(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ポリアミド、組成物及び対応するモバイル電子デバイス構成部品
(51)【国際特許分類】
C08G 69/02 20060101AFI20240408BHJP
C08G 69/26 20060101ALI20240408BHJP
C08G 69/36 20060101ALI20240408BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240408BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240408BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240408BHJP
【FI】
C08G69/02
C08G69/26
C08G69/36
C08L77/00
C08K7/14
C08K3/013
(21)【出願番号】P 2021548635
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 EP2020054363
(87)【国際公開番号】W WO2020169668
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2023-01-19
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シングレタリー, ナンシー ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ジェオル, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】フロレス, ジョエル
(72)【発明者】
【氏名】ポリーノ, ジョーエル
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/132456(WO,A1)
【文献】特開昭49-103996(JP,A)
【文献】特開平08-239469(JP,A)
【文献】特開2001-329169(JP,A)
【文献】特表2015-516560(JP,A)
【文献】特表2020-512450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0127440(US,A1)
【文献】特開2019-065262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/00-69/50
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I
):
【化1】
(式中:
nは16に等しく
、
R
1は1,4-ビス(メチル)シクロヘキサンで
ある)に従った、少なくとも55モル%の繰り返し単位(R
PA)を含む、ポリアミド(PA)。
【請求項2】
前記ポリアミド(PA)中の全モル数を基準として、少なくとも60モル%の式(I
)に従った繰り返し単位(R
PA)を含む、請求項1に記載のポリアミド(PA)。
【請求項3】
前記ポリアミドが、
- 1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサ
ンである少なくとも1つのジアミンと
- HOOC-(CH
2)
16-COOHである少なくとも1つのジカルボン酸、又はその誘導体と
を含む混合物の縮合生成物である、請求項1又は2に記載のポリアミド(PA)。
【請求項4】
混合物が、
- 少なくとも1つの
追加のジカルボン酸成分若しくはその誘導体、及び少なくとも1つの
追加のジアミン成分、
- 少なくとも1つの
追加のアミノカルボン酸、並びに/又は
- 少なくとも1つのラクタム
からなる群から選択される成分の少なくとも1つをさらに含む、請求項3に記載のポリアミド(PA)。
【請求項5】
- 前記
追加のジカルボン酸成分が、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
- 前記
追加のジアミン成分が、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジア
ミノペンタン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオク
タン、1,10-ジアミ
ノデカン、H
2N-(CH
2)
3-O-(CH
2)
2-O(CH
2)
3-NH
2、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載のポリアミド(PA)。
【請求項6】
前記ラクタムが、カプロラクタム、ラウロラクタム及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項4に記載のポリアミド(PA)。
【請求項7】
前記ポリアミドは、ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定した際、2.4GHzでの誘電率(Dk)が3.0未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項8】
前記ポリアミドは、ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定した際、2.4GHzでの散逸率(Df)が0.010未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)。
【請求項9】
- 請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)、
- 補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1つの成分
を含む、組成物(C)。
【請求項10】
前記組成物(C)の総重量を基準として、10重量%~60重量%のガラス繊維を含む、請求項9に記載の組成物(C)。
【請求項11】
前記組成物(C)の総重量を基準として、0.5重量%~5重量%の、TiO2、カーボンブラック、硫化亜鉛、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化第二鉄及びそれらの1つ以上の任意の組み合わせからなる群から選択される顔料、染料又は着色剤をさらに含む、請求項9又は10に記載の組成物(C)。
【請求項12】
前記組成物(C)の総重量を基準として、40重量%~70重量%の前記ポリアミド(PA)を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の組成物(C)。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載のポリアミド(PA)又は請求項9~12のいずれか一項に記載の組成物(C)を含む物品。
【請求項14】
モバイル電子デバイス物品又は構成部品、複合材料又は3Dプリント物品である、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
携帯電話、携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球位置測定システム受信機、及び携帯ゲームコンソールからなる群から選択される、モバイル電子デバイスの物品又は構成部品である、請求項13又は14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年2月19日出願の米国仮特許出願第62/807,409号に対する及び2019年5月2日出願の、欧州特許出願第19172330.3号に対する優先権を主張するものであり、これら出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、式(I)又は(II):
(式中、
nは16に等しく;
mは18に等しく;
R
1は1,4-ビス(メチル)シクロヘキサンであり;
R
2は1,4-ビス(メチル)シクロヘキサンである)
に従った繰り返し単位(R
PA)を含む、ポリアミド(PA)に関する。
【0003】
本発明は、また、そのようなポリアミドを含むポリマー組成物に、及びポリアミド組成物を組み入れたモバイル電子デバイス構成部品に関する。
【背景技術】
【0004】
低下した重量及び高い機械的性能のため、ポリマー組成物は、モバイル電子デバイス構成部品を製造するために幅広く使用されている。現在、改善された誘電性能(すなわち、低い誘電率及び散逸率)を有するモバイル電子デバイス構成部品を製造するために使用されるポリマー組成物に対する、市場からの高い需要がある。
【0005】
モバイル電子デバイスにおいて、様々な構成部品及びハウジングを形成する材料は、1つ以上のアンテナを通してモバイル電子デバイスによって送信及び受信されるワイヤレス無線信号(例えば、1MHz、2.4GHz及び5.0GHzの周波数)を著しく劣化させ得る。モバイル電子デバイスに使用される材料の誘電性能は、電磁放射線と相互作用し、誘電率は、その材料を通って移動する電磁信号(例えば、無線信号)を破壊する材料の能力を表すので、誘電率を測定することによって決定することができる。したがって、所与の周波数における材料の誘電率が低ければ低いほど、その周波数で材料が電磁信号を破壊することがより少なくなる。
【0006】
本出願人は、改善された誘電性能を有する新しいクラスのポリアミドであって、モバイル電子デバイス構成部品用の材料としてそれらを好適なものにするポリアミドを特定した。
【0007】
これらのポリアミドは、とりわけ、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンジアミン(1,4-BAMC)と、HOOC-(CH2)16-COOHである少なくとも1つの長鎖脂肪族ジカルボン酸とから誘導することができる。
【0008】
Kazuo Saotone及びHiroshi Komoto(Journal of Polymer Science,Vol 5,107-117,1967)の論文は、N,N’-ジアルキルp-キシリレンジアミン及びN,N’-ジアルキルヘキサメチレンジアミン(ここで、アルキルは具体的にはメチル又はエチルである)と長鎖脂肪族ジカルボン酸とからの、N-アルキル置換ポリアミド及びコポリアミドの調製を記載している。この論文は、また、組成の全体範囲にわたって結晶性であることが分かっているN-アルキルコポリアミドの調製を記載している。
【0009】
Heideckerらの論文(Antec 2002,Vol 3,3624-3628)は、様々な脂肪族及び芳香族ジアミンを、ある比率の4,4-ジメチルビベンゾエート及び1,18-オクタデカン二酸(C18二酸)とブレンドすることによって得られる、液晶ポリマーに関する。
【0010】
カナダ国特許第CA2 565 483号明細書(Degussa)は、m-キシリレンジアミンから出発する、様々な半結晶性ポリアミド、とりわけポリアミドMXD14及びMXD18の調製を記載している。
【0011】
欧州特許出願公開第2 562 203 A1号明細書(Mitsubishi)は、脂環式ジアミン単位(I)と、線状又は芳香族ジカルボン酸単位(II)と式(III)-[NH-CHR-CO]-で表される構成単位とを含むポリアミドに関する。脂環式ジアミン単位(I)は、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,3-BAC)及び/又は1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(1,4-BAC)などの、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンから誘導される。ジカルボン酸単位は、線状又は芳香族であり得る。それが線状である場合、ジカルボン酸は、それが4~20個、好ましくは5~18個、より好ましくは6~14個、さらにより好ましくは6~10個の炭素原子を有するようなものである。アジピン酸、セバシン酸及びドデカン二酸が実施例において使用されている。この公文書は、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンジアミンと1,18-オクタデカン二酸とから誘導されるポリアミドを記載していない。
【0012】
米国特許第3,992,360号明細書(Hoechst)は、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンで部分的に置き換えることができる、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの縮合によって得られる透明なポリアミドに関する。2~20個の炭素原子、好ましくは6~12個の炭素原子を有する直鎖又は分岐ジカルボン酸(好ましくは、アジピン酸又はデカン二酸)がポリアミドの調製のために使用され得る。この公文書は、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンジアミンと1,18-オクタデカン二環とから誘導されるポリアミドを記載していない。
【0013】
しかしながら、上にリストアップされた公文書のどれも、本発明のポリアミド及びそれらの有利な特性(溶融温度、誘電性能及び透明性)を記載していない。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、式(I)又は式(II):
(式中:
nは16に等しく、
mは18に等しく、
R
1は1,4-ビス(メチル)シクロヘキサンであり、
R
2は1,4-ビス(メチル)シクロヘキサンである)
に従った繰り返し単位(R
PA)を含む、ポリアミド(PA)に関する。
【0015】
好ましくは、ポリアミドは、
- 少なくとも50モル%の1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンジアミンを含有する少なくとも1つのジアミン成分と、
- 少なくとも50モル%のHOOC-(CH2)16-COOHを含有する少なくとも1つのジカルボン酸、又はその誘導体と
を含む混合物の縮合生成物である。
【0016】
ある実施形態によれば、ポリアミド(PA)又はこのポリアミド(PA)を組み入れた組成物(C)は、ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるように、3.0未満の2.4GHzでの誘電率ε、及び/又はASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるように、0.010未満の2.4GHzでの散逸率(Df)を有する。
【0017】
本発明は、また、本発明のポリアミドを含む又はこのポリアミド(PA)を組み入れた物品に関する。物品は、携帯電話、携帯情報端末、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球位置測定システム受信機、及び携帯ゲームコンソールからなる群の中で例えば選択され得る。
【発明を実施するための形態】
【0018】
例えば1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンジアミン(1,4-BAMC)と、少なくとも1つのジカルボン酸HOOC-(CH2)n-COOH(式中、nは16に等しい)とから誘導される、ポリアミド(PA)、並びにこのポリアミドと、任意選択的にガラス繊維と1つ以上の添加剤とを含む、ポリアミド組成物(C)が本明細書で記載される。本発明のポリアミド(PA)は、低い誘電率Dk(高い誘電性能)を有する。本明細書に記載されるポリアミド(PA)は、モバイル電子デバイス物品又は構成部品に組み入れることができる。
【0019】
ある実施形態によれば、ポリアミド(PA)又はポリアミド組成物(C)は、好ましくは、ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるように測定されるように、3.0未満、好ましくは2.9未満、2.8未満、2.7未満又は2.65未満の2.4GHzでの誘電率Dkを有する。
【0020】
本発明のポリアミド(PA)は、式(I)又は式(II):
(式中、
nは16に等しく、
mは18に等しく、
R
1は1,4-ビス(メチル)シクロヘキサンであり、
R
2は1,4-ビス(メチル)シクロヘキサンである)
の繰り返し単位(R
PA)を含む。
【0021】
本発明のポリアミド(PA)は、本質的に繰り返し単位(RPA)に存するポリアミドであっても、繰り返し単位(RPA)を含むコポリアミド(PA)であってもよい。より正確には、表現「コポリアミド」は、本明細書では、例えば、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンジアミン(1,4-BAMC)と、少なくとも1つのジカルボン酸HOOC-(CH2)n-COOH(式中、nは16に等しい)とから誘導される、繰り返し単位(RPA)、並びに繰り返し単位(RPA)とは異なる、繰り返し単位(RPA*)を含むコポリアミドを示すために用いられる。
【0022】
ある実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、例えば1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサンジアミン(1,4-BAMC)と1,18-オクタデカン二酸とから誘導される、式(I)(式中、R1は1,4-ビス(メチル)シクロヘキサンである)の繰り返し単位(RPA)に本質的に存する。
【0023】
ポリアミド(PA)が繰り返し単位(R
PA*)を含む場合、その繰り返し単位(R
PA*)は、式(III)及び/又は(IV):
(式中、
R
3は、結合;1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を任意選択的に含み、且つ、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SO3M)(例えば、式中、Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg又はCaである)、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルチオ、C
1~C
6アシル、ホルミル、シアノ、C
6~C
15アリールオキシ及びC
6~C
15アリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された、C
1~C
15アルキル及びC
6~C
30アリールからなる群から選択され;
R
4は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N又はS)を任意選択的に含み、且つ、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素)、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SO
3M)(例えば、式中、Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg又はCaである)、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルチオ、C
1~C
6アシル、ホルミル、シアノ、C
6~C15アリールオキシ及びC
6~C
15アリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された、C
1~C
20アルキル及びC
6~C
30アリールからなる群から選択され;
R
5は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N及びS)を任意選択的に含み、且つ、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素)、ヒドロキシ(-OH)、スルホ(-SO
3M)(例えば、式中、Mは、H、Na、K、Li、Ag、Zn、Mg又はCaである)、C
1~C
6アルコキシ、C
1~C
6アルキルチオ、C
1~C
6アシル、ホルミル、シアノ、C
6~C
15アリールオキシ及びC
6~C
15アリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された、線状又は分岐C
2~C
14アルキルからなる群から選択される)
のものであり得る。
【0024】
本発明のポリアミド(PA)は、式(V)又は(VI):
(式中、
n
x、n
y及びn
zは、それぞれ、各繰り返し単位x、y及びzのモル%であり;
繰り返し単位x、y及びzは、ブロックで、交互に又はランダムに配置されており;
n
x+n
y+n
z=100であり;
5≦n
x≦100であり;
R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、上記の通りである)
のものであり得る。
【0025】
本発明のポリアミド(PA)は、1,000g/モル~40,000g/モル、例えば2,000g/モル~35,000g/モル又は4,000~30,000g/モルの範囲の数平均分子量Mnを有し得る。数平均分子量Mnは、ポリスチレン標準を使ってASTM D5296を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
【0026】
本開示のポリアミド(PA)において、繰り返し単位yは、脂肪族又は芳香族であり得る。本発明の目的のためには、表現「芳香族繰り返し単位」は、少なくとも1つの芳香族基を含む任意の繰り返し単位を意味することを意図する。芳香族繰り返し単位は、少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合によって、又は少なくとも1つの脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとの重縮合よって、又は芳香族アミノカルボン酸の重縮合によって形成され得る。本発明の目的のためには、ジカルボン酸又はジアミンは、それが1つ又は2つ以上の芳香族基を含む場合に「芳香族」と考えられる。
【0027】
本発明のポリアミド(PA)において、繰り返し単位zは、脂肪族であり、R5は、1つ以上のヘテロ原子(例えば、O、N及びS)を任意選択的に含み、且つ、ハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ及びC6~C15アリールからなる群から選択される1つ以上の置換基で任意選択的に置換された、線状又は分岐C2~C14アルキルである。
【0028】
本発明のポリアミド(PA)は、繰り返し単位x及びyから、又は繰り返し単位x及びzから、又は繰り返し単位x、y及びzから構成され得る。繰り返し単位x、y及びzは、ブロックで、交互に又はランダムに配置される。
【0029】
本出願において:
- いずれの記載も、たとえ特定の実施形態に関連して記載されているとしても、本開示の他の実施形態に適用可能であり、且つ、それらと交換可能であり;
- 要素若しくは成分が、列挙された要素若しくは成分のリストに含まれる及び/又はリストから選択されると言われる場合、本出願で明示的に企図される関連実施形態では、要素若しくは成分はまた、個別の列挙された要素若しくは成分のいずれか1つであることができるか、又は明示的にリストアップされた要素若しくは成分の任意の2つ以上からなる群からまた選択することができ;要素若しくは成分のリストに列挙されたいかなる要素若しくは成分も、このようなリストから省略され得ることが理解されるべきであり;
- 端点による数値範囲の本明細書でのいかなる列挙も、列挙された範囲内に包含される全ての数並びに範囲の端点及び同等物を含む。
【0030】
本明細書の全体にわたって、全ての温度は、摂氏(℃)単位で示される。
【0031】
特に具体的に限定しない限り、用語「アルキル」、並びに「アルコキシ」、「アシル」及び「アルキルチオ」などの派生用語は、本明細書で用いるところでは、それらの範囲内に直鎖、分岐鎖及び環状部分を含む。アルキル基の例は、メチル、エチル、1-メチルエチル、プロピル、1,1-ジメチルエチル、及びシクロプロピルである。特に具体的に記述しない限り、各アルキル及びアリール基は、非置換であっても、ハロゲン、ヒドロキシ、スルホ、C1~C6アルコキシ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ若しくはC6~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよく、但し、置換基が立体的に相溶性であり、且つ、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。用語「ハロゲン」又は「ハロ」には、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が含まれ、フッ素が好ましい。
【0032】
用語「アリール」は、フェニル、インダニル又はナフチル基を言う。アリール基は、1つ以上のアルキル基を含み得、この場合、「アルキルアリール」と呼ばれることもあり;例えばシクロ芳香族基及び2つのC1~C6基(例えば、メチル又はエチル)から構成され得る。アリール基は、また、1つ以上のヘテロ原子、例えばN、O又はSを含み得、この場合、「ヘテロアリール」と呼ばれることもあり;これらのヘテロ芳香環は、他の芳香族システムに縮合し得る。そのようなヘテロ芳香環には、フラニル、チエニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、イソオキサゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラジニル及びトリアジニル環構造が含まれるが、それらに限定されない。アリール又はヘテロアリール置換基は、非置換であっても、又はハロゲン、ヒドロキシ、C1~C6アルコキシ、スルホ、C1~C6アルキルチオ、C1~C6アシル、ホルミル、シアノ、C6~C15アリールオキシ若しくはC6~C15アリールから選択されるが、それらに限定されない1つ以上の置換基で置換されていてもよく、但し、置換基が立体的に相溶性であり、且つ、化学結合及び歪みエネルギーの規則が満たされていることを条件とする。
【0033】
ある実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、
- ジアミン成分中の全モル数を基準として、少なくとも5モル%の1,4-BAMC(又は少なくとも10モル%、少なくとも15モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、少なくとも45モル%、少なくとも50モル%、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%若しくは少なくとも98モル%の1,3-BAMC及び/若しくは1,4-BAMC)を含有する少なくとも1つのジアミン成分と、
- ジカルボン酸成分中の全モル数を基準として、少なくとも5モル%のHOOC-(CH2)16-COOH(又は少なくとも10モル%、少なくとも15モル%、少なくとも20モル%、少なくとも25モル%、少なくとも30モル%、少なくとも35モル%、少なくとも40モル%、少なくとも45モル%、少なくとも50モル%、少なくとも55モル%、少なくとも60モル%、少なくとも65モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%、少なくとも80モル%、少なくとも85モル%、少なくとも90モル%、少なくとも95モル%若しくは少なくとも98モル%のHOOC-(CH2)16-COOH)を含有する少なくとも1つのジカルボン酸成分、又はその誘導体と
を含む混合物の縮合生成物である。
【0034】
ある実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、
- 少なくとも1つのジカルボン酸成分(本明細書では二酸とも呼ばれる)又はその誘導体、及び少なくとも1つのジアミン成分、
- 少なくとも1つのアミノカルボン酸、並びに
- 少なくとも1つのラクタムからなる群から選択される成分の少なくとも1つを含む混合物の縮合生成物である。
【0035】
本発明のポリアミド(PA)は、例えば、少なくとも5モル%の、例えば少なくとも約10モル%、少なくとも約15モル%、少なくとも約20モル%、少なくとも約25モル%、少なくとも約30モル%、少なくとも約35モル%、少なくとも約40モル%、少なくとも約45モル%、少なくとも約50モル%、少なくとも約55モル%、少なくとも約60モル%、少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%又は少なくとも約98モル%の、例えば1,4-BAMCと、少なくとも1つのジカルボン酸HOOC-(CH2)16-COOHとから誘導される、繰り返し単位(RPA)を含む。
【0036】
本開示のポリアミド(PA)は、繰り返し単位(RPA)に本質的に存するポリアミドであり得る。そのような場合に、ポリアミドは、2モル%未満の、繰り返し単位(RPA)とは異なる繰り返し単位、例えば1モル%未満、0.5モル%未満又はさらに0.1モル%未満の繰り返し単位(RPA)とは異なる繰り返し単位を含む。
【0037】
表現「少なくとも」は、本明細書では、「以上である」を意味することを意図する。例えば、表現「少なくとも5モル%の繰り返し単位(RPA)」は、本明細書では、ポリアミド(PA)が、5モル%の繰り返し単位(RPA)又は5モル%超の繰り返し単位(RPA)を含み得ることを意味する。表現「少なくとも」は、それ故、本発明との関連で数学的記号「≧」に対応する。
【0038】
表現「未満」は、本発明との関連で数学的記号「<」に対応する。例えば、表現「100モル%未満の繰り返し単位(RPA)」は、本明細書では、ポリアミドが厳密に100モル%未満の繰り返し単位(RPA)を含み、それ故、繰り返し単位(RPA)と少なくとも1つの別の繰り返し単位(RPA*)とからできた、コポリアミドとしての資格があることを意味する。
【0039】
この実施形態によれば、ジカルボン酸成分は、少なくとも2個の酸性部分-COOHを含む多種多様な脂肪族又は芳香族成分の中で選択することができる。この実施形態によれば、ジアミン成分は、少なくとも2個のアミン部分-NH2を含む多種多様な脂肪族又は芳香族成分の中で選択することができる。
【0040】
表現「その誘導体」は、表現「ジカルボン酸」と組み合わせて用いられる場合、重縮合条件で反応を受けてアミド結合を生成するいずれの誘導体も意味することを意図する。アミド形成誘導体の例としては、そのようなカルボン酸の、モノ-又はジ-メチル、エチル又はプロピルエステルなどの、モノ-又はジアルキルエステル;そのモノ-又はジアリールエステル;その一酸又は二酸ハロゲン化物;そのカルボン酸無水物及びその一酸又は二酸アミド、モノ-又はジカルボキシレート塩が挙げられる。
【0041】
脂肪族ジカルボン酸の非限定的な例は、とりわけ、シュウ酸(HOOC-COOH)、マロン酸(HOOC-CH2-COOH)、コハク酸[HOOC-(CH2)2-COOH]、グルタル酸[HOOC-(CH2)3-COOH]、2,2-ジメチル-グルタル酸[HOOC-C(CH3)2-(CH2)2-COOH]、アジピン酸[HOOC-(CH2)4-COOH]、2,4,4-トリメチル-アジピン酸[HOOC-CH(CH3)-CH2-C(CH3)2-CH2-COOH]、ピメリン酸[HOOC-(CH2)5-COOH]、スベリン酸[HOOC-(CH2)6-COOH]、アゼライン酸[HOOC-(CH2)7-COOH]、セバシン酸[HOOC-(CH2)8-COOH]、ウンデカン二酸[HOOC-(CH2)9-COOH]、ドデカン二酸[HOOC-(CH2)10-COOH]、トリデカン二酸[HOOC-(CH2)11-COOH]、テトラデカン二酸[HOOC-(CH2)12-COOH]、ペンタデカン二酸[HOOC-(CH2)13-COOH]、ヘキサデカン二酸[HOOC-(CH2)14-COOH]、オクタデカン二酸[HOOC-(CH2)16-COOH]である。このカテゴリーには、また、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸及び1,3-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸が含まれる。
【0042】
芳香族二酸の非限定的な例は、とりわけ、イソフタル酸(IPA)、テレフタル酸(TPA)などの、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えばナフタレン-2,6-ジカルボン酸)、4,4’-ビ安息香酸、2,5-ピリジンジカルボン酸、2,4-ピリジンジカルボン酸、3,5-ピリジンジカルボン酸、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-カルボキシフェニル)ケトン、4,4’-ビス(4-カルボキシフェニル)スルホン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3-カルボキシフェニル)メタン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3-カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。
【0043】
芳香族ジアミン(NNar)の非限定的な例は、とりわけ、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(3,4’-ODA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(4,4’-ODA)、p-キシリレンジアミン(PXDA)及びm-キシリレンジアミン(MXDA)である。
【0044】
脂肪族ジアミン(NNal)の非限定的な例は、とりわけ、1,2-ジアミノエタン、1,2-ジアミノプロパン、プロピレン-1,3-ジアミン、1,3-ジアミノブタン、1,4-ジアミノブタン(プトレシン)、1,5-ジアミノペンタン(カダベリン)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン(すなわち、1,6-ジアミノヘキサン)、3-メチルヘキサメチレンジアミン、2,5-ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチル-ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、2,2,7,7-テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、5-メチル-1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12 ジアミノドデカン、1,13 ジアミノトリデカン、2,5-ジアモノテトラヒドロフラン及びN,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミンである。このカテゴリーには、また、イソホロンジアミン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、ビス-p-アミノシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン(MACM)、及びビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(MACM)などの脂環式ジアミンが含まれる。
【0045】
脂肪族ジアミン(NNal)は、また、ポリエーテルジアミンの群の中で選択することができる。ポリエーテルジアミンは、エトキシレート化(EO)主鎖を及び/又はプロポキシレート化(PO)主鎖をベースとすることができ、それらは、エチレンオキシド末端、プロピレンオキシド末端又はブチレンオキシド末端ジアミンであることができる。そのようなポリエーテルジアミンは、例えば、商品名Jeffamine(登録商標)及びElastamine(登録商標)(Hunstman)で販売されている。
【0046】
本発明の実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、少なくとも1つのアミノカルボン酸(繰り返し単位z)、及び/又は少なくとも1つのラクタム(繰り返し単位z)を含む。
【0047】
アミノカルボン酸は、3~15個の炭素原子、例えば4~13個の炭素原子を有し得る。ある実施形態によれば、アミノカルボン酸は、6-アミノヘキサン酸、9-アミノノナン酸、10-アミノデカン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、13-アミノトリデカン酸、3-(アミノメチル)安息香酸、4-(アミノメチル)安息香酸、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0048】
ラクタムは、3~15個の炭素原子、例えば4~13個の炭素原子を有し得る。ある実施形態によれば、ラクタムは、カプロラクタム、ラウロラクタム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0049】
ある実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、
- 少なくとも5モル%の1,4-BAMC、
- 少なくとも5モル%の1つのジカルボン酸(DA)HOOC-(CH2)16-COOH、又はその誘導体、
- (DA)とは異なる、少なくとも1つの追加のジカルボン酸成分、及び
- 1,4-BAMCとは異なる、少なくとも1つの追加のジアミン
を含む混合物の縮合生成物であり、
ここで、
- 追加のジカルボン酸成分は、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、1,4-シクロヘキサン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビ安息香酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、5-スルホフタル酸、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
- 追加のジアミン成分は、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアモノペンタン(diamonopentane)、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ジアミノノナン、2-メチル-1,8-ジアミノオクトアン(diaminooctoane)、1,10-ジアミンデカン(diaminedecane)、1,12-ジアミノドデカン、H2N-(CH2)3-O-(CH2)2-O(CH2)3-NH2、m-キシリレンジアミン、p-キシリレン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0050】
別の実施形態によれば、ポリアミドは、
- 少なくとも5モル%の1,4-BAMC、
- 少なくとも5モル%の1つジカルボン酸(DA)HOOC-(CH2)16-COOH、又はその誘導体、
- (DA)とは異なる、少なくとも1つの追加のジカルボン酸成分、及び
- 1,4-BAMCとは異なる、少なくとも1つの追加のジアミン成分
を含む混合物の縮合生成物であり、
ここで、
- 追加のジカルボン酸成分は、アジピン酸、テレフタル酸、イソフタル酸及びそれらの混合物からなる群から選択され、
- 追加のジアミン成分は、ヘキサメチレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
別の実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、
- 少なくとも5モル%の1,4-BAMC、
- 少なくとも5モル%の1つのジカルボン酸(DA)HOOC-(CH2)16-COOH、又はその誘導体、
- カプロラクタム、ラウロラクタム、11-アミノウンデカン酸、3-(アミノメチル)安息香酸及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのラクタム又はアミノ酸
を含む混合物の縮合生成物である。
【0052】
好ましい実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、少なくとも50モル%の繰り返し単位(RPA)、例えば少なくとも60モル%、少なくとも70モル%、少なくとも75モル%の繰り返し単位(RPA)を含む。この実施形態によれば、ポリアミド(RPA)は、式(V)又は(VI)において;
50≦nx≦100、
60≦nx≦100、
70≦nx≦100又は
75≦nx≦100
であるようなものである。
【0053】
本発明のポリアミドは、100モル%未満の繰り返し単位(RPA)を含み得る。
【0054】
別の好ましい実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、99モル%未満の繰り返し単位(RPA)、例えば、98モル%未満、97モル%未満、96モル%の繰り返し単位(RPA)を含む。この実施形態によれば、ポリアミド(PA)は、式(V)又は(VI)において;
5≦nx≦99、
5≦nx≦98、
5≦nx≦97又は
5≦nx≦96
であるようなものである。
【0055】
nx、ny及びnzは、それぞれ、各繰り返し単位x、y及びzのモル%である。本発明の異なる実施形態の例として、本発明のポリアミド(PA)が繰り返し単位x及びyから専ら構成される場合、nx+ny=100であり、nz=0である。この場合、繰り返し単位yは、ジアミン成分及び二酸成分から構成され;縮合反応に添加されるジアミンのモル数及び二酸のモル数は等しい。例えば、ポリアミドが、nx=60モル%及びny=40モル%で、1,4-BAMC、及びジカルボン酸(DA)HOOC-(CH2)16-COOH、並びにテレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンから専ら構成される場合、実質的に同じモル数、すなわち40モル%の、テレフタル酸及びヘキサメチレンジアミンが縮合混合物に添加されるべきである。用語「実質的に」は、本明細書では、二酸/ジアミン比が0.9~1.1、例えば0.95~1.05で変わることを意味することを意図する。
【0056】
ある実施形態によれば、本発明のポリアミド(PA)は、ASTM D3418に従って測定されるように、少なくとも約50℃、例えば少なくとも約58℃、少なくとも約60℃又は少なくとも約62℃のガラス転移温度を有する。
【0057】
ある実施形態によれば、本発明のポリアミド(PA)は、ASTM D3418に従って測定されるように、少なくとも約150℃、例えば少なくとも約152℃、少なくとも約154℃の溶融温度(Tm)を有する。
【0058】
ある実施形態によれば、本発明のポリアミド(PA)は、
- ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるように、3.0未満、好ましくは2.9未満又は2.8未満の2.4GHzでの誘電率(Dk)、及び又は
- ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるように、0.010未満、好ましくは0.009未満、0.0087未満又は0.0085未満の、2.4MHzでの散逸率(Df)
を有する。
【0059】
ある実施形態によれば、本発明のポリアミド(PA)は、ASTM D 1003に従って測定されるように、1mmで少なくとも50%、優先的には少なくとも60%、優先的には少なくとも70%の光透過率(透明度とも呼ばれる)を有する。
【0060】
本明細書で記載されるポリアミド(PA)は、ポリアミド及びポリフタルアミドの合成に適応した任意の従来法によって調製することができる。
【0061】
優先的には、本発明のポリアミドは、40重量%未満、優先的には30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満の水の存在下で、優先的には添加水なしで、少なくともTm+10℃(Tmはポリアミドの溶融温度である)の温度以下でモノマーを加熱することにより反応させることによって調製される。
【0062】
本明細書で記載されるポリアミド(PA)は、例えば、モノマー及びコモノマーの水溶液の熱重縮合によって調製することができる。コポリアミドは、アミン又はカルボン酸部分と反応することができる一官能性分子であり、そしてコポリアミドの分子量を制御するために使用される連鎖リミッターを含有し得る。例えば、連鎖リミッターは、酢酸、プロピオン酸、安息香酸及び/又はベンジルアミンであることができる。触媒をまた使用することができる。触媒の例は、亜リン酸、オルト-リン酸、メタ-リン酸、次亜リン酸ナトリウムなどのアルカリ金属次亜リン酸塩及びフェニルホスフィン酸である。ホスファイトなどの安定剤がまた使用され得る。
【0063】
本明細書で記載されるポリアミド(PA)は、また有利には、無溶媒プロセス、すなわち、溶融物で、溶媒の不在下で行われるプロセスによって調製することができる。縮合が無溶媒である場合、反応は、モノマーに対して不活性な材料でできた装置で実施することができる。この場合、装置は、モノマーの十分な接触を提供するために選択され、この装置では、揮発性反応生成物の除去が実行可能である。好適な装置としては、撹拌反応器、押出機及び混錬機が挙げられる。
【0064】
ポリアミド組成物(C)
ポリアミド組成物(C)は、上記の、本発明のポリアミド(PA)を含む。
【0065】
ポリアミドは、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、30重量%超、35重量%超、40重量%超又は45重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0066】
ポリアミドは、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、99.95重量%未満、99重量%未満、95重量%未満、90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満又は60重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0067】
ポリアミドは、例えば、ポリアミド組成物(C)の総重量を基準として、35~60重量%、例えば40~55重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0068】
組成物(C)は、また、補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤からなる群から選択される1つの成分を含み得る。
【0069】
幅広い選択肢の補強剤(補強繊維又は充填材とも呼ばれる)が、本発明による組成物に添加され得る。それらは、繊維状及び粒子状補強剤から選択することができる。繊維状補強充填材は、本明細書では、平均長さが幅及び厚さの両方よりも著しく大きい、長さ、幅及び厚さを有する材料であると考えられる。一般に、そのような材料は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20又は少なくとも50の、長さと最大の幅及び厚さとの間の平均比と定義される、アスペクト比を有する。
【0070】
補強充填材は、鉱物充填材(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維及びウォラストナイトから選択され得る。
【0071】
繊維充填材の中で、ガラス繊維が好ましい;ガラス繊維には、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyのchapter 5.2.3,p.43-48に記載されているような、チョップドストランドA-、E-、C-、D-、S-及びR-ガラス繊維が含まれる。好ましくは、充填材は、繊維充填材から選択される。それは、より好ましくは、高温用途に耐えることができる補強繊維である。
【0072】
補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、15重量%超、20重量%超、25重量%超又は30重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満又は50重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0073】
補強充填材は、例えば、ポリアミド組成物(C)の総重量を基準として、20~60重量%、例えば30~50重量%の範囲の量で組成物(C)中に存在し得る。
【0074】
本発明の組成物(C)は、また、強化剤を含み得る。強化剤は、一般に、例えば室温未満、0℃未満又は-25℃未満さえのTgの、低ガラス転移温度(Tg)ポリマーである。その低いTgの結果として、強化剤は、典型的には室温でエラストマー性である。強化剤は、官能化されたポリマー主鎖であることができる。
【0075】
強化剤のポリマー主鎖は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン-ブテン;エチレン-オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン-プロピレン-ゴム(EPR);エチレン-プロピレン-ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン-アクリレートゴム;ブタジエン-アクリロニトリルゴム、エチレン-アクリル酸(EAA)、エチレン-酢酸ビニル(EVA);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)タイプのコア-シェルエラストマー、又は上記の1つ以上の混合物を含むエラストマー主鎖から選択することができる。
【0076】
強化剤が官能化されている場合、主鎖の官能化は、官能基を含むモノマーの共重合に又はさらなる成分でのポリマー主鎖のグラフト化に由来することができる。
【0077】
官能化された強化剤の具体的な例は、とりわけ、エチレンと、アクリル酸エステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとブチルエステルアクリレートとのコポリマー;エチレンと、ブチルエステルアクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン-無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたスチレンコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン-アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーである。
【0078】
強化剤は、組成物(C)の総重量を基準として、1重量%超、2重量%超又は3重量%超の総量で組成物(C)中に存在し得る。強化剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満又は10重量%未満の総量で組成物(C)中に存在し得る。
【0079】
組成物(C)は、また、可塑剤、着色剤、顔料(例えば、カーボンブラック及びニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば、線状低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、核形成剤及び酸化防止剤などの、当技術分野で一般に使用されている他の従来の添加剤を含み得る。
【0080】
組成物(C)は、また、1種以上の他のポリマー、好ましくは本発明のポリアミド(PA)とは異なるポリアミドを含み得る。とりわけ、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、及びより一般的には芳香族若しくは脂肪族飽和二酸と脂肪族飽和若しくは芳香族第一級ジアミン、ラクタム、アミノ酸又はこれらの異なるモノマーの混合物との間の重縮合によって得られるポリアミドなどの、半結晶性又は非晶性ポリアミドを挙げることができる。
【0081】
ある実施形態によれば、ポリアミド組成物(C)は:
- ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるように、3.0未満、好ましくは2.9未満、好ましくは2.8未満の2.4GHzでの誘電率(Dk)、及び/又は
- ASTM D2520(2.4GHz)に従って測定されるように、0.010未満、好ましくは0.009未満、好ましくは0.0089未満の2.4GHzでの散逸率(Df)
を有する。
【0082】
ポリアミド組成物(C)の調製
本発明は、さらに、上で詳述されたような組成物(C)の製造方法であって、前記方法が、ポリアミド(PA)と、特定の成分、例えば充填材、強化剤、安定化剤、及び任意の他の任意選択の添加剤とを溶融ブレンドする工程を含む方法に関する。
【0083】
任意の溶融ブレンディング方法が、本発明との関連でポリマー成分と非ポリマー成分とを混合するために用いられ得る。例えば、ポリマー成分及び非ポリマー成分は、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリュー混練機、又はバンバリーミキサーなどの、溶融ミキサーへ供給され得、添加ステップは、全ての成分の同時添加又はバッチ式の段階的添加であり得る。ポリマー成分及び非ポリマー成分がバッチ式で徐々に添加される場合、ポリマー成分及び/又は非ポリマー成分の一部が先ず添加され、次いで、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分及び非ポリマー成分と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、補強された組成物を調製するために延伸押出成形が用いられ得る。
【0084】
物品及び用途
本発明は、また、本発明のポリアミド(PA)を含む物品に、及び上記のコポリアミド組成物(C)を含む物品に関する。
【0085】
物品は、とりわけ、モバイルエレクトロニクス、LEDパッケージング、石油ガス用途及び配管設備において使用することができる。
【0086】
物品は、例えば、モバイル電子デバイス構成部品であることができる。本明細書で用いるところでは、「モバイル電子デバイス」は、便利に運ばれ、様々な場所で使用されることを意図される電子デバイスを言う。モバイル電子デバイスとしては、携帯電話、携帯情報端末(「PDA」)、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピューティングデバイス(例えば、スマートウォッチ、スマートグラス等)、カメラ、携帯オーディオプレーヤー、携帯ラジオ、全地球位置測定システム受信機、及び携帯ゲームコンソールを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0087】
モバイル電子デバイス構成部品は、例えば、無線アンテナ及び本組成物(C)を含み得る。この場合、無線アンテナは、WiFiアンテナ又はRFIDアンテナであることができる。モバイル電子デバイス構成部品は、また、アンテナハウジングであり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、モバイル電子デバイス構成部品は、アンテナハウジングである。いくつかのそのような実施形態では、無線アンテナの少なくとも一部分は、ポリアミド組成物(C)上に配置される。さらに又は或いはまた、無線アンテナの少なくとも一部分は、ポリアミド組成物(C)から転置することができる。いくつかの実施形態では、デバイス構成部品は、取付け穴又は他の締結デバイス(それ自体と、回路基板、マイクロホン、スピーカー、ディスプレイ、バッテリー、カバー、ハウジング、電気若しくは電子コネクタ、ヒンジ、無線アンテナ、スイッチ、又はスイッチパッドを含むが、それらに限定されない、モバイル電子デバイスの別の構成部品との間のスナップフィットコネクタを含むが、それらに限定されない)を持った取付け構成部品のものであることができる。いくつかの実施形態では、モバイル電子デバイスは、入力デバイスの少なくとも一部であることができる。
【0089】
電気及び電子デバイスの例は、コネクタ、コンタクタ及びスイッチである。
【0090】
ポリアミド(A)、ポリアミド組成物(C)及びそれらから調製された物品は、単層又は多層物品において、包装用途向けのガスバリア材料としても使用され得る。
【0091】
ポリアミド(A)、ポリアミド組成物(C)及びそれらから調製された物品は、また、自動車用途、例えば空気導入系、冷却及び加熱系、駆動系及び燃料系において使用することができる。
【0092】
物品は、本発明のポリアミド(PA)又はポリアミド組成物(C)から、熱可塑性樹脂に適応した任意のプロセス、例えば押出、射出成形、ブロー成形、回転成形又は圧縮成形によって成形することができる。
【0093】
物品は、本発明のポリアミド(PA)又はポリアミド組成物(C)から、例えばフィラメントの形態にある、材料の押出の工程を含むか、又はこの場合に粉末の形態にある、材料のレーザー焼結の工程を含む方法によって印刷することができる。
【0094】
本発明は、また、付加製造システムでの3次元(3D)物体の製造方法であって、
- 本発明のポリアミド(PA)又はポリアミド組成物(C)を含む部品材料を提供する工程と、
- この部品材料から3次元物体の層を印刷する工程と
を含む、方法に関する。
【0095】
ポリアミド(PA)又はポリアミド組成物(C)は、それ故、3D印刷のプロセス、例えば、熱溶解積層法(FDM)としても知られる、溶融フィラメント製造法に使用されるスレッド又はフィラメントの形態にあることができる。
【0096】
ポリアミド(PA)又はポリアミド組成物(C)は、また、3D印刷のプロセス、例えば選択的レーザー焼結法(SLS)に使用される、粉末、例えば実質的に球形の粉末の形態にあることができる。
【0097】
ポリアミド(PA)、組成物(C)及び物品の使用
本発明は、上で記載されたような、モバイル電子デバイス構成部品を製造するための上記のポリアミド(PA)、組成物(C)又は物品の使用に関する。
【0098】
本発明は、また、物体を3D印刷するための上記のポリアミド(PA)又は組成物(C)の使用に関する。
【0099】
参照により本明細書に援用される任意の特許、特許出願、及び刊行物の開示が、それが用語を不明確にし得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0100】
これらの実施例は、幾つかの発明又は比較ポリアミドの熱的、誘電的及び機械的性能を実証する。
【0101】
原材料
1,3-BAMC:TCIから入手した、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、異性体混合物
1,4-BAMC:TCIから入手した、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、異性体混合物
PXD:Aldrichから入手したp-キシリレンジアミン
MXD:Aldrichから入手したm-キシリレンジアミン
C6:Aldrichから入手した、1,6-ヘキサンジアミン
C18:Elevanceから入手した、1,18-オクタデカン二酸、InherentTMC18
【0102】
ポリアミド調製
以下に例示されるポリアミドの全ては、攪拌機と、圧力調整バルブを装着した蒸留物ラインとを備えた電気加熱式反応器中で同様のプロセスに従って調製した。CEx1は、300-mlのParr反応器中でガラススリーブにおいて50グラムスケールで製造した。反応器に、16.84g(121ミリモル)のPXD、37.92g(121ミリモル)のC18、23gの水及び39.7mgの亜リン酸(0.48ミリモル)を装入した。反応器を240℃の温度及び100psigの圧力まで加熱した。圧力を蒸留によって100psigで制御し、温度を50分間にわたって280℃まで上昇させた。温度を287℃まで上昇させながら、圧力を25分間にわたって大気圧まで下げた。大気圧を10分間維持し、これに15分間の窒素掃引が続いた。生成物を、攪拌機に付着したクリーム状黄色プラグとして冷えた反応器から取り出した。
【0103】
試験
熱転移(Tg、Tm)
様々なポリアミドのガラス転移温度及び溶融温度は、20℃/分の加熱及び冷却速度を用いてASTM D3418に従って示差走査熱量分析を使用して測定した。3つの走査:340℃までの第1加熱、続いて30℃への第1冷却、続いて350℃までの第2加熱を各DSC試験について用いた。Tg及びTmは、第2加熱から測定した。ガラス転移温度及び溶融温度を下の表1に一覧にする。
【0104】
【0105】
圧縮成形
2インチ×1/8インチディスクの圧縮成形は、下の表2に記載される条件に従ってCarver 8393 Laboratory Press(実験室プレス)を用いて乾燥粒状ポリマーを使って行った。CEx1ディスクは、生成物ポリマープラグから同じ寸法へ圧延した。
【0106】
【0107】
誘電性能
誘電率ε及び散逸率Dfは、ASTM D2520に従って測定した。測定値は、0.08インチ×0.20インチ×1.0インチの寸法の「乾燥したまま成形された(dry-as-molded)」圧縮成形ディスクから圧延した試料を使って取った。
【0108】
【0109】
BAMC18ポリアミド(CEx2及びEx3)は、比較のPXD18(CEx1)、MXD18(CEx4)、MXD6(CEx5)及び1,4-BAC10(CEx6)よりも良好な誘電性能(より低いε及びDf)を有する。1,4-BAMC18ポリアミド(Ex3)は、1,3-BAMC18ポリアミド(CEx2)よりも良好な散逸率を有する。
【0110】
透明性試験
半結晶性であるが、全く意外にも、本発明のポリアミド(CEx2及びEx3)は無色透明である。2mm厚さの試料を通してテキストを読むことが可能であり、一方、CEx1、CEx4及びCEx5の比較ポリアミドについて同じことは当てはまらない。組成物Ex2のプラークを寸法5cm×5cm×2cmに圧縮成形した。ASTM D1003に従って測定された透明度は88%であった。本発明のポリアミド(Ex3)は、スマートデバイス用途などの、幾つかの用途において望まれる半結晶性でありながら、誘電性能と透明性とのユニークな組み合わせを実証する。