(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】標的化部分-薬物グラフト化免疫細胞組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240408BHJP
A61K 47/50 20170101ALI20240408BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240408BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20240408BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240408BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240408BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240408BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240408BHJP
A61K 31/5365 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K47/50
A61K47/54
A61K47/60
A61K35/17
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
A61K31/5365
(21)【出願番号】P 2021516606
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 US2019052097
(87)【国際公開番号】W WO2020061419
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517342844
【氏名又は名称】アリゾナ ボード オブ リージェンツ オン ビハーフ オブ ザ ユニバーシティー オブ アリゾナ
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ヤンウック
(72)【発明者】
【氏名】ブル,デビッド・エイ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ダニエル・ヨンウォン
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/167809(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/109325(WO,A1)
【文献】特表2007-503840(JP,A)
【文献】国際公開第2010/126319(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107789366(CN,A)
【文献】Science and Technology of Advanced Materials,2016年,Vol.17(1),pp.677-684
【文献】Breast Cancer Research,2014年,Vol.16:209,pp.1-12,http://breast-cancer-research.com/content/16/2/209
【文献】PNAS,2016年,Vol.113(37),pp.10304-10309
【文献】Biomaterials,2014年,Vol.35,pp.5627-5635
【文献】Clin. Cancer Res.,2015年,Vol.21(14),pp.3113-3120
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 35/00
A61K 39/00
A61K 31/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌細胞を標的とするための化学免疫療法組成物であって、
a.目的の細胞上の標的に特異的であり、結合することができる標的化部分;
b.標的化部分にコンジュゲートしており、標的化部分-薬物複合体を形成している、薬物;
c.ポリエチレングリコール(PEG)に連結しており、リン脂質-PEGリンカーを形成している
、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含むリン脂質であって、リン脂質-PEGリンカーが標的化部分-薬物複合体に結合している、リン脂質;および
d.標的化部分-薬物複合体がリン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞に疎水的に結合している、免疫細胞;
を含み、
標的化部分-薬物複合体が、免疫細胞を目的の細胞へ差し向け、
薬物が、目的の細胞に対して細胞毒性作用を有する、
上記組成物。
【請求項2】
PEGが2kDa~10kDaの分子量を有する、請求項
1に記載の組成物。
【請求項3】
目的の細胞が乳癌細胞である、請求項1
または2に記載の組成物。
【請求項4】
免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンパ球、白血球および貪食細胞からなる群から選択される、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
リンパ球が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項
4に記載の組成物。
【請求項6】
標的がHER2である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
標的化部分が、抗体またはその断片であ
り、該断片が、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子、または抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
標的化部分が、抗HER2抗体である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
標的化部分が、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ペルツズマブ、ベバシズマブまたはリツキシマブである、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
標的化部分が、抗CD53抗体、抗CD30抗体、抗CD20抗体、抗Ep-CAM抗体、抗VEGF抗体、抗VEGFR抗体、抗MSLN抗体、抗CD319抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗FGFR抗体、抗CD44抗体、抗Notch1抗体、抗ムチン抗体、抗MCP-1抗体、抗ルイス-Y抗原抗体、抗PCDC1抗体、抗IL2抗体、抗EGFR抗体、抗CEACAM5抗体、抗MUC1抗体、抗グリピカン3抗体、抗PTK7抗体、抗CD19抗体、抗RANKL抗体、抗Bリンパ腫細胞抗体、抗DR5抗体、抗CLDN19抗体、抗HER3抗体、抗HER1抗体、抗CD4抗体または抗CD70抗体である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
薬物がエムタンシン(DM1)である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
処置を必要とする対象において腫瘍を処置する方法で使用するための化学免疫療法組成物であって、該組成物が
a.目的の細胞上の標的に特異的であり、結合することができる標的化部分;
b.標的化部分にコンジュゲートしており、標的化部分-薬物複合体を形成している、薬物;
c.ポリエチレングリコール(PEG)に連結しており、リン脂質-PEGリンカーを形成している
、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含むリン脂質であって、リン脂質-PEGリンカーが標的化部分-薬物複合体に結合している、リン脂質;および
d.標的化部分-薬物複合体がリン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞に疎水的に結合している、免疫細胞;
を含み、
標的化部分-薬物複合体が、免疫細胞を目的の細胞へ差し向け、
薬物が、目的の細胞に対して細胞毒性作用を有する、
ことを特徴とする、上記組成物。
【請求項13】
癌細胞を標的とするための化学免疫療法組成物であって、該組成物が
a.目的の細胞上の標的に特異的であり、結合することができる標的化部分;
b.標的化部分にコンジュゲートしており、標的化部分-薬物複合体を形成している、薬物;
c.ポリエチレングリコール(PEG)に連結しており、リン脂質-PEGリンカーを形成している
、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンを含むリン脂質であって、リン脂質-PEGリンカーが標的化部分-薬物複合体に結合している、リン脂質;および
d.標的化部分-薬物複合体がリン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞に疎水的に結合している、免疫細胞;
を含み、
該組成物が、対象に投与され、
標的化部分-薬物複合体が、免疫細胞を目的の細胞へ差し向け、
薬物が、目的の細胞に対して細胞毒性作用を有する、
ことを特徴とする、上記組成物。
【請求項14】
PEGが2kDa~10kDaの分子量を有する、請求項
12または13に記載の組成物。
【請求項15】
目的の細胞が乳癌細胞である、請求項
12~
14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンパ球、白血球および貪食細胞からなる群から選択される、請求項
12~
15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
リンパ球が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、請求項
16に記載の組成物。
【請求項18】
標的がHER2である、請求項
14~
17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
標的化部分が、抗体またはその断片であ
り、該断片が、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、線状抗体、一本鎖抗体分子、または抗体断片から形成される多重特異性抗体を含む、請求項
14~
18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
標的化部分が、抗HER2抗体である、請求項
14~
19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
標的化部分が、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ペルツズマブ、ベバシズマブまたはリツキシマブである、請求項
14~
20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
標的化部分が、抗CD53抗体、抗CD30抗体、抗CD20抗体、抗Ep-CAM抗体、抗VEGF抗体、抗VEGFR抗体、抗MSLN抗体、抗CD319抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗FGFR抗体、抗CD44抗体、抗Notch1抗体、抗ムチン抗体、抗MCP-1抗体、抗ルイス-Y抗原抗体、抗PCDC1抗体、抗IL2抗体、抗EGFR抗体、抗CEACAM5抗体、抗MUC1抗体、抗グリピカン3抗体、抗PTK7抗体、抗CD19抗体、抗RANKL抗体、抗Bリンパ腫細胞抗体、抗DR5抗体、抗CLDN19抗体、抗HER3抗体、抗HER1抗体、抗CD4抗体または抗CD70抗体である、請求項
14~
21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
薬物がエムタンシン(DM1)である、請求項
14~
22のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]本発明は、特定の癌細胞を標的とする癌療法、より具体的には、化学療法と免疫療法とを組み合わせる方法および組成物、例えば特定の癌細胞を標的として破壊するために、標的化部分-薬物複合体または標的化部分-薬物グラフト化免疫細胞(表面処理免疫細胞)を含む組成物に関する。本発明はまた、標的化部分-薬物複合体を免疫細胞膜上および/または細胞膜内に埋込むことにより、標的化部分-薬物グラフト化免疫細胞(表面処理免疫細胞)を調製するための方法ならびに、標的化部分-薬物グラフト化免疫細胞(表面処理免疫細胞)を使用する方法に関する。
【0002】
[0002]有効な化学免疫療法は、化学療法剤が癌細胞死を誘導し、かつ、免疫調節を促進し、標的化学療法が、免疫細胞に対する有害作用を最小化し、そして、免疫エフェクター細胞が癌細胞に対する細胞溶解活性を維持することを必要とすると考えられている。
【0003】
[0003]本発明は、標的癌化学免疫療法の開発のために、化学療法と免疫療法を組み合わせるための方法および組成物を特徴とする。この組合せアプローチにおいて、標的化部分-薬物複合体(例えば、抗体-薬物コンジュゲート(ADC))は、免疫細胞の表面に導入される。標的化部分-薬物複合体(例えばADC)を免疫細胞表面上および/または表面内に埋込む方法は、ポリマー脂質鎖と細胞膜の脂質二重層との間の疎水性相互作用を利用し得る。脂質-コンジュゲート標的化部分-薬物複合体(例えば、疎水化標的化部分-薬物複合体)を、細胞膜の完全性を破壊することなく、脂質二重層中に取り込み、表面処理細胞に新しい機能を与えることができる。発明者らは、驚くべきことに、本明細書に記載の表面処理免疫細胞、例えば本明細書に記載する標的化部分-薬物複合体(例えばADC)を特徴とする免疫細胞は、同時に、強力な化学療法剤を標的腫瘍に送達し、養子移入免疫細胞の腫瘍部位へのホーミングをその細胞毒性活性を損なうことなく増強することができることを見出した。これにより、癌と戦うための組合せ抗癌有効性を最終的に強化することができる。
【0004】
[0004]標的化タンパク質またはペプチドを結合させることは、幹細胞上で試みられていたが、技術の目的は、再生のために特定のエリアに細胞を動員することであった。しかしながら、本発明では、細胞、例えば癌細胞を死滅させるために、標的化部分-薬物複合体を免疫細胞、例えばナチュラルキラー(NK)細胞に結合させる。さらに、細胞を標的化し、標的細胞へと送達するために使用される実体が異なっている。例えば、特定の実施形態において、本発明は、標的化のために癌細胞マーカーを使用する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]本発明は、標的癌化学免疫療法の開発のために化学療法と免疫療法とを組み合わせる組成物を特徴とする。本明細書の組成物は、リン脂質-ポリエチレングリコール(PEG)リンカーを介して免疫細胞に結合される、標的化部分-薬物複合体を含む。例えば、標的化部分-薬物複合体は、リン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞の脂質二重層中に取り込み得る。いかなる理論または機構にも本発明を限定することを望むものではないが、本発明の表面処理免疫細胞(例えば、免疫細胞の表面上および/または表面内に取り込まれた標的化部分-薬物複合体)は、
(1)標的細胞、例えば癌細胞に向かう改変(表面処理)免疫細胞のホーミングを増強し、それにより、環境、例えば腫瘍環境中の免疫細胞の密度を上昇させ、そして、
(2)腫瘍増殖を阻止、および/または癌細胞を死滅させ得ると考えられている。これらの2つの事象は、癌細胞死を相乗的に引き起こし、免疫系を活性化することができ、後者は、転移性癌細胞および/または循環腫瘍細胞を死滅させることができる。本発明は、本明細書に記載する標的化部分-薬物複合体(またはADC)、例えばT-DM1を特徴とするものに限定されない。現在市販されているものおよび開発中のものを含む任意の適当な抗体-薬物コンジュゲートまたは標的化部分-薬物複合体を、本明細書に記載の方法および組成物を用いて、免疫細胞(例えば、任意の免疫細胞)の表面上に取り込み得る。
【0006】
[0006]端的には、本発明は、細胞、例えば癌細胞を標的とするための化学免疫療法組成物を特徴とする。特定の実施形態において、組成物は、目的の細胞上の標的に特異的であり、結合することができる標的化部分;標的化部分にコンジュゲートしており、標的化部分-薬物複合体を形成している、薬物;ポリエチレングリコール(PEG)に連結しており、リン脂質-PEGリンカーを形成しているリン脂質であって、リン脂質-PEGリンカーが標的化部分-薬物複合体に結合している、リン脂質;および標的化部分-薬物複合体がリン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞に疎水的に結合している、免疫細胞を含む。特定の実施形態において、標的化部分-薬物複合体は免疫細胞を目的の細胞へ差し向け、薬物は目的の細胞に対して細胞毒性作用を有する。
【0007】
[0007]特定の実施形態において、リン脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンおよび1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PEGは2kDa~10kDaの分子量を有する。いくつかの実施形態において、PEGは、4.5kDa~5.5kDaの分子量を有する。いくつかの実施形態において、目的の細胞は乳癌細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンパ球、白血球および貪食細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンパ球、白血球および貪食細胞からなる群からの2以上の細胞の組合せである。いくつかの実施形態において、リンパ球は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。いくつかの実施形態において、標的はHER2である。いくつかの実施形態において、標的化部分は、抗体またはその断片である。いくつかの実施形態において、標的化部分は、抗HER2抗体である。いくつかの実施形態において、標的化部分は、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ペルツズマブ、ベバシズマブまたはリツキシマブである。いくつかの実施形態において、標的化部分は、抗CD53抗体、抗CD30抗体、抗CD20抗体、抗Ep-CAM抗体、抗VEGF抗体、抗VEGFR抗体、抗MSLN抗体、抗CD319抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗FGFR抗体、抗CD44抗体、抗Notch1抗体、抗ムチン抗体、抗MCP-1抗体、抗ルイス-Y抗原抗体、抗PCDC1抗体、抗IL2抗体、抗EGFR抗体、抗CEACAM5抗体、抗MUC1抗体、抗グリピカン3抗体、抗PTK7抗体、抗CD19抗体、抗RANKL抗体、抗Bリンパ腫細胞抗体、抗DR5抗体、抗CLDN19抗体、抗HER3抗体、抗HER1抗体、抗CD4抗体または抗CD70抗体である。いくつかの実施形態において、薬物はエムタンシン(DM1)である。
【0008】
[0008]本発明はまた、治療を必要とする対象において腫瘍を治療するための方法を特徴とする。特定の実施形態において、方法は、治療上有効量の本発明による組成物を対象に投与することを含み、ここで、標的化部分は、腫瘍の細胞上の標的に特異的である。特定の実施形態において、薬物は腫瘍の細胞に対して細胞毒性作用を有する。
【0009】
[0009]本明細書に記載する任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の範囲内に含まれるが、ただし、任意のかかる組合せに含まれる特徴は、文脈、本明細書、および当技術分野の当業者の知識から明らかなように、相互に矛盾するものではない。本発明のさらなる利点および態様は、以下の詳細な記載および特許請求の範囲において明らかである。
【0010】
[0010]本発明の特徴および利点は、添付の図面に関連して示す以下の詳細な説明を考慮すれば明らかであろう:
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1-1】[0011]
図1Aは、非改変NK細胞と、50、100または200μgのDMPE-PEG-T-DM1を用いて生成したSE-NK/T-DM1細胞との間の細胞生存率の比較を示す。データ=平均±SDである。
【
図1-2】[0012]
図1Bは、10%血清を含有する培地中でインキュベートしたSE-NK/T-DM1細胞の表面上のT-DM1の表面滞留時間を示す。SE-NK/T-DM1細胞を完全増殖培地中でインキュベートし、細胞の一部を各タイムポイントで48時間まで採取した。SE-NK/T-DM1細胞の表面上のT-DM1の存在は、Alexa 488-コンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(H+L)抗体を用いて検出した。プロットは、2回の独立した実験から選択される。 [0013]
図1Cは、フローサイトメトリーにより決定したSE-NK/T-DM1-FITC細胞の細胞膜上のCD56および2B4の利用可能性を示す。SE-NK/T-DM1-FITC細胞を調製した後、APC-コンジュゲート抗CD56抗体またはAPC-コンジュゲート抗2B4抗体を用いて、受容体利用可能性を検出した。全ての画像およびプロットは、2回の独立した実験の1回からのものである。
【
図2】[0014]
図2は、SE-NK/T-DM1細胞のHER2-陽性癌細胞への結合を示す。癌細胞をNK細胞、SE-NK/T-DM1細胞またはT-DM1+NK共処理物と、10:1のE:T比率で共インキュベートした。30分後、非結合細胞を完全に洗浄し、残存NK細胞をフローサイトメトリーを用いて計数し、残存E:T比率を算出した。癌細胞をCellTracker Red CMTPXを用いて赤色に標識し、NK細胞を、CellTracker Blue CMACを用いて青色に標識した。データは、平均±SDを表す(ns、有意性なし;****P<0.0001、ボンフェローニポストホックテストを用いた一元ANOVAによる)。
【
図3】[0015]
図3Aは、T-DM1+NK共処理物またはSE-NK/T-DM1細胞のSK-BR-3細胞との共インキュベートによって誘導された癌細胞死を示す。CMAC(青色)色素で標識した癌細胞を、非改変NK細胞、T-DM1、T-DM1+NK共処理物またはSE-NK/T-DM1細胞と、非結合NK細胞を除去せずに24時間、インキュベートした。 [0016]
図3Bは、T-DM1+NK共処理物またはSE-NK/T-DM1細胞をCalu-3細胞と共インキュベートすることにより誘導された癌細胞死を示す。実験の詳細は上記
図3Aと同じである。 [0017]
図3Cは、T-DM1+NK共処理物またはSE-NK/T-DM1細胞をMDA-MB-231細胞と共インキュベートすることにより誘導された癌細胞死を示す。実験の詳細は上記
図3Aと同じである。 [0018]
図3Dは、SE-NK/T-DM1細胞の標的抗癌活性を示し、ここで、非結合NK細胞は、SE-NK/T-DM1細胞のSK-BR-3細胞との共インキュベーション後に除去した。非結合NK細胞は、2時間のインキュベーション後に除去し、残存細胞混合物をさらに24時間インキュベートした。癌細胞死を、annexin V Alexa Fluor 488およびヨウ化プロピジウムのキットを用いてフローサイトメトリーにより測定した。データは平均±SDを表す(ns、有意性なし、*P<0.05、**P<0.01、****P<0.0001、ボンフェローニポストホックテストを用いた二元ANOVAによる)。 [0019]
図3Eは、SE-NK/T-DM1細胞の標的抗癌活性を示し、ここで、非結合NK細胞は、SE-NK/T-DM1細胞のSK-Calu-3細胞との共インキュベーション後に除去した。 [0020]
図3Fは、SE-NK/T-DM1細胞の標的抗癌活性を示し、ここで、非結合NK細胞は、SE-NK/T-DM1細胞のMDA-MB-231細胞との共インキュベーション後に除去した。
【
図4】[0021]
図4Aは、HER2-陽性Calu-3癌の相対腫瘍体積変化を示す。腫瘍を雌NOD scid Gamma(NSG)マウスの左側腹部に接種した。腫瘍保有マウスは、全く処置を受けないか、0.21mgのT-DM1、1×107のNK細胞、0.21mgのT-DM1+1×107のNK共処理物または1×107のSE-NK/T-DM1細胞の投与を、尾静脈注入により、14日間毎週受けた。全ての剤は、250μLのPBS中で新しく調製し、注入は1分間と予定された。データは、平均±SDを表す(****P<0.0001、ボンフェローニポストホックテストを用いた二元反復測定ANOVA)。 [0022]
図4Bは、HER2-陰性MDA-MB-231癌の相対腫瘍体積変化を示す。実験の詳細は上記
図4Aと同じである。 [0023]
図4Cは、Calu-3腫瘍保有NSGマウスにおけるSE-NK/T-DM1細胞の生体分布を示す(n=3)。動物は、全く処置を受けないか、1×107のNK細胞、0.21mgのT-DM1+1×107のNK共処理物、または1×107のSE-NK/T-DM1細胞の投与を、尾静脈注入を介して受けた。全ての剤は、1分間の注入用に250μLのPBS中で新しく調製した。腫瘍および他の生体器官を処置の24時間後に回収した。単個細胞50の浮遊液を回収した組織から調製し、APC-コンジュゲート抗CD56抗体を適用してNK細胞を検出した。フローサイトメーターを用いて、1×105の総細胞間のNK細胞を計数した。データは、平均±SDを表す(ns、有意性なし;***P<0.001;****P<0.0001;ボンフェローニポストホックテストを用いた二元ANOVA)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[0024]用語
特に断らない限り、本明細書で使用する全ての技術的および科学的用語は、開示する発明が属する当技術分野の当業者が共通して理解するのと同じ意味を有する。単数用語「a」、「an」、および「the」は、文脈上明らかにそうでない限り、複数形の参照対象を含む。同様に、語「または」は、文脈上明らかにそうでない限り、「および」を含むと意図される。用語「含む(comprising)」は、提示された定義されている要素に加えて、他の要素も存在し得ることを意味する。「含む」の使用は、限定ではなく包含を示す。言い換えれば、用語「含む」は、「主に含むが、それだけでなくてもよい」ことを意味する。さらに、語「含む」の変異形、例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、同様に同じ意味を有する。一観点において、本明細書に記載する組成物、方法およびその個々の構成要素に関連し、本発明に必須として本明細書に記載する技術は、特定されていない要素を、必須か否かに関わらず、なお受け入れる(「含む」)。
【0013】
[0025]本明細書に開示する全ての実施形態は、文脈上明らかにそうでない限り、他の実施形態と組み合わせ得る。本開示の実施形態の実施および/または試験のための適当な方法および材料を下記に記載する。かかる方法および材料は単に例示のためであって、限定することを意図するものではない。本明細書に記載するものと類似している、または同等の他の方法および材料を使用してもよい。本明細書で言及する全ての出版物、特許出願、特許および他の参考文献は、全ての目的のために、参照によりその全体が組み込まれる。対立する場合は、用語の説明を含む本明細書が優先される。本明細書に記載するものと類似している、または同等の方法および材料を、本開示の技術の実施または試験に使用してもよいが、適当な方法および材料は下記に記載する。材料、方法および実施例は、単に例示のためであって、限定することを意図するものではない。本開示の種々の実施形態の概要を容易にするために、特定の用語について次の説明を示す:
[0026]抗体および抗体断片:本明細書の用語「抗体」は、最も広義の意味で使用され、種々の抗体構造を包含し、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)および抗体断片が挙げられるが、これらに限定されない。「抗体」は、少なくとも軽鎖および重鎖イムノグロブリン可変領域を含み、抗原のエピトープに特異的に結合するペプチド(例えばポリペプチド)を指していてもよい。抗体は、コンジュゲートされていてもよい。抗体は、検出可能な標識、例えば酵素、ハプテン、またはフルオロフォアにより標識されていてもよい。「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合する、インタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体とは異なる分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);および抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
[0027]抗体薬物コンジュゲート(ADC):「抗体-薬物コンジュゲート」は、薬物、例えば細胞毒性化合物に化学的に連結したモノクローナル抗体を含む物質を指す。モノクローナル抗体は、特異的な標的、例えば特定の細胞種で見られるタンパク質または受容体に結合する。連結した薬物は標的細胞に入り、破壊し得る。ADCは典型的には、癌の処置のための標的療法として使用される。
【0015】
[0028]有効量:本明細書で使用する用語「有効量」は、所望の効果を誘発するのに有効な化合物または組成物の投与量を指す。本明細書で使用するこの用語はまた、動物、哺乳類、またはヒトにおいて所望のインビボ効果をもたらすのに有効な量を指し得る。
【0016】
[0029]モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体:用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体集団から得られた抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、同一である、および/または同一のエピトープに結合するが、例えば天然に生じる変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の産生の間に生じた、可能性のあるバリアント抗体を除いては、かかるバリアントは、一般的に少量で存在する。用語「ポリクローナル抗体」は、典型的には、異なる決定因子(エピトープ)に対する異なる抗体を含む抗体調製物を指す。ポリクローナル抗体と対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、単一の決定因子または抗原に対するものである。したがって、修飾語句「モノクローナル」は抗体の特性が、実質的に均一な抗体集団から得られたものであることを示しており、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものとは解釈されない。モノクローナル抗体(mAb)は、免疫療法の主流の方式ならびに細胞毒性剤の標的送達のビヒクルとして確立されている。
【0017】
[0030]特異的:本明細書で使用する語句「特異的結合」「特異的に結合する」または「~に特異的」は、標的とバイオマーカー特異的剤との間の結合のような、測定可能かつ再現性のある相互作用を指し、これは、生体分子を含む異質性の分子集団の存在下における標的の存在を決定付ける。例えば、ある標的に特異的に結合する結合性実体は、他の標的への結合より高い親和性、結合活性で、より容易に、および/またはより長期間、この標的に結合する抗体でもよい。
【0018】
[0031]対象:本明細書で使用する用語「対象」は、ヒトおよび非ヒト動物を含むことを意図している。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば非哺乳類(例えばニワトリ、両生類、爬虫類)および哺乳類、例えば非ヒト霊長類、家畜化したおよび/または農業的に有用な動物(例えばヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ等)および齧歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター、モルモット等)を含む。
【0019】
[0032]標的化部分:用語「標的化部分」は、改変細胞(例えば免疫細胞)を特定の部位または関連部位へ結合または標的化または指向させるのに作用する任意の化学的実体を指し、例えば、標的化部分は、免疫細胞を標的、例えば標的細胞の表面上のバイオマーカーに結合させる抗体またはその断片でもよい。標的化部分は例えば、改変細胞を特異的なタンパク質または酵素、または、特定の細胞部位、または特定の細胞種に差し向けるのに使用し得る。標的化部分は、改変細胞の蓄積を選択的に増強する補助に使用し得る。適当な標的化部分としては、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、ステロイド、多糖、ホルモン、補助因子、核酸、抗体、キメラ抗原受容体および薬物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
[0033]処置:本明細書で使用する用語「処置する」または「処置」または「処置すること」は、治療的な処置または予防的または防止的な対策の両方を指し、ここで、目的は、疾患の進行を防止または遅延させること、例えば、心臓障害の進行を遅延させること、または、病状、疾患または障害、例えば不十分なもしくは望まない機能を特徴とする任意の障害のうち、少なくとも1つの有害作用または症候の進行を低減させることである。処置は一般的に、この用語が本明細書で定義されるように、1つまたは複数の症候または臨床マーカーが低減する場合に「有効」である。あるいは、処置は、疾患の進行が低減または停止する場合に「有効」である。すなわち、「処置」は、疾患の症候の改善またはマーカーの低下を含むだけではなく、処置が行われない場合に予期される症候の進行または悪化の休止または遅延化も含む。有益な、または所望の臨床結果としては、検出可能であっても検出不能であっても、1つまたは複数の症候の軽減、疾患の程度の低下、安定した(例えば悪化していない)疾患の状態、疾患進行の遅延または遅延化、疾患状態の改善または緩和および緩解(部分的であっても全体的であっても)が挙げられるが、これらに限定されない。「処置」は、処置を受けない場合に予期される生存と比較して、生存を延長することを意味し得る。処置を必要とする人には、病状について既に診断されている人ならびに、遺伝的な易罹患性または他の要因、例えば体重、食事および健康によって病状を発症する可能性が高い人が含まれる。
【0021】
[0034]表面処理免疫細胞
本発明は、標的癌化学免疫療法の開発のために、化学療法と免疫療法とを組み合わせる組成物を特徴とする。本明細書の組成物は、標的化部分-薬物複合体(例えば抗体-薬物コンジュゲート(ADC))を含み、これは、リン脂質-ポリエチレングリコール(PEG)リンカーを介して免疫細胞に結合されている。例えば、標的化部分-薬物複合体(例えばADC)は、リン脂質-PEGリンカーを免疫細胞の脂質二重層中に取り込むことにより、免疫細胞に結合していてもよい。
【0022】
[0035]以前に議論されたように、本発明は、本明細書に記載する標的化部分-薬物複合体(例えばADC)、例えばT-DM1を特徴とするものに限定されない。現在市販されているものおよび開発中のものを含む任意の適当な標的化部分-薬物複合体が、本明細書に記載の方法および組成物を用いて免疫細胞(例えば任意の免疫細胞)の表面上に取り込まれ得る。
【0023】
[0036]いくつかの実施形態において、免疫細胞は、ナチュラルキラー(NK)細胞である。しかし、本発明はNK細胞に限定されない。いくつかの実施形態において、免疫細胞はリンパ球、例えばT細胞(例えば、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、ガンマデルタT細胞等)、B細胞等である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は白血球である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は貪食細胞、例えば好中球、マクロファージ、単球、マスト細胞等である。本発明は上述の細胞に限定されない。
【0024】
[0037]標的化部分-薬物複合体は、特定の細胞マーカーまたは癌細胞に特異的な標的化部分(または結合部分)を含む。標的化部分は、例えば、抗体または抗体断片であってもよい。しかしながら、本発明は、抗体またはその断片に限定されない。標的化部分は、標的に特異的に結合することができる任意の化学的実体を含み得る。適当な標的化部分としては、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、ステロイド、多糖、ホルモン、補助因子、核酸、抗体、キメラ抗原受容体および薬物が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、標的は、標的化部分に特異的に結合することができる任意のリガンドでもよい。
【0025】
[0038]一例として、特定の実施形態において、標的化部分は抗HER2標的化部分(例えば抗HER2抗体、例えばトラスツズマブ)、例えばHER2に特異的な標的化部分である。HER2は、特定の種類の癌細胞、例えば乳癌細胞の表面に過剰発現している細胞マーカーである。標的化部分としては、アレムツズマブ、ペルツズマブ、ベバシズマブ、リツキシマブ、アブシキシマブ、アダリムマブ、アレファセプト、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベズロトクスマブ、カナキヌマブ、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、ダクリズマブ、デノスマブ、エファリズマブ、ゴリムマブ、インフレクトラ、イピリムマブ、イキセキズマブ、ナタリズマブ、ニボルマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペムブロリズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、セクキヌマブ、ウステキヌマブ等が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、標的化部分が標的とする細胞マーカーは、上述の抗体が標的とする細胞マーカーのいずれかを含む(が、これらに限定されない)。特定の実施形態において、標的化部分は、抗CD53抗体、抗CD30抗体、抗CD20抗体、抗Ep-CAM抗体、抗VEGF抗体、抗VEGFR抗体、抗MSLN抗体、抗CD319抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗FGFR抗体(例えば抗FGFR2抗体)、抗CD44抗体、抗Notch1抗体、抗ムチン抗体、抗MCP-1抗体、抗ルイス-Y抗原抗体、抗PCDC1抗体、抗IL2抗体、抗EGFR抗体、抗CEACAM5抗体、抗MUC1抗体、抗グリピカン3抗体、抗PTK7抗体、抗CD19抗体、抗RANKL抗体、抗Bリンパ腫細胞抗体、抗DR5抗体、抗CLDN19抗体、抗HER3抗体、抗HER1抗体、抗CD4抗体、抗CD70抗体等でもよい。
【0026】
[0039]標的化部分-薬物複合体はさらに、薬物、例えば細胞毒性薬物を含む。本発明により使用し得る薬物の非限定的な例としては、エムタンシン(DM1)、ブレンツクスマブベドチン、ゲムツズマブオオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、トラスツズマブエムタンシン、BT-062、CDX-011、ミラツズマブ-dox、SAR3419、AGS-16M8F、ASG-22ME、ASG-5ME、BAY 79-4620、BAY 94-9343、BIIB015、IMGN529、IMMU-130、ロルボツズマブメルタンシン、MDX-1203、PSMA ADC、RG7593、SAR566658、SGC-75等が挙げられる。標的化部分-薬物複合体は、リン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞に連結するか、または結合している。リン脂質-PEGリンカーは、標的化部分にコンジュゲートしていてもよい。特定の実施形態において、リン脂質-PEGリンカーは、標的化部分(例えば標的化部分-薬物複合体)、例えば標的化部分-薬物複合体に事前にコンジュゲートしていてもよい。特定の実施形態において、本発明は、標的化部分-薬物複合体から離れたリン脂質-PEGリンカーを提供する。リン脂質は、細胞の表面に疎水的に結合することができる任意の適当なリン脂質でもよい。例えば、リン脂質としては、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンおよび1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、リン脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)でもよい。ポリエチレングリコール(PEG)は、1kDa~20kDaの分子量を有し得る。特定の実施形態において、PEGは2kDa~10kDa、例えば2kDa、3kDa、4kDa、5kDa、6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDaの分子量を有する。特定の実施形態において、PEGは、4.5kDa~5.5kDa(例えば5kDa)の分子量を有する。
【0027】
[0040]本組成物は、リン脂質-PEGリンカーに連結した標的化部分-薬物複合体を含み得る。特定の実施形態において、組成物は、標的化部分-薬物複合体および免疫細胞を含み、例えば、組成物は、免疫細胞およびリン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞に連結した標的化部分-薬物複合体を含み得る。
【0028】
[0041]方法
本発明はまた、本発明の組成物を調製する方法、例えば、標的化部分-薬物複合体を調製する方法、標的化部分-薬物複合体を細胞、例えば免疫細胞に連結させる方法等を特徴とする。一例として、DMPE-PEG-ADC(例えば、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)を抗体-薬物コンジュゲート(ADC)に連結するポリエチレングリコール(PEG))は、使用準備済の製剤として調製し得る。免疫細胞、例えば事前に増殖させた免疫細胞を、免疫細胞とDMPE-PEG-ADCを共に一定期間(例えば任意の適当な期間、例えば15分間)混合することによって化学免疫療法の標的形態に変換させ得る。ADCを備えた免疫細胞は、ADCによる標的抗原の認識を介して標的腫瘍部位へ向かって遊走し得る。標的腫瘍組織において、ADCは、標的癌細胞のアポトーシスを誘導し、近接して存在する免疫細胞が、ダメージ関連分子パターン(DAMP)を発現する瀕死の癌細胞を破壊する。
【0029】
[0042]本発明はまた、本発明の組成物を使用する方法、例えば、標的化部分-薬物複合体による表面処理細胞を使用する方法を特徴とする。本発明はまた、免疫細胞の養子移入、例えば本明細書に記載する表面処理免疫細胞を含む本発明の組成物の養子移入を特徴とする。本発明はまた、標的化学免疫療法の方法を特徴とする。本発明はまた、処置を必要とする対象における、疾患または病状を処置する方法、例えば腫瘍を処置する方法を特徴とする。
【0030】
[0043]本明細書の組成物の調製に関しては、本明細書に記載する特定の化合物は市販のものでもよい。合成調製を必要とするものがあってもよい。
[0044]特定の実施形態において、リン脂質-PEGは、PEGの末端上に反応性官能基を保持し、これは、標的化部分-薬物複合体とのカップリングに使用し得る。例えば、反応性官能基がNHSである場合、中間体は反応性アミノ基を有する標的化部分とカップリングして、アミドを形成し得る。反応性官能基がアミンである場合、中間体は反応性イソチオシアネートとカップリングして、チオカルバメートを形成し得る。反応性官能基がアジドである場合、中間体は、反応性ニトリルまたは反応性アルキン基を有する標的化部分とカップリングして、テトラゾールまたはトリアゾールを形成し得る。反応性官能基がマレイミドである場合、中間体は、反応性チオール基を有する標的化部分とカップリングして、チオールの硫黄と得られたスクシンイミドの炭素との間に結合を形成し得る。
【0031】
[0045]当業者には理解し得るように、本明細書に記載の化合物を合成するさらなる方法は、当技術分野の当業者には明らかであろう。さらに、種々の合成ステップは、所望の化合物を得るために他の順序または順番で行ってもよい。本明細書に記載する化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基の方法論(保護および脱保護)は当技術分野で公知であり、例えば、R.Larock、Comprehensive Organic Transformations、VCH Publishers(1989);T.W.Greene and P.G.M. Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、2d.Ed.、John Wiley and Sons(1991);L.Fieser and M.Fieser、Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1994);およびL.Paquette、ed.、Encyclopedia of Reagents or Organic Synthesis、John Wiley and Sons(1995)およびその後続版に記載されているものが挙げられる。
【0032】
[0046]免疫細胞の表面改変に関して、特定の実施形態において、細胞の表面改変は、細胞の脂質二重層膜と相互作用し、そこに結合する化合物のリン脂質部によって達成し得る。組成物の各構成要素または可変部を評価して、より好ましい構成要素およびその細胞の表面の改変能を決定し得る。例えば、異なる分子量のPEGを有する組成物を使用して、どのPEGサイズが、リン脂質と細胞膜との間の相互作用に好ましいかを決定し得る。PEGの末端に結合させる反応性官能基の選択もまた、結合している標的化部分およびそれが有する反応性官能基の適合性によって評価し得る。さらに、細胞の最小インキュベーション時間もまた、細胞改変に必要とされる化合物の最適量と共に決定し得る。
【0033】
[0047]表面改変(または表面処理)細胞の特定の能力を決定し得る実験を行い得る。これらは、細胞接着、毒性、増殖および回復速度に着目した実験を含み得る。さらに、動体学的実験は、化合物が細胞の表面上に固定化されたままでいることができる時間の長さを決定し得る。さらに、異なる標的化部分の使用を評価して、細胞の改変能に対する影響を決定し得る。異なる蛍光化学的実体、例えばフルオレセインイソチオシアネート(FITC)および緑色蛍光タンパク質(GFP)もまた、組成物の細胞の改変能を評価するために標的化部分に結合されるか、これを置換してもよい。
【0034】
[0048]標的(例えば、目的の細胞の受容体)の免疫細胞の表面上の標的化部分への結合の評価は、種々の手段により達成し得る。一例として、特定の実施形態において、免疫細胞の表面上の標的化部分への標的の結合の評価は、蛍光標識した標的リガンドを、蛍光標識した標的化部分を含有する本明細書の組成物によって改変された細胞と共にインキュベートすることを含み得る。本明細書の組成物によって改変された細胞の適当な標的(例えば目的の細胞の受容体)の勾配に対する遊走は、改変した免疫細胞の標的とのインキュベーションにより達成し得る。改変した細胞の遊走能の評価は、適当な細胞計数アッセイまたは他の適当な手段により決定し得る。
【0035】
[0049]本明細書に記載の方法には、処置を必要とする対象における疾患状態を処置する方法が含まれる。かかる方法は、治療上有効量の本明細書に記載の組成物を対象に投与することを含み得る。必要とする対象に投与するための組成物は、標的化部分-薬物複合体を保持するように処理された免疫細胞を含んでいてよく、ここで、標的化部分は、特定の目的の細胞に特異的である。本明細書にはまた、目的の細胞の標的への記載する組成物のインビボホーミングを促進する方法が記載されており、ここで、標的化部分は、目的の細胞、例えば、特定の疾患組織に関連する細胞の標的と結合または相互作用することができ、改変細胞は疾患組織に動員され得る。
【0036】
[0050]本明細書の組成物の適当な投与量は、患者間で変動し得ることは理解されるであろう。最適な投与量を決定することは、一般的に、本明細書に記載の処置のいかなるリスクまたは有害な副作用に対する治療上の利点のレベルを平衡化することを伴う。選択される投与量レベルは、種々の要因に依存するものであり、要因としては、特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、組成物(例えば薬物部分)の排出速度、処置期間、組合せで使用する他の薬物、化合物および/または材料、および、患者の年齢、性別、体重、状態、健康全般および既往歴が挙げられるが、これらに限定されるものではない。一般的に投与量は、作用部位において実質的に有毒または有害な副作用を引き起こすことなく所望の効果を達成することができる、局所濃度を達成することができるものであるが、化合物の量および投与経路は、医師の自由裁量でもよい。
【0037】
[0051]特定の実施形態において、インビボ投与は、処置過程を通して、単回投与で、連続的に、または間欠的に(例えば適当な間隔で分割した用量で)行ってもよい。投与の最も効果的な手段および投与量を決定する方法は、当技術分野の当業者には周知であり、治療に使用される製剤、治療の目的、処置される標的細胞および、処置される対象によって変動する。単回および多回投与は、処置する医師によって選択されている用量レベルおよびパターンで行ってもよい。
【0038】
[0052]本発明はまた、本発明による免疫細胞を改変するためのキットを特徴とする。いくつかの実施形態において、キットは、リン脂質-PEGリンカー、標的化部分-薬物複合体および、リン脂質-PEGリンカーを標的化部分-薬物複合体に連結するための試薬を含む。いくつかの実施形態において、キットは、リン脂質-PEGリンカーと既に連結した標的化部分-薬物複合体を含む。いくつかの実施形態において、キットは、免疫細胞をさらに含む。本発明において使用される構成要素、例えば、細胞、標的化部分、リンカー、薬物、試薬等の1つまたは複数の任意の組合せを組み合わせてキットを形成し得る。
【実施例】
【0039】
[0053]次の実施例は、HER2に特異的な表面処理ナチュラルキラー細胞の産生および使用を記載している。本発明は、本明細書に記載の方法および組成物に限定されていない。端的には、モデルADCである、トラスツズマブエマタンシン(T-DM1)を、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DMPE)コンジュゲートポリエチレングリコール(PEG)を最初に結合させることによって改変し、得られた疎水化T-DM1(DMPE-PEG-T-DM1)を、モデル免疫細胞である、同種異系ナチュラルキラー(NK)細胞の表面を改変するのに用いた。これらのT-DM1表面処理NK(SE-NK/T-DM1)細胞は、T-DM1およびNK細胞の組合せ活性を介して、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)-陽性癌細胞を認識し、破壊した。この単回注入製剤化学免疫療法であるSE-NK/T-DM1細胞は、NK細胞とT-DM1との共処理物と比較して、有意に標的腫瘍の進行を抑制した。
【0040】
[0054]免疫細胞の表面処理:NK細胞およびJK細胞を、DMPE-PEG-T-DM1またはDMPE-PEG-TZを用いて3回改変し、SE-NK/T-DM1細胞、SE-NK/TZ細胞およびSE-JK/T-DM1細胞を生成した。端的には、5×105の免疫細胞を、異なる量のDMPE-PEG-T-DM1またはDMPE-PEG-TZと共に、100μLのPBS中で、室温で15分間インキュベートした。改変後、細胞を1mLのPBSで2回洗浄した。ワンステップ法を5×105の免疫細胞あたり100μgのDMPE-PEG-T-DM1により最適化した。
【0041】
[0055]表面処理細胞の特性決定:SE-NK/T-DM1細胞は、上述の手順にしたがって、FITC-標識DMPE-PEG-T-DM1を用いて調製した。SE-NK/T-DM1-FITC細胞を、共焦点顕微鏡により可視化した(Nikon A1R、Nikon;Ex/Em=495/520nm)。収集した画像は、ImageJソフトウェアを用いて処理した。改変後の細胞生存率および増殖機能の変化を、CCK-8を用いて判定した。SE-NK/T-DM1細胞膜上でのT-DM1の表面滞留時間は、Alexa 488-コンジュゲートヤギ抗ヒト(H+L)抗体(Ex/Em=495/520nm)を用いて測定した。完全増殖培地中でインキュベートしたSE-NK/T-DM1細胞を各タイムポイントで集め、10μgのAlexa 488-コンジュゲートヤギ抗ヒト(H+L)抗体で標識した。蛍光シグナルは、フローサイトメトリーにより測定し、FlowJoソフトウェアにより解析した。表面処理後のNK細胞受容体の利用可能性を、APC-コンジュゲート抗CD56抗体(Ex/Em=650/660nm)またはAPC-コンジュゲート抗2B4抗体(Ex/Em=650/660nm)を用いて試験した。各抗体は、製造業者の推奨量にしたがってSE-NK/T-DM1-FITC細胞上に適用した。SE-NK/T-DM1上のCD56および2B4の利用可能性を、フローサイトメトリーによって検出し、FlowJoソフトウェアにより解析した。
【0042】
[0056]T-DM1の選択的結合、移入および内在化:SK-BR-3 27細胞、Calu-3細胞およびMDA-MB-231細胞を、2×10-6m28のCellTracker Red CMTPX(Ex/Em=577/602nm)により標識した。癌細胞を処理の24時間前に4×104の細胞/ウェルの密度で24ウェルプレート上に播種した。DMEP-PEG-T-DM1による表面処理の前に、NK細胞を、1×10-6mのCellTracker Blue CMAC(Ex/Em=353/466nm)により標識した。癌細胞を、非改変NK細胞、T-DM1+NK共処理物およびSE-NK/T-DM1細胞と、10:1のE:T比率で共インキュベートした。30分後に、非結合NK細胞を除去し、全残存細胞を収集した。NK細胞の数をフローサイトメトリーにより、1×104の癌細胞あたりで定量し、残存E:T比率を算出した。SE-NK/T-DM1細胞から標的癌細胞へのT-DM1の移入を共焦点顕微鏡を用いて調べた。SK-BR-3細胞、Calu-3細胞およびMDA-MB-231細胞を、2×10-6mのCellTracker Red CMTPXで標識し、処理の24時間前に、1×104の細胞/ウェルの密度でLab-Tek II 8チャンバーガラススライド上に播種した。1×10-6mのCellTracker Blue CMACで標識したNK細胞を100μgのDMPE-PEG-T-DM1-FITCを用いて改変した。改変後、1×105のSE-NK/T-DM1細胞を、癌細胞と30分間共インキュベートし、PBSで洗浄し、非結合エフェクター細胞を除去した。共インキュベートした細胞を、共焦点顕微鏡により撮像し、収集した画像をImageJソフトウェアにより処理した。T-DM1の内在化は、同様の手順により可視化した。NucBlue Live ReadyProbe Reagent(Ex/Em=360/460nm)で標識した癌細胞を、処理の24時間前に1×104の細胞/ウェルの密度でLab-Tek II 8チャンバーカバーガラス上に播種した。1×10-6mのCellTracker Red CMTPXで標識したNK細胞を、100μgのDMPE-PEG-T-DM1-FITCを用いて改変した。癌細胞をT-DM1-FITCまたはCMPTX-標識したSE-NK/T-DM1-FITC細胞により10:1のE:T比率で処理した。非結合T-DM1-FITCおよびSE-NK/T-DM1-FITC細胞を30分後に完全に除去した。T-DM1-FITC(Ex/Em=495/520nm)の内在化を、最初のタイムポイントおよび6時間後に共焦点顕微鏡を用いてした。収集した画像はImageJソフトウェアにより処理した。
【0043】
[0057]SE-NK/T-DM1細胞の癌標的化細胞毒性:SK-BR-3細胞、Calu-3細胞およびMDA-MB-231細胞を2×10-6mのCellTracker Blue CMACで標識し、処理の24時間前に1×104の細胞/ウェルの集団で48ウェルプレート上に播種した。癌細胞を、非改変JK細胞、非改変NK細胞、TZ、T-DM1、T-DM1+JK共処理物、T-DM1+NK共処理物、SE-NK/T-DM1細胞、SE-NK/TZ細胞またはSE-JK/T-DM1細胞と、10:1のE:T比率で、600μLの完全培地中で共インキュベートした。T-DM1処理を受ける癌細胞は、10:1のE:T比率で処理したSE-NK/T-DM1上のT-DM1量に相当する、2.1μgのT-DM1を受けた。全処理物を共培養の2時間後に洗浄し、残存癌結合エフェクター細胞をさらに24時間インキュベートした。共インキュベーションの24時間後に、全細胞を回収し、Annexin V Alexa Fluor 488およびヨウ化プロピジウムのキット(Annexin Ex/Em=495/520nmおよびプロピジウムEx/Em=535/617)で標識した。癌細胞死をフローサイトメトリーにより解析した。抗体、化学療法剤および免疫細胞の効果を区別するために、CMACで標識した癌細胞を、SE-NK/T-DM1細胞、SE-NK/TZ細胞、SE-JK/T-DM1細胞、または他の相当する処理物と共に、10:1のE:T比率で600μLの完全培地中で共インキュベートした。非結合エフェクター細胞を最初の共インキュベーションの2時間後に除去し、残存細胞混合物をさらに24時間インキュベートした。T-DM1処理を受ける癌細胞は、10:1のE:T比率で処理したADCによる表面処理免疫細胞上のT-DM1量に相当する2.1μgのT-DM1を受けた。得られた癌細胞死は、フローサイトメトリーを用いてAnnexin V Alexa Fluor 488およびヨウ化プロピジウムのキット(Annexin Ex/Em=495/520nmおよびプロピジウム Ex/Em=535/617)により識別し、FlowJoソフトウェアにより解析した。
【0044】
[0058]インビボ腫瘍有効性および生体分布:インビボ試験は、Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から購入した6週齢の雌NOD scid gamma(NSG、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)マウスを用いて行った。各マウスは、1×107のCalu-3細胞またはMDA-MB-231細胞を左側腹部に皮下接種した。癌細胞は、10%(v/v)Matrigel(Fisher Scientific、Bedford、MA)を補充したPBS中で懸濁した。腫瘍体積を、カリパスを用いて腫瘍の長さおよび幅を測定し、腫瘍の最長(a)および最短(b)の径を用いて、次の式V=0.5ab2に基づいて腫瘍体積を算出することにより、週に3回記録した。腫瘍体積が約100mm3に達すると、腫瘍接種マウスを無作為に実験群に割り当てた。対照群(Calu-3モデルについてn=4、MDA-MB-231モデルについてn=3)は全く処置を受けなかったが、試験群(各群n=4)は、毎週0.21mgのT-DM1、1×107のNK細胞、0.21mgのT-DM1+1×107のNK共処理物または1×107のSE-NK/T-DM1細胞を、尾静脈注入により2週間投与された(0日目および7日目)。全ての剤は、250μLのPBS中で新しく調製し、注入は1分以内に完了した。腫瘍増殖および体重を14日間モニターし、相対腫瘍体積を、記録した体積を最初の体積で割ることにより算出した。生体分布について、Calu-3腫瘍保有NSGマウス(n=3)は、処理を全く受けなかったか、1×107のNK細胞、0.21mgのT-DM1+1×107のNK共処理物、または1×107のSE-NK/T-DM1細胞の、尾静脈注入による投与を受けた。全ての剤は、1分間の注入用に、250μLのPBS中で新しく調製した。腫瘍および主要器官、例えば心臓、腎臓、肝臓、肺および脾臓を処理の24時間後に回収した。回収した各器官の単個細胞の浮遊液を、gentleMACS Dissociatorおよび組織分離キット(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、Germany)を製造業者の提供する指示にしたがって使用して調製した。各細胞混合物の半分を30μgのAPC-コンジュゲート抗CD56抗体(Ex/Em=650/660nm)と共に1時間4℃でインキュベートした。得られた細胞混合物を、冷PBSで2回洗浄し、NK細胞の有無をフローサイトメトリーにより1×105の総細胞を計数することにより検出した。収集した結果は、FlowJoにより解析した。
【0045】
[0059]実験結果
T-DM1は、哺乳類細胞におけるトラスツズマブ(TZ)の発現およびそれに次ぐDM1のコンジュゲートにより生成した。調製したT-DM1は次いで、DMPE-PEG-NHSを結合させることにより疎水化し、これによりDMPE-PEG-T-DM1が産生された。合成したT-DM1は、市販品であるKadcylaと比較して同等の細胞毒性を示した。種々の量のDMPE-PEG-T-DM1によるNK細胞の表面処理は、NK細胞の生存率(
図1Aを参照のこと)、NK細胞の増殖活性のいずれにも影響を与えない。5×10
5の免疫細胞の信頼性のある改変には、100μgのDMPE-PEG-T-DM1が必要であり、これにより、1×10
5のSE-NK/T-DM1細胞の細胞膜上に埋込まれた約2.1μgのT-DM1が得られた。T-DM1は、完全増殖培地中で48時間を超えて、SE-NK/T-DM1細胞の表面上で検出され(
図1Bを参照のこと)、重要なNK細胞特異的マーカーの2つである、CD56および2B4は、SE-NK/T-DM1細胞の表面上で利用可能であった。これらの結果は、T-DM1が内在化することなくNK細胞表面上に埋込まれていること、および、ADCによるNK細胞の表面処理は、NK細胞受容体のアクセス可能性に干渉しないことを実証しており、このことは、NK細胞の固有の細胞溶解活性が表面処理時に保持されていることを示唆している(
図1Cを参照のこと)。本試験で使用する同種異系NK細胞である、NK-92細胞は、抗体内在化および抗体依存性細胞毒性(ADCC)を開始することができるCD16、CD32およびCD64 IgG受容体を欠損しているため、T-DM1による表面処理は、NK細胞の代謝および生存率に対する効果が最小であると考えられる。癌細胞において、T-DM1内在化は、HER2受容体介在性エンドサイトーシスを介して生じる。NK細胞は、その膜上にHER2を発現しないため、SE-NK/T-DM1細胞の表面上に埋込まれたDMPE-PEG-T-DM1は内在化せず、無視できる程度の細胞毒性を示した。さらに、DMEPとT-DM1の間のPEGスペーサーは、内在化の物理的な障壁を提供する。試験により、PEGスペーサーが長くなると、生体分子の内在化を阻害するだけでなく、立体障害の増加により、膜挿入効率が低下することが報告されている。長いPEGスペーサーの存在によりもたらされたDMPE-PEG-T-DM1の上述の膜挿入効率は、約10%であった。
【0046】
[0060]SE-NK/T-DM1細胞の標的癌細胞に対する特異的結合を実証するために、残存NK細胞の数を、SE-NK/T-DM1細胞を標的癌細胞または非標的癌細胞と共インキュベートした後に決定した。非改変NK細胞、T-DM1およびNK細胞(T-DM1+NK)共処理物またはSE-NK/T-DM1細胞を、HER2-陽性SK-BR-3細胞、HER2-陽性Calu-3細胞、またはHER2-陰性MDA-MB-231細胞と共に、エフェクター対標的(E:T)比率10:1でインキュベートした(
図2を参照のこと)。30分間の共インキュベーション後、非結合NK細胞を完全に洗浄し、残存細胞を、フローサイトメトリーを用いて計数した。癌細胞をSE-NK/T-DM1細胞、T-DM1+NK共処理物、および非改変NK細胞で処理した場合の残存E:T比率は、それぞれ、SK-BR-3細胞に対して約3.8、0.5および0.3であり、Calu-3細胞に対して3.7、0.8および0.3であった。MDA-MB-231細胞に結合したままであったNK細胞の数は無視できる程度であった。これらの結果から、SE-NK/T-DM1細胞は、HER2-陽性癌細胞を特異的に認識し、結合することが明らかになった。T-DM1が、癌細胞に対するその抗癌活性を発揮するために、SE-NK/T-DM1細胞上のT-DM1は、癌細胞を標的とするように移入しなければならない。非改変NK細胞およびSE-NK/T-DM1-FITC細胞を、SK-BR-3細胞、Calu-3細胞またはMDA-MB-231細胞と、8チャンバーカバーガラス面上で共インキュベートした。非結合NK細胞を30分後に除去し、T-DM1-FITCの移入を共焦点顕微鏡により観察した。SE-NK/T-DM1細胞のSK-BR-3細胞およびCalu-3細胞への結合時に、T-DM1は、接触エリアに向かって遊走し、エフェクター細胞-癌細胞接合部においてクラスターを形成し、次いで、標的癌細胞上に移入した。DMPE-PEG-T-DM1に含有される脂質により、T-DM1のNK細胞膜を通過する側方移動が可能になる。この特性を介して、DMPE-PEG-T-DM1は、HER2が提示されているNK細胞と癌細胞との間の接触点に向かって極性化することができた。DMPE-PEG-T-DM1が癌細胞上のHER2に結合すると、これらの抗原-抗体複合体は、癌細胞上のHER2の側方移動後に癌細胞膜を通過して拡散する。DMPE-PEG-T-DM1の極性化、抗原-抗体複合体の形成およびDMPE-PEG-T-DM1の移入は、SE-NK/T-DM1細胞をHER2-陰性MDA-MB-231細胞に処理した際には見られなかった。これらの結果は、NK細胞の表面上に埋込まれたT-DM1は、抗原-抗体複合体の形成後に標的癌細胞膜上に再局在することを示している。
【0047】
[0061]T-DM1の内在化は、その抗癌有効性にとって重要であり、これは、DM1が癌細胞中の細胞内標的に作用するためである。T-DM1の細胞取り込み、T-DM1のリソソームへの輸送およびDM1の放出についての以前に報告された観察と一致して、焦点は、標的癌細胞中の、SE-NK/T-DM1細胞から移入したT-DM1の内在化を確認することにあった。8チャンバーカバーガラススライド上にプレーティングした癌細胞を核染色色素(nuclear stating dye)(青色)で標識し、SE-NK/T-DM1-FITC細胞(赤色)から移入したFITC-標識T-DM1(緑色)の局在を観察した。上述の試験と同様に、非結合NK細胞を、共インキュベーションの30分後に完全に除去した。評価したSE-NK/T-DM1細胞からの移入後の、内在化したT-DM1を表す明確な蛍光ドットが、標的癌細胞の細胞質中で検出され、これは、標的癌細胞中へのT-DM1の内在化を表している。HER2-陽性癌細胞で使用したものと同一の条件で処理したMDA-MB-231細胞では蛍光活性は全く観察されず、このことから、HER2-陰性癌細胞では、T―DM1の内在化が全く起こっていないことが確認される。T-DM1+NK共処理物を上回るSE-NK/T-DM1細胞の治療上の利点を検証するために、癌細胞を最初にSE-NK/T-DM1細胞およびT-DM1+NK共処理物により、非結合免疫細胞を除去せずに24時間処理した(
図3A、
図3Bを参照のこと)。いずれの処理も同様のレベルの癌細胞死を誘導し、このことは、T-DM1+NK共処理物への連続的に暴露は、閉鎖されたウェルシステム中において、T-DM1の影響を受けた瀕死の癌細胞をNK細胞が特定するのに十分な時間を与えることが可能であることを示している。MDA-MB-231細胞においては、両方の処理群において、NK細胞の抗癌活性のみが観察された(
図3Cを参照のこと)。次いで、癌細胞を同一の処理で2時間インキュベートし、非結合エフェクター細胞を除去して、インビボ癌標的化ホーミング効果を模倣した。本発明者らはさらに、残存癌結合エフェクター細胞を、標的細胞と共に24時間インキュベートし、結果として生じた癌細胞死を記録した。SK-BR-3細胞およびCalu-3細胞において、SE-NK/T-DM1細胞により誘導される癌細胞死のレベルは、NK細胞またはT-DM1+NK共処理物により誘導されるものよりも高いことが見出された一方で、MDA-MB-231細胞においては有意な細胞死は全く認められなかった(
図3D、
図3E、
図3Fを参照のこと)。これは、より多数のSE-NK/T-DM1細胞が、SK-BR-3細胞およびCalu-3細胞へ結合したままであったことによるものであり、これにより、抗癌活性のレベルの上昇がもたらされた。
【0048】
[0062]次いで、SE-NK/T-DM1細胞に含有されるトラスツズマブ、DM1およびNK細胞の癌細胞生存率に対する効果を評価した。DM1の抗癌作用を特定するために、トラスツズマブ表面処理NK(SE-NK/TZ)細胞を調製し、SE-NK/TZ細胞およびSE-NK/T-DM1細胞により誘導される癌細胞死を比較した。癌細胞死は、処理の2時間後に非結合NK細胞を除去した後の共インキュベーションの24時間後に解析した。予期するように、T-DM1は、TZよりもSK-BR-3細胞に対してより優れた細胞溶解作用を示した。得られた、増強した癌細胞死は、DM1の添加によるものであった。NK細胞およびTZ(TZ+NK)共処理物は、NK細胞単独と比較すると、わずかに細胞毒性の改善を示したが、T-DM1+NK共処理物と比較するとはるかに小さかった。T-DM1を含む処理は、HER2陽性癌細胞に対する抗癌活性をさらに増強し、SE-NK/T-DM1細胞は、他の全ての処理よりも優れた抗癌活性を示した。T-DM1に含有されるDM1は、HER2陽性癌細胞死の約20%の増加を誘導したと推定された。NK細胞の非特異的細胞溶解活性を除いては、いずれの処理も、MDA-MB-231細胞においては、有意な細胞毒性を誘導しなかった。NK細胞を、同一の実験設定における代替の陰性T細胞株であるJurkat(JK)細胞と比較した。T-DM1表面処理JK(SE-JK/T-DM1)細胞およびSE-NK/T-DM1細胞の細胞毒性を、SK-BR-3細胞およびMDA-MB-231細胞に対して試験した。予期されるように、NK細胞は、JK細胞と比較して、SK-BR-3細胞においてより高い細胞溶解活性を示した。T-DM1+NK共処理物は、T-DM1のJK細胞との共処理物(T-DM1+JK)と比較して、約27%多い癌細胞死を引き起こした。同様に、SE-NK/T-DM1細胞は、SE-JK/T-DM1細胞と比較して、SK-BR-3細胞において約58%多い癌細胞死を誘導した。一貫して、NK細胞活性を上回る細胞死の有意な差は、MDA-MB-231細胞では観察されなかった。SE-NK/T-DM1細胞は、NK細胞単独と比較して、HER2-陰性MDA-MB-231細胞に対して細胞毒性の増強を示さなかった。これらの結果から、SE-NK/T-DM1細胞の個々の構成要素が、組合せ抗癌有効性をもたらす要素であることが確認された。さらに、本発明者らのワンステップ法を用いてADCを免疫細胞内に埋込むことは、ADC単独、免疫細胞単独、またはADCおよび免疫細胞の共処理物を上回って抗癌有効性が増強される。DMPE-PEG-T-DM1が表面上に取り込まれる際に、NK細胞が活性化されたか否かを決定するために、有名な脱顆粒マーカーであるCD107aのSE-NK/T-DM1および非改変NK細胞上の発現レベルを、標的癌細胞への係合時に評価した。陽性対照として、NK細胞およびSE-NK/T-DM1細胞を、PMA/イオノマイシン刺激を介して活性化させた。NK細胞とT-DM1+NK細胞の共処理物群において、CD107aの発現レベルは、癌細胞と共にインキュベートした場合であってすら、基本レベルにとどまっていた。しかしながら、CD107aの発現は、標的癌細胞である、SK-BR-3細胞およびCalu-3細胞との接触時には、SE-NK/T-DM1細胞中で増幅した。この上昇は、非標的MDA-MB-231細胞では見られなかった。これらの結果は、DMPE-PEGT-DM1による表面改変後のNK細胞の非特異的な活性化がないことを示唆しており、SE-NK/T-DM1細胞の標的特異的な活性化を支持している。SE-NK/T-DM1細胞のインビボ抗癌活性を、HER2-陽性Calu-3モデルおよびHER2-陰性MDA-MB-231モデルを使用して、T-DM1+NK共処理物の抗癌活性と比較した。1×10
7のSE-NK/T-DM1細胞の投与を受けた腫瘍保有NOD scid Gamma(NSG、NOD.Cg-Prkdcscid Il2rgtm1Wjl/SzJ)マウスは、約210μgのT-DM1の投与を受け、これは、マウスモデルについての文献に見られる推奨された用量と類似している(7~10mg kg
-1)。HER2-陽性腫瘍モデルにおいて、SE-NK/T-DM1細胞は、組合せ効果を介して最も強い抗癌有効性を示した(
図4Aを参照のこと)。T-DM1+NK共処理物は、対照群と比較して、腫瘍増殖を阻害した。SE-NK/T-DM1細胞の処理は、T-DM1+NK共処理物と比較して、腫瘍増殖の実質的な抑制を実証した。HER2-陰性腫瘍モデルにおいては、全ての処理群間で、腫瘍増殖抑制に有意な差は観察されなかった(
図4Bを参照のこと)。Calu-3モデルおよびMDA-MB-231モデルは、試験期間の間一定の体重を有しており、このことは、処理が重篤な毒性を引き起こさないことを示している。
【0049】
[0063]SE-NK/T-DM1細胞のCalu-3腫瘍モデルにおける生体分布について、心臓、腎臓および肺において、無視できる程度のNK細胞の蓄積が観察された(
図4Cを参照のこと)。NK細胞は肝臓および脾臓では検出されたが、NK細胞の数の有意な差は処理群間で観察されなかった。非改変NK細胞およびT-DM1+NK共処理物と比較して、より多くの数のNK細胞が、SE-NK/T-DM1細胞を受けた腫瘍組織において点在化していた。有効性および生体分布試験からのインビボ実験結果により、本発明のワンステップ法により調製されたSE-NK/T-DM1細胞が、標的腫瘍組織に向かって選択的に遊走し、癌細胞死を誘導することが確認された。T-DM1によるNK細胞の表面処理により、標的腫瘍組織におけるT-DM1およびNK細胞の同時蓄積が可能になった。T-DM1のHER2-陽性癌細胞への結合により、PI3KおよびAKTに関連する下流シグナル経路を阻害し、化学療法剤であるDM1は、標的細胞中の微小管ネットワークを妨害し、これらは共に細胞周期停止および細胞アポトーシスをもたらす。標的癌細胞との物理的接触部から、SE-NK/T-DM1細胞は抗原発現癌細胞に向かって遊走し、次いで、これにより、NK細胞の細胞溶解性機能を刺激する可能性が上昇した。これらの標的癌細胞と近接接触しているNK細胞は、次いで、瀕死の癌細胞上に発現しているダメージ関連分子パターン(DAMP)を認識することによって、アポトーシスを起こしている癌細胞を根絶した。本明細書のワンステップ法により武器となる目的の細胞である同種異系免疫細胞は、その低頻度の有害作用、高い腫瘍特異的細胞毒性、予測可能な抗癌活性およびエクスビボの大細胞集団の増殖、維持および活性化の容易さにより、癌患者における、減少している活性免疫細胞集団を増強するための適当な解決策として注目を得ていた。本明細書のワンステップ法を使用することにより、化学免疫療法に基づいた特異的な腫瘍ホーミング能力および強力な抗癌活性を有する進歩した免疫細胞を臨床で即座に生成することができ、これは、十分な腫瘍反応性免疫細胞を得るのに必要な時間および費用を大幅に低減させる。より重要なことに、本明細書で生成するADCによる表面処理免疫細胞は、固形腫瘍においても増強した有効性を有すると思われるが、これは、抗体、化学療法剤、および全てが本発明の先進的免疫細胞を含む免疫細胞が、標的癌を根絶するために協調して作用するからである。疎水化したADCの適用を他の免疫細胞にまで拡張することについての1つの考慮点は、Fc受容体の存在であり得る。DMPE-PEGのADCへのコンジュゲートは、Fc領域を被覆して、免疫細胞上のFc受容体の結合親和性を低下させる立体障害を増大させることにより、当問題を回避し得る。他の創造的な抗体処理方法、例えば一本鎖可変断片(scFv)の使用およびFc受容体結合親和性を低下させるためのFc領域の変更を、表面処理のための代替戦略として使用し得る。
【0050】
[0064]本明細書に記載するものに加えて、本発明の種々の改変は、上述の記載から当技術分野の当業者には明らかであろう。かかる改変もまた、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。本出願で引用される各参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。本発明の好ましい実施形態は示されており、記載されているが、添付の特許請求の範囲を超えない改変を行い得ることは、当技術分野の当業者には容易に明らかであろう。したがって、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲に限定されるに過ぎない。いくつかの実施形態において、語句「含む」を用いて本明細書に記載する本発明の記載は、「からなる」として記載し得る実施形態を含み、したがって、語句「からなる」を使用する本発明の1つまたは複数の実施形態を特許請求するための記述要件は満たされている。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]癌細胞を標的とするための化学免疫療法組成物であって、
a.目的の細胞上の標的に特異的であり、結合することができる標的化部分;
b.標的化部分にコンジュゲートしており、標的化部分-薬物複合体を形成している、薬物;
c.ポリエチレングリコール(PEG)に連結しており、リン脂質-PEGリンカーを形成しているリン脂質であって、リン脂質-PEGリンカーが標的化部分-薬物複合体に結合している、リン脂質;および
d.標的化部分-薬物複合体がリン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞に疎水的に結合している、免疫細胞;
を含み、
標的化部分-薬物複合体が、免疫細胞を目的の細胞へ差し向け、
薬物が、目的の細胞に対して細胞毒性作用を有する、
上記組成物。
[態様2]リン脂質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンおよび1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される、態様1に記載の組成物。
[態様3]PEGが2kDa~10kDaの分子量を有する、態様1または2に記載の組成物。
[態様4]目的の細胞が乳癌細胞である、態様1~3のいずれかに記載の組成物。
[態様5]免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンパ球、白血球および貪食細胞からなる群から選択される、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
[態様6]リンパ球が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、態様5に記載の組成物。
[態様7]標的がHER2である、態様1~6のいずれかに記載の組成物。
[態様8]標的化部分が、抗体またはその断片である、態様1~7のいずれかに記載の組成物。
[態様9]標的化部分が、抗HER2抗体である、態様1~8のいずれかに記載の組成物。
[態様10]標的化部分が、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ペルツズマブ、ベバシズマブまたはリツキシマブである、態様1~8のいずれかに記載の組成物。
[態様11]標的化部分が、抗CD53抗体、抗CD30抗体、抗CD20抗体、抗Ep-CAM抗体、抗VEGF抗体、抗VEGFR抗体、抗MSLN抗体、抗CD319抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗FGFR抗体、抗CD44抗体、抗Notch1抗体、抗ムチン抗体、抗MCP-1抗体、抗ルイス-Y抗原抗体、抗PCDC1抗体、抗IL2抗体、抗EGFR抗体、抗CEACAM5抗体、抗MUC1抗体、抗グリピカン3抗体、抗PTK7抗体、抗CD19抗体、抗RANKL抗体、抗Bリンパ腫細胞抗体、抗DR5抗体、抗CLDN19抗体、抗HER3抗体、抗HER1抗体、抗CD4抗体または抗CD70抗体である、態様1~8のいずれかに記載の組成物。
[態様12]薬物がエムタンシン(DM1)である、態様1~11のいずれかに記載の組成物。
[態様13]処置を必要とする対象において腫瘍を処置する方法で使用するための化学免疫療法組成物であって、該組成物が
a.目的の細胞上の標的に特異的であり、結合することができる標的化部分;
b.標的化部分にコンジュゲートしており、標的化部分-薬物複合体を形成している、薬物;
c.ポリエチレングリコール(PEG)に連結しており、リン脂質-PEGリンカーを形成しているリン脂質であって、リン脂質-PEGリンカーが標的化部分-薬物複合体に結合している、リン脂質;および
d.標的化部分-薬物複合体がリン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞に疎水的に結合している、免疫細胞;
を含み、
標的化部分-薬物複合体が、免疫細胞を目的の細胞へ差し向け、
薬物が、目的の細胞に対して細胞毒性作用を有する、
ことを特徴とする、上記組成物。
[態様14]癌細胞を標的とするための化学免疫療法組成物であって、該組成物が
a.目的の細胞上の標的に特異的であり、結合することができる標的化部分;
b.標的化部分にコンジュゲートしており、標的化部分-薬物複合体を形成している、薬物;
c.ポリエチレングリコール(PEG)に連結しており、リン脂質-PEGリンカーを形成しているリン脂質であって、リン脂質-PEGリンカーが標的化部分-薬物複合体に結合している、リン脂質;および
d.標的化部分-薬物複合体がリン脂質-PEGリンカーを介して免疫細胞に疎水的に結合している、免疫細胞;
を含み、
該組成物が、対象に投与され、
標的化部分-薬物複合体が、免疫細胞を目的の細胞へ差し向け、
薬物が、目的の細胞に対して細胞毒性作用を有する、
ことを特徴とする、上記組成物。
[態様15]リン脂質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンおよび1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンからなる群から選択される、態様13または14に記載の組成物。
[態様16]PEGが2kDa~10kDaの分子量を有する、態様13~15のいずれかに記載の組成物。
[態様17]目的の細胞が乳癌細胞である、態様13~16のいずれかに記載の組成物。
[態様18]免疫細胞が、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンパ球、白血球および貪食細胞からなる群から選択される、態様13~17のいずれかに記載の組成物。
[態様19]リンパ球が、ナチュラルキラー(NK)細胞である、態様18に記載の組成物。
[態様20]標的がHER2である、態様16~19のいずれかに記載の組成物。
[態様21]標的化部分が、抗体またはその断片である、態様16~20のいずれかに記載の組成物。
[態様22]標的化部分が、抗HER2抗体である、態様16~21のいずれかに記載の組成物。
[態様23]標的化部分が、トラスツズマブ、アレムツズマブ、ペルツズマブ、ベバシズマブまたはリツキシマブである、態様16~22のいずれかに記載の組成物。
[態様24]標的化部分が、抗CD53抗体、抗CD30抗体、抗CD20抗体、抗Ep-CAM抗体、抗VEGF抗体、抗VEGFR抗体、抗MSLN抗体、抗CD319抗体、抗ホスファチジルセリン抗体、抗FGFR抗体、抗CD44抗体、抗Notch1抗体、抗ムチン抗体、抗MCP-1抗体、抗ルイス-Y抗原抗体、抗PCDC1抗体、抗IL2抗体、抗EGFR抗体、抗CEACAM5抗体、抗MUC1抗体、抗グリピカン3抗体、抗PTK7抗体、抗CD19抗体、抗RANKL抗体、抗Bリンパ腫細胞抗体、抗DR5抗体、抗CLDN19抗体、抗HER3抗体、抗HER1抗体、抗CD4抗体または抗CD70抗体である、態様16~23のいずれかに記載の組成物。
[態様25]薬物がエムタンシン(DM1)である、態様16~24のいずれかに記載の組成物。