(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】歯科用タービン
(51)【国際特許分類】
A61C 1/05 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
A61C1/05 A
(21)【出願番号】P 2021520537
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2019081230
(87)【国際公開番号】W WO2020099512
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ゴイサー、シークフリート
(72)【発明者】
【氏名】ゲーベル、シュテファン
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/101133(WO,A1)
【文献】特開平10-337293(JP,A)
【文献】特開平06-327698(JP,A)
【文献】特開平09-108239(JP,A)
【文献】米国特許第04341520(US,A)
【文献】特開2003-325546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧空気によって歯科用加工器具を駆動するための歯科用タービンであって、
内部にタービンチャンバ(2)が形成されたヘッドハウジング(1)と、
転がり軸受(8a、8b;20a、20b)を使用して前記ヘッドハウジング(1)内に回転可能に取り付けられ、前記加工器具を受容するためのチャックを有するロータシャフト(3)と、
前記タービンチャンバ(2)内に配置され、前記ロータシャフト(3)に対して回転不能に取り付けられたタービンホイール(13、23)と
を備え、
前記転がり軸受(8a、8b;20a、20b)の外輪(10a、10b;21a、21b)が、軸方向に前記タービンチャンバ(2)内に延びており、
前記ロータシャフト(3)に回転不能に取り付けられた環状ウェブ(16a、16b;26a、26b)が、前記転がり軸受(8a、8b;20a、20b)の前記外輪(10a、10b;21a、21b)に対して同心円状に配置され、前記外輪と共にギャップシール(17a、17b;27a、27b)を形成する
ことを特徴とする、歯科用タービン。
【請求項2】
前記環状ウェブ(16a、16b)が、前記転がり軸受(8a、8b)の前記外輪(10a、10b)の周りに同心円状に配置され、前記ギャップシール(17a、17b)が、前記外輪と前記環状ウェブとの間に軸方向に延在することを特徴とする、請求項1に記載の歯科用タービン。
【請求項3】
前記環状ウェブ(16a、16b)が、前記転がり軸受(8a、8b)の前記外輪(10a、10b)の、前記タービンチャンバ(2)内に延びる部分の軸方向長さに沿って延びていることを特徴とする、請求項2に記載の歯科用タービン。
【請求項4】
前記環状ウェブ(16a、16b)が、前記タービンホイール(13)に配置さ
れることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
【請求項5】
前記環状ウェブ(16a、16b)が、前記タービンホイール(13)と一体的に形成されることを特徴とする、請求項4に記載の歯科用タービン。
【請求項6】
前記ギャップシール(17a、17b)の軸方向長さが、前記環状ウェブ(16a、16b)と前記外輪(10a、10b)との間の距離よりも数倍大きいことを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
【請求項7】
前記環状ウェブ(16a、16b)と前記外輪(10a、10b)との間の半径方向距離が、0.05mm~0.3mmであることを特徴とする、請求項1~
6のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
【請求項8】
前記ギャップシール(17a、17b)の軸方向長さが、0.1mm~2.0mmであることを特徴とする、請求項1~
7のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
【請求項9】
前記ロータシャフト(3)が、互いに軸方向距離をおいて配置された2つの同軸の前記転がり軸受(8a、8b)を使用して前記ヘッドハウジング(1)内に取り付けられ、
2つの前記転がり軸受(8a、8b)のそれぞれの外輪(10a、10b)が、両側で軸方向に前記タービンチャンバ(2)内に延びており、
前記タービンホイール(13)が、2つの前記転がり軸受(8a、8b)の間に配置され、2つの前記環状ウェブ(16a、16b)を有し、2つの前記環状ウェブ(16a、16b)が、互いに軸方向に対向して位置付けられ、前記転がり軸受(8a、8b)のそれぞれの前記外輪(10a、10b)に対して同心円状に配置され、各々がそれぞれ隣接する前記外輪(10a、10b)と共に前記ギャップシール(17a、17b)を形成する
ことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
【請求項10】
前記ギャップシール(27a、27b)が、前記転がり軸受(20a、20b)の前記外輪(21a、21b)と前記タービンホイール(23)の前記環状ウェブ(26a、26b)との間に半径方向に延在することを特徴とする、請求項1に記載の歯科用タービン。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか一項に記載の歯科用タービンを有する、歯科用加工器械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧空気によって歯科用加工器具を駆動するための歯科用タービンに関する。
【0002】
かかる歯科用タービンは、例えば、本出願人の欧州特許第2874558号から既知である。ヘッドハウジング内にはタービンチャンバが配置されており、ロータシャフトがころ軸受を使用して回転可能に取り付けられている。ロータシャフトは、虫歯又はクラウンに対して作業するための歯科用ドリル又はバーなどの加工器具を受容するためのレセプタクルを備える。タービンチャンバに配置されたタービンホイールは、ロータシャフトに回転不能に取り付けられている。タービンチャンバは更に、タービンホイールを駆動する加圧空気のための入口及び出口を備える。
【0003】
タービンチャンバを、ロータシャフトに対して可能な限り封止する必要がある。これにより、運転中の加圧空気の制御されない排出が防止される。更に重要なことは、タービンホイールが、その慣性に起因して、スイッチオフ後に作動し続け、タービンチャンバ内に一時的に真空を引き起こすので、加圧空気供給がスイッチオフされた後に、唾液若しくは血液などの汚染された液体及び/又は作業した歯からの切削片などの他の汚染物質がタービンチャンバの内部に吸引されないことである。
【背景技術】
【0004】
DE4320532C1は、負荷変化の関数としての自動速度制御を有する歯科用タービン駆動装置を開示している。調整手段が、ロータディスクとロータディスクハウジングとの間の出口チャネルに配置され、出口チャネルの断面は、調整手段及び環状ハウジング壁によって制限される。調整手段は、回転力に起因して、ロータディスクの回転中にその形態及び/又は位置を変化させるように構成されており、それにより、有効断面積は、回転速度が増加するにつれて減少し、回転速度が減少するにつれて増加する。
【0005】
EP0974308A1は、圧力媒体供給がスイッチオフされた後タービンホイールが作動し続ける間に、排出ラインを通る加圧空気の放出を防止する手段を有するタービンハンドピースを説明している。これにより、圧力媒体供給がスイッチオフされた後タービンホイールが作動し続けても、ポンプ機能、したがって真空がタービンチャンバ内に発生することはできない。こうして吸い込み又はサックバックが防止される。
【0006】
DE112006000658T5及び対応する文献WO2006/101133は、サックバックを防止するためのハンドピース及び方法を説明しており、これは、遠心力に起因して空気が強制的に入る、ヘッド内に画定されたバッファチャンバと、蓄積された空気を大気に排出するためのチャネルとを備え、ホイールから出口に向かって移動する空気に抵抗を与えるために出口とタービンホイールとの間に取り付けられた周壁を備える。したがって、駆動空気の供給が停止された後のホイールの慣性回転中に、汚染物質がハンドピースの内部に引き込まれないことが達成されることになる。
【0007】
DE19529668A1は、排出ラインに配置された弁を備える歯科用タービンハンドピースを開示している。弁は、排出ライン内の圧力、流速、又は流量に依存して閉じるように制御可能である。こうしてサックバック効果が低減されることになる。
【0008】
タービンチャンバ及びその後に続く逆流チャネルをロータシャフトから十分に分離する別の簡単な方法は、ハンドピースのケーシング上に壁を設けることである。しかしながら、そのような分離は、製造中に非常に多くの空間及び特別の精度を必要とする。
【発明の概要】
【0009】
したがって、対処される技術的課題は、費用効率の高い製造及び運転を可能にする簡単な方法で、ロータの慣性回転中の液体及び切削片の吸い込みを効果的に防止することである。
【0010】
第1の特許請求項のプリアンブルに記載の歯科用タービンを用いると、本目的は、軸方向にタービンチャンバ内に延びるロータシャフトの転がり軸受の外輪と、ロータシャフトに回転不能に固定され、及び転がり軸受の外輪に対して同心円状に配置された環状ウェブとによって達成される。環状ウェブと外輪は共にギャップシールを形成する。本目的は更に、請求項10に記載の歯科用加工器械によって達成される。
【0011】
環状ウェブ及び外輪によって形成される本発明によるギャップシールは、比較的高い流動抵抗で、慣性回転するタービンホイールの吸引力に対抗することによって、タービンチャンバの流れゾーンを、回転するロータシャフトから非常に効率的に分離する。したがって、本発明による歯科用加工器械用の(歯科用)タービンの構成は、流体及び汚れ粒子の望ましくない吸い込みを検出限界まで低減する。
【0012】
タービンチャンバとロータシャフトとの間の本発明によるギャップシールは、同心円環状ウェブによって形成される。ギャップの反対側は、本願の転がり軸受の外輪によって形成される。シールは非接触シールであるので、摩耗は生じない。小さい空間しか必要でないという事実は、更なる利点である。
【0013】
環状ウェブは、別個の部品として、ロータシャフトに直接配置され、ロータシャフトに回転不能に取り付けられ得る。回転不能に取り付けられているとは、ウェブがロータシャフトに対するトルクに耐えられ、円周位置に固定されていることを意味する。シャフトに対するウェブの軸方向の移動が許容される。好ましくは、環状ウェブはロータシャフト上に固定される。代替的に、環状ウェブは、転がり軸受の内輪に配置されてもよいし、又は内輪と一体的に形成されてもよい。また、環状ウェブはロータシャフトと一体的に形成され得る。
【0014】
好ましくは、環状ウェブは、転がり軸受の外輪の周りに同心円状に配置される。好ましくは、ギャップシールは、外輪と環状ウェブとの間に軸方向に延在する。したがって、環状ウェブと、タービンチャンバ内に延びる外輪の部分との軸方向の重なりが生じる。ギャップシールは、この重なりの領域にわたって延在する。したがって、歯科用タービンの構造高さ、すなわち軸方向長さが特に低くなる。
【0015】
好ましい実施形態では、タービンホイールは環状ウェブを備える。ウェブは、好ましくは、そこに回転不能に取り付けられ、特に好ましくはそこに固定される。有利なことに、ギャップシールを形成する環状ウェブは、タービンホイールと一体的に形成される。タービンチャンバとロータシャフトとの間にギャップシールをもたらすために追加の構成要素が1つも必要なく、同心円環状ウェブが、単にタービンホイールと一体的に形成される必要があるだけである。環状ウェブは、好ましくは、タービンホイールのハブに一種のカラーを形成し、このカラーは、転がり軸受の外輪に軸方向に重なる。好ましくは、環状ウェブは、円周方向にロータシャフトと同軸に配置される。
【0016】
最適な封止効果を達成するために、ギャップシールの軸方向長さが、環状ウェブと転がり軸受の外輪との間の半径方向距離よりも数倍大きい場合に有利であることが分かっている。加圧空気供給がスイッチオフされた後、すなわちホイールが空転しているとき、タービンホイールは比較的急速に減速するので、ギャップシールの軸方向長さ、すなわち環状ウェブと外輪とが重なり合う領域は、効果的な封止に必要な流動抵抗を生じさせるために非常に大きいものになる必要はない。環状ウェブと外輪との間の半径方向距離が0.05mm~0.3mmであり、好ましくはギャップシールの軸方向長さが0.1mm~2.0mmであると十分であり、有利であることが分かっている。環状ウェブと外輪との間の半径方向距離が、最大でも0.2mm、更に好ましくは最大でも0.1mmであり、好ましくは少なくとも0.2mmのギャップシールの軸方向長さと組み合わせると特に有利である。
【0017】
本発明による歯科用タービンの特に好ましい実施形態では、回転不能に取り付けられたタービンホイールを有するロータシャフトは、2つの同軸の転がり軸受を使用してヘッドハウジング内に取り付けられ、2つの転がり軸受は、互いに軸方向距離をおいて配置される。この場合、2つの転がり軸受の外輪は、好ましくは鏡面対称的に、軸方向に両側でタービンチャンバ内に延びており、好ましくは互いに向かい合っている。タービンホイールは、2つの転がり軸受の間に配置され、好ましくは、互いに軸方向に対向して位置付けられた2つの環状ウェブを有する。好ましくは、2つの環状ウェブは、転がり軸受のそれぞれの外輪に対して同心円状に配置され、各々がそれぞれ隣接する外輪と共にギャップシールを形成する。これにより、壁又は半径方向シールリングなどの追加の構成要素なしに、タービンチャンバの対向する両端でロータシャフトを封止することが可能となる。
【0018】
当然ながら、上側及び下側の転がり軸受が設けられるが、一方の転がり軸受のみにおいて本発明による配置及びギャップシールを備える実施形態も考えられる。例えば、外輪に対して同心円状に配置された環状ウェブを下側の転がり軸受に設けることができ、例えばハンドピースのカバー、保持リング、又はハウジング部に設けられたウェブ又は突起による望ましくない流体の吸い込みに対する対応するシールを上側の転がり軸受に設けることができる。
【0019】
外輪と環状ウェブとの間に軸方向ギャップシールを設けることに代えて又は加えて、ギャップシールは半径方向に延在してもよい。この場合、外輪の自由上面は完全に又は部分的にギャップシールの壁を形成する。
【0020】
以下、本発明の2つの例示的な実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1b】
図1aの線A-Aに沿った水平断面図を示す。
【
図2】
図1aによる歯科用タービンの転がり軸受及びタービンホイールを斜視図で示す。
【
図3】歯科用タービンの代替実施形態を垂直断面図で示す。
【詳細な説明】
【0022】
図1に示す歯科用タービンは、円筒形のヘッドハウジング1を有し、その内部に円形のタービンチャンバ2が配置されている。中空のロータシャフト3が、ヘッドハウジング1内の垂直軸線を中心として回転可能に取り付けられている。ロータシャフト3は、その下端部で開放しており、加工器具(図示せず)を受容するためのチャック4を備え、当該チャック4は、環状クランプジョー4a、4bを備える。ロータシャフト3の上端には、軸方向に可動のプランジャ5が配置されている。タペット5が、クランプジョー4a、4b内に延び、これらを押し開いて加工器具を解放することができる。タペット5の上端に配置されたタペットホルダ5aが、ロータシャフト3から突出している。ヘッドハウジング1上の保持リング6が、ロータシャフト3を中心として同心円状に配置されている。軸方向に可動となるように保持リング6に取り付けられた押さえ蓋7が、歯科用タービンの上端を覆う。押さえ蓋7、タペットホルダ5a、タペット5、及びクランプジョー4a、4bは、加工器具(図示せず)をロック解除してロータシャフト3から解放する働きをする。
【0023】
ロータシャフト3は、2つの転がり軸受8a、8bを使用してヘッドハウジング1に取り付けられ、ここにおいて、2つの転がり軸受8a、8bは、互いに軸方向距離をおいて配置される。転がり軸受8a、8bの内輪9a、9bが、ロータシャフト3に回転不能に取り付けられ、固定されている。転がり軸受8a、8bの外輪10a、10bが、ヘッドハウジング1に回転不能に取り付けられ、好ましくはハウジング1に固定されている。Oリングとして形成された放射状のシールリング11a、11bが、ヘッドハウジング1に対して外輪10a、10bを封止する。
【0024】
ここで、転がり軸受8a、8bは玉軸受として設計され、その玉12a、12bは、内輪9a、9bと外輪10a、10bとの間のケージ(図示せず)内で転動する(
図1b参照)。
【0025】
タービンホイール13が、2つの転がり軸受8a、8bの中間に配置され、当該タービンホイール13は、円筒形のハブ14と、半径方向に外側に突き出ているブレード15とを有する。タービンホイール13のハブ14は、ロータシャフト3に回転不能に取り付けられ、ここではシャフト3上に固定されている。
【0026】
タービンホイール13は、好ましくは、一片の金属から形成される。ハブ14とブレード15との間の移行部の領域に環状ウェブ16a、16bが形成される。環状ウェブ16a、16bは、好ましくは、互いに軸方向に対向して配置される(
図2)。
【0027】
外輪10a、10bは各々、互いに向かい合って、両側で軸方向にタービンチャンバ2内に部分的に延びている。この例示的な実施形態では、外輪10a、10bは、約1/3だけタービンチャンバ2内に延びている(
図1a)。タービンホイール13の各環状ウェブ16a、16bは、その隣接する外輪10a又は10bの周りに同心円状に配置され、タービンチャンバ2内に延びる軸方向長さの領域で外輪10a又は10bに重なる。
【0028】
環状ウェブ16a、16bの内側と外輪10a、10bの自由外側とが、それぞれ、外輪10aと環状ウェブ16aとの間及び/又は外輪10bと環状ウェブ16bとの間に軸方向に延在するギャップシール17a、17bを形成する。これらの非接触ギャップシール17a、17bは、転がり軸受8a、8bの外輪10a、10bに対して、回転するタービンホイール13を封止する。
【0029】
加圧空気供給がスイッチオフされると、タービンホイール13は、駆動なしで回転し続け、この運転可能状態で、タービンチャンバ2内に真空を一時的に引き起こす。ギャップシールがないと、流体及び汚れがロータシャフト3を通って及び/又はロータシャフト3に沿って、転がり軸受8a、8bの内輪9a、9bと外輪10a、10bとの間のすき間に吸引されるのを完全に防止することはできない。しかしながら、ギャップシール17a、17bにより、流体が吸い込まれてギャップシール17a、17bのラビリンスを移動し、タービンチャンバ2の内部に到達することを効率的に防止することができる。特に水、唾液、又は血液などの流体の場合、ギャップシール17a、17bは、空気に対するものよりもかなり高い流動抵抗を有する。これが、タービンホイールが駆動なしで回転し続けるときに、ギャップシール17a、17bが流体及び汚れの望ましくない吸い込みを実質的に完全に防止する理由である。
【0030】
図3に示す歯科用タービンの第2の実施形態は、単に、転がり軸受が異なるように設計され、タービンホイールがわずかに異なるように形成されているという点で、
図1に示す実施形態とは異なる。したがって、同一の構成要素は、同一の参照番号によって識別される。
【0031】
図3では、転がり軸受20a、20bは、断面がL字形状である外輪21a、21bを有する。外輪21a、21bの、タービンチャンバ2内に延びる部分は、外側に直角に曲げられており、したがって半径方向に延びる短い半径方向ウェブ22a、22bを形成している。
【0032】
タービンホイール23は、ハブ24とブレード25との間の移行部の領域にわずかに幅広い環状ウェブ26a、26bを有する。したがって、外輪21a、21b及び環状ウェブ26a、26bによって形成されるギャップシール27a、27bは、半径方向に延在する。これらのギャップシール27a、27bもまた、タービンホイール23が回転し続けるときにタービンチャンバ2内への汚染流体のサックバックを防止するのに非常に効率的である。
【0033】
図3に示す実施形態の代替として、外輪21a、21bを、
図1aの外輪10a、10bのように構成することもできる。環状ウェブ16a、16bの位置を、外輪10a、10bと軸方向に合わせることができ、その結果、ギャップシール27a、27bが環状ウェブ16a、16b及び外輪10a、10bの短辺間に形成され、したがってこれもまた半径方向に延在する。望ましくない吸引効果を満足に防止するために、外輪及び環状ウェブの半径方向幅の寸法を十分に決める必要があるだけである。
【0034】
L字形状の環状ウェブを有する実施形態も考えられる。
【0035】
同等に、環状ウェブがロータシャフトに配置されるか又はロータシャフトと一体的に形成される実施形態が考えられる。環状ウェブはまた、転がり軸受の内輪に配置され得るか、又は内輪と一体的に形成され得る。両方の場合において、環状ウェブは、シャフトから半径方向に離れるように延びることができ、例えば、輪郭が直線であるか、又はL字形状若しくはT字形状であり得る。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 加圧空気によって歯科用加工器具を駆動するための歯科用タービンであって、
内部にタービンチャンバ(2)が形成されたヘッドハウジング(1)と、
転がり軸受(8a、8b;20a、20b)を使用して前記ヘッドハウジング(1)内に回転可能に取り付けられ、前記加工器具を受容するためのチャックを有するロータシャフト(3)と、
前記タービンチャンバ(2)内に配置され、前記ロータシャフト(3)に回転不能に取り付けられたタービンホイール(13、23)と
を備え、
前記転がり軸受(8a、8b;20a、20b)の外輪(10a、10b;21a、21b)が、軸方向に前記タービンチャンバ(2)内に延びており、
前記ロータシャフト(3)に回転不能に取り付けられた環状ウェブ(16a、16b;26a、26b)が、前記転がり軸受(8a、8b;20a、20b)の前記外輪(10a、10b;21a、21b)に対して同心円状に配置され、前記外輪と共にギャップシール(17a、17b;27a、27b)を形成する
ことを特徴とする、歯科用タービン。
[2] 前記環状ウェブ(16a、16b)が、前記転がり軸受(8a、8b)の前記外輪(10a、10b)の周りに同心円状に配置され、前記ギャップシール(17a、17b)が、外輪と環状ウェブとの間に軸方向に延在することを特徴とする、[1]に記載の歯科用タービン。
[3] 前記環状ウェブ(16a、16b)が、前記転がり軸受(8a、8b)の前記外輪(10a、10b)の、前記タービンチャンバ(2)内に延びる部分の軸方向長さに沿って延びていることを特徴とする、[2]に記載の歯科用タービン。
[4] 前記環状ウェブ(16a、16b)が、前記タービンホイール(13)に配置され、好ましくは、前記タービンホイール(13)と一体的に形成されることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
[5] 前記ギャップシール(17a、17b)の軸方向長さが、環状ウェブ(16a、16b)と外輪(10a、10b)との間の距離よりも数倍大きいことを特徴とする、[1]~[4]のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
[6] 環状ウェブ(16a、16b)と外輪(10a、10b)との間の半径方向距離が、0.05mm~0.3mmであることを特徴とする、[1]~[5]のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
[7] 前記ギャップシール(17a、17b)の軸方向長さが、0.1mm~2.0mmであることを特徴とする、[1]~[6]のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
[8] 前記ロータシャフト(3)が、互いに軸方向距離をおいて配置された2つの同軸転がり軸受(8a、8b)を使用して前記ヘッドハウジング(1)内に取り付けられ、
前記2つの転がり軸受(8a、8b)の前記外輪(10a、10b)が、両側で軸方向に前記タービンチャンバ(2)内に延びており、
前記タービンホイール(13)が、前記2つの転がり軸受(8a、8b)の間に配置され、2つの環状ウェブ(16a、16b)を有し、前記2つの環状ウェブ(16a、16b)が、互いに軸方向に対向して位置付けられ、前記転がり軸受(8a、8b)のそれぞれの前記外輪(10a、10b)に対して同心円状に配置され、各々がそれぞれ隣接する前記外輪(10a、10b)と共にギャップシール(17a、17b)を形成する
ことを特徴とする、[1]~[7]のいずれか一項に記載の歯科用タービン。
[9] 前記ギャップシール(27a、27b)が、前記転がり軸受(20a、20b)の前記外輪(21a、21b)と前記タービンホイール(23)の前記環状ウェブ(26a、26b)との間に半径方向に延在することを特徴とする、[1]に記載の歯科用タービン。
[10] [1]~[9]のいずれか一項に記載の歯科用タービンを有する加工器具を駆動するための歯科用加工器械。