(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ショベル
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
E02F9/00 D
(21)【出願番号】P 2021535364
(86)(22)【出願日】2020-07-28
(86)【国際出願番号】 JP2020028940
(87)【国際公開番号】W WO2021020405
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019138859
(32)【優先日】2019-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502246528
【氏名又は名称】住友建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 信行
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-280289(JP,A)
【文献】特開平11-013607(JP,A)
【文献】特開2003-003899(JP,A)
【文献】特開平10-089119(JP,A)
【文献】国際公開第2019/112063(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部旋回体と、
走行用油圧モータによって駆動される下部走行体と、
エンジンを停止させる第1スイッチと、
前記エンジンを制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
所定の動作
による自動冷機運転のONへの切り替わり、
及び、前記第1スイッチに
対する前記エンジンを停止させる操作
の双方が
所定時間内に行われたことを認識すると、
前記自動冷機運転を開始すると判定する、ショベル。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記所定の動作を認識せずに、前記第1スイッチに前記エンジンを停止させる操作がされたことを認識すると、前記自動冷機運転を開始しないと判定する、
請求項1に記載のショベル。
【請求項3】
前記所定の動作は、前記第1スイッチとは異なる第2スイッチ
の操作
である、
請求項1または請求項2に記載のショベル。
【請求項4】
前記第2スイッチは
、押している間のみONとなるモーメンタリ動作を行うスイッチであって、キャビン内に配置される、
請求項3に記載のショベル。
【請求項5】
前記自動冷機運転は、設定時間が経過すると前記エンジンを停止させる、
請求項1または請求項2に記載のショベル。
【請求項6】
前記設定時間を設定する設定部を備える、
請求項5に記載のショベル。
【請求項7】
前記設定時間は、前記エンジンの状態に基づいて変更される、
請求項5または請求項6に記載のショベル。
【請求項8】
前記コントローラと無線通信される遠隔操作用操作装置を備え、
前記遠隔操作用操作装置は、
前記エンジンを停止させるエンジン停止用スイッチと、
前記自動冷機運転を開始させる冷気運転用スイッチと、を有する、
請求項1または請求項2に記載のショベル。
【請求項9】
前記所定の動作は
、キャビン内に配置される表示入力装置を介して
行われる操作
である、
請求項1に記載のショベル。
【請求項10】
キャビン内に配置される表示入力装置に冷機運転を推奨する画面が表示される、
請求項1に記載のショベル。
【請求項11】
前記エンジン
の停止後、前記コントローラへ
前記エンジン
の起動の指令が入力されると、ゲートロック弁がロック状態の場合に
前記エンジンは起動される、
請求項1に記載のショベル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベルに関する。
【背景技術】
【0002】
ショベルは、エンジンによって油圧ポンプを駆動し、ショベルの各部を駆動する。エンジンを停止すると、エンジンに冷却水を供給する冷却ポンプやラジエータの冷却ファンも停止する。このため、ショベルによる作業が終了した後、エンジンを低負荷(アイドル状態)で運転することによりエンジンを冷却した後にエンジンを自動で停止する自動冷機運転が知られている。これにより、エンジンが高温の状態で停止することを抑制できるので、エンジンの焼き付き等を防止することができる。また、エンジンの冷却の後、自動でエンジンが停止するので、無駄なアイドル状態での動作を防止することができる。
【0003】
特許文献1には、原動機と、原動機によって駆動する油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される圧油によって駆動するアクチュエータと、油圧ポンプからアクチュエータに供給される圧油の流れを制御する方向切換弁と、方向切換弁を切換え操作する操作装置とを有する油圧作業機に設けられ、原動機を起動させる起動スイッチをOFFにした際、所定時間原動機の駆動を継続させた後、原動機を停止させる自動冷機運転の装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された油圧作業機では、自動冷機運転機能が搭載されていることを知らないオペレータが乗車する場合、オペレータの意図せずしてエンジンが切れない場合がある。
【0006】
そこで、本発明は、操作感を向上するショベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様のショベルは、上部旋回体と、走行用油圧モータによって駆動される下部走行体と、エンジンを停止させる第1スイッチと、前記エンジンを制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、所定の動作による自動冷機運転のONへの切り替わり、及び、前記第1スイッチに対する前記エンジンを停止させる操作の双方が所定時間内に行われたことを認識すると、自動冷機運転を開始すると判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作感を向上するショベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】
図1のショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。
【
図3】キャビンの内部をY正方向側から視た左側面図である。
【
図4】キャビンの内部をZ正方向側から視た平面図である。
【
図5】本実施形態に係るショベルのエンジンを停止する際の動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0011】
なお、以下の説明において、X方向、Y方向、Z方向は互いに垂直な方向であり、典型的には、X方向およびY方向は水平方向、Z方向は鉛直方向である。X方向は、ショベルの前後方向であり、前方側がX正方向であり、後方側がX負方向である。Y方向は、ショベルの左右幅方向であり、左側がY正方向、右側がY負方向である。Z方向は、ショベルの高さ方向であり、上側がZ正方向、下側がZ負方向である。
【0012】
最初に、
図1を参照して、本実施形態に係るショベルの全体構成について説明する。
図1は本実施形態に係るショベル(掘削機)の側面図である。
【0013】
図1に示されるように、ショベルの下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が旋回可能に搭載されている。上部旋回体3には、ブーム4が取り付けられている。ブーム4の先端には、アーム5が取り付けられ、アーム5の先端には、エンドアタッチメントとしてのバケット6が取り付けられている。ブーム4、アーム5、及びバケット6は、アタッチメントの一例としての掘削アタッチメントを構成し、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9によりそれぞれ油圧駆動される。上部旋回体3には、運転室であるキャビン10が設けられ、且つエンジン11等の動力源が搭載される。
【0014】
キャビン10内には、コントローラ30が設置されている。コントローラ30は、ショベルの駆動制御を行う主制御部として機能する。本実施形態では、コントローラ30は、CPU、RAM、ROM等を含むコンピュータで構成されている。コントローラ30の各種機能は、例えば、ROMに格納されたプログラムをCPUが実行することで実現される。
【0015】
次に、
図2を参照して、
図1のショベルの駆動系の構成について説明する。
図2は、
図1のショベルの駆動系の構成例を示すブロック図である。
図2中、機械的動力系、高圧油圧ライン、パイロットライン、及び電気制御系をそれぞれ二重線、太実線、破線、及び点線で示している。
【0016】
図2に示されるように、ショベルの駆動系は、主に、エンジン11、レギュレータ13、メインポンプ14、パイロットポンプ15、ゲートロック弁16、コントロールバルブ17、エアクリーナ18、熱交換器ユニット19、ターボチャージャ20、排気ガス処理装置21、マフラー22、操作装置26、吐出圧センサ28、操作圧センサ29、コントローラ30、比例弁31、ダイヤル32、表示装置33、スイッチ群41a~41f等を含む。
【0017】
エンジン11は、ショベルの駆動源である。本実施形態では、エンジン11は、例えば所定の回転数を維持するように動作するディーゼルエンジンである。また、エンジン11の出力軸は、メインポンプ14及びパイロットポンプ15の入力軸に連結されている。また、エンジン11の出力軸は、冷却ポンプ(図示せず)の入力軸と連結されている。エンジン11を動作させることにより、冷却ポンプは、エンジン11とラジエータ(図示せず)との間で冷却水を循環させる。また、エンジン11を停止させることにより、冷却ポンプも停止する。ラジエータは、冷却液の熱を大気に放熱する。ラジエータには、機外の空気を取り込んでラジエータに送風する冷却ファン(図示せず)が設けられている。冷却ファンは、エンジン11の出力軸と連結されていてもよく、電動モータであってもよい。冷却ファンは、例えば、エンジン11の動作・停止に連動する。
【0018】
メインポンプ14は、高圧油圧ラインを介して作動油をコントロールバルブ17に供給する。本実施形態では、メインポンプ14は、斜板式可変容量型油圧ポンプである。
【0019】
レギュレータ13は、メインポンプ14の吐出量を制御する。本実施形態では、レギュレータ13は、コントローラ30からの制御指令に応じてメインポンプ14の斜板傾転角を調節することによってメインポンプ14の吐出量を制御する。
【0020】
パイロットポンプ15は、パイロットラインを介して操作装置26を含む各種油圧制御機器に作動油を供給する。本実施形態では、パイロットポンプ15は、固定容量型油圧ポンプである。
【0021】
ゲートロック弁16は、パイロットポンプ15と操作装置26との間を繋ぐパイロットラインの連通状態と遮断状態とを切り換えできるように構成されている。パイロットラインが連通状態のとき、操作装置26は有効状態となる。パイロットラインが遮断状態のとき、操作装置26は無効状態となる。操作装置26の有効状態は、操作装置26に対する操作がショベル100の動きに反映される状態を意味し、操作装置26の無効状態は、操作装置26に対する操作がショベル100の動きに反映されない状態を意味する。また、ゲートロック弁16は、ゲートロックレバー140(後述する
図3参照)が引き上げられたときにパイロットラインを連通状態とし、ゲートロックレバー140が押し下げられたときにパイロットラインを遮断状態とする。また、ゲートロック弁16は、コントローラ30からの制御指令に応じてパイロットラインの連通状態と遮断状態とを切り換えできるように構成されていてもよい。
【0022】
なお、エンジン11の停止後にエンジン11を再起動する際、例えば、イグニッションスイッチ42が操作されエンジン11の起動の指令がコントローラ30に入力されると、コントローラ30は、ゲートロック弁16が遮断状態(ロック状態)となっていることを条件として、エンジン11を再起動する。これにより、エンジン11の再起動時には、操作装置26を無効状態とすることができ、エンジン11の再起動直後にショベル100が動くことを防止することができる。
【0023】
コントロールバルブ17は、ショベルにおける油圧システムを制御する油圧制御装置である。コントロールバルブ17は、制御弁171~176、及びブリード弁177を含む。コントロールバルブ17は、制御弁171~176を通じ、メインポンプ14が吐出する作動油を1又は複数の油圧アクチュエータに選択的に供給できる。制御弁171~176は、メインポンプ14から油圧アクチュエータに流れる作動油の流量、及び油圧アクチュエータから作動油タンクに流れる作動油の流量を制御する。油圧アクチュエータは、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9、左側走行用油圧モータ1A、右側走行用油圧モータ1B、及び旋回用油圧モータ2Aを含む。ブリード弁177は、メインポンプ14が吐出する作動油のうち、油圧アクチュエータを経由せずに作動油タンクに流れる作動油の流量(以下、「ブリード流量」とする。)を制御する。ブリード弁177は、コントロールバルブ17の外部に設置されていてもよい。
【0024】
エアクリーナ18は、エンジン11に導入される空気を濾過する。エアクリーナ18を通じて取り込まれた空気は、ターボチャージャ19のコンプレッサで圧縮され、熱交換器ユニット20で冷却されて、エンジン11の燃焼室に至る。また、エンジン11から排出される排気ガスは、ターボチャージャ19のタービンを回転させ、排気ガス処理装置21で浄化された後で、マフラー(消音装置)22から大気中に放出される。なお、排気ガス処理装置21は、選択触媒還元(SCR:Selective Catalytic Reduction)システム、ディーゼル微粒子捕集フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)等を含んでよい。
【0025】
操作装置26は、操作者が油圧アクチュエータの操作のために用いる装置である。本実施形態では、操作装置26は、パイロットラインを介して、パイロットポンプ15が吐出する作動油を油圧アクチュエータのそれぞれに対応する制御弁のパイロットポートに供給する。パイロットポートのそれぞれに供給される作動油の圧力(パイロット圧)は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダル(
図3、
図4参照)の操作方向及び操作量に応じた圧力である。
【0026】
吐出圧センサ28は、メインポンプ14の吐出圧を検出する。本実施形態では、吐出圧センサ28は、検出した値をコントローラ30に対して出力する。
【0027】
操作圧センサ29は、操作装置26を用いた操作者の操作内容を検出する。本実施形態では、操作圧センサ29は、油圧アクチュエータのそれぞれに対応する操作装置26のレバー又はペダルの操作方向及び操作量を圧力(操作圧)の形で検出し、検出した値をコントローラ30に対して出力する。操作装置26の操作内容は、操作圧センサ以外の他のセンサを用いて検出されてもよい。
【0028】
比例弁31は、コントローラ30が出力する制御指令に応じて動作する。本実施形態では、比例弁31は、コントローラ30が出力する電流指令に応じて操作装置26からコントロールバルブ17内のブリード弁177のパイロットポートに導入される二次圧を調整する電磁弁である。比例弁31は、例えば、電流指令が大きいほど、ブリード弁177のパイロットポートに導入される二次圧が大きくなるように動作する。
【0029】
ダイヤル32は、操作者がエンジン11の回転数を選択するための回転式のつまみである。ダイヤル32はエンジン回転数の調整を回転によって行うことができる。また、ダイヤル32には出力特性切替スイッチ35が設けられており、出力特性切替スイッチ35の押下によってショベルの出力特性を切り替えることができる。
【0030】
ダイヤル32は、エンジン回転数を複数段階から選択できる。これらの複数段階は、例えば
図2に示すようにPOWERモード、STDモード、IDLEモードを含む。POWERモードは、作業量を優先したい場合に選択される作業モードであり、最も高いエンジン回転数を利用し、且つ最も高い加減速特性を利用する。STDモードは、作業量と燃費を両立させたい場合に選択される作業モードであり、二番目に高いエンジン回転数を利用し、且つ二番目に高い加減速特性を利用する。IDLEモードは、エンジンをアイドリング状態にしたい場合に選択される作業モードであり、最も低いエンジン回転数を利用し、且つ最も低い加減速特性を利用する。
【0031】
また、出力特性切替スイッチ35では、例えば通常特性と低燃費特性の2段階に出力特性を切り替えることができる。低燃費特性は、レバー操作に対応した油圧アクチュエータの加速特性や減速特性を緩やかにし、正確な操作性と安全性を向上させ、低騒音でショベルを稼働させたい場合に選択される出力特性である。例えば、低燃費特性では、エンジン出力トルク線図を変更させる。具体的に、通常特性のエンジン出力トルク線図に加えて、低燃費特性のエンジン出力トルク線図を用意し、出力特性切替スイッチ35を押すことで、エンジン出力トルク線図を変更する。つまり、出力特性が低燃費特性に設定されると、トルクが小さいエンジン出力トルク線図に変更される。また、例えば、低燃費特性は、同一のエンジン出力トルク線図(通常特性のエンジン出力トルク線図)において、エンジン回転数が所定値減少される構成であってもよい。具体的に、ダイヤル32における各段階のエンジン回転数を所定値減少させる。このとき、低燃費特性の最大エンジン回転数は、通常特性の最大エンジン回転数よりも低くしてもよい。このように、低燃費特性は、エンジンを制御することによって、通常特性よりも低燃費にショベルを稼動することができる。ここで、低燃費特性は、通常特性のエンジン出力トルク線図を別のエンジン出力トルク線図に変更することに加えて、エンジン回転数が所定値減少される構成であってもよい。
【0032】
ダイヤル32、出力特性切替スイッチ35からは、エンジン回転数の設定状態や出力特性に関する情報がコントローラ30に常時送信されている。そして、コントローラ30は、ダイヤル32で設定されたエンジン回転数で、エンジン11の回転数制御を行う。
【0033】
また、コントローラ30には、表示装置側スイッチ群34、スイッチ群41a~41f、イグニッションスイッチ42、スイッチ群44などから各種情報が入力される。
【0034】
また、コントローラ30は、判定部310と、運転制御部320と、設定部330と、を有している。判定部310は、自動冷機運転を行うか否かを判定する。運転制御部320は、ショベルの運転を制御する。設定部330は、自動冷機運転の各種パラメータを設定する。なお、これらの構成については、後述する。
【0035】
次に、
図3及び
図4を参照して、キャビン10内に設置された運転席100及び操作装置26について説明する。
図3は、キャビン10の内部をY正方向側から視た左側面図である。
図4は、キャビン10の内部をZ正方向側から視た平面図である。
【0036】
キャビン10内には運転席100が設置される。運転席100は操作者が着座するシート102と背もたれ104とを含む。運転席はリクライニングシートであり、背もたれ104の傾斜角度を調節可能となっている。運転席100の左右両側にそれぞれ左アームレスト106A及び右アームレスト106Bが配置される。左アームレスト106A及び右アームレスト106Bは回動可能に支持されている。
【0037】
運転席100の左右両側には、シート左側コンソール120A及びシート右側コンソール120Bがそれぞれ配置される。シート左側コンソール120A及びシート右側コンソール120Bは、運転席の前後方向に沿って延在するよう設けられる。運転席100は、前後にスライド可能に構成される。したがって、左走行レバー26E、右走行レバー26Fやキャビン10のフロントガラス、シート左側コンソール120A及びシート右側コンソール120Bに対し、操作者は運転席100を好みの位置に移動して固定することができる。ここで、運転席100は、シート左側コンソール120A、シート右側コンソール120B、左アームレスト106A及び右アームレスト106Bと共に前後方向に移動可能な構成であってもよい。
【0038】
シート左側コンソール120Aの前部に左操作レバー26Aが設けられる。同様に、シート右側コンソール120Bの前部に右操作レバー26Bが設けられる。運転席100に着座した操作者は、左手で左操作レバー26Aを把持しながら左操作レバー26Aを操作し、且つ右手で右操作レバー26Bを把持しながら右操作レバー26Bを操作する。運転席100に着座した操作者は、左手で左操作レバー26Aを操作してアームシリンダ8及び旋回用油圧モータ2Aを駆動する。また、右手で右操作レバー26Bを操作してブームシリンダ7及びバケットシリンダ9を駆動する。
【0039】
左操作レバー26A、右操作レバー26Bの基部側はレバーカバー27で覆われており、これにより、左操作レバー26A及び右操作レバー26Bが、それぞれシート左側コンソール120A、シート右側コンソール120Bの表面と段差なく連続的に接続されるように構成されている。
【0040】
運転席100の前方の床面に左走行ペダル26C,右走行ペダル26Dが配置される。運転席100に着座した操作者は、左足で左走行ペダル26Cを操作して左側走行用油圧モータ1Aを駆動する。また、運転席100に着座した操作者は、右足で右走行ペダル26Dを操作して右側走行用油圧モータ1Bを駆動する。
【0041】
左走行ペダル26Cの近傍から左走行レバー26Eが上方に向けて延在している。運転席100に着座した操作者は、左手で左走行レバー26Eを把持しながら操作することで、左走行ペダル26Cでの操作と同様に、左側走行用油圧モータ1Aを駆動することができる。また、右走行ペダル26Dの近傍から右走行レバー26Fが上方に向けて延在している。運転席100に着座した操作者は、右手で右走行レバー26Fを把持しながら操作することで、右走行ペダル26Dでの操作と同様に、右側走行用油圧モータ1Bを駆動することができる。
【0042】
なお、キャビン10内の右前部には、ショベルの作業条件や動作状態などの情報を表示する表示装置33が配置される。運転席100に着座した操作者は表示装置33に表示された各種情報を確認しながらショベルによる作業を行なうことができる。表示装置33には、例えば表示装置33の表示制御用などの表示装置側スイッチ群34が設けられる。
【0043】
また、運転席100の左側(すなわち、キャビンの乗降用ドアがある側)には、ゲートロックレバー140が設けられる。ゲートロックレバー140を引き上げることで、エンジン11の起動が許可され、ショベルを操作することができる。ゲートロックレバー140を押し下げると、エンジン11を含む作動部は起動できなくなる。したがって、操作者が運転席に着座してゲートロックレバー140を引き上げた状態にしない限り、ショベルは作動できず、安全性が保たれる。
【0044】
運転席100のシート右側コンソール120Bより右側には、窓側コンソール120Cが設置される。窓側コンソール120Cは、例えばキャビン10の前後方向に亘って延在し、シート右側コンソール120Bと平行に設けられる。表示装置33は例えば窓側コンソール120Cの前部に設置することができる。窓側コンソール120Cには、イグニッションスイッチ42、ラジオ43などが設置される。ここで、イグニッションスイッチ42、ラジオ43などは、シート左側コンソール120A、又は、シート右側コンソール120Bに設置されてもよい。
【0045】
イグニッションスイッチ(第1スイッチ)42は、エンジン11の始動、停止を切り替えるスイッチである。イグニッションスイッチ42は、例えば、キースイッチであってもよく、プッシュスイッチであってもよい。
【0046】
左アームレスト106A及び右アームレスト106Bは、それぞれシート左側コンソール120A及びシート右側コンソール120Bの上方に配置される。Z方向から視たときに、左アームレスト106A、右アームレスト106Bの少なくとも一部が、シート左側コンソール120A、シート右側コンソール120Bの後部を隠すように配置されている。
【0047】
また、シート右側コンソール120Bにおいて、右アームレスト106Bと右操作レバー26Bとの間の位置にスイッチパネル41が配置される。スイッチパネル41は、スイッチ群41a~41fと、ダイヤル32とを含む。ダイヤル32には出力特性切替スイッチ35が設けられる。また、スイッチパネル41よりも後方側には、スイッチ群44が配置される。
【0048】
次に、ショベルのエンジン11を停止させる際の動作について、
図5を用いて説明する。
図5は、本実施形態に係るショベルのエンジン11を停止する際の動作を示すフローチャートである。
【0049】
なお、
図5に示すフローの開始時において、エンジン11は動作しているものとする。
【0050】
ステップS1において、判定部310は、イグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作されたか否かを判定する。ここで、「STOP」の状態とは、エンジン11の停止を指令する状態であり、例えばキースイッチにおいてはキーを「STOP」の位置に回す、プッシュスイッチにおいてはスイッチを押す場合を示す。イグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作された場合(S1・Yes)、コントローラ30の処理はステップS2に進む。イグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作されていない場合(S1・No)、コントローラ30の処理は操作されるまでステップS1を繰り返す。
【0051】
ステップS2において、判定部310は、イグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作されたと同時に、冷機運転の機能を作動させる所定の動作を識別したか否かを判定する。ここで、所定の動作とは、例えば、自動冷機運転が割り当てられたスイッチを操作した場合である。なお、自動冷機運転が割り当てられたスイッチは、例えば、表示装置側スイッチ群34、スイッチ群41a~41f、スイッチ群44のいずれかのスイッチ(第2スイッチ)に割り当てられる。また、表示装置33はタッチパネル等の表示入力装置であって、表示装置33の画面上に自動冷機運転が割り当てられたスイッチが設けられていてもよい。なお、自動冷機運転が割り当てられたスイッチは、例えば、押している間のみONとなるモーメンタリ動作を行うスイッチであって、スイッチの操作は、例えば、スイッチを押すことであってもよい。また、判定部310の所定の動作による判定処理は、イグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作されたと同時でなくともよい。イグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作された所定時間内(例えば10秒以内)に所定の動作を識別したか否かを判定してもよい。
【0052】
所定の動作を識別した場合(S2・Yes)、コントローラ30の処理はステップS3に進む。所定の動作を識別していない場合(S2・No)、コントローラ30の処理はステップS7に進む。
【0053】
ステップS3において、判定部310は、エンジン11の自動冷機運転を実行すると判定する。
【0054】
ステップS4において、運転制御部320は、タイマカウントを開始する。ここでは、設定部330で設定された時間をタイマカウントとしてセットし、カウントダウンを開始する。
【0055】
ステップS5において、運転制御部320は、タイマが0となったか否かを判定する。即ち、設定部330で設定された時間が経過したか否かを判定する。タイマが0となっていない場合(S5・No)、ステップS5を繰り返す。タイマが0となった場合(S5・Yes)、コントローラ30の処理はステップS6に進む。
【0056】
ステップS6において、運転制御部320は、エンジン11を停止させる。そして、コントローラ30は、自動冷機運転の処理を終了する。
【0057】
一方、ステップS7において、判定部310は、エンジン11を停止すると判定する。即ち、自動冷機運転を行わずにエンジン11を停止させると判定する。そして、コントローラ30の処理はステップS6に進み、エンジン11を停止させる。そして、コントローラ30は、自動冷機運転の処理を終了する。
【0058】
以上、本実施形態に係るショベルによれば、イグニッションスイッチ42のみを「STOP」の状態となるように操作することにより、エンジン11を直ちに停止させることができる。これにより、自動冷機運転機能を知らないオペレータであっても、オペレータの意図通りにエンジン11を速やかに停止させることができる。例えば、異音の発生時等のように、オペレータが直ちにエンジン11を停止させてショベルを調査したい場合でも、オペレータの意図通りにエンジン11を速やかに停止させることができる。
【0059】
また、イグニッションスイッチ42を「STOP」の状態となるように操作するとともに、コントローラ30(判定部310)が所定の動作を識別した場合、自動冷機運転を行い、その後にエンジン11を停止する。これにより、エンジン11の焼き付き等を防止することができる。
【0060】
ここで、コントローラ30が識別する所定の動作とは、イグニッションスイッチ42が操作されている際に、例えば、自動冷機運転の機能が割り当てられたスイッチが押される動作である。このように、イグニッションスイッチ42と自動冷機運転の機能が割り当てられたスイッチと同時に押すことにより、自動冷機運転を行う。例えば、オペレータは一方の手でイグニッションスイッチ42操作を操作するとともに、他方の手で所定のスイッチを押す。これにより、意図せず自動冷機運転が行われることを防止することができる。
【0061】
また、自動冷機運転の時間は、ステップS4においてタイマカウントとしてセットされる時間である。自動冷機運転の時間は、設定部330によって予め設定されている。また、オペレータが自動冷機運転の時間を予め設定できるようにしてもよい。例えば、設定部330は、表示装置33に冷却時間の設定を支援するための画面(例えば、入力画面)を表示させる。オペレータは、タッチパネル式の表示装置33を操作することにより、または、スイッチ群34を操作することにより、自動冷機運転の時間入力する。設定部330は、入力された値を自動冷機運転時間として設定する。これにより、ステップS4において設定されるタイマカウントの値を変更することができる。
【0062】
なお、自動冷機運転の時間は、エンジン11の状態に基づいて変更してもよい。例えば、高負荷の作業を行った直後であって、エンジン11の温度が第1閾値温度以上の場合、自動冷機運転の時間を長くしてもよい。また、エンジン11の温度が第2閾値温度未満の場合、自動冷機運転の時間を短くしてもよい。また、ショベルの行った作業の履歴に基づいて、自動冷機運転の時間を変更してもよい。
【0063】
また、自動冷機運転中は、左側走行用油圧モータ1A、右側走行用油圧モータ1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、バケットシリンダ9の動作を禁止してもよい。例えば、コントローラ30は、比例弁31を制御してブリード弁177にパイロット圧を導入する。これにより、ブリード弁177は、全開となり、アクチュエータへの油圧の供給を停止させ、アクチュエータの動作を停止させることができる。更に、レギュレータ13の調整によりメインポンプ14の吐出量を低減させ、エンジン11への負荷を小さくさせてもよい。
【0064】
更に、
図5に示す処理において、判定部310は、ステップS1においてイグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作されたかを判定し、ステップS2において所定の動作を識別したか否かを判定する事例を示したが、これに限られるものではない。判定部310は、ステップS1において所定の動作を識別したか否かを判定し、ステップS2においてイグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作されたかを判定してもよい。これにより、所定の動作を識別した後に、イグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作された場合、自動冷機運転を開始させることができる。また、所定の動作を識別せずにイグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作された場合、直ぐにエンジン11を停止させることができる。
【0065】
また、コントローラ30は、エンジン11の負荷状態に基づいて自動冷機運転を行う方が望ましいと判断した場合には、表示装置33の画面に「エンジン停止時に冷機運転を行ってください」等の冷機運転を推奨する表示を行ってもよい。これにより、操作者は推奨表示を確認することで、イグニッションスイッチ42が「STOP」の状態に操作する前に、自動冷機運転の機能を作動させる所定の動作を確実に行うことができる。そして、コントローラ30は、このようは推奨表示をしたにもかかわらず自動冷機運転の機能を作動させる所定の動作が入力されなかった場合には、自動冷機運転は行わずにエンジン11を急いで停止させたい状況であると判断し、エンジン11を迅速に停止する。
【0066】
以上、ショベルの実施形態等について説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、改良が可能である。
【0067】
また、イグニッションスイッチ42は、1つのスイッチでエンジン11の始動及び停止に対応するものとして説明したが、これに限られるものではない。エンジン11の始動と停止についてそれぞれスイッチが設けられていてもよい。
【0068】
また、ショベルのコントローラ30と無線通信されるリモートキー(遠隔操作用操作装置)を備えていてもよい。
【0069】
リモートキーは、エンジン11を停止させるエンジン停止用スイッチ(図示せず)と、自動冷機運転を開始させる冷気運転用スイッチ(図示せず)と、を有していてもよい。
【0070】
エンジン停止用スイッチが操作された場合、リモートキーは無線通信を介してコントローラ30にエンジン停止用スイッチが操作されたことを示す第1の信号を送信する。第1の信号を受信すると、コントローラ30の判定部310は、自動冷機運転を行わずにエンジン11を停止させると判定する(S1・Yes、S2・No、S7)。そして、コントローラ30は、自動冷機運転を行わずにエンジン11を停止させる(S6)。
【0071】
冷気運転用スイッチが操作された場合、リモートキーは無線通信を介してコントローラ30に冷気運転用スイッチが操作されたことを示す第2の信号を送信する。第2の信号を受信すると、コントローラ30の判定部310は、エンジン11の自動冷機運転を実行すると判定する(S1・Yes、S2・Yes、S4)。そして、コントローラ30は、エンジン11の自動冷機運転を実行した後にエンジン11を停止する(S5Yes・S6)。
【0072】
また、リモートキーは、エンジン11を停止するスイッチと、自動冷機運転の機能が割り当てられたスイッチと、を有していてもよい。
【0073】
エンジン11を停止するスイッチが操作された場合、リモートキーは無線通信を介してコントローラ30にエンジン11を停止するスイッチが操作されたことを示す第1の信号を送信する。第1の信号を受信すると、コントローラ30の判定部310は、自動冷機運転を行わずにエンジン11を停止させると判定する(S1・Yes、S2・No、S7)。そして、コントローラ30は、自動冷機運転を行わずにエンジン11を停止させる(S6)。
【0074】
エンジン11を停止するスイッチ及び自動冷機運転の機能が割り当てられたスイッチの両方が操作された場合、リモートキーは無線通信を介してコントローラ30にエンジン11を停止するスイッチ及び自動冷機運転の機能が割り当てられたスイッチの両方が操作されたことを示す第2の信号を送信する。第2の信号を受信すると、コントローラ30の判定部310は、エンジン11の自動冷機運転を実行すると判定する(S1・Yes、S2・Yes、S4)。そして、コントローラ30は、エンジン11の自動冷機運転を実行した後にエンジン11を停止する(S5Yes・S6)。
【0075】
また、イグニッションスイッチ42の操作と同時に行われる所定の動作は、スイッチの操作に限られるものではない。
【0076】
本願は、2019年7月29日に出願した日本国特許出願2019-138859号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0077】
1 下部走行体
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
10 キャビン
11 エンジン
30 コントローラ
34 表示装置側スイッチ群(第2スイッチ)
41a~41f,44 スイッチ群(第2スイッチ)
42 イグニッションスイッチ(第1スイッチ)
310 判定部
320 運転制御部
330 設定部