(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】黄斑変性症を評価するための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240408BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240408BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240408BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240408BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240408BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
G01N33/68 ZNA
G01N33/50 P
A61K45/00
A61P37/02
A61P27/02
C12N15/12
(21)【出願番号】P 2020563520
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 EP2019062048
(87)【国際公開番号】W WO2019215330
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-05-10
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】522294246
【氏名又は名称】コンプリメント・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ビショップ,ポール
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-544280(JP,A)
【文献】特表2009-514888(JP,A)
【文献】特表2008-529536(JP,A)
【文献】国際公開第2009/118552(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 - 33/98
A61K 45/00
A61P 37/02
A61P 27/02
C12N 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象が補体関連眼疾患を有するか、あるいは発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法であって、
前記対象の血液または肝臓組織中のFHR-4のレベルを決定するステップを含み、
ここにおいて、参照値と比較した場合の対象のFHR-4のレベルの増加は、対象が補体関連眼疾患を有する又は発症するリスクが増加していることを示す、
ここにおいて、参照値は、同対象から前もって得られるか、あるいは、補体関連眼疾患を有しない対象におけるFHR-4のレベルを決定することによって得られる、
前記方法。
【請求項2】
方法が、前記対象の血液中のFHR-4タンパク質の濃度を測定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
15μg/ml超のFHR-4濃度が、前記対象が補体関連眼疾患を発症するリスクが高いこと、あるいは、補体関連眼疾患を有すること、を示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
FHR-4のレベルおよび/または濃度が、対象からの血液由来試料において決定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
FHR-4のレベルおよび/または濃度がインビトロで決定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記補体関連眼疾患が、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、脈絡膜血管新生(CNV)、および早期発症黄斑変性症(EOMD)から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
方法が、対象においてAMDおよび/またはEOMDおよび/または黄斑ジストロフィーに関連する1つまたは複数の遺伝因子の存在または非存在を判定するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
対象において補体関連眼疾患を処置または予防する方法で使用するための、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤であって、前記対象からの試料は、増加したレベルのFHR-4、および/または、増加したレベルのFHR-4をコードする遺伝子、を有するまたは有すると判定されている、ここにおいて、前記試料は、
(i)血液試料若しくは血液に由来する試料;または
(ii)肝臓からの組織を含む試料
である、
前記薬剤。
【請求項9】
前記補体関連眼疾患が、加齢性黄斑変性症(AMD)または早期発症黄斑変性症(EOMD)または黄斑ジストロフィーである、請求項8に記載の薬剤。
【請求項10】
前記AMDが、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、および脈絡膜血管新生(CNV)から選択される、請求項9に記載の薬剤。
【請求項11】
前記対象は、血中において、同対象から前もって得られた、あるいは、補体関連眼疾患を有しない対象におけるFHR-4のレベルを決定することによって得られた参照値と比較して、FHR-4のレベルが増加している、請求項8から10のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項12】
前記対象が、血中において、同対象から前もって得られた、あるいは、補体関連眼疾患を有しない対象におけるFHR-4のレベルを決定することによって得られた参照値と比較して、FHR-4のレベルが増加していると判定されている、請求項11に記載の薬剤。
【請求項13】
前記薬剤が、以下の特性:CFHR4遺伝子の発現を阻害する、FHR-4 mRNAを分解する、FHR-4タンパク質に結合する、FHR-4タンパク質を捕捉する、血液中のFHR-4タンパク質を捕捉する、FHR-4タンパク質の結合について競合する、FHR-4タンパク質の活性を遮断する、血液中のFHR-4の濃度を低減する、FHR-4タンパク質が血液を離れる能力を低減する、FHR-4タンパク質が眼に到達する能力を低減する、眼中のFHR-4の量を低減する、FHR-4タンパク質がBrMに入る能力を低減する、FHR-4媒介シグナル伝達を阻害する、C3bが関与する反応を調節する、FHR-4およびC3bが関与する反応を調節する、FHR-4タンパク質がC3bに結合する能力を低減する、C3b結合についてFHR-4タンパク質と競合する、C3bからのFHR-4の解離を促進する、C3コンバターゼ活性化を低減する、C3bBbの産生を低減する、C3非活性化を増加させる、iC3bの産生を増加させる、補体活性化を減少させる、および/または補体経路を不活化する、のうちの1つまたは複数を有する、請求項8から12のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項14】
前記FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤が、アンチセンス核酸、アプタマー、抗原結合分子、捕捉剤、および/またはデコイ受容体から選択される、請求項11から13のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項15】
前記FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤は、FHR-4についての捕捉剤および/またはデコイ受容体である、請求項14に記載の薬剤。
【請求項16】
対象に対して、FHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤による処置について対象を選択するための方法であって、
前記対象からの試料中のFHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定し、そして、
薬剤による処置について対象を選択するステップを含む、
ここにおいて前記試料は、
(i)血液試料若しくは血液に由来する試料;または
(ii)肝臓からの組織を含む試料
である、
前記方法。
【請求項17】
前記対象から前もって得られた、あるいは、補体関連眼疾患を有しない対象におけるFHR-4のレベルを決定することによって得られた参照値と比較して、FHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年5月10日提出のGB1807611.7からのおよび2019年3月1日提出のGB1902790.3からの優先権を主張するものであり、前記特許文献の内容および要素はあらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は分子生物学および医学の分野に関する。さらに具体的には、本発明は補体駆動型障害を発症するリスクを評価するための方法および前記障害を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
補体系は自然免疫系の一部であり、微生物の除去、炎症過程、細胞残渣の処分および適応免疫の調節に大きな役割を果たしている(Ricklin D.、Nat.Immunol.2010年、11、785~797頁)。補体は、免疫系タンパク質C3の炎症促進性分解生成物であるタンパク質C3bの表面上への蓄積により活性化される。C3bは他のタンパク質と会合して、補体応答を活性化し増幅するためのコンバターゼ酵素複合体を形成し、補体カスケードの増幅ループを開始する。これにより最終的に、細胞/組織破壊および局所的炎症反応が生じる。したがって、補体系の調節解除および欠損、例えば、過剰活性化は、多数の炎症性、自己免疫、神経変性および感染性障害を推進する重要な要素として関係している(McGeer PLら、Neurobiol Aging.2017年、52:12~22頁)。
【0004】
黄斑変性症、例えば、加齢性黄斑変性症(AMD)は、一部、眼組織への補体媒介攻撃により引き起こされると考えられている。AMDは、先進国では失明の主な原因であり、現在全世界の盲人登録の8.7%の原因であり、2020年までに1億9600万人が冒され、2040年までに2億8800万人に増加すると推定されている(Wongら、Lancet Glob Heal(2014)2:e106~16頁)。AMDは、眼の後ろの網膜の中心部分である斑の進行性破壊として現れ、中心視力の喪失をもたらす。この疾患の初期段階では斑に、最初に脈絡毛細管における血管の喪失(Whitmoreら、Prog Retin Eye Res(2015)45:1~29頁);脈絡膜で見られる毛細管の層(外網膜に酸素及び栄養を供給する高度に血管新生化された層)を含む形態変化が見られる。脈絡毛細管は、細胞外マトリックスの薄い(2~4μm)無細胞5層シートであるブルッフ膜(BrM)により、代謝的に活性な網膜色素上皮(RPE)から分離されている。BrMは、2つの主要な機能:RPEの基層および血管壁を果たす。BrMの構造および機能は、例えば、Curcio and Johnson、Structure、Function and Pathology of Bruch’s Membrane、In: Ryanら、(2013)、Retina、Vol.1、Part2:Basic Science and Translation to Therapy.第5版.London:Elsevier、466~481頁に概説されており、前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。
【0005】
AMDにおける補体の役割は、例えば、Zipfelら、Chapter 2、in Lambris and Adamis(編)、Inflammation and Retinal Disease:Complement Biology and Pathology、Advances in Experimental Medicine and Biology 703、Springer Science+Business Media、LLC(2010)により概説されており、前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。AMDの肝要な特徴は、細胞/組織破壊および局所的炎症反応を含む、過活動性の補体を意味している。初期AMDの折り紙付きの病変は、ドルーゼンと呼ばれるが、RPF層に隣接するBrM内で発症する(Birdら、Surv Ophthalmol 1995年、39(5):367~374頁)。ドルーゼンは脂質と細胞の残骸の蓄積から形成されており、帯状の補体活性化産物を含む(Andersonら、Prog Retin Eye Res 2009年、29:95~112頁;Whitcupら、Int J Inflam 2013年、1~10頁)。BrM内にドルーゼンが存在するせいで脈絡膜からこの細胞外マトリックスを横切ってRPE細胞までの栄養の流れが中断され、このために細胞機能障害および最終死がもたらされ、視力を失う。
【0006】
遺伝子変更/変異はAMDについての主要なリスク因子である。最近、34の遺伝子座にわたって45のありふれた一塩基多型(SNP)および7つの希少な変異体がこの状態に関連付けられており、進行AMDリスクにおける変異性の最大34%を説明している(Fritscheら、Nat Genet.2016年;48(2):134~143頁)。多くのAMD関連遺伝子変更および変異は、補体因子H(CFH)および補体因子H関連1~5(CFHR1~5)遺伝子を含む染色体1q31.3上の補体活性化の制御因子(RCA)遺伝子座などの補体カスケードの成分をコードする遺伝子中および周囲にある(Schramm,ECら、Mol Immunol 2014年、61:118~125頁;McHarg,Sら、Mol Immunol 2015年、67:43~50頁;前記文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれる)。
【0007】
CFH/CFHR1~5遺伝子によりコードされるタンパク質は補体制御機能を発揮する。CFH遺伝子は、2つのタンパク質、補体活性化の主な血漿制御因子であるFHならびに脈絡毛細管のBrMおよび細胞外マトリックスで優勢であるFH様タンパク質1(FHL-1)と呼ばれるもっと小さなスプライスバリアントをコードする(Clarkら、J Immunol.2014年;193(10):4962~70頁;McHargら、上記参照)。CFHR1~5遺伝子は、主に肝細胞により合成される5つの分泌血漿タンパク質(FHR-1からFHR-5)のグループをコードする。FHRは、FHのC3b結合ドメインといくらかの配列相同性を保持しており、補体活性化を増強すると考えられている(Skerkaら、Mol Immunol.2013年、56:170~180頁)。
【0008】
「ドライ型」AMDは、地図状萎縮としても知られるが、後期AMD症例の約90%を表す。後期症例の残りの百分率では、ドルーゼンの存在が脈絡膜血管新生(CNV)を促進し、そこではRPE細胞による血管内皮成長因子(VEGF)の合成の増加により脈絡膜/脈絡毛細管からの新しい血管の成長が促進されて、BrMを突き破って網膜に至る。これらの新しい血管は漏れて最終的に瘢痕組織を形成し、これは「ウェット型」(新生血管のまたは滲出性の)AMDと呼ばれる。「ウェット型」AMDは、症例の約10%を表すだけであるが、最も悪性型の後期AMDであり、「ドライ型」AMDとは異なる疾患特徴を有する。ウェット型AMDには処置があり、そこでは、例えば、眼の硝子体中への抗VEGF剤の注射によりこれらの血管の成長を遅くするまたは逆戻りさせることができるが、そもそも血管の形成を妨げることはできない。地図的萎縮(「ドライ型」AMD)は依然として治療不能である。
【0009】
本発明は、上記の考慮すべき事柄に照らして考案された。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、バイオマーカーとしてFHR-4レベルを使用して、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法を提供する。
一側面では、本発明は、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法であって、前記対象の血液中のFHR-4のレベルを決定するステップを含む方法を提供する。
【0011】
一部の態様では、方法は、対象の血液中のFHR-4のレベルの増加を判定するステップを含む。一部の態様では、FHR-4のレベルの増加は、補体関連障害を発症するリスクが増加していることを示す。
【0012】
一部の態様では、方法は、対象の血液中のFHR-4の量を決定するステップを含む。種々の態様では、方法は、前記対象の血液中のFHR-4タンパク質の濃度を測定するステップを含む。一部の態様では、15μg/ml超のFHR-4濃度は、前記対象が前記障害を発症するリスクが高いことを示す。他の態様では、5~15μg/mlのFHR-4濃度は、前記対象が障害を発症するリスクが中位であることを示す、および/または5μg/ml未満のFHR-4濃度は、前記対象が障害を発症するリスクが低いことを示す。
【0013】
一部の態様では、FHR-4のレベル、量および/または濃度は、対象からの血液由来試料において決定される。ある特定の態様では、方法は、対象からの血液由来試料または生体試料を入手するステップを含む。
【0014】
種々の態様では、FHR-4のレベル、量および/または濃度はインビトロで決定される。
一部の態様では、方法は、前記対象においてFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む。
【0015】
別の側面では、本発明は、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法であって、前記対象においてFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む方法を提供する。一部の態様では、FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルの増加は、前記対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。一部の態様では、FHR-4をコードする遺伝子の発現の参照レベルと比べた場合、FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルの増加は、前記対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。
【0016】
種々の態様では、補体関連障害は、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、脈絡膜血管新生(CNV)、早期発症黄斑変性症(EOMD)、黄斑ジストロフィー、緑内障、糖尿病性網膜症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、自己免疫ブドウ膜炎、膜性増殖性糸球体腎炎II型(MPGN II)、敗血症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、IgA腎症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、C3腎炎因子糸球体腎炎(C3 NF GN)、遺伝性血管性浮腫(HAE)、後天性血管浮腫(AAE)、脳脊髄炎、アテローム動脈硬化症、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、およびアルツハイマー病から選択される。一部の態様では、方法は、対象において、AMDおよび/またはEOMDに関連する1つまたは複数の遺伝因子の存在または非存在を判定するステップをさらに含む。
【0017】
一部の態様では、本明細書に提供される方法のいずれも、補体関連障害を処置または予防するための処置ステップを含んでもよい。一部の態様では、処置ステップは、補体標的化治療薬ならびに/またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤を対象に投与するステップを含む。
【0018】
別の側面では、本発明は、FHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している対象において補体関連障害を処置または予防する方法で使用するための補体標的化治療薬を提供する。対象において補体関連障害を処置または予防するための方法であって、FHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している処置を受ける対象に、有効量の補体標的化治療薬を投与するステップを含む方法も提供される。
【0019】
一部の態様では、対象は、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定されている。
さらなる側面では、本発明は、FHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している対象において補体関連障害を処置または予防する方法における使用のための、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤を提供する。対象において補体関連障害を処置または予防するための方法であって、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している対象に、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる有効量の薬剤を投与するステップを含む方法も提供される。
【0020】
一部の態様では、対象は、FHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定される。一部の態様では、FHR-4のレベルの増加は、補体関連障害を発症するリスクが増加していることを示す。
【0021】
一部の態様では、方法は、対象の血液中のFHR-4の量を、任意選択的にインビトロで決定するステップを含む。種々の態様では、方法は、前記対象の血液中のFHR-4タンパク質の濃度を、任意選択的にインビトロで測定するステップを含む。一部の態様では、15μg/ml超のFHR-4濃度は、前記対象が前記障害を発症するリスクが高いことを示す。他の態様では、5~15μg/mlのFHR-4濃度は、前記対象が障害を発症するリスクが中位であることを示す、および/または5μg/ml未満のFHR-4濃度は、前記対象が障害を発症するリスクが低いことを示す。
【0022】
種々の態様では、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤は、以下の特性:CFHR4遺伝子の発現を阻害する、FHR-4 mRNAを分解する、FHR-4タンパク質に結合する、FHR-4タンパク質を捕捉する、血液中のFHR-4タンパク質を捕捉する、FHR-4タンパク質の結合について競合する、FHR-4タンパク質の活性を遮断する、血液中のFHR-4の濃度を低減する、FHR-4タンパク質が血液を離れる能力を低減する、FHR-4タンパク質が眼に到達する能力を低減する、眼中のFHR-4の量を低減する、FHR-4タンパク質がBrMに入る能力を低減する、FHR-4媒介シグナル伝達を阻害する、C3bが関与する反応を調節する、FHR-4およびC3bが関与する反応を調節する、FHR-4タンパク質がC3bに結合する能力を低減する、C3b結合についてFHR-4タンパク質と競合する、C3bからのFHR-4の解離を促進する、C3コンバターゼ活性化を低減する、C3bBbの産生を低減する、C3非活性化を増加させる、iC3bの産生を増加させる、補体活性化を減少させる、および/または補体経路を不活化する、のうちの1つまたは複数を有する。
【0023】
一部の態様では、薬剤は、アンチセンス核酸、アプタマー、抗原結合分子、捕捉剤、および/またはデコイ受容体から選択される。
種々の態様では、補体関連障害は、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、脈絡膜血管新生(CNV)、早期発症黄斑変性症(EOMD)、黄斑ジストロフィー、緑内障、糖尿病性網膜症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、自己免疫ブドウ膜炎、膜性増殖性糸球体腎炎II型(MPGN II)、敗血症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、IgA腎症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、C3腎炎因子糸球体腎炎(C3 NF GN)、遺伝性血管性浮腫(HAE)、後天性血管浮腫(AAE)、脳脊髄炎、アテローム動脈硬化症、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、およびアルツハイマー病から選択される。
【0024】
対象において、補体関連障害の発病のリスク、補体関連障害の疾患進行のリスク、および/または補体関連障害の存在を診断する方法であって、対象の血液中においてFHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む方法も提供される。一部の態様では、方法は、対象がFHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している場合には、有効量の補体ターゲティング治療薬またはFHR-4の量を減少させるおよび/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤を投与するステップをさらに含む。一部の態様では、方法は、対象から血液試料を入手し、試料中のFHR-4のレベル/FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを測定するステップを含む。
【0025】
別の側面では、本発明は、補体標的化治療薬または対象にとってFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤による処置について対象を選択する方法であって、対象においてFHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定し、任意選択的に、FHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している場合には、治療薬または薬剤による処置について対象を選択するステップを含む方法を提供する。
【0026】
補体関連障害を有するまたは有すると疑われる対象が、補体標的化治療薬またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤による処置に応答する可能性があるかどうかを判定するための方法であって、患者血液中のFHR-4のレベルを決定する、および/または患者におけるFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む方法も提供される。
【0027】
対象が、補体標的化治療薬またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤による治療的処置に応答しているかどうかを判定するための方法であって、処置が施された後で対象の血液中のFHR-4のレベルを決定するステップを含む方法も提供される。
【0028】
別の側面では、本発明は、対象において加齢性黄斑変性症(AMD)または早期発症黄斑変性症(EOMD)を処置または予防する方法における使用のための、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤を提供する。一部の態様では、AMDは、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、および脈絡膜血管新生(CNV)から選択される。一部の態様では、FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤は、FHR-4についての捕捉剤および/またはデコイ受容体である。
【0029】
本発明は、記載されている側面および好ましい特長の組合せを含むが、そのような組合せが明らかに容認できないまたははっきりと避けられている場合を除く。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の原理を図解する態様および実験は、この時点で、添付の図を参照して考察される。
【
図1A】は、CFHR4の遺伝子発現分析を示すグラフである。AMDおよび非AMD対象由来の眼組織でのCFHR4およびCFHの遺伝子発現分析。遺伝子発現は正規化された発現レベルに対して測定された。
【
図1B】は、CFHR4の遺伝子発現分析を示すグラフである。27のヒト組織でのCFHR4の遺伝子発現分析。
【
図2A】は、免疫組織化学により検出された眼組織でのFHR-4タンパク質の画像である。スケールバーは20μmに等しい。脈絡毛細管の毛細管間中隔およびBrMでのFHR-4の局在化を示す画像。
【
図2B】は、免疫組織化学により検出された眼組織でのFHR-4タンパク質の画像である。スケールバーは20μmに等しい。ドルーゼでのFHR-4局在化を示す画像。
【
図3】は、固定化されたC3bに結合するFHR-4の表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムである。
【
図4】は、漸増濃度のFHR-4がC3bとFH/FHL-1の結合を打ち負かすことができる固相結合アッセイを示すグラフである。
【
図5】は、C3b分解により測定される、FIについての補因子としてのFHL-1の活性に対するFHR-4の効果を説明する図である。
【
図6】は、C3コンバターゼ形成におけるFHR-4の提唱される役割を示す模式図である。
【
図7A】は、AMDおよび非AMD対象におけるFHR-4レベルを示すグラフである。進行型AMDを抱えたまたはAMDのない187の対象(「発見コホート(discovery cohort)」の血漿中のFHR-4濃度。
【
図7B】は、AMDおよび非AMD対象におけるFHR-4レベルを示すグラフである。発見コホート由来の血漿FHR-4濃度の百分率分布の分析。
【
図7C】は、AMDおよび非AMD対象におけるFHR-4レベルを示すグラフである。AMDを抱えたまたはAMDのない518の対象(「フルコホート(full cohort)」)由来の血漿FHR-4濃度の百分率分布の分析。
【
図8A】は、HuH肝臓細胞でのsiRNAノックダウン後のCFHR4の発現を示すグラフである。個別のもしくはプールされたsiRNA1~6、またはその等価なsiRNA負の対照(スクランブルsiRNA)のトランスフェクション後のCFHR4の発現。CFHR4の発現はGAPDH発現に対して正規化されている。
【
図8B】は、HuH肝臓細胞でのsiRNAノックダウン後のCFHR4の発現を示すグラフである。siRNA負の対照(スクランブルsiRNA)に関して、個別のもしくはプールされたsiRNA1~6のトランスフェクション後のCFHR4の百分率発現。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、補体関連障害を検出、診断および処置することに関する。補体活性化により駆動される障害の発病または進行のリスクを判定するための方法、ならびにそのような障害を処置または予防するための方法が本明細書で提供される。一部の側面では、加齢性黄斑変性症(AMD)および早期発症黄斑変性症(EOMD)などの黄斑変性症の発症のリスクを判定するための方法、ならびにAMD/EOMDを処置または予防する方法が提供される。
【0032】
発明者らは、FHR-4が補体活性化の正調節因子であることを確定した。FHR-4は、C3コンバターゼの形成および補体増幅ループの進行を刺激するFH媒介C3b分解を妨げることが本明細書で明らかにされる。組織における高レベルのFHR-4は局所的炎症反応および細胞溶解を促進して、補体活性化に関連する障害をもたらす可能性がある。
【0033】
発明者らは、FHR-4は、補体活性化により冒された組織、例えば、AMDの眼において局所的に合成されないことを確定した。代わりに、FHR-4は肝臓で発現され、次に、身体中の血液に輸送される。発明者らは、病理的補体活性化の最終部位が特定の組織にあるまたは位置することになるとしても、循環FHR-4レベルを、補体関連障害を発症するリスクの指標として使用できることを発見した。補体活性化を低減するためのおよび/またはFHR-4のレベルを低減するための処置は、補体関連障害の発症のリスクを低減する、または補体関連障害を改善する可能性がある。
【0034】
多くの補体関連障害の発症は、患者における多数の遺伝子変更および/または変異に関連している。多くの遺伝子中のおよび周辺の遺伝子変異は特定の障害と関連していることがある。同じ障害に罹っている患者たちには遺伝子変更の数および種類の大量の変異が存在しうる。例えば、AMDリスクは、34を超える遺伝子座での種々のSNPと関連してきた(Fritscheら、Nat Genet.2016年;48(2):134~143頁)。したがって、補体関連障害を抱えたすべての患者を従来の「画一的な」様式で処置するのは困難になりうる。
【0035】
したがって、本発明は、補体関連障害を処置するため、補体標的化薬剤またはFHR-4レベルを低減する薬剤での処置に応答すると予測される患者下位群の判定にも関する。発明者らは、高いレベルの全身FHR-4は、AMD患者の特定のサブセットでのAMDリスクの増加を示していると確定した。補体系またはFHR-4のレベルを標的にする処置の有効性は、先ず高いレベルのFHR-4を示す患者を特定することにより最大にすることができる。
C3bおよびFHR-4
タンパク質C3は補体系において中心的役割を果たしており、自然免疫に寄与している。3つの補体経路、古典的、第二およびレクチンすべてが、C3を強力なアナフィラトキシンであるC3a、およびC3bに切断する。C3bが不活化されなければ、C3bは因子Bと会合して第二経路C3コンバターゼC3bBbを形成することができる。補体のC3b活性化は、BrMおよび脈絡毛細管の毛細血管間の隔壁などの非細胞構造体上で起こることがある。活性C3コンバターゼは、増幅ループと呼ばれる、正のフィードバックサイクルを促進する。抑制されずに継続するままになると、このサイクルは補体の終末経路の開始を刺激し、このために炎症反応および細胞溶解が生じる。
【0036】
細胞は、補体カスケードを下方調節することができるいくつかの細胞表面タンパク質を有する。C3bは、因子I(FI)ならびに因子H(FH)および因子H様タンパク質1(FHL-1)などの関連可溶性補因子によりiC3bに不活化されることができる。iC3bは、C3コンバターゼ会合に関与することができず、白血球動員およびデブリ除去を媒介できるオプソニンである。iC3bは、さらにC3cおよびC3dに分解され、この後者はB細胞応答を増強するのに役割を担っている。
【0037】
FHRタンパク質は、補体活性化の正調節因子として作用し、C3コンバターゼ形成を可能にし、増幅ループを駆動すると提唱されてきた。
ヒト補体因子H関連タンパク質4(FHR-4またはCFHR-4;Uniprot:Q92496、エントリーバージョン145(28 Feb 2018)、シーケンスバージョン3(22 Jan 2014))は、ショートコンセンサスリピート(SCR)ドメイン(スシドメインまたは補体制御タンパク質(CCP)ドメインとしても知られる)を含む血漿糖タンパク質の因子Hファイミリーに属する。
【0038】
FHR-4は、ヒト血漿において2つの異なる糖タンパク質:9つのSCRで構成されているFHR-4(Uniprot:Q92496-1;配列番号1)と呼ばれる578アミノ酸(86kDa)長アイソフォームならびにFHR-4AのSCR1および6~9に一致する5つのSCRで構成されているFHR-4B(Uniprot Q92496-3;配列番号3)と呼ばれる331アミノ酸(約45kDa)短いほうのアイソフォームとして検出される。FHR-4Aの第2のアイソフォーム(配列番号2)は20位に欠失(Glu)がある。ヒトFHR-4は19アミノ酸シグナルペプチドを含有し、このペプチドは切断されて成熟FHR-4タンパク質(配列番号5;配列番号6)を生じる。FHR-4タンパク質はCFHR4遺伝子(NCBI Gene ID:10877)によりコードされている。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「FHR-4」は、FHR-4Aアイソフォーム1、FHR-4Aアイソフォーム2またはFHR-4Bのうちの少なくとも1つを含み、好ましくは、FHR-4Aアイソフォーム1および2ならびにFHR-4Bを含む。「FHR-4」とは、任意の種由来のFHR-4のことであり、任意の種由来のFHR-4のアイソフォーム、断片、変異体または相同体を含む。好ましい態様では、「FHR-4」とはヒトFHR-4のことである。
【0040】
FHR-4アイソフォームは、FHおよびFHR-1のN終端補体阻害性ドメインSCR1~4に相同なSCRを欠く。しかし、FHR-4タンパク質は、C3b/C3d結合部位を含有するC終端FHドメインSCR19~20と確かに、相同性を共有し、FHR-4AとFHR-4Bの両方はC3bに結合することが明らかにされている(Hellwage J.、FEBS Lett.1999年、462、345~352頁およびHellwage J.、J.Immunol.2002年、169、6935~6944頁;HebeckerおよびJozsi、Biol Chem.2012年、287(23):19528~36頁)。さらに、FHR-4は、報告によれば、C3コンバターゼの会合のためのプラットフォームとして役立つ(HebeckerおよびJozsi、J Biol Chem.2012年、287(23):19528~36頁)。
補体関連障害を評価するための方法
一部の側面では、本発明は、全身FHR-4レベルを使用して補体関連障害の発病のリスク、または進行のリスクを評価するための方法を提供する。
【0041】
方法は、補体関連障害の発病または進行のリスクを診断する、予兆を示すおよび/または予測するでもよい。診断法を使用すれば、疾患の診断または重症度を決めることができ、予後法は標準的処置条件下で限定された臨床人口での可能性のある疾患経過を予想する一助となり、予測法は有効性および/または安全性という点で処置に対する可能性のある応答を予測し、このようにして臨床判断を支援する。
【0042】
本発明の方法は、全身FHR-4のレベルを、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するためのバイオマーカーとして使用する。用語「障害」、「疾患」および「状態」は互換的に使用されてもよく、徴候または症状の同定可能な群により特徴付けうる身体の部分、器官または系の病理学的問題のことである。用語「補体関連障害」とは、補体系での欠損または異常を含むまたはこれらから生じる障害、疾患または状態のことである。一部の態様では、補体関連障害は、補体活性化または補体過剰活性化により駆動される障害である。
【0043】
補体関連障害は、古典的、第二および/またはレクチン補体経路の崩壊を含んでよい。一部の場合、傷害は、補体系の調節成分の欠損に関連付けられることがある。一部の態様では、傷害は、第二補体経路に関連する障害、第二補体経路の崩壊および/または第二補体経路の調節成分の欠損に関連付けられることがある。一部の場合、障害は、C3、C3b、FH、FHL-1、FI、CR1、CD46、CD55、C4BP、因子B、因子D、FHR-1、FHR-2、FHR-3、FHR-5、SPICE、VCP(またはVICE)および/またはMOPICEのうちの1つまたは複数に関連付けられる。一部の場合、障害は、C3、C3b、FH、FHL-1、FI、CR1、CD46、CD55、C4BP、因子B(FB)、因子D(FD)、FHR-1、FHR-2、FHR-3、FHR-5、SPICE、VCP(またはVICE)および/もしくはMOPICEのうちの1つもしくは複数の活性の欠損もしくは異常に関連付けられる、またはそこではこれらのタンパク質のうちの1つもしくは複数が病理学的に関係している。
【0044】
一部の態様では、障害は、C3もしくはC3含有複合体に関連する障害、C3もしくはC3含有複合体に関連する活性/応答、またはC3もしくはC3含有複合体に関連する活性/応答の産物でもよい。すなわち、一部の態様では、障害は、C3、C3含有複合体、C3もしくはC3含有複合体に関連する活性/応答、または前記活性/応答の産物が病理学的に関係している障害である。一部の態様では、障害は、制御状態と比べて、C3もしくはC3含有複合体の増加したレベル、C3もしくはC3含有複合体に関連する活性/応答の増加したレベル、またはC3もしくはC3含有複合体に関連する活性/応答の産物の増加したレベルに関連付けられてもよい。
【0045】
一部の態様では、障害は、C3bもしくはC3b含有複合体に関連する障害、C3bもしくはC3b含有複合体に関連する活性/応答、またはC3bもしくはC3b含有複合体に関連する活性/応答の産物でもよい。すなわち、一部の態様では、障害は、C3b、C3b含有複合体、C3bもしくはC3b含有複合体に関連する活性/応答、または前記活性/応答の産物が病理学的に関係している障害である。一部の態様では、障害は、制御状態と比べて、C3bもしくはC3b含有複合体の増加したレベル、C3bもしくはC3b含有複合体に関連する活性/応答の増加したレベル、またはC3bもしくはC3b含有複合体に関連する活性/応答の産物の増加したレベルに関連付けられてもよい。
【0046】
一部の態様では、障害は、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/もしくはCD46に関連する障害、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/もしくはCD46に関連する活性/応答、またはFH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/もしくはCD46に関連する活性/応答の産物でもよい。一部の態様では、障害は、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/もしくはCD46、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/もしくはCD46に関連する活性/応答、または前記活性/応答の産物が病理学的に関係している障害である。一部の態様では、障害は、制御状態と比べて、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/もしくはCD46の減少したレベル、FH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/もしくはCD46に関連する活性/応答の減少したレベル、またはFH、FHL-1、FI、FB、FD、CR1および/もしくはCD46に関連する活性/応答の産物の減少したレベルに関連付けられてもよい。
【0047】
一部の態様では、障害は、制御状態と比べてC3、C3b、C3コンバターゼおよび/またはC3bBbの増加したレベルと関連付けられる。一部の態様では、障害は、制御状態と比べてiC3bの減少したレベルと関連付けられる。
【0048】
障害は眼の障害であることもある。一部の態様では、処置されるまたは予防される疾患または状態は、補体関連眼疾患である。一部の態様では、処置されるまたは予防される疾患または状態は黄斑変性症である。一部の態様では、障害は、加齢性黄斑変性症(AMD)、脈絡膜血管新生(CNV)、黄斑ジストロフィー、および糖尿病黄斑症から選択されてもよい、すなわち、これらの1つまたは複数である。本明細書で使用される場合、用語「AMD」は、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、および「ウェット型」(すなわち、新生血管または滲出性)AMDを含み、そのそれぞれがそれ自体本明細書に記載される通りに検出され、処置されおよび/または予防される障害であってよい。一部の態様では、処置されるまたは予防される疾患または状態は、上記の疾患/状態、例えば、「ドライ型」と「ウェット型」AMDの組合せである。一部の態様では、処置されるまたは予防される疾患または状態は、「ウェット型」AMDでも脈絡膜血管新生でもない。AMDは、50歳以上の対象において視力喪失を引き起こすと一般的に確定されている。一部の態様では、処置される対象は50歳以上である、すなわち、少なくとも50歳である。
【0049】
本明細書で使用される場合、「初期AMD」とは、RPE層に隣接するブルッフ膜内に、一般に約200μmまでの直径のある中型のドルーゼンの存在に特徴がある段階のAMDのことである。初期AMDのある対象は典型的には、著しい視力喪失の症状はない。本明細書で使用される場合、「中間AMD」とは、大きなドルーゼンおよび/または網膜の色素変化を特徴とする段階のAMDのことである。中間AMDは、あるていどの視力喪失を伴うことがある。本明細書で使用される場合、「後期AMD」とは、ドルーゼンの存在および斑への損傷のせいで、視力喪失、例えば、重篤な中心視力喪失を特徴とする段階のAMDのことである。AMDのすべての段階で、「網状シュードドルーゼン」(RPD)または「網状ドルーゼン」(網膜下ドルセノイド沈着(SDD)とも呼ばれる)が存在していることがあり、これは網膜神経感覚上皮とRPEの間の網膜下腔での細胞外物質の蓄積のことである。「後期AMD」は「ドライ型」および「ウェット型」AMDを包含する。「ドライ型」AMD(地図状萎縮としても知られる)では、視覚情報を脳まで運ぶ斑の光感受性細胞と斑の下の支持組織が徐々に分解していく。「ウェット型」AMD(脈絡膜血管新生、新生血管のおよび滲出性AMDとしても知られる)では、異常な血管が網膜のすぐ下でおよび網膜の中に成長する。これらの管は体液および血液を漏出させることができ、このために斑が膨潤して損傷を受け、それに続いて瘢痕が形成されることがある。損傷は急で重篤になりうる。
【0050】
一部の態様では、処置されるまたは予防される疾患または状態は早期発症黄斑変性症(EOMD)である。本明細書で使用される場合、「EOMD」とは、古典的AMDよりもはるかに早い年齢の発病を示し、より多くの年月の実質的な視力喪失をもたらす黄斑変性症の表現型的に重篤なサブタイプのことである。患者は、斑に無作為に点在する均一で小さなわずかに膨隆性の黄色い網膜下小結節を含む早期発病ドルーゼン表現型を示すことがあり、「基底膜ドルーゼン」または「角質ドルーゼン」としても知られる。EOMDは「中期発病黄斑変性症」と呼ばれることもある。EOMDサブセットは、例えば、Boon CJら、Am J Hum Genet 2008年;82(2):516~23頁、van de Ven JPら、Arch Ophthalmol 2012年;130(8):1038~47頁、およびTaylor RLら、Ophthalmology.2019年3月21日 pii:S0161~6420(18):33171~3頁に記載されており、前記文献のそれぞれはこれによりその全体を参照により組み込まれる。他のタイプの黄斑変性症の場合と同様に、EOMDは、補体調節不全および崩壊した因子H活性に関係している。一部の態様では、処置される対象は、49歳以下である。一部の態様では、処置される対象は15歳と49歳の間である、すなわち、15~49歳である。一部の態様では、処置される疾患または状態は、黄斑ジストロフィーである。黄斑ジストロフィーは、通常、単一遺伝子の突然変異により引き起こされ、斑の変性をもたらす遺伝性状態である。
【0051】
一部の態様では、障害は、溶血性尿毒素症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒素症候群(aHUS)、自己免疫ブドウ膜炎、膜性増殖性糸球体腎炎II型(MPGN II)、敗血症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、IgA腎症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、C3腎炎因子糸球体腎炎(C3 NF GN)、遺伝性血管性浮腫(HAE)、後天性血管浮腫(AAE)、脳脊髄炎、アテローム動脈硬化症、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、およびアルツハイマー病から選択してもよい。
【0052】
一部の場合、障害は、神経性および/または神経変性障害である。
一側面では、本発明は、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法であって、前記対象の血液中のFHR-4のレベルを決定するステップを含む方法を提供する。一部の場合、方法は、前記対象の血液中のFHR-4のレベルの増加を判定するステップを含む。一部の場合、FHR-4のレベルの増加は、障害を発症するリスクが増加していることを示す。方法は、対象が障害の発病のリスクがあるかどうか、および/または障害の進行、憎悪または悪化のリスクがあるかどうかを判定するために使用してもよい。
【0053】
「FHR-4のレベル」は、FHR-4のレベル、量、または濃度でもよい。一部の態様では、本明細書で提供される方法は、循環または全身FHR-4のレベルを決定する。本明細書で使用される用語「バイオマーカー(複数可)」とは、生物学的状況または状態の1つまたは複数の測定可能な指標のことである。用語「発症する(develop)」、「発症する(developing)」、および、例えば、障害の「発症(development)」とは、本明細書で使用される場合、疾患の発病、ならびに、疾患状況の進行、憎悪または悪化の両方のことである。
【0054】
別の側面では、本発明は、対象が黄斑変性症、例えば、EOMDおよび/またはAMDを発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法であって、前記対象の血液中のFHR-4のレベルを決定するステップを含む方法を提供する。一部の場合、方法は、前記対象の血液中のFHR-4のレベルの増加を判定するステップを含む。一部の場合、FHR-4のレベルの増加は、障害を発症するリスクが増加していることを示す。
【0055】
方法は、対象が黄斑変性症、例えば、EOMDおよび/もしくはAMDの発病のリスクがあるかどうか、ならびに/またはEOMDおよび/もしくはAMD進行のリスクがあるかどうかを判定するために使用してもよい。一部の場合、障害は、EOMD、AMD、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中期AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、脈絡膜血管新生(CNV)および網膜ジストロフィーから選択される。
【0056】
他の側面では、本発明は、補体関連障害を発症するリスクのある対象を特定するための方法であって、前記対象の血液中のFHR-4のレベルを決定するステップを含む方法を提供する。障害は、EOMDおよび/またはAMDでもよい。
【0057】
一部の態様では、本明細書で提供される方法は、対象の血液中のFHR-4のレベルの増加を判定し、FHR-4のレベルは参照値と比較されるステップを含む。一部の態様では、参照値と比較される対象の血液中のFHR-4のレベルの増加は、対象が補体関連障害を発症するリスクが増加していることを示す。
【0058】
一部の態様では、本明細書で提供される方法は、対象の血液中のFHR-4の量の増加を判定するステップを含む。例えば、方法は、前記対象の血液中のFHR-4の量を測定するステップを含んでもよい。一部の態様では、血液中のFHR-4の量の増加は、前記対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。一部の場合、参照値と比べた場合の血液中のFHR-4の量の増加は、前記対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。
【0059】
一部の態様では、FHR-4の増加した量は、5~10μg/ml、10~15μg/ml、15~20μg/mlまたは20μg/ml超のFHR-4濃度である。すなわち、5~10μg/ml、10~15μg/ml、15~20μg/mlまたは20μg/ml超のFHR-4濃度は、前記対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。好ましい態様では、FHR-4の増加した量は15μg/ml超である。他の好ましい態様では、FHR-4の増加した量は20μg/ml超である。一部の態様では、15μg/ml超のFHR-4濃度は前記対象が障害を発症するリスクが高いことを示し、5~15μg/mlのFHR-4濃度は前記対象が障害を発症するリスクが中程度であることを示し、および/または5μg/ml超のFHR-4濃度は前記対象が障害を発症するリスクが低いことを示す。
【0060】
一部の場合、5μg/ml、6μg/ml、7μg/ml、8μg/ml、9μg/ml、10g/ml、11μg/ml、12μg/ml、13μg/ml、14μg/ml、15g/ml、16μg/ml、17μg/ml、18μg/ml、19μg/ml、20g/ml、21μg/ml、22μg/ml、23μg/ml、24μg/ml、25g/ml、26μg/ml、27μg/ml、28μg/ml、29μg/ml、30μg/mlまたはそれよりも多いFHR-4濃度は、対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。
【0061】
本発明は、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するためのバイオマーカーとしてFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを用いる方法を提供する。したがって、一部の側面では、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法であって、前記対象においてFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む方法が提供される。一部の態様では、FHR-4をコードする遺伝子の発現の増加したレベルは、前記対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。一部の態様では、FHR-4をコードする遺伝子の発現の参照レベルと比べた場合のFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルの増加は、前記対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。一部の場合、方法は、FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを測定するステップを含む。一部の態様では、FHR-4をコードする遺伝子はCFHR4である。一部の態様では、方法は、上に記載されるように、FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定/測定する、およびFHR-4のレベルを決定するステップを含む。
【0062】
本明細書で提供されるいかなる方法も、対象由来の試料において、FHR-4のレベルもしくは量、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含んでよい。試料は、いかなる組織または体液からでも採取してよい。好ましい段取りでは、試料は体液、さらに好ましくは、体全体を循環する体液から採取される。したがって、試料は血液試料またはリンパ試料でもよい。特に好ましい段取りでは、試料は血液試料または血液由来試料である。血液由来試料は、患者の血液の選択された画分、例えば、選択された細胞含有画分、または血漿もしくは血清画分でもよい。選択された血清画分は、フィブリン血栓および血液細胞の除去後に得られる血液の液体部分を含んでいてよい。あるいは、試料は、前記個体由来の組織試料、生検もしくは単離された細胞を含んでもよくまたはこれらに由来してもよい。
【0063】
一部の態様では、試料は、肝臓由来の組織および/または肝臓細胞を含む。一部の態様では、試料は、循環している免疫細胞、例えば、単離された免疫細胞を含む。一部の場合、試料は、1つまたは複数の単球、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、ならびに/またはリンパ球、例えば、NK細胞、T細胞および/もしくはB細胞を含んでいてよい。
【0064】
したがって、一部の側面では、本発明は、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法であって、前記対象の試料において、FHR-4のレベルもしくは量、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む方法を提供する。試料は、同じ試料でもよく、または1つより多い試料、例えば、1つは血液由来の試料、1つは組織由来の試料を含んでいてもよい。
【0065】
一部の態様では、本明細書で提供されるいかなる方法も、対象から血液由来試料または生体試料を入手する第1段階を含む。
一部の場合、本明細書で提供される方法は、FHR-4のレベルまたは量を決定するステップおよびFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む。2つの決定ステップは、対象由来の同じ試料でまたは異なる試料で実施してもよい。一部の場合、本明細書で提供されるいかなる方法も、FHR-4の量および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを定量化するステップを含んでいてよい。
【0066】
本発明に従った方法は、ヒトまたは動物身体の外部で実施しうる。本発明に従った方法は、インビトロで、エクスビボでまたはインビボで実施してもよく、または産物はインビトロで、エクスビボでまたはインビボで存在してもよい。用語「インビトロで」は、実験室条件においてまたは培養において材料、生体物質、細胞および/または組織を用いた実験を包含することが意図されており、用語「インビボで」は、無傷の多細胞生物を用いた実験および手順を包含することが意図されている。「エクスビボで」とは、生物の外部、例えば、ヒトもしくは動物身体の外部に存在するまたは外部で起こるある物のことであり、これは生物から採取された組織(例えば、全器官)または細胞上でもよい。一部の態様では、本明細書で提供される方法の決定ステップ、検出ステップ、測定ステップ、定量化ステップおよび/または診断ステップはインビトロで実施される。
【0067】
一部の態様では、本発明は、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法であって、(i)対象から血液由来試料を入手する;(ii)試料をFHR-4に特異的に結合する抗体に接触させる;および(iii)試料中に存在するFHR-4の量を検出するステップのうちの1つまたは複数を含む方法を提供する。一部の態様では、方法は、FHR-4と抗体の間の結合を検出するステップを含む。一部の態様では、方法は、(i)対象からの血液由来試料を提供する;(ii)試料をFHR-4に特異的に結合する抗体に接触させる;(iii)試料中に存在するFHR-4の量を検出するステップを含む。方法は、上述の通り、FHR-4の濃度を検出する、測定または定量化するステップを含んでいてよい。
【0068】
抗体は、当技術分野で公知のまたは市販されているいかなる適切なFHR-4抗体、例えば、R&D Systems社製のMAB5980、IC5980G、AF5980;Invitrogen社製のMA5-24288、PA5-41991;またはThermoFisher ScientificPA5-41991でもよい。FHR-4抗体は、本明細書に記載されるまたは当技術分野で公知の技法により産生してもよく、例えば、Chiu and Gilliland、Curr Opin Struct Biol.2016年、38:163~173頁、Jakobovits A Curr Opin Biotechnol.1995年10月;6(5):561~6頁、およびBruggemann Mら、Arch Immunol Ther Exp(Warsz).2015年;63(2):101~108頁を参照されたい。1つの適切な技法はファージディスプレイ技術であり、例えば、Hammers and Stanley、J Invest Dermatol.2014年、134(2):e17頁およびBazan Jら、Hum Vaccin Immunother.2012年、8(12):1817~1828頁を参照されたい。抗原結合ポリペプチド鎖は、化学合成(例えば、Chandruduら、Molecules(2013)、18:4373~4388頁参照)、Green and Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第4版)、Cold Spring Harbor Press、2012年に、およびNat Methods.(2008);5(2):135~146頁に述べられている技法などの組換え発現、または無細胞タンパク質合成(CFPS;例えば、Zemellaら、Chembiochem(2015)16(17):2420~2431頁参照)により産生してもよく、前記文献のすべてはこれによりその全体を参照により組み込まれる。
【0069】
抗体を使用してFHR-4の量を検出する、測定または定量化するための方法は当技術分野では公知であり、例えば、ELISAを含み、例えば、Crowther JR、Methods in Molecular Biology、The ELISA Guidebook.第2版、Humana Press、a part of Springer Science+Business Media、LLC 2009年;Butler J.E.The Behaviour of Antigens and Antibodies Immobilized on a Solid Phase.In:M.H.V.Van Regenmortel、編.Structure of Antigens.Boca Raton、FL:CRC Press、1992年 209~259頁.Vol.1、209;CRC Press、Inc.;Lequin RM.Clinical chemistry 51.12(2005):2415~2418頁;およびEngvall and Perlmann.Immunochemistry 8.9(1971):871~874頁を参照されたい。前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。他の方法は、質量分析、ウェスタンブロッティング、タンパク質免疫染色、免疫電気泳動、およびタンパク質免疫沈降を含んでいてもよく、これらの技法は以下に記載されており、および/または当業者には明らかになる。
【0070】
対象が補体関連障害を発症する傾向または素因を評価するための方法であって、
(a)対象由来の血液試料を提供する;
(b)試料中のFHR-4のレベルを評価する;
(c)(b)の結果を使用して対象が補体関連障害を発症する可能性を判定する
ステップを含む方法も本明細書で提供される。
【0071】
一部の場合、FHR-4のレベルの増加は、前記対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。一部の場合、参照値と比べた場合の血液中のFHR-4の量の増加は、前記対象が障害を発症するリスクが増加していることを示す。FHR-4の濃度および関連するリスクの段階は上に記載されている通りである。試料中のFHR-4のレベルを評価するための方法は下に記載されている通りである。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語「参照値」とは、分析中に比較のために使用される既知の測定値のことである。一部の場合、参照値は、定義された健康状態の個体または群から得られる検査値の1つまたは一組である。一部の場合、参照値は、補体関連障害に罹っていないことが分かっている対象においてFHR-4のレベルを決定するステップから得られる/得られた。一部の場合、参照値は、同じ対象からFHR-4のレベルまたは量を前もって、例えば、疾患進行の早期の段階で決定することにより設定される。参照値は、標準値、標準曲線または標準データセットでもよい。
【0073】
本明細書で提供される方法は、補体調節不全に関連する対象のゲノム中の遺伝子多型により特徴付けられる遺伝子プロファイルの存在または非存在を対象において判定するステップを含んでいてよい。遺伝子多型は、CCL28、FBN2、ADAM12、PTPRC、IGLC1、HS3ST4、PRELP、PPID、SPOCK、APOB、SLC2A2、COL4A1、MYOC、ADAM19、FGFR2、C8A、FCN1、IFNAR2、C1NH、C7およびITGA4などの遺伝子内または近くで見出されてもよい。補体調節不全に関連する遺伝子プロファイルは、例えば、US 2010/0303832の表IおよびIIに提示されている1つまたは複数の、多くの場合複数の一塩基多型を含んでよく、前記特許文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0074】
遺伝因子は、AMDおよびEOMDの発症に役割を果たすと考えられている。したがって、本明細書に記載される評価または治療方法のいずれも、AMD関連および/またはEOMD関連および/または黄斑ジストロフィー関連遺伝子変異体を評価する方法と併せて実施してもよい。
【0075】
一部の場合、本明細書で提供される方法は、AMDに関連する1つまたは複数の遺伝因子、例えば、1つまたは複数のAMD関連遺伝子変異体の存在または非存在を対象において判定するステップをさらに含む。一部の場合、方法は、1つまたは複数の遺伝因子の存在または非存在についてスクリーニングする(直接的にまたは間接的に)ステップを含む。一部の態様では、遺伝因子(複数可)は遺伝的リスク因子(複数可)である。一部の態様では、対象は1つまたは複数のそのようなリスク因子を有していると判定されている。一部の態様では、本発明の方法は、対象が1つまたは複数のそのようなリスク因子を有するかどうかを判定するステップを含む。
【0076】
一部の態様では、1つまたは複数の遺伝因子は、第1染色体上のCFH/CFHR遺伝子座に位置していてよい。
1つまたは複数の遺伝因子は、例えば、Y402H(すなわち、rs1061170C)、rs1410996C、I62V(rs800292)、A473A(rs2274700)、R53C、D90G、D936E(rs1065489)、R1210C、IVS1(rs529825)、IVS2 insTT、IVS6(rs3766404)、A307A(rs1061147)、IVS10(rs203674)、rs3753396、R1210C、rs148553336、rs191281603、rs35292876、およびrs800292から選択されるCFH;例えば、rs6685931、およびrs1409153から選択されるCFHR4;例えば、G119R、およびrs141853578から選択されるCFI;CFB、例えば、rs4151667、C2、例えば、rs9332739、C9、例えば、P167S;ならびに/またはC3、例えば、K155Qのうちの1つまたは複数に位置していてよい。一部の態様では、遺伝因子はY402H(すなわち、rs1061170C)である。一部の態様では、遺伝因子はrs3753396である。一部の態様では、遺伝因子はrs6685931および/またはrs1409153である。一部の態様では、遺伝因子はrs6685931ではない。
【0077】
一部の場合、遺伝因子はCFHR4遺伝子に位置している。
適切な遺伝リスク因子および遺伝子変異体は当技術分野で知られるようになる、および、例えば、Edwards AOら、Science 2005年、308(5720):421~4頁;Hageman GSら、Proc Natl Acad Sci USA.2005年、102(20):7227~7232頁;Haines JLら、Science 2005年、308(5720):419~21頁、Klein RJら、Science 2005年、308(5720):385~389頁;Fritscheら、Nat Genet.2016年、48(2):134~43頁;US2010/0303832;またはClarkら、J Clin Med.2015年、4(1):18~31頁に記載されている通りでよい。前記文献のそれぞれが参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0078】
一部の場合、本明細書で提供される方法は、EOMDに関連する1つまたは複数の遺伝因子、例えば、1つまたは複数のEOMD関連遺伝子変異体の存在または非存在を対象において判定するステップをさらに含む。一部の場合、方法は、1つまたは複数の遺伝因子の存在または非存在についてスクリーニングする(直接的にまたは間接的に)ステップを含む。一部の態様では、遺伝因子(複数可)は遺伝的リスク因子(複数可)である。一部の態様では、対象は1つまたは複数のそのようなリスク因子を有していると判定されている。一部の態様では、本発明の方法は、対象が1つまたは複数のそのようなリスク因子を有するかどうかを判定するステップを含む。一部の態様では、対象は、早期発症黄斑変性症(EOMD)についての1つまたは複数のリスク因子を有することがある。
【0079】
EOMDは、CFH遺伝子の希少変異体の一遺伝子遺伝により引き起こされると考えられている(例えば、Boon CJら、Am J Hum Genet 2008年;82(2):516~23頁;van de Ven JP、ら、Arch Ophthalmol 2012年;130(8):1038~47頁;Yu Yら、Hum Mol Genet 2014年;23(19):5283~93頁;Duvvari MR、ら、Mol Vis 2015年;21:285~92頁;Hughes AE、ら、Acta Ophthalmol 2016年;94(3):e247~8頁;Wagnerら、Sci Rep 2016年;6:31531;Taylor RLら、Ophthalmology.2019年 Mar 21.pii:S0161-6420(18):33171~3頁参照)。一部の態様では、対象は、EOMD関連遺伝子変異体の1つまたは複数を有することがある。EOMD関連遺伝子変異体は、例えば、Servais Aら、Kidney Int、2012年;82(4):454~64頁およびDragon-Durey MA、ら、J Am Soc Nephrol 2004年;15(3):787~95頁に記載されており、前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。一部の態様では、対象は以下のEOMD関連遺伝子変異体:CFH c.1243del、p.(Ala415Profs*39)het;CFH c.350+1G>T het;CFH c.619+1G>A het;CFH c.380G>A、p.(Arg127His);CFH c.694C>T、p.(Arg232Ter);またはCFH c.1291T>A、p.(Cys431Ser)のうちの1つまたは複数を有することがある。
【0080】
一部の場合、方法は、AMDリスクまたは防御に関連しているRCA遺伝子座(第1染色体に位置しCFH遺伝子からずっとCD46(MCP)遺伝子まで伸びるDNA配列の領域)内の欠失を求めてスクリーニングするステップを含む。
【0081】
一部の場合、増加したFHR-4レベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の増加した発現に関連する遺伝因子の存在または非存在を判定するステップを含む方法が本明細書で提供される。一部の場合、方法は、増加したFHR-4レベルのリスクおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の増加した発現のリスクに関連する遺伝因子の存在または非存在を判定するステップを含む。
【0082】
一部の場合、対照が、FHR-4レベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現が増加していると判定される/判定されている場合には、本明細書で提供される方法は、前記増加(複数可)に関連する遺伝因子の存在または非存在を判定するステップを含む。すなわち、本発明の方法は、FHR-4レベルの増加および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルの増加に関連する遺伝因子の存在または非存在を判定して、前記レベル(複数可)が遺伝子変異の結果であるまたはこれに関連していることを確かめるステップを含んでいてよい。
【0083】
遺伝因子の存在または非存在を判定するための方法は、ゲノムDNAの制限断片長多型同定(RFLPI)、ゲノムDNAのランダム増幅多型検出(RAPD)、増幅断片長多型検出(AFLPD)、多重遺伝子座可変数タンデム反復(multiple locus variable number tandem repeat)(VNTR)分析(MLVA)、SNP遺伝子型判定、多座位配列タイピング、PCR、DNA塩基配列決定、例えば、サンガー塩基配列決定または次世代塩基配列決定、対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ、およびオリゴヌクレオチドマイクロアレーまたはビーズを含む。他の適切な方法は、例えば、Edenberg HJ and Liu Y、Cold Spring Harb Protoc;2009年;doi:10.1101/pdb.top62、およびTsuchihashi Z and Dracopoli NC、Pharmacogenomics J.、2002年、2:103~110頁に記載されている。
【0084】
発症のリスク、すなわち、補体関連障害の発病またはこの進行のリスクを評価するために本明細書で提供される方法は、当業者に知られるようになるような障害についての追加の診断法および/または検査と併せて実施してよい。一部の場合、補体関連障害の発症のリスクを評価するための方法は、溶血性分析を介したCH50およびAH50測定、MAC複合体(C789)生成中のネオ抗原形成の測定、C3欠損スクリーニング、マンノース結合レクチンアッセイ、個々の補体成分を定量化する免疫化学的アッセイ、細胞結合調節タンパク質、例えば、CD55、CD59およびCD35を評価するフローサイトメトリー、腎機能検査から選択されるさらなる技法ならびに補体調節タンパク質および/または補体活性化の血漿レベルおよび/またはレベル(例えば、C3、C4、CFH、CFIのレベル)を決定するステップを含む(例えば、Shih AR and Murali MR、Am.J.Hematol.2015年、90(12):1180~1186頁、Ogedegbe HO、Laboratory Medicine、2007年、38(5):295~304頁、およびGowda Sら、N Am J Med Sci.2010年、2(4):170~173頁参照)。前記文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0085】
一部の場合、AMDおよび/またはEOMDを発症するリスクを評価するために本明細書で提供される方法は、色鋭敏さ(colour acuity)および色対比感度(colour contrast sensitivity)を評価するための、暗順応検査、コントラスト感度検査、例えば、ぺリ・ロブソン検査、例えば、スネレン視標および/またはアムスラー格子を使用する視力検査、ファーンスワース・マンセル100色相検査ならびに最大色対比感受性検査(Maximum Color Contrast Sensitivity test;MCCS)、選択的高視野測定(preferential hyperacuity perimetry;PHP)、眼の後側の眼底撮影、眼底検査、眼底自発蛍光、光干渉断層撮影、血管造影検査、例えば、蛍光血管造影、眼底蛍光血管造影(fundus fluorescein angiography)、インドシアニングリーン血管造影、光干渉断層血管造影(optical coherence tomography angiography)、網膜電位法(electroretinogram methods)、ならびに/または萎縮、網膜色素変化、滲出性変化、例えば、眼の出血、硬性白斑(hard exudates)、網膜下/RPE下/網膜内液および/もしくはドルーゼンの存在などの組織学的変化を測定する方法から選択されるさらなる評価技法を含む。
治療的および予防的適用
本発明に従った方法は、FHR-4のレベルが増加しており、したがって、補体関連障害を発症するリスクがある可能性のある患者の特定のサブセットを同定するための手段を提供する。選択された患者は、したがって、補体関連障害について処置を受けてよい。本明細書に記載される方法は、治療的もしくは予防的処置のための対象を選択する、対象が治療的処置に応答するかどうかを判定する、および/または対象が治療的もしくは予防的処置、例えば、補体関連障害に対する処置に応答するもしくは応答しない可能性があるかどうかを判定するのにも有用でありうる。
【0086】
したがって、一部の側面では、補体関連障害を発症するリスクのある対象、補体関連障害のある対象、補体関連障害のリスクがあるおよび/もしくは補体関連障害のあると判定されている対象、FHR-4レベルが増加しているおよび/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現が増加している対象、または、例えば、本明細書に記載される方法により、FHR-4レベルが増加しているおよび/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現が増加していると判定されている対象は、補体関連障害に対する処置から恩恵を受けうる。
【0087】
対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するために本明細書で提供されるいかなる方法も、前記障害を処置するための処置ステップをさらに含んでいてよい。例えば、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するために本明細書で提供される方法は、前記障害を処置または予防するための処置ステップを含んでいてよく、対象はFHR-4レベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現が増加していると判定されている。
【0088】
一側面では、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定して前記障害を処置するための方法であって、前記対象の血液中のFHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップ、ならびにFHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している対象に有効量の補体標的化治療薬を投与するステップを含む方法が本明細書で提供される。FHR-4およびリスクの段階を測定する方法は、本明細書に記載される通りである。
【0089】
処置ステップは、治療的または予防的有効量の1つまたは複数の補体標的化治療薬、例えば、1つまたは複数のC1阻害剤、C5阻害剤、C5a阻害剤、C5aRアンタゴニスト、C3阻害剤、C3a阻害剤、C3b阻害剤、C3aRアンタゴニスト、古典経路阻害剤、第二経路阻害剤、FH補給療法および/またはMBL経路阻害剤を対象に投与するステップを含んでいてよい。特定の補体標的化治療薬は、限定せずに、ヒトC1エステラーゼ阻害剤(C1-INH)、エクリズマブ(Soliris(登録商標)、Alexion;C5を標的にするヒト化モノクローナルIgG2/4抗体)、APL-2(Apellis)、ムボディナ(mubodina)(Adienne Pharma and Biotech)、エルジディナ(ergidina)(Adienne Pharma and Biotech)、リツキシマブ(Biogen Idec、Genentech、Hoffmann-La Roche)、オファツムマブ(Genmab、GSK)、コンプスタチン類似体、CD59、PMX53およびPMX205の可溶性および標的化形(Cephalon/Teva)、JPE-1375(Jerini)、CCX168(ChemoCentryx)、NGD-2000-1(former Neurogen)、シンライズ(Shire)、ベリナート(CSL Behring)、セトール(Cetor)(Sanquin)、ルコネスト(Ruconest)/コスネタットアルファ(Pharming)、TNT009(True North)、OMS721(Omeros)、CLG561(Novartis)、AMY-101(Amyndas)、APL-1(Apellis)、APL-2(Apellis)、ミロコセプト(Mirococept)(MRC)、ランパリズマブ(Genentech)、ACH-4471(Achillion)、ALXN1210(Alexion)、テシドルマブ(Tesidolumab)/LFG316(Novartis/Morphosys)、コバルシン(Coversin)(Akari)、RA101495 (Ra Pharma)、ジムラ(Zimura)(Ophthotech)、ALN-CC5(Alnylam)、IFX-1(InflaRx)、ALXN1007(Alexion)、アバコパン/CCX168(Chemocentryx)のうちの1つもしくは複数および/または、例えば、Ricklinら、Mol Immunol.2017年、89:10~21頁;Ricklin and Lambris、Adv Exp Med Biol.2013年、734:1~22頁;Ricklin and Lambris、Semin Immunol.2016年、28(3):208~22頁;Melis JPMら、Mol Immunol.2015年 67(2):117~130頁;Thurman JM、Nephrol Dial Transplant、2017年 32:i57~i64頁、Cashman SMら、PLoS One.2011年、6(4):e19078頁;Bora NSら、J Biol Chem.2010年、285(44):33826~33頁に記載される1つもしくは複数の治療剤を含み、前記文献は参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。
【0090】
一部の側面では、本発明は、対象において補体関連障害を処置または予防するための方法であって、有効量の補体標的化治療薬を投与するステップを含み、処置を受ける対象はFHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している、方法を提供する。
【0091】
他の側面では、本発明は、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している対象において、補体関連障害を処置または予防する方法で使用するための補体標的化治療薬を提供する。さらなる側面では、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している対象において、補体関連障害を処置または予防するための薬物の製造における補体標的化治療薬の使用が提供される。
【0092】
対象において補体関連障害を処置もしくは予防する方法、または対象において補体関連障害を処置するもしくは予防する方法における使用のための補体標的化治療薬であって、有効量の補体標的化治療薬を投与するステップを含み、対象が、FHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している場合に処置のために選択される、方法も提供される。
【0093】
本発明は、補体標的化治療薬による処置について患者を選択するための方法であって、前記対象の血液においてFHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む方法も提供する。患者は、補体関連障害がある、または、例えば、本明細書で提供される方法によって、補体関連障害があると判定されていてもよい。
【0094】
本明細書で提供される様々な側面では、処置を受ける対象は、FHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している。一部の態様では、処置を受ける対象は、FHR-4のレベルが増加していると判定されているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定されている。上文に記載されている通り、FHR-4またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルは、本明細書で提供されるいかなる方法を使用しても決定されるまたは決定されていてもよい。一部の態様では、本明細書に記載されるように、対象は、補体関連障害を発症する高い、中程度のまたは低いリスクを有する。前記方法は、本明細書に記載されるように、例えば、試料においてFHR-4の量もしくは濃度を決定するステップ、補体調節不全に関連する遺伝子プロファイルの存在もしくは非存在を判定するステップ、および/または補体関連障害を発症するリスクを評価するためのさらなる方法を含んでよい。様々な側面では、対象は、FHR-4のレベルが増加している、またはFHR-4のレベルが増加していると判定されていてもよい。他の態様では、対象は、FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している、またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定されていてもよい。一部の態様では、対象は、FHR-4のレベルが増加しておりかつFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している、またはFHR-4のレベルが増加しておりかつFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定されていてもよい。一部の態様では、遺伝子はCFHR4である。
【0095】
本発明の一部の側面によれば、補体関連障害を発症するリスクのある対象、補体関連障害のある対象、補体関連障害のリスクがある、および/もしくは補体関連障害のあると判定されている対象、FHR-4レベルが増加している、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現が増加している対象、または、例えば、本明細書に記載される方法により、FHR-4レベルが増加している、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現が増加していると判定されている対象は、FHR-4のレベルを低減する、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを低減する処置から恩恵を受けうる。
【0096】
したがって、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するために本明細書で提供されるいかなる方法も、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる有効量の薬剤を対象に投与するステップを含む処置ステップをさらに含んでよい。
【0097】
一部の側面では、本発明は、対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定し、前記障害を処置するための方法であって、前記対象の血液中のFHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップならびにFHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している対象に有効量の補体標的化治療薬を投与するステップを含む方法を提供する。FHR-4およびリスクの段階を測定する方法は本明細書に記載されている。
【0098】
本発明は、対象において補体関連障害を処置または予防する方法であって、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる、治療または予防有効量の薬剤を対象に投与するステップを含む方法を提供する。対象において補体関連障害を処置または予防する方法で使用するためのFHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤も提供される。補体関連障害を処置または予防するための薬物の製造におけるFHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤の使用も提供される。一部の場合、薬剤はそれを必要とする対象に投与される。
【0099】
様々な態様では、対象は、補体関連障害がある、および/もしくは補体関連障害を発症するリスクが増加している、または例えば、本明細書で提供される方法によりそのように判定されている。一部の態様では、本明細書に記載されるように、対象は、補体関連障害を発症する高い、中程度のまたは低いリスクを有する。一部の態様では、対象は、FHR-4のレベルが増加している、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している、または例えば、本明細書で提供される方法によりそのように判定されている。
【0100】
本発明は、補体関連障害について処置する対象を特定するための方法を提供する。したがって、補体関連障害の処置または予防の対象を選択する方法であって、処置がFHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる有効量の薬剤を投与するステップを含み、対象が、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している場合には、処置するために選択される方法が本明細書で提供される。対象は、補体関連障害がある、ならびに/またはFHR-4のレベルが増加している、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している、あるいは例えば、本明細書で提供される方法によりそのように判定されていてもよい。
【0101】
補体関連障害を処置または予防する方法で使用するための、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤も提供され、対象は、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している場合に処置のために選択される。対象は、補体関連障害がある、FHR-4のレベルが増加している、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していても、または例えば、本明細書で提供される方法によりそのように判定されていてもよい。方法は、対象に有効量の薬剤を投与するステップを含んでもよい。
【0102】
本発明は、FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤を用いて処置する患者を選択するための方法であって、前記対象の血液中のFHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む方法も提供する。患者は、補体関連障害がある、または例えば、本明細書で提供される方法によりそのように判定されていてもよい。患者は、本明細書で提供されるいかなる方法によっても処置のために選択してよい。
【0103】
本明細書で提供される様々な側面では、処置を受ける対象は、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している。一部の態様では、処置を受ける対象は、FHR-4のレベルが増加していると判定されている、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定されている。上文に記載される通り、FHR-4またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルは、本明細書で提供されるいかなる方法を使用して判定されても、または判定されていてもよい。前記方法は、本明細書に記載されるように、例えば、試料中で、FHR-4の量もしくは濃度を決定するステップ、補体調節不全に関連する遺伝子プロファイルの存在もしくは非存在を判定するステップ、および/または補体関連障害を発症するリスクを評価するためのさらなる方法を含んでいてよい。一部の態様では、本明細書に記載される通りに、対象は、補体関連障害を発症する高い、中程度のまたは低いリスクを有する。様々な側面では、対象は、FHR-4のレベルが増加していてもよく、またはFHR-4のレベルが増加していると判定されていてもよい。他の態様では、対象は、FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していてもよく、またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定されていてもよい。一部の態様では、対象は、FHR-4のレベルが増加しておりかつFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していてもよく、またはFHR-4のレベルが増加しておりかつFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定されていてもよい。一部の態様では、遺伝子はCFHR4である。
【0104】
FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させるのに適した薬剤は、下文に記載されている、および/または当技術分野で公知である。
【0105】
本発明に従って処置または予防してもよい補体関連障害は、C3b、FH、FHL-1、FI、CR1、CD46、CD55、C4BP、因子B(FB)、因子D(FD)、FHR-1、FHR-2、FHR-3、FHR-5、SPICE、VCP(またはVICE)および/またはMOPICEのうちの1つまたは複数に関連する障害を含めて、上文に記載されている。
【0106】
一部の場合、本明細書に記載される方法は、C3bBb型C3コンバターゼ、C3bBb3b型C5コンバターゼもしくはC4b2a3b型C5コンバターゼのレベルもしくは活性の低減;C3b、C5bもしくはC5aのレベルの低減;またはiC3b、C3f、C3dgもしくはC3dのレベルの増加のうちの1つまたは複数から恩恵を受けると考えられる障害を処置するステップもしくは予防するステップ、またはこの障害の処置もしくは予防のための患者を選択するステップに用途がある。
【0107】
処置されるまたは予防される障害は、黄斑変性症、早期発症黄斑変性症(EOMD)、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、脈絡膜血管新生(CNV)、黄斑ジストロフィー、緑内障、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、自己免疫ブドウ膜炎、膜性増殖性糸球体腎炎II型(MPGN II)、敗血症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、IgA腎症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、C3腎炎因子糸球体腎炎(C3 NF GN)、遺伝性血管性浮腫(HAE)、後天性血管浮腫(AAE)、脳脊髄炎、アテローム動脈硬化症、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、およびアルツハイマー病から選択されうる。
【0108】
一部の態様では、処置されるまたは予防される障害は、黄斑変性症、早期発症黄斑変性症(EOMD)、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、脈絡膜血管新生(CNV)および黄斑ジストロフィーから選択される。
【0109】
本明細書で使用される場合、「処置」は、例えば、疾患/状態の発症もしくは進行の低減、疾患/状態の症状の軽減または疾患/状態の病態の低減でもよい。疾患/状態を処置または軽減すれば、疾患/状態の進行を予防する、例えば、状態の悪化を防ぐまたは発症の速度を遅くするのに有効でありうる。一部の態様では、処置または軽減は、疾患/状態の改善、例えば、疾患/状態の症状の低減または疾患/状態の重症度/活性度の何か他に相関するものの低減をもたらしうる。疾患/状態の防止/予防とは、状態の悪化の防止または疾患/状態の発達の防止、例えば、初期段階の疾患/状態が後期、慢性段階に発達するのを防ぐことであってもよい。
【0110】
対象において、補体関連障害の発病のリスク、補体関連障害の疾患進行のリスク、および/または補体関連障害の存在を診断する方法であって、対象の血液中のFHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む方法も提供される。方法は、対象がFHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している場合には、有効量の補体ターゲティング治療薬またはFHR-4の量を減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤を投与するステップをさらに含む。一部の態様では、方法は、対象から血液試料を入手するステップおよび試料中のFHR-4のレベル/FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを測定するステップを含む。本明細書で提供される本発明のいかなる側面でも、方法は、FHR-4の増加したレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現の増加したレベルの存在を、対象が補体関連障害を発症する、および/または補体関連障害を有するリスクの増加と互いに関連付けるステップを含んでいてよい。FHR-4のレベルを決定するのに適した方法および技法は本明細書に記載されている。
【0111】
一部の態様では、対象は、対象がAMDおよび/またはEOMDについての1つまたは複数の遺伝因子、例えば、1つもしくは複数のAMD関連および/もしくはEOMD関連遺伝子変異体または黄斑ジストロフィーを有すると判定されることに基づいて、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤による治療的または予防的処置について選択される。一部の態様では、対象は、1つまたは複数のそのような遺伝因子を有すると判定されている。一部の態様では、方法は、対象が1つまたは複数のそのような遺伝因子を有するかどうかを判定するステップを含む。そのような方法および遺伝因子は本明細書に記載されている。したがって、対象において補体関連障害を処置または予防する方法であって、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤を投与するステップを含み、対象がAMDおよび/またはEOMDについての1つまたは複数の遺伝因子を有すると判定されている、方法が本明細書で提供される。
【0112】
一部の側面では、本発明は、対象が治療的処置に応答するもしくは応答しない可能性があるかどうか、または対象が治療的処置に応答しているかどうかを判定するためにFHR-4レベルを用いる方法を提供する。そのような方法により、患者は、彼らの病理学的必要条件について最も効果的な療法を受けることができるはずである。
【0113】
したがって、補体関連障害があるまたはあると疑われている対象が、補体標的化治療薬またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤による処置に応答する可能性があるかどうかを判定するための方法であって、患者の血液中のFHR-4のレベルを決定するステップおよび/または患者においてFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップを含む方法が提供される。一部の場合、FHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している場合には、患者は、補体標的化治療薬またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤による処置に応答する可能性がある。一部の場合、FHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している場合には、治療薬または薬剤による処置について対象を選択する。FHR-4のレベルまたはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを判定するための方法は、本明細書に記載されている通りでよい。
【0114】
補体標的化治療薬またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤による処置について対象を選択するための方法であって、対象の血液中のFHR-4のレベルを決定するステップおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するステップ、ならびに任意選択的に、FHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している場合には、治療薬または薬剤による処置について対象を選択するステップを含む方法が提供される。
【0115】
一部の場合、対象は、補体関連障害があるまたは補体関連障害があると疑われている。一部の場合、障害はAMDである。一部の場合、障害はEOMDである。
対象が、補体標的化治療薬またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤による治療的処置に応答しているかどうかを判定するための方法であって、処置が施された後の対象の血液中のFHR-4のレベルを決定するステップを含む方法も提供される。一部の場合、方法は、処置前の対象の血液中のFHR-4のレベルをさらに決定し、処置前のFHR-4のレベルと比べた場合、処置後のFHR-4のレベルが減少していたら、対象が前記処置に応答している/応答したことを示すステップを含む。一部の場合、参照値と比べた場合、処置後のFHR-4のレベルが減少していたら、対象が前記処置に応答している/応答したことを示す。
【0116】
本明細書に記載される方法のいずれかにおいて、FHR-4のレベルは生体試料において決定されるおよび/または本明細書に記載される通りに測定されてもよい。本明細書で提供されるいかなる方法も、FHR-4のレベルをインビトロで決定するステップを含んでよい。FHR-4の増加した量は、5~10μg/ml、10~15μg/ml、15~20μg/mlまたは20μg/ml超のFHR-4濃度でもよい。一部の態様では、本明細書で提供される方法は、FHR-4の増加した量の存在を、対象がAMDおよび/またはEOMDを発症するリスクが増加していることと互いに関連付けるステップを含む。本明細書で提供されるいかなる方法も、FHR-4の量および/またはCFHR4の発現のレベルを定量化するステップを含んでよい。
【0117】
用語「対象」とは、対象、患者または個体のことであり、いかなる動物またはヒトでもよい。対象は好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。対象は非ヒト哺乳動物でもよいが、さらに好ましくはヒトである。対象は雄または雌でもよい。対象は患者でもよい。治療的使用はヒトまたは動物(獣医使用)においてである。本明細書に記載される治療物質を用いて処置される対象は、それを必要とする対象でよい。
【0118】
本明細書に記載される対象は、患者亜集団に属していてよく、すなわち、対象は、集団の同定可能な特定の部分または小部分の一部でもよい。集団または亜集団は、補体関連障害があってもまたは補体関連障害があると疑われていてもよい。亜集団は、集団全体と比べた場合、FHR-4のレベルの増加および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルの増加を示すことがある。集団および/または亜集団は、AMD、EOMDまたは黄斑ジストロフィーを有してもよくまたは有すると疑われてもよい。
【0119】
一部の側面では、対象において補体関連障害を処置または予防する方法であって、対象は、FHR-4のレベルが増加しているおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していることを特徴とする方法が提供される。
【0120】
FHR-4のレベルが増加しているおよび/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していることを特徴とする対象において、補体関連障害を処置または予防する方法における使用のための補体標的化治療薬またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤も提供される。
FHR-4/CFHR4を標的にする薬剤
FHR-4および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加した対象は、前記レベルが低減されることから治療上のまたは予防上の恩恵を引き出しうる。これは、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させるいかなる適切な薬剤でも投与することにより達成されうる。
【0121】
したがって、一部の態様では、本明細書で提供される方法は、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤を投与するステップを含む。一部の態様では、薬剤は、FHR-4のレベルを減少させることができるおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させることができる。
【0122】
一部の態様では、薬剤はFHR-4のレベルを減少させる。他の態様では、薬剤はFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる。一部の場合、薬剤は、FHR-4のレベルおよびFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる。他の場合、方法は、FHR-4のレベルを減少させる第1の薬剤およびFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる第2の薬剤を投与するステップを含む。あるいは、方法は、FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる第1の薬剤およびFHR-4のレベルを減少させる第2の薬剤を投与するステップを含んでもよい。用語「FHR-4のレベル」は、例えば、FHR-4の量または濃度を含む。FHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが、対象において、例えば、対象の血液中でおよび/または対象の肝臓において減少していることがある。
【0123】
薬剤は以下の特性:CFHR4遺伝子の発現を阻害するように作用する、FHR-4 mRNAを分解する、FHR-4タンパク質に結合する、FHR-4タンパク質を捕捉する、血液中のFHR-4タンパク質を捕捉する、FHR-4タンパク質の結合について競合する、FHR-4タンパク質の活性を遮断する、血液中のFHR-4の濃度を低減する、FHR-4タンパク質が血液を離れる能力を低減する、FHR-4タンパク質が眼に到達する能力を低減する、眼中のFHR-4の量を低減する、FHR-4タンパク質がBrMに入る能力を低減する、FHR-4媒介シグナル伝達を阻害する、C3bが関与する反応を調節する、FHR-4およびC3bが関与する反応を調節する、FHR-4タンパク質がC3bに結合する能力を低減する、C3b結合についてFHR-4タンパク質と競合する、C3bからのFHR-4の解離を促進する、C3コンバターゼ活性化を低減する、C3bBbの産生を低減する、C3非活性化を増加させる、iC3bの産生を増加させる、補体活性化を減少させる、および/または補体経路、例えば、第二補体経路を不活化する、のうちの1つまたは複数を有していてよい。
【0124】
本明細書では、「阻害する(inhibits)」、「阻害(inhibition)」、「低減する(reduces)」または「低減(reduction)」とは、制御状態と比べて低減、減少または減弱のことである。本明細書では、「FHR-4のレベルを減少させる」とは、制御状態と比べて低減または減弱のことである。FHR-4のレベルは、参照レベルと比べて、対象の血液中のFHR-4のレベル、量または濃度を決定することにより測定してもよい。FHR-4のレベルの減少および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルの減少は、薬剤による処置後、対象においてFHR-4のレベル/FHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定し、それを処置前の対象でのレベルと比べることにより測定してよい。FHR-4のレベルの減少とは、FHR-4の循環レベル/量/濃度が減少されるように、薬剤によるFHR-4の捕捉または結合のことでもよい。したがって、一部の場合、薬剤は、循環FHR-4のレベルを減少させる薬剤と呼ばれることもある。
【0125】
一部の態様では、FHR-4の量を減少させるまたはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤はアンチセンス核酸である。特定の標的核酸(例えば、タンパク質に翻訳可能なmRNA)の少なくとも一部に相補的であり、標的核酸の転写(例えば、DNAからmRNA)を低減する、または標的核酸(例えば、mRNA)の翻訳を低減する、または転写物スプライシングを変更する(例えば、一本鎖モルフォリノオリゴ)ことができる核酸(例えば、DNAまたはRNA分子)は、本明細書では「アンチセンス核酸」と呼ばれる。例えば、Weintraub、Scientific American、262:40頁(1990)を参照されたい。典型的には、合成アンチセンス核酸(例えば、オリゴヌクレオチド)は一般に15~25塩基長である。アンチセンス核酸は、標的核酸(例えば、標的mRNA)にハイブリダイズする(例えば、選択的にハイブリダイズする)ことができる。一部の場合、アンチセンス核酸は、厳格なハイブリダイゼーション条件下で標的核酸配列(例えば、mRNA)にハイブリダイズする。一部の場合、アンチセンス核酸は、中程度に厳格なハイブリダイゼーション条件下で標的核酸(例えば、mRNA)にハイブリダイズする。アンチセンス核酸は、例えば、ホスホロチオエート、メチルホスホン酸、およびアノマー糖-リン酸骨格改変ヌクレオチドなどの天然に存在するヌクレオチドまたは改変ヌクレオチドを含んでもよい。
【0126】
細胞では、アンチセンス核酸は対応するmRNAにハイブリダイズして、二本鎖分子を形成する。アンチセンス核酸は、細胞が二本鎖であるmRNAを翻訳しないので、mRNAの翻訳を妨害する。遺伝子のインビトロ翻訳を阻害するアンチセンス法の使用は、当技術分野では周知である(例えば、Marcus-Sakura、Anal.Biochem.1988年、172:289頁参照)。さらに、DNAに直接結合するアンチセンス分子を使用してもよい。アンチセンス核酸は、一本鎖でもまたは二本鎖核酸でもよい。アンチセンス核酸の非限定的例は、siRNA(ヌクレオチド類似体などの、その誘導体または前駆体を含む)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、saRNA(小活性化RNA(small activating RNA))、および核小体低分子RNA(small nucleolar RNA)(snoRNA)またはある特定のその誘導体もしくは前駆体を含む。アンチセンス核酸分子はRNA干渉(RNAi)を刺激することもある。
【0127】
したがって、アンチセンス核酸は、CFHR4の転写を妨害する、FHR-4 mRNAの翻訳を妨害する、および/またはFHR-4 mRNAの分解を促進してもよい。一部の場合、アンチセンス核酸は、CFHR4遺伝子の発現の低減を誘導することができる。
【0128】
アンチセンス核酸は、FHR-4をコードする遺伝子のいかなる領域を標的にしてもよい。一部の場合、遺伝子はCFHR-4である。一部の場合、アンチセンス核酸は、配列番号10、12、14、16、18または20のヌクレオチド配列の1つまたは複数を標的にしてよい。一部の場合、アンチセンス核酸は、配列番号12および/または14のヌクレオチド配列を標的にする。これらのアンチセンス核酸はsiRNA分子と呼ばれることもある。
【0129】
本明細書で提供される「siRNA」、「低分子干渉RNA」、「小型RNA」または「RNAi」とは、二本鎖RNAを形成する核酸のことであり、この二本鎖RNAは、遺伝子または標的遺伝子と同じ細胞で発現される場合には、遺伝子または標的遺伝子の発現を低減または阻害する能力がある。核酸のうちハイブリダイズして二本鎖分子を形成する相補的な部分は典型的には、実質的なまたは完全な同一性を有する。一態様では、siRNAまたはRNAiは、標的遺伝子と実質的なまたは完全な同一性を有し、二本鎖siRNAを形成する核酸である。態様では、siRNAは、相補的細胞mRNAと相互作用し、それによって相補的mRNAの発現を妨害することにより遺伝子発現を阻害する。典型的には、核酸は少なくとも約15~50ヌクレオチド長である(例えば、二本鎖siRNAのそれぞれの相補的配列は約15~50ヌクレオチド長であり、二本鎖siRNAは約15~50塩基対長である)。一部の態様では、長さは、20~30塩基ヌクレオチド、好ましくは、約20~25または約24~29ヌクレオチド長、例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30ヌクレオチド長である。
【0130】
RNAiおよびsiRNAは、例えば、Danaら、Int J Biomed Sci.2017年;13(2):48~57頁に記載されており、前記文献は参照によりその全体を本明細書に組み込む。アンチセンス核酸分子は、二本鎖RNA(dsRNA)または標的核酸配列、例えば、FHR-4に相補的である部分的に二本鎖RNAを含有してよい。二本鎖RNA分子は、分子内の第1のRNA部分と第2のRNA部分の間の相補的対合により形成される。RNA配列(すなわち、1つの部分)の長さは一般には30ヌクレオチド長未満(例えば、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10またはそれよりも少ないヌクレオチド)である。一部の態様では、RNA配列の長さは18~24ヌクレオチド長である。一部のsiRNA分子では、RNA分子の相補的な第1の部分と第2の部分がヘアピン構造の「茎」を形成する。2つの部分は、連結配列により結合させることができ、この配列はヘアピン構造の「ループ」を形成してもよい。連結配列は、長さが変動してもよく、例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、または13ヌクレオチド長でもよい。適切な連結配列は当技術分野では公知である。
【0131】
本発明の方法で使用するのに適したsiRNA分子は、当技術分野で公知のスキームにより設計してもよく、例えば、Elbashireら、Nature、2001年、411:494~8頁;Amarzguiouiら、Biochem.Biophys.Res.Commun.2004年 316(4):1050~8頁;およびReynoldsら、Nat.Biotech.2004年、22(3):326~30頁を参照されたい。siRNA分子を作成するための詳細は、Ambion、Dharmacon、GenScript、InvitrogenおよびOligoEngineなどのいくつかの商用供給業者のウェブサイトに見ることができる。いかなる潜在的siRNA候補の配列も一般に、BLASTアライメントプログラムを使用して他の核酸配列または核酸配列の多型とのいかなる潜在的な適合についても調べることができる(国立医学図書館インターネットウェブサイト参照)。典型的には、効果的な薬物候補を得るためにいくつかのsiRNAが作成されスクリーニングされており、米国特許第7,078,196号を参照されたい。siRNAはベクターから発現させるおよび/または化学的にもしくは合成的に作成することができる。合成siRNAは、商業上の供給元、例えば、Invitrogen(Carlsbad、Calif.)から入手可能である。RNAiベクターも商業上の供給元、例えば、Invitrogenから入手可能である。
【0132】
核酸分子はmiRNAでもよい。用語「miRNA」はその平易な通常の意味に従って使用され、遺伝子発現を転写後に調節することができる低分子非コードRNA分子のことである。一態様では、miRNAは、標的遺伝子に実質的なまたは完全な同一性を有する核酸である。一部の態様では、miRNAは、相補的細胞mRNAと相互作用して、それによって相補的mRNAの発現を妨害することにより遺伝子の発現を阻害する。典型的には、miRNAは少なくとも約15~50ヌクレオチド長である(例えば、miRNAのそれぞれの相補的配列は15~50ヌクレオチド長であり、miRNAは約15~50塩基対長である)。
【0133】
核酸分子はアプタマーでもよい。本明細書で使用される用語「アプタマー」とは、タンパク質、ペプチド、および小分子に結合する(例えば、高親和性および特異性で)オリゴヌクレオチド(例えば、短いオリゴヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチド)のことである。アプタマーは典型的には、相補的塩基対を形成するその傾向のせいで限定された二次または三次構造を有し、したがって、多様で複雑な分子構造に折り畳まれることができる場合が多い。三次元構造は、アプタマー結合親和性および特異性に不可欠であり、特異的な三次元相互作用はアプタマー-標的複合体の形成を駆動する。アプタマーは、指数関数的濃縮によるリガンドの全体的進化の過程により(SELEX as described in Ellington AD、Szostak JW、Nature 1990年、346:818~822頁;Tuerk C、Gold L.Science 1990年、249:505~510頁)、またはSOMAマー(スローオフレート改変アプタマー(slow off-rate modified aptamers))(Gold Lら、(2010)Aptamer-based multiplexed proteomic technology for biomarker discovery.PLoS ONE 5(12):e15004頁)を開発することにより、無作為化された配列の非常に大きなライブラリーからインビトロで選択することができる。本明細書に記載される使用に適したアプタマーは、FHR-4に対して特異的結合を示しうる。アプタマーは、FHR-4の機能を阻害する、例えば、FHR-4がC3bに結合するのをブロックするでもよい。
【0134】
一部の態様では、FHR-4の量を減少させる、またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤は、抗体または抗原結合分子(両方とも本明細書では「抗原結合分子」と呼ばれる)、例えば、抗FHR-4抗体である。一部の場合、抗原結合分子はFHR-4に特異的である。一部の場合、抗原結合分子はFHR-4への特異的結合を示す。一部の場合、抗原結合分子はC3bに特異的である。一部の場合、抗原結合分子はC3bへの特異的結合を示す。本明細書で使用される場合、「特異的結合」とは、抗原に対して選択的であり、非標的抗原への非特異的結合と識別することができる結合のことである。標的分子に特異的に結合する抗原結合分子は、好ましくは、それが他の非標的分子に結合するよりも大きな親和性でおよび/またはより長い持続期間標的に結合する。一部の場合、抗原結合分子は、FHR-1、FHR-2、FHR-3および/もしくはFHR-5よりも、またはFHおよび/もしくはFHL-1よりもFHR-4に対して特異的結合を示す。抗原結合分子は、1μMまたはそれ未満のKD、好ましくは、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦100pMのKDでヒトFHR-4に結合してよい。
【0135】
抗FHR-4抗原結合分子は、FHR-4の生物活性を阻害または低減するアンタゴニスト抗原結合分子でもよい。抗FHR-4抗原結合分子は、FHR-4の生物学的効果、例えば、C3bを介したC3コンバターゼの産生を刺激するその能力を中和する中和抗原結合分子でもよい。
【0136】
抗原結合分子は、FHR-4またはC3bの目的の特定の領域に結合してよい。抗原結合分子の抗原結合領域は、アミノ酸の連続する配列(すなわち、アミノ酸一次配列)からなる、FHR-4またはC3bの直鎖状エピトープに結合してもよい。一部の態様では、抗原結合領域分子は、アミノ酸配列のアミノ酸の断続的な配列からなる、FHR-4またはC3bの立体構造的エピトープに結合してもよい。
【0137】
抗原結合分子は、多特異性抗原結合分子でもよい。「多特異性の」とは、抗原結合分子が、1つよりも多い標的に対する特異的結合を示すことを意味する。一部の態様では、抗原結合分子は、二重特異性抗原結合分子である。一部の態様では、抗原結合分子は、少なくとも2つの異なる抗原結合ドメインを含む(すなわち、少なくとも2つの抗原結合ドメイン、例えば、非同一VHおよびVLを含む)。多特異性抗原結合分子は、Brinkmann and Kontermann MAbs(2017) 9(2):182~212頁に記載されるフォーマットなどの、いかなる適切なフォーマットでも提供しうる。前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。
【0138】
一部の態様では、抗原結合分子は、FHR-4および別の標的(例えば、FHR-4以外の抗原)に結合するので、少なくとも二重特異性である。用語「二重特異性の」とは、抗原結合分子が少なくとも2つのはっきり異なる抗原決定基に特異的に結合することができることを意味する。
【0139】
所与のポリペプチドが、所与の分子または別の所与のペプチド/ポリペプチドに特異的に結合する能力は、ELISA、表面プラズモン共鳴(SPR;例えば、Heartyら、Methods Mol Biol 2012年、907:411~442頁参照)、生体層干渉法(Bio-Layer Interferometry)(例えば、Ladら、J Biomol Screen.2015年、20(4):498~507頁参照)、フローサイトメトリーにより、または放射標識抗原結合アッセイ(RIA)酵素結合免疫吸着アッセイによりなどの当技術分野で公知の方法に従った分析により決定することができる。そのような分析を通じて、所与の分子への結合を測定し定量化することができる。一部の態様では、結合は、所与のアッセイにおいて検出される応答でもよい。結合親和性は、解離定数(KD)の点から表してもよい。
【0140】
ペプチド/ポリペプチドのうちの抗体が結合する領域は、抗体-抗原複合体のX線共結晶学分析(X-ray co-crystallography analysis)、ペプチドスキャニング、変異誘発マッピング(mutagenesis mapping)、質量分析による水素重水素交換分析、ファージディスプレイ、競合ELISAおよびタンパク質分解ベースの「保護」法を含む、当技術分野で周知の様々な方法を使用して当業者により決定することができる。そのような方法は、例えば、Gershoniら、BioDrugs、2007年、21(3):145~156頁に記載されている。前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。
【0141】
一部の態様では、抗原結合分子は、血液中のFHR-4の濃度を減少させる。一部の態様では、抗原結合分子は、例えば、血液中の循環FHR-4の量を減少させる。一部の態様では、抗原結合分子はFHR-4タンパク質を捕捉してもよい。一部の態様では、抗原結合分子は、FHR-4に結合して、FHR-4が眼に到達する、BrMに入る、および/または脈絡毛細管の毛細血管間の隔膜に入る能力を低減する。一部の態様では、抗原結合分子は、C3bへのFHR-4の結合を低減する。
【0142】
抗原結合分子が2つの結合パートナー間の相互作用を阻害する能力も、そのような相互作用の下流の機能的結果の分析により決定することができる。例えば、抗原結合分子がFHR-4とC3bの相互作用を阻害する能力は、例えば、ELISA、ウェスタンブロッティングを使用して反応からタンパク質の産生を検出することにより、または本明細書に記載される方法などの電気泳動法により、適切なアッセイにおいてC3bBbおよび/またはiC3bの産生の分析により決定してもよい。
【0143】
当業者であれば、例えば、本明細書に記載される技法または当技術分野で公知の技法を使用して適切な抗原結合分子を作成することができる。例えば、Chiu and Gilliland、Curr Opin Struct Biol.2016年、38:163~173頁、Jakobovits A、Curr Opin Biotechnol.1995頁 Oct;6(5):561~6頁、およびBruggemann Mら、Arch Immunol Ther Exp(Warsz).2015年;63(2):101~108頁を参照されたい。1つの適切な技法は、ファージディスプレイ技術である。例えば、Hammers and Stanley、J Invest Dermatol.2014年、134(2):e17頁およびBazan Jら、Hum Vaccin Immunother.2012年、8(12):1817~1828頁を参照されたい。抗原結合ポリペプチド鎖も、化学合成などの技法(例えば、Chandruduら、Molecules(2013)、18:4373~4388頁参照)、Green and Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第4版)、Cold Spring Harbor Press、2012年に、およびNat Methods.(2008);5(2):135~146頁に述べられている技法などの組換え発現、または無細胞タンパク質合成(CFPS;例えば、Zemellaら、Chembiochem(2015)16(17):2420~2431頁参照)により作成しうる。前記文献はすべてこれによりその全体を参照により組み込まれる。抗原結合分子はモノクローナルでよい。
【0144】
公知の抗FHR-4抗体/抗原結合分子の例は、上文に記載されている。
FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤は、例えば、FHR-4の捕捉剤でもよい。薬剤はタンパク質分子でもよい。一例として、例えば本明細書に記載される抗原結合分子があり、これは血液中のFHR-4を捕捉する。
【0145】
捕捉剤または抗原結合分子は、FHR-4AについてはSCR4/8/9またはFHR-4BについてはSCR4/5の領域でFHR-4に結合することがある(例えば、Hebecker and Jozsi、J Biol Chem.2012年、287(23):19528~36頁参照)。例えば、捕捉剤または抗原結合分子は、配列番号1の456位と578位、配列番号2の455位と577位、および/または配列番号3の209位と331位の間の配列に結合してもよい。
【0146】
薬剤は小分子でもよい。例えば、小分子はFHR-4タンパク質に結合し、FHR-4が補体活性化の部位に到達する能力を妨げる/低減する、および/またはFHR-4と正常な結合パートナー、例えば、C3bの間の相互作用を妨げ/低減してもよい。小分子は、FHR-4タンパク質の正しい折り畳みを妨げ/低減してもよい。一部の場合、小分子は、FHR-4と結合パートナーの間の結合を妨げる/低減する。一部の場合、小分子はFHR-4に結合する。
【0147】
FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤は、デコイ受容体でもよい。一部の態様では、デコイ受容体とは、FHR-4に結合することができるペプチドまたはポリペプチドのことである。受容体は、FHR-4に対する受容体でよく、その断片および誘導体を含む。デコイ受容体は、特定のリガンドを認識して結合できてもよいが、それに続く応答にシグナルを送るまたは活性化することができなくてもよい。デコイ受容体は、FHR-4に結合して複合体を形成してもよい。デコイ受容体は、FHR-4に結合して、FHR-4がFHR-4受容体に結合する能力または利用能を妨げる/低減することにより、FHR-4の阻害剤として機能してもよい。したがって、薬剤は、FHR-4がC3bを活性化するのに利用できなくなるようにFHR-4に結合する分子でよい。薬剤は、C3bに基づいていてよく、例えば、受容体はC3bの不活性型でもよい。薬剤は、配列番号8および/または配列番号9に基づいていてよい。薬剤は、C3cおよび/またはC3dに基づいていてよい。
【0148】
薬剤は、血液に投与される/存在している、または、例えば、眼の中でもしくは眼の近傍で組織に付着させてもよい。受容体は、補体活性化を阻害することができてもよい。受容体は、FHR-4とC3bの間の相互作用を阻害することができてもよい。受容体は、C3bの活性化を阻害する、および/またはC3コンバターゼの形成を阻害することができてもよい。
【0149】
一部の場合、受容体は、FHR-4活性を阻害することができる。一部の場合、デコイ受容体は、C3b/C3dのFHR-4結合ドメインに対応する領域を含む分子でもよい(例えば、Hellwage J.、FEBS Lett.1999年、462、345~352頁;Hellwage J.、J.Immunol.2002年、169、6935~6944頁;Hebecker and Jozsi、J Biol Chem.2012年、287(23):19528~36頁;およびNagar Bら、Science 1998年:1277~1281頁参照、前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。)。
【0150】
デコイ受容体は、可溶性でもよく(膜結合ではない)、または膜結合である、例えば、細胞表面で発現されてもよい。デコイ受容体は、ナノキャリアー、例えば、ナノ粒子、リポソーム、ビーズ、ポリマー、金属粒子、デンドリマー、ナノチューブまたはミクロサイズのシリカロッドの表面に提示されるおよび/または投与されてもよい。例えば、Wilczewska AZら、Pharmacol Rep.2012年、64(5):1020~1037頁を参照されたい。
【0151】
デコイ受容体がFHR-4結合について競合するかどうかを検出するための方法、例えば、SPR(例えば、Heartyら、Methods Mol Biol 2012年、907:411~442頁参照)、競合ELISAアッセイまたは固相結合アッセイは、本明細書に記載されている。他の適切な方法は当技術分野では公知である。
【0152】
FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤は、上記のカテゴリーのうちの1つよりも多くに分類されてもよい。例えば、抗原結合分子またはデコイ受容体は、崩壊剤でもよい。
【0153】
本明細書に記載される薬剤のいずれも、任意選択的に、単離される、および/または実質的に精製されてもよい。
例えば、本明細書に記載されるような、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤の投与は、好ましくは、「治療有効量」または「予防有効量」においてであり、これは個体に利点を示すのに十分である。投与される実際量、ならびに投与の速度および時間経過は、処置されている疾患の性質および重症度に依存する。処置の処方、例えば、投与量に関する決定は、一般医および他の医師の責任範囲内であり、典型的には、処置される状態、個々の患者の状態、送達部位、投与方法および実施者に知られている他の要因を考慮に入れる。上記の技法およびプロトコールの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第20版、2000年、pub.Lippincott、Williams&Wilkinsに見ることができる。薬剤は、それを必要とする対象に治療有効量で投与されてもよい。
【0154】
FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤は、臨床用途のための医薬組成物または薬物として処方してもよく、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはアジュバンドを含んでもよい。本発明に従って、薬学的に有用な組成物の生産のための方法も提供され、そのような生産方法は、薬剤を単離するステップ;および/または薬剤を薬学的に許容される担体、アジュバンド、賦形剤または希釈剤と混合するステップから選択される1つまたは複数のステップを含んでもよい。組成物は、局所的、非経口、全身性、腔内、静脈内、動脈内、筋肉内、くも膜下腔内、眼内、硝子体内、結膜内(intraconjunctival)、網膜下、上脈絡膜、皮下、皮内、くも膜下腔内、経口または経皮投与経路用に処方してもよく、これら投与経路は、注射もしくは注入、または点眼薬としての投与(すなわち、眼適用)を含んでよい。適切な製剤は、無菌または等張媒体中に薬剤を含んでもよい。薬物および医薬組成物は、ゲルを含む、流体形で処方してよい。流体製剤は、ヒトまたは動物身体の選択された器官または領域への注射または注入(例えば、カテーテルを介して)による投与用に処方してよい。本発明のさらなる側面は、医学的処置の方法で使用するための薬物または医薬組成物を製剤化または生産する方法であって、本明細書に記載されるFHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤を薬学的に許容される担体、アジュバンド、賦形剤または希釈剤と混合することにより、医薬組成物または薬物を処方するステップを含む方法に関する。
【0155】
一部の場合、薬剤は、肝臓に、例えば、1つまたは複数の肝細胞に投与される。一部の場合、薬剤は血液に投与される(すなわち、静脈内/動脈内投与)。一部の場合、薬剤は皮下に投与される。
【0156】
一部の場合、方法は、薬剤の標的化送達を含み、すなわち、対象での薬剤の濃度が他の部分に比べて身体の一部の部分で増加しているおよび/または薬剤が制御放出技法を介して送達される。一部の場合、方法は、静脈内、動脈内、筋肉内または皮下投与を含み、そこでは薬剤は、標的化薬剤送達系で処方される。適切な標的化薬剤送達系は、例えば、ナノ粒子、リポソーム、ミセル、ビーズ、ポリマー、金属粒子、デンドリマー、抗体、アプタマー、ナノチューブまたはミクロサイズのシリカロッドを含む。そのような系は、薬剤を所望の器官または組織に向けるための磁気要素を含んでよい。適切なナノキャリアーおよび薬剤送達系は、当業者には明らかになる。一部の場合、薬剤は特定の器官(複数可)または組織(複数可)への標的化送達用に処方される。一部の場合、薬剤は肝臓に送達される。一部の場合、方法は、静脈内、動脈内、筋肉内または皮下投与を含み、そこでは薬剤は、肝臓への標的化送達用に処方される。
【0157】
一部の場合、RNA、例えば、ナノ粒子ベースの製剤は、非肺組織へのその後の送達のための肺投与用に処方してもよく、例えば、US 2015/0157565 A1を参照されたい。前記特許文献はその全体を本明細書に組み込まれる。
【0158】
特定の投与様式および/または部位は、FHR-4レベルの低減および/またはCFHR4発現のレベルの低減が要求される位置に従って選択してもよい。一部の場合、方法は静脈内および/または動脈内投与を含む。一部の場合、方法は眼への投与を含む。CFHR4発現の低減が要求される場合には、FHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤を肝臓に投与してもよい。一部の場合、薬剤は1つまたは複数の肝細胞へ送達される。
【0159】
RNA送達のための方法は本明細書に記載されていて当技術分野で公知であり、例えば、Tatiparti Kら、「siRNA Delivery Strategies:A Comprehensive Review of Recent Developments.」Ed.Thomas Nann.Nanomaterials 7.4(2017):77頁、およびLehto Tら、Adv Drug Deliv Rev.2016年、106(Pt A):172~182頁に見ることができる。前記文献は、参照によりその全体を本明細書に組み込まれる。例えば、RNAは、裸で、またはナノ粒子、ポリマー、ペプチド、例えば、細胞浸透ペプチドを使用することにより、またはエクスビボトランスフェクションにより送達してもよい。ナノ粒子は、有機、例えば、ミセル、リポソーム、タンパク質、固体脂質粒子、固体ポリマー粒子、デンドリマー、およびポリマー治療薬でもよい。ナノ粒子は、ナノチューブまたは金属粒子などの無機であり、任意選択的に、有機分子を付加してもよい。ウイルスは、別のナノ粒子送達選択肢を示す。ナノ粒子は、エンドサイトーシスの速度を改善する、腎クリアランスおよび濾過を回避する、熱安定性を改善する、pH安定性を改善する、毒性効果を予防する、およびRNA負荷効率を改善するために最適化してもよい。さらなる封入法は、例えば、US 2015/0157675 A1に記載されている。
【0160】
投与は、処置する状態次第で、単独でまたは他の処置(例えば、他の治療または予防介入)と同時にもしくは順次に組み合わせてもよい。FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤ならびに別の治療剤は、同時にまたは順次に投与してもよい。一部の場合、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤は、例えば、本明細書に記載される補体標的化治療薬と同時にまたは順次投与される。
【0161】
本発明と一緒に使用するのに適した他の治療剤または技法は、食餌療法、光線力学療法(PDT)、レーザー凝固、抗VEGF(血管内皮成長因子)療法、および/または当技術分野で公知である追加の療法を含んでよく、例えば、Al-Zamil WM and Yassin SA、Clin Interv Aging.2017年8月 22;12:1313~1330頁を参照されたい。抗VEGF療法は、ラニビズマブ(Lucentis、Genentech/Novartis作製)、アバスチン(Genentech)、ベバシズマブ(オフラベルアバスチン)、およびアフリベルセプト(Eylea(登録商標)/VEGF Trap-Eye Regeneron/Bayerより)などの薬剤を含んでよい。本発明と一緒に使用するのに適したさらなる薬剤または技法は、APL-2(Apellis)、AdPEDF(GenVec)、カプセル化細胞技術(ECT;Neurotech)、乳酸スクアラミン(EVIZON(商標)、Genaera)、OT-551(抗酸化点眼薬、Othera)、酢酸アネコルタブ(Retaane(登録商標)、Alcon)、ベバシラニブ(bevasiranib)(siRNA、Acuity Pharmaceuticals)、ペガプタニブナトリウム(Macugen(登録商標))、およびAAVCAGsCD59(臨床試験識別子:NCT03144999)を含む。
【0162】
同時投与とは、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤と別の治療剤を、例えば、両方の薬剤を含有する医薬組成物(組合せ調剤)として一緒にまたは互いの直後に、任意選択的に同じ投与経路を介して、例えば、同じ組織、動脈、静脈または他の血管に投与することである。順次投与とは、ポリペプチド、核酸、ベクター、細胞もしくは組成物または治療剤の1つの投与、続いて所与の時間間隔後のもう1つの薬剤の個別投与のことである。2つの薬剤は同じ経路により投与されることは必要とされないが、一部の態様ではこの通りである。時間間隔はいかなる時間間隔でもよい。
【0163】
FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを減少させる薬剤の複数回投与が提供されてもよい。投与の1回もしくは複数回、または投与のそれぞれは、別の治療薬の同時または順次投与を伴ってもよい。
【0164】
複数回投与は、既定の時間間隔により隔てられていてもよく、この時間間隔は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、もしくは31日、または1、2、3、4、5、もしくは6カ月のうちの1つであるように選択してよい。例として、投与は、7日、14日、21日または28日(プラスまたはマイナス3、2、または1日)ごとに1回与えてもよい。
【0165】
本明細書に記載される薬剤は、ポリペプチド、核酸、ベクターまたは組成物を既定の速度で放出するために、持続放出送達系で処方してもよい。持続放出送達系は、特定の期間一定の薬物/治療薬濃度を維持しうる。一部の態様では、本明細書に記載される薬剤は、リポソーム、ゲル、植込錠、デバイス、または薬物ポリマーコンジュゲート、例えば、ハイドロゲルに処方される。
タンパク質/遺伝子発現のレベルを決定するステップ
例えば、試料中のFHR-4の量は、当技術分野で周知であるまたは本明細書に記載される技法を使用して測定してもよい。
【0166】
例えば、本明細書で提供されるいかなる方法も、FHR-4特異的ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を用いてFHR-4の量を測定してもよい。FHR-4の量は、FHR-4の濃度を決定することにより測定してよい。ELISAを実施するための方法は当技術分野では周知であり、例えば、Crowther JR、Methods in Molecular Biology、The ELISA Guidebook.Second Edition.Humana Press、a part of Springer Science+Business Media、LLC 2009年;Butler J.E. The Behaviour of Antigens and Antibodies Immobilized on a Solid Phase.In:M.H.V.Van Regenmortel、編.Structure of Antigens.Boca Raton、FL:CRC Press、1992年:209~259頁.Vol.1、209頁;CRC Press、Inc.;Lequin RM.Clinical chemistry 51.12(2005):2415~2418頁;およびEngvall and Perlmann.Immunochemistry 8.9(1971):871~874頁を参照されたい。前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。一部の場合、例えば、本明細書に記載されるように、FHR-4の量はサンドイッチELISAを使用して測定される。
【0167】
タンパク質を検出するのに適した他の方法は、タンパク質含有試料の吸光度を測定する、ブラッドフォードタンパク質アッセイ(例えば、Bradford M、Anal Biochem.1976年、72:248~254頁参照)、ビュレット試験由来アッセイ(Biuret test derived assays)例えば、ビシンコニン酸アッセイ(BCAアッセイ;例えば、Smith PKら、Anal.Biochem.1985年、150:76~85頁参照)またはローリータンパク質アッセイ(例えば、Lowry OHら、J.Biol.Chem.1951年、193:265~275頁;Sargent M.Anal.Biochem.1987年、163:476~481頁参照)、フルオレサミン技法(例えば、Bohlen Pら、Arch.Biochem.Biophys.1973年、155:213~220頁参照)、アミドブラック技法、コロイド金技法(例えば、Zeng Sら、Plasmonics.2011年、6(3):491~506頁;Tauran Yら、World J Biol Chem.2013年、4(3):35~63頁参照)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;例えば、Thammana M、RRJPA 2016年、5(2):22~28頁参照;液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS;例えば、Pitt JJ、Clin Biochem Rev.2009年;30(1):19~34頁参照)、タンパク質免疫沈降(例えば、Burgess RR、Methods Enzymol.2009年;463:331~42頁参照)、免疫電気泳動(例えば、Levinson、S.S.(2009).Immunoelectrophoresis.In eLS、(編)参照)、ウェスタンブロット(例えば、Mahmood and Yang、N Am J Med Sci.2012年;4(9):429~434頁参照)、タンパク質免疫染色(例えば、Ramos-Vara JA、Veterinary Pathology、2005年、42(4):405~426頁参照)、および質量分析(例えば、Bugni TS J.Nat.Prod.、2017年、80(2):574~575頁参照)を含む。すべての参考文献は、これによりその全体を参照により組み込まれる。
【0168】
CFHR4の発現のレベルは、例えば、Roth CM、Curr.Issues Mol.Biol.2002年 4:93~100頁およびKukurba KR and Montgomery SB、Cold Spring Harb Protoc.2015年、(11):951~969頁に概説されるように、本明細書に記載されるおよび/または当技術分野で周知である技法を使用して測定しうる。前記文献は、これによりその全体を参照により組み込まれる。例えば、遺伝子発現は、定量的PCR、リアルタイムPCT、シーケンシング技法、例えば、RNA配列次世代シーケンシング、マイクロアレイ、ノーザンブロット、およびリボヌクレアーゼプロテクションアッセイ(RPA)を使用して測定することができる。当業者であれば、必要に応じて、CFHR4の発現を測定するのに適した技法(複数可)を認識することができる。一部の場合、全RNAまたはcDNAは、最初に細胞試料から抽出し単離してもよい。
【0169】
標準分子生物学技法では、Sambrook、J.、Russel、D.W.Molecular Cloning、A Laboratory Manual.3 ed.2001年、Cold Spring Harbor、New York:Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
キット
本発明の側面では、部品のキットで、補体標的化治療薬ならびに/またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤を有する容器ならびに1つもしくは複数の生体試料においてFHR-4のレベルおよび/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定するための説明書を含むキットが提供される。
C3および補体調節タンパク質
C3のプロセシングは、例えば、Foleyら、J Thromb Haemostasis(2015)13:610~618頁に記載されており、前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。ヒトC3(UniProt:P01024;配列番号7)は、1,663アミノ酸配列(N終端22アミノ酸シグナルペプチドを含む)を含む。アミノ酸23から667がC3 β鎖(配列番号8)をコードし、アミノ酸749から1,663がC3 α’鎖(配列番号9)をコードする。C3 β鎖およびC3 α’鎖は鎖間ジスルフィド結合(C3 β鎖のシステイン559とC3 α’鎖のシステイン816の間で形成される)を通じて会合し、C3bを形成する。
【0170】
タンパク質分解性不活性型iC3bへのC3bのプロセシングは、C3b α’鎖がアミノ酸位1303および1320でタンパク質切断してα’鎖断片1(C3のアミノ酸位672から748に対応する)およびα’鎖断片2(C3のアミノ酸位1321から1663に対応する)を形成する。したがって、iC3bはC3 β鎖、C3 α’鎖断片1およびC3 α’鎖断片2を含む(ジスルフィド結合を介して会合している)。α’鎖断の切断はC3fも遊離し、これはC3のアミノ酸位1304から1320に対応する。
【0171】
C3bのiC3bへのプロセシングは、補体因子I(ヒトで遺伝子CFIによりコードされている)により遂行される。ヒト補体因子I(UniProt: P05156)は583アミノ酸配列(N終端18アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有する。前駆体ポリペプチドはフューリンにより切断されて成熟補体因子Iを産し、この因子は鎖間ジスルフィド結合により連結された重鎖(アミノ酸19から335)、および軽鎖(アミノ酸340から583)を含む。軽鎖のアミノ酸340から574は、C3bを切断してiC3bを産生する原因となる触媒三残基を含有するセリンプロテアーゼである補体因子Iのタンパク質分解ドメインをコードする(Ekdahlら、J Immunol(1990)144(11):4269~74頁)。
【0172】
iC3bを産生する補体因子IによるC3bのタンパク質切断は、補体因子Iについての補因子により促進される。補体因子Iについての補因子として作用することができる分子は、補体因子H、補体受容体1(CR1)、CD46、CD55およびC4結合タンパク質(C4BP)、SPICE、VCP(またはVICE)、ならびにMOPICEを含む。
【0173】
補体因子H構造および機能は、例えば、Wuら、Nat Immunol(2009)10(7):728~733頁に概説されており、前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。ヒト補体因子H(UniProt:P08603)は、1,233アミノ酸配列(N終端18アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有し、約60アミノ酸の20の補体調節タンパク質(CCP)ドメインを含む。
【0174】
補体受容体1(CR1)構造および機能は、例えば、Khera and Das、Mol Immunol(2009)46(5):761~772頁およびJacquetら、J Immunol(2013)190(7):3721~3731頁に概説されており、前記文献の両方ともこれによりその全体を参照により組み込まれる。ヒトCR1(UniProt:P17927)は、2,039アミノ酸配列(N終端41アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有し、30の補体調節タンパク質(CCP)ドメインを含む。
【0175】
CD46(補体調節タンパク質(MCP)とも呼ばれる)構造および機能は、例えば、Liszewski and Atkinson、Human Genomics(2015)9:7頁およびLiszewskiら、J Biol Chem(2000)275:37692~37701頁に記載されており、前記文献の両方ともこれによりその全体を参照により組み込まれる。ヒトCD46(UniProt:P15529)は、392アミノ酸配列(N終端34アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有し、309アミノ酸細胞外ドメイン(UniProt:P15529 35位から343位)、23アミノ酸膜貫通ドメイン(UniProt:P15529 344位から366位)、および26アミノ酸細胞質ドメイン(UniProt:P15529 367位から392位)を含む。
【0176】
CD55(崩壊促進因子(DAF)とも呼ばれる)構造および機能は、例えば、Brodbeckら、Immunology(2000)101(1):104~111頁に記載されており、前記文献はこれによりその全体を参照により組み込まれる。ヒトCD55(UniProt:P08174)は、381アミノ酸配列(N終端34アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有し、4つのCCPドメインを含む。
【0177】
C4結合タンパク質(C4BP)構造および機能は、Blomら、J Biol Chem(2001)276(29):27136~27144頁およびFukuiら、J Biochem(2002)132(5):719~728頁に記載されており、前記文献の両方ともこれによりその全体を参照により組み込まれる。ヒトC4BP(UniProt:P04003)は、597アミノ酸配列(N終端48アミノ酸シグナルペプチドを含む)を有し、8つのCCPドメインを含む。
【0178】
【0179】
【0180】
【0181】
必要に応じて、前述の説明で、または以下の特許請求の範囲で、または添付の図で開示され、その特定の形態でまたは開示された機能を実行するための手段、もしくは開示された結果を得るための手段もしくはプロセスの見地から表される特長は、本発明をその多様な形態で実現するために、別個に、またはそのような特徴の任意の組合せで利用してもよい。
【0182】
本発明は上記の例示的態様と併せて説明されてきたが、本開示を与えられたら、多くの等価の改変および変化が当業者には明らかになる。したがって、上で明らかにされる本発明の例示的態様は説明のためであって、限定的ではないと見なされる。本発明の精神と範囲から逸脱することなく、記載された態様に種々の変化を加えてもよい。
【0183】
いかなる疑問も避けるために、本明細書で提供されるいかなる理論的説明も、読者の理解を改善する目的で提供される。発明者は、これらの理論的説明のいずれにも縛られることを望まない。
【0184】
本明細書で使用されるいかなる見出しも、組織化を目的とするだけであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。
以下の特許請求の範囲を含む、本明細書の全体を通じて、文脈が別段要求しなければ、単語「含む(comprise)」および「含む(include)」、ならびに「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、および「含む(including)」などの変形は、述べられた整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を含むことを意味するが、他のいかなる整数もしくはステップまたは整数もしくはステップの群を排除することを意味しない。
【0185】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つ(a)」、「1つ(an)」および「その(the)」は、文脈が別段はっきりと指示しなければ、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。範囲は、「約」1つの特定の値から、および/または、「約」別の特定の値までとして本明細書では表されてよい。そのような範囲が表される場合、別の態様は1つの特定の値から、および/または、もう1つの特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」の使用により、値が近似値として表される場合、特定の値は別の態様を形成すると理解されることになる。数値との関連で用語「約」は随意であり、例えば、+/-10%を意味する。
【0186】
本発明の側面および態様は、この時点で、添付の図を参照して考察される。さらなる側面および態様が当業者には明らかになる。本文書で言及されるすべての文書は参照により本明細書に組み込まれる。
非限定的に本発明は以下の態様を含む。
[態様1]
対象が補体関連障害を発症するリスクがあるかどうかを判定するための方法であって、前記対象の血液中のFHR-4のレベルを決定するステップを含む方法。
[態様2]
対象の血液中のFHR-4のレベルの増加を判定するステップを含む、態様1に記載の方法。
[態様3]
FHR-4のレベルの増加が、補体関連障害を発症するリスクが増加していることを示す、態様1または態様2に記載の方法。
[態様4]
方法が、前記対象の血液中のFHR-4タンパク質の濃度を測定するステップを含む、態様1から3のいずれか一項に記載の方法。
[態様5]
15μg/ml超のFHR-4濃度が、前記対象が前記障害を発症するリスクが高いことを示す、態様4に記載の方法。
[態様6]
FHR-4のレベルおよび/または濃度が、対象からの血液由来試料において決定される、態様1から5のいずれか一項に記載の方法。
[態様7]
FHR-4のレベルおよび/または濃度がインビトロで決定される、態様1から6のいずれか一項に記載の方法。
[態様8]
障害が、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、脈絡膜血管新生(CNV)、早期発症黄斑変性症(EOMD)、黄斑ジストロフィー、緑内障、糖尿病性網膜症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、自己免疫ブドウ膜炎、膜性増殖性糸球体腎炎II型(MPGN II)、敗血症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、IgA腎症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、C3腎炎因子糸球体腎炎(C3 NF GN)、遺伝性血管性浮腫(HAE)、後天性血管浮腫(AAE)、脳脊髄炎、アテローム動脈硬化症、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、およびアルツハイマー病から選択される、態様1から7のいずれか一項に記載の方法。
[態様9]
方法が、対象においてAMDおよび/またはEOMDおよび/または黄斑ジストロフィーに関連する1つまたは複数の遺伝因子の存在または非存在を判定するステップをさらに含む、態様8に記載の方法。
[態様10]
FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子のレベルが増加している対象において補体関連障害を処置または予防する方法で使用するための補体標的化治療薬。
[態様11]
対象において補体関連障害を処置または予防するための方法であって、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している処置を受ける対象に、有効量の補体標的化治療薬を投与するステップを含む方法。
[態様12]
対象が、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定されている、態様10に記載の使用のための補体標的化治療薬、または態様11に記載の方法。
[態様13]
FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している対象において補体関連障害を処置または予防する方法で使用するための、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤。
[態様14]
対象において補体関連障害を処置または予防するための方法であって、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している対象に、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる有効量の薬剤を投与するステップを含む方法。
[態様15]
対象が、FHR-4のレベルが増加している、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加していると判定されている、態様13に記載の使用のための薬剤、または態様14に記載の方法。
[態様16]
薬剤が、以下の特性:CFHR4遺伝子の発現を阻害する、FHR-4 mRNAを分解する、FHR-4タンパク質に結合する、FHR-4タンパク質を捕捉する、血液中のFHR-4タンパク質を捕捉する、FHR-4タンパク質の結合について競合する、FHR-4タンパク質の活性を遮断する、血液中のFHR-4の濃度を低減する、FHR-4タンパク質が血液を離れる能力を低減する、FHR-4タンパク質が眼に到達する能力を低減する、眼中のFHR-4の量を低減する、FHR-4タンパク質がBrMに入る能力を低減する、FHR-4媒介シグナル伝達を阻害する、C3bが関与する反応を調節する、FHR-4およびC3bが関与する反応を調節する、FHR-4タンパク質がC3bに結合する能力を低減する、C3b結合についてFHR-4タンパク質と競合する、C3bからのFHR-4の解離を促進する、C3コンバターゼ活性化を低減する、C3bBbの産生を低減する、C3非活性化を増加させる、iC3bの産生を増加させる、補体活性化を減少させる、および/または補体経路を不活化する、のうちの1つまたは複数を有する、態様13もしくは態様15に記載の使用のための薬剤、または態様14もしくは態様15に記載の方法。
[態様17]
FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤が、アンチセンス核酸、アプタマー、抗原結合分子、捕捉剤、および/またはデコイ受容体から選択される、態様13、15もしくは16のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、または態様14~16のいずれか一項に記載の方法。
[態様18]
補体関連障害が、黄斑変性症、加齢性黄斑変性症(AMD)、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、脈絡膜血管新生(CNV)、早期発症黄斑変性症(EOMD)、黄斑ジストロフィー、緑内障、糖尿病性網膜症、溶血性尿毒症症候群(HUS)、非定型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、自己免疫ブドウ膜炎、膜性増殖性糸球体腎炎II型(MPGN II)、敗血症、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病(HSP)、IgA腎症、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群(SS)、関節リウマチ(RA)、C3腎炎因子糸球体腎炎(C3 NF GN)、遺伝性血管性浮腫(HAE)、後天性血管浮腫(AAE)、脳脊髄炎、アテローム動脈硬化症、多発性硬化症(MS)、パーキンソン病、およびアルツハイマー病から選択される、態様10、12、13、もしくは15~17のいずれか一項に記載の使用のための薬剤、または態様11、12、もしくは14~17のいずれか一項に記載の方法。
[態様19]
対象に対して、補体標的化治療薬またはFHR-4のレベルを減少させる、および/もしくはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤による処置について対象を選択するための方法であって、対象においてFHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルを決定し、任意選択的に、FHR-4のレベルおよび/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現のレベルが増加している場合には、治療薬または薬剤による処置について対象を選択するステップを含む方法。
[態様20]
対象において加齢性黄斑変性症(AMD)または早期発症黄斑変性症(EOMD)または黄斑ジストロフィーを処置または予防する方法における使用のための、FHR-4のレベルを減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤。
[態様21]
AMDが、地図状萎縮(「ドライ型」(すなわち、非滲出性)AMD)、初期AMD、中間AMD、後期/進行AMD、「ウェット型」(新生血管または滲出性)AMD、および脈絡膜血管新生(CNV)から選択される、態様20に記載の使用のための薬剤。
[態様22]
FHR-4の量を減少させる、および/またはFHR-4をコードする遺伝子の発現を減少させる薬剤は、FHR-4についての捕捉剤および/またはデコイ受容体である、態様20または態様21に記載の使用のための薬剤。
【実施例】
【0187】
実施例1
CFHR4遺伝子発現
AMDおよび非AMD対象から採取した眼組織はFHR-4をコードする遺伝子(CFHR4)の発現について分析した。
【0188】
CFHR4発現は、Whitmore SSら、Altered gene expression in dry age-related macular degeneration suggests early loss of choroidal endothelial cells.Mol Vis 2013年;19:2274~97頁により作成された一般に公開されているデータを使用して発明者らが分析した。手短に言えば、Whitmoreらは、ドナー眼を解剖し、斑RPEおよび脈絡膜を網膜から分離した。RNAはRPEおよび脈絡膜から抽出し、10,000を超える遺伝子の発現をエクソンベースのマイクロアレイ(Affymetrix)を使用して測定した。
【0189】
発明者らの分析の結果は
図1Aに示されている。CFHR4は、AMD由来でも非AMD対象由来でもドナー眼の網膜または脈絡膜では発現されないことが見出された。これとは対照的に、CFH(FHタンパク質をコードする)は両方のコホートで発現されることが見出された。
【0190】
次に、種々のヒト組織をCFHR4遺伝子発現について分析した。
組織特異的CFHR4発現は、遺伝子型組織発現(Genotype-Tissue Expression;GTEx)プロジェクトの一部として作成された一般に公開されているデータを使用して発明者らが分析した。GTEx Consortium(2015)Human Genomics.The genotype-tissue expression(GTEx)pilot analysis:multitissue gene regulation in humans.Science、348、648~660頁を参照されたい。
【0191】
27の組織でのCFHR4遺伝子発現の発明者らの分析は
図1Bに示されている。有意なCFHR4遺伝子発現は肝臓組織でのみ検出された。
FHR-4タンパク質の局在化
眼組織におけるFHR-4タンパク質の局在化は免疫組織化学により分析した。
【0192】
組織切片(10μm)は、以前記載された方法(Clark SJら、J Immunol.2014年、193:4962~4970頁)を使用して内在性FHR-4、コラーゲンIVまたはC3/C3bの存在について染色した。手短に言えば、組織切片は、PBSでの徹底洗浄(thorough washing)前に、冷却(-20℃)組織学的グレードアセトン(Sigma-Aldrich)およびメタノール(1対1で混合)と一緒に20秒間インキュベートした。組織切片は、PBS中0.1%(w/v)BSA、1%(v/v)ヤギ血清、および0.1%(v/v)TritonX-100を用いて室温で1時間ブロックした。PBSで洗浄後、組織切片は、10μg/mlの抗FHR-4(下記参照)を1μg/mlのコラーゲンIVウサギポリクローナル抗体と混合した抗体組合せ一緒に4℃で16時間インキュベートした。切片は洗浄し、PBS中1対250で希釈したビオチン化抗マウスIgG(カタログ番号BA_9200、Vector laboratories、Inc)を1時間用いて、FHR-4シグナルを増幅した。スライドをそれに続いて洗浄し、PBS中1対250で希釈したAlexa Fluor(登録商標)647ストレプトアビジン(カタログ番号S32357、Invitrogen)およびPBS中1対500で希釈したAlexa Fluor(登録商標)488コンジュゲートヤギ抗ウサギAb(Invitrogen、USA)を室温で2時間添加した。洗浄後、培地(Vectashield;H-1400、Vector Laboratories、Peterborough、UK)を用いたマウンティングおよびカバーガラスの適用前にDAPIを核対比染色剤として適用した(0.3mMで5分間)。
【0193】
ブランク対照切片の場合では、同じ抽出プロトコールに従うが、PBSが一次抗体に取って代わった。免疫組織化学での抗体特異性を試験するため、10倍モル過剰な純粋な組換えFHR-4を、組織切片への適用に先立って抗FHR-4Abと予備混合する予備吸着実験を実施した。すべての場合で、画像は、40x/0.5 EC Plan-neofluarおよび100x/0.5 EC Plan-neofluar対物レンズを使用してZeiss Axioimager.D2正立顕微鏡で収集し、Micromanagerソフトウェアv1.4.23を通じてCoolsnap HQ2カメラ(Photometrics)を使用して保存した。DAPI、FITCおよびCy5に対する特定の帯域通過フィルタセット(band pass filter sets)を使用して1つのチャネルからその次のチャネルへの滲みを防いだ。次に画像は加工してFiji ImageJ(http://imagej.net/Fiji/Downloads)を使用して分析した。1つのチャネルからその次のチャネルへの色の滲みを防ぐため、DAPI、FITCおよびCy5に対して特定の帯域通過フィルタセットを使用した。すべての画像は、ImageJ64(version 1.40g;http://rsb.info.nih.gov/ij)を使用して取り扱った。
【0194】
結果は
図2Aおよび2Bに示されている。
図2Aは、FHR-4が毛細管間の中隔に局在化することおよびBrMでは弱いラベリングも観察されることを示している。
図2Bは、ドルーズに局在化しているFHR-4を示している。スケールバーは20μmに等しい。
【0195】
このように、FHR-4は、眼近傍の組織に蓄積する前に肝臓で合成される。
実施例2
FHR-4抗体の作成
当技術分野で公知の標準プロトコールを使用して、完全フロイントアジュバンド中の組換えFHR-4を用いてマウスを免疫化する。抗FHR-4抗体の力価は、捕捉ELISAにおいて個々のマウスから血清をスクリーニングすることにより評価する。標準プロトコールを使用して、脾臓細胞を収穫し、骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作成する。ハイブリドーマを選択し、成長させておき、次に抗体産生を求めてスクリーニングする。陽性細胞を増大させ、抗体を精製する。
【0196】
実施例3
FHR-4はC3bに結合する
FHR-4が固定化されたC3bに結合する能力は、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用して分析した。
【0197】
SPRはBiacore 3000(GE Healthcare)を使用して実施した。センサー表面は、標準アミンカップリングを使用して、ヒトC3bをBiacore series Sカルボキシメチル化デキストラン(CM5)センサーチップ(GE Healthcare)のフローセル上に固定化することにより調製し、C3bタンパク質が存在しないブランクフローセルを含んだ。実験は、25℃および0.05%の界面活性剤P20を含むPBS中15μl/分の流速で実施した。FHR-4は、1~100μg/mlの濃度で3通り注射した。試料は150秒間注射し、さらの200秒間解離させ、チップは注射と注射の間に、チップをその次の注射に先立って0.05%の界面活性剤P20を含むPBS中に再平衡化する前1分間1MのNaClで再生させた。ブランクセルからそれぞれの応答値を引き算後、会合および解離速度定数をグルーバルデータ解析により決定した。すべての曲線は1対1ラングミュア会合/解離モデル(BIAevaluation 4.1;GE Healthcare)を使用してフィットさせた。
【0198】
結果は
図3に示されており、そこではFHR-4が1.1×10
-6MのKDで固定されたC3bに結合することが示されている。
FHR-4はC3b結合についてFH/FHL-1と競合する
固相結合アッセイを使用して、FHR-4がFHとFHL-1のC3bへの結合に打ち勝つことができるかどうかを評価した。
【0199】
精製されたC3bを、室温で16時間100μl/ウェルPBS中1μg/ウェルでマイクロタイタープレートのウェル(Nunc Maxisorb、Kastrup、Denmark)上に吸着させた。プレートは、アッセイバッファー(20mMのHEPES、130mMのNaCl、0.05%(v/v)のTween-20、pH7.3)中300μl/ウェル1%(w/v)BSAを用いて37℃で90分間ブロックした。この標準アッセイバッファー(SAB)はそれに続くすべてのインキュベーション、希釈および洗浄に使用し、すべてのステップは室温で実施した。SAB中のFHまたはFHL-1については100nMの一定濃度で作成し、漸増濃度のFHR-4は競合物質として500nMまで使用した。FH/FHR-4およびFHL-1/FHR-4混合物は、4時間固定されたC3bと一緒にインキュベートした。洗浄後、結合したFHまたはFHL-1タンパク質は、100μl/ウェルの0.5μg/mlのOX23抗体の添加により検出し、30分間インキュベートして、続いて洗浄し、1対1000希釈のAPコンジュゲート抗マウスIgG(Sigma-Aldrich)の100μl中で30分間インキュベートした。プレートは、0.05MのTris-HCl、0.1MのNaCl、pH9.3中1mg/mlのp-ニトロフェニルリン酸2ナトリウム溶液(Sigma-Aldrich)を100μl/ウェル使用して現像した。405nmの吸光度値は室温で10分間の現像後決定し、ブランクウェル(すなわち、固定化されたC3bのないウェル)に対して補正した。
【0200】
結果は
図4に示されている。漸増濃度のFHR-4は、固定されたC3bに結合するFHおよびFHL-1を漸進的に打ち負かすことができる。
FHR-4によるC3b分解の阻害
FHR-4がiC3bへのC3bの分解を阻害する能力を評価した。
【0201】
FHL-1の液相補因子活性は、全容積20μlのPBS中、37℃で15分間、精製されたFHL-1、C3bおよびFIを一緒にインキュベートすることにより測定した。反応ごとに、2μgのC3bおよび0.04μgのFI(因子I)を、反応あたり0.015μg~1μgに及ぶ変動する濃度のFHL-1と一緒に使用した。アッセイは、5μlの5×SDS還元試料バッファーを添加し100℃で10分間沸騰させて停止した。試料は、C3b分解産物帯域の分離を最大にするために、4~12%NuPAGE Bis Trisゲル上、200Vで60分間流した。使用した分子量マーカーは、Novex Sharp染色済みタンパク質標準(3.5~260kDa、カタログ番号LC5800、Life Technologies、Paisley、UK)であった。68kDaのiC3b産物帯域の密度は、ImageJ64(version 1.40g;rsb.info.nih.gov/ij)を使用して測定し、これを使用してFHL-1タンパク質のC3b分解効率を追跡した。FHR-4阻害アッセイでは、反応に使用したFHL-1の量は1μgで固定し、漸増量のFHR-4を添加して、FHL-1よりも最大5倍モル過剰なFHR-4を作り出した。他の点では、反応は以前と同じ条件下で実施する。すべての場合に、3つの別々の実験からの平均データを使用した。
【0202】
結果は
図5に示されている。漸増濃度のFHR-4は、FIおよびFHL-1によるiC3bへのC3bの分解を漸進的に阻害することができる。
FHR-4の役割の模式図は
図6に示されている。FHR-4は、C3b不活化の失敗を引き起こす因子Iに対する補因子としてFHL-1が作用するのを妨げる(C3bはiC3bに変換されない)。これにより、C3コンバターゼ形成および補体活性化が促進される。FHR-4は、このようにして、補体調節不全を促進する。
【0203】
実施例4
FHR-4レベルとAMDのリスクの間の関連
FHR-4レベルを、AMDを抱えたまたはなしの患者由来の血液血漿で測定して、FHR-4レベルがAMDリスクと関連しているかどうかを評価した。
【0204】
2つの別々のAMDコホート:進行AMDをAMDのない適合する対照と比べた患者由来の187の血漿試料(「発見コホート」)(106AMD対81非AMD)、および518の試料(304AMD対214非AMD)を含む「フルコホート」をFHR-4レベルについて分析した。
【0205】
試料は「ケンブリッジ」AMD研究、2001年と2007年の間、ロンドン、イングランド南東部およびイングランド北西部の眼科診療所から集めた参加者のいるAMDの症例対照研究(Yatesら、N Engl J Med.2007年、357:553~561頁)から抜き出した。すべての患者が少なくとも片目を脈絡膜血管新生(CNV)および/または地図状萎縮(GA)で冒されていた。患者は、度数が6よりも大きい近視性屈折異常または黄斑症の発症の一因となるもしくは黄斑症の診断を混乱させる恐れのある他の炎症性もしくは網膜血管疾患(retinovascular disease)(網膜血管閉塞症、糖尿病性網膜症、または脈絡網膜炎などの)の証拠があれば排除された。対照は、発端患者(index patients)の配偶者、パートナーまたは友人たちである。参加者全員が、自分の人種/民族的帰属を募集質問表に白人と記述した。参加者は眼科医の診察を受け、黄斑部のカラー立体的基底部写真撮影を受けた。画像は、Reading Centre、Moorfields Eye Hospital、Londonにおいて、加齢黄斑症および黄斑変性症の国際分類(Birdら、The International ARM Epidemiological Study Group.Surv Ophthalmol.1995年、39:367~374頁)を使用して類別した。血液試料は、面接時に入手し、-80℃で保存されたリチウム-ヘパリン血漿試料はFHR-4測定のために後で使用した。
【0206】
FHR-4濃度は、最適化された自家製サンドイッチELISAアッセイを使用して測定した。Nunc-Immuno(商標) MaxiSorp(商標)96ウェルプレートを、5μg/ml(0.1Mの炭酸バッファー、pH9.6中)のモノクローナル抗FHR-4抗体 4E9の50μl/ウェルを用いて被覆した。PBS+0.1%のTween-20(PBST)中2%BSAにおいてブロック後、プレートはPBST中で洗浄し、0.1%のPBSTに希釈した精製FHR-4タンパク質の希釈系列を2通りウェルに添加して、標準曲線を作成した。試験用試料は、1対40希釈で2通り残りのウェルに添加し(50μl/ウェル)、プレートは37℃で1.5時間インキュベートした。プレートはPBST中で洗浄し、1μg/mlのHRP標識抗FHR-4モノクローナル抗体の50μl/ウェルを添加し、プレートは室温で1時間インキュベートした。洗浄後、50μl/ウェルのオルトフェニレンジアミン(SIGMAFAST(商標) OPD、Sigma-Aldrich、UK)を添加してプレートを現像し、反応は等容積の10%硫酸を添加することにより5分後に停止させた。吸光度は、492nmでプレートリーダーにおいて測定し、タンパク質濃度は、GraphPadPrism5を使用してプロットした標準曲線から内挿した。
【0207】
結果は
図7Aから7Cに示されている。(7A)発見コホートでの血漿試料のFHR-4測定値により、進行AMDを抱えた対象で平均FHR-4レベルが上昇していることが示された(7.8±0.7μg/ml対5.7±0.5μg/ml、P=0.0208)。(7B)発見コホート由来のFHR-4測定値は、FHR-4濃度の百分率分布について分析し、AMD対象の約12%が15μg/mlよりも大きな血液血漿FHR-4レベルがあった。さらに、0%の非AMD対象と比べて、AMD対象の5.8%が20μg/mlよりも大きな血液血漿FHR-4レベルがあった。(7C)もっと大きなフルコホートを使った再現実験では類似の結果を示し、AMD対象の5%が20μg/mlよりも大きな血液血漿FHR-4レベルがあった。
【0208】
実施例5
CFHR4発現のsiRNAノックダウン
CFHR4の異なる領域を標的にするsiRNA分子を、肝臓細胞におけるCFHR4発現に対するその効果について試験した。
【0209】
ヒト肝癌細胞株由来のHuH細胞を、37℃で、5%CO2インキュベーター中、10%のウシ胎仔血清(FBS、Sigma、カタログ番号F9665)および1%のペニシリンストレプトマイシン(Pen/Strep、Sigma P0781)を補充した低グルコースダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、Sigma、カタログ番号D6046)で培養した。6つのsiRNA標的配列(siRNA1~6;配列番号10、12、14、16、18および20)および6つの負の対照siRNA配列(スクランブルsiRNA;配列番号11、13、15、17、19および21)を社内で設計し、Ambion(Life technologies Ltd)により作成した。
【0210】
ヒト肝癌細胞は24ウェルプレートに播種し(50,000細胞/ウェル)、培養した。24時間後、1μlのLipofectamine RNAimax(Invitrogen、カタログ番号13778-075)を使用して24時間、細胞に10nMのsiRNA1~6、もしくはプールした6つのsiRNAすべてをまとめて、またはその対応するスクランブルsiRNA対照をトランスフェクトした。すべての反応は2通り実行した。
【0211】
トランスフェクション後24時間後、RNAを、Isolate RNA Mini Kit(Bioline、カタログ番号BIO-52072)を使用して抽出し、cDNAは、High-Capacity cDNA逆転写キット(Applied Biosystems、カタログ番号4368814)を使用して合成した。
【0212】
定量的PCR反応は、予め設計されたFAM標識TaqManプローブ(Thermo Fisher Scientific、Life Technologies)を製造業者の説明書に従って使用して実施した。手短に言えば、10ngのcDNAを、0.5μlのCFHR4 TaqManプローブ(HS00198577_m1)またはGAPDH TaqManプローブ(Hs02758991_g1)、5μlの2×反応マスターミックス(4440040)を含む反応混合液に、10μlの最終反応容積で再懸濁した。試料は、ABI Step One熱サイクラー(Applied Biosystems)を使用して、以下の熱サイクル条件:42℃で5分間、95℃で10秒間および95℃で5秒間を40サイクルおよび60℃で34秒間を使用して2通り実行した。CFHR4遺伝子発現はGAPDH発現に正規化し、相対的発現はΔΔCt法により決定した。
【0213】
結果は
図8Aおよび8Bに示されている。qPCRデータは、siRNA1~3、5および6(配列番号10、12、14、18、20)がCFHR4発現を有意に低減したことを示している(8A;siRNAごとのデータは、その等価なスクランブルsiRNA負の対照の隣に示されている)。siRNA2および3(配列番号12、14)ならびにプールされたsiRNAは最大のCFHR4ノックダウン効果を有していた。
図8Bは、スクランブルsiRNAがCFHR4発現に対して何の効果もなかったことを示している。
【配列表】