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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】車両用前照灯
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/265 20180101AFI20240408BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20240408BHJP
   F21S 41/151 20180101ALI20240408BHJP
   F21S 41/255 20180101ALI20240408BHJP
   F21S 41/275 20180101ALI20240408BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20240408BHJP
   F21W 102/18 20180101ALN20240408BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240408BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240408BHJP
   F21W 102/20 20180101ALN20240408BHJP
【FI】
F21S41/265
F21S41/147
F21S41/151
F21S41/255
F21S41/275
F21W102:155
F21W102:18
F21Y115:10
F21Y115:30
F21W102:20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021562645
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044605
(87)【国際公開番号】W WO2021112063
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2019219642
(32)【優先日】2019-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】末次 麻希子
【審査官】當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-203590(JP,A)
【文献】国際公開第2013/120121(WO,A1)
【文献】特開2016-71976(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104678(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/265
F21S 41/147
F21S 41/151
F21S 41/255
F21S 41/275
F21W 102/155
F21W 102/18
F21Y 115/10
F21Y 115/30
F21W 102/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光が入射する入射面及び前記光を前方に向けて出射する出射面を有し、前記前方に向かって凸状の投影レンズと、
を備え、
前記入射面は、
ロービーム用の第1配光パターンを形成する前記光の一部が入射する第1入射面と、
前記第1配光パターンよりも上方に投影されるオーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する前記光の別の一部が入射し、前記第1入射面に連続して隣り合って配置される少なくとも1つの第2入射面と、
を有し、
前記第2入射面は、前記投影レンズの左右方向に沿って延在し、
前記出射面は、
曲面である第1出射面と、
前記第1出射面に連続して隣り合って配置される第2出射面と、
を有し、
前記第1出射面は、前記第1配光パターンを形成する前記光及び前記第2配光パターンを形成する前記光を出射し、
前記第2出射面は、少なくとも前記第1配光パターンを形成する前記光を出射し、
前記第2出射面の少なくとも一部は、前記第1出射面と前記第2出射面との境界における前記第1出射面の接線よりも前方の位置に配置される
ことを特徴とする車両用前照灯。
【請求項2】
前記第2入射面は、前記投影レンズの前記左右方向において前記投影レンズの一端から前記投影レンズの他端まで延在する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯。
【請求項3】
前記出射面側から前記投影レンズを平面視する場合、前記第2出射面は、前記第2入射面の少なくとも一部と重なる位置に配置される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯。
【請求項4】
前記入射面は、複数の前記第2入射面を有し、
前記出射面側から前記投影レンズを平面視する場合、前記第2出射面は、一部の前記第2入射面の少なくとも一部と重なる位置に配置され、他の一部の前記第2入射面と重ならない位置に配置される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【請求項5】
前記投影レンズの上下方向における前記投影レンズの断面において、前記第2入射面は、前記投影レンズの下方に向かうにしたがって前記出射面に近づくように前記投影レンズの中心軸方向に対して傾斜する傾斜面である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用前照灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両用前照灯は、筐体と、筐体内部に収容される灯具ユニットとを備える。灯具ユニットは、光源ユニットと、光源ユニットから出射する光を筐体を介して前方に向けて投影する投影レンズとを有する場合がある。このような前照灯の一例は、特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1に記載される前照灯の投影レンズの入射面において、入射面の上端部以外の部分は第1配光制御面として形成され、当該上端部は第2配光制御面として形成される。第1配光制御面は光源ユニットからの光の一部によってロービーム用の第1配光パターンを形成し、第2配光制御面は光源ユニットからの光の別の一部によってオーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する。第2配光パターンは、第1配光パターンよりも上方に投影される。これにより、第1配光パターンの照射領域より上方に位置する道路標識等の対象物の視認性の向上が図られる。
【0004】
【文献】特許第5883588号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1の前照灯の投影レンズの入射面において、第1配光制御面と第2配光制御面との間には、段差面が配置されている。段差面は、投影レンズの上端側に配置される第2配光制御面から投影レンズの下端側に配置される第1配光制御面に向かう方向において、投影レンズの出射面側に凹んでいる。また、段差面は、投影レンズの左右方向に沿って延在している。このような段差面に光源ユニットからの光の一部が入射すると、入射した光は段差面を通じて第1配光パターンの照射領域よりも上方に投影されてしまうことがある。これにより、第1配光パターンに、意図しない横すじ状のむらが発生してしまう懸念がある。
【0006】
そこで、本発明は、ロービーム用の配光パターン及びオーバーヘッドサイン光用の配光パターンが投影される状態で、ロービーム用の配光パターンに意図しない横すじ状のむらの発生が抑制され得る車両用前照灯を提供することを目的とする。
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の車両用前照灯は、光を出射する光源と、前記光が入射する入射面及び前記光を前方に向けて出射する出射面を有し、前記前方に向かって凸状の投影レンズと、を備え、前記入射面は、ロービーム用の第1配光パターンを形成する前記光の一部が入射する第1入射面と、前記第1配光パターンよりも上方に投影されるオーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する前記光の別の一部が入射し、前記第1入射面に連続して隣り合って配置される少なくとも1つの第2入射面と、を有し、前記第2入射面は、前記投影レンズの左右方向に沿って延在し、前記出射面は、曲面である1出射面と、前記第1出射面に連続して隣り合って配置される第2出射面と、を有し、前記第1出射面は、前記第1配光パターンを形成する前記光及び前記第2配光パターンを形成する前記光を出射し、前記第2出射面は、少なくとも前記第1配光パターンを形成する前記光を出射し、前記第2出射面の少なくとも一部は、前記第1出射面と前記第2出射面との境界における前記第1出射面の接線よりも前方の位置に配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明の車両用前照灯では、第2入射面は第1入射面に連続して隣り合って配置されており、第2入射面は投影レンズの左右方向に沿って延在する。この場合に、光源からの光の一部が本来入射すべき第1入射面ではなく第2入射面に入射してしまうと、当該光は第1配光パターンの投影位置よりも上方に投影されることがある。このため、ロービーム用の第1配光パターンに意図しない横すじ状のむらが発生してしまう懸念がある。しかしながら、本発明の車両用前照灯では、第2出射面が少なくとも第1配光パターンを形成する光を出射し、第2出射面の少なくとも一部は、第1出射面と第2出射面との境界における第1出射面の接線よりも前方の位置に配置される。このため、第2出射面がロービーム用の第1配光パターンを形成する光を出射すると、第1配光パターンにおいて光が広がり得、第1配光パターンにおける意図しない横すじ状のむらの発生が抑制され得る。従って、この車両用前照灯によれば、ロービーム用の配光パターン及びオーバーヘッドサイン光用の配光パターンが投影される状態で、ロービーム用の配光パターンにおける意図しない横すじ状のむらの発生が抑制され得る。
【0009】
また、前記第2入射面は、前記投影レンズの前記左右方向において前記投影レンズの一端から前記投影レンズの他端まで延在することが好ましい。
【0010】
この場合、第2入射面が投影レンズの左右方向において投影レンズの一端から投影レンズの他端まで延在していない場合に比べて、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する光が第2入射面に入射し易くなり得る。また、第2入射面が投影レンズの左右方向において投影レンズの一端から投影レンズの他端まで延在していないと、投影レンズの左右方向において第2入射面の端部と第1入射面とを接続する別の面が設けられることに繋がる。当該面に例えばロービーム用の第1配光パターンを形成する光が入射してしまうと、当該光は意図しない方向に出射し、ロービーム用の第1配光パターンは意図しない形状になることがある。しかしながら、第2入射面が上記したように延在すると、当該面は設けられない。従って、当該面への第1配光パターンを形成する光の入射が抑制され得、意図しない方向への光の出射が抑制され得る。
【0011】
また、前記出射面側から前記投影レンズを平面視する場合、前記第2出射面は、前記第2入射面の少なくとも一部と重なる位置に配置されることが好ましい。
【0012】
この場合、第2入射面周辺に入射する光の一部は、第2出射面に進行し得る。このため、ロービーム用の配光パターンにおける意図しない横すじ状のむらの発生がより抑制され得る。
【0013】
また、前記入射面は、複数の前記第2入射面を有し、前記出射面側から前記投影レンズを平面視する場合、前記第2出射面は、一部の前記第2入射面の少なくとも一部と重なる位置に配置され、他の一部の前記第2入射面と重ならない位置に配置されてもよい。
【0014】
また、前記投影レンズの上下方向における前記投影レンズの断面において、前記第2入射面は、前記投影レンズの下方に向かうにしたがって前記出射面に近づくように前記投影レンズの中心軸方向に対して傾斜する傾斜面であることが好ましい。
【0015】
この場合、第2配光パターンは第1配光パターンよりも上方に投影され得、第1配光パターンの照射領域より上方に位置する道路標識等の対象物の視認性が向上し得る。
【0016】
以上のように、本発明によれば、ロービーム用の配光パターン及びオーバーヘッドサイン光用の配光パターンが投影される状態で、ロービーム用の配光パターンにおける意図しない横すじ状のむらの発生が抑制され得る車両用前照灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態における車両用前照灯の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、灯具ユニットの分解斜視図である。
図3図3は、灯具ユニットの鉛直方向の断面図である。
図4図4は、図2に示すリフレクタユニット、第1の光源、及び第2の光源の正面図である。
図5図5は、出射面側から視た投影レンズの正面図である。
図6図6は、図5に示すA-A線における投影レンズの断面図である。
図7図7は、図5に示すB-B線における投影レンズの断面図である。
図8図8は、図7に示す投影レンズの断面における第1の光源及び第2の光源から出射する光の光路例を概略的に示す図である。
図9図9は、ロービームの配光パターン及びオーバーヘッドサイン光の配光パターンを示す図である。
図10図10は、オーバーヘッドサイン光の配光パターン及びハイビームの配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る車両用前照灯の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。また、本発明は、以下に例示する各実施形態における構成要素を適宜組み合わせてもよい。なお、理解の容易のため、それぞれの図において一部が誇張して記載される場合等がある。
【0019】
図1は、本発明にかかる車両用前照灯1の構成を概略的に示す図である。図1において、車両用前照灯1の筐体10は、車両用前照灯1の鉛直方向の断面にて示されている。車両用前照灯1は、自動車用の前照灯とされる。自動車用の前照灯は、一般的に車両の前方の左右方向のそれぞれに備えられるものである。本明細書において「右」とは車両の進行方向において右側を意味し、「左」とは車両の進行方向において左側を意味する。左右の前照灯のそれぞれは、形状が左右方向に概ね対称であることを除いて、同じ構成とされる。このため、以下では、一方の車両用前照灯1について説明する。また、本実施形態の車両用前照灯1は、車両用前照灯1の灯具ユニットLUから出射する光を、車両用前照灯1の投影レンズ15を介して直接前方に出射する直射型の灯具である。
【0020】
車両用前照灯1は、筐体10と、筐体10内に収容される灯具ユニットLUとを備える。
【0021】
筐体10は、筒状のハウジング11と、フロントカバー12と、バックカバー13とを備える。ハウジング11の前方には開口が設けられており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がハウジング11に固定されている。また、ハウジング11の後方には前方の開口よりも小さな開口が設けられており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がハウジング11に固定されている。
【0022】
ハウジング11とフロントカバー12とバックカバー13とによって、密閉された空間としての灯室14が形成される。灯室14には、灯具ユニットLUが収容される。バックカバー13は、ハウジング11の後方の開口を通じての灯具ユニットLUの交換のために、ハウジング11に対して開閉可能または着脱可能となっている。ハウジング11とバックカバー13とは、例えば、樹脂で構成されている。
【0023】
フロントカバー12は透光性を有する材料で構成されており、灯具ユニットLUから出射する光はフロントカバー12を透過する。
【0024】
図2は、灯具ユニットLUの分解斜視図である。図3は、灯具ユニットLUの鉛直方向の断面図である。図4は、図2に示すリフレクタユニット30、第1の光源42、及び第2の光源52の正面図である。
【0025】
図2図3とに示すように、灯具ユニットLUは、投影レンズ15と、レンズホルダ20と、リフレクタユニット30と、第1の光源ユニット40と、第2の光源ユニット50と、冷却ユニット70とを備える。
【0026】
冷却ユニット70は、ヒートシンク71及び冷却ファン75を備える。ヒートシンク71は、第1ベース部72と、第2ベース部73と、複数の放熱フィン74とを有する。第1ベース部72は前方斜め上方及び左右に延在する板状体であり、第2ベース部73は第1ベース部72の下端から前方斜め下及び左右に延在する板状体である。放熱フィン74は、第1ベース部72及び第2ベース部73の背面に一体に配置され、第1ベース部72及び第2ベース部73に熱的に接続される。放熱フィン74は、バックカバー13に向かって延在する。放熱フィン74同士は、車両の左右方向において互いに離れて配置される。冷却ファン75は、放熱フィン74の背面側に配置される。冷却ファン75は、放熱フィン74と隙間を隔てて配置され、ヒートシンク71に固定される。冷却ファン75の回転による気流により、ヒートシンク71は冷却される。なお、冷却ファン75は、ヒートシンク71に固定される必要はない。冷却ファン75は、例えば、灯具ユニットLUを保持する図示しないブランケットに固定されてもよいし、ハウジング11の内面に固定されてもよい。
【0027】
第1の光源ユニット40は、第1基板41と、第1の光源42と、第1コネクタ43とを備える。第1基板41は板状体であり、例えば金属からなる。第1の光源42は、第1基板41上に配置され、ロービーム及びオーバーヘッドサイン光となる第1の光を出射する。第1の光源42は、並列された複数の発光素子を有する。複数の発光素子は、マトリックス状に配置されて上下方向及び左右方向に列を形成し、前方に向かって光を出射する。複数の発光素子のそれぞれは、発光素子のそれぞれに供給される電力によって、出射する光の光量を個別に変更可能とされている。また、これら発光素子は白色光を出射する蛍光体方式のLED(Light Emitting Diode)であり、第1の光源42は所謂LEDアレイである。なお、発光素子21の数や構成は、特に限定されるものではない。例えば、発光素子21は、互いに異なる波長の光を出射する複数のLEDであってもよいし、互いに異なる波長の光を出射する複数のLD(Laser Diode)であってもよい。第1コネクタ43は、第1基板41上に配置され、第1基板41に電気的に接続される。第1コネクタ43には、不図示の第1発光制御回路に電気的に接続される不図示の第1ケーブルが差し込まれる。第1発光制御回路は、電気信号を第1ケーブルと第1コネクタ43と第1基板41とを介して第1の光源42に入力させる。第1の光源42における発光素子の点灯パターンは当該電気信号によって制御され、これにより第1の光源42から出射する第1の光の配光が制御される。
【0028】
第1基板41は冷却ユニット70の第1ベース部72の前面に重ねられて固定されるため、第1基板41の表面は第1ベース部72の前面と概ね平行となる。上記のように第1ベース部72は前方斜め上方に延在するため、第1基板41の表面も前方斜め上方に延在する。また、第1基板41に固定される第1の光源42の出射面は第1基板41の表面と概ね平行である。したがって、第1の光源42の出射面の法線は前方斜め下方に向かって延在する。
【0029】
第2の光源ユニット50は、第1基板41と同じ構成とされる第2基板51と、第2の光源52と、第2コネクタ53とを備える。第2の光源52は、第2基板51上に配置され、ハイビームとなる第2の光を出射する。第2の光源52は、第1の光源42と同じ構成とされている。従って、第2の光源52は、所謂LEDアレイである。第2コネクタ53には、不図示の第2発光制御回路に電気的に接続される不図示の第2ケーブルが差し込まれる。第2発光制御回路は、電気信号を第2ケーブルと第2コネクタ53と第2基板51とを介して第2の光源52に入力させる。第2の光源52における発光素子の点灯パターンは当該電気信号によって制御され、これにより第2の光源52から出射する第2の光の配光が制御される。
【0030】
第2基板51は冷却ユニット70の第2ベース部73の前面に重ねられて固定されるため、第2基板51の表面は第2ベース部73の前面と概ね平行となる。上記のように第2ベース部73は前方斜め下方に延在するため、第2基板51の表面も前方斜め下方に延在する。また、第2基板51に固定される第2の光源52の出射面は第2基板51の表面と概ね平行である。したがって、第2の光源52の出射面の法線は前方斜め上方に向かって延在する。
【0031】
上記のように第1の光源42は第1基板41を介して第1ベース部72に固定され、第2の光源52は第2基板51を介して第2ベース部73に固定される。従って、第2の光源52は、第1の光源42の下方に配置される。また、図3に示すように、第1の光源42及び第2の光源52は、投影レンズ15の光軸に対して互いに非対称な位置に配置されている。また、上記のように第1の光源42の出射面の法線は前方斜め下方に向かって延在し、第2の光源52の出射面の法線は前方斜め上方に向かって延在する。従って、第1の光源42から第1の光が出射する方向は、第2の光源52から第2の光が出射する方向と交差する。
【0032】
図3及び図4に示すように、リフレクタユニット30は、シェード35と、第1の光源42用のリフレクタ31と、第1の光源42用の第1サイドリフレクタ31aと、第1の光源42用の第2サイドリフレクタ31bと、第2の光源52用のリフレクタ32と、第2の光源52用の第1サイドリフレクタ32aと、第2の光源52用の第2サイドリフレクタ32bと、を有する。
【0033】
シェード35は、第1の光源42と第2の光源52との間に配置され、第1の光源42から出射する第1の光の一部を遮蔽する。また、シェード35は、シェード35の上面に配置される第1反射面35aと、シェード35の下面に配置される第2反射面35bとを有する。第1反射面35aは、第1の光源42側から投影レンズ15に向かって延在すると共に第1の光の一部を前方に反射する凹状の反射面である。第2反射面35bは、第2の光源52側から投影レンズ15に向かって延在すると共に第2の光の一部を前方に反射する凹状の反射面である。また、シェード35の前方端35cは、後述するカットラインに合わせた形状を有しており、左右端から中央に向かって徐々に後方に凹んでいる。
【0034】
リフレクタ31は、第1の光源42の上方に配置される。リフレクタ31は、第1の光源42側に配置されると共に第1の光源42の上方を覆う第3反射面31rを有する。第3反射面31r及びシェード35の第1反射面35aは、第1の光源42に備えられる複数のLEDの並列方向に沿って配置される。第3反射面31r及び第1反射面35aは、当該複数のLEDを上下側から挟むように配置される一対のリフレクタとなる。
【0035】
第1サイドリフレクタ31aは、第3反射面31r及び第1反射面35aで挟まれる空間のうち第1の光源42に備えられる複数のLEDの並列方向の一方の端側に配置される。また、第2サイドリフレクタ31bは、当該空間の他方の端側に配置される。第1サイドリフレクタ31a及び第2サイドリフレクタ31bは、後方から前方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように配置される。
【0036】
リフレクタ32は、第2の光源52の下方に配置される。リフレクタ32は、第2の光源52側に配置されると共に第2の光源52の下方を覆う第4反射面32rを有する。第4反射面32r及びシェード35の第2反射面35bは、第2の光源52に備えられる複数のLEDの並列方向に沿って配置される。第4反射面32r及び第2反射面35bは、当該複数のLEDを上下側から挟むように配置される一対のリフレクタとなる。
【0037】
第1サイドリフレクタ32aは、第4反射面32r及び第2反射面35bで挟まれる空間のうち第2の光源52に備えられる複数のLEDの並列方向の一方の端側に配置される。また、第2サイドリフレクタ32bは、当該空間の他方の端側に配置される。第1サイドリフレクタ32a及び第2サイドリフレクタ32bは、後方から前方に向かうにつれて互いの間隔が広がるように配置される。
【0038】
図1図2、及び図3に示すレンズホルダ20は、投影レンズ15を保持する筒状の部材である。
【0039】
レンズホルダ20に前端部には、投影レンズ15のフランジ部15aが固定される。上述したように第1の光源42及び第2の光源52はLEDアレイであり、第1の光源42及び第2の光源52からの発熱量はハロゲンランプやディスチャージドランプ等に比べて低減している。このため、投影レンズ15及びレンズホルダ20をポリカーボネート等の樹脂で構成することが可能である。投影レンズ15及びレンズホルダ20が樹脂で構成されることによって、投影レンズ15及びレンズホルダ20を互いに溶着によって固定し得る。また、投影レンズ15及びレンズホルダ20が樹脂で構成されることによって、車両用前照灯1が軽量化し、製造コストが低減し得る。
【0040】
レンズホルダ20に後端部には不図示のフランジ部が配置されており、当該フランジ部は不図示のねじによって冷却ユニット70の第1ベース部72及び第2ベース部73に固定される。投影レンズ15がレンズホルダ20に固定されると共にレンズホルダ20が冷却ユニット70に固定されることによって、投影レンズ15、レンズホルダ20、及び冷却ユニット70の相対的位置が固定される。また、リフレクタユニット30、第1の光源ユニット40及び第2の光源ユニット50は、冷却ユニット70に固定される。このため、リフレクタユニット30、第1の光源ユニット40、及び第2の光源ユニット50と投影レンズ15とレンズホルダ20との相対的位置も固定される。
【0041】
図3に示すように、投影レンズ15は、前方に向かって凸状のレンズである。投影レンズ15は、第1の光源42及び第2の光源52の前方において第1の光源42の出射面42fの法線及び第2の光源52の出射面52fの法線が通る位置に配置される。本実施形態の車両用前照灯1では、投影レンズ15の焦点は、シェード35の前方端35cと投影レンズ15との間に設けられる。投影レンズ15は、第1の光源42から出射する第1の光及び第2の光源52から出射する第2の光が入射する入射面151と、入射面151から投影レンズ15に入射した第1の光及び第2の光を前方に向けて出射する出射面153とを有する。従って、投影レンズ15は、投影レンズ15の背面側の入射面151から入射した第1の光及び第2の光を、投影レンズ15の正面側の出射面153から前方に向けて投影する。
【0042】
本実施形態では、入射面151は、3つの第1入射面151aと、2つの第2入射面151bとを有する。
【0043】
第1入射面151aは、入射面151において第1の光の一部が入射する入射領域と、入射面151において第2の光が入射する入射領域とに配置される。第1入射面151aに入射する第1の光はロービーム用の第1配光パターンを形成する光であり、第1入射面151aに入射する第2の光はハイビーム用の配光パターンを形成する光である。
【0044】
第2入射面151bは、入射面151において第1の光の別の一部が入射する入射領域に配置される。第2入射面151bに入射する第1の光は、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する光である。オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンは、ロービーム用の第1配光パターンよりも上方に投影される配光パターンである。また、第2入射面151bには、第2の光も入射する。
【0045】
次に、入射面151における3つの第1入射面151a及び2つの第2入射面151bの位置について説明する。
【0046】
投影レンズ15の上端から下端に向かって、第1入射面151a及び第2入射面151bは、交互に隣り合って連続して配置される。投影レンズ15の上端及び下端には、第1入射面151aが配置される。
【0047】
投影レンズ15の最も上端に位置する第1入射面151aは、入射面151において第1の光及び第2の光が入射する領域に配置される。この第1入射面151aに入射する第1の光は、ロービーム用の第1配光パターンのカットラインを形成する光である。また、当該第1入射面151aよりも下方に配置される他の2つの第1入射面151aは、入射面151において第1の光及び第2の光が入射する領域に配置される。
【0048】
2つの第2入射面151bは、入射面151において第1の光が入射する領域に配置される。投影レンズ15の上下方向において、一方の第2入射面151bは、他方の第2入射面151bよりも上方に配置される。
【0049】
図3に示す投影レンズ15の上下方向における投影レンズ15の断面において、第2入射面151bは、投影レンズ15の下方に向かうにしたがって出射面153に近づくように投影レンズ15の中心軸C方向に対して傾斜している傾斜面である。従って、投影レンズ15の上下方向において上側に配置される一方の第2入射面151bによって、投影レンズ15の上下方向において最も上側に配置される第1入射面151aは後方に配置され、3つの第1入射面151aのうち中央に配置される第1入射面151aは前方に配置される。また、他方の第2入射面151bによって、投影レンズ15の上下方向において最も下側に配置される第1入射面151aはさらに前方に配置される。
【0050】
図5は、出射面153側から視た投影レンズ15の正面図である。図5では、投影レンズ15の背面である入射面151に配置される第2入射面151bを破線で投影している。第2入射面151bは、投影レンズ15の左右方向に沿って延在している。また、第2入射面151bは、投影レンズ15の左右方向において投影レンズ15の一端から投影レンズ15の他端まで延在している。入射面151において、上記のように配置される第2入射面151b以外の部分は、第1入射面151aである。
【0051】
図5に示すように、出射面153は、第1出射面153aと、2つの第2出射面153bとを有する。
【0052】
図5に示すように、出射面153側から投影レンズ15を平面視する場合、投影レンズ15の左右方向において、一方の第2出射面153bは投影レンズ15の一端側に配置され、他方の第2出射面153bは一方の第2出射面153bから離れて投影レンズ15の他端側に配置される。
【0053】
図5に示すように、出射面153側から投影レンズ15を平面視する場合、2つの第2出射面153bの一部は、投影レンズ15の上下方向において最も上側に配置される第1入射面151aに重なる位置に配置される。また、出射面153側から投影レンズ15を平面視する場合、2つの第2出射面153bの別の一部は、投影レンズ15の上端側に配置される一方の第2入射面151bの一部と重なる位置に配置される。当該一部とは、投影レンズ15の左右方向において、第2入射面151bの一端と他端との間である。それぞれの第2出射面153bは互いにずれて配置されているため、一方の第2出射面153bが最も上側に配置される第1入射面151a及び第2入射面151bに重なる部分は、他方の第2出射面153bが最も上側に配置される第1入射面151a及び第2入射面151bに重なる部分とはずれて配置される。また、出射面153側から投影レンズ15を平面視する場合、それぞれの第2出射面153bの残りの一部は、投影レンズ15の下端側に配置される他方の第2入射面151bと重ならず、3つの第1入射面151aのうちの中央に配置される第1入射面151aに重なる位置に配置される。従って、それぞれの第2出射面153bは、最も上側に配置される第1入射面151aから一方の第2入射面151bと他方の第2入射面151bとの間に位置する第1入射面151aまで延在している。出射面153側から投影レンズ15を平面視する場合、それぞれの第2出射面153bは、一方の第2入射面151b及び中央に配置される第1入射面151aよりも最も上側に配置される第1入射面151aに多く重なる。出射面153において、第2出射面153b以外の部分は第1出射面153aであり、第2出射面153bは第1出射面153aに連続して隣り合って配置される。
【0054】
図6は、図5に示すA-A線における投影レンズ15の断面図である。図7は、図5に示すB-B線における投影レンズの断面図である。
【0055】
第1出射面153aは、球面の一部であり、一定の曲率で曲がっている曲面である。第1出射面153aは、前方に向かって凸状である。
【0056】
第2出射面153bは、第1出射面153aの曲率とは異なる曲率で曲がっている曲面である。例えば、第2出射面153bの曲率は、第1出射面153aの曲率よりも大きくされている。また、第2出射面153bでは、第2出射面153bが並列する図6に示す断面における第2出射面153bの曲率は、当該並列方向と垂直な方向における図7に示す断面における第2出射面153bの曲率よりも大きくされている。ここで、図6及び図7に示す破線は、第2出射面153bが出射面153に設けられていないと想定した場合における第1出射面153aの仮想部分153dを示す。仮想部分153dは、図6及び図7に示すように実在する部分における第1出射面153aの延長線上に位置する。破線で示す仮想部分153dと第2出射面153bとを比較すると、第2出射面153bは仮想部分153dよりも前方に向かって凸状である。仮想部分153dに対する第2出射面153bの前方への最大突出量は、例えば、数μmである。
【0057】
図6では、第1出射面153aと第2出射面153bとの境界における第1出射面153aの接線を接線155として一点鎖線で図示している。第2出射面153bの一部は、接線155よりも前方の位置に配置される。
【0058】
第1出射面153aは、ロービーム用の第1配光パターンを形成する第1の光と、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する第1の光と、ハイビーム用の配光パターンを形成する第2の光とを出射する。
【0059】
第2出射面153bは、ロービーム用の第1配光パターンを形成する第1の光と、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する第1の光と、ハイビーム用の配光パターンを形成する第2の光とを出射する。第2出射面153bは、ロービーム用の第1配光パターンにおいて第1の光が広がるようにロービーム用の第1配光パターンを形成する第1の光を出射する。また、図7に示す第2出射面153bにおいて、第2出射面153bを通過する光と第1出射面153aの仮想部分153dを通過する光とを比較すると、第2出射面153bは、第2出射面153bを通過する光を仮想部分153dを通過する光よりも投影レンズ15の下方側に向けて出射する。
【0060】
次に、本実施形態の車両用前照灯1からの光の出射及び車両用前照灯1の作用について説明する。図8は、図7に示す投影レンズの断面における第1の光源42及び第2の光源52から出射する光の光路例を概略的に示す図である。なお、図6及び図7において第1出射面153aの仮想部分153dを破線で示したように、図8でも仮想部分153dを破線で示している。また、図8に示す各反射面の角度、光の反射角や屈折角等は正確でない場合がある。上記のように、車両用前照灯1は、車両の左右に対称に設けられる。以下の配光の説明では、左右に設けられる車両用前照灯1が同様に点灯または消灯する場合の配光について説明する。
【0061】
まず、第1の光源42から出射するロービーム用の第1の光L11,L12,L13について説明する。第1の光L11,L12,L13は、以下に説明するように入射面151から投影レンズ15に入射する。そして、当該第1の光L11,L12,L13は、投影レンズ15を透過して出射面153からフロントカバー12を介して前方に出射する。これにより、第1の光L11,L12,L13は、図9に示すロービーム用の第1配光パターンPLを形成する。
【0062】
第1の光源42におけるそれぞれのLEDでは、出射面42fから垂直な方向に出射する第1の光L11の強度は、他の方向に出射する第1の光L12,L13の強度に対して相対的に強くなる。それぞれのLEDの出射面42fの法線は、前方斜め下方に向かって延在する。このため、出射面42fから垂直に出射する第1の光L11は、シェード35の前方端35cに向かって出射し、シェード35の前方端35c近傍またはシェード35の前方端35cより前方を通る。よって、第1の光源42の出射面42fから垂直に出射する第1の光L11の全部または一部がシェード35の前方端35c近傍に照射され、シェード35の前方端35cに入射する第1の光L11の光量が多くなる。上記した第1の光L11は、例えば、投影レンズ15の上下方向において3つの第1入射面151aのなかで中央に配置される当該第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。また、第1の光のうちシェード35の前方端35cより後方に照射される光の一部は、シェード35によって遮蔽される。シェード35がこのように第1の光の一部を遮蔽することによって、シェード35の前方端35cは第1の光によるロービーム用の第1配光パターンPLのカットラインを形成する。上記のように第1の光の一部はカットラインが形成されるシェード35の前方端35cに直接入射すると共に前方端35cに入射する第1の光の光量が多くなり、シェード35の前方端35c近傍が明るくなり易い。ここで、投影レンズ15の焦点15fがシェード35の前方端35cと投影レンズ15との間、すなわちシェード35の前方端35c近傍に形成されることによって、ロービーム用の第1配光パターンPLのカットライン近傍は明るくなる。なお、シェード35の前方端35cは、ロービーム用の所望のカットラインの形状に合わせた形状とされ、本実施形態では上記のように凹状に形成されている。
【0063】
また、第1の光L11の図示しない他の一部は、第1反射面35a、第3反射面31r、第1サイドリフレクタ31a、及び第2サイドリフレクタ31bのいずれかによって前方に反射されて第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。当該第1入射面151aは、例えば、投影レンズ15の上下方向において3つの第1入射面151aのなかで中央及び最も下側に配置される入射面である。
【0064】
第1反射面35aで反射される第1の光L11は、発散角が小さくなって前方に反射されて第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。発散角が小さくなるため、第1の光の配光のうち所定の範囲は他の範囲より相対的に明るくなる。例えば第1反射面35aで反射される第1の光L11をシェード35の前方端35c近傍に集めることによって、ロービーム用の第1配光パターンPLのカットライン近傍はより明るくなる。
【0065】
上記したように投影レンズ15に入射した第1の光L11は、投影レンズ15を透過して出射面153の第1出射面153aから出射する。
【0066】
また、第1の光L12は、第3反射面31rによって反射されて、第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。当該第1入射面151aは、投影レンズ15の上下方向において3つの第1入射面151aのなかで最も下側に配置される入射面である。そして、第1の光L12は、投影レンズ15を透過し、出射面153の第1出射面153aから出射する。第3反射面31rで反射される第1の光L12はより広い範囲に照射されることによって、ロービーム用の第1配光パターンPLが形成されることが好ましい。したがって、第3反射面31rで反射される第1の光L12は、発散されることが好ましい。
【0067】
第1の光L13の少なくとも一部は、シェード35の前方端35cよりも前方を通り、第1入射面151aから投影レンズ15に直接入射する。当該第1入射面151aは、投影レンズ15の上下方向において3つの第1入射面151aのなかで最も上側に配置される入射面である。投影レンズ15に入射した第1の光L13は、投影レンズ15を透過して出射面153の第2出射面153bから出射する。第2出射面153bから出射する第1の光L13は、第1出射面153aから出射する第1の光L11よりも投影レンズ15の下方に向かって進行する。また、第1の光L13は、第2出射面153bによって、図8において破線の矢印L13aで示すように第1出射面153aの仮想部分153dを通過した場合よりも投影レンズ15の下方側に向けて出射する。
【0068】
上記のように、第1の光L11,L12,L13は、入射面151から投影レンズ15に入射して投影レンズ15を透過し、出射面153からフロントカバー12を介して前方に出射する。また、第1の光源42は、投影レンズ15の左右において並列された複数のLEDからなる。従って、例えば、第1の光L11,L12の一部は、図8に示す断面とは異なる断面における出射面153の第1出射面153aからも出射する。この第1出射面153aは、例えば、図5における2つの第2出射面153bの間に位置する第1出射面153aを示す。これにより、第1の光L11,L12,L13は、図9に示すロービーム用の第1配光パターンPLを形成する。
【0069】
また、第1の光源42は、第1の光の一部である第1の光L14を出射する。第1の光L14は、投影レンズ15の上下方向において2つの第2入射面151bのなかで最も上側に配置される第2入射面151bに直接進行し、当該第2入射面151bから投影レンズ15に入射する。第2入射面151bは、投影レンズ15の左右方向において投影レンズ15の一端から投影レンズ15の他端まで延在している。従って、第2入射面151bが投影レンズ15の一端から投影レンズ15の他端まで延在していない場合に比べて、第2入射面151bにおける入射領域が広がり、第1の光L14は第2入射面151bに入射し易くなる。当該第1の光L14は、投影レンズ15を透過し、出射面153の第2出射面153bからフロントカバー12を介して前方に出射する。第1の光L14は、第2出射面153bによって、図8において破線の矢印L14aで示すように第1出射面153aの仮想部分153dを通過した場合よりも投影レンズ15の下方側に向けて出射する。また、第2入射面151bは、投影レンズ15の下方に向かうにしたがって出射面153に近づくように投影レンズの中心軸方向に対して傾斜する傾斜面である。従って、当該第1の光L14は、ロービーム用の第1配光パターンPLのカットラインを形成する第1の光L11よりも上方に出射する。これにより、第1の光L14は、ロービーム用の第1配光パターンPLの照射領域よりも上方に投影される図9に示すオーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンPOを形成する。
【0070】
ところで、第1の光の一部が投影レンズ15の左右方向に沿って延在する第2入射面151bに入射したとする。当該第1の光は、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンPOを形成する第1の光L14とは別の光であり、ロービーム用の第1配光パターンPLを形成する光である。当該第1の光は、第2入射面151bに入射すると、第1の光L14と同様に、第2入射面151bを通じてロービーム用の第1配光パターンPLの照射領域よりも上方に投影されてしまう。これにより、ロービーム用の第1配光パターンPLに意図しない横すじ状のむらが発生してしまう懸念がある。
【0071】
しかしながら、本実施形態では、ロービーム用の第1配光パターンPLを形成する第1の光の少なくとも一部の光は、第2出射面153bから出射する。第2出射面153bの一部は、第1出射面153aと第2出射面153bとの境界における第1出射面153aの接線155よりも前方の位置に配置される。このため、第2出射面153bがロービーム用の第1配光パターンPLを形成する第1の光を出射すると、ロービーム用の第1配光パターンPLにおいて第1の光が広がり、ロービーム用の第1配光パターンPLにおける意図しない横すじ状のむらの発生が抑制される。
【0072】
次に、第2の光源52から出射するハイビーム用の第2の光L21,L22,L23,L24,L25について説明する。第2の光L21,L22,L23,L24,L25は、以下に説明するように入射面151から投影レンズ15に入射する。まず、第2の光L21,L22は、投影レンズ15の上下方向において3つの第1入射面151aのなかで最も上側に配置される第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。第2の光L23,L24は、投影レンズ15の上下方向において3つの第1入射面151aのなかで最も下側に配置される第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。また、第2の光L25は、投影レンズ15の上下方向において2つの第2入射面151bのなかで最も上側に配置される第2入射面151bから投影レンズ15に入射する。そして、当該第2の光L21,L22,L23,L24,L25は、投影レンズ15を透過し、出射面153からフロントカバー12を介して前方に出射する。このとき、第2の光L21,L22,L25の少なくとも一部は第1の光L11,L12,L13よりも上方に向けて出射する。したがって、第2の光L21,L22の少なくとも一部によって上記カットラインよりも上方に配光が形成される。また、第2の光源52から第2の光が出射する場合、第1の光源42からも第1の光が出射する。従って、第2の光源52から出射する第2の光による配光と第1の光源42から出射する第1の光による配光とが合わさり、図10に示すハイビーム用の配光パターンPHが形成される。また、第2の光L25は、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンPOを形成する第1の光L14よりも上方に向けて出射する。従って、ハイビーム用の配光パターンPHの外縁は、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンPOの外縁よりも外側に形成される。以下に、第2の光L21,L22,L23,L24,L25それぞれについて説明する。
【0073】
第2の光L21,L22は、第2の光源52におけるそれぞれのLEDの出射面52fから出射する。それぞれのLEDの出射面52fの法線は、前方斜め上方に向かって延在する。このため、出射面52fから垂直に出射する第2の光L21は、シェード35の前方端35cに向かって出射し、シェード35の前方端35c近傍が明るくなり易い。ここで、上記のように投影レンズ15の焦点がシェード35の前方端35c近傍に形成されることによって、上記カットライン近傍、すなわち第1の光の配光と第2の光の配光とが重なる部分が他の部分より相対的に明るくなる。
【0074】
シェード35の前方端35cよりも前方を通る第2の光L21の少なくとも一部は、最も上側に配置される第1入射面151aから投影レンズ15に直接入射する。また、第2の光の他の一部は、第2反射面35b、第4反射面32r、第1サイドリフレクタ32a、及び第2サイドリフレクタ32bのいずれかによって前方に反射されて第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。
【0075】
また、第2の光L22は、第4反射面32rによって反射されて、最も上側に配置される第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。そして、第2の光L22は、投影レンズ15を透過し、出射面153の第2出射面153bから出射する。第4反射面32rで反射される第2の光L22はより広い範囲に照射されることによって、第2の光の配光が形成されることが好ましい。したがって、第4反射面32rで反射される第2の光L22は、発散されることが好ましい。
【0076】
第2出射面153bを通過する第2の光L21,L22は、第2出射面153bによって、図8において破線の矢印L21a,L22aで示すように第1出射面153aの仮想部分153dを通過した場合よりも下方側に向けて出射する。
【0077】
第2の光L23は、第2反射面35bによって発散角が小さくなって前方に反射され、最も下側の配置される第1入射面151aに進行する。次に、第2の光L23は、第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。また、第2の光L24は、最も下側に配置される第1入射面151aに直接進行し、第1入射面151aから投影レンズ15に入射する。第2の光L23,L24は、投影レンズ15を透過して出射面153の第1出射面153aから出射する。このため、第2の光の配光のうち所定の範囲は他の範囲より相対的に明るくなる。例えば第2反射面35bで反射される第2の光L23をシェード35の前方端35c近傍に集めることによって、第1の光の配光と第2の光の配光とが重なる部分がより明るくなる。
【0078】
また、第2の光L25は、最も上側に配置される第2入射面151bに直接進行し、当該第2入射面151bから投影レンズ15に入射する。第2入射面151bは、投影レンズ15の左右方向において投影レンズ15の一端から投影レンズ15の他端まで延在している。従って、第2入射面151bが投影レンズ15の一端から投影レンズ15の他端まで延在していない場合に比べて、第2入射面151bにおける入射領域が広がり、第2の光L25は第2入射面151bに入射し易くなる。当該第2の光L25は、投影レンズ15を透過し、出射面153の第2出射面153bから出射する。第2出射面153bを通過する第2の光L25は、第2出射面153bによって、図8において破線の矢印L25aで示すように第1出射面153aの仮想部分153dを通過した場合よりも下方側に向けて出射する。また、第2入射面151bは、投影レンズ15の下方に向かうにしたがって出射面153に近づくように投影レンズ15の中心軸方向に対して傾斜する傾斜面である。従って、当該第2の光L25は、ロービーム用の第1配光パターンPLのカットラインを形成する第1の光L11及びオーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンPOを形成する第1の光L14よりも上方に出射する。
【0079】
上記のように、第2の光L21,L22,L23,L24,L25は、入射面151から投影レンズ15に入射して投影レンズ15を透過し、出射面153からフロントカバー12を介して前方に出射する。また、第2の光源52は、投影レンズ15の左右において並列された複数のLEDからなる。従って、例えば、第2の光L21,L22,L25の一部は、図8に示す断面とは異なる断面における出射面153の第1出射面153aからも出射する。この第1出射面153aは、例えば、図5における2つの第2出射面153bの間に位置する第1出射面153aを示す。これにより、第2の光L21,L22,L23,L24,L25は、第1の光L11,L12,L13と共に図10に示すハイビーム用の配光パターンPHを形成する。また、第2の光L25は、第1の光L14よりも上方に出射する。従って、ハイビーム用の配光パターンPHは、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンPOを包含する。
【0080】
以上のように、本実施形態の車両用前照灯1は、第1の光を出射する第1の光源42と、第1の光が入射する入射面151及び第1の光を前方に向けて出射する出射面153を有し、前方に向かって凸状の投影レンズ15と、を備える。入射面151は、ロービーム用の第1配光パターンを形成する第1の光の一部が入射する第1入射面151aと、ロービーム用の第1配光パターンよりも上方に投影されるオーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する第1の光の別の一部が入射し、第1入射面151aに連続して隣り合って配置される第2入射面151bと、を有する。第2入射面151bは、投影レンズ15の左右方向に沿って延在する。出射面153は、曲面である第1出射面153aと、第1出射面153aに連続して隣り合って配置される第2出射面153bと、を有する。第1出射面153aは、ロービーム用の第1配光パターンを形成する第1の光及びオーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する第1の光を出射する。第2出射面153bは、少なくともロービーム用の第1配光パターンを形成する第1の光を出射する。第2出射面153bの一部は、第1出射面153aと第2出射面153bとの境界における第1出射面153aの接線155よりも前方の位置に配置される。
【0081】
本実施形態の車両用前照灯1では、第2入射面151bは第1入射面151aに連続して隣り合って配置されており、第2入射面151bは投影レンズの左右方向に沿って延在する。この場合に、第1の光源42からの第1の光の一部が本来入射すべき第1入射面151aではなく第2入射面151bに入射してしまうと、当該第1の光はロービーム用の第1配光パターンの投影位置よりも上方に投影されることがある。このため、ロービーム用の第1配光パターンに意図しない横すじ状のむらが発生してしまう懸念がある。しかしながら、本実施形態の車両用前照灯1では、第2出射面153bが少なくともロービーム用の第1配光パターンを形成する第1の光を出射し、第2出射面153bの一部は、第1出射面153aと第2出射面153bとの境界における第1出射面153aの接線155よりも前方の位置に配置される。このため、第2出射面153bがロービーム用の第1配光パターンを形成する光を出射すると、ロービーム用の第1配光パターンにおいて第1の光が広がり得、ロービーム用の第1配光パターンにおける意図しない横すじ状のむらの発生が抑制され得る。従って、この車両用前照灯1によれば、ロービーム用の配光パターン及びオーバーヘッドサイン光用の配光パターンが投影される状態で、ロービーム用の配光パターンにおける意図しない横すじ状のむらの発生が抑制され得る。
【0082】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、第2入射面151bは、投影レンズ15の左右方向において投影レンズ15の一端から投影レンズ15の他端まで延在することが好ましい。
【0083】
この場合、第2入射面151bが投影レンズ15の左右方向において投影レンズ15の一端から投影レンズ15の他端まで延在していない場合に比べて、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンを形成する第1の光が第2入射面151bに入射し易くなり得る。また、第2入射面151bが投影レンズ15の左右方向において投影レンズ15の一端から投影レンズ15の他端まで延在していないと、投影レンズ15の左右方向において第2入射面151bの端部と第1入射面151aとを接続する別の面が設けられることに繋がる。当該面に例えばロービーム用の第1配光パターンを形成する光が入射してしまうと、当該光は意図しない方向に出射し、ロービーム用の第1配光パターンは意図しない形状になることがある。また、例えばハイビーム用の配光パターンを形成する光が入射しても、ハイビーム用の配光パターンは意図しない形状になることがある。しかしながら、第2入射面151bが上記したように延在すると、当該面は設けられない。従って、当該面への第1配光パターン及びハイビーム用の配光パターンを形成する光の入射が抑制され得、意図しない方向への光の出射が抑制され得る。
【0084】
また、本実施形態の車両用前照灯1では、出射面153側から投影レンズ15を平面視する場合、第2出射面153bは、第2入射面151bの少なくとも一部と重なる位置に配置される。
【0085】
この場合、第2入射面151b周辺に入射する光の一部は、第2出射面153bに進行し得る。このため、ロービーム用の配光パターンにおける意図しない横すじ状のむらの発生がより抑制され得る。
【0086】
また、本実施形態では、投影レンズ15の上下方向における投影レンズ15の断面において、第2入射面151bは、投影レンズ15の下方に向かうにしたがって出射面153に近づくように投影レンズ15の中心軸C方向に対して傾斜する傾斜面であることが好ましい。
【0087】
この場合、オーバーヘッドサイン光用の第2配光パターンはロービーム用の第1配光パターンよりも上方に投影され得、ロービーム用の第1配光パターンの照射領域より上方に位置する道路標識等の対象物の視認性が向上し得る。
【0088】
以上、本発明について、上記実施形態を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
第1入射面151aは、少なくとも1つ配置されていればよい。
【0090】
第2入射面151bは、少なくとも1つ配置されていればよい。
【0091】
第1出射面153aは、互いに異なる曲率で形成される複数の面が連続する出射面でもよい。この場合、第1出射面153aは、非球面となる。また、第1出射面153aには、凸凹が形成されてもよい。
【0092】
第2出射面153bは、少なくとも1つ配置されていればよい。
【0093】
第2出射面153bは、互いに異なる曲率で形成される複数の面が連続する出射面でもよい。この場合、第2出射面153bは、非球面となる。また、第2出射面153bには、凸凹が形成されてもよい。
【0094】
第2出射面153bは、平面でもよい。
【0095】
第2出射面153bは、一定の曲率で曲がっている出射面でもよい。この場合、第2出射面153bは、球面となる。第2出射面153bの曲率は、第1出射面153aの一定の曲率よりも大きくされてもよい。
【0096】
第2出射面153bの曲率は、第1出射面153aと同じ曲率でもよい。この場合、第2出射面153bを円周の一部に備える円の中心は、第1出射面153aを円周の一部に備える円の中心よりも前方の位置に配置される。第2出射面153bの曲率は、第1出射面153aよりも小さい曲率でもよい。また、第2出射面153bでは、第2出射面153bが並列する図6に示す断面における第2出射面153bの曲率は、当該並列方向と垂直な方向における図7に示す断面における第2出射面153bの曲率と同じであってもよいし、当該曲率よりも小さくされてもよい。
【0097】
第2出射面153bの少なくとも一部は、第1出射面153aと第2出射面153bとの境界における第1出射面153aの接線155よりも前方の位置に配置されてもよい。
【0098】
第2出射面153bは、少なくともロービーム用の第1配光パターンを形成する光を出射してもよい。
【0099】
一方の第2入射面151bは、ロービーム用の第1配光パターンのカットラインを形成する第1の光の入射面151における入射位置と重なる位置に配置されてもよい。
【0100】
出射面153側から投影レンズ15を平面視する場合、第2出射面153bは、投影レンズ15の上端側に配置される第2入射面151bの少なくとも一部と重なる位置に配置されてもよい。また、出射面153側から投影レンズ15を平面視する場合、第2出射面153bは、一部の第2入射面151bの少なくとも一部と重なる位置に配置され、他の一部の第2入射面151bと重ならない位置に配置されてもよい。一部の第2入射面151bは投影レンズ15の上端側に配置される入射面であり、他の一部の第2入射面151bは投影レンズ15の下端側に配置される入射面である。
【0101】
以上説明したように、本発明によれば、ロービーム用の配光パターン及びオーバーヘッドサイン光用の配光パターンが投影される状態で、ロービーム用の配光パターンにおける意図しない横すじ状のむらの発生が抑制され得る車両用前照灯が提供され、当該車両用前照灯は自動車等の車両用前照灯の分野等において利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10