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特許7467423亜鉛結合部分を有するホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤との併用療法
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  • 特許-亜鉛結合部分を有するホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤との併用療法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】亜鉛結合部分を有するホスホイノシチド3-キナーゼ阻害剤との併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/5377 20060101AFI20240408BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61K31/5377
A61P35/00
A61P1/00
A61P43/00 121
A61K39/395 U
A61K9/20
A61K9/48
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021513198
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 US2019050373
(87)【国際公開番号】W WO2020055840
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-08
(31)【優先権主張番号】62/729,648
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501188889
【氏名又は名称】キュリス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ジン
(72)【発明者】
【氏名】パターソン、トロイ、デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ティエン、ズー
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/223422(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/073754(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0133223(US,A1)
【文献】特表2012-514650(JP,A)
【文献】特表2014-525918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 39/00
A61K 9/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

によって表される化合物、またはその医薬として許容され得る塩を含む、結腸癌を処置するための医薬組成物であって、
抗PD-1モノクロナール抗体と組み合わせて使用される、医薬組成物
【請求項2】
前記抗PD-1モノクロナール抗体が、ペンブロリズマブ、ニボルマブ、またはピジリズマブである、請求項に記載の医薬組成物
【請求項3】
前記抗PD-1モノクロナール抗体が、ペンブロリズマブまたはニボルマブである、請求項に記載の医薬組成物
【請求項4】
前記医薬として許容され得る塩を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記医薬として許容され得る塩は、ベンゼンスルホン酸塩またはメタンスルホン酸塩である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
錠剤またはカプセル剤の形態の、請求項1~5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年9月11日出願の米国仮出願第62/729,648号の利益を主張する。先の出願の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
癌の処置のための治療投与計画は、しばしば、2つ以上の薬剤との併用療法を包含する。特に、標的療法を組み合わせて、さまざまな種類の癌をより有効に処置し、療法に耐性のある癌細胞の発生を阻害することができる。癌の薬物開発の分野では、特定の種類の癌の処置のための薬物の特に有効な組み合わせが必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、式Iの化合物
【化1】

またはその医薬として許容され得る塩との併用療法であって、式中、Rが水素またはアシル基である、併用療法に関する。アシル基は好ましくは、RC(O)-であり、式中、Rは、置換または非置換C~C24-アルキル、好ましくはC~C10-アルキル、より好ましくはC~C-アルキル、置換もしくは非置換C~C24-アルケニル、好ましくはC~C10-アルケニル、より好ましくはC~C-アルケニル、置換もしくは非置換C~C24-アルキニル、好ましくはC~C10-アルキニル、およびより好ましくはC~C-アルキニル、置換もしくは非置換アリール、好ましくは置換もしくは非置換フェニル、または置換もしくは非置換ヘテロアリールであり、Aは場合により置換フェニルであり、場合により置換ピリジルもしくは場合により置換ピリミジルであり、癌の処置のためのPD-1シグナル伝達阻害剤である。例えば、一実施形態では、本発明は、癌の予防または治療を必要とする対象における癌を予防または治療する方法を提供する。この方法は、対象に、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩、およびPD-1シグナル伝達阻害剤を投与することを含み、式Iの化合物およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、併用の治療有効量で投与される。好ましくは、式Iの化合物またはその塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、相乗的である量で対象に投与される。
【0004】
本発明はまた、式Iの化合物、またはその医薬として許容され得る塩を、PD-1シグナル伝達阻害剤および医薬として許容され得る賦形剤または担体と組み合わせて含む医薬組成物にも関する。
【0005】
式Iの化合物、特に、Rが水素であり、Aが2-メトキシ-5-ピリジルである、本明細書で化合物1とも称される式Iの化合物は、癌ならびにPI3キナーゼ活性および/またはHDAC活性と関係する他の疾患および障害の処置のためなどの治療薬としての使用のための有利な特性を有する。例えば、化合物1は、分子標的PI3KおよびHDACに対して強力な阻害活性と、インビトロでさまざまな癌細胞株に対して強力な抗増殖活性とを有する。化合物1は、動物モデルで観察されるような経口での有意な生物学的利用能を有している。異種移植腫瘍担持マウスに経口または静脈内のいずれかで投与すると、この化合物は、腫瘍組織による有意な取り込みおよび腫瘍組織における薬力学的活性を示す。化合物1はまた、経口または静脈内のいずれかで投与後のマウス異種移植腫瘍モデルにおいて多大な抗腫瘍活性も示す。この化合物はまた、例えば、エイムス試験を使用した遺伝毒性試験によって示されるように、好ましい安全性特性も有している。
【0006】
本発明の上述および他の目的、特徴および利点は、添付の図面に示されるように、本発明の好ましい実施形態に関する以下のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】例11に説明されているようなマウスCT26.WT異種移植モデルにおける腫瘍体積対時間のグラフである。
図2】例12に説明されているようなマウスA20異種移植モデルにおける腫瘍体積対時間のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩と、PD-1シグナル伝達阻害剤と、を含む、癌のための併用療法のための方法および組成物に関する。式Iの化合物の好ましい実施形態において、Aは、メトキシ、アミノまたはN-メチルアミノで置換されたフェニル、ピリジルまたはピリミジルである。より好ましくは、Aは、以下に明らかにされる基のうちの1つである。
【化2】
【0009】
式Iの化合物のある特定の実施形態では、Aは先に示した基の1つであり、Rは水素である。
【0010】
好ましい実施形態において、式Iの化合物は、以下の化合物1、2および3ならびにそれらの医薬として許容され得る塩から選択される。
【化3】
【0011】
本発明は、癌を予防または処置することを必要とする対象における癌を予防または処置するための方法を提供する。この方法は、対象に、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩、およびPD-1シグナル伝達阻害剤を投与することを含み、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、併用の治療有効量で投与される。
【0012】
PD-1シグナル伝達阻害剤は、PD-1シグナル伝達を阻害する何らかの化合物である可能性がある。例えば、PD-1シグナル伝達阻害剤は、PD-1、および/またはPD-L1もしくはPD-L2など、PD-1の活性化リガンドを阻害することができる。PD-1シグナル伝達阻害剤は、小分子、ポリヌクレオチド、または抗体などのタンパク質である可能性がある。好ましくは、PD-1シグナル伝達阻害剤は、モノクローナル抗体、より好ましくは、ヒト化または完全ヒトモノクローナル抗体である。一実施形態では、PD-1シグナル伝達阻害剤は、抗PD-1モノクローナル抗体である。別の実施形態では、PD-1シグナル伝達阻害剤は、抗PD-L1モノクローナル抗体である。別の実施形態では、PD-1シグナル伝達阻害剤は、抗PD-L2モノクローナル抗体である。適切なPD-1シグナル伝達阻害剤には、それらの各々が全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8,008,449号、WO第2006/121168号、WO第2009/114335号、米国特許第8,354,509号、米国特許第8,609,089号、US2010/0028330、US2012/0114649、WO第2007/005874号、WO第2010/077634号、米国特許第7,943,743号、US2012/0039906、およびWO第2011/066342号において説明されているPD-1シグナル伝達阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。適切なPD-1シグナル伝達阻害剤の例としては、YW243.55.S70、MPDL3280A、MEDI-4736、MSB-0010718C、MDX-1105、およびAMP-224が挙げられる。好ましいPD-1シグナル伝達阻害剤には、ペンブロリズマブ(KEYTRUDA(商標))、ニボルマブ(OPDIVO(商標))、アテロリズマブ(TECENTRIQ(商標))、アベルマブ(BAVENCIO(商標))、デュルバルマブ(IMFINZI(商標))、およびピジリズマブが含まれる。
【0013】
本発明の方法および組成物の特に好ましい実施形態では、式Iの化合物は化合物1である。
【0014】
本発明の特に好ましい実施形態では、PD-1シグナル伝達阻害剤は、ペンブロリズマブまたはニボルマブである。
【0015】
本発明の方法のある特定の実施形態では、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、別個の組成物として対象に同時に投与される。ある特定の実施形態では、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、同じかまたは異なる投与経路を介して対象に同時に投与される。
【0016】
ある特定の実施形態では、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、別個の組成物として対象に逐次投与される。ある特定の実施形態では、式Iの化合物およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、同じかまたは異なる投与経路を介して対象に逐次投与される。一実施形態では、PD-1シグナル伝達阻害剤は、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩を対象に投与した後で対象に投与される。別の実施形態では、PD-1シグナル伝達阻害剤は、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩を対象に投与する前に対象に投与される。
【0017】
式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤が別個の組成物として投与されるある実施形態では、各組成物は独立して、経粘膜、経口、直腸、膣、舌下、静脈内、筋肉内、皮下、頬側、鼻腔内、槽内、腹腔内、または耳内にである。ある特定の実施形態では、一方または両方の組成物は、坐剤またはヒドロゲル剤で投与される。好ましい実施形態では、両方の組成物は経口投与される。
【0018】
式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤が別個の組成物として投与されるある特定の実施形態では、それらの投与のタイミングは、薬剤の薬理学的活性が時間的に重複するようになっており、それにより、組み合わされた治療効果を発揮する。例えば、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、約60分を超える時間間隔で逐次投与することができる。例えば、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩とPD-1シグナル伝達阻害剤との逐次投与の間の時間は、60分を超えて、2時間を超えて、5時間を超えて、10時間を超えて、1日を超えて、2日を超えて、3日を超えて、または1週間を超えて離れていることができる。最適な投与時間は、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤の吸収、分布、代謝および/または排泄の速度に依存するであろう。
【0019】
式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩またはPD-1シグナル伝達阻害剤のいずれかを最初に投与することができる。例えば、PD-1シグナル伝達阻害剤は、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩が投与された後で対象に投与することができる。この場合、式Iの化合物の約50%(例えば、約40%、約30%、約20%、約10%、または約5%)が対象によって代謝または排泄される前に、PD-1シグナル伝達阻害剤を投与することが望ましい可能性がある。別の例では、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩の初回用量が対象に投与され、続いてPD-1シグナル伝達阻害剤の単回用量の後に続いて、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩の追加用量が投与される。
【0020】
ある特定の実施形態では、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、単一剤形で投与され、該単一剤形は、経粘膜、経口、直腸、膣、舌下、静脈内、筋肉内、皮下、頬側、鼻腔内、槽内、腹腔内、または耳内に投与される。好ましくは、単一剤形は経口投与される。
【0021】
式Iの化合物は、約1週間に1回、約1日1回、または1日1回を超えて投与することができる。一実施形態では、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩は経口投与される。別の実施形態では、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩は、非経口的に、例えば、静脈内に投与される。式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩は、約1mg~約1,500mgの日用量で投与することができる。例えば、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩は、約200mgの日用量で投与することができる。一実施形態では、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩は、体重1kgあたり約1mg~約250mgの薬用量で投与される。
【0022】
しかしながら、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤の投薬頻度および総日用量は、当業者によって、例えば、主治医によって健全な医学的判断の範囲内で個々の患者について決定することができることは理解されるであろう。いかなる特定の患者についての具体的な用量も、処置中の障害および障害の重症度;採用される具体的な化合物の活性;採用される具体的な組成物;患者の齢、体重、全身レベルの健康状態、性別および食事の種類;投与時刻、投与経路、および採用される具体的な化合物の排泄速度;処置の持続期間;採用される具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;;医学分野で周知の同様の因子を含む、さまざまな因子によるであろう。
【0023】
「癌」という用語は、腫瘍、新生物、癌腫、肉腫、白血病、リンパ腫などの悪性腫瘍細胞の増殖によって引き起こされる何らかの癌を指す。例えば、癌には、中皮腫、白血病、および皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)などのリンパ腫、非皮膚末梢T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)などのヒトT細胞リンパ栄養性(lymphotrophic)ウイルス(HTLV)と関係するリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などのB細胞リンパ腫、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、および多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、成人T細胞白血病リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、または肝細胞癌が含まれるが、これらに限定されない。さらなる例としては、骨髄異形成症候群、脳腫瘍などの小児固形腫瘍、神経芽腫、網膜芽細胞腫、ウィルムス腫瘍、骨腫瘍、ならびに軟部組織肉腫などの小児固形腫瘍、頭頸部癌(例えば、口腔、喉頭、鼻咽頭、および食道)、腎尿路生殖器の癌(例、前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣)、肺癌(例えば、小細胞および非小細胞)、乳癌、膵癌、黒色腫および他の皮膚癌、胃癌、脳腫瘍、ゴーリン症候群に関する腫瘍(例えば、髄芽腫、髄膜腫など)、ならびに肝癌などの成人の一般的な固形腫瘍が挙げられる。対象の化合物によって処置されることができる癌の追加の例示的な形態には、骨格筋または平滑筋の癌、胃癌、小腸の癌、直腸癌、唾液腺の癌、子宮内膜癌、副腎癌、肛門癌、直腸癌、副甲状腺癌、および下垂体癌が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書に説明する化合物が予防、処置および研究に有用である可能性がある追加の癌は、例えば、結腸癌、家族性腺腫性ポリポーシス癌および遺伝性非ポリポーシス大腸癌、または黒色腫である。さらに、癌には、外陰癌、喉頭癌、下咽頭癌、舌癌、唾液腺癌、胃癌、腺癌、甲状腺癌(髄様癌および乳頭状甲状腺癌)、腎癌、腎実質癌、子宮頚癌、子宮体癌、子宮内膜癌、絨毛癌、精巣癌、尿癌(urinary carcinoma)、黒色腫、膠芽腫、星状細胞腫、髄膜腫、髄芽腫および末梢神経外胚葉性腫瘍などの脳腫瘍、胆嚢癌、気管支癌、多発性骨髄腫、基底細胞腫、奇形腫、網膜芽細胞腫、脈絡膜黒色腫、精上皮腫、横紋筋肉腫、頭蓋咽頭腫、骨肉腫、軟骨肉腫、筋肉腫、脂肪肉腫、線維肉腫、ユーイング肉腫、および形質細胞腫が含まれる、これらに限定されない。本発明の一態様では、本発明は、癌の処置のための薬剤の製造における本発明の1つ以上の化合物の使用を準備する。
【0025】
一実施形態では、処置される癌は血液癌である。血液癌には、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫などがある。例としては、B前駆細胞急性リンパ芽球性白血病。T前駆細胞急性リンパ芽球性白血病、バーキット白血病、および急性混合型白血病を含む急性リンパ性白血病、ならびにB細胞前リンパ球性白血病を含む慢性リンパ性白血病などのリンパ性白血病;ならびに急性前骨髄球性白血病、急性骨髄芽球性白血病および急性巨核芽球性白血病を含む、急性骨髄性白血病などの骨髄性白血病;ならびに慢性単球性白血病を含む慢性骨髄性白血病;急性単球性白血病が挙げられる。他の白血病には、有毛細胞白血病、T細胞性前リンパ性白血病、大顆粒リンパ球性白血病、および成人T細胞白血病が含まれる。
【0026】
リンパ腫には、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、NK細胞リンパ腫、およびリンパ系腫瘍前駆体(precursor lymphoid neoplasm)を含むホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫が含まれる。B細胞リンパ腫には、バーキットリンパ腫/白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、B細胞性慢性リンパ性白血病/小細胞リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫(ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症など)、脾臓辺縁帯リンパ腫、有毛細胞白血病、形質細胞腫、形質細胞骨髄腫(多発性骨髄腫としても公知)、形質細胞腫、単クローン免疫グロブリン沈着症、重鎖病、MALTリンパ腫とも呼ばれる節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、原発性皮膚濾胞中心リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞性リンパ腫、ALK+大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病において発症する大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、ALK+大細胞型B細胞リンパ腫、形質芽細胞性リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、およびHHV8関連多中心性キャッスルマン病において発症する大細胞型B細胞リンパ腫が含まれる。
【0027】
T細胞およびNK細胞リンパ腫には、皮膚T細胞、T細胞前リンパ球性白血病、T細胞大顆粒リンパ球性白血病、侵襲性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型、腸症型T細胞リンパ腫、肝脾性T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞性リンパ腫、菌状息肉症/セザリー症候群、原発性皮膚未分化大細胞リンパ腫などの原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖性疾患、リンパ腫様丘疹症、分類不能な末梢性T細胞リンパ腫、免疫芽球性T細胞リンパ腫、および未分化大細胞リンパ腫が含まれる。
【0028】
好ましい実施形態では、処置される癌は非ホジキンリンパ腫であり、より好ましくは、B細胞リンパ腫である。特に好ましい実施形態では、処置される癌はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、例えば、ABC亜型のDLBCL、GCB亜型のDLBCL、ダブルヒットDLBCLまたはダブルエクスプレッサーDLBCLである(Quintanilla-Martinez,L.,Hematol.Oncol.2015,33:50-55)。ある特定の実施形態では、癌は再発性または難治性のDLBCLである。
【0029】
一実施形態では、本発明は、PD-1シグナル伝達阻害剤と組み合わせた癌の処置のための薬剤の製造における式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩の使用を提供する。別の実施形態では、本発明は、癌を処置するための薬剤の製造における、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤の使用を提供する。好ましい実施形態では、式Iの化合物は、化合物1またはその医薬として許容され得る塩であり、PD-1シグナル伝達阻害剤は、ペンブロリズマブまたはニボルマブである。
【0030】
本発明はさらに、式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩と、PD-1シグナル伝達阻害剤とを含む医薬組成物を包含する。一実施形態では、式Iの化合物は、化合物1、化合物2または化合物3であり、PD-1シグナル伝達阻害剤は、ペンブロリズマブまたはニボルマブである。
【0031】
式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩およびPD-1シグナル伝達阻害剤は、非経口、静脈内、筋肉内、皮下、植え込み、経口、舌下、頬側、鼻腔、肺、経皮、局所、膣、直腸、および経粘膜投与などを含むがこれらに限定されない何らかの適切な手段によって投与することができる。局所投与はまた、経皮パッチまたはイオン泳動装置などの経皮投与の使用も包含することができる。医薬調製物には、式Iの化合物もしくはその医薬として許容され得る塩、PD-1シグナル伝達阻害剤、または選択した投与様式に適した両方を含有する固体、半固体、または液体の調製物(錠剤、ペレット剤、トローチ剤、カプセル剤、坐剤、クリーム剤、軟膏、エアロゾル剤、散剤、液剤、エマルション、懸濁剤、シロップ剤、注射剤など)が含まれる。一実施形態では、医薬組成物は経口投与され、したがって、経口投与に適した形態で、すなわち、固体または液体の調製物として製剤される。適切な固形経口製剤には、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ペレット剤、サシェ剤および沸騰剤、散剤などが含まれる。適切な液体経口製剤には、液剤、懸濁剤、分散剤、エマルション、油などが含まれる。本発明の一実施形態では、組成物はカプセル内に製剤される。この実施形態に従って、本発明の組成物は、活性化合物および不活性担体もしくは希釈剤に加えて、硬質ゼラチンカプセルを含む。
【0032】
担体または希釈剤として一般的に使用される何らかの不活性賦形剤、例えば、ガム、デンプン、糖、セルロース材料、アクリラート、またはこれらの混合物などは、本発明の製剤に使用することができる。好ましい希釈剤は微結晶性セルロースである。組成物はさらに、崩壊剤(例えば、クロスカルメロースナトリウム)および潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)を含むことができ、加えて、結合剤、緩衝剤、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤、可溶化剤、可塑剤、乳化剤、安定剤、増粘剤、甘味料、皮膜形成剤、またはこれらの何らかの組み合わせから選択される1つ以上の添加剤を含むことができる。さらに、本発明の組成物は、放出制御製剤または即時放出製剤の形態であってよい。
【0033】
液体製剤については、医薬として許容され得る担体は、水溶性または非水溶性の液体、懸濁液、乳濁液または油であってよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、水、アルコール/水溶液、エマルション、または生理塩類溶液および緩衝培地を含む懸濁液が含まれる。油の例は、石油、動物、植物、または合成起源の油、例えば、ラッカセイ油、ダイズ油、鉱油、オリーブ油、ヒマワリ油、および魚肝油である。溶液または懸濁液はまた、以下の成分、すなわち、注射用水、塩類溶液、不揮発性油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒などの無菌の希釈剤、ベンジルアルコールまたはメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩などの緩衝液、および塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張性を調整するための薬剤も含むことができる。pHは、塩酸および水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整することができる。
【0034】
加えて、組成物はさらに、結合剤(例えば、アカシア、トウモロコシデンプン、ゼラチン、カルボマー、エチルセルロース、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン)、崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸、二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、グアーガム、デンプングリコール酸ナトリウム、プリモゲル)、さまざまなpHおよびイオン強度の緩衝液(例えば、トリスHCI、酢酸塩、リン酸塩)、表面への吸収を防ぐためのアルブミンまたはゼラチンなどの添加剤、洗浄剤(例えば、Tween20、Tween80、Pluronic F68、胆汁酸塩)、プロテアーゼ阻害剤、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、浸透促進剤、可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール、ポリエチレングリコール)、流動促進剤(例えば、、コロイド状二酸化ケイ素)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール)、安定剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、増粘剤(例えば、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素、エチルセルロース、グアーガム)、甘味料(例、スクロース、アスパルタム、クエン酸)、着香料(例、ペパーミント、サリチル酸メチル、またはオレンジ着香料)、防腐剤(例、チメロサル、ベンジルアルコール、パラベン)、潤滑剤(例、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、流動添加剤(例、コロイド状二酸化ケイ素)、可塑剤(例、フタル酸ジエチル、クエン酸トリエチル)、乳化剤(例、カルボマー、ヒドロキシプロピルセルロース)、ラウリル硫酸ナトリウム)、ポリマーコーティング(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)、コーティングおよびフィルム形成剤(例えば、エチルセルロース、アクリラート、ポリメタクリラート)、ならびに/あるいはアジュバントをさらに含むことができる。
【0035】
一実施形態では、活性化合物は、インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムを含む放出制御製剤など、身体からの急速な排除から化合物を保護する担体を用いて調製される。エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を調製するための方法は、当業者には明らかであろう。これらの材料はまた、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals,Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液はまた、医薬として許容され得る担体として使用することもできる。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号において説明されているように、当業者に公知の方法によって調製することができる。
【0036】
投与の容易さおよび薬用量の均一性のために、単位剤形で経口組成物を製剤することは特に有利である。「単位剤形」は、本明細書で使用される場合、処置される対象の単一の薬用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体と関連して所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性化合物を含有している。本発明の単位剤形についての仕様は、活性化合物の固有の特徴および達成されるべき特定の治療効果、ならびに個体の処置のためにこのような活性化合物を配合する技術において固有の制限によって決定され、直接依存する。
【0037】
経口投与を意図した本発明の製剤は、長鎖脂肪酸またはその塩、例えばデカン酸およびデカン酸ナトリウムを含む、1つ以上の浸透増強剤を含むことができる。
【0038】
1つの好ましい実施形態では、化合物は、静脈内注射用の水溶液中で製剤することができる。一実施形態では、可溶化剤を適切に採用することができる。特に好ましい可溶化剤には、CyDex,Inc.によって商品名CAPTISOL(登録商標)の下で販売されているスルホブチルエーテル-7-β-シクロデキストリンなど、スルホブチル誘導体化β-シクロデキストリンを含む、スルホン酸置換β-シクロデキストリンまたはその塩などの、シクロデキストリンおよび改質シクロデキストリンが含まれる
【0039】
医薬組成物は、投与ための取扱説明書と一緒に、容器、パック、またはディスペンサーに含めることができる。
【0040】
毎日の投与は、数日から数年の期間に継続的に繰り返されることがある。経口処置は、1週間から患者の生涯までの間継続することがある。好ましくは、投与は5連続日の間行うことができ、その後、患者は、さらなる投与が必要かどうかを決定するために評価されることができる。投与は、継続的または断続的であることができ、例えば、連続した数日間の処置に続いて休薬期があってよい。本発明の化合物は、処置の初日に静脈内投与されることができ、2日目およびその後のすべての連続した日に経口投与されることができる。
【0041】
有効成分を含有する医薬組成物の調製は、当技術分野で十分に理解されており、例えば、混合、造粒、または錠剤形成のプロセスによる。有効治療成分は、医薬として許容され得かつ有効成分と適合性のある賦形剤としばしば混合される。経口投与については、活性剤は、ビヒクル、安定剤、または不活性希釈剤など、この目的に慣例的な添加剤と混合され、慣例的な方法によって、錠剤、コーティング錠、硬質もしくは軟質ゼラチンカプセル、水溶液、アルコール溶液または油性溶液、および先に詳述された類似物など、投与に適した形態へと変換される。
【0042】
患者に投与される化合物の量は、患者に毒性を引き起こす量よりも少ない。ある特定の実施形態では、患者に投与される化合物の量は、患者の血漿中の化合物の濃度を化合物の毒性レベル以上にする量よりも少ない。好ましくは、患者の血漿中の化合物の濃度は、約10nMに維持される。一実施形態では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約25nMに維持される。一実施形態では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約50nMに維持される。一実施形態では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約100nMに維持される。一実施形態では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約500nMに維持される。一実施形態では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約1000nMに維持される。一実施形態では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約2500nMに維持される。一実施形態では、患者の血漿中の化合物の濃度は、約5000nMに維持される。本発明の実施において患者に投与されるものとする化合物の最適量は、使用される特定の化合物および処置される癌の種類に依存するであろう。
【0043】
定義
本発明を説明するために使用されるさまざまな用語の定義を以下に列挙する。これらの定義は、具体的な場合に別段の制限がない限り、個別にまたはより大きな群の一部として、本明細書および特許請求の範囲の随所で使用される用語に適用される。
【0044】
「アシル」という用語は、水素、アルキル、部分的に飽和または完全に飽和したシクロアルキル、部分的に飽和または完全に飽和した複素環、アリール、およびヘテロアリール置換カルボニル基を指す。例えば、アシルは、(C~C)アルカノイル(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル、カプロイル、t-ブチルアセチルなど)、(C~C)シクロアルキルカルボニル(例えば、シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニルなど)、複素環式カルボニル(例えば、ピロリジニルカルボニル、ピロリド-2-オン-5-カルボニル、ピペリジニルカルボニル、ピペラジニルカルボニル、テトラヒドロフラニルカルボニルなど)、アロイル(例えば、ベンゾイル)およびヘテロアロイル(例えば、チオフェニル-2-カルボニル、チオフェニル-3-カルボニル、フラニル-2-カルボニル、フラニル-3-カルボニル、1H-ピロイル-2-カルボニル、1H-ピロイル-3-カルボニル、ベンゾ[b]チオフェニル-2-カルボニルなど)などの基が含まれる。加えて、アシル基のアルキル、シクロアルキル、複素環、アリールおよびヘテロアリール部分は、個々の定義において説明されている基のうちのいずれか1つであってよい。「場合により置換された」として示されているとき、アシル基は、非置換であるか、あるいは「置換された」についての定義において以下の列挙される置換基の群から独立して選択される1以上の置換基(通常、1~3の置換基)、またはアシル基のアルキル、シクロアルキル、アリールおよびシクロアリール部分はそれぞれ、置換基の好ましいおよびより好ましいリストにおいて先に説明したように置換されることができる。
【0045】
「アルキル」という用語は、1~約20個の炭素原子、または好ましくは1~約12個の炭素原子を有する線状または分枝状ラジカルを包含する。より好ましいアルキルラジカルは、1~約10個の炭素原子を有する「低級アルキル」ラジカルである。最も好ましいのは、1~約8個の炭素原子を有する低級アルキルラジカルである。このようなラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシルなどが挙げられる。
【0046】
「アルケニル」という用語は、2~約20個の炭素原子、または好ましくは2~約12個の炭素原子からなる少なくとも1つの炭素間二重結合を有する線状または分枝状ラジカルを包含する。より好ましいアルケニルラジカルは、2~約10個の炭素原子、より好ましくは約2~約8個の炭素原子を有する「低級アルケニル」ラジカルである。アルケニルラジカルの例としては、エテニル、アリル、プロペニル、ブテニルおよび4-メチルブテニルが挙げられる。「アルケニル」および「低級アルケニル」という用語は、「シス」および「トランス」配向、またはそれに代わるものとして「E」および「Z」配向を有するラジカルを包含する。
【0047】
「アルキニル」という用語は、2~約20個の炭素原子、または好ましくは2~約12個の炭素原子からなる少なくとも1つの炭素間三重結合を有する線状または分枝状ラジカルを包含する。より好ましいアルキニルラジカルは、2~約10個の炭素原子、より好ましくは約2~約8個の炭素原子を有する「低級アルキニル」ラジカルである。アルキニルラジカルの例としては、プロパルギル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチン、2-ブチニルおよび1-ペンチニルが挙げられる。
【0048】
「アリール」という用語は、1、2、または3個の環を含有する炭素環式芳香族系を意味し、この中で、このような環は、ぶら下がっている様式で一緒に結合することができるか、または融合することができる。「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダンおよびビフェニルなどの芳香族ラジカルを包含する。
【0049】
「ヘテロアリール」という用語は、不飽和ヘテロシクリルラジカルを包含する。ヘテロアリールラジカルの例としては、1~4個の窒素原子を含有する不飽和3~6員、好ましくは5員または6員のヘテロ単環式基、例えば、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル(例えば、4H-1,2,4-トリアゾリル、1H-1,2,3-トリアゾリル、2H-1,2,3-トリアゾリルなど)テトラゾリル(例えば、1H-テトラゾリル、2H-テトラゾリルなど)、など;1~5個の窒素原子を含有する不飽和縮合ヘテロシクリル基、例えば、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル(例えば、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニルなど)、など;酸素原子を含有する不飽和3~6員、好ましくは5員または6員複素単環式基、例えば、ピラニル、フリル、など;硫黄原子を含有する不飽和3~6員複素単環式基、例えば、チエニル、など;1~2個の酸素原子と1~3個の窒素原子とを含有する不飽和3~6員、好ましくは5員または6員複素単環式基、例えば、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル、1,3,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル、など)など;1~2個の酸素原子と1~3個の窒素原子とを含有する不飽和縮合ヘテロシクリル基(例えば、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル、など);1~2個の硫黄基と1~3個の窒素原子とを含有する不飽和3~6員、好ましくは5員または6員複素単環式基、例えば、チアゾリル、チアジアゾリル(例えば、1,2,4-チアジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、など)など;1~2個の硫黄原子と1~3個の窒素原子とを含有する不飽和縮合ヘテロシクリル基(例えば、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、など)などが挙げられる。
【0050】
「置換された」という用語は、所与の構造中の1つ以上の水素ラジカルを、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアルキル、アリールスルホニルアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロアルキル、アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアミノアルキル、アリールアミノアルキル、アミノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノカルボニルアルキル、アシル、アラルコキシカルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルホニル、ホスホン酸、アリール、ヘテロアリール、複素環式、および脂肪族を含むがこれらに限定されない特定の置換基のラジカルで置換することを指す。置換基がさらに置換されることができることは理解される。
【0051】
新生物、腫瘍の成長または腫瘍細胞の増殖の文脈における「阻害」という用語は、とりわけ、原発腫瘍または続発性腫瘍の出現の遅延、原発腫瘍または続発性腫瘍の発達の遅延、原発腫瘍または続発性腫瘍の発生の低下、疾患の二次作用の重症度の遅延または低下、腫瘍の成長の抑止および腫瘍の退縮によって評価することができる。極端な場合、完全な阻害は、本明細書では予防または化学的予防と称される。
【0052】
本明細書で使用される「転移」という用語は、元の腫瘍部位から血管およびリンパ管を経て癌細胞が移動して他の組織内に癌を生成することを指す。転移はまた、遠隔部位で成長する二次癌について使用される用語でもある。
【0053】
本明細書で使用される「新生物」という用語は、過剰な細胞分裂に起因する組織の異常な塊を指す。新生物は良性(癌性ではない)または悪性(癌性)であることがあり、腫瘍と呼ばれることもある。「新生物」という用語は、腫瘍形成をもたらす病理学的プロセスである。
【0054】
本明細書で使用される場合、「前癌性」という用語は、悪性ではないが、処置せずに放置すると悪性になる可能性がある容態を指す。
【0055】
「増殖」という用語は、有糸分裂を起こしている細胞を指す。
【0056】
「処置」という用語は、ヒトを含む哺乳動物が、直接的または間接的に哺乳動物の容態を改善する目的で医療上の助力を受ける、何らかのプロセス、作用、適用、療法などを指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「医薬として許容され得る塩」という用語は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などなしにヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適している塩を指し、合理的な損益比に見合ったものである。医薬として許容され得る塩は当技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、J.Pharmaceutical Sciences,66:1-19(1977)において、医薬として許容され得る塩を詳細に説明している。塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製中にその場で、または遊離塩基官能基を適切な有機酸もしくは無機酸と反応させることによって別々に調製することができる。医薬として許容され得る非毒性酸付加塩の例としては、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸などの無機酸もしくは酢酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸ラクトビオン酸もしくはマロン酸などの有機酸で、またはイオン交換などの当技術分野で使用される他の方法を使用することによって形成されるアミノ基の塩が挙げられるが、これらに限定されない。他の医薬として許容され得る塩には、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファスルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸、吉草酸塩などが含まれるが、これらに限定されない。代表的なアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる医薬として許容され得る塩には、適宜、非毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、ならびに、ハロゲン化物、水酸化物、カルボン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、1~6個の炭素原子を有するスルホン酸アルキル、スルホン酸塩およびスルホン酸アリールなどの対イオンを使用して形成されるアミンカチオンが含まれる。ナトリウム、カリウムおよびコリン塩基塩などのある特定の塩、ならびに硫酸塩およびメタンスルホン酸塩などの酸性塩は、医薬として許容され得る水性媒体中で式Iの化合物の溶解度を改善することがわかった。一実施形態では、化合物1の医薬として許容され得る塩はコリン塩である。化合物1の好ましい塩には、ナトリウム塩およびカリウム塩が含まれる。他の好ましい塩には、硫酸塩およびメタンスルホン酸塩が含まれる。化合物1の特に好ましい塩は、メタンスルホン酸塩およびベンゼンスルホン酸塩である。化合物2の特に好ましい塩は塩酸塩である。
【0058】
本明細書で使用される場合、「医薬として許容され得る担体」は、無菌の発熱物質非含有水など、医薬投与と適合性の、あるありとあらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌薬および抗真菌薬、等張剤および吸収遅延剤などを含むことを意図する。適切な担体は、本分野における標準的な参考図書であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版において説明されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。このような担体または希釈剤の好ましい例としては、水、塩類溶液、リンゲル液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。リポソームおよび不揮発性油などの非水性ビヒクルもまた使用することができる。医薬として活性のある物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で周知である。何らかの従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、組成物におけるこれらの使用が企図されている。補足的な活性化合物もまた、組成物に組み込むことができる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「前癌性」という用語は、悪性ではないが、処置せずに放置すると悪性になる可能性がある容態を指す。
【0060】
本明細書で使用される「対象」という用語は、動物を指す。好ましくは、動物は哺乳動物である。より好ましくは、哺乳動物はヒトである。対象はまた、例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、モルモット、魚塁、鳥塁などを指す。
【0061】
本発明の化合物は、選択的な生物学的特性を増強するために適切な官能基を付加することによって修飾することができる。このような修飾は当技術分野で公知であり、所与の生物学的な系(例えば、血液、リンパ系、中枢神経系)への生物学的浸透を高め、経口利用可能性を高め、溶解度を上昇させて注射による投与を可能にし、代謝を変化させ、排泄速度を変化させるものを含むことができる。
【0062】
医薬組成物
本発明の医薬組成物は、1つ以上の医薬として許容され得る担体または賦形剤と一緒に製剤された、治療有効量の化合物1などの式Iの化合物、またはその医薬として許容され得る塩を、PD-1シグナル伝達阻害剤と組み合わせて含む。
【0063】
好ましくは、医薬として許容され得る担体または賦形剤は、何らかの種類の非毒性、不活性、不活性の固体、半固体または液体の充填剤、希釈剤、封入材料、または製剤添加剤である。医薬として許容され得る担体として機能することができる材料のいくつかの例は、ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖;アルファ-(α)、ベータ-(β)およびガンマ-(γ)シクロデキストリンなどのシクロデキストリン;トウモロコシデンプンおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースならびにナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのその誘導体;トラガカント末;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバターおよび坐剤用蝋などの賦形剤;ラッカセイ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、およびダイズ油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;アガー;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質非含有水;等張性塩類溶液;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性の適合性潤滑剤、ならびに着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、着香料、香料、防腐剤、および酸化防止剤もまた、製剤者の判断によって、組成物中に存在することもできる。
【0064】
本発明の医薬組成物は、経口で、非経口で、吸入スプレーによって、局所的に、直腸で、鼻腔で、頬側で、膣で、または移植されたリザーバーを介して、好ましくは経口投与もしくは注射による投与によって投与することができる。本発明の医薬組成物は、何らかの従来の非毒性の医薬として許容され得る担体、アジュバントまたはビヒクルを含むことができる。いくつかの場合では、製剤のpHを、医薬として許容され得る酸、塩基、または緩衝液で調整して、製剤された化合物または該化合物の送達形態の安定性を高めることができる。本明細書で使用される非経口という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液内、胸骨内、髄腔内、病変内および頭蓋内の注射または注入の技術を含む。
【0065】
経口投与用の液体剤形には、医薬として許容され得るエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが含まれる。活性化合物に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤、ならびにエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステルなどの乳化剤、ならびにこれらの混合物など、当技術分野で通常使用される不活性希釈剤を含有することができる。不活性希釈剤に加えて、経口組成物はまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤などのアジュバント、甘味料、着香料、および香料なども含むことができる。
【0066】
注射可能な調製物、例えば、無菌の注射可能な水性または油性の懸濁液は、適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の技術によって製剤してよい。無菌の注射可能な調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液として、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液、懸濁液または乳濁液であってよい。採用することができる許容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液、米国薬局方および等張性塩化ナトリウム溶液がある。加えて、無菌の不揮発油は、従来より、溶媒または懸濁媒体として採用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む何らかの刺激の少ない不揮発性油を採用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸は注射剤の調製に使用される。
【0067】
注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターを経た濾過によって、または使用前に滅菌水もしくは他の無菌注射媒体の中に溶解または分散させることができる無菌固体組成物の形態で無菌剤を組み込むことによって無菌にすることができる。
【0068】
薬物の効果を延長させるために、皮下注射または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることがしばしば望ましい。これは、水中溶解度の低い結晶性または非晶質の材料の液体懸濁液を使用することによって達成することができる。次に、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存しており、それは次に、結晶の大きさおよび結晶形態に依存する可能性がある。あるいは、非経口投与された剤形の吸収遅延は、薬物を油性ビヒクル中に溶解または懸濁することによって達成される。注射可能なデポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー内で薬物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。ポリマーに対する薬物の比率および採用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用製剤はまた、体組織と適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルションの中に薬物を封入することによっても調製される。
【0069】
直腸または膣への投与用の組成物は、好ましくは、本発明の化合物を、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、それゆえ直腸または膣腔の中で融解し、活性化合物を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコールまたは坐剤蝋などの適切な非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製することができる坐剤である。
【0070】
経口投与用の固形剤形には、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、および顆粒剤が含まれる。このような固体剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性で医薬として許容され得る賦形剤もしくは担体、ならびに/または:a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸などの充填剤もしくは増量剤、およびb)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアカシアなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤、d)アガー-アガー、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカのデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、e)パラフィンなどの溶液遅滞剤、f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアラートなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土などの吸収剤、i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなどの潤滑剤、ならびにこれらの混合物と混合される。カプセル剤、錠剤および丸剤の場合では、剤形はまた、緩衝剤を含んでもよい。
【0071】
同様の種類の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を使用して、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として使用することもできる。
【0072】
錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤の固形剤形は、腸溶コーティングおよび医薬製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらは、場合により、乳白剤を含有してもよく、それらがまた有効成分(複数可)のみ、または優先的に、腸管のある特定の部分において、場合により、遅延した様式で放出する組成物であることもできる。使用することができる植え込み組成物の例としては、高分子物質および蝋が含まれる。
【0073】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形には、軟膏、ペースト剤、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、散剤、液剤、スプレー剤、吸入剤またはパッチ剤が含まれる。有効成分は、無菌条件下で、医薬として許容され得る担体および必要とされる可能性がある場合、何らかの必要な防腐剤または緩衝剤と混合される。眼科用製剤、点耳薬、眼軟膏、散剤および液剤もまた、本発明の範囲内であると考えられる。
【0074】
軟膏、ペースト剤、クリーム剤およびジェル剤は、本発明の活性化合物に加えて、動植物脂肪、油、蝋、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物などの賦形剤を含有することができる。
【0075】
散剤およびスプレー剤は、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウムおよびポリアミド末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有することができる。スプレー剤には、クロロフルオロ炭化水素などの通常の推進薬を追加で含有することができる。
【0076】
経皮パッチは、化合物の身体への制御された送達を提供するという追加の利点を有する。このような剤形は、化合物を適切な培地中に溶解または分配することによって作製することができる。吸収促進剤を使用して、皮膚を横切る化合物の流れを増大させることもできる。速度は、速度制御膜を提供することによって、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲルの中に分散させることによってのいずれかで制御することができる。
【0077】
肺送達のために、本発明の治療用組成物は、直接投与(例えば、呼吸器系への吸入)によって、固体または液体の粒子状形態で製剤され、患者に投与される。本発明を実施するために調製された活性化合物の固体または液体の粒子状形態は、呼吸可能な大きさの粒子、すなわち、吸入時に口および喉頭を通過して肺の気管支および肺胞へと入るのに十分小さな大きさの粒子を含む。エアロゾル化された治療薬、特にエアロゾル化された抗生物質の送達は当技術分野で公知である(例えば、Van Devanterらに対する米国特許第5,767,068号、Smithらに対する米国特許第5,508,269号、およびMontgomeryによるWO第98/43650号を参照されたく、これらはすべて参照により本明細書に組み込まれる)。抗生物質の肺送達に関する論議はまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,014,969号においても見られる。
【0078】
式Iの化合物とPD-1シグナル伝達阻害剤との組み合わせの「治療有効量」とは、何らかの医学的処置に対して適用可能な合理的な損益比で、組み合わせて処置対象に治療効果を与える各化合物の量を意味する。治療効果は、客観的(すなわち、何らかの試験またはマーカーによって測定可能)または主観的(すなわち、対象が効果の兆候を示すか、または効果を感じる)である可能性がある。有効量はまた、投与経路および他の薬剤との併用の可能性によっても異なる。しかしながら、本発明の化合物および組成物の毎日の総使用量は、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定されることが理解されよう。いかなる特定の患者についての具体的な治療有効量も、処置中の障害および障害の重症度;採用される具体的な化合物の活性;採用される具体的な組成物;患者の齢、体重、全身レベルの健康状態、性別および食事の種類;投与時刻、投与経路、および採用される具体的な化合物の排泄速度;処置の持続期間;採用される具体的な化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物;;医学分野で周知の同様の因子を含む、さまざまな因子によるであろう。好ましい実施形態では、治療有効量の式Iの化合物またはその医薬として許容され得る塩とPD-1シグナル伝達阻害剤との組み合わせは、処置される癌の種類において相乗作用を呈する。
【0079】
ヒトまたは他の動物に単回または分割用量で投与される本発明の併用療法における各化合物の総日用量は、例えば、0.01~50mg/kg体重、またはより通常では0.1~25mg/kg体重の量であってよい。単回用量組成物は、このような量またはその約数を含有して、日用量を構成することができる。概して、本発明による処置投与計画は、このような処置を必要とする患者への、単回または複数回の用量における本発明の化合物(複数可)の約10mg~約1000mgの1日あたりの投与を含む。
【0080】
本発明の併用療法における各化合物は、例えば、注射によって、静脈内に、動脈内に、表皮下に、腹腔内に、筋肉内に、もしくは皮下に、または経口で、頬側に、鼻腔内に、経粘膜的に、局所的に、眼科用製剤において、または吸入により、約0.1~約500mg/kg体重の範囲の薬用量、または1mg~1000mg/用量の薬用量で4~120時間ごとに、または特定の薬の必要条件によって投与することができる。本明細書の方法は、所望のまたは記載された効果を達成するために、有効量の化合物または化合物組成物の投与を企図する。通常、本発明の医薬組成物は、1日あたり約1~約6回、またはそれに代わるものとして、継続注入として投与されるであろう。このような投与は、長期的なまたは一過性の療法として使用することができる。単一の剤形を生成するために医薬賦形剤または担体と組み合わせることができる有効成分の量は、処置される宿主および特定の投与様式に応じて変化するであろう。通常の調製物は、約5%~約95%の活性化合物(w/w)を含有する。あるいは、通常の調製物は、約20%~約80%の活性化合物を含有することができる。
【0081】
先に列挙されたものよりも低用量または高用量が必要とされることがある。何らかの特定の患者に対する具体的な薬用量および処置投与計画は、採用される具体的な化合物の活性、齢、体重、全身レベルの健康状態、性別、食事、投与時刻、排泄速度、薬物の組み合わせ、疾患の重症度および経過、容態または症状、患者の疾患、容態、または症状に対する傾向、ならびに処置する医師の判断が挙げられる。
【0082】
患者の容態が改善すると、必要な場合、本発明の化合物、組成物、または組み合わせの維持用量を投与してよい。続いて、薬用量もしくは投与頻度、またはその両方を、症状の関数として、改善された容態が所望のレベルまで緩和されたときに改善された容態が保持されるレベルまで低減させることができる。しかしながら、患者は、疾患の症状の何らかの再発の際には、長期的に断続的な処置を必要とすることがある。
【0083】

本発明の化合物およびプロセスは、本発明の範囲を限定するものではなく、例示としてのみ意図されている以下の例に関連してよりよく理解されるであろう。開示された実施形態に対するさまざまな変更および修正は当業者には明らかであり、本発明の化学構造、置換基、誘導体、製剤および/または方法に関するものを含むがこれらに限定されないこのような変更および修正は、本発明の趣旨および添付の特許請求の範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0084】
化合物1ならびにそのメタンスルホン酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、およびコリン塩の合成を以下のスキームにおいて示す。
【化4-1】

【化4-2】
【0085】
中間体107-1または107-2は、106をそれぞれR-2-1またはR-2-2のいずれかと反応させることによって調製することができる。R-2-1およびR-2-2を合成するための合成スキームを以下に
【化5】

または別の方法によって示す。
【化6】
【0086】
中間体108-1および108-2は、107-1または107-2とR-3-1またはR-3-2のいずれかとのカップリング反応によって調製することができ、ここで、R-3-1およびR-3-2は次のスキームによって調製することができる。
【化7】
【0087】
例1:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物1)の調製
ステップa:(Z)-エチル-2-(エトキシメチル)-3-メトキシアクリラート(化合物202)
ナトリウム(40.9g、1.78mol)をエタノール(750mL)に少量ずつ注意深く添加し、ナトリウム金属がすべて消失した後、溶液を濃縮してNaOEt粉末を得た。撹拌しながら、ヘキサン(1.0L)を添加し、この混合物を氷水浴で冷却した。201(130g、0.89mol)およびギ酸エチル(131g、1.78mol)の混合物を0~5℃で滴下して添加した。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。氷水浴で冷却しながら硫酸ジメチル(224g、1.78mol)を滴下して添加した。得られた混合物を50℃で2時間加熱した。この混合物に塩化トリエチルアンモニウム(122g)および水酸化ナトリウム(20g)を添加した。次に、この混合物を室温で4時間撹拌し、濾過した。濾液を水で洗浄し、NaSO上で乾燥させた。これを濃縮して、表題化合物(140g、37%)を無色の油として得、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。
【0088】
ステップb:エチル2-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリミジン-5-カルボキシラート(化合物203)
エタノール(500mL)中の化合物202(140g、0.745mol)、尿素(40.0g、0.697mol)および濃塩酸(34mL)の混合物を一晩加熱還流した。反応物の体積の約50%を蒸発させた後、得られた懸濁液を濾過し、少量のエタノールで洗浄し、乾燥させて、化合物203(47g、37%)を白色の固形物として得た。
【数1】
【0089】
ステップc:エチル2-オキソ-1,2--ジヒドロピリミジン-5-カルボキシラート(化合物204)
酢酸(500mL)中の化合物203(47g、280mmol)の溶液に、臭素(49.0g、307mmol)を添加した。この混合物を2時間加熱還流し、室温に冷却し、さらに0~5℃に冷却し、濾過して、表題化合物204を黄色の固形物(38g、54%)として得た。
【数2】
【0090】
ステップd:エチル2-クロロピリミジン-5-カルボキシラート(化合物R-2-1)
化合物204(38.0g、153mmol)および三塩化ホスホリル(300mL)およびN,N-ジメチルアニリン(3mL)の混合物を2時間加熱還流し、室温に冷却し、濃縮した。残分を氷水で注意深くクエンチし、炭酸ナトリウムでpHを7~8に調整し、EtOAcで抽出した。合わせた有機物を氷水および鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、蒸発させ、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン、10%で溶離)により精製して、化合物R-2-1(15g、52%)を白色の固形物として得た。
【数3】
【0091】
ステップe:ナトリウム(Z)-2-(ジメトキシメチル)-3-メトキシ-3-オキソプロパ-1-エン-1-オラート(化合物206)
無水1,2-ジメトキシエタン(300mL)中のNaH(27g、鉱油中60%、0.675mol)の混合物を40~50℃まで加熱し、メチル3,3-ジメトキシプロピオナート(205)(100g、0.675mol)を滴下して添加した。得られた混合物を0.5時間撹拌し、無水ギ酸メチル(81g、1.35mol)を40~50℃で滴下して添加した。得られた混合物を40~50℃(内部温度)で2時間撹拌した後、0℃まで冷却した。この反応混合物を緩徐に25℃まで加温させておき、一晩撹拌した。EtO(150mL)を添加し、30分間撹拌した。得られた懸濁液を濾過した。固形物をEtO(100mL)で洗浄し、収集し、乾燥させて、表題化合物206(82g、61%)をオフホワイトの固形物として得た。
【数4】
【0092】
ステップf:2-アミノ-ピリミジン-5-カルボン酸メチルエステル(化合物207)
DMF(300mL)中の塩酸グアニジン(42.2g、0.44mol)の混合物に、化合物206(80g、0.40mol)を添加した。得られた混合物を100℃で1時間加熱した。この反応混合物を濾過した後に冷却した。過ケークを50mLのDMFで洗浄し、合わせた濾液を濃縮して残分を残し、これを冷EtOH中に懸濁し、冷EtOH(50mL)で洗浄して、化合物207(38g、61.5%)を黄色の固形物として得た。
【数5】
【0093】
ステップg:メチル2-クロロピリミジン-5-カルボキシラート(化合物R-2-2)
化合物207(7g、0.046mol)を濃塩酸(15.2mL)およびCHCl(60mL)の混合物に添加した。冷却後、15~20℃でZnCl(18.6g、0.138mol)を添加した。この混合物を15~20℃で0.5時間撹拌し、5~10℃まで冷却した。内部温度を5~10℃に維持しながら、NaNO(9.5g、0.138mol)を少量ずつ添加した。反応を約2時間継続した。この反応混合物を氷水(50mL)に注いだ。有機層を分離し、水相をCHCl(30mL×2)で抽出した。合わせた有機抽出物を濃縮して、粗生成物(4.2g)を得た。粗化合物をヘキサン(20mL)中に懸濁し、60℃で30分間加熱し、濾過した。濾液を濃縮して、表題化合物R-2-2(3.5g、44.4%)をオフホワイト色の固形物として得た。
【数6】
【0094】
ステップh:5-ブロモ-2-メトキシピリジン(化合物303)
アセトニトリル(1.0L)中の2-メトキシ-ピリジン(100g、0.92モル)、NBS(180g、1.0モル)の溶液を21時間還流撹拌した。TLCは反応が完了したことを示した。この反応混合物を室温まで冷却し、濃縮した。約900mlの溶媒を収集した。得られた懸濁液を濾過し、n-ヘキサン(約400mL)で洗浄した。濾液を再び濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を減圧(30℃/約0.3mmHg)で蒸留して、表題化合物を透明な油(146g、84%)として得た。
【数7】
【0095】
ステップi:6-メトキシピリジン-3-イルボロン酸(R-3-1):
無水THF(180ml)中の化合物303(20g、0.11モル)の溶液に、-78℃でn-BuLi(59mL、THF中2M)を滴下して添加し、得られた混合物を1時間撹拌した。ホウ酸トリイソプロピル(37mL)を-78℃で加え、この反応混合物を室温まで加温し、一晩撹拌し続けた。TLC(ヘキサン/酢酸エチル=5:1)は反応が完了したことを示した。この混合物を4NのHCl(90ml)でpHを3~4に調整した。沈殿物を濾過により収集して、粗化合物R-3-1(21g、128%)を得た。粗化合物R-3-1(21g)を水(200ml)中に溶解し、濃アンモニア溶液で溶液のpHを8~9に調整し、沈殿物を濾過により収集して、純粋な表題化合物R-3-1を白色の固形物(11g、67%)として得た。
【数8】
【0096】
ステップj:2-メトキシ-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン(化合物R-3-2)
無水ジオキサン(500mL)化合物303(55g、0.29mol)、4,4,4’,4’,5,5,5’,5’-オクタメチル-2,2’-ビ(1,3,2-ジオキサボロラン)の混合物(90g、0.35mol)、酢酸カリウム(57g、0.58mol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(2.2g、3mmol)をN雰囲気下で108℃で一晩加熱した。この反応混合物を濃縮し、ヘキサン/酢酸エチルで溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題化合物R-3-2(58g、84%)を得た。
【数9】
【0097】
ステップk:チエノ[3,2-d]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(化合物102)
尿素法:メチル3-アミノチオフェン-2-カルボキシラート(101)(90.0g、573mmol、1.0当量)および尿素(277.6g、4.6mol、8.0当量)の混合物を190℃で3~4時間加熱し、室温まで冷却した。この反応混合物にNaOH水溶液(10%、800mL)を添加した。周囲温度で1時間撹拌した後、固形物を濾過により除去した。濾液をHClでpH3~4まで酸性化し、沈殿した固形物を濾過により収集し、水で洗浄し、真空中で乾燥させて、所望の生成物である化合物102をオフホワイト色の固形物(87g、89%)として得た。
【数10】
【0098】
KOCN法:3-アミノチオフェン-2-カルボキシラート(101)(100.0g、636.9mmol、1.0当量)、酢酸(705mL)および水(600mL)の混合物に水(326mL)中のシアン酸カリウム(154.8g、1.91mol、3.0当量)の溶液を緩徐に1時間かけて添加した。得られた混合物を室温で20時間撹拌し、濾過し、水(500mL)ですすいだ。このケークを適切な大きさの反応器に入れ、2M水酸化ナトリウム水溶液(1.65L)を添加し、スラリーを2時間撹拌し、LCMSにより所望の生成物の形成を確認した。この混合物を10℃まで冷却し、3M塩酸水溶液(1.29L)をpH=5.0~6.0になるまで添加した。このスラリーを濾過し、水(700mL)ですすぎ、真空オーブン内で50℃で24時間乾燥させて、化合物102(100g、94%)をオフホワイト色の固形物として得た。
【数11】
【0099】
ステップl:2,4-ジクロロチエノ[3,2-d]ピリミジン(化合物103)
オキシ塩化リン(152mL、1.67mol、7.0当量)を、アセトニトリル(250mL)中の化合物102(40g、238mmol、1.0当量)およびN,N-ジメチルアニリン(22.5mL、179mmol、0.75当量)の冷溶液に緩徐に添加し、その間、温度を20℃未満に維持した。次に、この混合物を85℃まで加熱し、24時間撹拌した。この反応混合物を15℃まで冷却し、次に氷および冷水の混合物(360mL)へと緩徐に注いだ。得られたスラリーを濾過し、冷水(200mL)ですすいだ。ケークを真空オーブン内で40℃で24時間乾燥させて、化合物103(40.5g、83%)をオフホワイト色の固形物として得た。
【数12】
【0100】
ステップm:2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン(化合物104)
化合物103(34.2g、167mmol、1.0当量)とメタノール(500mL)の混合物に、モルホリン(31.2mL、367mmol、2.2当量)を緩徐に添加した。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。この沈殿物を濾過により収集し、メタノールで洗浄し、真空で乾燥させて、所望の生成物である化合物104を淡黄色の固形物(39g、91%)として得た。
【数13】
【0101】
ステップn:2-クロロ-4-モルホリノチエノ[3.2-d]ピリミジン-6-カルボアルデヒド(化合物105)
-78℃のTHF(無水、320mL)中の化合物104(20g、78.4mmol、1.0当量)の懸濁液に、n-BuLi(ヘキサン中、2.4M、40.8mL、102mmol、1.3当量)を窒素下で緩徐に添加した。得られたスラリーを-60℃まで加温させておき、透明な褐色の溶液に変えた。次に、反応混合物を再び-78℃まで冷却し、DMF(無水、9.1mL、118mmol、1.5当量)を緩徐に添加した。得られた溶液を-78℃で0.5時間撹拌し、1時間かけて0℃まで加温し、HCl水溶液(0.25M、660mL)および氷水(320mL)の混合物に緩徐に注いだ。得られたスラリーを0~10℃で0.5時間撹拌し、濾過し、冷水で洗浄し、真空中で乾燥させて、化合物105を黄色の固体として得た(22g、98%)。
【数14】
【0102】
ステップo:(2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イルメチル)-メチル-アミン(化合物106)
メタノール(125mL)中の化合物105(20.0g、70.4mmol、1.0当量)の溶液に、窒素雰囲気下でメタノール中のメチルアミン溶液(27%v/v、75mL、563.2mmol)を添加した。この反応混合物を室温で一晩撹拌し、溶媒を真空で除去して粗固形物生成物を得、これを窒素下でメタノール(550mL)およびTHF(220mL)に溶解した。水素化ホウ素ナトリウム(8g、211.2mmol)を少量ずつ添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を真空中で蒸発させ、水(300mL)を添加した。水性混合物を塩化メチレンで抽出し、合わせた抽出物をNaSO上で乾燥させ、濃縮した。残分を6M HCl(230mL)中に溶解し、30分間撹拌した。水溶液を塩化メチレンで数回洗浄し、NaOH(4N)でpH9~10まで調整した。沈殿した固形物を濾過により収集し、乾燥させて(60℃、6時間)、淡黄色の固形物(18g、85%)を得た。
【数15】
【0103】
ステップp(a):2-[(2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イルメチル)-メチル-アミノ]-ピリミジン-5-カルボン酸エチルエステル(化合物107-1)
室温でCHCN(400mL)中の106(10g、33.6mmol)およびR-2-1(6.8g、36.4mmol)の混合物に、ジイソプロピルエチルアミン(220mL、1.26mol)を添加した。得られた混合物を室温で一晩撹拌した。次に、この混合物を蒸発させ、続いて塩化メチレン(300mL)を添加した。有機相を水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空で濃縮して残分を残した。残分に酢酸エチルを添加し、得られた混合物を氷/水浴温度で50分間撹拌した。得られた固形物を濾過により収集して、表題生成物107-1を白色の固形物(10.6g、70%)として得た。
【数16】
【0104】
ステップp(b):2-[(2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イルメチル)-メチル-アミノ]-ピリミジン-5-カルボン酸メチルエステル(化合物107-2)
化合物106(25g、84mmol)、CHCN(500mL)およびR-2-2(16g、92mmol)の混合物を室温で撹拌した。ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(500mL、2.9mol)を添加した。この溶液を一晩撹拌し、蒸発させた。塩化メチレン(500mL)を添加した後、有機相を水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空で濃縮した。この残分に酢酸エチル(200mL)を添加し、この混合物を氷/水浴中で50分間撹拌した。表題生成物を白色の固形物(29.4g、81%)として収集した。
【数17】
【0105】
ステップq(a):エチル-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキシラート(化合物108-1)
方法A:トルエン(80ml)、エタノール(50ml)、および水(10ml)の混合溶媒中の化合物107-1(12g、26.7mmol)、R-3-1(4.9g、32mmol)、NaHCO(6.7g、80.1mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(188mg、0.267mmol)の混合物をN雰囲気下で108℃で4.5時間加熱した。TLCは反応が完了したことを示した。次に、この反応混合物を室温まで冷却し、水(20ml)を添加した。得られた固形物を濾過により収集し、次にエタノール(100mL)中に懸濁した。この懸濁液を室温で30分間撹拌し、濾過した。収集した固形物をエタノールで洗浄し、真空で乾燥させて、表題化合物108-1を白色の固形物(10g、72%)として得た。
【0106】
方法B:トルエン(24ml)、エタノール(15ml)、および水(3ml)の混合溶媒中の化合物107-1(1.5g、3.34mmol)、R-3-2(1.6g、6.68mmol)、NaHCO(0.84g、10.0mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(118mg、0.167mmol)の混合物をN雰囲気下で108℃で一晩加熱した。この反応混合物をジクロロメタンと水との間に分画した。有機層を分離し、鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、真空で蒸発させて残分を得、これをヘキサン/酢酸エチルで溶離するカラムクロマトグラフィーにより精製して、化合物108-1を白色の固形物(1.7g、98%)として得た。
【数18】
【0107】
ステップq(b):メチル-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキシラート(化合物108-2)
室温でジオキサン(540mL)中の化合物107-2(20g、46.0mmol)、B-3-1(9.2g、60.2mmol、1.3当量)の混合物に、固形物のNaHCO(11.6g、138.1mmol、3当量)に続いて、水(40mL)を添加した。Nを溶液の表面に通過させることによって、得られた混合物を脱気した。次に、ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(323mg、0.46mmol、0.01当量)を添加し、得られた混合物を108℃で15時間加熱した。TLCおよびLCMSは反応が完了したことを示した。この反応混合物を、それがまだ熱い(>90℃)間にセライトで濾過し、ジオキサン(70mL)で洗浄した。この濾液を徐々に室温まで冷却し、冷却期間中に白色の微結晶が形成された。この懸濁液を濾過し、ジオキサン(80mL)で洗浄して、表題化合物108-2を白色の固形物(18g、78%)として得た。
【数19】
【0108】
ステップr:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物1)の調製
ヒドロキシルアミンメタノール溶液の調製
MeOH(400mL)中のNHOH・HCl(80g、1.12mol)の混合物を60~65℃で1時間加熱して、透明な溶液を形成した。次に、これを氷水浴中で冷却した。反応温度を0~10℃に維持しながら、この冷混合物に、MeOH(240mL)中のKOH(96g、1.68mol)の溶液を滴下して添加した。得られた混合物を0℃で30分間撹拌し、次に無水NaSO(700g)で満たされた定圧漏斗で濾過した。濾液を氷浴下で収集し、将来の使用のために冷蔵庫内に保存した。
【0109】
化合物108-1からの化合物1の調製
化合物108-1(10g、19ミリモル)を、先の新たに調製したヒドロキシルアミンメタノール溶液(1.79M、350ml)中に懸濁した。この混合物にジクロロメタン(100mL)を添加した。この反応フラスコを密閉し、混合物を室温で5時間撹拌した後、それは透明な溶液になった。この反応物をさらに9時間撹拌し、濾過していかなる不溶性の固形物も除去した。酢酸をの添加により、濾液をpH6~7まで調整して固形物の沈殿物を形成した。固形物を濾過により収集し、水および最小量のメタノールで洗浄し、真空中で60℃で5時間乾燥させて、化合物1を白色の固形物(9.2g、96%)として得た。
【数20】
【0110】
化合物108-2からの化合物1の調製
室温でジクロロメタン(310mL)中の化合物108-2(31g、61.1mmol)の懸濁液に、先に新たに調製したヒドロキシルアミンメタノール溶液(1.79M、744ml)を添加した。この反応フラスコを密閉し、反応混合物を室温で5時間撹拌した、この反応混合物は透明な溶液になった。この反応溶液を濾過して、いかなる不溶性の固形物も除去した。次に、濾液に水(310mL)を添加したが、添加中に固形物は形成されなかった。撹拌しながら酢酸(18.5mL)を添加してpHを10.20に調整した(pH計によって継続的にモニター)。酢酸添加中に内部温度の変化はなかった。得られた反応混合物をさらに4時間撹拌し続けた。白色の固形物が徐々に形成された。この懸濁液を濾過し、最小量のメタノール(100mL×3)で洗浄した。収集した白色の固形物をメタノール(620mL)および水(124mL)に再懸濁して懸濁液を形成した。先の懸濁液に追加の酢酸(11g)を添加してpHを5~6まで調整した。固形物形態の変化が観察された。この懸濁液をさらに2時間撹拌し続け、濾紙で濾過し、最小量のメタノール(100mL×3)で洗浄した。収集した白色の固形物をオーブン(50℃)で12時間乾燥させて、表題化合物1を白色の固形物(23.6g、76.0%)として得た。
【数21】
【0111】
例2:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドメタンスルホナート(化合物1のメタンスルホン酸塩)の調製
方法A:化合物1(300mg、0.59mmol)およびMeOH/EtO(3/1、40mL)の混合物に、0℃のMeOH(3mL)中のメタンスルホン酸(114mg、1.18mmol)の溶液を添加した。得られた混合物を0℃で3時間撹拌した。沈殿物を濾過により収集し、EtOで洗浄して、化合物2を白色の固形物(260mg、73%)として得た。
【0112】
方法B:ジクロロメタン/MeOH(40mL/10mL)中の化合物1(1.5g、2.95mmol)の懸濁液に、室温(15℃)で2mLのMeOH中のメタンスルホン酸(341mg、3.55mmol)を添加して、透明な溶液を形成した。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物はまだ透明であった。酢酸エチル(40mL)をこの混合物に添加し、室温で3時間撹拌し続けた。得られた沈殿物を濾過により収集して、化合物2を白色の固体(1.45g、83%)として得た。
【数22】
【0113】
例3:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドナトリウム塩(化合物1のナトリウム塩)の調製
0℃のメタノール(30mL)中の化合物1(300mg、0.59mmol)の懸濁液に、t-BuONa(85mg、0.88mmol)を緩徐に添加した。得られた混合物を室温まで加温し、2時間撹拌し続けた。この反応物を濃縮し、残分を粉砕し、エタノールで洗浄し、続いて濾過して、化合物3を白色の固形物(230mg、73%)として得た。
【数23】
【0114】
例4:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドカリウム塩(化合物1のカリウム塩)の調製
メタノール(50mL)中の化合物1(400mg、0.78mmol)の混合物に、t-BuOk(132mg、1.17mmol)を0℃、N下で添加した。この混合物を0℃で1時間撹拌し、室温で1.5時間撹拌し続けた。不溶性固形物を濾過により除去し、濾液を-20℃まで冷却した。この濾液にEtO(100mL)を添加した。得られた混合物を-20℃で1時間撹拌した。ヘキサン(70mL)を添加し、この混合物を-20℃で2時間撹拌し続けた。この固形物を濾過により収集し、真空で乾燥させて、化合物4を白色の固形物(150mg、35%)として得た。
【数24】
【0115】
例5:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドコリン塩(化合物1のコリン塩)の調製
DCM/MeOH(60mL/12mL)中の化合物1(200mg、0.39mmol)の溶液に、水酸化コリン(106mg、0.39mmol、MeOH中45%)を添加した。この混合物を室温で2時間撹拌し、次に濃縮して約30mLの溶媒を除去した。酢酸エチル(60mL)を添加し、この混合物を室温で2時間撹拌した。少量の沈殿が生じた後、この混合物を濃縮して約40mLの溶媒を除去し、追加の酢酸エチル(60mL)を添加した。この混合物を室温で2時間撹拌し、濾過して、化合物5を白色の固形物(180mg、76%)として得た。
【数25】
【0116】
例6:N-ヒドロキシ-2-(((2-(6-メトキシピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミドスルファート(化合物1の硫酸塩)の調製
DCM/MeOH(30mL/7.5mL)中の化合物1(200mg、0.39mmol)の懸濁液に、硫酸(1mL MeOH中の77mg、0.79mmol)を添加して、透明な溶液を形成した。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。沈殿が生じ、次にtert-ブチルメチルエーテル(60mL)を添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し続けた。この固形物を濾過により収集して、化合物6を白色の固形物(180mg、76%)として得た。
【数26】
【0117】
例7:N-ヒドロキシ-2-(メチル((2-(6-(メチルアミノ)ピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物2)
ステップ7a:(2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イルメチル)-メチル-アミン(化合物0503)
メタノール(125mL)中の0112(20.0g、70.4mmol)の溶液に、窒素雰囲気下でメタノール中のメチルアミン溶液(27%v/v、75mL、563.2mmol)を添加した。この反応混合物を室温で一晩撹拌し、溶媒を真空で除去して粗固形物生成物を得、これを窒素下でメタノール(550mL)およびTHF(220mL)に溶解した。水素化ホウ素ナトリウム(8g、211.2mmol)を少量ずつ添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。この反応混合物を真空中で蒸発させ、水(300mL)を添加した。水性混合物を塩化メチレンで抽出し、合わせた抽出物をNaSO上で乾燥させ、濃縮した。残分を6M HCl(230mL)中に溶解し、30分間撹拌した。水溶液を塩化メチレンで数回洗浄し、NaOH(4N)でpH9~10まで調整した。沈殿した固形物を濾過により収集し、乾燥させて(60℃、6時間)、淡黄色の固形物(18g、85%)を得た。
【数27】
【0118】
ステップ7b:2-[(2-クロロ-4-モルホリン-4-イル-チエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イルメチル)-メチル-アミノ]-ピリミジン-5-カルボン酸エチルエステル(化合物0504)
0503(10g、33.6mmol)、CHCN(400mL)および0305(6.8g、36.4mmol)の混合物を室温で撹拌した。次に、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)(220mL、1.26mol)を添加し、この溶液を一晩撹拌し、蒸発させた。塩化メチレン(300mL)を添加した後、有機相を水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、真空で濃縮して、残分を残した。この残分に酢酸エチルを添加し、この混合物を氷/水浴中で50分間撹拌した。表題生成物0504を白色の固形物(10.6g、70%)として収集した。
【数28】
【0119】
ステップ7c:エチル2-((2-(6-(メチルアミノ)ピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキシラート(化合物0603-111)
N-メチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ピリジン-2-アミン(0602-227)(351mg、1.5mmol)、0504(314mg、0.7mmol)、NaHCO(176mg、2.1mmol)およびPd(PPhCl(24.6mg、0.035mmol)を、トルエン/EtOH/HO(2.5mL/1.6mL/0.7mL)に溶解した。次に、この反応物を120℃、マイクロ波中で2時間撹拌した。水(8mL)をこの混合物に添加し、酢酸エチル(15mL×3)で抽出した。有機層を乾燥させ、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中のメタノール、5%v/v)により精製して、表題化合物0603-111(150mg、41%)を白色の固形物として得た。
【数29】
【0120】
ステップ7d:N-ヒドロキシ-2-(メチル((2-(6-(メチルアミノ)ピリジン-3-イル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキサミド(化合物2)
化合物2を、0603-236(150mg、0.29mmol)および新たに調製したヒドロキシルアミンメタノール溶液(6mL)から、例1において説明したのと同様の手順を用いて、褐色の固形物(21mg、14%)して調製した:
【数30】
【0121】
例8:2-(((2-(4-アミノフェニル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)-N-ヒドロキシピリミジン-5-カルボキサミド(化合物3)
ステップ8a:N-(4-ブロモフェニル)アセトアミド(化合物0601-150)
CHCl(50mL)中の4-ブロモアニリン(6.3g、63.7mmol)の溶液に、0℃で塩化アセチル(3.75g、47.7mmol)およびTEA(7.4g、73.4mmol)を添加し、2時間撹拌した。この反応混合物を水、鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物0601-150(3.6g、46%)を褐色の固形物として得た。
【数31】
【0122】
ステップ8b:N-(4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェニル)アセトアミド(化合物0602-150)
表題化合物0602-150を白色の固形物として、0601-150(2.0g、9.3mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(4.4g、17.5mmol)、酢酸カリウム(3.5g、14mmol)、およびPdCl(dppf)(76mg、0.088mmol)から、化合物0602-107(例34)について説明したのと同様の手順を用いて調製した(2.3g、94%)。
【数32】
【0123】
ステップ8c:エチル2-(((2-(4-アミノフェニル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキシラート(化合物0603-150)
トルエン(4mL)、エタノール(2mL)、および水(1mL)中の化合物0504-54(210mg、0.46mmol)、0602-150(159mg、0.60mmol)、重曹(118mg、1.4mmol)、および塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリド(17mg、0.02mmol)の混合物を窒素でフラッシュし、マイクロ波照射下で120℃で2時間加熱した。この反応混合物を酢酸エチルと水との間に分画し、有機層を鹹水で洗浄し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で蒸発させた。残分をジクロロメタンで洗浄して、エチル2-(((2-(4-アセトアミドフェニル)-4-モルホリノチエノ-[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)ピリミジン-5-カルボキシラート(136mg、53%)を白色の固形物として得た。
【数33】
【0124】
THF(10mL)中の先のエチルエステル(280mg、0.51mmol)の溶液に、40℃のHCl水溶液(6M、15mL)に添加し、2時間撹拌し、この反応混合物をNaHCOで中和させ、CHClで抽出し、有機層を水、鹹水で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン中のメタノール、2%v/v)によって精製して、表題化合物0603-150(180mg、48%)を白色の固形物として得た。
【数34】
【0125】
ステップ8d:2-(((2-(4-アミノフェニル)-4-モルホリノチエノ[3,2-d]ピリミジン-6-イル)メチル)(メチル)アミノ)-N-ヒドロキシピリミジン-5-カルボキサミド(化合物3)
化合物3を、0603-150(170mg、0.3mmol)および新たに調製したヒドロキシルアミンメタノール溶液(4mL)から、例1において説明したのと同様の手順を用いて、黄色の固形物として調製した(43mg、26%)。
【数35】
【0126】
例9:PI3キナーゼ活性アッセイ
以下のアッセイを使用して、PI3Kのさまざまなアイソフォームおよび突然変異体を阻害する化合物1の能力を決定した。
【0127】
PI3Kα
PI3Kα活性を、ADP-Glo発光キナーゼアッセイを使用して測定した。N末端GSTタグ付き組換え完全長ヒトp110αとタグなし組換え完全長ヒトp85αの複合体であるP13Kαとを、バキュロウイルスに感染したSf9細胞発現系において共発現させた。(p110α、U79143についてはGenBank受入番号、p85αについてはXM_043865)。タンパク質を、グルタチオン-アガロースを使用したワンステップアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。競合アッセイを行って、精製した組換えPI3Kα(p110α/p85α)およびPIP2の存在下で、ATPから生成したADPの量を測定した。PI3Kαを反応緩衝液(50mM HEPES、pH7.4、150mM NaCl、5mM MgCl2、3μMオルトバナジン酸Na、1mM DTT、10μM超純ATPおよび0.5%DMSO)中で20μMのPIP2基質とともに30℃で30分インキュベートした。次に、この反応で生成されたADPをADP-Gloアッセイによって測定した。このアッセイは2つのステップで行った。まず、等量のADP-GLO(商標)Reagent(Promega)を添加して、キナーゼ反応を終止させ、残存するATPを枯渇させた。第2のステップでは、キナーゼ検出試薬を添加したが、これは、ADPをATPへ同時に転換する。新たに合成されたATPを、カップリングされたルシフェラーゼ/ルシフェリン反応を使用して測定した。このアッセイにおける化合物1について決定されたIC50は、100nM未満であった。
【0128】
化合物1がPI3Kα突然変異体H1047RおよびE545Kを阻害する能力もまた、先に説明した一般的な手順を使用して決定した。両方の突然変異体について決定されたIC50は、100nm未満であった。
【0129】
PI3Kβ
PI3Kβの活性を、均一時間分解蛍光(HTRF)技術を利用した時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)アッセイを使用して測定した。N末端ヒスチジンタグ付き組換え完全長ヒトp110βとタグなし組換え完全長ヒトp85αとの複合体であるP13Kβを、バキュロウイルスに感染したSf21細胞発現系において共発現させた。(p110β、NM_006219についてはGenBank受入番号、p85αについてはXM_043865)。タンパク質を、グルタチオン-アガロースを使用したワンステップアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。競合アッセイを行って、精製した組換えPI3Kベータ(p110β/p85α)の存在下で、PIP2から生成したPIP3の量を測定した。PI3Kβを反応緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、10mM NaCl、4mM MgCl、2mM DTT、10μM ATPおよび1%DMSO)中で10μMのPIP2基質とともに30℃で30分インキュベートした。次に、この反応生成物を、PIP3検出タンパク質、ユーロピウム標識抗体、ビオチン標識PIP3プローブ、およびアロフィコシアニン標識ストレプトアビジンと混合した。センサー複合体を形成して、反応混合物中に安定したTR-FRETシグナルを生成する。このシグナル強度は、PIP3検出因子に結合するビオチン標識プローブが酵素活性によって生成されたPIP3によって置き換えられ、混合物中の非結合ビオチン標識PIP3プローブの量が増加するにつれて低下する。TR-FRETシグナルを、背景の減算を備えたマイクロプレートリーダーを使用して決定した。
【0130】
このアッセイにおいて化合物1について決定されたIC50は、100~1000nMであった。
【0131】
PI3Kδ
PI3Kδの活性を、蛍光偏光アッセイを使用して測定した。N末端ヒスチジンタグ付き組換え完全長ヒトp110δとタグなし組換え完全長ヒトp85αとの複合体であるP13Kδを、バキュロウイルスに感染したSf9細胞発現系において共発現させた。(p110δ、NM_005026についてはGenBank受入番号)。タンパク質を、グルタチオン-アガロースを使用したワンステップアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。競合アッセイを行って、精製した組換えPI3Kδ(p110δ/p85α)の存在下で、PIP2から生成したPIP3の量を測定した。PI3Kδを反応緩衝液(20mM HEPES(pH7.5)、10mM NaCl、4mM MgCl、2mM DTT、10μM ATPおよび1%DMSO)中で10μMのPIP2基質とともに30℃で1時間インキュベートした。次に、反応生成物を、PIP3検出タンパク質および蛍光PIP3プローブと混合した。偏光(mP)値は、PIP3検出因子に結合している蛍光プローブが、酵素活性によって生じるPIP3によって置き換えられ、混合物中の非結合蛍光プローブの量が増加するにつれ、低下する。偏光(mP)値は、背景の減算を備えたマイクロプレートリーダーを使用して決定した。
【0132】
このアッセイにおける化合物1について決定されたIC50は、100nM未満であった。
【0133】
PI3Kγ
PI3Kγの活性を、均一時間分解蛍光(HTRF)技術を利用した時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(TR-FRET)アッセイを使用して測定した。N末端ヒスチジンタグ付きヒトP13Kδは、バキュロウイルスに感染したSf9細胞発現系において発現した。(GenBank受入番号AF327656)タンパク質を、グルタチオン-アガロースを使用したワンステップアフィニティークロマトグラフィーによって精製する。競合アッセイを行って、精製した組換えPI3Kγ(p120γ)の存在下で、PIP2から生成したPIP3の量を測定した。PI3Kγ(2nM)を反応緩衝液(20mM HEPES、pH7.5、10mM NaCl、4mM MgCl、2mM DTT、10μM ATPおよび1%DMSO)中で10μMのPIP2基質とともに30℃で30分インキュベートした。次に、この反応生成物を、PIP3検出タンパク質、ユーロピウム標識抗体、ビオチン標識PIP3プローブ、およびアロフィコシアニン標識ストレプトアビジンと混合した。センサー複合体を形成して、反応混合物中に安定したTR-FRETシグナルを生成する。このシグナル強度は、PIP3検出因子に結合するビオチン標識プローブが酵素活性によって生成されたPIP3によって置き換えられ、混合物中の非結合ビオチン標識PIP3プローブの量が増加するにつれて低下する。TR-FRETシグナルを、背景の減算を備えたマイクロプレートリーダーを使用して決定した。
【0134】
このアッセイにおいて化合物1について決定されたIC50は、100~1000nMであった。
【0135】
例10:HDAC活性アッセイ
HDAC阻害活性を、Biomol Color de Lysシステム(AK-500、Biomol、Plymouth Meeting、PA)を用いて評価した。簡単に説明すると、HeLa細胞核抽出物をHDACの供給源として使用した。異なる濃度の試験化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)の中で段階希釈し、比色人工基質の存在下でHeLa細胞核抽出物に添加した。最終的なアッセイ条件には、50mMトリス/Cl、pH8.0、137mM NaCl、2.7mM KCl、および1mM MgClが含まれていた。反応を室温(25℃)で1時間行った後、発色液を添加して停止させた。相対的な酵素活性は、WALLAC Victor II 1420マイクロプレートリーダーにおいて蛍光強度として測定した(励起:350~380nm、発光:440~460nm)。データは、IC50計算のためのシグモイド用量応答曲線あてはめを備えたGraphPad Prism(第4.0a版)を用いて解析した。このアッセイにおける化合物1について決定されたIC50は、100nM未満であった。
【0136】
HDACアイソタイプに対する化合物1の活性も測定した。HDAC特異性アッセイは、BPS Bioscience(San Diego,CA)で、標準的な操作手順に従って実施した。簡単に説明すると、精製されたフラグ-(ヒトHDAC-1)、NCOR2-(ヒトHDAC3)、GST-(ヒトHDAC4、6、7、10および11)またはHis-(ヒトHDAC2、5、8および9)タグ付き酵素を、Sf9昆虫細胞において発現させ、精製した後に使用した。HDAC1、2、3、6、7、8、9および11について使用した基質は、BPS Bioscienceによって開発されたHDAC基質3とした。他のHDAC酵素については、HDACクラス2a基質を使用した。室温で3時間実施されたHDAC11酵素アッセイを除き、すべての酵素反応は37℃で30分間を2回実施した。
【0137】
以下の表は、HDAC1~11の各々についての結果を明らかにしており、IC50値は次のように提供されていた:I>1000nM、100nM<II<1000nM、10nM<III<100nM、IV<10nM。
【0138】
【表1】
【0139】
例11:マウス異種移植モデル-CTW26.WTマウス結腸癌細胞における化合物1および抗PD-1の研究
動物:雌のBalb/cマウス、8週齢、高脂肪食を給餌
【0140】
化合物:
化合物1:50mg/kgで経口投与、5日間投薬、2日間休薬のスケジュール(5+2-)
アイソタイプ対照:BioLegend(商標)、San Diego,CAから入手したLEAF(商標)で精製したラットIgG2a、100ug/マウス1匹で腹腔内投与、週2回。
PD-1抗体:BioLegend(商標)、San Diego,CAから入手したLEAF(商標)ラット抗マウスCD279(PD-1)、クローン29F.1A12;100ug/マウス1匹で腹腔内投与、週2回。
【0141】
細胞の投与:
CT26.WT細胞をフラスコから収集し、添加物非含有のRPMI1640の中で1回洗浄した。終濃度は、単純培地(RPMIー1640)の中で到達し、マウスに投与するまで氷上で維持した。腫瘍がいったん7日後または8日後に触知可能になると、マウスを群分けし、体重によって無作為にした。抗体で処置を開始し、化合物1を直ちに開始した。
【0142】
【表2】
【0143】
研究スケジュール:
投与が開始されるまで動物をモニターし、その後、腫瘍体積がプロトコル限界に達するか、潰瘍形成があまりにも重症になるまで、投与中に動物を週2回測定した。腫瘍組織および血液/血漿は、研究の終了時に収集した。
【0144】
結果
この研究の結果は、以下の表および図1に提示されている。第1~3群には、評価可能な7匹のマウスがいた。第4~6群では、8匹のマウス全部が評価可能であった。50mg/kgでの化合物1単独では、腫瘍成長のわずかな阻害しか示さなかった。抗PD-1は、より大きな腫瘍成長阻害を示したが、それでも50%未満であった。しかしながら、化合物1と抗PD-1との組み合わせは、腫瘍成長のほぼ完全な阻害を示した。
【0145】
【表3】
【0146】
例12:A20マウス異種移植モデルにおける化合物1および抗PD-1の研究
動物:通常の食餌を与えられた4~5週齢の雌のBalb/cマウス
【0147】
化合物:
化合物1:50mg/kgまたは100mg/kgで経口投与、5日間投薬、2日間休薬のスケジュール(5+2-)。
アイソタイプ対照:BioLegend(商標)、San Diego,CAから入手したLEAF(商標)で精製したラットIgG2a、100ug/マウス1匹で腹腔内投与、週2回、3週間。
抗PD-1抗体:BioLegend(商標)、San Diego,CAから入手したLEAF(商標)ラット抗マウスCD279(PD-1)、クローン29F.1A12;100ug/マウス1匹で投与、週2回、3週間。
ビヒクル:化合物1ビヒクル-30%Captisol(商標)、5+2-投与、経口3週間。
【0148】
細胞の投与:
A20同系細胞をフラスコから収集し、添加物非含有のRPMI1640の中で1回洗浄した。終濃度は、単純培地(RPMIー1640)の中で到達し、マウスに投与するまで氷上で維持した。動物の右脇腹に2×10個の細胞を植えつけた。腫瘍が100cmを超えたとき(13日後頃)に投与を開始し、21日間または腫瘍が2000mmの限界に達するまで投与を継続した。
【0149】
【表4】
【0150】
研究スケジュール:
動物は、腫瘍が完全に触知可能で測定される13日後頃に投薬を開始した。腫瘍が屠殺を必要とする潰瘍形成を示し始めるまで、投薬は継続した。ELISAおよびフロー分析を実行するために、広範囲の壊死の前に腫瘍を収集した。
【0151】
結果
この研究の結果は、以下の表および図2に提示されている。100mg/kgの化合物1単独および抗PD-1単独の両方が有意な腫瘍成長阻害を示した。化合物1と抗PD-1との組み合わせは、いずれかの薬剤単独よりも大きな腫瘍成長阻害を示した。
【0152】
【表5】
【0153】
本明細書で参照される特許および科学文献は、当業者が利用可能である知識を確立している。本明細書に引用されているすべての米国特許および公開済みまたは未公開の米国特許出願は、参照により組み込まれる。本明細書で引用されたすべての公開された外国特許および特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用された他のすべての公表された参考文献、文書、原稿、および科学文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
本発明は、その好ましい実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、当業者には、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細におけるさまざまな変更をそこで行うことができることが理解されるであろう。
図1
図2