(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】希薄燃焼エンジン用の排気処理システム
(51)【国際特許分類】
B01J 29/76 20060101AFI20240408BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240408BHJP
B01J 23/44 20060101ALI20240408BHJP
B01J 35/57 20240101ALI20240408BHJP
B01J 35/60 20240101ALI20240408BHJP
F01N 3/022 20060101ALI20240408BHJP
F01N 3/035 20060101ALI20240408BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240408BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20240408BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240408BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01D53/94 222
B01D53/94 228
B01D53/94 241
B01D53/94 245
B01D53/94 280
B01D53/94 400
B01J23/44 A
B01J35/57 E
B01J35/60 F
F01N3/022 C
F01N3/035 E
F01N3/08 B
F01N3/10 A
F01N3/24 E
F01N3/28 301D
F01N3/28 301F
F01N3/28 301P
(21)【出願番号】P 2021524224
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 EP2019079081
(87)【国際公開番号】W WO2020089043
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/113696
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】マウレル,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チア ティー
(72)【発明者】
【氏名】タイ,ユイ
(72)【発明者】
【氏名】ハオ,ユイ フェン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ミン ミン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,トン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-507777(JP,A)
【文献】特開2015-196115(JP,A)
【文献】特表2018-526191(JP,A)
【文献】特開2017-081809(JP,A)
【文献】特表2016-500562(JP,A)
【文献】特表2015-516882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
B01D 53/94
F01N 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼル酸化触媒(DOC)と、触媒化煤フィルタ(CSF)と、第1の還元剤インジェクタと、AEIゼオライトベースの選択的触媒還元(SCR)触媒と、前記AEIゼオライトベースのSCR触媒の下流にある第1のアンモニア酸化触媒(AMO
X)とを含む希薄燃焼エンジン用の排気処理システムであって、前記AEIゼオライトが、アルミナに対するシリカのモル比を10~19、好ましくは14~18で有し、且つ
第2のAMOx触媒をさらに含み、前記第1のAMOx触媒及び前記第2のAMOx触媒が、独立して、粒径分布D
50
が1ミクロン~10ミクロン、又は粒径分布D
90
が2ミクロン~30ミクロンの高表面積金属酸化物を含む、排気処理システム。
【請求項2】
前記AEIゼオライトベースのSCR触媒と前記第1のAMOx触媒との間に配置されている第2のSCRと、場合により、前記AEIゼオライトベースのSCR触媒と前記第2のSCR触媒との間に配置されている第2の還元剤インジェクタとをさらに含む、請求項1に記載の排気処理システム。
【請求項3】
第2のSCR触
媒をさらに含み、前記AEIゼオライトベースのSCR触媒及び前記第2のAMOx触媒が、前記DOC及びCSFの上流に配置され、前記第2のSCR触媒及び前記第1のAMO
X触媒が、前記DOC触媒の下流に配置されている、請求項1に記載の排気処理システム。
【請求項4】
前記第2のSCR触媒の前に第2の還元剤インジェクタをさらに含み、前記第1の還元剤インジェクタが、前記AEIゼオライトベースのSCR触媒の前に配置されている、請求項3に記載の排気処理システム。
【請求項5】
前記第2のSCR触媒が、AEIゼオライト、CHAゼオライト及びBEAゼオライトからなる群から選択されるゼオライト材料を含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項6】
前記AEIゼオライトベースのSCR触媒及び第2のSCR触媒が、金属で促進されたゼオライトを含み、前記金属が、鉄及び銅のうちの一方又は両方からなる群から独立して選択される、請求項1から5のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項7】
前記AEIゼオライトベースのSCR触媒が、前記金属の酸化物として計算して、そして前記酸化物と前記AEIゼオライトベースのSCR触媒との総質量に基づいて、2.0~10.0質量パーセントの前記金属、好ましくは2.5~6.0質量パーセントの前記金属を含む、請求項6に記載の排気処理システム。
【請求項8】
前記第2のSCR触媒が、前記金属の酸化物として計算して、そして前記酸化物と前記第2のSCR触媒との総質量に基づいて、2.0~8.0質量パーセントの前記金属、好ましくは2.5~6.0質量パーセントの前記金属を含む、請求項6に記載の排気処理システム。
【請求項9】
前記第1のAMOx触媒及び前記第2のAMOx触媒が、独立して、少なくとも白金族金属成分と、少なくとも高表面積の支持体材料とを含む、請求項1から8のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項10】
前記第1のAMOx触媒及び前記第2のAMOx触媒が、独立して、前記AMOx触媒の体積に対するPGM元素の総質量として計算して、0.5g/ft
3~10g/ft
3の前記白金族金属、又は乾燥AMOx触媒の質量に基づいて、0.01wt.%~2wt.%の前記白金族金属を含む、請求項9に記載の排気処理システム。
【請求項11】
前記第1のAMOx触媒及び前記第2のAMOx触媒が、独立して、BET特性評価に基づいて50~400m
2/gの範囲の表面積を有する高表面積金属酸化物、又は0.3~1.5cm
3/gの範囲の平均細孔容積を有する高表面積金属酸化物、又は2~50nmの範囲の平均細孔半径を有する高表面積金属酸化物を含む、請求項1から
10のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項12】
前記第1のAMO
X触媒及び前記第2のAMOX触媒が、独立して、高表面積金属酸化物上に支持されたPtの最下層を有する触媒コーティングを含み、そしてCu-CHA又はCu-AEIの層を有する第2の触媒コーティングをさらに含む、請求項1から
11のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項13】
前記DOC触媒が、少なくとも白金族金属成分と少なくとも高表面積の支持体材料とを含む、請求項1から
12のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項14】
前記DOC触媒が、前記DOC触媒の体積に基づいて5g/ft
3~250g/ft
3の前記白金族金属担持量、又は乾燥DOC触媒の質量に基づいて0.5wt.%~10wt.%の前記白金族金属担持量を含む、請求項
13に記載の排気処理システム。
【請求項15】
前記DOC触媒が、パラジウム(Pd)を含まずに白金(Pt)を含むか、又は白金(Pt)を含まずにパラジウム(Pd)を含むか、又は白金(Pt)とパラジウム(Pd)とを1:10~10:1のPt:Pd質量比で含む、請求項
13に記載の排気処理システム。
【請求項16】
前記DOC触媒が、粒径分布D
50が1ミクロン~10ミクロンである高表面積金属酸化物、又は粒径分布D
90が4ミクロン~30ミクロンである高表面積金属酸化物を含む、請求項1から
15のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項17】
前記DOC触媒が、BET特性評価に基づく50~400m
2/gの範囲の表面積、又は0.3~1.5cm
3/gの範囲の平均細孔容積、又は2~50nmの範囲の平均細孔半径を有する高表面積金属酸化物を含む、請求項1から
16のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項18】
前記CSFが、ウォールフローモノリスの壁を透過するか又はウォールフローモノリスの表面壁にコーティングを形成する触媒を含むか、又は壁中及び壁上の触媒コーティングの組み合わせを含む、請求項1から
17のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項19】
前記CSFが、白金族金属成分、銅、鉄、バナジウム及びモリブデンから選択される少なくとも促進剤金属を含む、請求項
18に記載の排気処理システム。
【請求項20】
前記CSFが、平均細孔直径を有する多孔質フィルタ壁と、平均粒径を有する触媒コーティングとを含み、触媒平均粒径分布D
50に対するフィルタ平均細孔直径の比が0.5~50の範囲であり、及び/又は触媒平均粒径分布D
50に対するフィルタ平均細孔直径の比が0.25~30の範囲である、請求項
18に記載の排気処理システム。
【請求項21】
前記CSFが前記第2のSCR触媒でコーティングされており、前記第1の還元剤インジェクタが前記フィルタの前に配置されている、請求項2から
20のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項22】
前記AEIゼオライトが、0.1~2.5ミクロンの結晶サイズ、平均d
10が0.5ミクロン~2.5ミクロンの間、及び平均d
90が5ミクロン~30ミクロンの間の凝集体サイズを有する、請求項1から
21のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項23】
前記AEIゼオライトが、少なくとも450m
2/gのゼオライト表面積、及び最大50m
2/gのマトリックス表面積を有する、請求項1から
22のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項24】
前記AEIゼオライトが、0.10~0.90g/mlの100回タッピングした後のタップ密度を有する、請求項1から
23のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項25】
前記AEIゼオライトが、300℃で5時間脱気した後、295Kでの相対水圧P/P
0が0.5のときに、少なくとも250cm
3/gの水取り込み量を有する、請求項1から
24のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項26】
前記AEIゼオライトSCR及び前記第2のSCRが、50~250g/lの触媒担持量でセラミック又は金属モノリスにコーティングされている、請求項1から
25のいずれか1項に記載の排気処理システム。
【請求項27】
(i)請求項1から
26のいずれか1項に記載の排気処理システムを提供する工程、及び
(ii)希薄燃焼エンジンからの排気ガスを排気処理システムに通す工程
を含む、希薄燃焼エンジンからの排気ガスを処理する方法。
【請求項28】
前記排気ガスが、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び微粒子を含む、請求項
27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、希薄燃焼エンジンから排出される排気ガスを浄化するための排気処理システムの分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関エンジンの排出物に関する環境規制は、世界中でますます厳しくなっている。希薄燃焼エンジン、例えばディーゼルエンジンの運転は、燃料希薄条件下において高い空燃比で運転するので、ユーザーに優れた燃費を提供する。しかしながら、ディーゼルエンジンは、微粒子状物質(PM)、未燃焼の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を含有する排気ガス排出物も排出し、NOxは、とりわけ一酸化窒素及び二酸化窒素を含む、窒素酸化物の様々な化学種を表す。排気微粒子状物質の2つの主要な成分は、可溶性有機画分(SOF)及び煤画分である。SOFは層状で煤上に凝縮し、一般に未燃焼のディーゼル燃料及び潤滑油に由来する。SOFは、排気ガスの温度に依存して、蒸気として、又はエアロゾル(すなわち、液状凝縮物の微細な液滴)としてディーゼル排気中に存在する。煤は、主に炭素の粒子から含まれる。
【0003】
アルミナなどの耐火性金属酸化物支持体上に分散された、1種以上の白金族金属(PGM)などの貴金属を含む酸化触媒が既知であり、ディーゼルエンジンの排気を処理する際に、炭化水素及び一酸化炭素の両方のガス状汚染物質を、これら汚染物質の酸化を触媒することによって二酸化炭素及び水に転化するため、使用される。そのような触媒は、ディーゼル酸化触媒(DOC)と呼ばれる単位に一般に含有されており、この単位は、ディーゼルエンジンからの排気流路に配置され、排気を処理してから大気に放出する。通常は、ディーゼル酸化触媒は、その上に1つ以上の触媒コーティング組成物が堆積される、セラミック又は金属性基材上に形成される。ガス状のHC及びCO排出物及び微粒子状物質(SOF部分)の転化に加えて、1種以上のPGMを含有する酸化触媒は、NOのNO2への酸化を促進する。触媒は通常は、その点火(light-off)温度又は50%の転化が達成される温度(T50とも呼ばれる)によって規定される。
【0004】
NOx(NO及びNO2の組み合わせ)は、内燃エンジン(例えば自動車及びトラックにおける)からの、燃焼設備(例えば天然ガス、石油又は石炭で加熱される発電所など)からの、及び硝酸製造プラントからの、排気ガスに含有される。NOx含有ガス混合物を処理して大気汚染を低減するため、様々な処理方法が使用されてきている。
【0005】
希薄燃焼エンジン、例えばガソリン直噴エンジン及び部分希薄燃焼エンジンの排気からの、及びディーゼルエンジンからのNOxを還元するための1つの効果的な方法では、希薄燃焼エンジンの運転条件下でNOxを好適な還元剤(例えばアンモニア、尿素、水素又は炭化水素)と、選択的触媒還元(SCR)触媒成分の存在下で反応させることが必要である。SCR法では、大気中の酸素の存在下で還元剤(例えばアンモニア)を用いた窒素酸化物の触媒還元が使用され、その結果、主として窒素と蒸気が形成される:
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O(標準のSCR反応) (1)、
2NO2+4NH3→3N2+6H2O(低速SCR反応) (2)、及び
NO+NO2+NH3→2N2+3H2O(高速SCR反応) (3)。
【0006】
ゼオライトなどの分子篩は、酸素の存在下でアンモニア、尿素、又は炭化水素などの還元剤を用いる窒素酸化物の選択的触媒還元(SCR)で使用されている。ゼオライトは、かなり均一な細孔径を有する結晶材料であり、ゼオライトの種類、及びゼオライト格子に含まれるカチオンの種類と量に応じて、直径が約3~10オングストロームの範囲にある。最近、SCR触媒として使用するのに関心を持たれているのが、8環の細孔開口部及び2重6環の2次構造単位を有するゼオライト、特にケージ様の構造を有するものである。これらの特性を有するゼオライトの具体的な種類は、チャバザイトSSZ-13(CHA)及びSSZ-39(AEI)であり、これらはその3次元的な多孔性によってアクセス可能な8員環の細孔開口部(-3.8オングストローム)を持つ小細孔のゼオライトである。
【0007】
アンモニアを用いた窒素酸化物の選択的触媒還元のための、金属で促進されたゼオライト触媒(とりわけ鉄で促進された及び銅で促進されたゼオライト触媒を含む)が知られている。SCR触媒として、Cuで促進されたCHAを採用する実践が、PCT出願WO2008/106519に記載されている。
【0008】
米国特許第5,958,370号は、SCR触媒におけるCu-AEIの潜在的な適用を最初に開示している。
【0009】
PCT出願WO2008/132452は、少なくとも1つの小細孔の分子篩を含むSCR触媒を開示しており、前記分子篩は、とりわけAEIを担持する金属促進剤を含む。
【0010】
Molinerらは、Chemical Communications(2012),48(66),8264-8266で、Cu-AEIの合成、及びNOxの選択的触媒還元のための活性で水熱的に安定した触媒としてのその使用について記載している。
【0011】
実験データの同じ一式に基づき、PCT出願WO2013/159825は、そのようなAEI SCRを、触媒化煤フィルタと組み合わせて利用することを特許請求しているが、この特定の組み合わせに関する実験は示されていない。
【0012】
PCT出願WO2014/141200には、AEI構造を有し、アルミナに対するシリカのモル比(SAR)が約20~約30である金属で促進されたゼオライトが、類似のSAR及び類似の金属担持量を有する他のゼオライト触媒と比較して、より水熱的に安定であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】PCT出願WO2008/106519
【文献】米国特許第5,958,370号
【文献】PCT出願WO2008/132452
【文献】PCT出願WO2013/159825
【文献】PCT出願WO2014/141200
【非特許文献】
【0014】
【文献】Molinerら、Chemical Communications(2012),48(66),8264-8266
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
よって、ディーゼル排気処理システムにおけるNOx転化率をさらに向上させるためには、現在の技術に比べてNO転化効率を向上させる一方で、特に低温条件下でのN2O放出が最小限の触媒が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、希薄燃焼エンジン用の排気処理システムに関するものであり、この排気処理システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、触媒化煤フィルタ(CSF)と、第1の還元剤インジェクタと、AEIゼオライトベースの選択的触媒還元(SCR)触媒と、AEIゼオライトベースのSCR触媒の下流にある第1のアンモニア酸化触媒(AMOX)とを含む。
【0017】
本発明の第1の側面は、希薄燃焼エンジン用の排気処理システムに関するものであり、この排気処理システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、触媒化煤フィルタ(CSF)と、第1の還元剤インジェクタと、AEIゼオライトベースの選択的触媒還元(SCR)触媒と、AEIゼオライトベースのSCR触媒の下流にある第1のアンモニア酸化触媒(AMOX)とを含み、AEIゼオライトは、アルミナに対するシリカのモル比を10~19、好ましくは14~18で有する。
【0018】
本発明の第2の側面は、希薄燃焼エンジンからの排気ガスの処理方法に関するものであり、この方法は、(i)第1の側面に記載の排気処理システムを提供すること、及び(ii)希薄燃焼エンジンからの排気ガスを排気処理システムに通すこと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、1つ以上の実施形態による排気処理システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、1つ以上の実施形態による代替の排気処理システムを示す概略図である。
【
図3】
図3は、SAR16を有するAEIゼオライトの水取り込み量を示すグラフである。
【
図4】
図4は、SAR16を有するAEIゼオライトのSEM画像を示すグラフである。
【
図5】
図5は、SAR21を有するAEIゼオライトのSEM画像を示すグラフである。
【
図6】
図6は、実施例1のAEI SCR触媒物品を用いた排気処理システムと、比較例2及び3のAEI SCR触媒物品を用いた排気処理システムとに関し、NOx転化率及びN
2O形成量を比較した結果を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施例1のAEI SCR触媒物品を用いた排気処理システムと、比較例2のAEI SCR触媒物品を用いた排気処理システムとに関し、NOx転化率及びN
2O形成量を比較した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を記述する前に、本発明は、以下の記述で説明する構成又は方法工程の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態及び、様々な手段による実施又は実行が可能である。
【0021】
自動車の排気ガス流の処理において大きな問題となるのは、処理プロセスの開始時の期間である、いわゆる「コールドスタート」の期間であり、このとき排気ガス流及び排気ガス処理システムは低温である。また、通常の走行中の或る特定の期間中に、例えば長時間の低速市街地走行などで低温になる可能性がある。さらに、最近のエンジン開発によって、燃料の燃焼効率が継続的に向上しているので、エンジン出力温度は全般的に低下している。
【0022】
およそ200℃以下の低温域では、排気ガス処理システムの活性をさらに増加させること、特に、コールドスタート又は長時間の低速市街地走行中に見られるような温度で、窒素酸化物(NOx)をより効果的に窒素に転化することに対して、継続的な必要性がある。その結果、この問題を解決するために相当の努力がなされている。
【0023】
さらに、SCR反応中に形成される不要な副生成物としての一酸化二窒素N2Oは、その高い「地球温暖化係数」(二酸化炭素の310倍)が原因で、放出が比較的少量であるにもかかわらず、その形成をさらに抑える必要がある。
【0024】
驚くべきことに、アルミナに対するシリカのモル比が10~19、好ましくは14~18であるようなAEIベースのSCR触媒は、様々なエンジン運転条件下で、このような排気処理システムにおいて、同じ排気処理システムでより高いアルミナに対するシリカのモル比(SAR)を有するAEI触媒よりも効果的にNOxを転化し、そして同様のレベルの水熱安定性を維持する一方でN2Oの放出を最小限に抑えることが見出された。さらに驚くべきことに、このような触媒システムは、極低温だけでなく、高温でもNOx転化率の増進を示した。
【0025】
よって本発明の実施形態により、希薄燃焼エンジン用の排気処理システムを提供するものであり、この排気処理システムは、ディーゼル酸化触媒(DOC)と、触媒化煤フィルタ(CSF)と、第1の還元剤インジェクタと、AEIゼオライトベースの選択的触媒還元(SCR)触媒と、AEIゼオライトベースのSCR触媒の下流にある第1のアンモニア酸化触媒(AMOX)とを含み、AEIゼオライトは、アルミナに対するシリカのモル比を10~19、好ましくは14~18で有する。
【0026】
本開示で使用される用語に関して、以下のように定義する。
【0027】
特許請求の範囲を含む本明細書全体において、「1つを含む(comprising one)」又は「を含む(comprising a)」という用語は、他に指定のない限り、「少なくとも1つを含む」という用語と同義であると理解されるべきであり、「~の間(between)」は、境界を含むと理解されるべきである。
【0028】
「a」、「an」及び「the」という用語は、記事の文法的対象の1つ又は1つを超える(すなわち、少なくとも1つ)ことを指すために使用される。
【0029】
「及び/又は」という用語には、「及び」、「又は」の意味、及びこの用語に関連する要素のあらゆる他の可能な組み合わせが含まれる。
【0030】
あらゆるパーセンテージ及び比率は、他に明記しない限り、質量で言及する。
【0031】
本明細書で使用する用語、「SAR」とは、SiO2:Al2O3モル比、又はアルミナに対するシリカの、酸化物のモル比を指す。ゼオライト粉末を錠型に成形し、アルミナに対するシリカの、酸化物のモル比(SAR)を、PANalytical Axios-mAXを用いたXRFによって決定した。
【0032】
本明細書で使用する用語、「触媒」又は「触媒材料」又は「触媒性材料」とは、反応を促進する材料又は材料の混合物を指す。
【0033】
選択的触媒還元(SCR)組成物
希薄燃焼エンジン、例えばガソリン直噴エンジン及び部分希薄燃焼エンジンの排気からの、及びディーゼルエンジンからのNOxを還元するための1つの効果的な方法では、希薄燃焼エンジンの運転条件下でNOxを好適な還元剤、例えばアンモニア又は炭化水素と、選択的触媒還元(SCR)触媒成分の存在下で反応させることが必要である。このプロセスでは、SCR触媒上で、NOxがアンモニア(NH3)などの好適な還元剤で窒素(N2)に還元される。この技術は、NOxの低減目標を積極的に達成するための最良のアプローチの一つである。アンモニアの供給源は、とりわけ尿素(通常は水溶液で存在する)である。SCRは、排気温度が触媒の活性温度範囲(運転ウィンドウ)内であれば、NOxを効率的に転化する。
【0034】
本システムで使用するのに好適なSCR触媒組成物は、通常は低い排気温度(例えば300℃以下)に関連する低負荷の条件下でさえも、NOxの還元を効果的に触媒することができる。
【0035】
本システムで使用するのに好適なSCR触媒組成物は、550℃以上の温度に対する耐熱性も有する。このような高温は、高負荷の条件下で、又は煤フィルタの再生中に起こることがある。
【0036】
上述の理由から、好適なSCR触媒組成物は、好ましくは、車両が運転される際の温度範囲の変化に対応できるように、十分に広い運転温度範囲を有する。
【0037】
1つ以上の実施形態では、SCR触媒を通過するNOxの転化は、エンジンの運転条件下で、システムのNOx転化の約10%~約100%の範囲であり、好ましくは約30%~約100%の範囲であり、より好ましくは約50%~約100%の範囲である。
【0038】
1つ以上の実施形態では、SCR触媒は、場合により、CO酸化、炭化水素貯蔵、炭化水素酸化、NOx貯蔵、NO酸化、アンモニア貯蔵、アンモニア酸化などの他の機能と、1つの触媒として、又は1つの「ブリック(brick)」に統合することができる。例えば、SCR触媒は、AMOx機能:排気流のNOx成分をN2に転化し、O2と任意の過剰NH3との反応を触媒してN2及びH2Oにして、NH3が大気に放出されないようにすることができてよい。例えば、SCR触媒は、場合により、煤フィルタでコーティングすることができる。SCR触媒を含む触媒化煤フィルタは、排気流の微粒子状成分の除去と、排気流のNOx成分のN2への転化という2つの機能において効果がある。
【0039】
1つ以上の実施形態では、SCRは、少なくともゼオライト又は非ゼオライトの分子篩成分及び/又は少なくとも促進剤金属成分を含む。
【0040】
具体的な実施形態では、SCRは、CHA、AEI、BEA、MFI、FAU、MOR、AFX及びLTA、又はこれらの2種以上の混合物及びこれらの2種以上の混合型から選択されるがこれらに限定されない骨格型、好ましくはCHA、BEA及びAEIからなる群から選択される骨格型、より好ましくはAEIである骨格型を有するゼオライトを含む。
【0041】
促進剤金属は、金属交換されたゼオライトを形成するために触媒産業で使用されている、広く認められている触媒活性金属、特に燃焼プロセスに由来する排気ガスを処理するための触媒活性を有することが知られている金属のうちの任意であってよい。特に好ましいのは、NOx還元及び貯蔵プロセスに有用な金属である。促進剤金属は、広義に解釈されるべきであり、具体的には、銅、鉄、バナジウム、タングステン、アンチモン、ニッケル、亜鉛、モリブデン、コバルト、チタン、ジルコニウム、マンガン、クロム、ニオブ、スズ、ビスマスなど、白金族金属、例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、インジウム、及び金、銀などの貴金属が含まれる。促進剤金属として遷移金属が好ましい。促進剤金属として卑金属がより好ましい。
【0042】
1つ以上の実施形態では、卑金属成分は銅及び鉄のうちの一方又は両方から選択される。
【0043】
1つ以上の具体的な実施形態では、例えば銅及び鉄から選択される促進剤金属成分は、金属の酸化物として計算して、そして酸化物とゼオライト又は非ゼオライトの分子篩ベースの触媒組成物との総質量に基づいて、約0.2wt%を超える含有量を有する。好ましい具体的な実施形態では、卑金属成分は、約2wt%~約10wt%、好ましくは約2wt%~約8wt%、より好ましくは約2.5wt%~約6wt%の含有量を有する。
【0044】
1つ以上の具体的な実施形態では、促進剤金属成分は銅である。SCR触媒は、銅対アルミナ(ゼオライト又は非ゼオライトの分子篩からのアルミナ)のモル比が約0.01~0.5、又は好ましくは0.2~0.5である。
【0045】
1つ以上の実施形態では、SCRは、Cuと、CHA、AEI、BEA、MFI、FAU、MOR、AFX及びLTA、又はこれらの2種以上の混合物及びこれらの2種以上の混合型から選択されるがこれらに限定されない骨格型、より好ましくはCHA及びAEIからなる群から選択される骨格型を有するゼオライトとを含み、SCR触媒に含有される銅を含むゼオライト材料は、骨格型AEIを有する。
【0046】
分子篩は、ゼオライト命名に関するIUPAC委員会の規則に準拠して国際ゼオライト協会の構造委員会によって分類される。この分類によれば、構造が確立されている骨格型ゼオライト及び他の結晶性マイクロ細孔分子篩は3文字のコードを割り当てられ、Atlas of Zeolite Framework Types、第5版、Elsevier,London,England(2001年)に記載される。
【0047】
前記ゼオライト材料のうち、SSZ-39はよく研究されている例であり、これはAEI骨格構造を有するゼオライト材料のクラスの代表である。SSZ-39のようなアルミノシリケートの他に、AEI骨格構造を有するゼオライト材料のクラスは、骨格構造中にリンをさらに含む化合物を含み、よってこれらはシリコアルミノホスフェート(SAPO)と呼ばれ、AEI骨格の場合は特にSAPO-18と呼ばれる。AEI骨格型のゼオライト材料は、2重6環(D6R)及びケージを含有する3次元の8員環(8MR)孔/チャネルシステムを特徴とする。
【0048】
1つ以上の実施形態では、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト触媒について示されるSiO2:Al2O3モル比(SAR)には制限がある。よって、例として、AEI型骨格構造を有するゼオライト材料のSiO2:Al2O3モル比は、5~20程度の範囲に含まれ、好ましくは、SiO2:Al2O3モル比は、8~20、より好ましくは9~19.5、さらになお好ましくは10~19の範囲に含まれる。特に好ましい実施形態によれば、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト触媒のSiO2:Al2O3モル比は、14~18の範囲に含まれる。
【0049】
1つ以上の実施形態では、例として、SCR触媒中のAEIゼオライトは、0.1~2.5ミクロン程度の範囲の結晶サイズを有し、好ましくは、結晶サイズは0.3~2.0の範囲、より好ましくは0.5~1.8の範囲であり、さらになお好ましくは0.8~1.5の範囲である。特に好ましい実施形態によれば、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト触媒は、1.0~1.5ミクロンの範囲に含まれる結晶サイズを有する。
【0050】
結晶サイズは、金を噴霧することによって粉末試料を前処理した後、日立SU-1510電子顕微鏡でゼオライト粉末の一次結晶の画像を収集して得られたものである。
【0051】
1つ以上の実施形態では、例として、SCR触媒中のAEIゼオライトは、平均d10が0.5~2.5ミクロン程度の範囲のアグロメレートサイズを有し、好ましくは、アグロメレートサイズの平均d10は、0.7~2.0の範囲、より好ましくは0.8~1.6の範囲、さらになお好ましくは1.0~1.5の範囲に含まれる。特に好ましい実施形態によれば、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト触媒は、平均d10が1.2~1.4ミクロンの範囲に含まれるアグロメレートサイズを有する。
【0052】
PSD測定は、R2レンズを備えたSympatec Helos-quixelで行った。粉末試料をDI水に懸濁させて固形分33.3%のスラリーを形成し、事前の超音波処理を行わずにPSD測定に供した。
【0053】
1つ以上の実施形態では、例として、SCR触媒中のAEIゼオライトは、平均d90が5~30ミクロン程度の範囲のアグロメレートサイズを有し、好ましくは、アグロメレートサイズの平均d90は、5.5~28の範囲、より好ましくは6~20の範囲、さらになお好ましくは7~15の範囲に含まれる。特に好ましい実施形態によれば、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト触媒は、平均d90が7.2~14ミクロンの範囲に含まれるアグロメレートサイズを有する。
【0054】
1つ以上の実施形態では、例として、SCR触媒中のAEIゼオライトは、少なくとも450m2/gのゼオライト表面積(ZSA)を有し、好ましくは、ゼオライト表面積は470m2/gよりも大きく、より好ましくは500m2/gよりも大きく、さらになお好ましくは525m2/gよりも大きい。特に好ましい実施形態によれば、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト触媒は、550~700m2/gのゼオライト表面積を有する。
【0055】
1つ以上の実施形態では、例として、SCR触媒中のAEIゼオライトは、50m2/gよりも小さいマトリックス表面積(MSA)を有し、好ましくは、マトリックス表面積は40m2/gよりも小さく、より好ましくは30m2/gよりも小さく、さらになお好ましくは25m2/gよりも小さい。特に好ましい実施形態によれば、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト触媒は、20m2/gよりも小さく、0m2/gよりも大きいマトリックス表面積を有する。
【0056】
本明細書で使用する用語、「ゼオライト表面積」とは、N2吸着及び脱着によるマイクロ細孔表面積を決定するためのデボアのt-プロット法を指す。
【0057】
本明細書で使用する用語、「マトリックス表面積」とは、N2吸着及び脱着による外部表面積を決定するためのデボアのt-プロット法を指す。
【0058】
本明細書で使用する用語、「全表面積」とは、N2吸着による表面積を決定するためのBrunauer,Emmett,Teller(BET)法を指す。細孔直径及び全細孔容積も、N2吸着又は脱着を介して決定することができる。
【0059】
ゼオライト粉末試料のZSA及びMSA測定は、Micromeritics ASAP2420で、プローブガスとして窒素を用いたt-プロット測定プロトコルを使用して行った。測定の前に、試料は350℃で2時間脱気される。
【0060】
ゼオライト粉末試料のBET測定は、Micromeritics ASAP2420で、プローブガスとして窒素を用いたBET測定プロトコルを使用して行った。測定の前に、試料は350℃で2時間脱気される。
【0061】
1つ以上の実施形態では、例として、SCR触媒中のAEIゼオライトは、100回タッピングした後のタップ密度が0.10~0.90g/ml程度の範囲であり、好ましくは、100回タッピングした後のタップ密度が、0.15~0.75の範囲、より好ましくは0.2~0.6の範囲、さらになお好ましくは0.25~0.5の範囲に含まれる。特に好ましい実施形態によれば、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト触媒は、100回タッピングした後のタップ密度が0.3~0.4g/mlの範囲に含まれる。
【0062】
タップ密度は、ERWEKA SVM222で測定される。約80mlの試料を目盛付きシリンダーに入れ、タップ高さを3mmとして1分以内に100回タップした。
【0063】
1つ以上の実施形態では、SCR触媒中のAEIゼオライトは、300℃で5時間脱気した後、295Kでの相対水圧P/P0が0.5のときに、少なくとも250cm3/gの水取り込み量を有し、好ましくは、水取り込み量は255cm3/gよりも大きく、より好ましくは260cm3/gよりも大きく、さらになお好ましくは265cm3/gよりも大きい。特に好ましい実施形態によれば、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト触媒は、300℃で5時間脱気した後、295Kでの相対水圧P/P0が0.5のときに、270~850cm3/gの水取り込み量を有する。
【0064】
水等温線は、BEL Japan BELSORP-aqua3で粉末状のゼオライト試料について測定した。水吸着測定の前に、水(分析対象物)を液体窒素下で瞬間凍結した後、動的真空下で少なくとも5回排気して、水貯留部にあるガスを除去した。測定温度は水循環器で制御し、298Kに設定した。ガス及び水の吸着測定のためのデッドスペースの推定にはヘリウムを使用した。ゼオライト粉末試料は、300℃で5時間脱気した。
【0065】
用途の特定の必要性に応じて、本出願の特定の及び好ましい実施形態によるAEIゼオライトは、スラリーを作成するための粉末、スプレー粉末又はスプレー造粒物などのような形態で、そのまま採用することができる。
【0066】
本発明の排気ガス処理システム用のAEI触媒を調製するためのスラリー作成及びコーティング手順について、Cu又はFeを導入するために適用される特定の含浸方法に関しても、前記工程を繰り返すかどうか、繰り返す場合には前記工程を繰り返す回数に関しても、特に制限はない。よって例として、交換されるイオンが好適に溶解又は懸濁している溶媒又は溶媒混合物を用いて、スラリー作成を行ってよい。使用できる溶媒の種類に関しては、交換されるイオン、すなわち銅及び/又は鉄、好ましくは銅又は鉄がその中で溶媒和又は懸濁することを条件に、この点に関してもやはり特に制限はない。
【0067】
1つ以上の実施形態では、AEI型骨格構造を有するゼオライト材料は、非骨格要素として鉄又は銅を含有し、同時に、ゼオライト材料が非骨格要素として銅のみを含む特に好ましい実施形態に関しては、Fe2O3及びCuOとして計算される非骨格要素としての鉄及び銅の合計担持量が、0.1~25wt.%の範囲、好ましくは2.0~8.0wt.%、より好ましくは2.5~6.0wt.%であることを条件に、ゼオライト材料のCu:Alのモル比に関して特に制限はない。このように、例として、ゼオライト材料のCu:Alのモル比は、0.01~1程度の範囲であってよく、好ましくはCu:Alのモル比は、0.1~0.5の範囲、より好ましくは0.2~0.5の範囲、さらになお好ましくは0.25~0.45の範囲に含まれる。本発明の特に好ましい実施形態によれば、ゼオライト材料のCu:Alのモル比は、0.3~0.4の範囲である。
【0068】
1つ以上の実施形態では、AEI型、CHA型又はBEA型の骨格構造を有する第2のゼオライト材料は、非骨格要素として鉄又は銅を含有し、同時に、ゼオライト材料が非骨格要素として銅のみを含む特に好ましい実施形態に関しては、Fe2O3及びCuOとしてそれぞれ計算される非骨格要素としての銅及び鉄の合計担持量が、0.1~25wt.%の範囲、好ましくは2.0~8.0wt.%、より好ましくは2.5~6.0wt.%であることを条件に、ゼオライト材料のFe:Alのモル比に関して、やはり特に制限はない。このように、例として、ゼオライト材料のFe:Alのモル比は、0.01~1程度の範囲であってよく、好ましくはFe:Alのモル比は、0.05~0.7の範囲、より好ましくは0.1~0.5の範囲、より好ましくは0.15~0.4の範囲、より好ましくは0.18~0.35の範囲、さらになお好ましくは0.2~0.3の範囲に含まれる。本発明の特に好ましい実施形態によれば、ゼオライト材料のFe:Alのモル比は、0.22~0.28の範囲である。
【0069】
いくつかの好ましい実施形態では、スラリーを作成するプロセス中に、ゼオライト材料を鉄又は銅のいずれかでイオン交換する。スラリーを作成するプロセス中に、ゼオライト材料を銅単独でイオン交換する本発明の前記好ましい実施形態によれば、スラリーを作成するプロセス中に得られるイオン交換した材料中の銅の量について、その合計量がCuOとして計算して0.1~25wt.%の範囲に含まれることを条件に、特に制限はない。しかし、特に好ましい実施形態によれば、銅の合計量は、0.5~10wt.%の範囲、より好ましくは2~8wt.%の範囲、さらになお好ましくは2.5~6wt.%の範囲に含まれる。特に好ましい実施形態によれば、スラリーを作成するプロセス中にイオン交換される銅の合計量は、CuOとして計算して4~5wt.%の範囲に含まれる。
【0070】
本発明の驚くべき技術的効果は、スラリーを作成するプロセス中に得られ、そして本発明の排気処理システムに適用されるゼオライト材料中に、銅及び/又は鉄がバランスよく担持されている点で、特に顕著である。従って、本発明の実施形態は、イオン交換した材料中の銅及び/又は鉄の合計量が、Fe2O3及びCuOとして計算してそれぞれ3~10wt.%の範囲に含まれる場合が特に好ましい。さらになお好ましくは、銅及び/又は鉄の合計量は、3.5~8wt.%の範囲、さらになお好ましくは4~6wt.%の範囲に含まれる。そのさらになお好ましい実施形態によれば、工程(3)で得られるイオン交換した材料中の銅及び/又は鉄の合計量は、Fe2O3及びCuOとして計算してそれぞれ4~5wt.%の範囲である。
【0071】
このように、例として、任意の好適な鉄(II)及び/又は鉄(III)化合物、好ましくは任意の鉄(II)化合物、例えば1つ以上の鉄(II)及び/又は鉄(III)塩、より好ましくはハロゲン化鉄、好ましくは塩化鉄及び/又は臭化鉄、より好ましくは塩化鉄、鉄ペルクロラート、鉄スルフィット、鉄スルフェート、鉄ヒドロゲンスルフェート、鉄ニトリット、鉄ニトラート、鉄ジヒドロゲンホスフェート、鉄ヒドロゲンホスフェート、鉄カーボネート、鉄ヒドロゲンカーボネート、鉄アセテート、鉄シトラート、鉄マロネート、鉄オキサレート、鉄タートラート、及びこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される1つ以上の鉄(II)塩を採用してよい。好ましくは、スラリーを作成する工程中のイオン交換に使用する1つ以上の鉄化合物は、好ましくは、塩化鉄及び/又は臭化鉄、好ましくは塩化鉄、鉄ペルクロラート、鉄スルフェート、鉄ニトラート、鉄アセテート、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、好ましくは、1つ以上の鉄化合物は、鉄(II)又は鉄(III)化合物である。本発明の特に好ましい実施形態によれば、スラリーを作成する工程中のイオン交換に使用する鉄は、鉄ニトラート、好ましくは鉄(III)ニトラートを含み、さらになお好ましくはスラリーを作成する工程中の鉄化合物として鉄(III)ニトラートを使用する。
【0072】
スラリーを作成する工程中のイオン交換に使用してよい銅化合物に関して、繰り返しとなるが、任意の好適な銅(I)及び/又は銅(II)化合物を使用してよく、好ましくは銅(II)塩である銅(II)化合物を使用することが好ましい。よって、例として、1つ以上の銅(II)塩を使用してよく、これは、銅(II)ハロゲン化物、好ましくは塩化銅(II)及び/又は臭化銅(II)、より好ましくは塩化銅(II)、銅(II)ペルクロラート、銅(II)スルフィット、銅(II)ヒドロゲンスルフェート、銅(II)スルフェート、銅(II)ニトリット、銅(II)ニトラート、銅(II)ジヒドロゲンホスフェート、銅(II)ヒドロゲンホスフェート、銅(II)ホスフェート、銅(II)ヒドロゲンカーボネート、銅(II)カーボネート、銅(II)アセテート、銅(II)シトラート、銅(II)マロネート、銅(II)オキサラート、銅(II)タートラート、銅(II)オキシド、及びこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択され、より好ましくは、銅(II)塩は、塩化銅(II)及び/又は臭化銅(II)、好ましくは塩化銅(II)、銅(II)スルフェート、銅(II)ニトラート、銅(II)アセテート、銅(II)オキシド、及びそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。本発明の特に好ましい実施形態によれば、スラリーを作成する工程中のイオン交換に使用する銅は、銅(II)オキシドを含み、より好ましくは、スラリーを作成する工程中のイオン交換に使用する銅化合物は、銅(II)オキシドである。
【0073】
このように、1つ以上の実施形態では、スラリーを作成するプロセスに供するゼオライト材料は、スラリーを作成する工程中に、場合により、H+及び/又はNH4
+で、好ましくはH+でイオン交換してよく、及び/又は好ましくは場合により、銅及び/又は鉄でイオン交換する前にか焼してよい。本発明の好ましい実施形態によれば、スラリーを作成する工程中に、得られるゼオライト材料をまずH+でイオン交換してから、銅及び/又は鉄でイオン交換する。この点において、ゼオライト材料に含有されるイオン性非骨格要素のH+に対する交換を達成するために、考えられる任意のイオン交換手順、例えば酸による、例えば酸性媒体による、特に酸性溶液によるゼオライト材料の処理、を採用してよい。しかしながら本発明によれば、非骨格要素のH+に対する前記イオン交換は、まず、ゼオライト材料に含有される1つ以上のイオン性非骨格要素を、アンモニウムに対して、例えばゼオライト材料とアンモニウム含有溶液とを接触させることなどによってイオン交換し、その後、アンモニウムでイオン交換したゼオライト材料をか焼することによって達成することが、特に好ましい。前記の特に好ましい実施形態によれば、アンモニウム交換手順とそれに続くか焼手順を1回以上、好ましくは2回繰り返すことによって、スラリーを作成するプロセスに使用するゼオライト材料のH-形が得られる。
【0074】
いくつかの好ましい実施形態では、H-形の粉末の又は噴霧されたAEIゼオライト材料は、好適な耐火性バインダーと混合するか、又は好適な耐火性バインダーでコーティングする。一般的に、好適なバインダーとは、結合するべきゼオライト材料粒子の間に、バインダーなしで存在し得る物理吸着を超える接着性及び/又は凝集性を付与するあらゆる化合物である。このようなバインダーの例としては、金属酸化物、例えば、SiO2、Al2O3、TiO2、ZrO2又はMgO、又は粘土、又はこれらの化合物の2つ以上の混合物が挙げられる。採用することができる天然に存在する粘土には、モンモリロナイト及びカオリンファミリーが含まれ、当該ファミリーには、サブベントナイト(subbentonites)、及びDixie、McNamee、Georgia及びFlorida粘土として一般的に知られているカオリン、又は主な鉱物構成成分がハロイサイト、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、又はアナウキサイトであるものが含まれる。このような粘土は、元々採掘された生の状態で使用することができ、又はまずか焼し、酸処理又は化学的変性に供して使用することもできる。さらに、本発明によるゼオライト材料は、シリカ-アルミナ、シリカ-マグネシア、シリカ-ジルコニア、シリカ-トリア、シリカ-ベリリア、シリカ-チタニアなどの多孔質マトリックス材料、及びシリカ-アルミナ-トリア、シリカ-アルミナ-ジルコニア、シリカ-アルミナ-マグネシア及びシリカ-マグネシア-ジルコニアなどの三元組成物と複合化させることができる。
【0075】
いくつかの好ましい実施形態では、粉末の又は噴霧された材料は、場合により、上述のような好適な耐火性バインダーと混合するか、又は好適な耐火性バインダーでコーティングした後、例えば水を用いて水性混合物を形成してスラリーを形成し、好適な耐火性担体上に堆積させる。スラリーも、他の化合物、例えば安定剤、消泡剤、促進剤、分散剤、界面活性剤、レオロジー調整剤などを含んでよい。通常は、担体は部材を含み、しばしば「ハニカム」担体と呼ばれ、基材を貫通して延びる複数の微細で平行なガス流通路を有する1つ以上の耐火性本体を含む。このような担体は当技術分野でよく知られており、コージエライトなどの任意の好適な材料で作られていてよい。
【0076】
1つ以上の実施形態では、水性混合物を用いたコーティングプロセスであって、水性混合物が10~90質量%、好ましくは25~80質量%、より好ましくは40~70質量%の水からなる。
【0077】
1つ以上の実施形態では、調製される水性混合物は、水性混合物中に含まれるゼオライト材料の質量に基づいて、2~50質量%の範囲、好ましくは3~35質量%の範囲、より好ましくは4~20質量%の範囲の量で、非ゼオライトのオキシディック(oxidic)材料を含む。
【0078】
1つ以上の実施形態では、水性混合物はオキシディックバインダーの前駆体をさらに含み、前駆体は、好ましくはアルミニウム塩、ケイ素塩、ジルコニウム塩、及びチタン塩のうちの1つ以上、より好ましくはジルコニウム塩、及びアルミニウム塩のうちの1つ以上、より好ましくはジルコニウム塩、より好ましくはジルコニウムアセテートであり、
より好ましくは、調製される水性混合物において、酸化物として、好ましくはアルミナ、シリカ、ジルコニア又はチタニアとして計算される前駆体の量、より好ましくはZrO2として計算されるジルコニウム塩の量が、水性混合物中に含まれるゼオライト材料の質量に基づいて、1~10質量%の範囲、より好ましくは2~8質量%の範囲、より好ましくは3~7質量%の範囲である。
【0079】
1つ以上の実施形態では、調製される水性混合物は、調製される水性混合物中に含まれるゼオライト材料の質量に基づいて、好ましくは0.5~15質量%の範囲、より好ましくは1~7.5質量%の範囲の量で、添加剤をさらに含む。
【0080】
1つ以上の実施形態では、調製される水性混合物は、糖、好ましくはスクロース、グルコース及びフルクトースのうちの1つ以上、より好ましくはスクロースをさらに含み、調製される水性混合物は、調製される水性混合物中に含まれるゼオライト材料の質量に基づいて、1~15質量%の範囲、好ましくは2~10質量%の範囲、より好ましくは2.5~6質量%の範囲の量で糖を含むことが好ましい。
【0081】
1つ以上の実施形態では、調製される水性混合物であって、スラリー調製プロセスが、好ましくは水性混合物の粒子が0.5~50マイクロメートルの範囲、より好ましくは2~30マイクロメートルの範囲、より好ましくは2~20マイクロメートルの範囲のD90を有するまで、水性混合物を粉砕することをさらに含む。
【0082】
1つ以上の実施形態では、調製プロセスによって調製するSCR触媒組成物は、約1ミクロン~約10ミクロンの粒径分布(PSD)D50を有する。1つ以上の実施形態では、SCR触媒組成物は、約2ミクロン~約30ミクロンの粒径分布D90を有する。
【0083】
いくつかの好ましい実施形態では、本願明細書に記載の特定の及び好ましい実施形態のいずれか1項によるゼオライト材料は、触媒及び/又は触媒支持体として、好ましくは窒素酸化物NOxを選択的に還元するための選択的触媒還元(SCR)プロセスの触媒として使用する。
【0084】
よって本発明は、NOxを含有するガス流を、本願明細書に記載の特定の及び好ましい実施形態のいずれか1項によるAEI型骨格構造を有するゼオライト材料を含有する触媒と、特に、好適な還元条件下で接触させることによって、窒素酸化物NOxを選択的に還元する方法に関するものである。本発明の意味において、「窒素酸化物」及び「NOx」という用語は、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、及び/又はこれらの混合物を指し、好ましくは、NO及びNO2の混合物を指す。
【0085】
本発明の排気システムを設定するために、AEIゼオライトを基材上に配置してよい。1つ以上の実施形態では、基材は、触媒の調製に通常使用される材料のうちの任意でよく、通例セラミック又は金属のハニカム構造を含む。任意の好適な基材を用いてよく、例えば微細で平行なガス流通路が基材の入口又は出口面から基材を貫通して延び、通路は流体がそこを貫通して流れるように開放されている型のモノリシック基材(ハニカムフロースルー基材と呼ばれる)が挙げられる。流体入口から流体出口まで基本的に直線路である通路は、通路を通って流れるガスが触媒材料と接触するように触媒材料がウォッシュコートとして配置されている壁によって画定される。モノリシック基材の流路は薄壁のチャネルであり、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形等の任意の好適な断面形状及び寸法であることが可能である。このような構造は、断面の1平方インチ(2.54cm×2.54cm)あたり、約60個~約400個以上のガス入口開口部(すなわち、セル)を含有できる。
【0086】
1つ以上の実施形態では、基材は、チャネルが交互に遮断され、一方の方向(入口方向)からチャネルに入るガス状流がチャネル壁を通って流れ、他方の方向(出口方向)からチャネルより出ることを可能にするウォールフローフィルタ基材であることも可能である。触媒組成物は、フロースルー又はウォールフローフィルタ上にコーティングすることができる。ウォールフロー基材を利用する場合、得られるシステムは、ガス状汚染物質と共に微粒子状物質を除去することができる。ウォールフローフィルタ基材は、コージエライト、アルミニウムチタネート又はシリコンカーバイドなど、当技術分野で一般的に知られている材料から作ることができる。ウォールフローフィルタ上の触媒組成物の担持量は、多孔性及び壁厚などの基材の特性に依存し、通常はフロースルー基材上の担持量よりも低いことが理解されよう。
【0087】
1つ以上の実施形態では、セラミック基材は、任意の好適な耐火性材料、例えばコージエライト、コージエライト-アルミナ、シリコンニトリド、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、アルファ-アルミナ、アルミノシリケートなどで作成してよい。
【0088】
本発明の実施形態の触媒に有用な基材は、本来金属性であるものでもよく、1種以上の金属又は合金から構成されていてよい。金属性基材は、波形シート又はモノリシック形態などの様々な形状で用いてよい。好適な金属性支持体には、耐熱金属、チタン及びステンレス鋼などの金属合金、及び鉄が実質的又は主要な成分である他の合金が含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム及び/又はアルミニウムのうちの1つ以上を含有してよく、これら金属の合計量は、少なくとも15wt.%の合金、例えば10~25wt.%のクロム、3~8wt.%のアルミニウム及び最大で20wt.%のニッケルを有利に含有できる。合金は、マンガン、銅、バナジウム、チタンなどの1つ以上の他の金属を少量又は微量含有してもよい。金属基材の表面は、基材の表面に酸化物の層を形成することによって合金の耐腐食性を向上させるために、高温、例えば1000℃以上で酸化させてよい。そのような高温で誘導する酸化は、耐火性金属酸化物支持体及び触媒促進金属成分の基材への接着性を増進できる。
【0089】
代替の実施形態では、AEI型骨格構造を有する本発明のゼオライト材料は、開放セル発泡体基材上に配置してよい。そのような基材は当技術分野でよく知られており、通常は耐火性セラミック又は金属材料の形態である。
【0090】
いくつかの好ましい実施形態では、先の実施形態で概説したように、ゼオライト材料は、スラリー作成プロセスの後に好適な基材上にコーティングされる。スラリー作成プロセス後にゼオライト材料がコーティングされる前記好ましい実施形態によれば、そのような基材にコーティングされるスラリーの量について、その総乾燥ゲインが、ブランク基材の体積に対するか焼後の総乾燥ゲインとして計算して、10~350g/lの範囲に含まれていることを条件に、特に制限はない。しかし、特に好ましい実施形態によれば、総乾燥ゲインは、20~300g/lの範囲、より好ましくは50~250g/lの範囲、さらになお好ましくは80~200g/lの範囲に含まれる。特に好ましい実施形態によれば、基材上の総乾燥ゲインは、ブランク基材の質量に対するか焼後の総乾燥ゲインとして計算して、100~200g/lの範囲に含まれる。
【0091】
いくつかのより好ましい実施形態では、水性混合物を、基材の入口端から出口端まで、又は基材の出口端から入口端まで、基材軸方向長さのx%にわたって配置し、xは80~100の範囲、好ましくは90~100の範囲、より好ましくは95~100の範囲、より好ましくは98~100の範囲である。
【0092】
1つ以上の実施形態では、水性スラリーを用いたコーティングプロセスであって、基材がウォールフローフィルタ基材、好ましくは、コージエライトウォールフローフィルタ基材、シリコンカーバイドウォールフローフィルタ基材及びアルミニウムチタネートウォールフローフィルタ基材のうちの1つ以上、より好ましくは、シリコンカーバイドウォールフローフィルタ基材及びアルミニウムチタネートウォールフローフィルタ基材のうちの1つ以上、より好ましくはシリコンカーバイドウォールフローフィルタ基材である。
【0093】
1つ以上の実施形態では、水性スラリーを用いたコーティングプロセスであって、基材がフロースルー基材、好ましくは、コージエライトフロースルー基材、シリコンカーバイドフロースルー基材及びアルミニウムチタネートフロースルー基材のうちの1つ以上、より好ましくは、シリコンカーバイドフロースルー基材及びアルミニウムチタネートフロースルー基材のうちの1つ以上、より好ましくはシリコンカーバイドフロースルー基材である。
【0094】
1つ以上の実施形態では、水性スラリーを用いたコーティングプロセスであって、コーティングされた基材の乾燥を、60~300℃の範囲、好ましくは90~200℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中で行い、ガス雰囲気は好ましくは酸素を含む。
【0095】
1つ以上の実施形態では、水性スラリーを用いたコーティングプロセスであって、乾燥をガス雰囲気中で、10秒~15分の範囲、好ましくは20秒~10分の範囲、より好ましくは30秒~5分の範囲の持続時間で行い、ガス雰囲気は好ましくは酸素を含む。
【0096】
水性スラリーを用いたコーティングプロセスであって、配置することが、
(ii.1)入口端、出口端、入口端から出口端まで延びる基材の軸方向の長さ、及び基材を貫通して延びる内壁によって画定される複数の通路を含む基材の、内壁の表面上に、水性混合物の第1の部分を配置すること、及び混合物の第1の部分が上に配置されている基材を乾燥させること、
(ii.2)(ii.1)で得られた、混合物の第1の部分が上に配置されている基材上に、水性混合物の第2の部分を配置すること、及び場合により、混合物の第1の部分と第2の部分とが上に配置されている基材を乾燥させること、
を含む。
【0097】
1つ以上の実施形態では、水性スラリーを用いたコーティングプロセスであって、(i.1)により基材の内壁の表面上に水性混合物の第1の部分を配置する前に、得られた水性混合物をさらに希釈する。
【0098】
1つ以上の実施形態では、水性スラリーを用いたコーティングプロセスであって、コーティングして乾燥させた水性混合物を、300~900℃の範囲、好ましくは400~650℃の範囲、より好ましくは400~500℃の範囲、又はより好ましくは550~600℃の範囲の温度を有するガス雰囲気中でさらにか焼し、ガス雰囲気は好ましくは酸素を含む。
【0099】
1つ以上の実施形態では、水性スラリーを用いたコーティングプロセスであって、か焼をガス雰囲気中で0.1~4時間の範囲、好ましくは0.2~2.0時間の範囲の持続時間で行い、ガス雰囲気は好ましくは酸素を含む。
【0100】
1つ以上の実施形態では、銅を含むゼオライト材料を含むSCR触媒であって、前記触媒は、水性スラリーを用いたコーティングプロセス、その後の乾燥及びか焼によって得られるか、又は得ることができる。
【0101】
1つ以上の実施形態では、SCR触媒であって、触媒に含まれる銅又は鉄のうち、75~100質量%、好ましくは78~100質量%、より好ましくは80~100質量%が、ゼオライト材料に含まれる。
【0102】
1つ以上の実施形態では、SCR触媒であって、触媒が0.5~6g/in3の範囲、好ましくは1.2~5.5g/in3の範囲、より好ましくは1.7~4.5g/in3の範囲の担持量でゼオライト材料を含む。
【0103】
1つ以上の実施形態では、SCR触媒であって、触媒が0.02~1.8g/in3の範囲、好ましくは0.1~1.35g/in3の範囲、より好ましくは0.1~0.9g/in3の範囲の担持量で非ゼオライトのオキシディック材料を含む。
【0104】
1つ以上の実施形態では、SCR触媒であって、触媒がオキシディックバインダーをさらに含み、オキシディックバインダーが、アルミナ、シリカ、ジルコニア及びチタニアと、Si、Al、Zr及びTiのうちの2つ以上の混合酸化物と、これらの2つ以上の混合物とからなる群から選択され、好ましくは、アルミナ及びジルコニアと、Al及びZrの混合酸化物と、これらの混合物とからなる群から選択され、オキシディックバインダーがより好ましくはジルコニアであり、
触媒が、より好ましくは0.01~0.9g/in3の範囲、より好ましくは0.04~0.6g/in3の範囲、より好ましくは0.06~0.3g/in3の範囲の担持量でオキシディックバインダーを含む。
【0105】
1つ以上の実施形態では、SCR触媒は、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ニオブから選択される少なくとも1つの無機金属酸化物材料を含む。或る特定の実施形態では、SCRは、酸化バナジウムと酸化チタンとの混合酸化物を含む。或る特定の実施形態では、SCRは、酸化バナジウム、酸化ケイ素、及び酸化チタンの混合酸化物を含む。或る特定の他の実施形態では、SCRは、酸化バナジウム、酸化タングステン、及び酸化チタンの混合酸化物を含む。或る他の特定の実施形態では、SCRは、酸化バナジウム、酸化アンチモン、及び酸化チタンの混合酸化物を含む。
【0106】
或る特定の実施形態では、SCR触媒組成物は、少なくとも希土類金属成分を有する。具体的な実施形態では、SCR触媒組成物は、セリウムを有する。
【0107】
或る特定の実施形態では、SCR触媒組成物は、少なくともアルカリ金属成分及び/又はアルカリ土類金属成分を有する。
【0108】
1つ以上の実施形態では、任意の第2のSCR触媒は、銅又は鉄を含むゼオライト材料を含み、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFG、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFV、AFX、AFY、AHT、ANA、APC、APD、AST、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOF、BOG、BOZ、BPH、BRE、BSV、CAN、CAS、CDO、CFI、CGF、CGS、CHA、-CHI、-CLO、CON、CSV、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DOH、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、*-EWT、EZT、FAR、FAU、FER、FRA、GIS、GIU、GME、GON、GOO、HEU、IFO、IFR、-IFU、IFW、IFY、IHW、IMF、IRN、IRR、-IRY、ISV、ITE、ITG、ITH、*-ITN、ITR、ITT、-ITV、ITW、IWR、IWS、IWV、IWW、JBW、JNT、JOZ、JRY、JSN、JSR、JST、JSW、KFI、LAU、LEV、LIO、-LIT、LOS、LOV、LTA、LTF、LTJ、LTL、LTN、MAR、MAZ、MEI、MEL、MEP、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、*MRE、MSE、MSO、MTF、MTN、MTT、MTW、MVY、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NON、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OKO、OSI、OSO、OWE、-PAR、PAU、PCR、PHI、PON、POS、PSI、PUN、RHO、-RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RUT、RWR、RWY、SAF、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBN、SBS、SBT、SEW、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFS、*SFV、SFW、SGT、SIV、SOD、SOF、SOS、SSF、*-SSO、SSY、STF、STI、*STO、STT、STW、-SVR、SVV、SZR、TER、THO、TOL、TON、TSC、TUN、UEI、UFI、UOS、UOV、UOZ、USI、UTL、UWY、VET、VFI、VNI、VSV、WEI、-WEN、YUG、ZON、これらの2つ以上の混合物、及びこれらの2つ以上の混合型からなる群から選択される骨格型、好ましくはCHA、AEI、RTH、LEV、DDR、KFI、ERI、AFX、BEA、これらの2つ以上の混合物、及びこれらの2つ以上の混合型からなる群から選択される骨格型、より好ましくはCHA、AEI、RTH、AFX、BEA、これらの2つ以上の混合物、及びこれらの2つ以上の混合型からなる群から選択される骨格型、より好ましくはCHA、AEI及びBEAからなる群から選択される骨格型を有し、銅又は鉄を含むゼオライト材料は、骨格型CHAを有する。
【0109】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒はゼオライト材料を含み、好ましくは、このゼオライト材料は骨格型CHAを有し、走査電子顕微鏡で測定して少なくとも0.1マイクロメートル、好ましくは0.1~3.0マイクロメートルの範囲、より好ましくは0.3~1.9マイクロメートルの範囲、より好ましくは0.4~1.5マイクロメートルの範囲の平均結晶子径を有する。
【0110】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒はゼオライト材料を含み、このゼオライト材料は骨格型CHAを有し、アルミナに対するシリカのモル比を少なくとも5、好ましくは5~40の範囲、より好ましくは8~35の範囲、より好ましくは10~25の範囲で有する。
【0111】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒はゼオライト材料を含み、このゼオライト材料は骨格型BEAを有し、アルミナに対するシリカのモル比を少なくとも5、好ましくは5~50の範囲、より好ましくは8~40の範囲、より好ましくは10~30の範囲で有する。
【0112】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒はゼオライト材料を含み、このゼオライト材料は骨格型AEIを有し、アルミナに対するシリカのモル比を少なくとも10、好ましくは10~30の範囲、より好ましくは12~25の範囲、より好ましくは14~19の範囲で有する。
【0113】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒はゼオライト材料を含み、ゼオライト材料中に含まれる銅の量は、CuOとして計算して、ゼオライト材料の質量に基づいて0.1~10質量%の範囲、好ましくは1~8質量%の範囲、より好ましくは2~6質量%の範囲である。
【0114】
1つ以上の実施形態では、第2のSCRは、Feと、CHA、AEI、BEA、MFI、FAU、MOR、AFX及びLTAから好ましくは選択されるがこれらに限定されない骨格型を有するゼオライトとを含む。具体的な一実施形態では、SCRは、Feと、BEA構造を有するゼオライトとを含む。他の1つの具体的な実施形態では、SCRは、FeとCHA構造を有するゼオライトとを含む。
【0115】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒はゼオライト材料を含み、ゼオライト材料中に含まれる鉄の量は、Fe2O3として計算して、ゼオライト材料の質量に基づいて0.1~10質量%の範囲、好ましくは1~8質量%の範囲、より好ましくは2~6質量%の範囲である。
【0116】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒は、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ニオブから選択される少なくとも1つの無機金属酸化物材料を含む。或る特定の実施形態では、SCRは、酸化バナジウムと酸化チタンとの混合酸化物を含む。或る特定の実施形態では、SCRは、酸化バナジウム、酸化ケイ素及び酸化チタンの混合酸化物を含む。或る特定の他の特定の実施形態では、SCRは、酸化バナジウム、酸化タングステン及び酸化チタンの混合酸化物を含む。或る特定の他の特定の実施形態では、SCRは、酸化バナジウム、酸化アンチモン及び酸化チタンの混合酸化物を含む。
【0117】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒組成物は、少なくとも希土類金属成分を有する。具体的な実施形態では、SCR触媒組成物は、セリウムを有する。
【0118】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒組成物は、少なくともアルカリ金属成分及び/又はアルカリ土類金属成分を有する。
【0119】
1つ以上の実施形態では、第2のSCR触媒組成物は、耐火性金属酸化物、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、プラセオジミア、マグネシア、酸化バリウム、酸化マンガン、酸化スズ、酸化タングステン、希土類金属酸化物、卑金属酸化物など、及びそれらの物理的混合物又は化学的組み合わせを有し、結合性、熱安定性、耐硫黄性などの有利な特性を提供する。
【0120】
第2のSCR触媒を調製するための方法であって、
(i)水と、骨格型CHAを有するゼオライト材料と、銅又は鉄の供給源とを含む水性混合物を調製する工程、
(ii)場合により、(i)で得られた混合物を乾燥させる工程、
(iii)(i)又は(ii)で得られた混合物をか焼する工程
を含む方法。
【0121】
1つ以上の実施形態では、調製プロセスにより調製する第2のSCR触媒組成物は、約1ミクロン~約10ミクロンの粒径分布(PSD)D50を有する。1つ以上の実施形態では、SCR触媒組成物は、約2ミクロン~約30ミクロンの粒径分布D90を有する。
【0122】
1つ以上の実施形態では、調製プロセスにより調製するSCR触媒組成物は、約50~約700m2/gの範囲の全表面積(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、調製プロセスにより調製するSCR触媒組成物は、約0.3~約1.5cm3/gの範囲の全細孔容積(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、SCR触媒組成物は、約2~約50nmの範囲の平均細孔直径(BET)を有する。
【0123】
1つ以上の実施形態では、SCRは調製プロセスにより、約0.5~約6g/in3、好ましくは約1.5~約5.5g/in3、より好ましくは約2.0~約4.5g/in3の少なくとも触媒ウォッシュコート担持(乾燥ゲイン)でコーティングされる。
【0124】
ディーゼル酸化触媒(DOC)組成物
本明細書で使用する用語、「DOC」とは、ディーゼル車両からのHC及びCOの排出を制御する、ディーゼル酸化触媒を指す。DOC触媒は、主にPGM、アルミナ、ゼオライト及びチタニアをセラミック基材上に含有し、好ましくはPt、添加剤としてのチタニア及びシリカをセラミック基材上に含有する。
【0125】
一般的にDOC組成物は、耐火性金属支持体などの支持上に分散した1つ以上の白金族金属(PGM)成分を含む。炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)の両方のガス状汚染物質を、これら汚染物質の二酸化炭素と水への酸化を触媒することによって転化するために、ディーゼルエンジンの排気の処理に使用される、様々なこのようなDOC組成物が知られている。ガス状HC及びCO排出物及び微粒子状物質(SOF部分)の転化に加えて、様々なこのようなDOC組成物は、NOのNO2への酸化を触媒して、排気からNOxを除去する下流のSCR反応(高速SCR反応による)を促進する。場合により、様々なこのようなDOC組成物は、炭化水素貯蔵、NOx貯蔵、及び燃料点火の少なくとも1つの機能を示す組成物と統合される。
【0126】
本明細書で使用する用語、「PGM」とは、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、及び/又は金(Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Ir、及び/又はAu)などの白金族金属を指す。PGMは、ゼロ価の金属形態であってよく、又はPGMは酸化物形態であってもよいことを理解されたい。PGM成分は、任意の原子価状態のPGMを含むことができる。「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」などの用語は、それぞれの白金族金属化合物、錯体などを指し、これらは、触媒のか焼又は使用時に分解するか、そうでなければ触媒活性形態、通常は金属又は金属酸化物に変換される。いくつかの実施形態では、PGM成分は、金属又はその酸化物(例えば、白金又はその酸化物を含むが、これらに限定されない)である。
【0127】
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示するDOC組成物は、DOC触媒の体積に対するPGM元素の総質量として計算して、約5g/ft3~約250g/ft3、好ましくは約10g/ft3~約140g/ft3の総PGM担持量を含む。
【0128】
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示するDOC組成物は、乾燥DOC組成物の質量に基づいて、約0.1wt.%~約20wt.%、好ましくは約0.5wt.%~約10wt.%の総PGM担持量を含む。
【0129】
1つ以上の実施形態では、本明細書で開示するDOC組成物は、パラジウム(Pd)を含まずに白金(Pt)成分を含む。
【0130】
1つ以上の実施形態では、本明細書で開示するDOC組成物は、白金(Pt)を含まずにパラジウム(Pd)成分を含む。
【0131】
1つ以上の実施形態では、本明細書で開示するDOC組成物は、白金成分及びパラジウム成分の両方を含む。いくつかの実施形態では、Pt/Pd質量比は、約10:1~約1:10、好ましくは約1:2~約2:1である。
【0132】
1つ以上の実施形態では、DOC組成物は、例えば、乾燥DOC組成物の質量に基づいて、約0.1wt.%~約20wt.%、好ましくは約0.5wt.%~約10wt.%の範囲の白金成分を含んでよい。
【0133】
1つ以上の実施形態において、DOC組成物は、例えば、DOC触媒の体積に基づいて、約1~約167g/ft3の白金成分を含んでよい。
【0134】
1つ以上の実施形態において、DOC組成物は、例えば、乾燥DOC組成物の質量に基づいて、約0.1wt.%~約20wt.%、好ましくは約0.5wt.%~約10wt.%のパラジウム成分を含んでよい。
【0135】
1つ以上の実施形態では、DOC組成物は、例えば、DOC触媒の体積に基づいて、約1~約167g/ft3のパラジウム成分を含んでよい。
【0136】
1つ以上の実施形態では、開示するDOC組成物の白金成分及びパラジウム成分の両方が、支持体材料上に支持される(ここで、白金成分及びパラジウム成分が支持されている支持体材料は、同じであっても異なっていてもよい)。支持体材料はゼオライトでも非ゼオライトでもよい。触媒層における「非ゼオライトの支持体」又は「非ゼオライト支持体」とは、ゼオライトではなく、貴金属、安定剤、促進剤、バインダーなどを、会合、分散、含浸又は他の好適な方法で受け取る材料を指す。このような非ゼオライトの支持体の例には、高表面積の耐火性金属酸化物が含まれるが、これに限定されない。例えば、触媒活性のある白金成分及びパラジウム成分を堆積させた支持体材料は、高温で、例えばガソリン又はディーゼルエンジンの排気に関連する温度で、化学的及び物理的安定性を示す耐火性金属酸化物を含む。
【0137】
本明細書で使用する用語、「層」及び「層状」とは、表面、例えば基材上に支持された構造を指す。
【0138】
本明細書で使用する用語、「支持体」とは、追加の化学化合物又は元素が担持されているその下にある高表面積の材料を指す。
【0139】
本明細書で使用する用語、「耐火性金属酸化物」とは、熱及び摩耗に極めて耐性のある金属酸化物、例えばアルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、プラセオジミア(praseodymia)、マグネシア、酸化バリウム、酸化マンガン、酸化スズ、酸化タングステン、希土類金属酸化物、卑金属酸化物など、及びそれらの物理的混合物又は化学的組合わせを指し、原子的にドープされた組み合わせ、及び活性化アルミナなどの高表面積又は活性化された化合物も含まれる。シリカ-アルミナ、セリア-ジルコニア、プラセオジミア-セリア、アルミナ-ジルコニア、アルミナ-セリア-ジルコニア、ランタナ-アルミナ、ランタナ-ジルコニア-アルミナ、バリア-アルミナ、バリア-ランタナ-アルミナ、バリア-ランタナ-ネオジミア-アルミナ、及びアルミナ-セリア、少なくとも1つの希土類金属酸化物でドープされたアルミナ、及び少なくとも1つの卑金属酸化物でドープされたアルミナなどの、金属酸化物の組み合わせが含まれる。
【0140】
例示的なアルミナ材料には、大細孔ベーマイト、ガンマ-アルミナ、デルタ/シータアルミナ及び活性化アルミナ、例えば高嵩密度のガンマ-アルミナ、低又は中嵩密度の大細孔ガンマ-アルミナ、及び低嵩密度の大細孔ベーマイト及びガンマ-アルミナなどが含まれる。高表面積金属酸化物支持体、例えばアルミナ又はチタニア支持体材料は、通常はBET表面積を示し、活性アルミナは、約50m2/g~約400m2/g、好ましくは約60m2/g~約350m2/g、より好ましくは約90m2/g~約250m2/gの比表面積を有する。活性アルミナは、約0.3~約1.5cm3/gの範囲の平均細孔容積を有する。活性アルミナは、約2~約50nmの範囲の平均細孔直径を有する。
【0141】
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示するDOC触媒組成物において有用な金属酸化物支持体は、ドープされたアルミナ材料、例えばSiでドープされたアルミナ材料(1~10wt.%のSiO2-Al2O3を含むが、これに限定されない)、ドープされたチタニア材料、例えばSiでドープされたチタニア材料(1~15wt.%のSiO2-TiO2を含むが、これに限定されない)、又はドープされたジルコニア材料、例えばSiでドープされたZrO2(5~30wt.%のSiO2-ZrO2を含むが、これに限定されない)である。
【0142】
1つ以上の実施形態では、DOC触媒組成物は、上述の耐火性金属酸化物のうちの任意を、任意の量で含んでよい。1つ以上の実施形態では、触媒組成物は、触媒組成物の合計乾燥質量に基づいて、約50wt.%~約99.9wt.%の(約60wt.%~約99.8wt.%を含み、約70wt.%~約99.6wt.%を含む)耐火性金属酸化物を含んでもよい。
【0143】
1つ以上の実施形態では、DOC触媒組成物は、例えば、約10~約99wt.%のアルミナ、好ましくは約15~約95wt.%のアルミナ、より好ましくは約20~約85wt.%のアルミナを含んでよい。
【0144】
1つ以上の実施形態では、DOC触媒組成物は、炭化水素貯蔵成分又は炭化水素吸着成分を含んでよい。いくつかの実施形態では、DOC触媒の最下層又は最上層は、分子篩又はゼオライト、又はセリア含有分子篩、又はセリア含有金属酸化物から選択される炭化水素貯蔵又は炭化水素吸着成分をさらに含む。炭化水素貯蔵又は炭化水素吸着成分は、H+形として加えることができる。炭化水素貯蔵又は炭化水素吸着成分は、PGM(例えば白金、パラジウム、ロジウムなど)、銅、鉄、セリウム、ジルコニウム、バリウム、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、希土類金属酸化物、卑金属酸化物などから選択される1つ以上の触媒活性金属をさらに含んでよい。
【0145】
1つ以上の実施形態では、DOC触媒組成物は、約1ミクロン~約10ミクロンの粒径分布D50を有する。1つ以上の実施形態では、DOC触媒組成物は、約4ミクロン~約30ミクロンの粒径分布D90を有する。
【0146】
1つ以上の実施形態では、DOC触媒組成物は、約50~約400m2/gの範囲の全表面積(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、DOC触媒組成物は、約0.3~約1.5cm3/gの範囲の全細孔容積(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、DOC触媒組成物は、約2~約50nmの範囲の平均細孔直径(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、DOC触媒組成物は、約0.3~約3.0g/in3のウォッシュコート担持量(乾燥ゲイン)で基材にコーティングする。
【0147】
触媒化煤フィルタ(CSF)組成物
ディーゼル排出物処理システムで微粒子状物質の大幅な低減を達成するために、酸化触媒の使用に加えて、ディーゼル微粒子状物質フィルタを使用する。ディーゼル排気から微粒子状物質を除去する既知のフィルタ構造には、ハニカムウォールフローフィルタ、巻かれた又はパックされたファイバーフィルタ、開放気泡発泡体、焼結金属フィルタなどが含まれる。しかし、最も注目されるのは、後述するセラミックウォールフローフィルタである。このフィルタは、ディーゼル排気からの微粒子状材料の90%以上を除去することができる。
【0148】
典型的なセラミックウォールフローフィルタ基材は、コージエライト又はシリコンカーバイドなどの耐火材料で構成される。ウォールフロー基材は、ディーゼルエンジンの排気ガスからの微粒子状物質を濾過するのに特に有用である。一般的な構成は、ハニカム構造の入口側及び出口側の交互の通路の端が塞がれている複数通路のハニカム構造である。この構成では、いずれかの端が市松模様になる。入口軸方向の端で塞がれた通路は、出口軸方向の端では開放されている。これにより、微粒子状物質を同伴する排気ガスは、開放された入口通路に入り、多孔質の内壁を通って流れ、開放された出口軸方向の端を有するチャネルを通って出ることができる。微粒子状物質は、それによって基材の内壁で濾過される。ガス圧により、排気ガスは多孔質構造壁を通って、上流の軸方向端で閉じられ、下流の軸方向端で開放されているチャネルに押し込まれる。フィルタは、排気から粒子を除去するための物理的構造である。粒子が蓄積すると、フィルタからエンジンへの背圧が高くなる。そのため、許容できる背圧を維持するために、蓄積した粒子を連続的又は周期的に燃焼させてフィルタから取る必要がある。残念なことに、酸素リッチ(リーン)な排気条件で炭素煤粒子を燃焼させるには、500℃を超える温度が必要である。この温度は、ディーゼル排気中に通常存在する温度よりも高い。
【0149】
ウォールフロー基材の内壁に沿って堆積された触媒組成物は、蓄積した微粒子状物質の燃焼を促進することで、フィルタ基材の再生を支援する。蓄積した微粒子状物質の燃焼により、排気システム内の許容可能な背圧が回復する。これらのプロセスは、受動的又は能動的再生プロセスのいずれかである。どちらのプロセスも、O2又はNO2などの酸化剤を利用して微粒子状物質を燃焼させる。
【0150】
受動的再生プロセスでは、ディーゼル排気システムの通常の運転範囲内の温度で微粒子状物質を燃焼させる。好ましくは、再生プロセスで使用される酸化剤はNO2である。なぜならば、O2が酸化剤として機能する場合に必要とされる温度よりもはるかに低い温度で、煤画分が燃焼するからである。O2は雰囲気中から容易に入手できる一方で、NO2は、排気流中のNOを酸化する上流の酸化触媒を使用して能動的に生成することができる。
【0151】
触媒組成物が存在し、酸化剤としてのNO2の使用が提供されるにもかかわらず、蓄積した微粒子状物質を取り除き、フィルタ内の許容可能な背圧を回復するためには、通常、能動的再生プロセスが必要である。微粒子状物質の煤部分は、酸素リッチ(リーン)状態で燃焼するのに、一般的に500℃を超える温度を必要とし、これは、ディーゼル排気に通常存在する温度よりも高い。能動的再生プロセスは、通常、エンジンマネージメントを変更して、フィルタ前の温度を約550℃~約650℃まで上昇させることで開始される。走行モードによっては、再生中の冷却が十分でないとき(低速/低負荷又はアイドル走行モード)に、フィルタ内部で高い発熱が生じる可能性がある。そのような発熱は、フィルタ内で800℃以上を超えることがある。
【0152】
1つ以上の実施形態では、煤フィルタは、煤の燃焼を促進し、それによってフィルタの再生を促進する触媒でコーティングされている。1つ以上の実施形態では、煤フィルタは、NOx転化を促進する触媒でコーティングされている。1つ以上の実施形態では、煤フィルタは、CO酸化、炭化水素貯蔵、炭化水素酸化、NOx貯蔵、NO酸化、及び燃料点火の少なくとも1つの機能を有するように触媒でコーティングされる。
【0153】
1つ以上の実施形態では、ディーゼル酸化触媒の下流に、触媒化煤フィルタ(CSF)が配置される。
【0154】
1つ以上の実施形態では、触媒化煤フィルタは、長手方向に延びる壁によって境界を定められた複数の長手方向に延びる通路を有する。具体的な実施形態では、入口通路は、開いた入口端と閉じた出口端を有し、出口通路は、閉じた入口端と開いた出口端を有する。1つ以上の実施形態では、煤フィルタは、壁多孔性が約40%~約70%のウォールフローモノリスを含む。1つ以上の実施形態では、煤フィルタは、平均細孔直径が約5ミクロン~約30ミクロンのウォールフローモノリスを含む。
【0155】
1つ以上の実施形態では、触媒化煤フィルタは、煤フィルタの壁中又は壁上に少なくとも触媒組成物を含む。1つ以上の実施形態では、触媒組成物は、例えば、煤フィルタの壁中又は壁上に触媒ウォッシュコートとしてコーティングすることができる。
【0156】
1つ以上の実施形態では、煤フィルタは、ウォールフローモノリスの壁を透過する少なくとも触媒でコーティングされる。他の実施形態では、煤フィルタは、ウォールフローモノリスの壁上の少なくとも触媒でコーティングされる。さらに他の実施形態では、煤フィルタは、ウォールフローモノリスの壁上の及び壁を透過する両方の少なくとも触媒でコーティングされる。
【0157】
1つ以上の実施形態では、少なくとも触媒の少なくとも約50体積%が煤フィルタの壁内に位置し、好ましくは少なくとも触媒の少なくとも約70体積%が煤フィルタの壁内に位置し、より好ましくは少なくとも触媒の少なくとも約90体積%が煤フィルタの壁内に位置する。
【0158】
1つ以上の実施形態では、煤フィルタは、ウォールフローモノリスの入口通路からコーティングされる。他の実施形態では、煤フィルタは、ウォールフローモノリスの出口通路からコーティングされる。さらに他の実施形態では、煤フィルタは、ウォールフローモノリスの入口通路及び出口通路の両方から、少なくとも触媒組成物でコーティングされる。
【0159】
1つ以上の実施形態では、触媒化煤フィルタは、1つ以上の触媒材料を含む。触媒材料は、壁の入口側中のみ又は壁の入口側上のみに存在してもよく、出口側中のみ又は出口側上のみに存在してもよく、入口側と出口側の両方に存在してもよく、又は壁自体が触媒材料のすべて、又は一部を構成してもよい。
【0160】
1つ以上の実施形態では、触媒化煤フィルタは、入口の壁及び/又は出口の壁の中又は上で、触媒材料の1つ以上の層及び触媒材料の1つ以上の層の組み合わせを使用することを含む。
【0161】
1つ以上の実施形態では、触媒化煤フィルタは、微粒子状物質を二酸化窒素と一緒に燃焼させるのに効果的であり、NO対フィルタを出るNO2の比率を最適化するのに効果的である。
【0162】
1つ以上の実施形態では、CSF組成物は、少なくともPGM、例えば白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、及び/又は金(Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Ir、及び/又はAu)を含む。煤の燃焼を促進するのに効果的な他の触媒成分としては、バナジウム、タングステン、銀、レニウム、セリア、鉄、マンガン、ニッケル、銅(V、W、Ag、Re、Ce、Fe、Mn、Ni、Cu)及びこれらの組み合わせが含まれる。これらの触媒成分は、単独で、又は支持体材料上で使用することができる。特定の実施形態では、本明細書に開示するCSF組成物は、CSF触媒の体積に対するPGM元素の総質量として計算して、約0.5g/ft3~約250g/ft3の総PGM担持量を含み、又は本明細書に開示するCSF組成物は、乾燥CSF組成物の質量に基づいて、約0.01wt.%~約10wt.%の総PGM担持量を含む。
【0163】
具体的な実施形態では、本明細書に開示するCSF組成物は、パラジウム(Pd)を含まずに白金(Pt)成分を含む。他の特定の実施形態では、本明細書に開示するCSF組成物は、白金(Pt)を含まずにパラジウム(Pd)成分を含む。さらに他の具体的な実施形態では、本明細書に開示するCSF組成物は、白金成分及びパラジウム成分の両方を含む。
【0164】
1つ以上の実施形態では、CSF組成物は、例えば、乾燥CSF組成物の質量に基づいて、約0.002wt.%~約8wt.%の白金成分を含んでよい。CSF組成物は、例えば、CSF触媒の体積に基づいて、約0.1~約167g/ft3の白金成分を含んでよい。CSF組成物は、例えば、乾燥CSF組成物の質量に基づいて、約0.002wt.%~約8wt.%のパラジウム成分を含んでよい。CSF組成物は、例えば、CSF触媒の体積に基づいて、約0.1~約167g/ft3のパラジウム成分を含んでよい。
【0165】
1つ以上の実施形態では、Pt/Pd質量比は、約10:1~約1:10である。いくつかの実施形態では、Pt/Pd質量比は、約5:1~約2:1である。
【0166】
1つ以上の実施形態では、開示するCSF組成物の白金成分及びパラジウム成分の両方が、支持体材料に担持されている(ここで、白金成分及びパラジウム成分が支持されている支持体材料は、同じであっても異なっていてもよい)。
【0167】
1つ以上の具体的な実施形態では、本明細書に開示するCSF組成物において有用な金属酸化物支持体は、ドープされたアルミナ材料、例えばSiでドープされたアルミナ材料(1~10%のSiO2-Al2O3を含むが、これに限定されない)、ドープされたチタニア材料、例えばSiでドープされたチタニア材料(1~15%のSiO2-TiO2を含むが、これに限定されない)、又はドープされたジルコニア材料、例えばSiでドープされたZrO2(5~30%のSiO2-ZrO2を含むが、これに限定されない)、高表面積金属酸化物支持体、例えばアルミナ又はチタニア支持体材料であり、典型的には、約50m2/g~約400m2/g、好ましくは約60m2/g~約350m2/g、より好ましくは約90m2/g~約250m2/gの全表面積(BET)を示す。1つ以上の具体的な実施形態では、支持体材料は、約0.3~約1.5cm3/gの範囲の全細孔容積(BET)を有する。1つ以上の具体的な実施形態では、活性アルミナは、約2~約50nmの範囲の平均細孔直径(BET)を有する。
【0168】
1つ以上の実施形態では、CSF触媒組成物は、炭化水素貯蔵成分又は炭化水素吸着成分を含んでよい。例えば、CSF触媒の最下層又は最上層は、分子篩又はゼオライト、又はセリア含有分子篩、又はセリア含有金属酸化物から選択される炭化水素貯蔵又は炭化水素吸着成分をさらに含む。炭化水素貯蔵成分又は炭化水素吸着成分は、H+形として添加することができる。炭化水素貯蔵成分又は炭化水素吸着成分は、PGM(例えば白金、パラジウム、ロジウムなど)、銅、鉄、セリウム、ジルコニウム、バリウム、マンガン、マグネシウム、コバルト、ニッケル、希土類金属酸化物、卑金属酸化物などから選択される1種以上の触媒活性金属をさらに含んでよい。
【0169】
1つ以上の実施形態では、SCR反応を促進する触媒を含有する触媒化煤フィルタは、排気流の微粒子状成分の除去と、排気流のNOx成分のN2への転化という2つの機能において効果がある。具体的な実施形態では、NOx還元を達成することができる触媒化煤フィルタは、SCR触媒組成物を堆積させたものである。
【0170】
触媒化煤フィルタで考慮すべき追加の側面は、適切なSCR触媒組成物の選択である。まず、触媒組成物は、フィルタの再生に特徴的な高温に長時間さらされてもそのSCR触媒活性が維持されるように、熱的に耐久性がなければならない。第2に、SCR触媒組成物は、車両が運転される際の温度範囲の変化に対応できるように、十分に広い運転温度範囲を有することが好ましい。例えば、低負荷又は始動の状態条件では、通常では300℃未満の温度が必要となる。触媒化煤フィルタは、高い比活性と高い水熱安定性を併せ持つべきである。
【0171】
1つ以上の実施形態では、SCR反応を促進する触媒を含む触媒化煤フィルタは、排気流の微粒子状成分の除去と、排気流のNOx成分のN2への転化という2つの機能において効果がある。具体的な実施形態では、NOx還元を達成することができる触媒化煤フィルタは、SCR触媒組成物を堆積させたものである。
【0172】
1つ以上の実施形態では、CSFを通過するNOxの転化は、エンジンの運転条件下で、システムのNOx転化の約10%~約100%の範囲であり、好ましくは約30%~約95%の範囲であり、より好ましくは約50%~約90%の範囲である。
【0173】
1つ以上の実施形態では、CSFは、少なくともゼオライト成分と、銅及び鉄のうちの一方又は両方から選択される卑金属成分とを含む。
【0174】
いくつかの好ましい実施形態では、SCR触媒組成物は、Si、Al、O、及び場合によりHからなるゼオライト材料の骨格構造の95~100質量%、好ましくは98~100質量%、より好ましくは99~100質量%を含み、骨格構造において、モルSiO2:Al2O3として計算されるSi対Alのモル比が、好ましくは2:1~50:1の範囲、より好ましくは2:1~45:1の範囲、より好ましくは10:1~19:1の範囲、より好ましくは14:1~18:1の範囲である。
【0175】
具体的な実施形態では、CSFは、Cuと、CHA、AEI、BEA、MFI、FAU、MOR、AFX及びLTAから好ましくは選択されるがこれらに限定されない骨格型を有するゼオライトとを含む。1つの具体的な実施形態では、CSFは、CuとCHA構造を有するゼオライトとを含む。他の1つの具体的な実施形態では、CSFは、CuとAEI構造を有するゼオライトとを含む。
【0176】
他の特定の実施形態では、CSFは、Feと、CHA、AEI、BEA、MFI、FAU、MOR、AFX及びLTAから好ましくは選択されるがこれらに限定されない骨格型を有するゼオライトとを含む。具体的な1つの実施形態では、CSFは、FeとBEA構造を有するゼオライトとを含む。他の1つの具体的な実施形態では、CSFは、FeとCHA構造を有するゼオライトとを含む。
【0177】
CSFの1つ以上の具体的な実施形態によって使用してよいゼオライト組成物には、CHA又はAEI構造を有するゼオライトが含まれる。例示的なCHA又はAEIゼオライトは、約8を超えるアルミナに対するシリカのモル比(SAR)を有する。好ましい実施形態では、CHAのアルミナに対するシリカのモル比(SAR)は、約10~約35である。別の好ましい実施形態では、AEIのアルミナに対するシリカのモル比(SAR)は約14~19である。
【0178】
1つ以上の具体的な実施形態では、銅及び鉄から選択された卑金属成分は、金属の酸化物として計算して、そして酸化物とゼオライトベースの触媒組成物との総質量に基づいて、約0.2wt%を超える含有量を有する。好ましい具体的な実施形態では、卑金属成分は、約0.2wt%~約8wt%、好ましくは約2wt%~約6wt%の含有量を有する。
【0179】
CSFのための他の有用な組成物には、非ゼオライト分子篩が含まれる。例えば、SAPO-34、SAPO-44及びSAPO-18などのシリコアルミノホスフェートが、1つ以上の実施形態によって使用してよい。
【0180】
1つ以上の実施形態では、CSFは、酸化バナジウム及び酸化モリブデンから選択される少なくとも1つの無機金属酸化物材料を含む。他の実施形態では、CSFは、酸化バナジウム及び酸化チタンの混合酸化物を含む。或る特定の他の実施形態では、CSFは、酸化バナジウム、酸化ケイ素及び酸化チタンの混合酸化物を含む。或る特定の他の実施形態では、CSFは、酸化バナジウム、酸化タングステン及び酸化チタンの混合酸化物を含む。或る特定の他の実施形態では、CSFは、酸化バナジウム、酸化アンチモン、及び酸化チタンの混合酸化物を含む。
【0181】
1つ以上の実施形態では、CSF触媒組成物は、約1ミクロン~約10ミクロンの粒径分布D50を有する。1つ以上の実施形態では、CSF触媒組成物は、約2ミクロン~約30ミクロンの粒径分布D90を有する。
【0182】
1つ以上の実施形態では、CSF触媒組成物は、約50~約700m2/gの範囲の全表面積(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、CSF触媒組成物は、約0.3~約1.5cm3/gの範囲の全細孔容積(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、CSF触媒組成物は、約2~約50nmの範囲の平均細孔直径(BET)を有する。
【0183】
1つ以上の実施形態では、CSFは、平均細孔直径を有する多孔質フィルタ壁、及び平均粒径を有する触媒コーティングを含み、触媒平均粒径分布D50に対するフィルタ平均細孔直径の比は、0.5~50の範囲であり、及び/又は触媒平均粒径分布D90に対するフィルタ平均細孔直径の比は、0.25~30の範囲である。
【0184】
1つ以上の実施形態では、CSFは、約0.05~約3.0g/in3、好ましくは約0.1~約2.5g/in3のウォッシュコート担持量(乾燥ゲイン)の少なくとも触媒でコーティングされる。
【0185】
アンモニア酸化触媒(AMOX)組成物
アンモニアSCR触媒からのアンモニアスリップは多数の問題を起こす。NH3の臭気閾値は、空気中で20ppmである。目や喉への刺激は100ppmを超えると顕著になり、皮膚刺激は400ppm以上を超えると発生し、IDLHは空気中で500ppmである。NH3は、特にその水性形態において苛性を示す。排気触媒の下流にある排気ラインの低温領域でNH3と水が凝縮すると、腐食性の混合物が生じる。従って、アンモニアがテールパイプから抜け出る前にこれを除去することが望ましい。
【0186】
この目的において、過剰のアンモニアをN2に転化するために選択的アンモニア酸化触媒(AMOx)が採用される。自動車の走行サイクルでアンモニアスリップが発生する広い温度範囲でアンモニアを転化することができ、窒素酸化物の副生成物の生成を最小限に抑える選択的アンモニア酸化触媒を提供することが望まれる。AMOx触媒は、強力な温室効果ガスであるN2Oの生成も最小限に抑える必要がある。アンモニア酸化触媒又はAMOxとは、NH3の酸化を促進する触媒を指す。好ましくは、アンモニア酸化触媒(AMOx)は、アンモニアを主要生成物としてN2に転化し、窒素酸化物の副生成物の生成を最小限に抑えるために使用される。
【0187】
アンモニア酸化触媒及び第2の触媒組成物を含む1つ以上の実施形態は、「多成分」AMOx触媒と呼ぶことができる。
【0188】
1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、場合により、SCR、CO酸化、炭化水素貯蔵、炭化水素酸化、NOx貯蔵、NO酸化などの他の機能と、1つの触媒として、又は1つの「かたまり(ブリック(brick))」で統合することができる。
【0189】
1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、様々なレイアウト(区分け、層化、均質化など)を介して、1つの触媒として、又は1つの「ブリック」で、他の機能と場合により統合することができる。
【0190】
本明細書で使用する「ブリック」という用語は、フロースルーモノリスなどのモノリス、又はウォールフローフィルタなどのフィルタなど、単一の物品を指す。
【0191】
1つ以上の実施形態では、AMOx触媒は、場合により、区分けされたSCR組成物又は層化されたSCR組成物と一体化される。特定の実施形態では、AMOx触媒を含むアンダーコート層又はトップ層が、基材の下流区分けに存在してもよい。具体的な実施形態では、AMOx触媒からなるアンダーコート層又はトップ層は、触媒の基材長の約10%~約80%の範囲で、出口端から入口端に向かって延びてよい。
【0192】
1つ以上の実施形態では、AMOx層は、下流のAMOx触媒を提供するために、SCR触媒の下流の第2の基材上に存在してもよい。
【0193】
1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒(AMOx)は、排気ガス流からアンモニアを除去するのに効果的な、1つ以上の白金族金属(PGM)などの少なくとも担持された貴金属成分を含んでよい。具体的な実施形態では、貴金属は、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、銀又は金を含んでもよい。具体的な実施形態では、貴金属成分は、貴金属の物理的な混合物、又は化学的又は原子的にドープされた組み合わせを含む。
【0194】
具体的な実施形態では、本明細書に開示するAMOx組成物は、AMOx触媒の体積に対するPGM元素の総質量として計算して、約0.5g/ft3~約10g/ft3の総PGM担持量を含み、又は本明細書に開示するAMOx組成物は、乾燥AMOx組成物の質量に基づいて、約0.01wt.%~約2wt.%の総PGM担持量を含む。
【0195】
具体的な実施形態では、貴金属成分は、白金(Pt)を含む。アンモニア酸化触媒は、約0.5g/ft3~約10g/ft3の範囲の量の白金(Pt)成分を含み、又はアンモニア酸化触媒は、約0.01wt.%~約2wt.%の範囲の量の白金(Pt)成分を含む。
【0196】
具体的な実施形態では、貴金属成分は、パラジウム(Pd)を含む。アンモニア酸化触媒は、約0.5g/ft3~約10g/ft3の範囲の量のパラジウム(Pd)成分を含み、又はアンモニア酸化触媒は、約0.01wt.%~約2wt.%の範囲の量のパラジウム(Pd)成分を含む。
【0197】
具体的な実施形態では、貴金属成分は、ロジウム(Rh)を含む。アンモニア酸化触媒は、約0.5g/ft3~約10g/ft3の範囲の量のロジウム(Rh)成分を含み、又はアンモニア酸化触媒は、約0.01wt.%~約2wt.%の範囲の量のロジウム(Rh)成分を含む。
【0198】
貴金属成分は、通常は、高表面積の耐火性金属酸化物担体上に堆積される。好適な高表面積の耐火性金属酸化物の例としては、アルミナ、シリカ、チタニア、セリア、及びジルコニア、マグネシア、酸化バリウム、酸化マンガン、酸化タングステン、及び希土類金属酸化物、卑金属酸化物、及びこれらの物理的混合物、化学的組み合わせ及び/又は原子的にドープされた組み合わせが挙げられる。
【0199】
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示するAMOx組成物において有用な金属酸化物支持体は、アルミナ又はドープされたアルミナ材料、例えば、Siでドープされたアルミナ材料(1~10%のSiO2-Al2O3を含むが、これに限定されない)、チタニア又はドープされたチタニア材料、例えば、Siでドープされたチタニア材料(1~15%のSiO2-TiO2を含むが、これに限定されない)、又はジルコニア又はドープされたジルコニア材料、例えば、SiでドープされたZrO2(5~30%のSiO2-ZrO2を含むが、これに限定されない)、高表面積金属酸化物支持体材料、例えばアルミナ又はチタニア支持体材料であり、通常では約50m2/g~約400m2/g、好ましくは約60m2/g~約350m2/g、例えば約90m2/g~約250m2/gの全表面積(BET)を示す。支持体材料は、約0.3~約1.5cm3/gの範囲の全細孔容積(BET)を有する。活性アルミナは、約2~約50nmの範囲の平均細孔直径(BET)を有する。
【0200】
1つ以上の実施形態では、AMOx触媒は、少なくともゼオライト又は非ゼオライトの分子篩を含んでもよい。具体的な実施形態では、ゼオライト又は非ゼオライト分子篩は、CHA、AEI、BEA、MFI、FAU、MOR、AFX及びLTAから好ましくは選択されるが、これらに限定されない骨格型を有する。具体的な実施形態では、ゼオライト又は非ゼオライト分子篩は、少なくとも金属酸化物に支持されたPGM成分と物理的に混合してもよい。具体的な一実施形態では、PGMは、ゼオライト又は非ゼオライト分子篩の外面上又はチャネル、キャビティ、ケージ内に分布していてもよい。
【0201】
1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、少なくともゼオライト成分と、銅成分及び鉄成分のうちの一方又は両方から選択される卑金属成分とを含む。
【0202】
1つ以上の実施形態では、AMOx触媒は、高表面積金属酸化物に支持されたPtの最下層を有する触媒コーティングを含み、及び、Cu-CHA又はCu-AMEIの層を有する第2の触媒コーティングをさらに含む。
【0203】
1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、酸化バナジウム及び酸化モリブデンから選択される少なくとも1つの無機金属酸化物材料を含む。
【0204】
1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、約1ミクロン~約10ミクロンの粒径分布D50を有し、及び/又はアンモニア酸化触媒は、約2ミクロン~約30ミクロンの粒径分布D90を有する。
【0205】
1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、約50~約700m2/gの範囲の表面積(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、約0.3~約1.5cm3/gの範囲の平均細孔容積(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、約2~約50nmの範囲の平均細孔直径(BET)を有する。1つ以上の実施形態では、アンモニア酸化触媒は、約0.3~約3.0g/in3の乾燥ゲインを有する基材にコーティングされる。
【0206】
コーティング組成物
触媒物品を製造するために、本明細書に開示する基材を、触媒組成物でコーティングする。コーティングは、「触媒コーティング組成物」又は「触媒コーティング」である。
【0207】
用語「触媒組成物」及び「触媒コーティング組成物」は同義である。本明細書に記載の触媒及び/又は吸着剤組成物は、機能的活性種をさらに含む耐火性無機固体酸化物多孔質粉末などの1つ以上の支持体又は「担体」を含んでよい。
【0208】
触媒及び/又は吸着剤組成物は、バインダー、例えばジルコニルアセテートなどの好適な前駆体又はジルコニルニトラートなどの任意の他の好適なジルコニウム前駆体から誘導されるZrO2バインダーを使用して、調製してよい。ジルコニルアセテートバインダーは、熱老化後、例えば触媒が少なくとも約600℃、好ましくは約800℃以上の高温、及び約5%以上の水蒸気環境に曝された場合、均質で無傷のままのコーティングを提供する。他の潜在的に好適なバインダーには、アルミナ及びシリカが含まれるが、これらに限定されない。アルミナバインダーには、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及びアルミニウムオキシヒドロキシドが含まれる。アルミニウム塩、及びアルミナのコロイド状形態を、使用してもよい。シリカバインダーには、シリケート及びコロイド状シリカを含む様々な形態のSiO2が含まれる。バインダー組成物は、ジルコニア、アルミナ、及びシリカの任意の組合せを含んでよい。他の例示的なバインダーには、ベーマイト又はガンマ-アルミナが含まれる。具体的な実施形態では、バインダーは通常では、ウォッシュコートの全担持量の約1~10wt.%の量で使用される。
【0209】
1つ以上の実施形態では、バインダーは、ジルコニアベース又はシリカベース、例えば、ジルコニウムアセテート、ジルコニアゾル又はシリカゾルとすることができる。具体的な実施形態では、アルミナバインダーは通常では、約0.05g/in3~約0.5g/in3の量で使用される。
【0210】
基材
1つ以上の実施形態では、本発明の触媒組成物は、基材上に配置されて触媒物品を形成する。基材を含む触媒物品は、排気ガス処理システムの一部である(例えば、本明細書に開示するAEI SCR組成物を含む物品を含むが、これに限定されない触媒物品)。有用な基材は3次元であり、円筒に類似して、長さと直径と体積とを有する。形状は、必ずしも円筒と適合している必要はない。長さは、入口端と出口端によって画定される軸方向の長さである。
【0211】
1つ以上の実施形態によると、開示する組成物(単数又は複数)のための基材は、自動車用触媒の調製に通常使用される任意の材料で構成されてよく、通常では、金属又はセラミックのハニカム構造を含む。基材は、通常では、ウォッシュコート組成物が適用されて付着される複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物の基材として機能する。
【0212】
フロースルー基材
本明細書に開示する触媒物品のための任意の好適な基材を採用してよく、例えば、基材の入口又は出口面から基材を貫通して延びる微細で平行なガス流通路を有し、通路がその中を流れる流体に開放されているタイプのモノリシック基材(「フロースルー基材」)が挙げられる。
【0213】
1つ以上の実施形態では、基材は、フロースルー基材(例えば、フロースルーハニカムモノリシック基材を含むモノリシック基材)である。フロースルー基材は、基材の入口端から出口端まで延びる微細で平行なガス流通路を有し、通路は流れる流体に対して開放されている。通路は、その流体入口からその流体出口まで基本的に直線路であり、通路を流れるガスが触媒材料に接触するように触媒コーティングが配置された壁によって画定されている。フロースルー基材の流路は薄壁のチャンネルであり、これは、台形、長方形、正方形、正弦形、六角形、楕円形、円形など、任意の好適な断面形状及びサイズである。フロースルー基材は、後述するように、セラミックまたは金属である。
【0214】
フロースルー基材は、例えば、体積が約50in3~約1200in3、セル密度(入口開口部)が約60セル/平方インチ(cpsi)~約1200cpsi、又は約200~約900cpsi、又は例えば約300~約600cpsi、及び壁厚が約50~約400ミクロン、又は約100~約200ミクロンである。
【0215】
セラミック基材は、任意の好適な耐火材料、例えばコージエライト、コージエライト-α-アルミナ、アルミニウムチタネート、シリコンチタネート、シリコンカーバイド、シリコンニトリド、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナ-シリカ-マグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、α-アルミナ、アルミノシリケートなどで作製されてよい。
【0216】
基材は、1つ以上の金属又は金属合金を含む、金属性であってもよい。金属性基材には、任意の金属性基材、例えば開口部又は「型抜き部分」をチャネル壁に有するものなどを含んでよい。金属性基材は、ペレット、波形板、又はモノリシック発泡体などの様々な形状で用いてよい。金属性基材の具体的な例には、耐熱性の卑金属合金、特に鉄が実質的な又は主要な成分であるものが含まれる。そのような合金は、ニッケル、クロム、及びアルミニウムのうちの1つ以上を含有していてよく、これらの金属の合計は、各場合とも基材の質量に基づいて、有利には少なくとも約15wt.%(質量パーセント)の合金、例えば約10~約25wt.%のクロム、約1~約8wt.%のアルミニウム、及び0~約20wt.%のニッケルを含んでよい。金属性基材の例には、直線的なチャネルを有するもの、突出したブレードを軸方向のチャネルに沿って有し、ガス流を妨害してチャネル間のガス流の連通を開始させるもの、及びブレード及び孔を有し、チャネル間のガス輸送を増進してモノリス全体で放射状のガス輸送を可能にするものなどが含まれる。
【0217】
ウォールフロー基材
別の好適な基材は、通常では、各通路が基材本体の一端で遮断され、交互の通路が反対側の端面で遮断されている、基材の長手方向の軸に沿って延びる複数の微細な実質的に平行なガス流通路を有するタイプのものである(「ウォールフローフィルタ」)。フロースルー基材及びウォールフロー基材は、例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる国際出願公開第WO2016/070090号にも教示されている。
【0218】
1つ以上の実施形態では、触媒基材は、ウォールフローフィルタ又はフロースルー基材の形態のハニカム基材を含む。好ましい具体的な実施形態では、基材はウォールフローフィルタである。
【0219】
1つ以上の実施形態では、触媒物品は、触媒コーティング(例えば、本明細書に開示のもの)をウォッシュコートとして基材に適用することによって提供することができる。
【0220】
コーティング
1つ以上の実施形態では、基材を触媒組成物でコーティングして、触媒物品を形成する。触媒コーティングは、基材の少なくとも一部分に配置され且つ付着している1つ以上の薄い付着性コーティング層を含んでよい。
【0221】
1つ以上の実施形態では、本触媒物品は、1つ以上の触媒層及び1つ以上の触媒層の組み合わせの使用を含んでよい。触媒コーティングは、基材壁表面上及び/又は基材壁の細孔内にあってよく、つまり基材壁の「中に」及び/又は「上に」あってよい。よって、「基材上に配置された触媒コーティング」という表現は、任意の表面上、例えば壁表面上及び/又は細孔表面上を意味する。具体的な実施形態では、触媒コーティング層(単数又は複数)は、個々の機能成分、すなわち、本明細書に記載のAEI SCR触媒組成物を含んでよい。
【0222】
1つ以上の実施形態では、触媒組成物は、通常では、その上に触媒活性種を有する支持体材料を含有するウォッシュコートの形態で適用してよい。他の具体的な実施形態では、触媒組成物は、通常では、触媒活性種を含有するウォッシュコートの形態で適用してよい。
【0223】
1つ以上の実施形態では、ウォッシュコートは、液体溶媒中に担体の所定の固形分(例えば、約10~約60質量%)を含有するスラリーを調製することによって形成され、これを基材に適用し、乾燥及びか焼してコーティング層を提供する。複数のコーティング層が適用される場合は、各層が適用された後、及び/又は所望の数の複数の層が適用された後に、基材を乾燥及びか焼する。1つ以上の具体的な実施形態では、触媒材料(単数又は複数)をウォッシュコートとして基材に適用する。また、上述のようにバインダーを採用してもよい。
【0224】
1つ以上の実施形態では、上記の触媒組成物(単数又は複数)は、一般的に、独立して水と混合し、ハニカム型基材などの触媒基材をコーティングする目的でスラリーを形成する。触媒粒子に加えて、スラリーは、場合により、バインダー(例えば、アルミナ、シリカ)、水溶性又は水分散性の安定剤、促進剤、会合性増粘剤、及び/又は界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性の界面活性剤を含む)を含有してよい。
【0225】
1つ以上の実施形態では、スラリーの典型的なpH範囲は、5又は約3~約6である。スラリーへの酸性種又は塩基性種の添加は、pHを適宜調整するために実施することができる。好ましい具体的な実施形態では、スラリーのpHは、酢酸の添加によって調整する。
【0226】
1つ以上の実施形態では、スラリーを粉砕して、粒子の混合及び均質な材料の形成を増進させることができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、又は他の類似の装置で行うことができ、スラリーの固形分は、例えば、約10~60wt.%、より詳細には約20~50wt.%でよい。好ましい具体的な実施形態では、粉砕後のスラリーは、約5~約50ミクロン、好ましくは約2~約30ミクロン、より好ましくは約2~約20ミクロンのD90粒径で特徴付けられる。
【0227】
1つ以上の実施形態では、次に、当技術分野で知られている任意のウォッシュコート技術を使用してスラリーを触媒基材上にコーティングする。好ましい具体的な実施形態では、触媒基材をスラリーに1回以上浸漬するか、そうでなければスラリーでコーティングする。その後、コーティングされた基材を、高温(例えば、100~150℃)で一定時間(例えば、10秒~約3時間)乾燥し、次いで例えば、400~600℃で、典型的には約5分~約3時間加熱することによりか焼する。乾燥及びか焼後に、最終ウォッシュコートコーティング層は本質的に溶媒を含まないとみなすことができる。
【0228】
1つ以上の実施形態では、か焼後、上記のウォッシュコート技術によって得られた触媒担持量は、基材のコーティングされた質量とコーティングされていない質量の差を計算することによって決定することができる。当業者には明らかであるように、触媒担持量はスラリーレオロジーを変えることによって改変することができる。加えて、ウォッシュコートを生成するコーティング/乾燥/か焼プロセスは、所望の担持レベル又は厚さにコーティングを構築するために必要に応じて繰り返すことができ、このことは、複数のウォッシュコートが適用可能であることを意味する。
【0229】
1つ以上の実施形態では、ウォッシュコート(単数又は複数)は、様々なコーティング層が基材と直接接触するように適用することができる。あるいは、触媒層又はコーティング層の少なくとも一部分が基材と直接接触しない(むしろ、アンダーコートと接触している)ように、1つ以上の「アンダーコート」が予め存在してもよい。1つ以上の「オーバーコート」が存在して、コーティング層の少なくとも一部分がガス状流又は雰囲気に直接曝されない(むしろ、オーバーコートと接触している)ようにしてもよい。様々なコーティング層は、「中間」の重なり合う区分けなしで、互いに直接接触していてもよい。あるいは、様々なコーティング層は、2つの区分け間に「ギャップ」を伴って、直接接触していなくてもよい。「アンダーコート」又は「オーバーコート」の場合、様々な層の間のギャップは「層間層」と定義される。アンダーコートはコーティング層の「下(under)」にある層であり、オーバーコートはコーティング層の「上にある(over)」層であり、層間層は2つのコーティング層の「間にある」層である。層間層(単数又は複数)、アンダーコート(単数又は複数)及びオーバーコート(単数又は複数)は、1つ以上の機能性組成物を含有してもよいし、機能性組成物を含有しなくてもよい。
【0230】
1つ以上の実施形態では、触媒コーティングは、複数の薄い付着層、互いに付着している層、及び基材に付着しているコーティングを含んでよい。コーティング全体は、個々の「コーティング層」を含む。触媒コーティングは、有利には「区分けされ」、区分けされた触媒層を含んでよい。これは、「横方向に区分けされた」とも記述されることがある。例えば、層は、入口端から出口端に向かって、基材長の約10%~約100%、例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%又は約100%にわたり延びてよい。別の層は、出口端から入口端に向かって、基材長の約10%~約100%、例えば約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、又は約90%、又は約100%にわたり延びてよい。
【0231】
具体的な実施形態では、様々なコーティング層が互いに隣接していて、互いに重なっていなくてよい。
【0232】
他の具体的な実施形態では、様々な層が互いの一部を重ねて、第3の「中間」区分けを提供してもよい。中間区分けは、基材長の約10%~約100%、例えば基材長の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、又は約70%、又は80%、又は90%まで延びてよい。
【0233】
なお別の具体的な実施形態では、様々な層はそれぞれ、基材の全長にわたり延びてよく、又はそれぞれ基材長の一部分にわたり延びてもよく、互いの上に又は下に、部分的に又は全体的に重なってもよい。様々な層のそれぞれは、入口端又は出口端のいずれかから延びてよい。様々な触媒組成物は、個別のコーティング層のそれぞれに在ってもよい。
【0234】
本開示の区分けは、コーティング層の関係によって規定される。様々なコーティング層に関して、区分け化構成のいくつかの可能性がある。例えば、上流区分け及び下流区分けがあってよく、上流区分け、中間区分け、及び下流区分けがあってよく、4つの異なる区分けがあるなどしてよい。2層が隣接し且つ重なり合っていない場合、上流及び下流区分けがある。2層がある程度まで重なり合う場合、上流、下流、及び中間区分けがある。例えばコーティング層が基材の全長を延び、且つ様々なコーティング層が出口端からある長さを延び且つ第1のコーティング層の一部分に重なる場合、上流及び下流区分けがある。本発明の触媒コーティングは、1つを超える同一の層を含んでよい。
【0235】
排気ガス処理システム
本開示はさらに、内燃機関からの排気ガス流中のNOxレベルを低減するための排気ガス処理システムを提供し、この排気ガス処理システムは、本明細書に開示する触媒物品を含む。
【0236】
本発明の別の側面では、内燃機関からの排気ガス流中のNOxレベルを低減するための方法が提供され、この方法は、排気ガス流を本明細書に開示する触媒物品、又は本明細書に開示する排出物処理システムと接触させることを含む。従って本発明は、本明細書に記載の触媒物品を組み込んだ排気ガス処理システム、例えば、排気ガス流を生成するエンジンと、排気ガス流と流体連通するようにエンジンの下流に配置された1つ以上の触媒物品とを一般的に含む排気ガス処理システムを提供する。
【0237】
1つ以上の実施形態では、エンジンは、例えば、化学量論的燃焼に必要な量を超える空気を用いた燃焼状態、すなわち希薄状態で運転されるディーゼルエンジンであってよい。他の実施形態では、エンジンは、定置型供給源(例えば、発電機又はポンプステーション)に関連するエンジンであってよい。
【0238】
1つ以上の実施形態では、排気ガス処理システムは、1つ以上の追加の触媒成分をさらに含む。排出物処理システム内に存在する種々の触媒成分の相対的な配置は、様々であることが可能である。
【0239】
本発明の排気ガス処理システム及び方法では、排気ガス流が、上流端に進入して下流端から出て行くことによって、物品(単数又は複数)又は処理システムに受け入れられる。基材又は物品の入口端は、「上流」端又は「前」端と同義である。出口端は、「下流」端又は「後」端と同義である。処理システムは、一般に、内燃機関の下流にあり、内燃機関と流体連通している。
【0240】
1つ以上の実施形態では、本明細書に開示する排気ガス処理システムは、本明細書に開示するように、フロースルー又はウォールフローフィルタ基材を含むことができる、AEI SCR触媒物品を含む。特に、システムは、より低い温度での還元剤、例えばアンモニアの存在下でNOxを転化するのに好適なAEI SCR触媒物品を含む。本発明の触媒組成物のNOx転化成分は、様々なエンジンの運転条件下で、特に低温のエンジン排気運転において望ましいNOx転化特性を提供する。
【0241】
1つ以上の実施形態では、本開示の排気ガス処理システムは、AEI SCR触媒物品に加えて、例えば、DOC、還元剤インジェクタ、第2のSCR触媒成分、煤フィルタ(これは、触媒化されていても、触媒化されていなくてもよい)、及び/又はアンモニア酸化触媒(AMOx)を含有することができる。排出物処理システムで使用するのに好適なDOCは、CO及びHCの二酸化炭素(CO2)への酸化を効果的に触媒することができる。好ましくは、DOCは、排気ガス中に存在するCO又はHC成分の少なくとも50%~約99%を転化することができる。DOCは、例えば、AEI SCR触媒物品の上流に位置していてもよい。いくつかの実施形態では、DOCは、AEI SCR触媒物品の成分及び/又は煤フィルタの上流に位置する。他の実施形態では、AEI SCR触媒成分は、DOC及び/又は煤フィルタの上流に位置していてもよい。このように、AEI SCR触媒物品は、排気処理システムがNH3種をテールパイプに放出しないことを重要視して、アンモニア酸化触媒の上流に位置する。
【0242】
1つ以上の実施形態では、本開示の排気ガス処理システムは、AEI SCR触媒物品の下流に配置された第2のSCR触媒成分をさらに含んでもよい。AEI SCR触媒物品の下流の排出物処理システムで使用するのに好適なSCR触媒成分は、650℃もの高温でNOx排気成分の還元を効果的に触媒することができる。好ましくは、第2のSCR触媒成分は、システムに添加される還元剤の量に応じて、250℃を超える温度で、NOx(例えば、NO)成分の少なくとも50%~約99%をN2に転化することができる。還元剤は、第2のSCR成分の上流に配置された第2の還元剤インジェクタによって添加することができる。排出物処理システムに使用される有用なSCR触媒成分は、650℃を超える温度に対する耐熱性も有するべきである。このような高温は、触媒化煤フィルタの再生時に起こることがある。
【0243】
例示する排気ガス処理システムは、
図1及び
図2を参照することで、より容易に理解することができる。
図1及び
図2は、本発明の実施形態による排気ガス処理システムの概略図である。
【0244】
図1を参照すると、排気ガス処理システムが提供され、1つ以上の実施形態では、ガス状汚染物質(例えば、未燃焼の炭化水素、一酸化炭素及び微粒子状物質)及びNOを含有する排気ガス流が、エンジン321からDOC322に搬送される。DOC322では、未燃焼のガス状且つ不揮発性の炭化水素と一酸化炭素が大部分燃焼して、二酸化炭素と水を形成する。NOは部分的に酸化されてNO
2となる。排気流は次にCSF327に搬送され、このCSF327は排気ガス流中に存在する微粒子状物質を捕捉する。CSF327を介して微粒子状物質を除去した後、排気ガス流は、NOxの処理及び/又は転化を行うAEI SCR触媒成分329に搬送される。還元剤(尿素又はアンモニア)は、還元剤インジェクタ330によって、AEI SCR触媒成分329の入口に供給される。排気ガスは、排気ガス中の所定の温度において、触媒組成物が排気ガス中のNOxのレベルを(還元剤との組み合わせで)低減するのに十分な時間を可能にする流量で、AEI SCR触媒成分329を通過する。AEI SCR成分329の後には、選択的アンモニア酸化触媒成分333(AMOx)が続き、AEI SCR触媒成分329から放出された過剰のNH
3を除去し、これをN
2に選択的に酸化する。
【0245】
代替の実施形態では、CSF327は、AEI SCR触媒成分329と選択的アンモニア酸化触媒成分333(AMOx)との間の場所に移動することができる。
【0246】
代替の実施形態では、第2の下流のSCR触媒334を、AEI SCR329とAMOx触媒333との間に配置することができ、任意の還元剤が、第2の還元剤インジェクタ335によって第2の下流のSCR334の入口に供給される。
【0247】
代替の実施形態では、第2の上流のSCR触媒334は、DOC322とAEI SCR329との間に配置することができ、第2の上流のSCR触媒334は、CSF327の上流又は下流に配置することができ、任意の還元剤が第2の還元剤インジェクタ335によって第2の上流のSCR334の入口に供給される。
【0248】
図2を参照すると、別の排気ガス処理システムが提供され、1つ以上の実施形態では、ガス状汚染物質(例えば、未燃焼の炭化水素、一酸化炭素、微粒子状物質)及びNOを含有する排気ガス流が、エンジン411から近接して連結する位置にあるAEI SCR触媒成分415に搬送され、これにより、NOの処理及び/又は転化が行われる。還元剤(尿素又はアンモニア)は、還元剤インジェクタ414によって、AEI SCR触媒成分415の入口に供給される。排気ガスは、排気ガス中の所定の温度において、触媒組成物が排気ガス中のNOxのレベルを(還元剤との組み合わせで)低減するのに十分な時間を可能にする流量で、SCR触媒成分415を通過する。AEI SCR触媒成分415の後には、選択的アンモニア酸化触媒成分416(AMOx)が続き、AEI SCR触媒成分415から放出された過剰なNH
3を除去し、これをN
2に選択的に酸化する。
【0249】
その後、排気はDOC422に移される。DOC422では、未燃焼のガス状且つ不揮発性の炭化水素と一酸化炭素が大部分燃焼して、二酸化炭素と水を形成する。次に、排気流は次にCSF427に搬送され、CSF427は排気ガス流中に存在する微粒子状物質を捕捉する。CSF427を介して微粒子状物質を除去した後、排気ガス流は、床下に位置する第2のSCR触媒成分429に搬送され、これにより、NOの処理及び/又は転化が行われる。還元剤(尿素又はアンモニア)は、第2の還元剤インジェクタ430によって、SCR触媒成分429の入口に供給される。排気ガスは、排気ガス中の所定の温度において、触媒組成物が排気ガス中のNOxのレベルを(還元剤との組み合わせで)低減するのに十分な時間を可能にする流量で、SCR触媒成分429を通過する。下流のSCR触媒成分429の後には、選択的アンモニア酸化触媒成分433(AMOx)が続き、SCR触媒成分429から放出された過剰なNH3を除去し、これをN2に選択的に酸化する。
【0250】
代替の実施形態では、CSF427は、SCR触媒成分429と選択的アンモニア酸化触媒成分433(AMOx)との間の場所に移動することができる。
【0251】
代替の実施形態では、選択的アンモニア酸化触媒成分416(AMOx)を取り除くことができる。このシナリオでは、還元剤(尿素又はアンモニア)が、還元剤インジェクタ414によって十分に制御された量で供給され、AEI SCR触媒成分415からのアンモニア(NH3)スリップを最小限に抑え、DOC422が、AEI SCR触媒成分415から放出されたNH3を酸化する。
【0252】
代替の実施形態では、DOC422は、AEI SCR触媒成分415の上流の場所に移動することができる。
【0253】
1つ以上の実施形態では、
図1及び
図2に例示する成分は、様々なレイアウト(区分け化、層化、均質化など)を介して、1つの触媒として、又は1つの「ブリック」で、統合することができる。
【0254】
図1におけるいくつかの実施形態では、DOC322及びCSF327は、例えば、2層又は多層ウォッシュコート設計、フロント区分け+リア区分けウォッシュコート設計、均質ウォッシュコート設計、又はそれらの組み合わせを介して、1つの触媒として統合することができる。
図2におけるいくつかの実施形態では、DOC422及びCSF427は、同様のアプローチで統合することができる。
【0255】
図1におけるいくつかの実施形態では、CSF327及びAEI SCR329は、例えば、2層又は多層ウォッシュコート設計、フロント区分け+リア区分けのウォッシュコート設計、均質ウォッシュコート設計、又はそれらの組み合わせを介して、1つの触媒として統合することができる。
図2のいくつかの実施形態では、CSF427及びSCR429は、同様のアプローチで統合することができる。
【0256】
図1におけるいくつかの実施形態では、AEI SCR329及びAMOx333は、例えば2層又は多層ウォッシュコート設計、フロント区分け+リア区分けのウォッシュコート設計、均質ウォッシュコート設計、又はそれらの組み合わせを介して、1つの触媒として統合することができる。
図2におけるいくつかの実施形態では、AEI SCR415及びAMOx416は、同様のアプローチで統合することができる。
図2におけるいくつかの実施形態では、SCR429及びAMOx433を同様のアプローチで統合することができる。
【0257】
本発明の物品、システム及び方法は、トラック及び自動車などの移動式排出源からの排気ガス流の処理に適している。本発明の物品、システム及び方法は、発電所などの定置型排出源からの排気流の処理にも適している。
【0258】
本明細書に記載の組成物、方法、及び適用に対する適切な修正及び適用は、任意の実施形態又はその態様の範囲から逸脱することなく行うことが可能であることが、関連分野の当業者には容易に明らかであろう。提供される組成物及び方法は、例示的なものであり、特許請求の範囲内の実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書に開示する種々の実施形態、態様、及び選択肢の全ては、あらゆる変形例で組み合わせることができる。本明細書に記載の組成物、配合物、方法、及びプロセスの範囲は、本明細書の実施形態、態様、選択肢、実施例、及び選択物の全ての実際の又は潜在的な組合せを含む。本明細書に引用するあらゆる特許及び刊行物は、組込みに関するその他具体的な主張が特に提供されない限り、記述されるようなそれらの具体的な教示について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0259】
本開示全体を通して、「1つの実施形態」、「いくつかの実施形態」、「或る特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、「代替の実施形態」又は「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、材料、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、本開示全体の様々な場所で現れる語句、「1つの実施形態」、「いくつかの実施形態」、「或る特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」、「代替の実施形態」又は「実施形態」は、必ずしも本発明の同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、又は特性は、1つ以上の実施形態では、任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【実施例】
【0260】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を説明するために示すものであり、本発明を限定するものと解釈されるべきではない。特に断りのない限り、すべての部及びパーセンテージは質量によるものであり、すべての質量パーセンテージは、特に明記しない限り、含水量を除くことを意味する乾燥ベースで表す。
【0261】
触媒物品の調製
実施例1
23.0gのスクロースと23.5g(97.66wt%)のCuOを混合し、494.8gの水に攪拌しながら分散させてスラリーを調製した。30分撹拌した後、82.70gの水性Zr~OAc(30wt%)を加え、さらに10分撹拌した。次に、SAR16(Clean A-01)を有する479.2gのH-型AEIゼオライト(固形分94.37wt%)を、スラリーの温度を30℃未満に保ちながらゆっくりと供給した。スラリーのレオロジー特性に応じて、脱泡剤、粘度調整剤及び/又は増粘剤(単数又は複数)をそれぞれ加えることができる。30分撹拌した後、スラリーを粉砕プロセスに供し、5.6ミクロンのD90を達成した。スラリーを一晩静置した後、コージエライト基材(1”×4”、NGK400/4)をスラリーに浸してコーティングした。このようにして得られた触媒を150℃で急速乾燥した後、550℃で1時間か焼した。最終的なウォッシュコートの組成は、4.59wt%のCuO、4.96wt%のZrO2、90.45wt%のAEIであり、ウォッシュコートの全担持量は2.1g/in3であった。
【0262】
SAR16を有するAEIゼオライトの水取り込み量を、
図3に示す。
【0263】
比較例2
23gのスクロースと23.5g(97.66wt%)のCuOを混合し、512.7gの水に攪拌しながら分散させてスラリーを調製した。30分撹拌した後、82.70gの水性Zr~OAc(30wt%)を加え、さらに10分撹拌した。次に、SAR21(Clean A-01)を有する461.3gのH-型AEIゼオライト(固形分98.03wt%)を、スラリーの温度を30℃未満に保ちながらゆっくりと供給した。スラリーのレオロジー特性に応じて、脱泡剤、粘度調整剤及び/又は増粘剤(単数又は複数)をそれぞれ加えることができる。30分撹拌した後、スラリーを粉砕プロセスに供し、10.7ミクロンのD90を達成した。スラリーを一晩静置した後、コージエライト基材(1”×4”、NGK400/4)をスラリーに浸してコーティングした。このようにして得られた触媒を150℃で急速乾燥した後、550℃で1時間か焼した。最終的なウォッシュコートの組成は、4.59wt%のCuO、4.96wt%のZrO2、90.45wt%のAEIであり、ウォッシュコートの全担持量は2.1g/in3であった。
【0264】
比較例3
17.3gのスクロースと17.8g(97.66wt%)のCuOを混合し、513.5gの水に攪拌しながら分散させてスラリーを調製した。30分撹拌した後、82.70gの水性Zr~OAc(30wt%)を加え、さらに10分撹拌した。次に、SAR21(Clean A-01)を有する471.8gのH-型AEIゼオライト(固形分97.04wt%)を、スラリーの温度を30℃未満に保ちながらゆっくりと供給した。スラリーのレオロジー特性に応じて、脱泡剤、粘度調整剤及び/又は増粘剤(単数又は複数)をそれぞれ加えることができる。30分撹拌した後、スラリーを粉砕プロセスに供し、9.7ミクロンのD90を達成した。スラリーを一晩静置した後、コージエライト基材(1”×4”、NGK400/4)をスラリーに浸してコーティングした。このようにして得られた触媒を150℃で急速乾燥した後、550℃で1時間か焼した。最終的なウォッシュコートの組成は、3.47wt%のCuO、4.96wt%のZrO2、91.57wt%のAEIであり、ウォッシュコートの全担持量は2.1g/in3であった。
【0265】
実施例1~3で使用したAEIゼオライトの特性を、表1に列挙する。
【0266】
【0267】
実施例1~3で使用したAEIゼオライトのSEM画像を、
図4及び5に示す。ゼオライト粉末の一次結晶のSEM画像は、粉末試料に金を噴霧して前処理した後、日立SU-1510電子顕微鏡で収集した。
【0268】
触媒システムの評価
実施例4
実施例1、2及び3のモノリシック型触媒物品を、4つの異なる触媒が連続している実験室用反応器(DOC+CSF+SCR+AMOx)で試験し、
図1の排気構成を模擬実験した。模擬排気を321に、DOCを322の位置に、CSFを327の位置に、アンモニアインジェクタを330の位置に、実施例1のAEI SCR触媒物品又は比較例2のAEI SCR触媒物品又は比較例3のAEI SCR触媒物品を329の位置に、そしてAMOxを333の位置に配置した。排気組成は、位置322のDOCの前と、位置333のAMOxの後で監視した。アンモニアの噴射は、位置330のアンモニアインジェクタの後と、位置329の実施例1のAEI SCR触媒物品又は比較例2のAEI SCR触媒物品又は比較例3のAEI SCR触媒物品の前で、別々に監視した。
【0269】
より具体的には、40g/ft3(Pt:Pd=1:1)及び1”×2”の寸法を有する市販のDOCから掘削したコアを、第1の位置322に配置した。位置322のDOCの後に、3g/ft3(Pt:Pd=10:1)及び1”×4”の寸法を有する市販のCSFから掘削されたコアを位置327に配置した。位置327のCSFの後の位置329に、寸法が1”×4”の実施例1~3のAEI SCR触媒物品を配置した。アンモニアは、位置327のCSFと位置329のSCR触媒との間の位置330で噴射した。3g/ft3(Ptのみ)の市販のAMOxと寸法1”×1”のCu-CHAから掘削したコアを、位置329の実施例のSCR触媒の後の位置333に配置した。
【0270】
前述の設定に従って、3つの異なる構成:(A)実験1のDOC+CSF+AEI SCR物品+AMOx、(B)比較例2のDOC+CSF+AEI SCR物品+AMOx、及び(C)比較例3のDOC+CSF+AEI SCR物品+AMOxを、排気系試験で評価した。DOC、CSF、SCR及びAMOxの位置は、上の段落で記載したものと同じである。DOCは位置322に配置し、CSFは位置327に配置し、SCRは位置329に配置し、AMOxは位置333に配置した。
【0271】
実施例1の本発明のシステム(A)のAEI SCR触媒物品は、比較例2のAEI SCR触媒物品を用いた第2の排気システム(B)と同じ最終ウォッシュコート組成である4.59wt.%のCuOを有していた。実施例1の本発明のシステム(A)のAEI SCR触媒物品は、比較例3からのAEI SCR触媒物品を用いた第3の排気システム(C)と同じ銅対アルミナのモル比である0.33を有していた。比較例3からのAEI SCR触媒物品は、最終ウォッシュコート組成が3.47wt.%のCuOであった。比較例2のAEI SCR触媒物品は、銅対アルミナのモル比が0.44であった。すべてのSCR触媒物品のウォッシュコートの全担持量は、2.1g/in3であった。
【0272】
ディーゼルエンジンの運転温度範囲は広い。うまく設計された尿素SCRシステムでは、ディーゼルエンジンの冷間始動又は熱間始動時、或いは低速又は低負荷などの走行条件時に、約180℃~約200℃という低い温度でも尿素の噴射が可能である。そのため、SCRの性能評価では180℃が低温点として選択される。
【0273】
能動的再生プロセスは普通、エンジン制御を変更してフィルタ前の温度を約550℃~約650℃まで上昇させることで開始される。高い発熱により煤を燃焼し尽くして、フィルタを再生する。このような理由から、SCRの性能評価では580℃までが高温点として選択される。
【0274】
180℃(177~181℃)の低温SCR性能は、流入ガス条件:500ppmのNO、500ppmのNH
3、5%のH
2O、10%のO
2、残部N
2、SCRの空間速度80000h
-1(すなわち68L分
-1)で測定した。NO、NO
2、N
2O、NH
3の濃度は、FTIR分析器を用いて定量的に測定した。NOx転化とN
2O生成の比較結果を
図6に示す。
図6に示すように、実施例1のAEI SCR触媒物品を用いた本発明のシステム(A)は、他の両システム、同じCuO担持量の比較例2のAEI SCR触媒物品を用いたシステム(B)、及び同じ銅対アルミナのモル比の比較例3のAEI SCR触媒物品を用いたシステム(C)、と比較して、最も高いNOx転化率を示した。特に、比較例3のAEI SCR触媒物品を用いた排気システム(C)は、低温でのNOx転化が非常に悪く、従って、高温での試験には考慮しなかった。比較例2の排気システム(B)は、低温でのNOx性能がわずかに劣るだけであったが、不要なN
2Oの発生量が非常に多かった。
【0275】
DOC+CSF+SCR+AMOxシステムの高温NOx転化率は、SCRの入口温度584℃±1℃で、500ppmのNO、500ppmのNH
3、5%のH
2O、10%のO
2、残部N
2、SCRの空間速度80000h-1、68L分-1の流入ガス条件で測定した。NO、NO
2、N
2O及びNH
3の濃度は、FTIR分析器を用いて定量的に測定した。NOx転化とN
2O生成の比較結果を
図7に示す。
【0276】
図7に示すように、実施例1のAEI SCR触媒物品を用いた本発明のシステム(A)は、同じCuO担持量の比較例2のAEI SCR触媒物品を用いた排気システム(B)と比較して、はるかに高いNOx変換率を示した。
【0277】
結論として、実施例1のAEI SCR触媒物品と異なるSARを有するが、同じ絶対Cu担持量のシステム(B)のAEI SCR触媒物品、及び同じ銅対アルミナのモル比のシステム(C)からのAEI SCR触媒物品の、3つのAEIベースの排気システムすべてを比較すると、実施例1のAEI SCR触媒物品を用いた本発明の排気システム(A)は、低温及び高温の両方で望ましい優れたNOx性能を示すと同時に、低温で好ましいN2O生成を示した。