(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】改良したT細胞治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/17 20150101AFI20240408BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20240408BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240408BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240408BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240408BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240408BHJP
【FI】
A61K35/17 ZNA
A61K39/00 H
A61P35/00
A61P35/02
C12N5/10
C12N5/0783
(21)【出願番号】P 2021508054
(86)(22)【出願日】2019-04-28
(86)【国際出願番号】 CN2019084773
(87)【国際公開番号】W WO2019206326
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】201810400248.5
(32)【優先日】2018-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520420366
【氏名又は名称】北京永泰瑞科生物科技有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】520420377
【氏名又は名称】法▲羅▼斯疫苗株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520420388
【氏名又は名称】中国食品▲薬▼品▲検▼定研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲ユ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲賢▼秀
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 南哲
(72)【発明者】
【氏名】王 佑春
(72)【発明者】
【氏名】▲孫▼ 磊
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 永▲華▼
(72)【発明者】
【氏名】王 萌
【審査官】春田 由香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/154628(WO,A1)
【文献】History of Changes for Study: NCT03186118,ClinicalTrials.gov archive [online],2018年03月06日,[retrieved on 2023.03.24], Retrieved from the Internet: < https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT03186118?V_7>
【文献】Wang, X. et al.,CMVpp65 Vaccine Enhances the Antitumor Efficacy of Adoptively Transferred CD19-Redirected CMV-Specific T Cells,Clinical Cancer Research,2015年,Vol.21, No.13,p.2993-3002,doi:10.1158/1078-0432.CCR-14-2920
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
C12N 5/00- 5/28
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において
CD19を発現する癌を治療する
ための医薬品の製造における組成物の使
用であって、
前記組成物は、
CD19を特異的に標的化する治療用T細胞と、
CD19を発現させた細胞と、を含み、
前記治療用T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含むT細胞(CAR-T細胞)であり、
前記CD19を発現させた細胞は、照射されたことのない生T細胞であり、
前記
治療は、
(a)前記対象に
CD19を特異的に標的化する
CAR-T細胞を
治療有効量である10
4
~10
9
細胞/kg体重で投与するステップと、
(b)
ステップ(a)の後、前記対象に前記
CD19を発現させた細胞を
刺激有効量である10
3
~10
6
細胞/kg体重で投与するステップと、
を含
む、使用。
【請求項2】
前記
CAR-T細胞は1回又は複数回投与される請求項1に記載の
使用。
【請求項3】
前記
CD19を発現させた細胞は1回又は複数回投与される請求項1又は2に記載の
使用。
【請求項4】
前記
CAR-T細胞を投与してから1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日又は20日後、前記
CD19を発現させた細胞を投与する請求項
3に記載の
使用。
【請求項5】
前記
CAR-T細胞を投与することで癌細胞負荷を低減させた後、前記
CD19を発現させた細胞を投与する;又は
前記
CAR-T細胞を投与した後、前記
CAR-T細胞の前記対象の生体内の量が低下したときに、前記
CD19を発現させた細胞を投与する、
請求項1~
4のいずれか1項に記載の
使用。
【請求項6】
癌細胞負荷を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%低減させた後、前記
CD19を発現させた細胞を投与する、請求項
5に記載の
使用。
【請求項7】
癌が前記
CAR-T細胞を投与することにより完全に寛解した後、前記
CD19を発現させた細胞を投与する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の
使用。
【請求項8】
前記CARは
CD19に特異的に結合する細胞外抗原結合ドメインを含む、請求項1に記載の
使用。
【請求項9】
前記
CD19は前記生
T細胞の表面で発現されている請求項
1に記載の
使用。
【請求項10】
前記
CD19を発現させた細胞は免疫細胞から誘導される請求項1~
9のいずれか1項に記載の
使用。
【請求項11】
前記
CAR-T細胞及び/又は前記
CD19を発現させた細胞は対象の自家細胞から誘導される、請求項1~
10のいずれか1項に記載の
使用。
【請求項12】
前記
CAR-T細胞及び/又は前記
CD19を発現させた細胞は同種細胞から誘導される、請求項1~
10のいずれか1項に記載の
使用。
【請求項13】
対象において
CD19を発現する癌の進行又は再発を予防する
ための医薬品の製造における組成物の
使用であって、
前記組成物は、
CD19を特異的に標的化する治療用T細胞と、前記
CD19を発現させた細胞と、を含み、
前記治療用T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含むT細胞(CAR-T細胞)であり、
前記CD19を発現させた細胞は、照射されたことのない生T細胞であり、
前記予防は、
(a)前記対象
にCD19を特異的に標的化する
CAR-T細胞を
治療有効量である10
4
~10
9
細胞/kg体重で投与するステップと、
(b)ステップ(a)の後、前記対象に
前記CD19を発現させた細胞を
刺激有効量である10
3
~10
6
細胞/kg体重で投与する
ステップと、
を含む、使用。
【請求項14】
前記
CD19を発現させた細胞は1回又は複数回投与される請求項13に記載の
使用。
【請求項15】
前記
CAR-T細胞を用いて1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間、15日間、16日間、17日間、18日間、19日間又は20日間治療した後、前記
CD19を発現させた細胞を投与する、請求項
13又は
14に記載の
使用。
【請求項16】
前記
CAR-T細胞が癌細胞負荷を低減させた後、前記
CD19を発現させた細胞を投与する、請求項
13~
15のいずれか1項記載の
使用。
【請求項17】
癌細胞負荷を少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%低減させた後、前記
CD19を発現させた細胞を投与する、請求項
16に記載の
使用。
【請求項18】
癌が前記
CAR-T細胞を用いて治療することにより完全に寛解した後、前記
CD19を発現させた細胞を投与する請求項
13~
17のいずれか1項に記載の
使用。
【請求項19】
前記CARは、
CD19に特異的に結合される細胞外抗原結合ドメイン
を含む、請求項
13又は
18に記載の
使用。
【請求項20】
前記
CD19は前記生
T細胞の表面で発現されている請求項
13に記載の
使用。
【請求項21】
前記
CD19を発現させた細胞は免疫細胞から誘導される請求項1
3~
20のいずれか1項に記載の
使用。
【請求項22】
前記
CAR-T細胞及び/又は前記
CD19を発現させた細胞は対象の自家細胞から誘導される請求項
13~
21のいずれか1項に記載の
使用。
【請求項23】
前記
CAR-T細胞及び/又は前記
CD19を発現させた細胞は同種細胞から誘導される供与体に由来する請求項
13~
21のいずれか1項に記載の
使用。
【請求項24】
対象において
CD19を発現する癌を治療する
、又は対象においてCD19を発現する癌の進行若しくは再発を予防するための組み合わせ物であって、
CD19を特異的に標的化する
CAR-T細胞と、前記
CD19を発現させた細胞と、を含み、
前記
CAR-T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含むT細胞(CAR-T細胞)であり、
前記CD19を発現させた細胞は、照射されたことのない生T細胞であり、
前記
CAR-T細胞は治療有効量である10
4~10
9
細胞/kg体重の前記
CAR-T細胞を含み、
前記
CD19を発現させた細胞は刺激有効量である10
3~10
6
細胞/kg体重の前記
CD19を発現させた細胞を含む、組み合わせ物。
【請求項25】
キットであって、
請求項24に記載の組み合わせ物を含み
、対象において
CD19を発現する癌を治療する、又は対象において
CD19を発現する癌の進行若しくは再発を予防する
ためのキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医学分野に属する。具体的に言えば、本発明は、改良したT細胞治療方法に関する。より具体的に言えば、本発明は、癌関連抗原を発現させた生細胞を用いて刺激することにより治療用T細胞(たとえばCAR-T又はTCR-T細胞)の癌治療効力を強化することに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、B細胞急性リンパ球白血病(B-ALL)の児童患者に対しては、多剤化学療法及び/又は標的治療がすでに高い完全寛解率を達成しているが、成人ではまだ不良予後があり、且つ再発/難治性B-ALLはすべての患者に対して大きな課題である。リンパ球枯渇化学療法の後にCD19標的キメラ抗原受容体により修飾されたT(CAR-T)細胞療法を行うことは新しい治療方法であり、且つ再発/難治性B-ALL、慢性リンパ球性白血病やリンパ腫に罹患している成人や児童の患者において高い応答があることが証明されている。これらの研究による新しいデータから明らかなように、送達された有意な小用量のCAR-T細胞が大きな疾患負荷を解消できる。しかしながら、長期のフォローアップから明らかなように、ほとんどの患者の寛解が長続きすることができない。CAR-T細胞の持続性が悪いので、CD19陽性腫瘍が再発することはある。したがって、従来、機能的CAR-T細胞の生体内での存在時間を延長させることは持続的寛解を維持することに重要である可能性があると考えられる。
【0003】
CARは、一般には、細胞外抗原結合ドメイン(モノクローナル抗体の一本鎖可変断片(scFV))と活性化T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。遺伝子工学的に改変されたCAR-T細胞は、主要組織適合性複合体(MHC)非依存的な方式により抗原陽性腫瘍細胞に効果的に抵抗する。従来、研究者は、CAR-T細胞の効能を改善する方法を求めることに取り組んでいる。ここで1種の実現可能な方法は、CARの構造を改変することであり、たとえば、第二世代又は第三世代、ひいては第四世代のCARを用い、それは、活性化シグナルドメインと共刺激シグナルドメインを組み合わせるものであり、且つT細胞増幅及び持続性を改善することができる。生体外増幅及び養子注入後、異なるT細胞サブセットに由来するCAR-T細胞の生体内増殖及び持続能力が異なる。エフェクターメモリーT細胞に基づき製造されるCD19標的CAR-T細胞に比べて、精製された初期T細胞又は中央メモリーT細胞から製造されたCD19標的CAR-T細胞は、CD19+腫瘍の解消においてより効果的である。且つ効率の相乗強化は、所定の割合を有するCD8/CD4T細胞から誘導されるCAR-T細胞を送達することにより実現できる。従来、使用されたCAR-T細胞は、内因性T細胞受容体(TCR)を保留し、一方、TCRとCARのクロストークの生物学が非常に複雑である。CARとTCRの付随活性化はCD8+CAR-T細胞の生体内効能を極めて弱め、逆には、CD4+CAR-T細胞は、TCRとCAR抗原が存在する場合、その生体内で持続的に生存する能力を維持する。
【0004】
新しいCAR構造を開発し、且つCAR-T細胞のソースを正確に決定することはCAR-Tの応用の改良に寄与する可能性があるが、これらの戦略は、根本的にはCAR-T細胞の免疫メモリーの発生を促進することができず、免疫メモリーの発生は適応免疫応答に対して不可欠なものである。且つCAR-T細胞の繰り返し投与は、エンジニアリングされたこれらのT細胞に対する免疫クリアランスを誘導する傾向がある。したがって、本分野はまだ、新しいCAR-T細胞治療戦略を必要とし、特にCAR-T細胞の免疫メモリーを誘導し得る戦略である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
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【文献】Forman SJ,Rowe JM.The myth of the second remission of acute leukemia in the adult.Blood 2013,121(7):1077-1082.
【文献】Lee DW,Kochenderfer JN,Stetler-Stevenson M,Cui YK,Delbrook C,Feldman SA,et al.T cells expressing CD19chimeric antigen receptors for acute lymphoblastic leukaemia in children and young adults:a phase 1 dose-escalation trial.Lancet 2015,385(9967):517-528.
【文献】Maude SL,Frey N,Shaw PA,Aplenc R,Barrett DM,Bunin NJ,et al.Chimeric antigen receptor T cells for sustained remissions in leukemia.The New England journal of medicine 2014,371(16):1507-1517.
【文献】Brentjens RJ,Riviere I,Park JH,Davila ML,Wang X,Stefanski J,et al.Safety and persistence of adoptively transferred autologous CD19-targeted T cells in patients with relapsed or chemotherapy refractory B-cell leukemias.Blood 2011,118(18):4817-4828.
【文献】Porter DL,Hwang WT,Frey NV,Lacey SF,Shaw PA,Loren AW,et al.Chimeric antigen receptor T cells persist and induce sustained remissions in relapsed refractory chronic lymphocytic leukemia.Science translational medicine 2015,7(303):303ra139.
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【文献】Geyer MB,Brentjens RJ.Review:Current clinical applications of chimeric antigen receptor(CAR)modified T cells.Cytotherapy 2016,18(11):1393-1409.
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1の態様では、本発明は、対象において癌を治療する方法を提供し、以下のステップを含む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(a)対象に癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞を投与するステップ、及び
(b)対象に癌関連抗原を発現させた細胞を投与するステップ。
【0008】
第2の態様では、本発明は、対象において癌の進行又は再発を予防する方法を提供し、ここで、対象は既に癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞を用いた癌治療を受けており、方法は、対象に癌関連抗原を発現させた細胞を投与することを含む。
【0009】
第3の態様では、本発明は、対象において癌を治療するための組み合わせを提供し、それは、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞、及び癌関連抗原を発現させた細胞を含む。
【0010】
第4の態様では、本発明は、本発明の第3の態様の組み合わせの、対象において癌を治療するための医薬品の製造における用途を提供する。
【0011】
第5の態様では、癌関連抗原を発現させた細胞の、対象において癌を治療するための医薬品の製造における用途であって、ここで医薬品は癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞をさらに含む。
【0012】
第6の態様では、本発明は、癌関連抗原を発現させた細胞の、対象において癌の進行又は再発を予防するための医薬品の製造における用途を提供し、ここで、対象は、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞を用いた癌治療を受けている。
【0013】
第7の態様では、本発明は、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞の、対象において癌を治療するための医薬品の製造における用途を提供し、ここで医薬品は、癌関連抗原を発現させた細胞をさらに含む。
【0014】
第8の態様では、本発明は、癌関連抗原を発現させた細胞を提供し、それは、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞と組み合わせて対象において癌を治療することに用いられる。
【0015】
第9の態様では、本発明は、癌関連抗原を発現させた細胞を提供し、それは、対象において癌の進行又は再発を予防することに用いられ、ここで対象は、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞を用いた癌治療を受けている。
【0016】
第10の態様では、本発明は、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞を提供し、それは、癌関連抗原を発現させた細胞と組み合わせて対象において癌を治療することに用いられる。
【0017】
第11の態様では、本発明はキットを提供し、それは、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞及び/又は癌関連抗原を発現させた細胞を含み、キットは、本発明の方法により対象において癌を治療する、又は癌の進行又は再発を予防することに用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】B-NDGマウスの産生及びキャラクタリゼーションである。(A)はCRISPR/Cas9ゲノム編集技術によるIl2rg遺伝子欠失標的戦略の模式図である。(B)はフローサイトメトリーによりNOD-scid及びB-NDGマウスの末梢血及び脾臓中のさまざまなリンパ球集団を検出する。数字は所定の表現型の陽性細胞の百分率を示す。(C)6週齢のC57BL/6、ヌードマウス、Rag2-/-、NOD-scid、及びB-NSGマウスは、それぞれ尾静脈注射により5×10
5個のRaji細胞をインプラントする。生物発光の相対レベルは疑似カラーで示され、赤色と青色は最強と最弱の光フラックスを代表する。(D)は各時点の総フラックスを示し、且つ各データ点は平均値(n=10)を示す。(E)CD19-FITCで認識されたRaji細胞カウントは、細胞カウントにより記録された図として示される。対数曲線をフィッティングすることによりRaji細胞カウントと総フラックスとの間の相関性を計算し、R
2=0.90である。(F)B-NDGマウスは17日目又は18日目に死亡し、しかし、他のマウスは30日目に生存する。(G)CD19はRaji-Fluc細胞の表面で高発現され、Flucの発光強度はRaji-Fluc細胞の数量と正の相関である。
【
図2】生体外CD19 CAR-T細胞の効率である。(A)は抗CD19 CARの構造である。(B)はPBMC供与体からのCAR-T細胞の生体外培養の概要であり、生細胞百分率、CAR-T細胞の総細胞カウント、及びCAR-T細胞の百分率を含む。(C)CAR-T/Raji比率が1:1、3:1、及び6:1である場合のCAR-T細胞による生体外Raji細胞への細胞毒効果である。
【
図3】低用量腫瘍生細胞の再刺激がCAR-T細胞の免疫メモリーの発生を促進する。(A)はそれぞれ異なる群中の器官及び組織のフラックスを測定する。(B)低用量腫瘍生細胞の再インプラントが腫瘍クリアランスを促進しかつ全生存を延長させることができる。(C)低用量腫瘍生細胞の再インプラントは再発を遅延させることができる。(D)各群の平均総フラックス。LT:低用量再インプラント;MT:中用量再インプラント;HT:高用量再インプラント。
【
図4】照射後死亡した腫瘍細胞の再インプラントは作用しない。(A)異なる群中の器官及び組織のフラックスを別々に測定する。(B)及び(C)照射後死亡した腫瘍細胞の再インプラントは全生存及び無再発生存を延長さできない。CAR-T細胞の2重処理の効果は単一処理と同様である。(D)qPCRによりマウスの末梢血中のCAR-T細胞の数量を測定する。
【
図5】CAR-T-19及びaT19細胞のキャラクタリゼーションである。(A)はCAR-19遺伝子構築体の構造及び初代活性化させたT細胞のCAR-T-19形質導入効率を示す模式図である。(B)はヒトCD19遺伝子構築体の構造及び初代活性化させたT細胞のCD19形質導入効率である。(C)CAR-T-19:CD19-K562又はK562の比が1:1、3:1、及び6:1であるときのCAR-T-19細胞のCD19-K562又はK562細胞に対する細胞毒性作用、及びCAR-T-19:Raji-Fluc又はaT19の比率が0.3:1、1:1、及び3:1であるときのCAR-T-19細胞のRaji-Fluc又はaT19細胞に対する細胞毒性作用である。
【
図6】生Raji腫瘍細胞のCAR-T細胞に対する再刺激は生存率を増加し且つ腫瘍再発を遅延させる。D0にRaji-Fluc細胞(マウス1匹あたり2×10
5個の細胞;A1、A2、A3、NT、及びP群)を静脈内(i.v.)注射した。Raji-Fluc細胞を注射した後のD5に、マウスはCAR-T-19細胞(マウス1匹あたり2×10
7個の細胞;A1、2、3、及びNT群)のi.v.注射を受けた。D10に、マウスi.v.に異なる用量のRaji-Fluc細胞(A1及びPA1群:5×10
4;A2、及びPA2群:1.5×10
5;並びにA3及びPA3群:5×10
5)を注射した。PA群はA群の対照として用いられる。(A)は動物実験のスケジュールの模式図を示す。(B)は生物発光画像であり、異なる群のマウスの器官及び組織中の総フラックスを示す。異なる用量の再インプラントされたRaji-Fluc細胞に基づいてKaplan-Meier生存曲線を構築することで、全身性疾患の根絶(C)を監視し、及び無再発生存(D)を推定する。
【
図7】照射後死亡した腫瘍細胞を用いてCAR-T細胞を再刺激することは無効である。D0にRaji-Fluc細胞(マウス1匹あたり2×10
5個の細胞;A1、A2、A3、NT、及びP群)を静脈内(i.v.)注射した。Raji-Fluc細胞を注射した後のD5に、マウスはCAR-T-19細胞のi.v.注射を受けた(マウス1匹あたり2×10
7個の細胞;A1、A2、A3、及びNT群)。D10に、異なる用量の照射されたRaji-Fluc細胞(A1及びPA1群:5×10
4;A2及びPA2群:1.5×10
5;並びに、A3及びPA3群:5×10
5)をマウスにi.v.注射した。PA群はA群の対照として用いられる。(A)は動物実験のスケジュールの模式図を示す。(B)は生物発光画像であり、異なる群のマウスの器官及び組織中の総フラックスを示す。異なる用量の再インプラントされた照射済みのRaji-Fluc細胞に基づきKaplan-Meier生存曲線を構築することで、全身性疾患の根絶(C)を監視し、且つ無再発生存(D)を推定する。(E)定量的ポリメラーゼ連鎖反応は、Raji-Fluc細胞をインプラントした後、A群及びNT群の血液中のCAR+細胞を検出することに用いられる。グラフは、各群からの血液サンプル中のCAR遺伝子のコピー数を示す。
【
図8】CAR-T-19及びaT19細胞の連続処理を用いてメモリーCAR-T細胞の産生を促進する。D0にRaji-Fluc細胞(マウス1匹あたり2×10
5個の細胞;A1、NT、aT19、及びP群)を静脈内(i.v.)注射した。Raji-Fluc細胞を注射した後のD7に、マウスは、CAR-T-19細胞(マウス1匹あたり2×10
7個の細胞;A1、NT、及びaT19群)のi.v.注射を受けた。D10に、A1群のマウスは、5×10
4個の細胞のi.v.注射を受けており、aT19群のマウスは、5×10
5個の細胞のi.v.注射を受け、他の群は注射を受けない。(A)は動物実験のスケジュールの模式図を示す。(B)は生物発光画像であり、異なる群のマウスの器官及び組織中の総フラックスを示す。(C)Kaplan-Meier生存曲線を構築することで全身性疾患の根絶を監視する。定量的ポリメラーゼ連鎖反応は、D10、D20、及びD30での血液(D)及び脾臓(E)中のCAR+細胞を検出することに用いられ、グラフは、各群からのサンプル中のCAR遺伝子のコピー数を示す。(F)は末梢血中のCAR+とCD45RO+細胞の百分率である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
特に記載又は定義する場合を除き、使用されるすべての用語はいずれも本分野中の通常の定義であり、該定義は当業者により理解されるものである。たとえば標準マニュアル、たとえばSambrook et al.,「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」;Lewin,「Genes VIII」;及びRoitt et al.,「Immunology」(第8版)、及び本明細書に引用される一般的な従来技術を参照します。なお、特に説明する場合を除き、具体的に詳述しないすべての方法、ステップ、技術及び操作は、いずれも知られていた方式で行うことができ、且つ既に行っており、該方式は当業者により理解されるものである。また、たとえば標準マニュアル、上記一般的な従来技術、及びそれに引用されている他の参照文献を参照する。
先行の臨床試験は既に、CAR-T免疫療法の癌治療、特にB細胞の悪性腫瘍における有効性を決定している。CAR-T細胞により癌を治療することの次のステップは寛解の継続時間を延長させることである。
【0020】
CD19に対するCAR-T治療は再発/難治性B-ALL患者に対する寛解率が67%~90%に達することができ、しかしながら、無再発期間が2ヵ月~3年などしかない。CD19 CAR-Tで治療した後、2種の再発モードがあり、1種はCAR-T細胞の生体内持続性が不十分であることに起因するCD19陽性腫瘍の再発であり、もう1種は約20%の患者に生じた、生体内にCAR-T細胞が存在するときにCD19-が欠損することに起因する再発であり、このような欠損はクローン選択又は腫瘍進化に起因する可能性がある。現在、研究者は、患者の末梢血中のCAR-T細胞が減少又は消失するときに患者にCAR-T細胞を再び付加的に注射する傾向があるが、このようなスキームの臨床的効果の差異が非常に大きく、これは、CAR-T用量の増加がCAR-T能力の生体内での持続的な存在の鍵ではない可能性があることを表す。
【0021】
本発明の具体的な実施例では、発明者は、Raji-B-NDGマウスモデルの構築に成功し、それによりCD19 CAR-T療法の効率を研究する。CD19 CAR-T細胞を用いて処理した後、寛解したマウスには、20日(D20)目に異なる程度の再発が発生し、次にD28~36内で死亡し、最初に抗原と接触しかつ腫瘍細胞が解消された後、注入したCAR-T細胞が徐々に減少し、最終的に再発するが、効果的に制御できないことをもたらすことが明らかになる。再発の原因は以下の2つの点にある可能性がある。先ず、マウスの蛍光検出は、豊かな血流を有する器官(たとえば脾臓や心臓)中にのみ理想的な腫瘍抑制効果を実現し、少ない血管枝を有する器官(たとえば肝や脳)中に腫瘍細胞を効果的に殺さないことを示し、これから、再発がこれらの組織に由来する可能性があることが明らかになる。次に、腫瘍再発の時間が極めて重要であり、ほとんどのPBMCの寿命が4週間を超えない。CAR-T細胞は、注射前の12日間と長い生体外増殖時間に注射後から再発前までの20日間を加算したところ、大体PBMCの27日間という寿命と一致する。したがって、開始用量のCAR-TはほとんどのRaji細胞を解消し、抗原刺激の欠如を引き起こし、したがって、増殖が阻害され、且つ寿命が消費され、CAR-Tの数量が腫瘍再発まで減少する。
【0022】
CAR-Tの特異的死滅効果を最大化させるために、臨床応用において治療用細胞の寿命及び抗原刺激の問題を解決すべきである。本発明の具体的な実施例では、D10に腫瘍細胞が実質的に既にCAR-Tにより除去されたときに、腫瘍細胞(Raji-Fluc)又は腫瘍抗原たとえばCD19を発現させた細胞(たとえばT細胞)の再接種の効果をテストした。意外なことに、単回インプラント群(腫瘍形成)と比較すると、低用量再インプラント群(再刺激)はより長い時間の腫瘍再発無し状態を維持し、半分以上のマウスは36日以上生存し、同一抗原による繰り返した刺激の下で免疫メモリーが発生し、繰り返して注入された同一抗原に対する迅速な反応は腫瘍細胞の持続的抑制を引き起こすことが明らかになる。続いて、発明者は、照射後死亡したRaji細胞に由来する抗原がCAR-T細胞を刺激できるか否かを研究している。また意外なことに、結果から、死亡した腫瘍細胞の再インプラントがCAR-T細胞のメモリーをウェイクすることができず、マウスの生存時間の短縮を引き起こすことが明らかになる。これから、CAR-T細胞が抗原を持った生細胞によってしか活性化できないことが明らかになる。本発明者はまた、驚くべきことには、CAR-Tを繰り返して投与する療法が腫瘍の再発を遅延できないことを見出し、これは、CAR-Tの複数回の注入が無効であることにより多くの根拠を提供する。なんらかの理論による制限を受けることが期待されないが、低用量の癌関連抗原を発現させた生細胞の刺激はCAR-T細胞の免疫メモリーの発生を促進することができ、それにより再発遅延及び生存延長を引き起こすことが考えられる。
【0023】
したがって、第1の態様では、本発明は、対象において癌を治療する方法を提供し、以下のステップを含む。
(a)前記対象に癌関連抗原を特異的に標的化した治療用T細胞を投与するステップ、及び
(b)前記対象に前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与するステップ。
【0024】
いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞は、1回又は複数回、好適には1回投与される。いくつかの実施態様では、前記癌関連抗原を発現させた細胞は、1回又は複数回、好適には1回投与される。
【0025】
いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を投与した後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。たとえば、前記治療用T細胞を投与してから約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日又は約21日後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。
【0026】
いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を投与することで癌細胞負荷を低減させた後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。たとえば、癌細胞負荷を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%低減させた後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。いくつかの実施形態では、癌が前記治療用T細胞を投与することにより完全に寛解した後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。対象における癌細胞負荷の変化は本分野で既知の各種の方法により決定できる。たとえば、血液癌に対しては、循環細胞に対してフローサイトメトリーを行うことにより癌細胞負荷を決定することができる。またたとえば、固形腫瘍に対しては、臨床的によく使用されているイメージング方法(たとえば核磁気共鳴、CT、及びPET-CTなど)により腫瘍負荷を決定することができる。又は、腫瘍マーカーを検出することにより腫瘍負荷を決定することができる。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する前に、前記治療用T細胞の含有量を検出することにより腫瘍負荷の変化を決定することができ、たとえば、前記治療用T細胞の含有量は腫瘍負荷と負の相関を有する。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を投与した後、前記治療用T細胞の前記対象の生体内の量が低下したときに、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。前記治療用T細胞の前記対象の生体内の量はたとえばフローサイトメトリー又は定量的PCRの方法により検出できる。たとえば、前記治療用T細胞がCAR-T細胞であれば、PCRにより対象からのサンプル中のCARコード遺伝子のコピー数を検出することができる。CARコード遺伝子のコピー数に低下が生じると、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。
【0028】
したがって、いくつかの実施形態では、前記方法は、前記治療用T細胞を投与した後、前記対象の生体内の腫瘍負荷及び/又は前記治療用T細胞の量を監視するステップをさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を1回又は複数回投与した後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を1回又は複数回投与する。いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を1回投与した後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を1回又は複数回投与する。いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を1回又は複数回投与し、且つ前記治療用T細胞を毎回投与した後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を1回又は複数回投与する。いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を1回投与した後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を1回投与する。いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を投与した後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を1回又は複数回投与する。いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を投与した後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を1回投与する。
【0030】
いくつかの実施形態では、治療有効量で前記治療用T細胞を投与する。本明細書で使用されるように、治療用T細胞の治療有効量とは、使用後癌細胞負荷を低減させ得る治療用T細胞の量、たとえば、癌細胞負荷を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%低減させる、又は癌を完全に寛解する量を指す。本発明の各態様のいくつかの実施形態では、前記治療用T細胞の有効量は約104~約109個の細胞、たとえば約104、約105、約106、約107、約108又は約109個の細胞である。いくつかの実施形態では、対象の体重に基づき治療用T細胞の投与量を決定し、たとえば約104細胞/kg体重~約109個の細胞/kg体重、たとえば約104、約105、約106、約107、約108又は約109個の細胞/kg体重である。
【0031】
いくつかの実施形態では、刺激有効量で癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。本明細書で使用されるように、癌関連抗原を発現させた細胞の刺激有効量とは、投与後、前に投与した治療用T細胞の生体内の持続性(免疫メモリー強化)を延長させ、及び/又は対象の全生存期間を延長させ、及び/又は対象の無再発生存期間を延長させ得る量を指す。本発明の各態様のいくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞の刺激有効量は、約103~約106個の細胞、たとえば約103、約104、約105又は約106個の細胞である。好適には低用量の前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与し、たとえば約104個の細胞である。いくつかの実施形態では、対象の体重に基づき癌関連抗原を発現させた細胞の投与量を決定し、約103~約106個の細胞/kg体重、たとえば約103、約104、約105又は約106個の細胞/kg体重である。いくつかの実施形態では、投与された治療用T細胞の量に基づき癌関連抗原を発現させた細胞の投与量を決定する。たとえば、投与された治療用T細胞の量と癌関連抗原を発現させた細胞の量との比は約1:1~約1000:1の間の任意の比又はより高い比、たとえば約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約50:1、約100:1又は約1000:1又はそれよりも高いものである。
【0032】
本発明の各態様のいくつかの実施形態では、癌関連抗原を発現させた生細胞を投与することにより生体内に既存の治療用T細胞(たとえばCAR-T細胞)を刺激することで、治療用T細胞の生体内の持続性を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約300%又はそれよりも高く増加させることができる。本発明の各態様のいくつかの実施形態では、癌関連抗原を発現させた生細胞を投与することにより生体内に既存の治療用T細胞(たとえばCAR-T細胞)を刺激することで、対象の全生存期間を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約300%又はそれよりも長く延長させることができる。本発明の各態様のいくつかの実施形態では、癌関連抗原を発現させた生細胞を投与することにより生体内に既存の治療用T細胞(たとえばCAR-T細胞)を刺激することで、対象の寛解後の無再発生存期間を、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約300%又はそれよりも長く延長させることができる。
【0033】
本発明の各態様のいくつかの実施形態では、治療用T細胞は、外因性T細胞受容体(TCR)を含むT細胞(TCR-T細胞)である。いくつかの実施形態では、前記外因性TCR(通常、α及びβ鎖を含む)は癌関連抗原を特異的に結合する。
【0034】
本発明の各態様のいくつかの実施形態では、治療用T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)を含むT細胞(CAR-T細胞)である。本分野では、すでに複数種のCAR-T細胞、たとえば第一世代から第四世代のCAR-T細胞、修飾により抑制的シグナルを除去されたCAR-T細胞などが開発されており、これらはすべて本発明に適用できる。
【0035】
本発明の各態様のいくつかの実施形態では、CARは癌関連抗原に対する細胞外抗原結合ドメインを含む。前記細胞外抗原結合ドメインは、たとえばモノクローナル抗体、合成した抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、シングルドメイン抗体、抗体一本鎖可変領域(scFV)、及びその抗原結合断片であってもよい。いくつかの好適な実施形態では、前記細胞外抗原結合ドメインはscFVである。たとえば、前記細胞外抗原結合ドメインは、1種又は複数種の既知の抗体から誘導することができ、商業的に入手できる任意の抗体、たとえば、FMC63、リツキシマブ(rituximab)、アレムツズマブ(alemtuzumab)、エプラツズマブ(epratuzumab)、トラスツズマブ(trastuzumab)、ビバツズマブ(bivatuzumab)、セツキシマブ(cetuximab)、ラベツズマブ(labetuzumab)パリビズマブ(palivizumab)、セヴィルマブ(sevirumab)、ツビルマブ(tuvirumab)、バシリキシマブ(basiliximab)、ダクリズマブ(daclizumab)、インフリキシマブ(infliximab)、オマリズマブ(omalizumab)、エファリズマブ(efalizumab)、ケリキシマブ(Keliximab)、シプリズマブ(siplizumab)、ナタリズマブ(natalizumab)、クレノリキシマブ(clenoliximab)、パニツムマブ(pemtumomab)、エドレコロマブ(Edrecolomab)、及びカンツズマブ(Cantuzumab)などを含む。
【0036】
本発明の各態様のいくつかの実施形態では、前記CARは、膜貫通ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインをさらに含む。本発明に係るCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞外リガンド結合ドメインが標的と結合した後の細胞内シグナル伝達を担当し、免疫細胞の活性化及び免疫応答を引き起こす。細胞内シグナル伝達ドメインはCARを発現させた免疫細胞の少なくとも1種の正常なエフェクター機能を活性化する能力を有する。たとえば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性又は補助活性であってもよく、サイトカインの分泌を含む。
【0037】
CARに用いられる細胞内シグナル伝達ドメインは細胞質配列であってもよく、たとえばT細胞受容体及び共受容体(それらは同時に作用を果たすことにより、抗原受容体が接合した後シグナル伝達を開始させる)の細胞質配列、並びに、これらの配列の任意の誘導体又は変異体及び同一機能・能力を有する任意の合成配列が例示できるが、これらに制限されない。細胞内シグナル伝達ドメインは2種の異なるタイプの細胞質シグナル伝達配列を含み、つまり、抗原依存的一次活性化を開始させるような配列、及び抗原非依存的な方式で作用することで二次又は共刺激シグナルを提供するような配列である。一次細胞質シグナル伝達配列は、ITAMと呼称される免疫受容体チロシン活性化モチーフのシグナル伝達モチーフを含んでもよい。本発明で使用されるITAMの非限定的な例は、TCRζ、FcRγ、FcRβ、FcRε、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dから誘導されるものを含んでもよい。いくつかの実施形態では、CARの細胞内シグナル伝達ドメインはCD3ζシグナル伝達ドメインを含んでもよい。いくつかの実施形態では、本発明のCARの細胞内シグナル伝達ドメインは、共刺激ドメインをさらに含む。いくつかの実施形態では、前記共刺激ドメインは41BB共刺激ドメイン又はCD28共刺激ドメインから選ばれる。
【0038】
CARは細胞の表面上で発現されている。したがって、CARは、膜貫通ドメインを含んでもよい。本発明のCARの適切な膜貫通ドメインは以下の能力を有する。(a)細胞の表面で発現され、好適には免疫細胞、たとえばリンパ球又はチュラルキラー(NK)細胞が例示されるが、これらに制限されないこと、及び(b)リガンド結合ドメイン及び細胞内シグナル伝達ドメインと相互作用し、所定の標的細胞に対する免疫細胞の細胞応答を指導することに用いられること。膜貫通ドメインは、天然ソース又は合成ソースから誘導することができる。膜貫通ドメインは任意の膜結合タンパク質又は膜貫通タンパク質から誘導することができる。非限定的な例として、膜貫通ドメインはT細胞受容体のサブユニットたとえばαサブユニット、βサブユニット、γ又はδサブユニット、CD3複合体を構成するポリペプチド、IL-2受容体のp55(α鎖)、p75(β鎖)又はγ、Fc受容体のサブユニット鎖、特にFcγ受容体III又はCDタンパク質から誘導することができる。又は、膜貫通ドメインは合成するものであってもよく、且つ主に疎水性残基、たとえばロイシン及びバリンを含んでもよい。いくつかの実施形態では、前記膜貫通ドメインはヒトCD8α鎖から誘導する。膜貫通ドメインは細胞外リガンド結合ドメインと前記膜貫通ドメインとの間に位置するヒンジ領域をさらに含んでもよい。前記ヒンジ領域はたとえばCD8、CD4又はCD28の細胞外領域由来である。いくつかの実施形態では、前記ヒンジ領域はヒトCD8α鎖の一部である。
【0039】
本発明の各態様のいくつかの具体的な実施形態では、本発明で使用されるCARは、癌関連抗原を特異的に結合した細胞外抗原結合ドメイン、CD8αヒンジと膜貫通ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、及び4-1BB共刺激ドメインを含んでもよい。
【0040】
1つの実施形態では、本発明のCAR(CD19に対して)は下記SEQ ID NO:1のアミノ酸配列を含む。
【化1】
【0041】
1つの実施形態では、本発明のCAR(CD19に対して)は下記SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列によりエンコードされる。
【化2】
【0042】
本発明の各態様のいくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞は生細胞である。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原は前記生細胞の表面で発現されている。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞は癌細胞ではない。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞は前記抗原を発現させるように遺伝子工学的に改変された細胞である。前記細胞のタイプについては特に制限せず、それは分離した初代細胞から誘導する、又は細胞系から誘導することができる。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞は末梢血細胞たとえば末梢血単核細胞(PBMC)から誘導する。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞は免疫細胞、たとえばマクロファージ、樹枝状細胞、形質細胞、顆粒球、肥満細胞、リンパ球(炎症性Tリンパ球、細胞毒性Tリンパ球、調節性Tリンパ球、又はヘルパーTリンパ球、Bリンパ球)などから誘導する。いくつかの実施形態では、細胞はCD34+細胞から誘導することができる。いくつかの実施形態では、細胞はTリンパ球たとえばCD4+Tリンパ球又はCD8+Tリンパ球から誘導することができる。いくつかの実施形態では、細胞はBリンパ球から誘導することができる。
【0043】
本発明の各態様のいくつかの実施形態では、前記治療用T細胞及び/又は前記癌関連抗原を発現させた細胞は対象の自家細胞から誘導する。本明細書で使用されるように、「自家」とは、対象を治療するための細胞、細胞系又は細胞集団が前記対象から由来することを指す。いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞及び/又は前記癌関連抗原を発現させた細胞は同種細胞から誘導し、たとえば前記対象のヒトの白血球抗原(HLA)と適合する供与体から由来する。標準スキームを用いて供与体からの細胞を非アロ反応性細胞に転化し、必要に応じてコピーすることにより、1つ又は複数の患者に投与され得る細胞を産生することができる。
【0044】
本発明の治療用T細胞及び/又は癌関連抗原を発現させた細胞は本分野で既知の複数種の手段により製造することができる。たとえば、CAR又はTCRコード配列を含む発現構築体を用いてT細胞を形質導入することによりCAR-T細胞又はTCR-T細胞を得ることができる。たとえば、癌関連抗原のコード配列を含む発現構築体を細胞に形質導入することにより前記癌関連抗原を発現させた細胞を得ることができる。当業者はタンパク質の発現に適した発現構築体を容易に構築できる。
【0045】
本発明の細胞は、各種の非限定的な方法により多数の非限定的なソースから得ることができ、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、腹水、胸膜滲出液、脾臓組織や腫瘍を含む。いくつかの実施形態では、当業者に利用可能な既知の細胞系を使用することができる。いくつかの実施形態では、細胞は健康な供与体から誘導する、又は癌であると診断された患者からのものであってもよい。いくつかの実施形態では、細胞は、異なる表現型の特徴を呈する細胞の混合集団の一部であってもよい。
【0046】
本発明の細胞たとえばT細胞は遺伝的修飾前又は後に活性化及び増幅されてもよい。T細胞は生体外又は生体内で増幅することができる。通常、本発明のT細胞はたとえばCD3 TCR複合体とT細胞表面上の共刺激分子を刺激することでT細胞の活性化シグナルを発生させる試薬と接触することにより増幅することができる。たとえば、たとえばカルシウムイオノフォアA23187、ホルボール12-ミリステート13-アセテート(PMA)、又は有糸分裂レクチンたとえばフィトヘマグルチニン(PHA)のような化学品を用いてT細胞の活性化シグナルを発生させることができる。いくつかの実施形態では、T細胞集団は、生体外でたとえば抗CD3抗体又はその抗原結合断片、又は表面上に固定された抗CD2抗体と接触することにより活性化され、又はプロテインキナーゼCアクチベータ(たとえば、苔抑制剤)とともにカルシウムイオノフォアとの接触により活性化され得る。たとえば、T細胞増殖の刺激に適した条件において、T細胞集団は、抗CD3抗体及び抗CD28抗体と接触することができる。T細胞培養に適用する条件は、増殖や活性に必須な因子を含有し得る適切な培地(たとえばMinimal Essential Media又はRPMI Media 1640、又はX-vivo 5、(Lonza))を含み、ここで必須な因子は血清(たとえば胎児ウシ又はヒト血清)、インターロイキン-2(IL-2)、インスリン、IFN-γ、IL-4、IL-7、GM-CSF、IL-10、IL-2、IL-15、TGFpやTNF、又は当業者にとって既知の細胞成長用の添加剤を含む。他の細胞成長用の添加剤は、界面活性剤、ヒト血漿タンパク質粉末、及び還元剤たとえばN-アセチル-システインや2-メルカプト酢酸を含むが、これらに制限されない。培地は、RPMI 1640、A1M-V、DMEM、MEM、a-MEM、F-12、X-Vivo 1とX-Vivo 20、Optimizer、アミノ酸、ピルビン酸ナトリウムとビタミン、無血清又は適量に補充された血清(又は血漿)又は1セットの明確なホルモン、及び/又はT細胞を成長及び増幅させるのに十分な所定量のサイトカインを含んでもよい。標的細胞は、成長をサポートするのに必要な条件下、たとえば適切な温度(たとえば37℃)及び環境(たとえば、空気+5%CO2)で保持することができる。異なる刺激時間晒されたT細胞は異なる特徴を示す可能性がある。
【0047】
本明細書で使用されるように、「対象」とは、本発明の方法、組み合わせ又は医薬品組成物で治療され得る疾患又は病状に罹患又は罹患しやすい生体を指す。非限定的な例は、ヒト、ウシ、ラット、マウス、イヌ、猿、ヤギ、羊、母牛、鹿、及び他の非哺乳動物を含む。好適な実施形態では、対象はヒトである。
【0048】
第2の態様では、本発明は、対象において癌の進行又は再発を予防する方法を提供しており、ここで前記対象は、既に癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞を投与する治療(癌治療)を受けており、前記方法は、前記対象に癌関連抗原を発現させた細胞を投与することを含む。前記治療用T細胞又は癌関連抗原を発現させた細胞は本明細書で定義されたとおりである。
【0049】
いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞は1回又は複数回、好適には1回投与される。
【0050】
いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を投与してから約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、約10日、約11日、約12日、約13日、約14日、約15日、約16日、約17日、約18日、約19日、約20日又は約21日後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。
【0051】
いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞が癌細胞負荷を低減させた後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。たとえば、癌細胞負荷を少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%低減させた後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。いくつかの実施形態では、癌が前記治療用T細胞を投与することにより完全に寛解した後、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。
【0052】
いくつかの実施形態では、前記治療用T細胞を投与した後、前記治療用T細胞の前記対象の生体内の量が低下したときに、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。前記治療用T細胞の前記対象生体内の量はたとえばフローサイトメトリー又は定量的PCRの方法により検出できる。たとえば、前記治療用T細胞がCAR-T細胞であれば、PCRにより対象からのサンプル中にCARコード遺伝子のコピー数を検出することができる。CARコード遺伝子のコピー数に低下が生じると、前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。
【0053】
したがって、いくつかの実施形態では、前記方法は、前記治療用T細胞を投与した後、前記対象生体内の腫瘍負荷及び/又は前記治療用T細胞の量を監視するステップをさらに含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、刺激有効量で前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与する。本明細書で使用されるように、癌関連抗原を発現させた細胞の刺激有効量とは、投与後、前に投与した治療用T細胞の生体内の持続性(免疫メモリー強化)を延長させ、及び/又は対象の全生存期間を延長させ、及び/又は対象の無再発生存期間を延長させ得る量を指す。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞の刺激有効量は約103~約106個の細胞、たとえば約103、約104、約105又は約106個の細胞である。好適には低用量の前記癌関連抗原を発現させた細胞を投与し、たとえば約104個の細胞である。いくつかの実施形態では、対象の体重に基づき癌関連抗原を発現させた細胞の投与量を決定し、約103~約106個の細胞/kg体重、たとえば約103、約104、約105又は約106個の細胞/kg体重である。いくつかの実施形態では、以前患者が受けた治療用T細胞の量に応じて癌関連抗原を発現させた細胞の投与量を決定する。たとえば、投与された治療用T細胞の量と癌関連抗原を発現させた細胞の量との比は約1:1~約1000:1の間の任意の比又はより高い比、たとえば約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、約9:1、約10:1、約50:1、約100:1又は約1000:1又はそれよりも高いものである。
【0055】
第3の態様では、本発明は、対象において癌を治療するための組み合わせを提供し、それは、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞、及び前記癌関連抗原を発現させた細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記組み合わせは、本発明の第1の態様の方法により対象において癌を治療することに用いられる。いくつかの実施形態では、前記組み合わせは、治療有効量の前記治療用T細胞及び刺激有効量の前記癌関連抗原を発現させた細胞を含む。前記治療用T細胞又は癌関連抗原を発現させた細胞は本明細書で定義されたとおりである。
【0056】
第4の態様では、本発明は、本発明の第3の態様の組み合わせの、対象において癌を治療するための医薬品の製造における用途を提供する。いくつかの実施形態では、前記医薬品は、本発明の第1の態様の方法により対象において癌を治療することに用いられる。
【0057】
第5の態様では、本発明は、癌関連抗原を発現させた細胞の、対象において癌を治療するための医薬品の製造における用途を提供する。たとえば、前記医薬品は、前記癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞と組み合わせて対象において癌を治療することに用いられる。いくつかの実施形態では、ここで前記医薬品は前記癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞をさらに含む。いくつかの実施形態では、癌関連抗原を発現させた細胞及び前記癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞は独立して前記医薬品中に存在し、たとえば独立して異なる容器中に置かれる。いくつかの実施形態では、前記医薬品は、本発明の第1の態様の方法により対象において癌を治療することに用いられる。前記治療用T細胞又は癌関連抗原を発現させた細胞は本明細書で定義されたとおりである。
【0058】
第6の態様では、本発明は、癌関連抗原を発現させた細胞の、対象において癌の進行又は再発を予防するための医薬品の製造における用途を提供し、ここで前記対象は既に前記癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞を投与する治療(癌治療)を受けている。いくつかの実施形態では、前記医薬品は、刺激有効量の前記癌関連抗原を発現させた細胞を含む。いくつかの実施形態では、前記医薬品は、本発明の第2の態様の方法により対象において癌の進行又は再発を予防することに用いられる。前記治療用T細胞又は癌関連抗原を発現させた細胞は本明細書で定義されたとおりである。
【0059】
第7の態様では、本発明は、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞の、対象において癌を治療するための医薬品の製造における用途を提供し、ここで前記医薬品は、前記癌関連抗原を発現させた細胞をさらに含む。いくつかの実施形態では、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞及び癌関連抗原を発現させた細胞は独立して前記医薬品中に存在し、たとえば独立して異なる容器中に置かれる。いくつかの実施形態では、前記医薬品は、本発明の第1の態様の方法により対象において癌を治療することに用いられる。前記治療用T細胞又は癌関連抗原を発現させた細胞は本明細書で定義されたとおりである。
【0060】
第8の態様では、本発明は癌関連抗原を発現させた細胞を提供し、それは、前記癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞と組み合わせて対象において癌を治療することに用いられる。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞は、本発明の第1の態様の方法により対象において癌を治療することに用いられる。前記治療用T細胞又は癌関連抗原を発現させた細胞は本明細書で定義されたとおりである。
【0061】
第9の態様では、本発明は癌関連抗原を発現させた細胞を提供し、それは、対象において癌の進行又は再発を予防することに用いられ、ここで前記対象は、既に前記癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞を用いた治療(癌治療)を受けている。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を発現させた細胞は、本発明の第2の態様の方法により対象において癌の進行又は再発を予防することに用いられる。前記治療用T細胞又は癌関連抗原を発現させた細胞は本明細書で定義されたとおりである。
【0062】
第10の態様では、本発明は癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞を提供し、それは、前記癌関連抗原を発現させた細胞と組み合わせて対象において癌を治療することに用いられる。いくつかの実施形態では、前記癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞は、本発明の第1の態様の方法により対象において癌を治療することに用いられる。前記治療用T細胞又は癌関連抗原を発現させた細胞は本明細書で定義されたとおりである。
【0063】
第11の態様では、本発明はキットを提供し、それは、癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞及び/又は前記癌関連抗原を発現させた細胞を含み、前記キットは、本発明の方法により対象において癌を治療する、又は癌の進行又は再発を予防することに用いられる。いくつかの実施形態では、癌関連抗原を発現させた細胞及び前記癌関連抗原を特異的に標的化する治療用T細胞は、独立して前記キット中に存在し、たとえば独立して異なる容器中に置かれる。前記治療用T細胞又は癌関連抗原を発現させた細胞は本明細書で定義されたとおりである。
【0064】
本発明に記載の細胞又は医薬品中には、「医薬的に許容される賦形剤」又は「医薬的に許容される担体」をさらに含んでもよく、これらは、活性物質を対象に与え且つ対象により吸収されることに寄与する物質を指し、それは、患者の顕著な毒性や副作用を引き起こさずに本発明の医薬品組成物に含まれ得る。医薬的に許容される賦形剤の非限定的な例は、水、NaCl、生理的食塩水、乳酸化Ringer’s、通常のスクロース、通常のグルコース、接着剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、コーティング、甘味剤、香味剤、塩溶液(たとえばRinger’s溶液)、アルコール、油、ゼラチン、炭水化物たとえば乳糖、直鎖澱粉又は澱粉、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンや着色剤などを含む。このような製造物は滅菌され得るが、期待される場合、補助製剤たとえば潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、緩衝剤、着色剤及び/又は芳香物質などと混合することができ、これらの補助製剤は本発明の細胞と有害反応がない。当業者は、他の医薬品賦形剤も本発明に用いられ得ることを理解する。
【0065】
本発明の前記癌関連抗原は好適には癌特異的抗原であり、CD16、CD64、CD78、CD96、CLL1、CD116、CD117、CD71、CD45、CD71、CD123、CD138、ErbB2(HER2/neu)、癌胚性抗原(CEA)、上皮細胞接着分子(EpCAM)、表皮成長因子受容体(EGFR)、EGFR変異体III(EGFRvIII)、CD19、CD20、CD30、CD40、ジシアロガングリオシドGD2、管上皮ムチン、gp36、TAG-72、グリコスフィンゴリピド、神経膠腫関連抗原、β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、αフェトグロブリン(AFP)、レクチン反応性AFP、サイログロブリン、RAGE-1、MN-CA IX、テロメラーゼ逆転写酵素、RU1、RU2(AS)、腸内カルボキシルエステラーゼ、mut hsp70-2、M-CSF、プロスターゼ(prostase)、プロスターゼ特異的抗原(PSA)、PAP、NY-ESO-1、LAGA-1a、p53、Prostein、PSMA、生存(surviving)及びテロメラーゼ、前立腺癌腫瘍抗原-1(PCTA-1)、MAGE、ELF2M、好中球エラスターゼ、エフリンB2、CD22、インスリン成長因子(IGF1)-I、IGF-II、IGFI受容体、メソテリン、腫瘍特異的ペプチドエピトープを提示する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子、5T4、ROR1、Nkp30、NKG2D、腫瘍間質抗原、フィブロネクチンのエクストラドメインA(EDA)及びエクストラドメインB(EDB)、テネイシン-CのA1ドメイン(TnC A1)、線維芽細胞関連タンパク質(fap)、CD3、CD4、CD8、CD24、CD25、CD33、CD34、CD133、CD138、Foxp3、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、GM-CSF、サイトカイン受容体、内皮因子、BCMA(CD269、TNFRSF17)、TNFRSF17(UNIPROT Q02223)、SLAMF7(UNIPROT Q9NQ25)、GPRC5D(UNIPROT Q9NZD1)、FKBP11(UNIPROT Q9NYL4)、KAMP3、ITGA8(UNIPROT P53708)、及びFCRL5(UNIPROT Q68SN8)を含むが、これらに制限されない。1つの具体的な実施形態では、前記癌関連抗原はCD19である。
【0066】
本発明の前記癌の非限定的な例は、肺癌、卵巣癌、結腸癌、直腸癌、黒色腫、腎臓癌、膀胱癌、乳癌、肝臓癌、リンパ腫、血液悪性腫瘍、頭頸部癌、グリア腫瘍、胃癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、子宮頸癌、子宮体腫瘍及び骨肉腫を含む。本発明の方法又は医薬品組成物を用いて治療し得る他の癌の例は、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、前立腺癌、皮膚又は眼内悪性黒色腫、子宮癌、肛門癌、精巣癌、卵管癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰癌、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道癌、小腸癌、内分泌系癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟組織肉腫、尿道癌、陰茎癌、慢性又は急性白血病(急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ球性白血病、及び慢性リンパ球性白血病を含む)、小児の固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱癌、腎臓又は尿管癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)腫瘍、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベスト誘発癌を含む環境誘発癌、及び前記癌の組み合わせを含む。1つの具体的な実施形態では、前記癌はB細胞急性リンパ球白血病(B-ALL)である。
【0067】
本発明の各態様では、前記治療又は予防方法は、抗体治療、化学治療、サイトカイン治療、樹枝状細胞治療、遺伝子治療、ホルモン治療、レーザ治療及び放射治療からなる群から選ばれる1種又は複数種の癌に対する療法と組み合わせることができる。
【0068】
本発明に係る細胞又は組み合わせ又は医薬品の投与は、任意の簡便な方式で行うことができ、注射、注入、インプラント又は移植を含む。本明細書の前記細胞又は組み合わせ又は医薬品投与は、静脈内、淋巴内、皮内、腫瘍内、髓内、肌内又は腹膜内投与により実施できる。1つの実施形態では、本発明の細胞又は組み合わせ又は医薬品は好適には静脈内注射を通じて投与される。
【実施例】
【0069】
以下、実施例の方式により本発明をさらに説明するが、それにより本発明を説明する実施例の範囲に制限するわけではない。
【0070】
材料及び方法
CRISPR/Cas9媒介B-NDGマウスの産生
CRISPR/Cas9媒介B-NDGマウスはBeijing Biocytogen Co.,Ltd.により生成された。簡単に言えば、Il2rg遺伝子座の最初及び最後のエクソンの側部に位置する標的領域のsgRNA標的化に関する。各標的部位に対して、CRISPR設計ツール(http://crispr.mit.edu/)により4種類の候補sgRNAを決定し、且つUCAキット(北京Biocytogen)を用いて標的活性をスクリーニングした。2種のsgRNAを選択してマウスの受精卵中に注射した。生体外転写されたCas9 mRNAとsgRNAを異なる濃度で混合し、且つNOD-scidマウスの受精卵中に同時に注射した。注射後、生存した受精卵をKM偽妊娠雌性の卵管に移した。F0初代修飾マウスにおいて、Il2rg欠損ヘテロ接合及びホモ接合マウス(B-NDGマウス)をさらに産生した。すべてのマウスはいずれも特定の病原体フリーの施設に保持されている。
【0071】
細胞系
293-T細胞(ATCC、CRL-3216)を、10%FBS及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンが補充されたDMEM(Hyclone、Logan、Utah、USA)中に培養した。Raji(ATCC、CCL-86)、Raji-Fluc(軍事医学科学院、北京;エンコードされたフルオレセイン及びプロマイシンレンチウイルスベクターをトランスフェクションすることによりRaji細胞から誘導する)、CD19-K562及びK562細胞(Genomeditech、上海)を、10%FBS及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシンが補充されたRPMI1640中に培養した。細胞を40Gyコバルト照射に晒すことにより、照射されたRaji-Fluc細胞を得た。すべての培地及び抗生物質はいずれもGibco Life Technologies(Carlsbad、CA、USA)から購入する。
【0072】
レンチウイルスに基づくベクターの構築、製造及び滴定
抗CD19 CARは、CD19特異的FMC63 mAbのscFv、CD8のヒンジと膜貫通領域、4-1BB共刺激ドメイン、及びTCR複合体の細胞内CD3ζ鎖を含む。抗CD19 CAR遺伝子はレンチウイルスベクターpPVLV2(Pharosvaccine Inc.、Gyeonggi、Republic of Korea)中にクローンされた。該ベクターはCAR-T-19細胞の産生に用いられる。
【0073】
CD19コード配列を用いて抗CD19 CARコード配列を置換することにより、aT19レンチウイルス発現構築体を作製した。該ベクターはaT19細胞の産生に用いられる。
【0074】
前記抗CD19 CAR又はCD19を発現させるレンチウイルスは以下のように生成される。10%FBS含有DMEM中に成長している293T細胞を、レンチウイルスベクタープラスミドとpMDLg/pRRE、pRSV-Rev及びpMD.Gパッケージングプラスミドを用いて、PEI(Polysciences Inc.,Warrington、PA、USA)トランスフェクション試薬により共トランスフェクションした。トランスフェクション24時間後、培地を2%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム及び2mM L-グルタミンが補充されたDMEMに交換した。培地を交換してから24時間後、ウイルス上清液を収集し、限外濾過して濃縮し、且つ293T細胞を用いて滴定した。機能的形質導入単位/mLを決定するために、連続的に希釈した濃縮レンチウイルス製造物を用いて293T細胞を形質導入した。72時間後、細胞を収集して且つフローサイトメトリー分析を行った。
【0075】
CAR-T-19細胞及びaT19細胞の産生
健康なボランティアから収集した血液から新鮮な末梢血単核細胞(PBMC)を得た。直ちにPBMCを、90%ヒトAB血清+10%ジメチルスルホキシドを含有する培地中に使用し、又は前記培地中に冷凍保存して将来の使用に供した。PBMCを、抗CD3及び抗CD28モノクローナル抗体が被覆された常磁性ビーズ(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)を用いて、3:1の比率で24時間刺激した。T細胞活性化後、細胞を1×106/mLでIMSF100培地中に重懸濁させ、8μg/mlポリブレン(SIGMA、セントルイス、MO、USA)の存在下、レンチウイルスベクターと混合した。多重感染度(MOI)は0.5~2であり、且つ12ウェルプレート中に移した。プレートを、環境温度下で、水平ローター遠心分離機を用いて1200gで2時間遠心分離し、続いて37℃、5%CO2のインキュベータ中に移した。24時間インキュベートした後、形質導入された細胞を収集し、且つIMSF100培地で洗浄し、次に細胞を、500IU/mL IL-2(BMI、韓国)が補充された培地中にインキュベートした。その後、2又は3日ごとに培地及びIL-2(300IU/mL)を交換し、マウスに注射するまで培養物を37℃/5%CO2に維持した。ここでCAR-T-19細胞は抗CD19 CARを発現させたT細胞である。aT19細胞はCD19を発現させたT細胞である。
【0076】
フローサイトメトリー
マウス中のT、B及びNK細胞とCAR-T細胞を検出するために、Becton Dickinson(BD)蛍光活性化セルソーティング(FACS)標準を使用して、メーカーのプロトコルに従って多色フローサイトメトリー分析を行った。右心室から末梢血を収集した。BD細胞ストレーナーにより脾臓細胞を収集して濾過した。血液中の赤血球と脾臓細胞を分解溶液で枯渇した。PerCP-CD3、FITC-CD4、PE-CD8、FITC-CD19及びAPC-CD49を含む抗体を用いて一重染色又は二重染色を行うことで白血球を検出した。すべての抗体はBiolegendから購入する。
【0077】
フローサイトメトリーにより免疫表現型分析を行った。以下の特異的抗体で細胞を染色することによってCAR遺伝子形質導入の効能を監視した。CD45(PerCP-Vio770)、CD3(FITC)、CD4(Vio Green)、CD16(APC)、CD56(APC)、CD19(APC-Vio770)、CD14(Vio Blue;Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)。形質導入されたT細胞を、ビオチン-SP(ロングスペーサー)AffiniPure F(ab’)断片ヤギ抗マウスIgG、F(ab’)2断片特異的(Jackson ImmunoResearch Lab)でマークし、次にストレプタビジン-PE(BD Biosciences)又はCARTEST-19(CytoCares Inc.,中国上海)でマークし、次にCytoFLEXフローサイトメトリーにより検出した。CytExpert(2.0)ソフトウェアを用いてデータを分析した。
【0078】
マウスから得た白血球及び脾臓細胞を、FITC-CD45、PE-CAR、FITC-CD19、及びAPC-CD45RO(BD、NJ)で染色し、且つFACSCanto IIフローサイトメトリー(BD)中に検査した。脾臓細胞を収集し、且つBD細胞ストレーナーにより濾過した。分解溶液(BD)中に5分間インキュベートすることにより、血液及び脾臓細胞製剤中の赤血球を枯渇させた。
【0079】
動物実験
本研究におけるマウスに対しては、実験動物管理評価認証協会により制定されたガイドラインに基づき飼育及び操作を行った。研究はNIFDC動物実験委員会による承認を受けた。4週齢の雌BALB/c、C57BL/6、NOD-scid、及びB-NDGマウスはNIFDC実験動物資源研究所(中国北京)から得た。D0に、マウスに尾静脈注射を介して5×105個のRaji-Fluc細胞を移植し、続いて、5日(D5)目又は6日(D6)目に2×107個のCAR-T-19細胞をインプラントした。CAR-Tメモリー実験において、D10又はD11に異なる用量のRaji-Fluc細胞、照射されたRaji-Fluc細胞又はaT19細胞を注射した。指定の時点にすべてのマウスの生物発光シグナルを観察した。所定の時点に血液サンプルを取得し、蛍光活性化セルソーティング、及び定量的リアルタイムPCR(qPCR)分析を行った。
【0080】
生物発光イメージング分析
簡単に言えば、IVIS-Lumina IIイメージングシステム(PerkinElmer、Baltimore、MD)を使用してマウスの生物発光イメージングを得た。ペントバルビタールナトリウム(75mg/kg体重)を腹腔内注射することでマウスを麻酔した。次に10分間後、それにD-フルオレセイン(75mg/kg体重;PE)を腹腔内注射した。Living Imageソフトウェア(Caliper Life Sciences)を用いて画像を分析し、且つデータを総フラックス(光子/s)として示した。生じた最大生物発光値が1×106フラックスを超え、且つ生物発光面積が次の時点に1×106フラックス未満ではない場合、該時点を腫瘍再発時間として記録した。
【0081】
CAR-T-19細胞の細胞毒性
フローサイトメトリーにより、CAR-T-19細胞のK562、CD19-K562、aT19、及びRaji-Fluc細胞死滅能力を測定した。簡単に言えば、標的細胞(K562、CD19-K562、Raji-Fluc又はaT19)を遠心分離管中に移し、且つCFSEで染色した。次に、標的細胞:CAR-T-19細胞の比率を調整し、且つそれぞれ異なる比で細胞(K562又はCD19-K562:CAR-T-19=1:1、1:3又は1:6;aT19又はRaji-Fluc:CAR-T-19=1:0.3、1:1又は1:3)を接種した。形質導入されていないT細胞をNC(陰性対照)として記録した。20~24時間インキュベートした後、フローサイトメトリーによりCFSE+7-AAD+細胞の百分率を分析した。
【0082】
CAR-T細胞の定量的検出
qPCRにより、マウス末梢血及び脾臓中から分離したCAR-T-19細胞中のCAR遺伝子の存在を検出した。簡単に言えば、QIAamp DNA Mini Kit(Qiagen、GER)でDNAを抽出し、且つIMPLEN N50ウルトラマイクロ紫外線分光光度計(IMPLEN、N80TOUCH)中で定量化した。使用が必要になるまで抽出したDNAを-20℃に保存した。4-1BBプライマー(Invitrogen)及びプローブ(Thermo Fisher Scientific)を用いてDNA(100ng)にPCR増幅を行うことで、CAR遺伝子の発現(CD19 4-1BB Fプライマー、5’-TGCCGATTTCCAGAAGAAGAAGAAG-3’;CD19 4-1BB Rプライマー、5’-GCGCTCCTGCTGAACTTC-3’;CD19 4-1BB MGBプローブ、5’-ACTCTCAGTTCACATCCTC-3’))を検出した。
【0083】
StepOnePlus蛍光リアルタイム定量的PCR装置(Thermo Fisher)を使用してPCRを行った。Step One Software v2.3を用いて結果を分析した。
【0084】
統計
すべてのグラフはいずれもGraphPad Prism 6.0ソフトウェアを使用して生成され、すべての統計学的比較はいずれもノンパラメトリック一元配置分散分析又はStudent’t検定を用いて行われ、P値<0.05は、統計学的有意(*)であり、P<0.01(**)は非常に有意であった。
【0085】
実施例1、Raji-B-NDGマウスモデルの作製及びキャラクタリゼーション
非活性化Il2rgを有する非肥満糖尿病重症複合免疫不全(NOD-scid)マウスには、成熟T細胞、B細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞が欠損し、且つサイトカインシグナル伝達が欠損しており、その結果、複数種の癌タイプがよりよくインプラントできる。本実施例では、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて、NOD-scidマウスからIl2rg遺伝子を欠失させ、それによりB-NDGマウス(
図1A)を製造した。B-NDGマウスが生存、繁殖することができ、且ついずれの顕著な体の異常も示されないことが観察された。NOD-scidマウスに比べて、FACS分析を行ったところ、B-NDGマウスの脾臓及び末梢血に少量のCD19+B細胞、CD4+、及びCD8+T細胞(
図1B)があることを示した。NOD-scidマウスは高百分率のCD49b+NK細胞(脾臓20.90%、末梢血24.10%)を有し、一方、B-NDGマウスは機能的NK細胞(脾臓1.45%、末梢血5.95%)を有さなかった。したがって、ゲノム編集により生じたB-NDGマウスは表現型に関してはNSGマウスと類似した。
【0086】
素早く成長している非ホジキンリンパ腫細胞系Raji細胞を遺伝的エンジニアリングによりホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を安定的に発現させるようにして、生物発光イメージング(Raji-Fluc)に用いた。フローサイトメトリーによりRaji-Fluc細胞表面のCD19発光量を検出した。結果から示すように、CD19はRaji-Fluc細胞上で高発現されている(
図1G)。生体外でFlucの対応する基質を加えた後、Flucの発光強度はRaji-Fluc細胞の数量と正に相関している(R
2=0.99、
図1G)。
【0087】
得たB-NDGマウスモデルの能力をさらに研究するために、6週齢の5種類の異なるマウス系統(正常対照としてのCB57/Lマウス、部分免疫不全群としてのヌードマウスとrag2-/-マウス、NOD-scidとB-NDGマウスを含む)に、尾静脈注射によりRaji-Fluc細胞を移植した。B-NDGマウスにおいて、インプラント後(PI)の4日(D4)目に生物発光シグナルが検出され、16日後、1000倍(
図1C及びD)増加した。フローサイトメトリー分析から明らかなように、CD19+Raji細胞はB-NDGマウスの末梢血中にバーストし、生物発光シグナルとの相関性はR
2=0.90(
図1E)であった。しかしながら、CB57/L、rag2-/-、ヌードマウス、ひいてはNOD-scidマウスにおいては、Raji-Fluc細胞が検出できなかった。すべてのこれら4種類のマウスはPI後のD30に生存し、一方、7匹のB-NDGマウスはPI後のD18に死亡し、また3匹はD19に死亡した(
図1C、D及びF)。これらのデータは、B-NDGマウス中においてRaji細胞のインプラント効果がはるかに良好であり、且つ治療剤たとえばCAR-T細胞をテストするモデルとして使用できることを証明した。
【0088】
実施例2、CD19標的CAR-T細胞の生体外及び生体内効率
【0089】
T細胞活性化後、ボランティアから分離したPBMCを、第二世代CAR(
図2A)で形質導入した。結果から明らかなように、CD19 CAR-T細胞の割合は培養時間の延長に伴い増加し、D12に20%に達し、且つ細胞の総数は感染後のD10に1×10
8よりも大きかった(
図2B)。CD19+Raji細胞と生体外で共培養する場合、12日間培養したCD19 CAR-T細胞は、エフェクター細胞/標的細胞の比が約3:1である場合、Raji細胞に対する50%以上の死滅作用を示した。CD19 CAR-T細胞の生体内抗腫瘍作用をさらに確認するために、B-NDGマウスに尾静脈を介して5×10
5Raji-Fluc細胞を注射し、続いて、5日後2×10
7のCD19 CAR-T細胞をインプラントした。CD19 CAR-Tで4日間治療した後(D9)、これらの治療されたマウスの生物発光シグナルは、腫瘍を接種していないマウス(
図3A)に近くなり、それは、CD19 CAR-T細胞が生体内腫瘍クリアランスの媒介に成功したことを表す。
【0090】
実施例3、Raji腫瘍の再発ソース
CAR-T細胞の効果が良好であるものの、B-NDGマウスは最終的に腫瘍により死亡した。Raji細胞の再発ソースを見つけるために、マウスのすべての主要な器官の生物発光をテストした。結果から明らかなように、Raji細胞は、脾臓、心臓や皮膚においてCD19 CAR-T細胞により明らかに除去された。たとえば、脾臓には、CAR-T細胞処理後生物発光が1000倍減少した(
図3A)。しかしながら、CD19 CAR-Tは、他の器官、特に肝臓及び脳でそれほど有効ではなかった(
図3A)。これらの器官中に隠されたCAR-Tにより効果的に除去できない残留Raji細胞は腫瘍再発の原因である可能性がある。
【0091】
実施例4、低用量腫瘍生細胞の刺激によるCAR T細胞の免疫メモリー発生への寄与
CAR-T細胞が腫瘍の微環境に応じて変化し、その結果、それがRaji細胞を認識して死滅できず、疾患の再発を引き起こすか否かをテストするために、PI後のD10に生物発光が検出されなかった場合、CD19 CAR-T処理後のマウス中に異なる量のRaji-Fluc細胞(A1:5×10
4、A2:5×10
5、A3:5×10
6)に改めてインプラントした。Raji-Fluc細胞を再度接種していないマウスを対照(SNT)として用いた。SNT群には、すべてのマウスが死亡するまで生物発光が連続的に観察できた。再インプラントしてから1日後、すべてのマウスには疾患が素早く発症した。意外なことに、再インプラントしてから9日後、ほぼすべてのRaji細胞が除去された(
図3A)。再インプラント群の生存はSNT群よりも好ましい(P<0.05、
図3A及びB)。A1群の3匹のマウスは200日を超えて生存した。ある時点にマウスの最大生物発光値が1×10
6フラックスを超え、且つ次の時点に生物発光面積が1×10
6フラックス未満ではない場合、該時点を腫瘍再発時間として記録した。他の各群に比べて、低用量Raji-Fluc細胞を再度接種することにより無再発時間を延長できた(
図3A及びC)。次に、異なる時点で異なる群の平均生物発光強度を分析した。低用量再インプラント群のシグナルは空白対照群のシグナルに近く(
図3D)、一方、他の群のシグナルは異なる程度で増加しており、このことから明らかなように、再発はCARの能力不足ではなく、その不良な持続性によるものであり、且つ低用量腫瘍細胞の抗原刺激はCAR-T細胞の免疫メモリーの発生を促進した。
【0092】
実施例5、照射後死亡した腫瘍細胞の再インプラントが作用できない
臨床的には腫瘍生細胞の注射は実現できないことであり、したがって、照射後死亡した腫瘍細胞がCAR-T細胞の免疫メモリーを刺激できるか否かをテストした。現在、本分野ではCAR-T細胞を複数回注入することは、その持続性不足を解決するための主要な戦略であり、CAR-T治療を繰り返したマウスモデルは設計された。
図4に示すように、5日(D5)目にCAR-T細胞治療を行った後、Raji-B-NDGマウスに、D10に異なる用量の照射されたRaji-Fluc細胞(rRaji-Fluc、A1:5×10
4、A2:5×10
5、A3:5×10
6)を注射した。同一用量のrRaji-Flucを接種した3群のB-NDGマウスを照射済み細胞対照群(PA1/PA2/PA3)とした。rRaji-FLucインプラント無しマウスを単回処理群(SNT)とした。2重処理群(DNT)のマウスに、D10に2×10
7個のCAR-T細胞を注射した。SNT群のすべてのマウスが死亡するまでマウスに生物発光シグナルが観察できた。SNT群に比べて、rRaji-Fluc細胞の再インプラントは、マウスの全生存期間及び無再発生存期間を延長できなかった(
図4B及びC)。SNT群及びDNT群には有意差がなく、これは、2重処理が無効であることを示した。A1/A2/A3/SNT群のマウスの末梢血中のCAR-T細胞の数量は、類似した時間にピークに達した(
図4D)。CAR-T細胞を2回注射するため、DNT群のピーク時間は他の群よりも遅い。A1群のCAR-T細胞の減少速度はA2/A3/SNT群よりも低く、このことから明らかなように、低用量rRaji-Fluc細胞による刺激はCAR-T細胞の維持を促進する傾向がある。
【0093】
実施例6、CD19を発現させたT細胞(aT19)を用いた再刺激
CAR遺伝子構築体は、CD19特異的FMC63 mAbに由来するscFv、CD8のヒンジと膜貫通領域、並びに4-1BB細胞質ドメイン、及びTCR複合体の細胞内CD3ζ鎖を含む(
図5A)。pEF1αはCAR遺伝子プロモータである。ヒトCD19を用いてCAR導入遺伝子を置換してaT19構築体を生成した(
図5B)。CAR-19又はCD19構築体(aT19)を用いて健康なボランティアから得たPBMCから分離したT細胞を形質導入した。表1は、実験中に使用されているCAR-T-19、生Raji-Fluc、照射されたRaji-Fluc、及びaT19細胞の表現型及び数量を示す。次に、細胞毒性測定を行うことで、CAR-T-19細胞の死滅能力を検査した。CD19+Raji又はaT19細胞と生体外で共培養した後、CAR-T-19細胞は、>3:1のエフェクター/標的比で、50%超えのRaji-Fluc細胞又はaT19を死滅させるのに対して、T細胞を対照K562細胞と共培養した場合、細胞毒性作用がほぼ観察されなかった(
図5C)。
【0094】
表1.実験中に使用されている生Raji-Fluc、照射されたRaji-Fluc、及びaT19細胞の数量、及びCAR-T-19の表現型及び数量
【0095】
【0096】
CAR-T-19治療後、生Raji-Fluc細胞を投与すると、Raji-B-NDGマウスの生存を延長できる
陽性群及びNC群中のマウスは、単独で腫瘍細胞を受ける、又はPBSだけを受け、且つそれぞれP群又はN群(n=3/群)として記録された。NT群中のマウスは、刺激がない場合、CAR-T-19細胞(n=5/群)を受けた。A群は、免疫メモリーテスト群として指定され、該群中のマウスは、3種類の異なる用量の再刺激細胞のうちの1種(A1群、5×10
4細胞;A2群、1.5×10
5細胞;及びA3群、5×10
5細胞)(n=5/群)を受けた。PA1、2、及び3群は、それぞれ各群Aの対照群(n=3/群)として用いられた。これらの群は表2に記載されている。
図6Aには、腫瘍細胞、CAR-T細胞、及び再刺激細胞の使用の時間ラインが示されている。
【0097】
表2.再刺激実験中に使用されているRaji-Fluc細胞の数量
【0098】
【0099】
注射後(PI)のD4に得た生体内イメージング結果から示すように、Raji-Fluc細胞を受けたマウスの総フラックス(>2.2×10
6)は、Raji-Fluc細胞を受けていないマウス(<1.6×10
6;NC群)よりもはるかに高く、このことから明らかなように、マウスモデルの構築に成功した(
図6B)。PI後のD5に、マウスは2×10
7個のCAR-T-19細胞を受けた(又は受けなかった)。D9でのイメージングから、CAR-T-19細胞を受けたすべてのマウス(P群中のものを除く)の総フラックスが有意に低減したことを示し(
図6B)、このことから明らかなように、CAR-T-19細胞は、Raji-Fluc細胞を効果的に死滅させた。
【0100】
次に、Raji-Fluc細胞が残存するCAR-T-19細胞の成長を刺激し、メモリー細胞を産生し、且つCAR-T-19治療の効果を延長させるか否かを研究するために、マウスは、PI後のD10に次のRaji-Fluc細胞注射を受けた。
図6Bに示すように、P群中のすべてのマウスはいずれもPI後のD18~23に死亡した。PA1/2/3群中のすべてのマウスは、それぞれD31~33/D27~31/D28に死亡した。PA3群中のマウスは、P群のマウスと同じ数量の腫瘍細胞を受け、したがって生存時間がD20~24に近かった。N群中の1匹のマウスは、不明な原因でD71に死亡し、残りの2匹は200日以上生存した。NT群中の5匹のマウスはすべてD82に死亡した。A1群のマウスに対しては、蛍光シグナルはD11からD24まで徐々に低下し、且つD34にはRaji-Fluc細胞(
図6B)が検出されず、該群中の3匹のマウスはD200に腫瘍がなかった。A2群では、3匹のマウスはD96に死亡し、一方、残りの2匹のマウスは、腫瘍がないまま、D100まで生存した(
図6B)。A3群では、1匹のマウスは、D40に不明な原因で死亡し、3匹は腫瘍再発によりD56、D80、及びD86に死亡し、且つ残りの1匹はD96に死亡した。要するに、これらの結果から明らかなように、腫瘍細胞を用いて再刺激されたマウスの生存時間は、腫瘍細胞を用いて再刺激されていないマウスよりも長かった(
図6C、P<0.05)。また、低用量のRaji-Fluc細胞を改めて接種することは、無再発生存率の有意な増加をもたらした(
図6D)。最後に、異なる時点に異なる群の平均生物発光強度を検査した。低用量再刺激群で生じたシグナルが空白対照群で生じたシグナルに非常に類似し(
図6B)、一方、他の群で生じたシグナルは異なる程度で増加し、このことから明らかなように、低用量腫瘍細胞の再刺激によりCAR-T-19細胞集団を増幅し、且つRaji-Fluc細胞を除去した。
【0101】
CAR-T-19細胞を用い、続いて照射されたRaji-Fluc細胞を用いて、Raji-B-NDGマウスを連続的に治療することは、生存期間を延長できない
患者に腫瘍生細胞を注射することは実現できない。したがって、次に、照射されて死亡した腫瘍細胞が生細胞と類似した方式でCAR-T-19細胞の効能を高めるか否かを研究する。この実験には、生細胞実験と同じマウス群が使用された。投与された細胞の群及び数量を表3中に示した。時間ラインを
図7Aに示した。前記のとおり、PIの異なる時間に生物発光イメージングを行った。照射された死亡Raji-Fluc細胞を用いてCAR-T-19細胞を再刺激することは、全生存率及び無再発生存率を増加できなかったことを見出した(
図7B及びC)。
【0102】
表3.再刺激用の照射されたRaji-Fluc細胞の数量
【0103】
【0104】
また、D0/D5/D10/D15/D20にマウスの内眼角から得た血液のCARコピー数が測定された(CAR+細胞数を代表する)。
図7Eに示すように、A1、A2、A3、及びNT群では、CAR-T-19細胞の数量は同時にピークに達した。また、D10に照射された腫瘍細胞を用いて再刺激した後、CARコピー数は増加しなかった(
図7E)。これらの結果から明らかなように、照射された死亡腫瘍細胞を用いて再刺激することは、残存するCAR-T-19細胞の成長を増加すること、又はメモリーCAR-T-19細胞の産生を促進することがなかった。
【0105】
CAR-T-19細胞でマウスを処理し、次にaT19細胞で再刺激すると、CAR+細胞の数量及びCAR+メモリー細胞の百分率を増加し、且つ生存期間を延長させる
Raji-Fluc細胞は高増殖能力を有する腫瘍細胞である。したがって、患者が刺激用量のRaji細胞を受ければ、これらの細胞が腫瘍を形成するリスクが存在する。明らかなように、これは受け入れられない。したがって、Raji-Fluc細胞の代わりにヒトCD19遺伝子を持ったT細胞(aT19細胞)を用いてCAR-T-19細胞を再刺激した。注射時間及び使用された細胞数を表4に示した。陽性/NC群(P及びN群)中のマウスは、それぞれ腫瘍細胞を受けた、又はPBSだけを受けた。NT群中のマウスは、単回用量のCAR-T-19細胞を受け、次の用量の刺激細胞がなかった。A1群は、Raji-Fluc細胞(n=4)で再刺激され、一方、aT19群はaT19細胞(n=6)で再刺激された(
図8A)。また、D10、D20、及びD30に内眼角から採血した(
図8D)。結果により示すように、aT19群のマウスの生存時間は、NT群のマウスよりも有意に長く、aT19群中の3匹のマウスはD160まで生存した(
図8C)。
【0106】
【0107】
延長させた生存期間及び遅延させた腫瘍再発がCAR-T-19細胞の増殖、及び次の抗原陽性細胞の再刺激後にメモリーCAR-T-19細胞が発生することによることを明解するために、qPCRを使用してCARコピー数を測定し、且つフローサイトメトリーを使用してD10、D20、及びD30の末梢血及び脾臓中のCAR+とCD45RO+細胞の百分率を測定した。QPCRは、NT群のマウスの血液中のCARコピー数が経時的に低下し(1175コピーから295コピー)、一方、aT19群のマウスの血液中のCARコピー数が経時的に増加し(1224コピーから6824コピー)、特にD10後であることを示した(
図8D)。期待されたように、NT群のマウスの血液中のCAR+細胞の百分率は低減し(3.28%から0.29%に低減)、一方、aT19群のマウスの血液中のCAR+細胞の百分率は増加した(9.6%から13.0%に増加)(データ未表示)。CAR+細胞に加え、CD45RO+(メモリー)細胞の百分率も測定された。
図8Fに示すように、NT群の血液中のCAR+CD45RO+細胞の百分率は0.44%(D20)からわずかに低下し、0.37%(D30)となり、一方、aT19群の血液中の百分率は0.34%(D20)から0.86%(D30)に上昇し、これは、aT19細胞による再刺激後、メモリーCAR-T-19細胞が発生することを確認した。また、マウス中のCAR+細胞、CD45RO+細胞、及び総フラックス(腫瘍負荷)の間の関係を検査した。結果から示すように、総フラックスは2種のタイプの細胞の数量と負の相関を示し、このことから明らかなように、CARコピー数の検出は、残存する腫瘍負荷の推定に用いられ得る。
【0108】
検討
過去10年間、CAR-T細胞療法は発展を遂げており、しかしながら、多くの障害はまだ克服しなければならない。これらのうち、CAR-T細胞の生体内の効能の延長及びCAR-T治療の副作用の減少は最も重要である。CAR-T細胞の効能は、細胞外認識19,20、CAR媒介細胞内シグナル伝達21の最適化(CAR+細胞の割合及びタイプを調整することにより実現)22及び標的薬23の併用などの戦略により、延長させることができる。CAR-T細胞の用量を調整し、且つ免疫抑制薬を併用することにより、CAR-T治療に関連する毒性及び副作用を低減できる24。ワクチンに対しては類似した方法が取られており、これらの方法は最適化し続けており、それにより、より長い時間内で有効な保護を提供し、それと同時に有害反応を減らす25。最もよく見られたワクチン接種プロトコルは、複数回の免疫、又はひいては免疫応答を強化するために異なる免疫原を使用することに関する。HIVワクチン戦略を例として、一次免疫及びブースター免疫は、それぞれウイルス抗原及び核酸を含み、それぞれ抗体保護の継続時間を増加し、免疫活性化を向上させる26。しかしながら、CAR-T細胞療法に対しては、複数回の接種は、コストや毒性を増加するものの、効能を低減させる。
【0109】
本願では、驚くべきには、CAR-T細胞投与後、腫瘍抗原を発現させた細胞(たとえばaT19細胞)を用いて再刺激を行うことにより、細胞の作用時間を増加しその副作用を減らすことを通じてCAR-T治療(たとえばCAR-T-19治療)を最適化できることが見出された。
【0110】
腫瘍抗原の喪失又は短い有効性は、腫瘍がCAR-T細胞治療後に再発する傾向があることを意味する。腫瘍抗原の喪失はよく見られた免疫回避戦略であり、これはALLではよく見られる。潜在的なメカニズムは、表現型の系譜及び選択的スプライシングの切り替えに関する27。また、CAR-T細胞の数量は、腫瘍を長時間制御するのに必要な最も低いレベルに維持されなければならない。CAR-T細胞の数量を維持しにくいことを引き起こすことには多数の複雑な原因があり、これらは、CARに対する免疫反応、細胞老化により誘導された増殖能力の喪失及び活性化により誘導された細胞死亡を含む。CARを産生するための構造及び条件を最適化させることによって、CARに対する免疫応答を減少させることができる。T細胞の活性化及び増殖には連続的な免疫刺激が必要であるため、腫瘍抗原を持った細胞はCAR-T細胞増殖を誘導する最適な刺激シグナルとなる。本願では、D5にマウスにCAR-T細胞を注射し、且つ、次にそれらを大用量の腫瘍(抗原陽性)細胞に晒す。CAR-T細胞は迅速に増殖し、且つ腫瘍細胞をD9まで死滅し、このとき、血液中には極めて少ない腫瘍細胞が検出できる。しかしながら、それらが抗原媒介刺激に晒されない場合、T細胞の増殖能力は低下する。したがって、CAR-T細胞の数量は経時的に低下し、且つ、最終的には残存する癌細胞の増殖を抑制できないことが見出された。SNT群のマウス血液中のCAR+細胞の百分率はD20からD30に徐々に低下する。しかしながら、癌細胞がほぼ完全に除去された後第2の「抗原」(すなわちaT19細胞)を注射すると、CAR-T細胞が再刺激され、且つその増殖能力を維持する。また、本願の結果から明らかなように、D30にはCAR+細胞の数量はD20よりも有意に高いだけでなく、CD45RO+メモリー細胞の百分率はD20よりも有意に高く、これにより、CAR-T媒介免疫力がさらに強化される。したがって、aT19細胞は、ブースター免疫のような役割を果たす。連続的な治療を受けたマウスの無再発生存期間及び全生存期間は、単一治療を受けたマウス(CAR-T細胞単独で使用)よりも良好であり、このことから明らかなように、連続免疫は、CAR-T細胞の臨床環境での有効時間をより安全で、より効果的に延長させる戦略であり得る。
【0111】
CAR-T治療は、重症例のサイトカイン放出症候群(CRS;通常、「サイトカインストーム」と呼称される)を引き起こす恐れがあり、これは生命を脅かす可能性がある3,28,29,30。これは、オフターゲット効果に加えて、CAR-T療法の最も深刻な副作用の1つである。CAR-T細胞は、腫瘍細胞により活性化することができ、且つ免疫系はまたCAR-T細胞が放出したサイトカインにより活性化することができる。大量の炎症性因子が放出されると、これは、熱が出ること、低血圧、呼吸困難、多臓器機能障害、神経調節障害や他の症状を引き起こす可能性がある28。CRSは、通常、CAR-T注射後の最初の2週間内で発生し、ただし、潜在的メカニズムがまた不明である。抗サイトカインモノクローナル抗体又はグルココルチコイドを用いた早期干渉は、CRSのリスクを低減させることができる31。、CRSの重症度が接種したCAR-T細胞数及び腫瘍負荷と正の相関を持つことを示す証拠がある4,22,32,33,34。ここで、CAR-T細胞を用い、次にaT19細胞を用いた連続的な「免疫」により、マウスにおいて連続的な免疫応答が発生する。これは、毎回の接種に必要なCAR-T細胞の数量、及び経時的に必要な接種回数を減らすことができ、それにより、CRSの可能性及び/又は深刻性を低減させる。
【0112】
本願のデータから明らかなように、aT19細胞は臨床的に実用性を有する。これは、これらの細胞がCAR-T-19細胞と同一のソースからのものであるためである。臨床的には、自家PBMCは、これらの細胞の産生に用いることができ、これは、移植片対宿主病を効果的に回避できる。また、CAR-T細胞は、他の免疫シグナルではなく、CD19分子によりaT19細胞を認識し、それにより特異性を確保する。最後に、CAR抗体のFab断片の代わりにCD19遺伝子を用いてaT19形質導入断片を構築し、これは、生体内の正常組織中の任意のオフターゲット効果を解消する。たとえば、CAR-T-Her2は、肺粘膜上皮を攻撃して肺水腫を引き起こすことがあり、これは、深刻な場合、致命的であり得る35。したがって、臨床的な観点から見ると、aT19細胞を用いた連続的な「免疫」は実現できるべきである。本願では、D9に腫瘍が検出されなかったため、D10に、マウスにaT19細胞が注射された。このとき、標的細胞の欠損は、CAR-T細胞が宿主組織を攻撃することを引き起こすことがある。しかしながら、CAR-T-19細胞の増殖率は抗原特異的刺激の喪失により低減する可能性があり、一方、宿主を非特異的に攻撃するT細胞は連続的に増殖し得る。したがって、D10にaT19細胞を注射することによりCAR-T-19細胞が維持される。
【0113】
臨床的には、CAR-T細胞の数量に応じてaT19投与時間を調整することができる。ここで、qPCRにより血液中のCARコピー数を測定することでCAR-T細胞の数量が推定される。結果はフローサイトメトリーにより提供される結果と一致する。また、血液サンプル中のCAR+細胞の数量と蛍光値(総フラックス)(それは、生体内に腫瘍が残存することを示す)とには負の相関が存在する。しかしながら、人体中の循環系がマウスよりも長く且つ複雑であり、且つ臨床的に与えられるCAR-Tの用量がマウスに与えられる用量よりもはるかに大きい。したがって、CAR-T細胞治療後の1週間内で、人体内の癌細胞が完全に除去できず、且つ血液中のCARコピー数が増加し続ける可能性がある。続いて、CAR+コピーの数量が低下し始めるときに、CAR-T細胞の数量は徐々に低下し、且つそれらは新しく生成したT細胞により置換される。このとき、aT19細胞で免疫を行うことが考えられる。CAR+コピー数を連続的に監視し、次にaT19細胞をタイムリーに接種することは、このような場合、臨床的にaT19細胞を応用することの実現可能な方法であり得る。
【0114】
要するに、CAR-T細胞を用いて処理されたマウスにRaji-Fluc細胞、照射されたRaji-Fluc細胞又はaT19細胞が注射された。結果により示されるように、生Raji-Fluc細胞及びaT19細胞を用いてCAR-T細胞を再刺激することは、無再発生存率及び全生存率を延長させ、一方、照射された(死亡)Raji-Fluc細胞を用いて再刺激することは、無再発生存率及び全生存率を延長させなかった。aT19の連続的な治療は、血液中のCAR+及びCD45RO+細胞の百分率を増加し、メモリーCAR-T細胞の産生を証明した。
’
【配列表】