(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】マルテンサイト鋼の製造方法及びそのマルテンサイト鋼
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240408BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20240408BHJP
C21D 9/56 20060101ALI20240408BHJP
B23K 9/23 20060101ALI20240408BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20240408BHJP
C21D 9/46 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C22C38/00 301U
C22C38/60
C21D9/56 101C
B23K9/23 C
B23K26/21 E
C21D9/46 F
(21)【出願番号】P 2021530858
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 IB2019059833
(87)【国際公開番号】W WO2020109918
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】PCT/IB2018/059513
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IB
(73)【特許権者】
【識別番号】515214729
【氏名又は名称】アルセロールミタル
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガーセミー-アルマキ,ハッサン
(72)【発明者】
【氏名】パテル,ビカス・カヌバイ
(72)【発明者】
【氏名】グスタフソン,ティモシー
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-503072(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02130620(EP,A1)
【文献】特開2014-226720(JP,A)
【文献】特開昭60-216994(JP,A)
【文献】特開2019-014937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/52- 9/70
C21D 9/46- 9/48
B23K 9/23
B23K 26/21
B21C 47/00-47/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の連続した工程、
- 加熱処理されていな
い第1の冷間圧延鋼
板のコイルを提供する工程、
- 該加熱処理されていな
い第1の冷間圧延鋼板の
コイルの少なくとも最初の2周の外側の巻きを解く工程、
- 溶接のために該加熱処理されていない
第1の冷間圧延鋼板の
コイルの巻きを解かれ
た端部を準備する工程、
- 加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板の
コイルの巻きを解かれた端部に、該
加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板より炭素含有量の低い第1のストリンガー鋼を溶接して、
第1のストリンガー鋼が第1の溶接部で溶接された端部を有する
加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板の
コイルを得る工程、
- 次いで、
第1のストリンガー鋼が第1の溶接部で溶接された
端部を有する加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板の
コイルをリールに巻き戻して、
第1のストリンガー鋼が第1の溶接部で溶接された端部とは反対の他の端部を外側の巻きとする
、加熱処理されていない
第1の冷間圧延鋼板の
コイルを得る工程、
- その後、
該加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板の
コイルの少なくとも最初の2周の外側の巻きを解く工程、
- 溶接のために該
加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板の
コイルの巻きを解かれた
他の端部を準備する工程、
-
該加熱処理されていない第1の冷間圧延
鋼板
のコイルの巻きを解かれた他の端部に、該
加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板よりも炭素含有量の低い第2のストリンガー鋼を溶
接して、
第2のストリンガー鋼が第2の溶接部で溶接された他の端部を有す
る加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板の
コイルを得る工程、
- その後
、第2のストリンガー鋼が第2の溶接部で溶接された他の端部を有する加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板
のコイルを巻取り、複合コイルを得る工程、
を含む、複合コイルを製造する方法であって、
第1の
冷間圧延鋼板が重量パーセントで表される以下の元素、すなわち、
0.1%≦C≦0.4%、
0.2%≦Mn≦2%、
0.4%≦Si≦2%、
0.2%≦Cr≦1%、
0.01%≦Al≦1%、
0%≦S≦0.09%、
0%≦P≦0.09%、
0%≦N≦0.09%
を含み、以下の任意元素、すなわち、
0%≦Ni≦1%、
0%≦Cu≦1%、
0%≦Mo≦0.1%、
0%≦Nb≦0.1%、
0%≦Ti≦0.1%、
0%≦V≦0.1%、
0.0015%≦B≦0.005%、
0%≦Sn≦0.1%、
0%≦Pb≦0.1%、
0%≦Sb≦0.1%、
0%≦Ca≦0.1%
の1種以上含むことができ、残余の組成は鉄及び加工に起因する不可避の不純物から構成され、
第1のストリンガー鋼及び第2のストリンガー鋼が、重量パーセントで表される以下の元素、すなわち、
0.001%≦C≦0.25%、
0.2%≦Mn≦2%、
0.01%≦Si≦2%、
0.01%≦Cr≦1%、
0.01%≦Al≦1%、
0%≦S≦0.09%、
0%≦P≦0.09%、
0%≦N≦0.09%
を含み、以下の任意元素、すなわち、
0%≦Ni≦1%、
0%≦Cu≦1%、
0%≦Mo≦0.1%、
0%≦Nb≦0.1%、
0%≦Ti≦0.1%、
0%≦V≦0.1%、
0.0015%≦B≦0.005%、
0%≦Sn≦0.1%、
0%≦Pb≦0.1%、
0%≦Sb≦0.1%、
0%≦Ca≦0.1%
の1種以上を含むことができ、残余の組成は鉄及び不可避の不純物から構成される、方法。
【請求項2】
GMAW、TIG、MIG、レーザー溶接又はアーク溶接からの溶接方法のいずれか1つにより、溶接が行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のストリンガー鋼、
前記第2のストリンガー鋼、及び
前記加熱処理されていない
第1の冷間圧延
鋼板
の幅が同一である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも
加熱処理されていない第1の
冷間圧延鋼板
並びに少なくと
も第1のストリンガー鋼及び
第2のストリンガー鋼を含んで成
る複合コイル
であって、該第1のストリンガー鋼と該加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板の端部とは第1の溶接部で溶接されており、該第2のストリンガー鋼と該該加熱処理されていない第1の冷間圧延鋼板の他の端部とは第2の溶接部で溶接されており、
第1の冷間圧延鋼板が重量パーセントで表される以下の元素、すなわち、
0.1%≦C≦0.4%、
0.2%≦Mn≦2%、
0.4%≦Si≦2%、
0.2%≦Cr≦1%、
0.01%≦Al≦1%、
0%≦S≦0.09%、
0%≦P≦0.09%、
0%≦N≦0.09%
を含み、以下の任意元素、すなわち、
0%≦Ni≦1%、
0%≦Cu≦1%、
0%≦Mo≦0.1%、
0%≦Nb≦0.1%、
0%≦Ti≦0.1%、
0%≦V≦0.1%、
0.0015%≦B≦0.005%、
0%≦Sn≦0.1%、
0%≦Pb≦0.1%、
0%≦Sb≦0.1%、
0%≦Ca≦0.1%
の1種以上含むことができ、残余の組成は鉄及び加工に起因する不可避の不純物から構成され、
第1のストリンガー鋼及び第2のストリンガー鋼が、重量パーセントで表される以下の元素、すなわち、
0.001%≦C≦0.25%、
0.2%≦Mn≦2%、
0.01%≦Si≦2%、
0.01%≦Cr≦1%、
0.01%≦Al≦1%、
0%≦S≦0.09%、
0%≦P≦0.09%、
0%≦N≦0.09%
を含み、以下の任意元素、すなわち、
0%≦Ni≦1%、
0%≦Cu≦1%、
0%≦Mo≦0.1%、
0%≦Nb≦0.1%、
0%≦Ti≦0.1%、
0%≦V≦0.1%、
0.0015%≦B≦0.005%、
0%≦Sn≦0.1%、
0%≦Pb≦0.1%、
0%≦Sb≦0.1%、
0%≦Ca≦0.1%
の1種以上を含むことができ、残余の組成は鉄及び不可避の不純物から構成され、
当該複合コイルの溶接部は70%を超える溶接靭性を有し、
当該複合コイルの溶接部は12サイクルを超える溶接曲げ性を有する、
複合コイル。
【請求項5】
前記複合コイルの溶接部が14サイクルを超える溶接曲げ性を有する、請求項
4に記載の複合コイル。
【請求項6】
少なくとも70%のマルテンサイト及び1500MPaを超える引張強さを有するマルテンサイト鋼
板を請求項1に記載の方法により製造された複合コイルから製造する方法であって、以下の連続した工程、すなわち、
- 請求項1に記載の方法により製造された複合コイルを提供する工程、
- 次いで、該複合コイルを2℃/秒を超える速度でAc1~Ac3+100℃の間の均熱温度まで加熱し、そこで10秒間~500秒間保持することにより、焼鈍を行う工程、
- 次いで、該複合コイルを25℃/秒を超える速度でMs温度未満の温度まで冷却し、温度範囲150℃~400℃の間で10~1000秒間の時間の間複合コイルを保持する工程、
- 該複合コイルを室温まで冷却した後、剪断切り取り作業を行い、第1のストリンガー鋼及び第2のストリンガー鋼を除去してマルテンサイト鋼板を得る工程、
を含む方法。
【請求項7】
マルテンサイト鋼
板が重量百分率で示される以下の元素、すなわち、
0.1%≦C≦0.4%、
0.2%≦Mn≦2%、
0.4%≦Si≦2%、
0.2%≦Cr≦1%、
0.01%≦Al≦1%、
0%≦S≦0.09%、
0%≦P≦0.09%、
0%≦N≦0.09%
を含み、以下の任意元素、すなわち、
0%≦Ni≦1%、
0%≦Cu≦1%、
0%≦Mo≦0.1%、
0%≦Nb≦0.1%、
0%≦Ti≦0.1%、
0%≦V≦0.1%、
0.0015%≦B≦0.005%、
0%≦Sn≦0.1%、
0%≦Pb≦0.1%、
0%≦Sb≦0.1%、
0%≦Ca≦0.1%
の1種以上含むことができ、残余の組成は鉄及び加工に起因する不可避の不純物から構成され、該
マルテンサイト鋼板の微細組織は、面積百分率により残留オーステナイト及びベイナイトの累積存在を0%から25%の間で含む微細組織を有し、残余の微細組織は少なくとも70%のマルテンサイトであり、0%~10%の間のフェライトの任意の存在を有する、請求項
6に記載の方
法。
【請求項8】
組成が0.4%~1.8%のケイ素を含む、請求項
7に記載
の方法。
【請求項9】
組成が、0.2%~0.4%の炭素を含む、請求項
7又は
8に記載の
方法。
【請求項10】
組成が0.01%~0.5%のアルミニウムを含む、請求項
7~
9のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項11】
組成が0.2%~1.5%のマンガンを含む、請求項
7~
10のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項12】
組成が0.2%~0.8%のクロムを含む、請求項
7~
11のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項13】
マルテンサイトが85%以上である、請求項
7~
12のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項14】
残留オーステナイト及びベイナイトの和が1%~10%の間である、請求項
7~
13のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項15】
前記
マルテンサイト鋼板が1700MPa以上の極限引張強度及び1000MPa以上の降伏強さを有する、請求項
7~
14のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項16】
車両の構造部品を製造するための、請求項
6~15に記載の方法に従って得られるマルテンサイト鋼
板の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に引張強さが1500MPa以上のマルテンサイト鋼へ連続焼鈍ラインで適切に加工されたマルテンサイト鋼の連続的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冷間圧延鋼板は、連続亜鉛めっき、連続焼鈍及び冷間圧延装置の他の熱処理加工ラインで連続的に加工される。焼鈍及び亜鉛めっきのような熱処理工程の効率を最適化するために、鋼板は端と端を重ねシーム溶接で接合している。具体的には、先行する(第1の)コイルの尾部又は終端と、入ってくる(第2の)コイルの頭部末端を前記装置の入口端で一緒に接合し、それにより、板が個別に加工される場合に実現されるであろうよりもはるかに高い効率で、前記装置内で連続的に加工され得る連続的な接合板を作り出す。
【0003】
低炭素及び高強度低合金(「HSLA」)級の鋼の溶接には、従来の重ねシーム又はマッシュシーム溶接機を効果的に使用することができる。溶接は、台車に取り付けられた一対の対向する電極のような溶接装置が、HSLA級鋼の重なり合う部分に沿って移動して溶接部を形成し、その後アイドルモードでそのホームポジションに戻る単一パスで形成される。
【0004】
高度高強度鋼(AHSS)の開発、特にHSLA級鋼又は低炭素級の引張強さよりも高い引張強さを有するマルテンサイト鋼の開発。マルテンサイト鋼は炭素当量が高く、引張強さが高く、電気抵抗率が高いのが特徴である。この高い引張強さは、特に自動車産業にとって有益であり、例えば、マルテンサイト鋼及びそれらの高い引張強さを車両フレームに使用することにより、車両の安全性に悪影響を及ぼすことなく、軽量化及びそれに付随する燃費向上を伴う自動車部品の製造が可能になる。しかし、高い炭素含有量のために、マルテンサイト鋼は従来のシーム溶接方法により特に連続的に加工することができない。何故ならば、予熱なしで2つの高炭素鋼に使用される場合、これらの溶接方法は、高炭素の鋼の凝固し、冷却された溶融域が、比較的硬くて脆い高炭素マルテンサイトからなるという事実により脆くて弱い溶接部、及びまた酸化物形成をもたらすからである。この脆くて硬い微細組織は、溶接直後、又は連続焼鈍、酸洗、あるいは亜鉛めっきの内部で加工される場合のいずれかで亀裂を発生させる。さらに、AHSSの非常に高い合金含有量、特に高い炭素含有量、及び高い抵抗率は、これらの等級を溶接パラメータに対し非常に敏感にする。
【0005】
したがって、連続的焼鈍ライン又は他の連続的熱処理方法中の溶接の失敗が、溶接の破損の位置及び重症度に応じて、比較的短時間(例えば、1時間)又は長時間(例えば、1日)の完全連続冷間圧延装置の加工ルートの停止を引き起こす可能性があるため、高炭素鋼用のミルによる安全で信頼性の高い加工のために、高炭素鋼溶接に対し前記高炭素鋼を置き換える必要がある。
【0006】
AHSSの連続加工の分野における以前の研究開発は、溶接後の誘導加熱の適用のようなAHSSを連続的に製造するための幾つかの方法をもたらした。この代替の解決策は、設備投資を必要とする誘導加熱ユニット又は分離ステーションの設置、及び溶接部を冷却するための大幅な追加の加工時間を必要とする。このため、この解決策は冷間圧延装置の連続熱処理ルートには適さない。
【0007】
また、付与された特許US8803023号は、AHSS鋼に対して2つの溶接パスを提案することによる溶接の機構を示唆している。しかし、この特許は、1700MPaを超える引張強さを有する鋼の溶接を実証していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、上述の公表文献に照らして、本発明の目的は、連続焼鈍においてAHSS、具体的にはマルテンサイト鋼を加工して、自動車の製造に使用するための1500MPaを超える引張強さを有する鋼を製造する方法を提供することであり、該方法は、AHSS、特にマルテンサイト鋼の熱処理されていない鋼を連続的熱処理方法によって熱処理することを可能にする。
【0010】
そこで、本発明の目的は、連続熱処理加工ラインで使用されるのに適した鋼の方法及び複合コイルを利用可能にして、以下を同時に有する自動車に使用されるマルテンサイト鋼板を製造することにより、これらの問題を解決することにある。
- 1500MPa以上、好ましくは1700MPaを超える、より好ましくは1900MPaを超える極限引張強度、
- 1200MPa以上、好ましくは1400MPaを超える降伏強さ。
【0011】
本発明の別の目的は、製造パラメータの変更に対して安定している一方で、従来の産業用途に適合するこれらの板の製造方法を利用可能にすることでもある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の鋼の複合コイルは、任意に、その耐食性を改善するために、亜鉛若しくは亜鉛合金又はアルミニウム若しくはアルミニウム合金で被覆することができる。
【0013】
本発明は、AHSS鋼、特にマルテンサイト鋼の熱処理されていない冷間圧延鋼板の幅に沿って、以降ストリンガー鋼片と呼ばれる低炭素鋼又はHSLA級鋼を溶接することによって製造される複合コイルである中間製品を製造することにより前記問題を改善して、AHSSからAHSSへの溶接を、焼鈍又は亜鉛めっきのような連続熱処理方法のためにAHSSコイルを間接的に接合するための、より強力でより信頼性の高いHSLAからHSLAへの溶接に置き換える。
【0014】
本発明の複合コイルは、該複合コイルが連続焼鈍ライン又は他の任意の熱処理方法への材料として作用できるように、12回以上の屈曲サイクルの溶接曲げ性を有していなければならない。
【0015】
本発明の複合コイルは、複合コイルが連続熱処理方法の変動に耐えることができるように、70%を超える溶接靭性を有さなければならない。
【0016】
好ましくは、このような鋼の複合コイルは、自動車に使用される冷間圧延板の製造に適している。
【0017】
好ましくは、このような鋼の複合コイルは、良好な溶接性及び被覆性を持って成形、特に圧延するのに良好な適合性も有することができる。
【0018】
本発明の評価のために、この方法を本明細書中で具体的に説明する。本発明によるマルテンサイト鋼は、本明細書に言及する連続工程からなる方法により製造することができる。
【0019】
本発明によるマルテンサイト鋼板は、次のいずれかの方法により製造することができる。好ましい方法は、本発明による第1の鋼の化学組成を有する鋼の半完成品の鋳造物を提供することからなる。鋳造を行って、インゴット、又は連続的に細いスラブ又は細いストリップの形態(スラブの場合の約220mmから細いストリップの場合の数十ミリメートルまでの範囲の厚さを有する)のいずれかにすることができる。
【0020】
例えば、第1の鋼の化学組成を有するスラブは連続鋳造によって製造され、ここで、スラブは、中心部偏析を回避し、そして公称炭素に対する局所炭素の比率を1.10未満に保つことを保証するために、連続鋳造方法の間に任意に直接軽圧下を受けた。連続鋳造方法によって提供されるスラブは、連続鋳造の後高温で直接使用することができ、又は最初に室温まで冷却され、次いで熱間圧延のために再加熱することができる。
【0021】
熱間圧延に供されるスラブの温度は、好ましくは少なくとも1000℃であり、1280℃未満でなければならない。スラブの温度が1150℃より低い場合、圧延機に過大な荷重が加わり、さらに仕上げ圧延中に鋼の温度がフェライト変態温度まで低下することがあり、これにより鋼は組織中に変態フェライトが含まれた状態で圧延される。したがって、Ac3~Ac3+100℃の温度範囲で熱間圧延を完了でき、最終的な圧延温度がAc3より上であるままであるように、スラブの温度は十分に高いことが好ましい。1280℃を超える温度での再加熱は、工業的に費用がかかるため避けなければならない。
【0022】
Ac3~Ac3+100℃の間の最終圧延温度範囲は、再結晶化及び圧延に有利な組織を有するために好ましい。この温度より低いと鋼板は圧延性の大幅な低下を示すため、850℃より高い温度で最終圧延パスを行う必要がある。この方法で得られた板をその後30℃/秒を超える冷却速度で475~650℃の間でなければならない巻取り温度まで冷却する。好ましくは、冷却速度は200℃/秒以下である。
【0023】
次いで、熱間圧延鋼板は、楕円化を避けるために475℃~650℃の間、スケール形成を避けるために好ましくは625℃未満の巻取り温度で巻取られる。このような巻取り温度の好ましい範囲は500℃~625℃の間である。巻取られた熱間圧延鋼板は、任意のホットバンド焼鈍を行う前に室温まで冷却される。
【0024】
熱間圧延鋼板は、任意のホットバンド焼鈍の前に熱間圧延中に形成されたスケールを除去するために任意のスケール除去工程に供することができる。次いで、熱間圧延板は、400℃~750℃の間の温度で少なくとも12時間、かつ96時間以下の間任意のホットバンド焼鈍に供され、熱間圧延微細組織を部分的に変態させ、これにより微細組織の均質性を失うことを避けるために、温度は750℃未満のままである。その後、この熱間圧延鋼板の任意のスケール除去工程を、例えばこのような板の酸洗により行うことができる。この熱間圧延鋼板に冷間圧延を施し、圧下率35~90%の間で冷間圧延鋼板を得る。次いで、冷間圧延鋼板が得られる。この熱処理されていない冷間圧延鋼板は、第1の鋼とも呼ばれる。
【0025】
その後、0.001~0.25%以下の間の炭素含有量を有する任意の鋼からなる少なくとも2つのストリンガーを提供する。本発明のためのストリンガーは、冷間圧延鋼板と同じ幅及び同じ厚さの鋼片であり、本発明の要件に従って長さを変えることができる。本発明のストリンガー鋼は、常に0.001%~0.25%の間、好ましくは0.001%~0.20%の間の炭素含有量を含まなければならない。提供される2つのストリンガーは、以降ストリンガー1及びストリンガー2と呼ばれる。
【0026】
次に、冷間圧延鋼板の少なくとも最初の2つの外側巻線の巻きを解き、次に溶接のために冷間圧延鋼板の巻きが解かれた巻線の先端部を準備する。
図1において、10が冷間圧延鋼板の巻きを解かれた外側巻線の準備された端部を示し、20が冷間圧延鋼板の巻きを解かれた最初の2つの外側巻線を示し、符号30が残りの巻かれた冷間圧延鋼板を示す象徴的な表現である。
【0027】
ストリンガー1の
端部のいずれか1つを溶接のために準備する。
図2は、ストリンガーの準備した
端部100及びストリンガーとしての110を示す。その後、ストリンガー1の準備した
端部を冷間圧延鋼板の準備した端部に溶接して、溶接した冷間圧延鋼板を得る。ストリンガーとの冷間圧延鋼板の溶接端部を
図3に示し、ここで、200は溶接部であり、110はストリンガーであり、20は冷間圧延鋼板の
2周の外側
の巻きを示し、30は残りの巻き取られた冷間圧延鋼板を示す。
【0028】
その後、溶接した冷間圧延鋼板をリールに巻き戻し、溶接されていない端部を外側巻線にする。溶接された冷間圧延鋼板の溶接されていない端部を外側巻線とし、次いで少なくとも最初の2つの外側巻線の巻きを解き、溶接された冷間圧延鋼板の巻きを解かれた溶接されていない端部を溶接のために準備する。
【0029】
図4に示されるように、溶接のためにストリンガー2の
端部のいずれかを準備し、準備した端部は400と呼ばれ、ストリンガー2は410として示される。次に、準備したストリンガー2の
端部を溶接した冷間圧延鋼板の準備した端部に溶接し、複合鋼板を得る。
【0030】
図5は、全体を550として示す平坦な複合コイルの概略図を示しており、500は平らな巻きを解かれた冷間圧延鋼板であり、110はストリンガー1、410はストリンガー2、200はストリンガー1と冷間圧延鋼板との溶接部を示している。510は、ストリンガー2と溶接した冷間圧延鋼板との溶接部を示す。
【0031】
その後、複合コイルは、熱処理のための連続焼鈍サイクルに送られ、このサイクルは、複合コイルの曲げ性及び靭性のために溶接部を試験するとともに、必要な機械的性質及び微細組織を本発明の鋼に付与する。
【0032】
複合鋼板の焼鈍において、複合鋼板を、2℃/秒より大きく、好ましくは3℃/秒より大きい加熱速度で、Ac3~Ac3+100℃の間の均熱温度まで加熱し、複合鋼板のAc3は以下の式を用いて計算される。
Ac3=901-262*C-29*Mn+31*Si-12*Cr-155*Nb+86*Al
式中、元素含有量は冷間圧延鋼板の重量百分率で表される。
【0033】
複合鋼板を均熱温度で10秒~500秒間保持し、強く加工硬化した初期組織の完全再結晶化及びオーステナイトへの完全変態を確保する。次いで、複合鋼板を25℃/秒より大きい冷却速度でMs温度未満、好ましくは400℃未満の温度まで冷却し、複合鋼板を10秒~1000秒間150℃~400℃の間の温度範囲で保持して、必要な微細組織を本発明に付与し、次いで複合鋼板を室温まで冷却して、冷却された複合鋼板を得る。
【0034】
その後、マルテンサイト鋼板に対して、ストリンガー1及びストリンガー2を取り外す剪断切り取り作業を行う。
【0035】
このマルテンサイト鋼の製造方法に用いるマルテンサイト鋼板の化学組成は、以下のとおりである。
【0036】
炭素は0.10%~0.4%の間で鋼の複合コイル中に存在する。炭素は、マルテンサイト等の低温変態相を生成させることにより本発明鋼の強度を高めるために必要な元素であり、さらに炭素はオーステナイト安定化にも極めて重要な役割を果たし、したがって残留オーステナイトを確保するために必要な元素である。したがって、炭素は2つのきわめて重要な役割を果たし、1つは強度を高めることであり、もう1つは残留オーステナイトにおいて延性を付与することである。しかし、炭素含有量が0.10%未満では、本発明の鋼に必要とされる十分な量のオーステナイトを安定化することができない。一方、炭素含有量が0.4%を超えると、鋼は不十分なスポット溶接性を示し、これは自動車部品へのその応用を制限する。
【0037】
本発明の鋼の複合コイルのマンガン含有量は0.2%~2%の間である。この元素はガンマジニアス(gammagenous)である。マンガンを添加する目的は、本質的にオーステナイトを含む組織を得ることである。マンガンはオーステナイトを室温で安定化させ、残留オーステナイトを得るための元素である。少なくとも約0.2重量%の量のマンガンは、オーステナイトを安定化させるとともに、本発明の鋼に強度及び焼入れ性を提供するために必須である。したがって、より高い割合のマンガン、例えば、2%が本発明によって好ましい。しかし、マンガン含有量が2%を超えると、焼鈍後の冷却中にオーステナイトからベイナイトへの変態を遅らせる等の悪影響が生じる。また、マンガン含有量が2%を超えると、延性目標を達成できないとともに、本発明の鋼の溶接性も劣化する。
【0038】
本発明の鋼の複合コイルのケイ素含有量は0.4%~2%の間である。ケイ素は、過時効時の炭化物の析出を遅らせることができる成分であるため、ケイ素の存在により、炭素に富むオーステナイトは室温で安定化される。さらに、ケイ素の炭化物への溶解度が低いため、炭化物の形成を効果的に阻害又は遅延させることから、本発明の鋼に必須の機械的性質を付与するために本発明により求められるベイナイト組織における低密度の炭化物の形成も促進される。ケイ素の含有量が不均衡であると、言及された効果は得られず、焼き戻し脆化のような問題に至る。したがって、その濃度は上限2%以内に制御される。
【0039】
本発明鋼の複合コイルのクロム含有量は0.2%~1%の間である。クロムは鋼に強度及び硬化を与える不可欠な元素であるが、1%を超えて使用すると鋼の表面仕上げを損なう。さらに1%未満のクロム含量では、ベイナイト組織中の炭化物の分散パターンが粗くなるため、ベイナイト中の炭化物の密度を低く保つ。
【0040】
アルミニウムの含有量は0.01%~1%の間である。本発明において、アルミニウムは、溶鋼中に存在する酸素を除去して、酸素が凝固過程中に気相を形成するのを防止する。また、アルミニウムは、窒素を鋼中に固定して窒化アルミニウムを形成し、結晶粒のサイズを小さくする。アルミニウム含有量が1%を超えると、Ac3点が上昇して高温となり、生産性が低下する。0.8~1%の間のアルミニウム含有量は変態点及びオーステナイト形成発達に及ぼすマンガンの影響と温度との釣合いをとるために、高いマンガン含有量を加える場合に用いることができる。
【0041】
硫黄は必須元素ではないが、鋼の中に不純物として含まれている可能性があり、本発明の観点からは、硫黄含有量は可能な限り低くすることが望ましいが、製造コストの観点からは0.09%以下である。さらに、より高量の硫黄が鉄鋼中に存在する場合には、それは特にマンガンと結合して硫化物を形成し、本発明に対するその有益な影響を減少させる。
【0042】
本発明の鋼のリン成分は、0.002%~0.09%の間であり、リンは、特に、粒界で偏析するか、マンガンと共偏析する傾向があるために、スポット溶接性及び高温延性を低下させる。これらの理由により、その含有量は0.09%に制限され、好ましくは0.06%未満である。
【0043】
材料の時効を回避し、鋼の機械的性質に悪影響を及ぼす凝固中の窒化アルミニウムの析出を最小限に抑えるために、窒素は0.09%に制限される。
【0044】
ニッケルは、鋼の複合コイルの強度を増加させ、その靭性を改善するために、0%~1%の量で任意元素として添加することができる。このような効果を得るには最低0.01%が必要である。しかし、その含有量が1%を超えると、ニッケルは延性劣化を引き起こす。
【0045】
銅は、鋼の複合コイルの強度を高め、その耐食性を向上させるために、0%~1%の量で任意元素として添加することができる。このような効果を得るには最低0.01%が必要である。しかし、その含有量が1%を超えると、表面形態を劣化させる可能性がある。
【0046】
モリブデンは、本発明の鋼の0%~0.1%を構成する任意要素である。モリブデンは、焼入れ性及び硬度を改善するのに有効な役割を果たし、ベイナイトの出現を遅らせ、ベイナイトにおける炭化物の析出を回避する。しかし、モリブデンの添加は、合金元素の添加コストを過度に増大させるため、経済的理由からその含有量は0.1%に制限される。
【0047】
ニオブは、本発明の鋼中に0%~0.1%の間で存在し、析出硬化により本発明の鋼の強度を付与するために炭窒化物を形成するのに適している。ニオブはまた、炭窒化物としてのその析出により、また、加熱工程中に再結晶化を遅らせることによって、微細組織の構成要素のサイズに影響を及ぼす。したがって、保持温度の終わりに、及び完全な焼鈍後にその結果として形成されるより微細な微細組織は、製品の硬化につながる。しかし、その影響の飽和効果が観察される(これは、追加量のニオブが製品の強度向上をもたらさないことを意味する)ので、0.1%を超えるニオブ含有量は経済的に興味がない。
【0048】
チタンは、本発明の鋼にニオブと同じ0%~0.1%の間で添加され、これは炭窒化物に関与するので、硬化において役割を果たす。しかし、それは鋳造製品の凝固中に出現する窒化チタンも形成する。チタンの量は、成形性に悪影響を及ぼす粗い窒化チタンの形成を避けるために、0.1%に制限される。この場合、0.001%未満のチタン含有量は、本発明の鋼に何ら影響を及ぼさない。
【0049】
本発明の鋼中のカルシウム含有量は0.001%~0.005%の間である。カルシウムは、特に介在物処理の間、任意元素として本発明の鋼に添加される。カルシウムは、球状型の有害な硫黄内容物を捕捉し、それによって硫黄の有害な影響を遅らせることによって、鋼の微細化に寄与する。
【0050】
バナジウムは炭化物又は炭窒化物を形成して鋼の強度を高めるのに有効であり、経済的観点からその上限は0.1%である。セリウム、ホウ素、マグネシウム又はジルコニウム等の他の元素は、セリウム≦0.1%、ホウ素≦0.003%、マグネシウム≦0.010%及びジルコニウム≦0.010%の割合で個別に又は組み合わせて添加することができる。これらの元素は、示された最大含有量レベルまでは、凝固の間に結晶粒を微細化することを可能にする。鋼の組成の残余は、鉄及び加工に起因する不可避の不純物からなる。
【0051】
本発明の鋼によって使用されるストリンガーの組成は、以下のとおりである。
【0052】
第1のストリンガー及び第2のストリンガーは、重量パーセントで表される以下の元素、すなわち、0.001%≦C≦0.25%、0.2%≦Mn≦2%、0.01%≦Si≦2%、0.01%≦Cr≦1%、0.01%≦Al≦1%、0%≦S≦0.09%、0%≦P≦0.09%、0%≦N≦0.09%を含み、以下の任意元素、すなわち、0%≦Ni≦1%、0%≦Cu≦1%、0%≦Mo≦0.1%、0%≦Nb≦0.1%、0%≦Ti≦0.1%、0%≦V≦0.1%、0.0015%≦B≦0.005%、0%≦Sn≦0.1%、0%≦Pb≦0.1%、0%≦Sb≦0.1%、0%≦Ca≦0.1%の1種以上を含むことができ、残余の組成は鉄及び不可避の不純物から構成される。
【0053】
第1の鋼の組成は、重量パーセントで表される以下の元素、すなわち、0.1%≦C≦0.4%、0.2%≦Mn≦2%、0.4%≦Si≦2%、0.2%≦Cr≦1%、0.01%≦Al≦1%、0%≦S≦0.09%、0%≦P≦0.09%、0%≦N≦0.09%を含み、以下の任意元素、すなわち、0%≦Ni≦1%、0%≦Cu≦1%、0%≦Mo≦0.1%、0%≦Nb≦0.1%、0%≦Ti≦0.1%、0%≦V≦0.1%、0.0015%≦B≦0.005%、0%≦Sn≦0.1%、0%≦Pb≦0.1%、0%≦Sb≦0.1%、0%≦Ca≦0.1%の1種以上含むことができ、残余の組成は鉄及び加工に起因する不可避の不純物から構成される。
【0054】
マルテンサイト鋼板の微細組織は、以下から構成される。
【0055】
残留オーステナイト及びベイナイト成分は0%~25%の間の量で累積的に存在し、本発明の任意成分である。優先的に残留オーステナイト及びベイナイト成分の量は、5%~20%の間であることが有利である。残留オーステナイトは延性を与え、ベイナイト島は本発明の鋼に強度を与える。
【0056】
マルテンサイトは面積分率により微細組織の80%~100%を構成する。マルテンサイトは、鋼の複合コイルが焼鈍後320~480℃の間に冷却されるときに形成されることができ、320~480℃の間の温度範囲の間で行われる過時効保持中に焼戻され得る。マルテンサイトは本発明に延性及び強度を付与する。
【0057】
本発明の鋼は、微量から最大10%のフェライトを含む。フェライトは、本発明の一部であることを意図したものではなく、鋼の加工による残留微細組織として生じる。フェライト含有量はできるだけ低く保たなければならず、10%を超えてはならない。10%の成分割合までは、フェライトは本発明の鋼に延性を与えるが、フェライトの存在が10%を超えると、鋼部品の複合コイルの引張強さを低下させる可能性がある。
【0058】
上述の微細組織に加えて、第1の鋼板の微細構造はパーライト及びセメンタイトのような微細組織構成要素を含まない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【
図1】部分的に巻きを解かれた冷間圧延鋼板を示す。
【
図2】
図2は、ストリンガーの準備した幅100及びストリンガーとしての110を示す。
【
図3】
図3は、ストリンガーとの冷間圧延鋼板の溶接端部を示す。
【
図4】
図4は、溶接のために準備したストリンガー2の幅を示す。
【
図5】
図5は、全体を550として示す平坦な複合コイルの概略図を示す。
【
図6】
図6は、ストリンガー1をR1上に溶接する間に発達した亀裂を示す。
【実施例】
【0060】
ここに示される以下の試験、実施例、象徴的例示及び表は、本質的に非制限的であり、例示のみの目的で考慮されなければならず、本発明の有利な特徴を示す。
【0061】
異なった組成の第1の鋼を表1にまとめ、表1Aに、連続焼鈍を行う前の特定の炭素含有量及び引張強さを有する第1の鋼板、ストリンガー1及びストリンガー2の仕様を示し、表2には複合鋼板に実施された焼鈍パラメータを示す。その後、表3は、試行中に得られた第1の鋼板の微細組織をまとめ、表4は、第1の鋼板によって達成された機械的性質と同様に、複合コイルの得られた溶接特性の評価の結果をまとめた。
【0062】
【0063】
【0064】
<表2>
表2は、表1の第1の鋼にマルテンサイト鋼となるために必要な機械的性質を付与するために複合コイルに実施した焼鈍方法パラメータをまとめた。鋼組成I1~I3は、本発明によるマルテンサイト鋼板の製造に役立つ。この表はまた、表でR1~R3まで指定されている参考鋼板をも明記している。表2はMs及びAc3の作表も示している。Ms及びAc3は、本発明の鋼及び参考鋼について、以下のように規定される。
Ms(℃)=539-423C-30Mn-18Ni-12Cr-11Si-7Mo
Ac3=901-262*C-29*Mn+31*Si-12*Cr-155*Nb+86*Al
ここで、元素含有量を重量%で示す。
【0065】
表2は以下のとおりである。
【0066】
【0067】
表3:規格に従って実施された種々の機械的試験の結果をまとめた。溶接靭性を試験するために、ASTM E643-15に従ってオルセンカップ(Olsen cup)試験を行い、極限引張強度及び降伏強さを試験するために、JIS-Z2241に従って試験する。溶接した試料の溶接曲げ性の試験では、ソルトポット処理後に5インチ及び10インチ半径で15回の交互屈曲-非屈曲サイクルで屈曲させた。連続焼鈍サイクルは、ストリップが横切って移動しなければならない少なくとも15個のローラーを有するため、15回の交互の屈曲サイクルを使用した。
【0068】
【0069】
表4は、本発明の鋼及び参考鋼の両方の微細組織を面積分率で決定するために、走査型電子顕微鏡のような異なる顕微鏡に関する標準に従って行った試験の結果を例示する。さらに、本発明の方法の発明的特徴を説明するために、
図6は、ストリンガー1をR1上に溶接する間に発達した亀裂を示し、
図7は、亀裂が発達しない発明例を示す。
【0070】
結果を本明細書に明記する。
【0071】