(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】圧着端子
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
H01R4/18 A
(21)【出願番号】P 2022022114
(22)【出願日】2022-02-16
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一馬
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-224300(JP,A)
【文献】特開2012-038454(JP,A)
【文献】特開2012-038493(JP,A)
【文献】特開2010-262915(JP,A)
【文献】特開平05-152011(JP,A)
【文献】特開2023-009323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の導体が配置される底板、及び、前記導体の延在方向に交差する方向における前記底板の両側縁から延設される一対の導体加締片を含んで構成され、前記底板上に配置された前記導体を前記導体加締片で覆って加締めることにより前記電線の前記導体に圧着して接続される導体圧着部を備え、
前記導体圧着部は、前記導体に接触する側の面に、前記底板に配置される前記導体の延在方向に対して交差する方向に沿って、一対の前記導体加締片と前記底板とに亘って溝状に延在するセレーションが形成され、
前記セレーションは、前記導体圧着部が前記導体に圧着される前の平板状の展開状態において、当該セレーションの開口部の前記延在方向に沿った幅が、当該セレーションの底面の前記延在方向に沿った幅以上の幅になっており、且つ、
前記導体加締片と前記底板との連結部分で、当該セレーションの底面に段差が形成されることにより、前記底板側に位置する部分と前記導体加締片側に位置する部分とで深さが異なっており、前記導体加締片に位置する部分の少なくとも一部の位置での深さが、前記底板に位置する部分の深さよりも浅
く、前記導体への前記導体圧着部の圧着時に前記導体加締片が前記底板に対して曲げられる際における曲率の変化が大きくなる位置である当該導体加締片の加締片付け根部を境にして、前記底板側と前記導体加締片側とで深さが変化することを特徴とする圧着端子。
【請求項2】
前記導体加締片は、前記導体圧着部が前記導体に圧着された後の状態において、前記導体の延在方向に見た場合における曲率半径が、前記底板の曲率半径よりも小さくなる請求項1に記載の圧着端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子に関する。
【背景技術】
【0002】
電線に圧着接続される一般的な圧着端子は、電線の端部で露出した電線の導体に対して、加締められることにより圧着する導体圧着部を有している。圧着端子の導体圧着部は、例えば、底板と、電線の延在方向に直交する方向における底板の両側に位置して底板から延びる板状の導体加締片とを有し、底板上に電線を配置した状態で、底板の両側の導体加締片で電線を覆って加締めることにより、電線に圧着する。
【0003】
また、従来の圧着端子の中には、圧着端子における電線の導体との接触面に、セレーションが形成されているものがある。例えば、特許文献1、2では、圧着端子における電線の導体との接触面に、電線の延在方向に直交する方向に延びる複数の凹溝からなるセレーションが形成されており、これにより、電線の導体と圧着端子との圧着部分での電気抵抗である圧着部抵抗の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-198789号公報
【文献】特開2010-244889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような圧着端子では、セレーションは、電線への圧着端子の圧着時には、圧着時の力によって芯線の酸化被膜をセレーションのエッジ部を起点にして破れ、酸化被膜が除去された新生面にて芯線との接触を得ることにより、圧着部抵抗を低減させる効果を発揮するものであるが、当該セレーションにおいて、圧着部抵抗をより安定的に低減させるための構成の点で更なる改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、圧着部抵抗を安定的に低減させることのできる圧着端子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る圧着端子は、電線の導体が配置される底板、及び、前記導体の延在方向に交差する方向における前記底板の両側縁から延設される一対の導体加締片を含んで構成され、前記底板上に配置された前記導体を前記導体加締片で覆って加締めることにより前記電線の前記導体に圧着して接続される導体圧着部を備え、前記導体圧着部は、前記導体に接触する側の面に、前記底板に配置される前記導体の延在方向に対して交差する方向に沿って、一対の前記導体加締片と前記底板とに亘って溝状に延在するセレーションが形成され、前記セレーションは、前記導体圧着部が前記導体に圧着される前の平板状の展開状態において、当該セレーションの開口部の前記延在方向に沿った幅が、当該セレーションの底面の前記延在方向に沿った幅以上の幅になっており、且つ、前記導体加締片に位置する部分の少なくとも一部の位置での深さが、前記底板に位置する部分の深さよりも浅いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る圧着端子は、導体圧着部に形成されるセレーションが、導体圧着部が平板状の展開状態において、導体加締片に位置する部分の少なくとも一部の位置での深さが、底板に位置する部分の深さよりも浅くなっている。これにより、導体加締片を加締めることにより導体圧着部を導体に圧着した場合における、セレーションにおける導体加締片に位置する部分の側面の内倒れを抑制することができる。このため、導体圧着部を導体に圧着した場合でも、セレーションにおける導体加締片に位置する部分の開口部の幅が、セレーションの底面の幅より小さくなることを抑制できる。従って、導体加締片を加締めて導体圧着部を導体に圧着した場合に、圧着時の力によって導体の芯線の酸化被膜をセレーションのエッジ部を起点にして破くことがき、酸化被膜が除去された新生面にて芯線との接触を得ることができるため、電気抵抗を低減することができる。この結果、圧着部抵抗を安定的に低減させることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る圧着端子の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す圧着端子の展開状態における説明図である。
【
図6】
図6は、導体加締片を加締めて電線Wに対して導体圧着部を圧着した状態における、導体の延在方向に見た導体圧着部の断面図である。
【
図8】
図8は、導体圧着部が平板状の展開状態においてセレーションの深さが底板の位置と導体加締片の位置とで同じ深さで形成される圧着端子の説明図である。
【
図10】
図10は、
図8、
図9に示す導体圧着部の導体加締片を加締めて導体に圧着させた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る圧着端子10の斜視図である。実施形態に係る圧着端子10は、金属材料からなる部材になっており、圧着端子10の長手方向、或いは圧着端子10を圧着する電線Wの導体Waの長手方向における一端側から他端側にかけて、電気接続部11と、導体圧着部20とを備えている。本実施形態に係る圧着端子10は、高い電圧で電流が流れる、高圧の電線Wに用いられる圧着端子10になっている。このため、圧着端子10は、導電性が高い純銅により形成される。
【0012】
圧着端子10が有する電気接続部11と導体圧着部20とのうち、電気接続部11は、圧着端子10の接続対象となる接続相手部材に接続される部位になっている。ここで、接続相手部材とは、例えば、圧着端子10の接続対象となる装置に設けられた端子やバスバー等の導電部材、あるいは、車体ボディ等のグランド部材である。電気接続部11は、接続相手部材に対してボルト締結されることで、当該接続相手部材に電気的に接続される。また、導体圧着部20は、圧着端子10を圧着する電線Wの導体Waに圧着される部位になっている。詳しくは、導体圧着部20は、底板15と、導体加締片21とを含んで構成されている。底板15は、板状の部材になっており、圧着端子10を圧着する電線Wの導体Waが配置される部位になっている。また、導体加締片21は、電線Wの導体Waの延在方向に交差する方向における底板15の両側縁から一対が延設される。
【0013】
即ち、導体加締片21は、底板15の幅方向における、底板15の両側のそれぞれから延設して配置されている。導体加締片21は、例えば、
図1に示すように、底板15の厚み方向における、底板15に対して電線Wが配置される側に、双方の導体加締片21がそれぞれ底板15から曲げられており、電線Wへの圧着前の
図1の状態において、電線Wの延在方向に見た際に、底板15と導体加締片21とは、略U字状に形成されている。
【0014】
また、導体圧着部20における、電線Wの導体Waに接触する側の面には、底板15に配置される導体Waの延在方向に対して交差する方向に沿って、一対の導体加締片21と底板15とに亘って溝状に延在するセレーション30が形成されている。即ち、セレーション30は、底板15に対して導体加締片21が曲げられる方向における、内面側に形成されている。溝状の形状で形成されるセレーション30は、導体圧着部20で圧着する電線Wの延在方向に複数が並んで配置されており、本実施形態では、セレーション30は、導体圧着部20で圧着する電線Wの延在方向に3本が並んで配置されている。
【0015】
図2は、
図1に示す圧着端子10の展開状態における説明図である。導体圧着部20に形成されるセレーション30は、導体圧着部20が電線Wの導体Wa(
図1参照)に圧着される前の平板状の展開状態において、導体圧着部20が有する一対の導体加締片21のうち、一方の導体加締片21から他方の導体加締片21にかけて、底板15を横断して形成されている。つまり、セレーション30は、底板15に配置される導体Waの延在方向に対して交差する方向に沿って形成されており、本実施形態では、セレーション30は、底板15に配置される導体Waの延在方向に対して、実質的に直交する方向に沿って形成されている。換言すると、セレーション30は、底板15に配置される導体Waの延在方向が、セレーション30の形状である溝の幅方向となる向きで形成されている。
【0016】
図3は、
図2のA-A断面図である。
図4は、
図2のB-B断面図である。
図5は、
図2のC-C断面図である。セレーション30は、底面32と側面33とを有する溝状の形状で形成されており、導体圧着部20における導体Waが圧着される側の面に対して開口部31で開口している。また、セレーション30は、導体圧着部20が導体Waに圧着される前の平板状の展開状態において、セレーション30の開口部31の、電線Wの導体Waの延在方向に沿った幅Saが、当該セレーション30の底面32の、電線Wの導体Waの延在方向に沿った幅Sb以上の幅になっている。つまり、セレーション30は、導体圧着部20が平板状の展開状態においては、セレーション30の長手方向におけるいずれの位置においても、セレーション30の底面32の幅Sbよりも開口部31の幅Saの方が大きくなっている。このため、セレーション30は、底面32の法線に対して、側面33が傾斜して形成されている。
【0017】
また、セレーション30は、導体圧着部20が導体Waに圧着される前の平板状の展開状態において、導体加締片21に位置する部分の少なくとも一部の位置での深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1よりも浅くなっている。つまり、セレーション30は、導体加締片21に位置する部分の少なくとも一部の位置でのセレーション30の深さ方向における、開口部31の位置から底面32までの深さD2が、底板15に位置する部分でのセレーション30の深さ方向における、開口部31の位置から底面32までの深さD1よりも浅くなっている。
【0018】
セレーション30は、例えば、底面32の法線に対する側面33の角度は、導体加締片21に位置する部分と底板15に位置する部分とで同じ角度で形成されつつ、深さが、導体加締片21に位置する部分と底板15に位置する部分とで異なっている。この場合、セレーション30における、導体加締片21に位置する部分の底面32の幅Sbは、底板15に位置する部分の底面32の幅Sbよりも大きくなって形成される。
【0019】
本実施形態では、セレーション30は、導体圧着部20が平板状の展開状態において、導体加締片21における底板15との連結部分付近で深さが変化しており、セレーション30の深さは、底板15側に位置する部分のD1よりも、導体加締片21側に位置する部分の深さD2の方が浅くなっている。即ち、セレーション30は、導体加締片21における底板15との連結部分付近で、底面32に段差が形成されることにより、底板15側に位置する部分と導体加締片21側に位置する部分とで深さが異なっている。このため、セレーション30は、導体圧着部20が平板状の展開状態において、セレーション30における導体加締片21に位置するほぼ全ての部分の深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1よりも浅くなっている。
【0020】
セレーション30の深さは、一例としては、導体圧着部20が平板状の展開状態における厚みが0.8mmである圧着端子10において、底板15に位置する部分の深さD1は0.10mmであり、導体加締片21に位置する部分の深さD2は、0.05mmである。また、セレーション30の深さの他の例としては、導体圧着部20が平板状の展開状態における厚みが2.3mmである圧着端子10において、底板15に位置する部分の深さD1は0.25mmであり、導体加締片21に位置する部分の深さD2は、0.13mmである。これらのように、セレーション30の深さは、導体圧着部20が平板状の展開状態において、導体加締片21に位置する部分の深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1の50%程度であるのが好ましい。
【0021】
なお、セレーション30の形態に関する説明では、導体圧着部20が平板状の展開状態でのセレーション30について説明したが、圧着端子10単体では、
図1に示すように、底板15と一対の導体加締片21とが略U字状となる状態で扱われる。
【0022】
本実施形態に係る圧着端子10は、以上のような構成を含み、次に、その作用について説明する。本実施形態に係る圧着端子10は、金属からなる線状の導体Waが絶縁被覆Wcにより被覆される電線Wに圧着して用いられる。圧着端子10を電線Wに圧着する際には、電線Wの端部付近に位置する絶縁被覆Wcを除去し、電線Wの端部付近で導体Waを露出させた状態で、圧着端子10が有する一対の導体加締片21の間に電線Wを入り込ませる。圧着端子10の導体加締片21の間に電線Wを入り込ませる際には、例えば、圧着端子10を電線Wに圧着する際に用いる下型(アンビル)(図示省略)上に圧着端子10を載置した状態で、電線Wを入り込ませる。
【0023】
その際に、電線Wは、露出した導体Waを一対の導体加締片21の間に入り込ませ、電線Wにおける露出した導体Waを導体圧着部20に位置させる。これにより、電線Wの導体Waを、圧着端子10の導体圧着部20が有する底板15上に配置する。
【0024】
圧着端子10の導体加締片21の間に電線Wを入り込ませたら、導体加締片21を加締める。圧着端子10の導体加締片21を加締める際には、圧着端子10を電線Wに圧着する際に用いる上型(クリンパー)(図示省略)を、圧着端子10の上方から圧着端子10に向けて下降させる。これにより、底板15に電線Wが配置される圧着端子10を上型と下型とで挟み込み、導体加締片21を、上型における圧着端子10に対向する側の面に形成される案内面により、電線Wが配置される側に折り返すように丸める。
【0025】
一対の導体加締片21は、このように電線Wが配置される側に折り返すようにそれぞれが丸められることにより、底板15上に配置された電線Wの導体Waを覆う状態で、導体Waに対して加締められる。導体加締片21を有する導体圧着部20は、底板15上に配置された電線Wの導体Waを、導体加締片21で覆って加締めることにより、電線Wの導体Waに圧着して接続される。これにより、圧着端子10は、導体圧着部20が有する導体加締片21や底板15における、セレーション30が形成される側の面が電線Wの導体Waが接触する状態で、電線Wに圧着されて接続される。
【0026】
図6は、導体加締片21を加締めて電線Wに対して導体圧着部20を圧着した状態における、導体Waの延在方向に見た導体圧着部20の断面図である。導体圧着部20が電線Wの導体Waに圧着された状態では、一対の導体加締片21は、導体圧着部20を導体Waの延在方向に見た場合において、導体Waに接触する側の反対側に凸となって湾曲する方向に、いずれの導体加締片21も大きく曲げられる。一方で、底板15は導体加締片21と比較して、導体圧着部20が導体Waに圧着される前後で形状が大きく変化せず、底板15は、導体圧着部20を導体Waの延在方向に見た場合において、導体Waに接触する側の反対側に凸となる方向に、緩やかに湾曲している。
【0027】
このため、導体加締片21は、導体圧着部20が導体Waに圧着された後の状態において、導体圧着部20を導体Waの延在方向に見た場合における曲率半径が、底板15の曲率半径よりも小さくなっている。換言すると、導体加締片21は、導体圧着部20が導体Waに圧着された後の状態において、導体圧着部20を導体Waの延在方向に見た場合における曲率が、底板15の曲率よりも大きくなっている。
【0028】
導体Waへの圧着時に、このように大きく曲げられる導体加締片21を有する導体圧着部20には、セレーション30が形成されているが、セレーション30は、導体圧着部20が平板状の展開状態において、導体加締片21に位置するほぼ全ての部分の深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1よりも浅くなっている。このため、セレーション30が形成される導体加締片21では、導体圧着部20が導体Waに圧着された後の状態において導体Waの延在方向に見た場合における導体加締片21の曲率半径が最も小さくなる部分の、導体圧着部20の展開状態でのセレーション30の深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1よりも浅くなっている。つまり、セレーション30は、導体Waへの導体圧着部20の圧着時に、導体加締片21が底板15に対して曲げられる際における曲率の変化が大きくなる位置である加締片付け根部22を境にして、底板15側と導体加締片21側とで深さが変化して形成されている。
【0029】
ここで、板状の部材を板の厚み方向に曲げた際には、曲げ方向の内側では圧縮力が作用する。このため、導体加締片21を大きく曲げて電線Wの導体Waに対して導体加締片21を加締めることにより、導体圧着部20を導体Waに圧着にした場合も、導体加締片21には、曲げ方向の内側では圧縮力が作用する。つまり、導体Waに対して加締めた導体加締片21には、導体加締片21の厚み方向における、導体Waが位置する側の面寄りの位置では、導体加締片21には圧縮力が作用する。
【0030】
図7は、
図6のE-E断面図である。導体加締片21における導体Waに接触する側の面には、セレーション30が形成されているが、導体加締片21が大きく曲げられることにより、導体加締片21の厚み方向における導体Waが位置する側の部分に圧縮力が作用した場合は、セレーション30は、圧縮力により押し縮められ易くなる。この場合、セレーション30における導体加締片21に位置する部分は、圧縮力によって、例えば、開口部31の幅が狭くなる方向に押し縮められる。これにより、セレーション30における導体加締片21に位置する部分は、開口部31の幅が狭くなる方向に変形し易くなる。
【0031】
導体加締片21を加締めた際には、セレーション30における導体加締片21に位置する部分で開口部31の幅が狭くなる方向に変形をするが、セレーション30は、導体圧着部20が平板状の展開状態において、導体加締片21に位置する部分の少なくとも一部の位置での深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1より浅くなっている。このため、セレーション30における導体加締片21に位置する部分の周囲では、セレーション30における底板15に位置する部分の周囲と比較して剛性が高くなっている。これにより、セレーション30における導体加締片21に位置する部分は、導体加締片21が大きく曲げられることにより、開口部31の幅が狭くなる方向への力が作用する場合でも、開口部31の幅が狭くなる方向への変形が起こり難くなっている。
【0032】
従って、セレーション30における導体加締片21に位置する部分は、開口部31の幅は底面32の幅よりも小さくなり難くなっており、開口部31の幅が底面32の幅よりも小さくなる方向にセレーション30の側面33が傾斜する、いわゆる内倒れが発生し難くなっている。これにより、セレーション30における導体加締片21に位置する部分では、導体加締片21が大きく曲げられることにより開口部31の幅が狭くなる方向に変形した場合でも、底面32の幅よりも開口部31の幅の方が大きい状態が維持される。
【0033】
一方で、底板15における導体圧着部20に位置する部分は、導体加締片21を加締めた場合でも、底板15は大きくは変形しない。このため、セレーション30における底板15に位置する部分は、導体加締片21を加締めて導体圧着部20を電線Wの導体Waに圧着させる場合でも、側面33の内倒れが発生し難くなっており、導体圧着部20が平板状の展開状態と同様に、底面32の幅よりも開口部31の幅の方が大きい状態が維持される。
【0034】
導体加締片21を加締めて導体圧着部20を電線Wの導体Waに圧着する際には、導体圧着部20から導体Waに対して、大きな荷重が作用する。即ち、導体圧着部20を電線Wの導体Waに圧着する際には、導体圧着部20を導体Waに圧着させるために上型と下型とから圧着端子10に付与される力により、導体圧着部20から導体Waに対して、大きな荷重が作用する。これにより、導体Waは、導体圧着部20に対して密着すると共に、セレーション30上に位置する部分がセレーション30内に入り込む。
【0035】
その際に、セレーション30は、導体加締片21を加締めた後においても、セレーション30の開口部31の幅が、底面32の幅より大きくなっており、底面32から開口部31に向かうに従って、幅が広くなる形状が維持されている。特に、セレーション30における導体加締片21に形成される部分では、導体加締片21を加締める際に導体加締片21が大きく曲げられるため、側面33の内倒れが発生して開口部31側の幅が狭くなり易いが、本実施形態では、導体加締片21を加締めた後でも、側面33の内倒れは発生し難くなっている。これにより、セレーション30における導体加締片21に形成される部分では、導体加締片21を加締めた後においても、開口部31側の幅が底面32側の幅より大きい状態が維持される。
【0036】
図8は、導体圧着部20が平板状の展開状態においてセレーション30の深さが底板15の位置と導体加締片21の位置とで同じ深さで形成される圧着端子10の説明図である。
図9は、
図8のF-F断面図である。
図10は、
図8、
図9に示す導体圧着部20の導体加締片21を加締めて導体Waに圧着させた状態を示す説明図である。導体圧着部20に形成されるセレーション30が、例えば、
図8、
図9に示すように、導体圧着部20が平板状の展開状態において、導体加締片21に位置する部分と底板15に位置する部分とでセレーション30の深さが一定の場合、導体加締片21を加締めた際に、導体Waはセレーション30における導体加締片21に位置する部分に入り込み難くなる。
【0037】
つまり、セレーション30の深さが、セレーション30における導体加締片21に位置する部分と底板15に位置する部分とで一定の場合、セレーション30における導体加締片21に位置する部分の周辺の剛性は、セレーション30における底板15に位置する部分の周辺の剛性と同程度になる。この場合、導体加締片21を大きく曲げて加締めた際に、セレーション30における導体加締片21に位置する部分は、導体加締片21を大きく曲げた際に曲げ方向の内側に発生する圧縮力により、側面33の内倒れが発生し易くなる。これにより、セレーション30における導体加締片21に位置する部分は、導体加締片21を大きく曲げて加締めた際に、
図10に示すように、開口部31側の幅が狭くなる方向に変形し易くなる。このため、導体加締片21を加締めることによって導体圧着部20を導体Waに圧着した場合、セレーション30は、エッジ部から導体Waに対して大きな荷重を付与し難くなる形状になるため、導体Waに対して喰い込み難くなる。
【0038】
これに対し、本実施形態では、セレーション30は、導体圧着部20が平板状の展開状態において、導体加締片21に位置する部分の深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1よりも浅いため、導体加締片21を大きく曲げることにより圧縮力が作用した場合でも、導体加締片21に位置する部分の開口部31の幅は狭くなり難くなっている。このため、導体圧着部20を導体Waに圧着した際には、セレーション30は、エッジ部から導体Waに対して大きな荷重を付与し易くなり、エッジ部が導体Waに喰い込み易くなる形状になる。従って、導体Waにおける導体加締片21に隣接する部分と、導体加締片21とは、セレーション30のエッジ部が導体Waに喰い込むことにより、圧着時の力によって導体Waの芯線の酸化被膜をセレーション30のエッジ部を起点にして破くことがきる。これにより、酸化被膜が除去された新生面にて芯線との接触を得ることができ、導体Waと圧着端子10との圧着部分での電気抵抗である圧着部抵抗が低減する。
【0039】
また、導体圧着部20における底板15側の部分は、導体圧着部20を導体Waに圧着した場合でも、圧着前に対して形状が変化し難くなっており、セレーション30における底板15に位置する部分も、形状が変化し難くなっている。このため、導体圧着部20を導体Waに圧着した場合でも、セレーション30における底板15に位置する部分は、底面32側の幅に対して開口部31側の幅が大きい状態が維持される。従って、導体Waにおける底板15に隣接する部分は、圧着時に導体圧着部20から導体Waに対して作用する荷重により、セレーション30のエッジ部が導体Waに対して喰い込み易くなる。これにより、導体Waにおける底板15に隣接する部分と底板15も、圧着時の力によって導体Waの芯線の酸化被膜をセレーション30のエッジ部を起点にして破くことができるため、圧着部抵抗が低減する。
【0040】
以上の実施形態に係る圧着端子10は、導体圧着部20に形成されるセレーション30が、導体圧着部20が平板状の展開状態において、導体加締片21に位置する部分の少なくとも一部の位置での深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1よりも浅くなっている。これにより、導体加締片21を加締めることにより導体圧着部20を導体Waに圧着した場合に、導体加締片21を曲げる際の圧縮力によって、セレーション30における導体加締片21に位置する部分の側面33の内倒れが発生することを抑制することができる。このため、導体圧着部20を導体Waに圧着した場合でも、セレーション30における導体加締片21に位置する部分の開口部31の幅が、セレーション30の底面32の幅より小さくなることを抑制することができる。
【0041】
これにより、導体加締片21を大きく曲げて加締めることにより、側面33の内倒れによってセレーション30における導体加締片21に位置する部分の開口部31の幅が狭くなり易い状況においても、セレーション30のエッジ部が導体Waに喰い込み易くなるようにすることができる。従って、導体加締片21を加締めて導体圧着部20を導体Waに圧着した場合に、圧着時の力によって導体Waの芯線の酸化被膜をセレーション30のエッジ部を起点にして破くことができるため、酸化被膜が除去された新生面にて芯線との接触を得ることができる。これにより、導体Waと圧着端子10との間の電気抵抗を低減することができる。この結果、圧着部抵抗を安定的に低減させることができる。
【0042】
また、導体加締片21を加締めて導体圧着部20を導体Waに圧着した際には、導体Waは、導体加締片21側と底板15側とのいずれの位置でもセレーション30のエッジ部は導体Waに喰い込むため、導体Waと導体圧着部20との相対的な移動を規制することができる。この結果、導体Waと導体圧着部20との機械的な接続力を強固なものにすることができる。
【0043】
また、圧着端子10が、純銅からなる場合は、銅合金からなる場合と比較して、導電性は高いものの機械的強度は低くなるため、導体圧着部20を導体Waに圧着した場合には、セレーション30における導体加締片21に位置する部分で内倒れが発生し易くなる。これに対し、本実施形態では、純銅からなる圧着端子10において、セレーション30における導体加締片21に位置する部分の深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1よりも浅いため、導体圧着部20を導体Waに圧着する際に、セレーション30における導体加締片21に位置する部分での内倒れを抑制することができる。これにより、圧着端子10を純銅によって形成される場合においても、導体加締片21を加締めて導体圧着部20を導体Waに圧着する際に、導体加締片21の部分で、セレーション30のエッジ部が導体Waに喰い込み易くなるようにすることができる。従って、圧着時の力によって導体Waの芯線の酸化被膜をセレーション30のエッジ部を起点にして破くことがき、酸化被膜が除去された新生面にて芯線との接触を得ることができる。この結果、圧着部抵抗を安定的に低減させることができる。
【0044】
また、導体加締片21は、導体圧着部20が導体Waに圧着された後の状態において、導体Waの延在方向に見た場合における曲率半径が、底板15の曲率半径よりも小さくなっている。このため、導体圧着部20の展開状態において、セレーション30における導体加締片21に位置する部分の深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1よりも浅くなるようにすることにより、導体加締片21を小さな曲率半径で曲げて加締めた場合でも、曲げる際の圧縮力によって側面33の内倒れが発生することを抑制できる。これにより、導体加締片21を小さな曲率半径で曲げて加締めた場合でも、セレーション30における導体加締片21に位置する部分の開口部31の幅が、底面32の幅に対して小さくなることを抑制することができる。従って、導体加締片21を加締めて導体圧着部20を導体Waに圧着した場合に、セレーション30のエッジ部を導体Waに喰い込ませ易くすることができ、圧着時の力によって導体Waの芯線の酸化被膜をセレーション30のエッジ部を起点にして破くことができる。この結果、酸化被膜が除去された新生面にて芯線との接触を得ることができ、導体Waと圧着端子10との間の電気抵抗を低減することができるため、圧着部抵抗を安定的に低減させることができる。
【0045】
また、セレーション30は、導体Waへの導体圧着部20の圧着時に導体加締片21が底板15に対して曲げられる際における曲率の変化が大きくなる位置である加締片付け根部22を境にして、底板15側と導体加締片21側とで深さが変化するため、導体Waと圧着端子10との間の電気抵抗を低減することができる。つまり、セレーション30は、加締片付け根部22よりも導体加締片21側に位置する部分では、底板15側に位置する部分と比較して深さが浅くなっているため、導体Waへの導体圧着部20の圧着時に、側面33の内倒れが発生することを抑制することができる。これにより、導体Waに対して導体圧着部20を圧着した際に、セレーション30のエッジ部を導体Waに喰い込ませ易くすることができ、圧着時の力によって導体Waの芯線の酸化被膜を、セレーション30のエッジ部を起点にして破くことができる。
【0046】
また、セレーション30における、加締片付け根部22よりも底板15側に位置する部分では、導体加締片21側に位置する部分と比較して深さが深くなっているため、より多くの導体Waをセレーション30内に入り込ませてセレーション30のエッジ部を導体Waに喰い込ませることができる。つまり、セレーション30における、底板15に位置する部分は、導体Waへの圧着時においても、比較的曲率半径が大きいため、側面33の内倒れは発生し難くなっている。このため、導体Waに対して導体圧着部20を圧着した際に、より多くの導体Waをセレーション30における底板15に位置する部分に入り込ませてセレーション30のエッジ部を導体Waに喰い込ませ易くすることができる。これにより、圧着時の力によって導体Waの芯線の酸化被膜をセレーション30のエッジ部を起点にして破くことができ、酸化被膜が除去された新生面にて芯線との接触を得ることができる。従って、導体圧着部20を導体Waに対して圧着した際に、導体Waと圧着端子10との間の電気抵抗を低減することができる。この結果、圧着部抵抗を安定的に低減させることができる。
【0047】
また、導体加締片21は、導体圧着部20が導体Waに圧着された後の状態において曲率半径が最も小さくなる部分の、導体圧着部20の展開状態でのセレーション30の深さD2が、底板15に位置する部分の深さD1よりも浅くなっている。このため、導体加締片21を小さな曲率半径で曲げて加締めた際に、圧縮力によって側面33が内倒れすることを抑制でき、セレーション30の開口部31の幅が底面32の幅に対して小さくなることを抑制できる。これにより、導体加締片21を加締めて導体圧着部20を導体Waに圧着した場合に、セレーション30のエッジ部を導体Waに喰い込ませ易くすることができ、圧着時の力によって導体Waの芯線の酸化被膜をセレーション30のエッジ部を起点にして破くことができる。従って、酸化被膜が除去された新生面にて芯線との接触を得ることができるため、導体Waと圧着端子10との間の電気抵抗を低減することができる。この結果、圧着部抵抗を安定的に低減させることができる。
【0048】
[変形例]
なお、上述した実施形態では、導体圧着部20に形成されるセレーション30は、導体圧着部20の展開状態において、底面32に段差が形成されることにより、底板15側と導体加締片21側とで深さが異なっているが、セレーション30の深さは、徐々に変化していてもよい。即ち、セレーション30は、開口部31からの底面32の深さが、底板15側と導体加締片21側との間にかけて徐々に徐々に変化することにより、底板15側と導体加締片21側とでセレーション30の深さが異なっていてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、導体圧着部20には3本のセレーション30が形成されているが、導体圧着部20に形成されるセレーション30は、2本以下であってもよく、4本以上であってもよい。
【0050】
また、上述した実施形態では、圧着端子10は、高い電圧で電流が流れる、高圧の電線Wに用いられるものとして説明したがこれに限らず、低い電圧で電流が流れる、低圧の電線Wに用いられてもよい。また、圧着端子10は、電線Wにおける、絶縁被覆Wcによって導体Waが被覆されている部分に加締められる被覆加締部を含んで構成される端子であってもよい。また、電気接続部11は、上記の形状に限らず、いわゆるメス型の端子形状、あるいは、オス型の端子形状をなすものであってもよい。
【0051】
また、上述した本発明の実施形態、変形例に係る圧着端子は、上述した実施形態、変形例に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態、変形例に係る圧着端子は、以上で説明した実施形態、変形例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 圧着端子
11 電気接続部
15 底板
20 導体圧着部
21 導体加締片
22 加締片付け根部
30 セレーション
31 開口部
32 底面
33 側面
W 電線
Wa 導体