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特許7467526操作された抗体化合物およびこれらの抱合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】操作された抗体化合物およびこれらの抱合体
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20240408BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240408BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20240408BHJP
   C07K 5/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240408BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20240408BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 31/731 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C12N15/13
C07K16/00
C07K5/00
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61K47/68
A61K47/55
A61P37/04
A61K31/198
A61K45/00
A61P43/00
A61K31/731
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022078259
(22)【出願日】2022-05-11
(62)【分割の表示】P 2020518601の分割
【原出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2022106970
(43)【公開日】2022-07-20
【審査請求日】2022-06-07
(31)【優先権主張番号】62/520,855
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ジェイムズ・バシカ
(72)【発明者】
【氏名】イーチン・フェン
(72)【発明者】
【氏名】ドンミエンヌ・ドエン・ムン・レオン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ディ・リニック
(72)【発明者】
【氏名】アダム・ロバート・メゾ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・トーマス・パーカー
(72)【発明者】
【氏名】プルバ・ビベク・トリベディ
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ・アルシデス・バレンスエラ
(72)【発明者】
【氏名】ジアンホワイ・シュー
【審査官】山内 達人
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511637(JP,A)
【文献】特表2012-515144(JP,A)
【文献】特表2009-541398(JP,A)
【文献】特表2008-539270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
IgG重鎖定常領域と軽鎖定常領域とを含む、抱合抗体であって、前記抗体が、C1ドメインにおける残基124にシステインならびにC3ドメインにおける残基378にシステインを含み、前記C1ドメインにおける残基157、前記C1ドメインにおける残基162、および前記C3ドメインにおける残基375のうちの2個またはそれ以下にシステインをさらに含むか、または前記C1ドメインにおける残基157および162ならびに前記C3ドメインにおける残基375のいずれにもシステインを含まず、前記IgG重鎖定常領域におけるシステインのうちの1つまたはそれ以上が、マレイミド-PEGリンカーを介してN-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合されている、抱合抗体。
【請求項2】
前記IgG重鎖定常領域におけるシステインのうちの1つまたはそれ以上が、式:
【化1】
のマレイミド-PEGリンカーを介してN-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合され、各IgG重鎖定常領域の残基124および157、162、375、または378の各システインが、前記マレイミド-PEGリンカーを介してN-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合され、前記リンカーが、前記IgG重鎖定常領域の残基124および157、162、375、または378のシステインへのチオエーテル結合を介して前記抗体に、およびN-ホルミル-メチオニンペプチドのC末端リジンのイプシロンアミノ基におけるアミド結合を介して前記N-ホルミル-メチオニンペプチドに共有結合しており、式中、n=6~24である、請求項1に記載の抱合抗体。
【請求項3】
各IgG重鎖定常領域の残基124のシステインおよび残基375のシステインが、前記マレイミド-PEGリンカーを介して前記N-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合されている、請求項2に記載の抱合抗体。
【請求項4】
各IgG重鎖定常領域の残基124のシステインおよび残基378のシステインが、前記マレイミド-PEGリンカーを介して前記N-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合されている、請求項2に記載の抱合抗体。
【請求項5】
n=12である、請求項2~4のいずれか1項に記載の抱合抗体。
【請求項6】
前記N-ホルミル-メチオニンペプチドが、配列番号22、配列番号23、または配列番号36によって与えられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の抱合抗体。
【請求項7】
前記N-ホルミル-メチオニンペプチドが、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、または配列番号41によって与えられる、請求項1に記載の抱合抗体。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の抱合抗体、および1つまたはそれ以上の医薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項9】
固形癌または液性腫瘍の治療剤であって、請求項1~のいずれか1項に記載の抱合抗体、または請求項に記載の医薬組成物を含む、治療剤。
【請求項10】
乳癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、筋肉癌、骨癌、中皮腫、血管癌、線維癌、白血病またはリンパ腫を治療するための、請求項に記載の治療剤。
【請求項11】
固形癌または液性腫瘍の治療における使用のための、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
乳癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、筋肉癌、骨癌、中皮腫、血管癌、線維癌、白血病またはリンパ腫の治療における使用のための、請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規抗体化合物およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体、およびその切断型フラグメントは、インビボおよびインビトロでの適用のために、治療用、細胞毒性、および診断用ペプチドまたは他の小分子を含む種々のペイロードと抱合され得る。抗体抱合体は、免疫グロブリン重鎖または軽鎖残基の表面に生成した遊離システインスルフヒドリル基を反応性求核試薬として使用して合成し、種々のリンカーを介してペイロードと安定した化学結合を形成することができる。しかしながら、鎖間ジスルフィド結合の還元後の従来のチオール結合は、反応条件に応じて不均一な抗体-薬物抱合体混合物をもたらす。注意深く制御された反応でさえ、結果的に抱合体対抗体比(CR)の分布を生じることとなる。高いCRの抱合体混合物は、低いCRの抱合体混合物と比較して、異なる化学的および生物物理学的特徴を示す。抗体へのペイロードの付加は、標的結合およびFc受容体の相互作用に潜在的に影響を与えることを含む、抗体の薬理学的特性も変化させることができる。それゆえ、抱合体対抗体比のより均一で標的とされる分布を有する抱合体を得ることが望ましい。
【0003】
ペイロード抱合抗体のより均質で標的とする分布を可能にするために、システイン残基を親mAbに組み込んで、チオール結合を介した薬物ペイロードの部位特異的結合を促進してきた(例えば、米国特許第7,521,541号)。しかしながら、親の表面アミノ酸残基のシステインへの突然変異は、mAbの生物物理学的特性および発現に影響することがある。例えば、操作されたシステイン残基は、適切なタンパク質の折り畳みに重要である天然のジスルフィドを破壊する可能性があった。さらに、結果として生じる不対システインは、分子間ジスルフィドを形成し、結果的に高次の凝集体を生じる可能性もあった。したがって、代替の操作されたシステイン残基を含むさらなるIgG mAbについての必要性が残っている。免疫系の細胞に関与する化合物におけるこのような抗体についての必要性も残っている。
【0004】
癌免疫療法は、身体の免疫系を利用して癌細胞を攻撃するものであって、腫瘍学の創薬および開発におけるダイナミックな分野である。殺腫瘍薬の使用に基づく療法とは対照的に、治療アプローチは、腫瘍細胞を認識して破壊するために、宿主の免疫系に関与するパラダイムシフトを表す。2つの成功した癌免疫療法戦略は、免疫系の抑制を抑制して適応免疫系および/または自然免疫系、特に腫瘍特異的細胞毒性T細胞の活性化を可能にすること(すなわち、免疫チェックポイント遮断)と抗体依存性細胞障害作用(ADCC)に関与するようおよび/またはADCCを増強するよう設計された抗体改変である。
【0005】
成功した臨床結果は、近年、T細胞の活性化を結果的に生じ、T細胞仲介性腫瘍細胞破壊を結果的に生じる様式で、PD-1およびCTLA-4などのT細胞表面受容体と同族リガンドとの相互作用を改変するように設計された免疫チェックポイント調節因子を用いて達成された。PD-1(例えば、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))およびペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標)))およびCTLA-4(例えば、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))を標的とする癌免疫療法は、扁平非小細胞肺癌および転移性黒色腫などの癌の治療のためにFDAによって承認されてきた。
【0006】
ADCCは、抗体Fcドメインと免疫系細胞(例えば、ナチュラルキラーまたは「NK」細胞)の表面上にある受容体(例えば、Fcガンマ受容体IIIa)との相互作用を包含し、結果的に免疫細胞からの細胞溶解タンパク質の放出とともに標的とされた腫瘍細胞のその後の破壊をもたらす。ADCCを提示する承認済みの抗体療法には、リツキシン(登録商標)(リツキシマブ)、アルゼラ(登録商標)(オファツムマブ)、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ)、およびカンパス(登録商標)(アレムツズマブ)が含まれる。強化されたFc受容体結合を介してADCC活性を改良させた抗体を操作する取り組みは、同様の標的特異性を持ち、ADCC活性化が低い抗体では、疾患において有効ではないか、またはもはや十分に有効ではない患者において有効であった(例えば、Gazyva(登録商標)(オビヌツズマブ))。
【0007】
現行の癌免疫療法の進歩にもかかわらず、癌を治療する上で免疫系を関与させる代替アプローチの必要性が残っている。例えば、T細胞特異的免疫療法に応答する患者の割合は様々であり、どの患者が応答することになるかを特定する信頼性の高い予後アッセイが不足している。さらに、療法誘発性自己免疫疾患は、免疫チェックポイント阻害剤療法と関連する深刻な副作用である。免疫チェックポイント阻害剤による自己免疫疾患の出現は、腫瘍特異的T細胞が出現、増殖、および活性化することができるようにT細胞レパートリーの抑制を除去するように設計されているので、免疫チェックポイント阻害剤の作用機序におそらく関連している。したがって、免疫チェックポイント阻害剤は比較的非特異的であり、この特異性の欠如の結果の1つは、自己反応性T細胞が寛容を破り、療法の中止で必ずしも可逆的ではない自己免疫疾患を誘発することである。増強されたADCCアプローチは、腫瘍細胞の殺滅のためにNK細胞を関与させるように設計されている。しかしながら、NK細胞は、血中の総白血球数の約5%しか構成していない。
【0008】
自然免疫系の多形核細胞(PMN)を標的にして腫瘍細胞の殺滅に関与させることは、癌免疫療法への代替アプローチを代表する。PMNは白血球総数の50%超を含んでおり、片利共生細菌および外来細菌を含む病原体に対する主要な防御ラインである。自然免疫応答中に、病原体によって提示される病原体と関連する分子パターン(PAMP)は、好中球などの免疫細胞の表面上にあるパターン認識受容体(PRR)によって認識される。このようなPRRの1つは、好中球細胞表面上に発現する膜結合型Gタンパク質共役受容体であるホルミルペプチド受容体1(FPR1)である。FPR1は、感染後に細菌によって産生および放出されるものを含む、N-ホルミル-メチオニンを含有するタンパク質およびペプチドを検出する。好中球の表面上のFPR1とN-ホルミル-メチオニン含有ペプチド、特にN-ホルミル-メチオニン-ロイシン-フェニルアラニン(本明細書では「fMLF」)残基を提示するペプチドとの結合は、感染部位への好中球の運動性/走化性を誘起する。ホルミルペプチドによるFPR1の活性化はまた、病原体を破壊するために、細胞毒性分子を放出するための脱顆粒、活性酸素種の産生、および食作用などの病原体殺滅機序を誘発する。本発明に関連する文献には、天然および非天然のFPR-1アゴニストの広範な説明がある(He HQ and Ye RD,Molecules.2017 Mar 13;22(3).pii:E455.doi:10.3390/molecules22030455、Hwang TL et al.,Org BiomolChem.2013 Jun 14;11(22):3742-55.doi:10.1039/c3ob40215k、Cavicchioni G et al.,BioorgChem.2006 Oct;34(5):298-318、Higgins JD et al.,J MedChem.1996 Mar 1;39(5):1013-5、Vergelli C et al.,Drug Dev Res.2017 Feb;78(1):49-62.doi:10.1002/ddr.21370、Kirpotina LN et al.,Mol Pharmacol.2010 Feb;77(2):159-70.doi:10.1124/mol.109.060673、Cilibrizzi A et al.,J MedChem.2009 Aug 27;52(16):5044-57.doi:10.1021/jm900592h.)
【0009】
腫瘍細胞を殺滅するためにfMLF生体抱合体(ペプチドに抱合された抗体)を利用してマクロファージを誘引する以前の取り組みには、いくつかの制限があった。ObristおよびSandbergは、カルボジイミドの化学的性質を使用してペプチドを遊離リジンに連結させて、fMLFをポリクローナルウサギ抗腫瘍抗体に結合させた。このポリクローナル抗体へのfMLFの非特異的結合は、親和性の有意な低減、マクロファージの走化性を促進するfMLFの効力の100倍の低減、および補体源として正常ウサギ血清を使用した事前標識済み肝細胞癌細胞からの補体依存的51Cr放出を抗体が誘導する能力の有意な低下をもたらした(Obrist and Sandberg,Clin.Immun.Immunopathology,25;91-102(1982))。これらのデータは、リジンの化学的性質を介したfMLFの抗体への非特異的付加が、抗原結合親和性、FPR-1受容体の関与、およびFc受容体の関与を低減させる可能性と一致している。
【0010】
Obristらは、カルボジイミドの化学的性質を用いたfMLFとマウスモノクローナル抗体とのカップリングにより、ヒト卵巣癌細胞に対する親和性を保持できることを示したが、この結合は、ヒト末梢血単核細胞に対する走化性応答を低減させた。補体固定に及ぼす結合の影響は報告されていなかった。(Obrist et al.,Int.J.Immunopharmac.,5(4);307-314(1983))。類似の知見(結合の保存および走化性の低下)は、fMLFを黒色腫mAb 9.2.27へカルボジイミドの化学的性質を介して直接結合したときにも報告された(Obrist et al.,Caner Immunol.Immunother.,32;406-08(1991))。本発明の抗体結合化合物は、単核細胞およびマクロファージに加えてヒト好中球を誘引および活性化することができるが、以前の文献での所見は、ほぼ専ら単核細胞およびマクロファージに向けられていた。このことは、好中球がヒトの循環中の総白血球集団のより大きな割合を表し、他の全ての白血球集団よりも高い率で産成され、組織内へと容易に移行することができ、活性化されるとき、標的細菌を排除するのに非常に有効であるので、重要な治療関連性を有している可能性がある。
【0011】
抗体と薬物の結合の最も一般的な方法は、還元された鎖間ジスルフィドのアルキル化、リジン残基のアシル化、および遺伝子操作されたシステイン残基のアルキル化である。本発明は、抗体抱合体を生成するための全ての一般的な方法が、好中球および自然免疫系細胞上にあるFPR-1を作動させることができる抗体抱合体を生成するのに有効であろうことを企図する。
【0012】
自然免疫系のPMN好中球細胞を関与させて腫瘍細胞破壊に関与させることができる腫瘍標的治療用抗体はまた、現行の癌免疫療法を上回る利点を提供する可能性がある。例えば、このような治療用抗体は、腫瘍に対するT細胞応答を増強する可能性があり、腫瘍細胞の殺滅を駆動するために腫瘍特異的T細胞の存在を必要としない場合がある。PMN好中球による抗腫瘍活性の関与は、全ての患者が好中球において本来発現するであろうFPR(例えば、FPR1)の存在に依存するであろう。さらに、腫瘍細胞殺滅においてPMN好中球を関与させることができる薬剤は、1日あたり1×1011個の好中球が産生されると概算されてきたので、腫瘍殺滅細胞の強力で持続的な供給から利益を得るであろう。腫瘍細胞殺滅において好中球を関与させることができる腫瘍標的化抗体は、免疫チェックポイント調節因子よりも安全性の利点を有している可能性がある。チェックポイント調節因子とは異なり、好中球を標的とする療法は、循環中の好中球が短命であるので、免疫細胞の増殖を誘導したり必要としたりしないであろう。さらに、好中球が、付着した抗体を用いて標的腫瘍細胞を殺滅するとき、腫瘍標的抗体は排除され、治療用抗体が標的エフェクター細胞によって消費されるにつれて免疫刺激を低下させる負のフィードバックループを提供する。
【0013】
腫瘍細胞内でFPR-1陽性の自然免疫細胞を関与させることができる腫瘍標的治療用抗体が有用であると立証することができる別の方法は、低い突然変異量を有しそれゆえ免疫系によって容易に認識されない不活発な腫瘍の治療のためにある。好中球仲介性腫瘍細胞殺滅を誘引し活性化すると、結果的に、サイトカインが豊富な環境において新抗原が局所的に産生され、それにより適応免疫系の細胞が腫瘍を認識して腫瘍細胞を排除のために標的とする能力を獲得する。
【0014】
腫瘍細胞殺滅において好中球を関与させることができる腫瘍標的抗体は、腫瘍細胞内への内在化後に毒性ペイロードを放出するように典型的に設計された毒性剤ベースの抗体薬物抱合体(ADC)を上回る利点も有している可能性がある。ADCと同様に、腫瘍細胞殺滅において好中球を関与させることができる腫瘍標的抗体は、腫瘍細胞で高い発現をし、正常組織では低い発現をする抗原を認識すべきであるが、ADCとは異なり、腫瘍細胞殺滅において好中球に関与させることができる腫瘍標的抗体は、自然免疫系の表面上にある受容体へのアゴニストの曝露を必要とし、したがって、内在化の可能性が比較的低い標的抗原を用いてより良好に機能することが予想される。
【発明の概要】
【0015】
抱合された抗体は、鎖間ジスルフィドを還元して反応性チオールを生成するか、結合に表面リジンを利用することによって生成することができるが、このような従来の結合方法は、結果として抗体の不安定性または結合親和性の喪失をもたらすことがある。それゆえ、本発明は、操作されたシステイン残基にN-ホルミル-メチオニンペプチド体の部位特異的付加(複数可)を抗体ペプチド抱合体に提供し、この部位特異的付加は次の利点のうちの1つ以上を提供する(i)部位特異的付加により、N-ホルミル-メチオニンペプチド生体抱合体の効力および最大有効性を必要とする均質な結合特性が可能になり、(ii)スペーサーを使用して、抗体へ結合するときにヒト好中球の遊走および活性化のためにN-ホルミル-メチオニンペプチド生体抱合体の効力を保持することができ、(iii)部位特異的付加が腫瘍細胞殺滅に寄与することができるIgG1構築物におけるFc受容体相互作用を保持し、(iv)部位特異的付加により、抗体は抗原結合親和性を保持することができ、これは、全てではないが、いくつかの先行文献の例ですでに達成されており、ならびに(v)部位特異的結合が薬剤物質の製造および薬剤製品の安定性において有意な利点となり得る抗体の安定性を維持する。
【0016】
本発明はまた、抗体抱合化合物(生体抱合体とも称する)の生成における使用のための操作されたシステイン残基を含む、IgG抗体も提供する。より詳細には、本発明は、自然免疫系の細胞上のFPR-1を活性化することができるペプチドまたはペプチド模倣体に抱合された、操作されたシステイン残基からなる腫瘍標的抗体を含む治療用化合物を提供する。実施形態において、抗体は、FPR-1を作動させることができるペプチドまたはペプチド模倣体に結合する。いくつかの特定の実施形態において、ペプチドまたはペプチド模倣体は、次式のうちの1つの化合物である:
式I.R-P―P-P-NH(CHCHO)CHCH-Y
(式中、
Rは、HC(=O)-またはRNHC(=O)NH-であり、
は、置換または非置換であってもよいC~C10アリールであり、
は、MetまたはNleであり、
は、ペプチドまたはペプチド模倣体であり、
は、イプシロンアミノアシル化されたリジンであり、
nは、6~24の整数であり、
Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドまたはビニルスルホンである)、
またはその塩。
式II.R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-P-Y
(式中、
Rは、HC(=O)-またはRNHC(=O)NH-であり、
は、置換または非置換であってもよいC~C10アリールであり、
は、MetまたはNleであり、
は、ペプチドまたはペプチド模倣体であり、
は、イプシロンアミノアシル化されたリジンであり、
nは、6~24の整数であり、
Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドまたはビニルスルホンである)、
またはその塩。
式III.R-Met-X―X―X―X-NH(CHCHO)CHCH--X-Y
(式中、
Rは、HC(=O)-またはRNHC(=O)NH-であり、
は、フェニル、4-クロロフェニル、4-メトキシフェニル、p-トリル、m-トリル、アリール、置換アリール、または2-アリルであり、
は、Leu、Ile、Nle、ジエチルグリシン、またはジプロピルグリシンであり、
は、Phe、α-Me-Phe、DPhe、4-F-Phe、2-Nal、または1-Nalであり、
は、Glu、Leu、Nle、α-Me-Leu、DLeu、または非存在であり、
は、Glu、DGlu、γGlu、Gla、または非存在であり、
は、C~C10ジアミノアルキルであり、かつ
Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドまたはビニルスルホンである)、
またはその塩。
【0017】
いくつかの他の詳細な実施形態では、ペプチドは次式のうちの1つの化合物である:
式IV.[R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-]-Q-X-Y
(式中、
Rは、HC(=O)-またはRNHC(=O)NH-であり、
は、置換または非置換であってもよいC~C10アリールであり、
は、MetまたはNleであり、
は、ペプチドまたはペプチド模倣体であり、
nは、6~24の整数であり、
Qは、アルファアミノ基および側鎖アミノ基においてアシル化されることができるアミノ二官能性残基であり、
Xは、C~C10ジアミノアルキルであり、かつ
Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドまたはビニルスルホンである)、
またはその塩。
式V.[[R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-]- (Q)-Q-X-Y
(式中、
Rは、HC(=O)-またはRNHC(=O)NH-であり、
は、置換または非置換であってもよいC~C10アリールであり、
は、MetまたはNleであり、
は、ペプチドまたはペプチド模倣体であり、
nは、6~24の整数であり、
Qは、アルファアミノ基および側鎖アミノ基においてアシル化することができるアミノ二官能性残基であり、
Xは、C~C10ジアミノアルキルであり、かつ
Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドまたはビニルスルホンである)、
またはその塩。
式VI.[[[R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-]-(Q)-(Q)-Q-X-Y
(式中、
Rは、HC(=O)-またはRNHC(=O)NH-であり、
は、置換または非置換であってもよいC~C10アリールであり、
は、MetまたはNleであり、
は、ペプチドまたはペプチド模倣体であり、
nは、6~24の整数であり、
Qは、アルファアミノ基および側鎖アミノ基においてアシル化することができるアミノ二官能性残基であり、
Xは、C~C10ジアミノアルキルであり、かつ
Yは、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドまたはビニルスルホンである)、
またはその塩。
【0018】
式IV~式VIの化合物は、アミノ二官能性残基(「Q」で表される)を介して一緒に連結された2つ以上の化学誘引物質を含む。いくつかの実施形態において、Qは、Lys、Orn、Dap、またはDabである。好ましい実施形態において、二官能性残基は、リジン残基またはオルニチン残基である。二官能性残基は、各アミノ基を介して2つの追加のアミノ二官能性残基に結合し、それにより、化学誘引物質の数を4つの化学誘引物質に増加させることができる。追加の二官能性残基により、追加の数の化学誘引物質が可能になる。好ましい実施形態において、化学誘引物質の数は8以下である。例えば、Qがリジン分枝残基の繰り返しである場合、構造は次のとおりである。
【化1】
【0019】
本発明は、式I~式VIのいずれか1つの化合物を提供し、式中、P2はX-X-X-Xによって与えられ、かつ
は、Leu、Ile、Nle、ジエチルグリシン、またはジプロピルグリシンであり、
は、Phe、α-Me-Phe、DPhe、4―F-Phe、2-Nal、または1-Nalであり、
は、Glu、Leu、Nle、α-Me-Leu、DLeu、または非存在であり、かつ
は、Glu、DGlu、γGlu、Gla、または非存在である。
【0020】
いくつかの実施形態において、式I、式II、式III、式IV、式Vまたは式VIのいずれか1つの化合物は、ホルミルペプチド受容体1を作動させ、タンパク質と共有結合を形成することができる。いくつかの実施形態において、式I、式II、式III、式IV、式V、または式VIのいずれか1つの化合物は、リンカーを介して抗体に抱合されている。いくつかの詳細な実施形態において、化合物は、本明細書に説明するマレイミド-PEGリンカーを介して結合している。いくつかの詳細な実施形態において、PEGリンカーは、Xのジアミノアルキルに結合している。いくつかの詳細な実施形態において、PEGリンカーは非存在であり、式I、式II、式III、式IV、式V、または式VIのいずれか1つの化合物がXのジアミノアルキルへ直接結合している。いくつかのこのような実施形態において、式I、式II、式III、式IV、式V、または式VIのいずれか1つに由来する化合物は、好中球などの自然免疫細胞の表面上のホルミルペプチド受容体を活性化することができる。
【0021】
本発明の実施形態は、癌療法を超えた有用性を有する関心対象の標的細胞の特異的排除において自然免疫細胞を関与させるために非腫瘍の脈絡においても有用である。例えば、肥大組織、接近が制限された組織、またはウイルス感染細胞において正常細胞の排除が望ましい状況では、提供される標的とされる細胞の殺滅に対して自然免疫系の細胞を活性化することもできる関心対象の細胞を特異的に標的とする抗体は、該標的組織または感染細胞を排除するのに有用であろう。
【0022】
本発明は、操作されたシステイン残基にFPR-1アゴニストを付着させるための一連のリンカーを企図する(Yao et al.,Int J Mol Sci.2016 Feb 2;17(2).pii:E194.doi:10.3390/ijms17020194)。提供される例には、システインへのチオエーテル結合を形成するためのマレイミド系リンカーが含まれる。ハロアセチルリンカーなどの別のリンカーの使用も、抗体を結合するために使用されることができる。
【0023】
したがって、本発明は、IgG重鎖および軽鎖定常領域を含む抗体を提供し、該定常領域は少なくとも1つのシステインを含む。実施形態において、定常領域は、表面上に不対遊離システインを含む。別の実施形態において、定常領域は操作されたシステインを含む。いくつかの詳細な実施形態において、定常領域は、次の残基、すなわち、C1ドメインにおける残基124、C1ドメインにおける残基157、C1ドメインにおける残基162、C2ドメインにおける残基262、C3ドメインにおける残基375、C3ドメインにおける残基373、C3ドメインにおける残基397、C3ドメインにおける残基415、Cカッパドメインにおける残基156、Cカッパドメインにおける残基171、Cカッパドメインにおける残基191、Cカッパドメインにおける残基193、Cカッパドメインにおける残基202、またはCカッパドメインにおける残基208のうちの1つに少なくとも1つの操作されたシステインを含む。
【0024】
本発明は、IgG重鎖定常領域を含む抗体も提供し、該定常領域は、C1ドメインにおける残基124にあるシステインと、C1ドメインにおける残基157および162ならびにC3ドメインにおける残基375および残基378のうちの1つではあるが全てではない残基のシステインとを含む。詳細な実施形態として、IgG重鎖定常領域は、ヒト、マウス、ラットまたはウサギIgG定常領域である。さらにより詳細には、IgG重鎖定常領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4アイソタイプであり、さらにより詳細には、ヒトIgG1またはヒトIgG4である。さらにより詳細な実施形態として、IgG重鎖定常領域は、ヒトIgG1アイソタイプであり、配列番号17、18、19または52のアミノ酸配列、およびさらにより詳細には配列番号20、21または53のアミノ酸配列によって付与される。ヒトIgG1重鎖定常領域を含む上述の抗体に対するさらに詳細な実施形態として、該定常領域は、残基247で置換されたイソロイシンと、残基339で置換されたグルタミンとをさらに含む。別の実施形態において、定常領域は、残基247で置換されたイソロイシンと、残基339で置換されたグルタミンと、残基332で置換されたグルタミン酸とを含む。代替的な詳細な実施形態として、IgG重鎖定常領域はヒトIgG4アイソタイプであり、配列番号12、13、14、54または55のアミノ酸配列、さらにより詳細には配列番号15、16、56または57のアミノ酸配列によって付与される。ヒトIgG4重鎖定常領域を含む上述の抗体に対するさらに詳細な実施形態として、該定常領域は、残基228で置換されたプロリンと、残基234で置換されたアラニンと、残基235で置換されたアラニンとをさらに含む。
【0025】
本発明はさらに、各IgG定常領域が少なくとも1つのシステインを含む、2つの重鎖IgG定常領域を含む抗体を提供する。実施形態において、各IgG定常領域は、次の残基、すなわちC1ドメインにおける残基124、C1ドメインにおける残基157、C1ドメインにおける残基162、C3ドメインにおける残基375、およびC3ドメインにおける残基378のうちの1つのシステインを含む。本発明は、各IgG定常領域がC1ドメインにおける残基124のシステインと、C1ドメインにおける残基157および残基162ならびにC3ドメインにおける残基375および残基378のうちの1つではあるが全てではない残基のシステインとを含む2つの重鎖IgG定常領域を含む上述の抗体のいずれかも提供する。より詳細には、各IgG定常領域は、ヒト、マウス、ラットまたはウサギIgG、さらにより詳細にはヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG4アイソタイプ、さらにより詳細にはヒトIgG1またはヒトIgG4である。さらに詳細な実施形態として、各IgG重鎖定常領域は、ヒトIgG1アイソタイプであり、配列番号17、18、19または52のアミノ酸配列、さらにより詳細には配列番号20、21または53のアミノ酸配列によって与えられる。2つのヒトIgG1重鎖定常領域を含む上述の抗体のさらに詳細な実施形態として、該定常領域は、残基247で置換されたイソロイシンと残基339で置換されたグルタミンとをさらに含む。別の実施形態において、定常領域は、残基247で置換されたイソロイシンと、残基339で置換されたグルタミンと、残基332で置換されたグルタミン酸とを含む。代替的な詳細な実施形態として、各IgG重鎖定常領域はヒトIgG4アイソタイプであり、配列番号12、13、14、54または55のアミノ酸配列、さらにより詳細には配列番号15、16、56または57のアミノ酸配列によって与えられる。2つのヒトIgG4重鎖定常領域を含む上述の抗体に対するさらに詳細な実施形態として、該定常領域は、残基228で置換されたプロリンと、残基234で置換されたアラニンと、残基235で置換されたアラニンとをさらに含む。
【0026】
本発明は、C1ドメインにおける残基124、C1ドメインにおける残基157、C1ドメインにおける残基162、C2ドメインにおける残基262、C3ドメインにおける残基375、C3ドメインにおける残基373、C3ドメインにおける残基397、C3ドメインにおける残基415、Cカッパドメインにおける残基156、Cカッパドメインにおける残基171、Cカッパドメインにおける残基191、Cカッパドメインにおける残基193、Cカッパドメインにおける残基202、または、Cカッパドメインにおける残基208の各システインが化学誘引物質に結合させた上述の抗体のうちのいずれかをさらに提供する。実施形態において、化学誘引物質は、f-Metペプチド、小分子FPR-1アゴニスト、PRRアゴニスト、ペプチド模倣体、N-ウレイド-ペプチド、または細菌糖である。詳細な実施形態において、化学誘引物質は、N-ホルミル-メチオニンペプチドである。いくつかの実施形態において、化学誘引物質は、マレイミドリンカーを介して抗体システインに抱合されており、ここで、該リンカーは、マレイミド官能基とシステイン(C1ドメインにおける残基124、C1ドメインにおける残基157、C1ドメインにおける残基162、C2ドメインにおける残基262、C3ドメインにおける残基375、C3ドメインにおける残基373、C3ドメインにおける残基397、C3ドメインにおける残基415、Cカッパドメインにおける残基156、Cカッパドメインにおける残基171、Cカッパドメインにおける残基191、Cカッパドメインにおける残基193、Cカッパドメインにおける残基202、またはCカッパドメインにおける残基208にある。)との間のチオエーテル結合を通じて該IgG重鎖および軽鎖定常領域、への共有結合を形成し、該N-ホルミル-メチオニンペプチドのC末端リジンのイプシロンアミノ側鎖へのアミド結合を介して該N-ホルミル-メチオニンペプチドへの共有結合も形成する。実施形態において、本発明は、本明細書で言及される各システインがマレイミドリンカーを介してN-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合されている上述の抗体のうちのいずれかを提供し、該リンカーはマレイミド官能基とシステインとの間のチオエーテル結合を介して該IgG重鎖定常領域への共有結合を形成し、該N-ホルミル-メチオニンペプチドのC末端リジンのイプシロンアミノ側鎖へのアミド結合を介した該N-ホルミル-メチオニンペプチドへの共有結合も形成する。詳細な実施形態として、本発明は、各IgG定常領域が、C1ドメインにおける残基124のシステインと、C1ドメインにおける残基157および162ならびにC3ドメインにおける残基375および378のうちの1つではあるが全てではない残基のシステインとを含む、2つの重鎖IgG定常領域を含む抗体化合物をさらに提供し、ここで各C1ドメインの残基124の各システイン、ならびにC1ドメインにおける残基157または162、各C3ドメインの375または378における各システインは、マレイミドリンカーを介してN-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合され、該リンカーは、マレイミド官能基と各IgG定常領域の残基124、157または162および375または378のシステインとの間のチオエーテル結合を介して該抗体に、かつ該N-ホルミル-メチオニンペプチドのC末端リジンのイプシロンアミノ側鎖へのアミド結合を介して該N-ホルミル-メチオニンペプチドに共有結合している。上述の抱合抗体に対してさらに詳細には、マレイミドリンカーは式
【化2】
を有し、式中、n=1~24、より詳細にはn=6~24、さらにより詳細にはn=12である。さらにより詳細には、N-ホルミル-メチオニンペプチドは、N-ホルミル-メチオニン-ロイシン-フェニルアラニン-X(配列番号22)であり、式中、Xは、マレイミドリンカーへのアミド結合形成によって修飾されたリジンである。さらにより詳細には、上述の抱合抗体化合物の各IgG定常領域はヒトIgG1またはヒトIgG4アイソタイプであり、さらにより詳細には、各IgG重鎖定常領域はヒトIgG1アイソタイプであり、残基247で置換されたイソロイシンと、残基339で置換されたグルタミンとをさらに含み、または各IgG重鎖定常領域はヒトIgG4アイソタイプであり、残基228で置換されたプロリンと、残基234で置換されたアラニンと、残基235で置換されたアラニンとをさらに含む。
【0027】
本発明の操作されたシステイン残基は、既存の癌治療用抗体のIgG定常領域へと組み込まれて、代替のN-ホルミル-メチオニンペプチド結合免疫治療薬の生成を促進することができる。あるいは、既存の癌治療用抗体の重鎖CDRまたは可変ドメインを、本発明の操作されたシステイン残基を含有するIgG定常領域と組み合わせて、結合免疫治療薬を生成することができる。これらの応用のための例示的な癌治療薬には、HER-2を発現する腫瘍を含む固形腫瘍を標的とするIgG1治療用抗体(すなわち、トラスツズマブおよびペルツズマブなどのIgG1抗体)、CD20を発現する液性腫瘍を含む液性腫瘍を標的とするIgG1治療用抗体(すなわち、リツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、およびAME133vなどのIgG1およびIgG1増強ADCC抗体)、およびc-Met発現腫瘍を標的とする抗体(すなわち、エミベツズマブ)が含まれる。
【0028】
本明細書に開示されるN-ホルミルメチオニンペプチド抱合抗体は、細胞毒性剤にさらに抱合してより高い有効性を達成するためのプラットフォームとして、または癌細胞内で過剰発現する抗原を標的とする抗体薬物抱合体における薬物抱合体の代替物としても役立つことができる。例示的な抗体薬物抱合体を含有する標的抗原には、GPNMB(グレムバツムマブベドチン)、CD56(ロルボツズマブメルタンシン(IMGN-901))、TACSTD2(TROP2、サシツズマブゴビテカン、(IMMU-132))、CEACAM5(ラベツズマブSN-38)、葉酸受容体-α(ミルベツキシマブソラブタンシン(IMGN-853)、ビンタフォリド)、ムチン1(シアログリコトープCA6、SAR-566658)STEAP1(バンドルツズマブベドチン(RG-7450))、メソテリン(DMOT4039A、アネツマブラブテンシン(BAY-94-9343)、BMS-986148)、ネクチン4(エンフォルツマブベドチン(ASG-22M6E)、ASC-22CE)、ENPP3(AGS-16M8F)、グアニリルシクラーゼC(インダツマブベドチン(MLN-0264))、SLC44A4(ASG-5ME)、NaPi2b、(リファスツズマブベドチン)、CD70(TNFSF7、DNIB0600A、AMG-172、MDX-1243、ボルセツズマブマフォドチン(SGN-75))CA9炭酸脱水酵素(BAY79-4620)、5T4(TPBG、PF06263507)SLTRK6(ASG-15ME)、SC-16(抗Fyn3、SC16LD6.5)、組織因子(HuMax-TF-ADC(TF-011-MMAE))、LIV-1(ZIP6、SGN-LIV1A)、P-カドヘリン(PCA062)PSMA(MLN2704、PSMA-ADC)、フィブロネクチンエクストラドメインB(ヒトmAb L19およびF8)、エンドセリン受容体ETB(RG-7636)、VEGFR2(CD309、抗VEGFR-2ScFv-As2O3-ステルスナノ粒子)、テネイシンc(抗TnC-A1抗体SIP(F16))、ペリオスチン(抗ペリオスチン抗体)、DLL3(ロバルピツズマブソラブタンシン)、HER2(T-DM1、ARX788、SYD985)、EGFR(ABT-414、IMGN289 AMG-595)、CD30(ブレンツキシマブベドチン、イラツムマブMDX-060)、CD22(イノツズマブオゾガミシン(CMC-544)、ピナツズマブベドチン、エプラツズマブSN38)、CD79b(ポラツズマブベドチン)、CD19 (コルツキシマブラブタンシン、SAR-3419、SGN-CD19A)、CD138(インダツキシマブラブタンシン)、CD74(ミラツズマブドキソルビシン)、CD37(IMGN-529)、CD33(ゲムツズマブオゾガマイシン、IMGN779、SGN CD33 A、)およびCD98(IGN523)が含まれるが、これらに限定されない。(例えば、Thomas et al,Lancet Oncol.2016 Jun;17(6)e254-62およびDiamantis and Banerji,Brit.Journ.Cancer,2016;114,362-367を参照されたい)。
【0029】
したがって、本発明は、上述の癌治療用抗体のうちのいずれかの重鎖CDRと軽鎖CDRとを含むIgG抗体をさらに提供し、各IgG定常領域は、C1ドメインにおける残基124のシステインと、C1ドメインにおける残基残基157および162ならびにC3ドメインにおける残基375および378のうちの1つではあるが全てではない残基のシステインとを含む。さらに、本発明は、各IgG定常領域の残基124の各システイン、および各IgG定常領域の残基157、162、375または378の各システインが、本明細書に全て説明されているように、マレイミド-PEGリンカーを介してN-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合されている、上述のシステインが操作された抗体のうちのいずれかを提供する。
【0030】
本発明は、免疫系の1つ以上の細胞を誘引および/または活性化することができる、化学誘引物質に、場合によりリンカーを介して結合した少なくとも1つのシステインを含有する抗体である化合物を提供し、該薬剤は、抗体内の1つ以上のシステイン残基で抗体へ結合している。いくつかの実施形態において、抗体は、IgG重鎖定常領域を含み、該定常領域は、次の残基、すなわちC1ドメインにおける残基124、C1ドメインにおける残基157、C1ドメインにおける残基162、C2ドメインにおける残基262、C3ドメインにおける残基375、C3ドメインにおける残基373、C3ドメインにおける残基397、C3ドメインにおける残基415、Cカッパドメインにおける残基156、Cカッパドメインにおける残基171、Cカッパドメインにおける残基191、Cカッパドメインにおける残基193、Cカッパドメインにおける残基202、またはCカッパドメインにおける残基208のうちの少なくとも1つにシステインを含む。いくつかの実施形態において、システインは操作されたシステインである。さらなる実施形態において、各重鎖および/または軽鎖の上にある操作されたシステインの数は、1~3である。他の実施形態において、抗体は、リンカーを介して化学誘引物質に抱合されている。いくつかの実施形態において、リンカーは、マレイミド-PEGリンカーまたはMal-Dapリンカーである。他の実施形態において、化学誘引物質は、f-Metペプチド、小分子FPR-1アゴニスト、PRRアゴニスト、ペプチド模倣体、N-ウレイド-ペプチド、または細菌糖である。
【0031】
本発明は、免疫系の1つ以上の細胞を誘引および/または活性化することができる、化学誘引物質に場合によりリンカーを介して結合した少なくとも1つのシステインを含有する抗体である化合物を提供し、該薬剤は、抗体内の1つ以上のシステイン残基にある抗体へ結合しており、かつ化学誘引物質は、本明細書に説明するような、式I、式II、式III、式IV、式V、または式VIのうちのいずれか1つの化合物である。いくつかの実施形態において、化合物は、免疫系の1つ以上の細胞を誘引および活性化することができる。いくつかの詳細な実施形態において、化合物は、自然免疫系の1つ以上の細胞を誘引および活性化することができる。好ましい実施形態において、リンカーが存在する。
【0032】
さらに、本発明は、抗体、そのIgG重鎖定常領域、およびN-ホルミルメチオニンペプチド抱合体のいずれかも提供し、それぞれ本明細書に具体的に例示されるとおりである。さらなる実施形態として、本発明は、「単離された」形態の、抗体、そのIgG重鎖定常領域、抱合抗体、またはこれらのうちの1つをコードする核酸ののうちのいずれかを提供する。本明細書で使用する場合、「単離された」という用語は、細胞環境内で認められる他の高分子種を含まないか、または実質的に含まない、タンパク質、ポリペプチド、または核酸を称する。
【0033】
本発明は、本明細書に説明するN-ホルミルメチオニンペプチド抱合抗体のうちのいずれかと、医薬上許容される担体または賦形剤とを含む医薬組成物をさらに提供する。さらに、本発明は、乳癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、筋肉癌、骨中胚葉癌、血管癌および線維癌ならびに関連する転移を含む固形癌と、白血病およびリンパ腫を含む液性腫瘍とを治療する方法であって、このような治療を必要とする患者に、それぞれ本明細書に説明されるように、有効量のN-ホルミル-メチオニンペプチド抱合抗体、またはその医薬組成物を投与することを含む、方法をさらに提供する。さらに、本発明は、療法における使用のための、本明細書に説明するN-ホルミル-メチオニンペプチド抱合抗体、およびその医薬組成物のいずれかをさらに提供する。特に、本発明は、乳癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、筋肉癌、骨中胚葉癌、血管癌および線維癌、白血病ならびにリンパ腫の治療における使用のための、本明細書に説明するN-ホルミル-メチオニンペプチド抱合抗体のうちのいずれかと、その医薬組成物とを提供する。本明細書の方法、使用および組成物の詳細な実施形態として、N-ホルミル化メチオニンペプチドは、N-ホルミル-Met-Leu-Phe-Lys-OHである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
定義
「IgG抗体」の一般的な構造は非常によく知られている。IgGタイプの野生型(WT)抗体は、鎖内および鎖間ジスルフィド結合を介して架橋された4つのポリペプチド鎖(2つの同一の「重」鎖および2つの同一の「軽」鎖)からなるヘテロ四量体である。各重鎖(HC)は、N末端重鎖可変領域(「V」)および重鎖定常領域から構成されている。重鎖定常領域は、3つのドメイン(C1、C2、およびC3)と、C1ドメインとC2ドメインとの間のヒンジ領域(「ヒンジ」)とで構成されている。各軽鎖(LC)は、N末端軽鎖可変領域(「V」)および軽鎖定常領域(「C」)から構成されている。VおよびC領域は、カッパ(「κ」)またはラムダ(「λ」)アイソタイプ(それぞれ「Cκ」または「Cλ」)のものであってもよい。各重鎖は、重鎖可変ドメインと軽鎖可変ドメインとの間の界面(V/V界面)、ならびに重鎖定常C1および軽鎖定常ドメイン(C1/C界面)を介して1つの軽鎖と結合する)。V-C1およびV-Cセグメントの各々の間の結合は、同じ抗原標的またはエピトープへの抗体結合を指示する2つの同一の抗原結合フラグメント(Fab)を形成する。各重鎖は、各重鎖のヒンジ-C2-C3セグメント間の界面を介して他の重鎖と結合し、2つのC2-C3セグメント間の結合は抗体のFc領域を形成する。まとまって、各FabおよびFcは、IgG抗体の特徴的な「Y字型」アーキテクチャを形成し、各Fabは「Y」の「アーム」を表す。IgG抗体は、サブタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4へと分けることができ、該サブタイプは、ヒンジ領域の長さ、鎖間および鎖内ジスルフィド結合の数および位置、ならびにそれぞれのHC定常領域のアミノ酸配列によって異なる。
【0035】
各重鎖-軽鎖対の可変領域は、結合して結合部位を形成する。重鎖可変領域(V)および軽鎖可変領域(V)は、フレームワーク領域(「FR」)と称される、より保存された領域で挟まれた、相補性決定領域(「CDR」)と称される超変異性の領域へとさらに分けることができる。各VおよびVは、3つのCDRおよび4つのFRから構成されており、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖のCDRは、「CDRH1、CDRH2、およびCDRH3」と呼ばれることがあり、軽鎖の3つのCDRは「CDRL1、CDRL2、およびCDRL3」と呼ばれることがある。重鎖のFRは、HFR1、HFR2、HFR3、およびHFR4と称されることがあるのに対し、軽鎖のFRは、LFR1、LFR2、LFR3、およびLFR4と呼ばれることがある。CDRは、抗原との特異的相互作用を形成する残基の大部分を含有する。
【0036】
本発明の化合物および方法は、重鎖ポリペプチドの定常領域内の特定の残基に、設計されたアミノ酸修飾を含む。当業者が理解することになるように、IgG定常領域配列および可変領域配列内の特定のアミノ酸残基を指定するために、様々な番号付け規則を採用することができる。一般的に使用される番号付け規則には、「Kabat番号付け」および「EUインデックス番号付け」システムが含まれる。「Kabat番号付け」または「Kabat番号付けシステム」とは、本明細書で使用する場合、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメインの両方においてアミノ酸残基を指定するために、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)における著者らによって考案されおよび明らかにされた番号付けシステムを称する。「EUインデックス番号付け」または「EUインデックス番号付けシステム」は、本明細書で使用する場合、抗体重鎖定常ドメインにおけるアミノ酸残基を指定するための番号付け規則を称し、Kabat et al(1991)にも明らかにされている。可変ドメインのための修正または代替番号付けシステムを含む他の規則には、Chothia(Chothia C,Lesk AM(1987),J Mol Biol 196:901-917、Chothia,et al.(1989),Nature 342:877-883)、IMGT(Lefranc,et al.(2003),Dev Comp Immunol 27:55-77)、およびAHo(Honegger A,Pluckthun A(2001)J Mol Biol 309:657-670)が含まれる。本明細書で特に明記しない限り、明細書、実施例および特許請求の範囲において表される免疫グロブリン重鎖定常領域C1、ヒンジ、C2、およびC3アミノ酸残基に対する参照(すなわち、番号)は全て、EUインデックス番号付けに基づく。EUインデックス番号付けによる残基番号の知識があれば、当業者は、何らかの一般的に使用される番号付け規則に従って、本発明内のアミノ酸配列修飾を特定するために当業者の教示を応用することができる。本発明の明細書、実施例および特許請求の範囲は、特定のアミノ酸残基を特定するためにEUインデックス番号付けを採用しているが、本出願に添付の実施例および配列表において表される配列番号が、Patent In Version第3.5版によって生じるように、所与のポリペプチド内のアミノ酸の連続番号付けを提供し、したがって、EUインデックス番号付けによって提供されるような対応するアミノ酸残基番号に一致していないことは理解される。
【0037】
本明細書に説明するポリペプチド鎖は、左から右に読むと、N末端からC末端までのアミノ酸配列によって表され、各アミノ酸は1文字または3文字のいずれかのアミノ酸略語で表される。本明細書で特に明記しない限り、本発明のポリペプチドの調製に使用されるアミノ酸は全て、L-アミノ酸である。アミノ酸またはポリペプチド鎖の「N末端」(またはアミノ末端)は、アミノ酸上の遊離アミン基、またはポリペプチド鎖の最初のアミノ酸残基上の遊離アミン基を指す。さらに、「N末端アミノ酸」という用語は、ポリペプチド鎖における最初のアミノ酸を指す。同様に、アミノ酸またはポリペプチド鎖の「C末端」(またはカルボキシ末端)は、アミノ酸上の遊離カルボキシ基、またはポリペプチド鎖の最終アミノ酸残基上の遊離カルボキシ基を指す。さらに、「C末端アミノ酸」という用語は、ポリペプチド鎖における最後のアミノ酸を指す。
【0038】
本明細書で使用する場合、「・・・残基・・・で置換された[アミノ酸名]」という句は、重鎖または軽鎖ポリペプチドに関して、示されたアミノ酸での親アミノ酸の置換を指す。例として、「残基235で置換されたアラニン」を含む重鎖は、親アミノ酸配列が、親アミノ酸の代わりに残基番号235のアラニンを含有するよう突然変異した重鎖を指す。このような突然変異は、特定のアミノ酸残基番号を示すことによっても表され、親アミノ酸が先行し、その後に置き換えアミノ酸が続くことがある。例えば、「F235A」は、残基235のフェニルアラニンのアラニンとの置き換えを指す。同様に、「235A」は、親アミノ酸のアラニンとの置き換えを指す。「操作された」システインは、親アミノ酸のシステインへの置換を指す。
【0039】
本明細書で使用する場合、「N-ホルミル-メチオニンペプチド」とは、長さ4~10個のアミノ酸のペプチドを指し、N末端アミノ酸はホルミル化メチオニンであり、C末端アミノ酸はリジンである。特定のN-ホルミル-メチオニンペプチドは、ペプチドN-ホルミル-メチオニン-ロイシン-フェニルアラニン-リジン-OH(「fMLFK」、配列番号23)である。
【0040】
本明細書で使用する場合、「リンカー」とは、2つ以上の追加の構造を接続する構造を指す。リンカーの例としては、ペプチドリンカー、タンパク質リンカー、およびPEGリンカーが挙げられる。「マレイミド-PEGリンカー」は、本明細書で使用する場合、「n」が6~24である式「-(O-CH-CH-」のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーと誘導体化マレイミド官能基とを含む化学部分を指し、ここで、該リンカーは、マレイミド官能基と重鎖定常領域におけるシステイン残基との間のチオエーテル結合を介してIgG抗体重鎖への共有結合を形成し、該N-ホルミル-メチオニンペプチドのC末端リジンのイプシロンアミノ側鎖へのアミド結合を介して、N-ホルミル-メチオニンペプチドへの共有結合も形成する。詳細な実施形態として、本発明の化合物のマレイミド-PEGリンカーは、次の構造を有し、破線はIgG抗体重鎖およびN-ホルミル-メチオニンペプチドへの共有結合の位置を表す:
【化3】
式中、「n」=6~24であり、より詳細には、「n」=12である。
【0041】
この場合、以下の実施例において採用される試験化合物の調製に使用される試薬(Mal-dPEG12-OH(QuantaBiodesignカタログ番号10285、ロットIH1-A1240-80))は単分散試薬であり、エチル-オキシモノマー(O-CH-CH)単位の離散した数を含有することを意味する。同様に、この試薬を使用すると、n=12の(O-CH-CH)単位を有するマレイミド-PEGnリンカーを含有する抱合抗体化合物が生成されることになる。
【0042】
しかしながら、当業者が理解することになるように、ペグ化試薬はしばしば、試薬中のPEG含有化合物のPEGポリマー部分の(ダルトンまたはキロダルトンにおける)分子量に対する参照によって説明される。さらに、多くの市販のPEG含有試薬は、概して、ある程度の多分散性を有しており、試薬内に含有されるエチレングリコールモノマー単位を繰り返す数(「n」)がある範囲にわたって、典型的には狭い範囲にわたって変化することを意味する。したがって、多分散試薬におけるPEGポリマー分子量への参照は、典型的には、試薬内に含有されるPEGポリマーの平均分子量への参照である。本発明の抱合抗体化合物を調製するために使用される試薬のエチルオキシモノマー(O-CH-CH)は、約44g/モルまたは44ダルトンの分子量を有する。したがって、当業者は、その平均分子量によって示される多分散ペグ化試薬を使用する場合の「n」の値、および同様に、結果的に生じる抱合抗体化合物における「n」の値を容易に決定することができる。
【0043】
「R1は、置換または非置換であってもよいC~C10アリールである」という句において使用される場合の「置換」という用語は、例えば、本明細書では、1つ以上の置換基が存在することができることを意味し、該置換基は原子および基から選択され、式II、式III、式IV、式Vまたは式VIの化合物中に存在する場合、化合物が化学誘引物質として機能するのを妨げない。置換C~C10アリール基中に存在することができる置換基の例としては、アリール構造へ共有結合しているヒドロキシル、ハロゲン化物(I、Cl、F、BR)、アルコキシ基(MeO-、EtO-、ProまたはC~C)、またはアルキル基(Me-、Et-、PrまたはC~C)が挙げられる。
【0044】
ジアミノアルキルという用語は、構造-NH(CHNH-によって与えられ、式中、n=2~10である。
【0045】
ホルミル基は、水素に結合したカルボニルからなり、次の構造、すなわちCH(=O)、または次式によって与えられる。
【化4】
マレイミド-ジアミノプロピオン酸は、遊離アミンへのアミド結合を介してYにカップリングし、次の構造を指す。
【化5】
マレイミドは、遊離アミンへのアミド結合を介してYにカップリングし、次の構造によって与えられる3-マレイミドプロピオン酸を指す。
【化6】
【0046】
本明細書で使用する場合、「それを必要とする患者」という用語は、本発明の化合物による治療または投与が示される容態または障害に罹患していると診断されたヒトまたは非ヒト哺乳類動物、より好ましくはヒトを指す。
【0047】
本明細書で使用する場合、「有効量」という用語は、患者への単回または複数回投与の際に、患者における所望の薬理学的効果を提供する、本発明の抱合抗体化合物の量または用量を指す。有効量は、哺乳類動物の種、該哺乳類動物の大きさ、齢、および全身レベルの健康、関連する具体的な疾患または外科的手順、疾患または病気の程度または重症度、個々の患者の応答、投与される詳細な化合物または組成物、投与様式、投与された調製物の生物学的利用能特徴、選択された投与治療計画、何らかの併用薬の使用などの多くの要因を考慮することにより、担当の診断医が、当業者として容易に決定することができる。
【0048】
本発明における使用のためのシステインを操作されたIgG抗体は、哺乳類動物細胞または酵母細胞内での組換え発現など、当技術分野で周知の技術を使用して産生することができる。特に、本明細書の実施例の方法および手順は容易に採用することができる。さらに、本発明のIgG抗体は、完全にヒトのフレームワークに由来するフレームワーク領域を含むようにさらに操作されてもよい。本発明の実施形態を実施する上で、種々の異なるヒトフレームワーク配列を使用することができる。詳細な実施形態として、本発明のIgG抗体で採用されるフレームワーク領域は、ヒト起源のものであるか、または実質的にヒト(ヒト起源の少なくとも95%、97%または99%)である。ヒト起源のフレームワーク領域の配列は、当技術分野で既知であり、The Immunoglobulin Factsbook,by Marie-Paule Lefranc,Gerard Lefranc,Academic Press 2001,ISBN 012441351から取得することができる。
【0049】
操作可能に連結されている遺伝子の発現を導くことができる発現ベクターは、当技術分野において周知である。発現ベクターは、プロモーター配列および複製開始部位などの適切な制御配列を含有している。発現ベクターはまた、適切な選択マーカーならびに宿主細胞からの所望のポリペプチド産物(複数可)の分泌を促進するシグナルペプチドをコードしてもよい。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種性シグナルペプチドであってもよい。所望のポリペプチドをコードする核酸、例えば、本発明の結合IgG抗体のHCおよびLC成分は、単一ベクターにおいて操作可能に連結された異なるプロモーターを使用して独立して発現することができるか、またはそれに代わるものとして、所望の産物をコードする核酸は、別個のベクターにおいて操作可能に連結された異なるプロモーターを使用して独立して発現することができる。本発明のシステインを操作されたIgG抗体のHCおよびLC成分の両方をコードする単一の発現ベクターは、標準的な方法を使用して調製することができる。
【0050】
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」とは、1つのまたは複数の所望のポリペプチド産物をコードするヌクレオチド配列を安定的または一過性にトランスフェクトし、形質転換し、形質導入し、または感染させた細胞を指す。本発明における使用のためのIgG抗体を産生する宿主細胞株の創出および単離は、当技術分野で既知の標準的な技術を使用して達成することができる。哺乳類動物細胞は、本発明によるシステインを操作されたIgG抗体の発現に好ましい宿主細胞である。詳細な哺乳類動物細胞には、HEK293、NS0、DG-44、およびCHO細胞が含まれる。好ましくは、組み立てられたタンパク質は、宿主細胞が培養されている培地中へと分泌され、そこからタンパク質を回収および単離することができる。タンパク質が分泌されてきた培地は、従来の技術によって精製することができる。例えば、培地は、従来の方法を使用して、プロテインAまたはプロテインGカラムに適用され、そこから溶離することができる。可溶性凝集体および多量体は、サイズ排除、疎水性相互作用、イオン交換、ヒドロキシアパタイト、または混合様式のクロマトグラフィーを含む、一般的な技術によって有効に除去することができる。回収された産物は、例えば、-70℃で即時凍結させてもよく、または凍結乾燥させてもよい。当業者が理解することになるように、ある特定の生物系、例えば哺乳類動物細胞株において発現させるとき、グリコシル化を低減させるためにFc領域において突然変異が導入されない限り、抗体はFcにおいてグリコシル化される。さらに、抗体は、他の位置において同様にグリコシル化されていてもよい。
【0051】
本明細書で使用する場合、「細菌糖」とは、細菌の外面にある多糖を指す。細菌糖の例はカラギーナンである。
【0052】
本明細書で使用する場合、「模倣体」とは、天然に存在する分子と同様に機能する分子を指す。例えば、ペプチド模倣体は、ペプチド、修飾されたペプチド、またはホルモン、サイトカイン、酵素基質、ウイルスもしくは他の天然に存在する分子の活性リガンドを生物学的に模倣する何らかの他の分子などの分子であることができる。
【0053】
本明細書で使用する場合、「化学誘引物質」とは、免疫系の細胞を誘引および/または活性化することができるペプチドなどの構造を指す。好ましい実施形態において、化学誘引物質とは、免疫系の細胞を誘引および活性化することができる構造である。化学誘引物質の例としては、f-Metペプチド、小分子FPR-1アゴニスト、PRRアゴニスト、ペプチド模倣体、N-ウレイド-ペプチド、および細菌糖が挙げられる。より具体的な例としては、式I~IVのいずれか1つの化合物、および配列番号22、36~39のいずれか1つのペプチドが挙げられる。
【0054】
次の実施例は、本発明をさらに説明し、本発明の種々の詳細な実施形態を実施するための典型的な方法および手順を提供する。しかしながら、実施例は例証として明らかにされていること、および種々の変更が当業者によってなされてもよいことは理解される。
【実施例
【0055】
実施例1:操作されたシステイン残基を含有するIgG重鎖定常領域の設計
IgG重鎖定常領域残基は、多様な変数または抗原結合ドメインを有する親mAbを用いて操作されたシステイン設計の使用を突然変異が可能にするように選択される。簡単にいうと、抗体の二次構造および三次構造にとって重要ではない定常ドメイン内のバリン、アラニン、およびセリン残基が、インシリコでの初期突然変異のために選択される。C1-CカッパFab(pdb:4DTG)およびIgG4 Fc(pdb:4C55)の公表されている結晶構造を使用して、複数の異なる抗体単一システイン操作コンストラクトを設計する。各突然変異体設計物をコードする遺伝子を、ヒトIgG4重鎖およびカッパ軽鎖プラスミドにおいて構築し、細胞内で発現させ、結合していない操作されたシステインを含有するmAbは発現レベルおよび分析特性によって特徴づける。結合前の最小の高分子量凝集体で(<10%)で、親の野生型mAbと本質的に同じ標的結合親和性および発現レベル(ELISAで決定)を保持する構築物を規模拡大産生し、さらに特徴づける。
【0056】
次に、各HCおよびLC定常ドメインへと操作された単一のシステイン突然変異を有する20超のmAb構築物をHEK293細胞内で発現させ、精製し、リンカーを介してモノメチルオーリスタチンE(MMAE)およびクリプトフィシンなどの細胞毒性ペイロードに結合させる。結合効率を、ESI-TOF質量分析または疎水性指数クロマトグラフィー(HIC)などの標準的な手順によって監視し、凝集傾向を分析用サイズ排除クロマトグラフィーで測定する。両方のペイロードへの結合後の結合効率が約60%を超え、かつ高分子凝集体が約10%未満である構築物を、エクスビボでの血漿およびインビボでの安定性試験についてさらに検討する。
【0057】
簡単にいえば、抱合体を血漿とともに数日間インキュベートし、質量分析によって分析して、ペイロードがまだ抗体に抱合されていることを確認する。各HCにおけるS124C、S157C、A162C、S375C、またはA378Cに残基突然変異を含有する結合構築物には、適切な安定性があることが認められる。HC 124C突然変異を157C、162C、375Cまたは378Cのいずれかと組み合わせて、より高い抗体薬物比を得ることができる。さらに、C1ドメインにおける重鎖残基124、157、および162、C2ドメインにおける残基262、C3ドメインにおける残基375、378、および397、ならびにCカッパドメインにおける軽鎖残基156、171、191、193、202、および208を、種々のホルミルペプチドとの結合のために生成した。
【0058】
化学誘引物質を結合した操作されたシステインを含む一価IgG抗体に加えて、二価抗体構築物も、本明細書に開示される化学誘引物質を結合した操作されたシステインを用いて開発することもできる。操作されたシステインを有する二価抗体構築物には、IgG-scFv形式(PCT/US2015/058719において報告されている)および二価IgG形式(US2018/0009908において開示されている)が含まれるが、これらに限定されない。このような二価抗体構築物によると、部位特異的な操作されたシステインには、化学誘引物質の二重特異性抗体への結合のための表面露出型システインが含まれる。具体的な実施形態(配列番号34、35の2つのHCおよび配列番号58、59の2つのLCを備えた二価IgG形式を有する二重特異性抗体)によると、重鎖残基124および378のシステインは、化学誘引物質の結合のために操作されている。このような例示された構成の発現および組立ては変わらなかったが、検査ペプチドとの結合は単一特異性抗体に匹敵するCRをもたらした。
【0059】
実施例2:ペグ化fMLFKペプチドの合成
実施例2(A):ホルミル-Met-Leu-Phe-Lys(Mal-PEG12)-OH(「ペプチド-‘183」)(配列番号22)の合成。
【化7】
非結合ペプチドとして使用される加水分解されたマレイミド基を持つペプチド-‘183。
【化8】
【0060】
走化性ペプチドホルミル-Met-Leu-Phe-Lys-OH(配列番号23)を合成し、HCl塩として精製する。この材料をリジンのε-アミノ基でのさらなる誘導体化のための基質として使用する。
【0061】
ペプチドを、Ace Glassware Inc.製の100mLフリットガラス手動反応容器中で0.3mmol尺度の標準的なFmoc/tBu化学的性質を使用した手動固相ペプチド合成を介して生成する。合成に使用する固体支持体はFmoc-Lys(Boc)-Wang樹脂(NovaBiochem、カタログ番号8.56013、ロットS6696713-529)、100~200メッシュ、0.57meq/gの置換とした。使用した標準アミノ酸は、Fmoc-Phe-OH(NovaBiochem、カタログ番号04-12-1030、ロットA21653)、Fmoc-Leu-OH(NovaBiochem、カタログ番号04-12-1025、ロットA25917)、Fmoc-Met-OH(MidWest Biotech カタログ番号12400、ロットOP12240)であった。DMF中の20%ピペリジンの処理(2×10分)による各カップリング工程に先立ってFmoc基を除去する。全てのカップリングは、等比のFmocアミノ酸、ジイソプロピルカルボジイミド(Sigma-Aldrich、カタログ番号DI25407、ロット80896APV)およびHOAt(AK Scientific、カタログ番号D046、ロット1188G50I)を、DMF中の約0.2Mの終濃度の理論的ペプチド樹脂置換を上回る3倍モル濃度過剰量で用いて6時間実施する。最後のアミノ酸をカップリングし、N末端のFmoc基の除去後、200μLのジイソプロピルエチルアミン含有DMF中に溶解した6倍過剰量のギ酸2,4,6-トリクロロフェニル(TCI、カタログ番号T3121、ロットP8AFA-PE)による処理によってホルミル化し、室温で3時間反応させた。次に、樹脂をDCMおよびジエチルエーテルで洗浄し、真空吸引を反応容器に5分間適用することによって完全に乾燥させる。乾燥樹脂を25mLの切断カクテル(TFA:アニソール:水:トリイソプロピルシラン=88:5:5:1(v/v))で室温で2時間処理する。樹脂を濾別し、5mLの無水TFAで2回洗浄し、合わせた濾液を50mLの冷ジエチルエーテルで処理して、粗ペプチドを沈殿させる。次いで、ペプチド/エーテル懸濁液を4000rpmで4分間遠心分離して固体ペレットを形成し、エーテルをデカントし、固体ペレットをエーテルでさらに2回粉砕し、真空で30分間乾燥させる。粗ペプチドを20%アセトニトリル/水中で可溶化し、0.1%HCl含有水中のアセトニトリルの線形勾配によるC18分取カラム(Phenomenex、Luna Phenyl-Hexyl、21×250mm)の逆相HPLCによって精製して、凍結乾燥したペプチドをHCl塩(125mg、出発樹脂置換に基づく73%の収率)として得る。純度は、分析用逆相HPLCを使用して評価し、99%超であることがわかった。分子量は、分析用エレクトロスプレーMSによって決定した。計算値:565.7Da、実測値:565.3Da(平均分子量)。次のイオンを観察した:566.3(M+1H)。
【0062】
リジンのε-アミノ基は次のようにアシル化する:凍結乾燥したペプチド約50mg(約0.088mmol)を超音波処理器を用いて5mLの無水DMFに溶解する。別個のシンチレーションバイアル中で、74mg(1.1当量)のMal-dPEG12-OH(QuantaBiodesign カタログ番号10285、ロットIH1-A1240-80)を29mg(1.1当量)のTSTU(OakWood Chemicals、カタログ番号024891、ロット024891)および1mLの無水DMF中の61μL(4当量)のDIPEAで室温で25分間で活性化する。活性化したMal-PEG12-OHをDMF(1mL)中に可溶化したペプチドへ滴下して添加し、62μL(5当量)のトリエチルアミンを添加し、反応物を室温で混合した。1時間後、冷ジエチルエーテルの添加により反応を停止させる。次に、溶液を分けて2本の50mLコニカルチューブへと移し、より多量の冷エーテルを添加してペプチドをさらに沈殿させる。次に、ペプチド/エーテル懸濁液を4000rpmで4分間遠心分離して固体ペレットを形成し、エーテルをデカントし、固体ペレットをエーテルでさらに2回粉砕し、真空で30分間乾燥させる。合わせた粗ペプチドペレットを20%アセトニトリル/水中に可溶化し、0.1%TFA含有水中のアセトニトリルの線形勾配を用いたC18分取カラム(Phenomenex、Luna Phenyl Hexyl 21×250mm)で逆相HPLCにより精製して、凍結乾燥したペプチドをTFA塩(44.4mg、出発物質に基づく38%の収率)として得る。純度は、分析用逆相HPLCを使用して評価し、96%超であることがわかった。分子量は、分析用エレクトロスプレーMSによって決定した。計算値:1316.6Da、実測値:1316.2Da(平均分子量)。次のイオンを観察した:659.0(M+2H)、および1317.2(M+1H)。次に、このペプチド(ホルミル-Met-Leu-Phe-Lys(Mal-PEG12)-OH)を、以下の実施例3に説明するように抗体に結合させることができる。
【0063】
以下の実施例において使用する非結合ペプチドについて、工程1の20mgの生成物を2mLの40mMトリスHCl緩衝液(pH8.0)中で室温で一晩インキュベートすることによって、マレイミド基をさらに加水分解する。18時間後、溶液を10mLの20%アセトニトリル/水で希釈し、0.1%のTFA含有水中のアセトニトリルの線形勾配を用いるC18分取カラム(Phenomenex、Luna Phenyl Hexyl 21×250mm)の逆相HPLCによって、精製して、凍結乾燥したペプチドをTFA塩(6.4mg、出発物質に基づく32%収率)として得た。純度は、分析用逆相HPLCを使用して評価し、94%超であることがわかる。分子量は、分析用エレクトロスプレーMSによって決定する:計算値:1334.6Da、実測値:1334.4Da(平均分子量)。次のイオンを観察する:668.0(M+2H)、および1335.8(M+1H)。
【0064】
実施例2(B):H-Met-Leu-Phe-Lys(Mal-PEG12-OH(「ペプチド-‘844」)(配列番号24)の合成。
【化9】
非結合ペプチドとして使用される加水分解したマレイミド基を有するペプチド-‘844。
【化10】
【0065】
ホルミル化のない陰性対照ペプチド((H-Met-LeuPhe-Lys-OH)(配列番号25)を、0.3mmol尺度の標準的なフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)/第三級ブチル基(tBu)の化学的性質を用いる手動固相ペプチド合成によって生成する。ペプチドの組立ては、Ace Glassware Inc.製の100mLフリットガラス手動反応容器中で行う。合成に使用する固体支持体は、Fmoc-Lys(Mtt)-Wang樹脂(NovaBiochem、カタログ番号8.56021、ロットS6692621 503)、100~200メッシュ、0.57meq/gの置換でとする。使用する標準アミノ酸は、Fmoc-Phe-OH(NovaBiochem、カタログ番号04-12-1030、ロットA21653)、Fmoc-Leu-OH(NovaBiochem、カタログ番号04-12-1025、ロットA25917)、Fmoc-Met-OH(MidWest Biotech カタログ番号12400、ロットOP12240)とする。
【0066】
Fmoc基を、DMF中の20%ピペリジンの処理(2×10分)による各カップリング工程に先立って除去する。全てのカップリングは、等比のFmocアミノ酸、ジイソプロピルカルボジイミド(Sigma-Aldrich、カタログ番号DI25407、ロット80896APV)およびHOAt(AK Scientific、カタログ番号D046、ロット1188G50I)を、理論的ペプチド樹脂置換を超える3倍モル濃度過剰量で、かつDMF中の約0.2Mの終濃度で6時間実施する。
【0067】
最後のアミノ酸をカップリングし、N末端のFmoc基の除去後、ペプチジル樹脂を、200μLのジイソプロリルエチルアミン含有ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解した6倍過剰量のBocO(NovaBiochem、カタログ番号01-63-0007、ロットA25675)を用いた処理によって、Boc(ブチルオキシカルボニル)基で保護し、室温で3時間反応させる。次に、樹脂をジクロロメタン(DCM)で8回洗浄しており、Lys残基上のMtt(4-メチルトリチル)保護基を、DCM(2×10分および1×45分)中の20%ヘキサフルオロイソプロパノール(Oakwood Chemicals,カタログ番号003409)の3回の連続した処理で選択的に除去して、さらなる反応のためにLysの遊離イプシロンアミンを曝露した。Fmoc PEG12-OH(BroadPharm、カタログ番号BP-22241)と3-マレイミドプロピオン酸(Bachem、カタログ番号Q-2620)とのその後のカップリングを、標準アミノ酸残基と同じ様式で行う。
【0068】
合成が完了した後、ペプチジル樹脂をDCM、ジエチルエーテルで洗浄し、反応容器を5分間真空吸引することにより完全に乾燥させる。乾燥樹脂を25mLの切断カクテル(トリフルオロ酢酸(TFA):アニソール:水:トリイソプロピルシラン=88:5:5:1(v/v))で室温で2時間処理する。樹脂を濾別し、5mLの無水TFAで2回洗浄し、合わせた濾液を50mLの冷ジエチルエーテルで処理して、粗ペプチドを沈殿させる。次に、ペプチド/エーテル懸濁液を4000rpmで4分間遠心分離して固体ペレットを形成し、エーテルをデカントし、固体ペレットをエーテルでさらに2回粉砕し、真空で30分間乾燥させる。
【0069】
粗ペプチドを20%アセトニトリル/水中に可溶化し、0.1%TFA含有水中のアセトニトリルの線形勾配を用いてC18分取カラム(Phenomenex、Luna Phenyl-Hexyl、21×250mm)でRP-HPLCにより精製して、凍結乾燥したペプチドをTFA塩(38.8mg、出発樹脂置換に基づく10%収率)として得る。純度は、分析用逆相HPLCを使用して評価し、96%超であることがわかった。分子量は、分析用エレクトロスプレーMSによって決定する。計算値:1288.5Da、実測値:1288.4Da(平均分子量)。次のイオンを観察する:645.0(M+2H)、および1289.7(M+1H)。次に、このペプチド(H-Met-Leu-Phe-Lys(Mal-PEG12-OH)を、以下の実施例3に説明するように抗体に結合させることができる。
【0070】
以下の実施例で使用される非結合ペプチドの場合、工程1の生成物20mgを2mLの40mMトリスHCl緩衝液(pH8.0)中で室温で一晩インキュベートすることにより、マレイミド基をさらに加水分解する。18時間後、溶液を10mLの20%アセトニトリル/水で希釈し、0.1%TFA含有水中のアセトニトリルの線形勾配を用いたC18分取カラム(Phenomenex、Luna Phenyl Hexyl 21×250mm)の逆相HPLCによって精製して、凍結乾燥したペプチドをTFA塩(5.2mg、出発物質に基づく収率26%)として得た。純度は、分析用逆相HPLCを使用して評価し、96%超であることがわかった。分子量は、分析用エレクトロスプレーMSによって決定した。計算値:1306.6Da、実測値:1306.4Da(平均分子量)。次のイオンを観察した:654.0(M+2H)、および1307.7(M+1H)。
【0071】
実施例2(c):ホルミル-Nle-Leu-Phe-PEG12-Lys(マレイミド-プロピオニル)-OH(「fNle」、配列番号42)の合成
【化11】
【0072】
走化性ペプチドであるホルミル-Nle-Leu-Phe-PEG12-Lys-OHを、HCl塩(Peptides International)として合成し、さらに修飾することなく誘導体化の基質として使用する。
【0073】
リジンのε-アミノ基のアシル化は、次のように実施する。超音波処理器を使用して、凍結乾燥ペプチド約50mg(約0.044mmol)を5mLの無水DMF中に溶解する。別個のシンチレーションバイアルにおいて、8.1mg(1.1当量)のマレイミド-プロピオン酸(Bachem、カタログ番号Q-2620、ロット0564230)を、1mLの無水DMF中の14.5mg(1.1当量)のTSTU(OakWood Chemicals、カタログ番号024891、ロット024891)および33.4μL(4当量)のDIPEAを用いて室温で25分間活性化する。活性化したマレイミド-プロピオン酸を、DMF(1mL)中の可溶化ペプチドに滴下して添加し、次に、30μL(5当量)のトリエチルアミンを添加し、反応物を室温で混合する。1時間後、冷ジエチルエーテルの添加により反応を停止させる。次に、溶液を分けて2本の50mLコニカルチューブへと移し、より多量の冷エーテルを添加してペプチドをさらに沈殿させる。次いで、ペプチド/エーテル懸濁液を4000rpmで4分間遠心分離して固体ペレットを形成し、エーテルをデカントし、固体ペレットをエーテルでさらに2回粉砕し、真空で30分間乾燥させる。合わせた粗ペプチドペレットを20%アセトニトリル/水中で可溶化し、0.1%TFA含有水中のアセトニトリルの線形勾配でC18分取カラム(Phenomenex、Luna Phenyl Hexyl 21×250mm)で逆相HPLCにより精製して、凍結乾燥ペプチドをTFA塩(8.6mg、出発物質に基づく15.1%の収率)として得る。純度は、分析用逆相HPLCを使用して評価し、97%超であることがわかった。分子量は、分析用エレクトロスプレーMSによって決定した。計算値:1298.5Da、実測値:1298.8Da(平均分子量)。次のイオンを観察した:650.0(M+2H)、および1299.8(M+1H)。次に、このペプチドを、以下の実施例3に説明するように抗体に結合させることができる。
【0074】
実施例3:ペプチドに対するIgG抗体の結合
抗体-ペプチド生体結合は、次のように調製することができる。操作されたシステイン残基を含有する親抗体を、Zeba(商標)スピン脱塩カラム(40K MWCO)を使用して、50mMトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス-HCl)、2mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、pH7.5中へと緩衝液交換し、5mg/mlの終濃度にする。MilliQ水中に可溶化した、新たに調製した100mMのジチオトレイトール(DTT)を40倍モル濃度過剰量で抗体に添加する。反応混合物を室温で16時間インキュベートする。インキュベーション時間の後、Zebaスピン脱塩カラムを使用して、反応混合物を50mMのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(トリス-HCl)、150mM塩化ナトリウム(NaCl)、pH7.5中へと緩衝液交換して、過剰量の未反応DTTを除去する。
【0075】
新たに調製したジメチルアセトアミド中の100mMデヒドロアスコルビン酸(dHAA)を30倍モル濃度過剰量で抗体に添加し、室温で3時間インキュベートする。インキュベーション後、4、8、または12倍モル濃度過剰量のホルミル-Met-Leu-Phe-Lys(Mal-PEG12)-OH(配列番号22)、H-Met-Leu-Phe-Lys(Mal-PEG12)-OH(配列番号24)またはホルミル-Nle-Leu-Phe-PEG12-Lys(マレイミド-プロピオニル)-OH(それぞれ実施例2(A)、2(B)および2(C)において説明したとおり合成)を、1、2、または3個の操作されたシステイン残基をそれぞれ有する抗体に(分子等級の水中に溶解して)添加して、2、4、または6の比率の生体抱合体を結果的に得る。この反応混合物を室温で1時間インキュベートする。インキュベーション後、試料を所望の緩衝液中へと緩衝液交換し、脱塩カラム、分取サイズ排除クロマトグラフィー(pSEC)、または透析を使用して、過剰量の非結合ペプチドを除去する。
【0076】
表1は、本質的に本明細書および先に説明したとおり調製し、結合に使用される抗体HCおよびLC配列とペグ化ペプチドとを含む、次のアッセイで試験される結合型および非結合型IgG抗体構築物を提供する。本明細書で使用する場合、「エミベツズマブ」、「TMab」(トラスツズマブ)、および「AME133」は、示された抗体の可変領域を含有する抗体構築物を指す。
【表1-1】
【表1-2】
【0077】
実施例4:結合比の決定
TMab(「トラスツズマブ」)、AME133、およびエミベツズマブ構築物のシステイン操作重鎖上のペプチド-183の結合比を、抱合体付加の加重平均を用いて、未処置の質量分析によって決定する。未処置の質量測定結果を、Agilent 6230 ESI-TOF質量分析計と組み合わせたAgilent 1290HPLCを使用して収集する。試料(2ug)を、PLRP-S逆相カラム(Agilent)で、移動相Aとして水/0.2%ギ酸、移動相Bとしてアセトニトリル/0.2%ギ酸を使用し、0.3ml/分の流量で、4分間で20~70%Bの勾配溶離を用いて分析する。Agilent 6230 TOFを、4000Vの陽イオンモード、65Vのスキマー、300Vのフラグメンター、350℃のガス温度、12psiの乾燥ガス、および40psiの噴霧器ガスで稼働させる。MS走査は、1走査/秒で、600m/zから5000m/zまでとする。データは、2分から15分まで収集し、タンパク質の分子量は、TICピークスペクトルを合計した後、Agilent Mass HunterおよびBioconfirm第7.0版を用いたデコンボリューションを合計することによって決定する。非還元試料のデコンボリューションは50000~190000Da.であり、ピーク幅は1.0Da.であり、20回の反復および1Da.のステップとする。
【表2】
【0078】
50μlの1mg/ml抗体抱合体をマウス血清に添加し、300RPMで振盪しながら37℃で0.5~48時間インキュベートすることによって、血清安定性についての試料を調製する。全てのインビボでの試料または血清安定性試料は、結合比の決定に先立って、生体マトリックスからの抽出を必要とする。生体液は、13,000RPMで10分間遠心分離した後、階段勾配を使用したヒトFc選択アフィニティカラムへの適用を受ける。結合した抗体を、移動相A(PBS、pH7.4)中に捕捉し、0.2%(V/V)ギ酸で溶離する。試料画分を手動で収集し、低熱での真空遠心分離を使用して50~100μlに乾燥させる。オフターゲット率は、意図したシステイン以外の部位への生体抱合体の付加を示す。先に説明した手順に従って、次のデータを取得した。
【表3】
【表4】
【0079】
これらのデータは、操作されたシステイン部位124、157、375および/または378でのモノクローナル抗体とホルミル化ペプチド構築物との、マレイミド化学的性質を介した結合が結果的に、オフターゲット率によって実証されるように、抗体へ付加されたシステインの数によって予測されるペプチド:抗体結合比を生じることを実証している。
【0080】
実施例5:ヒトHER2を結合するTMab生体抱合体
TMabのヒトHER2への結合を、ヒトHER2でコーティングされた96ウェル細胞培養プレートを使用したELISAによって決定する。プレートを抱合抗体に80分間曝露し、洗浄して非抱合抗体を除去し、二次抗体と50分間インキュベートする。プレートを洗浄した後、37℃で25分間発色させる。光学密度560で96ウェルプレートリーダーを用いて結合を測定する。本質的に先に説明した手順に従って、次のデータを取得した。
【表5】
抗体構築物は、本明細書の実施例1の表1において説明したのと同じ規則に従って命名されている。
【0081】
これらのデータは、TMabのヒトHer2への結合が、部位124および378にシステインを導入するために重鎖を修飾することによっても影響されず、部位124および378でのシステイン残基へのペプチド-‘183の結合によっても影響されないことを実証している。
【0082】
実施例6:PMN走化性
改変されたBoydenチャンバーアッセイにおいてトランスウェル膜(Corning 3415番)を経た抗体抱合体への一次ヒト多形核好中球(PMN)の移動を観察することによって、走化性を測定する。好中球濃縮製剤からのおよそ2~4×10個の細胞を、3.0umの細孔を有する膜上の上部トランスウェルチャンバーに播種する。下部のトランスウェルチャンバーには、緩衝液とfMLF(陽性対照としてのN-ホルミル-Met-Leu-Pheペプチド)と実験用抗体生体抱合体とからなる溶液を含有している。一部の実験には、fMLFK(Mal[OH]-PEG12)-OH(加水分解ペプチド-‘183)およびH-Met-Leu-Phe-Lys(Mal[OH]-PEG12-OH(加水分解ペプチド-‘844)も陽性対照として含んでいた。トランスウェル中に播種した後、細胞を加湿インキュベーター内で37℃に置く。1時間後、上部チャンバー内のいかなる細胞も取り出し、製造元が指定したプロトコルに従ってCellTiter-Glo(商標)(Promega G7571番)を使用して、下部チャンバーにうまく移動した細胞の割合を定量化する。移動の割合は、(下部チャンバーに移動する細胞の数/最初に播種した細胞の数)として定義する。標準曲線を使用して細胞数を決定する。全てのデータは、各個々の実験についての最大fMLF応答に対する割合に変換する。
【0083】
N-ホルミル修飾は、PMN走化性を刺激するために必要とされる
PMN移動を誘導するN-ホルミル修飾ペプチドの能力を決定するために、N-ホルミル修飾の有無の下でペプチドに初代ヒトPMNを曝露し、PMN移動応答を測定する。本質的に先に説明した手順に従って、PMNは、それぞれ10nM、1nM、および1μMの濃度でfMLF、ペプチド-‘183、およびペプチド-‘844に最大限に応答した(表4)。ペプチド-‘844は、N-ホルミル基を欠いていることを除き、ペプチド-’183と類似しており、ペプチド-‘183とペプチド-’844との用量応答の違いによって示されるように、PMN移動を誘導する点で1000倍効力が低い。値は、10nMのfMLFに対するPMNの移動率として与えられる。
【表6】
【0084】
これらのデータは、ペプチドのN-ホルミル修飾がPMN走化性を誘導するために重要であることを実証している。
【0085】
ホルミルペプチド変異体は好中球走化性を誘導する
初代ヒト好中球をホルミルペプチドに曝露し、PMN移動応答を、細胞計数へと変換する代わりに生の移動値が保持されることを除いて、本質的に上述のとおり測定する。本質的に先に説明したとおりの手順に従って、次のデータを100nMのfMLFに対する割合として提供する。
【表7】
【0086】
これらのデータは、ホルミルペプチドのアミノ酸配列とリンカーとへの修飾がFPR1によって仲介される好中球の移動を誘導することができることを実証している。PEG結合ペプチド[ペプチド-‘183、FRM-021、FRM-029、FRM-030、およびFRM-031]は、1~3nMの曝露濃度で好中球移動を最大限に誘導した。
【0087】
PMN走化性を駆動する上でのN-ホルミルペプチドアミノ酸配列および結合部位の役割
ヒト抗MET IgG4抗体(エミベツズマブ)を修飾して、各HCのCH1-S124またはCH3-A378のいずれかにシステイン残基を含む。修飾した抗体は、ペプチドと抗体の比が約2:1で、ペプチド-‘183またはf-Nle(ホルミル-Nle-Leu-Phe-PEG12-Lys(マレイミド-プロピオニル)-OH)のいずれかに結合する。一次ヒトPMNをこれらの異なる抗体抱合体に曝露し、PMN移動応答を測定する。
【0088】
抗体-ペプチド生体抱合体は次のとおりである:エミベツズマブ-G4-fMLFK-HC-378C、エミベツズマブ-G4-fNle-HC-378C、エミベツズマブ-G4-fMLFK-HC-124C、およびエミベツズマブ-G4-fNle-HC-124C。
【0089】
本質的に先に説明したとおりの手順に従って、fNle抱合抗体は、ペプチド-‘183抱合抗体よりもPMN移動を刺激する効力が低かった。部位A378およびS124でペプチド-‘183に抱合された抗体は、30nMでPMN移動を最大限に誘導し、それぞれfMLF、対照の99.1および117.8パーセントに等しい移動応答を誘導した。対照的に、fNle抗体抱合体は100nMでPMN移動を最大限に誘導し、それぞれfMLF対照の71.7および76.5パーセントに等しい移動応答を結果的に生じた。以下の表5の値を、100nM fMLFに対するPMN移動率として与える。
【表8】
【0090】
これらのデータは、PMN移動を誘導する際に、ペプチド-‘183に抱合された抗体がfNle抗体抱合体よりも有意に強力であることを実証している。A378およびS124部位はいずれも、N-ホルミルペプチド抱合に適している。
【0091】
ペプチドと抗体との抱合比が高いとPMN移動応答が上昇する
CH1-124Cおよび378Cまたは378Cのみでアミノ酸修飾されたヒト抗MET IgG4抗体(エミベツズマブ)を、ペプチド-‘183に抱合体させる。一次ヒトPMNをこれらの抗体抱合体に曝露し、PMN応答を測定する。
【0092】
先に説明したとおり不可欠な手順に従って、エミベツズマブ-G4-fMLFK-HC-124C-378Cは12.5nMで移動を最大限に誘導し、エミベツズマブ-G4-fMLFK-HC-378Cは25nMでの移動を最大限に誘導し、それぞれfMLF対照の119.3および124.3パーセントに等しい移動応答を誘導した(表6)。非抱合抗体は、抱合抗体と比較してPMNの移動を誘導しなかった。値を、3.12nM fMLFに対するPMN移動率として与える。
【表9】
【0093】
これらのデータは、ペプチドと抗体との比率を上昇させると、PMN移動濃度応答の関係性に比例的に影響することを実証している。
【0094】
TMab(トラスツズマブ)およびAME133抗体抱合体
TMab-G1-fMLFK-HC-124C-378C、AME133-G1(IQ)-fMLFK-HC-124C-378C、およびエミベツズマブ-G4-UC-124C-378Cを、本質的に先に説明したとおりのPMN走化性アッセイにおいて研究する。TMab-G1-fMLFK-HC-124C-378CおよびAME133-G1(IQ)-fMLFK-HC-124C-378Cは、それぞれ10nMおよび3nMでPMN移動を最大限に誘導した。エミベツズマブ-G4-UC-124C-378Cは、抱合抗体と比較してPMN移動を誘発しなかった。値を以下の表7に与えており、30nM fMLFに対するPMNの移動率とする。
【表10】
【0095】
これらのデータは、N-ホルミルペプチドに抱合されたTMabおよびAME133抗体がPMN移動を有効に誘導することを実証している。それゆえ、本発明の抱合抗体は、身体の免疫系を利用して癌細胞を攻撃するのに有用であると考えられている。
【0096】
実施例7:PMNの活性酸素種(ROS)の産生
多形核好中球(PMN)は、刺激の際にROSを産生することができ、ミエロペルオキシダーゼのようなROS生成酵素を案有している。PMNの刺激は、脱顆粒を誘導し、病原体に応答するための主要な機序として、事前に形成されたROSおよびROS生成酵素を細胞外環境へと放出する。PMNによるROS産生の刺激は、細菌から真核細胞まで、広範囲の標的を損傷および殺滅するのに十分である。PMNを刺激してROSを産生する最も有効な経路の1つは、N-ホルミルペプチドによるPMN上のホルミルペプチド受容体1(FPR1)の関与を包含する。PMN上の抗体によるFc受容体の関与も、ROS産生を誘導する有効な機序である。
【0097】
ヒト一次PMNによるROSの産生は、ルミノール増幅化学発光を使用して測定される。単離後、0.25%ヒト血清アルブミン(Gemini Bio producst #800-124)および50uMルミノール(SigmaAldrich #123072-2.5G)を補充したカルシウムおよびマグネシウム(Gibco #14025-092)を含有するHBSS中に、PMNを1×10個/mlで懸濁する。次に、100μlの細胞懸濁液(総細胞数1×10個)を、蛍光測定に適した96ウェルプレート(Greiner#655098)の各ウェルへと分注し、温度を37℃まで5分間平衡化する。平衡化後、抗体抱合体の10×溶液をウェルに適用し、1×終濃度を達成する。
【0098】
抗体抱合体の添加直後、化学発光シグナルを、ウェルあたり0.01秒の滞留時間、連続プレート読み取り間の時間合計20秒、総試行時間45分で、37℃に維持されたルミノメーターにおいて記録する(PerkinElmer EnVision Multilabel Plate Reader)。曲線下面積(AUC)スコアを、各曝露条件についての初回ROSバーストの相対的な振幅を示す、各試行の最初の5分間の発光シグナルを使用して計算する。ホルミル-Met-Leu-Phe(fMLF)ペプチドを陽性対照として使用し、シクロスポリンHをFPR1阻害剤として使用する。値は、最大曝露濃度でのfMLF対照の割合として表示する((AUC曝露条件/AUC fMLF)×100)。
【0099】
一次ヒトPMNをペプチドまたは生体抱合体に曝露し、本質的に先に説明したとおりルミノール増幅化学発光を使用してROS産生を測定した。本質的に先に説明した手順に従って、示された操作されたシステイン(複数可)でモノクローナル抗体に抱合されたN-ホルミルペプチドは、一次ヒト多形核好中球によって発現するホルミルペプチド受容体と有効に結合し、細胞毒性活性酸素種の産生を刺激する。抱合されたN-ホルミルペプチドによるROS産生の刺激は、FRP1アンタゴニストであるシクロスポリンHによるFPR1シグナル伝達の阻害が、N-ホルミルペプチド抱合抗体に応じてPMN ROS産生を有意に低減させたので、主としてFPR1依存的であった。具体的な抗体抱合体を使用する例を以下に示す。
【0100】
ペプチドのN-ホルミル修飾
一次ヒトPMNをペプチドに曝露し、本質的に先に説明するとおり、ルミノール増幅化学発光を使用してROS産生を測定した。データを以下の表8に示し、抗体抱合体への曝露後5分間に記録した発光についての曲線下面積計算を使用して、10uM fMLFに対する割合として、データを報告する。
【表11】
【0101】
これらのデータは、ペプチド-‘183へ曝露したPMNが10nM~10uMの濃度のfMLFについて観察されたよりも多くのROSを産生したことを実証している。ペプチド-‘844刺激ROS産生は、fMLFについて観察されたROS産生よりも実質的に少なく、PMNによるROS産生の有効な刺激にはペプチドN-ホルミル修飾が必要であることを示している。
【0102】
ホルミルペプチド変異体は好中球のROS産生を誘導する
初代ヒト好中球を、合成アミノ酸を含むアミノ酸置換を有するホルミルペプチド変異体へ曝露し、本質的に先に説明したとおり、ルミノール増幅化学発光を使用してROS産生を測定した。データを以下の表8bに示しており、試薬への曝露後5分間に記録された発光についての曲線下面積計算を使用して、3000nM fMLFに対する割合としてデータを報告する。EC50値を、Graphpad PRISMのBest-Fit値を使用して計算した。
【表12】
【0103】
これらのデータは、ROS産生を誘導するための例示されたホルミルペプチド変異体の効力を実証している。非コード化アミノ酸の組込みは、ペプチドの安定性を改善することができ、非コード化アミノ酸変異体を組み込んでホルミルペプチドとFPR1との間の結合を強化し、結果的に効力を上昇させることが期待される。
【0104】
マウス好中球FPR-1は、fMLF誘導体よりもfMIFLペプチドおよび抗体抱合体に対してより敏感である。
骨髄から精製したマウス好中球をホルミルペプチドまたは抗体抱合体へ曝露し、本質的に先に説明したとおりルミノール増幅化学発光を使用してROS産生を測定した。データを以下の表8cに示し、試薬への曝露後5分間に記録した発光についての曲線下面積計算を使用して、10000nM fMLFに対する割合としてデータを報告する。
【表13】
【0105】
これらのデータは、マウス好中球がfMLFペプチドおよび抗体抱合体に対してfMLF変異体よりも感受性が有意に高いことを実証している。ヒトにおいて、fMLFは、最も強力なFPR1アゴニストのうちの1つであるが、マウス実験では効力が有意に低い。マウスおよびヒトの好中球のFPR1間のこの関係は、FPR1アゴニストが可溶性ペプチドであるかどうか、または抗体に抱合されているかどうかに関係なく成り立つ。
【0106】
TMab生体抱合体
一次ヒトPMNをTMab生体抱合体に曝露し、本質的に先に説明したとおりルミノール増幅化学発光を使用してROS産生を測定した。データを以下の表9に示しており、試薬への曝露後5分間に記録した発光についての曲線下面積計算を使用して、1000nM fMLFに対する割合としてデータを報告する。
【表14】
【0107】
これらのデータは、1000nM TMab-G1-fMLFK-HC-124C-378Cに曝露したPMNが、fMLF対照の70.1%に等しいレベルで、TMab-G1-UC-HC-124C-378Cよりも非常に高いレベルでROSを産生したことを実証している。
【0108】
エミベツズマブ抱合体
一次ヒトPMNをエミベツズマブ抱合体に曝露し、本質的に先に説明したとおり、ルミノール増幅化学発光を使用してROS産生を測定した。データを以下の表10に示しており、抗体抱合体への曝露後5分間に記録した発光についての曲線下面積計算を使用して、1000nM fMLFに対する割合としてデータを報告する。
【表15】
【0109】
これらのデータは、1000nMのエミベツズマブ-G4-fMLFK-HC-124C-378Cおよびエミベツズマブ-G4-fMLFK-HC-378Cに曝露したPMNが、それぞれ1000nM fMLF対照の62.2%および48.9%に等しいレベルでROSを産生したことを実証している。1000nMのエミベツズマブ-G4-UC-HC-124C-378Cへの曝露は、対照のわずか32.2%に等しい低いROS産生を生じた。
【0110】
AME133(抗CD20)抱合体
一次ヒトPMNをAME133抗体抱合体に曝露し、本質的に先に説明したとおりルミノール増幅化学発光を使用してROS産生を測定した。データを以下の表11に示しており、抗体抱合体への曝露後5分間に記録した発光についての曲線下面積計算を使用して、1000nM fMLFに対する割合としてデータを報告する。
【表16】
【0111】
これらのデータは、1000nM AME133-G1(IQ)-fMLFK-HC-124C-378CおよびAME133-UCに曝露したPMNが、それぞれ対照の77.9%および13.9%に等しいレベルのROSを産生したことを実証している。
【0112】
抗体抱合体およびFPR1シグナル伝達の阻害
抱合抗体が非抱合抗体よりも多くのROS産生を誘起するかどうかを決定するために、ROS産生を本質的に先に説明したとおり測定する。全てのペプチドを、終濃度300nMで試験する。PMNを1uMのシクロスポリンHとともに30分間プレインキュベートした後、ペプチドを添加する。
【0113】
緩衝液は、0.25%のヒト血清アルブミン(Gemini Bio producst#800-124)および50uM ルミノール(SigmaAldric#123072-2.5G)を補充した、カルシウムおよびマグネシウムを含有するHBSS(Gibco#14025-092)とする。値を以下の表12aに報告しており、抗体抱合体への曝露後5分間に記録した発光についての曲線下fMLF面積に対する割合として表す。
【表17】
【0114】
これらのデータは、fMLFKに抱合された抗体が、非抱合抗体と比較して、ヒトPMNから実質的に多量のROS産生を誘起することを実証している。データは、PMNをFPR1アンタゴニストであるシクロスポリンHで前処理すると、抗体生体抱合体におけるROSレベルの実質的な低減をもたらすが、非抱合体対照においてはそうではないことも実証している。
【0115】
FcγR3結合を増強する抗体突然変異は、N-ホルミルペプチド生体抱合体に応じてFPR1仲介性ROS産生を上昇させる
初代ヒト好中球を、FcγR3に対する親和性を上昇させるFc領域の突然変異(247I、339Q、±332E突然変異)の有無の下で、Tmab N-ホルミルペプチド抱合体に曝露する。ROS産生を、本質的に先に説明したとおりルミノール増幅化学発光を使用して測定する。データを以下の表12bに示しており、試薬への曝露後5分間に記録した発光の曲線下面積計算を使用して、1000nM fMLFに対する割合としてデータを報告する。FPR1仲介性ROS産生についてのEC50値を、Graphpad PRISMにおけるBest-Fit値を使用して計算する。
【表18】
【0116】
これらのデータは、好中球によるFcRの関与を最適化することによって、ROS産生をさらに増強するために、N-ホルミル-Met生体抱合体を操作することができることを実証している。IQおよびIQEアミノ酸置換を有するFc最適化Tmab生体抱合体は、野生型Tmab IgG1抱合体と比較して好中球による刺激されたROS産生を増強し、Tmab-G1-fMLFK-HC-124C-378C-IQおよびTmab-G1-fMLFK-HC-124C-378C-IQE変異体はそれぞれ、Tmab-G1-fMLFK-HC-124C-378Cと比較したときにEC50が2.98倍および14.9倍改善することを示した。PMN細胞殺滅機序の活性化におけるFc操作の改善は、好中球による抱合抗体仲介性細胞殺滅に実質的な利益をもたらすであろうと予想される。
【0117】
化合物リンカーの長さ
一次ヒト好中球を、種々の長さのPEGリンカーを有するN-ホルミルペプチドTmab抱合体へ曝露し、本質的に先に説明したとおりルミノール増幅化学発光を使用してROS産生を測定した。データを以下の表12cに示しており、試薬への曝露後5分間に記録した発光の曲線下面積計算を使用して、3000nM FRM-023(配列番号40)に対する割合としてデータを報告する。FPR1を介したROS産生についてのEC50値を、Graphpad PRISMにおけるBest-Fit値を使用して計算した。
【化12】
【0118】
これらのデータは、N-ホルミルペプチド抱合体が、種々の大きさのPEGを有するFPR1アゴニストとして機能性を維持していることを実証している。
【0119】
実施例8:抗体抱合体は、好中球媒介腫瘍細胞殺滅を可能にする
腫瘍に対するPMNを標的とし、腫瘍細胞殺滅に関与する抗体化合物の能力を決定する。TMab、エミベツズマブ、およびAME133抗体抱合体を腫瘍細胞殺滅においてPMNを関与させる能力について、固形腫瘍および液性腫瘍で評価する。
【0120】
PMNによる腫瘍細胞の抗体標的殺滅は、xCelligenceリアルタイム細胞分析システム(ACEA Biosciences)を使用して測定する。このシステムは、培養プレートの成長表面上のセンサー間の電気インピーダンスを記録することによって、細胞の生存率をリアルタイムで監視する。並列ウェルの細胞を制御するために正規化された正規化細胞指数(NCI)を報告し、相対的な培養生存率について制御することができるようにする。NCIを、腫瘍培養物を標的抗体とともにインキュベートした後、15分間隔で24時間連続的に測定し、10:1のPMNと腫瘍細胞との比でヒト初代PMNを添加します。腫瘍細胞を播種するのに先立って、xCelligence 96ウェルE-Plateを背景シグナルについて較正する。各ウェルに50μlの培地(RPMI+10%FBS+抗生物質)を入れ、xCelligenceプレートリーダーを備えた加湿インキュベーター内でEプレートを37℃に平衡化する。
【0121】
平衡化後、E-Plateウェルの背景の変動を測定する。培養腫瘍細胞株を分離し、計数し、培養培地中で1×10個/mlの最終密度に希釈し、100μlの希釈腫瘍細胞をE-Plateウェルに播種した。E-PlateをxCelligenceリーダーに戻し、ベースラインを確立するために15分の間隔で細胞指数を一晩測定する。
【0122】
翌日、PMNを新鮮なヒト血液試料から単離し、培養培地中の最終密度を2×10個/mlにする。一晩記録した後、E-PlateをxCelligenceリーダーから取り出し、22μlの10×抗体溶液または緩衝液を指定のウェルに添加する。15分後、50μlの希釈PMN(総細胞数1×10個)または緩衝液を指定のウェルに添加した。PMNを添加した直後に、E-PlateをxCelligenceリーダーに戻し、細胞指数を最長72時間測定した。本実験の完了後、細胞指数を抗体の添加直前の時点に正規化する(NCI)。
【0123】
NCIの割合は、((試料のNCI)/(腫瘍細胞単独のNCI)×100)として定義する。非接着性腫瘍細胞(Daudi細胞)については、xCelligence免疫療法キット-B細胞殺滅アッセイ(ACEA#8100004)を使用して、製造元のプロトコルに従って腫瘍細胞をE-Plateウェルに固定する。固定および背景の獲得の後、プロトコルを先に示したとおり実施する。
【0124】
以下に示すデータは、N-ホルミルペプチドに抱合された抗体が腫瘍細胞のPMN仲介性殺滅につながることを実証している。
【0125】
N-ホルミル-Met-Leu-Pheペプチド
2つのN-ホルミル化ペプチドであるf-Met-Leu-PheおよびPeptide-‘183をSKOV3腫瘍細胞殺滅アッセイにおいて査定して、モノクローナル抗体による腫瘍標的化の非存在下でのPMN仲介性腫瘍細胞殺滅に及ぼすN-ホルミルメチオニンペプチドの影響を決定する。
【0126】
NCIの割合の値は、指定された条件に2時間曝露した後のSKOV3細胞の相対的な生存率を表す。値を、SKOV3対照±標準偏差に正規化された平均の割合として与え、全ての条件についてn=4とする。統計的有意性を、一元配置分散分析に続いて、ポストホックダネットの多重比較検定と「+PMN」によって決定する。
【化13】
【0127】
これらのデータは、PMNの非存在下では、ペプチドが腫瘍細胞の生存率に及ぼす統計的な影響がなかったことを実証している。PMNの存在下では、これらのペプチドは最高濃度のペプチドでのみNCIの低減を引き起こした。
【0128】
TMab
付着性HER2(+)SKOV3ヒト腺癌腫瘍細胞をおよそ24時間播種し、次にTMab-G1-fMLFK-HC-124C-378CまたはTMab-G1-UC-HC-124C-378Cとともにインキュベートし、10:1のエフェクター標的対細胞比で初代ヒトPMNに曝露した。
【0129】
NCIの割合の値は、指定された条件への2時間曝露後のSKOV3細胞の相対的な生存率を表す。値を以下の表14に与えており、SKOV3対照に対して正規化された平均の割合±標準偏差として表す。全ての条件についてN=4とする。
【化14】
【0130】
これらのデータは、2時間後、10nMのTMab-G1-fMLFK-HC-124C-378Cとともにインキュベートし、PMNに曝露した細胞が、対照細胞の63.5±9.9%パーセント(p値<0.0001)に等しい正規化した細胞指数(NCI)の減少を示したのに対し、10nMのTMab-G1-UC-HC-124C-378Cに曝露した細胞は、対照細胞の103±1.2%のNCIを維持した(統計的に有意ではない)ことを実証している。TMab-G1-fMLFK-HC-124C-378Cは、PMNの非存在下で2時間後に腫瘍細胞の生存率を低減させず、抗体なしのPMNの添加はSKOV3腫瘍細胞の生存率に影響しなかった。
【0131】
エミベツズマブ
付着したMET(+)A549ヒト肺癌細胞をおよそ24時間播種し、次に、エミベツズマブ-G4-fMLFK-HC-124C-375Cまたはエミベツズマブ-G4-UC-HC-124C-375Cとともにインキュベートし、一次ヒトPMNに10:1のエフェクター対標的細胞比で曝露する。
【0132】
本質的に先に説明したとおりの手順に従って、次のデータを取得したので、表15に示す。
【表19】
【0133】
NCI値の割合の値は、指定した条件に2時間曝露した後のA549細胞の相対的な生存率を表す。値は、「+PMN」対照±標準偏差に正規化された平均の割合として与え、全ての条件についてn=4とする。統計的有意性は、一元配置分散分析とそれに続くポストホックダネットの多重比較検定および「+PMN」によって決定した。NCI:正規化された細胞指数、PMN:一次ヒト多形核好中球、ns:有意ではない。
【0134】
これらのデータは、PMNの存在下で10nMエミベツズマブ-G4-fMLFK-HC-124C-375Cに曝露した培養物が、2時間のインキュベーション後に対照細胞の87.7±0.9%に等しいNCIの低減を示したのに対し、エミベツズマブ-G4-UC-HC-124C-375C処理細胞が、対照細胞のNCI102.5±1.9%を維持したことを実証している。
【0135】
AME133の例
非接着性のCD20+Daudi Bリンパ芽球細胞をxCelligence免疫療法キット(ACEA#8100004)で固定し、製造元のプロトコルに従って腫瘍細胞をE-Plateウェルに固定し、以下の表16に示す条件に曝露する。NCIの割合の値は、指定した条件に6時間曝露した後のDAUDI細胞の相対的な生存率を表す。値を、「緩衝液対照」に正規化された平均の割合±標準偏差として与え、全ての条件についてn=4とする。統計的有意性を、一元配置分散分析およびそれに続くポストホックダネットの多重比較検定対「+PMN」によって決定した。
【表20】
【0136】
これらのデータは、30nM AME133-G1(IQ)-fMLFK-124C-378Cに曝露した培養物では、6時間のインキュベーション後、対照細胞の20±2.1%(p値<0.0001)に等しくNClを低減させたのに対し、30nM AME133-G1(IQ)-UC-124C-378Cは、対照細胞の97.3±1.2%のNCIを維持した。AME133-G1(IQ)-fMLFK-124C-378CおよびAME133-G1(IQ)-UC-124C-378Cは、PMNの非存在下で腫瘍細胞の生存率を低減させなかった。しかしながら、抗体の非存在下でDaudi細胞をPMNに曝露すると、腫瘍培養NCIが対照細胞の66.9±5.2%に低減した(p値<0.0001)。
【0137】
単一抗体抱合体の複数のシステインへのホルミルペプチドの抱合は効力を上昇させる
一次ヒト好中球を、異なる数の操作されたシステイン結合部位を有するIgG4抗体抱合体に曝露し、本質的に先に説明したとおりルミノール増幅化学発光を使用してROS産生を測定する。本質的に先に説明したとおりの手順に従って、次のデータを取得した。
【表21】
【0138】
表17のデータを、試薬への曝露後5分間に記録した発光についての曲線下面積計算を使用して、1000nM fMLFに対する割合として報告する。
【0139】
これらのデータは、fMLFKに抱合された抗体が、追加の抱合部位でより強力になれることを実証している。
【0140】
実例となる実施形態
次のものは、本開示の種々の実施形態を表す本開示による実例となる実施形態のリストを含む。
【0141】
これらの実例となる実施形態は、網羅的であること、または本開示を、開示された正確な形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、これらの実例となる実施形態は、当業者がこれらの教示を利用することができるように、本開示をさらに説明するのを助けるために提供される。
【0142】
1.IgG重鎖定常領域と軽鎖定常領域とを含む抗体であって、該抗体が、次の残基、すなわちC1ドメインにおける残基124、C1ドメインにおける残基157、C1ドメインにおける残基162、C2ドメインにおける残基262、C3ドメインにおける残基375、C3ドメインにおける残基373、C3ドメインにおける残基397、C3ドメインにおける残基415、Cカッパドメインにおける残基156、Cカッパドメインにおける残基171、Cカッパドメインにおける残基191、Cカッパドメインにおける残基193、Cカッパドメインにおける残基202、またはCカッパドメインにおける残基208のうちの少なくとも1つにシステインを含む、抗体。
【0143】
2.該抗体が該C1ドメインにおける残基124にシステインを含み、該C1ドメインにおける残基157および残基162ならびに該C3ドメインにおける残基375および残基378のうちの1つではあるが全てではない残基にシステインをさらに含む、実施形態1に記載の抗体。
【0144】
3.該抗体が、該CH1ドメインにおける残基157にシステインを含む、実施形態1または2に記載の抗体。
【0145】
4.該抗体が、該CH3ドメインの残基375にシステインを含む、実施形態2に記載の抗体。
【0146】
5.該抗体が該CH3ドメインにおける残基378にシステインを含む、実施形態2に記載の抗体。
【0147】
6.該IgG重鎖定常領域が、ヒト、マウス、ラット、またはウサギIgG定常領域である、実施形態1~4のいずれか1つに記載の抗体。
【0148】
7.該IgG重鎖定常領域がヒトIgG1またはヒトIgG4アイソタイプである、実施形態5に記載の抗体。
【0149】
8.該IgG重鎖定常領域がヒトIgG1である、実施形態6に記載の抗体。
【0150】
9.該重鎖定常領域が、配列番号17、18、19、または52のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG1である、実施形態1に記載の抗体。
【0151】
10.該重鎖定常領域が、配列番号20、21、または53のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG1である、実施形態2に記載の抗体。
【0152】
11.該IgG1重鎖定常領域が、残基247で置換されたイソロイシンと、残基339で置換されたグルタミンと、場合により残基332で置換されたグルタミン酸とをさらに含む、実施形態7~9のいずれか1つに記載の抗体。
【0153】
12.該IgG重鎖定常領域がヒトIgG4である、実施形態6に記載の抗体。
【0154】
13.該重鎖定常領域が、配列番号12、13、14、54、または55のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG4である、実施形態1に記載の抗体。
【0155】
14.該重鎖定常領域が、配列番号15、16、56、または57のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG4である、実施形態2に記載の抗体。
【0156】
15.該IgG4重鎖定常領域が、残基228で置換されたプロリンと、残基234で置換されたアラニンと、残基235で置換されたアラニンと、残基339で置換されたグルタミンとをさらに含む、実施形態11~13のいずれか1つに記載の抗体。
【0157】
16.2つの重鎖と2つの軽鎖とを含み、各重鎖が、次の残基、すなわちC1ドメインにおける残基124、C3ドメインにおける残基375、およびC3ドメインにおける残基373のうちの1つにシステインを含むIgG重鎖定常領域を含む、実施形態1に記載の抗体。
【0158】
17.該抗体が、各重鎖のC1ドメインにおける残基124にシステインを含み、C3ドメインにおける残基375および残基378、ならびにC1ドメインにおける残基157のうちの1つではあるが全てではない残基にシステインを含む、実施形態15に記載の抗体。
【0159】
18.該抗体が、各重鎖のC3ドメインにおける残基375にシステインを含む、実施形態16に記載の抗体。
【0160】
19.該抗体が、各重鎖のC3ドメインの残基378にシステインを含む、実施形態16に記載の抗体。
【0161】
20.該IgG重鎖定常領域のそれぞれが、ヒト、マウス、ラットまたはウサギIgG定常領域である、実施形態15~18のいずれか1つに記載の抗体。
【0162】
21.該IgG重鎖定常領域のそれぞれがヒトIgG1またはヒトIgG4アイソタイプである、実施形態19に記載の抗体。
【0163】
22.該IgG重鎖定常領域のそれぞれがヒトIgG1である、実施形態20に記載の抗体。
【0164】
23.該重鎖定常領域のそれぞれが、配列番号17、18、19、または52のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG1である、実施形態15に記載の抗体。
【0165】
24.該重鎖定常領域のそれぞれが、配列番号20、21、または53のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG1である、実施形態16に記載の抗体。
【0166】
25.該IgG1重鎖定常領域のそれぞれが、残基247で置換されたイソロイシンと、残基339で置換されたグルタミンと、場合により残基332で置換されたグルタミン酸とをさらに含む、実施形態21~23のいずれか1つに記載の抗体。
【0167】
26.該IgG重鎖定常領域のそれぞれがヒトIgG4である、実施形態20に記載の抗体。
【0168】
27.該重鎖定常領域のそれぞれが、配列番号12、13、14、54、または55のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG4である、実施形態15に記載の抗体。
【0169】
28.該重鎖定常領域のそれぞれが、配列番号15、16、56、または57のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG4である、実施形態16に記載の抗体。
【0170】
29.該IgG4重鎖定常領域のそれぞれが、残基228で置換されたプロリンと、残基234で置換されたアラニンと、残基235で置換されたアラニンと、残基339で置換されたグルタミンとをさらに含む、実施形態25~27のいずれか1つに記載の抗体。
【0171】
30.各IgG定常領域の残基124、157、162、375または378の各システインが、マレイミド-PEGリンカーを介してN-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合されている、実施形態1~28のいずれか1つに記載の抗体。
【0172】
31.各IgG定常領域の残基124のシステインと、各IgG定常領域の残基157、162、375、および378のうちの1つではあるが全てではない残基のシステインとを含み、各IgG定常領域の残基124および157、162、375、または378の各システインが、次の式のマレイミド-PEGリンカーを介してN-ホルミル-メチオニンペプチドに抱合され、
【化15】
該リンカーが、該IgG定常領域の残基124および157、162、375、または378のシステインへのチオエーテル結合を介して該抗体に、かつペプチドのC末端リジンのイプシロンアミノ基におけるアミド結合を介して該N-ホルミル-メチオニンペプチドに共有結合しており、式中、n=6~24である、実施形態29に記載の抱合抗体。
【0173】
32.各IgG定常領域の残基124のシステインおよび残基375のシステインが、該マレイミド-PEGリンカーを介して該N-ホルミルメチオニンペプチドに抱合されている、実施形態30に記載の抱合抗体。
【0174】
33.各IgG定常領域の残基124のシステインおよび残基378のシステインが、該マレイミド-PEGリンカーを介して該N-ホルミルメチオニンペプチドに抱合されている、実施形態30に記載の抱合抗体。
【0175】
34.n=12である、実施形態30~32のいずれか1つに記載の抱合抗体。
【0176】
35.該N-ホルミルメチオニンペプチドが、配列番号22、配列番号23、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、または配列番号41によって与えられる、実施形態29~33のいずれか1つに記載の抱合抗体。
【0177】
36.実施形態29~34のいずれか1つに記載の抱合抗体と、1つ以上の医薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【0178】
37.固形癌または液性腫瘍を治療する方法であって、それを必要とする患者に、実施形態29~35のいずれか1つに記載の有効量の抱合抗体またはその医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0179】
38.乳癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、筋肉癌、骨癌、中皮腫、血管癌、線維癌、白血病またはリンパ腫を治療するための、実施形態36に記載の方法。
【0180】
39.療法における使用のための、実施形態29~35のいずれか1つに記載の抱合抗体。
【0181】
40.固形癌または液性腫瘍の治療における使用のための、実施形態29~35のいずれか1つに記載の抱合抗体。
【0182】
41.乳癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、筋肉癌、骨癌、中皮腫、血管癌、線維癌、白血病またはリンパ腫の治療における使用のための、実施形態39に記載の抱合抗体。
【0183】
42.少なくとも1つの操作されたシステインを含む抗体である化合物であって、該抗体が該免疫系の1つ以上の細胞を誘引および/または活性化することができる化学誘引物質にリンカーによって抱合されており、該化学誘引物質が該抗体内の1つ以上のシステイン残基で該抗体に抱合されている、化合物。
【0184】
43.該抗体が、モノクローナル抗体または二重特異性抗体である、実施形態42に記載の化合物。
【0185】
44.該抗体が、モノクローナル抗体である、実施形態42に記載の化合物。
【0186】
45.該抗体が、二重特異性抗体である、実施形態42記載の化合物。
【0187】
46.該システインが、抗体可変領域内にある操作されたシステインである、実施形態42~45のいずれか1つに記載の化合物。
【0188】
47.該システインが、抗体定常領域内にある操作されたシステインである、実施形態42~45のいずれか1つに記載の化合物。
【0189】
48.該システインが、該CH1またはCH3ドメイン内にある操作されたシステインである、実施形態42~45のいずれか1つに記載の化合物。
【0190】
49.該システインが、天然のセリン、バリン、アラニン、グルタミン、アスパラギン、トレオニン、またはグリシンを置き換える位置で操作される、実施形態42~48のいずれか1つに記載の化合物。
【0191】
50.該システインが、天然のセリン、バリン、またはアラニンを置き換える位置で操作される、実施形態49に記載の化合物。
【0192】
51.操作されたシステインの総数が2~6である、実施形態42~50のいずれか1つに記載の化合物。
【0193】
52.該化合物が、該免疫系の1つ以上の細胞を誘引および活性化することができる、実施形態42~51のいずれか1つに記載の化合物。
【0194】
53.該免疫系が適応免疫系である、実施形態42~52のいずれか1つに記載の化合物。
【0195】
54.該免疫系が自然免疫系である、実施形態42~52のいずれか1つに記載の化合物。
【0196】
55.該免疫系の該1つ以上の細胞が、好中球である、実施形態42~52のいずれか1つに記載の化合物。
【0197】
56.該免疫系のより多数の細胞のうちの1つが、マクロファージである、実施形態42~52のいずれか1つに記載の化合物。
【0198】
57.該リンカーがPEGリンカーまたはMal-Dapリンカーである、実施形態42~56のいずれか1つに記載の化合物。
【0199】
58.該リンカーがPEGリンカーである、実施形態57に記載の化合物。
【0200】
59.該リンカーがMal-Dapリンカーである、実施形態57に記載の化合物。
【0201】
60.該抗体がIgG重鎖定常領域と軽鎖定常領域とを含み、該定常領域が次の残基、すなわちC1ドメインにおける残基124、C1ドメインにおける残基157、C1ドメインにおける残基162、C2ドメインにおける残基262、C3ドメインにおける残基375、C3ドメインにおける残基373、C3ドメインにおける残基397、C3ドメインにおける残基415、Cカッパドメインにおける残基156、Cカッパドメインにおける残基171、Cカッパドメインにおける残基191、Cカッパドメインにおける残基193、Cカッパドメインにおける残基202、またはCカッパドメインにおける残基208のうちの少なくとも1つにある操作されたシステインを含む、実施形態42~58のいずれか1つに記載の化合物。
【0202】
61.該抗体が、C1ドメインにおける残基124にシステインを含み、C1ドメインにおける残基157および162ならびにC3ドメインにおける残基375および378のうちの1つではあるが全てではない残基にシステインをさらに含む、実施形態60に記載の化合物。
【0203】
62.該抗体がCH1ドメインにおける残基157にシステインを含む、実施形態61に記載の化合物。
【0204】
63.該抗体がCH3ドメインにおける残基375にシステインを含む、実施形態61に記載の化合物。
【0205】
64.該抗体がCH3ドメインにおける残基378にシステインを含む、実施形態61に記載の化合物。
【0206】
65.該IgG重鎖定常領域が、ヒト、マウス、ラット、またはウサギIgG定常領域である、実施形態42~64のいずれか1つに記載の化合物。
【0207】
66.該IgG重鎖定常領域がヒトIgG1またはヒトIgG4アイソタイプである、実施形態65に記載の化合物。
【0208】
67.該IgG重鎖定常領域がヒトIgG1である、実施形態66に記載の化合物。
【0209】
68.重鎖定常領域が、配列番号17、18、19、または52のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG1である、実施形態67に記載の化合物。
【0210】
69.該重鎖定常領域が、配列番号20、21、または53のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG1である、実施形態67に記載の化合物。
【0211】
70.該IgG1重鎖定常領域が、残基247で置換されたイソロイシンと、残基339で置換されたグルタミンと、場合により残基332で置換されたグルタミン酸とをさらに含む、実施形態66~69のいずれか1つに記載の化合物。
【0212】
71.該IgG重鎖定常領域がヒトIgG4である、実施形態66に記載の化合物。
【0213】
72.該重鎖定常領域が、配列番号12、13、14、54、または55のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG4である、実施形態71に記載の化合物。
【0214】
73.該重鎖定常領域が、配列番号15、16、56、または57のアミノ酸配列によって与えられるヒトIgG4である、実施形態71に記載の化合物。
【0215】
74.該IgG4重鎖定常領域が、残基228で置換されたプロリンと、残基234で置換されたアラニンと、残基235で置換されたアラニンと、残基339で置換されたグルタミンとをさらに含む、実施形態71~73のいずれか1つに記載の抗体。
【0216】
75.該化学誘引物質が、f-Metペプチド、小分子FPR-1アゴニスト、PRRアゴニスト、ペプチド模倣体、N-ウレイド-ペプチド、または細菌糖である、実施形態42~74のいずれか1つに記載の化合物。
【0217】
76.該化学誘引物質が、N-ホルミルメチオニンペプチドである、実施形態75に記載の化合物。
【0218】
77.該N-ホルミルペプチドが、配列番号22、配列番号23、配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、または配列番号41によって与えられる、実施形態76に記載の化合物。
【0219】
78.該システインが、マレイミド-PEGリンカーを介して化学誘引物質に抱合されている、実施形態42~78のいずれか1つに記載の化合物。
【0220】
79.該システインが、次の式のマレイミド-PEGリンカーを介して化学誘引物質に抱合されており、
【化16】
該リンカーが、該システインへのチオエーテル結合を介して該抗体に、かつペプチドのC末端リジンのイプシロンアミノ基のアミド結合を介して該化学誘引物質に共有結合しており、式中、n=2~24である、実施形態78に記載の化合物。
【0221】
80.n=12である、実施形態79に記載の化合物。
【0222】
81.実施形態42~80のいずれか1つに記載の抗体と、1つ以上の医薬上許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【0223】
82.固形癌または液性腫瘍を治療する方法であって、それを必要とする患者に、実施形態42~81のいずれか1つに記載の有効量の化合物またはその医薬組成物を投与することを含む、方法。
【0224】
83.乳癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、筋肉癌、骨癌、中皮腫、血管癌、線維癌、白血病またはリンパ腫を治療するための、実施形態82に記載の方法。
【0225】
84.療法における使用のための、実施形態42~80のいずれか1つに記載の化合物または塩。
【0226】
85.固形癌または液性腫瘍の治療における使用のための、実施形態42~80のいずれか1つに記載の化合物。
【0227】
86.乳癌、肺癌、前立腺癌、皮膚癌、大腸癌、膀胱癌、腎癌、肝癌、甲状腺癌、子宮内膜癌、筋肉癌、骨癌、中皮腫、血管癌、線維癌、白血病またはリンパ腫の治療における使用のための、実施形態42~80のいずれか1つに記載の化合物。
【0228】
87.化合物R-P-P-P-NH(CHCHO)CHCH-Yであって、式中、
(i)Rが、HC(=O)-もしくはRNHC(=O)NH-であり、
(ii)Rが、置換もしくは非置換であってもよいC~C10アリールであり、
(iii)Pが、MetもしくはNleであり、
(iv)Pが、ペプチドもしくはペプチド模倣体であり、
(v)Pが、イプシロンアミノアシル化したリジンであり、
(vi)nが、6~24の整数であり、
(vii)Yが、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミド、もしくはビニルスルホンである、化合物R-P-P-P-NH(CHCHO)CHCH-Y、
(viii)またはその塩。
【0229】
88.化合物R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-P―Yであって、式中、
(i)Rが、HC(=O)-もしくはRNHC(=O)NH-であり、
(ii)Rが、置換もしくは非置換であってもよいC~C10アリールであり、
(iii)Pが、MetもしくはNleであり、
(iv)Pが、ペプチドもしくはペプチド模倣体であり、
(v)Pが、イプシロンアミノアシル化したリジンであり、
(vi)nが、6~24の整数であり、
(vii)Yが、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドもしくはビニルスルホンである、化合物R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-P―Y、
(viii)またはその塩。
【0230】
89.化合物R-Met-P-NH(CHCHO)CHCH-X-Yであって、式中
(i)Rが、HC(=O)-もしくはRNHC(=O)NH-であり、
(ii)Rが、フェニル、4-クロロフェニル、4-メトキシフェニル、p-トリル、m-トリル、アリール、置換アリール、もしくは2-アリルであり、
(iii)Pが、ペプチドもしくはペプチド模倣体であり、
(iv)Xが、C~C10ジアミノアルキルであり、かつ
(v)Yが、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドもしくはビニルスルホンである、化合物R-Met-P-NH(CHCHO)CHCH-X-Y、
(xi)またはその塩。
【0231】
90.化合物[R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-]-Q-X-Yであって、式中、
(i)Rが、HC(=O)-もしくはRNHC(=O)NH-であり、
(ii)Rが、置換もしくは非置換であってもよいC~C10アリールであり、
(iii)Pが、MetもしくはNleであり、
(iv)Pが、ペプチドもしくはペプチド模倣体であり、
(v)nが、6~24の整数であり、
(vi)Qが、Lys、Orn、Dap、Dab、もしくはアルファアミノ基および側鎖アミノ基においてアシル化されることができる他のアミノ二官能性残基であり、
(vii)Xが、C~C10ジアミノアルキルであり、かつ
(viii)Yが、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドもしくはビニルスルホンである、化合物[R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-]-Q-X-Y、
(ix)またはその塩。
【0232】
91.化合物[[R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-]-(Q)―Q-X-Yであって、式中、
(i)Rが、HC(=O)-もしくはRNHC(=O)NH-であり、
(ii)Rが、置換もしくは非置換であってもよいC~C10アリールであり、
(iii)Pが、MetもしくはNleであり、
(iv)Pが、ペプチドもしくはペプチド模倣体であり、
(v)nが、6~24の整数であり、
(vi)Qが、Lys、Orn、Dap、Dab、もしくはアルファアミノ基および側鎖アミノ基においてアシル化されることができる他のアミノ二官能性残基あり
(vii)Xが、C~C10ジアミノアルキルであり、かつ
(viii)Yが、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドもしくはビニルスルホンである、化合物[[R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-]-(Q)―Q-X-Y、
(ix)またはその塩。
【0233】
92.化合物[[[R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-]-(Q)-(Q)-Q-X-Yであって、式中、
(i)Rが、HC(=O)-もしくはRNHC(=O)NH-であり、
(ii)Rが、置換もしくは非置換であってもよいC~C10アリールであり、
(iii)Pが、MetもしくはNleであり、
(iv)Pが、ペプチドもしくはペプチド模倣体であり、
(v)nが、6~24の整数であり、
(vi)Qが、Lys、Orn、Dap、Dab、もしくはアルファアミノ基および側鎖アミノ基でアシル化されることができる他のアミノ二官能性残基であり
(vii)Xが、C~C10ジアミノアルキルであり、かつ
(viii)Yが、マレイミド、マレイミド-ジアミノプロピオン酸、ヨードアセトアミドもしくはビニルスルホンである、化合物[[[R-P-P-NH(CHCHO)CHCH-]-(Q)-(Q)-Q-X-Y、
(ix)またはその塩。
【0234】
93.Pが、X-X-X-Xによって与えられ、かつ
(i)Xが、Leu、Ile、Nle、ジエチルグリシン、またはジプロピルグリシンであり、
(ii)Xが、Phe、α-Me-Phe、DPhe、4-F-Phe、2-Nal、または1-Nalであり、
(iii)Xが、Glu、Leu、Nle、α-Me-Leu、DLeu、または非存在であり、かつ
(iv)Xが、Glu、DGlu、γGlu、Gla、または非存在である、実施形態87~92のいずれか1つに記載の化合物。
【0235】
94.該化合物が、チオエーテル結合を介して抗体または抗体フラグメントに共有結合することができる、実施形態87~93のいずれか1つに記載の化合物。
【0236】
95.該化合物が、C1ドメインにおけるシステイン残基124、C1ドメインにおける残基157、C1ドメインにおける残基162、C2ドメインにおける残基262、C3ドメインにおける残基375、C3ドメインにおける残基373、C3ドメインにおける残基397、C3ドメインにおける残基415、Cカッパドメインにおける残基156、Cカッパドメインにおける残基171、Cカッパドメインにおける残基191、Cカッパドメインにおける残基193、Cカッパドメインにおける残基202、またはCカッパドメインにおける残基208のシステインでチオエーテル結合を介して抗体または抗体フラグメントに共有結合することができる、実施形態87~94のいずれか1つに記載の化合物。
【0237】
96.免疫系の1つ以上の細胞を誘引および/または活性化することができる、実施形態87~95のいずれか1つに記載の化合物にリンカーによって抱合された少なくとも1つのシステインを含有する抗体である化合物であって、該薬剤が、該抗体内の1つ以上のシステイン残基で該抗体に抱合されている、化合物。
【0238】
配列
エミベツズマブ378C抱合体の抗体重鎖(配列番号1)
【表22】
(位置373のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ124C抱合体の抗体重鎖(配列番号2)
【表23】
(位置122のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ124C~378C抱合体の抗体重鎖(配列番号3)
【表24】
(位置122のXおよび位置373のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ124C~375C抱合体の抗体重鎖(配列番号4)
【表25】
(位置122のXおよび位置370のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ抱合体の抗体軽鎖(配列番号5)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSVSSSVSSIYLHWYQQKPGKAPKLLIYSTSNLASGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQVYSGYPLTFGGGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
TMab124C~378C抱合体の抗体重鎖(配列番号6)
【表26】
(位置127のXと位置381のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
TMab抱合体の抗体軽鎖(配列番号7)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDVNTAVAWYQQKPGKAPKLLIYSASFLYSGVPSRFSGSRSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQHYTTPPTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
AME133 124C~378C抱合体の抗体重鎖(配列番号8)
【表27】
(位置128のXおよび位置382のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
AME133抱合体の抗体軽鎖(配列番号9)
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASSSVPYIHWYQQKPGQAPRLLIYATSALASGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQWLSNPPTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
ヒトIgG1定常領域(配列番号10)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
ヒトIgG4定常領域(配列番号11)
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
IgG4 124C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号12)
【表28】
(位置7のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG4 378C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号13)
【表29】
(位置258のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオイミド結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG4 375C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号14)
【表30】
(位置255のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成により修飾されたシステイン残基である)
IgG4 124C-378C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号15)
【表31】
(位置7のXおよび位置258のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG4 124C-375C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号16)
【表32】
(位置7のXおよび位置255のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG1 124C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号17)
【表33】
(位置7のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG1 378C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号18)
【表34】
(位置261のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成により修飾されたシステイン残基である)
IgG1 375C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号19)
【表35】
(位置258のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG1 124C-378C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号20)
【表36】
(位置7のXおよび位置261のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG1 124C~375C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号21)
【表37】
(位置7のXおよび位置258のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
fMLFX(ペプチド-‘183)(配列番号22)
(位置1のMetはホルミル化されている)
(位置4のXは、マレイミド-PEGリンカーへのアミド結合形成により修飾されたリジン残基である)
fMLFK(配列番号23)
(位置1のMetはホルミル化されている)
MLFX(ペプチド-‘844)(配列番号24)
(位置4のXは、マレイミド-PEGリンカーへのアミド結合形成により修飾されたリジン残基である)
MLFK(配列番号25)
MET415C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号26)
【表38】
(位置410のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成により修飾されたシステイン残基である)
MET156C抗体抱合体の抗体軽鎖(配列番号27)
【表39】
(位置157のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
MET171C抗体抱合体の抗体軽鎖(配列番号28)
【表40】
(位置172のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成により修飾されたシステイン残基である)
MET191C抗体抱合体の抗体軽鎖(配列番号29)
【表41】
(位置192のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
MET193C抗体抱合体の抗体軽鎖(配列番号30)
【表42】
(位置194のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
MET 202C抗体抱合体の抗体軽鎖(配列番号31)
【表43】
(位置203のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
MET208C抗体抱合体の抗体軽鎖(配列番号32)
【表44】
(位置209のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成により修飾されたシステイン残基である)
トラスツズマブ124C~157C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号33)
【表45】
(位置127のXおよび位置160のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
124C~378C二重特異性抗体I抱合体の抗体重鎖A(配列番号34)
【表46】
(位置126のXおよび位置380のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
124C~378C二重特異性抗体I抱合体の抗体重鎖B(配列番号35)
【表47】
(位置128のXおよび位置382のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
fMIFLX(FRM-021)(配列番号36)
(位置1のMetはホルミル化されている)
(位置5のXは、加水分解されたマレイミド-PEGリンカーへのイプシロンアミド結合形成を介して修飾されたリジン残基側鎖である)
fMXFX(FRM-029)(配列番号37)
(位置1のMetはホルミル化されている)
(位置2のXはジエチルグリシンである)
(位置4のXは、式(PEG6)-NH-(CH-NHのPEGリンカーへのアミド結合形成によってC末端で結合したロイシン残基である)
fMXFX(FRM-030)(配列番号38)
(位置1のMetはホルミル化されている)
(位置2のXはジプロピルグリシンである)
(位置4のXは、式(PEG6)-NH-(CH-NHのPEGリンカーへのアミド結合形成によってC末端で結合したロイシン残基である)
fMIX(FRM-031)(配列番号39)
(位置1のMetはホルミル化されている)
(位置3のXは、式PEG12-NH-(CH-NHのPEGリンカーへのアミド結合形成によってC末端で結合したフェニルアラニン残基である)
fMIFX(FRM-023)(配列番号40)
(位置1のMetはホルミル化されている)
(位置4のXは、式PEG12-NH-(CH)-NHのPEGリンカーへのアミド結合形成によってC末端で結合したロイシン残基である)
fMIFX(FRM-032)(配列番号41)
(位置1のMetはホルミル化されている)
(位置4のXは、式NH-(CH)-NH-[(Mal-Dap(NH)]のリンカーへのアミド結合形成よって修飾されたロイシン残基である)
fNleLX(FRM-009)(配列番号42)
(位置1のNleはホルミル化されている)
(位置3のXは、式PEG12-Lys(マレイミド-プロピオニル)-OHのリンカーへのアミド結合形成によってC末端で結合したフェニルアラニンである)
エミベツズマブ抱合体の抗体重鎖(配列番号43)
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTDYYMHWVRQAPGQGLEWMGRVNPNRRGTTYNQKFEGRVTMTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARANWLDYWGQGTTVTVSSASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLG
エミベツズマブ157C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号44)
【表48】
(位置155のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ162C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号45)
【表49】
(位置160のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ262C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号46)
【表50】
(位置257のXは、マレイミドPEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ375C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号47)
【表51】
(位置370のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ397C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号48)
【表52】
(位置392のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ124C-157C-378C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号49)
【表53】
(位置122のXおよび位置155のXおよび位置373のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
エミベツズマブ124C-162C-378C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号50)
【表54】
(位置122のXおよび位置160のXおよび位置373のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
Tmab(IQE)124C-378C抗体抱合体の抗体重鎖(配列番号51)
【表55】
(位置127のXと位置381のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG1 157C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号52)
【表56】
(位置40のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG1 124C-157C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号53)
【表57】
(位置7のXおよび位置40のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG4 157C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号54)
【表58】
(位置40のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG4 162C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号55)
【表59】
(位置45のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG4 124C-157C-373C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号56)
【表60】
(位置7のXおよび位置40のXおよび位置258のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
IgG4 124C-162C-373C抱合体の抗体重鎖定常領域(配列番号57)
【表61】
(位置7のXおよび位置45のXおよび位置258のXは、マレイミド-PEGリンカーへのチオエーテル結合形成によって修飾されたシステイン残基である)
二重特異性抗体I抱合体の抗体軽鎖A(配列番号58)
RIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQDVSIGVAWYQDKPGKAPKLLIYSASYRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQYYIYPYTFGQGTKVEIKGQPKAAPSVTLFPPSSEELQANKATLVCYISDFYPGAVTVAWKADSSPVKAGVETTTPSKQSNNKYAAWSYLSLTPEQWKSHRSYSCQVTHEGSTVEKTVAPTEC
二重特異性抗体I抱合体の抗体軽鎖B(配列番号59)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCSASSSVTYMYWYQRKPGKAPKLLIYDTSNLASGVPSRFSGSGSGTDYTFTISSLQPEDIATYYCQQWSSHIFTFGQGTKVEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
【配列表】
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