(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】電磁波発生装置
(51)【国際特許分類】
H01S 1/02 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
H01S1/02
(21)【出願番号】P 2021129792
(22)【出願日】2021-08-06
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】喜々津 哲
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕治
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-520951(JP,A)
【文献】特表2017-510032(JP,A)
【文献】国際公開第2016/124269(WO,A1)
【文献】特開2015-142101(JP,A)
【文献】特表2017-513059(JP,A)
【文献】特開平08-096997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 1/00 - 5/50
G02B 1/00 - 1/125
G02B 1/21 - 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
導電部材であって、前記導電部材は、前記第1電極と対向する第1部分と、前記第2電極と対向する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた第3部分と、を含む、前記導電部材と、
第1積層体であって、前記第1積層体は、第1方向に沿って並ぶ複数の第1磁性層と、複数の第1非磁性層と、を含み、前記複数の第1非磁性層の1つは、前記第1方向において、前記複数の第1磁性層の1つと、前記複数の第1磁性層の別の1つと、の間にあり、前記第3部分から前記第1積層体への方向は、前記第1方向と交差した、前記第1積層体と、
を含む素子部を備え
、
前記第1部分から前記第2部分への方向は、前記第1方向に対して傾斜した、電磁波発生装置。
【請求項2】
第1回路を含む回路部さらに備え、
前記第1回路は、前記第1電極と前記第2電極との間に第1電圧を印加可能であり、
前記第1電圧は、交番電圧またはパルス電圧である、請求項
1に記載の電磁波発生装置。
【請求項3】
前記素子部は、絶縁部材をさらに含み、
前記絶縁部材の一部は前記第1電極と前記第1部分との間にあり、
前記絶縁部材の別の一部は前記第2電極と前記第2部分との間にある、請求項1
または2に記載の電磁波発生装置。
【請求項4】
第1電極と、
第2電極と、
導電部材であって、前記導電部材は、前記第1電極と対向する第1部分と、前記第2電極と対向する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた第3部分と、を含む、前記導電部材と、
第1積層体であって、前記第1積層体は、第1方向に沿って並ぶ複数の第1磁性層と、複数の第1非磁性層と、を含み、前記複数の第1非磁性層の1つは、前記第1方向において、前記複数の第1磁性層の1つと、前記複数の第1磁性層の別の1つと、の間にあり、前記第3部分から前記第1積層体への方向は、前記第1方向と交差した、前記第1積層体と、
を含む素子部
と、
回路部と、
を備え
、
前記回路部は、第3回路をさらに含み、
前記第3回路は、前記導電部材と前記第1積層体との間に第3電圧を印加可能であり、
前記第3電圧は、直流成分を含む、電磁波発生装置。
【請求項5】
第1電極と、
第2電極と、
導電部材であって、前記導電部材は、前記第1電極と対向する第1部分と、前記第2電極と対向する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた第3部分と、を含む、前記導電部材と、
第1積層体であって、前記第1積層体は、第1方向に沿って並ぶ複数の第1磁性層と、複数の第1非磁性層と、を含み、前記複数の第1非磁性層の1つは、前記第1方向において、前記複数の第1磁性層の1つと、前記複数の第1磁性層の別の1つと、の間にあり、前記第3部分から前記第1積層体への方向は、前記第1方向と交差した、前記第1積層体と、
を含む素子
部と、
回路部と、
を備え
、
前記素子部は、磁性部材をさらに含み、
前記第3部分は、前記磁性部材と前記第1積層体との間にあり、
前記回路部は、第2回路をさらに含み、
前記第2回路は、前記導電部材と前記磁性部材との間に第2電圧を印加可能であり、
前記第2電圧は、直流成分を含む、電磁波発生装置。
【請求項6】
第1電極と、
第2電極と、
導電部材であって、前記導電部材は、前記第1電極と対向する第1部分と、前記第2電極と対向する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた第3部分と、を含む、前記導電部材と、
第1積層体であって、前記第1積層体は、第1方向に沿って並ぶ複数の第1磁性層と、複数の第1非磁性層と、を含み、前記複数の第1非磁性層の1つは、前記第1方向において、前記複数の第1磁性層の1つと、前記複数の第1磁性層の別の1つと、の間にあり、前記第3部分から前記第1積層体への方向は、前記第1方向と交差した、前記第1積層体と、
を含む素子部
と、
第1回路を含む回路部と、
を備え
、
前記第1回路は、前記第1電極と前記第2電極との間に第1電圧を印加可能であり、
前記第1電圧は、交番電圧またはパルス電圧であり、
前記素子部は、絶縁部材をさらに含み、
前記絶縁部材の一部は前記第1電極と前記第1部分との間にあり、
前記絶縁部材の別の一部は前記第2電極と前記第2部分との間にあり、
前記第1部分は、前記第1電極と誘導結合し、
前記第2部分は、前記第2電極と誘導結合する、電磁波発生装置。
【請求項7】
第1電極と、
第2電極と、
導電部材であって、前記導電部材は、前記第1電極と対向する第1部分と、前記第2電極と対向する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた第3部分と、を含む、前記導電部材と、
第1積層体であって、前記第1積層体は、第1方向に沿って並ぶ複数の第1磁性層と、複数の第1非磁性層と、を含み、前記複数の第1非磁性層の1つは、前記第1方向において、前記複数の第1磁性層の1つと、前記複数の第1磁性層の別の1つと、の間にあり、前記第3部分から前記第1積層体への方向は、前記第1方向と交差した、前記第1積層体と、
を含む素子部を備え
、
前記素子部は、磁性部材をさらに含み、
前記第3部分は、前記第1方向と交差する方向において前記磁性部材と前記第1積層体との間にある、電磁波発生装置。
【請求項8】
前記第1部分から前記第2部分への方向は、前記第1方向に対して傾斜した、請求項
2~7のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【請求項9】
前記複数の第1磁性層の
うちの1つの前記第1方向に沿う厚さは、1nm以上20nm以下であり、
前記複数の第1非磁性層の
うちの1つの前記第1方向に沿う厚さは、0.3nm以上2nm以下である、請求項1~8のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【請求項10】
前記導電部材は、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1
~9のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【請求項11】
前記素子部は、第2積層体をさらに含み、
前記第3部分は、前記第2積層体と前記第1積層体との間にあり、
前記第2積層体は、前記第1方向に沿って並ぶ複数の第2磁性層と、複数の第2非磁性層と、を含み、前記複数の第2非磁性層の1つは、前記第1方向において前記複数の第2磁性層の1つと前記複数の第2磁性層の別の1つと間にある、請求項1~
10のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【請求項12】
第1電極と、
第2電極と、
導電部材であって、前記導電部材は、前記第1電極と対向する第1部分と、前記第2電極と対向する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた第3部分と、を含む、前記導電部材と、
第1積層体であって、前記第1積層体は、第1方向に沿って並ぶ複数の第1磁性層と、複数の第1非磁性層と、を含み、前記
第1磁性層及び前記第1非磁性層は、前記第1方向において交互に並び、前記複数の第1磁性層は、反強磁性結合し、前記第3部分から前記第1積層体への方向は、前記第1方向と交差した、前記第1積層体と、
を含む素子部を備え、電磁波発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電磁波発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、グラフェン物質などを用いて光などの電磁波を発生する電磁波発生装置がある。電磁波発生装置において効率の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、効率の向上が可能な電磁波発生装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、電磁波発生装置は、素子部を含む。前記素子部は、第1電極、第2電極、導電部材及び第1積層体を含む。前記導電部材は、前記第1電極と対向する第1部分と、前記第2電極と対向する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた第3部分と、を含む。前記第1積層体は、第1方向に沿って並ぶ複数の第1磁性層と、複数の第1非磁性層と、を含む。前記複数の第1非磁性層の1つは、前記第1方向において、前記複数の第1磁性層の1つと、前記複数の第1磁性層の別の1つと、の間にある。前記第3部分から前記第1積層体への方向は、前記第1方向と交差する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的斜視図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
【
図9】
図9は、第2実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)及び
図1(b)は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式図である。
図1(a)は、斜視図である。
図1(b)は、
図1(a)のA1-A2線断面図である。
図1(a)に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置110は、素子部15を含む。電磁波発生装置110は、回路部70をさらに含んでも良い。
【0009】
素子部15は、第1電極51、第2電極52、導電部材20及び第1積層体11Sを含む。
【0010】
図1(a)及び
図1(b)に示すように、導電部材20は、第1部分21、第2部分22及び第3部分23を含む。第1部分21は、第1電極51と対向する。第2部分22は、第2電極52と対向する。第3部分23は、第1部分21と第2部分22との間に設けられる。これらの部分の互いの境界は、明確でも不明確でも良い。
【0011】
第1積層体11Sは、第1方向に沿って並ぶ複数の第1磁性層11と、複数の第1非磁性層11nと、を含む。第1方向は、例えば、積層方向に対応する。
【0012】
この例では、第1方向は、例えば、X軸方向である。X軸方向に対して垂直な1つの方向をZ軸方向とする。X軸方向及びZ軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0013】
複数の第1非磁性層11nの1つは、第1方向において、複数の第1磁性層11の1つと、複数の第1磁性層11の別の1つと、の間にある。複数の第1磁性層11の1つは、第1方向において、複数の第1非磁性層11nの1つと、複数の第1非磁性層11nの別の1つと、の間にある。第3部分23から第1積層体11Sへの方向(第2方向)は、第1方向(X軸方向)と交差する。この例では、例えば、第3部分23から第1積層体11Sへの第2方向は、Z軸方向に沿う。
【0014】
複数の第1磁性層11のそれぞれは、Y-Z平面に沿って広がる層状である。複数の第1非磁性層11nのそれぞれは、Y-Z平面に沿って広がる層状である。例えば、第1磁性層11及び第1非磁性層11nは交互に並ぶ。
【0015】
複数の第1磁性層11は、例えば、反強磁性結合する。複数の第1磁性層11は、例えば、静磁界結合しても良い。
【0016】
図1(b)に示すように、例えば、複数の第1磁性層11において、磁化11Mは互いに逆向きとなる。磁化11Mは、例えば第2方向(例えばZ軸方向)に沿う成分を有する。複数の第1磁性層11の磁化11Mにより磁界MFが生じる。磁界MFは、導電部材20に印加される。磁界MFの向きは、複数の第1磁性層11のそれぞれに対応する位置において、交互に逆向きとなる。交互に逆向きの磁界MFが導電部材20に印加される。
【0017】
この状態で、導電部材20に例えば交番電界が印加されると、導電部材20中の電子は、交番電界で加速され、磁界MFの相互作用を受ける。これにより、導電部材20から電磁波が出射する。出射する電磁波は、例えば光である。光の波長は、例えば、100nm以上3μm以下などである。1つの例において、電磁波発生装置110は、発光装置である。
【0018】
実施形態においては、第1積層体11Sに基づく磁界MFが導電部材20に印加される。上記のように、複数の第1磁性層11の間に第1非磁性層11nが設けられる。このような構成により、短い距離の間で交互に逆向きの磁界MFを導電部材20に印加することができる。上記の構成により、局所的に高い強度の磁界MFを導電部材20に印加することができる。これより、高強度の電磁波(例えば光)が得られる。実施形態によれば、効率の向上が可能な電磁波発生装置を提供できる。
【0019】
複数の第1磁性層11は、例えば、Ni、Co及びFeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。複数の第1磁性層11は、例えば、NiFe、FeCo、CoZrNb、FeSi、FeZrN、CoPt、CoCr、及び、FePtよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0020】
複数の第1非磁性層11nは、例えば、第1材料または第2材料を含む。第1材料は、Ru、Ir及びRhよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2材料は、Cu及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。複数の第1非磁性層11nが第1材料を含む場合、複数の第1磁性層11は、反強磁性結合する。複数の第1非磁性層11nが第2材料を含む場合、複数の第1磁性層11は、静磁界結合する。
【0021】
複数の第1磁性層11の1つの第1方向(この例では、X軸方向)に沿う厚さt1(
図1(b)参照)は、例えば、1nm以上20nm以下であることが好ましい。厚さt1が1nm以上であることで、例えば、局所的に高い強度の磁界MFを導電部材20に印加することが容易になる。厚さt1が20nm以下であることで、例えば、第2方向(例えばZ軸方向)に沿って均一な磁化状態を得ることが容易になる。例えば、Z-Y平面内で均一な磁化状態を得ることが容易になる。
【0022】
複数の第1非磁性層11nの1つの第1方向(この例ではX軸方向)に沿う厚さtn1(
図1(b)参照))は、例えば、0.3nm以上2nm以下であることが好ましい。厚さtn1が0.3nm以上であることで、例えば、交互に逆向きの磁界MFを導電部材20に印加することが容易になる。厚さtn1が2nm以下であることで、例えば、複数の第1磁性層11の磁化11Mの向きを交互に逆向きにすることが容易になる。
【0023】
実施形態において、上記の厚さが適用されることで、例えば、低い電圧で短波長の電磁波を得ることが可能である。上記の厚さが適用されることで、例えば、大きな積層数が得られる。これにより、電子が磁界MFの相互作用を受ける回数を増やすことが可能になる。例えば、100~1000の回数が得られる。これにより、高い強度が得られる。例えば、高輝度の光が得られる。
【0024】
図1(b)に示すように、複数の第1磁性層11の別の1つは、複数の第1磁性層11のうちで複数の第1磁性層の1つに最も近いとする。このとき、複数の第1磁性層11の上記の1つの磁化11Mは、複数の第1磁性層11の上記の別の1つの磁化11Mと逆の向きの成分を含む。
【0025】
図1(b)に示すように、第1部分21は、第1電極51から離れて良い。第2部分22は、第2電極52から離れて良い。第1部分21は、例えば、第1電極51と誘導結合する。第2部分22は、第2電極52と誘導結合する。第1電極51と第2電極52との間に印加された電圧(交番電界またはパルス電圧など)が第1部分21と第2部分22との間に印加される。例えば、電極と導電部材20との間のオーミックコンタクトが不要である。製造が容易である。例えば、高い耐久性が得易い。例えば、後述するように、1つの例において、導電部材20は、グラフェンなどを含む。グラフェンとのオーミックコンタクトを得ることは実用的に困難な場合がある。電極と導電部材20とが離れオーミックコンタクトを不要とする構成により、安定した接続が得易い。
【0026】
第1部分21と第1電極51との間の距離d51(
図1(b)参照)は、例えば、1nm以上1000nm以下で良い。第2部分22と第2電極52との間の距離d52(
図1(b)参照)は、例えば、1nm以上1000nm以下で良い。
【0027】
第3部分23と第1積層体11Sとの間の距離d1(
図1(b)参照)は、例えば、0.2nm以上100nm以下で良い。導電部材20の厚さt3(
図1(b)参照)は、例えば、0.2nm以上100nm以下で良い。厚さt3は、第3部分23から第1積層体11Sへの方向(この例ではZ軸方向)に沿う長さである。
【0028】
導電部材20は、例えば、グラフェン様物質を含む。これにより、例えば、高い効率が得易い。導電部材20は、例えば、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。導電部材20がグラフェンを含む1つの例において、グラフェンの層面は、X-Y平面に沿って良い。
【0029】
導電部材20は、例えば、MoS2、WS2、h-BN(hexagonal Boron Nitride)、及び、Germananeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。導電部材20が上記の材料を含むことで、例えば、高い効率が得易い。
【0030】
図1(a)に示すように、電磁波発生装置110は、回路部70を含んでも良い。回路部70は、第1回路71を含む。第1回路71は、第1電極51と第2電極52との間に第1電圧V1を印加可能である。第1電圧V1は、交番電圧またはパルス電圧である。交番電圧を印加する際の第1電圧V1の周波数(周期の逆数)は、例えば、10Hz以上1MHz以下である。上記のように、第1電極51と第2電極52との間に第1電圧V1が印加されたときに、導電部材20から電磁波(例えば光)が出射する。
【0031】
図2(a)及び
図2(b)は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式図である。
図2(a)は、斜視図である。
図2(b)は、
図2(a)のA1-A2線断面図である。
図2(a)及び
図2(b)に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置111において、素子部15は、磁性部材30をさらに含む。電磁波発生装置111におけるこれを除く構成は、電磁波発生装置110における構成と同様で良い。
【0032】
電磁波発生装置111において、第3部分23は、磁性部材30と第1積層体11Sとの間にある。磁性部材30が設けられることで、複数の第1磁性層11に基づく磁界MFが、導電部材20に、より効率的に印加される。より高い効率が得易い。
【0033】
磁性部材30は、例えば、軟磁性体を含む。磁性部材30は、例えば、NiFe、NiFe、FeCo、CoZrNb、FeSi及びFeZrNよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。
【0034】
図3は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
図3に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置112において、第1電極51及び第2電極52の位置が電磁波発生装置111とは異なる。電磁波発生装置112におけるこれを除く構成は、電磁波発生装置110または電磁波発生装置111における構成と同様で良い。
【0035】
電磁波発生装置112においては、第3部分23から第1積層体11Sへの第2方向(この例ではZ軸方向)における第1電極51の少なくとも一部の位置は、第2方向における導電部材20の位置と、第2方向における第1積層体11Sの少なくとも一部の位置と、の間にある。電磁波発生装置112においても、高い効率が得られる。
【0036】
図4は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
図4に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置113において、素子部15は絶縁部材40を含む。電磁波発生装置113におけるこれを除く構成は、電磁波発生装置110における構成と同様で良い。
【0037】
電磁波発生装置113において、絶縁部材40の一部(絶縁領域41)は、第1電極51と第1部分21との間にある。絶縁部材40の別の一部(絶縁領域42)は、第2電極52と第2部分22との間にある。
【0038】
絶縁部材40の少なくとも一部(絶縁領域43)は、第1積層体11Sと第3部分23との間にある。絶縁部材40は、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン及び酸化アルミニウムよりなる群から選択された少なくとも1つなどの材料を含む。絶縁部材40が設けられることで、導電部材20及び第1積層体11Sの構造が安定する。
【0039】
図5は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
図5に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置114において、素子部15は、磁性部材30及び絶縁部材40を含む。電磁波発生装置114におけるこれを除く構成は、電磁波発生装置110における構成と同様で良い。
【0040】
絶縁部材40の少なくとも一部(絶縁領域43)は、第1積層体11Sと第3部分23との間にある。絶縁部材40の別の一部(絶縁領域44)は、磁性部材30と第3部分23との間にある。
【0041】
図6は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的斜視図である。
図6に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置115において、素子部15は、第2積層体12Sを含む。電磁波発生装置115におけるこれを除く構成は、電磁波発生装置110における構成と同様で良い。
【0042】
電磁波発生装置115において、第3部分23は、第2積層体12Sと第1積層体11Sとの間にある。第2積層体12Sは、第1方向(この例においてはX軸方向)に沿って並ぶ複数の第2磁性層12と、複数の第2非磁性層12nと、を含む。複数の第2非磁性層12nの1つは、第2方向(例えばX軸方向)において、複数の第2磁性層12の1つと、複数の第2磁性層12の別の1つと間にある。複数の第2磁性層12の1つは、第2方向(例えばX軸方向)において、複数の第2非磁性層12nの1つと、複数の第2非磁性層12nの別の1つと間にある。
【0043】
第1積層体11S及び第2積層体12Sにより生じる磁界MFが導電部材20に印加される。安定した高強度の磁界MFが得られる。効率の向上が可能な電磁波発生装装置が提供できる。
【0044】
複数の第2磁性層12の1つから複数の第1磁性層11の1つへの方向は、第3部分23から第1積層体11Sへの方向(第2方向)に沿う。第2方向は、例えば、Z軸方向に対応する。
【0045】
第1積層体11S、第2積層体12S及び導電部材20の構造は、例えば、第1積層体11S及び第2積層体12Sとなる積層体を形成し、その積層体にトレンチを形成し、トレンチのなかに導電部材20を埋め込むことで形成できる。
【0046】
電磁波発生装置115において、素子部15は絶縁部材40を含んでも良い。絶縁部材40の一部(絶縁領域43)は、第1積層体11Sと第3部分23との間に設けられる。絶縁部材40の別の一部(絶縁領域45)は、第2積層体12Sと第3部分23との間に設けられる。
【0047】
図7は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
図7に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置116において、導電部材20の構造が上記の電磁波発生装置におけるそれとは異なる。電磁波発生装置116におけるこれを除く構成は、電磁波発生装置114における構成と同様で良い。
【0048】
図7に示すように、電磁波発生装置116において、第1部分21から第2部分22への方向は、第1方向(第1積層体11Sにおける積層方向でありこの例では、X軸方向)に対して傾斜している。
【0049】
例えば、基体17の上に第1積層体11Sとなる積層体が形成される。この積層体を斜めにエッチング(テーパ加工)することで、
図7に例示した第1積層体11Sが得られる。この第1積層体11Sの傾斜面の上に、絶縁領域43が形成される。さらに、その上に、導電部材20が形成される。さらに導電部材20の上に、絶縁領域44及び磁性部材30が形成される。その後第1電極51及び第2電極52が形成される。このような方法により、電磁波発生装置116が得られる。
【0050】
図7に示すように、素子部15は、積層磁性部材18をさらに含んでも良い。積層磁性部材18から第1積層体11Sへの方向は、第1方向(この例ではX軸方向)に沿う。積層磁性部材18は、例えば、IrMn及びPtMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、積層磁性部材18は、第1の磁性層11と接する。積層磁性部材18が設けられることで、複数の第1磁性層11の磁化11Mが安定化する。
【0051】
この例では、積層磁性部材18は、基体17と第1積層体11Sとの間に設けられる。別に例において、第1積層体11Sが基体17と積層磁性部材18との間に設けられても良い。電磁波発生装置115(
図6参照)において、積層磁性部材18が設けられても良い。
【0052】
図8は、第1実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
図8に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置117において、素子部15は、第1ハーフミラー61及び第2ハーフミラー62を含む。電磁波発生装置117におけるこれを除く構成は、電磁波発生装置110~116における構成と同様で良い。
【0053】
第1ハーフミラー61と第2ハーフミラー62との間に第3部分23の少なくとも一部がある。第1ハーフミラー61から第2ハーフミラー62への方向は、第1方向(例えばX軸方向)に沿う。ハーフミラーが設けられることで、より高い強度(例えば輝度)が得られる。
【0054】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
図9に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置120において、回路部70は、第2回路72を含む。電磁波発生装置120におけるこれを除く構成は、電磁波発生装置111、112、114及び116における構成と同様で良い。
【0055】
電磁波発生装置120において、第2回路72は、導電部材20及び磁性部材30と電気的に接続される。第2回路72は、導電部材20と磁性部材30との間に第2電圧V2を印加可能である。第2電圧V2は、直流成分を含む。第2回路72は、例えばDC電源を含んで良い。
【0056】
導電部材20と磁性部材30との間に直流成分を含む第2電圧V2が印加されることで、例えば、導電部材20におけるエネルギーバンド構造を制御できる。例えば、導電部材20から発生する電磁波の効率を向上できる。例えば、より高い効率での発光が得られる。
【0057】
図10は、第2実施形態に係る電磁波発生装置を例示する模式的断面図である。
図10に示すように、実施形態に係る電磁波発生装置121において、回路部70は、第3回路73を含む。電磁波発生装置121におけるこれを除く構成は、電磁波発生装置110~117における構成と同様で良い。
【0058】
電磁波発生装置121において、第3回路73は、導電部材20及び第1積層体11Sと電気的に接続される。第3回路73は、導電部材20と第1積層体11Sとの間に第3電圧V3を印加可能である。第3電圧V3は、直流成分を含む。直流成分を含む。第3回路73は、例えばDC電源を含んで良い。
【0059】
導電部材20と第1積層体11Sとの間に直流成分を含む第3電圧V3が印加されることで、例えば、導電部材20におけるエネルギーバンド構造を制御できる。例えば、導電部材20から発生する電磁波の効率を向上できる。例えば、より高い効率での発光が得られる。
【0060】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
第1電極と、
第2電極と、
導電部材であって、前記導電部材は、前記第1電極と対向する第1部分と、前記第2電極と対向する第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に設けられた第3部分と、を含む、前記導電部材と、
第1積層体であって、前記第1積層体は、第1方向に沿って並ぶ複数の第1磁性層と、複数の第1非磁性層と、を含み、前記複数の第1非磁性層の1つは、前記第1方向において、前記複数の第1磁性層の1つと、前記複数の第1磁性層の別の1つと、の間にあり、前記第3部分から前記第1積層体への方向は、前記第1方向と交差した、前記第1積層体と、
を含む素子部を備えた電磁波発生装置。
【0061】
(構成2)
前記導電部材は、グラフェン、グラファイト、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1に記載の電磁波発生装置。
【0062】
(構成3)
前記導電部材は、MoS2、WS2、h-BN、及び、Germananeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1に記載の電磁波発生装置。
【0063】
(構成4)
第1回路を含む回路部さらに備え、
前記第1回路は、前記第1電極と前記第2電極との間に第1電圧を印加可能であり、
前記第1電圧は、交番電圧またはパルス電圧である、構成1~3のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0064】
(構成5)
前記第1電極と前記第2電極との間に前記第1電圧が印加されたときに、前記導電部材から電磁波が出射する、構成4に記載の電磁波発生装置。
【0065】
(構成6)
前記素子部は、絶縁部材をさらに含み、
前記絶縁部材の一部は前記第1電極と前記第1部分との間にあり、
前記絶縁部材の別の一部は前記第2電極と前記第2部分との間にある、構成1~5のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0066】
(構成7)
前記素子部は、磁性部材をさらに含み、
前記第3部分は、前記磁性部材と前記第1積層体との間にある、構成1~5のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0067】
(構成8)
前記素子部は、磁性部材及び絶縁部材をさらに含み、
前記第3部分は、前記磁性部材と前記第1積層体との間にあり、
前記絶縁部材の少なくとも一部は、前記第1積層体と前記第3部分との間、及び、前記磁性部材と前記第3部分との間にある、構成1~5のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0068】
(構成9)
前記回路部は、第2回路をさらに含み、
前記第2回路は、前記導電部材と前記磁性部材との間に第2電圧を印加可能であり、
前記第2電圧は、直流成分を含む、構成7または8に記載の電磁波発生装置。
【0069】
(構成10)
前記素子部は、第2積層体をさらに含み、
前記第3部分は、前記第2積層体と前記第1積層体との間にあり、
前記第2積層体は、前記第1方向に沿って並ぶ複数の第2磁性層と、複数の第2非磁性層と、を含み、前記複数の第2非磁性層の1つは、前記第1方向において前記複数の第2磁性層の1つと前記複数の第2磁性層の別の1つと間にある、構成1~5のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0070】
(構成11)
前記複数の第2磁性層の前記1つから前記複数の第1磁性層の前記1つへの方向は、前記第3部分から前記第1積層体への前記方向に沿う、構成10に記載の電磁波発生装置。
【0071】
(構成12)
前記素子部は絶縁部材をさらに含み、
前記絶縁部材の少なくとも一部は、前記第1積層体と前記第3部分との間、及び、前記第2積層体と前記第3部分との間にある、構成11に記載の電磁波発生装置。
【0072】
(構成13)
前記第1部分から前記第2部分への方向は、前記第1方向に対して傾斜した、構成1~9のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0073】
(構成14)
前記複数の第1磁性層は、Ni、Co及びFeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~13のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0074】
(構成15)
前記複数の第1非磁性層は、第1材料または第2材料を含み、
前記第1材料は、Ru、Ir及びRhよりなる群から選択された少なくとも1つを含み、
前記第2材料は、Cu及びAgよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~14のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0075】
(構成16)
前記複数の第1磁性層の前記1つの前記第1方向に沿う厚さは、1nm以上20nm以下である、構成1~15のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0076】
(構成17)
前記複数の第1非磁性層の前記1つの前記第1方向に沿う厚さは、0.3nm以上2nm以下である、構成16に記載の電磁波発生装置。
【0077】
(構成18)
前記素子部は、積層磁性部材をさらに含み、
前記積層磁性部材から前記第1積層体への方向は前記第1方向に沿い、
前記積層磁性部材は、IrMn及びPtMnよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~16のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0078】
(構成19)
前記回路部は、第3回路をさらに含み、
前記第3回路は、前記導電部材と前記第1積層体との間に第3電圧を印加可能であり、
前記第3電圧は、直流成分を含む、構成1~18のいずれか1つに記載の電磁波発生装置。
【0079】
(構成20)
前記複数の第1磁性層の前記別の1つは、前記複数の第1磁性層のうちで前記複数の第1磁性層の前記1つに最も近く、
前記複数の第1磁性層の前記1つの磁化は、前記複数の第1磁性層の前記別の1つの磁化と逆の向きの成分を含む、構成1~19のいずれか1つに記載の電磁場発生装置。
【0080】
実施形態によれば、効率の向上が可能な電磁波発生装置が提供できる。
【0081】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電磁波発生装置に含まれる電極、導電部材、積層体、絶縁部材及び回路部などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0082】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0083】
その他、本発明の実施の形態として上述した電磁波発生装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての電磁波発生装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0084】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0085】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0086】
11、12…第1、第2磁性層、 11M…磁化、 11S、12S…第1、第2積層体、 11n、12n…第1、第2非磁性層、 15…素子部、 17…基体、 18…積層磁性部材、 20…導電部材、 21~23…第1~第3部分、 30…磁性部材、 40…絶縁部材、 41~45…第1~第5絶縁領域、 51、52…第1、第2電極、 61、62…第1、第2ハーフミラー、 70…回路部、 71~73…第1~第3回路、 110~116、120、121…電磁波発生装置、 MF…磁界、 V1~V3…第1~第3電圧、 d1、d51、d52…距離、 t1、t3、tn1…厚さ