(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】電動操作機構及び故障判定方法
(51)【国際特許分類】
G05B 9/02 20060101AFI20240408BHJP
H01F 29/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G05B9/02 A
H01F29/04 502K
H01F29/04 502L
(21)【出願番号】P 2021047266
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 啓
(72)【発明者】
【氏名】石川 拓
(72)【発明者】
【氏名】富岡 和美
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-223331(JP,A)
【文献】特開2017-099130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷時タップ切換器を動作させるモータの回転を検出するエンコーダからの検出信号に基づいて前記モータの回転数を演算し、前記モータの回転数の演算結果に基づいて前記モータを制御する第1のロジック回路と、
前記検出信号を受信し、前記検出信号に基づいて前記モータの回転数を演算する第2のロジック回路と、
前記負荷時タップ切換器の動作指令を受信し、前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路と通信するCPUと、
を有し、
前記第2のロジック回路は、前記検出信号に基づいて演算した前記モータの回転数の演算結果に異常があるか否かを判定し、異常があると判定した場合には、前記CPUに対して故障の発生を通知する、
電動操作機構。
【請求項2】
前記CPUは、前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路の少なくともいずれかのロジック回路と通信することで前記ロジック回路が正常に動作しているか否かを監視し、前記ロジック回路の異常を検知した場合には、前記電動操作機構の故障と判定する、
請求項1に記載の電動操作機構。
【請求項3】
前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路の少なくともいずれかのロジック回路は、前記CPUと通信することで前記CPUが正常に動作しているか否かを監視し、前記CPUの異常を検知した場合には、前記電動操作機構の故障と判定する、
請求項2に記載の電動操作機構。
【請求項4】
前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路のそれぞれは、前記モータを制御するモータ制御機能を有し、
前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路のいずれかのロジック回路の前記モータ制御機能が動作する、
請求項3に記載の電動操作機構。
【請求項5】
前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路のそれぞれは、自身が演算した前記演算結果を前記CPUに送信し、
前記CPUは、前記第1のロジック回路からの前記演算結果と、前記第2のロジック回路からの前記演算結果と、の間に所定値以上の差異がある場合には、前記電動操作機構の故障と判定する、
請求項1に記載の電動操作機構。
【請求項6】
前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路のそれぞれは、前記モータを制御するモータ制御機能を有し、
前記CPUは、前記CPUに異常が発生した場合には、前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路のいずれかのロジック回路に対して前記モータ制御機能の停止を指示し、前記電動操作機構の表示装置に対して故障した旨を表示し、外部ネットワークに対して故障した旨を出力する、
請求項5に記載の電動操作機構。
【請求項7】
前記CPUは、前記第1のロジック回路の前記演算結果である第1演算結果と、前記第2のロジック回路の演算結果である第2演算結果とが異なる場合には、前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路から故障の通知、前記検出信号、前記第1演算結果、及び前記第2演算結果を受信し、受信した前記検出信号に基づいて前記モータの回転数を演算し、前記第1演算結果と前記第2演算結果とのうち、前記CPUの演算結果である第3演算結果
と異なる演算結果を演算したロジック回路を故障と判定して動作を停止させる、
請求項6に記載の電動操作機構。
【請求項8】
前記CPUは、前記第1のロジック回路の前記演算結果である第1演算結果と、前記第2のロジック回路の演算結果である第2演算結果と、前記検出信号とを受信し、受信した前記検出信号に基づいて前記モータの回転数を演算し、前記第1演算結果、前記第2演算結果、及び前記CPUの演算結果である第3演算結果の多数決処理を実行し、前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路のうち、少数派のロジック回路を故障と判定して動作を停止させる、
請求項6に記載の電動操作機構。
【請求項9】
前記CPUは、前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路のうち、いずれか一方のロジック回路が故障と判定された場合には、正常である他方のロジック回路に前記モータ制御機能を実行させ、前記一方のロジック回路が故障した旨を前記表示装置に対して表示しかつ外部ネットワークに対して出力する、
請求項7又は請求項8に記載の電動操作機構。
【請求項10】
前記CPUは、前記第1演算結果、前記第2演算結果、及び前記第3演算結果のすべてがそれぞれ異なる場合には、前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路に対して動作の停止を指示し、前記表示装置に対して故障した旨を表示し、外部ネットワークに対して故障した旨を出力する、
請求項7から請求項9のいずれか一項に記載の電動操作機構。
【請求項11】
負荷時タップ切換器を動作させるモータの回転を検出するエンコーダからの検出信号に基づいて前記モータの回転数を演算し、前記モータの回転数の演算結果に基づいて前記モータを制御するモータ制御機能を有する第1のロジック回路と、前記検出信号を受信し、前記検出信号に基づいて前記モータの回転数を演算する第2のロジック回路と、前記負荷時タップ切換器の動作指令を受信し、前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路と通信するCPUとを有する電動操作機構の故障判定方法であって、
前記第2のロジック回路が検出した前記検出信号に基づいて演算した前記モータの回転数の演算結果に異常があるか否かを判定し、異常があると判定した場合には、前記第2のロジック回路から前記CPUに対して故障の発生が通知されることで前記CPUが前記電動操作機構に故障が発生していると判定する、
故障判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電動操作機構及び故障判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静止誘導電器に取り付けられ、負荷変動に応じて巻回数比を切り換える役割を持つ負荷時タップ切換器(LTC:on-Load Tap Changer)は、切換動作を行うための駆動力が、外部に配された「電動操作機構(MM:Motor drive Mechanism)」と呼ばれる装置から供給されることで動作する。電動操作機構は、タップ切換指令が入力された際に、負荷時タップ切換器の動作に必要な回転数を正確かつ速やかに供給する必要がある。万が一、回転数に誤りが生じると、重大事故につながる恐れがある。従来、電動操作機構による負荷時タップ切換器の制御は、確実性の側面から、ギヤ等を用いた機械式で行われていたが、近年の電子化に伴い、電子制御でモータを直接駆動する方式も普及しつつある。電子制御の電動操作機構を導入する際に問題となる点の一つに、ノイズ等の外乱やソフトウェアの暴走やセンサの故障等により制御側(電動操作機構)で不具合が発生した場合の対処法がある。従来ではこれらの問題に対し、制御回路を2重化し、一方をメインの制御として使用し、他方をメインの制御回路で異常が生じた場合のバックアップとして使用する方法が一般的に用いられている。
【0003】
静止誘導電器の負荷時タップ切換器の動作に用いられる電動操作機構を電子制御化する場合、万が一、電動操作機構の誤作動が発生した際に重大事故につながることから、センサの故障などの電動操作機構の故障を判定するにあたって、CPU(Central Processing Unit)及び制御用のロジック回路(FPGA:field-programmable gate array)を2重化する必要がある。しかしながら、制御用の電子回路は大形で高価であり、電動操作機構内の回路を全て2重化すると高コストであること、制御回路が大形化することが課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、従来よりも低コストで電動操作機構の故障を判定することができる電動操作機構及び故障判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の電動操作機構は、第1のロジック回路と、第2のロジック回路と、CPUとを持つ。第1のロジック回路は、負荷時タップ切換器を動作させるモータの回転を検出するエンコーダからの検出信号に基づいて前記モータの回転数を演算し、前記モータの回転数の演算結果に基づいて前記モータを制御する。第2のロジック回路は、前記検出信号を受信し、前記検出信号に基づいて前記モータの回転数を演算する。CPUは、前記負荷時タップ切換器の動作指令を受信し、前記第1のロジック回路及び前記第2のロジック回路と通信する。第2のロジック回路は、前記検出信号に基づいて演算した前記モータの回転数の演算結果に異常があるか否かを判定し、異常があると判定した場合には、前記CPUに対して故障の発生を通知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態における電動操作機構の構成図。
【
図3】第1の実施形態におけるエンコーダの故障判定のフローチャート。
【
図4】第2の実施形態における電動操作機構の構成図。
【
図6】第2の実施形態における電動操作機構の故障判定のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態の電動操作機構及び電動操作機構の故障判定方法を、図面を参照して説明する。
【0009】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の電動操作機構1を、
図1に参照して説明する。
図1は、第1の実施形態における負荷時タップ切換器LTCの電動操作機構1の構成例を示す図である。
【0010】
負荷時タップ切換器LTCは、変圧器などの静止誘導電器に取り付けられ、電力系統の負荷変動に応じて、変圧器の巻回数比を切り換える機能を有する。
【0011】
電動操作機構1は、負荷時タップ切換器LTCのタップの位置を切り換えることで変圧器の巻回数比を切り換える。
【0012】
図1に示すように、電動操作機構1は、例えば、上位盤操作部10と、モータ20と、エンコーダ30と、制御部40と、表示装置50とを備える。
【0013】
上位盤操作部10は、上位機器に設けられた操作部に対する管理者等からの操作による負荷時タップ切換器LTCの動作指令を制御部40に出力する。負荷時タップ切換器LTCの動作指令には、例えば、上位制御の信号が含まれる。上位制御とは、例えば、負荷時タップ切換器LTCに対する昇圧制御や降圧制御に伴うタップ切り換え制御である。
【0014】
モータ20は、回転可能な駆動軸を所定方向に回転させることで、負荷時タップ切換器LTCのタップ(一定の回転数を選びうる巻線に沿う接続ポイント)の位置を切り換える。モータ20は、例えば、昇圧制御と、降圧制御とで駆動軸を逆方向に回転させる。電動操作機構1は、モータ20により負荷時タップ切換器LTCのタップの位置を切り換えることで、負荷時タップ切換器LTCが設置された変圧器の巻線比を変えて、変圧器の電圧を調整させる。
【0015】
エンコーダ30は、モータ20の回転を検出する。エンコーダ30は、例えば、多回転型コンバータである。エンコーダ30は、例えば、モータ20の駆動により回転する駆動軸の直下に実装される。エンコーダ30は、例えば、駆動軸に対してn(n>0)倍の回転をする部材を有し、その部材の回転位置を検出することで、駆動軸の回転位置を検出する。エンコーダ30は、検出した回転位置の情報(以下、「エンコーダ信号」という。)を制御部40に出力する。エンコーダ信号とは、例えば、駆動軸の多回転での回転角度や回転数を含めた絶対位置情報(絶対値)である。エンコーダ30は、駆動軸の回転位置が変化した場合(回転角度が数[度]ずれた場合)に、エンコーダ信号を出力する。エンコーダ30は、各種センサの一例である。エンコーダ信号は、検出信号の一例である。
【0016】
制御部40は、エンコーダ30からのエンコーダ信号に基づいてモータ20の動作を制御する機能を有する。制御部40は、エンコーダ信号などの情報に基づいて電動操作機構1の故障の有無を判定する機能を有する。
【0017】
表示装置50は、制御部40に接続されており、各種情報を表示する。
【0018】
図2は、第1の実施形態における制御部40の構成例を示す図である。
図2に示すように、制御部40は、例えば、1つのCPU60と、動作用のロジック回路(動作用ロジック回路)51と、監視用のロジック回路(監視用ロジック回路)52とを備える。動作用ロジック回路61は、第1のロジック回路の一例である。監視用ロジック回路62は、第2のロジック回路の一例である。動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62のそれぞれは、例えば、FPGAである。この制御部40は、例えば、負荷時タップ切換器LTCの動作用モータであるモータ20の制御(以下、「モータ制御」という。)を行う制御回路である。動作用ロジック回路61と監視用ロジック回路62とは、互いに同等の機能を有してもよい。
【0019】
CPU60は、外部から負荷時タップ切換器LTCの動作指令を受信する。CPU60は、動作用ロジック回路61の動作を制御する。例えば、CPU60は、動作用ロジック回路61に対して所定の動作を実行させる際には、動作用ロジック回路61に対して制御指令を送信する。
【0020】
CPU60は、監視用ロジック回路62の動作を制御する。例えば、CPU60は、監視用ロジック回路62に対して所定の動作を実行させる際には、監視用ロジック回路62に対して制御指令を送信する。
【0021】
CPU60は、外部への信号出力の機能を有する。例えば、CPU60は、外部または電動操作機構1に設けられる表示装置50に対して、各種情報を表示させる機能を有してもよい。例えば、CPU60は、外部または電動操作機構1に設けられる表示装置50に対して、電動操作機構1の故障の有無を表示させてもよい。また、CPU60は、外部ネットワークと接続し、その外部ネットワークに対して電動操作機構1の故障有無を出力してもよい。
【0022】
CPU60は、動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62のいずれか又は両方のロジック回路の異常監視を行う。CPU60におけるロジック回路の異常監視は、動作用ロジック回路61の異常の有無の検知と、監視用ロジック回路62の異常の有無の検知とのいずれか又は両方を含む。
【0023】
CPU60は、動作用ロジック回路61と通信することで動作用ロジック回路61が正常に動作しているか否かを監視し、監視の結果、動作用ロジック回路61の異常を検知した場合には、電動操作機構1の故障と判定する。例えば、CPU60は、動作用ロジック回路61が正常に動作しているか否かを示す信号(以下、「第1の状態確認信号」という。)を動作用ロジック回路61から受信し、第1の状態確認信号に基づいて、動作用ロジック回路61の異常の有無を判定する。
【0024】
CPU60は、監視用ロジック回路62と通信することで監視用ロジック回路62が正常に動作しているか否かを監視し、監視の結果、監視用ロジック回路62の異常を検知した場合には、電動操作機構1の故障と判定する。例えば、CPU60は、監視用ロジック回路62が正常に動作しているか否かを示す信号(以下、「第2の状態確認信号」という。)を監視用ロジック回路62から受信し、第2の状態確認信号に基づいて、監視用ロジック回路62の異常の有無を判定する。
【0025】
CPU60は、動作用ロジック回路61と監視用ロジック回路62とのそれぞれに対して、CPU60が正常に動作しているか否かを示す信号(以下、「CPU状態確認信号」という。)を送信してもよい。
【0026】
CPU60は、監視用ロジック回路62からエンコーダ30の異常を示すセンサ異常信号を受信した場合には、電動操作機構1の故障と判定する。なお、CPU60は、動作用ロジック回路61からエンコーダ30の異常を示すセンサ異常信号を受信した場合には、電動操作機構1の故障と判定してもよい。また、CPU60は、動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62の両方からセンサ異常信号を受信した場合に、電動操作機構1の故障と判定してもよい。
【0027】
動作用ロジック回路61は、CPU60からの制御指令を受信し、その受信した動作指令に従って動作する。例えば、動作用ロジック回路61は、CPU60から制御指令を取得すると、エンコーダ30からエンコーダ信号を受信する。そして、動作用ロジック回路61は、受信したエンコーダ信号に基づいて、モータ20の回転数を演算する。動作用ロジック回路61は、モータ20の回転数の演算結果を監視しながら、規定の回転数(以下、「規定回転数」という。)だけモータ20を回転させるモータ制御機能を実行する。なお、以下において、動作用ロジック回路61が演算したモータ20の回転数の演算結果を「第1演算結果」と称する。
【0028】
動作用ロジック回路61は、CPU60と通信することでCPU60が正常に動作しているか否かを監視する異常監視を行う。また、動作用ロジック回路61は、監視用ロジック回路62と通信することで監視用ロジック回路62が正常に動作しているか否かを監視する異常監視を行う。例えば、動作用ロジック回路61は、CPU60からCPU状態確認信号を受信し、CPU状態確認信号に基づいて、CPU60の異常の有無を判定する。動作用ロジック回路61は、監視用ロジック回路62から第2の状態確認信号を受信し、第2の状態確認信号に基づいて、監視用ロジック回路62の異常の有無を判定する。動作用ロジック回路61は、CPU60の異常と監視用ロジック回路62の異常との少なくともいずれかの異常を検知した場合には、電動操作機構1の故障と判定する。
【0029】
監視用ロジック回路62は、CPU60からの制御指令を受信し、その受信した制御指令に従って動作する。例えば、監視用ロジック回路62は、CPU60から制御指令を取得すると、エンコーダ30からエンコーダ信号を受信する。監視用ロジック回路62は、エンコーダ信号に基づいてモータ20の回転数を演算し、このモータ20の回転数を監視する。監視用ロジック回路62は、自身が演算したモータ20の回転数(以下、「第2演算結果」という。)が異常であるか否かを判定し、第2演算結果が異常であると判定した場合には、CPU60に対して故障の発生(例えば、センサ異常信号)を通知するエンコーダ異常検知機能を有する。監視用ロジック回路62は、例えば、第2演算結果と、異常を示す所定の範囲とを比較し、第2演算結果がその所定の範囲が含まれる場合には、第2演算結果が異常であると判定する。
【0030】
監視用ロジック回路62は、CPU60と通信することでCPU60が正常に動作しているか否かを監視する異常監視を行う。また、監視用ロジック回路62は、動作用ロジック回路61と通信することで動作用ロジック回路61が正常に動作しているか否かを監視する異常監視を行う。例えば、監視用ロジック回路62は、CPU60からCPU状態確認信号を受信し、CPU状態確認信号に基づいて、CPU60の異常の有無を判定する。監視用ロジック回路62は、動作用ロジック回路61から第1の状態確認信号を受信し、第1の状態確認信号に基づいて、動作用ロジック回路61の異常の有無を判定する。監視用ロジック回路62は、CPU60の異常と動作用ロジック回路61の異常との少なくともいずれかの異常を検知した場合には、電動操作機構1の故障と判定する。
【0031】
以下において、エンコーダ30の故障判定方法について、
図3を用いて説明する。
図3は、第1の実施形態における電動操作機構1のエンコーダ30の故障判定のフローチャートである。
【0032】
CPU60は、上位盤操作部10から負荷時タップ切換器LTCの動作指令を受信すると(ステップS101)、動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62に対して所定の制御指令を送信する(ステップS102)。動作用ロジック回路61は、制御指令を受信すると、エンコーダ信号から演算した演算結果に基づいてモータ20を制御する(ステップS103)。
【0033】
監視用ロジック回路62は、制御指令を受信すると、モータ20から動作している場合においてエンコーダ30からエンコーダ信号を受信する(ステップS104)。監視用ロジック回路62は、受信したエンコーダ信号に基づいてモータ20の回転数を演算し、演算した演算結果に異常があるか否かを判定する(ステップS105)。監視用ロジック回路62は、演算結果に異常があると判定した場合には、CPU60に対してエンコーダ30の故障を示すセンサ異常信号を通知する(ステップS106)。監視用ロジック回路62は、演算結果に異常がない場合には、CPU60に対してセンサ異常信号を送信しない。
【0034】
CPU60は、監視用ロジック回路62からセンサ異常信号を受信するとエンコーダ30が故障していると判定し、表示装置50に対してエンコーダ30に故障が発生したことを示す故障信号を表示させたり、外部ネットワークに対して故障信号を出力したりする(ステップS107)。
【0035】
以上説明した第1の実施形態では、監視用ロジック回路62は、エンコーダ信号に基づいて演算したモータの回転数の演算結果に異常があるか否かを判定し、異常があると判定した場合には、CPU60に対して故障を通知する。このような構成により、電動操作機構1は、2つのCPUと2つのロジック回路とを用いて2重化した場合と比べ、小形で安価に信頼性の高い異常監視機能を得ることができる。
【0036】
CPU60、動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62は、それぞれが異常監視の機能を有し、他の2者が正常に動作しているか否かを判定してもよい。CPU60は、動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62の何れかで動作異常を検知した場合、又は、動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62の何れかから異常監視によって異常を検知したことを示す動作異常の信号を受信した場合には、モータ20の制御を停止させて、外部に対して故障信号を出力してもよい。
【0037】
動作用ロジック回路61は、CPU60、監視用ロジック回路62、エンコーダ信号の何れかで異常を検出した場合には、モータ20の制御を停止してCPU60に対して異常の発生を通知してもよい。監視用ロジック回路62は、CPU60、動作用ロジック回路61、エンコーダ信号の何れかで異常を検知した場合、モータ20の制御を停止させ、CPU60に対して異常の発生を通知してもよい。
【0038】
動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62の少なくともいずれかのロジック回路は、CPU60と通信することでCPU60が正常に動作しているか否かを監視し、CPUの異常を検知した場合には、電動操作機構1の故障と判定してもよい。
【0039】
また、監視用ロジック回路62は、モータ制御機能を有してもよい。この場合には、動作用ロジック回路61と監視用ロジック回路62とのいずれかのロジック回路のモータ制御機能が動作する。例えば、動作用ロジック回路61と監視用ロジック回路62とのうち、いずれか一方のロジック回路の異常が検知された場合には、他方のロジック回路のモータ制御機能でモータ20を制御させる。
【0040】
動作用ロジック回路61は、監視用ロジック回路62と同様のエンコーダ異常検知機能を有してもよい。この場合には、CPU60は、動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62の両方からセンサ異常信号を受信した場合に、エンコーダ30の故障を判定してもよい。動作用ロジック回路61は、エンコーダ30の故障を判定した場合には、モータ制御を停止させ、故障信号を表示装置50や外部ネットワークに出力してもよい。
【0041】
<第2の実施形態>
第2の実施形態の電動操作機構1Aについて説明する。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。
【0042】
電動操作機構1Aは、負荷時タップ切換器LTCの切り換えを行う。
図4は、第2の実施形態における負荷時タップ切換器LTCの電動操作機構1Aの構成例を示す図である。
【0043】
図4に示すように、電動操作機構1Aは、例えば、上位盤操作部10と、モータ20と、エンコーダ30と、制御部40Aとを備える。
【0044】
図5は、第1の実施形態の制御部40Aの構成例を示す図である。
図5に示すように、制御部40Aは、例えば、1つのCPU60Aと、動作用ロジック回路61Aと、監視用ロジック回路62Aとを備える。動作用ロジック回路61Aは、第1のロジック回路の一例である。監視用ロジック回路62Aは、第2のロジック回路の一例である。動作用ロジック回路61A及び監視用ロジック回路62Aのそれぞれは、例えば、FPGAである。
【0045】
動作用ロジック回路61Aと監視用ロジック回路62Aとは、互いに同等の機能を有してもよい。また、動作用ロジック回路61Aは、第1の実施形態で説明した動作用ロジック回路61の異常監視の機能及びエンコーダ異常検知を有する。また、監視用ロジック回路62Aは、第1の実施形態で説明した監視用ロジック回路62Aの異常監視の機能及びエンコーダ異常検知を有する。
【0046】
CPU60Aは、CPU60と同様の機能を有してもよい。CPU60Aは、動作用ロジック回路61Aから第1演算結果を受信する。CPU60Aは、監視用ロジック回路62Aから第2演算結果を受信する。そして、CPU60Aは、第1演算結果と第2演算結果との間に所定値以上の差異がある場合には、電動操作機構1Aの故障と判定する。CPU60Aは、電動操作機構1Aの故障と判定した場合には、電動操作機構1Aのモータ制御を停止させ、電動操作機構1Aの故障を示す故障信号を表示装置50に表示させたり、故障信号を外部ネットワークに出力したりする。
【0047】
CPU60Aは、CPU60Aに異常が発生した場合には、動作用ロジック回路61及び監視用ロジック回路62のいずれかのロジック回路に対してモータ制御の停止を指示し、表示装置50に対して故障信号を表示し、外部ネットワークに対して故障信号を出力してもよい。CPU60Aに異常が発生した場合とは、例えば、動作用ロジック回路61A及び監視用ロジック回路62Aの少なくともいずれかの異常検知によってCPU60Aの異常が検知された場合である。
【0048】
CPU60Aは、電動操作機構1Aの故障の有無を判定するにあたって、動作用ロジック回路61A又は監視用ロジック回路62Aによって第1演算結果との第2演算結果とが異なる場合(例えば、所定値以上の差異がある場合)と判定された場合には、動作用ロジック回路61A及び監視用ロジック回路62Aから、少なくともエンコーダ信号、第1演算結果、及び第2演算結果を受信する。例えば、CPU60Aは、動作用ロジック回路61A又は監視用ロジック回路62Aからエンコーダ信号を受信し、動作用ロジック回路61Aから第1演算結果、監視用ロジック回路62Aから第2演算結果を受信する。そして、CPU60は、受信したエンコーダ信号に基づいて自らモータ20の回転数を演算し、第1演算結果と前記第2演算結果とのうち、CPU60の演算結果である第3演算結果と異なる演算結果を演算したロジック回路を故障と判定してモータ制御から除外する。すなわち、CPU60は、第1演算結果と前記第2演算結果とのうち、第3演算結果と同等である演算結果がどちらであるかを判定し、第3演算結果と異なる演算結果を演算したロジック回路を異常と判定する。
【0049】
ここで、CPU60Aは、監視用ロジック回路62Aが故障していると判定した場合には、監視用ロジック回路62Aの動作を停止させ、動作用ロジック回路61Aをそのまま動作させ、監視用ロジック回路62Aの故障を示す故障信号を表示装置50や外部ネットワークに出力する。CPU60Aは、動作用ロジック回路61Aが故障していると判定した場合には、動作用ロジック回路61Aを停止させ(例えば、モータ制御機能を停止させ)、監視用ロジック回路62Aを動作用として動作させ(例えば、モータ制御機能を実行させ)、動作用ロジック回路61Aの故障を示す異常信号を表示装置50や外部ネットワークに出力する。
【0050】
なお、CPU60Aは、電動操作機構1Aの故障の有無を判定するにあたって、第1演算結果と第2演算結果とが異なる場合に少なくともエンコーダ信号、第1演算結果、及び第2演算結果を受信したが、これに限定されず、第1演算結果と第2演算結果とが異なっているか否かに関わらず、少なくともエンコーダ信号、第1演算結果、及び第2演算結果を受信してもよい。この場合には、CPU60Aは、受信したエンコーダ信号に基づいて自らモータ20の回転数を演算し、第1演算結果、第2演算結果、及び第3演算結果の多数決処理を実行する。そして、CPU60Aは、多数決処理の結果に基づいて、故障の有無を判定してもよいし、動作ロジック回路200A及び監視用ロジック回路62Aの何れに故障が発生したかを判定してもよい。
【0051】
例えば、CPU60Aは、多数決処理の結果、第1演算結果だけが少数派である場合には、動作用ロジック回路61Aを停止させ(例えば、モータ制御機能を停止させ)、監視用ロジック回路62Aを動作用として動作させ(例えば、モータ制御機能を実行させ)、動作用ロジック回路61Aの故障を示す異常信号を表示装置50や外部ネットワークに出力する。例えば、CPU60Aは、多数決処理の結果、第2演算結果だけが少数派である場合には、監視用ロジック回路62Aの動作を停止させ、動作用ロジック回路61Aをそのまま動作させ、監視用ロジック回路62Aの故障を示す故障信号を表示装置50や外部ネットワークに出力する。CPU60Aは、多数決処理の結果、少数派が第1演算結果及び第2演算結果のいずれでもない場合には、直ちに電動操作機構1Aのモータ制御機能自体を停止させて、電動操作機構1Aの故障を示す故障信号を表示装置50や外部ネットワークに出力する。
【0052】
このように、CPU60Aは、動作用ロジック回路61A及び監視用ロジック回路62Aのうち、いずれか一方のロジック回路が故障と判定された場合には、正常である他方のロジック回路にモータ制御機能を実行させ、一方のロジック回路が故障した旨を示す故障信号を表示装置50及び外部ネットワークの少なくともいずれかに対して出力する。
【0053】
そして、CPU60Aは、例えば、第1演算結果、第2演算結果、及び第3演算結果のすべてがそれぞれ異なる場合には、動作用ロジック回路61A及び監視用ロジック回路62Aに対して動作の停止(例えば、モータ制御機能の停止)を指示し、電動操作機構1Aが故障した旨を示す故障信号を表示装置50及び外部ネットワークの少なくともいずれかに対して出力してもよい。
【0054】
動作用ロジック回路61Aは、監視用ロジック回路62Aと通信し、監視用ロジック回路62Aから第2演算結果を取得してもよい。この場合には、動作用ロジック回路61Aは、第1演算結果と第2演算結果とを比較し、一致しなければ、監視用ロジック回路62Aに異常があると判定する異常検知を実行してもよい。動作用ロジック回路61Aは、監視用ロジック回路62Aに異常があると判定した場合には、その旨を示す異常情報、エンコーダ信号、第1演算結果をCPU60Aに送信してもよい。動作用ロジック回路61Aは、エンコーダ異常検知機能によってエンコーダ30に異常がないことを判定した場合において、異常検知を実行してもよい。動作用ロジック回路61Aは、第1演算結果と第2演算結果とを比較し、一致していれば、監視用ロジック回路62Aが正常であると判定する。一致とは、完全一致ではなくてもよい。なお、動作用ロジック回路61Aは、第1演算結果と第2演算結果とを比較する異常検知を実施せずに、第1演算結果及びエンコーダ信号をCPU60Aに送信し、監視用ロジック回路62Aの異常検知(例えば、多数決による異常検知)をCPU60Aに実行させてもよい。
【0055】
監視用ロジック回路62Aは、動作用ロジック回路61Aと同様に、一方のロジック回路である動作用ロジック回路61Aから第1演算結果を取得してもよい。この場合には、監視用ロジック回路62Aは、第1演算結果と第2演算結果とを比較し、一致しなければ、動作用ロジック210Aに異常があると判定する異常検知を実行してもよい。監視用ロジック回路62Aは、動作用ロジック210Aに異常があると判定した場合には、その旨を示す異常情報、エンコーダ信号、第2演算結果をCPU60Aに送信してもよい。監視用ロジック回路62Aは、エンコーダ異常検知機能によってエンコーダ30に異常がないことを判定した場合において、異常検知を実行してもよい。監視用ロジック回路62Aは、第1演算結果と第2演算結果とを比較し、一致していれば、動作用ロジック210Aが正常であると判定する。ただし、これに限定されず、監視用ロジック回路62Aは、第1演算結果と第2演算結果とを比較する異常検知を実施せずに、第2演算結果及びエンコーダ信号をCPU60Aに送信し、動作用ロジック回路61Aの異常検知(例えば、多数決による異常検知)をCPU60Aに実行させてもよい。
【0056】
第2の実施形態におけるエンコーダ30の故障判定は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。以下において、電動操作機構1Aの故障判定の一例を、
図6を用いて説明する。
図6は、第2の実施形態における電動操作機構1Aの故障判定のフローチャートである。
【0057】
CPU60Aは、動作用ロジック210A及び監視用ロジック回路62Aの少なくともいずれかから、エンコーダ信号、第1演算結果、及び第2演算結果を受信する(ステップS201)。CPU60Aは、エンコーダ信号に基づいて、自らモータ20の回転数を演算する(ステップS202)。CPU60Aは、第1演算結果と、第2演算結果と、自らモータ20の回転数を演算した第3演算結果と、に基づいて、CPU60A、動作用ロジック210A及び監視用ロジック回路62Aの中から異常が発生しているデバイスを決定する(ステップS203)。例えば、ステップS203では、CPU60Aは、3つの演算結果の多数決処理によって、CPU60A、動作用ロジック210A及び監視用ロジック回路62Aの中から正常のデバイスを決定する。換言すれば、CPU60Aは、3つの演算処理の少数決処理によって、CPU60A、動作用ロジック210A及び監視用ロジック回路62Aの中から異常が発生しているデバイスを決定する。
【0058】
CPU60Aは、動作用ロジック回路61Aだけが異常であると判定した場合には、動作用ロジック回路61Aのモータ制御機能を停止させ(ステップS204)、監視用ロジック回路62Aを動作用として動作させる(ステップS205)。そして、CPU60Aは、動作用ロジック回路61Aの故障を示す故障信号を表示装置50や外部ネットワークに出力する(ステップS206)。
【0059】
CPU60Aは、監視用ロジック回路62Aだけが異常であると判定した場合には、監視用ロジック回路62Aの動作を停止させ(ステップS207)、動作用ロジック回路61Aをそのまま動作させる(ステップS208)。そして、CPU60Aは、監視用ロジック回路62Aの故障を示す故障信号を表示装置50や外部ネットワークに出力する(ステップS209)。
【0060】
CPU60Aは、動作用ロジック回路61Aだけ又は監視用ロジック回路62Aだけが異常ではない場合には、直ちに電動操作機構1Aのモータ制御機能を停止させて(ステップS210)、電動操作機構1Aの故障を示す故障信号を表示装置50や外部ネットワークに出力する(ステップS211)。
【0061】
以上説明した第2の実施形態の電動操作機構1Aは、第1の実施形態の効果を奏する他、動作用ロジック回路61Aだけが異常の場合には、監視用ロジック回路62Aにモータ制御機能を実行させ、監視用ロジック回路62Aだけが異常の場合には動作用ロジック回路61Aのモータ制御機能を継続させる。このような構成により、動作用ロジック回路61Aと監視用ロジック回路62Aとのうちいずれか1つが故障した場合でも、修理までの間においてモータ20の運転を継続することができる。
【0062】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、監視用ロジック回路は、エンコーダ信号に基づいて演算したモータ20の回転数の演算結果に異常があるか否かを判定し、異常があると判定した場合には、CPUに対して故障を通知することにより、従来よりも低コストで電動操作機構の故障を判定することができる。
【0063】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1,1A…電動操作機構、10…上位盤操作部、20…モータ、30…エンコーダ、40…制御部、50…表示装置、60,60A…CPU、61,61A…動作用ロジック回路、62,62A…監視用ロジック回路