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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】光変調器及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20240408BHJP
   H04B 10/548 20130101ALI20240408BHJP
   G02F 1/365 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
G02F1/01 F
H04B10/548
G02F1/365
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021144925
(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公開番号】P2023038036
(43)【公開日】2023-03-16
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石村 昇太
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第94/009403(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/117460(WO,A1)
【文献】特開2002-023210(JP,A)
【文献】特開2021-129208(JP,A)
【文献】国際公開第2008/026326(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/254855(WO,A1)
【文献】S. Ishimura, et al.,"High-Fidelity and High-Capacity Analog Radio-over-Fiber Transmission",2022 27th OptoElectronics and Communications Conference (OECC) and 2022 International Conference on Photonics in Switching and Computing (PSC),2022年,pp. 1-3,doi: 10.23919/OECC/PSC53152.2022.9850068
【文献】S. Ishimura, et al.,"Enabling Technology for 9.5-dB SNR Enhancement Utilizing Four-Wave Mixing Between a Conjugate Pair of Angle Modulation for Analog Radio-over-Fiber Links",2021 Optical Fiber Communications Conference and Exhibition (OFC),2021年06月,F3C.3,pp. 1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-3/00
H04B 10/548
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号により連続光を位相変調した第1位相変調光、第2位相変調光、第3位相変調光及び第4位相変調光を生成する第1生成手段であって、前記電気信号の振幅による前記第1位相変調光と前記第2位相変調光の位相の変化方向は同じであり、前記電気信号の振幅による前記第3位相変調光と前記第4位相変調光の位相の変化方向は同じであり、前記電気信号の振幅による前記第1位相変調光と前記第3位相変調光の位相の変化方向は互いに逆方向である、前記第1生成手段と、
前記第1位相変調光と前記第3位相変調光との一部縮退四光波混合により第5位相変調光を生成し、前記第2位相変調光と前記第4位相変調光との一部縮退四光波混合により第6位相変調光を生成し、前記第5位相変調光と前記第6位相変調光を合波する第2生成手段と、
を備え、
前記第5位相変調光の中心周波数及び帯域幅は、前記第6位相変調光の中心周波数及び帯域幅に等しいことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記第1位相変調光の帯域幅と前記第4位相変調光の帯域幅は等しく、前記第2位相変調光の帯域幅と前記第3位相変調光の帯域幅は等しいことを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記第1位相変調光の中心周波数と前記第4位相変調光の中心周波数は等しく、前記第2位相変調光の中心周波数と前記第3位相変調光の中心周波数は等しいことを特徴とする請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項4】
前記第1生成手段は、
第1周波数の連続光と第2周波数の連続光を前記電気信号により位相変調することで前記第1周波数の前記第1位相変調光及び前記第2周波数の前記第2位相変調光を含む第1信号光を出力する第1位相変調手段と、
前記第1周波数の連続光と前記第2周波数の連続光を前記電気信号により位相変調することで前記第1周波数の前記第4位相変調光及び前記第2周波数の前記第3位相変調光を含む第2信号光を出力する第2位相変調手段と、
前記第1信号光に含まれる前記第1位相変調光及び前記第2信号光に含まれる前記第3位相変調光を含む第3信号光を出力し、前記第1信号光に含まれる前記第2位相変調光及び前記第2信号光に含まれる前記第4位相変調光を含む第4信号光を出力する出力手段と、
を備え、
前記第2生成手段は、
前記第3信号光に含まれる前記第1位相変調光と前記第3位相変調光との一部縮退四光波混合により前記第5位相変調光を生成する第1混合手段と、
前記第4信号光に含まれる前記第2位相変調光と前記第4位相変調光との一部縮退四光波混合により前記第6位相変調光を生成する第2混合手段と、
を備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光変調器。
【請求項5】
前記第1混合手段及び前記第2混合手段は、それぞれ、光ファイバ及び半導体光増幅器のいずれかを有することを特徴とする請求項4に記載の光変調器。
【請求項6】
前記第1混合手段及び前記第2混合手段は、それぞれ、光ファイバを有し、
前記第1混合手段に含まれる光ファイバの分散値が0となる周波数は、前記第1位相変調光の帯域内、前記第3位相変調光の帯域内、或いは、前記第1位相変調光の帯域と前記第3位相変調光の帯域との間の帯域内に有り、
前記第2混合手段に含まれる光ファイバの分散値が0となる周波数は、前記第2位相変調光の帯域内、前記第4位相変調光の帯域内、或いは、前記第2位相変調光の帯域と前記第4位相変調光の帯域との間の帯域内に有ることを特徴とする請求項5に記載の光変調器。
【請求項7】
前記第1位相変調光の帯域幅と、前記第2位相変調光の帯域幅と、前記第3位相変調光の帯域幅と、前記第4位相変調光の帯域幅は等しく、
前記第1周波数と前記第2周波数との周波数差は、前記第1位相変調光の帯域幅の2倍より大きいことを特徴とする請求項4から6のいずれか1項に記載の光変調器。
【請求項8】
前記第1位相変調光、前記第2位相変調光、前記第3位相変調光及び前記第4位相変調光は、周波数軸上において重複しないことを特徴とする請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項9】
前記第1位相変調光の中心周波数と前記第3位相変調光の中心周波数との周波数差は、前記第2位相変調光の中心周波数と前記第4位相変調光の中心周波数との周波数差に等しいことを特徴とする請求項8に記載の光変調器。
【請求項10】
前記第1位相変調光の中心周波数と前記第4位相変調光の中心周波数との中心周波数は、前記第2位相変調光の中心周波数と前記第3位相変調光の中心周波数との中心周波数に等しいことを特徴とする請求項8又は9に記載の光変調器。
【請求項11】
前記第1生成手段は、
第1周波数の連続光と第2周波数の連続光を前記電気信号により位相変調することで前記第1周波数の前記第1位相変調光及び前記第2周波数の前記第2位相変調光を含む第1信号光を出力する第1位相変調手段と、
第3周波数の連続光と第4周波数の連続光を前記電気信号により位相変調することで前記第3周波数の前記第3位相変調光及び前記第4周波数の前記第4位相変調光を含む第2信号光を出力する第2位相変調手段と、
前記第1信号光及び前記第2信号光を合波して、前記第1位相変調光、前記第2位相変調光、前記第3位相変調光及び前記第4位相変調光を含む第3信号光を出力する出力手段と、
を備え、
前記第1周波数と前記第4周波数との中心周波数は、前記第2周波数と前記第3周波数との中心周波数に等しいことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の光変調器。
【請求項12】
前記第2生成手段は、光ファイバ及び半導体増幅器のいずれかを有することを特徴とする請求項11に記載の光変調器。
【請求項13】
前記第2生成手段は、光ファイバを有し、
前記光ファイバの分散値が0となる周波数は、前記第1周波数と前記第4周波数の中心周波数に等しいことを特徴とする請求項12に記載の光変調器。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の光変調器を備えることを特徴とする光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光変調器は、情報を搬送する電気信号に基づき連続光の振幅や、振幅及び位相の両方を変調することで変調光を生成する。ここで、光変調器の動作電力を低減させるためには光変調器に入力する電気信号の振幅レベルを小さくすれば良い。しかしながら、単に、電気信号の振幅レベルを小さくすると、変調光の振幅の変化量も小さくなり変調光の品質が劣化する。したがって、光変調器の動作電力を低減させるためには、所定の品質を満たすのに必要な変調光の振幅の変化量を維持しつつ、光変調器に入力する電気信号の振幅レベルを小さくする必要がある。
【0003】
非特許文献1及び非特許文献2は、いずれも光変調器に入力する電気信号の振幅レベルを小さくするための構成を開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Yoshihiro Ogiso,et.al.,"80-GHz Bandwidth and 1.5-V Vπ InP-Based IQ Modulator",J.Lightwave Technol.38,249-255 (2020)
【文献】M.Zhang,et.al.,"Ultra-High Bandwidth Integrated Lithium Niobate Modulators with Record-Low Vπ", in Optical Fiber Communication Conference Postdeadline Papers,OSA Technical Digest (online)(Optical Society of America, 2018),paper Th4A.5.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1及び非特許文献2は、いずれも、特定の性質を有する材料を光変調器に使用し、当該特定の性質を利用して電気信号の振幅レベルを小さくするものである。しかしながら、特定の性質を有する材料に依存することなく、電気信号の振幅レベルを小さくすることが望まれている。
【0006】
本発明は、光変調器に入力する必要がある電気信号の振幅レベルを小さくすることができる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によると、光変調器は、電気信号により連続光を位相変調した第1位相変調光、第2位相変調光、第3位相変調光及び第4位相変調光を生成する第1生成手段であって、前記電気信号の振幅による前記第1位相変調光と前記第2位相変調光の位相の変化方向は同じであり、前記電気信号の振幅による前記第3位相変調光と前記第4位相変調光の位相の変化方向は同じであり、前記電気信号の振幅による前記第1位相変調光と前記第3位相変調光の位相の変化方向は互いに逆方向である、前記第1生成手段と、前記第1位相変調光と前記第3位相変調光との一部縮退四光波混合により第5位相変調光を生成し、前記第2位相変調光と前記第4位相変調光との一部縮退四光波混合により第6位相変調光を生成し、前記第5位相変調光と前記第6位相変調光を合波する第2生成手段と、を備え、前記第5位相変調光の中心周波数及び帯域幅は、前記第6位相変調光の中心周波数及び帯域幅に等しいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、光変調器に入力する必要がある電気信号の振幅レベルを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態による光変調器の構成図。
図2】一実施形態による光変調器の内部で生成される信号を示す図。
図3】一実施形態による光変調器の内部で生成される信号を示す図。
図4】一実施形態による光変調器の内部で生成される信号を示す図。
図5】振幅変調光が生成されることの説明図。
図6】一実施形態による光変調器の構成図。
図7】一実施形態による光変調器の内部で生成される信号を示す図。
図8】一実施形態による光変調器の内部で生成される信号を示す図。
図9】一実施形態による光変調器の内部で生成される信号を示す図。
図10】一実施形態による光変調器の内部で生成される信号を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうちの二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態による光変調器の構成図である。光変調器は、第1生成部100と、第2生成部200と、を有する。まず、第1生成部100について説明する。光源11は、周波数fの連続光を生成し、生成した連続光を2×2カップラ20に出力する。光源12は、周波数fの連続光を生成し、生成した連続光を2×2カップラ20に出力する。なお、本実施形態では、周波数fが周波数fより高く、周波数fと周波数fとの周波数差をXとする。2×2カップラ20は、周波数fの連続光を位相変調部31及び32に出力し、かつ、周波数fの連続光を位相変調部31及び32に出力する。つまり、位相変調部31及び32それぞれには、周波数fの連続光及び周波数fの連続光が入力される。
【0012】
位相変調部31は、情報を搬送する電気信号により周波数fの連続光及び周波数fの連続光の位相変調を行う。図2(A)は、位相変調部31が出力する信号光の周波数成分を示している。位相変調光91は、周波数fの連続光を電気信号により位相変調したものであり、位相変調光92は、周波数fの連続光を電気信号により位相変調したものである。なお、位相変調光91の電界成分E及び位相変調光92の電界成分Eは、それぞれ、
【0013】
【数1】
で表される。ここで、ω=2πfであり、ω=2πfであり、S(t)は位相変化量である。位相変調光91及び位相変調光92の帯域幅は、位相変化量S(t)の最大値に依存し、ここでは、位相変調光91及び位相変調光92の帯域幅をBとしている。
【0014】
位相変調部32は、位相変調部31に入力される電気信号の振幅を反転させた反転電気信号により周波数fの連続光及び周波数fの連続光の位相変調を行う。図2(B)は、位相変調部32が出力する信号光の周波数成分を示している。位相変調光93は、周波数fの連続光を反転電気信号により位相変調したものであり、位相変調光94は、周波数fの連続光を反転電気信号により位相変調したものである。位相変調部32は、反転電気信号で位相変調を行うため、位相変調光93及び位相変調光94の位相変化の方向と、位相変調光91及び位相変調光92の位相変化の方向とは、互いに逆方向となる。したがって、位相変調光93の電界成分E及び位相変調光94の電界成分Eは、それぞれ、
【0015】
【数2】
となる。なお、位相変調光93及び位相変調光94の帯域幅は、位相変調光91及び位相変調光92の帯域幅と同じBである。
【0016】
なお、本実施形態では、位相変調部31が入力信号の振幅に応じて連続光の位相を変化(増減)させる方向と、位相変調部32が入力信号の振幅に応じて連続光の位相を変化(増減)させる方向とが同じであるものとし、よって、位相変調部32には電気信号の振幅レベルを反転させた反転電気信号を入力していた。しかしながら、位相変調部31が出力する位相変調光の位相の変化方向と、位相変調部32が出力する位相変調光の位相の変化方向が異なれば良く、位相変調部32に電気信号を入力する構成とすることもできる。例えば、位相変調部32に電気信号の振幅(正負)を反転させる回路を設ける構成とすることもできる。
【0017】
分離部41は、位相変調部31からの信号光の波長分離を行い、位相変調光91を合波部51に出力し、位相変調光92を合波部52に出力する。分離部42は、位相変調部32からの信号光の波長分離を行い、位相変調光93を合波部52に出力し、位相変調光94を合波部51に出力する。合波部51は、位相変調光91及び位相変調光94を含む信号光を、第2生成部200の四光波混合(FWM)部61に出力し、合波部52は、位相変調光93及び位相変調光92を含む信号光を、第2生成部200のFWM部62に出力する。図3(A)は、FWM部61に入力される信号光を示し、図3(B)は、FWM部62に入力される信号光を示している。
【0018】
FWM部61は、位相変調光91と、位相変調光94との一部縮退四光波混合を生じさせる。一部縮退四光波混合とは、四光波混合の一態様であり、周波数f及び周波数fの2つの光から、周波数2f-f(又は、2f-f)の新たな光が発生する現象を意味する。周波数fの光の電界成分をEとし、周波数fの光の電界成分をEとすると、一部縮退四光波混合により生じる周波数2f-fの光の電界成分は、E* となる。なお、E* は、Eの複素共役である。同様に、一部縮退四光波混合により生じる周波数2f-fの光の電界成分は、E* となる。
【0019】
したがって、FWM部61における一部縮退四光波混合により、図4(A)に示す、中心周波数が2f-fの位相変調光95と、中心周波数が2f-fの位相変調光96が生成される。ここで、位相変調光95の電界成分E及び位相変調光96の電界成分Eは、それぞれ、
【0020】
【数3】
となる。式(5)及び式(6)より、位相変調光95の電界成分E及び位相変調光96の電界成分Eは、それぞれ、位相変調光91と位相変調光94の帯域幅の3倍、つまり、3Bになる。
【0021】
同様に、FWM部62における一部縮退四光波混合により、図4(B)に示す、中心周波数が2f-fの位相変調光97と、中心周波数が2f-fの位相変調光98が生成される。ここで、位相変調光97の電界成分E及び位相変調光98の電界成分Eは、それぞれ、
【0022】
【数4】
となる。式(7)及び式(8)より、位相変調光97の電界成分E及び位相変調光98の電界成分Eは、それぞれ、位相変調光93と位相変調光92の帯域幅の3倍、つまり、3Bになる。
【0023】
合波部70は、図4(A)に示すFWM部61からの信号光と、図4(B)に示すFWM部62からの信号光と、を合波して出力する。位相変調光95と位相変調光97の周波数帯域は等しいため、位相変調光95と位相変調光97が合波されるが、式(5)及び式(7)から明らかな様に、位相変調光95と位相変調光97の位相変化量の絶対値は等しく、その方向(正負)のみが異なる。したがって、位相変調光95と位相変調光97を合波することで得られる信号光は、振幅のみが変化する振幅変調光となる。この様子を図5に示す。図5から明らかな様に、位相変調光95と位相変調光97を合波することで得られる信号光は、位相変化量S(t)の値に拘わらず、その位相は、基準位相(図5のベクトル99の位相)で一定であり、位相変化量S(t)の値に応じて振幅のみが異なる振幅変調光99となる。位相変調光96と位相変調光98とを合波して得られる信号光も同様に振幅変調光となる。
【0024】
フィルタ部80は、位相変調光95と位相変調光97の合波により得られる振幅変調光又は位相変調光96と位相変調光98の合波により得られる振幅変調光を通過させ、残りの変調光を抑圧することで振幅変調光を出力する。
【0025】
例えば、通常の振幅変調においては、図2に示す位相変調光91と位相変調光93を合波することで振幅変調光を生成する。一方、本実施形態では、一部縮退四光波混合により位相変調光の位相変化量(帯域幅)を3倍にした後に合波する。2つの位相変調光を合波して得られる振幅変調光の振幅の変化量は、位相変調光の位相変化量が大きい程、大きくなる。したがって、電気信号の振幅レベルが同じであっても、位相変調光91と位相変調光93を合波することで振幅変調光を生成する場合と比較して、生成される振幅変調光の振幅の変化量は大きくなる。
【0026】
FWM部61及び62は、例えば、分散シフトファイバ等の光ファイバにより構成することができる。四光波混合は、光ファイバに入力される光の周波数(波長)が、当該光ファイバの波長分散値が零となる周波数(波長)に近い場合に強く発生する。例えば、FWM部61の場合、位相変調光91の周波数における光ファイバの波長分散値が零近傍である場合、周波数2f-fの位相変調光95が強く生じる。
【0027】
したがって、光ファイバの分散が0となる周波数(波長)が位相変調光91の帯域内、位相変調光94の帯域内、或いは、位相変調光91と位相変調光94との間の帯域内に位置する様に周波数f及び周波数fを決定することで、位相変調光95~98を効率的に生成することができる。例えば、位相変調光95と位相変調光97の合波により得られる振幅変調光を出力する場合、FWM部61及びFWM部62の光ファイバの分散が0となる周波数(波長)が位相変調光91及び93の帯域内となる様に周波数f及び周波数fを決定することで、位相変調光95と位相変調光97を効率的に生成することができる。また、例えば、位相変調光96と位相変調光98の合波により得られる振幅変調光を出力する場合、FWM部61及びFWM部62の光ファイバの分散が0となる周波数(波長)が位相変調光94及び98の帯域内となる様に周波数f及び周波数fを決定することで、位相変調光96と位相変調光98を効率的に生成することができる。
【0028】
なお、光ファイバの分散が0となる周波数が位相変調光91の帯域より低くても、位相変調光94の帯域より高くても一部縮退四光波混合は生じるため、光ファイバの分散が0となる周波数は上述したものに限定されない。
【0029】
また、FWM部61及び62は、半導体光増幅器で構成することができる。半導体光増幅器の非線形性により、四光波混合を生じさせることができる。
【0030】
なお、位相変調光95及び位相変調光96が位相変調光91及び94と干渉しない様にするには、図4から明らかな様に、X>2Bとする。
【0031】
以上の構成により、振幅変調光の振幅の変化量を維持しながら、入力する電気信号の振幅レベルを小さくすることができる。なお、図1の構成では、フィルタ部80を合波部70の下流側に設けていたが、フィルタ部80を合波部70の上流側に設ける構成とすることもできる。
【0032】
<第二実施形態>
続いて、第二実施形態について第一実施形態との相違点を中心に説明する。第一実施形態の構成において光変調器は、2つのFWM部を必要としていた。本実施形態では、光変調器に必要なFWM部の数を1つにする。
【0033】
図6は、本実施形態による光変調器の構成図である。第1生成部100のコム光源10は、図7(A)に示す5つの連続光81~85を含む複数の連続光を生成する。複数の連続光の周波数の間隔はXである。なお、連続光81~85の周波数をそれぞれ周波数f~fとする。分離部40は、連続光81及び84を位相変調部31に出力し、連続光82及び85を位相変調部32に出力する。図7(B)及び図7(C)は、それぞれ、位相変調部31及び位相変調部32に入力される連続光を示している。
【0034】
第一実施形態と同様に、位相変調部31は電気信号で連続光81及び84を位相変調し、位相変調部32は反転電気信号で連続光82及び85を位相変調する。図8(A)は、位相変調部31が出力する信号光の周波数成分を示している。位相変調光71は、周波数fの連続光を電気信号により位相変調したものであり、位相変調光72は、周波数fの連続光を電気信号により位相変調したものである。なお、位相変調光71の電界成分E及び位相変調光72の電界成分Eは、それぞれ、
【0035】
【数5】
で表される。ここで、ω=2πfであり、ω=2πfであり、S(t)は位相変化量である。
【0036】
図8(B)は、位相変調部32が出力する信号光の周波数成分を示している。位相変調光73は、周波数fの連続光を反転電気信号により位相変調したものであり、位相変調光74は、周波数fの連続光を反転電気信号により位相変調したものである。なお、位相変調光73の電界成分E及び位相変調光74の電界成分Eは、それぞれ、
【0037】
【数6】
で表される。ここで、ω=2πfであり、ω=2πfである。
【0038】
合波部70は、位相変調部31からの信号光と位相変調部32からの信号光を合波して得られた信号光を第2生成部200のFWM部60に出力する。図9は、FWM部60に入力される信号光を示している。FWM部60は、入力される信号光の一部縮退四光波混合を生じさせる。図10(A)は、位相変調光71と位相変調光73との一部縮退四光波混合により生じる周波数f=2f-fの位相変調光75を示している。また、図10(B)は、位相変調光72と位相変調光74との一部縮退四光波混合により生じる周波数f=2f-fの位相変調光76を示している。ここで、位相変調光75の電界成分E及び位相変調光76の電界成分Eは、それぞれ、
【0039】
【数7】
となる。位相変調光75及び位相変調光76の中心周波数及び周波数帯域は同じであるため、FWM部60での一部縮退四光波混合により位相変調光75及び位相変調光76を合波した信号光が生じる。式(13)及び式(14)から明らかな様に、この信号光は、振幅変調光となる。
【0040】
本実施形態においてもX>2Bとする。なお、FWM部60に分散シフトファイバを使用する場合、例えば、光ファイバの分散が0となる周波数(波長)を周波数fとすることができる。
【0041】
<まとめ>
上記各実施形態で説明した様に、第1生成部100は、情報を搬送する電気信号に基づき連続光を位相変調することで、第1位相変調光、第2位相変調光、第3位相変調光及び第4位相変調光の4つの位相変調光を生成する。ここで、電気信号の振幅による第1位相変調光と第2位相変調光の位相の変化方向は同じであり、電気信号の振幅による第3位相変調光と第4位相変調光の位相の変化方向は同じであるが、電気信号の振幅による第1位相変調光と第3位相変調光の位相の変化方向は互いに逆方向である。
【0042】
例えば、第一実施形態においては、位相変調光91が第1位相変調光に対応し、位相変調光92が第2位相変調光に対応し、位相変調光94が第3位相変調光に対応し、位相変調光93が第4位相変調光に対応する。また、例えば、第二実施形態においては、位相変調光71が第1位相変調光に対応し、位相変調光72が第2位相変調光に対応し、位相変調光73が第3位相変調光に対応し、位相変調光74が第4位相変調光に対応する。
【0043】
第2生成部200は、第1位相変調光と第3位相変調光との一部縮退四光波混合により、第5位相変調光を生成し、第2位相変調光と第4位相変調光との一部縮退四光波混合により、第6位相変調光を生成し、第5位相変調光と第6位相変調光を合波する。なお、第5位相変調光の中心周波数及び帯域幅は、第6位相変調光の中心周波数及び帯域幅に等しい。また、図5を用いて説明した様に、第5位相変調光と第6位相変調光の振幅及び位相の絶対値は等しく、かつ、第5位相変調光と第6位相変調光の位相の正負は互いに異なる。
【0044】
一部縮退四光波混合により生じる位相変調光の帯域幅は、元の2つの位相変調光の帯域幅より大きくなるため、第5位相変調光と第6位相変調光を合波して得られる振幅変調光の振幅の変化量は、第1生成部100の位相変調器が生成した位相変調光を合波して得られる振幅変調光の振幅の変化量より大きくなる。
【0045】
なお、上記各実施形態において、第1位相変調光から第4位相変調光の帯域幅は同じであったが、第1位相変調光から第4位相変調光の帯域幅を同じとすることに本発明は限定されない。例えば、第一実施形態において、位相変調光91の帯域幅をBとし、位相変調光94の帯域幅を0.5Bとする。この場合、式(5)及び式(6)から明らかな様に、位相変調光95の帯域幅は2.5Bとなり、位相変調光96の帯域幅は2Bとなる。同様に、位相変調光93の帯域幅をBとし、位相変調光92の帯域幅を0.5Bとする。この場合、式(7)及び式(8)から明らかな様に、位相変調光97の帯域幅は2.5Bとなり、位相変調光98の帯域幅は2Bとなる。したがって、位相変調光95と位相変調光97を合波しても、位相変調光96と位相変調光98を合波しても振幅変調光が得られる。したがって、第1位相変調光と第4位相変調光の帯域幅が等しく、かつ、第2位相変調光と第3位相変調光の帯域幅が等しければ良い。
【0046】
なお、第一実施形態においては、第1位相変調光の中心周波数と第4位相変調光の中心周波数は等しく、第2位相変調光の中心周波数と第3位相変調光の中心周波数は等しい。また、第二実施形態において、第1位相変調光から第4位相変調光は、周波数軸上において重複しない。また、第二実施形態において、第1位相変調光の中心周波数fと第3位相変調光の中心周波数fとの周波数差Xは、第2位相変調光の中心周波数fと第4位相変調光の中心周波数fとの周波数差Xに等しい。さらに、第二実施形態においては、第1位相変調光の中心周波数fと第4位相変調光の中心周波数fの中心周波数は周波数fであり、第2位相変調光の中心周波数fと第3位相変調光の中心周波数fの中心周波数は周波数fであり、等しい。
【0047】
しかしながら、第1位相変調光と第3位相変調光との一部縮退四光波混合により第5位相変調光を生成し、第2位相変調光と第4位相変調光との一部縮退四光波混合により第6位相変調光を生成し、第5位相変調光と第6位相変調光を合波することで振幅変調光を生成すれば良く、本発明は上述した実施形態の具体的な構成に限定されない。
【0048】
また、本発明による光変調器は、振幅のみを変化させる光振幅変調器や、振幅及び位相の両方を変化させる光直交振幅変調器を含み得る。
【0049】
さらに、本発明によると、上記光変調器を含む光送信装置が提供される。
【0050】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0051】
以上の構成により、光変調器に入力する必要がある電気信号の振幅レベルを小さくすることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0052】
100:第1生成部、200:第2生成部
図1
図2
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図5
図6
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図9
図10