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  • 特許-殺菌方法および装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】殺菌方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/22 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
A23L3/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020522737
(86)(22)【出願日】2018-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 ES2018070674
(87)【国際公開番号】W WO2019077186
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-28
(31)【優先権主張番号】P201731226
(32)【優先日】2017-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】520134108
【氏名又は名称】インカス・テクノロジー・エス・エル
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フエンテス・リロ、イスラエル
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-135273(JP,A)
【文献】特開平03-083567(JP,A)
【文献】特開平03-261478(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033877(WO,A1)
【文献】特表2002-528101(JP,A)
【文献】中国実用新案第205305913(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00- 3/3598
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)計量ユニットから生産物を連続的に受け取る入口要素を通じて円筒体に食材を導入する工程と、
(b)単位時間当たりに入る前記生産物の重量を記録および制御する工程と、
(c)モータ駆動のスクリューによって、前記円筒体を通じて前記食材を搬送する工程と、
(d)複数の注入点の第1セットから構成され、当該複数の注入点はそれらが形成する半径方向の円弧の100°から140°の間で離れて互いに対向して配置されている注入システムによって、前記円筒体の第1注入領域に飽和蒸気を注入する工程と、
(e)複数の注入点の第2セットから構成され、当該複数の注入点はそれらが形成する半径方向の円弧の100°から140°の間で離れて互いに対向して配置されている第2注入システムによって、前記円筒体の第2注入領域に飽和蒸気を注入する工程と、
(f)複数の注入点の第3セットから構成され、当該複数の注入点はそれらが形成する半径方向の円弧の100°から140°の間で離れて互いに対向して配置されている第3注入システムによって、前記円筒体の第3注入領域に飽和蒸気を注入する工程と、
(g)前記円筒体の入口と出口の温度を記録および制御し、前記注入領域に注入される蒸気の前記温度と量を記録および制御し、前記円筒体の全体にわたり内部の温度が85℃から100℃の間となるように搬送手段の速度を記録および制御する工程と、
(h)殺菌された前記生産物を収集する工程と、
を備える食品殺菌方法。
【請求項2】
前記食材がナッツまたは種である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
内部で食材が殺菌される円筒体(1)を備え、前記円筒体は、供給要素(2)と、モータ(3)によって駆動される、前記円筒体内部の前記食材を搬送するためのスクリューコンベアと、少なくとも3つの注入システム(4)と、注入領域に注入される蒸気の温度および量を記録し、制御するための記録および制御システムとを有し、前記注入システムは、前記円筒体の高さと平行に位置する配管(4.1)によって構成され、複数組の蒸気注入器(4.2)が前記配管の両側に現れ、前記蒸気注入器はそれらが形成する半径方向の円弧の100°から140°の間で離れて互いに向き合い
前記記録および制御システムは、前記円筒体の入口と出口の温度を記録および制御し、前記注入領域に注入される蒸気の前記温度と量を記録および制御し、前記円筒体の全体にわたり内部の温度が85℃から100℃の間となるように前記スクリューコンベアの速度を記録および制御する
ことを特徴とする殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、好ましくはナッツ、特にアーモンドの殺菌の装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の安全および衛生は、今日の市場における優先事項であり、異なる国々の農業部門と共に、当該産業は、食品殺菌のプログラムを発展させる。これらのプログラムの目的は、消費者のために安全な食品生産物を製造することや、例えばバクテリアが存在するこれらの食品を口にすることで病気にかかるという潜在的なリスクレベルから消費者を解放することである。これらのリスクの解決策は、つねに消費者がそれぞれの食品生産物に期待する品質を尊重しなければならない。
【0003】
これらの衛生問題の例としては、アーモンドを摂取したためにアメリカ合衆国で起こった2001年、2004年のサルモネラ菌の発生がある。それ以後、アメリカ合衆国内の市販のアーモンドは、アーモンドが従来の方式か、有機的に育てられたかにかかわらず、殺菌されなければならない。
【0004】
食品に存在する可能性のあるバクテリアの破壊を可能にする種々の方法がある。これらの方法には、オイルロースト、ドライロースト、ブランチング、蒸気工程、酸化プロピレン(PPO)を用いた工程が含まれる。PPO処理は、処理後に迅速に酸化プロピレンを散らす表面処理である。潜在的な汚染の減少に大変効果的であって、食品の栄養や知覚の特性を変えない。この工程は、有機食品には使用することができない。
【0005】
食品の殺菌方法を記述する特許文献として、スペイン国特許出願公開第2382352号明細書のように、殺菌や食品の一部の表面滅菌のための方法がある。この方法では、第1段階で、食品生産物は予熱され、処理は、空気のない多湿雰囲気内で実行される。殺菌は、減圧下で55℃から99℃の間の温度で実行されるか、より高い滅菌圧力下で100℃から140℃の間の温度での滅菌である。蒸気は、単一の下方点を通じて導入されるため、全方法を通じて、蒸気を制御することは困難である。
【0006】
他の例として、公開番号が国際公開第WO2004/105518号の国際特許出願は、アーモンドの外表面の温度を71℃よりも上昇させるために剥いた生のアーモンドを4秒間隔で飽和蒸気を通って移動させる、剥きアーモンドを殺菌するための方法、装置を記述する。その殺菌されたアーモンドは、その後、包装前に2秒間乾燥空気の蒸気によって乾燥される。前記方法が実行される前記装置は、アーモンドが流れ、前記蒸気の流れに前記表面の大部分がさらされることを意図した一種の内部階段を含む。この出願の前記方法や前記装置において、水蒸気のための入り口はたった1か所であり、そのため、すべてのアーモンドの表面全体が、同じ温度条件に到達することは困難である。
【0007】
食品の殺菌工程において、温度と湿度の条件を前記方法を通じて制御することはとても重要であり、もし、前記生産物が水を吸収しすぎると、前記生産物の官能品質が失われ、水の存在を原因とする新たな病原体が発生することで保管に関し問題がある可能性がある。その次の過剰な乾燥工程でも、前記生産物が損傷する可能性がある。
【0008】
結果として、全工程間で物理的な条件を制御可能な装置、殺菌方法が必要である。
【発明の説明】
【0009】
この殺菌方法は、食品生産物、好ましくはナッツ、または種から、大腸菌、サルモネラ菌、リステリア、ウイルスのような可能性のある病原体はもちろん、昆虫、かび、酵母も除去する。前記方法は、連続的な方法である。
【0010】
本発明において、前記方法のパラメータは、殺菌を実行するために必要な蒸気の最小量が使用されるように絶えず監視され、したがって、官能特性を維持することも可能である。前記方法は、完全に自動化され、汚染のリスクを減少させ、さらにエネルギーを多く消費することなく使用が容易である。
【0011】
それゆえ、本発明は、
(a)計量ユニットから生産物を連続的に受け取る入口要素を通じて長尺体に食材を導入する工程と、
(b)入る前記生産物の単位時間当たりの重量を記録および制御する工程と、
(c)モータ駆動の搬送手段によって、前記長尺体を通じて前記食材を搬送する工程と、
(d)複数の注入点の第1セットから構成される注入システムによって、前記長尺体の第1注入領域に飽和蒸気を注入する工程と、
(e)複数の注入点の第2セットから構成される第2注入システムによって、前記長尺体の第2注入領域に飽和蒸気を注入する工程と、
(f)複数の注入点の第3セットから構成される第3注入システムによって、前記長尺体の第3注入領域に飽和蒸気を注入する工程と、
(g)前記長尺体の前記入口と出口の温度を記録および制御し、前記注入領域に注入される蒸気の前記温度と量を記録および制御し、前記長尺体の全体にわたり内部温度が85℃から100℃の間となるように前記搬送手段の速度を記録および制御する工程と、
(h)殺菌された生産物を収集する工程と、
を備える食品生産物の殺菌方法に関する。
【0012】
本発明において、飽和蒸気とは、現在の圧力における沸騰温度と等しい温度の蒸気であると理解される。
【0013】
本発明において、殺菌とは、公衆衛生に重要な多くの微生物を貯蔵や流通の通常の条件下で公衆衛生にリスクが存在しないレベルに減少するために役立つ、食品に適用される処理であると理解される。
【0014】
前記入口要素は、食品生産物の入口流量の変動がないことを確実にするため、計量ユニットから前記生産物を連続的に受け取る。
【0015】
本発明において、入る生産物の時間当たりの重量に加え、前記長尺体の前記内部温度が殺菌を起こすために必要な時間の間に85℃から100℃の間に温度が到達しない場合、前記搬送手段の速度を自動で調整することができるようにするために、前記長尺体に沿った温度と前記搬送手段の速度の両方が制御される。制御段階の後に注入される蒸気量は、配管の内部温度が完全に安定しているかによって変化してもよい。
【0016】
本発明の第2態様は、食品生産物が殺菌される長尺体を備える殺菌装置に関し、前記長尺体は、供給要素と、モータによって駆動される前記長尺体内部の前記食品生産物を搬送する手段と、少なくとも3つの注入システムと、注入領域における記録および制御システムとを有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
提示されているもののよりよい理解のためにいくつかの図面が含まれ、それらには模式的かつ限定されない例として、実施形態の実用例が表わされる。
図1図1は、殺菌機の斜視図である。
【発明の詳細な説明】
【0018】
本発明の特有の実施形態において、病原体は、4つの対数ユニット(logarithmic units)によって減少させられる。具体的には、5つの対数ユニット(logarithmic units)によって病原体が減少する。
【0019】
上述のとおり、本発明の第2態様は、食品生産物が殺菌される長尺体(1)を備える殺菌装置に関し、前記長尺体は、供給要素(2)と、モータ(3)によって駆動する前記長尺体内部の前記食品生産物を搬送する手段と、少なくとも3つの注入システム(4)と、注入領域における記録および制御システムとを有している。
【0020】
好ましくは、前記食品生産物は、ナッツや種である。好ましくは、前記ナッツは、アーモンドである。
【0021】
好ましくは、前記長尺体は、円筒体(1)である。好ましくは、前記供給要素は、ホッパー(2)である。好ましくは、前記搬送要素は、モータ駆動のスクリューコンベア(3)である。
【0022】
好ましくは、前記注入システムは、円筒の高さと平行に配置される配管(4.1)から構成される。好ましくは、複数組の蒸気注入器(4.2)が100°から140°の間で離れて、互いに対向するように配置され、前記配管の両側に現れる。
【0023】
特に、注入システムの数は、4つである。
【0024】
特に、前記円筒体には、内部の洗浄のためのボールバルブを有する水の入口配管が出ており、好ましくは、入口配管は生産物の出口領域に配置される。特に、前記円筒体は、水や固体の排出のための排出路を有する。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
(a)計量ユニットから生産物を連続的に受け取る入口要素を通じて円筒体に食材を導入する工程と、
(b)単位時間当たりに入る前記生産物の重量を記録および制御する工程と、
(c)モータ駆動のスクリューによって、前記円筒体を通じて前記食材を搬送する工程と、
(d)複数の注入点の第1セットから構成され、当該複数の注入点はそれらが形成する半径方向の円弧の100°から140°の間で離れて互いに対向して配置されている注入システムによって、前記円筒体の第1注入領域に飽和蒸気を注入する工程と、
(e)複数の注入点の第2セットから構成され、当該複数の注入点はそれらが形成する半径方向の円弧の100°から140°の間で離れて互いに対向して配置されている第2注入システムによって、前記円筒体の第2注入領域に飽和蒸気を注入する工程と、
(f)複数の注入点の第3セットから構成され、当該複数の注入点はそれらが形成する半径方向の円弧の100°から140°の間で離れて互いに対向して配置されている第3注入システムによって、前記円筒体の第3注入領域に飽和蒸気を注入する工程と、
(g)前記円筒体の入口と出口の温度を記録および制御し、前記注入領域に注入される蒸気の前記温度と量を記録および制御し、前記円筒体の全体にわたり内部の温度が85℃から100℃の間となるように搬送手段の速度を記録および制御する工程と、
(h)殺菌された前記生産物を収集する工程と、
を備える食品殺菌方法。
[2]
前記食材がナッツまたは種である、
[1]に記載の方法。
[3]
内部で食材が殺菌される円筒体(1)を備え、前記円筒体は、供給要素(2)と、モータ(3)によって駆動される、前記円筒体内部の前記食材を搬送するためのスクリューコンベアと、少なくとも3つの注入システム(4)と、注入領域における記録および制御システムとを有し、前記注入システムは、前記円筒体の高さと平行に位置する配管(4.1)によって構成され、複数組の蒸気注入器(4.2)が前記配管の両側に現れ、前記蒸気注入器はそれらが形成する半径方向の円弧の100°から140°の間で離れて互いに向き合う、
ことを特徴とする殺菌装置。
図1