(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ボール弁及び弁動作方法
(51)【国際特許分類】
F16K 5/06 20060101AFI20240408BHJP
F16K 5/20 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
F16K5/06 G
F16K5/20
(21)【出願番号】P 2020566928
(86)(22)【出願日】2019-05-31
(86)【国際出願番号】 EP2019064246
(87)【国際公開番号】W WO2019229265
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-31
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2018-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(32)【優先日】2019-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】520462506
【氏名又は名称】トルブーン バルブ ベスローテン フェンノートンシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トルブーン、テオドルス ヨハネス
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04029292(US,A)
【文献】特公昭36-018126(JP,B1)
【文献】特開2017-194129(JP,A)
【文献】特公昭36-023289(JP,B1)
【文献】実開昭51-161628(JP,U)
【文献】米国特許第04141536(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00- 5/22
35/00-35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁を通る流体の流れを調整、方向付け又は制御する、ボール弁(1)であって、
‐第1ポート(3)、第2ポート(4)、及び前記第1ポートと前記第2ポートとの間に延在する内部空間(2a)を含む弁箱(2)と、
‐前記弁箱の前記内部空間内に配置される弁座(10)と、
‐前記弁箱の前記内部空間の内側に移動可能に配置されて前記弁座と連動する弁部材(8)と、
‐前記弁部材と係合して前記弁部材を移動させる弁棒(6)とを備え、
前記弁部材が、前記弁部材の係合位置において前記弁座と係合するように構成される弁体(11)を含み、
前記弁部材が、第2の位置を介して、前記係合位置と第1の位置との間を移動可能であり、前記弁体が、前記弁部材の前記第2の位置において、前記弁座から離間して前記弁座と一直線であり、前記弁体が、前記弁部材の前記第1の位置において、前記第2の位置の状態よりも前記弁座から離間し、
前記弁体が前記弁座及び前記弁箱から離間した状態で、前記弁部材が、前記第1の位置と前記第2の位置との間で回転可能であり、
前記弁部材が、前記第2の位置と前記係合位置との間を、前記弁座によって画成される接触面に略垂直な方向に移動可能である、前記ボール弁において、
前記弁棒が、前記弁部材の前記第1の位置に対応する第1の回転位置と、前記弁部材の前記係合位置に対応する第3の回転位置との間において、前記弁部材の前記第2の位置に対応する第2の回転位置が、前記第1の回転位置と前記第3の回転位置との間にある状態で、前記弁棒の縦軸線周りに回転可能であり、
前記弁部材と前記弁棒とが、前記弁棒の前記第1の回転位置と前記第2の回転位置との間において、前記弁部材が前記第1の位置と前記第2の位置との間を移動できる第1の構成によって結合し、
前記弁部材と前記弁棒とが、前記弁棒の前記第2の回転位置と前記第3の回転位置との間において、前記弁部材が前記第2の位置と前記係合位置との間を移動できる、前記第1の構成と異なる第2の構成によって結合
し、前記ボール弁が、前記弁棒が前記第1の回転位置と前記第3の回転位置との間で90度回転するように構成されることを特徴とする、ボール弁。
【請求項2】
前記弁部材が、前記弁部材の前記第1の位置において、前記第1及び第2ポートと一直線になるようになっている、前記弁部材を通って延在する流路(9)を含み、前記弁体が、前記弁部材の非貫通孔部分である、請求項1に記載のボール弁。
【請求項3】
前記第1の構成において、前記弁部材と前記弁棒とが、前記弁部材が前記弁棒と共に前記弁棒の前記縦軸線周りに回転できる2つの別々の場所で、互いに結合し、前記第2の構成において、前記弁部材と前記弁棒とが、前記2つの場所の内の1つのみで、互いに結合する、請求項1
又は2に記載のボール弁。
【請求項4】
前記第2の構成において、前記弁部材が前記弁箱に結合して、前記弁部材の、前記弁棒の前記縦軸線周りの回転を防止する、請求項3に記載のボール弁。
【請求項5】
前記弁棒が、前記弁部材の対応する凹部(22a)内に受け入れられる弁棒部分(21a)を含み、前記弁棒部分及び前記凹部が、前記弁棒の前記縦軸線に対して偏心して配置され、前記第2の構成において、前記弁部材を前記第2の位置と前記係合位置との間を移動させるように構成される、請求項1
~4のいずれか一項に記載のボール弁。
【請求項6】
前記弁箱が、対応する凹部(38)を含む結合要素(37)を備え、前記弁棒が、対応する凹部(36)を含む結合要素(21)を備え、前記弁部材が、前記弁部材に旋回可能に接続される共通の部材(34)に接続した第1係止部材(32)と第2係止部材(33)とを含む結合要素(30)を備え、前記第1係止部材が、前記第1の構成において、前記弁棒の前記結合要素の前記凹部内に受け入れられるように構成され、前記第2係止部材が、前記第2の構成において、前記弁箱の前記結合要素の前記凹部内に受け入れられるように構成される、請求項4に記載のボール弁。
【請求項7】
前記ボール弁が、前記弁棒が前記第1の回転位置と前記第2の回転位置との間でα度回転し、前記第2の回転位置と前記第3の回転位置との間でβ度回転するように構成され、αがβよりも大きい、請求項
1に記載のボール弁。
【請求項8】
αが、45度~89度の範囲内であり、好適には50度~85度の範囲内であり、より好適には60度~85度の範囲内であり、最も好適には70度~85度の範囲内である、請求項
7に記載のボール弁。
【請求項9】
弁を通る流体の流れを調整、方向付け又は制御するように、ボール弁を操作する方法であって、前記弁が、
‐第1ポート、第2ポート、及び前記第1ポートと前記第2ポートとの間に延在する内部空間を含む弁箱と、
‐前記弁箱の前記内部空間内に配置される弁座と、
‐前記弁箱の前記内部空間の内側に移動可能に配置されて前記弁座と連動する弁部材であって、前記弁部材の係合位置において前記弁座と係合するように構成される弁体を含む弁部材と、
‐前記弁部材と係合して前記弁部材を移動させる弁棒とを備え、
a)前記弁棒を、前記弁部材の第1の位置に対応する第1の回転位置から、前記弁部材の第2の位置に対応する第2の回転位置まで、前記弁棒の縦軸線周りに回転させて、前記弁体が、前記弁部材の前記第2の位置において、前記弁座から離間して前記弁座と一直線であり、前記弁体が、前記弁部材の前記第1の位置において、前記第2の位置の状態よりも前記弁座から離間し、前記弁部材が、前記弁体が前記弁座及び前記弁箱から離間した状態で、前記弁部材と前記弁棒との第1の結合構成によって、前記第1の位置から前記第2の位置まで回転する工程と、
b)前記弁棒を、前記第2の回転位置から、前記弁部材の前記係合位置に対応する第3の回転位置まで、更に回転させて、前記弁部材が、前記第1の結合構成と異なる、前記弁部材と前記弁棒との第2の結合構成によって、前記第2の位置から前記係合位置まで、前記弁座によって画成される接触面に略垂直な方向に移動する工程とを含
み、前記弁棒が、前記第1の回転位置と前記第3の回転位置との間で90度回転する方法。
【請求項10】
弁を通る流体の流れを調整、方向付け又は制御するように、ボール弁を操作する方法であって、前記弁が、
‐第1ポート、第2ポート、及び前記第1ポートと前記第2ポートとの間に延在する内部空間を含む弁箱と、
‐前記弁箱の前記内部空間内に配置される弁座と、
‐前記弁箱の前記内部空間の内側に移動可能に配置されて前記弁座と連動する弁部材であって、前記弁部材の係合位置において前記弁座と係合するように構成される弁体を含む弁部材と、
‐前記弁部材と係合して前記弁部材を移動させる弁棒とを備え、
‐前記弁部材を移動させ、
a)前記弁棒を、前記係合位置に対応する第3の回転位置から、前記弁部材の第2の位置に対応する第2の回転位置まで、前記弁棒の縦軸線周りに回転させて、前記弁体が、前記弁部材の前記第2の位置において、前記弁座から離間して前記弁座と一直線であり、前記弁部材が、前記弁部材と前記弁棒との第2の結合構成によって、前記係合位置から前記第2の位置まで、前記弁座によって画成される接触面に略垂直な方向に移動する工程と、
b)前記弁棒を、前記第2の回転位置から、前記弁部材の第1の位置に対応する第1の回転位置まで、更に回転させて、前記弁体が、前記弁部材の前記第1の位置において、前記第2の位置の状態よりも前記弁座から離間し、前記弁部材が、前記弁体が前記弁座及び前記弁箱から離間した状態で、前記第2の結合構成と異なる、前記弁部材と前記弁棒との第1の結合構成によって、前記第2の位置から前記第1の位置まで回転する工程とを含
み、前記弁棒が、前記第1の回転位置と前記第3の回転位置との間で90度回転する方法。
【請求項11】
前記弁棒が、前記第1の回転位置と前記第2の回転位置との間でα度回転し、前記第2の回転位置と前記第3の回転位置との間でβ度回転し、αがβよりも大きい、請求項
9又は10に係る方法。
【請求項12】
αが、45度~89度の範囲内であり、好適には50度~85度の範囲内であり、より好適には60度~85度の範囲内であり、最も好適には70度~85度の範囲内である、請求項1
1に係る方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弁に関し、特に、弁を通る流体の流れを調整、方向付け又は制御する、ボール弁に関する。こうした弁は一般に知られており、通常、少なくとも以下の構成要素を含む。
‐第1ポート、第2ポート、及び第1ポートと第2ポートとの間に延在する内部空間を含む弁箱と、
‐弁箱の内部空間内に配置される弁座と、
‐弁箱の内部空間の内側に移動可能に配置されて弁座と連動する弁部材と、
‐弁部材と係合して弁部材を移動させる弁棒。
【背景技術】
【0002】
弁部材は、通常、弁部材の係合位置において弁座と係合するように構成される弁体を含み、例えば、弁座を通る流体の流れを閉鎖したり、流体の流れを、所定の流経路に沿って流れるように方向付けたりする。
【0003】
多くのボール弁は、弁部材が、弁座と接触した(又は摺接した)状態のままで、弁箱の内側で回転する種類のものである。この種類のボール弁には、弁部材が、弁座部材と接触した状態のままで回転又は摺動回転して、表面圧力を加え続けることから、弁座及び/又は弁体が摩耗して、封止機能が長期間持続されないという問題がある。
【0004】
この問題に対処するために、特許文献1によって他の種類のボール弁が提案されている。特許文献1では、弁部材と係合する弁棒であって、内ねじのナットを弁棒の外ねじ部分に対して回転させることで軸方向に移動する弁棒の使用を教示している。誘導ピンが、筐体内に配置されて、弁棒の外周上に形成された溝と連動することで、弁棒の移動を制御して、弁棒が軸方向に移動している間、弁部材の移動を制御するようになっている。溝は、直線誘導部分と回転誘導部分とを有する。誘導ピンが回転誘導部分内に受け入れられると、弁棒の回転伝達部が弁部材と接触して、弁部材を回転軸周りに回転させることができる。誘導ピンが直線誘導部分内に受け入れられると、上記の回転軸周りの弁部材の回転は防止され、弁棒の、傾斜面を含む押力伝達部が、弁部材と接触して、弁部材を弁座に押し付ける。弁部材の全移動の間、弁棒と弁部材との結合は不変であり、つまり、弁棒の同一の端部が、弁部材の同一の部分と動作可能に接触している。なお、弁部材の移動は、まず、弁棒の移転及び回転を同時に行い、続いて、弁棒を回転させることなく、弁棒の移転のみを行うことで行われる。
【0005】
この種類のボール弁の欠点は、ボール弁の設置空間が必要となる点である。また、弁棒を軸方向に移動させるのに、回転可能ナット及び弁棒の外ねじ部分を用いることから、弁部材の移動に多くの時間を要し、自動流量制御等にあまり適さないボール弁となってしまう。更に、弁の開閉に極めて大きな力を要する。
【0006】
特許文献1の欠点に対処するために、特許文献2によって更に他の種類のボール弁が提案されている。特許文献2では、2つの弁棒、つまり、弁部材に接続されて、回転軸周りの回転力を弁部材に伝達可能となっている第1弁棒及び、弁部材を挟んで、第1弁棒の反対側に配置される第2弁棒の使用を教示している。第2弁棒は、第1弁棒と同軸又は平行の軸周りに回転可能であり、弁部材を弁座に向かって押すようになっている。ここでも、弁部材の全移動の間、2本の弁棒と弁部材との結合は不変であり、つまり、第1及び第2弁棒の同一の端部が、弁部材の同一の部分それぞれと動作可能に接触している。なお、弁部材の移動は、まず、第1弁棒を回転させて、続いて、第1弁棒を回転させることなく、第2弁棒を回転させることで行われる。
【0007】
この種類のボール弁の欠点は、弁の両側にある2つの弁棒を操作しなければならず、通常用いられる他のボール弁よりも操作が複雑になる点である。また、弁部材がまだ弁座に押し付けられている状態で、第1弁棒が操作される虞が生じるため、ここでもまた、弁体の摩耗によって封止機能が低下する虞や、密封のための第2弁棒の操作が忘れられて、弁が完全に閉鎖されない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許公開第3,515,371号明細書
【文献】米国特許公開第2008/0093574号明細書
【発明の概要】
【0009】
以上のことから、本発明は、弁座及び/又は弁部材の弁体の摩耗を最小限にする、好適には回避することが可能な状態で、小型化され且つ容易で迅速な操作ができる弁、特にボール弁を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の第1の態様によれば、弁を通る流体の流れを調整、方向付け又は制御する、ボール弁であって、
‐第1ポート、第2ポート、及び第1ポートと第2ポートとの間に延在する内部空間を含む弁箱と、
‐弁箱の内部空間内に配置される弁座と、
‐弁箱の内部空間の内側に移動可能に配置されて弁座と連動する弁部材と、
‐弁部材と係合して弁部材を移動させる弁棒とを備え、
弁部材が、弁部材の係合位置において弁座と係合するように構成される弁体を含み、弁部材が、第2の位置を介して、係合位置と第1の位置との間を移動可能であり、弁体が、弁部材の第2の位置において、弁座から離間して弁座と一直線であり、弁体が、弁部材の第1の位置において、第2の位置の状態よりも弁座から離間し、弁体が弁座及び弁箱から離間した状態で、弁部材が、第1の位置と第2の位置との間で回転可能であり、弁部材が、第2の位置と係合位置との間を、弁座によって画成される接触面に略垂直な方向に移動可能であり、弁棒が、弁部材の第1の位置に対応する第1の回転位置と、弁部材の係合位置に対応する第3の回転位置との間において、弁部材の第2の位置に対応する第2の回転位置が、第1の回転位置と第3の回転位置との間にある状態で、弁棒の縦軸線周りに回転可能であり、弁部材と弁棒とが、弁棒の第1の回転位置と第2の回転位置との間において、弁部材が第1の位置と第2の位置との間を移動できる第1の構成によって結合し、弁部材と弁棒とが、弁棒の第2の回転位置と第3の回転位置との間において、弁部材が第2の位置と係合位置との間を移動できる、第1の構成と異なる第2の構成によって結合する、ボール弁が提供される。
【0011】
本発明の第1の態様は、弁棒と弁部材との第1の結合構成によって、第1の回転位置と第2の回転位置との間において、弁部材の第1の移動が行われ、第1の構成と異なる、弁棒と弁部材との第2の結合構成によって、第2の回転位置と第3の回転位置との間において、第1の移動と異なる第2の移動が行われる、第1の回転位置と第3の回転位置との間における弁棒のシンプルな回転によって、組み込み時の寸法が縮小でき且つ容易で迅速な操作ができるようになるという見識に基づく。この結果、弁棒の単一の回転によって、弁座によって画成される接触面に略垂直な方向で弁座に近付くことを含む、弁部材の2つの異なる移動が得られ、単一の弁棒を軸方向に移動させる必要なく、弁座及び/又は弁部材の摩耗を最小限にしたり回避したりすることができることから、先行技術と比較して設置空間が縮小される。第1の移動の間の弁座及び/又は弁体の摩耗は、弁体と弁座との間の距離及び弁体と弁箱との間の距離を維持することで回避される。
【0012】
特許文献1に係るボール弁は、このボール弁も、弁部材の異なる動きを実行するのに、この場合は弁棒上で動作するナットである1つの構成要素のみの回転を必要とすることから、クレームされる本発明の第1の態様と同じ目的をもつものと考えられる。しかしながら、弁部材の全移動の間、弁棒と弁部材との結合は不変であり、つまり、弁棒の同一の端部が、弁部材の同一の部分と動作可能に接触している。なお、弁部材の移動は、まず、弁棒の移転及び回転を同時に行い、続いて、弁棒を回転させることなく、弁棒の移転のみを行うことで行われる。
【0013】
一実施例では、弁部材は、弁部材の第1の位置において、第1及び第2ポートと一直線になるようになっている、弁部材を通って延在する流路を含み、弁体は、弁部材の非貫通孔部分である。弁部材の第1の位置は、流体がボール弁を通って流れるようにする、開放位置と呼ばれてもよく、弁部材の第2の位置は、弁部材がボール弁を通る流体の流れを少なくとも部分的に遮る、遮閉鎖位置と呼ばれてもよく、弁部材の係合位置は、ボール弁を通る流体の流れを防止する、閉鎖位置と呼ばれてもよい。
【0014】
一実施例では、第1の構成において、弁部材と弁棒とが、弁部材が弁棒と共に弁棒の縦軸線周りに回転できる2つの別々の場所で、互いに結合し、第2の構成において、弁部材と弁棒とが、2つの場所の内の1つのみで、互いに結合する。1つの場所において弁棒と弁部材との結合を解くことによって、弁棒が更に回転した際に、弁部材が、第2の位置と係合位置との間を他の方向に移動できるようになる。好適には、第2の構成において、弁部材は弁箱と結合して、弁部材の、弁棒の縦軸線周りの回転を防止し、第2の構成によって弁部材と弁棒とが互いに結合すると、弁部材を、弁座に向かって又は弁座から、弁棒の縦軸線に垂直な方向に移動又は旋回させる。
【0015】
なお、弁棒と弁部材との結合の第1及び第2の構成は、代わりに、弁棒と弁部材との第1の結合構成及び第2の結合構成と呼ばれてもよい。
【0016】
一実施例では、弁棒は、弁部材の対応する凹部内に受け入れられる弁棒部分を含み、弁棒部分及び凹部は、弁棒の縦軸線に対して偏心して配置され、第2の構成において、弁部材を第2の位置と係合位置との間を移動させるように構成される。
【0017】
一実施例では、弁箱は、対応する凹部を含む関連した結合要素を備え、弁棒は、対応する凹部を含む関連した結合要素を備え、弁部材は、弁部材に旋回可能に接続される共通の部材に接続した第1係止部材と第2係止部材とを含む結合要素を備え、第1係止部材は、第1の構成において、弁棒の結合要素の凹部内に受け入れられるように構成され、第2係止部材は、第2の構成において、弁箱の結合要素の凹部内に受け入れられるように構成される。
【0018】
利点は、弁部材の結合要素が、第1の結合構成における弁棒との結合と、第2の構成における弁箱との結合とに切り替わり、結合要素が弁棒の回転によって自動的に動作する点である。
【0019】
一実施例では、ボール弁は、弁棒が、弁棒の第1の回転位置と第3の回転位置との間で90度回転するように構成される。任意の角度を用いてもよいが、対応する開閉位置間での弁棒の90度の回転移動及びその任意の倍数(すなわち、180度及び270度)によって、任意の他の角度においても、どちらの回転位置が開放弁又は閉鎖弁に対応するか及び、弁棒が第1の回転位置と第3の回転位置との間の全移動を完了するだけ十分に回転しているか否かが、明確に区別できるという利点が得られる。例えば、ハンドルを弁棒に接続することがよく知られており、開放位置に対応する、ボール弁の動作位置にあるハンドルは、流体がボール弁を通って流れる方向と一直線になり、すなわち、第1ポートから第2ポートまで、又はその反対にも同様に延在しており、閉鎖位置に対応する、ボール弁の他の動作位置にあるハンドルは、流体がボール弁を通って流れる方向に垂直であり、すなわち、第1ポートから第2ポートへの方向に垂直に延在している。この周知の例では、ハンドルは90度回転するが、270度又は180度の回転でも同じ利点が得られる。
【0020】
一実施例では、ボール弁は、弁棒が第1の回転位置と第2の回転位置との間でα度回転し、第2の回転位置と第3の回転位置との間でβ度回転するように構成され、α及びβは以下の表1に示す値を有してもよい。
【0021】
【0022】
好適には、αはβ以上である。表1には5で割れる値しか含まれていないが、αは、45度~89度の範囲内、好適には50度~85度の範囲内、より好適には60度~85度の範囲内、最も好適には70度~85度の範囲内の任意の値であってよく、βは、αとβとの合計が90度になるように選ばれる。一例として、αが82度でβが8度であってもよく、αが83度でβが7度であってもよい。
【0023】
上記の実施例は、第1の回転位置と第3の回転位置との間での90度の全回転に関する。提供された値に2、3又は4の因数を乗じることで、この実施例が、全回転がそれぞれ180度、270度又は360度である状況に変化する。
【0024】
一実施例では、角度の合計に関係なく、角度αが、少なくとも角度βよりも大きいことが好ましく、好適には少なくとも1.5倍大きく、より好適には少なくとも2倍大きく、最も好適には少なくとも3倍大きい。
【0025】
本発明の第1の態様は、弁を通る流体の流れを調整、方向付け又は制御するように、ボール弁を操作する方法であって、弁が、
‐第1ポート、第2ポート、及び第1ポートと第2ポートとの間に延在する内部空間を含む弁箱と、
‐弁箱の内部空間内に配置される弁座と、
‐弁箱の内部空間の内側に移動可能に配置されて弁座と連動する弁部材であって、弁部材の係合位置において弁座と係合するように構成される弁体を含む弁部材と、
‐弁部材と係合して弁部材を移動させる弁棒とを備え、
a)弁棒を、弁部材の第1の位置に対応する第1の回転位置から、弁部材の第2の位置に対応する第2の回転位置まで、弁棒の縦軸線周りに回転させて、弁体が、弁部材の第2の位置において、弁座から離間して弁座と一直線であり、弁体が、弁部材の第1の位置において、第2の位置の状態よりも弁座から離間し、弁部材が、弁体が弁座及び弁箱から離間した状態で、弁部材と弁棒との第1の結合構成によって、第1の位置から第2の位置まで回転する工程と、
b)弁棒を、第2の回転位置から、弁部材の係合位置に対応する第3の回転位置まで、更に回転させて、弁部材が、第1の結合構成と異なる、弁部材と弁棒との第2の結合構成によって、第2の位置から係合位置まで、弁座によって画成される接触面に略垂直な方向に移動する工程とを含む方法にも関する。
【0026】
本発明の第1の態様は、弁を通る流体の流れを調整、方向付け又は制御するように、ボール弁を操作する方法であって、弁が、
‐第1ポート、第2ポート、及び第1ポートと第2ポートとの間に延在する内部空間を含む弁箱と、
‐弁箱の内部空間内に配置される弁座と、
‐弁箱の内部空間の内側に移動可能に配置されて弁座と連動する弁部材であって、弁部材の係合位置において弁座と係合するように構成される弁体を含む弁部材と、
‐弁部材と係合して弁部材を移動させる弁棒とを備え、
a)弁棒を、係合位置に対応する第3の回転位置から、弁部材の第2の位置に対応する第2の回転位置まで、弁棒の縦軸線周りに回転させて、弁体が、弁部材の第2の位置において、弁座から離間して弁座と一直線であり、弁部材が、弁部材と弁棒との第2の結合構成によって、係合位置から第2の位置まで、弁座によって画成される接触面に略垂直な方向に移動する工程と、
b)弁棒を、第2の回転位置から、弁部材の第1の位置に対応する第1の回転位置まで、更に回転させて、弁体が、弁部材の第1の位置において、第2の位置の状態よりも弁座から離間し、弁部材が、弁体が弁座及び弁箱から離間した状態で、第2の結合構成と異なる、弁部材と弁棒との第1の結合構成によって、第2の位置から第1の位置まで回転する工程とを含む方法にも関する。
【0027】
本明細書には、ボール弁に関する本発明の第1の態様の特徴及び実施例を、対応する方法に対して、これらの特徴及び実施例を明細書内で再び繰り返すことなく、容易く適用することもできることが明確に記されている。単に例示として、上記の、第1の回転位置と第2の回転位置の間及び第2の回転位置と第3の回転位置との間での弁棒が回転する角度も、本明細書に適用されてもよい。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、互いに流体連通する流入開口部及び流出開口部と、流入開口部から流出開口部まで延在する流経路とが設けられる筐体と、
流路を備える閉鎖体であって、流入開口部と流出開口部との間の流経路において、筐体内に回転可能に受け入れられて、閉鎖体の第1開放位置にある閉鎖体における流路が、流経路の一部となるようになっている、閉鎖体と、
閉鎖体と連動するように筐体内に配置される弁座と、
第1開放位置と第2閉鎖位置との間で回転可能な閉鎖体であって、第2閉鎖位置にある時、閉鎖体の閉鎖部を用いて弁座と係合して流経路を閉鎖する閉鎖体と、
閉鎖体に接続して閉鎖体を回転させる弁ボルトとを備えるボール弁であって、
閉鎖体が、第1開放位置と第2閉鎖位置との間に第3旋回位置を有し、閉鎖体が、第1開放位置と第3旋回位置との間で、筐体内で接触することなく回転し、
閉鎖体が、第3旋回位置と第2閉鎖位置との間で、筐体内に回転方向に係止されて、閉鎖体が弁ボルトに対して径方向に移動し、弁座と係合するようになっている、ボール弁が提供される。
【0029】
閉鎖体を、筐体及び弁座から離間した状態で、開放位置から旋回位置まで回転させることによって、筐体部と閉鎖体との間に摩擦が生じず、ボール弁からの漏出が防止される。閉鎖体を回転方向に係止すること及び、閉鎖体を、最後の弁ボルトの回転部範囲において、弁座に向かって、弁ボルトのみに対して径方向にずらすことによって、閉鎖体と筐体との間に、関連する正接のずれ又は回転が生じることなく、ボール弁の良好な密封が得られる。汚染やスケーリング等の際には、閉鎖体は、ボール弁において、まずその自由回転可能旋回位置へと戻って、閉鎖体と筐体とが一切直接接触することなく、閉鎖体が開放位置へと回転できるようにする。
【0030】
好適には、ボール弁には、閉鎖体を、第3旋回位置と第2閉鎖位置との間で弁座に向かって移動させるのに用いる、偏心アセンブリが設けられる。この偏心アセンブリによって、閉鎖体が筐体に係止されて、閉鎖体がそれ以上筐体内で回転できない場合に、閉鎖体を、弁座から及び弁座に向かって径方向に移動させる。偏心アセンブリは、弁ボルトの第2回転部範囲を、閉鎖体の、弁座に向かう径方向(旋回)移動へと変換する。特に、偏心アセンブリは、弁ボルトに接続されるか、弁ボルトと一体の部分を形成するボルト偏心要素と、閉鎖体部とを備え、弁ボルトの、その軸線周りの回転によって、ボルト偏心要素が閉鎖体部に対して回転して、閉鎖体が弁ボルトに対して径方向にずれるようになっている。閉鎖体が筐体に対して係止されて、回転移動が防止されていることから、弁ボルト及び弁ボルトに接続されたボルト偏心要素の回転移動によって、閉鎖体を、弁座に向かって、弁ボルトに対して径方向に移動させることができる。
【0031】
本発明の好適な実施例において、閉鎖体には係止要素が設けられ、閉鎖体の第1開放位置と第3旋回位置との間の第1係止位置にある係止要素は、閉鎖体を(場合によってはボルト偏心要素を介して)弁ボルトと係止(結合)させ、閉鎖体の第3旋回位置と第2閉鎖位置との間の第2係止位置にある係止要素は、閉鎖体を筐体と係止(結合)させる。これらの手段によって、閉鎖体を、弁ボルトの第1回転部範囲において、ボルト偏心要素と結合(係止)させることができ、続いて、第2回転部範囲において、筐体と結合(係止)させることができる。
【0032】
好適には、ボルト偏心要素には、第1ストップ要素を含む第1誘導要素が設けられ、筐体には、第2誘導要素と第2ストップ要素とが設けられる。これによって、係止要素は、閉鎖体の、回転移動のための、第3旋回要素にある弁ボルト及び/又はボルト偏心要素との結合を、弁座に向かう径方向(旋回)移動のための、筐体との結合に変えることができる。
【0033】
特に、係止要素は、第1係止部材と第2係止部材とを備え、第1係止部材は、第1誘導要素の第1ストップ要素と連動し、第2係止部材は、第2誘導要素の第2ストップ要素と連動する。係止要素上で2つの係止部材を使用することによって、第1回転部範囲において、閉鎖体を、閉鎖体を回転させるように、弁ボルト及び/又はボルト偏心要素に係止することができ、第2回転部範囲において、閉鎖体を、閉鎖体の更なる回転を防止するように、筐体に係止することができる。
【0034】
上記の実施例では、係止要素に、係止要素が閉鎖体に対して回転できるようにする係止軸が設けられる。
【0035】
ここで、本発明を、添付の図面を参照して非限定に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明の第1の態様の実施例に係る弁の分解斜視図を概略的に示す。
【
図4A】
図4Aは、弁部材の、第1の位置から係合位置までの遷移を概略的に示す。
【
図4B】
図4Bは、弁部材の、第1の位置から係合位置までの遷移を概略的に示す。
【
図4C】
図4Cは、弁部材の、第1の位置から係合位置までの遷移を概略的に示す。
【
図6】
図6は、本発明の第2の態様に係るボール弁の分解図を示す。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第2の態様に係るボール弁の弁座を含む筐体を示す。
【
図9A】
図9Aは、本発明の第2の態様に係るボール弁の閉鎖体の第1開放位置を概略的に示す。
【
図9B】
図9Bは、本発明の第2の態様に係るボール弁の閉鎖体の第3旋回位置を概略的に示す。
【
図9C】
図9Cは、本発明の第2の態様に係るボール弁の閉鎖体の第2閉鎖位置を概略的に示す。
【
図10】
図10は、本発明の第2の態様に係る係止要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1、
図2A及び
図2Bは、本発明の第1の態様の一実施例に係るボール弁1を概略的に示す。
図1は、弁1の分解斜視図を示し、
図2A及び
図2Bは、2つの異なる状態にある弁1の断面図を示す。
【0038】
弁1は、弁1を通る、例えば気体又は液体である流体の流れを、調整、方向付け又は制御するように構成される。本実施例では、弁1は、弁1を通る流体の流れが最大となる開放状態と、弁1を通る流体の流れが存在しない閉鎖状態との2つの状態を有する。しかしながら、本発明の第1の態様は、例えば三方弁又は四方弁といった他の種類の弁にも適用可能である。本発明の第1の態様に係る弁は、プロセス産業及び設備で使用されることが多く、2つ以上の管部分の間に配置される。
【0039】
弁1は、第1ポート3、第2ポート4、及び第1ポート3と第2ポート4との間に延在する内部空間2aを有する弁箱2を備える。第1及び第2ポート3及び4は、流体が弁を通過できるようにする通路である。
【0040】
本実施例では、弁箱2は、第1ポート3と第2ポート4とを含む底部2bを含み、内部空間2aのほとんどの境界を定める。
図3A及び
図3Bは、底部2bをより詳細に示し、
図3Aは分解斜視図であり、
図3Bは断面図である。
【0041】
内部空間2aの上側は、弁箱2の上部12によって境界が定められる。ボルト12a及びナット12bを使用して、上部12を底部2bに接続する。底部2bは、対応するボルト12aのねじ端部を受け入れるねじ孔2cを含む。また、上部12は、各ボルト12a用の孔12cも備える。孔12cを通って延在するボルト12aの反対側の端部も、ナット12bと繋がるようにねじ山が付いており、上部12を底部2bにクランプできるようになっている。図面を可能な限り明確且つ簡潔に保つように、
図1ではボルト12a、ナット12b、孔2c及び孔12cのいくつかのみ、
図3Aでは孔2cのいくつかのみを、対応する参照符号を用いて示す。
【0042】
第1ポート3及び第2ポート4は、管部分(不図示)を各ポートに接続する締結手段、この場合はねじ孔、を含む。
図1では、第2ポート4と関連するねじ孔4aのみが視認可能であり、ここでも、図面を可能な限り明確且つ簡潔に保つように、少数の孔のみを参照符号4aを用いて示している。圧縮嵌合、接着剤、セメント、フランジ又は溶接といった他の接続方法も想定される。
【0043】
必ずしも必須ではないが、
図1の実施例における弁箱2は、第1及び第2ポート3及び4をその両側に含む円筒形状の側壁と、円筒形状の側壁に接続されて底部2bを形成する底2dと、上部12を形成する蓋とを有する。弁箱2の他の形状や構成も想定される。弁箱2は、代わりに外側ケーシングと呼ばれてもよく、上部12は、代わりにボンネットと呼ばれてもよい。
【0044】
弁1は、第1ポート3に弁座10を更に備えることで、弁箱2の内部空間2a内に配置される。弁座10は、代わりにボールとも呼ばれる弁部材8と連動して、第1ポート3を開閉する。このため、ボール8は、弁体11と、ボール8を通って延在する流路9とを備える。
【0045】
ボール8は、弁箱2の内部空間2aの内側に移動可能に配置される。この場合、ボール8は、弁箱2の底2dに配置されて下側でボール8と係合する軸13と、下側と反対側の上側でボール8と係合する弁棒6とによって画定される回転軸線RA1周りに、回転可能である。
【0046】
弁棒6は、上部12を通って延在し、ハンドル及び/又は制御装置(不図示)からの動きをボール8に伝達するように構成される。ボール8は、弁棒6によって、
図2A及び
図4Aに示す第1の位置と、
図2B及び
図3Bに示す第2の位置との間で、回転軸線RA1周りに回転可能である。
【0047】
本実施例では、第1の位置において、流路9は、第1及び第2ポート3及び4と一直線となり、第1ポート3から流路9を通って第2ポート4まで、又はその反対にも同様に、流体を通過させる。このため、それぞれ、第1ポート3は、流入口、出口又はその両方として機能してもよく、第2ポート4は、出口、流入口又はその両方として機能してもよい。
図1及び
図2Aの実施例では、流路9の縦軸線5が、第1ポート3と第2ポート4との間に延在し、好適には、第1及び第2ポート3及び4の中心を通って延在する。好適な実施例では、流路の断面領域は、少なくとも、第1及び第2ポートの断面と同じ大きさであり、流路によって、弁1に対して更なる流れ抵抗又は圧力降下が生じないようになっている。
【0048】
ここで、
図4A~
図4Cも参照して、弁箱2内でのボール8の動きをより詳細に説明する。
図4A~
図4Cは、それぞれ、回転軸線RA1に対して垂直に延在し且つ流路9の縦軸線5を通って延在する平面に沿った、ボール8及び弁座10の断面図を示す。断面図の上には、
図1、
図2A及び
図2Bも参照しながら、弁棒6の一部である又は弁棒6に接続された結合要素21、ボール8に旋回可能に接続された結合要素30、及び弁箱2の一部である又は弁箱2に接続された結合要素37の位置を示すことで、弁棒6、ボール8及び弁箱2の、対応する相互位置及び配向を示す側面図が設けられる。
【0049】
図5によって詳細に示される結合要素30は、共通の部材34に接続された、第1係止部材32と第2係止部材33とを備える。部材34は、ボール8の上方部22に旋回可能に接続されて、この場合では回転軸線RA1に垂直な旋回軸線周りに旋回する。
【0050】
結合要素21は、第1係止部材32を受け入れる凹部36を含む部分35を有する。結合要素37は、第2係止部材33を受け入れる凹部38を含む。
【0051】
弁箱2に対するボール8の第1の位置において、
図4Aに示すように、結合要素30の第1係止部材32が、結合要素21の凹部36内に受け入れられることで、第1結合構成によって、ボール8を結合要素21、延いては弁棒6に結合させる。弁棒6の、第1の回転位置と第2の回転位置との間での、回転軸線RA1周りの回転によって、弁棒6の第1の回転位置に対応する、
図4Aの第1の位置と、弁棒6の第2の回転位置に対応する、
図4Bの第2の位置との間で、ボール8が回転する。結合要素37は、
図4Aの状況と
図4Bの状況との間で回転する間、結合要素30、延いてはボール8が、弁箱2に対して自由に回転できるように構成される。実際、好適とされているように、
図4Aは、第1係止部材32が、
図4Aの状況と
図4Bの状況との間を移動している際に、凹部36を離れることができないように構成されていることを示す。
【0052】
図4Bは、上述したように、ボール8が第2の位置に到達する状況を示す。同時に、結合要素30の第2係止部材33が、結合要素37の凹部38に到達して、第1係止部材32が凹部36を離れることができ、第2係止部材33が凹部38内へと移動できるため、ボール8を結合要素21から外して、弁箱2に結合する。この結果、ボール8が弁箱に対して回転軸線RA1周りに回転することは、それ以降不可能となる。このため、弁棒6とボール8との結合構成が、ボール8が、弁棒6の凸部21aと係合又は結合すると共に、弁棒6の結合要素21に結合する第1結合構成から、ボール8が、弁棒6の凸部21aと係合又は結合するのみの第2結合構成へと変化している。
【0053】
なお、本実施例では、ボールは、第1の位置と第2の位置との間において、その回転の一部、ここでは約75度、しか回転しない。しかしながら、結合要素21がボール8から外れていることから、弁棒6及び結合要素21は、
図4Cに示すように、弁棒6の第3の回転位置に向かう同一方向に、更に回転することが可能である。
図4Cの状況では、弁棒6及び結合要素21は、
図3Bの第2の回転位置と比較して、その90度回転の残りの部分、この場合では追加の15度、だけ回転している。このため、弁棒6及び結合要素21は、ボール8が、ここでは約75度である部分的な回転のみを回転軸線RA1周りに行っている間、
図3Aの第1の回転位置と
図3Cの第3の回転位置との間で、全体で約90度回転している。この場合では追加の15度である、回転の残りの部分の間、弁棒6によって、ボール8が、その弁体11で弁座10に押し付けられることで、ボール8と弁座10との固く密封された接続が得られて、弁1を通る流体の流れが全て遮られる。
【0054】
ボール8の上方部22の対応する凹部22a内に受け入れられる、弁棒6の凸部21aによって、弁体11が弁座10に押し付けられ、この凸部21a及び凹部22aは、弁棒6の回転軸線RA1に対して偏心して位置付けられる。このため、弁棒6が回転軸線RA1周りに回転し、ボール8の回転軸線RA1周りの回転が阻止されると、偏心した凸部21a及び凹部22aによって、ボール8が弁座10に向かって移動する。本実施例では、このボール8の弁座10に向かう移動は、実際は、回転軸線RA1に垂直且つ
図2A内の図の平面に垂直な旋回軸線周りの、ボール8の旋回移動である。なお、軸13及び/又はボール8は、この移動によって、ボール8、弁箱2又は軸13において望まれない変形又は負荷が生じないように実現されてもよい。
図4Cにおけるボール8の位置は、これが、ボール8の弁体11が弁座10と係合する、ボール8の位置であることから、係合位置と呼ばれる。
【0055】
なお、上述の実施例では、第1の位置において第2の位置の状態よりも弁座10から離間する弁体11は、弁体11が、第2の位置から第1の位置へと移動する際に弁座から回転して離れるように、弁部材8が回転軸線RA1周りに回転することによって得られる。
【0056】
上述の実施例でも、弁体は、弁部材の非貫通孔であり、弁部材の係合位置にある弁体が第1ポート3を閉鎖するようになっている。しかしながら、本発明の第1の態様は、弁部材の係合位置にある弁体によって、流体が弁部材を通って流れることができるように、弁体が弁部材の開口部を囲んでいる弁にも適用される。
【0057】
図6は、本発明の第2の態様に係るボール弁の分解斜視図を示す。ボール弁1は、流入開口部3と流出開口部4とが設けられた筐体2を備える。ボール弁は、流入開口部及び流出開口部を含む管部分(不図示)内に配置されて、管を通る流体の流れを、ボール弁を閉鎖することで外部から遮ることができるようになっている。このために、ボール弁には、筐体2内の閉鎖体8が設けられる。閉鎖体8には流路9が設けられ、この流路によって流入開口部と流出開口部とが接続されて流経路が形成されると、流体がそこを通って流れるようになっている。閉鎖体は、筐体2の蓋12を通って延在する弁ボルト6に接続されて、例えばレバーを利用した弁ボルトの回転によって、閉鎖体が部分的に回転し、閉鎖体内の流路が、流入開口部と出口開口部との間の流経路に対して角度をもち、閉鎖体の閉鎖部11によって流体の流れが遮られるようになっている。
【0058】
閉鎖体8の閉鎖部11と筐体2の流入開口部3との間に良好な封止を得るために、流入開口部には、例示的な実施例において環状封止リングとして実現される、弁座10が設けられる。流体が閉鎖ボール弁を通って漏れるのを防止するために、閉鎖体8は、幾らかの力で弁座10に押し付けられる必要がある。閉鎖体8及び弁座10の摩耗を防止するために、閉鎖体を、無摩擦で、筐体及び/又は弁座と接触することなく、開放位置から閉鎖位置へと回転させる。このために、偏心アセンブリ20と係止要素30とが設けられる。本発明に係るボール弁の動作は、以下の図面においてより詳細に説明される。
【0059】
図7A及び
図7Bは、
図6のボール弁1の断面を示し、
図7Aは、第1開放位置にあるボール弁を示し、
図7Bは、第2閉鎖位置にあるボール弁を示す。
図7Aの開放位置では、流入開口部3と流出開口部4との間に流経路5が形成されて、管内の流体がボール弁を通って自由に流れるようになっている。
図7Bの閉鎖位置では、閉鎖体8の閉鎖部11が弁座10に押し付けられて、流入開口部3が閉鎖され、流入開口部3から流出開口部4、そしてその反対にも同様に、流体が流れることができないようになっている。閉鎖体は、弁ボルト6に接続されて、閉鎖体が、弁ボルトの回転によって、開放位置と閉鎖位置との間で回転するようになっている。筐体2には、弁ボルト6の反対側に旋回ボルト13が設けられる。閉鎖体8は、筐体から所定の距離だけ離間して、旋回ボルト13周りに自由に回転することが可能であり、筐体と閉鎖体との間に摩擦が生じないようになっている。
【0060】
ボール弁1には、更に、例示的な実施例においてボルト偏心要素21と閉鎖体部22とを備える、偏心アセンブリ20が設けられる。この偏心アセンブリの目的は、閉鎖体を弁座10に対して旋回させるか、一般的に言えば、閉鎖体8の閉鎖部11を、弁座10から又は弁座10に向かう弁ボルトに対する略径方向に、移動させる又はずらすことである。
図7A及び
図7Bの図示の実施例では、弁ボルト6及びそれに接続したボルト偏心要素21は、閉鎖体及び閉鎖体部22に対して自由に回転することができる。閉鎖体を弁ボルトに結合するために、閉鎖体上に係止要素30が設けられる(
図6参照)。係止要素30によって、閉鎖体8は弁ボルト6又は筐体2に結合できる。これによって、弁ボルトの第1回転部範囲において筐体2内の閉鎖体を摩擦無く回転させること及び、閉鎖体を筐体に対して回転させることなく、弁ボルトの第2回転部範囲において閉鎖弁を弁座10に向かって径方向に移動させることを可能にできる。
【0061】
図8A及び
図8Bは、筐体をより詳細に示す。筐体2の内側の、流入開口部3の内側に、この場合では環状封止リングの形態をもつ弁座10が配置される。筐体2の底には旋回ボルト13が配置される。流経路5が、流入開口部3と流出開口部4との間に延在する。流入開口部3及び流出開口部4には管接続が設けられて、管に接続されてもよい。
【0062】
図9A、
図9B及び
図9Cは、本発明に係るボール弁のより詳細な動作を概略的に示す。
図9Aの下側に、第1開放位置にある閉鎖体8の断面を示す。流経路5は、弁座10を通り、流入開口部3から流出開口部4へと延在する。閉鎖体8と弁座10との間に接触がなく、閉鎖体が弁座との摩擦無しで回転できることが明確に分かる。
図9Aでは、回転が示される閉鎖体8の上に、0度~90度の弁ボルトの回転を示す。回転図示の上には、係止要素30と、第1誘導要素35と、第2誘導要素37とを含む係止アセンブリの側面図を示す。第2誘導要素37は、筐体2の一部であるか、又は筐体2に接続される。第1誘導要素35は、弁ボルト及び/又はボルト偏心要素21の一部であるか、又は弁ボルト及び/又はボルト偏心要素21に接続される。係止要素30は、回転軸31(
図10も参照)の助けによって、閉鎖体(不図示)に対して、回転点34周りに回転可能に接続される。係止要素30には、第1係止部材32と第2係止部材33とが設けられる。第1誘導要素35には第1ストップ要素36が設けられ、第2誘導要素37には第2ストップ要素38が設けられる。
【0063】
図9Aにおけるボール弁の第1開放位置では、第1係止部材32は、係止要素30の第1係止位置にある、第1誘導要素35の第1ストップ要素36に受け入れられて且つ係止される。弁ボルト及びそれと接続した第1誘導要素35が矢印の方向に回転すると、第1ストップ要素36は、第1係止部材32及び係止要素30を共に捕らえて回転させて、閉鎖体8も回転させる。
【0064】
図9Bにおけるボール弁の第3旋回位置では、弁ボルトは、第1回転部範囲に沿って約75度だけ移動している。閉鎖体8も約75度だけ回転し、この時、閉鎖体の閉鎖部11は、弁座10と対向して位置付けられる。弁座10と閉鎖体との間の距離は、
図9Aの第1開放位置の場合の距離とおおよそ等しく、閉鎖体が、筐体に対して摩擦無く回転可能となるようになっている。この時、閉鎖体の更なる回転が、第2ストップ要素38を含む第2誘導要素37によって防止される。第3旋回位置における、係止要素30の第1係止位置から第2係止位置への遷移の間、第2ストップ要素38は、係止要素30の第2係止体33を受け入れて、係止要素30を下方へ旋回又は回転させることで、第1係止部材32を第1ストップ要素36の外へとずらして、第1誘導要素35と、係止要素と、それと接続した閉鎖体との係止を解く。弁ボルトが、約75度~90度の第2回転部範囲に沿って更に回転すると、接続した弁ボルト及び/又はボルト偏心要素21並びに第1誘導要素35は、
図9B内の矢印の方向に更に回転して、閉鎖体8が更に回転しないようになっている。この時、偏心アセンブリ20によって、閉鎖体8が弁座10に向かって移動する。
【0065】
図9Cは、閉鎖体8の閉鎖部11が弁座に固く押されて流入開口部を閉鎖する、ボール弁の第2閉鎖位置を示す。係止要素30は、第2係止位置にあり、
図9Bに対して更に回転することはない。第1誘導要素35が第2回転部範囲内で回転していることから、偏心アセンブリによって、閉鎖体8が弁座10へとずらされる。
【0066】
図10は、係止要素30の一実施例をより詳細に示す。係止要素30は、回転軸31を介して閉鎖体に接続される。係止要素30には、第1係止部材32と第2係止部材33とが設けられる。第1及び第2係止部材は、回転軸31を用いて、閉鎖体8に対して、第1係止位置から第2係止位置、そしてその反対にも同様に、回転点34周りに回転できる。