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特許7467528器具ベースの挿入アーキテクチャのためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】器具ベースの挿入アーキテクチャのためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/35 20160101AFI20240408BHJP
【FI】
A61B34/35
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022084398
(22)【出願日】2022-05-24
(62)【分割の表示】P 2020550058の分割
【原出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2022105638
(43)【公開日】2022-07-14
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】62/597,385
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518083032
【氏名又は名称】オーリス ヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ヒル・アレン・カルダー
(72)【発明者】
【氏名】シュー・トラヴィス・マイケル
(72)【発明者】
【氏名】エア・ニコラス・ジェイ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-502709(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0046122(US,A1)
【文献】特表2002-503976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/005 - A61B 1/008
A61B 34/30 - A61B 34/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用装置であって、
近位部分及び遠位部分を含むシャフトと、
前記シャフトの前記遠位部分に接続されたエンドエフェクタと、
前記シャフトに連結され、ロボットアームに解放可能に連結されるように構成されたハンドルと、
を備え、前記シャフトが、使用時に前記ハンドルに対して並進するように構成されており、
前記医療用装置は、
前記エンドエフェクタを作動させるように構成された第1の作動機構と、
前記ハンドルに対して前記シャフトを並進させるように構成された第2の作動機構と、
を更に備え、前記第1の作動機構が前記第2の作動機構から分離されている、医療用装置。
【請求項2】
前記第1の作動機構が、第1の組のプーリを通って延在する第1のケーブルを含み、
前記第1の組のプーリのうちの少なくとも1つのプーリの操作が、前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの変化を引き起こし、それによって前記エンドエフェクタの作動を引き起こす、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項3】
前記第2の作動機構が、スプールと係合する第2のケーブルを含み、
前記スプールの操作が、前記シャフトを前記ハンドルに対して並進させる、請求項2に記載の医療用装置。
【請求項4】
前記エンドエフェクタの作動を引き起こす、前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの前記変化が、前記シャフトを前記ハンドルに対して並進させる前記スプールの操作によって影響されない、請求項3に記載の医療用装置。
【請求項5】
前記第1の作動機構の前記第1のケーブルが、前記シャフトの前記近位部分から、前記第1の組のプーリを通って、前記シャフトの前記遠位部分まで延在する、請求項2に記載の医療用装置。
【請求項6】
前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの変化を引き起こすための、前記第1の組のプーリの前記少なくとも1つのプーリの操作が、前記少なくとも1つのプーリの直線又は回転動作を含む、請求項5に記載の医療用装置。
【請求項7】
前記第1の作動機構が、前記第1の組のプーリに対する前記シャフトの自由な動きを可能にするように構成されている、請求項2に記載の医療用装置。
【請求項8】
前記スプールがゼロウォーク型巻取車軸を備える、請求項3に記載の医療用装置。
【請求項9】
前記第2の作動機構の回転が、前記ゼロウォーク型巻取車軸の回転を引き起こす、請求項8に記載の医療用装置。
【請求項10】
前記第1の作動機構が、第1の組のプーリを通って延在する1本以上のケーブルを含み、前記第2の作動機構が、1本以上のケーブル及び挿入スプールを含み、
前記第1の作動機構の前記1本以上のケーブルのうちの少なくとも1本が、前記挿入スプール上で終端する、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項11】
前記第1の作動機構の前記1本以上のケーブルが、エンドエフェクタケーブルを備え、前記第2の作動機構の前記1本以上のケーブルが、挿入ケーブルを備える、請求項10に記載の医療用装置。
【請求項12】
前記第2の作動機構の回転が、前記挿入スプールの回転を引き起こし、それによって前記ハンドルに対する前記シャフトの並進を引き起こす、請求項10に記載の医療用装置。
【請求項13】
前記第2の作動機構の前記1本以上のケーブルは、前記第2の作動機構の前記1本以上のケーブルを駆動するために摩擦力を使用できるように予め張力がかけられている、請求項11に記載の医療用装置。
【請求項14】
医療用装置であって、
近位部分及び遠位部分を含むシャフトと、
前記シャフトの前記遠位部分に接続されたエンドエフェクタと、
前記シャフトに連結され、ロボットアームに解放可能に連結されるように構成されたハンドルと、
を備え、前記シャフトが、使用時に前記ハンドルに対して並進するように構成されており、
前記ハンドルが、前記シャフトを前記ハンドルに対して並進させるように構成された作動機構を備える、療用装置。
【請求項15】
前記エンドエフェクタは、ナイフ及び血管シーラーを備え、
前記エンドエフェクタの前記作動は、前記血管シーラーに対して前記ナイフを直線的に駆動することを含む、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項16】
前記第1の作動機構は、反対方向の張力で配置された少なくとも1本のケーブルを含み、
前記少なくとも1本のケーブルは、前記ナイフに連結されており、
前記第1の作動機構は、前記少なくとも1本のケーブルの経路長に少なくとも1つの差を生じさせ、前記ナイフの直線的な前記駆動を提供するように構成されている、請求項15に記載の医療用装置。
【請求項17】
前記少なくとも1本のケーブルは、反対方向の張力で配置された2本のケーブルを含み、
前記少なくとも1つの経路長の差は、前記2本のケーブルのそれぞれにおける経路長の差を含み、それら2つの経路長の差は、反対方向に配置されており、
前記第1の作動機構は、前記2本のケーブルに連結されたリダイレクトプーリを含む、請求項16に記載の医療用装置。
【請求項18】
前記リダイレクトプーリは、前記シャフトの前記遠位部分に位置付けられている、請求項17に記載の医療用装置。
【請求項19】
前記リダイレクトプーリが、前記シャフトの前記近位部分に位置付けられている、請求項17に記載の医療用装置
【請求項20】
前記第1の作動機構は、前記シャフトの前記近位部分に配置された、ばねを含み、
前記少なくとも1本のケーブルは、前記ばねと反対方向の張力に置かれている、請求項16に記載の医療用装置。
【請求項21】
前記第1の作動機構は、前記ナイフを前記血管シーラーに対して直線的に駆動するように構成された細長い部材を更に備える、請求項16に記載の医療用装置。
【請求項22】
前記細長い部材がプッシュロッドを含む、請求項21に記載の医療用装置。
【請求項23】
前記第1の作動機構は、第1の組のプーリを通って延在する第1のケーブルを備え、
前記第1の組のプーリの少なくとも1つのプーリの操作は、前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの変化を引き起こし、それによって前記エンドエフェクタの作動を引き起こす、請求項1に記載の医療用装置。
【請求項24】
前記第2の作動機構が、スプールに係合するように構成された第2のケーブルを含み、
前記スプールの操作が、前記シャフトを前記ハンドルに対して並進させる、請求項23に記載の医療用装置。
【請求項25】
前記エンドエフェクタの作動を引き起こすための前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの前記変化は、前記シャフトを前記ハンドルに対して並進させる前記スプールの操作によって影響されない、請求項24に記載の医療用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2017年12月11日に出願された米国特許仮出願第62/597、385号に対する優先権の利益を主張するものであり、その特許仮出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本明細書に開示されるシステム及び方法は、医療器具、より具体的には、様々な種類の手術で使用するための外科用ツールを対象とする。
【背景技術】
【0003】
本明細書は、一般に、医療器具に関し、特に腹腔鏡、内視鏡、腔内及び開腹手術を含む、様々なタイプの手術で使用するための外科用ツールに関する。
【0004】
ロボット技術は、様々な用途を有する。特に、ロボットアームは、通常は人間が実行するタスクを完了するのを支援する。例えば、工場では、ロボットアームを使用して、自動車及び民生用電子機器製品が製造される。加えて、科学施設では、マイクロプレートを輸送するなどの実験室での手順を自動化するために、ロボットアームが使用される。医療分野において、医師は、外科手術を行うのを支援させるために、ロボットアームを使用し始めている。
【0005】
外科用ロボットシステムでは、ロボットアームは、器具装置マニピュレータに、例えばロボットアームの端部で接続され、器具装置マニピュレータを、画定された作業空間内の任意の位置に移動させることができる。器具装置マニピュレータは、外科用ツールに取り外し可能に連結され得るが、そのような外科用ツールとしては、例えば、内視鏡用途用の操縦可能なカテーテル、又は様々な腹腔鏡及び腔内器具のいずれかなどが挙げられる。器具装置マニピュレータは、ロボットアームからの運動を付与して外科用ツールの位置を制御し、また、カテーテルを操縦するためのプルワイヤなどの、器具上の制御装置を起動させてもよい。加えて、器具装置マニピュレータは、器具に、電気的及び/又は光学的に連結されて、電力、光、又は制御信号を提供してもよく、器具上のカメラからのビデオストリームなど、器具からデータを受信してもよい。
【0006】
使用中、外科用ツールは、器具が患者から離れているように器具装置マニピュレータに接続される。次にロボットアームは、器具装置マニピュレータとそれに接続されている器具を、患者内の手術部位に向かって前進させる。腹腔鏡手術では、器具は患者の体腔壁内のポートを通って移動される。ロボットアームは、ピッチ、ヨー、及び挿入を含む、複数の自由度で器具を操作することができる。典型的には、ロボットアームは、これらの自由度の全てを提供する。
【0007】
挿入に関して、ロボットアームは、典型的には、挿入自由度を提供するための直線的挿入軸線を有する。ロボットアームが器具の直線的挿入を担う場合に困難が生じる場合がある。特に、ロボットアームの質量(単独での質量又は器具と組み合わせた場合の質量)は、重い揺動質量をもたらし、挿入深さが浅い段階での性能を低減する可能性がある。加えて、ロボットアームに頼って挿入を行うと、ロボット外科手術中、外科医又は助手に利用可能な作業空間が減少してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、器具を直線的に挿入する際にロボットアームに依存してしまうことを低減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願の実施形態は、器具を直線的に挿入する際にロボットアームに依存することを低減するシステム、装置、及び方法を対象とする。特に、本明細書に記載されるシステム、装置、及び方法は、器具ベースの直線的挿入アーキテクチャを有する器具に関する。例えば、器具のシャフトが挿入軸線に沿って並進することができる1つ以上の器具を提供することができ、それによって、直線的挿入のためにロボットアームに依存することを低減する。一部の実施形態では、ロボットアームは、器具自体と共に直線的挿入のために使用され得るが、他の実施形態では、この動作は省略され、それによってロボットの全体的なプロファイルが低減され、外科用ロボットアームの端部で揺動質量を最小化する。
【0010】
一部の実施形態では、医療用装置は、シャフトと、シャフトに接続されたエンドエフェクタと、シャフトに連結されたハンドルと、を備える。ハンドルは、第1の機械的入力部及び第2の機械的入力部を含む。第1の機械的入力部は、エンドエフェクタの作動を引き起こすように構成され、第2の機械的入力部は、ハンドルに対するシャフトの並進を引き起こすように構成される。エンドエフェクタの作動は、ハンドルに対するシャフトの並進を引き起こす第2の作動機構から分離される第1の作動機構を介して実行される。第1の作動機構は、第1の組のプーリを通って延在する第1のケーブルを含むことができ、第1の機械的入力部による第1の組のプーリのうちの少なくとも1つのプーリの操作は、ハンドル内の第1のケーブルの長さの変化を引き起こし、それによってエンドエフェクタの作動を引き起こす。第2の作動機構は、スプールに係合する第2のケーブルを含むことができ、第2の機械的入力部による第2の組のプーリのスプールの操作は、シャフトをハンドルに対して並進させる。スプールは、ゼロウォーク型巻取車軸などの巻取車軸であり得る。エンドエフェクタの作動を引き起こすためのハンドル内の第1のケーブルの長さの変化は、シャフトをハンドルに対して並進させる第2の作動機構によって影響されない。場合によっては、第1の作動機構のケーブルは、シャフトの近位部分から、第1の組のプーリを通って、シャフトの遠位部分まで延在する。他の例では、第1の作動機構は、第1の組のプーリを通って延在する1本以上のケーブルを含み、第2の作動機構は、1本以上のケーブル及び挿入スプールを含み、第1の作動機構の少なくとも1本以上のケーブルは、挿入スプール上で終端する。
【0011】
一部の実施形態では、医療用システムは、基部と、基部に連結されたツールホルダと、器具と、を備える。ロボットアームは、基部とツールホルダとの間に配置することができる。ツールホルダは、取り付けインターフェースを含む。器具は、シャフトと、エンドエフェクタと、ツールホルダに取り付けられるための相互インターフェースを有するハンドルと、を備える。ハンドルは、第1の機械的入力部及び第2の機械的入力部を更に含む。第1の機械的入力部は、エンドエフェクタの作動を引き起こすように構成され、第2の機械的入力部は、ハンドルに対してシャフトを並進を引き起こすように構成される。エンドエフェクタの作動は、ハンドルに対するシャフトの並進を引き起こす第2の作動機構から分離される第1の作動機構を介して実行される。一部の例では、第1の作動機構は、第1の組のプーリを通って延在する第1のケーブルを含み、第1の機械的入力部による第1の組のプーリのうちの少なくとも1つのプーリの操作が、ハンドル内の第1のケーブルの長さの変化を引き起こし、それによってエンドエフェクタの作動を引き起こし、かつ、ハンドルに対するシャフトの並進運動が、スプールに係合する第2のケーブルを含む第2の作動機構を介して実行され、第2の機械的入力部によるスプールの操作が、シャフトをハンドルに対して並進させる。
【0012】
一部の実施形態では、外科的方法は、手術部位で外科手術を行うために、患者の切開部又は自然開口部を通して送達されるように構成された器具を提供することを含む。器具は、シャフトと、シャフトに連結されたハンドルと、シャフトから延在するエンドエフェクタとを備える。シャフトは、ハンドルに対して並進可能である。エンドエフェクタの作動は、ハンドルに対するシャフトの並進を引き起こす第2の作動機構から分離される第1の作動機構を介して実行される。場合によっては、器具は、エンドエフェクタを作動させるための第1の作動機構と、シャフトをハンドルに対して並進させるための第2の作動機構とを含み、第1の作動機構は、第1の組のプーリ及び第1のケーブルを備え、第2の作動機構は、スプール及び第2のケーブルを備える。
【0013】
一部の実施形態では、外科的方法は、手術部位で外科手術を行うために、患者の切開部又は自然開口部を通して器具を送達することを含む。器具は、シャフトと、シャフトに連結されたハンドルと、シャフトから延在するエンドエフェクタとを備える。シャフトは、ハンドルに対して並進可能である。エンドエフェクタの作動は、ハンドルに対するシャフトの並進を引き起こす第2の作動機構から分離される第1の作動機構を介して実行される。場合によっては、器具は、エンドエフェクタを作動させるための第1の作動機構と、シャフトをハンドルに対して並進させるための第2の作動機構とを含み、第1の作動機構は、第1の組のプーリ及び第1のケーブルを備え、第2の作動機構は、スプール及び第2のケーブルを備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】一実施形態による外科用ロボットシステムを示す。
図1B】代替的な実施形態による外科用ロボットシステムを示す。
図2】一実施形態による外科用ロボットシステムのためのコマンドコンソールを示す。
図3】一実施形態による、外科用ロボットシステム用の器具装置マニピュレータの斜視図を示す。
図4】一実施形態による、図3の器具装置マニピュレータの側面図を示す。
図5】一実施形態による、図3の器具装置マニピュレータに固定された例示的な外科用ツールの前方斜視分解図を示す。
図6】一実施形態による、図3の器具装置マニピュレータに固定された例示的な外科用ツールの背面斜視分解図を示す。
図7】一実施形態による、外科用ツールホルダに対する外科用ツールの係合及び係合解除のための作動機構の拡大斜視図を示す。
図8A】一実施形態による、外科用ツールを無菌アダプタに対して係合及び係合解除するプロセスを示す。
図8B】一実施形態による、外科用ツールを無菌アダプタに対して係合及び係合解除するプロセスを示す。
図9A】追加の実施形態による、外科用ツールを無菌アダプタに対して係合及び係合解除するプロセスを示す。
図9B】追加の実施形態による、外科用ツールを無菌アダプタに対して係合及び係合解除するプロセスを示す。
図10A】一実施形態による、器具装置マニピュレータ内で外科用ツールホルダをローリングするための機構の斜視図を示す。
図10B】一実施形態による器具装置マニピュレータの断面図を示す。
図10C】一実施形態による器具装置マニピュレータの内部部品及びその内部部品の一部の電気部品の部分分解斜視図を示す。
図10D】一実施形態による器具装置マニピュレータの内部部品及びその内部部品の一部の電気部品の部分分解斜視図を示す。
図10E】一実施形態による、外科用ツールホルダを回転割り出しするための、器具装置マニピュレータの電気部品の拡大斜視図を示す。
図11】一実施形態による、器具ベースの挿入アーキテクチャを有する器具の側面図を示す。
図12】一実施形態による、エンドエフェクタを作動させるための第1の作動機構を示す概略図を示す。
図13】一実施形態による、図11の器具の第1の作動機構の拡大側面図を示す。
図14】一実施形態による、図11の器具の第1の作動機構の拡大斜視図を示す。
図15】一実施形態による、プーリの作動前の図11の器具のプーリ及びケーブルの図を示す。
図16】一実施形態による、プーリの作動後の図11の器具のプーリ及びケーブルの図を示す。
図17】一実施形態による、シャフト並進のためのスプールを含む第2の作動機構の側面図を示す。
図18】一実施形態による、シャフト並進のために単一のケーブルを使用する、代替的なスプールの斜視図を示す。
図19】一実施形態による、シャフトの並進のために2本以上のケーブルを使用する、代替的なスプールの斜視図を示す。
図20】一実施形態による、図18のスプールを含むハンドルの正面図を示す。
図21】一実施形態による、エンドエフェクタの作動及びシャフトの並進のための代替的なアーキテクチャを示す概略図を示す。
図22A】一実施形態による、図21のエンドエフェクタの作動及びシャフトの挿入ための代替的なアーキテクチャを組み込んだ器具の拡大正面図を示す。
図22B】一実施形態による、図21のエンドエフェクタの作動及びシャフトの挿入ための代替的なアーキテクチャを組み込んだ器具の上面斜視図を示す。
図23】一実施形態による、器具のハンドル及びシャフトの上面斜視図を示す。
図24A】一実施形態による、図12に示される挿入アーキテクチャを利用する器具のシャフトの断面の概略図を示す。
図24B】一実施形態による、図21に示される挿入アーキテクチャを利用する器具のシャフトの断面の概略図を示す。
図25】一実施形態による、血管シーラー内でナイフを駆動するためのアーキテクチャを示す概略図を示す。
図26】一実施形態による、血管シーラー内でナイフを駆動するための代替的なアーキテクチャを示す概略図を示す。
図27】一実施形態による、血管シーラー内でナイフを駆動するための更に別の代替的なアーキテクチャを示す概略図を示す。
図28】一実施形態による、剛性カメラを挿入器具とするためのアーキテクチャを示す概略図を示す。
図29】一実施形態による、カメラが挿入ハンドルから分離されることを可能にする第1の挿入アーキテクチャを示す。
図30】一実施形態による、カメラが挿入ハンドルから分離されることを可能にする第2の挿入アーキテクチャを示す。
図31】一実施形態による、カメラが挿入ハンドルから分離されることを可能にする第2の挿入アーキテクチャを示す。
図32】別の実施形態による、シャフト並進のための代替的なアーキテクチャを示す図を示す。
図33】患者からの空気漏れを防止するための複数の封止部を有する器具の側面断面図を示す。
図34】複数の封止部を有する器具の正面断面図を示す。
【0015】
図は、例示のみを目的として、本発明の実施形態を示すものである。当業者であれば、本明細書に説明した本発明の原理から逸脱することなく、本明細書に例示した構造及び方法の代替的な実施形態を採用することができるということを、以下の説明から容易に理解するであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
I.外科用ロボットシステム
図1Aは、外科用ロボットシステム100の一実施形態を示す。外科用ロボットシステム100は、1つ以上のロボットアーム(例えばロボットアーム102)に連結された基部101を含む。基部101は、コマンドコンソールに通信可能に連結されている。なお、コマンドコンソールについては、本明細書では、図2を参照しながら更に説明する。基部101は、ロボットアーム102が患者に対して外科手術を実行するためのアクセスを有するように位置決めされ得るが、一方で、医師などのユーザーは、コマンドコンソールから快適に、外科用ロボットシステム100を制御し得る。一部の実施形態では、基部101は、患者を支持するための外科手術台又はベッドに連結されてもよい。例えば、一部の実施形態では、ロボットアーム102に連結された基部101は、ベッドに沿って延在する1つ以上のレールを介してベッドに連結され得る。明確さを重視するために図1Aには示されていないが、一部の実施形態では、基部101は、例えば、制御電子機器、空圧系、電源、光源などのサブシステムを含んでもよい。ロボットアーム102は、関節111で連結された複数のアームセグメント110を含み、そのことにより、ロボットアーム102に、複数の自由度、例えば7つのアームセグメントに対応する7つの自由度を提供する。基部101は、電源112、空気圧源113、制御系及びセンサ電子機器114(中央処理ユニット、データバス、制御回路、及びメモリなどの構成要素を含む)、並びに関連するアクチュエータなどの構成要素(例えばロボットアーム102を移動させるためのモータなど)を含んでもよい。基部101内の電子機器114はまた、コマンドコンソールから伝達される制御信号を処理及び送信してもよい。
【0017】
一部の実施形態では、基部101は、外科用ロボットシステム100を輸送するためのホイール115を含む。外科用ロボットシステム100が可動性を有するので、外科手術室における空間制約に順応する助けとなり、かつ外科用装置の適切な位置決め及び移動を容易にする助けとなる。更に、この可動性により、ロボットアーム102が、患者、医師、麻酔科医、又はいかなる他の装置とも干渉しないように、ロボットアーム102を構成することが可能となる。手術中、ユーザーは、コマンドコンソールなどの制御装置を使用して、ロボットアーム102を制御し得る。
【0018】
一部の実施形態では、ロボットアーム102は、ロボットアーム102の位置を維持するためにブレーキとカウンタバランスとの組み合わせを使用するセットアップジョイントを含む。カウンタバランスは、ガスばね又はコイルばねを含んでもよい。ブレーキ、例えば、フェイルセーフブレーキは、機械部品及び/又は電気部品を含んでもよい。更に、ロボットアーム102は、重力支援型の受動的支持型ロボットアームであってもよい。
【0019】
各ロボットアーム102は、機構交換インターフェース(MCI)116を使用して、器具装置マニピュレータ(IDM)117に連結されてもよい。IDM117は、ツールホルダとして機能することができる。一部の実施形態では、IDM117を取り外し、異なるタイプのIDMと交換され得る。例えば、内視鏡を操作する第1のタイプのIDMを、腹腔鏡を操作する第2のタイプのIDMで置き換えることができる。MCI116は、空気圧、電力、電気信号、及び光信号をロボットアーム102からIDM117に伝達するためのコネクタを含む。MCI116は、止ねじ又はベースプレートコネクタであり得る。IDM117は、直接駆動、高調波駆動、ギア駆動、ベルト及びプーリ、磁気ドライブなどを含む技術を使用して、器具118などの外科用ツールを操作する。MCI116は、IDM117のタイプに基づいて交換可能であり、特定のタイプの外科手術のためにカスタマイズされ得る。ロボットアーム102は、関節レベルトルク感知器及び遠位端におけるリスト部を含むことができる。
【0020】
ツール又は器具118は、患者の手術部位で手術を行うことができる腹腔鏡、内視鏡、及び/又は腔内器具を備えることができる。一部の実施形態では、器具118は、患者の切開部に挿入可能な腹腔鏡器具を備える。腹腔鏡器具は、剛性、半剛性、又は可撓性シャフトを備えることができる。腹腔鏡検査用に設計された場合、シャフトの遠位端は、エンドエフェクタに接続されてもよく、そのようなエンドエフェクタには、例えばリスト部、把持器具、はさみ、又は他の外科用ツールが挙げられ得る。一部の実施形態では、器具118は、解剖学的構造(例えば、身体組織)の画像を捕捉するために患者の解剖学的構造内に挿入される内視鏡外科用ツールを備える。一部の実施形態では、内視鏡器具は、管状で可撓性を有するシャフトを備える。内視鏡は、画像を撮像する1つ以上の撮像装置(例えば、カメラ又はセンサ)を含む。撮像装置は、光ファイバ、ファイバアレイ、又はレンズなどの1つ以上の光学部品を含み得る。光学部品は、器具118の先端部と共に移動することにより、器具118の先端部の移動によって撮像装置によって撮像された画像が変化する。一部の実施形態では、器具118は、患者の自然開口部を通して挿入可能な腔内器具(例えば、気管支鏡又は尿道鏡など)を備える。腔内器具は、管状で可撓性を有するシャフトを備えることができる。腔内手術用に設計された場合、シャフトの遠位端は、エンドエフェクタに接続されてもよく、そのようなエンドエフェクタには、例えばリスト部、把持器具、はさみ、又は他の外科用ツールが挙げられ得る。
【0021】
一部の実施形態では、外科用ロボットシステム100のロボットアーム102は、細長い運動部材を使用して器具118を操作する。細長い運動部材は、プルワイヤ若しくはプッシュワイヤ、ケーブル、繊維、又は可撓性シャフトとも呼ばれるプルワイヤを含んでもよい。例えば、ロボットアーム102は、器具118に連結された複数のプルワイヤを作動させて、器具118の先端を偏向させる。プルワイヤは、例えば、ステンレス鋼、ケブラー、タングステン、炭素繊維などの、金属及び非金属材料の両方を含んでもよい。一部の実施形態では、器具118は、細長い運動部材によって印加される力に応答して、非直線的挙動を呈し得る。非直線的挙動は、器具118の剛性及び圧縮性、並びに異なる細長い運動部材どうしの間の緩み又は剛性の変動性に基づくものであり得る。
【0022】
外科用ロボットシステム100は、コントローラ120、例えば、コンピュータプロセッサを含む。コントローラ120は、校正モジュール125、位置合わせモジュール130、及び校正ストア135を含む。校正モジュール125は、傾き、ヒステリシス、及びデッドゾーン値などのパラメータと共に、区分的線形応答を有するモデルを使用して、非直線的挙動を特徴付けることができる。外科用ロボットシステム100は、パラメータの正確な値を決定することによって、内視鏡118をより正確に制御することができる。一部の実施形態では、コントローラ120の一部又は全ての機能は、外科用ロボットシステム100の外側、例えば、外科用ロボットシステム100に通信可能に連結された別のコンピュータシステム又はサーバ上で実行される。
【0023】
図1Bは、代替的な実施形態による外科用ロボットシステムを示す。図1Aの外科用ロボットシステムの実施形態と同様に、図1Bの外科用ロボットシステムは、IDM117及びそれに取り付けられた外科用ツール又は器具118を有する、1つ以上のロボットアーム102を含む。本実施形態では、1つ以上のロボットアーム102は、ベッドの形態の患者プラットフォーム160に連結された、1本以上の調節可能なレール150に取り付けられる。本実施形態では、3つのロボットアーム102が、患者プラットフォーム160の第1の側の調節可能なレール150に取り付けられ、一方、2つのロボットアーム102が、患者プラットフォーム160の第2の側の調節可能なレール150に取り付けられる。それによって、両側にアームを有するシステムを提供する。
【0024】
II.コマンドコンソール
図2は、一実施形態による外科用ロボットシステム100のためのコマンドコンソール200を示す。コマンドコンソール200は、コンソールベース201、ディスプレイモジュール202(例えば、モニタ)、及び制御モジュール(例えば、キーボード203及びジョイスティック204)を含む。一部の実施形態では、コマンドモジュール200の機能のうちの1つ以上は、外科用ロボットシステム100の基部101、又は外科用ロボットシステム100に通信可能に連結された別のシステムに統合されてもよい。ユーザー205(例えば、医師)は、コマンドコンソール200を使用して人間工学的位置から外科用ロボットシステム100を遠隔制御する。
【0025】
コンソールベース201は、カメラ撮像データ及び追跡センサデータなどの信号(例えば、図1Aに示される器具118からのデータ)の解釈及び処理に関与する、中央処理ユニット、メモリユニット、データバス、及び関連データ通信ポートを含んでもよい。一部の実施形態では、コンソールベース201及び基部101の両方は、負荷平衡化のための信号処理を実行する。コンソールベース201はまた、ユーザー205によって制御モジュール203及び204を通じて提供されるコマンド及び命令を処理してもよい。図2に示すキーボード203及びジョイスティック204に加えて、制御モジュールは、他のデバイス、例えば、コンピュータマウス、トラックパッド、トラックボール、制御パッド、ビデオゲームコントローラ、及びハンドジェスチャ及び指ジェスチャをキャプチャするセンサ(例えば、モーションセンサ又はカメラ)を含んでもよい。
【0026】
ユーザー205は、コマンドコンソール200を速度モード又は位置制御モードで使用して、器具118などの外科用ツールを制御することができる。速度モードでは、ユーザー205は、制御モジュールを使用しての直接的手動制御に基づいて、器具118の遠位端のピッチ及びヨー動作を直接制御する。例えば、ジョイスティック204の動作は、器具118の遠位端におけるヨー及びピッチ動作にマッピングされてもよい。ジョイスティック204は、ユーザー205に触覚フィードバックを提供することができる。例えば、ジョイスティック204は振動して、器具118がそれ以上ある特定の方向には並進又は回転することができないことを示す。コマンドコンソール200はまた、器具118が並進又は回転の限界に達したことを示すために、視覚的フィードバック(例えば、ポップアップメッセージ)及び/又は音声によるフィードバック(例えば、ビープ音)を提供することができる。
【0027】
位置制御モードでは、コマンドコンソール200は、患者の三次元(3D)マップ及び患者の所定のコンピュータモデルを使用して、外科用ツール(例えば、器具118)を制御する。コマンドコンソール200は、外科用ロボットシステム100のロボットアーム102に制御信号を提供して、器具118を標的位置に操作する。3Dマップへ依拠するため、位置制御モードは、患者の解剖学的構造の正確なマッピングを必要とする。
【0028】
一部の実施形態では、ユーザー205は、コマンドコンソール200を使用せずに、外科用ロボットシステム100のロボットアーム102を手動で操作することができる。外科手術室での設定中、ユーザー205は、ロボットアーム102、器具118、及び他の外科用装置を動かして、患者にアクセスすることができる。外科用ロボットシステム100は、ユーザー205からの力フィードバック及び慣性制御に依存して、ロボットアーム102及び装置の適切な構成を決定してもよい。
【0029】
ディスプレイモジュール202は、電子モニタ、仮想現実閲覧デバイス(例えば、ゴーグル又は眼鏡)、及び/又はディスプレイデバイスの他の手段を含んでもよい。一部の実施形態では、ディスプレイモジュール202は、例えば、タッチスクリーンを有するタブレットデバイスとして、制御モジュールに統合される。更に、ユーザー205は、統合ディスプレイモジュール202及び制御モジュールを使用して、データ及び、外科用ロボットシステム100への入力コマンドを見ることができる。
【0030】
ディスプレイモジュール202は、立体視装置(例えば、バイザー又はゴーグル)を使用して、3D画像を表示することができる。3D画像は、患者の解剖学的構造を示すコンピュータ3Dモデルである「エンドビュー」(すなわち、内視鏡ビュー)を提供する。「エンドビュー」は、患者の内部の仮想環境、及び患者の内部における器具118の予想される位置を提供する。ユーザー205は、「エンドビュー」モデルを、カメラによってキャプチャされた実際の画像と比較して、器具118が患者の体内の正しい(又は概ね正しい)位置にあるように、頭の中において方向付けし確認する助けとする。「エンドビュー」は、器具118の遠位端の周囲の解剖学的構造(例えば、患者の腸又は結腸の形状)に関する情報を、提供する。ディスプレイモジュール202は、器具118の遠位端の周囲の解剖学的構造の3Dモデルとコンピュータ断層撮影(CT)スキャン画像とを同時に表示することができる。更に、ディスプレイモジュール202は、器具118の所定の最適なナビゲーション経路を、3Dモデル及びCTスキャン画像上に重ね合わせてもよい。
【0031】
一部の実施形態では、器具118のモデルが3Dモデルと共に表示され、外科手術の状態を示す助けとなる。例えば、CTスキャン画像により、生検が必要であり得る解剖学的構造にある病変が特定される。動作中、ディスプレイモジュール202は、器具118の現在の位置に対応する、器具118によって捕捉された基準画像を示すことができる。ディスプレイモジュール202は、ユーザー設定及び特定の外科手術に応じて、器具118のモデルの異なるビューを自動的に表示してもよい。例えば、ディスプレイモジュール202は、器具118が患者の手術領域に接近する際のナビゲーション工程中には、器具118の頭上からのX線透視図を示す。
【0032】
III.器具装置のマニピュレータ
図3は、外科用ロボットシステム用の器具装置マニピュレータ(IDM)300の斜視図を示し、図4は、一実施形態によるIDM300の側面図である。IDM300は、外科用ツール(又は器具)が、その外科用ツールの軸の周りで連続的に回転する又は「転動する」ことを可能にするように、外科用ツールをロボット外科用アームに取り付けるように構成される。IDM300は、基部302と、基部に連結された外科用ツールホルダアセンブリ304とを含む。外科用ツールホルダアセンブリ304は、器具118を保持するツールホルダとして機能する。外科用ツールホルダアセンブリ304は、外側ハウジング306と、外科用ツールホルダ308と、取り付けインターフェース310と、通路312と、複数のトルクカップラー314とを更に含む。一部の実施形態では、通路312は、IDM300の1つの面からIDM300の反対側の面まで延在する貫通孔を含む。IDM300は、様々な外科用ツール(図3には図示せず)と共に使用されてもよく、そのような外科用ツールには、ハンドル及び細長体(例えば、シャフト)が含まれていてもよく、かつ、そのような外科用ツールは、腹腔鏡、内視鏡、又は外科用ツールの他のタイプのエンドエフェクタ用のものであり得る。
【0033】
基部302は、IDM300を外科用ロボットシステムの外科用ロボットアームに取り外し可能に又は固定的に取り付ける。図3の実施形態では、基部302は、外科用ツールホルダアセンブリ304の外側ハウジング306に固定的に取り付けられる。代替的な実施形態では、基部302は、取り付けインターフェース310とは反対側の面上に、外科用ツールホルダ308を回転可能に受容するように適合されたプラットフォームを含むように構成されてもよい。プラットフォームは、外科用ツールの細長体を受容するため、また一部の実施形態では、プラットフォームは、第1の外科用ツールと同軸に取り付けられた第2の外科用ツールの追加の細長体を受容するため、通路312と整列された通路を含んでもよい。
【0034】
手術ツールホルダアセンブリ304は、外科用ツールをIDM300に固定し、外科用ツールを基部302に対して回転させるように構成されている。機械的及び電気的接続が、外科用アームから基部302へ、次いで外科用ツールホルダアセンブリ304に提供され、外科用ツールホルダ308を外側ハウジング306に対して回転させ、外科用アームから外科用ツールホルダ308に、そして最終的には外科用ツールに、電力及び/又は信号を、操作及び/又は送達する。信号は、空気圧に関する信号、電力に関する信号、電気信号、及び/又は光信号を含んでもよい。
【0035】
外側ハウジング306は、基部302に対する外科用ツールホルダアセンブリ304の支持を提供する。外側ハウジング306は、基部302に固定的に取り付けられ、外側ハウジング306は、基部302に対して固定されたままである一方で、外科用ツールホルダ308が外側ハウジング306に対して自由に回転できるようになっている。図3の実施形態では、外側ハウジング306は、円筒形の形状であり、外科用ツールホルダ308を完全に取り囲んでいる。外側ハウジング306は、剛性材料(例えば、金属又は硬質プラスチック)から構成されてもよい。代替的な実施形態では、ハウジングの形状は異なっていてもよい。
【0036】
外科用ツールホルダ308は、取り付けインターフェース310を介して、外科用ツールをIDM300に固定する。外科用ツールホルダ308は、外側ハウジング306とは独立して回転することができる。外科用ツールホルダ308は、回転軸線316を中心に回転するが、その回転軸線316は、外科用ツールホルダ308と共に外科用ツールが回転するように、外科用ツールの細長体と同軸に位置揃えされる。
【0037】
取り付けインターフェース310は、外科用ツールに取り付けられる外科用ツールホルダ308の1つの面である。取り付けインターフェース310は、取り付け機構の第1の部分を含み、この第1の部分は、外科用ツール上に配置された、取り付け機構の第2の部分と相互に嵌合し、これらについては、図8A及び図8Bに関連して、より詳細に論じられる。一部の実施形態では、取り付けインターフェース310は、複数のトルクカップラー314を備え、それらのトルクカップラー314は、取り付けインターフェース310から外側に突出し、外科用ツール上のそれぞれの器具の入力部と係合する。一部の実施形態では、無菌アダプタに連結された切開ドレープを使用して、IDM300と外科用ツールとの間に無菌境界を形成し得る。これらの実施形態では、外科用ツールがIDM300に固定されるときに、無菌アダプタが、取り付けインターフェース310と外科用ツールとの間に位置するようにしてもよく、そうすることで、切開ドレープが、外科用ツール及び患者を、IDM300及び外科用ロボットシステムとから分離することができるようになる。
【0038】
通路312は、外科用ツールが取り付けインターフェース310に固定されたときに、外科用ツールの細長体を受容するように構成されている。図3の実施形態では、通路312は、外科用ツールの細長体の長手方向軸線と、外科用ツールホルダ308の回転軸線316とに同軸に位置揃えされる。通路312は、外科用ツールの細長体が、通路312内で自由に回転することを可能にする。この構成により、外科用ツールが、最小限の制約下で又は何らの制約もなしで、回転軸線316を中心にして連続的に回転する又は転動することが可能になる。
【0039】
複数のトルクカップラー314は、外科用ツールが外科用ツールホルダ308に固定されたときに、外科用ツールの構成要素と係合して駆動するように構成されている。各トルクカップラー314は、外科用ツール上に位置するそれぞれ対応する器具入力部に挿入される。複数のトルクカップラー314はまた、外科用ツールと外科用ツールホルダ308との間の、回転方向の位置揃えを維持するように機能してもよい。図3に示すように、各トルクカップラー314は、取り付けインターフェース310から外側に突出する円筒形突出部として成形される。ノッチ318が、円筒形突出部の外側表面エリアに沿って配置されてもよい。一部の実施形態では、ノッチ318の配置は、スプラインインターフェースを形成する。外科用ツール上の器具入力部は、トルクカップラー314に対して相補的な形状を有するように構成されている。例えば、図3には示されていないが、外科用ツールの器具入力部は、円筒形の形状であってもよく、各トルクカップラー314上の複数のノッチ318と相互に嵌合し、それによってノッチ318に対してトルクを付与する、複数の隆起部を有してもよい。代替的な実施形態では、円筒形突出部の上面が、それぞれ対応する器具入力部にある複数の隆起部と嵌合するように構成された複数のノッチ318を含んでもよい。この構成では、各トルクカップラー314は、それぞれ対応する器具入力と完全に係合する。
【0040】
加えて、各トルクカップラー314は、トルクカップラー314が並進することを可能にするバネに連結されてもよい。図3の実施形態では、バネは、各トルクカップラー314を、取り付けインターフェース310から離れるよう、外向きに勢いよく移動させるように付勢する。バネは、軸線方向の並進を生じさせる、すなわち、取り付けインターフェース310から離れる方向には延びて、外科用ツールホルダ308に向かっては後退するように構成されている。一部の実施形態では、各トルクカップラー314は、外科用ツールホルダ308の中に部分的に後退して入ることができる。他の実施形態では、各トルクカップラー314は、各トルクカップラーの有効高さが取り付けインターフェース310に対してゼロになるように、外科用ツールホルダ308の中に完全に後退して入ることができる。図3の実施形態では、各トルクカップラー314の並進運動は、作動機構によって作動され、この作動機構については、図7図8に関連して更に詳細に説明される。様々な実施形態では、各トルクカップラー314は、単一のバネ、複数のバネ、又は各トルクカップラーのそれぞれに対応するバネに結合され得る。
【0041】
加えて、各トルクカップラー314は、そのトルクカップラーをいずれかの方向に回転させるそれぞれ対応するアクチュエータによって駆動される。したがって、各トルクカップラー314が器具入力部と係合されると、各トルクカップラー314は、外科用ツール内で、プルワイヤを締め付けたり緩めたりして、外科用ツールのエンドエフェクタを操作するための力を伝達することができる。図3の実施形態では、IDM300は、5つのトルクカップラー314を含むが、他の実施形態では、その数は、外科用ツールのエンドエフェクタの所望の自由度の数に応じて異なり得る。一部の実施形態では、無菌アダプタに連結された切開ドレープを使用して、IDM300と外科用ツールとの間に無菌境界を形成し得る。これらの実施形態では、外科用ツールがIDM300に固定されるときに、無菌アダプタが、取り付けインターフェース310と外科用ツールとの間に位置付けられてもよく、無菌アダプタは、各トルクカップラー314からそれぞれの器具入力部に、力を伝達するように構成されてもよい。
【0042】
図3に示されるIDM300の実施形態は、外科用ロボットシステムと共に、様々な構成で使用されてもよい。所望の構成は、患者に対して実施されている外科手術の種類又は外科手術中に使用される外科用ツールの種類に依存して異なるものとなり得る。例えば、IDM300の所望の構成は、腹腔鏡手術の場合と内視鏡手術の場合とでは異なっていてもよい。
【0043】
第1の構成では、IDM300は、外科手術中に取り付けインターフェース310が患者より近位側になるように、外科用アームに取り外し可能に又は固定的に取り付けられてもよい。この構成(以下、「前方マウント構成」と称する)では、外科用ツールは、患者よりも近位側で、IDM300に固定される。前方マウント構成で使用するための外科用ツールは、外科用ツールの細長体が、外科用ツールの取り付けインターフェースとは反対側から延在するような構造を有する。外科用ツールが前方マウント構成のIDM300から取り外される際には、外科用ツールは、患者に対して近位方向に取り外される。
【0044】
第2の構成では、IDM300は、外科手術中に取り付けインターフェース310が患者より遠位側になるように、外科用アームに取り外し可能に又は固定的に取り付けられてもよい。この構成(以下、「後方マウント構成」と称する)では、外科用ツールは、患者よりも遠位側の側でIDM300に固定される。後方マウント構成で使用するための外科用ツールは、外科用ツールの細長体が外科用ツールの取り付けインターフェースから延在するような構造を有する。この構成は、IDM300からのツール除去中の患者の安全性を高めるものである。外科用ツールが後方マウント構成のIDM300から取り外される際には、外科用ツールは、患者から遠位方向に取り外される。
【0045】
第3の構成では、IDM300は、図1Aに示される構成と同様に、外科用ツールの少なくとも一部分がIDM300の上方に位置するように、外科用アームに取り外し可能に又は固定的に取り付けられ得る。この構成(以下、「上部構成」又は「貫通構成」と称する)では、外科用ツールのシャフトは、IDM300を通って下方に延在する。
【0046】
外科用ツールの一部特定の構成は、その外科用ツールが、前方マウント構成又は後方マウント構成のいずれかのIDMと共に使用され得るような構造を有し得る。これらの構成において、外科用ツールは、外科用ツールの両端に取り付けインターフェースを含む。一部の外科手術では、医師がIDMの構成を、実行される外科手術の種類に応じて決定し得る。例えば、腹腔鏡器具は、他の外科用ツールに対して特に長い場合があるが、後方マウント構成は、腹腔鏡手術に有益であり得る。外科手術中に外科用アームがあちこちに移動する、例えば、医師が外科用ツールの遠位端を、患者の遠隔位置(例えば、肺又は血管)に向ける場合に、腹腔鏡器具の長さが長ければ、外科用アームはより大きな弧を描いて旋回することになる。有利なことには、後方マウント構成は、通路312を通して細長体の一部分を受容し、それによって外科用ツールを位置付けるために外科用アームによって必要とされる動作の弧を小さくすることによって、外科用ツールの有効ツール長を減少させる。
【0047】
図5及び図6は、一実施形態による、図3の器具装置マニピュレータ300に固定された、例示的な外科用ツール500の斜視分解図を示す。外科用ツール500は、ハウジング502と、細長体504と、複数の器具入力部600と、を含む。前述したように、細長体504は、腹腔鏡、内視鏡、又はエンドエフェクタを有する他の外科用ツールであってもよい。図示されるように、複数のトルクカップラー314は、取り付けインターフェース310から外側に突出し、外科用ツールの器具入力部600と係合する。器具入力部600の構造は、図6に見ることができ、器具入力部600は、確実な手術ツールの係合を保証するために、トルクカップラー314に対応する幾何学形状を有する。
【0048】
外科手術中に、切開ドレープを使用して、IDM300と外部環境(すなわち、手術室)との間に、無菌境界を維持してもよい。図5図6の実施形態では、切開ドレープは、無菌アダプタ506と、第1の突出部508と、第2の突出部510とを備える。図5図6には示されていないが、無菌シートが、無菌アダプタ及び第2の突出部に接続され、IDM300の周囲にゆるやかにかかり、無菌境界を生成する。
【0049】
無菌アダプタ506は、自身がIDM300に固定されると、IDM300と外科用ツール500との間に無菌インターフェースを生成するように構成される。図5図6の実施形態では、無菌アダプタ506は、IDM300の取り付けインターフェース310を覆うディスク状の幾何学形状を有する。無菌アダプタ506は、外科用ツール500の細長体504を受容するように構成された中央孔508を備える。この構成では、無菌アダプタ506は、外科用ツール500がIDM300に固定されたときに、取り付けインターフェース310と外科用ツール500との間に位置し、外科用ツール500とIDM300との間に無菌境界を生成し、細長体504が通路312を通過することを可能にする。特定の実施形態では、無菌アダプタ506は、外科用ツールホルダ308と共に回転すること、複数のトルクカップラー314からの回転トルクを外科用ツール500に伝達すること、IDM300と外科用ツール500との間に電気信号を通すこと、又はそれらの何らかの組み合わせを実行することが可能であり得る。
【0050】
図5図6の実施形態では、無菌アダプタ506は、複数のカップラー512を更に備える。カップラー512の第1の側部は、それぞれのトルクカップラー314と係合するように構成され、カップラー512の第2の側部は、それぞれの器具入力部600と係合するように構成されている。
【0051】
複数のトルクカップラー314の構造と同様に、各カップラー512は、複数のノッチを含む円筒形突出部としての構造を有する。カップラー512の各側部は、それぞれ対応するトルクカップラー314及びそれぞれ対応する器具入力部600と完全に係合するための、相補的な幾何学形状を有する。一部の実施形態では、1つ以上の器具入力部600は、機械的入力部と呼ばれる。各カップラー512は、それぞれ対応するトルクカップラー314と共に、時計回り又は反時計回り方向に回転するように構成されている。この構成により、各カップラー512は、IDM300の複数のトルクカップラー314から外科用ツール500の複数の器具入力部600に回転トルクを伝達して、外科用ツール500のエンドエフェクタを制御することができる。
【0052】
第1の突出部508及び第2の突出部510は、IDM300の通路312を通過し、通路312内で互いに嵌合するように構成されている。各突出部508、510は、細長体504が突出部、ひいては通路312を通過することを可能にするような構造を有している。第1の突出部508及び第2の突出部510の接続により、IDM300と外部環境(すなわち、手術室)との間に、無菌境界が形成される。
【0053】
IV.外科用ツールの係合解除
図7は、一実施形態による、切開ドレープの無菌アダプタ506に対する外科用ツール500の係合及び係合解除のための作動機構の拡大斜視図を示す。図3に関して説明したようなIDM300の構成により、外科手術中に患者に外科用ツールを挿入する際の軸線は、外科用ツールの取り外しの際の軸線と同じである。外科用ツールの取り外し中の患者の安全性を確保するために、外科用ツール500は、外科用ツール500を取り外す前に、無菌アダプタ506及びIDM300から脱関節接合され得る。図7の実施形態では、複数のカップラー512は、軸線方向に並進する、すなわち、無菌アダプタ506から離れる方向には延びて、無菌アダプタ506に向かっては後退するように構成されている。複数のカップラー512の並進は、作動機構によって作動され、作動機構は、複数のカップラー512をそれぞれ対応する器具入力部600から係合解除することによって、外科用ツール500の脱関節接合を確実にする。作動機構は、楔702及びプッシャープレート704を含む。
【0054】
楔702は、外科用ツールの係合解除のプロセス中にプッシャープレート704を作動させる構造的構成要素である。図7の実施形態では、楔702は、外科用ツール500のハウジング502内に、ハウジング502の外周に沿って位置する。図示されるように、楔部702は、プッシャープレート704との接触が、外科用ツール500のハウジング502が無菌アダプタ506に対して時計回りに回転した場合に、プッシャープレート704を無菌アダプタ506内に押し下げるように配向される。代替的実施形態では、楔702は、外科用ツール500のハウジング502が時計回りではなく反時計回りに回転するように構成されてもよい。アーチ形状の傾斜面などの楔形以外の幾何学形状を、その構造体が回転時にプッシャープレートを押し下げることができることを前提として採用してもよい。
【0055】
プッシャープレート704は、複数のカップラー512を外科用ツール500から係合解除させるアクチュエータである。複数のトルクカップラー314と同様に、カップラー512のそれぞれは、各カップラー512を,無菌アダプタ506から離れる方向に外向き勢いよく移動させるように付勢する1つ以上のバネに連結されてもよい。複数のカップラー512は、軸線方向に並進する、すなわち、無菌アダプタ506から離れる方向には延びて、無菌アダプタ506の中に後退するように、更に構成されている。プッシャープレート704は、カップラー512の並進運動を作動させる。プッシャープレート704が楔部702によって押し下げられると、プッシャープレート704は、各カップラー512に連結された1つ又は複数のばねを圧縮させ、その結果として、カップラー512が無菌アダプタ506の中に後退して行くことになる。図7の実施形態では、プッシャープレート704は、複数のカップラー512の同時後退を引き起こすように構成されている。代替的実施形態では、複数のカップラー512が、特定の順序又はランダムな順序で後退し得る。図7の実施形態では、プッシャープレート704は、複数のカップラー512を無菌アダプタ506の中に、部分的に後退させる。この構成により、外科用ツール500が取り外される前に、外科用ツール500が、無菌アダプタ506から脱関節接合されることが可能になる。この構成により、ユーザーは、外科用ツール500を取り外すことなく、任意の所望の時点で、外科用ツール500を無菌アダプタ506から脱関節接合させることが可能になる。代替的実施形態では、測定された各カップラー512の有効高さがゼロとなるように、複数のカップラー512を無菌アダプタ506の中に、完全に後退させることができる。一部の実施形態では、プッシャープレート704は、複数のトルクカップラー314を、複数のそれぞれ対応するカップラー512と同期して後退させることができる。
【0056】
図8A及び図8Bは、一実施形態による、外科用ツールを無菌アダプタに対して係合及び係合解除するプロセスを示す。図8Aは、固定位置にある無菌アダプタ506及び外科用ツール500を示すが、これらの2つの構成要素は一つに固定され、複数のカップラー512が、外科用ツール500のそれぞれ対応する器具入力部600と完全に係合された状態である。図8Aに示すような固定位置を実現するために、外科用ツール500の細長体504(図示せず)は、外科用ツール500と無菌アダプタ506との嵌合表面どうしが接触するまで、無菌アダプタ506の中央孔508(図示せず)を通過させられ、外科用ツール500及び無菌アダプタ506は、ラッチ機構によって互いに固定される。図8A及び図8Bの実施形態では、ラッチ機構は、出っ張り802とラッチ804とを備える。
【0057】
出っ張り802は、ラッチ804を固定位置に固定する構造的構成要素である。図8Aの実施形態では、出っ張り802は、外科用ツール500のハウジング502内に、ハウジング502の外周に沿って位置する。図8Aに示すように、出っ張り802は、ラッチ804上の突出部の下方に置かれるように配向され、それによって、図7に関して説明したように、複数のカップラー512の勢いよく跳び上がった状態により、ラッチ804及びその結果無菌アダプタ506が、外科用ツール500から引き離されることを防止するように配向される。
【0058】
ラッチ804は、固定位置において出っ張り802と嵌合する構造的構成要素である。図8Aの実施形態では、ラッチ804は、無菌アダプタ506の嵌合表面から突出する。ラッチ804は、外科用ツール500が無菌アダプタ506に固定されたときに、出っ張り802に当接するように構成された突出部を備える。図8Aの実施形態では、外科用ツール500のハウジング502は、外科用ツール500の残りの部分とは独立して回転することができる。この構成により、ハウジング502は、無菌アダプタ506に対して回転することが可能になり、それにより出っ張り802はラッチ804に対して固定され、その結果、外科用ツール500が無菌アダプタ502に固定される。図8Aの実施形態では、ハウジング502は、固定位置を実現するために反時計回りに回転されるが、他の実施形態では時計回りに回転するように構成されてもよい。代替的実施形態では、出っ張り802及びラッチ804は、無菌アダプタ506及び外科用ツール500を固定位置にロックする、様々な幾何学形状を有してもよい。
【0059】
図8Bは、固定されていない位置にある無菌アダプタ506及び外科用ツール500を図示しており、外科用ツール500は、無菌アダプタ506から取り外され得る状態である。前述したように、外科用ツール500のハウジング502は、外科用ツール500の残りの部分とは独立して回転することができる。この構成により、複数のカップラー512が外科用ツール500の器具入力部600と係合している間でも、ハウジング502が回転可能になっている。固定されている位置から固定されていない位置へと移行するために、ユーザーは、外科用ツール500のハウジング502を、無菌アダプタ506に対して時計回りに回転させる。この回転の間、楔702はプッシャープレート704と接触し、プッシャープレート704が楔702の角度付き平面に対して摺動する際にプッシャープレート704を漸進的に押し下げて、複数のカップラー512を無菌アダプタ506の中に後退させ、複数の器具入力部600から係合解除させる。更に回転させると、ラッチ804が、楔702と同様の構造を有する軸線カム806に接触する。ラッチ804が回転中に軸線カム806に接触すると、軸線カム806は、ラッチ804が出っ張り802から変位するように、ラッチ804を外科用ツール500から離すように外向きに屈曲させる。この固定されていない位置では、複数のカップラー512が後退させられて、図8Bの実施形態では、外科用ツール500が、無菌アダプタ506から取り外され得る。他の実施形態では、軸線カム806は、回転によってラッチ804が外側に屈曲するような、様々な幾何学形状を有してもよい。
【0060】
代替的実施形態では、外科用ツール500のハウジング502の回転方向は、ラッチ804を出っ張り802から固定解除するために反時計回りで回転するものとして構成されてもよい。また代替的実施形態は、同様の構成要素を含んでもよいが、構成要素の位置は、無菌アダプタ506と外科用ツール500との間で切り替えられてもよい。例えば、出っ張り802が無菌アダプタ506上に配置される一方で、ラッチ804が外科用ツール500上に配置され得る。他の実施形態では、無菌アダプタ506の外側部分は、外科用ツール500のハウジング502ではなく、複数のカップラー512に対して回転可能であってもよい。代替的実施形態はまた、外科用ツール502のハウジング502が器具入力部600に対して完全に回転されたときに、ハウジング502の回転をロックするための機構を含んでもよい。この構成は、器具入力部600がカップラー512から脱関節接合された場合に、外科用ツールが回転するのを防止する。一部の実施形態では、カップラー512の後退及び延伸は、トルクカップラー314のそれぞれの後退及び延伸と結合され、トルクカップラー314と係合されたカップラー512が一緒に並進するようにしてもよい。
【0061】
図9A及び9Bは、別の実施形態による、無菌アダプタに対する外科用ツールの係合及び係合解除のプロセスを示す。図9A及び図9Bの実施形態では、無菌アダプタ900が、外科用ツール904を無菌アダプタ900に固定する外側バンド902を含んでもよい。図9A及び9Bに示すように、外科用ツール902は、ハウジング908の外側表面上に、傾斜面906を備える。傾斜面906は、ノッチ910を含み、ノッチ910は、無菌アダプタ900の外側バンド902の内側表面上に配置された円形突出部912を、受容するように構成されている。外側バンド902は、無菌アダプタ900及び外科用ツール904とは独立して、かつそれらに対して相対的に回転可能である。外側バンド902が第1の方向に回転すると、円形突出部912は、円形突出部912がノッチ910内に入れ子状態になるまで傾斜面906の表面を滑り上がり、それによって無菌アダプタ900及び外科用ツール904を一緒に固定する。外側バンド902が第2の方向に回転すると、無菌アダプタ900及び外科用ツール904は互いの固定を解除される。特定の実施形態では、この機構は、図7及び図8に関連して説明されるように、無菌アダプタ900上の複数のカップラー914の脱関節接合に連結されてもよい。
【0062】
外科用ツールの係合解除の代替的実施形態は、インピーダンスモードなどの追加の機能を含んでもよい。インピーダンスモードでは、外科用ロボットシステムは、外科用ツールがユーザーによって無菌アダプタから取り外され得るかどうかを制御し得る。ユーザーは、外科用ツールの外側ハウジングを回転させ、外科用ツールを無菌アダプタから固定解除することによって、係合解除機構を始動させ得るが、外科用ロボットシステムは、器具入力部からカップラーを解放しなくてもよい。外科用ロボットシステムをインピーダンスモードに遷移させて初めてカップラーが解放され、ユーザーは外科用ツールを取り外すことができるようになる。外科用ツールを係合させたまま維持する利点は、外科用ツールが除去される前に、外科用ロボットシステムが外科用ツールのエンドエフェクタを制御し、ツールの除去のためにそれらを位置付け、外科用ツールへの損傷を最小化できることである。インピーダンスモードを起動するため、プッシャープレート704がある特定の距離まで押し込まれ得るように、プッシャープレート704はハードストップを有していてもよい。一部の実施形態では、プッシャープレートのハードストップは、ハードストップが外科用ツールのハウジングの最大回転量と一致するように調節可能であってもよい。したがって、限度いっぱいまで回転すると、プッシャープレートによってハードストップもかかるようになっている。複数のセンサは、これらの事象を検出して、インピーダンスモードをトリガーしてもよい。
【0063】
特定の状況では、インピーダンスモードが望ましくない場合がある外科手術中に、緊急でツールを取り外すことを必要とする場合がある。一部の実施形態では、ハードストップが緊急時に生じ得るように、プッシャープレートのハードストップが、順応性を有してもよい。プッシャープレートのハードストップは、ばねに連結されて、追加的力に応じて、ハードストップが生じることを可能にしてもよい。他の実施形態では、プッシャープレートのハードストップは、外科用ツールを無菌アダプタに固定するラッチを取り外すことによって、緊急でツールを取り外すことができるように、剛性を有していてもよい。
【0064】
V.転動機構
図10Aは、一実施形態による、器具装置マニピュレータ300内で、外科用ツールホルダ308を転動させるための機構の斜視図を示す。図10Aに示すように、取り付けインターフェース310が取り外されて、転動機構が露出する。この機構により、外科用ツールホルダ308は、回転軸線316を中心としていずれかの方向に連続的に回転又は「転動」することが可能になる。転動機構は、ステーター歯車1002及びロータ歯車1004を備える。
【0065】
ステーター歯車1002は、ロータ歯車1004と嵌合するように構成された固定歯車である。図10Aの実施形態では、ステーター歯車1002は、リングの内周に沿ってギア歯を備えるリング形状の歯車である。ステーター歯車1002は、取り付けインターフェース310の後ろで外側ハウジング306に固定的に取り付けられている。ステーター歯車1002は、ロータ歯車1004と同じピッチを有しており、ステーター歯車1002の歯車歯が、ロータ歯車1004の歯車歯と嵌合するように構成されている。ステーターギア1002は、剛性材料(例えば、金属又は硬質プラスチック)から構成されてもよい。
【0066】
ロータ歯車1004は、外科用ツールホルダ308の回転を誘導するように構成された回転歯車である。図10Aに示すように、ロータ歯車1004は、その外周に沿って歯車歯を備える円形歯車である。ロータ歯車1004は、ロータ歯車1004の歯車歯がステーター歯車1002の歯車歯と噛み合うように、取り付けインターフェース310の後方及びステーター歯車1002の内周内に位置付けられる。前述したように、ロータ歯車1004及びステーター歯車1002は、同じピッチを有する。図10Aの実施形態では、ロータ歯車1004は、ロータ歯車1004を時計回り又は反時計回り方向に回転させる駆動機構(例えば、モータ)に連結されている。駆動機構は、外科用ツールホルダアセンブリ304内の統合コントローラから信号を受信してもよい。駆動機構がロータ歯車1004を回転させると、ロータ歯車1004がステーター歯車1002のギア歯に沿って移動し、それによって外科用ツールホルダ308を回転させる。この構成では、ロータ歯車1004は、いずれかの方向に連続的に回転することができ、その結果、外科用ツールホルダ308が回転軸線316を中心とした無限の転動を実現することが可能になる。代替的実施形態では、例えばリング歯車及びピニオン歯車の構成などの無限の転動を可能にするために、同様の機構を使用してもよい。
【0067】
図10Bは、一実施形態による、器具装置マニピュレータ300の断面図を示す。図10Bに示されるように、転動機構は、複数のベアリング1006と連結される。ベアリングは、可動部品どうしの間の摩擦を低減し、固定軸線の周りの回転を促進する機械的構成要素である。1つのベアリングのみでも、外科用ツールホルダ308が外側ハウジング306内で回転する際に、半径方向又はねじり荷重を支持することができる。図10Bの実施形態では、IDM300は、外科用ツールホルダ308に固定的に取り付けられた2つの軸受1006a、1006bを含み、軸受1006内の複数の構成要素(ボール又は円筒など)が外側ハウジング306と接触するようになっている。第1の軸受1006aは、取り付けインターフェース310の後方の第1の端部に固定され、第2の軸受1006bは第2の端部に固定される。この構成は、外科用ツールホルダ308が外側ハウジング306内で回転する際に、外科用ツールホルダ308の第1の端部と第2の端部との間の剛性及び支持を改善する。代替的実施形態は、外科用ツールホルダの長さに沿って、追加の支持を提供する追加の軸受を含んでもよい。
【0068】
図10Bはまた、一実施形態による、IDM300内の封着構成要素を示す。IDM300は、複数のOリング1008と、2つの表面間の接合部を封止して流体が接合部に入るのを防止するように構成された複数のガスケット1010とを含む。図10Bの実施形態では、IDMは、外側ハウジングの接合部と、外科用ツールホルダ308内の接合部間のガスケット1010a、1010bとの間に、Oリング1008a、1008b、1008c、1008d、1008eを含む。この構成は、外科手術中に、IDM300内の構成要素の無菌性を維持するのに役立つ。ガスケット及びOリングは、典型的には、強力なエラストマー材料(例えば、ゴム)から構成される。
【0069】
VI.電気的構成部分
図10Cは、一実施形態による、器具装置マニピュレータの内部部品及び一部特定の電気部品の部分分解斜視図を示す。外科用ツールホルダ308の内部部品は、複数のアクチュエータ1102、と、モータと、ギアヘッド(図示せず)と、トルクセンサ(図示せず)と、トルクセンサ増幅器1110と、スリップリング1112と、複数のエンコーダ基板1114と、複数のモータ電源基板1116と、統合コントローラ1118と、を含む。
【0070】
複数のアクチュエータ1102は、複数のトルクカップラー314のそれぞれの回転を駆動する。図10Cの実施形態では、例えばアクチュエータ1102a又は1102bなどのアクチュエータは、モータシャフトを介してトルクカップラー314に連結される。モータシャフトは、モータシャフトがトルクカップラー314に確実に嵌合することを可能にする複数の溝を含むような、キー付きシャフトであってもよい。アクチュエータ1102は、モータシャフトを時計回り又は反時計回り方向に回転させ、それによって、それぞれ対応するトルクカップラー314をその方向に回転させる。一部の実施形態では、モータシャフトは、ねじり剛性を有しながらも、ばね適合性を有していてもよく、モータシャフト及びしたがってトルクカップラー314を回転させ、軸線方向に並進させることができる。この構成により、複数のトルクカップラー314が、外科用ツールホルダ308の中で、後退したり延伸したりすることが可能になる。各アクチュエータ1102は、モータシャフトを回転させる方向及び量を示す電気信号を、統合コントローラ1118から受信してもよい。図10Cの実施形態では、外科用ツールホルダ308は、5つのトルクカップラー314、及びその結果として、5つのアクチュエータ1102を含む。
【0071】
モータは、外側ハウジング306内の外科用ツールホルダ308の回転を駆動する。モータは、アクチュエータのうちの1つと構造的に同等であってもよいが、ただし、モータは、外側ハウジング306に対して相対的に外科用ツールホルダ308を回転させるために、ロータ歯車1004及びステーター歯車1002(図10Aを参照)に連結されている。モータは、ロータ歯車1004を時計回り又は反時計回り方向に回転させ、それによってロータ歯車1004をステーター歯車1002のギア歯の周りを移動させる。この構成により、外科用ツールホルダ308は、ケーブル又はプルワイヤの潜在的な巻き上げによって妨げられることなく、連続的に転動又は回転することが可能になる。モータは、モータシャフトを回転させる方向及び量を示す電気信号を、統合コントローラ1118から受信してもよい。
【0072】
ギアヘッドは、外科用ツール500に送達されるトルクの量を制御する。例えば、ギアヘッドは、外科用ツール500の器具入力部600に送達されるトルクの量を増加させ得る。代替的実施形態は、ギアヘッドが器具入力部600に送達されるトルクの量を減少させるように構成されてもよい。
【0073】
トルクセンサは、回転している外科用ツールホルダ308上に生成されるトルクの量を測定する。図10Cに示される実施形態では、トルクセンサは、時計回り及び反時計回り方向のトルクを測定することができる。トルク測定値は、外科用ツールの複数のプルワイヤに特定の張力を維持するために使用され得る。例えば、外科用ロボットシステムの一部の実施形態は、自動張力付与機能を有してもよく、外科用ロボットシステムに電力を供給するか、又は外科用ツールをIDMと係合させると、外科用ツールのプルワイヤに、張力があらかじめかけられる。各プルワイヤにかかっている張力の量が、閾値量に達して、プルワイヤが張るのにちょうど十分なだけの張力をかけられるようにすることができる。トルクセンサ増幅器1110は、回転する外科用ツールホルダ308上で生成されたトルクの量を測定する信号を増幅するための回路を備える。一部の実施形態では、トルクセンサはモータに装着されている。
【0074】
スリップリング1112は、静止構造体から回転構造体への電力及び信号の伝達を可能にする。図10Cの実施形態では、スリップリング1112は、図10Dのスリップリング1112の更なる斜視図にも示されるように、外科用ツールホルダ308の通路312と位置揃えされるように構成された中央孔を含むリングとしての構造を有する。スリップリング1112の第1の側部は、複数の同心溝1120を含む一方、スリップリング1112の第2の側部は、図3に関連して説明したように、外科用アーム及び基部302から提供される電気的接続のための複数の電気部品を含む。スリップリング1112は、これらの電気的接続に用いる空間を割り当てるための特定の距離だけ外側ハウジング306から離れて、外科用ツールホルダ308の外側ハウジング306に固定される。複数の同心溝1120は、統合コントローラに取り付けられた複数のブラシ1122と嵌合するように構成されている。溝1120とブラシ1122との間の接触により、外科用アーム及び基部から外科用ツールホルダへ、電力及び信号が伝達されるのが可能になる。
【0075】
複数のエンコーダ基板1114は、外科用ロボットシステムからスリップリングを通して受信した信号を読み取り、処理する。外科用ロボットシステムから受信した信号としては、外科用ツールの回転量及び回転方向を示す信号、外科用ツールのエンドエフェクタ及び/又はリスト部の回転量及び方向を示す信号、外科用ツール上の光源を動作させる信号、外科用ツール上のビデオ又は撮像装置を動作させる信号、及び外科用ツールの様々な機能を動作させる他の信号が挙げられる。エンコーダ基板1114のそのような構成により、信号処理全体が外科用ツールホルダ308内で完全に実行されることが可能になる。複数のモータ電源基板1116はそれぞれ、モータに電力を供給するための回路を備える。
【0076】
統合コントローラ1118は、外科用ツールホルダ308内の演算デバイスである。図10Cの実施形態では、統合コントローラ1118は、外科用ツールホルダ308の通路312と位置揃えされるように構成された中央孔を含むリングとしての構造を有する。統合コントローラ1118は、統合コントローラ1118の第1の側部上に設けられた複数のブラシ1122を含む。ブラシ1122はスリップリング1112に接触し、外科用ロボットシステムから外科用アーム、基部302を通じて送達され、最終的にスリップリング1112を通って統合コントローラ1118に送達される信号を受信する。統合コントローラ1118は、信号を受信した結果、様々な信号を、外科用ツールホルダ308内のそれぞれ対応する構成要素に送信するように構成される。一部の実施形態では、エンコーダ基板1114及び統合コントローラ1118の機能は、エンコーダ基板1114及び統合コントローラ1118が同じ機能又はそれらの何らかの組み合わせを実行し得るように、本明細書に記載されるものとは異なる方式で分散されてもよい。
【0077】
図10Dは、一実施形態による、器具装置マニピュレータの内部部品及びその一部特定の電気部品の部分分解斜視図を示す。図10Dの実施形態は、2つのエンコーダ基板1114a及び1114bと、トルクセンサ増幅器1110と、3つのモータ電源基板1116a、1116b、及び1116cとを含む。これらの構成要素は、統合コントローラ1118に固定され、統合コントローラ1118から垂直に延在して、外方向に突出する。この構成は、複数のアクチュエータ1102及びモータを電気基板内に配置するための余地を提供する。
【0078】
図10Cに関して論じたように、スリップリング1112は、外側ハウジング306から特定の距離離れて固定される。図10Dの実施形態では、スリップリング1112と外側ハウジング306との間に、外科用アームとベース302とからスリップリング1112への電気的接続のための正しい空間の割り当てを確保するために、スリップリング1112は、複数のアライメントピン、複数のコイルばね、及びシムによって支持される。スリップリング1112は、スリップリング1112の中心孔の両側に、アライメントピンの第1の側部を受け入れるように構成された穴1124を含み、整列ピンの第2の側部は、外側ハウジング306のそれぞれ対応する穴に挿入される。アライメントピンは、剛性材料(例えば、金属又は硬質プラスチック)から構成されてもよい。複数のコイルばねは、スリップリング1112の中心の周りに固定され、スリップリング1112と外側ハウジング306との間の空間を橋渡し、接触を維持するように構成されている。有益なことには、コイルばねは、IDM300に対するあらゆる衝撃を吸収し得る。シムは、スリップリング1112の中心孔の周りに位置するリング形状のスペーサーであり、スリップリング1112と外側ハウジング306との間に更なる追加的支持を提供するものである。また、これらの構成要素は、統合コントローラ1118上の複数のブラシ1122が複数の同心溝1120に接触し、当接した状態で回転する際に、スリップリング1112に安定性を提供する。代替的実施形態では、アライメントピン、コイルばね、及びシムの数は、スリップリング1112と外側ハウジング306との間に所望の支持が実現されるまで変化させてもよい。
【0079】
図10Eは、一実施形態による、外科用ツールホルダ308を回転割り出しするための器具装置マニピュレータ300の電気部品の拡大斜視図を示す。回転割り出しでは、外科用ツール500の位置及び配向を、外科用ロボットシステムが連続的に認識するように、外側ハウジング306に対する外科用ツールホルダ308の相対的位置をモニタリングする。図10Eの実施形態は、マイクロスイッチ1202及びボス1204を含む。マイクロスイッチ1202及びボス1204は、外科用ツールホルダ308内に固定される。ボス1204は、外科用ツールホルダ308が回転する際にマイクロスイッチ1202と接触し、ボス1204と接触するたびにマイクロスイッチを作動させるように構成された外側ハウジング306上の構造物である。図10Eの実施形態では、マイクロスイッチ1202の単一の基準点として機能する1つのボス1204が存在する。
【0080】
VII.器具ベースの挿入アーキテクチャを有する器具
腹腔鏡手術、内視鏡手術、及び腔内手術に使用される器具を含む、様々なツール又は器具をIDM300に取り付けることができる。本明細書に記載される器具は、挿入のためにロボットアームに依存することを減らす、器具ベースの挿入アーキテクチャを含むという意味で、特に新規である。換言すれば、器具の挿入(例えば、手術部位に向かう)は、器具の設計及びアーキテクチャによって容易化することができるということである。例えば、器具が細長いシャフト及びハンドルを備える一部の実施形態では、器具のアーキテクチャは、挿入軸線に沿って細長いシャフトがハンドルに対して並進することを可能にする。
【0081】
本明細書に記載される器具は、多くの問題を緩和する、器具ベースの挿入アーキテクチャを組み込んでいる。器具ベースの挿入アーキテクチャを組み込まれていない器具は、挿入のためにロボットアーム及びそのIDMに依存することになる。この構成では、器具の挿入を実現するために、IDMを内外に移動させることを必要とする場合があり得る。そのことは、制御された方法で追加の質量を移動させるための、追加のモータパワー及びアームリンクのサイズを必要とする。加えて、体積がより大きくなると、はるかに大きい行程容積を作り出すことになり、その結果、動作中に衝突をもたらす可能性がある。器具ベースの挿入アーキテクチャが組み込まれたことによって、本明細書に記載される器具は、典型的には、器具自体(例えば、そのシャフト)が挿入軸線に沿って移動し、ロボットアームへの依存がより少なくなるため、揺動質量が低減されることになる。
【0082】
本明細書に記載される器具の一部の実施形態は、器具の挿入を可能にするだけでなく、干渉なしに器具のエンドエフェクタを作動させることも可能な、新規な器具ベースの挿入アーキテクチャを有してもよい。例えば、一部の実施形態では、器具は、エンドエフェクタを作動させるための第1の作動機構と、挿入軸線に沿った器具の一部分(例えば、シャフト)の並進を引き起こす第2の作動機構とを備える。第1の作動機構は、有利なことには、第2の作動機構から分離され、エンドエフェクタの作動が器具の挿入によって影響されず、逆もまた同様であるようになっている。
【0083】
図11は、一実施形態による、器具ベースの挿入アーキテクチャを有する器具の側面図を示す。器具1200の設計及びアーキテクチャにより、挿入のためのロボットアームの動きへの依存を少なくしながら、器具(例えば、そのシャフト)が挿入軸線に沿って並進することが可能になっている。
【0084】
器具1200は、細長いシャフト1202と、シャフト1202に接続されたエンドエフェクタ1212と、シャフト1202に連結されたハンドル1220とを備える。細長いシャフト1202は、近位部分1204と遠位部分1206とを有する管状部材を備える。細長いシャフト1202は、その外側表面に沿った1本以上のチャネル又は溝1208を備える。シャフト1202の断面図で最も視認可能な溝1208は、それを通して1本以上のワイヤ又はケーブル1230を受容するように構成されている。したがって、1本以上のケーブル1230は、細長いシャフト1202の外側表面に沿って延びることになる。他の実施形態では、ケーブル1230はまた、図21の概略図に示されるように、シャフト1202を貫通して延びてもよい。一部の実施形態では、シャフト1202を貫通するケーブル1230は露出していない。一部の実施形態では、これらのケーブル1230のうちの1つ以上の操作(例えば、IDM300を介した操作)により、エンドエフェクタ1212の作動がもたらされる。
【0085】
エンドエフェクタ1212は、手術部位に効果を提供するように設計された1つ以上の腹腔鏡、内視鏡又は腔内用構成要素を備える。例えば、エンドエフェクタ1212は、リスト部、把持器具、歯、ピンセット、はさみ、又はクランプを備えることができる。図11に示される本実施形態では、シャフト1202の外面上の溝1208に沿って延在する1本以上のケーブル1230が、エンドエフェクタ1212を作動させる。1本以上のケーブル1230は、シャフト1202の近位部分1204から、ハンドル1220を通って、シャフト1202の遠位部分1206に向かって延在し、そこでエンドエフェクタ1212を作動させる。
【0086】
器具ベースとも称され得る器具ハンドル1220は、一般に、IDM300の取り付けインターフェース310上の1つ以上のトルクカップラー314(図3に図示)と相互に嵌合されるように設計された、1つ以上の機械的入力部1224(例えば、レセプタクル、プーリ、又はスプール)を有する取り付けインターフェース1222を備えてもよい。取り付けインターフェース1222は、前方マウント、後方マウント、及び/又は上部マウントを介して、IDM300に取り付けることができる。物理的に接続、ラッチ、かつ/又は連結されると、器具ハンドル1220の嵌合された機械的入力部1224は、IDM300のトルクカップラー314と回転軸線を共有することができ、それによって、IDM300から器具ハンドル1220へのトルクの伝達が可能になる。一部の実施形態では、トルクカップラー314は、機械的入力部上のレセプタクルと嵌合するように設計されたスプラインを含んでもよい。エンドエフェクタ1212を作動させるケーブル1230は、ハンドル1220のレセプタクル、プーリ、又はスプールと係合し、それにより、IDM300から器具ハンドル1220へのトルクの伝達が、エンドエフェクタの作動をもたらすこととなる。
【0087】
器具1200の一部の実施形態は、エンドエフェクタ1212の作動を制御する第1の作動機構を備える。このような第1の作動機構の一実施形態が、図12に概略的に例示されている。加えて、器具1200は、シャフト1202が挿入軸線に沿ってハンドル1220に対して並進することを可能にする第2の作動機構を含む。このような第2の作動機構の一実施形態が、図17に示されている。有利なことには、第1の作動機構は第2の作動機構から分離され、エンドエフェクタ1212の作動がシャフト1202の並進によって影響されず、逆もまた同様であるようになっている。ツール又は器具1200に組み込むことができる第1及び第2の作動機構の実施形態は、図12図20に関連して以下により詳細に記載される。
【0088】
図12は、一実施形態による、エンドエフェクタを作動させるための第1の作動機構を示す概略図を示す。一部の実施形態では、第1の作動機構はN+1通りのリスト部動作を提供する。なお、NはN+1本のケーブルによって提供される自由度の数である。エンドエフェクタ1212を作動させるための第1の作動機構は、少なくとも1組のプーリ1250を通って延在する、少なくとも1本のケーブル又はケーブルセグメント1230aを備える。本実施形態では、第1のケーブル又はケーブルセグメント1230aはプーリ部材1250a、1250b、1250cを通って延在し、一方、第2のケーブル又はケーブルセグメント1230aは、プーリ部材1250d、1250e、1250fを通って延在する。少なくとも1本のケーブル1230aは、シャフト1202の近位端1205又はその付近で接地された後、少なくとも1組のプーリ1250(ハンドル1220内に位置する)を通って延在してから、エンドエフェクタ1212で終端する。ケーブルの総経路長は、各ケーブル1230aをシャフト1202の近位端1205又はその付近で接地することによって一定に保たれ、相対的長さの変更は、プーリ(例えば、プーリ部材1250b及び1250e)を互いに対して移動させることによって行われ(矢印を参照)、それによってエンドエフェクタ1212の作動が可能にされる。一部の実施形態では、プーリは、対応する機械的入力部1224(すなわち、第1の機械的入力部)の直線的動作又は回転動作を介して移動させることができる。この第1の作動機構は、有利なことには、作動プーリ1250に対する器具シャフト1202の自由な移動(以下に記載される第2の作動機構によって実現される)を可能にし、それによって、エンドエフェクタ1212の作動と同時に器具シャフト1202の挿入及び後退を可能にするための追加のケーブルが含まれることが可能になる。
【0089】
図13は、一実施形態による、図11、の器具の第1の作動機構の拡大側面図を示す。第1の作動機構は、図12に示される概略図に対応し、その第1の作動機構は、別の第2の作動機構が、ハンドル1220に対してシャフト1202を並進させるのを可能にしながら、エンドエフェクタ1212の作動を引き起こすように設計されている。図13に示されるように、ハンドル1220は、1組のベアリング、スプール、プーリ又はプーリ部材1250a、1250b、1250c、1250d、1250eを含む(なお、プーリ1250a、1250b、1250cは図12の同じ一組のプーリに対応する)。ケーブル1230aは、プーリ1250a、1250d、1250b、1250e、1250cを通って延在する。機械的入力部(図13の1224’として識別される)の操作は、プーリ1250d、1250b、1250eの回転動作を引き起こす。プーリ1250d、1250b、1250eの回転動作は、ハンドル1220内に受容されるケーブル1230の量を変化させ、それによってエンドエフェクタを作動させる。ケーブル1230a上のプーリの回転動作の効果を、図15及び図16に示す。回転動作の方向に応じて、プーリ1250d、1250eは、ハンドル1220内にケーブル1230を巻き取る(又は「引き取る」)か、あるいはハンドル1220内のケーブル1230aの巻をほどいて「送り出す」かすることができる。いずれにしても、ケーブル1230aの長さがハンドル1220内で変化し、それによってエンドエフェクタ1212の作動を引き起こす。図13の実施形態は、回転動作によって修正されるプーリシステムを描写しているが、他の実施形態では、プーリシステムは、直線的動作及び/又は回転動作によって修正され得る。加えて、当業者であれば、ハンドル1220内のケーブル1230aの量の、長さでの変化もまた、ケーブル張力を変化させることができることを理解するであろう。
【0090】
図14は、一実施形態による、図11の器具の第1の作動機構の拡大斜視図を示す。この図から、プーリ1250a、1250cのスプールを含む、プーリ1250a~1250eが細かいところで異なっているのを見ることができる。
【0091】
図15及び図16は、一実施形態による、図11の器具のプーリ部材1250eの作動前及び作動後の、プーリ部材1250e及びケーブルの正面図を示す。機械的入力部1224’にトルクを印加すると、プーリ1250e、1250b、及び1250dが回転する。図15に示されるように、プーリ1250eの作動前、ケーブル1230aは、プーリ1250eの片側に沿って延びることができる。図16に示されるように、プーリ1250eの作動後には、ケーブル1230aはプーリ1250eによって引き取られ、それによってハンドル1220内のケーブル1230aの量を増加させて、エンドエフェクタの作動を引き起こす。
【0092】
図11図16の実施形態は、相対的ケーブル長を変化させるために回転軸線上に取り付けられた1つ以上のプーリを開示しているが、他の実施形態では、位置を調整するためにレバー、歯車、又はトラックベースのシステム上にプーリを装着することが、追加の選択肢となっている。加えて、ツールの長さ方向に移動するボールスプライン回転シャフトもまた、機械的には遠隔の方法で力を伝達するために使用され得る。
【0093】
図17は、一実施形態による、シャフト並進のためのスプールを含む第2の作動機構の側面図を示す。第2の作動機構は、ハンドル1220に対してシャフト1202を、挿入軸線に沿って並進させるように設計されている。エンドエフェクタ1212を作動させる第1の作動機構と同様に、第2の作動機構もまた、ハンドル1220内に組み込まれ得る。
【0094】
第2の作動機構は、一組のスプール1270a、1270b、1270c、1270dに係合する、ケーブル又はケーブルセグメント1230bを備える。ケーブル1230bの一端は、シャフト1202の近位端1205又はその近くに取り付けられ得る一方で、ケーブル1230bの他端は、シャフト1202の遠位端1207又はその付近に取り付けられ得る。ケーブル1230bは、スプール1270bが巻取車軸である、スプール1270a、1270b、1270cの組を通って延在する。ハンドル1220の機械的入力部(すなわち、第2の機械的入力部)を回転させることにより、巻取車軸が回転し、それにより、ケーブル1230bを巻取車軸内に、あるいは巻取車軸外に駆動する。ケーブル1230bが巻取車軸の内外に駆動されると、これにより、シャフト1202が、ハンドル1220に対して並進する。有利なことには、シャフト1202の近位端及び遠位端の両方に取り付けられたケーブル1230bに十分な張力を事前にかけておくことによって、ケーブル1230bを内外に駆動するために摩擦力を利用でき、それによってシャフト1202をハンドル1220に対して滑りを起こすことなく動かすことができる。
【0095】
本実施形態では、巻取車軸1270bは、ゼロウォーク型巻取車軸を含む。他の実施形態、例えば図18及び図19に示されるようなものでは、ケーブルのウォークを可能にすることができる巻取車軸を、ハンドル1220に組み込むことができる。ゼロウォーク型巻取車軸アーキテクチャは、巻取車軸1270bを横切るケーブルのウォーク(ケーブルの全体の経路長に影響を及ぼしかつ張力を変化させ得る)を防止するために、溝上の螺旋角なしで巻取車軸1270bの周りのケーブル1230bの複数のラップを管理するのに役立つ。巻取車軸1270bの隣の傾斜上に追加のプーリ1270dを配置することにより、巻取車軸1270b上の平行経路にリダイレクトすることができ、巻取車軸1270b上のケーブル1230bのウォーク動作が消滅する。
【0096】
図18及び図19は、図17に示されるゼロウォーク型巻取車軸の代替的実施形態を提示するものである。これらの実施形態では、シャフトの挿入を駆動する巻取車軸は、第2の作動機構のアーキテクチャに組み込むことができる、大型の巻取車軸1270eである。駆動巻取車軸1270eが十分に大型であり、かつ挿入ストロークが十分に小さい場合には、巻取車軸の回転数は小さくなる。例えば、22mmの駆動巻取車軸1270e及び350mmの挿入ストロークの場合には、完全挿入範囲の巻取車軸1270eの回転数は5回転である。巻取車軸1270eのケーブルのウォーク範囲と比較して、十分に大きな距離だけケーブルが移動する場合、ケーブル上のフリート角及び挿入中の経路長の変化は、無視できるほど小さくなる。一部の実施形態では、フリート角は±2度の間であり得る。
【0097】
図18は、一実施形態による、シャフト並進のために単一のケーブルを使用する、代替的なスプールの斜視図を示す。代替的なスプールは、単一のケーブル1230bによって係合される大型の巻取車軸1270eを備える。この実施形態では、シャフト挿入駆動を作動させるために、単一のケーブル1230bは、駆動するのに十分な巻取車軸摩擦を得るのに十分大きなラップ角を有する。一部の実施形態では、単一のケーブル1230bは連続的であり、巻取車軸1270eの周囲に複数回(例えば、3、4回以上)巻き付いて、巻取車軸を駆動し挿入を駆動するのに十分大きいラップ角度を得ている。
【0098】
図19は、一実施形態による、シャフトの並進のために2本以上のケーブルを使用する、代替的なスプールの斜視図を示す。代替スプールは、単一のケーブル1230bの2つの別個のセグメント1230b’、1230b’’によって係合される大型の巻取車軸1270eを備える。セグメント1230b’、1230b’’のそれぞれは、巻取車軸1270e上で終端する。図18の実施形態とは異なり、本実施形態は、シャフトの挿入を駆動するために、巻取車軸の摩擦には依存しない。この実施形態では、ケーブル1230bは、外側に螺旋状になってから、上部及び底部の両方でスプールに終端される。図19に示される二重終端アプローチの利点は、ケーブル張力の損失に対して回復力に富んでいるということである。二重終端アプローチは、摩擦ではなく確動係合に依存するので、スリップは起こり得ない。
【0099】
図20は、一実施形態による、図18のスプールを含むハンドルの正面図を示す。この図から、ハンドル1220内のスプール(例えば、巻取車軸1270e)の取り得る位置の1つを見ることができる。有利なことには、エンドエフェクタ1212を作動させるために、追加のスプール及びプーリをハンドル1220内に提供することができる。例えば、図12に示されるエンドエフェクタ作動のためのプーリシステムを、図20のハンドルの中に組み込むことができる。したがって、ハンドル1220は、エンドエフェクタの作動及び駆動挿入の両方又はいずれか一方のための、複数の機構を組み込むことができる。図20に示されるように、ケーブル1230を巻取車軸1270e上に案内する1つ以上のプーリは、ケーブル距離を増加させるためにハンドルを横切って位置している。巻取車軸1270eのケーブルのウォーク範囲と比較して、十分に大きな距離だけケーブルが移動する場合、ケーブル上のフリート角及び挿入中の経路長の変化は、無視できるほど小さくなる。一部の実施形態では、従来の螺旋型巻取車軸を用いて、長さの変化及びフリート角を最小に保つことが可能である。
【0100】
図21は、一実施形態による、エンドエフェクタの作動及びシャフトの挿入のための代替的なアーキテクチャを示す概略図を示す。このアーキテクチャは、エンドエフェクタを作動させるための第1の作動機構と、シャフト挿入のための第2の作動機構とを組み込んでいる。先に説明した実施形態と同様に、第1の作動機構及び第2の作動機構は連結解除されても、エンドエフェクタの作動がシャフト挿入に影響を与えず、逆もまた同様である。しかしながら、図12の実施形態では、第1の作動機構が、エンドエフェクタを作動させるための1本以上のケーブルが、シャフトの近位部分及び遠位部分で終端しているが、本実施形態では、第1の作動機構が、挿入スプール(シャフト挿入のための第2の作動機構の一部としても使用される)で終端する、エンドエフェクタを作動させるための1本以上のケーブルを備える。このアーキテクチャの結果として、第2の作動機構を介したシャフト挿入の間、挿入スプールによって巻かれる1本以上のケーブルは、挿入スプールによって巻きをほどかれる1本以上のケーブル(エンドエフェクタを作動させるための第1の作動機構で使用される)の長さによって実質的に相殺される。第1の作動機構を介したエンドエフェクタの作動の間、挿入スプールから来るケーブルの経路長がトレードオフされる。
【0101】
図21に示すように、エンドエフェクタ作動及びシャフト挿入のための代替的アーキテクチャは、エンドエフェクタが位置する近位部分1304と遠位部分1306とを有するシャフト1302を備える。1つ以上のスプール1370a、1370b、1370c、1370d、1370e(それらはハンドルの一部である)は、シャフト1302の周りに位置している。スプール1370cは、挿入スプールを備える。挿入スプール1370cが第1の方向へ回転すると、ハンドルに対して第1の方向(例えば、挿入方向)へ、シャフトが並進させられる一方で、挿入スプール1370cが第2の方向に回転すると、ハンドルに対して第2の方向(例えば、後退方向)へ、シャフトが並進させられる。1本以上のケーブル又はケーブルセグメント1330aは、その一方の端部が、エンドエフェクタ(例えば、リスト部)で終端し、他方の端部が、挿入スプールで終端する。1つ以上の追加のケーブル又はケーブルセグメント1330bはまた、シャフト1302の遠位部分1306で、その近くで、又はそこに向かって終端する前に、挿入スプール1370cに端を発する。
【0102】
本実施形態では、直線的動作又は回転動作による、1つ以上のスプール(例えば、スプール1370a、1370d)の操作が、ハンドル内の1本以上のケーブル1330aの長さの変化を引き起こす、第1の作動機構が提供される。一部の実施形態では、ハンドル内の1本以上のケーブル1330aの長さの変化は、ハンドル内の1本以上のケーブル又はケーブルセグメントの経路長の変化を含み得る。この第1の作動機構では、1本以上のケーブル1330aは、「エンドエフェクタ」ケーブルと見なすことができる。エンドエフェクタの作動を引き起こすハンドル内の1本以上のケーブル1330aの長さのいかなる変化も、1本以上のケーブル1330bの長さによって相殺される。
【0103】
本実施形態では、直線的動作又は回転動作による挿入スプール1370cの操作が、ハンドル内の1本以上のケーブル1330bの長さの変化を引き起こす、第2の作動機構が提供される。この第2の作動機構では、1本以上のケーブル1330bは、「挿入」ケーブルと見なすことができる。シャフトの挿入又は後退を引き起こす、ハンドル内での1本以上のケーブル1330bの長さのいかなる変化も、1本以上のケーブル1330aの長さによって相殺される。挿入及び後退が進行している下では、1本以上の挿入ケーブル1330bが巻き取られる際に、等しい量の1本以上のエンドエフェクタケーブル1330aが払い出されるため、張力が維持される。1本以上のエンドエフェクタケーブル1330aの相対的な経路長は不変のままであるため、エンドエフェクタは挿入下では動かない。
【0104】
図22Aは、一実施形態による、図21のエンドエフェクタの作動及びシャフトの挿入ための代替的なアーキテクチャを組み込んだ器具の拡大正面図を示す。図22Bは、図21のエンドエフェクタの作動及びシャフトの挿入ための代替的なアーキテクチャを組み込んだ器具の上面斜視図を示す。器具1300は、図21に示される第1及び第2の作動機構を組み込んでおり、1つ以上のスプール1370a~1370eにそれぞれ対応する1つ以上の機械的入力部1324を備えるハンドル1320を含み、スプール(1370c)のうちの少なくとも1つが、挿入スプールを備える。1本以上のケーブル又はケーブルセグメント1330a’、1330a’’、1330a’’’、及び1330a’’’’はそれぞれ、別個の機械的入力部1324に対応するが、駆動スプール1370cで終端する。これらのケーブル1330a’、1330a’’、1330a’’’、及び1330a’’’’のそれぞれは、1本以上のケーブル1330a(図21の概略図に示される)に類似する1つ以上のスプールと係合することができる。第1の作動機構では、これらのケーブルは、エンドエフェクタケーブルとして機能し得るが、対応する機械的入力部1324の操作がハンドル内のケーブルの長さの変化を引き起こすようになっている。一部の実施形態では、ハンドル内の1本以上のケーブルの長さの変化は、ハンドル内の1本以上のケーブル又はケーブルセグメントの経路長の変化を含み得る。一部の実施形態では、ハンドル内のケーブルの経路長が変更される。場合によっては、ハンドル1320内の、エンドエフェクタを作動させる1本以上のケーブル1330a’、1330a’’、1330a’’’、1330a’’’’の長さの変化は、図21の同様の参照ケーブル1330bと類似しているケーブル1330bの長さによって相殺される。他の例では、純粋なエンドエフェクタ作動下では、ハンドル内のケーブル1330bの長さは変化しない。第2の作動機構では、ケーブル1330bは、挿入ケーブルとして機能することができるが、その対応する機械的入力部1324の操作が、ケーブル1330bを挿入スプール1370cの周囲に巻き付ける。シャフト挿入を引き起こす、挿入スプール1370cの周りに巻かれたケーブル1330bの量は、1本以上のケーブル1330a’、1330a’’、1330a’’’、1330a’’’’の巻きがほどかれている部分の長さによって相殺される。
【0105】
図23は、一実施形態による、器具のハンドル及びシャフトの上面斜視図を示す。シャフト1202は、ハンドル1220に対して並進可能である。この図から、回転するときにエンドエフェクタを作動させる1つ以上の機械的入力部1224(すなわち、第1の機械的入力部)を見ることができる。加えて、回転すると、ハンドル1220に対するシャフト1202の、挿入軸線に沿った並進を可能にする1つ以上の機械的入力部1324(すなわち、第2の機械的入力部)も見ることができる。取り付けインターフェース1222は、例えば、IDM300の取り付けインターフェース310上の1つ以上のトルクカップラー314(図3に示される)と相互嵌合するように設計された、1つ以上の機械的入力部1224、1324、例えば、レセプタクル、プーリ、又はスプールを含む。
【0106】
図24Aは、図12に示される挿入アーキテクチャを用いる器具シャフトの断面の概略図を示し、図24Bは、図21に示す代替的な挿入アーキテクチャを用いる器具シャフトの断面の概略図を示す。図示されていないが、図24A及び図24Bの断面のそれぞれは、その内部を通って延在する開口部又はルーメンを含む。図24Aに示すように、図12の挿入アーキテクチャは、シャフト1202の外面に沿って延在する溝又はチャネル1208を通って延在する、1本以上のケーブル1230をもたらす。対照的に、図24Bに示すように、図21の挿入アーキテクチャは、シャフト1202の外面に沿った、より少ない数の溝又はチャネル1308(ここでは単一のチャネル)を通って延在する、1本以上のケーブル1330bをもたらす。これは、図21の代替的アーキテクチャでは、ケーブルは、シャフト1302の本体内に延在するようにより傾斜しているためである。例えば、シャフト1302の外側にはエンドエフェクタケーブルは存在しない。シャフト1302の外側に延在するケーブルが少なくなると、図21のアーキテクチャは、外側表面上に延在する溝又はチャネルが少ない、全体的なより滑らかなシャフト表面をもたらすことができる。
【0107】
VIII.特定の器具用の挿入アーキテクチャの実施形態
上述のアーキテクチャ(例えば、図12及び図21に示されるアーキテクチャ)を使用して、エンドエフェクタを作動させ、器具の挿入に対処することができる。加えて、これらのアーキテクチャは、外科手術を支援するために、特定のタイプの器具に組み込むことができる。
【0108】
このような器具の1つは、血管シーラーである。血管シーラーでは、ナイフ又はカッターが組織を切断するために駆動され得る。一部の実施形態では、ナイフの動作は回転動作である。他の実施形態では、ナイフの運動は並進動作である。図25図27は、血管シーラーを介してナイフを駆動するために、血管シーラー器具に組み込むことができる異なるアーキテクチャを示す。これらの図に示されるアーキテクチャは、図12に示されるアーキテクチャ及び関連する機構と同様であるが、他の実施形態では、アーキテクチャは、図21に示されるアーキテクチャ及び関連する機構と同様であり得る。
【0109】
図25図27は、血管シーラー内でナイフを駆動するための異なるアーキテクチャを示す概略図である。アーキテクチャは、ケーブルどうしの間での経路長の差を生じさせ、この差動経路長変化をナイフの直線的動作に変換させる。図25及び図26の実施形態では、2本のケーブル1430a、1430bが、反対方向の張力で配置されているが、図27の実施形態では、単一のケーブル1430とばね1490とが反対方向の張力で使用される。2本のケーブルが反対方向の張力で配置される実施形態では、ナイフの直線的動作は、両方の差を、同じ入力軸上で、しかし反対方向にする(例えば、一方は巻き込み緩め用ケーブルとし、他方は巻き込み用ケーブルとする)ことによって実現される。二重の対向するケーブルを用いるアプローチはまた、張力ループを閉鎖するために、リダイレクトプーリを利用するが、このリダイレクトプーリは、シャフトの近位端に若しくは近位端の近くに、又はシャフトの遠位端に若しくは遠位端の近くに取り付けられ得る(図25及び図26にそれぞれ示されている)。引っ張って出し入れされるケーブルを設けると、ナイフをケーブルのあるセクションに連結して、ナイフを出し入れする運動を生じさせることができる。
【0110】
図25は、血管シーラー1480内でナイフ1482を駆動するためのアーキテクチャを示す概略図を示す。このアーキテクチャは、第1のケーブル1430a及び第2のケーブル1430bを含み、第1のケーブル1430a及び第2のケーブル1430bには、反対向きの張力がかかっている。そのアーキテクチャは、第1のケーブル1430aによって係合される1つ以上のスプール又はプーリ部材1470a、1470b、1470cと、第2のケーブル1430bによって係合される1つ以上のスプール又はプーリ部材1470d、1470e、1470fと、張力ループを閉鎖するリダイレクトスプール又はプーリ1470gと、を更に備える。リダイレクトプーリ1470gは、シャフトの近位部分又はその近くに配置される。第1のケーブル1430a及び第2のケーブル1430bに互いに反対方向の張力がかかる状態で、ナイフ1482が、細長い部材1484などのコネクタを介してケーブル(例えば、第1のケーブル1430a)のあるセクションに連結され、それによって、血管シーラー1480に対してナイフ1482が出し入れされる動作を作り出すことができる。一部の実施形態では、細長い部材1484は、プッシュロッドを備える。他の実施形態では、細長い部材1484は、座屈することなく、駆動圧縮力に耐える。
【0111】
図26は、血管シーラー内でナイフを駆動するための代替的なアーキテクチャを示す概略図を示す。このアーキテクチャは、図25に示したものに類似している。しかしながら、本実施形態では、リダイレクトプーリが、シャフトの遠位部分又はその近くに配置される。
【0112】
図27は、血管シーラー内でナイフを駆動するための更に別の代替的なアーキテクチャを示す概略図を示す。図25及び図26に示されている先の実施形態とは異なり、本実施形態におけるアーキテクチャは、ばね1490と反対方向の張力がかかる単一のケーブル1430を用いている。このアーキテクチャは、第1のケーブル1430aによって係合される1つ以上のスプール又はプーリ部材1470a、1470b、1470cを更に備える。ケーブル1430にばね1490とは反対方向の張力がかかっている状態で、ナイフ1482がケーブル1430のあるセクションに連結され、それによって、血管シーラー1480に対してナイフ1482が出し入れされる動作を作り出すことができる。
【0113】
挿入器具として機能することができる別の装置はカメラである。カメラは、内視鏡手術に使用することができる。このアーキテクチャは、カメラが剛性カメラ又は関節動作式カメラであるかどうかによって変化させることができ、関節動作式カメラの場合には、関節動作の作動手段が提供されなければならない。
【0114】
図28は、剛性カメラを挿入器具とするためのアーキテクチャを示す概略図を示す。カメラ1500は、インターフェースボタン及びそれから出てくるケーブルを有するカメラハンドル1530に、シャフト1502によって接続された遠位側撮像ペイロードを備える。ケーブル1530は、シャフト1502の外側に形成されたチャネル又は溝内に受容される一方、挿入ハンドル1520はシャフト1502の周囲に配置される。これにより、挿入能力を有効にする第2のハンドルが内視鏡に事実上追加される。ケーブル1530は、1つ以上のスプール1570a、1570b、1570cを通って延在する。本実施形態では、スプール1570bが巻取車軸であり得る。一部の実施形態では、巻取車軸は、ゼロウォーク型巻取車軸を含む(図17に示すように)ことができ、他の実施形態では、巻取車軸は、ケーブルウォークを可能にする(図18及び図19に示すように)ことができる。巻取車軸機構を介して、カメラは挿入軸線に沿って並進することができる。一部の実施形態では、コアペイロードは、同じ封止アーキテクチャを剛性スコープとして維持するため、同じ方法で滅菌されることが期待され得る。剛性スコープの場合、上記のことはオートクレーブ処理され得ることを意味する。追加の挿入ハンドル1520もまた、滅菌の観点からは、器具のように見える場合があり、同様にオートクレーブ処理することができる。
【0115】
図28は、剛性カメラを挿入器具とするためのアーキテクチャを示しているが、関節動作を提供するためにカメラに機構が追加されるため、関節動作式カメラは追加的な複雑性を提示することになる。関節動作式カメラの場合、関節動作に適応するために、1本以上のケーブル(例えば、作動ケーブル又はリスト部ケーブル)が提供され得る。カメラはまた、封止されたエリア内に収容されてもよく、そのため、外側の1本以上のケーブルを動かそうとする場合には、その1本以上のケーブルを除くカメラ用の密閉区画を作製することもできる。このアーキテクチャにより、いくらかの粒子及び破片が封止された領域内の小さな空間に入ることが可能であり得る。一部の実施形態では、汚染を防止するための1つの解決策は、関節動作のためのIDMに依存するのではなく、封止されたカメラ領域内に2つの関節動作用モータを追加することであり得る。これにより、チューブの外側からケーブルを取り、それらを封止された内部に入れることによって、カメラ構成要素の洗浄及び封止を大幅に簡素化する。2つの関節動作用モータを、封止されたカメラ内に追加することの別の利点は、カメラがビジョンボックスに繋がれるとすぐにカメラの関節動作を制御することができるようになることである。これにより、設置又は取り外し中にカメラを真っ直ぐに保つ機能や、ロボットから離れての使用中に、カメラをカメラハンドルから関節動作させて周囲を見ることができるような機能が可能になる。これにより、関節動作式カメラは、オートクレーブ処理が可能であるため、滅菌という観点からは、剛性カメラに大いに類似したものとなる。
【0116】
カメラがオートクレーブ処理できない場合、封止されたカメラコア及び挿入セクションは、洗浄及び挿入のためには、互いに分離される必要があり得る。これは、確実な滅菌を達成するためには、挿入ハンドルをオートクレーブ処理することが望ましいからである。図29は、カメラが挿入ハンドルから分離されることを可能にする第1の挿入アーキテクチャを示す。図30及び図31は、カメラが挿入ハンドルから分離されることを可能にし、それによってより良好な滅菌を可能にする第2の挿入アーキテクチャを示す。
【0117】
図29は、カメラが挿入ハンドルから分離されることを可能にする第1の挿入アーキテクチャを示す。このアーキテクチャは、IDMにラッチし、カメラコア1600から分離可能な、オートクレーブ処理可能な挿入ハンドル1620を有する。カメラコア1600は、ハンドル1620を通って延在するシャフト1602を備える。ハンドル1620は、スプール1670a、1670b、1670c、1670dを通って延在する、1本以上のワイヤ1630a、1630bを備える。本実施形態では、スプール1670bは、巻取車軸を備える。一部の実施形態では、スプール1670bは、親ねじを備える。一部の実施形態では、巻取車軸は、ゼロウォーク型巻取車軸(図17に示すようなもの)であり、他の実施形態では、巻取車軸はケーブルのウォークを可能にするものである。挿入ハンドル1620は、コネクタ1640を介して、カメラコア1600に取り外し可能に取り付けられ得る。一部の実施形態では、コネクタ1640は、ブラケットを備える。他の実施形態では、コネクタ1640は、カメラがラッチする垂直プレートを備える。挿入ハンドル1620がカメラコア1600に取り外し可能に取り付けられているので、それぞれが、洗浄のために分離されることができる。
【0118】
図30及び図31は、カメラが挿入ハンドルから分離されることを可能にする第2のアーキテクチャを示す。本実施形態では、オーバーチューブ1780が提供され、オーバーチューブ1780には挿入ケーブル1730が取り付けられ、またオーバーチューブ1780を通じて、カメラ1700が処置のために装填され得る。図30は、オーバーチューブ1780から取り外され、分離されたカメラ1700を示し、図31は、オーバーチューブ1780内に装填されたカメラ1700を示す。カメラ1700をオーバーチューブの中に装填するために、カメラ1700の遠位先端1706及びシャフト1702が、オーバーチューブ1780を貫通する。オーバーチューブ1780は、巻取車軸の形態のスプール1770を収容するハンドル1720に接続されている。このアーキテクチャは、必要に応じて、カメラ1700を挿入ハンドル1720から分離したままにして、両方の構成要素を容易に洗浄することができるという利点を有する。更に、カメラ1700は、オーバーチューブ1780に適合しなければならないので、使用中には薄型に保たれる。挿入ハンドル1720がカメラコア1700に取り外し可能に取り付けられるので、それぞれが、洗浄のために分離されることができる。
【0119】
図32は、別の実施形態による、シャフト並進のための代替的なアーキテクチャを示す図を示す。本実施形態では、器具は、近位部分1904及び遠位部分1906を有するシャフト1902を備える。シャフト1902の挿入は、ラック歯車1912及びピニオン1914によって駆動されることができ、ピニオン1914の回転の結果、ラック歯車1912及びラック歯車1912に連結されたシャフト1902の並進がもたらされる。一部の実施形態では、ラック歯車1912は、器具シャフト1902上に配置され、ピニオン1914は、器具ハンドルのハウジング内に配置される。モータ式駆動器を使用して、シャフト1902をハンドルに対して並進させることができる。一部の実施形態では、平歯車を、サイクロイドピンラックプロファイルに加えて使用することができる。一部の実施形態では、ラック歯車1912及びピニオン1914を、シャフト1902の挿入又は並進を引き起こすために、それ単独で使用し得る。他の実施形態では、ラック歯車1912及びピニオン1914を、既に説明した挿入機構のいずれかに付随させ、補完させることができる。ラック歯車1912及びピニオン1914を、ハンドルに対する器具シャフトの直線的挿入を提供するために、既に説明した器具の種類のいずれかと共に使用することができる。
【0120】
IX.外科用ツールの封止
腹腔鏡手術などの外科手術を行うとき、外科医は送気手段を使用する。これは、患者に挿入されたカニューレが外科用ツールシャフトに対して封止されて、患者の体内の正圧を維持することを意味する。封止部は、空気が患者の身体から漏れるのを防ぐために、外科用ツールシャフトに連結され得る。これらのシールは、多くの場合、円形の断面を有するツールを収容するように設計される。非円形の形状を有するツールや、シャフトの外側表面上に凹状の機能的形成部を有するツールに、同じ封止を適用することは困難であり得る。というのは、これらの表面によって形成される通路は、ツールシールにおいて、空気圧が放出されるのを可能にする場合があるからである。例えば、器具ベースの挿入アーキテクチャを有する器具は、空気が患者から漏れることができる溝1208を有する断面(図24Aに示すような断面)を有し得る。
【0121】
この課題に対処するため、患者の空気漏れを防止するための複数の封止部を含むシステムを提供することができる。具体的には、円形の外側形状を有するカニューレ封止部と協働する新規な封止部が提供され得るが、このことは、円形断面を有する器具については慣例的である。新規の封止部は、円形カニューレ封止部を通過し、それによって一貫した回転部用封止部を提供することができる。新規の封止部は、有利なことには、任意の回転動作及び直線的動作を範囲毎に分けて、封止部が形成される2つの境界を作り出すであろう。この範囲毎に分けることは、中間ツール封止ピースを使用することによって達成される。
【0122】
図33は、患者からの空気漏れを防止するための複数の封止部を有する器具の側面断面図を示す。図34は、複数の封止部を有する器具の正面断面図を示す。器具1200は、カニューレ50に挿入される。また器具1200は、器具ベースの挿入アーキテクチャを有する図11に示される器具に類似している。器具は、ハンドル1220に対して並進可能なシャフト1202を含み得る。シャフト1202は、その外側表面に沿って延在する1つ以上のチャネル又は溝1208を有することができる。それによって、患者から空気が漏れることを可能にする通路を形成する。
【0123】
空気漏れを防止するために、マルチ封止システムが、有利なことに、器具に連結される。一部の実施形態では、マルチ封止システムは、空気漏れのリスクを低減するために協働し得る第1の封止部1810及び第2の封止部1820を備える。一部の実施形態では、第1の封止部1810及び第2の封止部1820は同軸である。図32に示すように、第2封止部1820は、第1封止部1810の内部に受容され得る。第1封止部1810は、円形の外周及び円形の内周を有する断面を有することができ、一方、第2の封止部1820は、図34に示されるように、円形の外周部と、内側突出部、タブ又は突起1822が設けられた内周部とを有する断面を有することができる。内側突出部を有する第2の封止部1820を有するという利点は、内側突出部が器具シャフト1202の外側に沿って延在し得る溝1208などの空隙を埋めることができ、それによって手術中に患者から空気漏れが起こるリスクを低減するということである。
【0124】
マルチ封止は、有利なことには、回転動作及び直線的動作を範囲毎に分けて、封止部が形成される2つの境界を作り出す。その内側突出部1822を有する第2の封止部1820は、器具シャフト1202の外側溝を摺動し、それによって器具シャフトの動作のための摺動可能直線状封止部を形成することができる。当業者であれば、第2の封止部1820が、曲線的な複数の内側突出部であり、かつ内周の周りに実質的に対称的に離間配置された複数の内側突出部を有して示されているが、第2封止部1820の内側部分は、成形プロセスが第2の封止部1820の内部と器具シャフト1202の外側表面とを実質的に一致させる限りにおいて、他の形状をとり得ることが理解できよう。器具1200の溝1208内に受容されると、第2の封止部1820の内側の小塊1822のそれぞれは、回転封止点1824を形成する。これらの回転封止点により、器具1200及び第2封止部1820が回転についてロックされ、器具シャフト1202が回転するのに応じて、ともに回転することを可能にする。本実施形態は、二重封止部を有するマルチ封止部を示しているが、他の実施形態では、三重、四重、又はそれ以上の封止部が協働して、手術中の患者からの空気漏れのリスクを低減することができる。
【0125】
X.代替的考慮事項
本開示を読むと、当業者は、本明細書に開示される原理によって、更に追加の代替的な構造的設計及び機能的設計を理解するであろう。したがって、特定の実施形態及び用途が図示及び説明されているが、開示される実施形態は、本明細書に開示される正確な構造及び構成要素に限定されないことを理解されたい。添付の特許請求の範囲に定義される趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示される方法及び装置の配置、動作、及び詳細に対して、当業者には明らかであろう様々な修正、変更、及び変形がなされてもよい。
【0126】
本明細書において「一実施形態」又は「実施形態」と述べている場合、それは、当該実施形態に関連して述べられている特定の要素、特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。「一実施形態では」という語句が本明細書の様々な箇所に見られるが、これらは必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。
【0127】
一部の実施形態は、「連結された」及び「接続された」という表現を、それらの派生形と共に使用して、説明される場合があり得る。例えば、一部の実施形態は、2つ又はそれ以上の要素が直接物理的又は電気的に接触していることを示すため、「連結された」という用語を使用して説明される場合があり得る。しかしながら、「連結された」という用語は、2つ又は3つ以上の要素が互いに直接接触はしないが、依然として互いに協働又は相互作用することを意味することもある。実施形態は、特に明記しない限り、この文脈において限定されない。
【0128】
本明細書で使用されるとき、「備える又は含む(comprises)」、「備えている又は含んでいる(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」という用語、又はこれらのその他全ての変化形は、非排他的に包含するように意図する。例えば、リストアップされた要素を含む、プロセス、方法、物品、又は装置は、それらの要素のみに必ずしも限定されず、明確にはリストアップされていない他の要素や、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有のものではない他の要素を含んでもよい。更に、明示的に反対に明記されない限り、「又は」は包括的な「又は」を指すものであり、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、Aが真であり(又は存在する)かつBが偽である(又は存在しない)場合、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)場合、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)場合、のいずれか1つによって充足される。
【0129】
それに加えて、「ある(「a」又は「an」)」の使用は、本明細書における実施形態の要素及び構成要素について記載するために用いられるものである。これは、単に便宜を図るため、また発明の一般的な意味を与えるためになされるものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むように読み取られるべきであり、単数形は、そうでないことを意味することが明白でない限り、複数形も含む。
【0130】
〔実施の態様〕
(1) 近位部分及び遠位部分を含むシャフトと、
前記シャフトの前記遠位部分に接続されたエンドエフェクタと、
前記シャフトに連結されたハンドルと、
を備え、
前記ハンドルが、第1の機械的入力部及び第2の機械的入力部を含み、
前記第1の機械的入力部が、前記エンドエフェクタの作動を引き起こすように構成され、前記第2の機械的入力部が、前記ハンドルに対する前記シャフトの並進を引き起こすように構成されている、医療用装置。
(2) 前記エンドエフェクタの前記作動が、前記ハンドルに対する前記シャフトの前記並進を引き起こす第2の作動機構から分離された第1の作動機構を介して行われる、実施態様1に記載の医療用装置。
(3) 前記第1の作動機構が、第1の組のプーリを通って延在する第1のケーブルを含み、
前記第1の機械的入力部を介した前記第1の組のプーリのうちの少なくとも1つのプーリの操作が、前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの変化を引き起こし、それによって前記エンドエフェクタの作動を引き起こす、実施態様2に記載の医療用装置。
(4) 前記第2の作動機構が、スプールと係合する第2のケーブルを含み、
前記第2の機械的入力部を介した前記スプールの操作が、前記シャフトを前記ハンドルに対して並進させる、実施態様3に記載の医療用装置。
(5) 前記エンドエフェクタの作動を引き起こす、前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの前記変化が、前記シャフトを前記ハンドルに対して並進させる前記第2の作動機構によって影響されない、実施態様4に記載の医療用装置。
【0131】
(6) 前記第1の作動機構の前記第1のケーブルが、前記シャフトの前記近位部分から、前記第1の組のプーリを通って、前記シャフトの前記遠位部分まで延在する、実施態様3に記載の医療用装置。
(7) 前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの変化を引き起こすための、前記第1の組のプーリの前記少なくとも1つのプーリの操作が、前記少なくとも1つのプーリの直線又は回転動作を含む、実施態様6に記載の医療用装置。
(8) 前記スプールが巻取車軸を備える、実施態様4に記載の医療用装置。
(9) 前記巻取車軸がゼロウォーク型巻取車軸(zero-walk capstan)を備える、実施態様8に記載の医療用装置。
(10) 前記第2の機械的入力部の回転が、前記巻取車軸の回転を引き起こす、実施態様8に記載の医療用装置。
【0132】
(11) 前記第1の作動機構が、第1の組のプーリを通って延在する1本以上のケーブルを含み、前記第2の作動機構が、1本以上のケーブル及び挿入スプールを含み、
前記第1の作動機構の前記1本以上のケーブルのうちの少なくとも1本が、前記挿入スプール上で終端する、実施態様2に記載の医療用装置。
(12) 前記第1の作動機構の前記1本以上のケーブルが、エンドエフェクタケーブルを備え、前記第2の作動機構の前記1本以上のケーブルが、挿入ケーブルを備える、実施態様11に記載の医療用装置。
(13) 前記第2の機械的入力部の回転が、前記挿入スプールの回転を引き起こし、それによって前記ハンドルに対する前記シャフトの並進を引き起こす、実施態様11に記載の医療用装置。
(14) 前記第2の作動機構の前記1本以上のケーブルが、前記ハンドルに対する前記シャフトの並進中に前記挿入スプールによって巻かれ、
前記第1の作動機構の前記1本以上のケーブルは、前記ハンドルに対する前記シャフトの並進中に前記挿入スプールによってほどかれ、
前記挿入スプールによって巻かれた前記1本以上のケーブルの長さは、前記1本以上のケーブルがほどかれていることによって実質的に釣り合わされている、実施態様12に記載の医療用装置。
(15) 基部と、
前記基部に連結され、取り付けインターフェースを含むツールホルダと、
器具であって、
近位部分及び遠位部分を含むシャフトと、
前記シャフトの前記遠位部分から延在するエンドエフェクタと、
前記シャフトに連結されたハンドルであって、前記取り付けインターフェースに解放可能に取り付け可能な相互インターフェース、第1の機械的入力部、及び第2の機械的入力部、を含むハンドルと、
を備える、器具と、
を備え、
前記第1の機械的入力部が、前記エンドエフェクタの作動を引き起こすように構成され、
前記第2の機械的入力部が、前記ハンドルに対する前記シャフトの並進を引き起こすように構成されている、医療用システム。
【0133】
(16) 前記基部と前記ツールホルダとの間に、ロボットアームを更に備える、実施態様15に記載の医療用システム。
(17) 前記エンドエフェクタの前記作動が、前記ハンドルに対する前記シャフトの前記並進を引き起こす第2の作動機構から分離された第1の作動機構を介して行われる、実施態様16に記載の医療用システム。
(18) 前記第1の作動機構が、第1の組のプーリを通って延在する第1のケーブルを含み、
前記第1の機械的入力部を介した前記第1の組のプーリのうちの少なくとも1つのプーリの操作が、前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの変化を引き起こし、それによって前記エンドエフェクタの作動を引き起こし、
前記ハンドルに対する前記シャフトの前記並進が、スプールに係合する第2のケーブルを含む前記第2の作動機構を介して行われ、
前記第2の機械的入力部を介した前記スプールの操作が、前記シャフトを前記ハンドルに対して並進させる、実施態様17に記載の医療用システム。
(19) 前記エンドエフェクタの作動を引き起こす、前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの前記変化が、前記シャフトを前記ハンドルに対して並進させる前記第2の作動機構によって影響されない、実施態様18に記載の医療用システム。
(20) 前記ハンドル内の前記第1のケーブルの長さの変化を引き起こすための、前記第1の組のプーリのうちの前記少なくとも1つのプーリの操作が、前記少なくとも1つのプーリの直線又は回転動作を含む、実施態様19に記載の医療用システム。
【0134】
(21) 手術部位で手術を行うために患者の切開部又は自然開口部を通して送達可能な器具を提供することを含む外科的方法であって、
前記器具が、
近位部分及び遠位部分を含むシャフトと、
前記シャフトに連結されているハンドルと、
前記シャフトの前記遠位部分から延在するエンドエフェクタと、
を備え、
前記シャフトが、前記ハンドルに対して並進可能である、外科的方法。
(22) 前記器具が、前記エンドエフェクタを作動させるための第1の作動機構と、前記ハンドルに対して前記シャフトを並進させるための第2の作動機構とを含み、
前記第1の作動機構が、第1の組のプーリと、第1のケーブルと、を備え、
前記第2の作動機構が、スプールと、第2のケーブルとを備える、実施態様21に記載の外科的方法。
(23) 前記第1の作動機構を介して前記エンドエフェクタを操作することを更に含む、実施態様22に記載の外科的方法。
(24) 前記第2の作動機構を介して前記シャフトを並進させることを更に含み、
前記第1の作動機構が、前記第2の作動機構から分離される、実施態様23に記載の外科的方法。
(25) 手術部位で手術を行うために患者の切開部又は自然開口部を通して器具を送達することを含む外科的方法であって、
前記器具が、
近位部分及び遠位部分を含むシャフトと、
前記シャフトに連結されているハンドルと、
前記シャフトの前記遠位部分から延在するエンドエフェクタと、
を備え、
前記シャフトが、前記ハンドルに対して並進可能である、外科的方法。
【0135】
(26) 前記器具が、前記エンドエフェクタを作動させるための第1の作動機構と、前記ハンドルに対して前記シャフトを並進させるための第2の作動機構とを含み、
前記第1の作動機構が、第1の組のプーリと、第1のケーブルと、を備え、
前記第2の作動機構が、スプールと、第2のケーブルとを備える、実施態様25に記載の外科的方法。
(27) 前記第1の作動機構を介して前記エンドエフェクタを操作することを更に含む、実施態様26に記載の外科的方法。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23
図24A
図24B
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34