(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】閉塞カフ、及びそのようなカフを備える埋め込み可能な閉塞システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/12 20060101AFI20240408BHJP
A61F 2/08 20060101ALI20240408BHJP
A61F 2/48 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61B17/12
A61F2/08
A61F2/48
(21)【出願番号】P 2020529201
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 FR2018052985
(87)【国際公開番号】W WO2019106274
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-07-14
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514211596
【氏名又は名称】ユロマン
【氏名又は名称原語表記】UROMEMS
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】ハミド、ラムラウイ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー、マスリ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0230904(US,A1)
【文献】米国特許第04592339(US,A)
【文献】特開2008-296013(JP,A)
【文献】特開2014-039854(JP,A)
【文献】特表2009-540964(JP,A)
【文献】特表2011-518617(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0378749(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0178697(US,A1)
【文献】国際公開第2013/165563(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12 - 17/138
A61F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプを備えた埋め込み可能なハウジングと、身体構造上の管(2)を選択的に閉塞するための閉塞カフ(1)と、を備える埋め込み可能な閉塞システムであって、
前記閉塞カフ(1)は、
-前記身体構造上の管(2)を取り囲むのに適したバンド(10)であって、所定の長さ(L10)に亘って巻回された前記バンド自体を保持するのに適した閉鎖装置を設けられたバンド(10)と、
-前記バンド(10)の内面に配置された膨張可能なタンク(11)と、
を備え、
前記膨張可能なタンク(11)は前記バンド(10)の前記長さ(L10)の一部(L11)のみに亘って延び、前記長さ(L10)の他の一部(L13)は前記バンドの自由内側表面(13)を規定し、前記自由内側表面(13)は前記身体構造上の管に対する当接ゾーンを形成するように構成され、これにより、前記バンド(10)自体が前記閉鎖装置により巻回された状態にあるとき、前記膨張可能なタンク(11)は前記バンドの前記自由内側表面(13)に対向し、
前記膨張可能なタンク(11)は、前記膨張可能なタンクの流体の容量を変化させるべく前記ポンプに流体連結し、
前記タンク(11)とチューブ(3)との流体連結を確保するように前記バンドの一端部に配置されたコネクタ(12)を更に備え、
前記閉鎖装置は、前記バンド(10)の
、前記コネクタ(12)が配置されている側とは反対側の一端部に形成された開口(14)であって、巻回された前記バンド自体を保持するように前記コネクタ(12)の周囲に係合可能である開口(14)を備える、埋め込み可能な閉塞システム。
【請求項2】
前記バンド自体が前記身体構造上の管(2)の周囲に巻回され、且つ前記タンク(11)が膨張しているとき、前記タンク(11)が前記身体構造上の管(2)の押圧力を前記バンドの前記自由
内側表面(13)に対して及ぼしつつ、前記身体構造上の管が前記タンク(11)の壁と前記バンドの前記自由
内側表面(13)との間で圧縮されるように、前記タンク(11)の前記長さ(L11)が選択される、請求項1に記載の埋め込み可能な閉塞システム。
【請求項3】
前記膨張可能なタンク(11)及び前記バンドの前記自由内側表面(13)は、前記バンドが前記身体構造上の管(2)の周囲に巻回されたとき、前記身体構造上の管と直接接触するように構成される、請求項1又は2に記載の埋め込み可能な閉塞システム。
【請求項4】
前記膨張可能なタンク(11)は、前記バンドの前記長さ(L10)の75%未満の長さ(L11)に亘って延びる、請求項1乃至3の一項に記載の埋め込み可能な閉塞システム。
【請求項5】
前記バンドの前記長さは、30乃至110mmに含まれる、請求項1乃至4の一項に記載の埋め込み可能な閉塞システム。
【請求項6】
前記バンド(10)は、生体適合性エラストマーで被覆された生地から形成される、請求項1乃至5の一項に記載の埋め込み可能な閉塞システム。
【請求項7】
前記タンク(11)は、生体適合性エラストマーから作製される、請求項1乃至6の一項に記載の埋め込み可能な閉塞システム。
【請求項8】
前記生体適合性エラストマーはシリコーンである、請求項6又は7に記載の埋め込み可能な閉塞システム。
【請求項9】
前記閉塞カフは、尿道又は膀胱頸部の周囲に埋め込まれる、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の埋め込み可能な閉塞システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿道又は膀胱頸部のような身体構造上の管を選択的に閉塞することを意図した閉塞カフ、並びにそのようなカフを備える埋め込み可能な(implantable)閉塞システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、(人工尿道又は肛門括約筋の場合)失禁を改善する、又は(胃バンドの場合)胃の内部への食物の摂取を制限するように、身体構造上の管を選択的に閉塞することを意図した、埋め込み可能な閉塞システムが存在する。身体構造上の管の閉塞は、該管の周囲に巻かれたカフによって及ぼされる圧迫によってもたらされる。
【0003】
本明細書は、カフの中でも流体技術に基づくカフ(膨張可能なタンクであって、身体構造上の管に及ぼされる圧迫に応じて該タンクを選択的に充填したり空にしたりすることを可能にする流体回路に結合されたタンクを備えるカフ)に注目する。
【0004】
閉塞システムの中には、手動、すなわち使用者(例えば患者自身)がカフによって加えられる圧迫を制御するものが存在する。他に自動のシステムも存在する。すなわち、このようなシステムは、単数又は複数のセンサと、アクチュエータと、アクチュエータを制御して、使用者が介入することを必要とせずに、カフによって身体構造上の管の特定の圧迫を課す制御ユニットと、を備える。
【0005】
国際公開第2016/083428号の文献には、自動埋め込み可能な閉塞システムが記載されている。このシステムは、
-容量が可変(可変容量)の流体を収容する膨張可能な閉塞カフであって、閉塞すべき生来の管(natural duct)の少なくとも一部を取り囲むことを意図した閉塞カフと、
-流体で充填された可変容量の容器であって、固定部と可動部とを備える容器と、
-容器と閉塞カフとの間の流体連結部と、
を備える流体回路を備えている。
【0006】
更に、このシステムはアクチュエータを備えている。アクチュエータは、容器の可動部に機械的に結合されることにより、前記可動部を固定部に対して直線的に移動させて容器の容量を調整する。
【0007】
アクチュエータ及び可変容量の容器は、気体を収容した漏れ防止ハウジング内に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1A及び1Bは、このシステムに使用され得る閉塞カフ1’であって、それぞれ、(埋め込み前の)自由状態にある閉塞カフ1’、及び閉塞すべき身体構造上の管2の周囲に埋め込まれた閉塞カフ1’を示している。
【0009】
前記カフは、前記身体構造上の管を取り囲むのに適したバンド10と、バンド10の1つの面に実質的にその全長に亘って配置された膨張可能なタンク11’と、を備えている。膨張可能なタンク11は、その端部の1つに、タンク11の内部と容器に接続されたチューブ3との流体連結を確保し得るコネクタ12を備えている。
【0010】
バンドは、前記コネクタ12と反対側のその端部に、長方形の開口14を有している。開口14は、身体構造上の管2に巻回されたカフを適所に保持するように、コネクタ12に係合することが意図されている。
【0011】
本明細書において、カフの「長さ」とは、前記カフが閉鎖状態にあるときのカフの内周長さを意味すると理解される。この長さは、
図2AにおいてL
10として表示されている。この長さは、カフの閉鎖装置に依存するため、通常はバンドの全長より短い。
【0012】
対象となる用途及び患者に応じて、異なる長さを有する複数のカフが存在する。
【0013】
閉塞カフの長さは、外科医によって、カフが計画された位置における身体構造上の管の周長に応じて選択される。
【0014】
人工尿道括約筋の場合、カフは通常、女性において、大きな周長を有する膀胱頸部の周囲に埋め込まれる。典型的に、このような用途のカフの長さは、10センチメートル前後である。
【0015】
しかしながら、このような寸法のカフの使用により、システムの埋め込み及び埋め込みの手術において多くの問題が生じる。
【0016】
上述のカフの第1の欠点は、かさ張ることである。更に、上述の、女性の膀胱頸部の周囲のカフの埋め込みは、膀胱頸部の周囲におけるカフを挿入する空間が小さいために、難しい。更に、カフの位置が膣壁に非常に近い。このため、外科医は、埋め込みに際して膣壁に穴を開けないよう注意しなければならない。
【0017】
その一方で、カフの容量は重要である。流体の容器は、カフによる身体構造上の管に対する十分な圧迫を提供するような寸法を有していなければならない。これは、上述の容器を収容するハウジングが、よりかさ張るということを意味する。
【0018】
更に、容器の容量が大幅に変化することにより、アクチュエータが同様にハウジングに配置される場合、アクチュエータに給電するエネルギー源の自律性が減少することとなる。
【0019】
このため、大きな寸法のカフを使用することにより、埋め込み手術がますます複雑になり、埋め込み可能なハウジングの容量が増大し、且つシステムの自律性が減少するということが同時にもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、本発明の目的は、上述の問題を引き起こすことなしに、大きな周長を有する身体構造上の管の周囲に埋め込むことができる閉塞カフを実現することである。
【0021】
この目的のために、本発明は、身体構造上の管を選択的に閉塞するための閉塞カフであって、
-前記身体構造上の管を取り囲むのに適したバンドであって、所定の長さに亘って巻回された前記バンド自体を保持するのに適した閉鎖装置を設けられたバンドと、
-前記バンドの内面に配置された膨張可能なタンクと、
を備えるカフを提案する。
【0022】
前記膨張可能なタンクは前記バンドの前記長さの一部のみに亘って延び、前記長さの他の一部は前記バンドの自由内側表面を規定し、前記自由内側表面は前記身体構造上の管に対する当接ゾーンを形成するように構成され、これにより、前記バンド自体が前記閉鎖装置により巻回された状態にあるとき、前記膨張可能なタンクは前記バンドの前記自由内側表面に対向することを、前記カフは特徴とする。
【0023】
その一般的な意味によれば、「自由(free)」という用語は、本明細書において、バンドの内面が、バンドと身体構造上の管との間に介在し得るいずれの追加要素も支持しないことを意味する。
【0024】
本明細書において、「内側/内」という用語は、カフが閉鎖状態にあるときに、身体構造上の管と直接接触することが意図されているカフの面を指す。「外側/外」という用語は、反対側の面を指す。
【0025】
特に有利な態様において、バンド自体が身体構造上の管の周囲に巻回され、且つタンクが膨張しているとき、タンクが身体構造上の管の押圧力をバンドの前記自由表面に対して及ぼしつつ、身体構造上の管がタンクの壁とバンドの自由表面との間で圧縮されるように、タンクの長さが選択される。
【0026】
好適には、膨張可能なタンクは、バンドの長さの75%以下の長さに亘って延びる。
【0027】
バンドの長さは、30乃至110mm、好適には70乃至110mmに含まれ得る。
【0028】
一実施形態によれば、バンドは生体適合性エラストマーで被覆された生地から形成される。膨張可能なタンクは、生体適合性エラストマーから作製され得る。一実施形態によれば、前記生体適合性エラストマーは、シリコーンである。
【0029】
有利には、カフは、タンクとチューブとの流体連結を確保するようにバンドの一端部に配置されたコネクタを更に備える。
【0030】
一実施形態によれば、閉鎖装置は、バンドの一端部に形成された開口であって、巻回されたバンド自体を保持するようにコネクタの周囲に係合可能である開口を備える。
【0031】
或いは、閉鎖装置は、バンドの一端部において歯を設けられた表面と、取付装置と、を備える。取付装置は、端部が挿入されるスロットであって、端部を引き抜く力に対して歯をブロックするように構成されたスロットを備える。好適には、これらの歯は、バンドの外面に配置される。
【0032】
また、本発明は、上述のカフと、膨張可能なタンクの容量を変化させるべくカフと流体連結するポンプを備えた埋め込み可能なハウジングと、を備える埋め込み可能な閉塞システムに関する。
【0033】
本発明の特定の用途によれば、閉塞システムは、人工尿道括約筋である。
【0034】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照してなされる以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】例えば埋め込みを目的として外科医に供給される、既知のタイプの閉塞カフの概略図。
【
図1B】身体構造上の管の周囲に埋め込んだ後の
図1Aのカフの概略図(前記管に圧縮を及ぼさない状態が表されている)。
【
図2A】例えば埋め込みを目的として外科医に供給される、本発明の一実施形態による閉塞カフの概略図。
【
図2B】身体構造上の管の周囲に埋め込んだ後の
図2Aのカフの概略図(前記管に圧縮を及ぼさない状態が表されている)。
【
図2C】身体構造上の管の周囲に埋め込んだ後の
図2Aのカフであって、前記管を閉塞する構成におけるカフの概略図。
【
図3】閉塞カフを閉鎖するためのシステムの代替形態を示す図。
【
図4A】
図1Aに示すようなカフにより及ぼされる圧縮により膀胱頸部に生成される圧縮応力の有限要素によるシミュレーションを示す図。
【
図4B】本発明の一実施形態によるカフにより及ぼされる圧縮により膀胱頸部に生成される圧縮応力の有限要素によるシミュレーションを示す図。
【
図5】本発明の一実施形態によるカフを備える埋め込み可能な閉塞システムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面を通じて同一の参照記号は、同一又は少なくとも同じ機能を果たす要素を示す。
【0037】
既知の閉塞カフと比較して、本発明は膨張可能なタンクの長さを短くすることを提案する。
【0038】
図2A-2Cは、本発明の一実施形態によるカフ1を、それぞれ自由状態、管に圧縮を及ぼしていない閉鎖状態、及び前記管を閉塞する構成で概略的に示している。
【0039】
膨張可能なタンク11は、バンドの長さL10の75%未満、好適にはバンドの長さの60%未満、より好適な態様ではバンドの長さの50%未満に亘って延びている。膨張可能なタンクの長さは、L11として表示されている。
【0040】
したがって、例えば長さが10cmのカフの場合、膨張可能なタンクの長さは、4.5cmである。
【0041】
換言すれば、バンド10の内面は、タンク11が配置されている長さL11を有する領域と、長さL13を有する領域と、に分けられる。長さL13を有する領域は、自由表面を形成する、すなわちタンクが存在していない領域であって、身体構造上の管に対する当接ゾーンを構成している領域である。
【0042】
したがって、カフが閉鎖状態にある場合、タンク11の壁は、バンドの自由表面13に面している(
図2Bに示すように、身体構造上の管2は、これら2つの表面の間に配置されている)。
【0043】
これに対して、
図1A及び1Bに示すような既知のタイプのカフにおいて、カフが閉鎖しているとき、タンクの2つの端部が接触している。特にタンクの膨張時にその容量が変化することを考慮してこれら2つの端部の間にわずかな遊びが存在するとしても、バンドの対応するゾーンは、身体構造上の管に対する当接ゾーンを構成していない。
【0044】
本発明に戻ると、タンク11が膨張すると、タンク11は、身体構造上の管をバンドの自由表面13に対して押圧することにより、徐々に管を閉塞する(
図2C参照)。したがって、身体構造上の管は、一方でタンク11と、他方で自由表面13との間で圧縮される。
【0045】
有利には、異なる長さを有する多数のカフが外科医に入手可能であり、それらの中から外科医は患者及び埋め込みが計画された箇所に最適なものを選択する。多数のカフにおいて、バンドの長さは、通常3乃至11cmに含まれる。
【0046】
短い長さのカフ(すなわち、典型的には7cm未満)の場合、膨張可能なタンクは、カフの全長に亘って配置され得る。
【0047】
カフの所定の長さ(例えば7cm)から、膨張可能なタンクの長さ(例えば、4.5cm前後)が決められ得る。したがって、全てのカフの寸法に同じポンプを使用することが可能であり、これによりハウジングの基準が増加することが回避される。
【0048】
このようなカフは、以下の態様において製造され得る。
【0049】
一方で、バンドを、生体適合性エラストマーで被覆された生地から形成する。有利には、生地は特にDACRON(登録商標)の名称で知られている生体適合性ポリエステル布地であり、エラストマーはシリコーンである。バンドは、例えば水ジェットによって、大きい寸法のシートから切断することができる。このようにして形成されたバンドは、滑らかであり、身体構造上の組織に定着せず(したがって、カフの外植の可能性を許容し)、伸縮しないという利点を有する。
【0050】
他方で、タンクを、生体適合性エラストマー、例えばシリコーンから、好適にはディッピング法により作製する。この目的は、完璧な平滑表面状態を確保して身体構造上の管に柔軟に接触することを確保することである。
【0051】
タンクを、バンドに接着する。
【0052】
一方、コネクタを鋳型成形し、タンクの反対側のバンドの面に接着するとともに、前記バンドを貫通させる。こうして、タンクと、コネクタにスリーブ接続されたチューブとの間の流体連結が確保される。
【0053】
図2Aに示す一実施形態によれば、カフ1の閉鎖装置は、コネクタ12に係合することが意図された長方形の開口14を備えている。
【0054】
図3に示す別の実施形態によれば、バンドは、第1端部に複数の歯15を有するとともに、その第2端部に、好適にはコネクタ12の位置に、取付装置16を有している。取付装置16は、第1端部を挿入可能とするように適合されたスロットであって、バンド10の挿入方向における変位のみを許容する保持システムを設けられたスロットを備えている(歯は、バンドをスロットから引き出そうとする牽引動作に対抗する)。有利には、管の圧縮された部分を損なうリスクを避けるように、歯15はバンド10の外面にある。歯は、バンドの一体部分として形成してもよいし、鋳型成形により製造した後にバンドに接着してもよい。
【0055】
当然ながら、当業者は、本発明の範囲を超えることなく、他の任意の閉鎖装置を選択することができる。
【0056】
膨張可能なタンクの長さを短くすることには、主に3つの有利な効果がある。
【0057】
第1の効果は、カフがかさ張らないことである。これにより、使用可能なスペースが限られているゾーンへの埋め込みが容易になる。埋め込み前の収縮状態において、カフは薄い厚さのバンドの形状にあるため、国際公開2013/165563号の文書に記載のカフとは異なり、カフを膀胱頸部の周囲の切開ゾーンに比較的簡単に挿入することができる。国際公開2013/165563号のカフは、バンドの内面と一体のアンビルと、タンクと一体のハンマーとの協働を利用して、身体構造上の管を圧縮する。アンビル及びハンマーは比較的剛性を有するため、埋め込みゾーンにおいて無視できないほどかさ張る。これに対し、本発明においては、
図2B及び2Cに明瞭に示すように、カフが身体構造上の管の周囲に埋め込まれると、前記管は、可撓性部品であるタンク11及びバンドの自由表面13と直接接触する。これにより、カフの厚さを最小にすることができるとともに、身体組織を損なうリスクを低減することができる。
【0058】
本発明の第2の有利な効果は、タンクを膨張させて身体構造上の管を閉塞するために必要な流体の体積が減少することである。
【0059】
この結果、ハウジングに収容された容量が可変(可変容量)の容器の容量は限られたままであり、エネルギー源の自律性に不利益が生じない。
【0060】
第3の効果は、身体構造上の管に対するカフの動作モードを変更できることである。
【0061】
図4Aは、120cm H
2Oのカフ内の流体圧力について、
図1Aに示すようなカフにより膀胱頸部に加えられた圧縮応力の有限要素によるシミュレーションの結果を示す。タンクの膨張と組み合わされたカフの湾曲により、タンク11’が4つのポケットに分割され、各ポケットはカフの内周のおよそ4分の1に亘って延びているという結果がもたらされていることが観察できる。しかし、膀胱頸部は、2つの隣接するポケット同士の間に挟まれ、このようなピンチゾーンPにおいて、頸部の残りの部分が受ける応力をはるかに超える局所的な機械的応力を受けている。このような局所的な応力は、膀胱頸部にダメージを与えやすい、例えば萎縮させやすい。
【0062】
図4A及び4Bにおいて、濃い色で表された応力レベルは、各シミュレーションの右側に示すカラースケールの高い応力に対応している。
【0063】
図4Bは、120cm H
2Oのカフ内の流体圧力について、
図2Aに示す本発明の一実施形態によるカフにより膀胱頸部に加えられた圧縮応力の有限要素によるシミュレーションの結果を示す。膨張可能なタンク11の長さが短いことにより、膨張頸部のピンチゾーンがなくなることで膀胱頸部が局所的に受ける過剰な圧力がなくなるという結果がもたらされていることが観察できる。したがって、膀胱頸部はダメージを受けにくくなる。
【0064】
図5は、ポンプを備えた埋め込み可能なハウジングと、当該ポンプに流体連結する上述のような閉塞カフと、を備える埋め込み可能な閉塞システムを示す。ポンプは、国際公開2016/083428号の文書に記載の装置のうちの1つであると有利である。
【0065】
ハウジング4は、可変容量の容器と、アクチュエータ並びに前記単数又は複数の電子モジュールと、必要であればエネルギー源と、を収容している。ハウジングは、気体、例えば空気を収容している。流体又は気体が、体内媒体から又は体内媒体へ移動することを回避するように、前記ハウジングは、漏れを防止するものでなければならない。ハウジングは、生体適合性材料から作製される。例えば、ハウジングは埋め込み可能なチタンから作製され、レーザー溶接により密封されている。漏れ防止性の制御は、システムが埋め込まれている期間におけるハウジングの完全な漏れ防止性を確保するように、ヘリウム(例えば、漏れ率が10-9mbar.l/s未満のヘリウム)を使用して特に実施され得る。
【0066】
可変容量の容器は、カフ1にチューブ3により連結されている。
【0067】
有利には、ハウジングは、可変容量の容器を画定する壁に、穿刺ポート5を備えている。穿刺ポート5は、針によって穿孔可能であるとともに、針の取り外し後に漏れを防止した態様で閉鎖可能である。これにより、流体を容器に注入したり除去したりすることが可能となっている。