(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】配向ネマチックエラストマー
(51)【国際特許分類】
C08F 220/18 20060101AFI20240408BHJP
C08F 2/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C08F220/18
C08F2/00 C
(21)【出願番号】P 2020522038
(86)(22)【出願日】2018-10-18
(86)【国際出願番号】 GB2018053018
(87)【国際公開番号】W WO2019077361
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-04
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501323583
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ リーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘレン・フランシス・グリーソン
(72)【発明者】
【氏名】デヴェシュ・アルヴィンド・ミストリー
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-215287(JP,A)
【文献】特開2015-145450(JP,A)
【文献】特表2007-525721(JP,A)
【文献】特開2015-000983(JP,A)
【文献】特表2012-530950(JP,A)
【文献】特開2003-327966(JP,A)
【文献】特表2000-507362(JP,A)
【文献】特開2015-096926(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0312120(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C 19/00-19/44
C08F 2/00-2/60
C08F 6/00-246/00
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C09K 19/00-19/60
G02F 1/13
G02F 1/137-1/141
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーセチック特性を有する材料を形成するための配向ネマチックエラストマーの使用であって、
前記配向ネマチックエラストマーは、メカニカルフレデリクス転移を有し、
前記配向ネマチックエラストマーは、モノドメイン液晶エラストマーを含み、
前記モノドメイン液晶エラストマーは、ポリマー構成要素と
、架橋剤構成要素とを含
み、
前記ポリマー構成要素は、液晶メソゲン構成要素及び非メソゲン構成要素の両方を含み、
前記架橋剤構成要素は、液晶メソゲン構成要素を含み、
前記液晶メソゲン構成要素は、液晶コア構成要素を含み、
前記液晶コア構成要素は、以下:
【化1】
(式中、R及びR’は、アルキル、アルコキシ、ハライド、-NO
2又は-CNからなる群から独立して選択され、ここで、前記アルキル及びアルコキシ基は、前記液晶コア構成要素を前記ポリマー構成要素に連結する連結基の部分を形成する場合に二価であり得、且つX及びYは、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=N-、-N=N-又は-C(O)O-からなる群から独立して選択される)
の1つ以上から選択さ
れ、
前記モノドメイン液晶エラストマーは、前記ポリマー構成要素の液晶メソゲン構成要素であるメソゲンモノマー、前記架橋剤構成要素の液晶メソゲン構成要素であるメソゲンモノマー、前記ポリマー構成要素の非メソゲン構成要素である非メソゲンモノマー、及び開始剤を含む混合物を重合させることによって形成され、
前記ポリマー構成要素は、アクリレートポリマーを含み、
前記メソゲンモノマーは、前記液晶コア構成要素を有するアクリレート及びジアクリレートであり、
前記非メソゲンモノマーは、中鎖(C
2
~C
12
)直鎖又は分岐アルキル基を有するアクリレートであり、
前記メソゲンモノマーと、前記非メソゲンモノマーとのモル比は、2:1~1:1である、配向ネマチックエラストマーの使用。
【請求項2】
前記オーセチック特性
を有する材料は、
ステント、バルブ、血管拡張材、人工装具材料、及び外科インプラントから選択される医療デバイス、又は
縫合糸及びアンカーから選択される医療連結手段である、請求項1に記載の配向ネマチックエラストマーの使用。
【請求項3】
前記オーセチック特性
を有する材料は
、圧電センサー若しくはアクチュエーター
である、請求項1に記載の配向ネマチックエラストマーの使用。
【請求項4】
前記オーセチック特性
を有する材料は
、複合材
料又は個人用防護衣
の強化材である、請求項1に記載の配向ネマチックエラストマーの使用。
【請求項5】
前記非メソゲン構成要素は、2-エチルヘキシルアクリレートを含む、請求項
1~4のいずれか一項に記載の配向ネマチックエラストマーの使用。
【請求項6】
前記ポリマー構成要素の
液晶メソゲン構成要
素は、6-(4-シアノ-ビフェニル-4’-イルオキシ)ヘキシルアクリレートであり、前記架橋剤構成要素は、1,4-ビス-[4-(6-アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼンであり、及び前記非メソゲン構成要素は、2-エチルヘキシルアクリレートである、請求項
1~5のいずれか一項に記載の配向ネマチックエラストマーの使用。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項で定義した配向ネマチックエラストマーを製造する方法であって、
a)配向手段を基材に適用する工程、
b)液晶エラストマー構成要素を前記基材に適用し、且つそれらに配向ネマチック相を形成させる工程、
c)前記液晶エラストマー構成要素を硬化させて配向ネマチックエラストマーを形成する工程
を含む、配向ネマチックエラストマーを製造する方法。
【請求項8】
前記配向手段は、前記基材にブラシをかけることによって加えられる配向力である、請求項
7に記載の配向ネマチックエラストマーを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向ネマチックエラストマーの使用、特にオーセチック(auxetic)(縦に引っ張ると横にも膨らむ)特性を有する材料の形成でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の材料では、材料が伸ばされる場合、材料は、同時に横断面においてより薄くなる。同様に、従来の材料が圧縮される場合、材料は、横方向に膨張する。これらの従来的に挙動する材料は、正のポアソン比を有し、この場合、ポアソン比は、弾性的に伸ばされる材料のサンプルにおける横方向測定の比例的減少対長さの比例的増加の負の比として記載される。他方では、オーセチック特性を有する材料は、負のポアソン比を有する。伸ばすと、材料は、印加力に垂直の方向の1つ又は両方でより厚くなる。オーセチック材料は、変形下でのこの異常な挙動のために特に興味が持たれる。オーセチック材料、例えばいくつかの材料及び多数の立方晶系元素金属が自然界に存在するが、合成オーセチック材料は、1980年代に開発されたにすぎない。巨視的なオーセチック挙動は、スポーツウェアから宇宙旅行までの複数の用途に利用されている。分子オーセチック材料の設計及び合成は、特に刺激的な展望がされている。しかしながら、合成分子オーセチック材料は、現在まで未だ開発されていない。
【0003】
液晶は、長距離秩序を有し、液晶にそれらの所望の特性を与える構成要素を変えることにより、結果として生じる材料の物理的特性を微調整することができる。従って、オーセチック特性を示す液晶ポリマーは、開発され得ることが示唆されてきた。しかしながら、これまで、そのような材料は、全く報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Phys.Rev.Lett.,1993,71(18),2947
【文献】J.Phys,II France,1997,7,1337
【文献】Mol.Cryst.Liq.Cryst.,1997,299,181
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人は、意外にも、オーセチック特性を有する自己組織化ネマチック材料を開発した。
第1の実施形態において、オーセチック特性を有する材料を形成するための配向ネマチックエラストマーの使用であって、配向ネマチック材料がメカニカルフレデリクス転移(MFT)を有する使用が提供される。
【0006】
意外にも、MFTを示す配向ネマチックエラストマーを形成することにより、結果として生じる材料が、オーセチック特性を有し、従って広範囲の新規用途に使用されることが分かった。材料は、オーセチック特性を有するため、それらは、改善された衝撃吸光度及びせん断性能を実証する。これらの特性は、複数の用途において有用である。例えば、航空宇宙、自動車、防護及びスポーツ用途、並びに、オーセチック特性を有する材料が使用されて生物システムが模倣され得る生物医学分野における用途において有用である。例えばステント及びバルブ並びに血管拡張材などの医療デバイスにおける、外部刺激を用いる制御された膨張及び収縮が重要である使用、並びに、人工装具材料及び外科インプラントにおける、外部圧力への反応が特に役立つ使用が予想される。材料は、例えば縫合糸及びアンカーなどの医療連結手段、又は制御された収縮若しくは膨張による活性医薬成分の制御放出にも使用され得る。
【0007】
オーセチック特性を示す材料は、圧電センサー及びアクチュエーターにおける用途、並びにミクロ及びナノ機械装置及び電気機械装置における用途も見出し得る。他の潜在的な使用は、オーセチック特性を示す材料が強化材としての機能を果たすことができる複合材料、又は、例えば衝突ヘルメット、防弾チョッキなどの個人用防護衣及び外部力に応答した膨張が明らかに望ましいスポーツ衣におけるものを含む。
【0008】
メカニカルフレデリクス転移は、エラストマー内のダイレクタ(director)が、臨界歪みで鋭く回転して、臨界伸び率で応力軸に平行な方向に向けて再配向する、配向エラストマーの変形モードと定義される。この特性を示す材料は、Mitchellら(Mitchell,G.R.,Davis,F.J.and Guo,W.,Phys.Rev.Lett.,1993,71(18),2947)及びRobertsら(Roberts,P.M.S.,Mitchell,G.R.and Davis,F.J.,J.Phys,II France,1997,7,1337及びRoberts,P.M.S.,Mitchell,G.R.,Davis,F.J.and Pople,J.A.,Mol.Cryst.Liq.Cryst.,1997,299,181)によって最初に記述された。MFTは、多くの場合、低モル質量ネマチックディスプレイデバイスにおいて起こる周知の電気(又は磁気)磁界フレデリクス転移(EFT)に類似して記述される。EFTにおいて、ダイレクタは、きちんと定められる臨界磁界(又は電圧)を越えて鋭く再配向し、磁界の振幅が増加するにつれて電場に関して一層配向することになる。EFT閾値は、理論的には不連続であるが、基材に正確に平行又は垂直に配向した理想的なLCモノドメインが実際に達成されない場合に軟化されることが知られている。それにもかかわらず、閾値は、鋭く、きちんと定められる。MFTにおいて見られるダイレクタの鋭い回転は、代替的な変形モードであるセミソフト弾性(SSE)によって変形する配向エラストマーのダイレクタ回転応答とは異なる。セミソフト弾性の場合、ダイレクタは、引張荷重曲線のプラトー様領域にわたって比較的徐々に回転する。SSE転移を実証する理論的プロットは、
図1に示される。ダイレクタは、領域IIを横切って徐々に回転する。
【0009】
メカニカルフレデリクス転移は、サンプル中の配向したダイレクタに垂直の又は垂直に近い方向に応力を加え、例えば偏光顕微鏡法を用いることにより、ダイレクタの方位を追跡することによって測定可能である。
【0010】
そのような方法は、
- 対立アクチュエーターのクランプ中にエラストマーのストリップを装着し、そのストリップを交差偏光子間に置く工程、
- 初期ダイレクタの方位に垂直の方向において、1分当たりストリップの初期長さの5%まで伸長させることによって徐々に歪みを加える工程、
- 各伸長増分において、偏光子及び分析器が、各測定間で10度だけストリップに対して回転される状態で透過光強度(偏光子、ストリップ及び分析器を透過した光の強度)の一連の測定値を取る工程、
- c、印加応力の方向に対するダイレクタの角度を求めるために、方程式
【数1】
(式中、Iは、測定強度であり、θは、偏光子と、偏光子の平面上に投射される複屈折材料の高速軸との間の角度であり、I
0、b、c及びdは、フィッティングパラメータである)
を用いて透過強度の測定値を合わせる工程
を含む。
- ダイレクタ角度と伸び率との間の関係から、エラストマーがMFTを受ける臨界伸び率を決定することができ - 臨界伸び率において、ダイレクタは、鋭く回転する。
【0011】
配向ネマチックエラストマーは、好ましくは、モノドメイン液晶エラストマーを含む。より好ましくは、配向ネマチックエラストマーは、モノドメイン液晶エラストマーである。
【0012】
「モノドメイン」とは、本明細書では、エラストマーのダイレクタの方位がサンプル中で巨視的に配向していることを意味する。サンプルにわたるモノドメイン配向は、巨視的サンプルが交差偏光子間で見られる場合にそれが一様な複屈折によって特徴付けられる偏光顕微鏡法によって例えば測定することができる。
【0013】
好ましくは、配向ネマチックエラストマーは、ポリマー構成要素と、液晶メソゲン構成要素(liquid crystal mesogen component)と、架橋剤構成要素とを含むモノドメイン液晶エラストマーであって、液晶メソゲン構成要素は、ポリマー構成要素に物理的に連結されている、モノドメイン液晶エラストマーを含む。
【0014】
好ましくは、液晶メソゲン構成要素は、フレキシブルスペーサーを介してポリマー構成要素に物理的に連結されている。
【0015】
好ましくは、フレキシブルスペーサーは、C2~C10アルキレン基、好ましくは線状C2~C10アルキレン基、より好ましくは線状C3~C7アルキレン基、最も好ましくは線状C3又はC6アルキレン基を含む。例えば、フレキシブルスペーサーは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、ノニレン又はデシレン基を含み得る。
【0016】
液晶エラストマーの液晶メソゲン構成要素は、任意の好適なネマチックメソゲンを含み得る。
【0017】
好ましくは、液晶メソゲン構成要素は、芳香環、脂肪環、多環芳香環、多環脂肪環、フェニル類、ビフェニル類、ベンゼン類及びそれらの組み合わせからなる群から選択される液晶コア構成要素を含む。
【0018】
好ましくは、液晶コア構成要素は、複数の芳香環及び/又は脂肪環を含む。
【0019】
好ましくは、液晶コア構成要素は、以下のシステム:
【化1】
(式中、R及びR’は、それぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、ハライド、-NO
2又は-CNからなる群から選択され、ここで、アルキル及びアルコキシ基は、液晶コアをポリマー構成要素に連結する連結基の部分を形成する場合に二価であり得、且つX及びYは、それぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=N-、-N=N-又は-C(O)O-からなる群から選択される)
の1つ以上から選択される。
【0020】
好ましくは、液体コア構成要素は、少なくとも2個のフェニル基を含む。
【0021】
フェニル基は、任意の好適な官能基で任意選択的に置換され得る。
【0022】
好ましくは、X若しくはYの少なくとも1つは、-C(O)O-であるか、又はX若しくはYは、存在しない。
【0023】
好ましくは、液晶コア構成要素は、4-シアノ-ビフェニル-4’-イルオキシ、4-オキシフェニル4-メトキシベンゾエート又は4-オキシフェニル4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)ベンゾエート基から選択される。
【0024】
特定の実施形態において、液晶メソゲン構成要素は、ポリマー構成要素の側鎖の部分として存在し、すなわち、液晶メソゲン構成要素は、ポリマー構成要素の主鎖から伸びるペンダント基である。
【0025】
特定の実施形態において、液晶メソゲン構成要素は、ポリマー構成要素の主鎖の部分として存在する。
【0026】
液晶メソゲン構成要素は、ポリマー構成要素の側鎖及び主鎖の両方の部分を形成し得る。
【0027】
架橋剤構成要素は、好ましくは、ポリマー構成要素と同じ官能性を有する二官能性モノマーを含む。
【0028】
好ましくは、架橋剤構成要素は、メソゲン構成要素(mesogen component)も含む。好ましくは、メソゲン構成要素は、以下のシステム:
【化2】
(式中、R及びR’は、それぞれ独立して、アルキル、アルコキシ、ハライド、-NO
2又は-CNからなる群から選択され、ここで、アルキル及びアルコキシ基は、液晶コアをポリマー構成要素に連結する連結基の部分を形成する場合に二価であり得、且つX及びYは、それぞれ独立して、-CH=CH-、-C≡C-、-CH=N-、-N=N-又は-C(O)O-から選択される)
の1つ以上から選択される液晶コア構成要素を含む。
【0029】
好ましくは、液体コア構成要素は、少なくとも3個のフェニル基を含む。好ましくは、X又はYの少なくとも1つは、-C(O)O-である。
【0030】
フェニル基は、任意の好適な官能基で任意選択的に置換され得る。好ましくは、フェニル基は、1個以上のC1~C3アルキル基、最も好ましくは1個以上のメチル基で任意選択的に置換されている。
【0031】
好ましくは、液体コア構成要素は、任意選択的に置換されたビス-オキシベンゾイルオキシベンゼン基を含む。最も好ましくは、ビス-オキシベンゾイルオキシ-2-メチルベンゼン基である。
【0032】
ポリマー構成要素は、任意の好適なポリマー構成要素であり得る。好ましくは、ポリマー構成要素は、アクリレートポリマー、ビニルポリマー、シロキサンポリマー、チオール系ポリマー、アミン系ポリマー又はエポキシド系ポリマーを含む。最も好ましくは、ポリマー構成要素は、アクリレートポリマーを含む。
【0033】
特定の実施形態において、ポリマー構成要素は、メソゲン構成要素及び非メソゲン構成要素の両方から形成される。
【0034】
好ましくは、メソゲン構成要素は、液晶コア構成要素に連結されたモノマー単位を含むメソゲンモノマーから形成される。
【0035】
非メソゲン構成要素は、Tg低下構成要素であり得る。好ましい実施形態において、本発明の第1の実施形態による使用のためのエラストマーは、室温(25℃)以下のTgを有する。
【0036】
好ましい実施形態において、Tg低下構成要素は、モノマー単位とペンダント中鎖(C2~C12)直鎖又は分岐アルキル基とを含むモノマーから形成され得る。
【0037】
特に好ましい実施形態において、ポリマー構成要素は、アクリレートポリマーを含み、及びTg低下構成要素は、エチルヘキシルアクリレートを含む。
【0038】
本発明の好ましい実施形態において、ポリマー構成要素は、ポリアクリレートを含み、液晶コア構成要素は、4-シアノ-ビフェニル-4’-イルオキシ構成要素であり、及び架橋剤構成要素は、ビス-オキシベンゾイルオキシ-2メチルベンゼン含有構成要素を含む。
【0039】
第1の実施形態による使用のためのエラストマーは、好ましくは、メソゲンモノマー、架橋構成要素、及び開始剤を含む混合物を重合させることによって形成される。混合物は、最終エラストマーの特性を変性するための、例えば最終エラストマーのTgを低下させるための非メソゲンモノマーを更に含み得る。混合物は、重合前にネマチック相範囲を広げるための非反応性のメソゲン構成要素も更に含み得る。好ましい実施形態において、架橋構成要素は、メソゲン構成要素も含む。
【0040】
好ましくは、メソゲンモノマーは、重合前のモノマー混合物の約5~50モル%、より好ましくは約10~30モル%、最も好ましくはおよそ15モル%を占める。最終エラストマーにおいて、メソゲンモノマーに由来する材料の割合は、好ましくは、約20~70モル%、最も好ましくは約30~60モル%である。
【0041】
好ましくは、架橋剤構成要素は、重合前のモノマー混合物の約1~20モル%、より好ましくは約3~10モル%、最も好ましくは約3~8モル%を占める。最終エラストマーにおいて、架橋剤構成要素に由来する材料の割合は、好ましくは、約5~20モル%、最も好ましくは約8~17モル%である。
【0042】
好ましくは、架橋剤構成要素の少なくとも10%は、メソゲン構成要素を含み、好ましくは、架橋剤構成要素の少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも95%は、メソゲン構成要素を含む。
【0043】
選択される開始剤は、使用されるポリマーに依存し、任意の好適な開始剤であり得る。しかしながら、ポリマーがポリアクリレートである場合、開始剤は、好ましくは、光開始剤である。可能な光開始剤は、当業者に周知であり、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、アルファ-ジアルコキシアセトフェノン、アルファ-ヒドロキシアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン類及びチオキサントンを含む。好ましくは、光開始剤は、メチルベンゾイルホルメートである。好ましくは、開始剤は、モノマー混合物のおよそ1.5モル%の量で存在する。
【0044】
非メソゲンモノマーがモノマー混合物中に存在する場合、非メソゲン混合物は、好ましくは、モノマー混合物の約10~40モル%、より好ましくは約15~30モル%、最も好ましくは約15~20モル%を占める。最終エラストマーにおいて、非メソゲンモノマーに由来する材料の割合は、存在する場合、好ましくは約20~60モル%、最も好ましくは約35~50モル%である。
【0045】
非反応性メソゲンがモノマー混合物中に存在する場合、非反応性メソゲンは、好ましくは、モノマー混合物の約10~70モル%、より好ましくは約20~60モル%又は30~60モル%、最も好ましくはおよそ55モル%を占める。好ましい実施形態において、非反応性メソゲンは、4-シアノ-4’-ヘキシルオキシビフェニルである。
【0046】
好ましい実施形態において、メソゲンモノマーは、6-(4-シアノ-ビフェニル-4’-イルオキシ)ヘキシルアクリレート、4-メトキシ安息香酸4-(6-アクリロイルオキシ-ヘキシルオキシ)フェニルエステル又は4-{6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ}フェニル4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)ベンゾエートであり、架橋剤構成要素は、1,4-ビス-[4-(6-アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼン又は1,4-ビス-[4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼンであり、非メソゲンモノマーは、2-エチルヘキシルアクリレートであり、存在する場合、非反応性メソゲンは、4-シアノ-4’-ヘキシルオキシビフェニルである。
【0047】
好ましい実施形態において、メソゲンモノマーは、6-(4-シアノ-ビフェニル-4’-イルオキシ)ヘキシルアクリレートであり、架橋剤構成要素は、1,4-ビス-[4-(6-アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼンであり、非メソゲンモノマーは、2-エチルヘキシルアクリレートであり、存在する場合、非反応性メソゲンは、4-シアノ-4’-ヘキシルオキシビフェニルであるか、又はメソゲンモノマーは、4-メトキシ安息香酸4-(6-アクリロイルオキシ-ヘキシルオキシ)フェニルエステル及び4-{6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ}フェニル4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)ベンゾエートであり、架橋剤構成要素は、1,4-ビス-[4-(6-アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼンであり、非メソゲンモノマーは、2-エチルヘキシルアクリレートであり、存在する場合、非反応性メソゲンは、4-シアノ-4’-ヘキシルオキシビフェニであるか、又はメソゲンモノマーは、4-メトキシ安息香酸4-(6-アクリロイルオキシ-ヘキシルオキシ)フェニルエステル及び4-{6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ}フェニル4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)ベンゾエートであり、架橋剤構成要素は、,4-ビス-[4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼンであり、非メソゲンモノマーは、2-エチルヘキシルアクリレートであり、存在する場合、非反応性メソゲンは、4-シアノ-4’-ヘキシルオキシビフェニルである。
【0048】
本発明の更なる実施形態によれば、本発明の第1の実施形態による使用のための配向ネマチックエラストマーを製造する方法であって、
a)配向手段を基材に適用する工程、
b)液晶エラストマー構成要素を基材に適用し、且つそれらに配向ネマチック相を形成させる工程、
c)液晶エラストマー構成要素を硬化させて配向ネマチックエラストマーを形成する工程
を含む方法が提供される。
【0049】
メソゲン組成物を配向させるための様々な技術が存在する。例えば、磁場の印加、機械的ブラシかけ、フロー、電場の印加、熱勾配の印加又は1つ若しくは複数の配向層の提供などの技術が合成中にモノドメインを創出するために存在する。モノマー溶液はまた、配向状態へのモノマー混合物の合成に影響を及ぼすために加熱されるか、冷却されるか、又は他の環境因子に曝され得る。
【0050】
好ましくは、配向手段は、好ましくは、静的力を基材に与えるために、基材にブラシをかけることによって加えられる配向力である。
【0051】
架橋構成要素がメソゲン構成要素を含み、従ってメソゲンモノマーとも考えられ得る場合、最終エラストマー中のメソゲンモノマー対非メソゲンモノマーの比は、好ましくは、2:1~1:1である。
【0052】
本発明の実施形態は、ここで、添付の実施例に関連して及び図面を参照することにより説明される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】SSE転移を示す材料についての伸び率対応力の理論的プロットを示す。
【
図2a】実施例1の材料の分数厚さ対伸び率及びポアソン比対伸び率のプロットを示す。ポアソン比のゼロを下回る値は、オーセチック挙動を示す。
【
図2b】実施例2の材料の分数厚さ対伸び率及びポアソン比対伸び率のプロットを示す。ポアソン比のゼロを下回る値は、オーセチック挙動を示す。
【
図2c】実施例3の材料の分数厚さ対伸び率及びポアソン比対伸び率のプロットを示す。ポアソン比のゼロを下回る値は、オーセチック挙動を示す。
【
図2d】実施例4の材料の分数厚さ対伸び率及びポアソン比対伸び率のプロットを示す。ポアソン比のゼロを下回る値は、オーセチック挙動を示す。
【
図3a】実施例1の材料についての引張荷重曲線及びダイレクタの角度応答対伸び率のプロットを示す。
【
図3b】実施例2の材料についての引張荷重曲線及びダイレクタの角度応答対伸び率のプロットを示す。
【
図3c】実施例3の材料についての引張荷重曲線及びダイレクタの角度応答対伸び率のプロットを示す。
【
図3d】実施例4の材料についての引張荷重曲線及びダイレクタの角度応答対伸び率のプロットを示す。
【
図4】様々な温度及び様々な伸び率での実施例1の材料についての分数変化率対歪みのプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
エラストマー合成
本発明による使用のための配向ネマチックエラストマーは、以下の物質:
・2-エチルヘキシルアクリレート(EHA)、
・6-(4-シアノ-ビフェニル-4’-イルオキシ)ヘキシルアクリレート(A6OCB)、
・4-メトキシ安息香酸4-(6-アクリロイルオキシ-ヘキシルオキシ)フェニルエステル(M1)、
・4-{6-(アクリロイルオキシ)ヘキシルオキシ}フェニル4-(トランス-4-プロピルシクロヘキシル)ベンゾエート(M2)、
・1,4-ビス-[4-(6-アクリロイルオキシヘキシルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼン(RM82)、
・1,4-ビス-[4-(3-アクリロイルオキシプロピルオキシ)ベンゾイルオキシ]-2-メチルベンゼン(RM257)、
・4-シアノ-4’-ヘキシルオキシビフェニル(6OCB)、及び
・メチルベンゾイルホルメート(MBF)
を使用して以下の通り合成した。
【0055】
本発明による使用のためのエラストマーは、以下の出発組成物を使用して調製した。
【0056】
【0057】
0.3mgの精度の天秤を使用して、乾燥物質を4mlのサンプルバイアルに量り取った。次に、混合物を100℃に加熱し、60rpmで5分間撹拌した。液体物質を添加し、バイアルを、40℃に保持された別個の撹拌プレート上に置き、更なる5分間60rpmで撹拌した。
【0058】
次に混合物を、前に調製されたセル中に毛管現象によって40℃において同位体相で満たし、およそ半時間放置して周囲温度まで冷やし、ネマチック相がラビング方向との配向によって形成されることを可能にする。配向させると直ちに、セルを2時間にわたり低強度のUV蛍光光源(2.5mWcm-2の強度)下に置いて硬化させた。セルから分離すると直ちに、フィルムを、ジクロロメタン(DCM)中において、DCMを約30%濃度まで段階的にゆっくり添加することによって洗浄した。全ての廃棄物が除去されることを確実にするために溶媒を数回交換し、その後、メタノールを段階的に添加することによってLCEフィルムを解膨潤させた。フィルムを試験前に一晩十分に乾燥させた。
【0059】
4つの材料のオーセチック特性を、材料が負のポアソン比を有することを示すそれぞれ
図2a、2b、2c及び2dにおいて実証する。
図2aにおいておよそ1.8、
図2bにおいておよそ1.5、
図2cにおいておよそ1.6、
図2dにおいておよそ1.6の伸び率を超えて、材料の分数厚さは、伸び率の増加とともに増加する。
図3a、3b、3c及び3dは、材料がそれぞれMFTを有することを実証している。
図3aにおいて、ダイレクタの角度の鋭い変化がおよそ2.1の歪みにおいて見られる。
図3bにおいて、ダイレクタの角度の鋭い変化がおよそ1.9のx歪みにおいて見られる。
図3cにおいて、ダイレクタの角度の鋭い変化がおよそ1.9のx歪みにおいて見られる。
図3dにおいて、ダイレクタの角度の鋭い変化がおよそ1.9のx歪みにおいて見られる。