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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】免振支承
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20240408BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240408BHJP
   E01D 19/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
F16F15/02 L
E04H9/02 331E
E01D19/04 101
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021529515
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2019070064
(87)【国際公開番号】W WO2020025447
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】18306068.0
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509167338
【氏名又は名称】ソレタンシュ フレシネ
【氏名又は名称原語表記】SOLETANCHE FREYSSINET
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンサン・マイエ
(72)【発明者】
【氏名】マウロ・サルトーリ
(72)【発明者】
【氏名】アントナン・グルー
(72)【発明者】
【氏名】シャルル・シノバー
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/092662(WO,A1)
【文献】特開2000-304089(JP,A)
【文献】特開平11-350786(JP,A)
【文献】特開2013-096169(JP,A)
【文献】実開昭63-099051(JP,U)
【文献】国際公開第2006/024940(WO,A1)
【文献】特開平09-196117(JP,A)
【文献】特開平10-159385(JP,A)
【文献】国際公開第2009/124589(WO,A1)
【文献】特開2000-104786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
E04H 9/02
E01D 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造物に接続するための基部要素(20)と、
前記基部要素(20)の上方に少なくとも部分的に配置された少なくとも1つの浮き上がり防止要素(30; 140)と、
前記基部要素(20)と前記少なくとも1つの浮き上がり防止要素(30; 140)との間に少なくとも部分的に延在する、上部構造物に接続するための運動要素(40)であって、前記運動要素(40)の回転方向および並進方向の両方の変位が、前記基部要素(20)および前記浮き上がり防止要素(30; 140)によって平面(XY)内に制限される、運動要素(40)と、
前記運動要素にかかる力が所定の閾値より小さいままのとき、前記運動要素(40)を前記基部要素(20)に対して回転方向および並進方向の両方に動けなくするためのシャーピン(90)および摩擦境界部(36、82、48; 26,80、47; 150、151)のうちの少なくとも一方であって、前記運動要素にかかる力が前記所定の閾値を超えたとき、前記運動要素の回転方向および/または並進方向の変位が生じる、シャーピン(90)および摩擦境界部(36、82、48; 26,80、47; 150、151)のうちの少なくとも一方と、
前記変位のエネルギーを吸収するための少なくとも1つのエネルギー消散要素と、
前記基部要素(20)に固定されたコア(60)と、前記コアの鉛直軸線(Z)の周りに延在して、一端で前記コア(60)に、他端で前記運動要素(40)に関節でつながれた複数のアーム(70)と、
を備える免振支承(10)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの浮き上がり防止要素(30)が、前記運動要素(40)の全周にわたって前記運動要素(40)に重ねられた、請求項1に記載の免振支承。
【請求項3】
前記運動要素(40)が円板状である、請求項1または2に記載の免振支承。
【請求項4】
前記少なくとも1つの浮き上がり防止要素(30;140)が、前記運動要素(40)の上に片持ち梁式に延在する内側の部分(39)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の免振支承。
【請求項5】
前記運動要素(40)が、前記運動要素(40)を前記上部構造物に接続するための中央開口(43)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の免振支承。
【請求項6】
前記運動要素(40)がスリーブ(51)を支える、請求項1から4のいずれか一項に記載の免振支承。
【請求項7】
前記アーム(70)が変位依存消散要素である、請求項に記載の免振支承。
【請求項8】
前記運動要素(40)の上面と、前記運動要素に面する前記少なくとも1つの浮き上がり防止要素の対応する面(36)と、の間、ならびに前記運動要素(40)の底面と、前記運動要素に面する前記基部要素の対応する面(26)と、の間、に挿入された低摩擦要素(80、82;150)を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の免振支承。
【請求項9】
前記低摩擦要素(80、82; 150)が荷重を受ける表面の少なくとも1つがステンレス鋼から形成された、請求項に記載の免振支承。
【請求項10】
前記基部要素(20)に対する前記運動要素(40)の変位を妨げるための、前記シャーピン(90)を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の免振支承。
【請求項11】
前記基部要素(20)に対する前記運動要素の変位によってせん断変形される少なくとも1つの弾性支承(100)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の免振支承。
【請求項12】
前記運動要素(40)が複数の開口(130)を備え、各開口(130)は、一端で前記基部要素(20)に接続されたタイロッド(131)が貫通するために用いられ、浮き上がり防止要素(140)が前記タイロッドに取り付けられ、および前記運動要素(40)に押し付けられており、少なくとも1つの低摩擦要素(150)が、前記浮き上がり防止要素(140)と前記運動要素(40)との間に挿入される、請求項1から11のいずれか一項に記載の免振支承。
【請求項13】
前記浮き上がり防止要素(140)が、圧力手段(133)によって前記運動要素(40)に押し付けられる、請求項12に記載の免振支承。
【請求項14】
基礎などの下部構造物と、請求項1から13のいずれか一項に記載の免振支承(10)を介して前記下部構造物に接続された上部構造物と、を備える構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免振支承、およびそのような支承を装備した構造体、例えば旅客搭乗橋に関する。
【背景技術】
【0002】
旅客搭乗橋(PBB:passenger boarding bridge)は典型的には、航空機への入口として働くキャブにロタンダを接続する伸縮トンネルを備える。ロタンダは柱によって支持され、伸縮トンネルは鉛直方向に枢動自由であり、飛行機の乗客乗降ドアと位置合わせするように上昇または下降される。柱の基部は、その基礎に対して固定される。
【0003】
いくつかの国では、PBBは地震に対する規則に従わなければならない。
【0004】
免振支承は、地震の場合に、鉛直方向の荷重を伝え、横方向の変位および構造物の回転を許容し、エネルギーを消散するために使用される。
【0005】
特許文献1には、上部構造物に接続するための上側基板と、基礎などの下部構造物に接続するための下側基板と、これらの基板と、下側基板に対して上側基板が横方向に動くとせん断変形するように構成されたせん断ばねとの間に中央配置された円板支持コアとを備える免振支承の例が開示されている。上側基板が水平軸線周りに傾くことを防がないので、このような支承は、PBBの柱を支持するために完全に満足できるものではない。
【0006】
特許文献2号は、高分子材料の板を備える滑り支承に関する。
【0007】
耐震デバイスの例が、特許文献3、特許文献4、および特許文献5に開示されている。
【0008】
EN15129などの規格には、変位依存消散(DDD:Displacement Dependent Dissipation)、粘性減衰(VD:Viscous Damping)、あるいは任意の他の技法または技法の組合せによって、あるエネルギーをシステムのより小さなトルクに消散することを狙った耐震デバイスが開示されている。
【0009】
様々な耐震デバイスが文献に開示されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第8,926,180号明細書
【文献】国際公開第2015/136457号パンフレット
【文献】国際公開第2006/024940号パンフレット
【文献】欧州特許第2 288 753号明細書
【文献】国際公開第2014/092662号パンフレット
【非特許文献】
【0011】
【文献】New Type of Energy Dissipation Devices for Seismic Protection of Bridges, A. Marioni, V. Ciampi, 3WCJSBCS
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
PBBなどの構造物を地震変位に対して絶縁することができる免振支承の必要性がまだある。
【0013】
地上の限られた設置面積の免振支承の必要性もある。
【0014】
本発明はこれらの必要性のうちの少なくとも1つを満足することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の例示的な実施形態は、
- 基礎などの下部構造物に接続するための基部要素と、
- 基部要素の上方に少なくとも部分的に配置された少なくとも1つの浮き上がり防止要素と、
- 基部要素と少なくとも1つの浮き上がり防止要素との間に少なくとも部分的に延在する、上部構造物に接続するための運動要素であって、運動要素の回転方向および並進方向の両方の変位が、基部要素および浮き上がり防止要素によって平面内に制限される、運動要素と、
- 運動要素にかかる力が所定の閾値より小さいままのとき、運動要素を基部要素に対して回転方向および並進方向の両方に動けなくするためのシャーピンおよび摩擦境界部のうちの少なくとも一方であって、運動要素にかかる力が前記所定の閾値を超えるとき、運動要素の変位が生じる、シャーピンおよび摩擦境界部のうちの少なくとも一方と、
- 前記変位のエネルギーを吸収するための少なくとも1つのエネルギー消散要素と、
を備える免振支承に関する。
【0016】
本発明による免振支承は、横方向の柔軟性を与える能力とともにトルクに抗する接続が必要となるPBBおよび他の橋、ビル、ならびに他のタイプの構造物に地面から伝えられる地震の力および加速度を減じるまたは制限することができる。したがって、これは、基礎に対する限界を荷重が超えることを回避する。浮き上がり防止円板は、基礎の水平方向の限界の力に基づく予圧力の設定値をかけるために使用される。
【0017】
本発明によって作られた免振支承は、2つの状態で動作することができる。第1の状態では、支承は使用時に完全に固定され拘束され、第2の状態では、支承は地震時に消散的である。第2の状態では、運動要素は、鉛直軸線周りの回転変位、および水平面での並進変位の両方が可能である。
【0018】
本発明の例示的な実施形態では、少なくとも1つの浮き上がり防止要素は、運動要素の全周にわたって運動要素に重ねられる。
【0019】
運動要素は、基部要素および少なくとも1つの浮き上がり防止要素と同様に円板状であることが好ましい。基部要素および少なくとも1つの浮き上がり防止要素は、ボルトによってその周囲で接続されてもよい。基部要素および少なくとも1つの浮き上がり防止要素のうちの一方は、基部要素および少なくとも1つの浮き上がり防止要素のうちの他方が載る環状のリムを備えてもよい。一変形では、下でさらに詳細を説明するように、支承は、それぞれがタイロッドによって基部に接続された複数の浮き上がり防止要素を備える。
【0020】
少なくとも1つの浮き上がり防止要素は、運動要素の上に片持ち梁式に延在する内側の部分を備えることが好ましい。前記内側の部分の厚さは内向きに薄くなる。
【0021】
少なくとも1つの浮き上がり防止要素は、運動要素を上部構造物に接続するための中央開口を備えることが好ましい。運動要素は、例えばスリーブを支え、スリーブはその基部でフランジに接続され、前記フランジは運動要素に間隔をあけた関係で接続される。スペーサリングが運動要素とフランジとの間を延在してもよい。一変形では、運動要素はまた、柱または他の接続構造物を支えてもよい。
【0022】
免振支承は、基部要素に固定されたコアと、コアの鉛直軸線の周りに延在して、一端でコアに、他端で運動要素に関節でつながれた複数のアームと、を備え、コアおよび運動要素は、互いの方を向く溝であって、前記アームが枢動可能に挿入される溝を備えることが好ましい。したがって、荷重が摩擦力を超えるのに十分になると、運動要素は、すべての水平軸線周りの回転が妨げられると同時に鉛直軸線に沿う回転は許容される。
【0023】
アームは、本発明の実施形態では、変位依存消散要素である。アームは、弧状の延性炭素鋼から作られることが好ましい。消散は鋼の弾塑性のふるまいから生じる。
【0024】
免振支承は、運動要素の上面と、運動要素に面する少なくとも1つの浮き上がり防止要素の対応する面と、の間、ならびに運動要素の底面と、運動要素に面する基部要素の対応する面と、の間に挿入された低摩擦要素を備えることが好ましく、前記低摩擦要素は環状であること好ましく、低摩擦係数の高分子材料から作られることが好ましい。摩擦境界部の特性を経時的によりよく制御するために、低摩擦要素が荷重を受ける表面の少なくとも1つはステンレス鋼から作られることが好ましい。低摩擦要素は軸方向荷重を受け、押し付けられる。
【0025】
摩擦境界部がそれだけで、地震荷重のないデバイスの通常の動作中に基部要素に対して運動要素を動けなくすることができない場合、免振支承は、所定の荷重に達するまで基部要素に対する運動要素の変位を妨げるための少なくとも1つのシャーピンを備えてもよい(所定の荷重に達するとシャーピンは切れる)。
【0026】
一変形の実施形態では、免振支承は、基部要素に対する運動要素の変位によってせん断変形される少なくとも1つの弾性支承を備え、弾性支承は、基部要素と運動要素に接続されたフランジとの間で運動要素の中央穴内に延在することが好ましい。
【0027】
一変形の実施形態では、運動要素は複数の開口を備え、複数の開口は好ましくは、運動要素の中心軸線の周りに規則的な間隔をおいて配置され、例えば、3つの開口が互いから120°の角度間隔をおいて配置される。
【0028】
各開口は、一端で基部要素に接続されたタイロッドが貫通するために用いられる。浮き上がり防止要素はロッドに取り付けられ、運動要素に押し付けられる。少なくとも1つの低摩擦要素、例えば低摩擦リングは、少なくとも1つの浮き上がり防止要素と運動要素との間に挿入される。
【0029】
運動要素は、低摩擦材料が荷重を受けるステンレス鋼ライナによって覆われてもよい。
【0030】
少なくとも1つの浮き上がり防止要素は、例えばタイロッドのねじ部分に係合された締付ナットなどの任意の圧力手段によって、運動要素に押し付けられてもよい。
【0031】
圧力手段に柔軟性を与えれば、加える力をより正確に制御する助けとなり得る。好ましい実施形態では、少なくとも1つの浮き上がり防止要素は、皿ばねなど、少なくとも1つのばね座金によって運動要素に対して締め付けられる。例えば、積み重ねられた複数の皿ばねは、少なくとも1つの浮き上がり防止要素と締付ナットとの間に挿入される。
【0032】
本発明のさらなる目的は、基礎などの下部構造物と、上で規定したような本発明による免振支承によって下部構造物に接続された上部構造物、例えば旅客搭乗橋と、を備える構造物である。
【0033】
本発明の他の特徴および利点は、以下の説明の熟読および添付の図面からより明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の免振支承を示す旅客搭乗橋の側面図である。
図2図1の免振支承を示す斜視図である。
図3】支承のいくつかの内部の詳細とともに図2の支承の半分を示した図である。
図4】鉛直軸線に沿って切り取られた支承の断面図である。
図5】支承の等価な機械的機構の図である。
図6】一変形の実施形態の図4と類似の図である。
図7】運動要素の一変形の斜視図である。
図8図7の運動要素を組み込んだ支承の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明が適用される旅客搭乗橋(PBB)1の例を示す。PBBは、本発明の範囲を逸脱しない任意の既知のタイプのものであってもよい。
【0036】
橋は、ロタンダ3を枢動可能に支持する柱2によって旅客ターミナルから近位にある端部において、典型的には支持される。
【0037】
PBBは、複数の伸縮トンネル部4を備え、航空機への入口としての役割のキャブ5を運ぶ。
【0038】
車輪付構造体6は、遠位端の近くで橋を支持し、高さを調節する。車輪7はモータによって駆動されて、橋を利用する航空機まで橋を駆動することができる。
【0039】
柱2は、本発明に従って形成されて図2図4に分離して示される免振支承10によって支持される。
【0040】
支承10は、図示のように、任意の標準の方法によって基礎に接続される基部円板20と、円板の外周近くで規則的に配置されるボルト31などの任意の適切な固定手段によって基部円板20上に固定される浮き上がり防止円板30と、を備える。
【0041】
浮き上がり防止円板30には中央開口22が設けられる。
【0042】
基部円板20は、2つの円板がその間に運動円板40を収めることができるように、周囲に浮き上がり防止円板30が載る環状縁21を備える。
【0043】
運動円板40には中央開口43が設けられる。
【0044】
中央コア60は、スリーブ51と同軸の運動円板40の中央開口を通って延在するように、フランジ50の下で基部円板20に固定される。
【0045】
コア60には、周囲に溝63が設けられ、その中でC字形の金属アーム70の近位端71が関節でつながれている。
【0046】
フランジ50には、図示のように、コア60の上に開いている中央穴56が設けられてもよい。
【0047】
運動円板40はその上面41で、柱2に接続するためのスリーブ51を支えるフランジ50が載るスペーサリング42を支える。
【0048】
補強材52は、スリーブの外周をフランジ50に接続することができる。
【0049】
スリーブ51は、実質的に鉛直である長手方向軸線Zに沿う円筒である。
【0050】
フランジ50は、フランジ50の周囲に配置されたねじ付棒53およびナット54によって運動円板40に固定される。
【0051】
運動円板40には、溝63を向く対応する溝45が設けられ、溝45内で、アーム70の遠位端72は棒53の下端に関節でつながれる。
【0052】
少なくとも2つの低摩擦リング80が、運動円板40の底面47と基部円板20の対向面26との間に挿入される。同様に、少なくとも1つの低摩擦リング82が、運動円板40の上面48と浮き上がり防止円板30の対向面36との間に挿入される。図示の実施形態では、2つのリング82が示されているが、点荷重値をより良く制御し、予圧縮力を設定することができるように、これらのリングは1つのリングに置き換えられてもよい。下側の低摩擦リング80は運動円板40に接続され、上側の低摩擦リング82は浮き上がり防止円板30に接続される。リング80および82の位置は運動行程に対して適切であるべきである。
【0053】
低摩擦リング80および82は、テフロンなどのPTFEまたはISOGLIDEなどの他の適切な低摩擦材料で作られてもよい。運動円板40は軸線Zに垂直な方向に延在する。したがって、運動円板40は、浮き上がり防止円板30と基部円板20との組立体によって鉛直軸線Zの周りに面内回転するように維持される。言い換えれば、運動円板40は、その対称軸線の周りに回転する動きの自由、ならびに鉛直方向のZ軸線に垂直のXY平面の水平のXおよびY方向に動く自由を有する。
【0054】
2つの下側リング80の位置は、使用中または地震時に鉛直荷重を基礎に直接伝えるように適切に選ばれる。
【0055】
運動円板40は、良好な滑り境界部を提供するために、ステンレス鋼で作られてもよいし、少なくともその上面48がステンレス鋼ライナで覆われてもよい。同様に、基部円板は、その表面26がステンレス鋼ライナによって覆われてもよい。
【0056】
運動円板40は、基部円板20と浮き上がり防止円板30との間で押し付けられ、それらの間の摩擦によって動けなくされる。地震時での運動円板40の面内動きに対する摩擦抵抗および水平方向の力のトリガ値を設定するために浮き上がり防止円板30に予圧をかけることができる。
【0057】
図示のように、浮き上がり防止円板30は、運動円板40の上に片持ち梁式に延在し、その厚さが円板30の上面の面取り38によって開口22に向かって薄くなる、半径方向内側の部分39を有してもよい。
【0058】
アーム70は、地震の水平方向の力以外のいかなる荷重も支えないDDD要素を構成する。アーム70は、地震の変位の振幅が何らかの限界を超えた場合、エネルギー消散効果を与える。
【0059】
円板20、30、および40の寸法は、基礎の荷重および大きさ、ならびに地震時に必要な最大面内動きに応じて選ばれる。
【0060】
この支承の等価なモデルが図5に示される。
【0061】
この図では、以下の符号はそれぞれ下記のように対応する。
V 使用時の鉛直方向の力
H 使用時の水平方向の力
M 使用時のモーメント力
摩擦抵抗(トリガ値)、F<He(基礎の水平方向の限界力)
Pc 予圧縮力
μ 静摩擦力係数+動摩擦力係数
kx、ky、kθ 消散要素の等価剛性
k´z 摩擦境界部における低摩擦リングの等価剛性
【0062】
図6は、支承にかかる力がシャーピン90の全機械的抵抗を超えるまで、運動円板40を基部円板20に対して動けなくするようにピン90が設けられた、本発明に従って作られた支承の一変形を示す。摩擦抵抗だけでは十分でない場合に、これらのピン90を用いてトリガ値をより高い値に設定することができる。地震後にピン90は交換される。
【0063】
この実施形態では、アーム70は、フランジ50および基部円板20にそれぞれ固定された上面および下面を有する弾性支承100に置き換えられている。
【0064】
図7および図8の変形の実施形態では、運動要素40は複数の開口130を備え、好ましくは、これらの開口は、運動要素40の中心軸線の周りに規則的な間隔をおいて配置され、例えば、3つの開口130が互いから120°の角度間隔をおいて配置される。
【0065】
各開口130は、一端で基部要素20に接続されたタイロッド131が貫通するために用いられる。浮き上がり防止要素140はこのロッドに取り付けられ、運動要素40を下に押し付ける。低摩擦要素150、例えば低摩擦リング150(図7では、浮き上がり防止要素140の1つだけが示される)は、浮き上がり防止要素140の底面と運動要素40の上面との間に挿入される。
【0066】
運動要素40は、低摩擦リング150が荷重を受けるステンレス鋼ライナ151によって各開口130の周りが覆われてもよい。
【0067】
各浮き上がり防止要素140は、例えば対応するタイロッド131のねじ部分にねじ込まれた締付ナット133など、任意の圧力手段によって運動要素40を押し付けてもよい。
【0068】
圧力手段に柔軟性を与えれば、加える力をより正確に制御する助けとなり得る。図示の例では、浮き上がり防止要素140は、皿ばねなど、少なくとも1つのばね座金155によって運動要素40に対して締め付けられる。例えば、積み重ねられた複数の皿ばね155が、浮き上がり防止要素140の上面と締付ナット133の下面との間に軸方向に挿入される。
【0069】
図7および図8の実施形態によって、運動要素40の予圧力のより良い制御が可能となる。
【0070】
本発明は、モーメントに抵抗して拘束する能力を提供し、同時に横方向の柔軟性およびエネルギー消散を提供することができる。
【0071】
本発明は、図1図6を参照して説明された実施形態に限定されるものではない。
【0072】
本発明は、PBB以外の上部構造物、例えば柱の基部で免振システムを組み込まなければならないビル、道路または鉄道の橋、および任意の光機器構造物の保護に適用される。
【0073】
追加のせん断および捩じりばねと同様、他のタイプのDDD要素も使用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 旅客搭乗橋(PBB)
2 柱
3 ロタンダ
4 伸縮トンネル部
5 キャブ
6 車輪付構造体
7 車輪
10 支承
20 基部円板、基部要素
21 環状縁
22 中央開口
26 面、摩擦境界部
30 浮き上がり防止円板、浮き上がり防止要素
31 ボルト
36 面、摩擦境界部
38 面取り
39 内側の部分
40 運動円板、運動要素
41 上面
42 スペーサリング
43 中央開口
45 溝
47 底面、摩擦境界部
48 上面、摩擦境界部
50 フランジ
51 スリーブ
52 補強材
53 ねじ付棒、棒
54 ナット
56 中央穴
60 コア
63 溝
70 アーム
71 近位端
72 遠位端
80 低摩擦リング、リング、低摩擦要素、摩擦境界部
82 低摩擦リング、リング、低摩擦要素、摩擦境界部
90 シャーピン
100 弾性支承
130 開口
131 タイロッド
133 締付ナット、圧力手段
140 浮き上がり防止要素
150 低摩擦要素、低摩擦リング、摩擦境界部
151 ライナ、摩擦境界部
155 ばね座金、皿ばね
摩擦抵抗(トリガ値)
H 使用時の水平方向の力
kx 消散要素の等価剛性
ky 消散要素の等価剛性
k´z 摩擦境界部における低摩擦リングの等価剛性
kθ 消散要素の等価剛性
M 使用時のモーメント力
Pc 予圧縮力
V 使用時の鉛直方向の力
X 水平軸線
Y 水平軸線
Z 鉛直軸線
μ 静摩擦力係数+動摩擦力係数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8