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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】超小型低周波アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/06 20060101AFI20240408BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01Q7/06
H01Q21/24
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021561900
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2020054502
(87)【国際公開番号】W WO2020216494
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】19382311.9
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520161894
【氏名又は名称】プレモ,エスアー.
(74)【代理人】
【識別番号】100081053
【弁理士】
【氏名又は名称】三俣 弘文
(72)【発明者】
【氏名】カナテ カベツァ,クラウディオ
(72)【発明者】
【氏名】ナバッロ ペレス,フランシスコ エツェクイエル
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス,ホルゲ
(72)【発明者】
【氏名】コボス レエス,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】ロハス クエバス,アントニオ
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0120497(KR,A)
【文献】特開2004-015168(JP,A)
【文献】特開2005-124013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/06
H01Q 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性非導電性材料で作られた磁気コアを含む超薄型低周波用のアンテナにおいて、
前記磁気コア(10)は、3本の互いに直交する軸であるX軸、Y軸、Z軸にコイル巻回用チャネル(12X、12Y、12Z)を有し、
前記磁気コア(10)は、平坦な中央領域(12)と前記中央領域(12)の周りに互いに離れて配置された4つの角突起部(11)とを含み、前記角突起部(11)は、それらの間に、前記X軸の周りの中央領域(12)を取り囲むXコイル巻回用チャネル(以下「Xチャネル」と称する)(12X)と、前記Y軸の周りの中央領域(12)を取り囲むYコイル巻回用チャネル(以下「Yチャネル」と称する)(12Y)とを有し、
前記磁気コア(10)は、前記Z軸の周りの磁気コア(10)を取り囲むZコイル巻回用チャネル(以下「Zチャネル」と称する)(12Z)を有し、
前記Zチャネル(12Z)は、方形の断面を提供するZ軸に直交する2つの平行な表面の間に形成される不連続な溝により規定され、前記不連続な溝は、それぞれが角突起部(11)の1つに含まれる4つの部分溝(40)を含み、
前記磁気コア(10)は、
前記Xチャネル(12X)内に含まれX軸の周りに巻かれるXコイル(DX)と、前記Yチャネル(12Y)内に含まれY軸の周りに巻かれるYコイル(DY)と、前記Zチャネル(12Z)内に含まれZ軸の周りに巻かれるZコイル(DZ)と
を有し、
前記Xコイル(DX)、Yコイル(DY)、Zコイル(DZ)は、導電性ワイヤで形成され、それぞれの接続端子(30)に接続される導電性ワイヤの入口端と出口端を有し、
前記磁気コア(10)は、モノリシックで平坦なドラム形状をしており、
前記磁気コア(10)のZ軸方向の厚さは、1.2mm未満であり、
前記各部分溝(40)のZ軸方向の幅は、0.4mm以下であり、その深さは、前記幅の2倍以上であり、
前記Zコイル(DZ)は、前記部分溝(40)に挿入され、前記Zチャネル(12Z)に巻かれ、その高さは、前記部分溝(40)の1/32/3の間の深さにあり、
前記Zチャネル(12Z)内に巻かれるZコイル(DZ)の外縁は、前記部分溝(40)の入口端から離れた位置にあり、その結果、前記不連続な溝を形成する2つの平行な表面が片持ち梁の形態で前記Zコイル(DZ)の外縁を超えて延びる
ことを特徴とする軟磁性非導電性材料で作られた磁気コア(10)を含む超薄型低周波用のアンテナ。
【請求項2】
前記接続端子(30)は、前記角突起部(11)の平坦な表面に直接取り付けられる
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記Zコイル(DZ)の内縁は、前記Xコイル(DX)とYコイル(DY)から離れた位置にある
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記導電性ワイヤは、220℃の温度まで耐える絶縁被覆された導体であり、その直径は、0.020mm以上0.040mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記アンテナは、0.2mmから0.3mmの間の厚さの絶縁性樹脂コーティング(60)によってカプセル化されている
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記磁気コア(10)の厚さは、1mm以下であり、
前記部分溝(40)の幅は、0.3mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記X軸方向およびY軸方向の前記磁気コア(10)の面積は、140mm 以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記磁気コア(10)は、ニッケル亜鉛合金またはマンガン亜鉛合金製の高密度成形フェライトコアである
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記磁気コア(10)の中央領域(12)の一方の面は、前記Xチャネル(12X)を規定する凹部を含み、反対側の面は平坦である
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
【請求項10】
請求項1記載の超薄型低周波用のアンテナを製造する方法において、
モノリシックで平坦なドラム形状の磁気コア(10)を得るステップを有し、
前記ステップは、
(A)金型内で、前記磁気コア(10)を成形する軟磁性非導電性材料の粉末を圧縮するステップと、
前記磁気コア(10)は、平坦な中央領域(12)と前記中央領域(12)の周りに互いに離れて配置された4つの角突起部(11)とを含み、前記角突起部(11)は、それらの間に、前記X軸の周りの中央領域(12)を取り囲むXチャネル(12X)と、前記Y軸の周りの中央領域(12)を取り囲むYチャネル(12Y)とを有し、
(B)前記Z軸の周りの磁気コア(10)を取り囲むZチャネル(12Z)を、鋸引きプロセスで形成するステップと、
前記Zチャネル(12Z)は、2つの表面の間に形成される不連続な溝により規定され、前記不連続な溝は、それぞれが前記角突起部(11)の1つに含まれる4つの部分溝(40)を含み、
(C)結晶化、収縮化、又は硬化させる為に、前記磁気コア(10)をオーブンで焼結するステップと、
(D)Xコイル(DX)、Yコイル(DY)、Zコイル(ZY)を以下のように配置するステップと、
前記Xコイル(DX)は前記Xチャネル(12X)内に含まれるX軸の周りに巻かれ、前記Yコイル(DY)は前記Yチャネル(12Y)内に含まれるY軸の周りに巻かれ、前記Zコイル(DZ)は前記Zチャネル(12Z)内に含まれるZ軸の周りに巻かれ、
(E)前記Xコイル(DX)、Yコイル(DY)、Zコイル(DZ)の導電性ワイヤの入口端と出口端を、それぞれの接続端子(30)に接続するステップと、
で実行され、
前記磁気コア(10)の4つの部分溝(40)のそれぞれは、前記ステップ(B)の鋸引きプロセス中のテーパ形状の鋸によって、前記磁気コア(10)の中心から半径方向に向いて前記Z軸に沿って台形の断面が形成され、前記ステップ(C)の実行後に、前記台形の断面は、方形の断面になる
ことを特徴とする請求項1記載の超薄型低周波用のアンテナを製造する方法。
【請求項11】
前記ステップ(E)は、レーザー溶接プロセスによって行われる
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記磁気コア(10)と前記Xコイル(DX)、Yコイル(DY)、Zコイル(DZ)の組立体が、樹脂ケーシングに埋め込まれ、オーブン内でのリフローはんだ付けプロセスによってプリント回路基板に接続される
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話器(例:スマートフォーン)に組み込み可能な超小型低周波アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
「超小型アンテナ」とは、極薄で、厚さが1.6mm以下好ましくは1.4mm以下で、携帯電話に組み込めるアンテナを意味する。3軸方向のアンテナは、あらゆる方向からの信号受信、あらゆる方向への信号送信のいずれか又は両方が同時に可能である。この種のアンテナは、磁気コアを有し、この磁気コアは3つの方向に互いに直交するコイル巻回用チャネル(以下単に「チャネル」と称する)を有する。このチャネルは、磁気コアの回りに3本の直交するコイルを有する。
【0003】
「低周波」とは30kHz-300kHzの範囲の無線周波数を意味する。
【0004】
本発明は、特に携帯電話に組み込み可能な程の小型のアンテナであり、携帯電話に要求される要件例えば曲げ強度を満たすアンテナである。
【0005】
本発明のアンテナは、他の携帯装置例えばタブレット、カード・キーに搭載可能で、その厚さは、関連する設計パラメータと素子の組み込みの要件を満たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
三軸アンテナの多くは公知である。アンテナの高さ/厚さを減らす問題には多くの文献が直面している。これら文献は、キー・ホブのPCBに搭載される3Dアンテナを具備するRFIDキーレス・エントリー・システムに向けた解決方法/手段を提示している。更にカード・タイプのキー・ホブの3D検知の解決方法/手段までも提示している。しかし、高感度、超小型、携帯電話に組み込むに必要な大きさ、柔軟性の要件を満たすスマートフォーン向けのモノリシック(単一のコア)の解決方法/手段はまだ無い。
【文献】US7042411
【文献】US2013/033408A1(日本特許5660132)
【文献】JP4007332
【文献】US2017/320465A1
【文献】US2017/291579A1
【文献】US2017/282858A1
【文献】JP2017/123547A1
【文献】EP2911244A1
【文献】WO2013/EP03888
【文献】WO2017/076959
【文献】ES2460368
【文献】EP17382805
【0007】
特許文献1は、薄型の三軸アンテナ・コイル即ち受信機又は無線制御のキーレス・エントリー・システムに用いられるアンテナを開示する。このアンテナは、薄型、この場合平坦なドラム形状で、このコアに下面の固定されたベースを有する。磁気コアは、その周囲に3つの直交するチャネルが周囲に形成されている。この実施例においては、磁気コアは、外周のZ巻線(DZ)用のチャネルを形成する外周リセス(凹部)を有する形状をしている。このリセスは、超小型磁気コアに金型で形成するは難しい。その理由は、この磁気コアの製造には、少なくとも4個の独立した可動部分を有する複雑な金型構造が必要であり、この大きさの磁気コアは金型から外すときに破損することがある。このリセスは機械加工では形成できない、磁気コアはその機械加工中に破損することがあるからである。
【0008】
特許文献2は、特許文献1のアンテナに類似する平坦な三軸アンテナを開示する。
【0009】
特許文献2において、磁気コアは2つの独立したコア部材を接着することにより得られる。その内の1つのコア部材は平坦で薄く、2つのコア部材をボビンで固着する。このボビンは、Z軸コイルを配置する空間(チャネル)として機能する環状部分を含む。
【0010】
この解決方法においては、コイル即ち巻線は、多層構造の磁気コアの周囲に巻回され、磁気コアの2つのコア部材は、コアを包囲するX巻線用とY巻線用のノッチを必要とする。Z巻線がX巻線又はY巻線とオーバーラップする領域では、このノッチは、磁気コアがZ巻線に近くなるのを妨げ、Z巻線に面する磁気コアの表面を減らし、Z巻線の感度を制限してしまう。
【0011】
特許文献2において、磁気コアの各独立した平坦な磁気部材は、各コーナーに片持ち梁領域を有し、磁気コアの一方の部材の片持ち梁領域と他方の部材の片持ち梁領域は離れており、その間にZ巻線用チャネルを形成する。磁気コアの両方の部材は、互いに接着され、X巻線,Y巻線により包囲され、前記片持ち梁領域の間の距離(Z軸方向での)は、Z軸方向ではX巻線,Y巻線の高さより小さい。その結果、Z軸方向には限られた高さのZ巻線しか形成できず、Z巻線の感度を低下させてしまう。
【0012】
特許文献3は、一体型の小型のアンテナを開示する。しかしこれはモノリシック(単一のコア)ではなく、低周波用でもない。ここに示された解決方法/手段は、2次元方向には小型だが、他の方向では大型である。
【0013】
これまで沢山のキーレス・エントリ・システムとそれ用の小型アンテナが、特許文献4-7に示されて開示されており、キーレス・エントリ・システムのキーホブ用の三軸モノリシック・アンテナは、特許文献8-11に開示されている。
【0014】
三軸モノリシック・アンテナの他の解決方法/手段は、TDK,Epcos,Sumida,Toko,Neosidの各社により開示されている。
【0015】
これらのいずれも、スマートフォーン(高さは1.65mm以下、表面積は14x14mm以下、所定の曲げテストに耐えられ、Z軸の最低感度が50mV/Amv以上)に組み込める小型の三軸アンテナを開示していない。
【0016】
この極めて厳しい機械的制約によりZ軸方向は限られた感度しか持ち得ない。Z軸方向の感度を最大にする為、従来技術は、エア・コイル又はコアレス・コイルの平坦な低周波アンテナであるが、これの表面積は極めて広い。全体的に利用可能な面積が限られている時は、Z軸方向の磁気誘導は、空気中では最小の電圧も誘導できず、比較的高い有効な磁気透磁率(magnetic permeability)が必要となる。
【0017】
カード型のキーレス・エントリのキー・ホブの市場においては、小型の(薄い/平坦な)形状による解決方法/手段がある。その多くは、個別の平坦な素子即ち通常2つの同一のX軸用とY軸用の平坦アンテナと、平坦なコアレス・コアかフェライト・ドラム・コアのZ軸コイルのいずれかを使用している。これらのいずれの解決方法/手段も、スマートフォーンに組み込むには適していない。日立金属株式会社(特許文献2)が記載しているような、平坦なナノ-クリスタライン・コア(nano-crystalline core)又はアモルファス・コア(amorphous core)を使用しても、全体的な表面積の目標には達しない。
【0018】
他の文献例えばZ巻線がモノリシックな磁気コアの周囲に巻回されるが、磁気コアの周囲の溝にZ巻線を有さない構成を開示した公知の文献もあるが、このような解決方法/手段は、Z巻線の良好な感度(50mV/AmVを超える)を提供できない。上記した文献及びその他の文献のいずれも、Z巻線の良好な感度を提供できる超小型のアンテナを提供する解決方法/手段を開示していない。
【0019】
特許文献12は、携帯電話に組み込まれる超薄型三軸低周波アンテナを提供する解決策を開示する。このアンテナは、コイルを備えた小さな磁気コアを有する。コイルが3本の交差する軸方向の巻回用溝に巻かれる。アンテナは第1の軟磁性シートを有する。第1の軟磁性シートは、Z軸に直交し磁気コアの四隅の隆起の平坦面に取り付けられる。この平坦面は、Z軸(Z)に直交し、X巻回用コイル(DX)とY巻回用コイル(DY)は、第1の軟磁性シートにより一部覆われている。第1の軟磁性シートは、X軸方向とY軸方向において、Z巻回用コイル(DZ)を覆い、Z巻回用コイル(DZ)の制限エッジを提供するような大きさである。その結果、Z巻回用コイル(DZ)の感度の増加とZ軸方向のアンテナの高さが低くなる。
本発明は、非常に小さく平坦なドラム状の形状の磁気コアに基づく別の代替構造と、前記磁気コアの製造を含む超薄型低周波アンテナの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第一の態様は、携帯電話器(スマートフォーン)に組み込める超小型3軸低周波アンテナに関連する。
【0021】
携帯電話器に3軸低周波アンテナを組み込むには、性能を維持しながら他の次元の寸法を増やすこと無くアンテナの厚さを減らす必要がある。さらにアンテナの曲げ耐性も改善しなければならない。
【0022】
本発明の超薄型低周波アンテナは、従来公知であるが、以下の部品を含む。
【0023】
平坦な磁気コア。この平坦な磁気コアは、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸を規定する3つの交差する軸方向に、コイル巻回用チャネルを有し、軟磁性非導電性材料製である。
【0024】
この磁気コアは、平坦な中央領域と前記中央領域の周りに互いに離れて配置される4つの角突起部とを有する。この4つの角突起部は、それらの間に、X軸の周りの中心領域を取り囲むXコイル巻回用チャネル(以下「Xチャネル」と称する)とY軸の周りの中央領域を取り囲むYコイル巻回用チャネル(以下「Yチャネル」と称する)とを有する。XチャネルとYチャネルは、異なる高さにある。
【0025】
Zコイル巻回用チャネル。このZコイル巻回用チャネル(以下「Zチャネル」と称する)は、Z軸の周りの磁気コアを取り囲む。前記Zチャネルは、例えば、Z軸に直交する2つの平行な面の間に閉じ込められた不連続な溝によって規定される。この不連続な溝は、それぞれが角突起の1つに含まれる4つの部分的な溝を含む。Xチャネル、Yチャネル、Zチャネルは、互いに直交する。
【0026】
Xコイル、Yコイル、Zコイル。Xコイル(DX)はXチャネル(12X)内に含まれX軸の周りに巻かれ、Yコイル(DY)はYコイル巻回チャネル(12Y)内に含まれY軸の周りに巻かれ、Zコイル(DZ)はZチャネル(12Z)内に含まれZ軸の周りに巻かれる。3本のコイルは、導電性ワイヤを含む。
【0027】
Xコイル(DX)、Yコイル(DY)、Zコイル(DZ)は、導体(導電性ワイヤ)でできており、それぞれがそれぞれの電気接続端子に接続された導体入口端および導体出口端を有する。
【0028】
磁気コアの互いに直交するチャネル内のコイルの配置により、電磁場が前記Xコイル(DX)、Yコイル(DY)、Zコイル(DZ)にかかった時に、電位が、各ワイヤ端の間に、ファラデーの法則に従って、生成される。
【0029】
当業者には以下の現象は公知である。電流が前記Xコイル(DX)、Yコイル(DY)、Zコイル(DZ)を流れる/循環する時に、このコイルの配置により、各巻線の軸と同軸の電磁界ベクトルを持つ電磁界が生成される。
【0030】
上記した機能は、低周波数範囲の信号好ましくは30kHz-300kHzの範囲の信号に最適化できる3軸アンテナを提供する。
【0031】
この既知の磁気コア構造およびその上のコイルの直交配置から始めて、本発明は、アンテナのサイズ、特に高さを最小にし、スマートフォーンへの効果的な組み込みを可能にするアンテナを設計するという上記の目的を達成するための一連の改善を提案する。
【0032】
この目的のために、本発明によれば、
-Z軸方向の磁気コアの厚さは、1.2mm未満好ましくは1mm未満である。
-各不連続溝は狭くて深く、Z軸方向の各不連続溝の幅は0.4mm (好ましくは0.3mm)以下であり、Z軸方向に直交する半径方向の各不連続溝の深さは、その幅の少なくとも2倍である。
【0033】
Zコイル(DZ)は、前記狭い深い溝(チャネル)内に挿入され、半径方向に溝の深さの1/3-2/3の範囲にある。前記Zチャネル内に巻かれたZコイルの外縁は、溝の入口から離れた場所にある。その結果、コイル巻回用チャネルの平行な表面は、片持ち梁の形態で前記外縁を越えて延びるので、Z軸方向の断面が拡大することにより、Zコイルの感度を高める。
【0034】
一実施形態では、前記Zコイルの内縁は前記Xコイルから離れた場所にある。
【0035】
特定の実施形態では、前記構成または追加の構成では、Zコイルの巻線の感度は、50mV/Amvを超える。
【0036】
本発明において引用された特許文献1、2に開示された解決策とは対照的に、本発明では、磁気コアに取り付けられたベースまたはボビンは使用しない。従って、接続端子は前記角突起の平坦な面に直接取り付けられている。かくしてアンテナの高さがさらに最小に抑えられる。
【0037】
一実施形態では、アンテナは、電気絶縁樹脂層(コーティング)によってカプセル化され、コーティングの厚さが0.2から0.3mmの間のケーシングを提供する。接続端子のみが、前記電気絶縁材料によって部分的に覆われていない。この接続端子は、電気絶縁材料に当てて折りたたむことができ、アンテナのケーシングに重なる接続端子を提供する。
【0038】
X、Y、Zコイルの導体は、220℃までの温度に耐える耐熱性の絶縁被覆された導体 (以下で説明する本発明の製造方法に必要である)であり、その直径は0.020 mm-0,040mmの範囲である。
【0039】
X軸方向とY軸方向における磁気コアの面積は、好ましくは140mm以下である。
好ましいまたは特定の実施形態として、このサイズは10.60mm×11.60mmである。
【0040】
Z軸方向のアンテナの厚さは、好ましくは、1.4mm以下、すなわち、通常の携帯電話に含めることができる要素の最大厚さである1.6mm未満である。
【0041】
好ましくは、磁気コアは高密度フェライトコアである。より好ましくは、ニッケル亜鉛合金またはマンガン亜鉛合金のフェライトコアである。
【0042】
第2の態様では、本発明は、前述の本発明の第1の態様の三軸アンテナ即ち超薄型低周波アンテナの製造方法を開示する。この方法は以下のステップで磁気コアを得る。
(A)ステップ:金型内で、磁気コア10を形成する軟磁性非導電性材料のアモルファス粉末を圧縮する。前記磁気コア10は、平坦な中央領域12とこの中央領域12の周りで互いに離れた位置にある4個の角突起部11とを含む。この角突起部11は、それらの間に、X軸の周りの中央領域12を取り囲むXチャネル12XとY軸の周りの中央領域12を囲むYチャネル12Yを形成する。
(B)ステップ:Z軸の周りの磁気コア10を取り囲むZチャネル12Zを、切断または鋸引きプロセスによって、生成する。前記Zチャネル12Zは、コア10の上面と下面の間に閉じ込められた不連続な溝によって形成される。 前記不連続な溝は、それぞれが角突起11の1つに含まれる4つの部分的な溝40を含む。
(C)ステップ:磁気コア10をオーブン焼結する。その結果、磁気コア10は、結晶化する、収縮する、又は硬化する。
(D)ステップ:Xチャネル12X内に含まれるX軸の周りに巻かれたXコイルDXと、Yチャネル12Y内に含まれるY軸の周りに巻かれたYコイルDYと、Zチャネル12Z内に含まれるZ軸の周りに巻かれたZコイルDZを配置する。
(E)ステップ:前記Xコイル、Yコイル、Zコイルのそれぞれの導体の入口端と出口端をそれぞれの接続端子30に接続する。
現場で知られている提案とは異なり、本発明の方法では、前に説明した寸法と構成の磁気コアを得るために、ステップ(C)の前のステップ(B)の鋸引きプロセス中にテーパ状鋸によって、4個の不連続な溝(チャネル)が磁気コアに切り込まれ、Z軸と一致する半径方向面に台形の断面ができる。そして、ステップ(C)の後に、長方形の断面(Zチャネルの断面)になる。
【0043】
一実施形態では、前記Xコイル、Yコイル、Zコイル(220℃の温度までの耐熱性で絶縁被覆されたワイヤでできており、直径が0.020mm-0.040mm)のそれぞれの導体入口端および導体出口端は、レーザー溶接プロセスによって、それぞれの接続端子に接続される。
【0044】
製造方法の最後のステップとして、コアとコイルの組立体を樹脂ケーシングに埋め込んで、オーブンでのリフローはんだ付けプロセスによってPCBに接続する。このため、コイルに使用される導電性ワイヤは、たとえ短時間であっても、最大200℃の温度に耐える必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本発明の超小型アンテナの磁気コア10の第1の斜視図。
図2図1の磁気コア10を反対側から見た第2の斜視図。
図3】磁気コア10と接続端子を提供するリードフレーム50との関係を示す図。
図4】磁気コア10をリードフレーム50の収納スペースに配置した図。
図5】磁気コア10とリードフレーム50からの延長タブ51(接続端子30を提供する)との配置関係を示す斜視図。
図6】Xチャネルの周りに巻かれたXコイルDXを有する図5に類似する斜視図。
図7】XコイルDXに加えて、Yチャネルの周りに巻かれたYコイルDYを更に有する図5に類似する斜視図。
図8】XコイルDXとYコイルDYに加えて、Zチャネルの周りに巻かれたZコイルDZを更に有する図7に類似する斜視図。
図9図8の組立体を反対側から見た斜視で、接続端子30が形成されるリードフレーム50の延長タブ51を示す図。
図10】延長タブ51を有するエポキシ樹脂層60で覆われた磁気コア10の斜視図。
図11図10の磁気コア10を反対側から見た斜視図。
図12】延長タブ51が切り取られて8個の接続端子30を有するエポキシ樹脂層60で覆われた磁気コア10の斜視図(図10に類似する)。
図13】エポキシ樹脂層60で覆われた磁気コア10の凹部61に当てて折り畳まれた接続端子30を示す斜視図(図12に類似する)。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の本発明の超薄型アンテナの磁気コア(以下単に「コア」とも称する)10を示す。磁気コア10は、ニッケル亜鉛合金またはマンガン亜鉛合金で作られたフェライトなどの軟磁性非導電性材料(soft-magnetic non-electro conductive material)製である。磁気コア10は互いに直交する3つの交差する軸方向にコイル巻回用チャネル12X、12Y、12Zを有する。
【0047】
磁気コア10は、中央領域12と4つの角突起11とを含む。この4つの角突起11は、この中央領域12の周りに互いに離れて配置されている。角突起11の間に、X軸の周りの中央領域12を取り囲むXチャネル12Xと、Y軸周りの中央領域12を囲むYチャネル12Yと、Z軸周りの中央領域12を囲むZチャネル12Zとが規定されている。Xチャネル12X、Yチャネル12Y、Zチャネル12Zは、互いに直交する。
【0048】
Zチャネル12Zは、磁気コア10の2つの平行な上面および下面(即ち、長方形の断面を提供するZ軸に直交する面)の間に閉じ込められた不連続溝によって規定される。この不連続溝は、それぞれが4つの角突起11の1つに含まれる4つの部分溝(以下単に「溝」とも称する)40を含む。
【0049】
図6-8に示されるように、XコイルDXは、Xチャネル12X内に含まれX軸の周りに巻かれる。 YコイルDYは、Yチャネル内に含まれY軸の周りに巻かれる。 ZコイルDZは、Zチャネル12Z内に含まれZ軸の周りに巻かれる。
【0050】
XコイルDX、YコイルDY、ZコイルDZは、導体でできており、導体入口端と導体出口端を有する。この導体入口端と導体出口端は、それぞれの接続端子30(図13)に接続されている。
【0051】
本発明の教示によれば、以下の特別な特徴が実現される。
【0052】
第1に、Z軸方向の磁気コア10の厚さは、1.2mm未満好ましくは1mm以下である。
【0053】
各部分溝40は、狭く深く、Z軸方向の各部分溝40の幅は0.4mm以下好ましくは約0.3mm以下であり、Z軸方向に直交する半径方向の各部分溝40の深さは幅の少なくとも2倍である。
【0054】
ZコイルDZは、前記溝40に挿入された前記Zチャネル12Z内に巻かれ、溝40の深さの1/3から2/3まで半径方向に延びる。Zチャネル12Zに巻かれたZコイルの外縁は、溝40の入口から離れた場所にあり (図8および9を参照)、その結果、平行な表面は、外縁を超えて片持ち梁の形態で延びる。
【0055】
図8、9に示されるように、前記Zコイルの内縁は、前記XコイルおよびYコイルから離れた場所にある。
【0056】
コイル用の導体は、220℃までの耐熱性の絶縁被覆した導体であり、直径は0.020mm-0.040mmの範囲である。
【0057】
図1に示すように、コア10の大きな面の1つに位置する中央領域は、Xチャネル12Xを形成する凹部を含むが、図2に示すように、反対面の中央領域(図2を参照)は平坦である。このため、この中央部分の総厚は約0.60mmであるが、この中央領域で破損のリスクなしに磁気コア10を製造することができる。絶縁被覆された導体の直径が細く、XコイルとYコイルのそれぞれの幅内に配置されることを考慮すると、コアの大きな面の1つにはXコイル用の凹部が無くてもよい。その理由は、重ねられた巻回用コイルD X、D Yに大きな膨らみができないからである。
【0058】
図5―9に示されるように、接続端子30(図13)は、前記角突起部11の平坦な表面に直接取り付けられている。
【0059】
図3、4は、コア10が、延長タブ51を切り取ったリードフレーム50にどのように取り付けられているかを示す。延長タブ51から接続端子30が切り出される。
【0060】
コイルDX、DY、DZを備えたコア10は、0.2mmから0.3mmの間の厚さの絶縁性樹脂層60によってカプセル化されている。これは、図10-13に図示されている。
【0061】
図12、13は、電気絶縁材料に対して折りたたまれた接続端子30を示す。接続端子30は、アンテナのケーシングであるエポキシ樹脂層60の凹部61に重なっている。
【0062】
第2の態様では、本発明は、超薄型低周波アンテナの製造方法を請求する。この方法は、既知の手順も含むが、コアを形成するステップを含み、このステップは以下のステップ(A)-(E)で行われる。
(A)ステップ:金型内で、磁気コア10を形成する軟磁性非導電性材料のアモルファス粉末を圧縮する。前記磁気コア10は、平坦な中央領域12とこの中央領域12の周りで互いに離れた位置にある4個の角突起部11とを含む。この角突起部11は、それらの間に、X軸の周りの中央領域12を取り囲むXチャネル12XとY軸の周りの中央領域12を囲むYチャネル12Yを形成する。
(B)ステップ:Z軸の周りの磁気コア10を取り囲むZチャネル12Zを、切断または鋸引きプロセスによって、生成する。前記Zチャネル12Zは、コア10の上面と下面の間に閉じ込められた不連続な溝によって形成される。 前記不連続な溝は、それぞれが角突起11の1つに含まれる4つの部分的な溝40を含む。
(C)ステップ:磁気コア10をオーブン焼結する。その結果、磁気コア10の材料が結晶化する、収縮する、又は硬化する。
(D)ステップ:Xチャネル12X内に含まれるX軸の周りにXコイルDXを巻き、Yチャネル12Y内に含まれるY軸の周りにYコイルDYを巻き、Zチャネル12Z内に含まれるZ軸の周りZコイルDZを巻く。
(E)ステップ:前記Xコイル、Yコイル、Zコイルのそれぞれの導体の入口端と出口端をそれぞれの接続端子30に接続する。
【0063】
本発明は、主に前述の寸法および構成を有する磁気コアを製造する為に、前記ステップ(C)の前に、磁気コア10の4つの部分溝40のそれぞれを切って、Z軸と一致する半径方向の断面において、鋸引きプロセス中にテーパ状の鋸によって、台形の断面(trapezial cross section)を得る。前記台形の断面は、前記ステップ(C)による結晶化、収縮、又は硬化した後に、最終的に方形の断面(rectangular cross section)となる。
【0064】
前記XコイルDX、YコイルDY、ZコイルDZのそれぞれの導体入口端および導体出口端は、それぞれの接続端子30に、レーザー溶接プロセスで、接続される。
【0065】
最終ステップ(F)として、コア10と3本のコイルDX、DY、DZの組立体は、ケーシングであるエポキシ樹脂層60に埋め込まれ、オーブン内のリフローはんだ付けプロセスによってPCB (図示せず) に接続される。
【0066】
本発明の超薄型三軸アンテナは、特にキーレスシステムとして動作するように、スマートフォーンに組み込むために特に設計されている。したがって、本発明のアンテナを組み込む携帯電話 (または他の携帯コンピュータ) は、本発明の超薄型三軸低周波アンテナの動作を制御するためのユーザインターフェースを提供するソフトウェア・アプリもその中にインストールされる。
【0067】
以上の説明は、本発明の一実施例に関するもので、この技術分野の当業者であれば、本発明の種々の変形例を考え得るが、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。特許請求の範囲の構成要素の後に記載した括弧内の番号は、図面の部品番号に対応し、発明の容易なる理解の為に付したものであり、発明を限定的に解釈するために用いてはならない。また、同一番号でも明細書と特許請求の範囲の部品名は必ずしも同一ではない。これは上記した理由による。用語「又は」に関して、例えば「A又はB」は、「Aのみ」、「Bのみ」ならず、「AとBの両方」を選択することも含む。特に記載のない限り、装置又は手段の数は、単数か複数かを問わない。



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13