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特許7467339強化された免疫エフェクター細胞およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】強化された免疫エフェクター細胞およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240408BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240408BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240408BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240408BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240408BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20240408BHJP
   C12N 5/0783 20100101ALN20240408BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20240408BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240408BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/13
A61P43/00 105
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/12
A61K35/17
A61K35/12
C12N15/09 100
C12N5/0783
C07K19/00
C07K16/28
C07K16/18
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020530313
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 US2018067289
(87)【国際公開番号】W WO2019126748
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-20
(31)【優先権主張番号】62/609,827
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/774,052
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/649,781
(32)【優先日】2018-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】312000284
【氏名又は名称】フェイト セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バラマール,バーラム
(72)【発明者】
【氏名】ビョーダール,リャン
(72)【発明者】
【氏名】グッドリッジ,ジョーデ
(72)【発明者】
【氏名】リー,トム,トング
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/025323(WO,A1)
【文献】特表2017-511135(JP,A)
【文献】国際公開第2017/127755(WO,A1)
【文献】J. Immunol.,2011年08月01日,Vol.187, No.3,pp.1212-1221
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞またはその集団であって、前記細胞が、誘導多能性細胞(iPSC)または該細胞を分化させて得られた誘導細胞であり、前記細胞が、CD38ノックアウトを有し、前記細胞が、高親和性非切断性CD16(hnCD16)をコードするポリヌクレオチドをし、前記iPSCは誘導細胞に分化可能であり、該誘導細胞はT細胞又はNK細胞であり、前記誘導細胞は前記hnCD16を発現し、かつ、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を有する、細胞またはその集団。
【請求項2】
前記細胞が、
(i)HLA-I欠損、
(ii)HLA-II欠損、
(iii)HLA-Gまたは非切断性HLA-Gの導入された発現、
(iv)キメラ抗原受容体(CAR)、
(v)細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチド、
(vi)B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の遺伝子のうちの少なくとも1つの欠失、
(vii)HLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、エンゲージャー、および二重特異的もしくは多重特異的またはユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つの導入、のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の細胞またはその集団。
【請求項3】
前記誘導細胞が、T細胞又はNK細胞であり、末梢血、臍帯血、または他のドナー組織から得られたその天然の対応細胞と比較して、
(i)向上した持続性および/または生存率、
(ii)免疫拒絶に対する増加した耐性、
(iii)増加した細胞傷害性、
(iv)改善された腫瘍浸透、
(v)増強または獲得したADCC、
(vi)バイスタンダー免疫細胞を腫瘍部位に遊走、および/または活性化もしくは動員する増強された能力、
(vii)腫瘍免疫抑制を低下させる増強した能力、
(viii)腫瘍抗原エスケープの救済の改善された能力、
(ix)減少したフラトリサイド、および
(x)遺伝子操作されたエフェクター細胞の拡大源として機能する、
を含む特徴のうちの少なくとも1つを有する、請求項1に記載の細胞またはその集団。
【請求項4】
前記hnCD16が、
(i)CD16の外部ドメインドメインのF176VおよびS197P、
(ii)CD64に由来する完全または部分的な外部ドメイン、又は
(iii)同一のまたは異なるポリペプチドに由来する、非天然(若しくは非CD16)の膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン、刺激ドメイン、及び/若しくはシグナル伝達ドメイン、
を含む、請求項2に記載の細胞またはその集団。
【請求項5】
(a)前記非天然の膜貫通ドメインが、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、またはT細胞受容体(TCR)ポリペプチドに由来するか、
(b)前記非天然刺激ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、またはNKG2Dポリペプチドに由来するか、
(c)前記非天然シグナル伝達ドメインが、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(41BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、またはNKG2Dポリペプチドに由来するか、あるいは
(d)前記非天然の膜貫通ドメインがNKG2Dに由来し、前記非天然の刺激ドメインが2B4に由来し、前記非天然のシグナル伝達ドメインがCD3ζに由来する、請求項4に記載の細胞またはその集団。
【請求項6】
前記細胞がキメラ抗原受容体(CAR)をさらに含む、請求項2記載の細胞またはその集団。
【請求項7】
前記CARが、
(i)T細胞特異的もしくはNK細胞特異的、
(ii)細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的若しくは完全なペプチドと共発現されたもの、
(iii)AAVS1、CCR5、ROSA26、collagen、HTRP、H11、β-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、CD38若しくはRUNX1aを含む遺伝子座の1つに挿入され、又は
(iv)T細胞受容体(TCR)定常領域遺伝子座若しくはCD38遺伝子座に挿入され、該TCR若しくはCD38が前記CAR挿入によってノックアウトされている、請求項2に記載の細胞またはその集団。
【請求項8】
前記細胞が、細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的若しくは完全なペプチドをさらに含む、請求項2に記載の細胞またはその集団。
【請求項9】
前記サイトカインまたはその受容体の部分的若しくは完全なペプチドが、(i)IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、およびそのそれぞれの受容体のうちの少なくとも1つを含むか、又は(ii)一過性に発現する、請求項8に記載の細胞またはその集団。
【請求項10】
前記細胞が、
(i)自己切断ペプチドを用いることによるIL15およびIL15Rαの共発現、
(ii)IL15Rαの部分若しくは完全ペプチドと融合したIL15の部分又は完全ペプチド、
(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断された、IL15Rαの部分若しくは完全ペプチドと融合したIL15の部分又は完全ペプチド、
(iv)IL15RαのSushiドメインと融合したIL15の部分若しくは完全ペプチド、
(v)IL15Rβの部分若しくは完全ペプチドと融合した、IL15の部分若しくは完全ペプチド、
(vi)共通受容体γCの部分若しくは完全ペプチドと融合した、IL15の部分若しくは完全ペプチドであって、前記共通受容体γCは天然若しくは改変されている、ペプチド、又は
(vii)IL15Rβの部分若しくは完全ペプチドのホモ二量体、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の細胞またはその集団。
【請求項11】
(a)前記誘導細胞が、1つ以上のチェックポイント阻害剤の存在下におけるT細胞又はNK細胞、(b)前記NK細胞は、T細胞を腫瘍部位に動員および/または遊走させることができ、(c)前記T細胞又はNK細胞は、1つ以上のチェックポイント阻害剤の存在下で腫瘍免疫抑制を低下させることができる、請求項3に記載の細胞またはその集団。
【請求項12】
前記T細胞又はNK細胞が、前記1つ以上のチェックポイント阻害剤を発現する、請求項11に記載の細胞またはその集団。
【請求項13】
前記1つ以上のチェックポイント阻害剤が、
(i)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2AR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、または抑制性KIRを包含する1つ以上のチェックポイント分子のアンタゴニストであり;又は
(ii)
(a)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、若しくはそれらの抗原結合性断片のうちの1つ以上、若しくは
(b)アテゾリズマブ、ニボルマブ、およびペンブロリズマブのうちの少なくとも1つ、
を含む、請求項10に記載の細胞またはその集団。
【請求項14】
前記誘導細胞が、NK細胞である、請求項1に記載の細胞またはその集団。
【請求項15】
前記細胞が、IL15と切断IL15αとの融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含み、該融合タンパク質が、配列番号17、19、または21と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一性のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の細胞またはその集団。
【請求項16】
請求項1に記載の細胞またはその集団を含む組成物。
【請求項17】
1つ以上の治療薬をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記治療薬が、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分またはその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤または放射性部分、または免疫調節薬(IMiD)を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
(i)前記チェックポイント阻害剤が、
(a)PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2aR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、または抑制性KIRを含む1つ以上のアンタゴニストチェックポイント分子、
(b)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびそれらの抗原結合性断片のうちの1つ以上、
(c)アテゾリズマブ、ニボルマブ、およびペンブロリズマブのうちの少なくとも1つ、を含み、又は
(ii)前記治療薬が、ベネトクラクス、アザシチジン、およびポマリドマイドのうちの1つ以上を含む、又は
(iii)前記抗体が、
(a)抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、および/または抗CD38抗体、
(b)ダラツムマブ、イサツキシマブ若しくはMOR202、又はそれらの断片、を含み、前記誘導細胞が、CD38ノックアウトを含む免疫エフェクター細胞を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
請求項16記載の組成物から成り、前記細胞又は細胞集団が自家性または同種異系である、自己免疫疾患、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、またはウイルス感染の治療剤。
【請求項21】
iPSCのCD38発現を破壊すること、該iPSCに、hnCD16をコードするポリヌクレオチドを導入すること、及びCD38発現がないiPSCを選択することを含む、請求項1記載の細胞またはその集団の製造方法。
【請求項22】
CD38発現の破壊と同時に、又は逐次的に、標的化された編集を行うことをさらに含み、それによって、
(i)HLA-I欠損、
(ii)HLA-II欠損、
(iii)HLA-Gまたは非切断性HLA-Gの導入された発現、
(iv)キメラ抗原受容体(CAR)、
(v)細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチド、
(vi)B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の遺伝子のうちの少なくとも1つの欠失、
(vii)HLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、エンゲージャー、および二重特異的もしくは多重特異的またはユニバーサルエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つの導入、のうちの1つ以上をさらに含む、
多能性細胞を得る、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記CD38発現がないiPSCを造血系統細胞に分化させることをさらに含み、該造血系統細胞は、CD38を発現しないT細胞又はNK細胞である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
CD38特異的アンタゴニストを含む、同種異系エフェクター細胞に対する同種拒絶反応を低減または防止する剤であって、前記同種異系エフェクター細胞がCD38ノックアウト及び高親和性非切断性CD16(hnCD16)をコードするポリヌクレオチドを含み、前記CD38特異的アンタゴニストが同種異系エフェクター細胞のレシピエントにおける活性化されたT細胞およびB細胞を抑制することができ、前記CD38特異的アンタゴニストが、抗CD38抗体、CD38特異的エンゲージャー、またはCD38キメラ抗原受容体(CAR)、ダラツムマブ、イサツキシマブ、またはMOR202、抗CD38抗体の断片のいずれかであり、
前記同種異系エフェクター細胞は請求項1のiPSCから分化したT細胞又はNK細胞であり、前記同種異系エフェクター細胞は前記hnCD16を発現し、かつ、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を有する、剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2017年12月22日に出願された米国仮特許出願連続番号第62/609,827号、2018年3月29日に出願された米国仮特許出願第62/649,781号、および2018年11月30日に出願された、米国仮特許出願第62/774,052号の優先権を主張し、それらの開示は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、既製の免疫細胞製品の分野に広く関する。より詳細には、本開示は、in vivoで治療に適切な特性を送達することができる多機能エフェクター細胞を開発するための戦略に関する。本開示の下で開発された細胞製品は、患者由来の細胞療法の重大な制限に対処する。
【背景技術】
【0003】
養子細胞療法の分野は現在、患者由来およびドナー由来の細胞を使用することに焦点が当てられているため、がん免疫療法の一貫した製造を達成することと、恩恵を受ける可能性のある全ての患者に治療を提供することとが特に困難なものとなっている。養子移植されたリンパ球の有効性と持続性を改善して、患者の良好な転帰を促進する必要もある。T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞などのリンパ球は、自然免疫および適応免疫に重要な役割を果たす強力な抗腫瘍エフェクターである。しかしながら、養子細胞療法のためにこれらの免疫細胞を使用することは、依然として困難であり、改善に対する満たされていない要求が存在する。したがって、養子免疫療法においてT細胞およびNK細胞、または他のリンパ球の可能性を最大限に活用するための重要な機会が残っている。
【発明の概要】
【0004】
応答率、細胞の消耗、輸血された細胞の損失(生存率および/または持続性)、標的の喪失または系統転換による腫瘍エスケープ、腫瘍の標的化の精度、標的外毒性、腫瘍外効果、固形腫瘍に対する有効性、すなわち腫瘍微小環境および関連する免疫抑制、動員、輸送、および浸潤など、さまざまな問題に対処する機能的に改善されたエフェクター細胞が必要である。
【0005】
本発明の目的は、単一細胞由来のiPSC(誘導多能性幹細胞)クローン株から分化した誘導非多能性細胞を生成する方法および組成物を提供することであり、このiPSC株はそのゲノムに1つまたはいくつかの遺伝子改変を含む。前述の1つまたはいくつかの遺伝子改変には、DNA挿入、欠失、および置換が含まれ、これらの改変は、分化、増殖、継代および/または移植の後、その後の誘導細胞において保持され、機能し続ける。
【0006】
本出願のiPSC由来の非多能性細胞には、CD34細胞、造血内皮細胞、HSC(造血幹細胞および前駆細胞)、造血多能性前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、およびB細胞が含まれるが、これらに限定されない。本出願のiPSC由来の非多能性細胞は、同一の遺伝子改変を含むiPSCからの分化を通じて、それらのゲノムに1つまたはいくつかの遺伝子改変を含む。遺伝子操作された誘導細胞を得るための操作されたクローンiPSC分化戦略では、指示された分化におけるiPSCの発生の可能性が、iPSCの操作されたモダリティによって悪影響を受けないこと、および操作されたモダリティが誘導細胞で意図したとおりに機能することも必要である。さらに、この戦略は、末梢血から得られたT細胞またはNK細胞などの初代リンパ球を操作する際の現在の障壁、すなわち、そのような細胞はしばしば、再現性と均一性を欠き、高い細胞死と低い細胞増殖を伴う不十分な細胞の持続性を呈する細胞をもたらし、そのような細胞を操作することが困難であることに起因する障壁を克服する。さらに、この戦略は、最初は不均質である初代細胞源を使用して別の方法で得られる不均質のエフェクター細胞集団の生成を回避する。
【0007】
本発明のいくつかの態様は、リプログラミングプロセスに続いて、同時に、およびその前に、それぞれ、ゲノム操作の戦略を反映する(I)、(II)、または(III)を含む方法を使用して得られたゲノム操作されたiPSCを提供する:
【0008】
(I):iPSCを(i)と(ii)のいずれかまたは両方を任意の順序で遺伝子操作する:(i)1つ以上のコンストラクトをiPSCに導入して、選択した部位で標的化された組み込みを可能にする;(ii)(a)選択された部位認識が可能な1つ以上のエンドヌクレアーゼを使用して、選択された部位に1つ以上の二本鎖切断をiPSCに導入する;(b)ステップ(I)(ii)(a)のiPSCを培養し、内因性DNA修復により、選択された部位での標的化されたインデルを生成できるようにする;それにより、部分的または完全に分化した細胞への分化が可能なゲノム操作されたiPSCを取得する。
【0009】
(II):リプログラミングされた非多能性細胞を遺伝子操作して、ゲノム操作されたiPSCを取得する:(i)非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子、ならびに必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤および/またはROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させ、非多能性細胞のリプログラミングを開始する;(ii)ステップ(II)と接触させのリプログラミングされた非多能性細胞に(a)と(b)のうちの一方または両方を任意の順序で導入する:(a)選択された部位での標的化された組み込みを可能にする1つ以上のコンストラクト;(b)選択された部位の認識が可能な少なくとも1つのエンドヌクレアーゼを使用して、選択された部位で1つ以上の二本鎖切断を行った後、ステップ(II)(ii)(b)の細胞を培養して内因性DNA修復をして選択された部位で標的化されたインデルの生成を可能にする;したがって、取得されたゲノム操作されたiPSCは少なくとも1つの機能標的化されたゲノム編集を含み、前述のゲノム操作されたiPSCは部分的または完全に分化した細胞に分化することができる。
【0010】
(III):(i)および(ii)を含むゲノム操作されたiPSCを取得するためにリプログラミングするための非多能性細胞を遺伝子操作する:(i)非多能性細胞に(a)と(b)の一方または両方を任意の順序で導入する:(a)選択された部位での標的化された組み込みを可能にする1つ以上のコンストラクト;(b)選択された部位の認識が可能な少なくとも1つのエンドヌクレアーゼを使用して、選択された部位で1つ以上の二本鎖切断を行い、ここでステップ(III)(i)(b)の細胞を培養して内因性DNA修復をして選択された部位で標的化されたインデルの生成を可能にする;(ii)ステップ(III)(i)の細胞を1つ以上のリプログラミング因子、ならびに必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤および/またはROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させ、選択された部位で少なくとも1つの機能標的化されたゲノム編集を含む、ゲノム操作されたiPSCを取得し、前述のゲノム操作されたiPSCは部分的に分化した細胞または完全に分化した細胞に分化することができる。
【0011】
上述の方法の一実施形態では、1つ以上の選択された部位での少なくとも1つの標的化されたゲノム編集は、安全スイッチタンパク質、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、医薬活性タンパク質およびペプチドを、薬物標的候補、あるいは、ゲノム操作されたiPSCまたはその誘導細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、および/または生存率を促進するタンパク質をコードする1つ以上の外因性ポリヌクレオチドの挿入を含む。いくつかの実施形態では、挿入のための外因性ポリヌクレオチドは、(1)CMV、EF1α、PGK、CAG、UBC、または他の構成的、誘導性、一過性、組織特異性、または細胞型特異性プロモーターを含む1つ以上の外因性プロモーター;あるいは(2)AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、またはRUNX1、またはゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む選択した部位に含まれる1つ以上の内因性プロモーターへと作動可能に連結される。いくつかの実施形態では、上述の方法を使用して生成されたゲノム操作されたiPSCは、カスパーゼ、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、改変EGFR、またはB細胞CD20を含むタンパク質をコードする1つ以上の異なる外因性ポリヌクレオチドを含み、ここで、ゲノム操作されたiPSCが2つ以上の自殺遺伝子を含む場合、自殺遺伝子は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、H11、ベータ2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、またはRUNX1を含むさまざまなセーフハーバー遺伝子座に組み込まれている。一実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、および/またはそれらのそれぞれの受容体の部分的または完全なペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドによってコードされるIL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、および/またはそのそれぞれの受容体の部分的または完全なペプチドは、融合タンパク質の形態である。
【0012】
いくつかの他の実施形態では、本明細書で提供される方法を使用して生成されたゲノム操作されたiPSCは、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬物標的候補、免疫応答調節および調節、あるいはiPSCまたはその誘導細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、および/または生存率を抑制するタンパク質に関連する1つ以上の内因性遺伝子におけるインデルを含む。いくつかの実施形態では、破壊のための内因性遺伝子は、B2M、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つを含む。
【0013】
さらにいくつかの他の実施形態では、本明細書で提供される方法を使用して生成されるゲノム操作されたiPSCは、AAVS1遺伝子座に外因性ポリヌクレオチドをコードするカスパーゼ、およびH11遺伝子座に外因性ポリヌクレオチドをコードするチミジンキナーゼを含む。
【0014】
さらにいくつかの他の実施形態では、アプローチ(I)、(II)および/または(III)は、ゲノム操作されたiPSCを、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、およびROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させて、ゲノム操作されたiPSCの多能性を維持することをさらに含む。一実施形態では、少なくとも1つの標的化されたゲノム編集を含む取得されたゲノム操作されたiPSCは機能的であり、分化能があり、同一の機能のゲノム編集を含む非多能性細胞に分化することができる。
【0015】
本発明はまた、以下を提供する。
【0016】
本出願の一態様は、細胞またはその集団であって、細胞は、誘導多能性細胞(iPSC)、クローンiPSC、またはiPS細胞株細胞、または上記の上記iPSCのいずれかを分化させることから得られる誘導細胞であり;上記の細胞のいずれかは、少なくとも1つのCD38ノックアウトまたは、細胞内ドメインを有さないIL15/IL15Rα融合タンパク質(IL15Δ)をコードするポリヌクレオチドを含む。iPSC分化から取得された誘導細胞のいくつかの実施形態では、誘導細胞は、CD34細胞、造血内皮細胞、HSC(造血幹細胞および前駆細胞)、造血多能性前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、およびB細胞を含むが、これらに限定されない造血細胞であり;この造血細胞(すなわち、誘導CD34細胞、誘導造血内皮細胞、誘導造血幹細胞および前駆細胞、誘導造血多能性前駆細胞、誘導T細胞前駆細胞、誘導NK細胞前駆細胞、誘導T細胞、誘導NKT細胞、誘導NK細胞、または誘導B細胞)は、末梢血、臍帯血、またはその他のいずれかのドナー組織から取得されたその天然の対応細胞と比較して、より長いテロメアを含む。
【0017】
CD38ノックアウトまたは、細胞内ドメインを有さないIL15/IL15Rα融合タンパク質(IL15Δ)をコードするポリヌクレオチドを含む上記iPSCおよびその誘導細胞のいくつかの実施形態では、細胞は以下のゲノム編集のうちの1つ以上をさらに含む:(i)B2M nullまたはlow;(ii)CIITA nullまたはlow;(iii)HLA-Gまたは非切断性HLA-Gの導入された発現;(iv)高親和性非切断性CD16(hnCD16)またはそのバリアント、(v)キメラ抗原受容体(CAR)、(vi)細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチド、(vii)表1に列挙されている遺伝子型のうちの少なくとも1つ;(viii)TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つにおける欠失または発現低下;および(ix)HLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、エンゲージャー、および二重特異性もしくは多重特異性またはユニバーサルなエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つにおける導入された発現または増加した発現。
【0018】
少なくともCD38ノックアウトまたは細胞内ドメインを有さないIL15/IL15Rα融合タンパク質(IL15Δ)をコードするポリヌクレオチド、および必要に応じて上記および本出願全体を通して記載される追加のゲノム編集を含む上記iPSCおよびその誘導細胞のいくつかの実施形態において、細胞は、(i)1つのセーフハーバー遺伝子座に組み込まれた1つ以上の外因性ポリヌクレオチド、(ii)または異なるセーフハーバー遺伝子座に組み込まれた3つ以上の外因性ポリヌクレオチド、または(iii)配列番号17、19、または21と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一性のアミノ酸配列を含むIL15Δをコードするポリヌクレオチド、を含んでもよい。いくつかの実施形態では、セーフハーバー遺伝子座は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、またはRUNX1のうちの少なくとも1つを含む。特定の一実施形態では、セーフハーバー遺伝子座TCRは、TCRアルファの定常領域である。
【0019】
細胞またはその集団のいくつかの実施形態では、少なくともCD38ノックアウトまたはIL15Δ、および上述の追加のゲノム編集のうちの1つ以上を含む、細胞は、誘導NKまたは誘導T細胞であり、誘導NKまたは誘導T細胞は、次の特徴のうちの少なくとも1つを含むが、これらに限定されない:末梢血、臍帯血、またはその他の任意のドナー組織から得られたその天然の対応NKまたはT細胞と比較したときの、(i)持続性および/または生存率の向上、(ii)天然免疫細胞に対する増加した耐性、(iii)増加した細胞傷害性、(iv)改善された腫瘍浸透、(v)増強または獲得したADCC、(vi)バイスタンダー免疫細胞を腫瘍部位に遊走、および/または活性化または動員する増強された能力、(vii)腫瘍免疫抑制を低下させる増強された能力、(viii)腫瘍抗原エスケープの救済の向上した能力、減少したフラトリサイド。
【0020】
細胞またはその集団の一実施形態では、CD38ノックアウトまたはIL15Δを含む細胞は、高親和性の非切断性CD16(hnCD16)またはそのバリアントをさらに含む。高親和性の非切断性CD16(hnCD16)またはそのバリアントのいくつかの実施形態は、以下のうちの少なくともいずれか1つを含む:(a)CD16の外部ドメインドメインにおけるF176VおよびS197P、(b)CD64に由来する完全なまたは部分的な外部ドメイン、(c)非天然(または非CD16)の膜貫通ドメイン、(d)非天然(または非CD16)の細胞内ドメイン、(e)非天然(または非CD16)のシグナル伝達ドメイン、(f)非天然の刺激ドメイン、ならびに(g)CD16に由来せず、同一または異なるポリペプチドに由来する膜貫通、シグナル伝達、および刺激ドメイン。いくつかの実施形態では、非天然の膜貫通ドメインは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、またはT細胞受容体(TCR)ポリペプチドに由来する。いくつかの実施形態では、非天然の刺激ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、またはNKG2Dポリペプチドに由来する。他のいくつかの実施形態では、非天然のシグナル伝達ドメインは、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(41BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、またはNKG2Dポリペプチドに由来する。hnCD16バリアントのいくつかの特定の実施形態では、非天然の膜貫通ドメインはNKG2Dに由来し、非天然の刺激ドメインは2B4に由来し、非天然のシグナル伝達ドメインはCD3ζに由来する。
【0021】
細胞またはその集団の一実施形態では、CD38ノックアウトまたはIL15Δを含む細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)をさらに含み、CARは以下のうちのいずれか1つ以上であり得る:(i)T細胞特異的またはNK細胞特異的;(ii)二重特異性抗原結合CAR;(iii)切り替え可能なCAR;(iv)二量体化されたCAR;;(v)スプリットCAR;(vi)多重鎖CAR;(vii)誘導性CAR;(viii)別のCARとの同時発現;(ix)必要に応じて別個のコンストラクトで、またはバイシストロニックなコンストラクトで、細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチドと共発現されたもの;(xi)必要に応じて別個のコンストラクトで、またはバイシストロニックなコンストラクトで、チェックポイント阻害剤と共発現されたもの;(xii)CD19またはBCMAに特異的なもの;および/または(xiii)ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAlX)、CCRI、CCR4、がん胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソセリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、がん-精巣抗原NY-ESO-1、がん胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBCI、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、および病原体抗原のうちのいずれかに特異的なもの。
【0022】
チェックポイント阻害剤がCARと共発現されるいくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2aR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、または抑制性KIRを含む1つ以上のチェックポイント分子に対するアンタゴニストである。CARと共発現されるチェックポイント阻害剤は、上述のチェックポイント分子のうちのいずれかに特異的な抗体、またはヒト化もしくはFc改変されたバリアントもしくは断片ならびにそれらの機能的同等物およびバイオシミラーであり得る。いくつかの実施形態では、(i)~(ix)のうちのいずれか1つのCARをTRAC遺伝子座に挿入することができる。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子座に挿入された(i)~(ix)のうちのいずれか1つのCARは、TCRの内因性プロモーターによって駆動され得る。いくつかの実施形態では、TRAC遺伝子座での(i)~(ix)のうちのいずれか1つのCARの挿入は、TCRノックアウトをもたらす。
【0023】
細胞またはその集団の一実施形態では、CD38ノックアウトを含む細胞は、細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチドをさらに含み、外因性サイトカインまたはその受容体は、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、およびそのそれぞれの受容体のうちの少なくとも1つを含み得るか、または(i)自己切断ペプチドを使用したIL15とIL15Rαの共発現、(ii)IL15とIL15Rαの融合タンパク質、(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断されたIL15/IL15Rα融合タンパク質、(iv)IL15とIL15Rαの膜結合Sushiドメインの融合タンパク質、(v)IL15とIL15Rβの融合タンパク質、(vi)IL15と共通受容体γCの融合タンパク質、ここで、共通受容体γCは天然または改変されている、(vii)IL15Rβのホモダイマーのうちの少なくとも1つを含み得、ここで、(i)~(vii)のいずれか1つは、別個のコンストラクトで、またはバイシストロニックなコンストラクトで、CARと共発現され得る。いくつかの実施形態では、細胞表面の外因性サイトカインまたは受容体の部分的または完全なペプチドは、本明細書で提供される細胞において一過性に発現される。
【0024】
細胞またはその集団の別の実施形態では、細胞は、細胞表面発現の外因性サイトカインまたは受容体の部分的または完全なペプチドを含み、サイトカインは、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、およびそれぞれの受容体の少なくとも1つを含み得る。IL15サイトカインまたは受容体を含む細胞またはその集団の実施形態では、細胞は、(i)自己切断ペプチドを使用したIL15とIL15Rαの共発現、(ii)IL15とIL15Rαの融合タンパク質、(iii)IL15Rαの細胞内ドメインが切断されたIL15/IL15Rα融合タンパク質、(iv)IL15とIL15Rαの膜結合Sushiドメインの融合タンパク質、(v)IL15とIL15Rβの融合タンパク質、(vi)IL15と共通受容体γCの融合タンパク質、ここで、共通受容体γCは天然または改変されている、(vii)IL15Rβのホモダイマーのうちの少なくとも1つを含み得、ここで、(i)~(vii)のいずれか1つは、別個のコンストラクトで、またはバイシストロニックなコンストラクトで、CARと共発現され得る。いくつかの実施形態では、細胞表面の外因性サイトカインまたは受容体の部分的または完全なペプチドは、本明細書で提供される細胞において一過性に発現される。一実施形態では、細胞またはその集団は、配列番号17、19または21に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%または99%の同一性のアミノ酸配列を含むIL15Δをコードするポリヌクレオチドを含む。細胞またはその集団の一実施形態では、IL15Δを含む細胞は、B2M nullまたはlow、CIITA nullまたはlow、HLA-Gまたは非切断性HLA-Gの導入された発現、高親和性非切断性CD16(hnCD16)またはそのバリアント、キメラ抗原受容体(CAR)、細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチド(サイトカインはIL15ではない)、表1に列挙されている遺伝子型のうちの少なくとも1つ、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つにおける欠失または発現低下、ならびにHLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、エンゲージャー、および二重特異性もしくは多重特異性またはユニバーサルなエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つにおける導入された発現または増加した発現のうちの1つ以上をさらに含み得る。IL15ΔとCARの両方を含む細胞またはその集団の実施形態では、IL15Δは、別個のコンストラクトまたはバイシストロニックコンストラクトにおいてCARと共発現され得る。
【0025】
細胞またはその集団の一実施形態では、CD38ノックアウトまたはIL15Δを含む細胞は、誘導NK細胞または誘導T細胞であり、誘導NK細胞は、T細胞を腫瘍部位に動員および/または遊走させることができ、ここで、誘導NK細胞または誘導T細胞は、1つ以上のチェックポイント阻害剤の存在下で腫瘍免疫抑制を低下させることができる。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2aR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、または抑制性KIRを含む1つ以上のチェックポイント分子に対するアンタゴニストである。他のいくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、(a)アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびそれらの誘導体または機能的同等物のうちの1つ以上、または(b)アテゾリズマブ、ニボルマブ、およびペンブロリズマブのうちの少なくとも1つのいずれかを含む。
【0026】
本出願の別の態様は、上述の、および本出願全体にわたって記載の、任意の細胞またはその集団を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、iPSCまたはiPSC由来細胞(誘導細胞)は、本出願の表1に列挙された遺伝子型のうちのいずれか1つを含み得る。いくつかの実施形態では、iPSCまたはそれからの誘導細胞は、CD38ノックアウト(CD38-/-)を含む。いくつかの実施形態では、iPSCまたはそれからの誘導細胞は、IL15Δを含む。いくつかの実施形態では、iPSCまたはそれからの誘導細胞は、hnCD16およびCD38ノックアウトを含む。いくつかの実施形態では、iPSCまたはそれからの誘導細胞は、hnCD16およびIL15Δを含む。いくつかの実施形態では、iPSCまたはそれからの誘導細胞は、hnCD16、CD38ノックアウト、およびIL15Δを含む。いくつかの実施形態では、iPSCまたはそれからの誘導細胞は、hnCD16、CD38-/-、およびCARを含む。いくつかの実施形態では、iPSCまたはそれからの誘導細胞は、hnCD16、IL15Δ、およびCARを含む。いくつかの実施形態では、iPSCまたはそれからの誘導細胞は、hnCD16、IL15Δ、CD38-/-、およびCARを含む。いくつかの実施形態では、iPSCまたはそれからの誘導細胞は、上述の、および本出願全体にわたって記載の、hnCD16、CD38-/-、CAR、および細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチドを含む。hnCD16、CD38-/-、およびCARを含む細胞のいくつかの実施形態では、CARはCD19に特異的である。hnCD16、IL15Δ、およびCARを含む細胞のいくつかの実施形態では、CARはCD19に特異的である。hnCD16、IL15Δ、CD38-/-、およびCARを含む細胞のいくつかの実施形態では、CARはCD19に特異的である。hnCD16、CD38-/-、およびCARを含む細胞の他の実施形態では、CARはCD269(BCMA)に特異的である。hnCD16、IL15Δ、およびCARを含む細胞の他の実施形態では、CARはCD269(BCMA)に特異的である。hnCD16、IL15Δ、CD38-/-、およびCARを含む細胞の他のいくつかの実施形態では、CARはCD269(BCMA)に特異的である。さらにいくつかの他の実施形態では、CARは、ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAlX)、CCRI、CCR4、がん胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原(例えば、細胞表面抗原)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソセリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、がん-精巣抗原NY-ESO-1、がん胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBCI、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、および当該技術分野で公知の様々な病原体抗原のうちのいずれかに特異的である。
【0027】
したがって、本出願のさらなる態様は、本明細書で提供される任意の誘導細胞に加えて、1つ以上の治療薬を含む、治療的使用のための組成物を提供する。治療的使用のための組成物のいくつかの実施形態では、治療薬は、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分またはその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤または放射性部分、または免疫調節薬(IMiD)を含む。治療的使用のための組成物のいくつかの実施形態では、提供される細胞と共に使用されるチェックポイント阻害剤は、PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2aR、BATE、BTLA、CD39、CD47、CD73、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2、Rara(レチノイン酸受容体アルファ)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、または抑制性KIRを含む1つ以上のチェックポイント分子に対するアンタゴニストを含む。治療的使用のための組成物のいくつかの実施形態では、提供される細胞と共に使用されるチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびそれらの誘導体または機能的同等物のうちの1つ以上を含む。治療的使用のための組成物のいくつかの他の実施形態では、提供される細胞と共に使用されるチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、ニボルマブ、およびペンブロリズマブのうちの少なくとも1つを含む。治療的使用のための組成物のいくつかの実施形態では、治療剤は、ベネトクラクス、アザシチジン、およびポマリドマイドのうちの1つ以上を含む。
【0028】
治療的使用のための組成物のいくつかの実施形態において、提供される細胞と共に使用される抗体は、抗CD20、抗HER2、抗CD52、抗EGFR、抗CD123、抗GD2、抗PDL1、および/または抗CD38抗体のうちのいずれか1つを含む。治療的使用のための組成物のいくつかの実施形態では、提供される細胞とともに使用される抗体は、リツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、セルツキシマブ、ジヌツキシマブ、アベルマブ、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202、7G3、CSL362、エロツズマブ、およびそれらのヒト化またはFc改変されたバリアントまたは断片、ならびにそれらの機能的同等物およびバイオシミラーのうちの1つ以上を含む。治療的使用のための組成物のさらにいくつかの他の実施形態では、提供される細胞とともに使用される抗体は、ダラツムマブを含む。
【0029】
本出願はまた、養子細胞療法に適した対象に組成物を導入することによる、本明細書に記載の細胞または治療用組成物の治療的使用を提供する。いくつかの実施形態では、養子細胞療法に適しておりかつそれを必要とする対象は、自己免疫障害、血液悪性腫瘍、固形腫瘍;がん、またはウイルス感染を有する。
【0030】
本出願のさらなる態様は、本明細書に記載の誘導細胞を製造する方法であって、CD38ノックアウトまたはIL15Δ、および必要に応じて以下のうちの1つ以上を含むiPSCを分化させることを含む方法を提供する:(i)B2M nullまたはlow、(ii)CIITA nullまたはlow、(iii)HLA-Gまたは非切断性HLA-Gの導入された発現、(iv)高親和性非切断性CD16(hnCD16)またはそのバリアント、(v)キメラ抗原受容体(CAR)、(vi)細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチド、(vii)表1に列挙されている遺伝子型のうちの少なくとも1つ、(viii)TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子のうちの少なくとも1つにおける欠失または発現低下、および(ix)HLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD16、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、エンゲージャー、および二重特異性もしくは多重特異性またはユニバーサルなエンゲージャーと結合するための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つにおける導入された発現または増加した発現。
【0031】
製造方法のいくつかの実施形態では、方法はさらに、クローンiPSCをゲノム操作してCD38をノックアウトするかIL15Δをノックインし、必要に応じてB2MおよびCIITAをノックアウトするか、またはHLA-Gまたは非切断性HLA-G、高親和性の非切断性CD16またはそのバリアント、CAR、および/または細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチドの発現を導入することを含み、CARおよび細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチドは、別個のコンストラクトまたはバイシストロニックコンストラクトで共発現される。製造する方法のいくつかの実施形態では、iPSCのゲノム操作は、標的化された編集を含む。いくつかの実施形態では、標的化された編集は、削除、挿入、またはインデルを含む。いくつかの実施形態では、標的化された編集は、CRISPR、ZFN、TALEN、ホーミングヌクレアーゼ、相同組換え、またはこれらの方法の他の任意の機能的バリエーションによって実行される。
【0032】
本出願はさらに、CRISPRに媒介されるクローンiPSCの編集を提供し、それにより、CD38ノックアウトもしくはIL15Δノックイン、または表1に列挙された遺伝子型のうちの少なくとも1つを含む編集されたクローンiPSCを生成する。CRISPRに媒介される編集のいくつかの実施形態では、得られたCD38ノックアウトは二対立遺伝子である。CRISPRに媒介される編集のいくつかの実施形態では、CD38ノックアウトは、第1および第2の標的配列の間の核酸切断であり、標的化配列は、それぞれ、配列番号3および配列番号4を含む。CRISPRに媒介される編集のいくつかの実施形態では、得られたIL15Δノックインは、配列番号17、19、または21と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一性のアミノ酸配列を含むIL15Δをコードするポリヌクレオチドを含む。上記のCRISPRに媒介される編集のいくつかの実施形態では、編集は、TRAC遺伝子座でのCARの挿入をさらに含み、および/またはCARは、TCRの内因性プロモーターによって駆動され、および/またはTCRは、CAR挿入によってノックアウトされる。
【0033】
本出願の追加の態様は、CD38発現なしでエフェクター細胞を治療下で対象に投与することを含む、抗CD38抗体治療を改善する方法を提供する。抗CD38抗体治療のいくつかの実施形態では、抗CD38抗体は、ダラツムマブ、イサツキシマブ、またはMOR202、あるいはそれらのヒト化またはFc改変変異体または断片、機能的同等物およびそれらのバイオシミラーであり得る。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体治療を改善する方法のために提供されるエフェクター細胞は、誘導NK細胞または誘導T細胞を含む誘導造血細胞を含み、誘導NK細胞または誘導T細胞は、CD38ノックアウト、高親和性の非切断性CD16またはそのバリアントを含み、必要に応じて(i)B2MおよびCIITAノックアウト、(ii)HLA-Gまたは非切断性HLA-G、CAR、および/または細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチドの導入された発現であって、CARおよび細胞表面発現の外因性サイトカインまたはその受容体の部分的または完全なペプチドは、別個のコンストラクトまたはバイシストロニックなコンストラクトで共発現される、発現、および/または(iii)表1に列挙される遺伝子型の少なくとも1つ、を含む。抗CD38抗体治療を改善する方法のいくつかの実施形態において、方法は、そのような治療下の対象における抗CD38抗体誘導性のエフェクター細胞の減少を減少させる。
【0034】
本出願のさらに別の態様は、CD38特異的アンタゴニストを使用することによる同種異系エフェクター細胞に対する同種拒絶反応を低減または防止する方法であって、同種異系エフェクター細胞がCD38ノックアウトを含み、CD38特異的アンタゴニストが同種異系エフェクター細胞のレシピエントにおける活性化されたT細胞およびB細胞を抑制することができる、方法を提供する。いくつかの実施形態では、CD38特異的アンタゴニストは、抗CD38抗体、CD38特異的エンゲージャー、またはCD38キメラ抗原受容体(CAR)である。いくつかの他の実施形態では、抗CD38抗体は、ダラツムマブ、イサツキシマブ、またはMOR202、あるいはそれらのヒト化またはFc改変バリアントまたは断片、機能的同等物およびバイオシミラーのいずれかである。さらに別の実施形態では、抗CD38抗体はダラツムマブであり、本明細書で提供される方法は、ダラツムマブの新規使用を与える。
【0035】
本明細書で提供される組成物および方法の様々な目的および利点は、例示および例として本発明の特定の実施形態が示される添付の図面と併せて以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】iPSC由来細胞における細胞表面発現のサイトカインのためのいくつかのコンストラクト設計の図解である。IL15は、他の望ましいサイトカインで置き換えることができる例示的な例として使用される。
図2】3つのCD38-/-iPSCクローンのそれぞれから得られたCD38-/-誘導NK細胞のフローサイトメトリーを用いた表現型プロファイリングを示す。
図3】CD38-/-iPSC誘導NK細胞が、野生型iPSC由来NK細胞と同じ細胞傷害性の能力を示すことを示す。
図4】成熟したiPSC由来NK細胞のフローサイトメトリーのグラフ表示であり、hnCD16発現、B2Mノックアウト(HLA-A2発現の喪失)、HLA-G発現、およびIL-15/IL-15ra(LNGFR)コンストラクト発現の段階的操作を示す。
図5】フローサイトメトリーにより決定されたテロメア長のグラフ表示であり、iPSC由来成熟誘導NK細胞は、成体末梢血NK細胞と比較してより長いテロメアを維持している。
図6】CD38-/-iPSC由来NK細胞が、CD38抗体であるダラツムマブの存在下で腫瘍細胞株RPMI-8266により刺激されると、ADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)機能を維持することを示す。
図7】CD38を発現するiPSC由来NK細胞(A)と比較して、CD38-/-iPSC由来NK細胞(B)の生存率が、CD38抗体、ダラツムマブの存在下で培養において少なくとも約48時間維持される。
図8】CD38-/-iPSC由来のNK細胞(下のパネル)は、CD38抗体であるダラツムマブの存在下で刺激すると、脱顆粒を示さず、CD38を発現するiNK細胞(上のパネル)よりもサイトカイン産生が少ないことを示す。
図9】iPSC由来NK細胞へのhnCD16の導入(A)と、外因性hnCD16とCD38ノックアウトの両方を有するiPSC由来NK細胞(B)を示す。
図10】hnCD16-CD38-/-誘導NK細胞の表現型と機能分析をhnCD16誘導体NK細胞と比較して示す。(A)フローサイトメトリーによるNKG2A発現、(B)フローサイトメトリーによるNKp46発現、(C)フローサイトメトリーによるKIR2DL2/3発現、(D)フローによるカルシウムフラックス、(E)Incucyte(商標)生細胞イメージングによるHER2発現卵巣細胞株SKOV3に対するADCC。
図11】末梢血NK細胞と比較した、CD38ノックアウトを有するか、または有さない誘導NK細胞におけるダラツムマブ媒介性NK細胞フラトリサイドを示す。異なるNK細胞集団に対するダラツムマブの特異的な細胞傷害性は、濃度を上げながらダラツムマブの存在下で示されたiNK細胞の4時間のインキュベート後に測定された。
図12】CD38 null hnCD16誘導NK細胞により媒介される、増強されたダラツムマブ抗骨髄腫活性を示す。示されているiNK細胞をMM.1S骨髄腫標的細胞と18時間インキュベートした後、腫瘍細胞の生存率をフローサイトメトリーによって、アネキシンVと生/死生存率マーカーで評価した。
図13】hnCD16 CD38-/-iNK細胞が増強された、長期にわたる抗骨髄腫活性およびダラツムマブによる持続性を示すことを示す。(A)RMPI-8226腫瘍スフェロイドに対する7日間の細胞傷害性アッセイにわたって、7日間の細胞傷害性アッセイの最後に残っている標的細胞の数によって測定された腫瘍細胞のクリアランス、(B)NK細胞フラトリサイドの欠如は、7日間の細胞傷害性アッセイにわたって、hnCD16 CD38-/-iNKの生存率を改善した。
図14】CD38を欠くiNK細胞が、ダラツムマブの存在下で連続殺傷の可能性が増加した、より耐久性の高いADCCを有することを示す。
図15】全長のIL15/IL15Rα融合コンストラクト(黒丸;陽性対照)、または細胞質シグナル伝達ドメインを有さない短縮IL15/IL15Rα融合コンストラクト(白丸)で形質導入されたiNK細胞が、外因性の可溶性IL2とは無関係に、同じ培養で形質導入されていないか、またはGFP形質導入された細胞と比較して、生存の利点を有していた。A:外因性IL2の存在下、B:外因性IL2の存在なし。
【発明を実施するための形態】
【0037】
iPSC(誘導多能性幹細胞)のゲノム改変には、ポリヌクレオチドの挿入、削除、置換が含まれる。ゲノム操作されたiPSCでの外因性遺伝子発現は、元のゲノム操作されたiPSCの長期のクローン増殖後、細胞分化後、ゲノム操作されたiPSCから派生した細胞からの脱分化細胞型において、遺伝子サイレンシング、または低下した遺伝子発現などの問題にしばしば遭遇する。一方、T細胞またはNK細胞などの初代免疫細胞を直接操作することは困難であり、養子細胞療法のための操作された免疫細胞の調製と送達に障害をもたらす。本発明は、自殺遺伝子および他の機能的モダリティを含む1つ以上の外因性遺伝子を安定的に組み込むための効率的で信頼できる標的化アプローチを提供し、これは生着、輸送、ホーミング、遊走、細胞傷害性、生存能力、維持、増殖、寿命、自己複製、持続性、および/または生存率に関する改善された治療的特性を、HSC(造血幹細胞および前駆細胞)、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞を含むが、これらに限定されないiPSC誘導細胞にもたらす。
【0038】
定義
本明細書で特に定義されない限り、本出願に関連して使用される科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈で特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0039】
本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコール、および試薬などに限定されず、したがって変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明するためのみのものであり、特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図しない。
【0040】
本明細書で使用されるとき、冠詞「a」、「an」、および「the」は、本明細書において、冠詞の文法的な対象の、1または1を超えるもの(すなわち、少なくとも1)を指すために本明細書において使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0041】
代替(例えば、「または」)の使用は、耐対の一方、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0042】
「および/または」という用語は、代替の一方または両方のいずれかを意味すると理解されるべきである。
【0043】
本明細書で使用されるよき、「約」または「およそ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さと比較して、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、または1%もの量で変動する、量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。一実施形態では、「約」または「およそ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さの、およそ、±15%、±10%、±9%、±8%、±7%、±6%、±5%、±4%、±3%、±2%、または±1%の、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さの範囲を指す。
【0044】
本明細書で使用されるとき、「実質的に」または「本質的に」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さと比較して、約90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、またはそれ以上である量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さを指す。一実施形態では、「実質的に同じ」または「本質的に同じ」という用語は、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さとほぼ同一である、参照の量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、または長さの範囲を指す。
【0045】
本明細書で使用されるとき、「実質的に含まない」および「本質的に含まない」という用語は互換可能に使用され、細胞集団または培養培地などの組成物を記載するために使用されるとき、例えば、特定の物質またはその供給源の、95%を含まない、96%を含まない、97%を含まない、98%を含まない、99%を含まないなど、または従来の手段で測定して検出できないなどのように、特定の物質またはその供給源を含まない組成物を指す。組成物中の特定の成分または物質を「含まない」または「本質的に含まない」という用語はまた、そのような成分または物質が(1)任意の濃度で組成物に含まれない、または(2)組成物に含まれるが低密度であり機能的に不活性であることも意味する。同様の意味が、「存在しない」という用語に適用され得、組成物の特定の物質またはその供給源が存在しないことを指す。
【0046】
本明細書全体を通して、文脈がそうでないことを必要としない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含むこと(comprising)」は、述べられたステップ、もしくは要素、またはステップもしくは要素の群を含むことを意味するが、任意の他のステップ、もしくは要素、またはステップもしくは要素の群を排除することを意味しないことが理解されるだろう。特定の実施形態では、「含む」、「有する」、「含む」、および「含む」という用語は、同義的に使用される。
【0047】
「~からなる(consisting of)」とは、「~からなる」という語句に続くものを含み、それに限定されることを意味する。したがって、「~からなる」という語句は、列挙された要素が必要または必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。
【0048】
「~から本質的になる(consisting essentially of)」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含むことを意味し、列挙された要素の開示で指定された活性または動作を妨害しないか、またはそれらに寄与しない他の要素に限定される。したがって、「~から本質的になる」という語句は、列挙された要素が必要または必須であることを示すが、他の要素は必要に応じたものではなく、列挙された要素の活性または動作に影響するか否かに応じて存在し得るか、または存在し得ないことを示す。
【0049】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「実施形態」、「特定の実施形態」、「関連する実施形態」、「特定の実施形態」、「追加の実施形態」、もしくは「さらなる実施形態」またはそれらの組み合わせへの言及は、実施形態に関連して記載された特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる様々な場所での前述の語句の出現は、必ずしも全てが同一の実施形態を参照しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、または特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0050】
「ex vivo」という用語は、一般に、好ましくは自然条件の変化を最小限に抑えて、生体外の人工環境内の生体組織内または生体組織上で行われる実験または測定など、生体外で行われる活動を指す。特定の実施形態では、「ex vivo」手順は、生体から採取され、通常無菌条件下で、典型的には数時間または約24時間まで、しかしながら状況に応じて最大48時間もしくは72時間またはそれ以上を含む、実験装置で培養された生細胞または組織を含む。特定の実施形態において、そのような組織または細胞は、収集および凍結され得、そしてex vivo処理のために後に解凍され得る。生存する細胞または組織を使用して数日より長く続く組織培養実験または手順は、典型的には「in vitro」であると考えられるが、特定の実施形態では、この用語はex vivoと互換可能に使用できる。
【0051】
「in vivo」という用語は、一般に、生体内部で起こる活動を指す。
【0052】
本明細書で使用されるとき、「リプログラミング」または「脱分化」または「増加した分化能」または「増加した発生能」という用語は、細胞の分化能を増加させる方法、または細胞をより分化していない状態に脱分化する方法を指す。例えば、増加した分化能は、リプログラミングされていない状態の同一の細胞と比較して、より多くの発生可塑性を有する(すなわち、より多くの細胞型に分化することができる)。換言すると、リプログラミングされた細胞は、リプログラミングされていない状態にある同一の細胞よりも分化されていない状態にある細胞である。
【0053】
本明細書で使用されるとき、「分化」という用語は、特殊化していない(「未コミット」)またはあまり特殊化していない細胞が、例えば、血液細胞または筋細胞などの特殊化細胞の特徴を獲得するプロセスである。分化したまたは分化誘導された細胞は、細胞の系統内でより特殊化された(「コミットされた」)位置を呈する細胞である。「コミットされた」という用語は、分化のプロセスに適用されるとき、通常の状況下で特定の細胞型または細胞型のサブセットに分化し続ける位置まで分化経路を進み、通常の状況下では、異なる細胞型に分化したり、分化度の低い細胞型に戻ったりすることのできない細胞を指す。本明細書で使用されるとき、「多能性」という用語は、生体または体細胞の全ての系統を形成する細胞(すなわち、胚そのもの)の能力を指す。例えば、胚性幹細胞は、3つの胚葉、外胚葉、中胚葉、および内胚葉のそれぞれから細胞を形成できる多能性幹細胞の一種である。多能性は、完全な生体を生じさせることができない不完全なまたは部分的な多能性細胞(例えば、エピブラスト幹細胞またはEpiSC)から、完全な生体を発生することができるより原始的でより多能性の細胞(例えば、胚性幹細胞)まで及ぶ発生能の連続体である。
【0054】
本明細書で使用されるとき、「誘導多能性幹細胞」またはiPSCという用語は、幹細胞が、誘導または変更された、分化した成人、新生児または胎児細胞から生成された、すなわち、3つの全ての胚葉または真皮層:中胚葉、内胚葉、および外胚葉の全ての組織に分化できる細胞にリプログラミングされたことを意味する。生成されたiPSCは、天然に存在する細胞を指さない。
【0055】
本明細書で使用されるとき、「胚性幹細胞」という用語は、胚盤胞の内部細胞塊の天然に存在する多能性幹細胞を指す。胚性幹細胞は多能性であり、全ての3つの主要な胚葉の外胚葉、内胚葉、および中胚葉の誘導体を発生させる。それらは、胚体外膜または胎盤に寄与しない、すなわち、全能性ではない。
【0056】
本明細書で使用されるとき、「多能性幹細胞」という用語は、1つ以上の胚葉(外胚葉、中胚葉、および内胚葉)の細胞に分化するが、3つ全てにではない発生能を有する細胞を指す。したがって、多能性細胞はまた、「部分的に分化した細胞」と呼ばれ得る。多能性細胞は当該技術分野で周知であり、多能性細胞の例には、例えば造血幹細胞および神経幹細胞などの成体幹細胞が含まれる。「多能性」は、細胞が特定の系統の多くの型の細胞を形成するが、他の系統の細胞は形成しないことを示す。例えば、多能性造血細胞は多くの異なる型の血液細胞(赤、白、血小板など)を形成できるが、ニューロンを形成することはできない。したがって、「多分化能」という用語は、全能性および多能性よりも低い発生能の程度を有する細胞の状態を指す。
【0057】
多能性は、細胞の多能性特性を評価することにより、部分的に決定することができる。多能性の特徴には、(i)多能性幹細胞の形態、(ii)無制限の自己複製の可能性、(iii)SSEA1(マウスのみ)、SSEA3/4、SSEA5、TRA1-60/81、TRA1-85、TRA2-54、GCTM-2、TG343、TG30、CD9、CD29、CD133/プロミニン、CD140a、CD56、CD73、CD90、CD105、OCT4、NANOG、SOX2、CD30および/またはCD50などの多能性幹細胞マーカーの発現、(iv)3つ全ての体細胞系統(外胚葉、中胚葉、および内胚葉)に分化する能力、(v)3つの体細胞系統からなる奇形腫の形成、(vi)3つの体細胞系列の細胞からなる胚様体の形成が含まれるが、これらに限定されない。
【0058】
後期胚盤胞の胚盤葉幹細胞(EpiSC)に類似した「プライミング」または「準安定」状態の多能性と、初期/着床前の胚盤胞の内部細胞塊に類似した「ナイーブ」または「グラウンド」状態の多能性の、2つの型の多能性がこれまでに記載されている。両方の多能性状態は上述のような特性を示すが、ナイーブまたはグラウンド状態は、(i)女性細胞におけるX染色体の事前不活性化または再活性化、(ii)単一細胞培養中の向上したクローン性と生存率、(iii)DNAメチル化の全体的な減少、(iv)発生調節遺伝子プロモーター上のH3K27me3抑制クロマチンマーク沈着の減少、(v)プライミング状態の多能性細胞と比較して減少した分化マーカーの発現をさらに示す。外因性多能性遺伝子が体細胞に導入され、発現され、その後、結果として得られる多能性細胞からサイレンシングまたは除去される細胞リプログラミングの標準的な方法論は、一般に、多能性のプライミング状態の特徴を有すると見られている。標準的な多能性細胞培養条件下で、そのような細胞は、外因性導入遺伝子発現が維持されない限り、プライミング状態に留まり、グラウンド状態の特徴が観察される。
【0059】
本明細書で使用されるとき、「多能性幹細胞の形態」という用語は、胚性幹細胞の古典的な形態学的特徴を指す。正常な胚性幹細胞の形態は、高い核対細胞質比を有し、核小体が顕著に存在し、典型的な細胞間間隔がある、形状が丸くて小さいことを特徴とする。
【0060】
本明細書で使用されるとき、「対象」という用語は、任意の動物、好ましくはヒト患者、家畜、または他の飼育動物を指す。
【0061】
「多能性因子」または「リプログラミング因子」は、単独でまたは他の薬剤と組み合わせて、細胞の発生能を増加させることができる薬剤を指す。多能性因子には、非限定的に、細胞の発生能を増加させることができるポリヌクレオチド、ポリペプチド、および小分子が含まれる。例示的な多能性因子には、例えば、転写因子および小分子リプログラミング剤が含まれる。
【0062】
「培養」または「細胞培養」は、in vitro環境における細胞の維持、増殖および/または分化を指す。「細胞培養培地」、「培養培地」(いずれの場合も単数の「培地」)、「補充成分」および「培地補充成分」は、細胞培養を培養する栄養組成物を指す。
【0063】
「培養する」または「維持する」とは、例えば滅菌プラスチック(またはコーティングされたプラスチック)細胞培養皿またはフラスコ内で、組織または体外の細胞を維持、増殖(増殖)、および/または分化させることを指す。「培養」または「維持すること」は、細胞の増殖および/または維持に役立つ栄養素、ホルモン、および/または他の因子の供給源として培地を利用することができる。
【0064】
本明細書で使用されるとき、「中胚葉」という用語は、初期胚発生中に出現し、循環系の血液細胞、筋肉、心臓、真皮、骨格、その他の支持組織と結合組織を含む様々な特殊化された細胞型を生じさせる、3つの胚葉のうちの1つを指す。
【0065】
本明細書で使用される場とき、「二次造血内皮」(HE)または「多能性幹細胞由来の二次造血内皮」(iHE)という用語は、内皮造血転換と呼ばれるプロセスにおいて造血幹細胞および前駆細胞を生じさせる内皮細胞のサブセットを指す。胚における造血細胞の発生は、側板中胚葉から血管芽細胞を経て二次造血内皮細胞および造血前駆細胞へと順次進行する。
【0066】
「造血幹細胞および前駆細胞」、「造血幹細胞」、「造血前駆細胞」、または「造血前駆細胞」という用語は、造血系統にコミットしているが、さらなる造血分化が可能であり、多能性造血幹細胞(血球)、骨髄前駆細胞、巨核球前駆細胞、赤血球前駆細胞、およびリンパ球前駆細胞を含む細胞を指す。造血幹細胞および前駆細胞(HSC)は、骨髄系(単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)、およびリンパ系(T細胞、B細胞、NK細胞)を含む全ての血液細胞型を生じる多能性幹細胞である。本明細書で使用されるとき、「二次造血幹細胞」という用語は、T細胞、NK細胞、およびB細胞を含む成熟骨髄性とリンパ性細胞型の両方を生じさせることができるCD34+造血細胞を指す。造血細胞はまた、原始赤血球、巨核球、およびマクロファージを生じさせる原始造血細胞の様々なサブセットを含む。
【0067】
本明細書で使用されるとき、「Tリンパ球」および「T細胞」という用語は互換可能に使用され、胸腺での成熟を完了し、体内の特定の外来抗原の同定、ならびに他の免疫細胞の活性化および不活性化を含む免疫系における様々な役割を有する主要なタイプの白血球を指す。T細胞は、任意のT細胞、例えば、培養T細胞、例えば、初代T細胞、または培養T細胞株、例えば、Jurkat、SupT1などからのT細胞、または哺乳動物から得られたT細胞であり得る。T細胞はCD3+細胞であり得る。T細胞は、CD4+/CD8+二重陽性T細胞、CD4+ヘルパーT細胞(例えば、Th1およびTh2細胞)、CD8+T細胞(例えば、細胞傷害性T細胞)、末梢血単核細胞(PBMC)、末梢血白血球(PBL)、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、メモリーT細胞、ナイーブT細胞、制御性T細胞、ガンマデルタT細胞(γδT細胞)、などを含むが、これらに限定されない、任意のタイプのT細胞であることができ、任意の発生段階のものであることができる。追加のタイプのヘルパーT細胞には、Th3(Treg)、Th17、Th9、またはTfh細胞などの細胞が含まれる。追加のタイプのメモリーT細胞には、セントラルメモリーT細胞(Tcm細胞)、エフェクターメモリーT細胞(Tem細胞およびTEMRA細胞)などの細胞が含まれる。T細胞は、T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変されたT細胞などの遺伝子操作されたT細胞を指すこともできる。T細胞は、幹細胞または前駆細胞から分化させることもできる。
【0068】
「CD4+T細胞」は、それらの表面でCD4を発現し、細胞性免疫応答に関連するT細胞のサブセットを指す。それらは刺激後の分泌プロファイルによって特徴付けられ、IFN-ガンマ、TNF-アルファ、IL2、IL4、およびIL10などのサイトカインの分泌が含まれ得る。「CD4」は、もともとTリンパ球の分化抗原として定義された55-kDの糖タンパク質であるが、単球/マクロファージを含む他の細胞にも見出される。CD4抗原は免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、MHC(主要組織適合性複合体)クラスII拘束性免疫応答の関連認識要素として関与している。Tリンパ球では、ヘルパー/インデューサーのサブセットを定義する。
【0069】
「CD8+T細胞」は、それらの表面上でCD8を発現し、MHCクラスI拘束性であり、そして細胞傷害性T細胞として機能するT細胞のサブセットを指す。「CD8」分子は、胸腺細胞と細胞傷害性およびサプレッサーTリンパ球に見られる分化抗原である。CD8抗原は免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーであり、主要組織適合性複合体クラスI拘束性相互作用の関連認識要素である。
【0070】
本明細書で使用されるとき、「NK細胞」または「ナチュラルキラー細胞」という用語は、CD56またはCD16の発現およびT細胞受容体(CD3)の不在によって定義される末梢血リンパ球のサブセットを指す。本明細書で使用されるとき、「適応NK細胞」および「メモリーNK細胞」という用語は互換可能であり、表現型的にCD3-およびCD56+であり、NKG2CおよびCD57のうちの少なくとも1つ、ならびに必要に応じてCD16を発現するが、PLZF、SYK、FceRγ、およびEAT-2のうちの1つ以上の発現を欠く、NK細胞のサブセットを指す。いくつかの実施形態では、CD56+NK細胞の単離された亜集団は、CD16、NKG2C、CD57、NKG2D、NCRリガンド、NKp30、NKp40、NKp46、活性化および抑制性KIR、NKG2A、ならびに/またはDNAM-1の発現を含む。CD56+は、暗いまたは明るい発現であり得る。
【0071】
本明細書で使用されるとき、「NKT細胞」または「ナチュラルキラーT細胞」という用語は、T細胞受容体(TCR)を発現するCD1d拘束性T細胞を指す。従来の主要組織適合性(MHC)分子によって提示されるペプチド抗原を検出する従来のT細胞とは異なり、NKT細胞は、非古典的MHC分子であるCD1dによって提示される脂質抗原を認識する。2つのタイプのNKT細胞が認識される。インバリアントまたはI型NKT細胞は、非常に限られたTCRレパートリー-限定された範囲のβ鎖(ヒトではVβ11)に関連する正規のα鎖(ヒトではVα24-Jα18)を発現する。非古典的または非インバリアントのタイプII NKT細胞と呼ばれるNKT細胞の第2の集団は、より不均一なTCRαβの使用を提示する。I型NKT細胞は免疫療法に適していると考えられている。適応またはインバリアント(I型)NKT細胞は、TCR Va24-Ja18、Vb11、CD1d、CD3、CD4、CD8、aGalCer、CD161、およびCD56のマーカーのうちの少なくとも1つ以上の発現によって識別できる。
【0072】
本明細書で使用されるとき、「単離された」などの用語は、その元の環境から分離された、すなわち、単離された細胞の環境は、「分離されていない」参照細胞が存在する環境に見出される少なくとも1つの成分を実質的に含まない細胞または細胞の集団を指す。この用語は、例えば、組織または生検試料から単離された、その天然環境で見られるようないくつかまたは全ての成分から取り出された細胞を含む。この用語はまた、細胞が非天然環境、例えば、細胞培養物または細胞懸濁液から単離された環境で見られるため、少なくとも1つ、いくつか、または全ての成分から取り出された細胞を含む。したがって、単離された細胞は、天然で見られる場合、または非天然の環境で増殖、保管、または存続する場合、他の物質、細胞、または細胞集団を含む少なくとも1つのコンポーネントから部分的または完全に分離される。単離された細胞の具体例には、部分的に純粋な細胞組成物、実質的に純粋な細胞組成物、および天然に存在しない培地で培養された細胞が含まれる。単離された細胞は、所望の細胞またはその集団を、環境中の他の物質または細胞から分離することから、または環境から1つ以上の他の細胞集団または亜集団を取り除くことから得ることができる。
【0073】
本明細書中で使用されるとき、「精製する」などの用語は、純度を増加することをいう。例えば、純度は少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、または100%に増加させることができる。
【0074】
本明細書で使用されるとき、「コードすること」という用語は、ヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNA、およびmRNA)の定義された配列またはアミノ酸の定義された配列およびそれらから生じる生物学的特性を有する生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび巨大分子の合成のためのテンプレートとして機能する、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性を指す。したがって、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的システムでタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に記載されているコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のテンプレートとして使用される非コード鎖の両方を、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードしているということができる。
【0075】
「コンストラクト」は、in vitroまたはin vivoのいずれかで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む高分子または分子の複合体を指す。本明細書で使用されるとき、「ベクター」は、外来遺伝物質の標的細胞への送達または導入を誘導することができ、標的細胞で複製および/または発現することができる任意の核酸コンストラクトを指す。本明細書で使用されるとき、「ベクター」という用語は、送達されるコンストラクトを含む。ベクターは、直鎖状または環状分子であり得る。ベクターは、組み込まれることも組み込まれないこともできる。ベクターの主なタイプには、プラスミド、エピソームベクター、ウイルスベクター、コスミド、および人工染色体が含まれるが、これらに限定されない。ウイルスベクターには、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
「組み込み」とは、コンストラクトの1つ以上のヌクレオチドが細胞ゲノムに安定して挿入される、すなわち、細胞の染色体DNA内の核酸配列に共有結合されることを意味する。「標的化された組み込み」とは、コンストラクトのヌクレオチドが、予め選択された部位または「組み込み部位」で細胞の染色体またはミトコンドリアDNAに挿入されることを意味する。本明細書で使用されるとき、「組み込み」という用語は、組み込み部位での内因性配列またはヌクレオチドの欠失を伴うかまたは伴わない、コンストラクトの1つ以上の外因性配列またはヌクレオチドの挿入を含むプロセスをさらに指す。挿入部位に欠失がある場合、「組み込み」は、内因性配列または1つ以上の挿入されたヌクレオチドで欠失されたヌクレオチドの置換をさらに含み得る。
【0077】
本明細書で使用されるとき、「外因性」という用語は、参照分子または参照活性が宿主細胞に導入されるか、または宿主細胞に対して非天然であることを意味することを意図している。分子は、例えば、コード核酸を宿主の遺伝物質に導入することにより、例えば、宿主の染色体に組み込むことにより、または非染色体の遺伝物質、例えば、プラスミドとして導入することができる。したがって、コード核酸の発現に関して使用される用語は、コード核酸を発現可能な形態で細胞に導入することを指す。「内因性」という用語は、宿主細胞に存在する参照された分子または活性を指す。同様に、この用語は、コード核酸の発現に関して使用されるとき、細胞内に含まれ、外因的に導入されていないコード核酸の発現を指す。
【0078】
本明細書で使用されるとき、「目的の遺伝子」または「目的のポリヌクレオチド配列」は、適切な調節配列の制御下に置かれると、RNAに転写され、場合によってはin vivoでポリペプチドに翻訳されるDNA配列である。目的の遺伝子またはポリヌクレオチドは、原核生物配列、真核生物のmRNAからのcDNA、真核生物(例えば、哺乳動物)のDNAからのゲノムDNA配列、および合成DNA配列を含み得るが、これらに限定されない。例えば、目的の遺伝子は、miRNA、shRNA、天然のポリペプチド(すなわち、天然に見られるポリペプチド)またはそれらの断片、バリアントポリペプチド(すなわち、天然ポリペプチドと100%未満の配列同一性を有する天然ポリペプチドの変異体)またはその断片、改変されたポリペプチドまたはペプチド断片、治療用のペプチドまたはポリペプチド、イメージングマーカー、選択可能なマーカーなどをコードし得る。
【0079】
本明細書で使用されるとき、「ポリヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかである、任意の長さのポリマー形態のヌクレオチドを指す。ポリヌクレオチドの配列は、4つのヌクレオチド塩基:シアデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);および、ポリヌクレオチドがRNAであるときにはチミンの代わりにウラシル(U)からなる。ポリヌクレオチドには、遺伝子または遺伝子断片(例えば、プローブ、プライマー、EST、またはSAGEタグ)、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐鎖ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離DNA、任意の配列の単離RNA、核酸プローブおよびプライマーが含まれ得る。ポリヌクレオチドはまた、二本鎖分子と一本鎖分子の両方を指す。
【0080】
本明細書で使用されるとき、「ペプチド」、「ポリペプチド」、および「タンパク質」という用語は互換可能に使用され、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸残基を有する分子を指す。ポリペプチドは少なくとも2つのアミノ酸を含まなければならず、ポリペプチドのアミノ酸の最大数に制限はない。本明細書で使用されるとき、これらの用語は、例えば、当該技術分野では一般にペプチド、オリゴペプチドおよびオリゴマーとも呼ばれる短い鎖と、一般に当該技術分野でポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる長い鎖の両方を指す。「ポリペプチド」には、例えば、とりわけ、生物学的に活性な断片、実質的に相同なポリペプチド、オリゴペプチド、ホモ二量体、ヘテロ二量体、ポリペプチドのバリアント、改変ポリペプチド、誘導体、類似体、融合タンパク質が含まれる。ポリペプチドは、天然ポリペプチド、組換えポリペプチド、合成ポリペプチド、またはそれらの組み合わせを含む。
【0081】
「作動可能に連結された」とは、一方の機能が他方の影響を受ける、単一の核酸断片上の核酸配列の結合を指す。例えば、プロモーターは、そのコード配列または機能的RNAの発現に影響を与えることができる場合、コード配列または機能的RNAと作動可能に連結している(すなわち、コード配列または機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある)。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で制御配列に作動可能に連結することができる。
【0082】
本明細書で使用されるとき、「遺伝子インプリント」という用語は、ソース細胞またはiPSCの優先的な治療属性に寄与し、ソース細胞由来のiPSCおよび/またはiPSC由来の造血系統細胞で保持可能な遺伝的またはエピジェネティックな情報を指す。本明細書で使用されるとき、「ソース細胞」は、リプログラミングを通じてiPSCを生成するために使用され得る非多能性細胞であり、ソース細胞由来のiPSCは、任意の造血系統細胞を含む特定の細胞型にさらに分化し得る。ソース細胞由来のiPSC、およびそこから分化した細胞は、文脈に応じて、「誘導」細胞または「誘導」細胞と総称し得る。例えば、本出願全体で使用される誘導エフェクター細胞、または誘導NK細胞または誘導T細胞は、末梢血、臍帯血、または他のドナー組織などの天然/天然供給源から取得されたそれらの主要な対応物と比較するとき、iPSCから分化した細胞である。本明細書で使用されるとき、優先的な治療属性を付与する遺伝的インプリントは、ドナー、疾患、または治療応答に特異的である選択されたソース細胞をリプログラミングすることにより、またはゲノム編集を用いてiPSCに遺伝子組み換えモダリティを導入することにより、iPSCに組み込まれる。特異的な選択されたドナー、疾患、または治療状況から得られたソース細胞の態様では、優先的な治療属性に寄与する遺伝的インプリントには、根本的な分子イベントが識別されているかどうかに関係なく、選択されたソース細胞の誘導細胞に渡される、保持可能な表現型、すなわち優先的な治療属性を表す、状況特異的な遺伝的またはエピジェネティックを含み得る。ドナー、疾患、または治療応答に特異的なソース細胞は、iPSCおよび派生した造血系統細胞で保持可能な遺伝子インプリントを含むことができ、これらの遺伝子インプリントには、ウイルス特異的T細胞またはインバリアントナチュラルキラーT(iNKT)細胞からの事前に配置された単一特異性TCR、追跡可能な望ましい遺伝的多型、例えば、選択されたドナーの高親和性CD16受容体をコードする点変異のホモ接合性、所定のHLA要件、すなわち、集団が増加したハプロタイプを示す選択されたHLA適合ドナー細胞が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用されるとき、優先的な治療属性には、誘導細胞の、改善された生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、免疫応答の調節と調整、生存率、および細胞傷害性が含まれる。優先的な治療属性はまた、抗原標的化受容体の発現、HLAの提示またはその欠如、腫瘍微小環境への耐性、バイスタンダー免疫細胞の誘導と免疫調節、腫瘍外効果が低減された改善された標的特異性、化学療法などの治療に対する耐性にも関連している可能性がある。
【0083】
本明細書で使用されるとき、「増強された治療特性」という用語は、同じ一般的な細胞型の典型的な免疫細胞と比較して増強された細胞の治療特性を指す。例えば、「増強された治療特性」を有するNK細胞は、典型的な未改変および/または天然に存在するNK細胞と比較して、増強され、改善され、および/または増加した治療特性を有する。免疫細胞の治療特性には、細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、免疫応答の調節と調節、生存率、および細胞傷害性が含まれるが、これらに限定されない。免疫細胞の治療特性は、抗原標的化受容体の発現、HLAの提示またはその欠如、腫瘍微小環境への耐性、バイスタンダー免疫細胞の誘導と免疫調節、腫瘍外効果が低減された改善された標的特異性、化学療法などの治療に対する耐性によっても表れる。
【0084】
本明細書で使用されるとき、「エンゲージャー」という用語は、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、好中球と、腫瘍細胞との間の連結を形成することができ、免疫細胞を活性化することができる分子、例えば融合ポリペプチドを指す。エンゲージャーの例には、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)、二重特異性キラー細胞エンゲージャー(BiKE)、三重特異性キラー細胞エンゲージャー、または多重特異性キラー細胞エンゲージャー、または複数の免疫細胞型と適合し得るユニバーサルエンゲージャーが含まれるが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書で使用されるとき、「表面トリガー受容体」という用語は、免疫応答、例えば細胞傷害性応答を誘発または開始することができる受容体を指す。表面トリガー受容体を操作することができ、エフェクター細胞、例えば、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、好中球で発現させることができる。いくつかの実施形態では、表面トリガー受容体は、エフェクター細胞の天然受容体および細胞型とは無関係に、エフェクター細胞と特異的な標的細胞、例えば腫瘍細胞との間の二重特異性抗体または多重特異性抗体の結合を促進する。このアプローチを使用すると、ユニバーサル表面トリガー受容体を含むiPSCを生成し、そのようなiPSCをユニバーサル表面トリガー受容体を発現するさまざまなエフェクター細胞型の集団に分化させることができる。「ユニバーサル」とは、表面トリガー受容体が細胞タイプに関係なく任意のエフェクター細胞で発現および活性化できることを意味し、ユニバーサル受容体を発現する全てのエフェクター細胞は、エンゲージャーの腫瘍結合特異性に関係なく、表面トリガー受容体によって認識できる同じエピトープを有するエンゲージャーに結合または連結できる。いくつかの実施形態では、同じ腫瘍標的化特異性を有するエンゲージャーを使用して、ユニバーサル表面トリガー受容体と結合する。いくつかの実施形態では、異なる腫瘍標的化特異性を有するエンゲージャーを使用して、ユニバーサル表面トリガー受容体と結合する。したがって、1つ以上のエフェクター細胞型を使用して、特異的な型の腫瘍細胞を殺傷する場合もあれば、2つ以上の型の腫瘍を殺傷する場合もある。表面トリガー受容体は一般に、エフェクター細胞の活性化のための共刺激ドメインと、エンゲージャーのエピトープに特異的な抗エピトープとを含む。二重特異性エンゲージャーは、一方の端の表面トリガー受容体の抗エピトープに特異的であり、もう一方の端の腫瘍抗原に特異的である。
【0086】
本明細書で使用されるとき、「安全スイッチタンパク質」という用語は、細胞療法の潜在的な毒性またはその他の有害作用を防止するように設計された操作されたタンパク質を指す。いくつかの例では、安全スイッチタンパク質の発現は条件付きで制御され、安全スイッチタンパク質をコードする遺伝子をゲノムに永久的に組み込んだ移植された操作された細胞の安全性の懸念に対処する。この条件付き調節は変動する可能性があり、小分子を介した翻訳後活性化および組織特異的および/または一過性の転写調節による制御が含まれる可能性がある。安全スイッチは、アポトーシスの誘導、タンパク質合成の阻害、DNA複製、増殖停止、転写および転写後の遺伝子調節および/または抗体媒介性枯渇を媒介する可能性がある。いくつかの例において、安全スイッチタンパク質は、外因性分子、例えばプロドラッグによって活性化され、活性化されると、治療用細胞のアポトーシスおよび/または細胞死を誘発する。安全スイッチタンパク質の例には、カスパーゼ9(またはカスパーゼ3もしくは7)、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、B細胞CD20、改変EGFR、およびそれらの任意の組み合わせなどの自殺遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。この戦略では、有害事象の発生時に投与されるプロドラッグが自殺遺伝子産物によって活性化され、形質導入された細胞を殺傷する。
【0087】
本明細書で使用されるとき、「薬学的に活性なタンパク質またはペプチド」という用語は、生物に対して生物学的および/または薬学的効果を達成することができるタンパク質またはペプチドを指す。薬学的に活性なタンパク質は、疾患に対する治癒的または緩和的特性を有し、疾患の重症度を改善、軽減、緩和、逆転または軽減するために投与することができる。薬学的に活性なタンパク質はまた、予防特性を有し、疾患の発症を予防するために、またはそれが出現した場合にそのような疾患または病態の重症度を軽減するために使用される。薬学的に活性なタンパク質には、タンパク質またはペプチド全体またはその薬学的に活性な断片が含まれる。それはまた、タンパク質もしくはペプチドの薬学的に活性な類似体またはタンパク質もしくはペプチドの断片の類似体を含む。薬学的に活性なタンパク質という用語はまた、協調的または相乗的に作用して治療効果をもたらす複数のタンパク質またはペプチドを指す。薬学的に活性なタンパク質またはペプチドの例には、受容体、結合タンパク質、転写および翻訳因子、腫瘍成長抑制タンパク質、抗体またはその断片、増殖因子、および/またはサイトカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0088】
本明細書で使用されるとき、「シグナル伝達分子」という用語は、細胞シグナル伝達を調節、関与、阻害、活性化、低減、または増大させる任意の分子を指す。シグナル伝達とは、細胞内で最終的に生化学的事象を引き起こす経路に沿ったタンパク質複合体の動員による化学改変の形での分子シグナルの伝達を指す。シグナル伝達経路は当該技術分野で周知であり、Gタンパク質共役受容体シグナル伝達、チロシンキナーゼ受容体シグナル伝達、インテグリンシグナル伝達、トールゲートシグナル伝達、リガンド依存性イオンチャネルシグナル伝達、ERK/MAPKシグナル伝達経路、Wntシグナル伝達経路、cAMP依存経路、およびIP3/DAGシグナル伝達経路が含まれるが、これらに限定されない。
【0089】
本明細書で使用されるとき、用語「標的化モダリティ」は、細胞に遺伝的に組み込まれて、i)固有のキメラ抗原受容体(CAR)またはT細胞受容体(TCR)に関連するときの抗原特異性、ii)モノクローナル抗体または二重特異性エンゲージャーに関連するときのエンゲージャー特異性、iii)形質転換細胞の標的化、iv)がん幹細胞の標的化、およびv)特異的な抗原または表面分子の非存在下でのその他の標的化戦略を含むがこれらに限定されない、抗原および/またはエピトープの特異性を促進する分子、例えば、ポリペプチドを指す。
【0090】
本明細書で使用されるとき、「特異的」または「特異性」という用語は、非特異的または非選択的な結合とは対照的に、標的分子に選択的に結合する分子、例えば受容体またはエンゲージャーの能力を指すために使用できる。
【0091】
本明細書で使用されるとき、「養子細胞療法」という用語は、輸血の前にex vivoで増殖している、遺伝子改変された、または改変されていない、TまたはB細胞として同定される、自家性または同種異系のリンパ球の輸血に関連する、本明細書で使用される、細胞ベースの免疫療法を指す。
【0092】
本明細書で使用されるとき、「治療上十分な量」は、その意味の範囲内で、それが参照する特定の治療および/または医薬組成物の非毒性であるが十分かつ/または有効な量を含み、所望の治療効果を提供する。必要とされる正確な量は、患者の全体的な健康状態、患者の年齢、ならびに状態の病気および重症度などの要因に応じて、対象ごとに異なる。特定の実施形態では、治療的に十分な量は、治療されている対象の疾患または状態に関連する少なくとも1つの症状を改善、軽減、および/または改善するのに十分および/または有効である。
【0093】
多能性幹細胞の分化には、培養液中の刺激剤および細胞の物理的状態の変化など、培養系の変化が必要とされる。最も一般的な戦略は、系統特異的な分化を開始するための共通かつ重要な中間体として胚様体(EB)の形成を利用する。「胚様体」とは、胚の発生を模倣することが示されている3次元のクラスターであり、3次元領域内で多数の系統を発生させる。通常は数時間から数日である分化プロセスを通じて、単純なEB(例えば、分化を誘発された凝集多能性幹細胞)は成熟を続け、嚢胞性EBにまで成長し、典型的には数日から数週間であるこのとき、それらは、さらに分化を続けるように処理される。EB形成は、多能性幹細胞を細胞の3次元多層クラスター内で互いに近接させることによって開始さ、これは典型的には、多能性細胞を液滴として沈降させ、細胞を「U」底ウェルプレートに沈降させること、または機械的攪拌によるものを含むいくつかの方法の1つによって実現される。多能性培養維持培地で維持された凝集体は適切なEBを形成しないため、EBの成長を促進するために、多能性幹細胞の凝集体にはさらに分化の手掛かりが必要である。そのため、多能性幹細胞の凝集体は、選択した系統へのキュー誘発を提供する分化培地に移す必要がある。多能性幹細胞のEBベースの培養は、典型的には、EB細胞クラスター内の中程度の増殖の分化した細胞集団(外胚葉、中胚葉、および内胚葉の胚葉)を生成する。EBは、細胞分化を促進することが証明されているが、環境からの分化のキューに対する3次元構造の細胞の露出に一貫性がないため、さまざまな分化状態の異種細胞を生じさせる。さらに、EBは作成と保守が面倒である。さらに、EBによる細胞分化には適度な細胞増殖が伴い、分化効率の低下にもつながる。
【0094】
対照的に、「凝集体形成」は、「EB形成」とは異なり、多能性幹細胞由来細胞の集団を増殖させるために使用することができる。例えば、凝集体に基づく多能性幹細胞の増殖の間、培養培地は、増殖および多能性を維持するように選択される。細胞増殖は一般に、より大きな凝集体を形成する凝集体のサイズを増加させ、これらの凝集体は、日常的に機械的または酵素的に小さな凝集体に解離して、培養内の細胞増殖を維持し、細胞数を増やすことができる。EB培養とは異なり、維持培養で凝集体内で培養された細胞は、多能性のマーカーを維持する。多能性幹細胞凝集体は、分化を誘導するためにさらなる分化のキューを必要とする。
【0095】
本明細書で使用されるとき、「単層分化」は、細胞の三次元多層クラスターによる分化とは異なる分化方法、すなわち「EB形成」を指す用語である。本明細書に開示される他の利点の中でも単層分化は、分化開始のためのEB形成の必要性を回避する。単層培養はEB形成などの胚発生を模倣しないため、特定の系統への分化は、EBの3つ全ての胚葉分化と比較して最小限とみなされる。
【0096】
本明細書で使用されるとき、「解離した」細胞は、他の細胞からまたは表面(例えば、培養プレート表面)から実質的に分離または精製された細胞をいう。例えば、細胞は、機械的または酵素的方法によって動物または組織から解離され得る。代替的に、in vitroで凝集する細胞は、例えば、クラスターの懸濁液、単一の細胞または単一の細胞とクラスターの混合物への酵素的または機械的な解離によって、互いに解離され得る。さらに別の代替的な実施形態では、付着細胞は培養プレートまたは他の表面から解離される。したがって、解離には、細胞外マトリックス(ECM)および基質(培養面など)との細胞相互作用を破壊すること、または細胞間のECMを破壊することが含まれる。
【0097】
本明細書で使用されるとき、「フィーダー細胞」または「フィーダー」は、第2の型の細胞と共培養されて、第2の型の細胞が増殖、増殖、または分化できる環境を提供する、1つの型の細胞を表す用語であり、フィーダー細胞は刺激、増殖因子、栄養素を提供し、第2の細胞型を支持する。フィーダー細胞は、それらが支持している細胞とは異なる種に由来してもよい。例えば、幹細胞を含む特定の型のヒト細胞は、マウス胚性線維芽細胞または不死化マウス胚性線維芽細胞の初代培養によって支持することができる。別の例では、末梢血由来細胞または形質転換白血病細胞は、ナチュラルキラー細胞の増殖および成熟を支持する。フィーダー細胞は、他の細胞と共培養されるときに、それらが支持している細胞よりも増殖するのを防ぐために、照射またはマイトマイシンなどの抗有糸分裂剤での処理によって、典型的には不活性化され得る。フィーダー細胞は、内皮細胞、間質細胞(例えば、上皮細胞または線維芽細胞)、および白血病細胞を含み得る。前述を限定することなく、1つの特定のフィーダー細胞型は、ヒト皮膚線維芽細胞などのヒトフィーダーであり得る。別のフィーダー細胞型は、マウス胚性線維芽細胞(MEF)であり得る。一般に、さまざまなフィーダー細胞を一部使用して、多能性を維持し、特定の系統に分化を指示し、増殖能力を高め、エフェクター細胞などの特特殊化した細胞型への成熟を促進することができる。
【0098】
本明細書で使用されるとき、「フィーダーフリー」(FF)環境とは、フィーダーまたは間質細胞を本質的に含まない、および/またはフィーダー細胞の培養によって前処理されていない、培養条件、細胞培養または培養培地などの環境を指す。「前処理された」培地とは、フィーダー細胞が培地内で少なくとも1日などの期間培養された後に採取された培地を指す。前処理された培地には、培地で培養されたフィーダー細胞から分泌された増殖因子およびサイトカインを含む、多くのメディエーター物質が含まれる。いくつかの実施形態では、フィーダーフリー環境は、フィーダー細胞または間質細胞の両方を含まず、フィーダー細胞の培養によって前処理もされていない。
【0099】
iPSC、およびそこから分化した由来非多能性細胞のゲノム編集または改変、または非多能性細胞およびそこからリプログラミングされた由来iPSCのゲノム編集または改変の文脈で使用される「機能的」とは、(1)直接的なゲノム編集または改変によって、または最初にゲノム操作された開始細胞からの分化またはリプログラミングを介した「通過」によって達成される、遺伝子レベルでの成功したノックイン、ノックアウト、ノックダウンの遺伝子発現、トランスジェニックまたは制御された遺伝子発現、例えば所望の細胞発生段階における誘導性または一過性の発現など、あるいは(2)(i)直接的なゲノム編集により上記細胞で得られた遺伝子発現の改変、(ii)最初にゲノム操作された開始細胞からの分化またはリプログラミングを介した「通過」による上記細胞で維持される遺伝子発現改変、(iii)上記細胞の初期発生段階でのみ現れるか、または分化またはリプログラミングを介して上記細胞を生じさせる開始細胞でのみ現れる遺伝子発現改変の結果としての上記細胞の下流の遺伝子調節、あるいは(iv)iPSC、前駆細胞、または脱分化した細胞起源で行われたゲノム編集または改変に最初に由来する、成熟細胞製品内で提示された増強または新たに達成された細胞機能または属性による、細胞レベルでの除去、付加、または細胞機能/特性の変更を指す。
【0100】
HLAクラスI欠損、もしくはHLAクラスII欠損、またはその両方を含む「HLA欠損」とは、HLAクラスIタンパク質ヘテロ二量体および/またはHLAクラスIIヘテロ二量体を含む完全なMHC複合体の表面発現のレベルが不足している、またはもはや維持されていない、または低下、減少または低下したレベルが、他の細胞または合成方法によって自然に検出可能なレベルよりも低くなっている細胞を指す。
【0101】
本明細書で使用されるとき、「改変されたHLA欠損iPSC」は、改善された分化能、抗原標的化、抗原提示、抗体認識、持続性、免疫回避、抑制に対する耐性、増殖、共刺激、サイトカイン刺激、サイトカイン産生(オートクリンまたはパラクリン)、走化性、および細胞傷害性、例えば、非古典的HLAクラスIタンパク質(例えば、HLA-EおよびHLA-G)、キメラ抗原受容体(CAR)、T細胞受容体(TCR)、CD16 Fc受容体、BCL11b、NOTCH、RUNX1、IL15、41BB、DAP10、DAP12、CD24、CD3z、41BBL、CD47、CD113、およびPDL1に関連するがこれらに限定されないタンパク質を発現する遺伝子を導入することによってさらに改変されるHLA欠損iPSCを指す。「改変されたHLA欠損」の細胞には、iPSC以外の細胞も含まれる。
【0102】
「Fc受容体」はFcRと略され、認識される抗体の種類に基づいて分類される。例えば、最も一般的なクラスの抗体IgGに結合するものはFc-ガンマ受容体(FcγR)と呼ばれ、IgAに結合するものはFc-alpha受容体(FcαR)と呼ばれ、IgEに結合するものはFc-イプシロン受容体(FcεR)と呼ばれる。FcRのクラスは、それらを発現する細胞(マクロファージ、顆粒球、ナチュラルキラー細胞、TおよびB細胞)と各受容体のシグナル伝達特性によっても区別される。Fc-ガンマ受容体(FcγR)には、FcγRI(CD64)、FcγRIIA(CD32)、FcγRIIB(CD32)、FcγRIIIA(CD16a)、FcγRIIIB(CD16b)など、分子構造が異なるために抗体親和性が異なるいくつかのメンバーが含まれる。
【0103】
CFcRと略される「キメラFc受容体」は、天然の膜貫通および/または細胞内シグナル伝達ドメインが改変されたか、または非天然の膜貫通および/または細胞内シグナル伝達ドメインで置き換えられた操作されたFc受容体を記載するために使用される用語である。キメラFc受容体のいくつかの実施形態では、膜貫通およびシグナル伝達ドメインの一方または両方が非天然であることに加えて、1つ以上の刺激ドメインを操作されたFc受容体の細胞内部分に導入して、受容体の誘発による細胞活性化、増殖、および機能を増強することができる。標的抗原への抗原結合ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)とは異なり、キメラFc受容体は、Fc断片、または抗体のFc領域、またはエンゲージャーもしくは結合分子に含まれるFc領域に結合し、標的細胞を近傍に近づけるか、または近づけなくとも、分子に結合して細胞機能を活性化する。例えば、Fcγ受容体は、細胞外ドメインでのIgGの結合に応答し、それによりCFcRを生成する細胞内領域において選択された膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、および/またはシグナル伝達ドメインを含むように操作され得る。一例では、CFcRは、その膜貫通ドメインおよび/または細胞内ドメインを置き換えることにより、Fcγ受容体であるCD16を操作することによって生成される。CD16ベースのCFcRの結合親和性をさらに向上させるために、CD64の細胞外ドメインまたはCD16の高親和性バリアント(例えば、F176V)を組み込むことができる。高親和性CD16細胞外ドメインが含まれるCFcRのいくつかの実施形態では、197位にセリンを含むタンパク質分解性切断部位が除去されているか、または受容体の細胞外ドメインが非切断性であるように置き換えられて、すなわち、シェディングされないようになり、これにより、hnCD16ベースのCFcRが取得される。
【0104】
FcγR受容体であるCD16には、Fc受容体FcγRIIIa(CD16a)とFcγRIIIb(CD16b)の2つのアイソフォームがあると同定されている。CD16aは、標的細胞に付着した単量体IgGに結合してNK細胞を活性化し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を促進する、NK細胞によって発現される膜貫通タンパク質である。本明細書で使用されるとき、「高親和性CD16」、「非切断性CD16」、または「高親和性非切断性CD16(hnCD16)」は、CD16の天然または非天然バリアントを指す。野生型CD16は親和性が低く、NK細胞が活性化されると、白血球上のさまざまな細胞表面分子の細胞表面密度を調節するタンパク質分解切断プロセスである外ドメインシェディングに供される。F176VおよびF158Vは、高い親和性を有する例示的なCD16多型バリアントである。膜近位領域(189位~212位)における切断部位(195位~198位)が変更または削除されたCD16バリアントは、シェディングしない。切断部位および膜近位領域は、WO2015148926に詳細に記載されており、その完全な開示は参照により本明細書に組み込まれる。CD16のS197Pバリアントは、CD16の非切断性バージョンである。F158VとS197Pの両方を含むCD16バリアントは親和性が高く、非切断性である。別の例示的な高親和性非切断性CD16(hnCD16)バリアントは、CD64外部ドメインの3つのエクソンの1つ以上に由来する外部ドメインを含む操作されたCD16である。
【0105】
I.増強された特性を持つ養子細胞療法に有用な細胞および組成物
本明細書で提供されるのは、誘導細胞の治療特性を増強しながら、iPSCの分化能およびiPSCおよびその誘導細胞の細胞発生生物学に影響を与えることなくクローンiPSCの調節回路を体系的に操作する戦略である。誘導細胞は機能的に改善されており、選択的モダリティの組み合わせがゲノム工学を通じてiPSCレベルで細胞に導入された後の養子細胞療法に適している。本発明以前には、提供された1つまたは複数の遺伝子編集を含む改変されたiPSCが改変された活性を保持しながら依然として細胞発生に入る能力、および/または成熟して機能的分化細胞を生成する能力を有するかどうかは不明であった。iPSCからの指示された細胞分化中の予期しない失敗は、発生段階の特定の遺伝子発現またはその欠如、HLA複合体提示の要件、導入された表面発現モダリティのタンパク質シェディング、および細胞の表現型および/または機能の変化を可能にする分化プロトコールの再構成の必要性を含むがこれらに限定されない側面に起因する。本出願は、本明細書で提供される1つ以上の選択されたゲノム改変がiPSC分化能に悪影響を及ぼさないこと、ならびに操作されたiPSCに由来する機能エフェクター細胞が、iPSC分化後にエフェクター細胞に保持される、個々のまたは組み合わせたゲノム改変に起因する増強および/または獲得した治療特性を有することを示した。
【0106】
1.CD38ノックアウト
細胞表面分子CD38は、多発性骨髄腫およびCD20陰性B細胞性悪性腫瘍を含む、リンパ系と骨髄系の両方に由来する多発性血液系悪性腫瘍で高度に上方制御されており、これによりがん細胞を枯渇させる抗体治療の魅力的なターゲットとなっている。抗体を介したがん細胞の枯渇は、通常、直接的な細胞アポトーシスの誘導とADCC(抗体依存性細胞傷害)などの免疫エフェクターメカニズムの活性化との組み合わせに起因する。ADCCに加えて、治療用抗体と連携した免疫エフェクター機構には、食作用(ADCP)および/または補体依存性細胞傷害性(CDC)も含まれ得る。
【0107】
CD38はまた、悪性細胞で高度に発現する以外に、形質細胞ならびにNK細胞、活性化T細胞およびB細胞にも発現する。造血中、CD38は、CD34幹細胞と、リンパ系、赤血球系、および骨髄系の系統にコミットした前駆細胞、ならびに形質細胞期まで続く成熟の最終段階で発現する。タイプII膜貫通型糖タンパク質であるCD38は、受容体およびヌクレオチド代謝産物の生産に関与する多機能酵素の両方として細胞機能を果たす。酵素として、CD38は合成とNADからADP-リボースへの反応の加水分解を触媒し、これによって、カルシウム依存性である、細胞接着のプロセスに重要である、小胞体とリソソームからのカルシウムの放出を刺激する二次メッセンジャーCADPRとNAADPを生成する。CD38は受容体としてCD31を認識し、活性化されたNK細胞のサイトカイン放出と細胞傷害性を調節する。CD38は、脂質ラフトの細胞表面タンパク質と会合し、細胞質のCa2+フラックスを調節し、リンパ系および骨髄系細胞のシグナル伝達を媒介することも報告されている。
【0108】
悪性腫瘍の治療では、CD38抗原結合受容体で形質導入されたT細胞を全身的に使用すると、CD34+造血前駆細胞、単球、NK細胞、T細胞、およびB細胞のCD38+画分が溶解し、レシピエントの免疫エフェクター細胞機能が損なわれるため、治療応答が不完全になり、効力が低下または排除される。さらに、CD38特異的抗体であるダラツムマブで治療された多発性骨髄腫患者では、骨髄と末梢血の両方でNK細胞の減少が観察されたが、T細胞やB細胞などの他の免疫細胞タイプは、CD38の発現にもかかわらず影響を受けなかった(Casneuf et al.,Blood Advances.2017;1(23):2105-2114)。理論に拘束されることなく、本出願は、CD38特異的抗体および/またはCD38抗原結合ドメインが誘導するフラトリサイドを通じたエフェクター細胞の枯渇または減少を克服することにより、CD38標的化がん治療の潜在能力を最大限に活用する戦略を提供する。さらに、CD38はT細胞やB細胞などの活性化リンパ球で上方制御されるため、同種異系エフェクター細胞のレシピエントでダラツムマブなどのCD38特異的抗体を使用してこれらのリンパ球の活性化を抑制することにより、これらのエフェクター細胞に対する同種拒絶反応が減少および/または防ぎ、それによってエフェクター細胞の生存率と持続性を増加させる。このように、本出願はまた、レシピエントT細胞およびB細胞の活性化に対するCD38特異的抗体、分泌型CD38特異的エンゲージャーまたはCD38 CAR(キメラ抗原受容体)を使用することによる同種拒絶反応の低減または防止を通じてエフェクター細胞の持続性および/または生存率を増強する戦略を提供する。具体的には、提供される戦略には、CD38ノックアウトiPSC系統の生成と、操作されたiPSC系統の分化誘導によるCD38 null(CD38-/-)誘導エフェクター細胞の取得が含まれる。本出願の前は、CD38が上述のように細胞発生生物学と細胞機能で多くの重要な役割を果たすことを考えると、iPSCにおいてCD38を破壊するとiPSC分化、誘導細胞表現型、およびエフェクター細胞機能を含む側面が混乱するかどうかは不明であった。
【0109】
本明細書で提供される一実施形態では、iPSC株におけるCD38ノックアウトは、二対立遺伝子ノックアウトである。本明細書に開示されるように、提供されるCD38 null iPSC株は、指示された分化をして、決定的な造血内皮(HE)ポテンシャルを有する中胚葉細胞、決定的なHE、CD34造血細胞、造血幹細胞および前駆細胞、造血多能性前駆細胞(MPP)、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、骨髄細胞、好中球前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、好中球、樹状細胞、およびマクロファージを含むがこれらに限定されない機能的な誘導造血細胞を生成することができる。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体を使用してADCCを誘導するか、または抗CD38 CARを標的化細胞殺傷に使用する場合、CD38-/- iPSCおよび/またはその誘導エフェクター細胞は抗CD38抗体または抗CD38 CARによって排除されず、これにより、そのような治療剤の存在下および/または曝露後のiPSCおよびそのエフェクター細胞の持続性および/または生存率を増加させる。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、そのような治療剤の存在下で、および/または曝露後の、in vivoでの持続性および/または生存率が増加している。いくつかの実施形態では、CD38 nullエフェクター細胞は、iPSCに由来するNK細胞である。いくつかの実施形態では、CD38 nullエフェクター細胞は、iPSCに由来するT細胞である。いくつかの実施形態では、CD38 null iPSCおよび誘導細胞は、hnCD16発現、CAR発現、サイトカイン/サイトカイン受容体発現、HLA Iおよび/またはHLAIIノックアウト、ならびに提供される追加のモダリティを含むがこれらに限定されない、本明細書に記載の1つ以上の追加のゲノム編集を含む。
【0110】
2.hnCD16ノックイン
CD16は、Fc受容体FcγRIIIa(CD16a;NM_000569.6)およびFcγRIIIb(CD16b;NM_000570.4)という2つのアイソフォームとして同定されている。CD16aは、標的細胞に付着した単量体IgGに結合してNK細胞を活性化し、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を促進する、NK細胞によって発現される膜貫通タンパク質である。CD16bはヒト好中球によって排他的に発現する。本明細書で使用されるとき、「高親和性CD16」、「非切断性CD16」、または「高親和性非切断性CD16」は、さまざまなCD16バリアントを指す。野生型CD16は親和性が低く、NK細胞が活性化されると、白血球上のさまざまな細胞表面分子の細胞表面密度を調節するタンパク質分解切断プロセスである外部ドメインシェディングに供される。F176V(一部の出版物ではF158Vとも呼ばれます)は、高い親和性を有する例示的なCD16多型バリアントであり、一方、S197Pバリアントは、遺伝子操作された例示的な非切断性バージョンのCD16である。F176VとS197Pの両方を含む操作されたCD16バリアントは、高い親和性を有し、非切断性であり、これは、WO2015/148926により詳細に記載されており、その完全な開示は、参照により本明細書に組み込まれる。さらに、CD16の外部ドメインがCD64の外部ドメインの少なくとも一部で本質的に置き換えられたキメラCD16受容体は、ADCCを実行できるCD16受容体の望ましい高親和性と切断不可能な機能も実現できる。いくつかの実施形態では、キメラCD16の置換外部ドメインは、CD64(UniPRotKB_P12314またはそのアイソフォームまたは多型バリアント)のEC1、EC2、およびEC3エクソンのうちの1つ以上を含む。
【0111】
したがって、いくつかの実施形態では、高親和性非切断性CD16受容体(hnCD16)は、F176VとS197Pの両方を含み、いくつかの実施形態では、F176Vを含み、切断領域が除去されている。いくつかの他の実施形態では、hnCD16は、例示的な配列である、それぞれがCD64外部ドメインの少なくとも一部を含む配列番号7、8、および9のいずれかと比較されるとき、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、100%、またはその間の任意のパーセンテージの同一性を有する配列を含む。配列番号7、8、および9は、それぞれ、配列番号10~12を例示することによりコードされる。本明細書および本出願全体で使用されるように、2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために導入する必要のあるギャップの数と各ギャップの長さを考慮して、配列によって共有される同一の位置の数の関数(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数×100)である。配列の比較と2つの配列間の同一性パーセントの決定は、当該技術分野で認識されている数学的アルゴリズムを使用して実行できる。






【0112】
したがって、本明細書で提供されるのは、本明細書で企図および説明されている他の編集の中でも特に、高親和性非切断性CD16受容体(hnCD16)を含むように遺伝子操作されたクローンiPSCであり、遺伝子操作されたiPSCは、iPSCに導入されたhnCD16を含むエフェクター細胞に分化することができる。いくつかの実施形態では、hnCD16を含む誘導エフェクター細胞はNK細胞である。いくつかの実施形態では、hnCD16を含む誘導エフェクター細胞はT細胞である。iPSCまたはその誘導細胞で発現する外因性hnCD16は、ADCC抗体またはその断片だけでなく、上記hnCD16のCD16またはCD64の細胞外結合ドメインを認識する二重特異性、三重特異性、または多重特異性のエンゲージャーまたはバインダーへの結合にも高い親和性を示す。二重特異性、三重特異性、または多重特異性のエンゲージャーまたはバインダーについては、本出願で以下でさらに説明する(セクションI.7を参照されたい)。このように、本出願は、以下のセクションVでさらに詳述する状態、疾患、または感染症の治療における治療的使用に十分な量で、誘導エフェクター細胞上で発現するhnCD16の細胞外ドメインとの高親和性結合を介して1つ以上の予め選択されたADCC抗体が予めロードされた、誘導エフェクター細胞またはその細胞集団を提供し、上記hnCD16は、CD64の、またはF176VおよびS197Pを有するCD16の細胞外結合ドメインを含む。
【0113】
いくつかの他の実施形態では、hnCD16の天然のCD16膜貫通ドメインおよび/または細胞内ドメインは、キメラFc受容体(CFcR)が非天然の膜貫通ドメイン、非天然の刺激性ドメイン、および/または非天然のシグナル伝達ドメインを含むように生成されるように、さらに改変または置換される。本明細書で使用される「非天然」という用語は、膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、またはシグナル伝達ドメインが、細胞外ドメインを提供する受容体以外の異なる受容体に由来することを意味する。本明細書での例示では、CD16またはそのバリアントに基づくCFcRは、CD16に由来する膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、またはシグナル伝達ドメインを有さない。いくつかの実施形態では、外因性のhnCD16ベースのCFcRは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、T細胞受容体ポリペプチドに由来する非天然の膜貫通ドメインを含む。いくつかの実施形態では、外因性のhnCD16ベースのCFcRは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、またはNKG2Dポリペプチドに由来する非天然の刺激/阻害ドメインを含む。いくつかの実施形態では、外因性のhnCD16ベースのCFcRは、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(41BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、またはNKG2Dポリペプチドに由来する非天然のシグナル伝達ドメインを含む。hnCD16の1つの態様において、提供されるキメラ受容体は、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、およびNKG2Dポリペプチドのうちのいずれかに両方が由来する膜貫通ドメインとシグナル伝達ドメインを含む。hnCD16ベースのキメラFc受容体の1つの特定の実施形態は、NKG2Dの膜貫通ドメイン、2B4の刺激ドメイン、およびCD3ζのシグナル伝達ドメインを含み、hnCD16の細胞外ドメインは、CD64またはCD16の細胞外ドメインの全長または部分配列に由来し、CD16の細胞外ドメインはF176VおよびS197Pを含む。hnCD16ベースのキメラFc受容体の別の実施形態は、CD3ζの膜貫通ドメインおよびシグナル伝達ドメインを含み、hnCD16の細胞外ドメインは、CD64またはCD16の細胞外ドメインの全長または部分配列に由来し、CD16の細胞外ドメインはF176VおよびS197Pを含む。
【0114】
上述のようなhnCD16ベースのキメラFc受容体の様々な実施形態は、抗体またはその断片のFc領域に、または、二重特異性、三重特異性、もしくは多重特異性のエンゲージャーまたはバインダーのFc領域に、高い親和性で結合することができる。結合すると、キメラ受容体の刺激ドメインおよび/またはシグナル伝達ドメインは、エフェクター細胞の活性化およびサイトカイン分泌を可能にし、抗体、または上記の、腫瘍抗原結合コンポーネントおよびFc領域を有する、二重特異性、三重特異性、または多重特異的エンゲージャーまたはバインダーが標的とする腫瘍細胞を殺傷する。理論に制限されることなく、hnCD16ベースのキメラFc受容体の非天然の膜貫通、刺激および/またはシグナル伝達ドメインを通じて、または外部ドメインへのエンゲージャーの結合を通じて、CFcRはエフェクター細胞の殺傷能力に寄与し、エフェクター細胞の増殖および/または増殖の可能性を増加させる。抗体とエンゲージャーは、抗原を発現している腫瘍細胞とCFcRを発現しているエフェクター細胞を近接させることができ、これも増強された腫瘍細胞の殺傷に寄与する。二重特異性、三重特異性、多重特異性エンゲージャーまたはバインダーのための例示的な腫瘍抗原には、B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、およびROR1が含まれるが、これらに限定されない。腫瘍細胞を攻撃する際にhnCD16ベースのCFcRを発現するエフェクター細胞を結合させるのに適したいくつかの非限定的な例示的な二重特異性、三重特異性、多重特異性のエンゲージャーまたはバインダーには、CD16(またはCD64)-CD30、CD16(またはCD64)-BCMA、CD16(またはCD64)-IL15-EPCAM、およびCD16(またはCD64)-IL15-CD33が含まれる。
【0115】
NK細胞活性化に続いて細胞表面から切断される初代NK細胞によって発現される内因性CD16受容体とは異なり、誘導NKの種々の非切断性バージョンのCD16は、CD16のシェディングを回避し、一定の発現を維持する。誘導NK細胞では、非切断性CD16は、向上した細胞機能の指標であるTNFαおよびCD107aの発現を増加させる。非切断性CD16はまた、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、および二重、三重、または多重特異的エンゲージャーの結合も増強する。ADCCは、抗体でコーティングされた標的細胞へのCD16の結合を介したNK細胞媒介性溶解のメカニズムである。誘導NK細胞に導入されたhnCD16の追加の高親和性特性により、細胞療法を必要とする対象に細胞を投与する前に、hnCD16を介したADCC抗体のNK細胞へのin vitroローディングも可能になる。提示されるように、hnCD16は、いくつかの実施形態においてF176VおよびS197Pを含み得、または配列番号7、8、もしくは9によって例示されるようにCD64に由来する完全または部分的な外部ドメインを含み得、または非天然の膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインのうちの少なくとも1つをさらに含み得る。開示されるように、本出願はまた、以下のセクションVで詳しく説明するように、状態、疾患、または感染症の治療における治療的使用に十分な量の1つ以上の予め選択されたADCC抗体が予めロードされた、誘導NK細胞またはその細胞集団を提供する。いくつかの実施形態では、hnCD16を含むNK細胞はCD38ノックアウトをさらに含む。いくつかの実施形態では、hnCD16およびCD38ノックアウトを含む誘導されたNK細胞は、抗CD38抗体を予めロードされている。いくつかの実施形態では、予めロードされた抗CD38抗体はダラツムマブである。
【0116】
初代NK細胞とは異なり、初代供給源(すなわち、末梢血、臍帯血、または他のドナー組織などの天然/天然源)由来の成熟T細胞はCD16を発現しない。発現した外因性の非切断性CD16を含むiPSCが、T細胞の発生生物学を損なうことなく、外因性CD16を発現するだけでなく、獲得したADCCメカニズムを通じて機能を実行できる機能的なT細胞に分化できることは予想外であった。誘導T細胞で獲得したこのADCCは、二重標的化、および/またはCAR-T細胞療法でよく発生する、低下もしくは消失したCAR-T標的抗原の発現、もしくはCAR(キメラ抗原受容体)による認識を回避する変異抗原を伴って腫瘍が再発する、抗原エスケープを救済するためのアプローチとしてさらに使用できる。上記誘導T細胞が外因性CD16発現を介して獲得したADCCを含み、抗体がCARが標的とする腫瘍抗原とは異なる腫瘍抗原を標的とする場合、抗体を使用してCAR-T抗原エスケープを救済し、CAR-T治療でよく見られる標的腫瘍の再発または再発を軽減または防止できる。二重標的化を達成しながら抗原エスケープを低減および/または防止するこのような戦略は、1つ以上のCARを発現するNK細胞にも同様に適用できる。この抗原エスケープの低減および防止戦略で使用できるさまざまなCARについて、以下で詳しく説明する。
【0117】
このように、本発明は、外因性CD16を含む誘導T細胞を提供する。さらに提供される実施形態では、本明細書で得られる誘導T細胞は、hnCD16の発現に加えて、CD38ノックアウトを含む。いくつかの実施形態では、誘導T細胞に含まれるhnCD16は、F176VおよびS197Pを含む。他のいくつかの実施形態では、誘導T細胞に含まれるhnCD16は、配列番号7、8、もしくは9によって例示されるようにCD64に由来する完全または部分的な外部ドメインを含み、または非天然の膜貫通ドメイン、刺激ドメイン、およびシグナル伝達ドメインのうちの少なくとも1つをさらに含み得る。説明されているように、そのような誘導T細胞は、抗体の治療効果を高めるためにADCCによって媒介されたモノクローナル抗体で腫瘍を標的とする獲得されたメカニズムを有する。開示されるように、本出願はまた、以下のセクションVで詳しく説明するように、状態、疾患、または感染症の治療における治療的使用に十分な量の1つ以上の予め選択されたADCC抗体が予めロードされた、誘導T細胞またはその細胞集団を提供する。いくつかの他の実施形態では、hnCD16を発現する誘導T細胞はまた、CD38 nullであり、その結果、細胞は、腫瘍抗原CD38を標的化する治療薬の存在下にあるときに排除されることを回避できる。一実施形態では、腫瘍抗原CD38を標的化する上記治療薬は抗CD38抗体である。別の実施形態では、腫瘍抗原CD38を標的化する上記治療薬は、CD38結合領域、例えば抗CD38 scFVを含むCARである。
【0118】
3.CARの発現
遺伝子操作されたiPSCおよびその誘導エフェクター細胞に適用可能なものは、当該技術分野で知られている任意のCARの設計であり得る。CAR、すなわちキメラ抗原受容体は、抗原認識領域、膜貫通ドメイン、および内部ドメインを含む外部ドメインを一般に含む融合タンパク質である。いくつかの実施形態では、外部ドメインは、シグナルペプチドもしくはリーダー配列および/またはスペーサーをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、内部ドメインは、CARを発現するエフェクター細胞を活性化するシグナル伝達ペプチドをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、抗原認識ドメインは、抗原に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、抗原認識ドメインは、疾患または病原体に関連する抗原に特異的に結合することができる。いくつかの実施形態では、疾患関連抗原は腫瘍抗原であり、腫瘍は液体腫瘍または固形腫瘍であってよい。いくつかの実施形態では、CARは、上記CARを発現するT細胞またはNK細胞のいずれかを活性化するのに適している。いくつかの実施形態では、CARは、NK特異的シグナル伝達コンポーネントを含むNK細胞特異的である。特定の実施形態では、上記T細胞は、CAR発現iPSCに由来し、誘導T細胞は、Tヘルパー細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラーT細胞、αβT細胞、γδT細胞、またはそれらの組み合わせを含み得る。特定の実施形態では、上記NK細胞は、CAR発現iPSCに由来する。
【0119】
特定の実施形態では、上記抗原認識領域は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダIg、サメ重鎖のみ抗体(VNAR)、Ig NAR、キメラ抗体、組換え抗体、またはその抗体断片を含む。抗体断片の非限定的な例には、Fab、Fab’、F(ab)’2、F(ab)’3、Fv、一本鎖抗原結合断片(scFv)、(scFv)、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗原結合断片(sdAb、ナノボディ)、組換え重鎖のみ抗体(VHH)、および抗体全体の結合特異性を維持するその他の抗体断片が含まれる。CARによって標的化され得る抗原の非限定的な例には、ADGRE2、炭酸脱水酵素IX(CAlX)、CCRI、CCR4、がん胎児性抗原(CEA)、CD3、CD5、CD7、CD8、CD10、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD34、CD38、CD41、CD44、CD44V6、CD49f、CD56、CD70、CD74、CD99、CD123、CD133、CD138、CD269(BCMA)、CDS、CLEC12A、サイトメガロウイルス(CMV)感染細胞の抗原(例えば、細胞表面抗原)、上皮糖タンパク質2(EGP2)、上皮糖タンパク質-40(EGP-40)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、EGFRvIII、受容体チロシンタンパク質キナーゼerb-B2、3、4、EGFIR、EGFR-VIII、ERBB葉酸結合タンパク質(FBP)、胎児のアセチルコリン受容体(AChR)、葉酸受容体-a、ガングリオシドG2(GD2)、ガングリオシドG3(GD3)、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)、ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)、ICAM-1、インテグリンB7、インターロイキン-13受容体サブユニットアルファ-2(IL-13Rα2)、κ-軽鎖、キナーゼ挿入ドメイン受容体(KDR)、ルイスA(CA19.9)、ルイスY(LeY)、L1細胞接着分子(L1-CAM)、LILRB2、黒色腫抗原ファミリーA1(MAGE-A1)、MICA/B、ムチン1(Muc-1)、ムチン16(Muc-16)、メソセリン(MSLN)、NKCSI、NKG2Dリガンド、c-Met、がん-精巣抗原NY-ESO-1、がん胎児性抗原(h5T4)、PRAME、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、PRAME前立腺特異的膜抗原(PSMA)、腫瘍関連糖タンパク質72(TAG-72)、TIM-3、TRBCI、TRBC2、血管内皮増殖因子R2(VEGF-R2)、ウィルムス腫瘍タンパク質(WT-1)、および当該技術分野で公知の様々な病原体抗原が含まれる。病原体の非限定的な例には、疾患を引き起こす可能性のある、ウイルス、細菌、真菌、寄生虫、および原生動物が含まれる。
【0120】
いくつかの実施形態では、CARの膜貫通ドメインは、CD3D、CD3E、CD3G、CD3ζ、CD4、CD8、CD8a、CD8b、CD27、CD28、CD40、CD84、CD166、4-1BB、OX40、ICOS、ICAM-1、CTLA-4、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、CD16、IL7、IL12、IL15、KIR2DL4、KIR2DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、NKG2D、T細胞受容体ポリペプチドの天然または改変された膜貫通領域の全長または少なくとも一部を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、内部ドメインドメイン(または細胞内ドメイン)のシグナル伝達ペプチドは、CD28、CD3ε、CD3ζ、2B4、DAP10、DAP12、DNAM1、CD137(41BB)、IL21、IL7、IL12、IL15、NKp30、NKp44、NKp46、NKG2C、またはNKG2Dのポリペプチドの全長または少なくとも一部を含む。一実施形態では、CARのシグナル伝達ペプチドは、CD3ζの少なくとも1つのITAM(免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ)に対して、少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の同一性であるアミノ酸配列を含む。
【0122】
特定の実施形態では、前記内部ドメインは、少なくとも1つの共刺激シグナル伝達領域をさらに含む。上記共刺激シグナル伝達領域は、CD27、CD28、4-1BB、OX40、ICOS、PD-1、LAG-3、2B4、BTLA、DAP10、DAP12、CTLA-4、もしくはNKG2D、またはそれらの任意の組み合わせのポリペプチドの全長または少なくとも一部を含むことができる。
【0123】
一実施形態では、本出願において提供される細胞に適用可能なCARは、CD28に由来する共刺激ドメイン、および配列番号13に対して少なくとも約85%約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の同一性のアミノ酸配列によって表されるCD3ζの天然または改変ITAM1を含むシグナル伝達ドメインを含む。さらなる実施形態において、CD28に由来する共刺激ドメインおよびCD3ζの天然または改変ITAM1を含むCARはまた、CD28に由来するヒンジドメインおよび膜貫通ドメインを含み、scFvはヒンジを介して膜貫通ドメインに接続され得、CARは、配列番号14に対してと少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の同一性のアミノ酸配列を含む。


【0124】
別の実施形態では、本出願において提供される細胞に適用可能なCARは、NKG2Dに由来する膜貫通ドメイン、2B4に由来する共刺激ドメイン、および配列番号15に対して少なくとも約85%約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の同一性のアミノ酸配列によって表される天然または改変CD3ζを含むシグナル伝達ドメインを含む。NKG2Dに由来する膜貫通ドメイン、2B4に由来する共刺激ドメイン、および天然または改変されたCD3ζを含むシグナル伝達ドメインを含む上記CARは、CD8ヒンジをさらに含み得、そのような構造のアミノ酸配列は、配列番号16に対して少なくとも約85%約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の同一性のものである。


【0125】
非限定的なCAR戦略には、細胞内ドメインのペアの二量体化によるヘテロ二量体の条件付き活性化CAR(例えば、米国特許第9587020号を参照されたい)、CARを生成するための抗原結合、ヒンジ、および内部ドメインの相同組換えであるスプリットCAR(例えば、米国特許公開第2017/0183407号を参照されたい)、抗原結合ドメインとシグナル伝達ドメインにそれぞれ接続された2つの膜貫通ドメイン間の非共有リンクを可能にする多重鎖CAR(例えば、米国特許公開第2014/0134142号を参照されたい)、二重特異性抗原結合ドメインを有する(例えば、米国特許第9447194号を参照されたい)、または同じかもしくは異なる抗原もしくはエピトープを認識する抗原結合ドメインのペアを有する(例えば、米国特許第8409577号を参照されたい)CAR、またはタンデムCAR(例えば、Hegde et al.,J Clin Invest.2016;126(8):3036-3052を参照されたい);誘導性CAR(例えば、米国特許公開第2016/0046700号、同第2016/0058857号、同第2017/0166877号を参照されたい)、切り替え可能なCAR(例えば、米国特許公開第2014/0219975号を参照されたい)、および、当該技術分野で知られている他の設計がさらに含まれる。
【0126】
したがって、本明細書で提供されるのは、ゲノム操作されたiPSCの分化から得られた誘導細胞を含み、iPSCと誘導細胞の両方は、CD38ノックアウトおよび/またはhnCD16を含むがこれらに限定されない追加の改変されたモダリティとともに1つ以上のCARを含む。特定の一実施形態では、iPSCおよびその誘導細胞は、CD38ノックアウト、hnCD16、および選択された腫瘍またはウイルス抗原を標的化するCARを含み、ここで、誘導細胞はNKまたはT細胞であり、そして誘導細胞は、hnCD16結合を介して、同じ腫瘍の二重標的化を達成しながら腫瘍抗原エスケープを回避または低減するために、CARによって標的化されたものとは異なる腫瘍抗原を標的とする、ADCC抗体または二重特異性、三重特異性、多重特異性エンゲージャーの1つ以上とともに使用され得る。さらなる実施形態では、CARを含むiPSCおよびその誘導T細胞は、TCR定常領域に挿入されたCARを有し、TCRノックアウトをもたらし、CAR発現を内因性TCRプロモーターの制御下に置く。いくつかの実施形態では、操作されたiPSCに由来する誘導TCR null CAR-T細胞は、CD16(F176Vおよび/またはS197P)に天然な、またはCD64に由来する外部ドメイン、ならびに天然または非天然の膜貫通、刺激、およびシグナル伝達ドメインを有するhnCD16をさらに含む。別の実施形態では、CARを含むiPSCおよびその誘導NK細胞は、CARをNKG2A遺伝子座またはNKG2D遺伝子座に挿入し、NKG2AまたはNKG2Dノックアウトをもたらし、CAR発現を内因性NKG2AまたはNKG2Dプロモーターの制御下に置く。
【0127】
4.外因的に導入されたサイトカインおよび/またはサイトカインシグナル伝達
臨床的に適切なサイトカインの全身的高用量投与を回避することにより、そのような行為による用量制限毒性のリスクが減少し、サイトカイン媒介性細胞自律性が確立される。可溶性サイトカインを追加投与する必要なしにリンパ球自律性を達成するために、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、IL21、および/またはそれらの対応する受容体のうちの1つ以上の部分的または完全なペプチドが細胞に導入されて、サイトカイン自体の発現を伴ってまたは伴わずに、サイトカインのシグナル伝達を可能にし、それによってサイトカインの毒性のリスクを低減して、細胞の増殖、増殖、増殖、および/またはエフェクター機能を維持または改善する。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達のための導入されたサイトカインおよび/またはそのそれぞれの天然または改変された受容体は、細胞表面上で発現する。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達は構成的に活性化される。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達の活性化は誘導可能である。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達の活性化は、一過性および/または一時的である。
【0128】
図1は、IL15を例として使用したいくつかの構成設計を示す。図1の設計のいずれかの膜貫通(TM)ドメインは、IL15受容体に対して天然であり得るか、または、他の膜結合タンパク質の膜貫通ドメインで改変または置換されている。
【0129】
設計1:IL15およびIL15Rαは、IL15のトランス提示を模倣する自己切断ペプチドを使用して、IL15のシス提示を排除することなく共発現される。
【0130】
設計2:IL15Rαはリンカーを介してC末端でIL15に融合されており、IL15のcis提示を排除することなくトランス提示を模倣し、IL15の膜結合を確保する。
【0131】
設計3:短縮された細胞内ドメインを持つIL15Rαは、リンカーを介してC末端でIL15に融合され、IL15のトランス提示を模倣し、IL15の膜結合を維持し、シス提示および/またはその細胞内ドメインを介した正常IL15Rによって媒介される他の潜在的なシグナル伝達経路を排除する。IL15Rαの細胞内ドメインは、受容体がIL15応答細胞で発現し、応答細胞が増殖して機能するために重要であると考えられている。そのような短縮化コンストラクトは、配列番号17に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%の同一性のアミノ酸配列を含み、これは、配列番号18によって表される例示的な核酸配列によってコードされ得る。短縮化IL15/IL15Rαの一実施形態では、コンストラクトは、配列番号17の最後の4アミノ酸「KSRQ」を含まず、配列番号21に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%の同一性のアミノ酸配列を含む。



【0132】
当業者は、上述のシグナルペプチドおよびリンカー配列が例示であり、シグナルペプチドまたはリンカーとしての使用に適したそれらのバリエーションを決して限定しないことを理解するであろう。当業者には既知であり利用可能な多くの適切なシグナルペプチドまたはリンカー配列が存在する。当業者は、シグナルペプチドおよび/またはリンカー配列が、シグナルペプチドによって導かれるか、またはリンカーによって連結される機能性ペプチドの活性を変えることなく、別の配列で置換され得ることを理解する。
【0133】
設計4:設計3のコンストラクトはエフェクター細胞の生存と増殖の促進に機能することが示されているため、IL15Rαの細胞質ドメインは、このような設計でIL15を備えたエフェクター細胞の自律機能に悪影響を与えずに省略できることを示しており、設計4は、設計3の別の機能する代替案を提供するコンストラクトであり、Sushiドメインを除いて、本質的にIL15Rα全体が削除され、一方の端でIL15と、もう一方の膜貫通ドメイン融合し(mb-Sushi)と、必要に応じて、Sushiドメインと膜貫通ドメインの間のリンカーを含む。融合したIL15/mb-Sushiは、膜結合タンパク質の膜貫通ドメインを介して細胞表面に発現する。設計4などのコンストラクトでは、IL15の望ましいトランス提示のみが保持されている場合、cis提示を含む、IL15Rαを介した不要なシグナル伝達が排除される。いくつかの実施形態では、Sushiドメインと融合したIL15を含むコンポーネントは、配列番号19に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%の同一性のアミノ酸配列を含み、これは、配列番号20によって表される例示的な核酸配列によってコードされ得る。


【0134】
当業者は、上述のシグナルペプチドおよびリンカー配列が例示であり、シグナルペプチドまたはリンカーとしての使用に適したそれらのバリエーションを決して限定しないことを理解するであろう。当業者には既知であり利用可能な多くの適切なシグナルペプチドまたはリンカー配列が存在する。当業者は、シグナルペプチドおよび/またはリンカー配列が、シグナルペプチドによって導かれるか、またはリンカーによって連結される機能性ペプチドの活性を変えることなく、別の配列で置換され得ることを理解する。
【0135】
設計5:天然または改変されたIL15Rβは、リンカーを介してC末端でIL15に融合され、構成的シグナル伝達を可能にし、IL15膜結合およびトランス提示を維持する。
【0136】
設計6:天然または改変された共通受容体γCは、サイトカインの構成的シグナル伝達および膜結合トランス提示のために、リンカーを介してC末端でIL15に融合される。共通受容体γCは、共通ガンマ鎖またはCD132とも呼ばれ、IL2受容体サブユニットガンマまたはIL2RGとしても知られている。γCは、IL2、IL4、IL7、IL9、IL15、およびIL21受容体を含むがこれらに限定されない多くのインターロイキン受容体の受容体複合体に共通するサイトカイン受容体サブユニットである。
【0137】
設計7:IL15の不在下でホモ二量体を形成する操作されたIL15Rβは、サイトカインの構成的シグナル伝達を生成するのに有用である。
【0138】
いくつかの実施形態では、サイトカインIL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18およびIL21、および/またはそれらの受容体の1つ以上は、図1の設計の1つ以上を使用してiPSC、およびiPSC分化時のその誘導細胞に導入され得る。いくつかの実施形態では、IL2またはIL15の細胞表面発現およびシグナル伝達は、設計1~7のいずれか1つに示されるコンストラクトを介する。いくつかの実施形態では、IL4、IL7、IL9、またはIL21の細胞表面発現およびシグナル伝達は、共通受容体またはサイトカイン特異的受容体のいずれかを使用することにより、設計5、6、または7に示されるコンストラクトを介する。いくつかの実施形態では、IL7の細胞表面発現およびシグナル伝達は、共通受容体またはIL4受容体などのサイトカイン特異的受容体のいずれかを使用することにより、設計5、6、または7に示されるコンストラクトを介する。図1の設計のいずれかの膜貫通(TM)ドメインは、対応するサイトカイン受容体に対して天然であり得るか、または、他の膜結合タンパク質の膜貫通ドメインで改変または置換されている。
【0139】
CARと外因性サイトカインおよび/またはサイトカイン受容体シグナル伝達の両方を含むiPSCおよびそれからの誘導細胞では、CARとILは別々のコンストラクトで発現されるか、CARとILの両方を含むバイシストロニックなコンストラクトで共発現される。いくつかのさらなる実施形態では、図1のコンストラクト設計のいずれかによって表される形態のIL15は、例えば、CAR-2A-IL15またはIL15-2A-CARのように例示される自己切断2Aコード配列を介してCAR発現コンストラクトの5’または3’末端のいずれかに連結され得る。そのため、IL15とCARは単一のオープンリーディングフレーム(ORF)にある。一実施形態では、CARー2AーIL15またはIL15ー2AーCARコンストラクトは、図1の設計3のIL15を含む。別の実施形態では、CARー2AーIL15またはIL15ー2AーCARコンストラクトは、図1の設計3のIL15を含む。さらに別の実施形態では、CARー2AーIL15またはIL15ー2AーCARコンストラクトは、図1の設計7のIL15を含む。CAR-2A-IL15またはIL15-2A-CARが発現すると、自己切断2Aペプチドにより、発現されたCARとIL15が解離し、解離したIL15を細胞表面に提示することができるようになる。CAR-2A-IL15またはIL15-2A-CARのバイシストロニックな設計により、タイミングと数量の両方で、例えば、単一のORFの発現のための誘導可能なプロモーターなどの、組み込むために選択され得る同一の制御メカニズムの下で、協調された発現を可能にする。自己切断ペプチドは、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ウマ鼻炎Aウイルス(ERAV)、Thosea asignaウイルス(TaV)、およびブタテチョウイルス1(PTV-I)(Donnelly,ML,et al,J.Gen.Virol,82,1027-101 (2001)、ならびにタイロウイルス(例えば、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス)および脳心筋炎ウイルスなどのカルジオウイルス属を含むピコルナウイルス科のメンバーで見出される。FMDV、ERAV、PTV-1、およびTaVに由来する2Aペプチドは、それぞれ「F2A」、「E2A」、「P2A」、および「T2A」と呼ばれることもある。
【0140】
IL15について本明細書に開示されるバイシストロニックなCAR-2A-IL15またはIL15-2A-CARの実施形態は、本明細書で提供される他の任意のサイトカイン、例えばIL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL18、およびIL21の発現も企図される。いくつかの実施形態では、IL2の細胞表面発現およびシグナル伝達は、設計1~7のいずれかに示されるコンストラクトを介する。他のいくつかの実施形態では、IL4、IL7、IL9、またはIL21の細胞表面発現およびシグナル伝達は、共通受容体および/またはサイトカイン特異的受容体のいずれかを使用する、設計5、6、または7に示されるコンストラクトを介する。
【0141】
5.HLA-I-およびHLA-II-の欠損
同種拒絶の問題を回避するために、複数のHLAクラスIおよびクラスIIタンパク質は、同種異系レシピエントの組織適合性のために一致している必要がある。本明細書で提供されるのは、HLAクラスIとHLAクラスIIのタンパク質の両方の発現が排除または実質的に減少したiPSC細胞株である。HLAクラスI欠損症は、HLAクラスI遺伝子座(染色体6p21)の任意の領域の機能的削除、またはベータ2ミクログロブリン(B2M)遺伝子、TAP1遺伝子、TAP2遺伝子、およびタパシンを含むが、これらに限定されない、HLAクラスI関連遺伝子の削除もしくは発現レベルの低下によって達成できる。例えば、B2M遺伝子は、全てのHLAクラスIヘテロダイマーの細胞表面発現に不可欠な共通のサブユニットをエンコードする。B2M null細胞はHLA-I欠損である。HLAクラスII欠損は、RFXANK、CIITA、RFX5、およびRFXAPを含むがこれらに限定されないHLA-II関連遺伝子の機能的欠失または減少によって達成できる。CIITAは転写コアクチベーターであり、クラスIIタンパク質の発現に必要な転写因子RFX5の活性化を通じて機能する。CIITA null細胞はHLA-II欠損である。ここで提供されるのは、B2MとCIITAの両方がノックアウトされたiPSC系統とその誘導細胞であり、得られた誘導エフェクター細胞は、MHC(主要組織適合性複合体)マッチングの必要性を排除して宿主の(同種異系)T細胞による認識と殺傷を回避することによって、同種異系細胞治療を可能にする。
【0142】
一部の細胞型では、クラスI発現の欠如がNK細胞による溶解を引き起こす。この「自己喪失」応答を克服するために、HLA-Gを必要に応じてノックインして、操作されたiPSCに由来するHLA-IおよびHLA-II欠損エフェクター細胞のNK細胞の認識と死滅を回避できる。一実施形態では、HLAーIおよびHLAーII欠損iPSCおよびその誘導細胞は、iPSCの分化能ならびに誘導T細胞および誘導NK細胞を含む誘導エフェクター細胞の機能に悪影響を及ぼさずに、CD38ノックアウト、および必要に応じてhnCD16、CAR、およびILの1つ以上をさらに含む。
【0143】
6.本明細書で提供される遺伝子操作されたiPSC系統と誘導細胞
上記に照らして、本出願は、CD38-/-(本明細書では「CD38 null」またはCD38ノックアウトとも呼ばれる)iPSC、細胞株細胞、またはその集団、およびCD38-/-iPSCの分化から得られるCD38ノックアウトを含む誘導された機能性誘導細胞を提供する。いくつかの実施形態において、機能性誘導細胞は造血細胞であり、決定的な造血内皮(HE)ポテンシャルを有する中胚葉細胞、決定的なHE、CD34造血細胞、造血幹細胞および前駆細胞、造血多能性前駆細胞(MPP)、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、骨髄細胞、好中球前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、好中球、樹状細胞、およびマクロファージを含むがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、機能的誘導造血細胞は、T細胞、NK細胞、および調節細胞などのエフェクター細胞を含む。
【0144】
本明細書でさらに提供されるのは、CD38ノックアウト、および高親和性の非切断性CD16(hnCD16)をコードするポリヌクレオチドを含むiPSCであり、iPSCは、指示された分化により機能的造血細胞を産生することができる。いくつかの実施形態では、抗CD38抗体を使用してhnCD16媒介増強ADCCを誘導する場合、iPSCおよび/またはその誘導エフェクター細胞は、エフェクター細胞の排除、すなわち、CD38発現エフェクター細胞の減少または枯渇を引き起こすことなく、それによってiPSCとそのエフェクター細胞の持続性および/または生存率を増加させ、CD38発現(腫瘍)細胞を標的化することができる。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、抗CD38抗体またはCAR結合CD38であり得る抗CD38治療剤の存在下で、増加したin vivoでの持続性および/または生存率を有する。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞はT細胞を含む。CD38 nullおよびhnCD16を含むiPSC由来のT細胞は、抗CD38抗体または抗CD38 CARの存在下で細胞枯渇の減少を経験し、ADCCを獲得しし、T細胞を介した腫瘍殺傷のさらなるメカニズムをもたらす。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞はNK細胞を含む。CD38 nullとhnCD16を含むiPSC由来のNK細胞は、細胞傷害性が増強されており、抗CD38抗体または抗CD38 CARの存在下でNK細胞のフラトリサイドが減少している。
【0145】
CD38ノックアウト、および標的特異的キメラ抗原受容体(CAR)をコードするポリヌクレオチドを含むiPSCが本明細書で提供され、iPSCは、指示された分化により機能的誘導エフェクター細胞を産生することができる。一実施形態では、CD38ノックアウトを含むiPSCおよびその誘導体エフェクター細胞に含まれるCARは、腫瘍細胞表面タンパク質CD38を標的化するが、CD38-CARは、CD38ノックアウトを有するiPSCおよび/またはその誘導エフェクター細胞の排除をもたらさない。一部の実施形態では、CD38ノックアウトを含むiPSCおよびその誘導エフェクター細胞に含まれるCARは、CD38を標的化しない。いくつかの実施形態では、CAR発現、CD38 null誘導エフェクター細胞を抗CD38抗体とともに使用して、エフェクター細胞の排除を引き起こすことなくADCCを誘導し、それによりiPSCおよびそのエフェクター細胞の持続性および/または生存率を増加させることができる。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、組み合わせ治療において、増加したin vivoでの持続性および/または生存率を有する。
【0146】
さらに、CD38ノックアウト、ならびに、細胞の生存率、持続製、および/または増殖に寄与するサイトカインシグナル伝達を可能にする少なくとも1つの外因性サイトカインおよび/またはその受容体(IL)をコードするポリヌクレオチドを含み、iPSC株は分化を指示して、生存率、持続性、増殖、およびエフェクター細胞機能が改善された機能的誘導造血細胞を産生することができる。外因的に導入されたサイトカインシグナル伝達は、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、およびIL21のいずれか1つまたは2つまたはそれ以上のシグナル伝達を含む。いくつかの実施形態において、サイトカインシグナル伝達のための、サイトカインおよび/またはそのそれぞれの受容体の導入された部分的または完全なペプチドは、細胞表面上で発現する。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達は構成的に活性化される。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達の活性化は誘導可能である。いくつかの実施形態では、サイトカインシグナル伝達の活性化は、一過性および/または一時的である。いくつかの実施形態では、細胞表面サイトカイン/サイトカイン受容体の一過性/一時的発現は、レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、エピソーム、ミニサークル、またはmRNAを含むRNAを介する。いくつかの実施形態では、CD38-/- iPSCまたはその誘導細胞に含まれる外因性細胞表面サイトカインおよび/または受容体は、IL7シグナル伝達を可能にする。いくつかの実施形態では、CD38-/- iPSCまたはその誘導細胞に含まれる外因性細胞表面サイトカインおよび/または受容体は、IL10シグナル伝達を可能にする。いくつかの実施形態では、CD38-/- iPSCまたはその誘導細胞に含まれる外因性細胞表面サイトカインおよび/または受容体は、IL15シグナル伝達を可能にする。上記CD38-/-IL iPSCのいくつかの実施形態では、IL15発現は、図1のコンストラクト3によるものである。上記CD38-/-IL iPSCのいくつかの実施形態では、IL15発現は、図1のコンストラクト4によるものである。上述の実施形態の上記CD38-/-IL iPSCおよびその誘導細胞は、in vitroまたはin vivoで追加的に供給される可溶性サイトカインに接触することなく、細胞増殖、増殖、増殖、および/またはエフェクター機能を自律的に維持または改善することができる。いくつかの実施形態では、CD38-/-IL iPSCおよびその誘導エフェクター細胞を抗CD38抗体とともに使用して、エフェクター細胞の排除を引き起こすことなくADCCを誘導し、それにより相乗的にiPSCおよびそのエフェクター細胞の持続性および/または生存率を増加させることができる。
【0147】
CD38ノックアウト、B2Mノックアウト、およびCIITAノックアウト、ならびに必要に応じて、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドを含むiPSCも提供され、iPSCは分化を指示して、機能的な誘導造血細胞を産生することができる。上記CD38-/-B2M-/-CIITA-/-iPSCおよびその誘導エフェクター細胞は、HLA-IとHLA-IIの両方が欠損しており、抗CD38抗体とともに使用して、エフェクター細胞の排除を引き起こすことなくADCCを誘導し、それにより相乗的にiPSCおよびそのエフェクター細胞の持続性および/または生存率を増加させることができる。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、増加したin vivoでの持続性および/または生存率を有する。
【0148】
上述の観点から、本明細書で提供されるのは、CD38ノックアウト、ならびに必要に応じて、hnCD16、CAR、外因性サイトカイン/受容体、およびB2M/CIITAノックアウトのうちの1つ、2つ、3つ、または4つ全てを含むiPSCを含み、B2Mがノックアウトされると、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドが任意に導入され、iPSCは、分化を指示して機能的な誘導造血細胞を産生することができる。本出願にはまた、CD38ノックアウト、ならびに必要に応じて、hnCD16、B2M/CIITAノックアウト、CAR、および外因性サイトカイン/受容体のうちの1つ、2つ、3つ、または4つ全てを含む機能的なiPSC誘導造血細胞も含まれ、ここで、B2Mがノックアウトされると、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドが必要に応じて導入され、誘導造血細胞には、決定的な造血性内皮(HE)ポテンシャルを有する中胚葉細胞、決定的なHE、CD34造血細胞、造血細胞幹細胞および前駆細胞、造血系多能性前駆細胞(MPP)、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、骨髄細胞、好中球前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、好中球、樹状細胞、およびマクロファージが含まれるが、これらに限定されない。
【0149】
本明細書で提供される別の態様は、IL15およびIL15Rαの短縮化融合タンパク質を含むiPSCまたはiPSC由来細胞を含み、融合タンパク質は細胞内ドメインを含まない。図1では「IL15Rα(ΔICD)融合」および「IL5/mb-Sushi」として示されているが、これらの実施形態は、表1および本出願全体でさらにまとめてIL15Δと略される。いくつかの実施形態において、細胞内ドメインを欠く短縮化IL15/IL15Rα融合タンパク質は、配列番号17、19または21と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、または99%同一性のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインを欠く短縮化IL15/IL15Rα融合タンパク質は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインを欠く短縮化IL15/IL15Rα融合タンパク質は、配列番号19のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、細胞内ドメインを欠く短縮化IL15/IL15Rα融合タンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列を含む。さらに他のいくつかの実施形態では、細胞内ドメインを欠く短縮化IL15/IL15Rα融合タンパク質(IL15Δ)を含むiPSCまたはiPSC誘導細胞には、CD38ノックアウト、hnCD16、CAR、外来性サイトカイン/受容体、およびB2M/CIITAノックアウトのうちの1つ以上がさらに含まれ、ここで、B2Mがノックアウトされると、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドが必要に応じて導入され、iPSCは、指示された分化をして機能的な誘導造血細胞を産生することができ、誘導造血細胞には、決定的な造血性内皮(HE)ポテンシャルを有する中胚葉細胞、決定的なHE、CD34造血細胞、造血細胞幹細胞および前駆細胞、造血系多能性前駆細胞(MPP)、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、骨髄細胞、好中球前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、好中球、樹状細胞、およびマクロファージが含まれるが、これらに限定されない。
【0150】
したがって、本出願は、表1の以下の遺伝子型のいずれか1つを含むiPSCおよびその機能的誘導造血細胞を提供する。IL15Δとして指定されていない限り、これはIL15とIL15Rαの短縮化融合タンパク質であるが細胞内ドメインを有さないものとして詳細に説明されるが、表1で提供される「IL」は、どの特定のサイトカイン/受容体発現が選択されるかに応じて、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、およびIL21のうちの1つを表す。さらに、iPSCとその機能的誘導造血細胞がCARとILの両方を含む遺伝子型を有する場合、CARとILは2A配列を含むバイシストロニックな発現カセットに含まれる。対照的に、いくつかの他の実施形態では、CARおよびILは、iPSCおよびその機能的誘導造血細胞に含まれる別々の発現カセット中にある。特定の実施形態では、CARとILの両方を発現するiPSCおよびその機能的誘導エフェクター細胞に含まれるのは、図1のコンストラクト3または4におけるIL15であり、IL15コンストラクトは、CARとともに、またはそれと別個に発現カセットに含まれる。
【表1】
【0151】
7.さらなる改変
いくつかの実施形態では、表1の遺伝子型のいずれか1つを含むiPSCおよびその誘導エフェクター細胞は、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子の少なくとも1つにおける欠失もしくは発現低下をさらに含み得るか、またはHLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、TCR、Fc受容体、エンゲージャー、および二重特異性、多重特異性もしくはユニバーサルエンゲージャーとの結合のための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つでの導入された発現もしくは増加した発現をさらに含み得る。
【0152】
二重特異性または多重特異性エンゲージャーは、異なる抗体の2つ以上の単鎖可変断片(scFv)からなる融合タンパク質であり、少なくとも1つのscFvがエフェクター細胞表面分子に結合し、少なくとも別の1つが腫瘍特異的表面分子を介して腫瘍細胞に結合する。二重特異性または多重特異性エンゲージャー認識またはカップリングに使用できる例示的なエフェクター細胞表面分子または表面トリガー受容体には、CD3、CD28、CD5、CD16、NKG2D、CD64、CD32、CD89、NKG2C、および本明細書に開示されるキメラFc受容体が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、エンゲージャー認識のためにエフェクター細胞の表面に発現するCD16は、セクションI.2に記載されるような、CD16(F176Vおよび必要に応じてS197Pを含む)またはCD64細胞外ドメイン、および天然または非天然の膜貫通、刺激および/またはシグナル伝達ドメインを含むhnCD16である。いくつかの実施形態では、エンゲージャー認識のためにエフェクター細胞の表面に発現するCD16は、hnCD16ベースのキメラFc受容体(CFcR)である。いくつかの実施形態では、hnCD16ベースのCFcRは、NKG2Dの膜貫通ドメイン、2B4の刺激ドメイン、およびCD3ζのシグナル伝達ドメインを含み、hnCD16の細胞外ドメインは、CD64またはCD16の細胞外ドメインの全長または部分配列に由来し、CD16の細胞外ドメインはF176Vおよび必要に応じてS197Pを含む。二重特異性または多重特異性エンゲージャー認識のための例示的な腫瘍細胞表面分子には、B7H3、BCMA、CD10、CD19、CD20、CD22、CD24、CD30、CD33、CD34、CD38、CD44、CD79a、CD79b、CD123、CD138、CD179b、CEA、CLEC12A、CS-1、DLL3、EGFR、EGFRvIII、EPCAM、FLT-3、FOLR1、FOLR3、GD2、gpA33、HER2、HM1.24、LGR5、MSLN、MCSP、MICA/B、PSMA、PAMA、P-カドヘリン、ROR1が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、二重特異性抗体は、CD3-CD19である。別の実施形態では、二重特異性抗体は、CD16-CD30またはCD64-CD30である。別の実施形態では、二重特異性抗体は、CD16-BCMAまたはCD64-BCMAである。さらに別の実施形態では、二重特異性抗体はCD3-CD33である。さらに別の実施形態では、二重特異性抗体はさらに、エフェクター細胞と腫瘍細胞抗原結合ドメインの間にリンカー、例えば、エフェクター細胞増殖を促進するエフェクターNK細胞のリンカーとしての改変IL15(いくつかの刊行物では、TriKE、または三重特異性キラーエンゲージャーと呼ばれる)を含む。一実施形態では、TriKEはCD16-IL15-EPCAMまたはCD64-IL15-EPCAMである。別の実施形態では、TriKEはCD16-IL15-CD33またはCD64-IL15-CD33である。さらに別の実施形態では、TriKEはNKG2C-IL15-CD33である。
【0153】
いくつかの実施形態では、二重特異性または多重特異性結合体の表面トリガー受容体は、時には細胞型に応じて、エフェクター細胞に対して内因性であり得る。他のいくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法および組成物を使用して、すなわち、表1に列挙された遺伝子型を含むiPSCをさらに操作し、T細胞、NK細胞、またはソースiPSCと同一の遺伝子型と表面トリガー受容体を含むその他のエフェクター細胞へのiPSCの分化を指示し、1つ以上の外因性表面トリガー受容体をエフェクター細胞に導入することができる。
【0154】
8.免疫療法のための抗体
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるゲノム操作されたエフェクター細胞に加えて、状態、疾患、または指標に関連する抗原を標的とする抗体または抗体断片を含む追加の治療剤をこれらのエフェクター細胞と共に組み合わせ療法にて使用することができる。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体、ヒト化モノクローナル抗体、またはキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、抗体または抗体断片は、ウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態では、抗体または抗体断片は、腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍またはウイルス特異的抗原は、投与されたiPSC由来のエフェクター細胞を活性化して、それらの殺傷能力を増強する。いくつかの実施形態では、投与されたiPSC由来エフェクター細胞に対する追加の治療剤として、組み合わせ治療に適した抗体は、抗CD20(リツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ)、抗HER2(トラスツズマブ、パーツズマブ)、抗CD52(アレムツズマブ)、抗EGFR(セルツキシマブ)、抗GD2(ジヌツキシマブ)、抗PDL1(アベルマブ)、抗CD38(ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202)、抗CD123(7G3、CSL362)、抗SLAMF7(エロツズマブ);およびそれらのヒト化またはFc改変されたバリアントもしくは断片、またはそれらの機能的同等物およびバイオシミラーを含むがそれらに限定されない。いくつかの実施形態では、iPSC由来のエフェクター細胞は、表1に列挙された遺伝子型を含む造血系統細胞を含む。いくつかの実施形態では、iPSC由来のエフェクター細胞は、表1に列挙された遺伝子型を含むNK細胞を含む。いくつかの実施形態では、iPSC由来のエフェクター細胞は、表1に列挙された遺伝子型を含むT細胞を含む。液体腫瘍または固形腫瘍の治療に有用な組み合わせのいくつかの実施形態では、組み合わせは、少なくともCD38 nullを含むiPSC由来のNK細胞またはT細胞と、抗CD38抗体とを含む。一実施形態では、組み合わせは、CD38 nullおよびhnCD16を含むiPSC由来NK細胞と、抗CD38抗体であるダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202のうちの1つとを含む。一実施形態では、組み合わせは、CD38 nullおよびhnCD16を含むiPSC由来NK細胞と、ダラツムマブとを含む。いくつかのさらなる実施形態では、ダラツムマブとの組み合わせに含まれるiPSC由来のNK細胞は、CD38 null、hnCD16、IL15、ならびにCD38またはCD19、BCMA、CD20、CD22、CD123、HER2、CD52、EGFR、GD2、およびPDL1のうちの少なくとも1つを標的化するCARを含み、ここで、IL15はCARと共発現または別々に発現され、IL15は、図1のコンストラクト1~7に提示される形態のうちのいずれか1つである。いくつかの特定の実施形態では、IL15は、それがCARと共にまたは別々に発現される場合、コンストラクト3、4、または7の形態である。
【0155】
9.チェックポイント阻害剤
チェックポイントは、阻害されていない場合に免疫応答を抑制または下方制御できる細胞分子、しばしば細胞表面分子である。腫瘍が特定の免疫チェックポイント経路を、特に腫瘍抗原に特異的なT細胞に対する免疫抵抗性の主要なメカニズムとして選択していることが明らかになっている。チェックポイント阻害剤(CI)は、チェックポイント遺伝子の発現または遺伝子産物を減少させたり、チェックポイント分子の活性を低下させたりして、阻害性チェックポイントをブロックし、免疫系機能を回復させることができるアンタゴニストである。PD1/PDL1またはCTLA4を標的化するチェックポイント阻害剤の開発により、腫瘍学の展望が変わり、これらの薬剤は複数の適応症で長期の寛解をもたらした。しかしながら、多くの腫瘍サブタイプはチェックポイント遮断療法に耐性があり、再発は依然として重大な懸念事項である。本出願の一態様は、CIとの組合せ療法で提供されるようにゲノム操作された機能的誘導細胞を含めることにより、CI耐性を克服するための治療アプローチを提供する。組み合わせ療法の一実施形態では、誘導細胞はNK細胞である。組み合わせ療法の別の実施形態では、誘導細胞はT細胞である。直接的な抗腫瘍能力を示すことに加えて、本明細書で提供される誘導NK細胞は、PDL1-PD1媒介阻害に抵抗し、T細胞遊走を増強し、T細胞を腫瘍微小環境に動員し、腫瘍部位でのT細胞活性化を増強する能力を有することが示されている。したがって、機能的に強力なゲノム操作された誘導NK細胞によって促進されるT細胞の腫瘍浸潤は、前記NK細胞がチェックポイント阻害剤を含むT細胞標的免疫療法と相乗作用して、局所免疫抑制を緩和し、腫瘍量を軽減できることを示している。
【0156】
一実施形態では、チェックポイント阻害剤の組み合わせ療法のための誘導NK細胞は、CD38ノックアウト、およびhnCD16発現、B2M/CIITAノックアウト、CAR発現、ならびに外因性細胞表面サイトカインおよび/または受容体発現のうちの1つ、2つ、3つ、または4つ全てを含み、ここで、B2Mがノックアウトされる場合、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドが必要に応じて含まれる。いくつかの実施形態では、誘導NK細胞は、表1に列挙された遺伝子型のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、上述の誘導NK細胞は、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子の少なくとも1つにおける欠失もしくは発現低下をさらに含むか、またはHLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、エンゲージャー、および二重特異性、多重特異性もしくはユニバーサルエンゲージャーとの結合のための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つでの導入された発現もしくは増加した発現をさらに含む。
【0157】
別の実施形態では、チェックポイント阻害剤の組み合わせ療法のための誘導T細胞は、CD38ノックアウト、およびhnCD16発現、B2M/CIITAノックアウト、CAR発現、ならびに外因性細胞表面サイトカインおよび/または受容体発現のうちの1つ、2つ、3つ、または4つ全てを含み、ここで、B2Mがノックアウトされる場合、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドが必要に応じて含まれる。いくつかの実施形態では、誘導T細胞は、表1に列挙された遺伝子型のいずれか1つを含む。いくつかの実施形態では、上述の誘導T細胞は、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子の少なくとも1つにおける欠失もしくは発現低下をさらに含むか、またはHLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、エンゲージャー、および二重特異性、多重特異性もしくはユニバーサルエンゲージャーとの結合のための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つでの導入された発現もしくは増加した発現をさらに含む。
【0158】
上記誘導NK細胞または誘導T細胞は、CD38ノックアウト、ならびに必要に応じて、hnCD16発現、B2M/CIITAノックアウト、CAR発現、および外因性細胞表面サイトカイン発現のうちの1つ、2つ、3つ、または4つ全てを含むiPSCクローン株を分化させることから得られ、ここで、B2Mがノックアウトされる場合、HLA-Gをコードするポリヌクレオチドが必要に応じて導入される。いくつかの実施形態では、上記のiPSCクローン株は、TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、RFX5、RFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子の少なくとも1つにおける欠失もしくは発現低下をさらに含むか、またはHLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、エンゲージャー、および二重特異性、多重特異性もしくはユニバーサルエンゲージャーとの結合のための表面トリガー受容体のうちの少なくとも1つでの導入された発現もしくは増加した発現をさらに含む。
【0159】
本明細書で提供される誘導NK細胞または誘導T細胞との組み合わせ療法に適したチェックポイント阻害剤には、PD-1(Pdcdl、CD279)、PDL-1(CD274)、TIM-3(Havcr2)、TIGIT(WUCAMおよびVstm3)、LAG-3(Lag3、CD223)、CTLA-4(Ctla4、CD152)、2B4(CD244)、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、A2aR、BATE、BTLA、CD39(Entpdl)、CD47、CD73(NT5E)、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2(Pou2f2)、レチノイン酸受容体アルファ(Rara)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、ならびに抑制性KIR(例えば、2DL1、2DL2、2DL3、3DL1、3DL2)のアンタゴニストが含まれるが、これらに限定されない。
【0160】
いくつかの実施形態では、上述のチェックポイント分子のいずれかを阻害するアンタゴニストは抗体である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダIg、サメ重鎖のみ抗体(VNAR)、Ig NAR、キメラ抗体、組換え抗体、またはそれらの抗体断片であり得る。抗体断片の非限定的な例には、Fab、Fab’、F(ab)’2、F(ab)’3、Fv、一本鎖抗原結合断片(scFv)、(scFv)2、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗原結合断片(sdAb、ナノボディ)、組換え重鎖のみ抗体(VHH)、および抗体全体の結合特異性を維持するその他の抗体断片が含まれ、それらは、抗体全体よりも、製造するのに費用対効果が高く、より簡単に使用でき、または感度が高くあり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは2つまたは3つまたはそれ以上のチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ(抗PDL1 mAb)、アベルマブ(抗PDL1 mAb)、デュルバルマブ(抗PDL1 mAb)、トレメリムマブ(抗CTLA4 mAb)、イピリムマブ(抗CTLA4 mAb)、IPH4102(抗KIR)、IPH43(抗MICA)、IPH33(抗TLR3)、リリムマブ(抗KIR)、モナリズマブ(抗NKG2A)、ニボルマブ(抗-PD1 mAb)、ペンブロリズマブ(抗PD1 mAb)、およびそれらの誘導体、機能的同等物、またはそれらのバイオシミラーの少なくとも1つを含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、多くのmiRNAが免疫チェックポイントの発現を制御する調節因子として見出されるため、上述のチェックポイント分子のいずれかを阻害するアンタゴニストはマイクロRNAベースである(Dragomir et al.,Cancer Biol Med.2018,15(2):103-115)。いくつかの実施形態では、チェックポイント拮抗miRNAは、miR-28、miR-15/16、miR-138、miR-342、miR-20b、miR-21、miR-130b、miR-34a、miR-197、miR-200c、miR-200、miR-17-5p、miR-570、miR-424、miR-155、miR-574-3p、miR-513、およびmiR-29cを含むがこれらに限定されない。
【0162】
提供される誘導NK細胞または誘導T細胞との組み合わせ療法のいくつかの実施形態は、少なくとも1つのチェックポイント分子を標的とする少なくとも1つのチェックポイント阻害剤を含み、誘導細胞は表1に列挙される遺伝子型を有する。提供される誘導NK細胞または誘導T細胞との組み合わせ療法のいくつかの他の実施形態は、2つ、3つ、またはそれ以上のチェックポイント分子が標的とされるように、2つ、3つ、またはそれ以上のチェックポイント阻害剤を含む。少なくとも1つのチェックポイントインヒビターおよび表1に列挙された遺伝子型を有する誘導細胞を含む組み合わせ療法のいくつかの実施形態において、上記チェックポイントインヒビターは、抗体、またはヒト化もしくはFc改変バリアントもしくは断片、またはそれらの機能的同等物もしくはバイオシミラーであり、上記チェックポイント阻害剤は、上記抗体、またはその断片もしくはバリアントをコードする外因性ポリヌクレオチド配列を発現することにより、誘導細胞により産生される。いくつかの実施形態では、抗体をコードする外因性ポリヌクレオチド配列、またはチェックポイントを阻害するその断片もしくはバリアントは、別個のコンストラクトまたはCARと抗体またはその断片をコードする配列の両方を含むバイシストロニックなコンストラクトのいずれかでCARと共発現される。いくつかのさらなる実施形態では、抗体またはその断片をコードする配列は、例えば、CAR-2A-CIまたはCI-2A-CARのように例示される自己切断2Aコード配列を介してCAR発現コンストラクトの5’または3’末端のいずれかに連結され得る。したがって、チェックポイント阻害剤とCARのコード配列は、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)にある。チェックポイント阻害剤が送達され、腫瘍微小環境(TME)に浸潤することができる誘導エフェクター細胞によってペイロードとして発現および分泌されると、それは、TMEに結合すると阻害性チェックポイント分子を打ち消し、CARなどのモダリティを活性化するか、または受容体活性化を活性化することによって、エフェクター細胞を活性化する。いくつかの実施形態では、CARと共発現するチェックポイント阻害剤は、チェックポイント分子、PD-1、PDL-1、TIM-3、TIGIT、LAG-3、CTLA-4、2B4、4-1BB、4-1BBL、A2aR、BATE、BTLA、CD39(Entpdl)、CD47、CD73(NT5E)、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2(Pou2f2)、レチノイン酸受容体アルファ(Rara)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、または抑制性KIRのうちの少なくとも1つを阻害する。いくつかの実施形態では、表1に列挙される遺伝子型を有する誘導細胞においてCARと共発現するチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびそれらのヒト化、またはFc改変バリアント、断片、およびそれらの機能的同等物またはバイオシミラーを含む群から選択される。いくつかの実施形態では、CARと共発現するチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、またはそのヒト化、またはFc改変バリアント、断片またはそれらの機能的同等物またはバイオシミラーである。他のいくつかの実施形態では、CARと共発現するチェックポイント阻害剤は、ニボルマブ、またはそのヒト化、またはFc改変バリアント、断片またはそれらの機能的同等物またはバイオシミラーである。他のいくつかの実施形態では、CARと共発現するチェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、またはそのヒト化、またはFc改変バリアント、断片またはそれらの機能的同等物またはバイオシミラーである。
【0163】
本明細書で提供される誘導細胞およびチェックポイント分子を阻害する少なくとも1つの抗体を含む組み合わせ療法のいくつかの他の実施形態では、上記抗体は、誘導細胞によって、または誘導細胞内で産生されず、表1に列挙されている遺伝子型を持つ誘導細胞の投与の前、それと同時、またはその後にさらに投与される。いくつかの実施形態では、提供される誘導NK細胞または誘導T細胞との組み合わせ療法における1つ、2つ、3つ、またはそれ以上のチェックポイント阻害剤の投与は、同時または逐次的である。表1に列挙された遺伝子型を有する誘導NK細胞または誘導T細胞を含む組み合わせ治療の一実施形態では、治療に含まれるチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、トレメリムマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、およびそれらのヒト化、またはFc改変バリアント、断片、およびそれらの機能的同等物またはバイオシミラーのうちの1つ以上である。表1に列挙された遺伝子型を有する誘導NK細胞または誘導T細胞を含む組み合わせ治療のいくつかの実施形態では、治療に含まれるチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、またはそのヒト化もしくはFc改変バリアント、断片およびその機能的同等物もしくはバイオシミラーである。表1に列挙された遺伝子型を有する誘導NK細胞または誘導T細胞を含む組み合わせ治療のいくつかの実施形態では、治療に含まれるチェックポイント阻害剤は、ニボルマブ、またはそのヒト化もしくはFc改変バリアント、断片およびその機能的同等物もしくはバイオシミラーである。表1に列挙された遺伝子型を有する誘導NK細胞または誘導T細胞を含む組み合わせ治療のいくつかの実施形態では、治療に含まれるチェックポイント阻害剤は、ペンブロリズマブ、またはそのヒト化もしくはFc改変バリアント、断片およびその機能的同等物もしくはバイオシミラーである。
【0164】
II.iPSCの選択された遺伝子座における標的化ゲノム編集の方法
本明細書で互換可能に使用されるゲノム編集、またはゲノム編集、または遺伝子編集は、標的細胞のゲノムにDNAが挿入、欠失、および/または置換される一種の遺伝子工学である。標的化ゲノム編集(「標的化ゲノム編集」または「標的化遺伝子編集」と互換可能である)は、ゲノム内の事前に選択された部位での挿入、欠失、置換を可能にします。標的化された編集中に挿入部位で内因性配列が欠失すると、影響を受けた配列を含む内因性遺伝子は、配列欠失によりノックアウトまたはノックダウンされる可能性がある。したがって、標的化編集を使用して、内因性遺伝子発現を正確に破壊することもできる。本明細書で同様に使用される用語「標的化組み込み」は、挿入部位での内因性配列の削除を伴うかまたは伴わない、1つ以上の外因性配列の挿入を含むプロセスを指す。対照的に、ランダムに組み込まれた遺伝子は位置効果とサイレンシングの影響を受けやすく、その発現は信頼できず、予測できない。例えば、セントロメアおよびサブテロメア領域は、特に導入遺伝子サイレンシングを起こしやすい。相互に新しく組み込まれた遺伝子は、周囲の内因性遺伝子とクロマチンに影響を与え、細胞の挙動を変えたり、細胞の形質転換を促進したりする可能性がある。したがって、セーフハーバー遺伝子座やゲノムセーフハーバー(GSH)などの事前に選択された遺伝子座に外来性DNAを挿入することは、安全性、効率、コピー数制御、および信頼性の高い遺伝子応答制御にとって重要である。
【0165】
標的化編集は、ヌクレアーゼに依存しないアプローチ、またはヌクレアーゼに依存するアプローチのいずれかによって実現できる。ヌクレアーゼに依存しない標的化編集アプローチでは、相同組換えは、宿主細胞の酵素機構を介して、挿入される外因性ポリヌクレオチドに隣接する相同配列によって導かれる。
【0166】
代替的に、特異的なレアカットエンドヌクレアーゼによる二本鎖切断(DSB)の特異的な導入により、より高い頻度で標的化編集を実現できる。このようなヌクレアーゼ依存の標的化編集は、DSBに応答して発生する非相同末端結合(NHEJ)を含むDNA修復メカニズムを利用する。外因性の遺伝物質を含むドナーベクターがない場合、NHEJは少数の内因性ヌクレオチドのランダムな挿入または削除(インデル)をしばしば引き起こす。対照的に、一対のホモロジーアームと隣接する外因性遺伝物質を含むドナーベクターが存在する場合、相同組換えによる相同指向性修復(HDR)中に外因性遺伝物質がゲノムに導入され得、「標的化組み込み」がもたらされる。
【0167】
特異的な標的化DSBを導入できる利用可能なエンドヌクレアーゼには、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、RNA誘導CRISPR(クラスター化等間隔短鎖回分リピート)システムが含まれるが、これらに限定されない。さらに、phiC31およびBxb1インテグラーゼを利用するDICE(デュアルインテグラーゼカセット交換)システムも、標的化組み込みのための有望なツールである。
【0168】
ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインに融合したヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。「ジンクフィンガーDNA結合ドメイン」または「ZFBD」とは、1つ以上のジンクフィンガーを介して配列特異的な方法でDNAに結合するポリペプチドドメインを意味する。ジンクフィンガーは、亜鉛イオンの配位により構造が安定化されるジンクフィンガー結合ドメイン内の約30アミノ酸のドメインである。ジンクフィンガーの例には、Cジンクフィンガー、CHジンクフィンガー、およびCジンクフィンガーが含まれるが、これらに限定されない。「設計された」ジンクフィンガードメインは、天然に存在しないドメインであり、その設計/構成は主に合理的な基準、例えば、既存のZFP設計と結合データの情報を格納するデータベースの情報を処理するための置換ルールとコンピューター化アルゴリズムの適用に起因する。例えば、米国特許第6,140,081号、同第6,453,242号、および同第6,534,261号を参照されたい。WO98/53058、WO98/53059、WO98/53060、WO02/016536、およびWO03/016496もまた参照されたい。「選択された」ジンクフィンガードメインは、その生産が主にファージディスプレイ、相互作用トラップ、またはハイブリッド選択などの経験的プロセスから生じる天然では見られないドメインである。ZFNは、米国特許第7,888,121号および米国特許第7,972,854号で詳細に説明されており、それらの完全な開示は参照により本明細書に組み込まれる。当該技術分野で最も認識されているZFNの例は、FokIヌクレアーゼとジンクフィンガーDNA結合ドメインとの融合である。
【0169】
TALENは、TALエフェクターDNA結合ドメインに融合したヌクレアーゼを含む標的化ヌクレアーゼである。「転写活性化因子様エフェクターDNA結合ドメイン」、「TALエフェクターDNA結合ドメイン」、または「TALE DNA結合ドメイン」とは、TALエフェクタータンパク質のDNAへの結合に関与するTALエフェクタータンパク質のポリペプチドドメインを意味する。TALエフェクタータンパク質は、感染時にXanthomonas属の植物病原体によって分泌される。これらのタンパク質は植物細胞の核に入り、それらのDNA結合ドメインを介してエフェクター特異的なDNA配列に結合し、トランス活性化ドメインを介してこれらの配列で遺伝子転写を活性化する。TALエフェクターDNA結合ドメインの特異性は、反復可変残基(RVD)と呼ばれる選択された反復位置に多型を含む不完全な34アミノ酸リピートのエフェクター可変数に依存する。TALENは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第2011/0145940号により詳細に記載されている。当該技術分野で最も認識されているTALENの例は、TALエフェクターDNA結合ドメインへのFokIヌクレアーゼの融合ポリペプチドである。
【0170】
本発明の方法で使用される標的ヌクレアーゼの別の例は、標的化Spo11ヌクレアーゼ、目的のDNA配列に特異性を有するDNA結合ドメイン、例えばジンクフィンガーDNA結合ドメイン、TALエフェクターDNA結合ドメインなどに融合したヌクレアーゼ活性を有するSpo11ポリペプチドを含むポリペプチドである。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第61/555,857号を参照されたい。
【0171】
本発明に適した標的化ヌクレアーゼのさらなる例には、個別にまたは組み合わせて使用されるかどうかにかかわらず、Bxb1、phiC31、R4、PhiBT1、およびWβ/SPBc/TP901-1が含まれるが、これらに限定されない。
【0172】
標的化ヌクレアーゼの他の非限定的な例には、天然に存在するおよび組換えヌクレアーゼ、cas、cpf、cse、csy、csn、csd、cst、csh、csa、csm、およびcmrを含むファミリー由来のCRISPR関連のヌクレアーゼ;制限エンドヌクレアーゼ;メガヌクレアーゼ;ホーミングエンドヌクレアーゼなどが含まれる。
【0173】
例示的な例として、CRISPR/Cas9は2つの主要なコンポーネント:(1)Cas9エンドヌクレアーゼと(2)crRNA-tracrRNA複合体を必要とする。共発現すると、2つの成分が複合体を形成し、PAMおよびPAM近位のシーディング領域(seeding region)を含む標的DNA配列に動員される。crRNAとtracrRNAを組み合わせてキメラガイドRNA(gRNA)を形成し、Cas9を選択した配列を標的に導くことができる。これら2つのコンポーネントは、トランスフェクションまたは形質導入を介して哺乳動物細胞に送達できる。
【0174】
DICEを介した挿入は、例えば、phiC31とBxb1などのリコンビナーゼのペアを使用して、各酵素自体の小さなattBおよびattP認識部位に厳しく制限されている外因性DNAの一方向の組み込みを提供する。これらの標的化att部位は哺乳類のゲノムには天然に存在しないため、最初に所望の組み込み部位のゲノムに導入する必要がある。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2015/0140665号を参照されたい。
【0175】
本発明の1つの態様は、標的化されたゲノム組み込みのための1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを提供する。一実施形態では、コンストラクトは、所望の組み込み部位に特異的な一対の相同アームをさらに含み、標的組み込みの方法は、コンストラクトを細胞に導入して、細胞宿主酵素機構による部位特異的相同組換えを可能にすることを含む。別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的なDNA結合ドメインを含むZFN発現カセットを細胞に導入してZFNを介した挿入を可能にすることと、を含む。さらに別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的なDNA結合ドメインを含むTALEN発現カセットを細胞に導入してTALENを介した挿入を可能にすることと、を含む。別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、Cas9発現カセットおよび所望の組み込み部位に特異的なガイド配列を含むgRNAを細胞に導入してCas9を介した挿入を可能にすることと、を含む。さらに別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、一対のDICEリコンビナーゼの1つ以上のatt部位を含むコンストラクトを細胞内の所望の組み込み部位に導入することと、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、DICEリコンビナーゼ用の発現カセットを導入し、DICEを介した標的化組み込みを可能にすることと、を含む。
【0176】
標的化組み込みのための有望な部位には、ヒトのゲノムの遺伝子内または遺伝子外領域であり、理論的には、宿主細胞または生物に悪影響を与えることなく、新たに組み込まれたDNAの予測可能な発現に対応できる、セーフハーバー遺伝子座、またはゲノムセーフハーバー(GSH)が含まれるが、これらに限定されない。有用なセーフハーバーは、ベクターにコードされたタンパク質または非コードRNAの望ましいレベルを生成するために十分な導入遺伝子発現を可能にする必要がある。セーフハーバーはまた、細胞を悪性形質転換しやすくしたり、細胞機能を変化させたりするものであってはならない。組換え部位が有望なセーフハーバー遺伝子座となるためには、理想的には次を含むがこれらに限定されない条件を満たしている必要がある:配列注釈により判断されるように、調節エレメントまたは遺伝子の破壊がない;遺伝子の密集した領域内の遺伝子間領域であるか、または反対方向に転写される2つの遺伝子間の収束位置である;ベクターにコード化された転写活性化因子と隣接する遺伝子、特に癌関連遺伝子およびマイクロRNA遺伝子のプロモーターとの間の長距離相互作用の可能性を最小限に抑えるために距離を保つ;ユビキタスな転写活性を示す広範な空間的および時間的発現配列タグ(EST)発現パターンによって反映されるように、明らかにユビキタスな転写活性を有する。この後者の特徴は幹細胞で特に重要であり、幹細胞では、分化中にクロマチンのリモデリングが通常、いくつかの遺伝子座のサイレンシングと他の遺伝子座の潜在的な活性化をもたらす。外因性挿入に適した領域内では、挿入のために選択された正確な遺伝子座は、反復要素と保存された配列を欠き、ホモロジーアームの増幅用のプライマーを簡単に設計できるはずである。
【0177】
ヒトゲノム編集、または具体的には標的化組み込みに適したサイトには、アデノ随伴ウイルス部位1(AAVS1)、ケモカイン(CCモチーフ)受容体5(CCR5)遺伝子座、およびマウスROSA26遺伝子座のヒトのオルソログが含まれるが、これらに限定されない。さらに、マウスH11遺伝子座のヒトオルソログはまた、本明細書に開示される標的化組み込みの組成物および方法を使用して挿入するための適切な部位であり得る。さらに、コラーゲンとHTRP遺伝子座は、標的化組み込みのためのセーフハーバーとしても使用できる。しかしながら、選択した各部位の検証は、特定の組み込みイベントのために特に幹細胞で必要であることが示されており、プロモーターの選択、外因性遺伝子の配列と配置、コンストラクトの設計などの挿入戦略の最適化がしばしば必要である。
【0178】
標的化されたインデルのために、編集部位はしばしばその発現および/または機能が破壊されることが意図されている内因性遺伝子に含まれている。一実施形態では、標的化されたインデルを含む内因性遺伝子は、免疫応答の調節および改変に関連する。他のいくつかの実施形態では、標的化インデルを含む内因性遺伝子は、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬物標的候補、免疫応答調節および調節、あるいは幹細胞および/または前駆細胞、ならびにそれらから誘導した細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、および/または生存率を抑制するタンパク質に関連する。
【0179】
したがって、本発明の一態様は、ゲノムセーフハーバーを含む選択された遺伝子座、または本明細書で提供されるような、B2M、TAP1、TAP2、もしくはタパシン遺伝子座などの継続的または一時的な遺伝子発現について安全かつ十分に調節されていることがわかっているもしくは証明された事前に選択された遺伝子座における標的化組み込みの方法を提供する。一実施形態では、標的化組み込みの方法のためのゲノムセーフハーバーは、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、もしくはRUNX1、またはゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む、1つ以上の望ましい組み込み部位を含む。一実施形態では、細胞への標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的な相同アームのペアおよび1つまたは複数の外因性配列を含むコンストラクトを細胞に導入して、細胞宿主酵素機構による部位特異的相同組換えを可能にすることと、を含み、望ましい組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、もしくはRUNX1、またはゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む。
【0180】
他の実施形態では、細胞への標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的なDNA結合ドメインを含むZFN発現カセットを細胞に導入することと、を含み、望ましい組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、もしくはRUNX1、またはゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む。さらに別の実施形態では、細胞への標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、所望の組み込み部位に特異的なDNA結合ドメインを含むTALEN発現カセットを細胞に導入して、TALENを介した挿入を可能にすることと、を含み、望ましい組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、もしくはRUNX1、またはゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む。別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、Cas9発現カセットおよび所望の組み込み部位に特異的なガイド配列を含むgRNAを細胞に導入してCas9を介した挿入を可能にすることと、を含み、望ましい組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、もしくはRUNX1、またはゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む。さらに別の実施形態では、細胞における標的化組み込みの方法は、一対のDICEリコンビナーゼの1つ以上のatt部位を含むコンストラクトを細胞内の所望の組み込み部位に導入することと、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入することと、DICEリコンビナーゼ用の発現カセットを導入し、DICEを介した標的化組み込みを可能にすることと、を含み、望ましい組み込み部位は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、もしくはRUNX1、またはゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む。
【0181】
さらに、本明細書で提供されるように、セーフハーバーでの標的化組み込みのための上述の方法は、目的のポリヌクレオチド、例えば、安全スイッチタンパク質、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補、および幹細胞および/または前駆細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、および/または生存率を促進するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入するために使用される。いくつかの他の実施形態では、1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトは、1つ以上のマーカー遺伝子をさらに含む。一実施形態では、本発明のコンストラクト中の外因性ポリヌクレオチドは、安全スイッチタンパク質をコードする自殺遺伝子である。誘導細胞死に適した自殺遺伝子系には、カスパーゼ9(またはカスパーゼ3もしくは7)とAP1903、チミジンキナーゼ(TK)とガンシクロビル(GCV);シトシンデアミナーゼ(CD)と5-フルオロシトシン(5-FC)が含まれるが、これらに限定されない。さらに、一部の自殺遺伝子系は細胞型に特異的であり、例えば、B細胞分子CD20によるTリンパ球の遺伝子改変は、mAbリツキシマブの投与時にそれらを排除することができる。さらに、セツキシマブによって認識されるエピトープを含む改変されたEGFRは、細胞がセツキシマブに曝露されたときに遺伝子操作された細胞を枯渇させるために使用することができる。したがって、本発明の一態様は、カスパーゼ9(カスパーゼ3または7)、チミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、改変EGFR、およびB細胞CD20から選択される安全スイッチタンパク質をコードする1つ以上の自殺遺伝子の標的化組み込みの方法を提供する。
【0182】
いくつかの実施形態では、本明細書の方法によって組み込まれた1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、標的化組み込みのためのコンストラクトに含まれる作動可能に連結された外因性プロモーターによって駆動される。プロモーターは誘導性または構成的であり得、そして時間特異的、組織特異的または細胞型特異的であり得る。本発明の方法に適した構成的プロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)、伸長因子1α(EF1α)、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)、ハイブリッドCMVエンハンサー/ニワトリβ-アクチン(CAG)、およびユビキチンC(UBC)プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、外因性プロモーターはCAGである。
【0183】
本明細書の方法によって組み込まれた外因性ポリヌクレオチドは、組み込み部位において、宿主ゲノム中の内因性プロモーターによって駆動され得る。一実施形態では、本発明の方法は、細胞のゲノムにおけるAAVS1遺伝子座における1つ以上の外因性ポリヌクレオチドの標的化された組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性AAVS1プロモーターによって駆動される。別の実施形態において、本発明の方法は、細胞のゲノムにおけるROSA26遺伝子座での標的化された組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性ROSA26プロモーターによって駆動される。さらに別の実施形態において、本発明の方法は、細胞のゲノムにおけるH11遺伝子座での標的化された組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性H11プロモーターによって駆動される。別の実施形態において、本発明の方法は、細胞のゲノムにおけるコラーゲン遺伝子座での標的化された組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性コラーゲンプロモーターによって駆動される。さらに別の実施形態において、本発明の方法は、細胞のゲノムにおけるHTRP遺伝子座での標的化された組み込みのために使用される。一実施形態では、少なくとも1つの組み込まれたポリヌクレオチドは、内因性HTRPプロモーターによって駆動される。理論的には、所望の位置での正しい挿入のみが、内因性プロモーターによって駆動される外因性遺伝子の遺伝子発現を可能にするであろう。
【0184】
いくつかの実施形態では、標的化組み込みの方法のためのコンストラクトに含まれる1つ以上の外因性ポリヌクレオチドは、1つのプロモーターによって駆動される。いくつかの実施形態では、コンストラクトは、同じプロモーターによって駆動される2つの隣接するポリヌクレオチド間に1つ以上のリンカー配列を含み、部分間の物理的分離を高め、酵素機構へのアクセスを最大にする。リンカー配列のリンカーペプチドは、関連する機能に応じて、部分(外因性ポリヌクレオチド、および/またはそこからコードされるタンパク質またはペプチド)間の物理的分離をより柔軟またはより堅くするように選択されたアミノ酸からなり得る。リンカー配列は、プロテアーゼにより切断可能であり得るか、または化学的に切断可能であり、別個の部分を生じ得る。リンカーにおける酵素的切断部位の例には、エンテロキナーゼ、第Xa因子、トリプシン、コラゲナーゼ、およびトロンビンなどのタンパク質分解酵素による切断のための部位が含まれる。いくつかの実施形態では、プロテアーゼは、宿主によって天然に産生されるものであるか、または外因的に導入される。代替的に、リンカー中の切断部位は、選択された化学物質、例えば臭化シアン、ヒドロキシルアミン、または低pHへの曝露時に切断され得る部位であり得る。任意のリンカー配列は、切断部位の提供以外の目的を果たし得る。リンカー配列は、部分が適切に機能するために、別の隣接部分に対する部分の効果的な配置を可能にするべきである。リンカーはまた、部分間のいずれかの立体障害を防ぐのに十分な長さの単純なアミノ酸配列であってもよい。さらに、リンカー配列は、例えば、リン酸化部位、ビオチン化部位、硫酸化部位、γ-カルボキシル化部位などを含むがこれらに限定されない翻訳後改変を提供することができる。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、生物学的に活性なペプチドを単一の望ましくない立体配座に保持しないように柔軟である。リンカーは、柔軟性を提供するために、グリシン、アラニン、およびセリンなどの小さな側鎖を有するアミノ酸から主になっていてもよい。いくつかの実施形態では、リンカー配列の約80または90パーセント以上が、グリシン、アラニン、またはセリン残基、特にグリシンおよびセリン残基を含む。いくつかの実施形態では、G4Sリンカーペプチドは、融合タンパク質の末端プロセシングおよびエンドヌクレアーゼドメインを分離する。他の実施形態では、2Aリンカー配列は、2つの別個のタンパク質が単一の翻訳から生成されることを可能にする。適切なリンカー配列は、経験的に容易に同定することができる。さらに、リンカー配列の適切なサイズおよび配列はまた、従来のコンピューターモデリング技術によって決定され得る。一実施形態では、リンカー配列は、自己切断ペプチドをコードする。一実施形態では、自己切断ペプチドは2Aである。いくつかの他の実施形態では、リンカー配列は、配列内リボソーム進入部位(IRES)を提供する。いくつかの実施形態では、任意の2つの連続するリンカー配列は異なる。
【0185】
標的化組み込みのための外因性ポリヌクレオチドを含むコンストラクトを細胞に導入する方法は、それ自体既知の細胞への遺伝子導入の方法を使用して達成することができる。一実施形態では、コンストラクトは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、センダイウイルスベクターなどのウイルスベクターの骨格を含む。いくつかの実施形態において、プラスミドベクターは、外因性ポリヌクレオチドを標的細胞(例えば、pA1ー11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neo)などに送達および/または発現するために使用される。いくつかの他の実施形態では、エピソームベクターは、外因性ポリヌクレオチドを標的細胞に送達するために使用される。いくつかの実施形態では、組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)を遺伝子操作に使用して、相同組換えを介して挿入、欠失、または置換を導入することができる。レンチウイルスとは異なり、rAAVは宿主ゲノムに組み込まれない。さらに、エピソームrAAVベクターは、従来の標的化プラスミドのトランスフェクションと比較して、相同性指向性遺伝子標的化をはるかに高い割合で仲介する。いくつかの実施形態では、AAV6またはAAV2ベクターを使用して、iPSCのゲノム中の標的部位に挿入、欠失、または置換を導入する。いくつかの実施形態では、本明細書の方法および組成物を使用して得られたゲノム改変iPSCおよびその誘導細胞は、表1に列挙された少なくとも1つの遺伝子型を含む。
【0186】
III.ゲノム操作されたiPSCを取得および維持する方法
本発明は、1つ以上の所望の部位での1つ以上の標的化編集を含むゲノム操作されたiPSCを取得および維持する方法を提供し、標的化編集は、増殖されたゲノム操作されたiPSCまたはiPSC由来非多能性細胞において、それぞれの選択した編集部位で無傷で機能的であり続ける。標的化編集は、iPSCとそこから誘導した細胞のゲノムに、挿入、欠失、および/または置換を導入、すなわち、選択した部位での標的化組み込みおよび/またはインデルを導入する。患者由来の末梢血由来の一次エフェクター細胞を直接操作する場合と比較して、ここで提供されるようにiPSCを編集および分化させることによりゲノム操作された誘導細胞を取得することの多くの利点には、以下が含まれるが、これらに限定されない:設計されたエフェクター細胞の無制限のソース;特に複数の設計されたモダリティが含まれる場合、エフェクター細胞を繰り返し操作する必要がない;得られたエフェクター細胞は、伸長したテロメアを有し、消耗が少ないために若返っている;主に本明細書で提供される操作されたiPSCでのクローン選択が可能であることに起因して、エフェクター細胞集団は、編集部位、コピー数、および対立遺伝子変異、無作為変異、発現多様性がないという点で均一である。
【0187】
特定の実施形態では、1つ以上の選択された部位に1つ以上の標的化編集を含むゲノム操作されたiPSCは、運命維持培地(FMM)として表2に示される細胞培養培地で長期間単一細胞として維持、継代、および増殖され、ここで、iPSCは、選択された部位で標的化編集と機能改変を保持する。培地の成分は、表2に示される最適範囲内の量で培地中に存在し得る。FMMで培養されたiPSCは、未分化で、基礎的またはナイーブなプロファイル、培養物の洗浄や選択を必要としないゲノム安定性を維持し続けることが示されており、3つ全ての体細胞系統、胚様体または単層(胚様体の形成なし)を介したin vitro分化、および奇形腫形成によるin vivo分化を容易に生じさせる。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第61/947,979号を参照されたい。
【表2】
【0188】
いくつかの実施形態では、1つ以上の標的化組み込みおよび/またはインデルを含むゲノム操作されたiPSCは、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、およびROCK阻害剤を含む培地中で維持され、継代され、増殖され、TGFβ受容体/ALK5阻害剤を含まないか、または本質的に含まず、ここで、iPSCは、選択された部位において無傷で機能的な標的化編集を保持する。
【0189】
本発明の別の態様は、iPSCの標的化編集を通じて、あるいは最初に標的化編集によりゲノム操作非多能性細胞を生成し、次に選択/分離されたゲノム操作非多能性細胞をリプログラミングして非多能性細胞と同じ標的化編集を含むiPSCを取得することを通じて、ゲノム操作されたiPSCを生成する方法を提供する。本発明のさらなる態様は、標的化組み込みおよび/または標的化インデルを細胞に導入することによって同時にリプログラミングを受けているゲノム操作非多能性細胞を提供し、接触した非多能性細胞はリプログラミングに十分な条件下にあり、リプログラミングの条件は、非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子および小分子と接触させることを含む。同時のゲノム操作およびリプログラミングのための方法の様々な実施形態では、非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子および必要に応じて小分子と接触させることによりリプログラミングを開始する前に、または本質的に同時に、非標的多能性細胞に標的化組み込みおよび/または標的化インデルを導入することができる。
【0190】
いくつかの実施形態では、非多能性細胞を同時にゲノム操作およびリプログラミングするために、標的化組み込みおよび/またはインデルはまた、非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子および小分子と接触させることによりリプログラミングの複数日のプロセスが開始された後に非多能性細胞に導入され得、ここで、リプログラミング細胞がSSEA4、Tra181およびCD30を含むがこれらに限定されない1つ以上の内因性多能性遺伝子の安定した発現を示す前に、コンストラクトを担持するベクターが導入される。
【0191】
いくつかの実施形態では、リプログラミングは、非多能性細胞を少なくとも1つのリプログラミング因子、および必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、およびROCK阻害剤の組み合わせ(FRM;表2)と接触させることにより開始される。いくつかの実施形態では、上述の任意の方法によるゲノム操作されたiPSCは、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、およびROCK阻害剤の組み合わせを含む混合物(FMM;表2)を使用してさらに維持および増殖される。
【0192】
ゲノム操作されたiPSCを生成する方法のいくつかの実施形態では、方法は、iPSCに1つ以上の標的化組み込みおよび/またはインデルを導入してiPSCをゲノム操作し、表1に列挙された少なくとも1つの遺伝子型を有するゲノム操作されたiPSCを取得することを含む。代替的に、ゲノム操作されたiPSCを生成する方法は、(a)1つ以上の標的化編集を非多能性細胞に導入して、選択した部位で標的化組み込みおよび/またはインデルを含むゲノム操作非多能性細胞を取得することと、(b)ゲノム操作された非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子、および必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤および/またはROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させて、選択された部位で標的化組み込みおよび/またはインデルを含むゲノム操作されたiPSCを取得することと、を含む。代替的に、ゲノム操作されたiPSCを生成する方法は、(a)非多能性細胞を1つ以上のリプログラミング因子、および必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、および/またはROCK阻害剤を含む小分子組成物と接触させて非多能性細胞のリプログラミングを開始することと、(b)1つ以上の標的化組み込みおよび/またはインデルを、ゲノム操作のためのリプログラミング非多能性細胞に導入することと、(c)選択された部位で標的化組み込みおよび/またはインデルを含む、クローンゲノム操作されたiPSCを取得することと、を含む。
【0193】
リプログラミング因子は、PCT/US2015/018801およびPCT/US16/57136に開示されているような、OCT4、SOX2、NANOG、KLF4、LIN28、C-MYC、ECAT1、UTF1、ESRRB、SV40LT、HESRG、CDH1、TDGF1、DPPA4、DNMT3B、ZIC3、L1TD1、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択され、それらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。1つ以上のリプログラミング因子は、ポリペプチドの形態であり得る。リプログラミング因子はまた、ポリヌクレオチドの形態であり得、したがって、レトロウイルス、センダイウイルス、アデノウイルス、エピソーム、プラスミド、およびミニサークルなどのベクターによって非多能性細胞に導入される。特定の実施形態では、少なくとも1つのリプログラミング因子をコードする1つ以上のポリヌクレオチドは、レンチウイルスベクターによって導入される。いくつかの実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドはエピソームベクターによって導入される。他の種々の実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドは、センダイウイルスベクターによって導入される。いくつかの実施形態では、1つ以上のポリヌクレオチドは、プラスミドの組み合わせによって導入される。例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第62/571,105号を参照されたい。
【0194】
いくつかの実施形態では、非多能性細胞は、同じかまたは異なる選択された部位での標的化組み込みのための複数のベクターによって、異なる外因性ポリヌクレオチドおよび/または異なるプロモーターを含む複数のコンストラクトで導入される。これらの外因性ポリヌクレオチドは、自殺遺伝子、または標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補、またはiPSCもしくはその誘導細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、および/または生存率を促進するタンパク質をコードする遺伝子を含み得る。いくつかの実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、siRNA、shRNA、miRNA、およびアンチセンス核酸を含むがこれらに限定されないRNAをコードする。これらの外因性ポリヌクレオチドは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、時間特異的プロモーター、および組織特異的または細胞型特異的プロモーターからなる群から選択される1つ以上のプロモーターによって駆動され得る。したがって、ポリヌクレオチドは、プロモーターを活性化する条件下で、例えば、誘導剤の存在下で、または特定の分化した細胞型で発現可能である。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、iPSCおよび/またはiPSCから分化した細胞で発現する。一実施形態では、1つ以上の自殺遺伝子は、構成的プロモーターにより駆動され、例えば、CAGにより駆動されるキャパーゼ-9である。異なる外因性ポリヌクレオチドおよび/または異なるプロモーターを含むこれらのコンストラクトは、同時または連続的に非多能性細胞に導入することができる。複数のコンストラクトの標的化組み込みに供される非多能性細胞は、1つ以上のリプログラミング因子に同時に接触させて、ゲノム操作と同時にリプログラミングを開始でき、これにより、同じ細胞のプールに複数の標的化組み込みを含むゲノム操作されたiPSCを取得できる。このように、この堅牢な方法により、同時のリプログラミングと操作戦略により、選択された1つ以上の標的部位に組み込まれた複数のモダリティを持つクローンゲノム操作hiPSCを誘導できる。いくつかの実施形態では、本明細書の方法および組成物を使用して得られたゲノム改変iPSCおよびその誘導細胞は、表1に列挙された少なくとも1つの遺伝子型を含む。
【0195】
IV.ゲノム操作されたiPSCを分化させることにより遺伝子操作されたエフェクター細胞を取得する方法
本発明のさらなる態様は、奇形腫形成によるゲノム操作されたiPSCのin vivo分化の方法を提供し、ゲノム操作されたiPSCからin vivoで誘導された分化細胞は、所望の部位で標的化組み込みおよび/またはインデルを含む無傷で機能的な標的化編集を保持する。いくつかの実施形態では、奇形腫を介してゲノム操作されたiPSCからin vivoで誘導された分化細胞は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、もしくはRUNX1、またはゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む、1つ以上の望ましい部位に組み込まれた1つ以上の誘導性自殺遺伝子を含む。いくつかの他の実施形態では、奇形腫を介してゲノム操作されたiPSCからin vivoで誘導された分化細胞は、標的化モダリティをコードするポリヌクレオチド、または幹細胞および/または前駆細胞の輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、および/または生存率を促進するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の誘導性自殺遺伝子を含む奇形腫を介してゲノム操作されたiPSCからin vivoで誘導された分化細胞は、免疫応答の調節および媒介に関連する内因性遺伝子の1つ以上のインデルをさらに含む。いくつかの実施形態では、インデルは、1つ以上の内因性チェックポイント遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは、1つ以上の内因性T細胞受容体遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは、1つ以上の内因性MHCクラスIサプレッサー遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは、主要組織適合性複合体に関連する1つ以上の内因性遺伝子に含まれる。いくつかの実施形態では、インデルは、B2M、PD1、TAP1、TAP2、タパシン、TCR遺伝子を含むがこれらに限定されない1つ以上の内因性遺伝子に含まれる。一実施形態では、選択された部位に1つ以上の外因性ポリヌクレオチドを含むゲノム操作されたiPSCは、B2M(ベーター2ーミクログロブリン)をコードする遺伝子における標的化編集をさらに含む。
【0196】
特定の実施形態では、本明細書で提供される1つ以上の遺伝子改変を含むゲノム操作されたiPSCは、造血細胞系統または他の特定の細胞型をin vitroで誘導するために使用され、誘導された非多能性細胞は、選択された部位で標的化編集を含む機能的遺伝子改変を保持する。一実施形態では、ゲノム操作されたiPSC由来細胞は、決定的な造血内皮(HE)ポテンシャルを有する中胚葉細胞、決定的なHE、CD34造血細胞、造血幹細胞および前駆細胞、造血多能性前駆細胞(MPP)、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、骨髄細胞、好中球前駆細胞、T細胞、NKT細胞、NK細胞、B細胞、好中球、樹状細胞、およびマクロファージを含むがこれらに限定されず、ここで、ゲノム操作されたiPSCに由来するこれらの細胞は、所望の部位で標的化された編集を含む機能的な遺伝子改変を保持する。
【0197】
iPSC由来の造血細胞系統を得るための適用可能な分化方法および組成物には、例えば、国際出願番号PCT/US2016/044122に記載されているものが含まれ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。提供されているように、造血細胞系統を生成するための方法と組成物は、無血清、フィーダーを含まない、および/または間質を含まない条件下で、スケーラブルで単層のEB形成を必要としない培養プラットフォームにおいて、hiPSCを含む、多能性幹細胞に由来する決定的な造血内皮(HE)を介する。提供された方法に従って分化できる細胞は、多能性幹細胞から、特定の最終分化細胞および分化転換細胞にコミットした前駆細胞、および多能性中間体を経由せずに造血運命に直接移行した種々の系統の細胞にまで及ぶ。同様に、幹細胞を分化させることによって生成される細胞は、多能性幹細胞または前駆細胞から、最終分化細胞まで、および全ての介在する造血細胞系統にまで及ぶ。
【0198】
単層培養において造血系統の細胞を多能性幹細胞から分化および拡大する方法は、多能性幹細胞をBMP経路活性化因子、および必要に応じてbFGFと接触させることを含む。提供されるように、多能性幹細胞由来の中胚葉細胞が得られ、多能性幹細胞から胚様体を形成することなく増殖される。次いで、中胚葉細胞をBMP経路活性化因子、bFGF、およびWNT経路活性化因子との接触に供して、多能性幹細胞から胚様体を形成することなく、決定的な造血内皮(HE)ポテンシャルを有する増殖中胚葉細胞を得る。その後のbFGFとの接触、および必要に応じてROCK阻害剤、および/またはWNT経路活性化因子との接触により、決定的なHEの可能性を有する中胚葉細胞は、同様に分化中に増殖される、決定的なHE細胞に分化する。
【0199】
本明細書で提供される造血系統の細胞を得るための方法はEB媒介の多能性幹細胞分化より優れているが、これは、EB形成が適度な増殖から最小限の細胞増殖をもたらし、均一な増殖を必要とする多くの用途で重要な単層培養、および集団内の細胞の均一な分化を可能にせず、骨が折れ、効率が低くなるためである。
【0200】
提供されている単層分化プラットフォームは、造血幹細胞およびT細胞、B細胞、NKT細胞、およびNK細胞などの分化した子孫の誘導をもたらす決定的な造血内皮への分化を促進する。単層分化戦略は、増強された分化効率と大規模な増殖を組み合わせて、種々の治療用途のための多能性幹細胞由来造血細胞の治療上適切な数の送達を可能にする。さらに、本明細書で提供される方法を使用した単層培養は、in vitro分化、ex vivo改変、およびin vivo長期造血自己複製、再構成および生着の全範囲を可能にする機能的造血系統細胞をもたらす。提供されているように、iPSC由来の造血系統細胞には、決定的な造血内皮、造血多能性前駆細胞、造血幹細胞および前駆細胞、T細胞前駆細胞、NK細胞前駆細胞、T細胞、NK細胞、NKT細胞、B細胞、マクロファージ、ならびに好中球が含まれるがこれらに限定されない。
【0201】
多能性幹細胞の決定的な造血系統の細胞への分化を指示する方法であって、(i)多能性幹細胞をBMP活性化因子および必要に応じてbFGFを含む組成物と接触させ、多能性幹細胞から中胚葉細胞の分化および増殖を開始することと、(ii)中胚葉細胞をBMP活性化因子、bFGF、およびGSK3阻害剤を含み、必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない組成物と接触させ、中胚葉細胞から決定的なHEポテンシャルを有する中胚葉細胞の分化および増殖を開始することと、(iii)決定的なHEポテンシャルを有する中胚葉細胞をROCK阻害剤;bFGF、VEGF、SCF、IGF、EPO、IL6、およびIL11からなる群から選択される1つ以上の増殖因子およびサイトカイン、ならびに必要に応じてWnt経路活性化因子を含み、必要に応じてTGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない組成物と接触させ、決定的な造血内皮のポテンシャルを有する多能性幹細胞由来中胚葉細胞から決定的な造血内皮の分化および増殖を開始することと、を含む。
【0202】
いくつかの実施形態では、方法は、多能性幹細胞を、MEK阻害剤、GSK3阻害剤、およびROCK阻害剤を含み、TGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない組成物と接触させ、多能性幹細胞を播種および増殖させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は、iPSC、またはナイーブiPSC、または1つ以上の遺伝的インプリントを含むiPSCであり、iPSCに含まれる1つ以上の遺伝的インプリントは、そこから分化した造血細胞に保持される。多能性幹細胞の造血系統の細胞への分化を指示するための方法のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞の造血系統の細胞への分化は、胚様体の生成がなく、単層培養形態である。
【0203】
上述の方法のいくつかの実施形態では、得られた多能性幹細胞由来の決定的な造血性内皮細胞は、CD34+である。いくつかの実施形態では、得られた決定的な造血内皮細胞は、CD34+CD43-である。いくつかの実施形態では、決定的な造血内皮細胞は、CD34+CD43-CXCR4-CD73-である。いくつかの実施形態では、決定的な造血性内皮細胞は、CD34+CXCR4-CD73-である。いくつかの実施形態では、決定的な造血内皮細胞は、CD34+CD43-CD93-である。いくつかの実施形態では、決定的な造血性内皮細胞は、CD34+CD93-である。
【0204】
上述の方法のいくつかの実施形態では、この方法は、(i)多能性幹細胞由来の決定的な造血性内皮を、ROCK阻害剤;VEGF、bFGF、SCF、Flt3L、TPO、およびIL7からなる群から選択される1つ以上の増殖因子およびサイトカイン、ならびに必要に応じてBMP活性化因子を含む組成物と接触させ、決定的な造血性内皮のプレT細胞前駆細胞への分化を開始することと、必要に応じて(ii)プレT細胞前駆細胞を、SCF、Flt3L、およびIL7からなる群から選択される1つ以上の増殖因子およびサイトカインを含むが、VEGF、bFGF、TPO、BMP活性化因子、およびROCK阻害剤の1つ以上を含まない組成物と接触させ、プレT細胞前駆細胞からT細胞前駆細胞またはT細胞への分化を開始することと、をさらに含む。この方法のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のT細胞前駆細胞は、CD34+CD45+CD7+である。この方法のいくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のT細胞前駆細胞は、CD45+CD7+である。
【0205】
多能性幹細胞の造血系統の細胞への分化を指示するための上述の方法のさらにいくつかの実施形態では、この方法は、(i)多能性幹細胞由来の決定的な造血性内皮を、ROCK阻害剤;VEGF、bFGF、SCF、Flt3L、TPO、IL3、IL7、およびIL15からなる群から選択される1つ以上の増殖因子およびサイトカイン、ならびに必要に応じてBMP活性化因子を含む組成物と接触させ、決定的な造血性内皮のプレNK細胞前駆細胞への分化を開始することと、必要に応じて(ii)多能性幹細胞由来のプレNK細胞前駆細胞を、SCF、Flt3L、、IL3、IL7、およびIL15からなる群から選択される1つ以上の増殖因子およびサイトカインを含み、VEGF、bFGF、TPO、BMP活性化因子、およびROCK阻害剤の1つ以上を含まない組成物と接触させ、プレNK細胞前駆細胞からNK細胞前駆細胞またはNKNK細胞への分化を開始することと、をさらに含む。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のNK前駆細胞は、CD3-CD45+CD56+CD7+である。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞由来のNK細胞は、CD3-CD45+CD56+であり、必要に応じて、NKp46+、CD57+およびCD16+によってさらに規定される。
【0206】
したがって、上述の分化方法を使用して、以下のiPSC由来の造血細胞のうちの1つ以上の集団を得ることができる(i)iMPC-A、iTC-A2、iTC-B2、iNK-A2、およびiNK-B2から選択される1つ以上の培地を使用した、CD34+HE細胞(iCD34)、(ii)iMPP-A、iTC-A2、iTC-B2、iNK-A2、およびiNK-B2から選択される1つ以上の培地を使用した、決定的な造血内皮(iHE)、(iii)iMPP-A、iTC-A2、iTC-B2、iNK-A2、およびiNK-B2から選択される1つ以上の培地を使用した、決定的なHSC、(iv)iMPP-Aを使用した多能性前駆細胞(iMPP)、(v)iTC-A2、およびiTC-B2から選択される1つ以上の培地を使用したT細胞前駆細胞(ipro-T)、(vi)iTC-B2を使用したT細胞(iTC)、(vii)iNK-A2、およびiNK-B2から選択される1つ以上の培地を使用したNK細胞前駆細胞(ipro-NK)、および/または(viii)NK細胞(iNK)、およびiNK-B2。いくつかの実施形態では、培地は以下である:
a.iCD34-Cは、ROCK阻害剤、bFGF、VEGF、SCF、IL6、IL11、IGF、およびEPOからなる群から選択される1つ以上の増殖因子とサイトカイン、ならびに必要に応じてWnt経路活性化因子を含み、TGFβ受容体/ALK阻害剤を含まない。
b.iMPP-Aは、BMP活性化因子、ROCK阻害剤、およびTPO、IL3、GMCSF、EPO、bFGF、VEGF、SCF、IL6、Flt3L、およびIL11からなる群から選択される1つ以上の増殖因子およびサイトカインを含む。
c.iTC-A2はROCK阻害剤、SCF、Flt3L、TPO、およびIL7からなる群から選択された1つ以上の増殖因子およびサイトカイン、ならびに必要に応じて、BMP活性化因子を含む。
d.iTC-B2は、SCF、Flt3L、およびIL7からなる群から選択された1つ以上の増殖因子とサイトカインを含む。
e.iNK-A2は、ROCK阻害剤、ならびにSCF、Flt3L、TPO、IL3、IL7、およびIL15からなる群から選択された1つ以上の増殖因子およびサイトカイン、ならびに必要に応じて、BMP活性化因子を含む。
f.iNK-B2は、SCF、Flt3L、IL7、およびIL15からなる群から選択された1つ以上の増殖因子およびサイトカインを含む。
【0207】
いくつかの実施形態では、上述の方法から得られたゲノム操作されたiPSC由来細胞は、AAVS1、CCR5、ROSA26、コラーゲン、HTRP、H11、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、もしくはRUNX1、またはゲノムセーフハーバーの基準を満たす他の遺伝子座を含む1つ以上の望ましい組み込み部位に組み込まれた1つ以上の誘導性自殺遺伝子を含む。いくつかの他の実施形態では、ゲノム操作されたiPSC由来細胞は、安全スイッチタンパク質、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補、または幹細胞および/または前駆細胞の輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、および/または生存率を促進するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の自殺遺伝子を含むゲノム操作されたiPSC由来細胞は、チェックポイント遺伝子、内因性T細胞受容体遺伝子、およびMHCクラスI抑制遺伝子を含むがこれに限定されない、免疫応答調節および媒介に関連する1つ以上の内在性遺伝子に含まれる1つ以上のインデルをさらに含む。一実施形態では、1つ以上の自殺遺伝子を含むゲノム操作されたiPSC由来細胞は、B2M遺伝子にインデルを含み、B2Mがノックアウトされている。
【0208】
さらに、第1の運命のゲノム操作造血細胞から第2の運命のゲノム操作造血細胞を得るための適用可能な脱分化方法および組成物は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれている国際公開番号WO2011/159726に示されているものを含む。その中で提供される方法および組成物は、リプログラミング中に内因性Nanog遺伝子の発現を制限することによって、開始非多能性細胞を非多能性中間細胞に部分的にリプログラミングすることを可能にし、非多能性中間細胞を、中間細胞を所望の細胞型に分化させるための条件に供する。いくつかの実施形態では、本明細書の方法および組成物を使用して得られたゲノム改変iPSCおよびその誘導細胞は、表1に列挙された少なくとも1つの遺伝子型を含む。
【0209】
V.遺伝子操作されたiPSCから分化した機能的モダリティを持つ誘導免疫細胞の治療的使用
本発明は、いくつかの実施形態において、開示される方法および組成物を使用してゲノム操作されたiPSCから分化された機能的に増強された派生免疫細胞の単離された集団または亜集団を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、iPSCは、iPSC由来免疫細胞に保持可能な1つ以上の標的化遺伝子編集を含み、遺伝子操作されたiPSCおよびその誘導細胞は、細胞ベースの養子療法に適している。一実施形態では、遺伝子操作免疫細胞の単離された集団または亜集団は、iPSC由来のCD34細胞を含む。一実施形態では、遺伝子操作免疫細胞の単離された集団または亜集団は、iPSC由来のHSC細胞を含む。一実施形態では、遺伝子操作免疫細胞の単離された集団または亜集団は、iPSC由来のプロT細胞またはT細胞を含む。一実施形態では、遺伝子操作免疫細胞の単離された集団または亜集団は、iPSC由来のプロNK細胞またはNK細胞を含む。一実施形態では、遺伝子操作免疫細胞の単離された集団または亜集団は、iPSC由来の免疫調節細胞または骨髄由来のサプレッサー細胞(MDSC)を含む。いくつかの実施形態では、iPSC由来の遺伝子操作免疫細胞は、改善された治療の可能性のために、ex vivoでさらに改変される。一実施形態では、iPSCに由来する遺伝子操作免疫細胞の単離された集団または亜集団は、ナイーブT細胞、幹細胞メモリーT細胞、および/またはセントラルメモリーT細胞の数または比率の増加を含む。一実施形態では、iPSCに由来する遺伝子操作免疫細胞の単離された集団または亜集団は、I型NKT細胞の数または比率の増加を含む。別の実施形態では、iPSCに由来する遺伝子操作免疫細胞の単離された集団または亜集団は、適応NK細胞の数または比率の増加を含む。いくつかの実施形態では、iPSCに由来する、遺伝子操作CD34細胞、HSC細胞、T細胞、NK細胞、または骨髄由来サプレッサー細胞の単離された集団または亜集団は、同種異系である。他のいくつかの実施形態では、iPSCに由来する、遺伝子操作されたCD34細胞、HSC細胞、T細胞、NK細胞、またはMDSCの単離された集団または亜集団は自家性である。
【0210】
いくつかの実施形態では、分化のためのiPSCは、エフェクター細胞において望ましい治療属性を伝えるために選択された遺伝子インプリントを含み、分化中の細胞発生生物学が破壊されず、上記iPSC由来の分化造血細胞において遺伝子インプリントが保持され、機能的であることを条件とする。
【0211】
いくつかの実施形態では、多能性幹細胞の遺伝的インプリントは、(i)非多能性細胞をiPSCにリプログラミングする間またはその後に多能性細胞のゲノムにおけるゲノム挿入、欠失、または置換によって得られる1つ以上の遺伝子改変モダリティ、または(ii)ドナー特異的、疾患特異的、または治療反応特異的であるソース特異的免疫細胞の1つ以上の保持可能な治療属性を含み、多能性細胞がソース特異的免疫細胞からリプログラミングされ、iPSCが、iPSC由来の造血系細胞にも含まれる治療属性ソースの治療属性を保持する。
【0212】
いくつかの実施形態では、遺伝子改変モダリティは、安全スイッチタンパク質、標的化モダリティ、受容体、シグナル伝達分子、転写因子、薬学的に活性なタンパク質およびペプチド、薬物標的候補、あるいは、iPSCまたはその誘導細胞の生着、輸送、ホーミング、生存能力、自己複製、持続性、免疫応答の調節と調節、および/または生存率を促進するタンパク質の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子改変されたiPSCおよびその誘導細胞は、表1に列挙された遺伝子型を含む。他のいくつかの実施形態では、表1に列挙された遺伝子型を含む遺伝子改変iPSCおよびその誘導細胞は、(1)TAP1、TAP2、タパシン、NLRC5、PD1、LAG3、TIM3、RFXANK、CIITA、RFX5、またはRFXAP、および染色体6p21領域の任意の遺伝子の1つ以上の欠失または発現低下、ならびに(2)HLA-E、41BBL、CD3、CD4、CD8、CD47、CD113、CD131、CD137、CD80、PDL1、A2AR、CAR、TCR、Fc受容体、または二重特異性または多重特異性またはユニバーサルエンゲージャーとのカップリングのための表面トリガー受容体の導入または増加した発現を含む追加の遺伝子改変モダリティをさらに含む。
【0213】
さらにいくつかの他の実施形態では、造血系統細胞は、以下のうちの少なくとも2つの組み合わせに関するソース特異的免疫細胞の治療属性を含む:(i)1つ以上の抗原標的化受容体の発現、(ii)改変されたHLA、(iii)腫瘍の微小環境に対する耐性、(iv)バイスタンダー免疫細胞の動員および免疫調節、(iv)腫瘍外効果が低減された改善された標的特異性、(v)改善されたホーミング、持続性、細胞傷害性、または抗原エスケープレスキュー救済。
【0214】
いくつかの実施形態では、表1に列挙される遺伝子型を含むiPSC誘導造血細胞、および上記細胞は、IL2、IL4、IL6、IL7、IL9、IL10、IL11、IL12、IL15、IL18、もしくはIL21を含む少なくとも1つのサイトカインおよび/またはその受容体、またはそれらの任意の改変タンパク質を発現し、少なくともCARを発現する。いくつかの実施形態では、サイトカインおよびCARの操作された発現は、NK細胞特異的である。いくつかの他の実施形態では、サイトカインおよびCARの操作された発現は、T細胞特異的である。一実施形態では、CARは、CD38結合ドメインを含む。いくつかの実施形態では、iPSC誘導造血エフェクター細胞は抗原特異的である。いくつかの実施形態では、抗原特異的誘導エフェクター細胞は、液体腫瘍を標的とする。いくつかの実施形態では、抗原特異的誘導エフェクター細胞は、固形腫瘍を標的とする。いくつかの実施形態では、抗原特異的iPSC誘導造血エフェクター細胞は、腫瘍抗原エスケープを救済することができる。
【0215】
本発明の免疫細胞を養子細胞療法に適した対象に導入することにより、種々の疾患を改善することができる。いくつかの実施形態では、提供されるiPSC誘導造血細胞は、同種異系養子細胞療法のためのものである。さらに、本発明は、いくつかの実施形態において、養子細胞療法に適した対象に組成物を導入することによる上述の治療組成物の治療的使用を提供し、ここで、対象は自己免疫障害、血液悪性腫瘍、固形腫瘍、または、HIV、RSV、EBV、CMV、アデノウイルス、もしくはBKポリオーマウイルスに関連する感染症を有する。血液悪性腫瘍の例には、急性および慢性白血病(急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、ホジキン病、多発性骨髄腫、および骨髄異形成症候群が含まれるが、これらに限定されない。固形がんの例には、脳、前立腺、乳房、肺、結腸、子宮、皮膚、肝臓、骨、膵臓、卵巣、精巣、膀胱、腎臓、頭、首、胃、子宮頸、直腸、喉頭、および食道のがんが含まれるが、これらに限定されない。種々の自己免疫疾患の例には、円形脱毛症、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、皮膚筋炎、糖尿病(1型)、若年性特発性関節炎のいくつかの形態、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー症候群、特発性血小板減少性紫斑病、重症筋無力症、いくつかの形態の心筋炎、多発性硬化症、類天疱瘡/類天疱瘡、悪性貧血、結節性多発動脈炎、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、リウマチ様関節炎、強皮症/全身性硬化症、シェーグレン症候群、全身性エリテマトーデス、甲状腺炎のいくつかの形態、ブドウ膜炎のいくつかの形態、白斑、多発血管炎を伴う肉芽腫症(ウェゲナー病)が含まれるが、これらに限定されない。ウイルス感染症の例には、HIV-(ヒト免疫不全ウイルス)、HSV-(単純ヘルペスウイルス)、KSHV-(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)、RSV-(呼吸器合胞体ウイルス)、EBV-(エプスタイン-バーウイルス)、CMV-(サイトメガロウイルス)、VZV(水痘帯状疱疹ウイルス)、アデノウイルス-、レンチウイルス-、BKポリオーマウイルス-関連疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0216】
本明細書に開示されている実施形態の誘導造血系統細胞を使用する治療は、症状に基づいて、または再発防止のために行うことができる。「治療すること」、「治療」などの用語は、本明細書では、概して、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを意味するために使用される。効果は、疾患を完全にまたは部分的に予防することに関して予防的であり得、および/または疾患および/または疾患に起因する有害作用の部分的もしくは完全な治癒に関して治療的であり得る。本明細書で使用されるとき、「治療」は、対象における疾患のあらゆる介入を網羅し、以下を含む:疾患にかかりやすいが、まだそれを有していると診断されていない対象において疾患が生じることを予防すること、疾患を阻害すること、すなわちその発症を阻止すること、または疾患を緩和する、すなわち疾患を後退させること。治療剤または組成物は、疾患または傷害の発症前、発症中または発症後に投与することができる。治療が患者の望ましくない臨床症状を安定化または軽減させる進行中の疾患の治療もまた、特に重要である。特定の実施形態では、治療を必要とする対象は、細胞療法により少なくとも1つの関連する症状を抑制、改善、および/または改善することができる疾患、状態、および/または損傷を有する。特定の実施形態は、細胞療法を必要とする対象が、骨髄または幹細胞移植の候補、化学療法または放射線療法を受けた対象、過剰増殖性障害またはがん、例えば、造血系の過剰増殖性障害またはがんを有するかまたはする危険性がある対象、腫瘍、例えば固形腫瘍を有するかまたは発症する危険性がある対象、ウイルス感染またはウイルス感染に関連する疾患を有するかまたは有する危険性がある対象を含むが、これらに限定されないことを企図する。
【0217】
本明細書に開示された実施形態の誘導造血系統細胞を含む治療に対する応答性を評価するとき、応答は、臨床的利益率、死亡までの生存率、病理学的完全奏功、病理学的応答の版定量的測定、臨床的完全寛解、臨床的部分寛解、臨床的安定疾患、無再発生存、無転移生存、無病生存、循環腫瘍細胞減少、循環マーカー応答、およびRECIST(固形腫瘍における応答評価基準)基準によって測定できる。
【0218】
開示されるような誘導造血系統細胞を含む治療用組成物は、他の治療の前、間、および/または後に対象に投与することができる。したがって、組み合わせ療法の方法は、追加の治療薬の使用前、使用中、および/または使用後のiPSC由来免疫細胞の投与または調製を含み得る。上述のように、1以上の追加の治療薬は、ペプチド、サイトカイン、チェックポイント阻害剤、マイトジェン、増殖因子、低分子RNA、dsRNA(二本鎖RNA)、単核血球、フィーダー細胞、フィーダー細胞成分またはその補充因子、1つ以上の目的のポリ核酸を含むベクター、抗体、化学療法剤または放射性部分、または免疫調節薬(IMiD)を含む。iPSC由来の免疫細胞の投与は、追加の治療薬の投与から、時間、日、または週単位によって時間的に分離することができる。追加的または代替的に、投与は、抗腫瘍剤、手術などの非薬物療法などであるがこれらに限定されない他の生物活性剤またはモダリティと組み合わせることができる。
【0219】
組み合わせ細胞療法のいくつかの実施形態では、治療的組み合わせは、本明細書で提供されるiPSC由来造血系統細胞および抗体またはその断片である追加の治療薬を含む。いくつかの実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体、ヒト化モノクローナル抗体、またはキメラ抗体であってよい。いくつかの実施形態では、抗体または抗体断片は、ウイルス抗原に特異的に結合する。他の実施形態では、抗体または抗体断片は、腫瘍抗原に特異的に結合する。いくつかの実施形態では、腫瘍またはウイルス特異的抗原は、投与されたiPSC由来の造血系統細胞を活性化して、それらの殺傷能力を増強する。いくつかの実施形態では、投与されたiPSC由来造血系統細胞に対する追加の治療剤として、組み合わせ治療に適した抗体は、抗CD20(例えば、リツキシマブ、ベルツズマブ、オファツムマブ、ウブリツキシマブ、オカラツズマブ、オビヌツズマブ)、抗HER2(例えば、トラスツズマブ、パーツズマブ)、抗CD52(例えば、アレムツズマブ)、抗EGFR(例えば、セルツキシマブ)、抗GD2(例えば、ジヌツキシマブ)、抗PDL1(例えば、アベルマブ)、抗CD38(例えば、ダラツムマブ、イサツキシマブ、MOR202)、抗CD123(例えば、7G3、CSL362)、抗SLAMF7(エロツズマブ)、およびそれらのヒト化またはFc改変バリアントもしくは断片、またはそれらの機能的同等物もしくはバイオシミラーを含むがそれらに限定されない。
【0220】
いくつかの実施形態では、追加の治療薬は、1つ以上のチェックポイント阻害剤を含む。チェックポイントは、阻害されていない場合に免疫応答を抑制または下方制御できる細胞分子、しばしば細胞表面分子を指す。チェックポイント阻害剤は、チェックポイントの遺伝子発現または遺伝子産物を減少させるか、またはチェックポイント分子の活性を低下させることができるアンタゴニストである。本明細書で提供されるNK細胞またはT細胞を含む誘導エフェクター細胞との組み合わせ療法に適したチェックポイント阻害剤には、PD-1(Pdcdl、CD279)、PDL-1(CD274)、TIM-3(Havcr2)、TIGIT(WUCAMおよびVstm3)、LAG-3(Lag3、CD223)、CTLA-4(Ctla4、CD152)、2B4(CD244)、4-1BB(CD137)、4-1BBL(CD137L)、A2aR、BATE、BTLA、CD39(Entpdl)、CD47、CD73(NT5E)、CD94、CD96、CD160、CD200、CD200R、CD274、CEACAM1、CSF-1R、Foxpl、GARP、HVEM、IDO、EDO、TDO、LAIR-1、MICA/B、NR4A2、MAFB、OCT-2(Pou2f2)、レチノイン酸受容体アルファ(Rara)、TLR3、VISTA、NKG2A/HLA-E、ならびに抑制性KIR(例えば、2DL1、2DL2、2DL3、3DL1、3DL2)のアンタゴニストが含まれるが、これらに限定されない。
【0221】
提供される誘導エフェクター細胞を含む組み合わせ療法のいくつかの実施形態は、チェックポイント分子を標的化する少なくとも1つの阻害剤をさらに含む。提供される誘導エフェクター細胞との組み合わせ療法のいくつかの他の実施形態は、2つ、3つ、またはそれ以上のチェックポイント分子が標的とされるように、2つ、3つ、またはそれ以上の阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組み合わせ療法のためのエフェクター細胞は、提供されるような誘導NK細胞である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組み合わせ療法のためのエフェクター細胞は、誘導T細胞である。いくつかの実施形態では、組み合わせ療法のための誘導NK細胞またはT細胞は、本明細書で提供されるように機能的に増強されている。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、またはそれ以上のチェックポイント阻害剤は、誘導エフェクター細胞の投与と同時、前、または後に組み合わせ療法で投与することができる。いくつかの実施形態では、2つ以上のチェックポイント阻害剤は、同時に、または一度に1つ(逐次的に)投与される。
【0222】
いくつかの実施形態では、上述のチェックポイント分子のいずれかを阻害するアンタゴニストは抗体である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダIg、サメ重鎖のみ抗体(VNAR)、Ig NAR、キメラ抗体、組換え抗体、またはそれらの抗体断片であり得る。抗体断片の非限定的な例には、Fab、Fab’、F(ab)’2、F(ab)’3、Fv、一本鎖抗原結合断片(scFv)、(scFv)2、ジスルフィド安定化Fv(dsFv)、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗原結合断片(sdAb、ナノボディ)、組換え重鎖のみ抗体(VHH)、および抗体全体の結合特異性を維持するその他の抗体断片が含まれ、それらは、抗体全体よりも、製造するのに費用対効果が高く、より簡単に使用でき、または感度が高くあり得る。いくつかの実施形態では、1つまたは2つまたは3つまたはそれ以上のチェックポイント阻害剤は、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、イピリムマブ、IPH4102、IPH43、IPH33、リリムマブ、モナリズマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、およびそれらの誘導体または機能的同等物のうちの少なくとも1つを含む。
【0223】
誘導エフェクター細胞と1つ以上のチェックインヒビターを含む組み合わせ療法は、皮膚T細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、菌状息肉腫、パジェット細網症、セザリー症候群、肉芽腫性弛緩性皮膚、リンパ腫様丘疹症、慢性苔癬状粃糠疹、急性痘瘡状苔癬状ひこう疹、CD30+皮膚T細胞リンパ腫、続発性皮膚CD30+大細胞リンパ腫、非菌状息肉腫CD30皮膚大T細胞リンパ腫、多形性T細胞リンパ腫、レナートリンパ腫、皮下T細胞リンパ腫、血管中心性リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、頭頸部腫瘍、扁平上皮癌、横紋筋肉腫、ルイス肺がん(LLC)、非小細胞肺癌、食道扁平上皮癌、食道腺癌、腎細胞癌(RCC)、大腸癌(CRC)、急性骨髄性白血病(AML)、乳癌、胃癌、前立腺小細胞神経内分泌癌(SCNC)、肝臓癌、膠芽腫、肝臓癌、口腔扁平上皮癌、膵臓癌、甲状腺乳頭癌、肝内胆管細胞癌、肝細胞癌、骨癌、転移、および鼻咽頭癌を含むがこれらに限定されない液体がんおよび固形がんの治療に適用できる。
【0224】
本明細書で提供されるような誘導エフェクター細胞以外のいくつかの実施形態では、治療的使用のための組み合わせは、化学療法剤または放射性部分を含む1つ以上の追加の治療薬を含む。化学療法剤とは、細胞傷害性抗腫瘍剤、すなわち、腫瘍細胞を優先的に殺傷するか、または急速に増殖する細胞の細胞周期を破壊するか、または幹癌細胞を根絶することが見出され、腫瘍性細胞の増殖を防止または低減するために治療的に使用される化学剤を指す。化学療法剤はまた、抗腫瘍性または細胞傷害性の薬物または薬剤と呼ばれることもあり、当該技術分野で周知である。
【0225】
いくつかの実施形態では、化学療法剤は、アントラサイクリン、アルキル化剤、スルホン酸アルキル、アジリジン、エチレンイミン、メチルメラミン、ナイトロジェンマスタード、ニトロソウレア、抗生物質、代謝拮抗剤、葉酸類似体、プリン類似体、ピリミジン類似体、酵素、ポドフィロトキシン、白金含有薬剤、インターフェロン、およびインターロイキンを含む。例示的な化学療法剤には、アルキル化剤(シクロホスファミド、メクロレタミン、メファリン、クロラムブシル、ヘアメチルメラミン、チオテパ、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン)、代謝拮抗剤(メトトレキサート、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチン)、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン)、エピポドフィロトキシン(エトポシド、エトポシドオルトキノン、およびテニポシド)、抗生物質(ダウノルビシン、ドキソルビシン、ミトキサントロン、ビスアントレン、アクチノマイシンD、プリカマイシン、ピューロマイシン、およびグラミシジンD)、パクリタキセル、コルヒチン、サイトカラシンB、エメチン、メイタンシン、ならびにアムサクリンが含まれるが、これらに限定されない。追加の薬剤には、アミングルテチミド、シスプラチン、カルボプラチン、マイトマイシン、アルトレタミン、シクロホスファミド、ロムスチン(CCNU)、カルムスチン(BCNU)、イリノテカン(CPT-11)、アレムツザマブ、アルトレタミン、アナストロゾール、L-アスパラギナーゼ、アザシチジン、ベバシズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、セレコキシブ、セツキシマブ、クラドリビン、クロフラビン、シタラビン、ダカルバジン、デニロイキンジフチトクス、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドロモスタノロン、エピルビシン、エルロチニブ、エストラムスチン、エトポシド、エチニルエストラジオール、エキセメスタン、フロクスウリジン、5-フルオロウラシル、フルダラビン、フルタミド、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イダルビシン、イフォスファミド、イマチニブ、インターフェロンアルファ(2a、2b)、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、メクロレタミン、メゲストロール、メルファリン、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ノフェツモマブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペメトレキセド、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポリフェプロサン、ポルフィマー、プロカルバジン、キナクリン、リツキシマブ、サルグラモスチム、ストレプトゾシン、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド、テストラクトン、チオグアニン、チオテパ、トペテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビノレルビン、およびゾレドロネートが含まれる。他の適切な薬剤は、化学療法剤または放射線療法剤として承認され、当該技術分野で知られているものを含む、ヒトへの使用が承認されているものである。そのような薬剤は、多くの標準的な医師や腫瘍学者の参考文献(例えば、Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,Ninth Edition,McGraw-Hill,N.Y.,1995)またはNational Cancer Instituteウェブサイト(fda.gov/cder/cancer/druglistfrarne.htm)のいずれかを参照でき、どちらも随時更新される。
【0226】
サリドマイド、レナリドマイド、ポマリドマイドなどの免疫調節薬(IMiD)は、NK細胞とT細胞の両方を刺激する。本明細書で提供されるように、IMiDは、がん治療のためにiPSC由来の治療用免疫細胞と共に使用され得る。
【0227】
治療組成物に含まれるiPSC由来造血系統細胞の単離された集団以外に、患者への投与に適した組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体(添加物)および/または希釈剤(例えば、薬学的に許容される媒体、例えば、細胞培養培地)、または他の薬学的に許容される成分をさらに含むことができる。薬学的に許容される担体および/または希釈剤は、部分的には、投与される特定の組成物によって、ならびに治療用組成物を投与するために使用される特定の方法によって決定される。したがって、本発明の治療組成物の多種多様な適切な製剤が存在する(例えば、その開示が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th ed.1985を参照されたい)。
【0228】
一実施形態では、治療用組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のT細胞を含む。一実施形態では、治療用組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のNK細胞を含む。一実施形態では、治療用組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のCD34+HE細胞を含む。一実施形態では、治療用組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のHSCを含む。一実施形態では、治療用組成物は、本明細書に開示される方法および組成物によって作製された多能性細胞由来のMDSCを含む。本明細書に開示されるiPSC由来造血系統細胞の集団を含む治療用組成物は、静脈内、腹腔内、経腸、または気管投与方法によって個別に、または他の適切な化合物と組み合わせて投与して、所望の治療目標に影響を与えることができる。
【0229】
これらの薬学的に許容される担体および/または希釈剤は、治療用組成物のpHを約3~約10に維持するのに十分な量で存在することができる。このように、緩衝液は、全組成物の重量対重量ベースで約5%もの多さであり得る。限定されないが、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムなどの電解質もまた、治療用組成物に含まれ得る。一態様では、治療用組成物のpHは、約4~約10の範囲である。代替的に、治療用組成物のpHは、約5~約9、約6~約9、または約6.5~約8の範囲である。別の実施形態では、治療用組成物は、前記pH範囲のうちの1つのpHを有する緩衝液を含む。別の実施形態では、治療用組成物は、約7のpHを有する。代替的に、治療用組成物は、約6.8~約7.4の範囲のpHを有する。さらに別の実施形態では、治療用組成物は、約7.4のpHを有する。
【0230】
本発明はまた、部分的に、本発明の特定の組成物および/または培養物における薬学的に許容される細胞培養培地の使用を提供する。そのような組成物は、ヒト対象への投与に適している。一般的に言えば、本発明の実施形態によるiPSC由来免疫細胞の維持、増殖、および/または健康を支持する任意の培地は、医薬細胞培養培地としての使用に適している。特定の実施形態では、薬学的に許容される細胞培養培地は、無血清および/またはフィーダーを含まない培地である。種々の実施形態では、無血清培地は動物成分を含まず、必要に応じて無タンパク質であり得る。必要に応じて、培地は、薬学的に受容可能な組換えタンパク質を含み得る。動物成分を含まない培地は、成分が非動物源に由来する培地を指す。組み換えタンパク質は、動物を含まない培地で天然の動物タンパク質に取って代わり、栄養素は、合成、植物、または微生物の供給源から得られる。対照的に、無タンパク質培地は、実質的にタンパク質を含まないと定義される。当業者は、上述の培地の例は例示であり、本発明での使用に適した培地の配合を決して限定するものではなく、当業者に既知であり利用可能な多くの適切な培地があることを理解するであろう。
【0231】
分離された多能性幹細胞由来の造血系統細胞は、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、または99%のT細胞、NK細胞、NKT細胞、プロT細胞、プロNK細胞、CD34+HE細胞、HSC、B細胞、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)、調節性マクロファージ、調節性樹状細胞、または間葉系間質細胞を有することができる。いくつかの実施形態では、単離された多能性幹細胞由来の造血系統細胞は、約95%~約100%のT細胞、NK細胞、プロT細胞、プロNK細胞、CD34+HE細胞、または骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を有する。いくつかの実施形態では、本発明は、細胞治療を必要とする対象を治療するための、約95%のT細胞、NK細胞、プロT細胞、プロNK細胞、CD34+HE細胞、または骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の単離された集団を有する組成物などの、精製T細胞またはNK細胞を有する治療組成物を提供する。
【0232】
一実施形態では、組み合わせ細胞療法は、抗CD38治療用タンパク質またはペプチド、および表1に列挙される遺伝子型を含むゲノム操作されたiPSCに由来するNK細胞の集団を含み、ここで、誘導NK細胞は、CD38 nullを含む。別の実施形態では、組み合わせ細胞療法は、抗CD38治療用タンパク質またはペプチド、および表1に列挙される遺伝子型を含むゲノム操作されたiPSCに由来するT細胞の集団を含み、ここで、誘導T細胞は、CD38 nullを含む。いくつかの実施形態では、組み合わせ細胞療法は、ダラツムマブ、イサツキシマブ、またはMOR202、および表1に列挙された遺伝子型を含むゲノム操作されたiPSCに由来するNK細胞またはT細胞の集団を含み、誘導NK細胞またはT細胞はCD38 nullおよびhnCD16を含む。さらに他のいくつかの実施形態では、組み合わせ細胞療法は、ダラツムマブ、および表1に列挙された遺伝子型を含むゲノム操作されたiPSCに由来するNK細胞またはT細胞の集団を含み、ここで、誘導NK細胞またはT細胞は、CD38 null、hnCD16、およびCD19、BCMA、CD38、CD20、CD22、またはCD123を標的化するCARを含む。さらにいくつかの追加の実施形態では、組み合わせ細胞療法は、ダラツムマブ、イサツキシマブ、またはMOR202、および表1に列挙された遺伝子型を含むゲノム操作されたiPSCに由来するNK細胞またはT細胞の集団を含み、誘導NK細胞またはT細胞はCD38 null、hnCD16、およびCARならびに1つ以上の外因性のサイトカインを含む。
【0233】
当業者が理解するように、本明細書の方法および組成物に基づくiPSCに由来する自己と同種異系の造血系統細胞の両方は、上述のような細胞療法で使用することができる。自家移植の場合、誘導造血系統細胞の単離された集団は、患者と完全または部分的にHLA一致する。別の実施形態では、誘導造血系統細胞は、対象とHLAが一致せず、ここで、誘導造血系統細胞は、HLA I nullおよびHLA II nullを有するNK細胞またはT細胞である。
【0234】
いくつかの実施形態では、治療組成物中の誘導造血系統細胞の数は、用量あたり、少なくとも0.1×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも1×10細胞、少なくとも5×10細胞、少なくとも1×10細胞、または少なくとも5×10細胞である。いくつかの実施形態では、治療組成物中の誘導造血系統細胞の数は、用量あたり約0.1×10 細胞~約1×10細胞、用量あたり約0.5×10細胞~約1×10細胞、用量あたり約0.5×10細胞~約1×10細胞、用量あたり約0.5×10細胞~約1×10細胞、用量あたり約1×10細胞~約5×10細胞、用量あたり約0.5×10細胞~約8×10細胞、用量あたり約3×10細胞~約3×1010細胞、またはその間の任意の範囲である。一般に、60kgの患者の場合、1×10細胞/用量は1.67×10細胞/kgに変換される。
【0235】
一実施形態では、治療組成物中の誘導造血系統細胞の数は、血液の部分的または単一の臍帯中の免疫細胞の数であるか、または少なくとも0.1×10細胞/kg体重、少なくとも0.5×10細胞/kg体重、少なくとも1×10細胞/kg体重、少なくとも5×10細胞/kg体重、少なくとも10×10細胞/kg体重、少なくとも0.75×10細胞/体kg体重、少なくとも1.25×10細胞/kg体重、少なくとも1.5×10細胞/kg体重、少なくとも1.75×10細胞/kg体重、少なくとも2×10細胞/kg体重、少なくとも2.5×10細胞/kg体重、少なくとも3×10細胞/kg体重、少なくとも4×10細胞/kg体重、少なくとも5×10細胞/kg体重、少なくとも10×10細胞/kg体重、少なくとも15×10細胞/kg体重、少なくとも20×10細胞/kg体重、少なくとも25×10細胞/kg体重、少なくとも30×10細胞/kg体重、1×10細胞/kg体重、5×10細胞/kg体重、または1×10細胞/kg体重である。
【0236】
一実施形態では、ある用量の誘導造血系統細胞が対象に送達される。例示的な一実施形態では、対象に提供される細胞の有効量は、少なくとも2×10細胞/kg、少なくとも3×10細胞/kg、少なくとも4×10細胞/kg、少なくとも5×10細胞/kg、少なくとも6×10細胞/kg、少なくとも7×10細胞/kg、少なくとも8×10細胞/kg、少なくとも9×10細胞/kg、または少なくとも10×10細胞/kg、またはそれ以上の細胞/kgであり、介在する全ての細胞用量を含む。
【0237】
別の例示的な実施形態では、対象に提供される細胞の有効量は、約2×10細胞/kg、約3×10細胞/kg、約4×10細胞/kg、約5×10細胞/kg、約6×10細胞/kg、約7×10細胞/kg、約8×10細胞/kg、約9×10細胞/kg、または約10×10細胞/kg、またはそれ以上の細胞/kgであり、介在する全ての細胞用量を含む。
【0238】
別の例示的な実施形態では、対象に提供される細胞の有効量は、約2×10細胞/kg~約10×10細胞/kg、約3×10細胞/kg~約10×10細胞/kg、約4×10細胞/kg~約10×10細胞/kg、約5×10細胞/kg~約10×10細胞/kg、2×10細胞/kg~約6×10細胞/kg、2×10細胞/kg~約7×10細胞/kg、2×10細胞/kg~約8×10細胞/kg、3×10細胞/kg~約6×10細胞/kg、3×10細胞/kg~約7×10細胞/kg、3×10細胞/kg~約8×10細胞/kg、4×10細胞/kg~約6×10細胞/kg、4×10細胞/kg~約7×10細胞/kg、4×10細胞/kg~約8×10細胞/kg、5×10細胞/kg~約6×10細胞/kg、5×10細胞/kg~約7×10細胞/kg、5×10細胞/kg~約8×10細胞/kg、または6×10細胞/kg~約8×10細胞/kgであり、介在する全ての細胞用量を含む。
【0239】
いくつかの実施形態では、誘導造血系統細胞の治療的使用は、単回投与治療である。いくつかの実施形態では、誘導造血系統細胞の治療的使用は、複数回投与治療である。いくつかの実施形態では、複数回投与治療は、毎日、3日ごと、7日ごと、10日ごと、15日ごと、20日ごと、25日ごと、30日ごと、35日ごと、40日ごと、45日ごと、50日ごとの1回の投与、またはその間の任意の日数の任意の回数の投与である。
【0240】
本発明の誘導造血系統細胞の集団を含む組成物は、無菌であり得、ヒト患者への投与に適しており、そしてすぐに投与され得る(すなわち、さらなる処理なしに投与され得る)。すぐに投与される細胞ベースの組成物は、組成物が、対象への移植または投与の前に、いずれかのさらなる処理または操作を必要としないことを意味する。他の実施形態では、本発明は、1つ以上の薬剤の投与前に増殖および/または改変される、誘導造血系統細胞の単離された集団を提供する。組換えTCRまたはCARを発現するように遺伝子操作された誘導造血系統細胞については、細胞は、例えば、米国特許第6,352,694号に記載されている方法を使用して活性化および増殖させることができる。
【0241】
特定の実施形態では、誘導造血系統細胞に対する一次刺激シグナルおよび共刺激シグナルは、異なるプロトコールによって提供することができる。例えば、各シグナルを提供する薬剤は、溶液中にあるか、または表面に結合することができる。表面に結合される場合、薬剤は、同じ表面に(すなわち、「シス」形成で)または別個の表面に(すなわち、「トランス」形成で)結合され得る。代替的に、一方の薬剤を表面に結合させ、他方の薬剤を溶液中に存在させることができる。一実施形態では、共刺激シグナルを提供する薬剤は、細胞表面に結合することができ、一次活性化シグナルを提供する薬剤は、溶液中にあるか、または表面に結合される。特定の実施形態では、両方の薬剤が溶液中にあり得る。別の実施形態では、薬剤は、可溶性形態であり得、次いで、Fc受容体を発現する細胞または抗体、または、本発明の実施形態におけるTリンパ球の活性化および増殖における使用が企図される人工抗原提示細胞(aAPC)についての米国特許出願公開第2004/0101519号および同第20060034810号に開示されるような薬剤に結合する他の結合剤などの表面に架橋され得る。
【0242】
投与量、頻度、およびプロトコールのいくつかの変動は、治療される対象の状態に応じて必然的に発生する。投与の責任者は、いずれにしても、個々の対象に対しての適切な用量、頻度およびプロトコールを決定する。
【実施例
【0243】
次の例は、例示のために提供されるものであり、限定のためのものではない。
【0244】
実施例1-材料および方法
種々のプロモーターの制御下で自殺系を効果的に選択し、種々のセーフハーバー遺伝子座組み込み戦略と組み合わせて試験するために、単一細胞の継代と高スループットの96ウェルプレートベースのフローサイトメトリーソーティングを可能にする、出願人独自のhiPSCプラットフォームを使用し、単一または複数の遺伝子改変によるクローンhiPSCの導出を可能にした。
【0245】
小分子培養におけるhiPSCの維持:hiPSCは、培養のコンフルエンシーが75%~90%に達すると、単一細胞として日常的に継代された。単細胞解離の場合、hiPSCをPBS(Mediatech)で1回洗浄し、Accutase(Millipore)で37℃において3~5分間処理した後、ピペッティングして単細胞解離を確実にした。次いで、単細胞懸濁液を従来の培地と等量で混合し、225×gで4分間遠心分離し、FMMに再懸濁し、マトリゲルでコーティングした表面に播種した。継代は通常1:6~1:8で、37℃で2~4時間マトリゲルで前もってコーティングされた組織培養プレートに移し、2~3日ごとにFMMを供給した。細胞培養は、37℃、5%CO2に設定された加湿インキュベーターで維持された。
【0246】
ZFNによるヒトのiPSC操作、目的のモダリティの標的化編集のためのCRISPR:ROSA26標的化挿入を例として使用して、ZFNを介したゲノム編集では、200万個のiPSCが2.5μgのZFN-L(FTV893)、2.5μgのZFN-R(FTV894)の混合物およびAAVS1標的化挿入用の5μgドナーコンストラクトでトランスフェクトされた。CRISPRを介したゲノム編集では、200万個のiPSCが、5μgのROSA26-gRNA/Cas9(FTV922)とROSA26標的化挿入用の5μgドナーコンストラクトの混合物でトランスフェクトされた。トランスフェクションは、パラメータ1500V、10ms、3パルスを使用するNeonトランスフェクションシステム(Life Technologies)を使用して行われた。トランスフェクション後の2日目または3日目に、プラスミドに人工プロモーター-ドライバーGFPおよび/またはRFP発現カセットが含まれている場合、フローサイトメトリーを使用してトランスフェクション効率を測定した。トランスフェクション後4日目に、ピューロマイシンを最初の7日間0.1μg/mlの濃度で、7日後に0.2μg/mlの濃度で培地に添加して、標的細胞を選択した。ピューロマイシンの選択中、細胞は10日目に新鮮なマトリゲルコーティングされたウェルに継代された。ピューロマイシン選択の16日目以降に、生存細胞をGFP+iPS細胞のパーセンテージについてフローサイトメトリーで分析した。
【0247】
ゲノム編集されたiPSCの一括ソーティングおよびクローンソーティング:ZFNまたはCRISPR-Cas9を使用したゲノム標的化編集を含むiPSCは、ピューロマイシン選択の20日後にGFP+SSEA4+TRA181+iPSCの一括ソーティングおよびクローンソーティングされた。単一細胞解離標的化iPSCプールを、最適な性能のために新規に作製した、ハンクス平衡塩溶液(MediaTech)、4%ウシ胎児血清(Invitrogen)、1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech)、および10mMのHepes(Mediatech)を含む冷却染色緩衝液に再懸濁した。SSEA4-PE、TRA181-Alexa Fluor-647(BD Biosciences)などのコンジュゲート一次抗体を細胞溶液に加え、氷上で15分間インキュベートした。全ての抗体は、100万細胞あたり100μLの染色緩衝液中に7μLで使用した。溶液を染色緩衝液で1回洗浄し、225gで4分間スピンダウンし、10μMチアゾビブを含む染色緩衝液に再懸濁し、フローサイトメトリーでのソーティングのために氷上で維持した。フローサイトメトリーによるソーティングは、FACS Aria II(BD Biosciences)で行った。一括ソーティングでは、GFP+SSEA4+TRA181+細胞にゲートをかけ、7mlのFMMで満たされた15 mlの標準チューブにソーティングした。クローンソーティングでは、100μMノズルを使用して、1ウェルあたり3イベントの濃度で、ソーティングされた細胞を96ウェルプレートに直接排出した。各ウェルには、5μg/mLフィブロネクチンと1×ペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech)が補充された200μLのFMMがあらかじめ充填されており、あらかじめ5×マトリゲルで一晩コーティングされていた。5×マトリゲルプレコーティングには、1アリコートのマトリゲルを5mLのDMEM/F12に追加し、4℃で一晩インキュベートして適切に再懸濁させ、最後にウェルあたり50μLで96ウェルプレートに加え、37℃で一晩インキュベートする。5×うマトリゲルは、各ウェルに培地を加える直前に吸引される。ソーティングが完了したら、96ウェルプレートを225gで1~2分間遠心分離してからインキュベーションした。プレートを7日間静置した。7日目に、150μLの培地を各ウェルから除去し、100μLのFMMと交換した。ウェルは、ソーティング後10日目に追加の100μLのFMMを再供給した。コロニー形成は早くも2日目に検出され、ほとんどのコロニーはソーティング後7~10日の間に増殖した。最初の継代では、ウェルをPBSで洗浄し、30μLのアキュターゼで37℃において約10分間解離させた。長期間のアキュターゼ処理の必要性は、長期間培養で遊ばなかったコロニーのコンパクトさを反映している。細胞が解離しているのが認められた後、200μLのFMMを各ウェルに加え、数回ピペッティングしてコロニーを破壊する。解離したコロニーを、あらかじめ5×マトリゲルでコーティングした96ウェルプレートの別のウェルに移し、インキュベーション前に225gで2分間遠心分離する。この1対1の継代は、増殖前の初期のコロニーを広げるために行われる。その後の継代は、3~5分間のアキュターゼ処理と、予めFMMの1×マトリゲルでコーティングされた大きなウェルへの75~90%のコンフルエンシーでの1:4~1:8の増殖で日常的に行われた。各クローン細胞株をGFP蛍光レベルおよびTRA1-81発現レベルについて分析した。100%に近いGFP+およびTRA1-81+のクローン株を、さらなるPCRスクリーニングおよび分析のために選択した。フローサイトメトリー分析はGuava EasyCyte 8 HT(Millipore)で実行され、Flowjo(FlowJo,LLC)を使用して分析された。
【0248】
実施例2 -CRISPR/Cas9を介したゲノム編集を使用したiPSCでのCD38ノックアウト
Alt-R(登録商標)SpCas9 D10Aニッカーゼ3NLS、100μg、Alt-R(登録商標)CRISPR-Cas9 tracrRNAはIDT(Coralville、Iowa)で購入し、iPSC標的化編集に使用した。Cas9ニッカーゼを使用してiPSCでCD38の二対立遺伝子ノックアウトを実施するために、gNA(すなわち、gD/RNAまたはガイドポリヌクレオチド)設計ためのスクリーニングおよび同定された標的化配列ペア(1Aと1B、2Aと2B、3Aと3B)が表3に列挙される。
【表3】
【0249】
その後、ゲノム操作されたiPSCが特性評価され、二対立遺伝子CD38ノックアウトが確認された。
【0250】
実施例3-CD38-/-iPSCおよび誘導細胞の検証
CD38は特定の細胞段階で発現することが知られており、エフェクター細胞で重要な役割を果たす。造血中、CD38は、CD34幹細胞と、リンパ系、赤血球系、および骨髄系の系統にコミットした前駆細胞、ならびにT細胞およびNK細胞などのエフェクター細胞の成熟の最終段階でも発現する。したがって、本出願以前には、CD38発現プロファイルおよび機能性を考えると、指示された分化条件にさらされた場合にCD38ノックアウトを含むiPSCが適切に発達するかどうか、および生成されたエフェクター細胞が機能するかどうかが不明であり、懸念があった。CD38の二対立遺伝子ノックアウトを含むCD38 null iPSCは、驚くべきことに、誘導細胞に分化する能力を維持していた。図の1つでは、CD38遺伝子とhnCD16の二対立遺伝子破壊をもたらすように遺伝子編集された3つの操作されたiPSCクローンが、誘導NK細胞に分化し、それらの表現型が分析された。図2のフロープロファイルは、各クローンがCD56+であり、CD38陰性であることを示す。
【0251】
CD38発現がノックアウトされたときにiPSC由来のNK細胞の細胞傷害性が保持されるかどうかを判定するために、野生型iPSCクローンと、CD38遺伝子の対立遺伝子破壊を遺伝子編集した3つの操作されたiPSCクローンをNK細胞に分化させ、腫瘍細胞株RPMI-8266を標的化し、殺傷するそれらの能力について比較した。図3の長期殺傷アッセイによって示されるように、48時間にわたって、操作されたCD38-/-NK細胞は、野生型対照と同様の方法で標的細胞を排除し、標的細胞の認識および殺傷の際にCD38が必須でないことを示している。したがって、iPSCにおけるCD38の完全な喪失は、造血細胞の誘導または誘導エフェクター細胞の細胞傷害性に影響を及ぼさないことが本明細書で示された。
【0252】
ダラツムマブ(ダーザレックス)は抗がん剤である。多発性骨髄腫細胞で過剰発現しているCD38に結合する。ダラツムマブを介した多発性骨髄腫の細胞殺傷は、ADCCに一部依存し、NKエフェクター細胞に大きく依存している。しかしながら、CD38はNK細胞でも発現し、その結果、ダラツムマブはNK細胞に対するADCC(フラトリサイド)を誘導し、ダラツムマブの有効性を著しく低下させる可能性がある。ここで、図6では、CD38-/-iPSC由来のNK細胞は、ダラツムマブの存在下で腫瘍細胞株RPMI-8266によって刺激されたときにADCC機能を維持していることが示されている。CD38-/-iPSC由来のNK細胞(図7B)の生存率は、CD38を発現するiPSC由来のNK細胞(図7A)と比較して、ダラツムマブの存在下での培養において少なくとも約48時間維持されることが図7にさらに示されている。さらに、図7に示すように、CD38-/-iPSC由来のNK細胞は、ダラツムマブの存在下で刺激すると、脱顆粒を示さず、CD38を発現するiNK細胞よりもサイトカイン産生が少ないことを示す。
【0253】
CD38 null以外で、誘導多能性幹細胞はまた、高親和性の非切断性CD16の発現、B2M遺伝子のノックアウトによるHLA-Iの喪失、CIITAのノックアウトによるHLA-IIの喪失、非古典的HLA分子HLA-Gの過剰発現、および連結されたIL15/IL15受容体アルファコンストラクトの発現を得るために連続的に操作された。各操作ステップの後、次の操作ステップの前に、iPSCを所望の表現型についてソーティングした。操作されたiPSCは、in vitroまたは誘導細胞生成のために維持できる。図4は、iPSC由来NK細胞におけるhnCD16発現、B2Mノックアウト、HLA-G発現、およびIL15/IL15Rα発現を示した。図7は、iPSC由来NK細胞におけるCD38ノックアウトと組み合わせたhnCD16の導入を示す。これらのデータは、これらの遺伝的に操作されたモダリティが、造血分化の間、in vitroでの細胞の所望の細胞運命への指示された発達を混乱させることなく維持されることを示している。
【0254】
テロメアの短縮は、細胞の老化と共に起こり、幹細胞の機能不全と細胞の老化に関連する。ここでは、成熟iNK細胞が、成人末梢ボールドNK細胞と比較して長いテロメアを維持していることが示されている。テロメア長は、iPSC、成人末梢血NK細胞、およびiPSC由来NK細胞のフローサイトメトリーによって、G0/1細胞のDNAインデックスを補正した対照(100%)として1301 T細胞白血病株を使用して決定された。図5に示すように、iPSC由来のNK細胞は、成人の末梢血NK細胞(p=.105、ANOVA)と比較して、テロメアの長さを有意に長く維持し、iPSC由来のNK細胞の増殖、生存率、持続性の可能性が高いことを示す。
【0255】
実施例4-CD38 Null誘導NK細胞の機能プロファイリング
NKG2A、NKp46、およびKIR2DL2/3の発現を含むhnCD16 CD38-/-iNK細胞の表現型、ならびにカルシウムフラックスを評価し、hnCD16 iNKの表現型はCD38ノックアウト後も維持される(図10A~10D)。CD38ノックアウトを有するhnCD16 iNKのADCC機能は、Incucyte生細胞イメージングによりHER2発現卵巣細胞株SKOV3に対して調べられ、CD38ノックアウトはhnCD16 iNKのADCC機能に影響を与えない(図10E)。次いで、様々なNK細胞集団に対するダラツムマブの特異的細胞傷害性:末梢血NK細胞(CD16シェディングを伴う)、hnCD16 iNK細胞(高い親和の非切断性CD16を有する)、非改変iNK細胞(低いCD16発現を有する)およびhnCD16 CD38-/-iNK細胞は、それぞれの細胞集団を異なる濃度のダラツムマブとともに4時間インキュベートした後に測定された。図11に示すように、CD38欠損は、CD38ノックアウトなしの他の細胞集団と比較して、ダラツムマブの濃度の増加により媒介されるフラトリサイドからhnCD16 CD38-/-iNK細胞を保護した。したがって、CD38の喪失は、CD38特異的抗体の存在下でのダラツムマブ媒介NK細胞フラトリサイドを防ぐ。
【0256】
hnCD16 CD38-/-iNK細胞の細胞傷害性をhnCD16 iNK細胞と比較して評価するために、各細胞集団をMM.1S骨髄腫標的細胞と18時間インキュベートし、その後、腫瘍細胞の生存率をフローサイトメトリーによって、アネキシンVと生/死生存率マーカーで評価した。図12に示されるように、hnCD16 iNK細胞は、ダラツムマブで強力な抗骨髄腫活性を媒介し、CD38喪失によりさらに増強される。さらに、RMPI-8226腫瘍スフェロイドに対する7日間にわたる細胞傷害性アッセイで、hnCD16 CD38-/-iNK細胞は、CD38特異的抗体の存在下で、および同じ条件下でのhnCD16 iNKおよび非改変iNK細胞と比較して、アッセイの終了時に残存する標的細胞の数によって測定されるとき、優れた腫瘍細胞クリアランスを示した(図13A)。さらに、NK細胞フラトリサイドの欠如は、図13Bに示される7日間にわたる細胞傷害性アッセイのこれらの細胞の改善された持続性によって示されるように、hnCD16 CD38-/-iNK細胞の生存率を改善した。したがって、hnCD16 CD38-/-iNK細胞は、ダラツムマブなどのCD38特異的抗体により、長期の抗骨髄腫活性と持続性の増強を示す。図14に示されるように、CD38を欠くhnD16 iNK細胞はまた、CD38特異的抗体の存在下で増加した連続殺傷能力を有するより耐久性のあるADCCを実証する。このアッセイでは、hnCD16またはhnCD16 CD38-/-iNK細胞をMM.1S骨髄腫標的細胞とダラツムマブで48時間インキュベートし(刺激ラウンド1)、MM.1S細胞数をIncucyte(商標)イメージングで定量化した。48時間後、エフェクター細胞を取り除き、ダラツムマブによる2ラウンド目の刺激と標的細胞殺傷のために新しい標的細胞に移した(刺激ラウンド2)。(図14
【0257】
上記に照らして、CD38の標的化ノックアウトは誘導体NK細胞の表現型にも一般的な細胞機能にも影響を与えず、結果として得られるCD38欠損誘導NK細胞はCD38特異的抗体、ダラツムマブ、例えば媒介性フラトリサイドから保護されることが見出された。hnCD16とCD38-/-の相乗効果により、ダラツムマブなどのモノクローナル抗体を含むCD38特異的アンタゴニストと組み合わせて、誘導NK細胞の強化された抗骨髄腫活性と耐久性のあるADCCが提供される。これらの発見に基づいて、既製のhnCD16CD38-/-iNK細胞とダラツムマブの組み合わせによる、CD38標的薬剤のNK細胞枯渇効果を克服し、骨髄腫患者の転帰を改善するための臨床戦略が提案されている。
【0258】
実施例5-同種異系エフェクター細胞を同種拒絶反応から保護するためのCD38特異的アンタゴニストの使用
強化されたCD16の有効性とCD38の除去を伴う操作されたiNK細胞は、CD38標的化抗体誘導性フラトリサイドに耐性があり、ダラツムマブと組み合わせて抗骨髄腫活性をより強力に媒介する。CD38が欠落している同種異系エフェクター細胞のレシピエントにおいて、モノクローナル抗体を含むCD38特異的アンタゴニストを用いてこれらのリンパ球の活性化を抑制することにより、T細胞またはB細胞などの活性化リンパ球でCD38が上方制御されるという事実により、これらのエフェクター細胞に対する同種拒絶反応が減少および/または防止され、それによりエフェクター細胞の生存率および持続性が増加する。この戦略の実現可能性を示すために、混合リンパ球反応(MLR、すなわちエフェクター細胞産物と同種異系PBMCの共インキュベーション)を実行して、CD38ノックアウトに関連して、および抗CD38モノクローナル抗体(例えば、ダラツムマブ)の存在下または非存在下で、同種異系環境での本発明の誘導エフェクター細胞の寿命を試験する。
【0259】
hnCD16+iNK細胞集団(CD38KOを有するおよび有さない)は、アッセイの直前に細胞内色素(Celltrace Violet(商標)または類似のIncucyte(商標)互換試薬)で標識されている。異なる濃度のhnCD16+およびhnCD16 CD38-/-iNK細胞を、無作為の健康なドナー(n=3~4、プールされていない)からの固定数のPBMCとともに、ダラツムマブの存在下または非存在下で(有効濃度で、アッセイ前に滴定される)インキュベートする。各集団のiNK細胞の生存率は、長期培養においてIncucyte(商標)によって経時的にモニターされる。生存率はフローサイトメトリーによってもモニターされ、染色パネルはさらにPBMCサブポピュレーションのCD38アップレギュレーションを追跡し、ダラツムマブを介したADCCに基づくiNK細胞によるPBMCサブポピュレーションのクリアランスを追跡する。対照としてのiNK細胞の総クリアランスは、Venetoclax(MCL-1阻害剤、NK細胞の特異的除去用)を使用して達成される。
【0260】
抗CD38の存在下での野生型hnCD16 iNK細胞と比較したhnCD16 CD38KO iNK細胞の寿命の延長、およびPBMC試料からのCD38+サブポピュレーション(末梢NK細胞、活性化B細胞およびT細胞)の関連するクリアランスは、活性化末梢TまたはB細胞の上方制御されたCD38を標的化することによる活性化末梢TまたはB細胞の抑制におけるCD38特異的アンタゴニストの能力を示し、これにより、本明細書に提供されるような、hnCD16およびCD38-/-を含むエフェクター細胞のレシピエントにおけるこれらの活性化末梢T細胞またはB細胞によって、同種異系エフェクター細胞に対する同種拒絶反応を低減する。CD38特異的アンタゴニストは、CD38特異的抗体、CD38特異的エンゲージャー、またはCD38キメラ抗原受容体(CAR)である。
【0261】
さらに、IL15Rαの細胞内ドメインを欠く外因性短縮化IL15/IL15Rα融合タンパク質の発現は、可溶性外因性IL2の添加に関係なく、in vitroでiPSC由来NK細胞の生存率を支持することが示された。細胞内ドメインを有さないIL15Rαは、リンカーを介してC末端でIL15に融合され、シグナリングドメインを持たない短縮化IL15/IL15Ra融合(または、本出願では「IL15Δ」と呼ばれる)コンストラクトを生成した。本明細書で提供される例示的なIL15Δには、図1の設計3または4などの構造を有するものが含まれる。図15に示すように、iNK細胞は、GFP(四角形;陰性対照)、全長IL15/IL15Ra融合コンストラクト(黒丸;陽性対照;図1の設計2)、または短縮化IL15/IL15Ra融合コンストラクト(白丸;図1の設計3)のいずれかを発現するレンチウイルス過剰発現ベクターによって形質導入された。IL15コンストラクトもGFPも外因性IL2の存在下では濃縮を示さず(図15A)、形質導入細胞が非形質導入細胞と同等の率で生存したことを示している。外因性IL2が存在しない場合、いずれかのIL15/IL15Ra融合コンストラクトで形質導入された細胞は経時的に濃縮されたが、GFP形質導入細胞はそうではなく、IL2がない場合、いずれかのIL15/IL15Raコンストラクトで形質導入された細胞は、同じ培養下での非形質導入細胞と比較して生存の利点を有していた(図15B)。さらに、IL15Rαの細胞内ドメインは、受容体がIL15応答細胞で発現し、応答して細胞が増殖して機能するために重要であると見なされているため、細胞内ドメインが短縮化されたIL15/IL15Ra融合コンストラクトが、形質導入されたiNK細胞で安定して発現するだけでなく、図15Bに示すように、全長のIL15/IL15Ra融合コンストラクトよりも高い増殖率でiNK細胞を支持することもあることは、驚くべきことである。したがって、本明細書で提供されるIL15Δは、膜結合形態でIL15を発現および維持することができ、全長IL15/IL15Ra融合タンパク質を置き換えて、細胞内でIL15のトランス提示を提供することができる。根本的なメカニズムを完全に理解していないが、IL15Rの細胞内ドメインを削除すると、おそらくその細胞内ドメインを介して正常なIL15Rによって媒介されるシス提示および/またはその他の潜在的なシグナル伝達経路を完全に排除することにより、応答細胞に生存率、増殖、持続性のさらなる活力、フィットネス、または特定の利点が与えられたようである。
【0262】
当業者は、本明細書に記載の方法、組成物、および製品が例示的な実施形態の代表であり、本発明の範囲に対する限定として意図されていないことを容易に理解するであろう。本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、本明細書に開示された本開示に対して様々な置換および修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかであろう。
【0263】
本明細書で言及される全ての特許および刊行物は、本開示が関係する当業者の技術水準を示している。全ての特許および刊行物は、個々の刊行物が参照により組み込まれるものとして具体的かつ個別に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0264】
本明細書に例示的に記載された本開示は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、限定または複数の限定がなくても実施することができる。したがって、例えば、本明細書の各例において、「含む」、「から本質的になる」、および「からなる」という用語はいずれも、他の2つの用語のいずれかに置き換えることができる。使用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用において、示され説明された特徴またはその一部のいずれかの同等物を除外する意図はないが、特許請求される本開示の範囲内で様々な修正が可能であると認識される。したがって、本開示は、好ましい実施形態および必要に応じた特徴によって具体的に開示されているが、本明細書で開示される概念の修正および変形は、当業者によってしばしば想到され得、そのような修正および変形は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内である。
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【配列表】
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