
エポキシ樹脂は、エポキシ当量が200以上であることが好ましい。エポキシ当量が200以上であることにより、硬化膜の反りを抑制し、長時間高湿度下に放置した場合でも現像性に優れる。
エポキシ当量が200以上のエポキシ樹脂としては、DIC社製のHP-4770(ナフタレン型、当量205g/eq.)、HP-7200(ジシクロペンタジエン骨格含有ノボラックエポキシ、255g/eq.)、EXA-4850-150(柔軟骨格含有液状エポキシ、440g/eq.)、EXA-4850-1000(340g/eq.)及び、HP-820(アラルキルフェノールエポキシ、225g/eq.)、大阪ガスケミカル社製のPG-100(フルオレン骨格含有エポキシ、250g/eq.)及びEG-200(柔軟性エポキシ、292g/eq.)、三菱化学社製の1001(475g/eq.)、1002(650g/eq.)、4004P(900g/eq.)、4005P(1075g/eq.)及び157S70(Bis-Aノボラックエポキシ、210g/eq.)、新日鉄住金化学社製のESN-475V(ナフトールアラルキル型、325g/eq.)、日本化薬社製のEOCN-104S(クレゾールノボラックエポキシ、210g/eq.)、NC-7000(ナフタレン骨格含有ノボラックエポキシ、230g/eq.)、NC3000(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、275g/eq.)、NC-3000H(フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、289g/eq.)、NC-3000-FH(フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、320g/eq.)、NC-2000L(238g/eq.)、NC-3100(258g/eq.)、NC-3000S(284g/eq.)、NC-3000S-H(290g/eq.)等が挙げられる。
上記のエポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
上記多官能オキセタン化合物としては、ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4-ビス[(3-メチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルアクリレート、(3-メチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレート、(3-エチル-3-オキセタニル)メチルメタクリレートやそれらのオリゴマー又は共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタンアルコールとノボラック樹脂、ポリ(p-ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、又はシルセスキオキサンなどの水酸基を有する樹脂とのエーテル化物などが挙げられる。その他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
ここで、(C)熱反応性化合物がベンゼン骨格を有する場合、耐熱性が向上するので、好ましい。また、感光性樹脂組成物が白色顔料を含有する場合、(C)熱反応性化合物は脂環式骨格であることが好ましい。これにより、感光性樹脂組成物の光反応性を向上できる。
【0100】
(C)熱反応性化合物の配合量は、(B)アルカリ現像性樹脂との当量比(熱反応性基:アルカリ現像性基)が、1:0.1乃至1:10であることが好ましく、1:0.2乃至1:5であることがより好ましい。このような配合比の範囲内である場合、現像が良好になる。
本発明の感光性樹脂組成物が含有する(C)熱反応性化合物としては、エポキシ樹脂が好ましい。
【0101】
本発明の感光性樹脂組成物は、(D)光重合性モノマーを含有する。
(D)光重合性モノマーとしては、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のアルキレンオキシド誘導体のモノ又はジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、トリスヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレンオキシド或いはプロピレンオキシド付加物の多価(メタ)アクリレート類;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエトキシジ(メタ)アクリレート等のフェノール類のエチレンオキシドあるいはプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレートなどのグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート類;及びメラミン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0102】
また、(D)光重合性モノマーとしてマレイミド基を有する化合物も使用することができる。実施形態におけるマレイミド化合物とは、1分子中に少なくとも1個のマレイミド基を有する化合物のことをいう。また、マレイミド化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
このようなマレイミド化合物としては、ガラス転移温度、熱膨張率及び保存安定性の観点から、下記式(MR-1)又は式(MR-2)で表される化合物が好ましい。
【0103】
【0104】
式(MR-1)中、R11は、例えば、フェニル、2-メチルフェニル、4-メチルフェニル、2,6-ジエチルフェニル基である。
式(MR-2)中、R12は、例えば、下記式(A2-i)、式(A2-ii)又は式(A2-iii)で表される基である。
【0105】
【0106】
本発明の感光性樹脂組成物の(D)光重合性モノマーとして使用されるマレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を1個以上含有するものであれば、特に制限はないが、例えば、N-置換マレイミド化合物を用いることができ、N-置換マレイミド化合物としては、例えばN-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルメチルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミド、N-(1-ヒドロキシフェニル)マレイミド、1-メチル-2,4-ビスマレイミドベンゼン、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、N,N’-p-フェニレンビスマレイミド、N,N’-m-トルイレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ビフェニレンビスマレイミド、N,N’-4,4’-〔3,3’-ジメチルビフェニレン〕ビスマレイミド、N,N’-4,4’-〔3,3’-ジメチルジフェニルメタン〕ビスマレイミド、N,N’-4,4’-〔3,3’-ジエチルジフェニルメタン〕ビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’-3,3’-ジフェニルスルホンビスマレイミド、N,N’-4,4’-ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-メチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-メチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3,5-ジメチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3,5-ジメチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス〔3-エチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2-ビス〔3-エチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕ヘキサフルオロプロパン、ビス〔3-メチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3,5-ジメチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、ビス〔3-エチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕メタン、3,8-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕-トリシクロ-〔5.2.1.02,6〕デカン、4,8-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕-トリシクロ-〔5.2.1.02,6〕デカン、3,9-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕-トリシクロ-〔5.2.1.02,6〕デカン、4,9-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕-トリシクロ-〔5.2.1.02,6〕デカン、1,8-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕メンタン、1,8-ビス〔3-メチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕メンタン、1,8-ビス〔3,5-ジメチル-4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕メンタン、大和化成株式会社製BMI-1000、-1000H、-1100、-1100H、-2000、-2300、-3000、-3000H、-4000、-5100、-7000、-7000H、-TMH、Designer Molecules Inc.製BMI-689、-1400、-1500、-1700、-2500、-3000、日本化薬株式会社製 MIR-3000,MIZ-001等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂との相溶性の観点から、芳香族の共役が少ないものが好ましい。以上の化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に設定できる。
【0107】
(D)光重合性モノマーの配合量は、感光性樹脂組成物の溶剤を除く固形分を基準として、1乃至50質量%であることが好ましく、より好ましくは、1乃至30質量%であり、さらに好ましくは、1乃至15質量%である。(D)光重合性モノマーの配合量が50質量%を超える場合、硬化収縮が大きくなるため、反りが大きくなる可能性がある。また、(D)光重合性モノマーが(メタ)アクリレート由来の場合、エステル結合を含む。この場合、デスミア処理によって、エステル結合の加水分解が起こるため、電気特性が低下する可能性がある。
【0108】
本発明の感光性樹脂組成物には、式(1)で表される化合物を含む(A)光塩基発生剤以外の光塩基発生剤を併用してもよい。光塩基発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により分子構造が変化するか、または、分子が開裂することにより、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物と熱硬化成分との付加反応の触媒として機能し得る1種以上の塩基性物質を生成する化合物である。発生する塩基性物質として、例えば2級アミンや3級アミンが挙げられる。
【0109】
併用し得る光塩基発生剤として、例えば、α-アミノアセトフェノン化合物、オキシムエステル化合物や、アシルオキシイミノ基,N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメート基、アルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。なかでも、オキシムエステル化合物、α-アミノアセトフェノン化合物が好ましい。α-アミノアセトフェノン化合物としては、特に、2つ以上の窒素原子を有するものが好ましい。その他の光塩基発生剤として、WPBG-018(商品名:9-anthrylmethylN,N’-diethylcarbamate、和光純薬製)、WPBG-027(商品名:(E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine)、WPBG-082(商品名:guanidinium2-(3-benzoylphenyl)propionate)、WPBG-140(商品名:1-(anthraquinon-2-yl)ethylimidazolecarboxylate)等を使用することもできる。α-アミノアセトフェノン化合物は、分子中にベンゾインエーテル結合を有し、光照射を受けると分子内で開裂が起こり、硬化触媒作用を奏する塩基性物質(アミン)が生成する。α-アミノアセトフェノン化合物の具体例としては、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン(イルガキュア369、商品名、BASFジャパン社製)や4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン(イルガキュア907、商品名、BASFジャパン社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(イルガキュア379、商品名、BASFジャパン社製)などの市販の化合物またはその溶液を用いることができる。
【0110】
併用し得るオキシムエステル化合物としては、光照射により塩基性物質を生成する化合物であればいずれをも使用することができる。かかるオキシムエステル化合物の市販品としては、BASFジャパン社製のCGI-325、イルガキュアOXE01、イルガキュアOXE02、アデカ社製N-1919、NCI-831などが挙げられる。また、特許第4344400号公報に記載された、分子内に2個のオキシムエステル基を有する化合物も好適に用いることができる。
【0111】
その他、特開2004-359639号公報、特開2005-097141号公報、特開2005-220097号公報、特開2006-160634号公報、特開2008-094770号公報、特表2008-509967号公報、特表2009-040762号公報、特開2011-80036号公報記載のカルバゾールオキシムエステル化合物等を挙げることができる。
【0112】
(A)光塩基発生剤から発生した少量の塩基の作用によって、分解や転位反応して塩基を発生させる塩基増殖剤を併用してもよい。塩基増殖剤としては、例えば、9-フルオレニルメチルカルバメート結合を有する化合物、1,1-ジメチル-2-シアノメチルカルバメート結合((CN)CH2C(CH3)2OC(O)NR2)を有する化合物、パラニトロベンジルカルバメート結合を有する化合物、2,4-ジクロロベンジルカルバメート結合を有する化合物、その他にも特開2000-330270号公報の段落0010乃至0032に記載されているウレタン系化合物や、特開2008-250111号公報の段落0033乃至0060に記載されているウレタン系化合物等が挙げられる。
【0113】
本発明の感光性樹脂組成物には、(A)光塩基発生剤以外の光塩基発生剤又は光重合開始剤を併用してもよい。
併用し得る光塩基発生剤及び光重合開始剤は特に限定されるものではなく、例えば光ラジカル重合開始剤を用いることができる。この光ラジカル重合開始剤としては、光、レーザー、電子線等によりラジカルを発生し、ラジカル重合反応を開始させられる化合物であればいずれも用いることができる。
【0114】
併用し得る光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のアルキルフェノン系;アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアミノアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体;リボフラビンテトラブチレート;2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物;2,4,6-トリス-s-トリアジン、2,2,2-トリブロモエタノール、トリブロモメチルフェニルスルホン等の有機ハロゲン化合物;ベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類又はキサントン類;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド系;ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2,3,4,5,6ペンタフルオロフェニル)チタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)-ビス(2、6-ジフルオロ-3-(ピロール-1-イル)フェニル)チタニウムなどのチタノセン類などが挙げられる。
【0115】
これら公知慣用の光重合開始剤は、単独で又は2種類以上の混合物として使用でき、さらにはN,N-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類などの光開始助剤を加えることができる。
【0116】
市販されている光重合開始剤の例としては、イルガキュア261、184、369、651、500、819、907、784、2959、ダロキュア1116、1173、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG-24-61、ルシリンTPO、CGI-784(以上、BASFジャパン社製の商品名)、DAICATII(ダイセル化学工業社製の商品名)、UVAC1591(ダイセル・ユーシービー社製の商品名)、ロードシルフォトイニシエーター2074(ローディア社製の商品名)、ユベクリルP36(UCB社製の商品名)、エザキュアーKIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B、ONE(フラテツリ・ランベルティ社製の商品名)等が挙げられる。
【0117】
式(1)で表される化合物を含む(A)光塩基発生剤以外の光塩基発生剤、及び/又は(A)光塩基発生剤以外の光重合開始剤を併用する場合、併用する光塩基発生剤及び/又は光重合開始剤の配合割合は、本発明の感光性樹脂組成物100質量部中、0.5乃至10質量部の範囲が好ましい。
【0118】
本発明の感光性樹脂組成物には、さらに熱硬化触媒を用いることが好ましく、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルホスフィン等のリン化合物などを使用することができる。
【0119】
また、市販されているものとしては、例えば四国化成工業社製の2MZ-A、2MZOK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ社製のU-CAT(登録商標)3503N、U-CAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、UCATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)などが挙げられる。特に、これらに限られるものではなく、エポキシ化合物やオキセタン化合物の熱硬化触媒、もしくはエポキシ基及び/又はオキセタニル基とカルボキシ基の反応を促進するものであればよく、単独で又は2種以上を混合して使用してもかまわない。
【0120】
また、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体を用いることもでき、好ましくはこれら密着性付与剤としても機能する化合物を熱硬化触媒と併用する。
【0121】
これら熱硬化触媒の配合量は、(C)熱反応性化合物成分100質量部に対して、好ましくは0.1乃至20質量部、より好ましくは0.5乃至15.0質量部である。
【0122】
高分子を透過する波長の活性エネルギー線のエネルギーを高効率で光塩基発生剤に活用させたい場合、即ち、光塩基発生剤の感度を向上させたい場合には、増感剤の添加が効果を発揮する場合がある。特に、ポリイミド前駆体が360nm以上の波長領域にも吸収を有する場合には、増感剤の添加による効果が大きい。増感剤と呼ばれる化合物の具体例としては、チオキサントンやジエチルチオキサントン等及びその誘導体、クマリン及びその誘導体、ケトクマリン及びその誘導体、ケトビスクマリン及びその誘導体、シクロペンタノン及びその誘導体、シクロヘキサノン及びその誘導体、チオピリリウム塩及びその誘導体、チオキサンテンやキサンテン及びその誘導体などが挙げられる。クマリン、ケトクマリン及びその誘導体の具体例としては、3,3’-カルボニルビスクマリン、3,3’-カルボニルビス(5,7-ジメトキシクマリン)及び3,3’-カルボニルビス(7-アセトキシクマリン)等が挙げられる。チオキサントン及びその誘導体の具体例としては、ジエチルチオキサントン及びイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。さらにはベンゾフェノン、アセトフェノン、フェナントレン、2-ニトロフルオレン、5-ニトロアセナフテン、ベンゾキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、1,2-ベンズアンスラキノン及び1,2-ナフトキノン等が挙げられる。これらは、(A)光塩基発生剤との組み合わせによって、特に優れた効果を発揮する為、(A)光塩基発生剤の構造によって最適な増感作用を示す増感剤が適宜選択される。
【0123】
本発明の感光性樹脂組成物には溶剤を併用してもよい。
使用可能な汎用溶剤としては、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールモノエーテル類(いわゆるセロソルブ類);メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸n-プロピル、酢酸i-プロピル、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、前記グリコールモノエーテル類の酢酸エステル(例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、蓚酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸エチル等のエステル類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;塩化メチレン、1,1-ジクロロエタン、1,2-ジクロロエチレン、1-クロロプロパン、1-クロロブタン、1-クロロペンタン、クロロベンゼン、ブロムベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルメトキシアセトアミド等のアミド類;N-メチル-2-ピロリドン、N-アセチル-2-ピロリドンなどのピロリドン類;γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン等のラクトン類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホンなどのスルホン類、ヘキサメチルフォスホアミド等のリン酸アミド類、その他の有機極性溶剤類等が挙げられ、更には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン等の芳香族炭化水素類、及び、その他の有機非極性溶剤類等も挙げられる。これらの溶剤は単独若しくは組み合わせて用いられる。
【0124】
本発明の感光性樹脂組成物は、ソルダーレジスト、カバーレイ、層間絶縁層等のプリント配線板の永久被膜としてのパターン層を形成するために有用であり、特にソルダーレジストの形成に有用である。また、本発明の感光性樹脂組成物は、解像性に優れることから、微細なパターンの形成が求められるICパッケージのパターン層の形成にも好適に用いることができる。
【0125】
[パターン形成方法]
本発明の感光性樹脂組成物の使用方法について、ソルダーレジストのパターン形成に用いた例を挙げて以下に説明するが、本発明の感光性樹脂組成物の使用方法はこれに限定されるものではない。
本発明の感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法は、基材に感光性樹脂組成物からなる樹脂層を形成する工程(a)、ネガ型のパターン状の光照射にて感光性樹脂組成物に含まれる光塩基発生剤を活性化して光照射部を硬化する工程(b)、現像により未照射部を除去することによりネガ型のパターン層を形成する工程(c)を含む。パターン状の光照射により感光性樹脂組成物の光照射部内に塩基を発生させることにより、光照射部を硬化させる。その後、有機溶剤又はアルカリ水溶液にて現像することで、未照射部を除去し、ネガ型のパターン層を形成する。
ここで、本発明では、工程(b)の後であって工程(c)の前、又は工程(c)の後に樹脂層を加熱する工程(d)を有することが好ましい。これにより、樹脂層を十分に硬化して、さらに硬化特性に優れたパターン層を得ることができる。
【0126】
[工程(a)]
工程(a)は、基材に感光性樹脂組成物からなる樹脂層(ドライフィルム)を形成する工程である。樹脂層を形成する方法としては、液状の感光性樹脂組成物を基材上に、塗布、乾燥する方法や、感光性樹脂組成物をドライフィルムにしたものを基材上にラミネートする方法が挙げられる。
【0127】
感光性樹脂組成物の基材への塗布方法は、ブレードコーター、リップコーター、コンマコーター、フィルムコーター等の公知の塗布装置を適宜採用することができる。また、乾燥方法としては、熱風循環式乾燥炉、IR炉、ホットプレート、コンベクションオーブン、蒸気による加熱方式の熱源を備えたもの等の公知の乾燥装置を用いる方法が挙げられ、乾燥機内の熱風を向流接触させる方法、およびノズルより支持体に吹き付ける方法等の公知の方法を採用することにより、適切に感光性樹脂組成物に乾燥させることができる。
基材としては、予め回路形成されたプリント配線基材やフレキシブルプリント配線基材の他、紙-フェノール樹脂、紙-エポキシ樹脂、ガラス布-エポキシ樹脂、ガラス-ポリイミド、ガラス布/不繊布-エポキシ樹脂、ガラス布/紙-エポキシ樹脂、合成繊維-エポキシ樹脂、フッ素樹脂・ポリエチレン・PPO・シアネートエステル等の複合材を用いた全てのグレード(FR-4等)の銅張積層板、ポリイミドフィルム、PETフィルム、ガラス基材、セラミック基材、ウエハ基材等を用いることができる。
【0128】
[工程(b)]
工程(b)は、工程(a)で形成された樹脂層にネガ型のパターン状に光照射して、樹脂層を構成する感光性樹脂組成物に含まれる(A)光塩基発生剤を活性化して光照射部を硬化する工程である。工程(b)では、光照射部で発生した塩基により、(A)光塩基発生剤が不安定化し、さらに塩基が発生すると考えられる。このように塩基が化学的に増殖することにより、光照射部の深部まで十分硬化できる。
光照射に用いられる光照射機としては、例えば、レーザー光、ランプ光、LED光を照射可能な直接描画装置を用いることができる。パターン状の光照射用のマスクは、ネガ型のマスクを用いることができる。
【0129】
活性エネルギー線としては、最大波長が350乃至410nmの範囲にあるレーザー光又は散乱光を用いることが好ましい。最大波長をこの範囲とすることにより、効率よく感光性樹脂組成物の熱反応性を向上させることができる。最大波長がこの範囲のレーザー光であればガスレーザー、固体レーザーのいずれでもよい。また、その光照射量は膜厚等によって異なるが、一般には100乃至1500mJ/cm2、好ましくは300乃至1500mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0130】
直接描画装置としては、例えば、日本オルボテック社製、ペンタックス社製等のものを使用することができ、最大波長が350乃至410nmのレーザー光を発振する装置であればいずれの装置を用いてもよい。
【0131】
[工程(c)]
工程(c)は、現像により未照射部を除去することによりネガ型のパターン層を形成する工程である。現像方法としては、ディッピング法、シャワー法、スプレー法、ブラシ法等公知の方法によることができる。また、現像液としては、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、リン酸ナトリウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液、アンモニア水溶液、エタノールアミンなどのアミン類、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)等のアルカリ水溶液またはこれらの混合液を用いることができる。なお、適切な有機溶剤を用いて現像できる場合は、有機溶剤を使用して現像してもよい。
【0132】
[工程(d)]
上記パターン形成方法は、工程(c)の後に、さらに、加熱することによる熱硬化(ポストキュア)工程(d)を含むことが好ましい。
工程(d)は、工程(b)により(A)光塩基発生剤から発生した塩基により、パターン層を十分に熱硬化させることができる。工程(d)は、未反応の(C)熱反応性化合物の硬化反応開始温度以上の温度で行うことができる。これにより、パターン層を十分に熱硬化させることができる。加熱温度は、例えば160℃以上である。
【実施例】
【0133】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。尚、特別の記載のない限り、本文中「部」及び「%」とあるのは質量基準である。
【0134】
合成例1(式(1)で表される化合物(成分(A-1))の合成)
特開2017-105749号公報の実施例6の記載に準じて、式(1)で表される化合物(A-1)を得た。
【0135】
【0136】
合成例2(式(1)で表される化合物(成分(A-2))の合成)
(工程1)式(31)で表される中間体化合物の合成
シアン化カリウム 1.9部に、水10部及びエタノール53部を加えて溶解させた後、窒素雰囲気下で超音波処理することにより反応液の脱気を行った。この溶液に下記式(30)で表される4-(メチルチオ)ベンズアルデヒド10部を滴下し、80℃で加温して反応を開始した。30分間撹拌後、反応液を3℃まで冷却して析出した結晶を吸引濾過で回収した。回収した結晶を大量のエタノールを用いて再結晶により精製し、下記式(31)で表される中間体化合物を7.6部得た。
【0137】
【0138】
(工程2)式(32)で表される中間体化合物の合成
攪拌機、還流冷却管及び撹拌装置を備えたフラスコに、パラホルムアルデヒド9.0部とジメチルスルホキシド170部を加えて撹拌した後、水酸化カリウム1.4部をエタノール5部に溶解させた溶液を滴下し、パラホルムアルデヒドが完全に溶解するまで撹拌した。前記で得られたジメチルスルホキシド溶液に、工程1で得られた式(31)で表される中間体化合物50部をジメチルスルホキシド30部に溶解させた溶液を30分間掛けて滴下し、室温で2時間撹拌した。その後35%塩酸2.6部を滴下して中和し、反応を終了させた。この反応溶液にトルエンと飽和食塩水を加えて有機層に反応生成物を抽出した後、分離及び濃縮した有機層を晶析して下記式(32)で表される中間体化合物を40部得た。
【0139】
【0140】
(工程3)式(1)で表される化合物(成分(A-2))の合成
工程2で得られた式(32)で表される中間体化合物10.0部、トルエン28部及びオクチル酸スズ0.08部をフラスコに入れて均一になるまで還流撹拌を行った。続いて液温60℃で2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工株式会社製 カレンズMOI)5.6部を加えて3時間撹拌を続けた後、冷却により反応液を晶析して下記式(A-2)で表される化合物を10.7部得た。
【0141】
【0142】
合成例3(式(1)で表される化合物(成分(A-3))の合成)
工程2で得られた式(32)で表される中間体化合物66部、トルエン182部、トリエチルアミン2.0部及びジブチルヒドロキシトルエン(BHT)1.3部をフラスコに入れて均一になるまで80℃で撹拌を行った。続いて液温80℃で2-イソシアナトエチルアクリラート(昭和電工株式会社製 カレンズAOI―VM)33部を加えて3時間撹拌を続けた後、冷却により反応液を晶析して下記式(A-3)で表される化合物を86部得た。
【0143】
【0144】
実施例1乃至4、比較例1乃至4(感光性樹脂組成物の調製)
(A)光塩基発生剤、(B)アルカリ現像性樹脂、(C)熱反応性化合物、(D)光重合性モノマー、その他添加剤及び表1に記載の固形分濃度となる量のジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートを攪拌混合した後、脱泡装置を用いて脱泡を施すことにより各感光性樹脂組成物を作製した。それぞれの構成原料の種類及び固形分での配合量(質量部)を表1に記載した。
【0145】
(電気絶縁信頼性評価)
ニトフロンテープ(膜厚90μm)を膜厚制御に用いて、溶剤留去後の厚さが50μmとなる量の実施例1乃至4及び比較例1乃至4で得られた感光性樹脂組成物をそれぞれ基材に塗布し、80±5℃の乾燥機中に30分間静置して溶剤を留去した。得られた塗膜に、ベルトコンベア式高圧水銀灯露光機を用いて1パスの露光量が100mJ/cm2(ベルトコンベアから高圧水銀灯までの高さ100mm)の条件で積算露光量1,200mJ/cm2の露光を施した後、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液で90秒間スプレー現像を行った。次いで、150℃のオーブンで1時間加熱硬化させることにより評価用のサンプルを作製した。尚、基材には無接着剤ポリイミド銅張積層板(エスパネックス(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、銅箔の厚さ18μm、ポリイミドフィルムの厚さ25μm))の銅箔をライン幅/スペース幅=100μm/100μmの櫛形パターンに加工したものを使用した。
前記で得られた各評価用サンプルの櫛形パターンの両端子部分に100Vの直流電流を印加した時の抵抗値(最大抵抗値)を計測し、結果を表1に記載した。
また、各評価用サンプルの櫛形パターンの両端子部分に100Vの直流電流を印加したまま130℃85%RHの環境試験機中に静置して100時間後の抵抗値を計測し、「130℃85%RH100時間後の抵抗値/最大抵抗値×100」の計算式で減衰率を算出し、結果を表1に記載した。
【0146】
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の感光性樹脂組成物は、ソルダーレジスト、カバーレイ、層間絶縁層等のプリント配線板の永久被膜としてのパターン層を形成するために有用であり、特にソルダーレジストの形成に有用である。また、本発明の感光性樹脂組成物は、絶縁信頼性に優れることから、ICパッケージのパターン層の形成に用いられる層間絶縁材料に好適に用いることができる。