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特許7467475C4-C7炭化水素から軽質オレフィンを製造するための触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】C4-C7炭化水素から軽質オレフィンを製造するための触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/40 20060101AFI20240408BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240408BHJP
   C07C 4/06 20060101ALI20240408BHJP
   C07C 11/04 20060101ALI20240408BHJP
   C07C 11/06 20060101ALI20240408BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
B01J29/40 M
B01J35/60 A
C07C4/06
C07C11/04
C07C11/06
C07B61/00 300
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021537141
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 TH2019000063
(87)【国際公開番号】W WO2020218980
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】1801008085
(32)【優先日】2018-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TH
(73)【特許権者】
【識別番号】513160707
【氏名又は名称】ピーティーティー グローバル ケミカル パブリック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワタナキット、チュララット
(72)【発明者】
【氏名】ロダウム、チャダティップ
(72)【発明者】
【氏名】ティワサシス、アナワット
(72)【発明者】
【氏名】ペンパニチ、シティポン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-526313(JP,A)
【文献】特表2016-519681(JP,A)
【文献】特表2002-525380(JP,A)
【文献】ABDALLA Amr et al,Catalytic cracking of 1-butene to propylene using modified H-ZSM-5 catalyst: A comparative study of surface modification and core-shell synthesis,Applied Catalysis A:General,Elsevier,2017年01月17日,volume 533,pp 109-120,DOI:10.1016/j.apcata.2017.01.003
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C07C 4/06
C07C 11/04
C07C 11/06
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C4-C7炭化水素から軽質オレフィンを製造するための触媒であって、前記触媒が、アルミニウムに対するケイ素のモル比(Si/Al)が2~250であるゼオライトのコアと、層状複水酸化物のシェルとを含むコアシェル構造を有し、前記ゼオライトが、階層型ゼオライトである、触媒。
【請求項2】
前記ゼオライトが、0.3nm~0.6nmのマイクロ細孔、2nm~10nmのメソ細孔、及び50nm以上のマクロ細孔を含む階層型ゼオライトであり、全細孔容積に対してメソ細孔及びマクロ細孔の割合が15%~60%である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記ゼオライトが、アルミニウムに対するケイ素のモル比が15~30である、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記ゼオライトが、アルミニウムに対するケイ素のモル比が15に等しい、請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
前記ゼオライトが、ゼオライトのタイプZSM-5、FAU、MOR、BETA又はFERから選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項6】
前記ゼオライトのコアが、100nm~3,000nmの結晶サイズを有する、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
請前記層状複水酸化物が、第2族金属及び第3族金属を主成分として含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
前記層状複水酸化物が、マグネシウム(Mg)及びアルミニウム(Al)を主成分として含む、請求項7に記載の触媒。
【請求項9】
前記層状複水酸化物が、アルミニウムに対するマグネシウムのモル比が1~3である、請求項1のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項10】
前記層状複水酸化物が、アルミニウムに対するマグネシウムのモル比が1~2である、請求項9に記載の触媒。
【請求項11】
前記層状複水酸化物が、100nm~1,000nmの厚さを有する、請求項1のいずれか1項に記載の触媒。
【請求項12】
前記触媒が、シェル:コアの質量比が1:1~1:7であるコア及びシェルを含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項13】
前記触媒が、シェル:コアの質量比が1:2~1:6であるコア及びシェルを含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項14】
請求項1に記載の触媒を用いた、C4-C7炭化水素の接触分解反応による軽質オレフィンの製造方法。
【請求項15】
前記方法が、450℃~650℃の温度及び大気圧1~5バールの圧力で行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記炭化水素化合物が、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタンから選択される、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記炭化水素化合物が、ペンタンである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
生成物が軽質オレフィンである、請求項14から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
好ましい生成物が、エチレン及びプロピレンである、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
化学は、C4-C7炭化水素から軽質オレフィンを製造するための触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン、プロピレンなどの軽質オレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの重要なポリマーを製造する際の重要な石油化学前駆体である。現在、軽質オレフィンの工業的製造は、熱水蒸気分解により天然ガスから分離したナフサやエタンを分子分解する方法を主に用いている。この方法は、高温であるためエネルギー消費が大きく、また装置内に大量のコーキングが蓄積される。そのため、メンテナンスのために頻繁にプロセスを停止しなければならない。ナフサ化合物の接触分解による軽質オレフィンの製造は、低い反応温度で軽質オレフィンの収率を向上させ、装置内に蓄積されるコーキングを低減するための代替方法である。
【0003】
これまでにも、ナフサ化合物の接触分解によるオレフィンの製造技術については報告されている。例えば、Honeywell UOP LLCの研究者ら(US7981273B2、US8157985B2、US20100105974A1)は、ナフサ化合物を含む炭化水素化合物をオレフィン化合物への接触分解のために、カリウム、ナトリウム、有機アンモニウムカチオン化合物、及びガリウムを添加したアルミノシリケート又はゼオライト触媒を開発した。該有機アンモニウムカチオン化合物には、エチルトリメチルアンモニウム(ETMA)、ジエチルジメチルアンモニウム(DEDMA)、テトラエチルアンモニウム(TEA)など多くの種類がある。また、チャバサイト、エリオナイト、フェリエライト、ZSM-22などのゼオライトを使用した第1群と、アルミナに対するシリカの比率が200超のナノシリカライトなどの第2群を混合した、異なる種の触媒を混合して得た触媒の開発も行われている。
【0004】
さらに、ExxonMobil Oil Corporationの研究者ら(US6222087B1およびUS20050070422A1)は、C4-C7炭化水素の接触分解から軽質オレフィンを製造するための触媒を研究開発しており、研究された触媒は、アルミニウムに対するケイ素の比が300超であるゼオライトを含む、ZSM-22、ZSM-35、SAPO-34、ZSM-5、及びZSM-11のゼオライトであった。さらに、プロピレン化合物の収率を上げるために、リンと、ガリウム、チタン、ジルコニアなどの金属酸化物との混合もあった。
【0005】
接触分解で軽質オレフィンを高効率で製造するためには、使用する触媒は、副反応、特にメタン、エタン、プロパンなどの軽アルカン生成物と比較して、最も高い軽質オレフィン生成物の選択性を提供しなくてはならない。そのため、軽質オレフィンの選択性を高めるための開発と、触媒の失活を低減するための開発のために、該方法で使用される触媒の開発が継続的に行われている。
【0006】
ゼオライト触媒を用いた炭化水素化合物の接触分解による軽質オレフィンの製造のための触媒の開発は興味深い。ゼオライト化合物は結晶性のアルミノケイ酸塩であり、吸着剤、イオン交換体、及び触媒又は担体として使用できる不均一系触媒など、石油及び石油化学産業の様々な用途に応用できる触媒の一つである。ゼオライトの優れた特性は、適用される反応の性質に合わせてpHを調整できること、熱及び化学的安定性、並びに形状選択性である。したがって、適切なブレンステッド酸性部位と、所望の軽質オレフィン生成物の選択性に対する特定の特性を有する細孔とを備える該触媒を適用することができる。
【0007】
それにもかかわらず、産業界における従来のゼオライトの使用は、低い触媒効率、速い失活、及び触媒を再生するための困難で複雑なプロセスなどの制限を依然として有している。前述の従来型ゼオライトの制限を引き起こす主な要因は、臨界物質移動を引き起こす大きなゼオライト結晶構造の中にある非常に小さな(オングストロームスケールの)ゼオライト構造の細孔のサイズに起因する物質移動と拡散の制限である。これにより、活性部位での前駆体の反応が困難になり、中間体の再結合反応によるコークの生成量が多くなるため、触媒の失活を引き起こす可能性がある。さらに、炭化水素化合物の接触分解による軽質オレフィンの製造方法において、軽質オレフィン生成物の高い選択性を得るためには、外表面にある活性部位での副反応などの別の理由から、従来のゼオライトを使用することには制限がある。
【0008】
WO2018157042は、コアシェル構造を有する触媒組成物及び該触媒の調製方法を開示し、コア及びシェル材料はメソポーラス材料であって、コアがTS-1、シリカライト、シリカライト-1、BETA、ZSM-5、AIPO-5、MCM-41、及びSAPOから選択される少なくとも1つの材料であり、プラチナ、金、パラジウム、銅、ニッケル、鉄、コバルト、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、又は金属酸化物などの金属をさらに含む。シェルは、ミクロポーラスゼオライト、多孔質シリカ、アルミナ、酸化チタン、二酸化チタン、炭素、金属有機構造体(MOF)、ゼオライトイミダゾレートフレームワーク(ZIF)、又は共有結合性有機構造体(COF)から選択される少なくとも1つの材料を含む。しかしながら、この研究は、軽質オレフィンの製造方法における前記触媒の適用を報告していない。
【0009】
WO2018108544は、プロパンからの軽質オレフィンの製造方法で使用される触媒組成物を開示し、該触媒は、物理的に混合された2つの組成物を含む。第1の組成物は、白金などの脱水素活性金属を含む、二酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、又はそれらの混合物から選択される層状複水酸化物形態の固体担体を含む。第2の部分は、モリブデン、タングステン、レニウム、またはそれらの混合物から選択される遷移金属を共組成物として含む、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン、ゼオライト、またはそれらの混合物から選択される無機担体を含む。
【0010】
WO2017009664A1は、コアシェル構造を有する触媒の特性及び該触媒の調製方法を開示している。コア材料は、ケイ酸塩、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バナジウム、ケイ酸鉄、リン酸ケイ素アルミニウム(SAPO)、又はリン酸アルミニウム(AIPO)であった。シェル材料は、層状複水酸化物であった。しかしながら、該特許は、いかなる製造方法においても該触媒の適用に言及していなかった。
【0011】
上記の理由から、本発明は、接触分解によるC4-C7炭化水素からの軽質オレフィンの製造、及び該触媒を使用する軽質オレフィンの製造方法のための触媒を調製することを目的とし、該触媒は、軽質オレフィンの高い選択性と、メタン、エタン、及びプロパンなどの少ない副生成物と、触媒の高い安定性を備える軽質オレフィンの製造への応用に適するために、ゼオライトコア及び層状複水酸化物シェルを含むコアシェル構造を有する。さらに、該触媒は、以前の研究と比較して、さらなる金属組成物を添加せずに軽質オレフィンの良好な生産効率を提供する。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、接触分解によるC4-C7炭化水素から軽質オレフィンを製造するための触媒及び該触媒からの軽質オレフィンの製造方法に関するものであり、該触媒は、ケイ素とアルミニウムのモル比(Si/Al)が2から250までであるゼオライトコア、及び層状複水酸化物シェル(LDH)を含むコアシェル構造を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明による例と比較例の結晶性を示す図である。
図2図2A)及びB)は、本発明の触媒2による例の電子走査顕微鏡及び電子透過顕微鏡の結果を示す。
図3図3は、本発明の触媒2による例のX線光電子分光法(XPS)による結晶サイズに応じて変化した元素の組成割合を示す図である。
図4図4A)及びB)は、ペンタンの触媒分解について、本発明の触媒1及び触媒2による例の経時的な軽質オレフィン生成物選択性をそれぞれ示す。
図5図5は、ペンタンの接触分解のための本発明による例及び比較例の軽質オレフィン生成物選択性の百分率を示す。
図6図6は、ペンタンの接触分解のための本発明による例及び比較例の軽質オレフィン生成物の収率の百分率を示す。
図7図7は、ペンタンの接触分解のための本発明による例及び比較例の生成物選択性の百分率を示す。
【発明の詳細な説明】
【0014】
本発明は、以下の実施形態に従って説明される、C4-C7炭化水素から軽質オレフィンを製造するための触媒に関する。
【0015】
ここで説明されているあらゆる態様は、特に明記されていない限り、本発明の他の態様への適用を含むことを意味する。
【0016】
ここで使用される技術用語または科学用語は、特に明記されていない限り、当業者による定義を有する。
【0017】
ここで名前が挙げられている道具、機器、方法、又は化学物質は、本発明にのみ特有の道具、機器、方法、又は化学物質であると特に記載されていない限り、当業者が一般的に使用している道具、機器、方法、又は化学物質を意味する。
【0018】
特許請求の範囲または明細書において、単数形の名詞又は単数形の代名詞と「含む」との併用は、「1つの」を意味し、「1つ以上の」、「少なくとも1つの」、及び「1つ又は1つ以上の」も含む。
【0019】
本出願に開示される全ての組成物及び/又は方法と特許請求の範囲とは、本発明と著しく異なる実験をせずに、あらゆる行為、性能、変形、又は調整から実施形態を覆うことを目的としており、特許請求の範囲に特に記載されていないが、当業者によれば、本実施形態と同様の実用性と結果を有する対象を得ることができる。したがって、当業者が明らかに見分けられる任意の少しの変更又は調整を含む本実施形態の代替又は類似の対象は、添付の特許請求の範囲に現れている本発明の精神、範囲、及び概念のままであると解釈されるべきである。
【0020】
本出願を通して、「約」という用語は、装置、方法、又は前記装置或いは方法の個人的な使用のいかなる誤差からも変化又は逸脱し得るここに現れた、又は示された、任意の数を意味する。
【0021】
以下、本発明の実施形態は、本発明の範囲を限定するいかなる目的無しで示されている。
【0022】
本発明は、C4-C7炭化水素を接触分解して軽質オレフィンを製造するための触媒、及び該触媒を用いたオレフィンの製造方法に関し、該触媒は、アルミニウムに対するケイ素のモル比が2から250までであるゼオライトコアと、層状複水酸化物シェルとを含むコアシェル構造を有するものである。
【0023】
一実施形態では、ゼオライトコアは、サイズが0.3nm~0.6nmであるマイクロポア、サイズが2nm~10nmであるメソポア、及びサイズが50nm超のマクロポアを含む階層型ゼオライトであり、メソポア及びマクロポアの割合は、全細孔容積を基準にして15%~60%以上である。
【0024】
一実施形態では、前記ゼオライトのアルミニウムに対するケイ素のモル比は、2~250である。好ましくは、前記ゼオライトのアルミニウムに対するケイ素のモル比は、15~30である。最も好ましくは、前記ゼオライトのアルミニウムに対するケイ素のモル比は、15である。
【0025】
一実施形態では、前記ゼオライトは、ZSM-5、FAU、MOR、BETA、又はFERゼオライトから選択され、好ましくはZSM-5である。
【0026】
一実施形態では、前記ゼオライトの結晶サイズは、100nm~3,000nmである。
【0027】
一実施形態では、層状複水酸化物は、主成分として第2族金属及び第3族金属を含み、好ましくはマグネシウム(Mg)及びアルミニウム(Al)である。
【0028】
一実施形態では、前記層状複水酸化物のアルミニウムに対するマグネシウムのモル比は、1~3であり、好ましくは1~2である。
【0029】
一実施形態では、前記層状複水酸化物の厚さは、100nm~1,000nmである。
【0030】
好ましくは、本発明による触媒は、階層型ゼオライトコアと、マグネシウム及びアルミニウムを含む層状複水酸化物シェルとを含み、前記触媒は、シェルとコアの質量比が1:1~1:7であり、好ましくは1:2~1:6である。
【0031】
別の実施形態では、本発明による触媒は、生成物選択性、生成物収率、及び前駆体から軽質オレフィン生成物への変換率など、軽質オレフィンの製造のための特性を改善しており、また、元素の周期表によるIIA、IIIA、VA、IIB、IIIB、VIB、及びVIII金属群を含み、ランタン、ストロンチウム、パラジウム、リン、白金、ガリウム、又は亜鉛から選択され得るが、これらに限定されない。
【0032】
一実施形態では、本発明による触媒は、以下の工程に従って調製することができる。
(a)ゼオライトを調製するための化合物及びソフトテンプレートを含む溶液を調製すること
(b)前記混合物を階層型ゼオライト化するために、工程(a)から得た混合物を、決定された温度及び時間で熱水プロセスに供すること
(c)層状複水酸化物シェルを調製するための化合物を含む溶液を調製すること
(d)工程(b)で得たゼオライト及び炭酸ナトリウムを含む溶液を調製すること
(e)工程(c)で調製した溶液を、工程(d)で調製した溶液に、溶液のpHを調整しながら滴下すること
(f)工程(e)で得た混合物を約1時間撹拌し、撹拌下で脱イオン水でさらに約1時間連続して洗浄した後、撹拌下でアセトンで約10時間~14時間連続して洗浄すること
(g)合成した触媒を分離するために、工程(f)で得たアセトンで洗浄された混合物を遠心分離すること
(h)工程(g)で得た触媒を乾燥させること、及び
(i)得た試料を、触媒1gに対して100mLの硝酸アンモニウム溶液を用いたイオン交換法により、温度80℃で約2時間硝酸アンモニウムに接触させ、次いで乾燥することを3回繰り返し、最後に温度550℃で約6時間~8時間焼成すること
工程(a)のソフトテンプレートが、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド及びテトラブチルアンモニウムヒドロキシドから選択されるテトラアルキルアンモニウム塩から選択されるが限定されない第4級アンモニウム塩であることを特徴とする。
【0033】
一実施形態では、ゼオライトの調製に使用される化合物は、アルミニウムイソプロポキシド、アルミン酸ナトリウム、又は硫酸アルミニウムから選択されるアルミナ化合物と、オルトケイ酸テトラエチル、ケイ酸ナトリウム、又はシリカゲルから選択されるシリカ化合物との混合物である。
【0034】
一実施形態では、工程(b)は、130℃~180℃の温度で操作される。
【0035】
別の実施形態では、本発明による触媒の調製方法は、乾燥及び焼成工程を更に含んでいてもよい。
【0036】
乾燥は、オーブンを用いた通常の乾燥、真空乾燥、撹拌乾燥、及びロータリーエバポレーターによって行われてもよい。
【0037】
焼成は、大気条件下で、約4時間~10時間、温度が約350℃~650℃で行われてもよく、好ましくは、約5時間~6時間、温度が約℃350~400℃である。
【0038】
別の実施形態では、本発明は、C4-C7炭化水素の接触分解からの軽質オレフィンの製造方法における本発明による触媒の使用に関する。
【0039】
一実施形態では、C4-C7炭化水素の接触分解は、C4-C7炭化水素の供給が、固定床装置で操作され得る反応のための適切な条件で、本発明による触媒と接触することで起こることがある。
【0040】
C4-C7炭化水素の接触分解は、約450℃~650℃の温度、好ましくは約550℃~600℃の温度で、大気圧~5バール、最も好ましくは大気圧下で行われる。
【0041】
一実施形態では、C4-C7炭化水素は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタンから選択され、好ましくはペンタンである。
【0042】
一実施形態では、前記触媒を用いたC4-C7炭化水素の接触分解から得る生成物は、軽質オレフィンであり、好ましくはエチレン及びプロピレンである。
【0043】
接触分解における炭化水素化合物の供給の重量空間速度(WHSV)は、約1時間-1~50時間-1であり、好ましくは約2時間-1~7時間-1である。
【0044】
通常、当業者は、C4-C7炭化水素の接触分解の反応条件を、供給物、触媒、及び反応器装置の型及び組成に適したものに変更することができる。
【0045】
以下の実施例は、この発明の実施形態を示すためのものであって、この発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0046】
触媒の調製
触媒の調製は、以下の方法に従って行うことができる。
【0047】
ゼオライトコアの調製
アルミニウムに対するケイ素のモル比が15である、アルミン酸ナトリウムとオルトケイ酸テトラエチルを含む溶液を調製した。ゼオライトのテンプレートとしてテトラプロピルアンモニウムヒドロキシドを用いた。次に、得られた混合物を約130℃~180℃の温度で約2日間~4日間熱水プロセスに供して、前記混合物をゼオライト化した。
【0048】
次に、得られたゼオライトを脱イオン水でpHが9より低くなるまで洗浄した。得られた物質を、約100℃~120℃の温度で約12時間~24時間乾燥した。その後、テンプレートを除去するために、約500℃~650℃の温度で約8時間~12時間焼成を行った。階層型ゼオライトを白色の粉末として得た。
【0049】
層状複水酸化物シェルの調製
2.4mmol~4.8mmolの硝酸マグネシウムと1.2mmol~2.4mmolの硝酸アルミニウムを含む層状複水酸化物の前駆体溶液を調製した。次に、この調製した溶液を、0.2g~0.5gの炭酸ナトリウムと0.5gの決定した型のゼオライトを含む混合物に滴下した。pHは約10になるように調整した。
【0050】
その後、前記混合物を約1時間撹拌し、脱イオン水で洗浄した。その後、アセトンを加えて10時間~14時間撹拌した。最後に、Chunpingらが開示した方法(Chemical Science,2016,7(2),1457-61)に従って、前記混合物を真空オーブンで乾燥させた。
【0051】
次に、ナトリウムイオンをプロトンイオンに変換して合成したゼオライトと層状複水酸化物の混合材料の触媒を、イオン交換法によりイオン交換した。得られたゼオライトと層状複水酸化物の混合材料の触媒を、0.1モルの硝酸アンモニウム(NHNO)水溶液に温度約80℃で溶解し、約2時間攪拌し、純水で洗浄した。得られたゼオライトを乾燥させた。次いで、得られたゼオライトを汚染物質を除去するために、温度約350℃で約6時間焼成した。
【0052】
比較例触媒A(Com ZSM5)
市販されている、アルミナに対するケイ素のモル比が15のZSM-5ナノゼオライトを比較例触媒Aとして用いた。
【0053】
比較例触媒B(ZSM5)
本発明の触媒Bによる例は、上記のゼオライトコアの調製で説明した方法で調製した。
【0054】
比較例触媒C(ComZSM5-Mg-Al(imp)
比較例触媒Cは、比較例Aを、0.4モル濃度~1モル濃度の硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムを10mL用いた含浸法によるマグネシウム及びアルミニウムの塩溶液と、80℃の温度で1時間~3時間接触させて調製した。その後、ロータリーエバポレーターで乾燥させ、100℃のオーブンで24時間乾燥させた。その後、試料を350℃の温度で6時間焼成した。
【0055】
本発明の触媒1による例(ComZSM5-LDH(ex))
本発明の触媒1による例は、ゼオライトコア及び層状複水酸化物シェルを有する触媒を得るために、比較例触媒Aをコアとして対象にし、上述した本発明による触媒の調製方法によって調製した。
【0056】
本発明の触媒2による例(ZSM5-LDH(ex))
本発明の触媒2による例は、ゼオライトコア及び層状二重水酸化物シェルを有する触媒を得るために、比較例触媒Bをコアとして対象にし、上述した本発明による触媒の調製方法によって調製した。
【0057】
軽質オレフィン生成物を製造するためのC4-C7炭化水素の接触分解の試験
軽質オレフィンの製造のためのC4-C7炭化水素の接触分解の試験は、以下の条件で行われ得る。
【0058】
約0.2g~0.4gの触媒を使用して、固定床反応器で接触分解を行った。反応の前に、触媒を約10ml/分~50ml/分の流量の窒素ガスと約1時間~3時間接触させた。
【0059】
次に、C5炭化水素化合物を約1.25g/hの流量で供給した。反応は、約500℃~600℃の温度で、大気圧、重量空間速度(WHSV)約2時間-1~5時間-1で続けた。
【0060】
次に、固定床反応器の出力に接続したガスクロマトグラフィーを用い、検出器として水素炎イオン化検出器(FID)を使用し、物質の各組成物の分析にはGASPROキャピラリーカラムを使用して、触媒と反応させた後の前駆体及び他の組成物の形成の変化を随時測定して、反応を監視した。
【0061】
図1は、本発明の触媒1及び触媒2による例のゼオライト及び層状複水酸化物のコアおよびシェル構造を示す、本発明による例と比較例の結晶の特性を示す。
【0062】
さらに、結晶の特性を示すために、走査型電子顕微鏡(SEM)と透過型電子顕微鏡(TEM)を採用した。その結果を図2に示すが、本発明によるゼオライトは、結晶サイズが約100nm~3,000nmの階層型ゼオライトであることがわかる。ミクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔の比表面積の試験から、触媒A及び触媒Bの両触媒は、マイクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔のサイズ分布を有し、メソ細孔及びマクロ細孔の割合は、全細孔容積と比較して15%~60%以上であることが分かった。さらに、触媒A及び触媒Bの階級的因子(HF)は約0.04であった。これは、両触媒が階層構造を有していることを示している。階級的因子は、次の式から算出できる。
【0063】
【数1】
【0064】
そこで、本発明による例のゼオライトと層状複水酸化物のコアシェル構造を確認するために、X線光電子分光法(XPS)を用いて、結晶サイズに応じて変化したマグネシウムとケイ素の百分率濃度を分析した。その結果を図3に示した。
【0065】
C4-C7炭化水素の接触分解による軽質オレフィンの生成効率に対する、階層型ゼオライトコアと層状複水酸化物シェルを含む触媒の効果を調べるために、本発明による触媒を比較例を用いて調べた。その結果を図4から図7に示した。
【0066】
図4は、本発明による例の軽質オレフィン生成物選択性の効率が、経時的に変化したことを示す。本発明による触媒は、比較例よりも優れた効率を与えることが分かり、本発明の触媒2による例は、最も高いペンタン変換率を示し、他の型の触媒よりも高い軽質オレフィン生成物選択性を有することを示した。
【0067】
図5は、本発明による例及び比較例の軽質オレフィン生成物選択性の効率を示す。本発明による触媒は、比較例よりも優れた効率を与えることが分かり、本発明の触媒2による例は、他の型の触媒よりも高いペンタン変換率及び高い軽質オレフィン生成物選択性を有することを示した。
【0068】
図6は、本発明による例及び比較例の軽質オレフィン生成物収量の効率を示す。本発明による触媒は、比較例よりも優れた効率を与えることが分かり、本発明の触媒2による例は、他の型の触媒よりも高いペンタン変換率及び高い軽質オレフィン生成物の収率を有することを示した。
【0069】
図7は、本発明による例及び比較例の生成物選択性の効率を示す。本発明の触媒2による例は、他の型の触媒よりも高いペンタン変換率及び高い軽質オレフィン生成物選択性を有するが、低級アルカン生成物選択性は低いことが分かった。
【0070】
上記の結果から、本発明による階層型ゼオライトコアと層状二重水酸化物シェルを含む触媒は、本発明の目的に記載されているように、C4-C7炭化水素の接触分解の高い軽質オレフィン生成物収量の変換率及び選択性を与えたといえる。
【0071】
(本発明の最良の態様)
本発明の最良の態様は、本発明の詳細な説明に記載されている通りである。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
C4-C7炭化水素から軽質オレフィンを製造するための触媒であって、前記触媒が、アルミニウムに対するケイ素のモル比(Si/Al)が2~250であるゼオライトのコアと、層状複水酸化物のシェルとを含むコアシェル構造を有する、触媒。
[2]
前記ゼオライトが、階層型ゼオライトである、[1]に記載の触媒。
[3]
前記ゼオライトが、0.3nm~0.6nmのマイクロ細孔、2nm~10nmのメソ細孔、及び50nm以上のマクロ細孔を含む階層型ゼオライトであり、全細孔容積に対してメソ細孔及びマクロ細孔の割合が15%~60%以上である、[1]又は[2]に記載の触媒。
[4]
前記ゼオライトが、アルミニウムに対するケイ素のモル比が15~30である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の触媒。
[5]
前記ゼオライトが、アルミニウムに対するケイ素のモル比が15に等しい、[1]~[4]のいずれか1つに記載の触媒。
[6]
前記ゼオライトが、ゼオライトのタイプZSM-5、FAU、MOR、BETA又はFERから選択される、[1]~[5]のいずれか1つに記載の触媒。
[7]
前記ゼオライトのコアが、100nm~3,000nmの結晶サイズを有する、[1]に記載の触媒。
[8]
請前記層状複水酸化物が、第2族金属及び第3族金属を主成分として含む、[1]に記載の触媒。
[9]
前記層状複水酸化物が、マグネシウム(Mg)及びアルミニウム(Al)を主成分として含む、[8]に記載の触媒。
[10]
前記層状複水酸化物が、アルミニウムに対するマグニシウムのモル比が1~3である、[1]、[8]又は[9]のいずれか1つに記載の触媒。
[11]
前記層状複水酸化物が、アルミニウムに対するマグニシウムのモル比が1~2である、[10]に記載の触媒。
[12]
前記層状複水酸化物が、100nm~1,000nmの厚さを有する、[1]、[8]~[11]のいずれか1つに記載の触媒。
[13]
前記触媒が、シェル:コアの質量比が1:1~1:7であるコア及びシェルを含む、[1]に記載の触媒。
[14]
前記触媒が、シェル:コアの質量比が1:2~1:6であるコア及びシェルを含む、[1]に記載の触媒。
[15]
[1]~[14]のいずれか1つに記載の触媒を用いた、C4-C7炭化水素の接触分解反応による軽質オレフィンの製造方法。
[16]
前記方法が、450℃~650℃の温度及び大気圧1~5バールの圧力で行われる、[15]に記載の方法。
[17]
前記炭化水素化合物が、ブタン、ペンタン、ヘキサン、又はヘプタンから選択される、[15]又は[16]に記載の方法。
[18]
前記炭化水素化合物が、ペンタンである、[17]に記載の方法。
[19]
生成物が軽質オレフィンである、[14]から[18]のいずれか1つに記載の方法。
[20]
好ましい生成物が、エチレン及びプロピレンである、[19]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7