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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/09 20060101AFI20240408BHJP
   G11B 20/12 20060101ALI20240408BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20240408BHJP
   G11B 20/18 20060101ALI20240408BHJP
   G11B 5/02 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G11B5/09 311Z
G11B20/12
G11B5/09 331
G11B20/10 301Z
G11B20/18 572B
G11B20/18 572F
G11B20/18 520D
G11B5/02 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021038244
(22)【出願日】2021-03-10
(65)【公開番号】P2022138389
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2023-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏木 一仁
(72)【発明者】
【氏名】石黒 文平
(72)【発明者】
【氏名】下村 和人
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第99/045534(WO,A1)
【文献】特開2021-034086(JP,A)
【文献】特開2020-140753(JP,A)
【文献】米国特許第09607633(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/09
G11B 5/00 - 5/024
G11B 20/10 - 20/16
G11B 20/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクと、
前記ディスクに対してデータをライトし、前記ディスクからデータをリードするヘッドと、
第1記録型式と前記第1記録型式と異なる第2記録型式とを選択して実行し、前記ディスクの第1領域に前記第1記録型式で前記ディスクの半径方向に複数の第1トラックをライトする場合の前記複数の第1トラックにそれぞれ対応する複数の第1目標位置と前記第1領域に前記第2記録型式で前記半径方向に複数の第2トラックをライトする場合の前記複数の第2トラックにそれぞれ対応する複数の第2目標位置との内の少なくとも1組の前記第1目標位置及び前記第2目標位置が一致するように設定するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記複数の第1目標位置の内の前記第2目標位置と一致しない少なくとも1つの第3目標位置の第1情報と、前記複数の第2目標位置の内の前記第1目標位置と一致しない少なくとも1つの第4目標位置の第2情報と、前記複数の第1目標位置及び前記複数の第2目標位置の内の前記第1目標位置及び前記第2目標位置が一致する少なくとも1つの第5目標位置の第3情報と、を保持する磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記第1記録型式は、前記半径方向に間隔を置いてトラックをライトする通常記録型式であり、
前記第2記録型式は、前記半径方向に重ねてトラックをライトする瓦記録型式である、請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記コントローラは、前記第1領域において前記複数の第1目標位置の数と前記複数の第2目標位置の数との和に相当するトラックをライトする際に目標とする目標位置の数の内の1つの目標位置の割合で前記第1目標位置と前記第2目標位置とが一致する、請求項1又は2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1領域において、前記複数の第1目標位置と前記複数の第2目標位置との内の閾値以下の前記半径方向の距離で配置された少なくとも1組の前記第1目標位置及び前記第2目標位置を一致するように設定する、請求項1又は2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第3目標位置、前記第4目標位置、及び前記第5目標位置に対して検査及びキャリブレーションを実行する、請求項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第1情報に対応する検査及びキャリブレーションを実行した結果に相当する第1検査及びキャリブレーション情報と、前記第2情報に対応する検査及びキャリブレーションを実行した結果に相当する第2検査及びキャリブレーション情報と、前記第3情報に対応する検査及びキャリブレーションを実行した結果に相当する第3検査及びキャリブレーション情報と、を保持する、請求項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
第1検査及びキャリブレーション情報、第2検査及びキャリブレーション情報、及び第3検査及びキャリブレーション情報は、RRO情報、前記ディスクの表面の突起情報、エラーレートの情報、及び前記ディスクの欠陥情報を含む、請求項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項8】
ディスクと、
前記ディスクに対してデータをライトし、前記ディスクからデータをリードするヘッドと、
第1記録型式と前記第1記録型式と異なる第2記録型式とを選択して実行し、前記ディスクの第1領域に前記第1記録型式で前記ディスクの半径方向に複数の第1トラックをライトする場合の前記複数の第1トラックにそれぞれ対応する複数の第1目標位置と前記第1領域に前記第2記録型式で前記半径方向に複数の第2トラックをライトする場合の前記複数の第2トラックにそれぞれ対応する複数の第2目標位置との内の少なくとも1組の前記第1目標位置及び前記第2目標位置が一致するように設定するコントローラと、を備え、
前記第1記録型式は、前記半径方向に間隔を置いてトラックをライトする通常記録型式であり、
前記第2記録型式は、前記ディスクにエネルギーを出力してデータをライトするエネルギーアシスト記録型式である磁気ディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクの半径方向に間隔に置いて複数のトラックをライトする通常記録(Conventional Magnetic Recording:CMR)型式(又は、従来記録型式)の磁気ディスク装置とディスクの半径方向に複数のトラックを重ね書きする瓦記録(Shingled write Magnetic Recording:SMR、又はShingled Write Recording:SWR)型式の磁気ディスク装置とがある。近年、通常記録型式と瓦記録型式とを選択して実行可能な磁気ディスク装置が開発されている。通常記録型式と瓦記録型式とを選択して実行可能な磁気ディスク装置は、通常記録するトラックの位置と瓦記録するトラックの位置とを管理する。通常記録型式と瓦記録型式とを選択して実行可能な磁気ディスク装置は、通常記録するトラックの位置と瓦記録するトラックの位置との検査及びキャリブレーションを実行し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2019/244638号明細書
【文献】米国特許出願公開第2020/279584号明細書
【文献】特開2000-40202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態が解決しようとする課題は、管理性能を改善可能な磁気ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る磁気ディスク装置は、ディスクと、前記ディスクに対してデータをライトし、前記ディスクからデータをリードするヘッドと、第1記録型式と前記第1記録型式と異なる第2記録型式とを選択して実行し、前記ディスクの第1領域に前記第1記録型式で前記ディスクの半径方向に複数の第1トラックをライトする場合の前記複数の第1トラックにそれぞれ対応する複数の第1目標位置と前記第1領域に前記第2記録型式で前記半径方向に複数の第2トラックをライトする場合の前記複数の第2トラックにそれぞれ対応する複数の第2目標位置との内の少なくとも1組の前記第1目標位置及び前記第2目標位置が一致するように設定するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記複数の第1目標位置の内の前記第2目標位置と一致しない少なくとも1つの第3目標位置の第1情報と、前記複数の第2目標位置の内の前記第1目標位置と一致しない少なくとも1つの第4目標位置の第2情報と、前記複数の第1目標位置及び前記複数の第2目標位置の内の前記第1目標位置及び前記第2目標位置が一致する少なくとも1つの第5目標位置の第3情報と、を保持する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態に係る磁気ディスク装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施形態に係るディスクの一例を示す模式図である。
図3図3は、通常記録処理の一例を示す模式図である。
図4図4は、瓦記録処理の一例を示す模式図である。
図5図5は、対象半径領域における非共有目標位置群の一例を示す模式図である。
図6図6は、対象半径領域における共有目標位置群の一例を示す模式図である。
図7図7は、対象半径領域における共有目標位置群の一例を示す模式図である。
図8図8は、対象半径領域における共有目標位置群の一例を示す模式図である。
図9図9は、本実施形態に係る記録ピッチ比テーブルの一例を示す模式図である。
図10図10は、本実施形態に係る対象半径領域のトラックの設定方法の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、本実施形態に係る対象半径領域のトラックの設定方法の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、変形例1に係る磁気ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図面は、一例であって、発明の範囲を限定するものではない。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る磁気ディスク装置1の構成を示すブロック図である。
磁気ディスク装置1は、後述するヘッドディスクアセンブリ(HDA)と、ドライバIC20と、ヘッドアンプ集積回路(以下、ヘッドアンプIC、又はプリアンプ)30と、揮発性メモリ70と、不揮発性メモリ80と、バッファメモリ(バッファ)90と、1チップの集積回路であるシステムコントローラ130とを備える。また、磁気ディスク装置1は、ホストシステム(以下、単に、ホストと称する)100と接続される。
【0008】
HDAは、磁気ディスク(以下、ディスクと称する)10と、スピンドルモータ(以下、SPMと称する)12と、ヘッド15を搭載しているアーム13と、ボイスコイルモータ(以下、VCMと称する)14とを有する。ディスク10は、SPM12に取り付けられ、SPM12の駆動により回転する。アーム13及びVCM14は、アクチュエータを構成している。アクチュエータは、VCM14の駆動により、アーム13に搭載されているヘッド15をディスク10の所定の位置まで移動制御する。ディスク10およびヘッド15は、2つ以上の数が設けられてもよい。
【0009】
ディスク10は、そのデータをライト可能な領域に、ユーザから利用可能なユーザデータ領域10aと、ホスト等から転送されたデータ(又はコマンド)をユーザデータ領域10aの所定の領域にライトする前に一時的に保持するメディアキャッシュ(又は、メディアキャッシュ領域と称する場合もある)10bと、システム管理に必要な情報をライトするシステムエリア10cとが割り当てられている。なお、メディアキャッシュ10bは、ディスク10に配置されていなくともよい。以下、ディスク10の内周から外周へ向かう方向、又はディスク10の外周から内周へ向かう方向を半径方向と称する。半径方向において、内周から外周へ向かう方向を外方向(外側)と称し、内周から外周へ向かう方向を内方向(内側)と称する。ディスク10の半径方向に直交する方向を円周方向と称する。円周方向は、ディスク10の円周に沿った方向に相当する。また、ディスク10の半径方向の所定の位置を半径位置と称し、ディスク10の円周方向の所定の位置を円周位置と称する場合もある。半径位置及び円周位置をまとめて単に位置と称する場合もある。半径位置は、例えば、ディスク10の回転中心から所定の半径位置までの距離、ディスク10の最内周から所定の半径位置までの距離、又はディスク10の所定の半径位置から他の半径位置までの距離などに相当する。なお、“トラック”は、ディスク10の半径方向に区分した複数の領域の内の1つの領域、所定の半径位置におけるヘッド15の経路、ディスク10の円周方向に延長するデータ、所定の半径位置のトラックにライトされた1周分のデータ、ディスク10の所定のトラックにライトされたデータ、ディスク10の所定のトラックにライトされたデータの一部や、その他の種々の意味で用いる。“セクタ”は、ディスク10の所定のトラックを円周方向に区分した複数の領域の内の1つの領域、ディスク10の所定の半径位置における所定の円周位置にライトされたデータ、ディスク10の所定のトラックの所定のセクタにライトされたデータや、その他の種々の意味で用いる。“トラックの半径方向の幅”を“トラック幅”と称する場合もある。“所定のトラックにおけるトラック幅の中心位置を通る経路”を“トラックセンタ”と称する。以下、“所定のトラックのトラックセンタ”を単に“トラック”と称する場合もある。
【0010】
ヘッド15は、スライダを本体として、当該スライダに実装されているライトヘッド15Wとリードヘッド15Rとを備える。ライトヘッド15Wは、ディスク10にデータをライトする。リードヘッド15Rは、ディスク10にライトされたデータをリードする。なお、“ライトヘッド15W”を単に“ヘッド15”と称する場合もあるし、“リードヘッド15R”を単に“ヘッド15”と称する場合もあるし、“ライトヘッド15W及びリードヘッド15R”をまとめて“ヘッド15”と称する場合もある。“ヘッド15の中心部”を“ヘッド15”と称し、“ライトヘッド15Wの中心部”を“ライトヘッド15W”と称し、“リードヘッド15Rの中心部”を“リードヘッド15R”と称する場合もある。“ライトヘッド15Wの中心部”を単に“ヘッド15”と称する場合もあるし、“リードヘッド15Rの中心部”を単に“ヘッド15”と称する場合もある。“ヘッド15の中心部を所定のトラックのトラックセンタに位置決めする”ことを“ヘッド15を所定のトラックに位置決めする”、“ヘッド15を所定のトラックに配置する”、又は“ヘッド15を所定のトラックに位置する”等で表現する場合もある。
【0011】
図2は、本実施形態に係るディスク10の一例を示す模式図である。図2には、SPM12の中心12Cを示している。中心12Cは、例えば、ディスク10の回転中心12Cに相当する。図2に示すように、円周方向において、ディスク10の回転する方向を回転方向と称する。なお、図2に示した例では、回転方向は、反時計回りで示しているが、逆向き(時計回り)であってもよい。図2において、ディスク10は、内方向に位置する内周領域IRと、外方向に位置する外周領域ORと、内周領域IR及び外周領域ORの間に位置する中周領域MRとに区分されている。
【0012】
図2に示した例では、ディスク10は、ユーザデータ領域10a、メディアキャッシュ10b、及びシステムエリア10cを含む。図2では、ユーザデータ領域10a、メディアキャッシュ10b、及びシステムエリア10cは、外方向に向かって記載の順に配置されている。図2では、メディアキャッシュ10bは、ユーザデータ領域10aの外方向に隣接して配置されている。言い換えると、メディアキャッシュ10bは、ユーザデータ領域10a及びシステムエリア10cの間に配置されている。ここで、“隣接”とは、データ、物体、領域、及び空間等が接して並んでいることはもちろん、所定の間隔を置いて並んでいることも含む。図2では、システムエリア10cは、メディアキャッシュ10bの外方向に隣接して配置されている。なお、ユーザデータ領域10a、メディアキャッシュ10b、及びシステムエリア10cの配置の順序は、図2に示した順序に制限されるものではなく、任意の順序を取り得る。また、メディアキャッシュ10bがディスク10に配置されていない場合、システムエリア10cは、ユーザデータ領域10aの外方向に隣接して配置され得る。
【0013】
図2に示した例では、ユーザデータ領域10aは、半径方向において、内周領域IRから外周領域ORに亘って配置されている。図2に示した例では、メディアキャッシュ10bは、半径方向において、外周領域ORに配置されている。なお、メディアキャッシュ10bは、内周領域IR又は中周領域MRに位置していてもよい。また、メディアキャッシュ10bは、外周領域OR、中周領域MR、及び内周領域IRに分散して位置していてもよい。図2に示した例では、システムエリア10cは、半径方向において、外周領域ORに配置されている。言い換えると、システムエリア10cは、外周領域ORの所定の位置からディスク10の最外周に亘って配置されている。なお、システムエリア10cは、中周領域MR又は内周領域IRに配置されていてもよい。
【0014】
ディスク10のユーザデータ領域10aには、所定のトラックの半径方向の一部に次にライトするトラックを重ね書きする瓦記録(Shingled Write Magnetic Recording : SMR、又はShingled Write Recording : SWR)型式でデータがライトされ得る。なお、ユーザデータ領域10aには、所定のトラックに半径方向で隣接するトラック(以下、隣接トラックと称する場合もある)をこの所定のトラックから半径方向に所定の間隔を空けてライトする、又はランダムにデータをライト可能な通常記録(Conventional Magnetic Recording : CMR)型式(又は、従来記録型式(方式)と称する場合もある)でデータがライトされてもよい。以下、”瓦記録型式でデータをライトする“ことを単に”瓦記録する“、”瓦記録処理を実行する“、又は単に”ライトする“と称する場合もある。”通常記録処理“以外のライト処理を”瓦記録処理“と称する場合もある。また、“通常記録型式でデータをライトする”ことを単に“通常記録する”、“通常記録処理を実行する”、又は単に“ライトする”と称する場合もある。
【0015】
図2に示すように、ヘッド15は、ディスク10に対してVCM14の駆動により回転軸周りで回転して内方向から外方向に向かって移動して所定の位置に配置される、又は外方向から内方向に向かって移動して所定の位置に配置される。
【0016】
ドライバIC20は、システムコントローラ130(詳細には、後述するMPU60)の制御に従って、SPM12およびVCM14の駆動を制御する。
ヘッドアンプIC(プリアンプ)30は、リードアンプ及びライトドライバ等を備えている。リードアンプは、ディスク10からリードしたリード信号を増幅して、システムコントローラ130(詳細には、後述するリード/ライト(R/W)チャネル40)に出力する。ライトドライバは、R/Wチャネル40から出力される信号に応じたライト電流をヘッド15に出力する。
【0017】
揮発性メモリ70は、電力供給が断たれると保存しているデータが失われる半導体メモリである。揮発性メモリ70は、磁気ディスク装置1の各部での処理に必要なデータ等を格納する。揮発性メモリ70は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、又はSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)である。
【0018】
不揮発性メモリ80は、電力供給が断たれても保存しているデータを記録する半導体メモリである。不揮発性メモリ80は、例えば、NOR型またはNAND型のフラッシュROM(Flash Read Only Memory :FROM)である。
【0019】
バッファメモリ90は、磁気ディスク装置1とホスト100との間で送受信されるデータ等を一時的に記録する半導体メモリである。なお、バッファメモリ90は、揮発性メモリ70と一体に構成されていてもよい。バッファメモリ90は、例えば、DRAM、SRAM(Static Random Access Memory)、SDRAM、FeRAM(Ferroelectric Random Access memory)、又はMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)等である。
【0020】
システムコントローラ(コントローラ)130は、例えば、複数の素子が単一チップに集積されたSystem-on-a-Chip(SoC)と称される大規模集積回路(LSI)を用いて実現される。システムコントローラ130は、リード/ライト(R/W)チャネル40と、ハードディスクコントローラ(HDC)50と、マイクロプロセッサ(MPU)60と、を含む。システムコントローラ130は、例えば、ドライバIC20、ヘッドアンプIC30、揮発性メモリ70、不揮発性メモリ80、バッファメモリ90、及びホストシステム100等に電気的に接続されている。
【0021】
R/Wチャネル40は、後述するMPU60からの指示に応じて、ディスク10からホスト100に転送されるデータ(以下、リードデータと称する場合もある)とホスト100から転送されるデータ(以下、ライトデータと称する場合もある)との信号処理を実行する。R/Wチャネル40は、ライトデータを変調する回路、又は機能を有している。R/Wチャネル40は、リードデータの信号品質を測定及び復調する回路、又は機能を有している。R/Wチャネル40は、例えば、ヘッドアンプIC30、HDC50、及びMPU60等に電気的に接続されている。
【0022】
HDC50は、データの転送を制御する。例えば、HDC50は、後述するMPU60からの指示に応じて、ホスト100とディスク10との間のデータの転送を制御する。HDC50は、例えば、R/Wチャネル40、MPU60、揮発性メモリ70、不揮発性メモリ80、及びバッファメモリ90等に電気的に接続されている。
【0023】
MPU60は、磁気ディスク装置1の各部を制御するメインコントローラである。MPU60は、ドライバIC20を介してVCM14を制御し、ヘッド15の位置決めを行なうサーボ制御を実行する。MPU60は、ドライバIC20を介してSPM12を制御し、ディスク10を回転させる。MPU60は、ディスク10へのデータのライト動作を制御すると共に、ホスト100から転送されるデータ、例えば、ライトデータの保存先を選択する。また、MPU60は、ディスク10からのデータのリード動作を制御すると共に、ディスク10からホスト100に転送されるデータ、例えば、リードデータの処理を制御する。また、MPU60は、データを記録する領域を管理する。MPU60は、磁気ディスク装置1の各部に接続されている。MPU60は、例えば、ドライバIC20、R/Wチャネル40、及びHDC50等に電気的に接続されている。
【0024】
MPU60は、リード/ライト制御部610、設定部620、管理部630、及び検査部640等を有している。MPU60は、各部、例えば、リード/ライト制御部610、設定部620、管理部630、及び検査部640等の処理をファームウェア上で実行する。なお、MPU60は、各部、例えば、リード/ライト制御部610、設定部620、管理部630、及び検査部640等を回路として有していてもよい。リード/ライト制御部610、設定部620、管理部630、及び検査部640等は、R/Wチャネル40又はHDC50に含まれていてもよい。
【0025】
リード/ライト制御部610は、ホスト100からのコマンド等に従って、ディスク10からデータをリードするリード処理とディスク10にデータをライトするライト処理とを制御する。リード/ライト制御部610は、ドライバIC20を介してVCM14を制御し、ヘッド15をディスク10の所定の位置に位置決めし、リード処理又はライト処理を実行する。以下、所定の領域にデータを記録若しくはライトすること(又はライト処理)、所定の領域からデータを読み出す若しくはリードすること(又はリード処理)や、所定の領域にヘッド15等を移動させることを含む意味で“アクセス”という用語を用いる場合もある。
【0026】
リード/ライト制御部610は、例えば、所定のトラック又は所定のセクタから半径方向に所定の間隔(ギャップ)を置いてこのトラック又はこのセクタに隣接する他のトラック(以下、隣接トラックと称する場合もある)又は他のセクタ(以下、隣接セクタと称する場合もある)にデータをライトする通常記録(Conventional Magnetic Recording:CMR)型式でライト処理を実行する。”隣接トラック”は、“所定のトラックの外方向に隣接するトラック”、“所定のトラックの内方向に隣接トラック”、及び“所定のトラックの外方向及び内方向に隣接する複数のトラック”を含む。”隣接セクタ”は、“所定のセクタの外方向に隣接するセクタ”、“所定のセクタの内方向に隣接セクタ”、及び“所定のセクタの外方向及び内方向に隣接する複数のセクタ”を含む。以下、“通常記録型式でデータをライトする“ことを”通常記録する“、”通常記録処理を実行する“、又は単に”ライトする“と称する場合もある。以下、”通常記録したトラック“を”CMRトラック“と称する場合もある。
【0027】
また、リード/ライト制御部610は、複数のトラックをシーケンシャルにライトする際に1つ前にライトしたトラックの半径方向の一部に次にライトするトラックを重ね書きする瓦記録(Shingled write Magnetic Recording:SMR、又はShingled Write Recording:SWR)型式でライト処理を実行する。以下、”瓦記録型式でデータをライトする“ことを”瓦記録する“、又は”瓦記録処理を実行する“、又は単に”ライトする“と称する場合もある。以下、”瓦記録したトラック“を”SMRトラック“と称する場合もある。
【0028】
リード/ライト制御部610は、ホスト100からのコマンド等に従って、通常記録処理を実行する、又は瓦記録処理を実行する。言い換えると、リード/ライト制御部610は、ホスト100からのコマンド等に従って、通常記録処理及び瓦記録処理を選択的に実行する。なお、リード/ライト制御部610は、通常記録処理のみを実行するように構成されていてもよいし、瓦記録処理のみを実行するように構成されていてもよい。
【0029】
図3は、通常記録処理の一例を示す模式図である。図3には、進行方向を示している。円周方向においてディスク10に対してヘッド15がデータをシーケンシャルにライト及びリードする方向、つまり、円周方向においてディスク10に対してヘッド15が進行する方向を進行方向と称する場合もある。例えば、進行方向は、ディスク10の回転方向とは反対向きである。なお、進行方向は、ディスク10の回転方向と同じ向きであってもよい。図3には、CMRトラックCTR1、CTR2、及びCTR3を示している。図3では、例えば、CMRトラックCTR1、CTR2、及びCTR3のトラック幅は、同じである。なお、CMRトラックCTR1乃至CTR3のトラック幅は、異なっていてもよい。“同じ”、“同一”、“一致”、及び“同等”などの用語は、全く同じという意味はもちろん、実質的に同じであると見做せる程度に異なるという意味を含む。図3には、CMRトラックCTR1のトラックセンタCTC1、CMRトラックCTR2のトラックセンタCTC2、及びCMRトラックCTR3のトラックセンタCTC3を示している。図3に示した例では、CMRトラックCTR1、及びCTR2は、トラックピッチCTP1でライトされている。CMRトラックCTR2、及びCTR3は、トラックピッチCTP2でライトされている。CMRトラックCTR1のトラックセンタCTC1とCMRトラックCTR2のトラックセンタCTC2とは、トラックピッチCTP1で離れている。CMRトラックCTR2のトラックセンタCTC2とトラックCTR3のトラックセンタCTC3とは、トラックピッチCTP2で離れている。トラックピッチCTP1及びCTP2は、異なっていてもよいし、同じであってもよい。以下、トラックをライトする際のトラックピッチを記録ピッチと称する場合もある。CMRトラックCTR1及びCMRトラックCTR2は、ギャップGP1で離れている。CMRトラックCTR2及びCMRトラックCTR3は、ギャップGP2で離れている。ギャップGP1及びGP2は、異なっていてもよいし、同じであってもよい。図3では、説明の便宜上、各トラックを所定のトラック幅で円周方向に延出している長方形状に示しているが、実際には、円周方向に沿って湾曲している。また、各トラックは、半径方向に変動しながら円周方向に延出している波状であってもよい。
【0030】
図3に示した例では、リード/ライト制御部610は、ディスク10の所定の領域、例えば、ユーザデータ領域10aにおいて、トラックセンタCTC1にヘッド15を位置決めしてCMRトラックCTR1又はCMRトラックCTR1の所定のセクタを通常記録する。リード/ライト制御部610は、ユーザデータ領域10aにおいて、CMRトラックCTR1のトラックセンタCTC1から内方向に記録ピッチCTP1で離間しているトラックセンタCTC2にヘッド15を位置決めしてCMRトラックCTR2又はCMRトラックCTR2の所定のセクタを通常記録する。リード/ライト制御部610は、ユーザデータ領域10aにおいて、CMRトラックCTR2のトラックセンタCTC2から内方向に記録ピッチCTP2で離間しているトラックセンタCTC3にヘッド15を位置決めしてCMRトラックCTR3又はCMRトラックCTR3の所定のセクタを通常記録する。リード/ライト制御部610は、ディスク10の所定の領域、例えば、ユーザデータ領域10aにおいて、CMRトラックCTR1、CTR2、及びCTR3をシーケンシャルに通常記録してもよいし、CMRトラックCTR1の所定のセクタ、CMRトラックCTR2の所定のセクタ、及びCMRトラックCTR3の所定のセクタにランダムに通常記録してもよい。
【0031】
図4は、瓦記録処理の一例を示す模式図である。図4には、順方向を示している。半径方向において複数のトラックを連続的に瓦記録する方向、つまり、半径方向において1つ前にライトしたトラックに対して次にライトするトラックを重ねる方向を順方向と称する場合もある。図4では、半径方向において内方向を順方向としているが、半径方向において外方向を順方向としてもよい。図4には、半径方向において一方向に連続的に重ね書きされた複数のSMRトラックSTR1、STR2、及びSTR3を示している。以下、瓦記録では、ライトヘッド15Wによりデータがライトされた領域をライトトラックと称し、所定のトラックにおいて他のライトトラックが重ね書きされた領域以外の残りの領域をリードトラックと称する場合もある。図4には、他のSMRトラックが重ね書きされていない場合のSMRトラックSTR1のトラックセンタSTC1と、他のSMRトラックが重ね書きされていない場合のSMRトラックSTR2のトラックセンタSTC2と、他のSMRトラックが重ね書きされていない場合のSMRトラックSTR3のトラックセンタSTC3とを示している。図4に示した例では、SMRトラックSTR1、及びSTR2は、トラックピッチ(記録ピッチ)STR1でライトされている。SMRトラックSTR2及びSTR3は、トラックピッチ(記録ピッチ)STP2でライトされている。SMRトラック(又はライトトラック)STR1のトラックセンタSTC1とSMRトラック(又はライトトラック)STR2のトラックセンタSTC2とは、記録ピッチSTP1で離れている。SMRトラックSTR2のトラックセンタSTC2とSMRトラックSTR3のトラックセンタSTC3とは、記録ピッチSTP2で離れている。記録ピッチSTP1及びSTP2は、異なっていてもよいし、同じであってもよい。図4において、SMRトラックSTR1においてSMRトラックSTR2が重ね書きされていない領域(リードトラック)の半径方向の幅と、SMRトラックSTR2においてSMRトラックSTR3が重ね書きされていない領域(リードトラック)の半径方向の幅とは、同じである。なお、SMRトラックSTR1においてSMRトラックSTR2が重ね書きされていない領域(リードトラック)の半径方向の幅と、SMRトラックSTR2においてSMRトラックSTR3が重ね書きされていない領域(リードトラック)の半径方向の幅とは、異なっていてもよい。図4では、説明の便宜上、各トラックを所定のトラック幅で円周方向に延出している長方形状に示しているが、実際には、円周方向に沿って湾曲している。また、各トラックは、半径方向に変動しながら円周方向に延出している波状であってもよい。なお、図4では、3つのトラックを重ね書きしているが、3つ未満、又は3つよりも多くのトラックを重ね書きしてもよい。
【0032】
図4に示した例では、リード/ライト制御部610は、SMRトラックSTR1乃至STR3を内方向に向かってシーケンシャルに瓦記録する。なお、リード/ライト制御部610は、SMRトラックSTR1乃至STR3を外方向に向かってシーケンシャルに瓦記録してもよい。リード/ライト制御部610は、SMRトラックSTR1の内方向に記録ピッチSTP1でSMRトラックSTR2をライトし、SMRトラックSTR1の内方向の一部にトラックSTR2を重ね書きする。リード/ライト制御部610は、SMRトラックSTR2の内方向に記録ピッチSTP2でSMRトラックSTR3をライトし、SMRトラックSTR2の内方向の一部にSMRトラックSTR3を重ね書きする。なお、リード/ライト制御部610は、SMRトラックSTR1の外方向に記録ピッチSTP1でSMRトラックSTR2をライトし、SMRトラックSTR1の内方向の一部にトラックSTR2を重ね書きしてもよい。リード/ライト制御部610は、SMRトラックSTR2の外方向に記録ピッチSTP2でSMRトラックSTR3をライトし、SMRトラックSTR2の内方向の一部にSMRトラックSTR3を重ね書きしてもよい。
【0033】
設定部620は、所定のトラックをライトする際にヘッド15を配置する目標とする半径位置(以下、目標位置又は目標トラックと称する場合もある)を設定する。目標位置又は目標トラックは、例えば、所定のトラックのトラックセンタに相当する。設定部620は、所定のCMRトラックを通常記録する際にヘッド15を配置する目標とする半径位置(以下、CMR目標位置、目標CMRトラック、又はCMRトラックと称する場合もある)と所定のSMRトラックを瓦記録する際にヘッド15を配置する目標とする半径位置(以下、SMR目標位置、目標SMRトラック、又はSMRトラックと称する場合もある)とを設定する。CMR目標位置、目標CMRトラック。又はCMRトラックは、例えば、所定のCMRトラックのトラックセンタに相当する。SMR目標位置、目標SMRトラック、又はSMRトラックは、例えば、所定のSMRトラック(ライトトラック)のトラックセンタに相当する。
【0034】
設定部620は、例えば、CMR目標位置とSMR目標位置との一部を共有(又は一致)するように設定する。設定部620は、所定の半径方向の領域(以下、半径領域と称する場合もある)に通常記録する場合の複数のCMRトラックにそれぞれ対応し、且つSMR目標位置と共有(又は一致)しない複数のCMR目標位置(以下、非共有CMR目標位置群又は非共有CMRトラック群と称する場合もある)を設定する。設定部620は、所定の半径領域に瓦記録する場合の複数のSMRトラックにそれぞれ対応し、且つCMR目標位置と共有(又は一致)しない複数のSMR目標位置(以下、非共有SMR目標位置群又は非共有SMRトラック群と称する場合もある)を設定する。設定部620は、非共有CMR目標位置群及び非共有SMR目標位置群の一部のCMR目標位置及びSMR目標位置を共有(又は一致)する所定の半径領域における複数のCMR目標位置(以下、共有CMR目標位置群又は共有CMRトラック群と称する場合もある)及び複数のSMR目標位置(以下、共有SMR目標位置群又は共有SMRトラック群と称する場合もある)を設定する。以下、所定の半径領域における非共有CMR目標位置群及び非共有SMR目標位置群をまとめて非共有目標位置群と称し、所定の半径領域における共有CMR目標位置群及び共有SMR目標位置群をまとめて共有目標位置群と称する場合もある。
【0035】
設定部620は、非共有目標位置群の内の複数の非共有CMR目標位置群及び/又は複数のSMR目標位置群の少なくとも1つのトラックピッチ、例えば、記録ピッチを変更して非共有CMR目標位置群及び非共有SMR目標位置群の内の少なくとも1組のCMR目標位置及びSMR目標位置を共有(又は一致)することで非共有目標位置群を共有目標位置群に変更(又は設定)する。
【0036】
例えば、設定部620は、ディスク10の対象とする半径領域(以下、対象半径領域と称する場合もある)、例えば、Zoned Constant Density Recording方式によるゾーンにおいて、理想的なCMR目標位置の数(以下、単に、CMR目標位置の数と称する場合もある)Mと理想的なSMR目標位置の数(以下、単位、SMR目標位置の数と称する場合もある)NとをM:Nの整数比で設定し、M+Nの内の1つの割合でCMR目標位置とSMR目標位置とが共有するように設定する。
【0037】
例えば、設定部620は、対象半径領域、例えば、Zoned Constant Density Recording方式によるゾーンにおいて、CMRトラックの理想的なトラックピッチを算出し、SMRトラックの理想的なトラックピッチを算出する。設定部620は、CMRトラックの理想的なトラックピッチに対するSMRトラックの理想的なトラックピッチの比に相当する理想的なトラックピッチの比に最も近く、且つ最小の整数比となるCMR目標位置の数M及びSMR目標位置の数Nの組み合わせを選択する。
【0038】
例えば、設定部620は、対象半径領域、例えば、Zoned Constant Density Recording方式によるゾーンにおいて、CMRトラックの理想的な記録ピッチCTPi[ナノメートル(nm)]を算出し、SMRトラックの理想的な記録ピッチSTPi[nm]を算出する。設定部620は、CMRトラックの理想的な記録ピッチに対するSMRトラックの理想的な記録ピッチの比に相当する理想的な記録ピッチの比(以下、単に、記録ピッチ比と称する場合もある)(CTPi/STPi)に最も近く、且つ最小の整数比となるCMR目標位置の数M及びSMR目標位置の数Nの組み合わせを選択する。設定部620は、例えば、対象半径領域におけるCMR目標位置の数M及びSMR目標位置の数Nと理想的な記録ピッチの比とを含むテーブル(以下、記録ピッチ比テーブルと称する場合もある)を所定の記録領域、例えば、ディスク10、揮発性メモリ70、不揮発性メモリ80、又はバッファメモリ90等に記録してもよい。
【0039】
例えば、設定部620は、CMRトラックの理想的なトラックピッチ(例えば、記録ピッチ)CTPi若しくはビットピッチとSMRトラックの理想的なトラックピッチ(例えば、記録ピッチ)STPi若しくはビットピッチとを、ライトヘッド15Wの磁気的なライト幅(Magnetic Write Width:MWW)、イレース幅(Magnetic Erase Width:MEW)、若しくはリードヘッド15Rの感度幅(Magnetic Read Width:MRW)等のヘッド特性によって決定してもよいし、エラーレート及び/又はSNR(Signal to Noise Ratio)などの実測によって決定してもよい。
【0040】
例えば、設定部620は、特定の距離以下の距離で近接するCMR目標位置とSMR目標位置とを共有するように設定する。設定部620は、対象半径領域の非共有CMR目標位置群(又は非共有CMRトラック群)から最も半径位置の小さいCMRトラック(以下、内端CMRトラックと称する場合もある)cと内端CMRトラックcのCMR目標位置(以下、内端CMR目標位置と称する場合もある)rcを検出する。設定部620は、対象半径領域の非共有SMR目標位置群(又は非共有SMRトラック群)から内端CMRトラックcに最も近いSMRトラック(以下、近接SMRトラックと称する場合もある)sと近接SMRトラックのSMR目標位置(以下、近接SMR目標位置と称する場合もある)rsを検出する。設定部620は、内端CMR目標位置rcと近接SMR目標位置rsとの差分値の絶対値(以下、単に、差分値と称する場合もある)|rc-rs|を予め設定したCMR目標位置及びSMR目標位置を共有する閾値dと比較する。設定部620は、この差分値|rc-rs|が閾値d以下であると判定した場合、内端CMRトラックc及び近接SMRトラックsの内端CMR目標位置rc及び近接SMR目標位置rsの中間の半径位置(以下、中間半径位置と称する場合もある)((rc+rs)/2)を内端CMRトラックc及び近接SMRトラックsの共有の目標位置として設定する。なお、設定部620は、差分値|rc-rs|が閾値d以下であると判定した場合、内端CMRトラックcの内端CMR目標位置rcから近接SMRトラックsの近接SMR目標位置rsまでの間に位置する所定の半径位置を内端CMRトラックc及び近接SMRトラックsの共有の目標位置として設定してもよい。設定部620は、対象半径領域の非共有CMR目標位置群(又は非共有CMRトラック群)から内端CMRトラックの外側に隣接するCMRトラック(以下、次のCMRトラックと称する場合もある)と次のCMRトラックのCMR目標位置(以下、次のCMR目標位置と称する場合もある)を検出する。設定部620は、対象半径領域の非共有SMR目標位置群(又は非共有SMRトラック群)から次のCMRトラックに最も近い近接SMRトラック(以下、次の近接SMRトラックと称する場合もある)と次の近接SMRトラックのSMR目標位置(以下、次のSMR目標位置と称する場合もある)を検出する。設定部620は、次のCMR目標位置と次のSMR目標位置との差分値(以下、次の差分値と称する場合もある)を閾値dと比較する。設定部620は、この次の差分値が閾値d以下であると判定した場合、次のCMRトラック及び次の近接SMRトラックの目標位置の中間半径位置を次のCMRトラック及び次の近接SMRトラックの共有の目標位置として設定する。設定部620は、例えば、対象半径領域の全てのCMRトラック及びSMRトラックに対して前述した処理と同様の処理を内側に設定したCMRトラック及びSMRトラックから外側に設定したCMRトラック及びSMRトラックに順番に実行する。閾値dは、例えば、SMRトラックの平均的な記録ピッチが40[nm]である場合、その5%程度の差分を許容するように、d=2[nm]に設定され得る。
【0041】
管理部630は、CMR目標位置及びSMR目標位置を管理する。管理部630は、例えば、ディスク10における全てのCMR目標位置及びSMR目標位置を管理する。管理部630は、SMR目標位置と一致(又は共有)しないCMR目標位置、CMR目標位置と一致(又は共有)しないSMR目標位置、及び半径位置と一致(又は共有)するCMR目標位置及びSMR目標位置を管理する。言い換えると、管理部630は、SMR目標位置と一致(又は共有)しないCMR目標位置に関連する情報、CMR目標位置と一致(又は共有)しないSMR目標位置に関連する情報、及び半径位置と一致(又は共有)するCMR目標位置及びSMR目標位置に関連する情報を管理する。管理部630は、CMR目標位置及びSMR目標位置をリスト又はテーブル(以下、管理リスト又は管理テーブルと称する場合もある)として管理し、管理リスト又は管理テーブルを所定の記録領域、例えば、ディスク10、揮発性メモリ70、不揮発性メモリ80、又はバッファメモリ90等に記録する。言い換えると、管理部630は、SMR目標位置と一致(又は共有)しないCMR目標位置に関連する情報、CMR目標位置と一致(又は共有)しないSMR目標位置に関連する情報、及び半径位置と一致(又は共有)するCMR目標位置及びSMR目標位置に関連する情報を管理リスト又は管理テーブルとして管理し、管理リスト又は管理テーブルを所定の記録領域、例えば、ディスク10、揮発性メモリ70、不揮発性メモリ80、又はバッファメモリ90等に記録する。管理部630は、CMR目標位置(又はCMRトラック)に対応するトラック番号とSMR目標位置(又はSMRトラック)に対応するトラック番号とを引数として参照された場合に、この管理リスト又はこの管理テーブルに基づいて参照されたトラックが半径位置を共有するトラックか共有しないトラックであるかを判定する機能を有する。また、管理部630は、CMR目標位置及びSMR目標位置に対応するキャリブレーション結果(又はキャリブレーション情報)を管理リスト又は管理テーブルに記録(又は保持)する。
【0042】
検査部640は、ディスク10における全ての目標位置に対して検査を実行する。検査部640は、管理リスト又は管理テーブルを参照して、SMR目標位置にのみ対応する半径位置と、CMR目標位置にのみ対応する半径位置と、CMR目標位置及びSMR目標位置の両方に対応する半径位置とに検査を実行する。言い換えると、検査部640は、CMR目標位置及びSMR目標位置の両方に対応する半径位置に対して2重で検査を実行しない。検査部640は、ディスク10の各目標位置に対する検査結果(又は検査情報)を管理リスト又は管理テーブルに記録(又は保持)する。検査及びキャリブレーションは、例えば、繰り返しランナウト(Repeatable Run Out:RRO)の検出、ディスク10の表面の突起の検出、エラーレートの検出、及び最終的な記録再生への適合又は不適合を示す欠陥の検出等を含む。検査結果(又は検査情報)及びキャリブレーション結果(又はキャリブレーション情報)は、例えば、RROの情報、突起の検出情報、エラーレートの情報、及び欠陥情報等を含む。
【0043】
図5は、対象半径領域Zn0における非共有目標位置群の一例を示す模式図である。図5において、対象半径領域Zn0には、CMR目標位置CRPn及びCRPn+1と、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2とを示している。図5では、CMR目標位置CRPn+1は、CMR目標位置CRPnよりも記録ピッチCTPnで外側に位置している。図5では、CMR目標位置CRPnは、SMR目標位置SRPnよりも外側に位置している。図5では、SMR目標位置SRPn+1は、SMR目標位置SRPnよりも記録ピッチSTPnで外側に位置し、SMR目標位置SRPn+2は、SMR目標位置SRPn+1よりも記録ピッチSTPnで外側に位置している。図5では、CMR目標位置CRPn+1は、SMR目標位置SRPn+2よりも外側に位置している。図5において、SMR目標位置SRPnは、例えば、ディスク10の回転中心12C若しくはディスク10の最内周から対象半径領域Zn0の内側の端部(以下、内端部と称する場合もある)までの距離(以下、内端距離と称する場合もある)ris0に相当する。図5において、CMR目標位置CRPn+1は、例えば、ディスク10の回転中心12C若しくはディスク10の最内周から対象半径領域Zn0の外側の端部(以下、外端部と称する場合もある)までの距離(以下、外端距離と称する場合もある)rоc0に相当する。記録ピッチCTPnは、記録ピッチSTPnよりも大きい。
【0044】
図5に示した例では、MPU60は、対象半径領域Zn0において、CMR目標位置CRPn及びCRPn+1を記録ピッチCTPnで設定する。MPU60は、対象半径領域Zn0において、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2を記録ピッチSTPnで設定する。なお、MPU60は、対象半径領域Zn0において、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2を異なる記録ピッチで設定してもよい。CMR目標位置CRPn及びCRPn+1とSMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2とは、対象半径領域Zn0において、共有(又は一致)しない。図5に示した例では、MPU60は、対象半径領域Zn0において、CMR目標位置のみに対応する2つの半径位置CRPn及びCRPn+1とSMR目標位置のみに対応する3つの半径位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2とを管理リスト又は管理テーブルで管理する。また、MPU60は、例えば、対象半径領域Zn0において、CMR目標位置のみに対応する2つの半径位置CRPn及びCRPn+1とSMR目標位置のみに対応する3つの半径位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2とに検査を実行する。
【0045】
図6は、対象半径領域Zn1における共有目標位置群の一例を示す模式図である。図6は、図5に対応している。図6において、対象半径領域Zn1には、CMR目標位置CRPn及びCRPn+1と、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2とを示している。図6では、CMR目標位置CRPn+1は、CMR目標位置CRPnよりも記録ピッチCTPnで外側に位置している。図6では、CMR目標位置CRPnは、SMR目標位置SRPnよりも外側に位置している。図6では、SMR目標位置SRPn+1は、SMR目標位置SRPnよりも記録ピッチSTPmで外側に位置し、SMR目標位置SRPn+2は、SMR目標位置SRPn+1よりも記録ピッチSTPmで外側に位置している。図6では、CMR目標位置CRPn+1と、SMR目標位置SRPn+2とは、同じ半径位置に位置している。図6において、SMR目標位置SRPnは、例えば、内端距離ris1に相当する。図6において、CMR目標位置CRPn+1(SMR目標位置SRPn+2)は、例えば、外端距離rоc0に相当する。記録ピッチCTPnは、記録ピッチSTPmよりも大きい。
【0046】
図6に示した例では、MPU60は、図5に示した対象半径領域Zn0において非共有CMR目標位置群CRPn及びCRPn+1と非共有SMR目標位置群SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2との内のCMR目標位置CRPn+1とSMR目標位置SRPn+2とを共有するように設定する。例えば、MPU60は、対象半径領域Zn1において、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2の記録ピッチSTPnを記録ピッチSTPmに変更してSMR目標位置SRPn+2をCMR目標位置CRPn+1に一致するように設定する。なお、MPU60は、対象半径領域Zn1において、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2を異なる記録ピッチで設定してもよい。図6に示した例において、CMR目標位置CRPn及びCRPn+1とSMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2との内の1つが半径位置を共有している。そのため、MPU60は、対象半径領域Zn1において、CMR目標位置のみに対応する1つの半径位置CMRnと、SMR目標位置のみに対応する2つの半径位置SRPn及びSRPn+1と、CMR目標位置及びSMR目標位置の両方に対応する1つの半径位置(CRPn+1=SRPn+2)とを管理リスト又は管理テーブルで管理する。また、MPU60は、例えば、対象半径領域Zn1において、CMR目標位置のみに対応する1つの半径位置CMRnと、SMR目標位置のみに対応する2つの半径位置SRPn及びSRPn+1と、CMR目標位置及びSMR目標位置の両方に対応する1つの半径位置(CRPn+1=SRPn+2)とに検査を実行する。そのため、図5に示した例と比較して図6に示した例では、対象半径領域Zn0において2つのCMR目標位置と3つのSMR目標位置との内の1つの半径位置を共有することで、MPU60が、対象半径領域Zn0における管理リスト又は管理テーブルで管理するコスト及び検査を実行するコスト等を含むコストを4/5×100%=80%に抑制することができる。言い換えると、対象半径領域Zn0において2つのCMR目標位置と3つのSMR目標位置との内の1つの半径位置を共有することで、MPU60が、対象半径領域Zn0におけるコストが20%低減することができる。
【0047】
図7は、対象半径領域Zn2における共有目標位置群の一例を示す模式図である。図7は、図5に対応している。図7において、対象半径領域Zn2には、CMR目標位置CRPn及びCRPn+1と、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2とを示している。図7では、CMR目標位置CRPn+1は、CMR目標位置CRPnよりも記録ピッチCTPmで外側に位置している。図7では、CMR目標位置CRPnは、SMR目標位置SRPnよりも外側に位置している。図7では、SMR目標位置SRPn+1は、SMR目標位置SRPnよりも記録ピッチSTPnで外側に位置し、SMR目標位置SRPn+2は、SMR目標位置SRPn+1よりも記録ピッチSTPnで外側に位置している。図7では、CMR目標位置CRPn+1と、SMR目標位置SRPn+2とは、同じ半径位置に位置している。図7において、SMR目標位置SRPnは、例えば、内端距離ris0に相当する。図7において、CMR目標位置CRPn+1(SMR目標位置SRPn+2)は、例えば、外端距離rоc1に相当する。記録ピッチCTPmは、記録ピッチSTPnよりも大きい。
【0048】
図7に示した例では、MPU60は、図5に示した対象半径領域Zn0において非共有CMR目標位置群CRPn及びCRPn+1と非共有SMR目標位置群SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2との内のCMR目標位置CRPn+1とSMR目標位置SRPn+2とを共有するように設定する。例えば、MPU60は、対象半径領域Zn2において、CMR目標位置CRPn及びCRPn+1の記録ピッチCTPnを記録ピッチCTPmに変更してCMR目標位置CRPn+1をSMR目標位置SRPn+2に一致するように設定する。
【0049】
図8は、対象半径領域Zn3における共有目標位置群の一例を示す模式図である。図8は、図5に対応している。図8において、対象半径領域Zn3には、CMR目標位置CRPn及びCRPn+1と、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2とを示している。図8では、CMR目標位置CRPn+1は、CMR目標位置CRPnよりも記録ピッチCTPjで外側に位置している。図8では、CMR目標位置CRPnは、SMR目標位置SRPnよりも外側に位置している。図8では、SMR目標位置SRPn+1は、SMR目標位置SRPnよりも記録ピッチSTPjで外側に位置し、SMR目標位置SRPn+2は、SMR目標位置SRPn+1よりも記録ピッチSTPjで外側に位置している。図8では、CMR目標位置CRPn+1と、SMR目標位置SRPn+2とは、同じ半径位置に位置している。図8において、SMR目標位置SRPnは、例えば、内端距離ris2に相当する。図8において、CMR目標位置CRPn+1(SMR目標位置SRPn+2)は、例えば、外端距離rоcs0に相当する。記録ピッチCTPjは、記録ピッチSTPjよりも大きい。
【0050】
図8に示した例では、MPU60は、図5に示した対象半径領域Zn0において非共有CMR目標位置群CRPn及びCRPn+1と非共有SMR目標位置群SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2との内のCMR目標位置CRPn+1とSMR目標位置SRPn+2とを共有するように設定する。例えば、MPU60は、対象半径領域Zn3において、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2の記録ピッチSTPnを記録ピッチSTPjに変更し、CMR目標位置CRPn及びCRPn+1の記録ピッチCTPnを記録ピッチCTPjに変更し、CMR目標位置CRPn+1及びSMR目標位置SRPn+2を一致するように設定する。なお、MPU60は、対象半径領域Zn3において、SMR目標位置SRPn、SRPn+1、及びSRPn+2を異なる記録ピッチで設定してもよい。
【0051】
図9は、本実施形態に係る記録ピッチ比テーブルPTBの一例を示す模式図である。図9において、記録ピッチ比テーブルPTBは、CMR目標位置の数Mと、SMR目標位置の数Nと、記録ピッチ比と、対象半径領域においてCMR目標位置及びSMR目標位置が全く共有(又は一致)していな場合のCMR目標位置及びSMR目標位置の数(以下、非共有時の目標位置の数と称する場合もある)と、対象半径領域においてCMR目標位置及びSMR目標位置の内の1つの半径位置を共有した場合のCMR目標位置及びSMR目標位置の数(以下、共有時の目標位置の数と称する場合もある)と、非共有時の目標位置の数に対する共有時の目標位置の数の比に相当する抑制効果(以下、単に、抑制効果と称する場合もある)と、を含む。なお、記録ピッチ比テーブルPTBは、SMR目標位置の数、CMR目標位置の数、記録ピッチ比、非共有時の目標位置の数、共有時の目標位置の数、及び抑制効果の内の少なくとも1つを含んでいなくともよい。また、記録ピッチ比テーブルPTBは、SMR目標位置の数、CMR目標位置の数、記録ピッチ比、非共有時の目標位置の数、共有時の目標位置の数、及び抑制効果以外の他のパラメータを含んでいてもよい。
【0052】
図9に示した例では、MPU60は、ディスク10の対象半径領域において、CMRトラックの理想的な記録ピッチCTPi=50[nm]を算出し、SMRトラックの理想的な記録ピッチSTPi=41[nm]を算出する。MPU60は、記録ピッチ比:41/50×100%=82%を算出する。MPU60は、記録ピッチ比テーブルPTBを参照して、記録ピッチ比から82%に近い83.3%を選択し、記録ピッチ比83.3%に対応するCMR目標位置の数M=5及びSMR目標位置の数N=6を選択する。MPU60は、対象半径領域において、CMR目標位置の数MとSMR目標位置の数Nとの比が5:6になるように、非共有CMR目標位置群のトラックピッチと非共有SMR目標位置群のトラックピッチとを決定する。例えば、SMRトラックと比較してCMRトラックの品質
は、トラックピッチの変動に対して敏感であることが知られている。そのため、MPU60は、CMRトラックの理想的な記録ピッチCTPi=50[nm]を変更せずに、SMRトラックの理想的な記録ピッチSTPi=41[nm]を記録ピッチCTPi×5/6=42[nm]に変更する。CMR目標位置の数MとSMR目標位置の数Nとの比が5:6となるようにトラックピッチを決定した場合、記録ピッチ比テーブルPTBより、対象半径領域において、CMR目標位置及びSMR目標位置が1つの半径位置を共有し、抑制効果は、90.9%に相当する。つまり、コストは、9.1%低減され得る。
【0053】
MPU60は、対象半径領域の最も内側(又は外側)の目標位置をCMR目標位置及びSMR目標位置の両方に対応する半径位置に設定し、最も内側(又は外側)の目標位置から外側(又は内側)にSMR目標位置と一致しない4つのCMR目標位置を記録ピッチ42[nm]で設定し、最も内側(又は外側)の目標位置から外側(又は内側)にCMR目標位置と一致しない5つのSMR目標位置を記録ピッチ50[nm]で設定する。MPU60は、この半径領域を同様にディスク10のユーザデータ領域10aの全ての領域にCMR目標位置のみ対応する半径位置と、SMR目標位置のみを対応する半径位置と、CMR目標位置及びSMR目標位置の両方に対応する半径位置とを設定する。
【0054】
図10は、本実施形態に係る対象半径領域のトラックの設定方法の一例を示すフローチャートである。
MPU60は、r=対象半径領域の内端距離、CTPi=CMRトラックの理想的な記録ピッチ、及びSTPi=SMRトラックの理想的な記録ピッチを設定する(B1001)。MPU60は、記録ピッチ比テーブルPTBを参照して、記録ピッチ比(STPi/CTPi)と最も近いM/NとなるCMR目標位置の数M及びSMR目標位置の数Nを決定する(B1002)。MPU60は、CMRトラックの理想的な記録ピッチCTP=CTPiを変更せずに、SMRトラックの理想的な記録ピッチをSMRトラックの記録ピッチSTP=STPi×(M/N)に変更する(B1003)。MPU60は、CMR目標位置及びSMR目標位置が共有する半径位置を目標位置群に追加する(B1004)。
【0055】
MPU60は、繰り返し処理a=1~(M―1)をStep1から開始し(B1005)、CMR目標位置群にr+(a×CTP)を追加し(B1006)、繰り返し処理a回終了するまでB1005及びB1007の処理を繰り返す(B1007)。
【0056】
MPU60は、繰り返し処理b=1~(N―1)をStep1から開始し(B1008)、CMR目標位置群にr+(b×STP)を追加し(B1006)、繰り返し処理b回終了するまでB1008及びB1009の処理を繰り返す(B1010)。
【0057】
MPU60は、r=r+(M×CTP)=r+(N×STP)を算出する(B1011)。MPU60は、r≧対象半径領域の外端距離であるか、r<対象半径領域の外端距離であるかを判定する(B1012)。r≧対象半径領域の外端距離であると判定した場合(B1012のYES)、MPU60は、B1004の処理に進む。r<対象半径領域の外端距離であると判定した場合(B1012のNO)、MPU60は、目標位置群から対象半径領域外の要素を削除し(B1013)、処理を終了する。
【0058】
図11は、本実施形態に係る対象半径領域のトラックの設定方法の一例を示すフローチャートである。
MPU60は、r=対象半径領域の内端距離、及びd=閾値を設定する(B1101)。MPU60は、CMR目標位置群からr≦rc、且つ最も小さいCMR目標位置rcを取得する(B1102)。言い換えると、MPU60は、CMRトラック群からr≦rc、且つ最も小さいCMR目標位置rcに対応するCMRトラックcを取得する。MPU60は、SMR目標位置群からCMR目標位置rcに最も近接するSMR目標位置rsを取得する(B1103)。言い換えると、SMRトラック群からCMR目標位置rcに最も近接するSMR目標位置rsに対応するSMRトラックsを取得する。
【0059】
MPU60は、差分値|rc―rs|≦dであるか、差分値|rc―rs|>dであるかを判定する(B1104)。差分値|rc―rs|≦dであると判定した場合(B1104のYES)、MPU60は、B1108の処理に進む。差分値|rc―rs|>dであると判定した場合(B1104のNO)、MPU60は、CMR目標位置及びSMR目標位置が共有する半径位置、例えば、(rc+rs)/2を目標位置群に追加する(B1105)。言い換えると、MPU60は、CMR目標位置及びSMR目標位置が共有する半径位置、例えば、(rc+rs)/2に対応するトラックを目標トラック群に追加する。MPU60は、CMR目標位置rcをCMR目標位置群から抹消し(B1106)、SMR目標位置rsをSMR目標位置群から抹消する(B1107)。言い換えると、MPU60は、CMR目標位置rcに対応するCMRトラックcをCMRトラック群から抹消し、SMR目標位置rsに対応するSMRトラックをSMRトラック群から抹消する。
【0060】
MPU60は、r=rcに設定する(B1108)。MPU60は、CMR目標位置群からr<rc、且つ最も小さいCMR目標位置rcを取得する(B1109)。言い換えると、MPU60は、CMRトラック群からr<rc、且つ最も小さいCMR目標位置rcに対応するトラックを取得する。
【0061】
MPU60は、CMR目標位置rcが管理リスト又は管理テーブル等に存在するか存在しないかを判定する(B1110)。CMR目標位置rcが管理リスト又は管理テーブル等に存在すると判定した場合(B1110のYES)、MPU60は、B1103の処理に進む。CMR目標位置rcが管理リスト又は管理テーブル等に存在しないと判定した場合(B1110のNO)、MPU60は、処理を終了する。
【0062】
実施形態によれば、非共有目標位置群の内の複数の非共有CMR目標位置群及び/又は複数のSMR目標位置群の少なくとも1つのトラックピッチ、例えば、記録ピッチを変更して非共有CMR目標位置群及び非共有SMR目標位置群の内の少なくとも1組のCMR目標位置及びSMR目標位置を共有(又は一致)することで非共有目標位置群を共有目標位置群に変更(又は設定)する。そのため、磁気ディスク装置1は、各トラックの目標位置を管理する管理コスト、各トラックの各目標位置で検査する検査コスト、及び各トラックでキャリブレーションを実行するコスト等を低減することができる。そのため、磁気ディスク装置1は、管理性能を改善することができる。
【0063】
次に、前述した実施形態の他の実施形態及び他の変形例に係る磁気ディスク装置について説明する。他の実施形態及び他の変形例において、前述した実施形態と同一の部分には同一の参照符号を付してその詳細な説明を省略する。
(変形例1)
変形例1の磁気ディスク装置1は、アシスト機能を有している点が前述した実施形態の磁気ディスク装置1と異なる。
図12は、変形例1に係る磁気ディスク装置1の構成を示すブロック図である。
変形例1に係る磁気ディスク装置1は、例えば、高周波アシスト記録型式(若しくはマイクロ波アシスト型式)の磁気ディスク装置、又は熱アシスト磁気記録(Thermally Assisted Magnetic Recording : TAMR)型式等の磁気ディスク装置である。
【0064】
ヘッド15は、アシスト素子200を有している。磁気ディスク装置1が高周波アシスト記録型式の磁気ディスク装置である場合、アシスト素子200は、例えば、ディスク10に高周波磁界(マイクロ波)を印加するスピントルク発振子(spin torque oscillator:STO)を有している。また、磁気ディスク装置1が熱アシスト磁気記録型式の磁気ディスク装置である場合、アシスト素子200は、例えば、光発生素子(例えば、レーザダイオード)と、ディスク10に近接場光を出射する近接場光照射素子(プラズモン・ジェネレータ、ニアフィールド・トランデューサ)と、光発生素子で発生した光を近接場光照射素子に伝播する導波路とを有している。
ヘッドアンプIC30は、例えば、MPU60の制御に応じてアシスト素子200に電流及び電圧を供給する。
【0065】
MPU60は、アシスト素子200に電流及び電圧を供給して、ディスク10にエネルギー(高周波磁界若しくは近接場光等)を出力するエネルギーアシスト記録型式(熱アシスト型式若しくはマイクロ波アシスト型式等)によりデータをライトする。
MPU60は、例えば、対象半径領域において、エネルギーアシスト記録型式により高密度にトラックをライトする際の複数の目標半径位置(又は、複数のトラック)と、アシスト素子200の故障時や寿命確保のためにアシスト素子200の利用を中断する場合などに通常記録型式でトラックをライトする際の複数のCMR目標半径位置(又は、複数のCMRトラック)との一部を共有するように設定する。
【0066】
変形例1によれば、磁気ディスク装置1は、対象半径領域において、エネルギーアシスト記録型式により高密度にトラックをライトする際の複数の目標半径位置と、通常記録型式でトラックをライトする際の複数のCMR目標半径位置との一部を共有するように設定する。そのため、磁気ディスク装置1は、管理性能を改善することができる。
【0067】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
本明細書にて開示した構成から得られる磁気ディスク装置、及びトラックの設定方法の一例を以下に付記する。
(1)
ディスクと、
前記ディスクに対してデータをライトし、前記ディスクからデータをリードするヘッドと、
第1記録型式と前記第1記録型式と異なる第2記録型式とを選択して実行し、前記ディスクの第1領域に前記第1記録型式で前記ディスクの半径方向に複数の第1トラックをライトする場合の前記複数の第1トラックにそれぞれ対応する複数の第1目標位置と前記第1領域に前記第2記録型式で前記半径方向に複数の第2トラックをライトする場合の前記複数の第2トラックにそれぞれ対応する複数の第2目標位置との内の少なくとも1組の前記第1目標位置及び前記第2目標位置が一致するように設定するコントローラと、を備える磁気ディスク装置。
(2)
前記第1記録型式は、前記半径方向に間隔を置いてトラックをライトする通常記録型式であり、
前記第2記録型式は、前記半径方向に重ねてトラックをライトする瓦記録型式である、(1)の磁気ディスク装置。
(3)
前記コントローラは、前記第1領域において前記複数の第1目標位置の数と前記複数の第2目標位置の数との和に相当するトラックをライトする際に目標とする目標位置の数の内の1つの目標位置の割合で前記第1目標位置と前記第2目標位置とが一致する、(1)又は(2)の磁気ディスク装置。
(4)
前記コントローラは、前記第1領域において、前記複数の第1目標位置と前記複数の第2目標位置との内の閾値以下の前記半径方向の距離で配置された少なくとも1組の前記第1目標位置及び前記第2目標位置を一致するように設定する、(1)又は(2)の磁気ディスク装置。
(5)
前記コントローラは、前記複数の第1目標位置の内の前記第2目標位置と一致しない少なくとも1つの第3目標位置の第1情報と、前記複数の第2目標位置の内の前記第1目標位置と一致しない少なくとも1つの第4目標位置の第2情報と、前記複数の第1目標位置及び前記複数の第2目標位置の内の前記第1目標位置及び前記第2目標位置が一致する少なくとも1つの第5目標位置の第3情報と、を保持する、(1)乃至(4)のいずれか1の磁気ディスク装置。
(6)
前記コントローラは、前記第3目標位置、前記第4目標位置、及び前記第5目標位置に対して検査及びキャリブレーションを実行する、(5)の磁気ディスク装置。
(7)
前記コントローラは、前記第1情報に対応する検査及びキャリブレーションを実行した結果に相当する第1検査及びキャリブレーション情報と、前記第2情報に対応する検査及びキャリブレーションを実行した結果に相当する第2検査及びキャリブレーション情報と、前記第3情報に対応する検査及びキャリブレーションを実行した結果に相当する第3検査及びキャリブレーション情報と、を保持する、(6)の磁気ディスク装置。
(8)
第1検査及びキャリブレーション情報、第2検査及びキャリブレーション情報、及び第3検査及びキャリブレーション情報は、RRO情報、前記ディスクの表面の突起情報、エラーレートの情報、及び前記ディスクの欠陥情報を含む、(7)の磁気ディスク装置。
(9)
前記第1記録型式は、前記半径方向に間隔を置いてトラックをライトする通常記録型式であり、
前記第2記録型式は、前記ディスクにエネルギーを出力してデータをライトするエネルギーアシスト記録型式である、(1)の磁気ディスク装置。
(10)
第1領域を有し、前記第1領域において前記ディスクの半径方向に複数の第1目標位置にそれぞれ配置された複数の第1トラックと前記第1領域において前記半径方向に複数の第2目標位置にそれぞれ配置された複数の第2トラックとの内の少なくとも1組の前記第1目標位置及び前記第2目標位置が一致しているディスクと、
前記ディスクに対してデータをライトし、前記ディスクからデータをリードするヘッドと、
第1記録型式と前記第1記録型式と異なる第2記録型式とを選択して実行する、コントローラと、を備える磁気ディスク装置。
(11)
ディスクと、前記ディスクに対してデータをライトし、前記ディスクからデータをリードするヘッドと、を備える磁気ディスク装置に適用されるトラックの設定方法であって、
第1記録型式と前記第1記録型式と異なる第2記録型式とを選択して実行し、
前記ディスクの第1領域に前記第1記録型式で前記ディスクの半径方向に複数の第1トラックをライトする場合の前記複数の第1トラックにそれぞれ対応する複数の第1目標位置と前記第1領域に前記第2記録型式で前記半径方向に複数の第2トラックをライトする場合の前記複数の第2トラックにそれぞれ対応する複数の第2目標位置との内の少なくとも1組の前記第1目標位置及び前記第2目標位置が一致するように設定する、トラックの設定方法。
【符号の説明】
【0068】
1…磁気ディスク装置、10…磁気ディスク、10a…ユーザデータ領域、10b…メディアキャッシュ、10c…システムエリア、12…スピンドルモータ(SPM)、13…アーム、14…ボイスコイルモータ(VCM)、15…ヘッド、15W…ライトヘッド、15R…リードヘッド、20…ドライバIC、30…ヘッドアンプIC、40…リード/ライト(R/W)チャネル、50…ハードディスクコントローラ(HDC)、60…マイクロプロセッサ(MPU)、70…揮発性メモリ、80…不揮発性メモリ、90…バッファメモリ、100…ホストシステム(ホスト)、130…システムコントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12