(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】加工装置、これに用いられる制御装置及び加工装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B23D 79/06 20060101AFI20240408BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20240408BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20240408BHJP
B23Q 17/24 20060101ALI20240408BHJP
G05B 19/404 20060101ALN20240408BHJP
G05B 19/4155 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
B23D79/06
B23Q17/09 H
B25J13/08 Z
B23Q17/24 B
B25J13/08 A
G05B19/404 K
G05B19/4155 R
(21)【出願番号】P 2021533977
(86)(22)【出願日】2020-07-15
(86)【国際出願番号】 JP2020027559
(87)【国際公開番号】W WO2021015075
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2019136423
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 正
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-137551(JP,A)
【文献】特開平5-123921(JP,A)
【文献】特開2004-42164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 79/02-79/06;
B23Q 17/09,17/24;
B25J 13/08;
G05B 19/404,19/4155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物をきさげ加工する加工装置であって、
スクレイパーを駆動する駆動部と、
前記スクレイパーの
、加工開始点を基準位置とした前記被加工物の表面に平行な方向の変位を検出する第1の検出部と、
前記被加工物に対
して前記スクレイパー
が加える加工力を検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部により検出された前記スクレイパーの変位の情報を取得する第1の取得部と、
前記第2の検出部により検出された前
記加工力の情報を取得する第2の取得部と、
前記被加工物が前記スクレイパーにより正常に切削加工されたときの、前記スクレイパーの変位と加工力との相関関係を記憶する記憶部と、
前記第1の取得部が取得した前
記変位の情報と前記第2の取得部が取得した前
記加工力の情報とに基づいて、
前記第1の取得部が取得した前記変位と前記第2の取得部が取得した前記加工力との相関関係を前記記憶部に記憶された相関関係と一致させるように前記駆動部を制御する制御部と、を有することを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記きさげ加工は、前記被加工物の複数の異なる箇所に対する複数回の切削加工により行われる、請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
駆動部によりスクレイパーを駆動して被加工物をきさげ加工する加工装置に用いられる制御装置であって、
前記スクレイパーの
、加工開始点を基準位置とした前記被加工物の表面に平行な方向の変位の情報を取得する第1の取得部と、
前記被加工物に対
して前記スクレイパー
が加える加工力の情報を取得する第2の取得部と、
前記被加工物が前記スクレイパーにより正常に切削加工されたときの、前記スクレイパーの変位と加工力との相関関係を記憶する記憶部と、
前記第1の取得部が取得した前
記変位の情報と前記第2の取得部が取得した前
記加工力の情報とに基づいて、
前記第1の取得部が取得した前記変位と前記第2の取得部が取得した前記加工力との相関関係を前記記憶部に記憶された相関関係と一致させるように前記駆動部を制御する制御部と、を有することを特徴とする制御装置。
【請求項4】
駆動部によりスクレイパーを駆動して被加工物をきさげ加工する加工装置の制御方法であって、
前記スクレイパーの
、加工開始点を基準位置とした前記被加工物の表面に平行な方向の変位の情報を取得する第1の取得ステップと、
前記被加工物に対
して前記スクレイパー
が加える加工力の情報を取得する第2の取得ステップと、
前記被加工物が前記スクレイパーにより正常に切削加工されたときの、前記スクレイパーの変位と加工力との相関関係を記憶部に記憶する記憶ステップと、
前記第1の取得ステップにおいて取得した前
記変位の情報と前記第2の取得ステップにおいて取得した前
記加工力の情報とに基づいて、
前記第1の取得ステップで取得した前記変位と前記第2の取得ステップで取得した前記加工力との相関関係を前記記憶部に記憶された相関関係と一致させるように前記駆動部を制御する制御ステップと、を有することを特徴とする加工装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物をきさげ加工する加工装置、これに用いられる制御装置及び加工装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工作機械に用いられるガイドレールやスライダなどの、鋼材等の金属で形成された被加工物の摺動面となる加工表面に、きさげ加工を自動的に行う加工装置が知られている。
【0003】
例えば特許文献1には、バイブレータにより振動する刃先を備えたキサゲ工具(スクレイパー)と、キサゲ工具を把持するロボットアームと、被加工物の被加工面を撮影するカメラと、加工時にキサゲ工具が受ける反力を測定する力センサーとを備え、カメラにより検出した被加工面の多数の凸部をロボットアームによって駆動されるキサゲ工具により切削加工するとともに、当該加工を、キサゲ工具が受ける反力がなくなるまで行うように構成された加工装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された従来の加工装置では、力センサーにより検出される反力のみをフィードバック信号としてロボットアームによるキサゲ工具の動作を制御するようにしている。そのため、キサゲ工具が凸部の切削加工を行っている間に、キサゲ工具が被加工物の被加工面に引っ掛かりを生じて動きが止まった場合であっても、力センサーにより反力が検出されることから当該引っ掛かりの発生を検知することができず、そのまま加工が継続されることにより、キサゲ工具により被加工物の被加工面の一部が深く削られてしまう、という問題が生じるおそれがあった。キサゲ工具により被加工物の被加工面の一部が深く削られてしまうと、当該被加工面の全面をきさげ加工し直して再度平面出しを行う必要があり、著しく生産性が低下することになる。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みて成されたものであり、その目的は、被加工物を精度よくきさげ加工することが可能な加工装置、これに用いられる制御装置及び加工装置の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加工装置は、被加工物をきさげ加工する加工装置であって、スクレイパーを駆動する駆動部と、前記スクレイパーの、加工開始点を基準位置とした前記被加工物の表面に平行な方向の変位を検出する第1の検出部と、前記被加工物に対して前記スクレイパーが加える加工力を検出する第2の検出部と、前記第1の検出部により検出された前記スクレイパーの変位の情報を取得する第1の取得部と、前記第2の検出部により検出された前記加工力の情報を取得する第2の取得部と、前記被加工物が前記スクレイパーにより正常に切削加工されたときの、前記スクレイパーの変位と加工力との相関関係を記憶する記憶部と、前記第1の取得部が取得した前記変位の情報と前記第2の取得部が取得した前記加工力の情報とに基づいて、前記第1の取得部が取得した前記変位と前記第2の取得部が取得した前記加工力との相関関係を前記記憶部に記憶された相関関係と一致させるように前記駆動部を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の加工装置は、上記構成において、前記きさげ加工は、前記被加工物の複数の異なる箇所に対する複数回の切削加工により行われるのが好ましい。
【0014】
本発明の制御装置は、駆動部によりスクレイパーを駆動して被加工物をきさげ加工する加工装置に用いられる制御装置であって、前記スクレイパーの、加工開始点を基準位置とした前記被加工物の表面に平行な方向の変位の情報を取得する第1の取得部と、前記被加工物に対して前記スクレイパーが加える加工力の情報を取得する第2の取得部と、前記被加工物が前記スクレイパーにより正常に切削加工されたときの、前記スクレイパーの変位と加工力との相関関係を記憶する記憶部と、前記第1の取得部が取得した前記変位の情報と前記第2の取得部が取得した前記加工力の情報とに基づいて、前記第1の取得部が取得した前記変位と前記第2の取得部が取得した前記加工力との相関関係を前記記憶部に記憶された相関関係と一致させるように前記駆動部を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の加工装置の制御方法は、駆動部によりスクレイパーを駆動して被加工物をきさげ加工する加工装置の制御方法であって、前記スクレイパーの、加工開始点を基準位置とした前記被加工物の表面に平行な方向の変位の情報を取得する第1の取得ステップと、前記被加工物に対して前記スクレイパーが加える加工力の情報を取得する第2の取得ステップと、前記被加工物が前記スクレイパーにより正常に切削加工されたときの、前記スクレイパーの変位と加工力との相関関係を記憶部に記憶する記憶ステップと、前記第1の取得ステップにおいて取得した前記変位の情報と前記第2の取得ステップにおいて取得した前記加工力の情報とに基づいて、前記第1の取得ステップで取得した前記変位と前記第2の取得ステップで取得した前記加工力との相関関係を前記記憶部に記憶された相関関係と一致させるように前記駆動部を制御する制御ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被加工物を精度よくきさげ加工することが可能な加工装置、これに用いられる制御装置及び加工装置の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態の加工装置の構成を概略で示す説明図である。
【
図2A】スクレイパーの変位と時間との相関関係を示す特性線図である。
【
図2B】スクレイパーの加工力と時間との相関関係を示す特性線図である。
【
図2C】スクレイパーの変位と加工力との相関関係を示す特性線図である。
【
図3】
図1に示す第1実施形態の加工装置の制御手順を示すフローチャート図である。
【
図4】
図3におけるワーク接触検出の制御手順を示すフローチャート図である。
【
図5】本発明の第2実施形態の加工装置の構成を概略で示す説明図である。
【
図6A】カム角度と時間との相関関係を示す特性線図である。
【
図6B】スクレイパーの変位と時間との相関関係を示す特性線図である。
【
図6C】スクレイパーの加工力と時間との相関関係を示す特性線図である。
【
図6D】スクレイパーの変位と加工力との相関関係を示す特性線図である。
【
図7】
図5に示す第2実施形態の加工装置の制御手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1に示す本発明の第1実施形態の加工装置1は、鋼材等の金属で形成された被加工物としてのワーク2の被加工面2aに、きさげ加工を自動的に行うものである。
【0019】
加工装置1は、切削工具であるスクレイパー3により、架台等の上に設置されたワーク2の被加工面2aにある微小な凹凸の凸部を、適度に凹部を残すように切削加工するとともに当該切削加工を被加工面2aの全体の凸部(被加工面2aの複数の異なる箇所にある複数の凸部)に対して行うことで、被加工面2aにきさげ加工が行なわれるように構成されている。加工装置1によりきさげ加工されるワーク2は、例えば、工作機械に用いられるガイドレール、スライダなどの摺動面を有する金属(鋼材)製の部材とすることができる。
【0020】
本実施の形態においては、スクレイパー3がワーク2の被加工面2aの凸部を切削加工する際の、ワーク2に対するスクレイパー3の送り方向をY軸方向とし、ワーク2の被加工面2aに垂直な方向(上下方向)をZ軸方向とし、Y軸方向及びZ軸方向に垂直な方向をX軸方向とする。
【0021】
加工装置1は、スクレイパー3を駆動する駆動部として、基台4に支持されたロボットアーム10を備えている。
【0022】
ロボットアーム10は、一対のアーム部10a、10bと3つの回動部10c、10d、10eを備えた多関節ロボットである。アーム部10aは回動部10cにより基台4に回動自在に連結されており、アーム部10bは回動部10dによりアーム部10aに回動自在に連結されている。スクレイパー3は長板状となっており、根本側の部分においてアーム部10bの先端(保持部)に固定保持されており、回動部10eを中心としてアーム部10bに対して回動自在となっている。ロボットアーム10は、各回動部10c、10d、10eをサーボモータ等の駆動源によって回動させ、スクレイパー3を保持するアーム部10bの先端(保持部)の水平方向の位置及び高さを変更することで、スクレイパー3を駆動してY軸方向(送り方向)及びZ軸方向(上下方向)に移動させることができる。このような構成のロボットアーム10は、スクレイパー3を切削動作させることができる。また、ロボットアーム10は、切削動作とは別に、スクレイパー3を上下方向に移動させて切削動作におけるスクレイパー3の高さ(ワーク2に対する切り込み量)を調整することもできる。なお、切削動作におけるスクレイパー3の高さは、スクレイパー3の、ロボットアーム10の保持部に保持された部分の高さとすることができる。切削動作における、スクレイパー3の、ロボットアーム10の保持部に保持された部分の高さを変更することで、刃先3aがワーク2の被加工面2aに接触した状態のスクレイパー3の刃先3aと保持部との間における撓み量を変更して、刃先3aのワーク2に対する切り込み量を微調整することができる。
【0023】
加工装置1は、第1の検出部として、スクレイパー撮影用のカメラ20を備えている。カメラ20は基台4に取り付けられている。カメラ20は、ロボットアーム10により駆動されて移動するスクレイパー3を撮影し、撮影した画像データから、画像認識等の技術を用いて、スクレイパー3の基準位置からの変位(実際の位置)を検出することができる。本実施の形態では、カメラ20は、スクレイパー3の基準位置(加工開始点)からの、ワーク2の表面に平行なY軸方向への変位を検出する。この場合、スクレイパー3の変位の基準位置は、例えばスクレイパー3が切削動作する前に被加工面2aに最初に接触したときの、X-Y平面における位置(座標としてX軸方向成分及びY軸方向成分を含んだ位置)に設定することができる。カメラ20は、Y軸方向に加えて、スクレイパー3の基準位置からのZ軸方向への変位及びX軸方向への変位を検出する構成とすることもできる。この場合、スクレイパー3の変位の基準位置は、座標としてX軸方向成分、Y軸方向成分に加えてZ軸方向成分を含んだ位置に設定することができる。
【0024】
加工装置1は、第2の検出部として、力覚センサー30を備えている。力覚センサー30は、ワーク2に対するスクレイパー3の加工力を検出することができる。本実施の形態では、力覚センサー30として、ワーク2に対するスクレイパー3のY軸方向及びZ軸方向の加工力を検出することができるものが用いられている。
【0025】
加工装置1はワーク撮影用のカメラ40を備えている。カメラ40は支持枠5の柱部分5bに取り付けられており、ワーク2の被加工面2aの全面を撮影し、撮影した画像データから、画像認識等の技術を用いて、被加工面2aの凸部の位置(スクレイパー3による切削加工を行うべき切削ポイント)を検出することができる。
【0026】
加工装置1は基台4を移動させるための移動機構50を有している。移動機構50は、支持枠5のレール部分5aに沿って移動する移動体50aを有しており、移動体50aに基台4が取り付けられている。移動機構50は、移動体50aをレール部分5aに沿って移動させることで、基台4をY軸方向に移動させることができる。すなわち、移動機構50は、被加工面2aの各切削ポイントに向けて、ロボットアーム10に駆動されるスクレイパー3をロボットアーム10及びカメラ20とともに一括にY軸方向に移動させることができる。
【0027】
移動機構50は、基台4及びロボットアーム10を、Y軸方向に加えてX軸方向にも移動させる構成(例えばX-Yテーブル機構)とすることもできる。これにより、ロボットアーム10に駆動されるスクレイパー3を、ワーク2の被加工面2aの全面の任意の切削ポイントに移動させることができる。また、移動機構50は、移動体50aに対して基台4をZ軸回りに回転させる回転機構を備えた構成とすることもできる。これにより、ロボットアーム10に駆動されるスクレイパー3の切削方向(移動方向)を変更可能として、ワーク2の被加工面2aの任意の位置を、任意の方向から切削可能な構成とすることができる。
【0028】
加工装置1は制御装置60を備えている。ロボットアーム10、カメラ20、力覚センサー30、カメラ40及び移動機構50は、それぞれ制御装置60に接続されている。
【0029】
制御装置60は、第1の取得部60a、第2の取得部60b、制御部60c及び記憶部60dを有している。
【0030】
第1の取得部60aは、カメラ20から入力されるデータに基づいて、スクレイパー3の変位の情報(位置の情報)を取得することができる。制御装置60は、第1の取得部60aが取得したスクレイパー3の変位の情報に基づいて、
図2Aに示すような、スクレイパー3の基準位置からのY軸方向への変位と時間との相関関係を認識することができる。
【0031】
第2の取得部60bは、力覚センサー30から入力されるデータに基づいて、ワーク2に対するスクレイパー3の加工力の情報を取得することができる。制御装置60は、第2の取得部60bが取得したスクレイパー3の加工力の情報に基づいて、
図2Bに示すような、ロボットアーム10により駆動されて切削動作するスクレイパー3の加工力と時間との相関関係を認識することができる。
【0032】
また、制御装置60は、スクレイパー3が切削動作する前に被加工面2aに最初に接触したときに、第2の取得部60bが当該接触圧を加工力として認識することにより、スクレイパー3の基準位置の設定を行うことができる。
【0033】
さらに、制御装置60は、
図2Aに示されるスクレイパー3の変位と時間との相関関係と、
図2Bに示すスクレイパー3の加工力と時間との相関関係とに基づいて、
図2Cに示すようなスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を認識することができる。
図2Cには、スクレイパー3が正常にワーク2の切削加工を行ったときの、スクレイパー3の変位と加工力との相関関係を示す。
図2Cに示す特性線図において、相関関係を示す破線よりも上方側は、スクレイパー3がワーク2に対して引っ掛かりや深堀りを生じるなどして、正常時に対して変位が加工力に対して小さくなった領域であり、相関関係を示す破線よりも下方側は、スクレイパー3がワーク2に対して空振りや浅堀りを生じるなどして、正常時に対して加工力が変位に対して小さくなった領域である。
【0034】
制御部60cは、スクレイパー3に切削動作を行わせるように、ロボットアーム10の作動を制御することができる。
【0035】
記憶部60dは、カメラ20、力覚センサー30、カメラ40などから入力されるデータ、制御部60cがスクレイパー3を切削動作させるようにロボットアーム10を制御するためのプログラム、制御部60cにより演算された演算結果等のデータなどを記憶することができる。また、記憶部60dは、ロボットアーム10に駆動されるスクレイパー3によってワーク2の被加工面2aの凸部が正常に切削加工されたときに、当該切削加工の際のスクレイパー3の基準位置に対する変位と加工力との相関関係を、正常な相関関係として記憶することができる。
【0036】
本実施の形態の加工装置1では、制御部60cは、スクレイパー3に切削動作を行わせるロボットアーム10の作動制御において、カメラ20により検出されたスクレイパー3の変位と力覚センサー30により検出されたスクレイパー3の加工力とに基づいて、スクレイパー3がワーク2の切削加工を行っている間、スクレイパー3が加工力を発生し且つ移動し続けるように、ロボットアーム10の作動を制御するようになっている。
【0037】
制御部60cによる当該制御は、第1の取得部60aが取得したスクレイパー3の変位の情報と第2の取得部60bが取得したスクレイパー3の加工力の情報とに基づいて、スクレイパー3の変位及び加工力が所定の関係を満たすように、ロボットアーム10の作動を制御することにより行われる。
【0038】
より具体的には、制御部60cは、切削加工を行っているときに、カメラ20により検出されるスクレイパー3の変位の情報と力覚センサー30により検出されるスクレイパー3の加工力の情報とから得られるスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を、記憶部60dに記憶されている、正常に切削加工が行われたときのスクレイパー3の変位と加工力との相関関係と一致させるように、ロボットアーム10の作動を制御することにより行われる。
【0039】
上記制御においては、制御部60cは、ワーク2の被加工面2aに対するスクレイパー3の高さを変更するようにロボットアーム10の作動を制御することで、切削加工を行っているときのスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を、記憶部60dに記憶された正常時の相関関係と一致させるように調整する。
【0040】
例えば、制御部60cは、切削加工を行っているときのスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、記憶部60dに記憶された正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、スクレイパー3の変位が加工力に対して小さくなる方向に変化しているときには、スクレイパー3がワーク2に対して引っ掛かりないし深堀を生じていると判断して、ワーク2の被加工面2aに対するスクレイパー3の高さを上げるようにロボットアーム10の作動を制御する。スクレイパー3の高さを上げることにより、例えばワーク2から受ける反力によるスクレイパー3の撓みを小さくし、これによりスクレイパー3の刃先3aのワーク2に対する切り込み量ないし押付け力を低減して、スクレイパー3のワーク2に対する引っ掛かりないし深堀を解消することができる。当該制御は、切削加工を行っているスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、記憶部60dに記憶された相関関係と一致するまで、繰り返し実行される。
【0041】
反対に、制御部60cは、切削加工を行っているときのスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、記憶部60dに記憶された正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、スクレイパー3の加工力が変位に対して小さくなる方向に変化しているときには、スクレイパー3がワーク2に対して空振りないし浅堀を生じていると判断して、ワーク2の被加工面2aに対するスクレイパー3の高さを下げるようにロボットアーム10の作動を制御する。スクレイパー3の高さを下げることにより、例えば、ワーク2から受ける反力によるスクレイパー3の撓みを大きくし、これによりスクレイパー3の刃先3aのワーク2に対する切り込み量ないし押付け力を増加させて、スクレイパー3のワーク2に対する空振りないし浅堀を解消することができる。当該制御は、切削加工を行っているスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、記憶部60dに記憶された相関関係と一致するまで、繰り返し実行される。
【0042】
上記制御においては、制御部60cは、スクレイパー3を保持するアーム部10bの先端(保持部)の高さを変更するようにロボットアーム10の作動を制御することで、ワーク2の被加工面2aに対するスクレイパー3の高さを変更する構成とすることができる。これにより、先端においてワーク2の被加工面2aに当接したスクレイパー3の撓り量(撓み量)を変えて加工力を変更することができるので、スクレイパー3によるワーク2の加工力を微調整することが可能となる。また、上記制御においては、制御部60cは、スクレイパー3の刃先3aがワーク2の被加工面2aに接触した状態に維持される範囲でスクレイパー3を保持するアーム部10bの先端(保持部)の高さを変更するように、ロボットアーム10の作動を制御する構成とすることができる。
【0043】
なお、制御部60cは、切削加工を行っているときのスクレイパー3の変位と加工力との相関関係と、記憶部60dに記憶された相関関係とを完全に一致させるようにロボットアーム10の作動を制御する構成に限らず、切削加工を行っているときのスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、記憶部60dに記憶された正常時の相関関係に対して、予め設定した所定範囲内となるようにロボットアーム10の作動を制御する構成とすることもできる。
【0044】
次に、上記構成の加工装置1の、ワーク2の被加工面2aをきさげ加工する制御手順ないし制御方法について説明する。
【0045】
図3に示すように、まず制御部60cは、移動機構50により基台4を駆動して、ロボットアーム10、スクレイパー3及びカメラ20を基台4とともに最初の切削ポイントに移動させる(ステップS1)。
【0046】
次に、制御部60cは、スクレイパー3の刃先3aがワーク2の被加工面2aに接触したことを検出するワーク接触検出を実行する(ステップS2)。ワーク接触検出は、
図4に示すように、制御部60cが、ロボットアーム10を作動させてスクレイパー3を被加工面2aに向けて降下させ(ステップS3)、次いで、制御装置60の第2の取得部60bが力覚センサー30からの加工力の情報を取得し(ステップS4)、第2の取得部60bが力覚センサー30からの加工力の情報を取得して制御部60cにより加工力が発生したと判断(ステップS5)されたときに、制御部60cが、スクレイパー3の刃先3aがワーク2の被加工面2aに接したと判断することで実行される。制御部60cは、スクレイパー3の刃先3aがワーク2の被加工面2aに接したと判断すると、スクレイパー3の降下を停止してワーク接触検出を終了する。
【0047】
ワーク接触検出により、スクレイパー3の刃先3aがワーク2の被加工面2aに接したと判断されると、制御部60cは、このときのスクレイパー3の位置を基準位置として認識する。
【0048】
次に、
図3に示すように、制御部60cは、ロボットアーム10によりスクレイパー3を駆動して、スクレイパー3による被加工面2aの凸部に対する切削加工を開始する(ステップS6)。切削加工においては、制御部60cが、スクレイパー3をY軸方向にのみ移動させてワーク2の被加工面2aの凸部を切削させるようにしてもよく、スクレイパー3を、ワーク2の被加工面2aの凸部をすくいとるようにY軸方向に移動させつつ上下方向に移動させるようにしてもよい。
【0049】
スクレイパー3による被加工面2aの凸部に対する切削加工が開始されると、第1の取得部60aがカメラ20により検出されたスクレイパー3の変位を取得するとともに、第2の取得部60bが力覚センサー30により検出されたスクレイパー3の加工力を取得する(ステップS7)。ステップS7におけるスクレイパー3の変位と加工力の取得は、ステップS6においてスクレイパー3による被加工面2aの凸部に対する切削加工が開始されてから当該切削加工が終了するまでの間、所定時間毎に繰り返し継続して行われる。
【0050】
次に、制御部60cは、ステップS6で開始した切削加工が正常に行われたか否かを判断する(ステップS8)。当該判断は、制御部60cが、ステップS7で同時取得したスクレイパー3の変位及び加工力を、実験等で得た正常の切削加工において同時取得したスクレイパー3の変位及び加工力と比較して判断してもよく、作業者等が被加工面2aの切削部分を目視で確認して判断するようにしてもよい。
【0051】
制御部60cは、ステップS8において、切削加工が正常に行われたと判断した場合には、当該切削加工において同時取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を、正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係として記憶部60dに記録する(ステップS9)。
【0052】
なお、制御部60cは、ステップS8において、切削加工が正常に行われたと判断しない場合には、ステップS1に戻り、切削加工が正常に行われたと判断されるまでステップS1~S7が繰り返し行なう。
【0053】
正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が記憶部60dに記録(記憶)されると、次に、制御部60cは、移動機構50により基台4を駆動して、ロボットアーム10、スクレイパー3及びカメラ20を基台4とともに次の切削ポイントに移動させる(ステップS10)。
【0054】
そして、制御部60cは、ステップS2と同様のワーク接触検出(ステップS11)を行ってスクレイパー3の基準位置を設定した後、当該切削ポイントで、スクレイパー3による被加工面2aの凸部に対する切削加工を開始する(ステップS12)。この切削加工においても、制御部60cが、スクレイパー3をY軸方向にのみ移動させてワーク2の被加工面2aの凸部を切削させるようにしてもよく、スクレイパー3を、ワーク2の被加工面2aの凸部をすくいとるようにY軸方向に移動させつつ上下方向に移動させるようにしてもよい。
【0055】
ステップS12において切削加工が開始されると、第1の取得部60aが第1の取得ステップとしてカメラ20により検出されたスクレイパー3の位置ないし変位を取得するとともに、第2の取得部60bが第2の取得ステップとして力覚センサー30により検出されたスクレイパー3の加工力を取得する(ステップS13)。
【0056】
次に、制御部60cは、ステップS13で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS9で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、ずれているか否かを判断する(ステップS14)。
【0057】
制御部60cは、ステップS14において、ステップS13で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS9で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、ずれを生じていると判断すると、次に、当該ずれが、加工力よりも変位が小さくなる方向にずれているか否かを判断する(ステップS15)。
【0058】
そして、制御部60cは、ステップS15において、ステップS13で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS9で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、加工力よりも変位が小さくなる方向にずれていると判断した場合には、スクレイパー3の高さを上げる方向にロボットアーム10の作動を制御する(ステップS16)。反対に、制御部60cは、ステップS15において、ステップS13で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS9で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、加工力よりも変位が小さくなる方向にずれているとは判断しない場合には、スクレイパー3の高さを下げる方向にロボットアーム10の作動を制御する(ステップS17)。ステップS16、S17においては、制御部60cは、スクレイパー3の刃先3aがワーク2の被加工面2aに接触した状態に維持される範囲でスクレイパー3を保持するアーム部10bの先端(保持部)の高さを変更するように、ロボットアーム10の作動を制御する。当該制御は、制御部60cが、ステップS14において、ステップS13で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS9で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、ずれを生じていないと判断するまで繰り返し実行する。
【0059】
制御部60cは、上記のステップS14~S17からなる制御ステップを行った後、さらにスクレイパー3による切削加工を継続し(ステップS18)、ステップS19において制御部60cが、切削加工が終了したと判断するまで、ステップS14~S18を繰り返し実行する。
【0060】
制御部60cは、ステップS19において切削加工が終了したと判断すると、ステップS20においてワーク2の被加工面2aの全面の複数の異なる箇所に対する複数回の切削加工が終了したと判断するまで、ステップS10~S19を繰り返し実行する。そして、制御部60cは、ステップS20において、ワーク2の被加工面2aの全面の複数の異なる箇所に対する複数回の切削加工が終了したと判断すると、きさげ加工を終了する。
【0061】
このように、本実施の形態の加工装置1では、カメラ20で検出したスクレイパー3の変位と力覚センサー30で検出したスクレイパー3の加工力とに基づいて、きさげ加工を行っている間、スクレイパー3が加工力を発生し且つ移動し続けるように、制御装置60によりロボットアーム10を制御するようにしたので、スクレイパー3がワーク2に対して引っ掛かりを生じても、これを検知し、スクレイパー3のワーク2に対する引っ掛かりを解消するようにロボットアーム10を制御することができる。これにより、スクレイパー3によりワーク2が不意に深堀りされることを防止して、ワーク2を精度よくきさげ加工することができる。
【0062】
また、本実施の形態の加工装置1では、ワーク2がスクレイパー3により正常に切削加工されたときの、スクレイパー3の変位と加工力との相関関係を記憶部60dに記録し、その後の切削加工においては、カメラ20により検出されたスクレイパー3の変位と力覚センサー30により検出されたスクレイパー3の加工力とから得たスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を、記憶部60dに記憶された正常時の相関関係と一致させるように、ロボットアーム10を制御するようにしたので、上記制御を簡単な構成で精度よく行うことができる。
【0063】
さらに、本実施の形態の加工装置1では、ワーク2の被加工面2aに対するスクレイパー3の高さを変更するようにロボットアーム10の作動を制御することで、カメラ20により検出されたスクレイパー3の変位と力覚センサー30により検出されたスクレイパー3の加工力とから得たスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を、記憶部60dに記憶された相関関係と一致させるようにしたので、簡単な構成で精度よくスクレイパー3のワーク2に対する引っ掛かりや深堀りを防止することができるとともに、スクレイパー3のワーク2に対する空振りや浅堀りを簡単な構成で精度よく防止することもできる。
【0064】
図5は、本発明の第2実施形態の加工装置100の構成を概略で示す説明図である。なお、
図5において、前述した部材に対応する部材には同一の符号を付してある。
【0065】
図5に示す第2実施形態の加工装置100は、スクレイパー3を駆動する駆動部として、加工装置1におけるロボットアーム10に代えて、カム機構101とボールネジ機構102とを備えた駆動装置103を備えている。
【0066】
駆動装置103は支持体104を有し、カム機構101は支持体104に設けられている。スクレイパー3は先端に刃先3aを有する真っ直ぐな棒状となっており、刃先3aをワーク2の被加工面2aに向けた姿勢で支持体104のガイド部104aに支持されている。スクレイパー3は、ガイド部104aに案内されて、その軸方向に進退移動自在である。スクレイパー3の刃先3aとは反対側の基端には板状体3bが固定されており、板状体3bとガイド部104aとの間にはスプリング105が配置されている。スプリング105は、スクレイパー3を、その刃先3aがワーク2の被加工面2aから離れる方向に付勢している。
【0067】
カム機構101は、支持体104に回転自在に支持されたカム101aを有している。カム101aは板状体3bに当接している。カム101aは駆動軸101bに固定されており、駆動軸101bが電動モータ等の駆動源101cにより回転駆動されることで、駆動軸101bを中心として回転するようになっている。カム101aが回転すると、スクレイパー3は軸方向に沿って前後方向に移動する。
【0068】
ボールネジ機構102は基台4と支持体104との間に設けられており、基台4に対して支持体104を上下方向に移動させることができる。
【0069】
カム機構101の駆動源101c及びボールネジ機構102は、それぞれ制御装置60に接続され、制御装置60によりその作動が制御される。制御装置60は、カム機構101によりスクレイパー3を進出方向に移動させつつボールネジ機構102によりスクレイパー3の高さを調整するように、カム機構101の駆動源101c及びボールネジ機構102を制御する。当該制御により、スクレイパー3に切削動作を行わせることができる。
【0070】
また、制御装置60は、ボールネジ機構102の作動を制御して、切削動作とは別に、スクレイパー3を上下方向に移動させて切削動作におけるスクレイパー3の高さ(ワーク2に対する切り込み量)を調整することもできる。
【0071】
図6Aに示すように、カム101aのカム角度(回転角度)が時間に比例して増加する。これに対し、
図1の加工装置1と同様に、制御装置60は、第1の取得部60aが取得したスクレイパー3の位置の情報に基づいて、
図6Bに示すような、スクレイパー3の基準位置からのY軸方向への変位と時間との相関関係と、
図6Cに示すような、スクレイパー3の加工力と時間との相関関係を認識することができるとともに、これらの相関関係に基づいて、
図6Dに示すようなスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を認識することができる。この場合においても、
図6Dに示す特性線図において、相関関係を示す破線よりも上方側は、スクレイパー3がワーク2に対して引っ掛かりや深堀りを生じるなどして、正常時の相関関係に対して変位が加工力に対して小さくなった領域であり、相関関係を示す破線よりも下方側は、スクレイパー3がワーク2に対して空振りや浅堀りを生じるなどして、正常時の相関関係に対して加工力が変位に対して小さくなった領域である。
【0072】
次に、第2実施形態の加工装置100の、ワーク2の被加工面2aをきさげ加工する制御手順ないし制御方法について説明する。
【0073】
図7に示すように、まず制御部60cは、移動機構50により基台4を駆動して、駆動装置103、スクレイパー3及びカメラ20を基台4とともに最初の切削ポイントに移動させる(ステップS1)。
【0074】
次に、制御部60cは、カム101aの回転を開始させ、駆動装置103によりスクレイパー3を駆動させて、スクレイパー3による被加工面2aの凸部に対する切削加工を開始する(ステップS2)。
【0075】
なお、ステップS1とステップS2との間に、
図4に示すワーク接触検出を実行するようにしてもよい。
【0076】
スクレイパー3による被加工面2aの凸部に対する切削加工が開始されると、第1の取得部60aがカメラ20により検出されたスクレイパー3の変位を取得するとともに、第2の取得部60bが力覚センサー30により検出されたスクレイパー3の加工力を取得する(ステップS3)。ステップS3におけるスクレイパー3の変位と加工力の取得は、ステップS2においてスクレイパー3による被加工面2aの凸部に対する切削加工が開始されてから当該切削加工が終了するまでの間、所定時間毎に繰り返し継続して行われる。
【0077】
次に、制御部60cは、ステップS2で開始した切削加工が正常に行われたか否かを判断する(ステップS4)。当該判断は、制御部60cが、ステップS3で同時取得したスクレイパー3の変位と加工力とを、実験等で得た正常の切削加工において同時取得したスクレイパー3の変位と加工力と比較して判断してもよく、作業者等が被加工面2aの切削部分を目視で確認して判断するようにしてもよい。
【0078】
制御部60cは、ステップS4において、切削加工が正常に行われたと判断した場合には、当該切削加工において同時取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を、正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係として記憶部60dに記録する(ステップS5)。
【0079】
なお、制御部60cは、ステップS4において、切削加工が正常に行われたと判断しない場合には、ステップS1に戻り、切削加工が正常に行われたと判断されるまでステップS1~S3が繰り返し行なう。
【0080】
正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が記憶部60dに記録されると、次に、制御部60cは、移動機構50により基台4を駆動して、駆動装置103、スクレイパー3及びカメラ20を基台4とともに次の切削ポイントに移動させる(ステップS6)。そして、制御部60cは、当該切削ポイントで、カム101aの回転を開始して、スクレイパー3による被加工面2aの凸部に対する切削加工を開始する(ステップS7)。
【0081】
ステップS7において切削加工が開始されると、第1の取得部60aが第1の取得ステップとしてカメラ20により検出されたスクレイパー3の変位を取得するとともに、第2の取得部60bが第2の取得ステップとして力覚センサー30により検出されたスクレイパー3の加工力を取得する(ステップS8)。
【0082】
次に、制御部60cは、ステップS8で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS5で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、ずれているか否かを判断する(ステップS9)。
【0083】
制御部60cは、ステップS9において、ステップS8で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS5で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、ずれを生じていると判断すると、次に、当該ずれが、加工力よりも変位が小さくなる方向にずれているか否かを判断する(ステップS10)。
【0084】
そして、制御部60cは、ステップS10において、ステップS8で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS5で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、加工力よりも変位が小さくなる方向にずれていると判断した場合には、スクレイパー3の高さを上げる方向に駆動装置103のボールネジ機構102の作動を制御する(ステップS11)。反対に、制御部60cは、ステップS10において、ステップS8で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS5で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、加工力よりも変位が小さくなる方向にずれているとは判断しない場合には、スクレイパー3の高さを下げる方向に駆動装置103のボールネジ機構102の作動を制御する(ステップS12)。当該制御は、制御部60cが、ステップS9において、ステップS8で取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係が、ステップS5で記録した正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係に対して、ずれを生じていないと判断するまで繰り返し実行する。
【0085】
制御部60cは、上記のステップS9~S12からなる制御ステップを行った後、さらにスクレイパー3による切削加工(カム101aの回転)を継続し(ステップS13)、ステップS14において、制御部60cが、カム101aの回転角度が180度となって切削加工が終了したと判断するまで、ステップS9~S13を繰り返し実行する。
【0086】
制御部60cは、ステップS13において切削加工が終了したと判断すると、ステップS15においてカム101aをカム角度180度から360度にまで回転させてスクレイパー3を元の位置に引き戻す(ステップS15)。
【0087】
制御部60cは、ワーク2の被加工面2aの全面の複数の異なる箇所に対する複数回の切削加工が終了したと判断するまで、ステップS6~S15を繰り返し実行し、ステップS16においてワーク2の被加工面2aの全面の複数の異なる箇所に対する複数回の切削加工が終了したと判断すると、きさげ加工を終了する。
【0088】
このような本実施の形態の第2実施形態の加工装置100においても、カメラ20で検出したスクレイパー3の変位と力覚センサー30で検出したスクレイパー3の加工力とに基づいて、きさげ加工を行っている間、スクレイパー3が加工力を発生し且つ移動し続けるように、制御装置60により駆動装置103の作動を制御するようにしたので、スクレイパー3がワーク2に対して引っ掛かりを生じても、これを検知し、スクレイパー3のワーク2に対する引っ掛かりを解消するように駆動装置103を制御することができる。これにより、スクレイパー3によりワーク2が不意に深堀りされることを防止して、ワーク2を精度よくきさげ加工することができる。
【0089】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0090】
例えば、前記実施の形態では、第1の検出部としてカメラ20を用いるようにしているが、これに限らず、例えばスクレイパー3に第1の検出部として加速度センサーを固定し、当該加速度センサーの検出データからスクレイパー3の実際の位置を認識する構成とするなど、スクレイパー3の実際の位置を検出することができるものであれば、第1の検出部として種々の構成のものを用いることができる。
【0091】
また、前記実施の形態では、第2の検出部として、ワーク2に対するスクレイパー3のY軸方向及びZ軸方向の加工力を検出する力覚センサー30を用いるようにしているが、これに限らず、例えばスクレイパー3のY軸方向、Z軸方向及びX軸方向の3軸の加工力を検出することができるものなど、ワーク2に対するスクレイパー3の加工力を検出することができれば、種々の構成のものを用いることができる。
【0092】
さらに、前記実施の形態では、力覚センサー30をワーク2に固定するようにしているが、これに限らず、力覚センサー30をスクレイパー3に固定するようにしてもよい。
【0093】
さらに、前記実施の形態では、最初の切削加工が正常に行われたと判断された場合に、当該切削加工において同時取得したスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を、正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係として記憶部60dに記録するようにしているが、これに限らず、予め実験等を行うことで得た正常時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係、あるいは過去に実施した切削加工時のスクレイパー3の変位と加工力との相関関係を予め記憶部60dに記憶させておき、これらの相関関係を正常時の相関関係として使用するようにしてもよい。
【0094】
さらに、前記実施の形態では、スクレイパー3の変位と加工力との相関関係を得るための変位として、スクレイパー3のY軸方向の変位を用いるようにしているが、これに限らず、当該変位として、Z軸方向の変位を用いてもよく、Y軸方向の変位とZ軸方向の変位を合成した変位を用いてもよい。
【0095】
さらに、前記実施の形態では、駆動部として、ロボットアーム10及び駆動装置103を例示したが、これらに限らず、スクレイパー3を駆動して切削動作させることができるものであれば、駆動部として、ロボットアーム10及び駆動装置103以外の種々の構成のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 加工装置
2 ワーク(被加工物)
2a 被加工面
3 スクレイパー
3a 刃先
3b 板状体
4 基台
5 支持枠
5a レール部分
5b 柱部分
10 ロボットアーム(駆動部)
10a アーム部
10b アーム部
10c 回動部
10d 回動部
10e 回動部
20 カメラ(第1の検出部)
30 力覚センサー(第1の検出部)
40 カメラ
50 移動機構
50a 移動体
60 制御装置
60a 第1の取得部
60b 第2の取得部
60c 制御部
60d 記憶部
100 加工装置
101 カム機構
101a カム
101b 駆動軸
101c 駆動源
102 ボールネジ機構
103 駆動装置(駆動部)
104 支持体
104a ガイド部
105 スプリング