(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】マルチモーダルエチレン系ポリマーの製造のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C08F 210/02 20060101AFI20240408BHJP
C08F 2/01 20060101ALI20240408BHJP
C08F 4/659 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C08F210/02
C08F2/01
C08F4/659
(21)【出願番号】P 2020532713
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(86)【国際出願番号】 US2018066475
(87)【国際公開番号】W WO2019133378
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-06
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】フェラーリ、ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、アレック ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジェイン、プラディープ
(72)【発明者】
【氏名】リン、イーチン
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-507105(JP,A)
【文献】特表2011-511096(JP,A)
【文献】特表2017-531724(JP,A)
【文献】特表2017-531725(JP,A)
【文献】特表2017-519080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/02
C08F 2/01
C08F 4/659
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するための方法であって、
エチレンモノマー、少なくとも1種のC
3~C
12コモノマー、溶媒、第1の触媒、第2の触媒、および任意選択で水素を第1の溶液重合反応器に通して、バイモーダルエチレン系ポリマーを製造することであって、前記バイモーダルエチレン系ポリマーは、前記第1の触媒から重合された密度(ρ
1)を有する第1のエチレン系成分、および前記第2の触媒から重合された密度(ρ
2)を有する第2のエチレン系成分を含み、ここでρ
1<ρ
2である、バイモーダルエチレン系ポリマーを製造することと、
前記バイモーダルエチレン系ポリマー、エチレンモノマー、少なくとも1種のC
3~C
12コモノマー、溶媒、第3の触媒、および任意選択で水素を第2の溶液重合反応器に通して、前記マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造することであって、前記マルチモーダルエチレン系ポリマーは、前記第1のエチレン系成分、前記第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分を含み、前記第3のエチレン系成分は、密度(ρ
3)を有する、前記マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造することと、を含み、
前記マルチモーダルエチレン系ポリマーは、少なくとも4の分子量分布(M
w(GPC)/M
n(GPC))を有し、
前記マルチモーダルエチレン系ポリマーは、0.905~0.930g/ccの密度を有し、
前記第1の触媒、前記第2の触媒および前記第3の触媒は、それぞれ独立に、以下の構造を有する
方法:
【化1】
[式(I)中、Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選択される金属であり、この金属は、+2、+3、または+4の形式酸化状態にあり、nは、0、1、または2であり、nが1である場合、Xは、単座配位子または二座配位子であり、nが2である場合、各Xは、単座配位子であり、同じかまたは異なり、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性であり、Oは、O(酸素原子)であり、各Zは、-O-、-S-、-N(R
N)-、または-P(R
P)-から独立して選択され、Lは、(C
1~C
40)ヒドロカルビレンまたは(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビレンであり、ここで、(C
1~C
40)ヒドロカルビレンは、式(I)の2つのZ基を連結している1炭素原子から10炭素原子のリンカー骨格(Lが結合している)を含む部分を有するか、または(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)の2つのZ基を連結する1原子から10原子のリンカー骨格を含む部分を有し、ここで、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビレンの1原子から10原子のリンカー骨格の1から10原子の各々は、独立して炭素原子またはヘテロ原子であり、ここで、各ヘテロ原子は、独立してO、S、S(O)、S(O)
2、Si(R
C)
2、Ge(R
C)
2、P(R
C)、またはN(R
C)であり、ここで、独立して、各R
Cは、(C
1~C
30)ヒドロカルビルまたは(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビルであり、R
1およびR
8は、(C
1~C
40)ヒドロカルビル、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R
C)
3、-Ge(R
C)
3、-P(R
P)
2、-N(R
N)
2、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、R
CS(O)-、R
CS(O)
2-、(R
C)
2C=N-、R
CC(O)O-、R
COC(O)-、R
CC(O)N(R
N)-、(R
N)
2NC(O)-、ハロゲン、および式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルからなる群から独立して選択され;
【化2】
式(II)、(III)、および(IV)において、R
31~35、R
41~48、またはR
51~59の各々は(C
1~C
40)ヒドロカルビル、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R
C)
3、-Ge(R
C)
3、-P(R
P)
2、-N(R
N)
2、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、R
CS(O)-、R
CS(O)
2-、(R
C)
2C=N-、R
CC(O)O-、R
COC(O)-、R
CC(O)N(R
N)-、(R
N)
2NC(O)-、ハロゲン、または-Hから独立して選択され、提供されたR
1またはR
8のうちの少なくとも1つが、式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルであり;
式(I)において、R
2~4、R
5~7、およびR
9~16の各々は、(C
1~C
40)ヒドロカルビル、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R
C)
3、-Ge(R
C)
3、-P(R
P)
2、-N(R
N)
2、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、R
CS(O)-、R
CS(O)
2-、(R
C)
2C=N-、R
CC(O)O-、R
COC(O)-、R
CC(O)N(R
N)-、(R
C)
2NC(O)-、ハロゲン、および-Hから独立して選択され
;
各R
P
は非置換(C
1
-C
18
)ヒドロカルビルまたは-Hであり、各R
N
は非置換(C
1
-C
18
)ヒドロカルビルである。]。
【請求項2】
前記マルチモーダルエチレン系ポリマーが、4~10の分子量分布(M
w(GPC)/M
n(GPC))を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マルチモーダルエチレン系ポリマーが、0.1~10g/10分のメルトインデックスを有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ρ
2が、ρ
1より少なくとも0.03g/cc高い、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ρ
2が、ρ
1より少なくとも0.04g/cc高い、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ρ
3が、0.910~0.940g/ccである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のエチレン系成分が、100,000~200,000g/molの重量平均分子量(M
w(GPC))を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第2のエチレン系成分が、100,000~363,000g/molの重量平均分子量(M
w(GPC)))を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第3のエチレン系成分が、10,000~50,000g/molの重量平均分子量(M
w(GPC)))を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の溶液重合反応器、前記第2の溶液重合反応器、またはそれらの両方が、ループ反応器を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の溶液重合反応器、前記第2の溶液重合反応器、またはそれらの両方が、連続撹拌タンク反応器を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1、第2、または第3のエチレン系成分の少なくとも2つのコモノマー組み込みが、0.5モル%超であり、前記C
3~C
12コモノマーが、オクテンまたはヘキセンである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記マルチモーダルエチレン系ポリマーが、20~55重量%の前記第1のエチレン系成分、10~40重量%の前記第2のエチレン系成分、35~65重量%の前記第3のエチレン系成分を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記マルチモーダルエチレン系ポリマーを前記第2の溶液重合反応器の下流の管状反応器に通すことをさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年12月26日に提出された米国仮出願第62/610,384号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するための方法に関し、より詳細には、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
歴史的に、マルチモーダルエチレン系ポリマーの製造は、単一の触媒を用いる単一の反応器、または2つの触媒を用いる二重反応器を使用するプロセスを通じて行われる。マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するためのほとんどの方法では、プロセス制御が引き続き大きな課題となっている。現在、直接サンプリングおよび個々の成分の分析による決定は、マルチ成分構造を制御するための唯一の選択肢である。そのような方法は、固有のレイテンシおよび非効果的なリアルタイムプロセス制御につながる。
【発明の概要】
【0004】
したがって、ポリマー業界での競争が激化するにつれて、エチレン系ポリマーの製造者は、既存の機器をより効率的な方法で利用することにより、プロセスの収益性を高めるよう努めている。したがって、プロセス制御を犠牲にすることなく複数触媒反応器を利用するプロセスが継続的に必要とされている。
【0005】
したがって、本開示の実施形態は、現在の反応器制御システムを変更することなく様々なマルチモーダル生成物を製造することができる様々な触媒の組み合わせを有する二重反応器システムを対象とする。
【0006】
本開示の実施形態は、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造する方法に関する。方法は、エチレンモノマー、少なくとも1種のC3~C12コモノマー、溶媒、第1の触媒、および第2の触媒を第1の溶液重合反応器に通して、バイモーダルエチレン系ポリマーを製造することを含む。任意選択で、いくつかの実施形態において、第1の溶液重合反応器は、水素も含む。また、得られたバイモーダルエチレン系ポリマーは、第1のエチレン系成分および第2のエチレン系成分を有し、第1のエチレン系成分は、第1の密度(ρ1)を有し、第2のエチレン系成分は、第2の密度(ρ2)を有する。第1のエチレン系成分の密度(ρ1)は、第2のエチレン系成分の密度(ρ2)よりも低い。さらに、方法は、バイモーダルエチレン系ポリマー、エチレンモノマー、少なくとも1種のC3~C12コモノマー、および第2の溶媒を第2の溶液重合反応器に通して、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造することを含む。任意選択で、いくつかの実施形態において、第2の溶液重合反応器は、水素も含む。結果として、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分を含む。第3のエチレン系成分は、密度(ρ3)を有する。
【0007】
これらのおよび他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むと最も良好に理解することができ、図中、同様の構造は同様の参照番号で示される。
【
図1】本開示の1つ以上の実施形態による直列反応器システム構成の概略図である。
【
図2】以下に記載の数値デコンボリューションプロセスについての初期パラメータを推定するために使用される、発明ポリマー3の短鎖分岐分布(SCBD)溶出プロファイルおよび分子量分布(MWD)プロットを並べて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本出願の特定の実施形態について説明する。しかしながら、本開示は異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であるように、また当業者に本主題の範囲を十分に伝えるように提供される。
【0010】
定義
【0011】
「ポリマー」という用語は、同一または異なる種類のモノマーに関わらず、モノマーを重合することによって調製されたポリマー化合物を指す。このため、総称のポリマーは、通常、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、および2種類以上の異なるモノマーから調製されたポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称であるインターポリマーは、コポリマー、およびターポリマー等の、3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0012】
本明細書で使用される場合、「マルチモーダル」は、様々な密度および重量平均分子量を有する少なくとも3つのポリマー副成分を有することを特徴とし得、任意選択で、異なるメルトインデックス値も有し得る組成物を意味する。一実施形態において、マルチモーダルは、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のクロマトグラムにおいて少なくとも3つの異なるピークを有することによって定義され得る。別の実施形態では、マルチモーダルは、短鎖分岐分布を示す結晶化溶出分別(CEF)クロマトグラムにおいて、少なくとも3つのはっきりと区別できるピークを有することによって定義され得る。マルチモーダルは、3つのピークを有する樹脂および4つ以上のピークを有する樹脂を含む。
【0013】
「三峰性ポリマー」という用語は、3つの主要成分である、第1のエチレン系ポリマー成分、第2のエチレン系ポリマー成分、および第3のエチレン系ポリマー成分、を有するマルチモーダルエチレン系ポリマーを意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、「溶液重合反応器」は、溶液重合を実行する容器であり、ここで、エチレンモノマーおよび少なくともC3~C12αオレフィンコモノマーが、触媒を含有する非反応性溶媒中に溶解された後で共重合する。溶液重合プロセスでは、水素を利用し得るが、全ての溶液重合プロセスで必要であるわけではない。
【0015】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、エチレンモノマー由来の50モル%超の単位を含むポリマーを意味するものとする。これには、エチレン系ホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマー由来の単位を意味する)が含まれる。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状と実質的に直鎖状との両方の低密度樹脂を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、または「高分岐ポリエチレン」とも称され得、ポリマーが、過酸化物(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、US4,599,392を参照されたい)等の、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)を上回る圧力で、オートクレーブまたは管状反応器中で、部分的または完全に、ホモ重合または共重合されることを意味するように定義される。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.940g/cmの範囲の密度を有する。
【0017】
「LLDPE」という用語には、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、およびシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂が含まれ、ビスメタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)、ホスフィンイミン、および拘束幾何触媒;ならびにポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂が含まれるが、これらに限定されず、ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも称される)が含まれるが、これらに限定されない。LLDPEには、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均一なエチレン系コポリマーまたはホモポリマーが含まれる。LLDPEには、LDPEよりも少ない長鎖分岐が含有され、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、および米国特許第5,733,155号でさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマーと、米国特許第3,645,992号におけるもの等の均一分岐エチレンポリマー組成物と、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されたもの等の不均一分岐エチレンポリマーと、それらのブレンド(米国特許第3,914,342号または米国特許第5,854,045号に開示されるもの等)とが含まれる。LLDPE樹脂は、当該技術分野で知られている任意のタイプの反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。LLDPE樹脂は、当該技術分野において既知である任意のタイプの反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0018】
「多層構造」とは、2つ以上の層を有する任意の構造を意味する。例えば、多層構造(例えば、フィルム)は、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の層を有してもよい。多層構造は、文字で示される層を有するとして説明され得る。例えば、コア層B、ならびに2つの外部層AおよびCを有する3層構造は、A/B/Cとして示されてもよい。同様に、2つのコア層BおよびC、ならびに2つの外部層AおよびDを有する構造は、A/B/C/Dとして示される。いくつかの実施形態において、本発明の多層フィルムは、最大11層まで含む。
【0019】
次に、本開示の反応器構成およびこれらの構成の実施形態を使用する方法を詳細に参照する。
【0020】
プロセスの実施形態
【0021】
次に、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するための方法について詳細に言及する。いくつかの実施形態において、本開示は、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するための少なくとも2つの反応器を有するシステムを提供する。
【0022】
一実施形態によれば、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造する方法が提供される。
図1を参照すると、方法の実施形態は、ストリーム10を介して、エチレンモノマー、少なくとも1種のC
3~C
12αオレフィンコモノマー、溶媒、第1の触媒、および第2の触媒を第1の溶液重合反応器101に通して、バイモーダルエチレン系ポリマーを製造する。任意選択で、いくつかの実施形態において、ストリーム10は、水素を第1の溶液重合反応器101に通すことをさらに含んでもよい。第1の溶液重合反応器101への供給は、1つのストリーム10として示されているが、より多いまたはより少ない供給入口が使用され得ることが企図される。いくつかの実施形態において、得られたバイモーダルエチレン系ポリマーは、第1のエチレン系成分および第2のエチレン系成分を有してもよく、第1のエチレン系成分は、第1の密度(ρ
1)を有し、第2のエチレン系成分は、第2の密度(ρ
2)を有する。さらに、第1のエチレン系成分の密度(ρ
1)は、第2のエチレン系成分の密度(ρ
2)より低い。
【0023】
いくつかの実施形態において、この方法は、ストリーム30を介して第1の溶液重合反応器101からバイモーダルエチレン系ポリマーを、ならびにストリーム20を介してエチレンモノマー、少なくとも1種のC3~C12αオレフィンコモノマー、第3の触媒、および溶媒を第2の溶液重合反応器102内に通し、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造することを含んでもよい。第2の溶液重合反応器102への供給は2つのストリーム20および30として示されているが、より多いまたはより少ない供給入口が使用され得ることが企図される。任意選択で、いくつかの実施形態において、第2の溶液重合反応器102への供給20は、水素を含んでもよい。結果として、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分を含み得る。第3のエチレン系成分は、密度(ρ3)を有する。
【0024】
マルチモーダルエチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定された0.900~0.960g/ccの密度を有し得る。マルチモーダルエチレン系ポリマーはまた、0.1~10g/10分のメルトインデックス(I2)を有し得る。さらなる実施形態において、エチレン系ポリマーは、0.905~0.930g/ccの密度を有し得る。さらに、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、0.1~5g/10分、または0.1~5g/10分、または0.5~2g/10分のI2を有し得る。追加的に、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、7~15のI10/I2値を有し、I10は、ASTM D1238に従って10kgの荷重および190℃の温度で測定される。さらなる実施形態において、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、7.5~12、または8~10のI10/I2を有する。
【0025】
マルチモーダルエチレン系ポリマーは、エチレンモノマーと少なくとも1つのC3~C12αオレフィンコモノマーとの重合反応生成物を含む。別の実施形態において、C3-C12α-オレフィンコモノマーは、より好ましくは3~8個の炭素原子を含み得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から、または代替形態では、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテン、ならびにさらに1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0026】
マルチモーダルエチレン系ポリマーには、エチレンモノマーおよびC3~C12αオレフィンコモノマーの様々な組み込みレベルが企図される。例えば、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、少なくとも50モル%のエチレンモノマー、または少なくとも60モル%のエチレンモノマー、または少なくとも70モル%のエチレンモノマー、または少なくとも80モル%のエチレンモノマー、または少なくとも90モル%のエチレンモノマーを含み得る。逆に、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、50モル%未満のC3-C12α-オレフィンコモノマーを含み得る。さらなる実施形態において、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、1~40モル%のC3-C12α-オレフィンコモノマー、または1~30モル%のC3-C12α-オレフィンコモノマー、または1~20モル%のC3-C12α-オレフィンコモノマー、または1~10モル%のC3-C12α-オレフィンコモノマーを含み得る。
【0027】
さらなる実施形態において、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、少なくとも3、または少なくとも4の分子量分布(MWD=Mw(GPC)/Mn(GPC))を有し得る。さらなる実施形態において、MWDは、3~12、または4~10、または4~9である。
【0028】
マルチモーダルエチレン系ポリマーは、少なくとも3つのエチレン系成分を含み、これらの各成分は、エチレンモノマーと少なくとも1つのC3~C12α-オレフィンコモノマーとの重合反応生成物である。
【0029】
他の実施形態によれば、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、20~55重量パーセント(%)の第1のエチレン系成分、10~40重量%の第2のエチレン系成分、および35~65重量%の第3のエチレン系成分を含む。
【0030】
マルチモーダルエチレン系ポリマー中の各成分の量は、用途または使用に基づいて調整され得る。例えば、低温用途(例えば、0℃未満)と、マルチモーダルエチレン系ポリマーがより高い温度(例えば、40℃超の温度)に曝される用途では、特性のバランスが異なることが望ましい場合がある。一実施形態において、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、少なくとも20重量%の第1のエチレン系成分を含み得る。他の実施形態において、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、20~55重量%の第1のエチレン系成分、または25~55重量%の第1のエチレン系成分を含む。さらに、いくつかの実施形態において、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、10~40重量%の第2のエチレン系成分、または10~30重量%の第2のエチレン系成分を含む。さらに、いくつかの実施形態において、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、35~65重量%の第3のエチレン系成分、または35~55重量%の第3のエチレン系成分を含む。
【0031】
第1のエチレン系成分は、約0.870~0.915g/ccの密度を有する。エチレン系成分(例えば、第1、第2、および第3のエチレン系成分)の密度は、後に示される方程式から計算される。別の実施形態において、第1のエチレン系成分は、0.880~0.910g/cc、または0.885~0.905g/ccの密度を有する。さらに、いくつかの実施形態において、第1のエチレン系成分のメルトインデックス(I2)は、0.01~10g/10分、または0.05~5g/10分、0.01~1.0g/10分である。
【0032】
また、さらなる実施形態において、第1のエチレン系成分は、100,000~200,000g/mol、または125,000~175,000g/molのMw(GPC)を有し得る。他の実施形態において、第1のエチレン系成分は、1.5~4.0、または1.6~3.5、または1.7~3.0、または1.8~2.5のMWD(Mw(GPC)/Mn(GPC))を有し得る。
【0033】
第1のエチレン系成分には、C3~C12αオレフィンコモノマーの組み込みの様々な添加量が企図される。例えば、第1のエチレン系成分は、0.5~30モル%のC3~C12α-オレフィンコモノマー、または1~20モル%のC3~C12α-オレフィンコモノマー、または1.5~15モル%のC3~C12α-オレフィンコモノマー、または2~10モル%のC3~C12α-オレフィンコモノマーを有し得る。
【0034】
第2のエチレン系成分は、第1のエチレン系成分の密度を超え、0.980g/cc未満の密度を有する。いくつかの実施形態において、第2のエチレン系成分の密度は、0.920~0.960g/cc、または0.930~0.955g/cc、または0.935~0.955g/ccである。
【0035】
さらなる実施形態において、第2のエチレン系成分の密度は、第1のエチレン系成分の密度よりも少なくとも0.03g/cc大きい。さらに、いくつかの実施形態において、第2のエチレン系成分の密度は、密度よりも少なくとも0.04g/cc高い。
【0036】
また、さらなる実施形態において、第2のエチレン系成分は、100,000~363,000g/mol、または150,000~360,000g/mol、または200,000~355,000g/mol、または250,000~350,000g/molのMw(GPC)を有し得る。他の実施形態において、第2のエチレン系成分は、1.5~4.0、または1.6~3.5、または1.7~3.0、または1.8~2.5のMWD(Mw(GPC)/Mn(GPC))を有し得る。
【0037】
また、第2のエチレン系成分は、様々なレベルのC3-C12α-オレフィンコモノマーの組み込みを有することが企図される。一実施形態では、第2のエチレン系成分は、第1のエチレン系成分よりも低いC3~C12αオレフィンコモノマーの組み込みを有し得る。例えば、第2のエチレン系成分は、0.5~25モル%のC3~C12αオレフィンコモノマー、または0.5~20モル%のC3~C12αオレフィンコモノマー、または1~15モル%のC3~C12αオレフィンコモノマーを有し得る。
【0038】
第3のエチレン系成分は、第1のエチレン系成分の密度を超える密度を有する。いくつかの実施形態において、第3のエチレン系成分の密度は、0.910~0.940g/cc、または0.915~0.940g/ccである。さらに、いくつかの実施形態において、第3のエチレン系成分は、50~5000g/10分、または100~4000g/10分のメルトインデックス(I2)を有する。
【0039】
また、さらなる実施形態において、第3のエチレン系成分は、10,000~50,000g/molのMw(GPC)を有し得る。さらなる実施形態において、第3のエチレン系成分は、10,000~40,000g/molのMw(GPC)を有し得る。さらなる実施形態において、第3のエチレン系成分は、1.5~5、または1.8~3.0のMWD(=Mw(GPC)/Mn(GPC))を有し得る。
【0040】
反応器
【0041】
次に、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するための方法について詳細に言及する。いくつかの実施形態において、本開示は、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するための少なくとも2つの反応器を有するシステムを提供する。
【0042】
様々な重合プロセスの実施形態が、マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するのに適していると考えられる。1つ以上の実施形態では、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、二重反応器システムにおける溶液重合プロセスを通して生成される。これらの二重溶液重合反応器は、従来の反応器、例えば、ループ反応器、等温反応器、断熱反応器、および並列、直列、およびこれらの任意の組み合わせの連続撹拌槽反応器であり得る。
図1を再び参照すると、一実施形態において、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、直列構成の2つのループ反応器で製造されてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態において、第1の溶液重合反応器101は、115~200℃、例えば140~170℃の範囲内の温度を有してもよく、第2の溶液重合反応器102は、150~210℃、例えば160~200℃の範囲内の温度を有してもよい。
【0044】
溶液重合プロセスにおいて、エチレンモノマー、1種以上のC3~C12α-オレフィンコモノマー、溶媒、1種以上の触媒系、任意選択で1種以上の共触媒、および任意選択で水素が、二重溶液重合反応器(すなわち、第1の溶液重合反応器101および第2の溶液重合反応器102)に連続的に供給され得る。
【0045】
1つ以上の実施形態において、第1の溶液重合反応器101、第2の溶液重合反応器102、またはそれらの両方が、2つの触媒を含み得る。特定の実施形態において、第1の溶液重合反応器101は2つの触媒を含み得、第1の溶液重合反応器101の下流にある第2の溶液重合反応器102は1つの触媒を含む。
【0046】
第1の溶液重合反応器の2つの触媒は均一触媒であるのに対して、第2の溶液重合反応器の触媒は均一触媒、不均一触媒、またはその両方を含むことができる。
【0047】
例示的な実施形態において、第1の反応器101内の触媒は、第1の反応器環境内で異なる反応性比を有する異なる均一触媒であってもよい。
【0048】
1つ以上の実施形態において、マルチモーダルエチレン系ポリマーは、第2の溶液重合反応器の下流の管状反応器(図示せず)にさらに通される。
【0049】
供給物成分
【0050】
様々な実施形態は、C3~C12コモノマー、溶媒、および触媒のために意図されている。様々な触媒が好適であると考えられる。これらの触媒については、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒、拘束幾何錯体(CGC)触媒、ホスフィンイミン触媒、またはビス(ビフェニルフェノキシ)触媒が挙げられるが、これらに限定されない。CGC触媒の詳細および例は、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第6,812,289号、および国際公開第93/08221号において提供され、これら全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒の詳細および例は、米国特許第6,869,904号、同第7,030,256号、同第8,101,696号、同第8,058,373号、同第9,029,487号において提供され、これら全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。溶液重合反応器内で利用される触媒は、第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分に異なる特性を付与するために変化し得る。例えば、溶液重合反応器内で異なる触媒を使用して、第1、第2、および第3のエチレン系成分の密度、メルトインデックス、コモノマー組み込み等を変化させることが企図される。理論に束縛されるものではないが、第1、第2、および第3のエチレン系成分についてのこれらのパラメータを変化させると、マルチモーダルエチレン系ポリマーが靱性と加工性との望ましい組み合わせを有することが可能になり得る。
【0051】
1つ以上の実施形態では、第1の溶液重合反応器、第2の溶液重合反応器、またはその両方は、2つの触媒を含み得る。特定の実施形態では、第1の溶液重合反応器は2つの触媒を含み得、第1の溶液重合反応器の下流にある第2の溶液重合反応器は1つの触媒を含む。第1の溶液重合反応器の2つの触媒は均一触媒であるのに対して、第2の溶液重合反応器の触媒は均一触媒、不均一触媒、またはその両方を含むことができる。均一で、シングルサイトと称されることが多い触媒は、通常、個別の分子構造を有する有機金属化合物であり、インターポリマーが作製される場合に、狭い分子量分布および狭い組成分布を有するポリマーを作成するために使用される。均一触媒を、溶液プロセスで溶解されるか、またはスラリーまたは気相等の粒子形成プロセスで使用するために支持され得る。不均一触媒は、個別の化合物ではなく、むしろ、金属化合物と前駆体との反応混合物を得て、錯体を形成し、この錯体が、粒子のいくつかの形態上に複数の活性サイトを有する。通常、不均一触媒を介して生成されたポリマーは、より広い分子量分布を示し、インターポリマーの場合に、均一触媒よりも広い組成分布を示す。例示的な実施形態では、第1の反応器内の触媒は、第1の反応器環境内で異なる反応性比を有する異なる均一触媒であり得る。
【0052】
ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒は、均一触媒の一例である。均一触媒の他の例としては、拘束幾何触媒が挙げられる。不均一触媒の例としては、溶液プロセスの高い重合温度で特に有用である不均一チーグラー・ナッタ触媒が挙げられ得る。そのようなチーグラー・ナッタ触媒の例は、有機マグネシウム化合物、ハロゲン化アルキルもしくはハロゲン化アルミニウム、または塩化水素、および遷移金属化合物から誘導されたものである。そのような触媒の例は、米国特許第4,314,912号(Lowery Jr.ら)、同第4,547,475号(Glassら)、および同第4,612,300号(Coleman,III)に記載されており、それらの教示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0053】
特に好適な有機マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウムジアルキルおよびマグネシウムジアリール等の炭化水素可溶性ジヒドロカルビルマグネシウムが挙げられる。例示的な好適なマグネシウムジアルキルとしては、特に、n-ブチル-secブチルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、イソプロピル-n-ブチル-マグネシウム、エチル-n-ヘキシルマグネシウム、エチル-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-オクチルマグネシウム等が挙げられ、アルキルが1~20個の炭素原子を有する。例示的な好適なマグネシウムジアリールとしては、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、およびジトリルマグネシウムが挙げられる。好適な有機マグネシウム化合物としては、アルキルおよびアリールマグネシウムアルコキシドならびにアリールオキシド、ならびにアリールおよびアルキルマグネシウムハロゲン化物が挙げられ、ハロゲンを含まない有機マグネシウム化合物がより望ましい。
【0054】
ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒は、ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒、共触媒、およびさらなる任意選択の成分を含む多成分触媒系である。ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒は、式(I)による金属-配位子錯体を含み得る。
【化1】
【0055】
式(I)中、Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選択される金属であり、この金属は、+2、+3、または+4の形式酸化状態にあり、nは、0、1、または2であり、nが1である場合、Xは、単座配位子または二座配位子であり、nが2である場合、各Xは、単座配位子であり、同じかまたは異なり、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性であり、Oは、O(酸素原子)であり、各Zは、-O-、-S-、-N(R
N)-、または-P(R
P)-から独立して選択され、Lは、(C
1~C
40)ヒドロカルビレンまたは(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビレンであり、ここで、(C
1~C
40)ヒドロカルビレンは、式(I)の2つのZ基を連結している1炭素原子から10炭素原子のリンカー骨格(Lが結合している)を含む部分を有するか、または(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)の2つのZ基を連結する1原子から10原子のリンカー骨格を含む部分を有し、ここで、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビレンの1原子から10原子のリンカー骨格の1から10原子の各々は、独立して炭素原子またはヘテロ原子であり、ここで、各ヘテロ原子は、独立してO、S、S(O)、S(O)
2、Si(R
C)
2、Ge(R
C)
2、P(R
C)、またはN(R
C)であり、ここで、独立して、各R
Cは、(C
1~C
30)ヒドロカルビルまたは(C
1~C
30)ヘテロヒドロカルビルであり、R
1およびR
8は、(C
1~C
40)ヒドロカルビル、(C
1~C
40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R
C)
3、-Ge(R
C)
3、-P(R
P)
2、-N(R
N)
2、-OR
C、-SR
C、-NO
2、-CN、-CF
3、R
CS(O)-、R
CS(O)
2-、(R
C)
2C=N-、R
CC(O)O-、R
COC(O)-、R
CC(O)N(R
N)-、(R
N)
2NC(O)-、ハロゲン、および式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルからなる群から独立して選択される。
【化2】
【0056】
式(II)、(III)、および(IV)では、R31~35、R41~48、またはR51~59の各々は(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RN)2NC(O)-、ハロゲン、または-Hから独立して選択され、提供されたR1またはR8のうちの少なくとも1つが、式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルである。
【0057】
式(I)では、R2~4、R5~7、およびR9~16の各々は、(C1~C40)ヒドロカルビル、(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(RC)3、-Ge(RC)3、-P(RP)2、-N(RN)2、-ORC、-SRC、-NO2、-CN、-CF3、RCS(O)-、RCS(O)2-、(RC)2C=N-、RCC(O)O-、RCOC(O)-、RCC(O)N(RN)-、(RC)2NC(O)-、ハロゲン、および-Hから独立して選択される。
【0058】
そこで、触媒系の具体的な実施形態を説明する。本開示の触媒系は、異なる形態で実施されてもよく、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全となり、また主題の範囲を当業者に完全に伝えるように、提供される。
【0059】
「独立して選択される」という用語は、R1、R2、R3、R4、およびR5等のR基が、同一であっても異なっていてもよいこと(例えば、R1、R2、R3、R4、およびR5は、全てが置換アルキルであってもよく、またはR1およびR2は、置換アルキルであってもよく、R3は、アリールであってもよい、等)を示すために本明細書で使用される。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は、ヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、当業者に既知の定義を補足し、例示することを意図したものであり、排除するものではない。
【0060】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に転換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「共触媒」および「活性剤」という用語は、相互交換可能な用語である。
【0061】
ある特定の炭素原子含有化学基を記載するために使用される場合、「(Cx-Cy)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がxおよびyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子までを有することを意味する。例えば、(C1~C40)アルキルは、その非置換形態において1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態および一般構造において、ある特定の化学基は、RS等の1つ以上の置換基によって置換してもよい。括弧付きの「(Cx~Cy)」を使用して定義される、化学基のRS置換バージョンは、任意の基RSの同一性に応じてy個超の炭素原子を含有し得る。例えば、「RSがフェニル(-C6H5)である厳密に1つの基RSで置換された(C1~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(Cx-Cy)」を使用して定義される化学基が1つ以上の炭素原子含有置換基RSによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小および最大合計数は、xとyとの両方に、すべての炭素原子含有置換基RS由来の炭素原子の合計数を加えることによって、決定される。
【0062】
いくつかの実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基(例えば、X、R等)の各々は、RS置換基を有しない非置換であり得る。他の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基のうちの少なくとも1つは独立して、1つまたは2つ以上のRSを含有し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基中のRSの合計は、20個を超えない。いくつかの実施形態では、化学基中のRSの合計は、10個を超えない。例えば、各R1~5が2つのRSで置換された場合、次に、XおよびZをRSで置換することはできない。別の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基中のRSの合計は、5つのRSを超えない場合がある。2つまたは3つ以上のRSが式(I)の金属-配位子錯体の同じ化学基に結合している場合、各RSは独立して、同一もしくは異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合しており、化学基の過置換を含み得る。
【0063】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。「過置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合したすべての水素原子(H)が置換基(例えばRS)によって置き換えられることを意味する。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合した、少なくとも2個の、ただし、すべてよりは少ない水素原子が置換基によって置き換えられることを意味する。
【0064】
「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素または水素ラジカルを意味する。「水素」および「-H」は、交換可能であり、明記されていない限り、同一の意味を有する。
【0065】
「(C1~C40)ヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子を有する炭化水素ジラジカルを意味し、ここで、各炭化水素ラジカルおよび各炭化水素ジラジカルは、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式および多環式、二環式を含む縮合および非縮合多環式を含み、3個以上の炭素原子)または非環式であり、かつ、1つ以上のRSによって置換されているか、または置換されていない。
【0066】
本開示では、(C1~C40)ヒドロカルビルは、非置換もしくは置換の(C1~C40)アルキル、(C3~C40)シクロアルキル、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C6~C40)アリール、または(C6~C20)アリール-(C1~C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態では、上記の(C1~C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子(すなわち、(C1~C20)ヒドロカルビル)、他の実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0067】
「(C1~C40)アルキル」および「(C1~C18)アルキル」という用語は、それぞれ、1~40個の炭素原子または1~18個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐炭化水素ラジカルを意味し、ラジカルは、非置換であるか、または1つ以上のRSにより置換されている。非置換(C1~C40)アルキルの例は、非置換(C1~C20)アルキル、非置換(C1~C10)アルキル、非置換(C1~C5)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、および1-デシルである。置換(C1~C40)アルキルの例は、置換(C1~C20)アルキル、置換(C1~C10)アルキル、トリフルオロメチル、および[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」(角括弧付き)という用語は、置換基を含むラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C1~C5)アルキルである1つのRSによって置換された(C27~C40)アルキルである。各(C1-C5)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、または1,1-ジメチルエチルであることができる。
【0068】
「(C6~C40)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子の非置換または置換(1つ以上のRSによる)単環式、二環式、または三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子は、芳香環炭素原子であり、単環式、二環、または三環式ラジカルは、それぞれ1個、2個、または3個の環を含み、1個の環は、芳香族であり、2個または3個の環は、独立して縮合または非縮合であり、2個または3個の環の少なくとも1つは、芳香族である。非置換(C6~C40)アリールの例は、非置換(C6~C20)アリール、非置換(C6~C18)アリール、2-(C1~C5)アルキル-フェニル、2,4-ビス(C1~C5)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびフェナントレンである。置換(C6~C40)アリールの例は、置換(C1~C20)アリール、置換(C6~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、およびフルオレン-9-オン-1-イルである。
【0069】
「(C3~C40)シクロアルキル」という用語は、非置換であるかまたは1つ以上のRSで置換されている、3~40個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(Cx~Cy)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、または1つ以上のRSで置換されているかのいずれかであると同様な様式で定義される。非置換(C3-C40)シクロアルキルの例は、非置換(C3-C20)シクロアルキル、非置換(C3-C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルである。置換(C3-C40)シクロアルキルの例は、置換(C3-C20)シクロアルキル、置換(C3-C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、および1-フルオロシクロヘキシルである。
【0070】
(C1~C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換または置換の(C6~C40)アリーレン、(C3~C40)シクロアルキレン、および(C1~C40)アルキレン(例えば(C1~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ジラジカルは、同一の炭素原子(例えば、-CH2-)であるかまたは隣接する炭素原子上(すなわち、1,2-ジラジカル)にあるか、または1個、2個、または2個以上の介在する炭素原子によって離間されている(例えば、1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカル等)。一部のジラジカルには、α,ω-ジラジカルが含まれる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C2-C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち-CH2CH2)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち-CH2CH2CH2-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち-CH2CH(CH3)CH2-)が挙げられる。(C6~C40)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0071】
「(C1~C40)アルキレン」という用語は、非置換または1つ以上のRSで置換された炭素数1~40の飽和直鎖または分岐鎖のジラジカル(即ち、ラジカルが環原子ではない)を意味する。非置換(C1~C40)アルキレンの例は、非置換(C1~C20)アルキレンであり、非置換-CH2CH2-、-(CH2)3-、-(CH2)4-、-(CH2)5-、-(CH2)6-、-(CH2)7-、-(CH2)8-、-CH2C*HCH3、および-(CH2)4C*(H)(CH3)を含み、「C*」は、水素原子が、第二級または第三級アルキルラジカルを形成するために除去される炭素原子を示す。置換(C1~C40)アルキレンの例は、置換(C1~C20)アルキレン、-CF2-、-C(O)-、および-(CH2)14C(CH3)2(CH2)5-(即ち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。上記のように、2つのRSは一緒になって、(C1~C18)アルキレンを形成することができ、置換(C1~C40)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
【0072】
「(C3~C40)シクロアルキレン」という用語は、非置換であるか、または1つ以上のRSで置換されている、3~40個の炭素原子の環式ジラジカル(即ち、ラジカルが環原子上にある)を意味する。
【0073】
「ヘテロ原子」という用語は、水素または炭素以外の原子を指す。1個または2個以上のヘテロ原子を含有する基の例としては、O、S、S(O)、S(O)2、Si(RC)2、P(RP)、N(RN)、-N=C(RC)2、-Ge(RC)2-、または-Si(RC)-が挙げられ、各RCおよび各RPは、非置換(C1-C18)ヒドロカルビルまたは-Hであり、各RNは非置換(C1-C18)ヒドロカルビルである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子または分子骨格を指す。「(C1~C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素は、1つ以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子またはヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1つまたは2つの炭素原子、(2)1つまたは2つのヘテロ原子、または(3)炭素原子とヘテロ原子上に存在し得る。(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルおよび(C1~C40)ヘテロヒドロカルビレンは各々、非置換または(1つ以上のRSによって)置換、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式および多環式、縮合および非縮合多環式を含む)または非環式であってもよい。
【0074】
(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換であってもよく、または置換されてもよい。(C1~C40)ヘテロヒドロカルビルの非限定的な例としては、(C1~C40)ヘテロアルキル、(C1~C40)ヒドロカルビル-O-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C1~C40)ヒドロカルビル-S(O)2-、(C1~C40)ヒドロカルビル-Si(RC)2-、(C1~C40)ヒドロカルビル-N(RN)-、(C1~C40)ヒドロカルビル-P(RP)-、(C2~C40)ヘテロシクロアルキル、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)アルキレン、(C3~C20)シクロアルキル-(C1~C19)ヘテロアルキレン、(C2~C19)ヘテロシクロアルキル-(C1~C20)ヘテロアルキレン、(C1~C50)ヘテロアリール、(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)アルキレン、(C6~C20)アリール-(C1~C19)ヘテロアルキレン、または(C1~C19)ヘテロアリール-(C1~C20)ヘテロアルキレンが挙げられる。
【0075】
「(C1~C40)ヘテロアリール」という用語は、1~40個の総炭素原子および1~10個のヘテロ原子を有する非置換または置換(1つ以上のRSによる)単環式、二環式、または三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、または三環式のラジカルは、それぞれ1個、2個、または3個の環を含み、2個または3個の環は、独立して縮合または非縮合であり、2個または3個の環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。他のヘテロアリール基(例えば、(C1~C12)ヘテロアリール等の一般的な(Cx~Cy)ヘテロアリール)は、x~y個の炭素原子(1~12個の炭素原子等)を有し、かつ非置換または1つまたは2つ以上のRSで置換されているものと類似した様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環または6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1、2、または3であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、またはPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、およびテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1または2であり得、ヘテロ原子は、NまたはPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、およびピラジン-2-イルである。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-または6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、インドール-1-イル、およびベンズイミダゾール-1-イルが挙げられる。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、キノリン-2-イル、およびイソキノリン-1-イルが挙げられる。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、または6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例としては、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合5,6,6-環系の例としては、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例としては、アクリジン-9-イルである。
【0076】
前述のヘテロアルキルは、(C1~C40)の炭素原子またはそれより少ない炭素原子およびヘテロ原子のうちの1個以上を含有する飽和直鎖または分岐鎖ラジカルであり得る。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子および1個または2個以上のヘテロ原子を含む飽和直鎖または分岐鎖ジラジカルであってもよい。上記で定義したように、ヘテロ原子としては、Si(RC)3、Ge(RC)3、Si(RC)2、Ge(RC)2、P(RP)2、P(RP)、N(RN)2、N(RN)、N、O、ORC、S、SRC、S(O)、およびS(O)2が挙げられ得、ヘテロアルキルおよびヘテロアルキレン基の各々は、非置換または1つ以上のRSによって置換されている。
【0077】
非置換(C2~C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C2~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C2~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、および2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0078】
「ハロゲン原子」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F-)、塩化物(Cl-)、臭化物(Br-)、またはヨウ化物(I-)のハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0079】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基RSで置換されている場合、1つ以上の二重および/または三重結合は、任意選択で、置換基RS中に存在してもしなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、および(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を含有し、存在する場合、RS置換基中に存在し得るか、または存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得る任意のそのような二重結合を含まないことを意味する。
【0080】
いくつかの実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属系触媒を活性化するための当該技術分野において既知の任意の技術によって触媒的に活性にされ得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体を含むものは、錯体を活性化共触媒と接触させるか、または錯体を活性化共触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性にされ得る。本明細書に使用するのに好適な活性化共触媒として、アルキルアルミニウム、ポリマーまたはオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られる)、中性ルイス酸、および非ポリマー性、非配位性のイオン形成化合物が挙げられる(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)。好適な活性化技術は、バルク電気分解である。前述の活性化共触媒および技術のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリドもしくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムヒドリドもしくはジアルキルアルミニウムハライド、またはトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマーアルモキサンまたはオリゴマーアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサン、およびイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0081】
ルイス酸活性剤(共触媒)は、本明細書に記載されるように、1~3個の(C1~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物を含む。一実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C1~C20)ヒドロカルビル)置換アルミニウムまたはトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物である。他の実施形態では、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)置換アルミニウム、トリ(ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C1~C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C6~C18)アリール)ホウ素化合物、およびそれらのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。さらなる実施形態では、第13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化共触媒は、テトラキス((C1~C20)ヒドロカルビルボレート(例えば、トリチルテトラフルオロボレート)またはトリ((C1~C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C1~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用される場合、「アンモニウム」という用語は、((C1~C20)ヒドロカルビル)4N+、((C1~C20)ヒドロカルビル)3N(H)+、((C1~C20)ヒドロカルビル)2N(H)2
+、(C1~C20)ヒドロカルビルN(H)3
+、またはN(H)4
+である窒素カチオンを意味し、各(C1~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同じであっても、異なっていてもよい。
【0082】
中性ルイス酸活性剤(共触媒)の組み合わせとしては、トリ((C1~C4)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ((C6~C18)アリール)ホウ素化合物、特に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物とポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせ、および単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば(第4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモルの数の比は、1:1:1~1:10:30であり、他の実施形態では1:1:1.5~1:5:10である。
【0083】
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系を活性化して、1つ以上の共触媒、例えば、カチオン形成共触媒、強ルイス酸、またはそれらの組み合わせを組み合わせることによって、活性触媒組成物を形成することができる。好適な活性化共触媒としては、ポリマーまたはオリゴマーのアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、ならびに不活性で相溶性のある非配位イオン形成化合物が挙げられる。例示的な好適な共触媒としては、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、ビス(水素化タローアルキル)メチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1-)アミン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0084】
いくつかの実施形態において、前述の活性化共触媒のうちの1つ以上は、互いに組み合わせて使用される。特に好ましい組み合わせは、トリ((C1~C4)ヒドロカルビル)アルミニウム、トリ((C1~C4)ヒドロカルビル)ボラン、またはホウ酸アンモニウムとオリゴマーもしくはポリマーアルモキサン化合物との混合物である。式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数と活性化共触媒のうちの1つ以上の総モル数との比は、1:10,000-100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、他のいくつかの実施形態では少なくとも1:1000、および10:1以下であり、さらにいくつかの他の実施形態では、1:1以下である。アルモキサン単独を活性化共触媒として使用する場合、好ましくは、使用されるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍である。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化共触媒として使用する場合、他のいくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数を、0.5:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~5:1とする。残存する活性化共触媒は、一般に、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量に等しいおよそのモル量で用いられる。
【0085】
様々な溶媒、例えば芳香族およびパラフィン溶媒が企図される。例示的な溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、それに限定されない。例えば、そのようなイソパラフィン溶媒は、ExxonMobil ChemicalからISOPAR Eの名称で市販されている。
【0086】
反応性比は、エチレンと重合プロセスにおける重合触媒を有するC3~C12αオレフィンコモノマーとの間の重合速度(すなわち、選択性)で得られた差によって決定される。重合触媒に対する立体相互作用は、C3~C12αオレフィン等のαオレフィンよりも選択的に、エチレンの重合をもたらす(すなわち、触媒は、αオレフィンの存在下で、優先的にエチレンを重合する)と考えられている。再度、理論に束縛されるものではないが、そのような立体相互作用は、式(I)の金属-配位子錯体によって、またはそれから調製された均一触媒に、触媒によってα-オレフィンがそうすることが可能となるよりも、エチレンがMに実質的により容易に接近することを可能にする高次構造を取るか、またはより容易に反応性高次構造を取るか、またはその両方であると考えられている。
【0087】
挿入された最後のモノマーの属性が後続のモノマーの挿入速度を決定付けるランダムコポリマーには、末端共重合モデルが用いられる。このモデルでは、このタイプの挿入反応:
【数1】
式中、C
*は触媒を表し、M
iはモノマーiを表し、k
ijは以下の速度式を有する速度定数である。
R
pij=k
ij[…M
iC
*][M
j](式2)
【0088】
反応媒体中のコモノマーのモル分率(i=2)は、次の等式によって定義される。
【数2】
【0089】
George Odian,Principles of Polymerization,Second Edition,John Wiley and Sons,1970に開示されているように、コモノマー組成の簡単な等式を次のように導出すことができる。
【数3】
【0090】
この等式から、ポリマー中のコモノマーのモル分率は、反応媒体中のコモノマーのモル分率、および挿入速度定数に関して次のように定義された2つの温度依存反応性比にのみ依存する。
【数4】
【0091】
このモデルでも、ポリマー組成は、反応器内の温度依存反応性比およびコモノマーモル分率のみの関数である。逆になったコモノマーまたはモノマーの挿入が発生し得る場合、または2つを超えるモノマーの共重合の場合にも同じことが言える。
【0092】
前述のモデルで使用するための反応性比は、周知の理論手法を使用して予測するか、または実際の重合データから経験的に導出され得る。好適な理論手法は、例えば、B.G.Kyle,Chemical and Process Thermodynamics,Third Addition,Prentice-Hall,1999 and in Redlich-Kwong-Soave(RKS)Equation of State,Chemical Engineering Science,1972,pp.1197-1203に開示されている。市販のソフトウェアプログラムを使用して、経験的に導出されたデータからの反応性比の導出を支援してもよい。そのようなソフトウェアの一例は、Aspen Technology,Inc.,Ten Canal Park,Cambridge,MA 02141-2201 USAからのAspen Plusである。
【0093】
様々なプロセス制御方法論が企図される。一実施形態において、フーリエ変換近赤外(FTnIR)分光計をプロセス制御フィードバックループで利用することができる。例えば、第1の溶液重合反応器において、第1および第2のエチレン系成分は、十分に異なる反応性比を有する2つの触媒を使用して、十分に異なる密度で製造される。次いで、各成分の重量パーセントは、最初の反応器出口でFTnIR分光計によって測定されたコモノマー濃度を介してリアルタイムで正確に監視され得る。それに応じて、触媒供給比を調整して、第1の反応器内の各成分の目標重量パーセントの達成に関与する目標コモノマー濃度を達成することができる。あるいは、フーリエ変換近赤外(FTnIR)分光計よりも優れたコモノマー濃度測定の分解能および精度を提供するため、プロセス制御フィードバックループでラマン分光計が利用されてもよい。
【0094】
フィルム
【0095】
上記のように、LDPEおよびマルチモーダルエチレン系ポリマーを含む本発明の組成物の実施形態は、フィルムに組み込まれ得る。フィルムは、インフレーションフィルムまたはキャストフィルムプロセスにより製造された単層または多層フィルムであり得る。フィルムは、例えば、食品包装、工業用および消費者用包装材料、建築用フィルム、発泡フィルム等を含む様々な物品に組み込むことができる。
【0096】
任意選択で、フィルムは、1つ以上の添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、帯電防止剤、増色剤、染料、潤滑剤、充填剤(例えば、TiO2またはCaCO3)、乳白剤、核剤、加工助剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、UV安定剤、粘着防止剤、スリップ剤、粘着付与剤、難燃剤、抗菌剤、臭気低減剤、抗真菌剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
いくつかの実施形態において、フィルムは、例えば、改善されたダーツ強度および割線弾性係数によって実証されるように、改善された靭性を有するインフレーション単層フィルムである。
【0098】
試験方法
【0099】
試験方法は、以下を含む。
【0100】
メルトインデックス(I2)および(I10)
ASTM D1238に従って190℃、2.16kgで測定されたマルチモーダルエチレン系ポリマーのメルトインデックス(I2)値。同様に、マルチモーダルエチレン系ポリマーのメルトインデックス(I10)値は、ASTM D1238に従って190℃、10kgで測定した。値を、10分あたりに溶出したグラムに対応する、g/10分で報告する。第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分のメルトインデックス(I2)値は、等式30および下記の方法に従って計算した。
【0101】
密度
【0102】
マルチモーダルエチレン系ポリマーの密度測定を、ASTM D792、方法Bに従って行った。第1および第2のエチレン系成分については、式28および下記の方法論を使用して密度の値を得た。第3のエチレン系成分については、密度値を等式29を使用して計算した。
【0103】
従来のゲル浸透クロマトグラフィー(従来のGPC)
【0104】
クロマトグラフィーシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を装備したPolymerChar GPC-IR(スペイン、バレンシア)高温GPCクロマトグラフで構成されている。オートサンプラーのオーブンコンパートメントを160℃に設定し、カラムコンパートメントを150℃に設定した。使用したカラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm、20ミクロンの直線状混合床カラムであった。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有していた。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流量は1.0ミリリットル/分であった。
【0105】
GPCカラムセットの較正は、580~8,400,000g/molの範囲の分子量を有する少なくとも20個の狭い分子量分布のポリスチレン標準を用いて行い、個々の分子量の間に少なくとも10の間隔を空けて、6つの「カクテル」混合物中に該標準を配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。ポリスチレン標準は、1,000,000g/mol以上の分子量について50ミリリットルの溶媒中0.025グラム、および1,000,000g/mol未満の分子量について50ミリリットルの溶媒中0.05グラムで調製された。ポリスチレン標準を、80℃で30分間穏やかに撹拌しながら溶解した。ポリスチレン標準のピーク分子量は、等式6を用いてエチレン系ポリマー分子量に変換した(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載の通り):
Mポリエチレン=A×(Mポリエチレン)B(式6)
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0106】
第5次多項式を使用して、それぞれのエチレン系ポリマー等価較正点に適合させた。NIST標準NBS1475が52,000g/molで得られるように、カラム分解能およびバンド広がり効果を補正するために、Aに対するわずかな調整(約0.39~0.44)を行った。
【0107】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、エイコサン(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解した)を用いて行った。プレートカウント(式7)および対称性(式8)を、200マイクロリットル注入で以下の式に従って測定した:
【数5】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大の高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【数6】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも前の保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は22,000超であるべきであり、対称性は0.98~1.22であるべきである。
【0108】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製された:2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪しながら160℃で3時間溶解した。
【0109】
Mn(GPC)、Mw(GPC)、およびMz(GPC)の計算は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェア、等間隔の各データ収集点i(IRi)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および等式6からの点iの狭い標準較正曲線から得られたエチレン系ポリマー当量分子量(g/molで示されるMポリエチレン、i)を使用して、等式9~12に従ってPolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内蔵型IR5検出器(測定チャネル)を使用したGPCの結果に基づいていた。続いて、エチレン系ポリマー試料についてのGPC分子量分布(GPC-MWD)プロット(wtGPC(lgMW)対lgMWプロット、ここで、wtGPC(lgMW)は、分子量lgMWによるエチレン系ポリマー分子の重量分率)を得た。分子量はg/molで、wtGPC(lgMW)は等式9に従う。
∫wtGPC(lg MW)d lg MW=1.00(式9)
【0110】
数平均分子量M
n(GPC)、重量平均分子量M
w(GPC)、およびz平均分子量M
z(GPC)は、以下の等式で計算することができる。
【数7】
【数8】
【数9】
【0111】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)を使用して、試料におけるそれぞれのデカンピークのRV(RV(FM試料))を、狭い標準較正におけるデカンピークのRV(RV(FM較正))と整列させることによって、各試料のポンプ流量(流量(公称))を直線的に補正した。次に、デカンマーカーピークのいかなる時間変化も、試験全体の流量(流量(実効))の線形シフトに関すると仮定した。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合させる。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、実効流量(狭い標準較正についての)を、等式13のように計算する。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容可能な流量を、実効流量が公称流量の0.5%以内になるように補正した。
流量有効=流量公称×(RV(FM補正)/RV(FM試料))(式13)
【0112】
IR5 GPCコモノマー含有量(GPC-CC)プロット
IR5検出器比演算の較正を、既知の短鎖分岐(SCB)周波数(基準材料のコモノマー含有量は、参照により本明細書に組み込まれている、例えば米国特許第5,292,845号(カワサキら)、およびJ.C.RandallによるRev.Macromol.Chem.Phys、C29、201-317に記載されている技術による13C NMR分析を使用して決定する)の少なくとも10のエチレン系ポリマー標準(エチレン系ポリマーホモポリマーおよびエチレン/オクテンコポリマー)を使用して、ホモポリマー(0SCB/総炭素数1000個)から約50SCB/総炭素数1000個までの範囲で実行し、総炭素数は、骨格内の炭素と分岐内の炭素との合計に等しい。各標準は、GPCによって測定するとき、36,000g/mol~126,000g/molの重量平均分子量を有し、2.0~2.5の分子量分布を有していた。典型的なコポリマー標準の特性と測定値を表Aに示す。
【0113】
【0114】
「IR5メチルチャネルセンサーのベースライン減算領域応答」と「IR5測定チャネルセンサーのベースライン減算領域応答」との「IR5領域比(または「IR5メチルチャネル領域/IR5測定チャネル領域」)」(PolymerCharによって供給された標準フィルタおよびフィルタホイール:Part Number IR5_FWM01は、GPC-IR機器の一部として含まれていた)を、「コポリマー」標準の各々について計算した。重量%コモノマー対「IR5領域比」の線形適合を、以下の等式14の形態で構築した。
wt%コモノマー=A0+[A1(IR5メチルチャネル領域/IR5測定チャネル領域)](式14)
【0115】
したがって、GPC-CC(GPC-コモノマー含有量)プロット(重量%コモノマー対lgMW)を得ることができる。各クロマトグラフスライスで決定された分子量を介してコモノマーの終端(メチル)との有意なスペクトルオーバーラップがある場合、重量%コモノマーデータの末端基補正を、終端メカニズムの知識を介して行うことができる。
【0116】
結晶化溶出分別(CEF)
【0117】
コモノマー分布分析は、通常、短鎖分岐分布(SCBD)とも呼ばれ、この分布を、IR(IR-4またはIR-5)検出器(PolymerChar、スペイン)および2角度光散乱検出器モデル2040(精密検出器、現在Agilent Technologies)を装備した結晶化溶出分別(CEF)(PolymerChar、スペイン)(参照により本明細書に組み込まれている、Monrabalら、Macromol.Symp.257、71-79(2007))で測定した。600ppmの酸化防止剤ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を有する蒸留済みのオルト-ジクロロベンゼン(ODCB)を溶媒として使用した。N2パージ可能なオートサンプラーについては、BHTを添加しなかった。検出器オーブンのIR検出器の直前に、GPCガードカラム(20ミクロン、または10ミクロン、50X7.5mm)(Agilent Technologies)を取り付ける。試料調製は、オートサンプラーを用いて、4mg/mlで振盪しながら160℃で2時間行う(別段の記載のない限り)。注入量は、300μlである。CEFの温度プロファイルは、次の通りである:110℃から30℃まで3℃/分での結晶化、30℃で5分間の熱平衡、および30℃から140℃まで3℃/分での溶出。結晶化中の流量は、0.052ml/分である。溶出中の流量は、0.50ml/分である。データは、1データポイント/秒で収集する。
【0118】
CEFカラムには、Dow Chemical Companyによって、1/8インチのステンレス管を用いて125μm+6%のガラスビーズ(MO-SCI Specialty Products)が充填される。ガラスビーズは、Dow Chemical Companyからの要望により、MO-SCI Specialtyにより酸洗浄されている。カラム容量は、2.06mlである。カラム温度の較正は、ODCB中のNIST標準参照物質、線状エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とエイコサン(2mg/ml)との混合物を用いて行った。NIST線状エチレン系ポリマー1475aが101.0℃にピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃にピーク温度を有するように溶出加熱速度を調節することによって温度を較正する。CEFカラム分解能を、NIST線状エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とヘキサコンタン(Fluka、プルム(purum)≧97.0%、lmg/ml)との混合物を用いて計算した。ヘキサコンタンとNISTエチレン系ポリマー1475aとのベースライン分離を達成した。67.0~110.0℃のNIST1475aの面積に対するヘキサコンタンの面積(35.0~67.0℃)は50対50であり、35.0℃未満の可溶性画分の量は1.8重量%未満である。CEFカラム分解能を、等式15に定義する:
【数10】
ここで、1/2高さの幅を温度で測定し、分解能は少なくとも6.0である。
【0119】
CEF機器はAgilent(Santa Clara,CA)モデル2040 2角度光散乱検出器を備えており、既知の分子量(約120,000g/mol)の既知のホモポリマーエチレン系ポリマー標準を用いて、90度信号チャネルを使用して光散乱を較正した。また、IR(赤外線)検出器を、質量応答について較正した。各溶出ポイントの分子量(Mw(CEF))を、適切な信号対雑音の区域における溶出温度の関数として計算した。領域計算(それぞれのIR領域で除算し、それぞれの検出器定数で因数分解した、90度光散乱信号の総領域を表す)を使用して、溶出温度の領域にわたる重量平均分子量を評価し、CEF-MWプロット(Mw(CEF)対温度曲線)を得た。領域計算は、連続的な計算よりも信号対雑音の本質的な利点を有する。通常のクロマトグラフィーの積分法に従って、IRおよびLS(光散乱)信号の両方をベースライン信号レベルから差し引いた。
【0120】
「臨界温度(T臨界)」の計算:臨界温度以下の温度範囲でのポリマーの重量分率および重量平均分子量(20℃~T臨界のCEF画分のMw(CEF))を以下のように得た:
【0121】
0.2℃ずつ段階的に温度を上昇させながら20.0℃~119.9℃の各温度(T)での重量分率(wt
CEF(T))を用いてCEF-SCBD(CEF-短鎖分岐分布)プロットを得る。
【数11】
【0122】
臨界温度を、以下の等式に従って、樹脂の密度(g/cc)によって定義する。
T臨界(℃)=1108.1(℃・cc/g)×密度(g/cc)-952.1(℃)(式17)
【0123】
20℃~T
臨界のCEF重量分率は、CEF-SCBDから以下のように計算される:
【数12】
【0124】
同様に、20℃から臨界温度まで(臨界温度を含む)の画分の重量平均分子量(20℃~T臨界のCEF画分のMw(CEF))は、90度光散乱応答の合計を20℃~T臨界のIR検出器応答の合計で除し、補正された検出器定数について因数分解した面積比として計算された。分子量の計算および較正を、GPCOne(登録商標)ソフトウェアで実行した。
【0125】
二変量データの数値デコンボリューション
【0126】
二変量データの数値デコンボリューションを使用して、第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分の密度、分子量、ならびにメルトインデックス(I
2)を得る。Microsoft Excel(登録商標)Solver(2013)を使用して、CEF-SCBD(CEFからのwt
CEF(T)対温度(T)プロット)とGPC-MWD(従来のGPCからのwt
GPC(lgMW))対lgMWプロット)を合わせたデータの数値デコンボリューションを行った。CEF-SCBDの場合、適切な反復速度と温度分解能のバランスをとるために、計算された重量分率(wt
sum,CEF(T))対CEFの項に記載される方法(約23~120℃の範囲)を用いて得られた温度(T)のデータを、約200個の均等に間隔を空けたデータポイントに抑制した。単一または一連の(成分ごとに最大3つのピーク)指数修正ガウス分布(等式19)を合計して、各成分(wt
C、CEF(T))を表し、これらの成分を合計して、総重量(wt
sum、CEF(T))を等式20A~Dに示すように、任意の温度(T)で得た。
【数13】
式中、Cは成分(C=1、2、または3)を意味し、Pはピーク(P=1、2、または3)を意味し、a
0,C,PはC番目の成分のP番目のピークの℃でのクロマトグラフの面積であり、a
1,C,PはC番目の成分のP番目のピークの℃でのピーク中心であり、a
2,C,PはC番目の成分のP番目のピークの℃でのピーク幅であり、a
3,C,PはC番目の成分のP番目のピークの℃でのピークテーリングであり、Tは℃での溶出温度である。成分のCEF-SCBDを表すために単一の指数関数的に修正されたガウス分布が用いられる場合、y
T,C,2=y
T,C,3=0である。2つの場合には、指数修正ガウス分布を使用して、成分のCEF-SCBD、y
T、C、3=0のみを表す。
【数14】
【数15】
【数16】
wt
合計,CEF(T)=wt
C1,CEF(T)+wt
C2,CEF(T)+wt
C3,CEF(T)(式20D)
【0127】
CEF-SCBDデコンボリューションからの各成分の重量分率(wfC、CEF)は、以下の等式によって表現することができ、
wfC1,CEF=∫wtC1(T)dT(式21A)
wfC2,CEF=∫wtC2(T)dT(式21B)
wfC3,CEF=∫wtC3(T)dT(式21C)
∫wt合計,CEF(T)dT=1.00(式21D)
式中、wfC1、CEFは、CEF-SCBDデコンボリューションから得た第1のエチレン系成分の重量分率であり、wfC2、CEFは、CEF-SCBDデコンボリューションから得た第2のエチレン系成分の重量分率であり、wfC3、CEFは、CEF-SCBDデコンボリューションから得た第3のエチレン系成分の重量分率であり、分率の合計を1.00に正規化する。
【0128】
GPC-MWDについては、従来のGPCの記載セクションで得たMWDを、2.00~7.00の0.011g(MW/(g/mol))の増分で同じスプレッドシートの中にインポートした(合計501データポイント)。重量平均分子量M
w,標的および2.0の多分散性(M
w(GPC)/M
n(GPC))を有するFlory-Schulz分布を、以下の式に示す。
【数17】
【数18】
lg(M
i+1/(g/mol))-lg(M
i/(g/mol))=0.01(式24)
式中、wt
F-S、iは、lg(M
i/(g/mol))(M
iはg/mol)での分子の重量分率であり、iは、GPC-MWDプロット上の各データポイントを表すための0~500の範囲の整数であり、対応するlg(M
i/(g/mol))は、2+0.01×iである。
【0129】
その後、各lg(M
i/(g/mol))における系列正規分布の合計を使用してFlory-Schulz分布を拡大する。lg(M
i/(g/mol))にピーク値を有する正規分布の重量分率を、元のFlory-Schulz分布と同じに保つ。拡大したFlory-Schulz分布曲線は、以下の等式のように記載することができる。
【数19】
式中、wt
GPC(lg(M
i/(g/mol)))は、lg(M
i/(g/mol))における分子の重量分率であり、jは、0~500の範囲の整数であり、σは、正規分布の標準偏差である。したがって、3つの成分全てについての分子量分布曲線は、以下の等式で表現することができる。数平均分子量(M
n(GPC))、重量平均分子量(M
w(GPC))、およびMWD(M
w(GPC)/M
n(GPC))は、拡大したFlory-Schulz分布から計算することができる。
【数20】
【数21】
【数22】
wt
合計,GPC(lg(M
i/(g/mol)))=wt
C1,GPC(lg(M
i/(g/mol)))+wt
C2,GPC(lg(M
i/(g/mol)))+wt
C3,GPC(lg(M
i/(g/mol)))(式26D)
式中、σは、正規分布幅パラメータであり、添え字C1、C2、およびC3は、それぞれ第1、第2、および第3のエチレン系成分を表す。wf
C1、GPC、wf
C2、GPC、およびwf
C3 GPCは、それぞれGPC-MWDからの第1、第2、および第3のエチレン系成分の重量分率である。
【0130】
CEF-SCBDおよびGPC-MWDからの対になる成分(第1のエチレン系成分(C1)、第2のエチレン系成分(C2)、および第3のエチレン系成分(C3))の各々は、等式27A~Eに示すように、それぞれの技術に対する等価質量と見なされる。
wfC1,CEF+wfC2,CEF+wfC3,CEF=1.00(式27A)
wfC1,GPC+wfC2,GPC+wfC3,GPC=1.00(式27B)
wfC1,CEF=wfC1,GPC(式27C)
wfC2,CEF=wfC2,GPC(式27D)
wfC2,CEF=wfC2,GPC(式27E)
【0131】
触媒効率および反応器の物質収支を含むプロセスおよび触媒データは、各成分の相対的な重量生産の初期推定値に活用することができる。あるいは、各成分についての重量分率の初期推定は、マルチモーダルエチレン系ポリマーのCEF-SCBDまたはGPC-MWDプロットの部分領域を統合する、特に、定義されたピークまたはピーク変曲点を有する可視領域に留意することによって比較することができる。例えば、CEF-SCBD曲線(Inv3)における各成分についてのピーク領域は、十分に分離している場合、
図2に示すようにピーク間の垂直線をドロップすることによって推定することができる。分子量の順序と分子量の初期推定値との関連付けは、CEF-SCBDおよびCEF-MWプロットの関連する成分領域のピーク位置から得ることができ、
図2に示すように、GPC-CC測定値との一致が見込めるはずである。場合によっては、ピーク領域および組成の初期割当てを、開始点としてのマルチモーダルGPC-MWDから得て、CEF-SCBDおよびCEF-MWプロット下で検証することができる。
【0132】
各成分のCEF-SCBDにおけるピーク幅およびテーリングの初期推定値は、以前に表Aに提示したような一連の標準的なシングルサイト試料を使用したピーク幅対温度の較正から取得することができる。
【0133】
Microsoft Excel(登録商標)Solverは、wt合計,GPC(lgMi)と測定されたGPC-MWDとの間の残差の二乗和と、wt合計,CEF(T)と測定されたCEF-SCBDとの間の残差の二乗和を合わせたものを最小化するようにプログラムされている(2つの観測された分布のサンプリング幅と面積は、相互に正規化される)。GPC-MWDおよびCEF-SCBDの適合には、これらが同時に収束するため、等しく重み付けされる。CEF-SCBDにおける重量分率およびピーク幅についての初期推定値、ならびに各成分についての分子量ターゲットは、Microsoft Excel(商標登録)Solverを使用して、本明細書に記載するように開始する。
【0134】
CEFのピーク形状を歪ませる共結晶化の影響は、指数関数的に修正されたガウス(EMG)ピークフィットの使用により、また極端な場合は、単一の成分を表すために合計された複数(最大3)のEMGピークの使用により補正される。シングルサイト触媒を介して生成した成分は、単一のEMGピークによってモデル化することができる。チーグラー・ナッタ触媒によって生成された成分は、1、2、または3つのEMGピークによって、またはCEF-SCBDプロット上で非常に高密度、非常に低分子の標的のチーグラー・ナッタ成分に十分な、低温に面した長いテールを有するEMGピークによってモデル化することができる。全ての場合において、単一の拡大されたFlory-Schulz分布(等式26A~C)のみが、CEF-SCBDモデル(等式27A-E)からの1つ以上のEMG成分の関連する合計として割り当てられた重量分率とともに使用される。
【0135】
GPCデコンボリューションは、シングルサイト触媒を介して作製された第1、第2および第3のエチレン系成分について、式26A、26Bの正規分布幅パラメータ(σC1またはσC2)で0.000~0.170(約2.00~2.33の対応する多分散性)に制約されている。式22のMw,標的は、この特定の反応スキームから最小になることが標的であるため、これらの場合では、第3のエチレン系成分について最小になるように制約されている。あらゆる可能な場合に、定義によって最小になるように制約されているのではなく、組み合わせた樹脂の反応器内ブレンドの所望の性能標的に応じることに留意されたい。第1のエチレン系成分および第2のエチレン系成分の2つの重量平均分子量(Mw、標的)のランク付け(予備推定)を、CEF-MWプロット(Mw(CEF)対温度曲線)からのMw(CEF)によって、第1および第2のエチレン系成分のピークがCEF-SCBDプロットで観察された温度(wtCEF(T)対温度曲線)で観察する。したがって、3つの成分の分子量の順序は周知である。反応器の物質収支から第3のエチレン系成分の等式26Cの質量パーセント(Wf)が得られるか、または、それは、代替的にCEFおよびGPCの既知の分布モデルの強度に応じて、等式26Dを用いたデコンボリューションから計算することができ、総重量分率は合計すると1になる必要がある(等式27A-E)。
【0136】
一般に、約20ソルバー反復は、通常、Excel(登録商標)を使用した解において良好な収束に達することがわかった。CEF-MWプロットによるピーク対測定された分子量の順序と、GPC-CCを介して測定された観測されたコモノマー重量%測定値に不一致がある場合、次に、反復が測定値間で一貫した解への収束で進行するように、Excelにおける反復開始点(温度またはlgMW)を変更するか、もしくは幅およびテール係数をわずかに変更することによって、データを調整する必要があるか、または測定の分解能を上げる必要があるか、または追加のピークをCEF-SCBDに追加して、個々の成分の溶出ピーク形状をより良好に近似する場合がある。そのような成分は、個々に調製する場合、いくつかのEMG分布を介して事前にモデル化することができる。
図2(Inv3)は、ピーク分離に関して高分解能のCEF-SCBDおよび低分解能のGPC-MWDを示しており、LSおよびIRとの比演算方法および重量分率を使用して測定された順序は、組み合わせた解において優れた反復収束を可能にする。この場合、30℃での最低密度ピーク(可溶性画分に起因する)は、2つの目立たないように分離されたEMGピークの合計によってモデル化することができ、また各エチレン系成分は、単一のEMGピークからモデル化することができる。
【0137】
追加的に、CEF-MWの予測されるMw(CEF)応答は、各成分のGPC-MWDによる重量平均分子量に、CEF-SCBDプロットに沿った各点で各成分の観測された重量分率を掛けることによって生成され得る。予測されたMw(CEF)は、CEF-MWプロットにおいて測定されたMw(CEF)と一致している必要がある。一連の既知のコポリマー標準に基づいて、溶出温度の関数としてコモノマー組み込みをプロットすることにより、GPC-CCプロットは、CEF-MWおよびCEF-SCBDプロットからの個々の成分の測定されたMw(CEF)およびコモノマー組み込みを使用して予測することもできる。予測されるGPC-CCプロットは、測定されたGPC-CCと一致する必要がある。
【0138】
CEF-SCBDデータのピーク温度対密度の相関は、約1g/10分のメルトインデックス(I2)、またはGPCによる約105,000g/molの公称重量平均分子量、およびGPCによる2.3未満の多分散性(またはMWD)のシングルサイト触媒から重合された一連の線状エチレン系ポリマー標準樹脂を使用して得られる。既知のコモノマー含有量、密度、および0.87~0.96g/ccの密度範囲内の分子量の標準樹脂を少なくとも10個使用する。ピーク温度と密度のデータは、5次多項式曲線に適合させて、較正曲線を得る。
【0139】
ピーク幅とピークテール対ピーク温度との相関は、上記樹脂のピーク幅とピークテール対温度を直線に適合させることにより同様に得られるが、これは、デコンボリューションプロセスの初期推定値に非常に有用である。
【0140】
第1のエチレン系成分および第2のエチレン系成分は、CEF-SCBDデコンボリューションプロットから直接ここに提示された本発明のポリマーにおいて、溶出温度35℃~110℃の最初および3番目のピークとして示された。「粗密度」(密度粗)を、ピーク温度と密度との較正曲線を使用して、これらの観測されたピーク位置から計算した。密度粗(g/cc)を、等式28を使用することにより、分子量(g/mol)の寄与を説明する密度真(g/cc)に補正した。
密度真=密度粗-0.254g/cc×[lg(Mw(GPC)/(g/mol))-5.02](式28)
式中、Mw(GPC)は、GPC-MWDからデコンボリューションされた単一成分の重量平均分子量である。
【0141】
第3のエチレン系成分の密度を、樹脂の既知の密度、第1のエチレン系成分の密度
真、第2のエチレン系成分の密度
真、および以下の等式29に従って、各成分の重量分率に基づいて計算することができる。
【数23】
【0142】
各エチレン系成分のメルトインデックス(I2)は、以下の等式によってこれらの重量平均分子量から推定することができる。
lg(I2/(g/10分))=-3.759×lg(Mw(GPC)/(g/mol))+18.9(式30)
式中、Mw(GPC)は、GPC-MWD曲線からデコンボリューションされた単一成分の重量平均分子量(g/mol)であり、I2は、メルトインデックス(g/10分)である。長鎖分岐の量によって係数が変化し得ることに留意されたい。
【0143】
また、生成物組成を決定するために、同じ反応器条件で単一の触媒を備えた単一の反応器の直接サンプリング、直列二重反応器構成の第1の反応器のサンプリング、または並列二重反応器構成の両方の反応器のサンプリングが、特に、サンプリングポイントを過ぎると反応が効果的に停止する場合、マルチモーダルエチレン系ポリマーの各個別成分の密度、メルトインデックス(I2)、GPC-MWD、およびCEF-SCBDを決定するのに役立つように用いられ得る。これにより、3成分混合物から第1および第2のエチレン系成分のピーク位置を適切に決定できない場合に、より良好な確認が可能となる。
【0144】
オンライン光散乱を備え、SCBDおよび分子量を表す二変数空間で同様の較正を用いて、密度との関係を較正するPolymerChar CFCユニット(Valencia,Spain)等のGPC-TREFでの分析的クロス分別による直接検査および定量は、特に、初期推定値の場合、または特にMWDとSCBDの両方の空間で種の高い共結晶化もしくは低分解能/識別を引き起こす可能性がある場合、各成分の量を測定するため、またはより正確に識別するために使用することができる。(Development of an Automated Cross-Fractionation Apparatus (TREF-GPC) for a Full Characterization of the Bivariate Distribution of Polyolefins.Polyolefin Characterization.Macromolecular Symposia、Volume 257、2007、Pages 13-28.A.Ortin、B.Monrabal、J.Sancho-Tello)適切な分解能を、lgMWと温度空間の両方において得なければならず、検証は、両方の直接組成比演算、例えばIR-5および光散乱分子量測定を通して行うべきである。Characterization of Chemical Composition along the Molar Mass Distribution in Polyolefin Copolymers by GPC Using a Modern Filter-Based IR Detector.Polyolefin Characterization-ICPC 2012 Macromolecular Symposia Volume 330、2013、Pages 63-80、A. Ortin、J.Montesinos、E.Lopez、P.del Hierro、B.Monrabal、J.R.Torres-Lapasio、M.C.Garcia-Alvarez-Coque.を参照すること。成分のデコンボリューションは、一連のシングルサイト樹脂および樹脂ブレンドによって検証された同様の一連の等式および類似の較正を使用する必要がある。
【0145】
ダート
【0146】
フィルムダート落下試験は、自由落下ダートによる衝撃の特定の条件下で、プラスチックフィルムを失敗させるエネルギーを測定する。試験結果は、試験される試験片の50%の破損をもたらすことになる、規定の高さから落ちる飛翔体の重量として表されるエネルギーである。
【0147】
ダート衝撃強度(ダート)は、ASTM D1709方法Aに従って、落下高さ26インチ±0.4インチ(66cm±1cm)、および直径38.10±0.13mmの研磨アルミニウム半球形ヘッドを使用して測定される。試験温度は23℃、湿度は50%相対湿度(RH)であった。
【0148】
割線弾性係数
【0149】
フィルムMD(機械方向)およびCD(横方向)2%割線弾性係数は、20インチ/分のクロスヘッド速度でASTM D882に従って決定された。試験片の幅は1インチ、最初のグリップの間隔は4インチである。報告された2%割線弾性係数値は、5つの測定値の平均であった。試験温度は23℃、湿度は50%RHであった。
【0150】
引張り
【0151】
機械方向(MD)および横方向(CD)の両方の引張特性は、20インチ/分のクロスヘッド速度でASTM D882に従って決定された。試験温度は23℃、湿度は50%RHであった。試験片の幅は1インチ、最初のグリップの間隔は2インチであった。破壊応力は引張強度として記録された。5つの試験片の平均値が報告された。
【0152】
破断
【0153】
破断試験は、ASTM D5748を使用して、直径0.75インチのテフロンコーティングプローブで23℃および50%RHで行った。フィルム試験片を、周囲温度で直径4インチの開口部を備えた空気圧クランプに保持した。衝撃速度は10インチ/分であった。破断エンジャーティ(engerty)は、力-変位曲線の下の面積に基づいて計算された。5つの試験片を試験して平均値を得た。
【0154】
引裂き
【0155】
縦方向(MD)および横方向(CD)の両方のエルメンドルフ引裂き試験は、ASTM D1922、タイプB-一定半径に従って行った。試験温度は23℃、湿度は50%RHであった。
【0156】
実施例
【0157】
以下の実施例は、本開示の特徴を説明するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0158】
使用される市販のポリマー
【0159】
以下の実施例で使用するポリマーを、表1に提供する。
【0160】
【0161】
次の表2は、本発明のマルチモーダルエチレン系ポリマーの第1、第2および第3のエチレン系成分の密度、メルトインデックス(I2)、重量平均分子量(Mw(GPC))、MWD(Mw(GPC)/Mn(GPC))、および重量パーセントの一覧である。
【0162】
【0163】
本発明のポリマーInv1~Inv4を、以下のプロセスに従って、表3に報告されている反応条件に基づいて調製した。反応器構成は、二重直列反応器操作であった。二重直列反応器システムは、1つの満液式、断熱型の連続撹拌タンク反応器(CSTR)と、熱除去を伴う連続撹拌タンク反応器(CSTR)を模倣した1つの満液式、非断熱型の等温循環ループ反応器とで構成されていた。断熱型CSTRが第1の反応器であった。
【0164】
二重直列反応器構成では、第1の重合反応器からの流出液(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶解ポリマーを含有する)は、第1の反応器から流出し、第2の反応器への他の供給物とは別々に第2の反応器に添加される。反応器タイプは、液体充填済みで断熱の連続撹拌槽型反応器(CSTR)、または熱が除去された連続撹拌槽型反応器(CSTR)を模倣した液体充填済みで非断熱の等温循環ループ反応器である。最終的な反応器流出物(二重直列用の第2の反応器流出物)は、好適な試薬(水)を添加しておよびそれとの反応により失活させる区間に流入する。この反応器出口位置では、ポリマーの安定化のために他の添加剤を注入する。
【0165】
触媒の失活および添加剤の添加に続いて、反応器流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発システムに入った。非ポリマー流を、システムから除去した。単離されたポリマー溶融物をペレット化して収集した。
【0166】
全ての原材料(モノマーならびにコモノマー)およびプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度パラフィン溶媒、ISOPAR E)を、反応環境に導入する前に、分子ふるいで精製した。水素を高純度グレードとして加圧して供給し、それ以上精製はしなかった。反応器モノマー供給流を、機械的圧縮機を介して反応圧力を超える圧力まで加圧した。溶媒供給物を、ポンプを介して反応圧力を超えるまで加圧した。コモノマー供給物を、ポンプを介して反応圧力を超えるまで加圧した。個々の触媒成分を、精製された溶媒で特定の成分濃度まで手動でバッチ希釈し、反応圧力を超えるまで加圧した。すべての反応供給流量を、質量流量計で測定し、計測ポンプで独立して制御した。
【0167】
全ての新鮮な溶媒、モノマー、コモノマー、水素、および触媒成分供給物を独立して制御することによって利用した。供給流が熱交換器を通過することによって、各反応器への新鮮な総供給流(溶媒、モノマー、および水素)を温度制御した。各重合反応器への新鮮な総供給物を、1つ以上の場所において反応器に注入した。触媒成分を、他の供給物とは別々に重合反応器に注入した。CSTR反応器内の撹拌機またはループ反応器内の一連の静的混合要素は、反応物質の連続混合を担った。油浴(CSTR反応器用)および熱交換器(ループ反応器用)は、反応器温度制御の微調整を提供した。
【0168】
1つの反応器内の二元一次触媒を利用する反応器については、2つの計算変数である(1)一次触媒1および一次触媒2の総質量流量と、(2)両方の一次触媒の総質量流量のうちの一次触媒1の質量分率とを制御する。両方の一次触媒の総質量流量をコンピュータ制御して、個々の反応器のモノマー転化率を指定した標的に維持した。一次触媒1の質量分率を制御して、その個々の反応器内の各触媒が生成したポリマーの相対質量分率を維持した。二重一次触媒を利用している反応器用の共触媒成分を、両方の一次触媒成分の合計に対する計算した指定のモル比に基づいて供給した。
【0169】
【0170】
本発明のポリマーを製造するための触媒A、触媒Bおよび触媒Cの式を以下に示す。共触媒を表4に列挙する。
【化3】
【0171】
【0172】
2ミルの多層インフレーションフィルムを、5層のLabTechインフレーションフィルムラインを使用して作製した。ラインは、5つの単軸押出機で構成されていた。2つの外部押出機(押出機Aおよび押出機E)の直径は25mmであり、3つのコア押出機(押出機B、押出機C、および押出機D)の直径は20mmであった。5つ全ての押出機のL/D比は30/1であった。環状ダイは直径75mmであり、二重リップエアリング冷却システムを使用した。ダイリップの間隙は2mmで、ブローアップ比(BUR)は2.5であった。フロストラインの高さは、11インチであった。Inv1およびInv2の合計出力速度は、30ポンド/時間であった。Inv3およびInv4の合計出力速度は、25ポンド/時間であった。溶融温度は230℃であり、ダイ温度は230℃に設定された。同じポリマーを5つすべての押出機に同時に供給して、単層フィルムを作製した。押出機のスループット速度比は、20%/20%/20%/20%/20%であった。
【0173】
Inv1~Inv5のフィルム特性を表5に列挙する。
【0174】
【0175】
添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると認識されているが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造するための方法であって、
エチレンモノマー、少なくとも1種のC
3
~C
12
コモノマー、溶媒、第1の触媒、第2の触媒、および任意選択で水素を第1の溶液重合反応器に通して、バイモーダルエチレン系ポリマーを製造することであって、前記バイモーダルエチレン系ポリマーは、前記第1の触媒から重合された密度(ρ
1
)を有する第1のエチレン系成分、および前記第2の触媒から重合された密度(ρ
2
)を有する第2のエチレン系成分を含み、ここでρ
1
<ρ
2
である、バイモーダルエチレン系ポリマーを製造することと、
前記バイモーダルエチレン系ポリマー、エチレンモノマー、少なくとも1種のC
3
~C
12
コモノマー、溶媒、第3の触媒、および任意選択で水素を第2の溶液重合反応器に通して、前記マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造することであって、前記マルチモーダルエチレン系ポリマーは、前記第1のエチレン系成分、前記第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分を含み、前記第3のエチレン系成分は、密度(ρ
3
)を有する、前記マルチモーダルエチレン系ポリマーを製造することと、を含む方法。
[2] 前記マルチモーダルエチレン系ポリマーが、少なくとも4、または好ましくは4~10の分子量分布(M
w(GPC)
/M
n(GPC)
)を有する、[1]に記載の法。
[3] 前記マルチモーダルエチレン系ポリマーが、0.905~0.930g/ccの密度を有する、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記マルチモーダルエチレン系ポリマーが、0.1~10g/10分のメルトインデックスを有する、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5] ρ
2
が、ρ
1
より少なくとも0.03g/cc高い、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6] ρ
2
が、ρ
1
より少なくとも0.04g/cc高い、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7] ρ
3
が、0.910~0.940g/ccである、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記第1のエチレン系成分が、100,000~200,000g/molの重量平均分子量(M
w(GPC)
)を有する、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記第2のエチレン系成分が、100,000~363,000g/molの重量平均分子量(M
w(GPC)
))を有する、[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 前記第3のエチレン系成分が、10,000~50,000g/molの重量平均分子量(M
w(GPC)
))を有する、[1]~[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記第1の溶液重合反応器、前記第2の溶液重合反応器、またはそれらの両方が、ループ反応器を含む、[1]~[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 前記第1の溶液重合反応器、前記第2の溶液重合反応器、またはそれらの両方が、連続撹拌タンク反応器を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の方法。
[13] 前記第1、第2、または第3のエチレン系成分の少なくとも2つのコモノマー組み込みが、0.5モル%超であり、前記C
3
~C
12
コモノマーが、オクテンまたはヘキセンである、[1]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14] 前記マルチモーダルエチレン系ポリマーが、20~55重量%の前記第1のエチレン系成分、10~40重量%の前記第2のエチレン系成分、35~65重量%の前記第3のエチレン系成分を含む、[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15] 前記マルチモーダルエチレン系ポリマーを前記第2の溶液重合反応器の下流の管状反応器に通すことをさらに含む、[1]~[14]のいずれかに記載の方法。