(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】合成桁の床版におけるブロックジベル周辺のコンクリートの破砕方法
(51)【国際特許分類】
E01D 24/00 20060101AFI20240408BHJP
E01D 22/00 20060101ALI20240408BHJP
E01D 19/12 20060101ALI20240408BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
E01D24/00
E01D22/00 Z
E01D19/12
E04G23/08 F
(21)【出願番号】P 2022092362
(22)【出願日】2022-06-07
(62)【分割の表示】P 2021191443の分割
【原出願日】2021-11-25
【審査請求日】2024-02-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山地 宏志
(72)【発明者】
【氏名】中森 純一郎
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-121458(JP,A)
【文献】特開2018-168546(JP,A)
【文献】特開2018-168545(JP,A)
【文献】特開2003-247212(JP,A)
【文献】特開2011-006943(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 24/00
E01D 22/00
E01D 19/12
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックジベルによって鋼主桁と一体化された鉄筋コンクリート造の
床版における前記ブロックジベル周辺のコンクリートの破砕方法であって、
前記鋼主桁上に位置する部分を含む桁上部分と、互いに隣り合う前記桁上部分の間の部分、及び橋幅方向の端部に配置された前記鋼主桁上の前記桁上部分よりも橋幅方向の外側の部分を含む非桁上部分とを備える前記
床版から、前記非桁上部分を撤去するステップと、
前記桁上部分に第1装薬孔及び第2装薬孔を削孔するステップと、
前記第1装薬孔に第1衝撃発生剤を装薬し、前記第2装薬孔に第2衝撃発生剤を装薬するステップと、
前記第1衝撃発生剤及び前記第2衝撃発生剤を略同時に起爆するステップと
を備え、
前記ブロックジベルは、前記鋼主桁の上面に固定された鋼製の基部と、前記基部と組み合わさって平面視で環形状をなすように両端部が前記基部に固定された鋼製のジベル本体部とを含み、
前記第1衝撃発生剤は、平面視で前記環形状の内部に、かつ橋幅方向から見て前記ジベル本体部の下方に配置され、前記第2衝撃発生剤は、平面視で前記基部に対して前記第1衝撃発生剤と反対側に配置された、方法。
【請求項2】
平面視において、前記第2衝撃発生剤の中心から前記基部までの距離が60mm以下であり、前記第2衝撃発生剤の下端から前記鋼主桁の前記上面までの距離が60mm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1衝撃発生剤は、平面視で、前記環形状における略中央に配置される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブロックジベルは、橋軸方向に沿った列をなすように複数配置され、
各々の前記ブロックジベルに対して、前記第1衝撃発生剤と前記第2衝撃発生剤とは互いに前記橋軸方向に対向するように1組ずつ配置され、
前記第1衝撃発生剤は、平面視で、前記第1衝撃発生剤から前記基部を挟んで隣接する前記第2衝撃発生剤までの距離と、前記第1衝撃発生剤から前記基部を挟まずに隣接する前記第2衝撃発生剤までの距離とが互いに近づく方向に、前記環形状の前記橋軸方向における中央からずれて配置され、
前記起爆するステップは、互いに共通の前記列に沿って配置された複数の前記第1衝撃発生剤及び前記第2衝撃発生剤を略同時に起爆することを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックジベルによって鋼主桁と一体化された鉄筋コンクリート造の床版、すなわち、ブロックジベルをずれ止めとする合成桁の床版におけるブロックジベル周辺のコンクリートの破砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成桁の床版は、鋼主桁の上面に設置されたずれ止めを埋設することにより鋼主桁と一体化された鉄筋コンクリート造の床版である。ずれ止めとして、ブロックジベルが用いられることがある。ブロックジベルは、馬蹄形ジベルと呼ばれることもあり、鋼主桁の上面に連結した基部と、両端部において基部に連結されたU字形状のジベル本体部(輪形筋)とを含む。
【0003】
床版を撤去して、既設の鋼主桁上に新たに合成桁の床版を構築する場合や、橋梁を解体する場合、合成桁の床版を解体する必要がある。例えば、特許文献1には、ウォータージェット工法を用いて、コンクリート床版を解体する方法が記載されている。ハンマードリル等の工具を用いて人力でコンクリート床版を解体する場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウォータージェット工法によるコンクリートの破砕は、撤去効率が低いため工程が長期化する、大量の水を使用するためその供給と処理に多大な費用を要する、逸水・散水防止のための対策工も大規模なものとなる、経常騒音(3m離れた地点の騒音レベルが約95dB)が発生する、という問題があった。
【0006】
また、ハンマードリル等の工具を用いた人力によるコンクリートの破砕は、撤去効率が相対的に低いため工程が長期化する傾向にある、人力による苦渋作業を伴うため作業員の確保が難しい、作業が振動障害の要因となる、経常騒音(10m離れた地点の騒音レベルが85~95dB)を伴う、という問題があった。
【0007】
また、橋幅方向から見てジベル本体部が上下方向に対して傾けて設置されている場合、ジベル本体部と鋼主桁の上面とがその間にあるコンクリートを拘束するため、この部分のコンクリートの解体が困難であった。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑み、傾斜して配置されたジベル本体部を含むブロックジベルによって鋼主桁と一体化された鉄筋コンクリート造の合成桁の床版において、ブロックジベル周辺のコンクリートを効率的に破砕できる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、ブロックジベル(4)によって鋼主桁(3)と一体化された鉄筋コンクリート造の合成桁の床版(2)における前記ブロックジベル(4)周辺のコンクリート(5)の破砕方法であって、前記鋼主桁(3)上に位置する部分を含む桁上部分(11)と、互いに隣り合う前記桁上部分(11)の間の部分、及び橋幅方向の端部に配置された前記鋼主桁(3)上の前記桁上部分(11)よりも橋幅方向の外側の部分を含む非桁上部分(12)とを備える前記床版(2)から、前記非桁上部分(12)を撤去するステップと、前記桁上部分(11)に第1装薬孔(13)及び第2装薬孔(14)を削孔するステップと、前記第1装薬孔(13)に第1衝撃発生剤(15)を装薬し、前記第2装薬孔(14)に第2衝撃発生剤(16)を装薬するステップと、前記第1衝撃発生剤(15)及び前記第2衝撃発生剤(16)を略同時に起爆するステップとを備え、前記ブロックジベル(4)は、前記鋼主桁(3)の上面に固定された鋼製の基部(9)と、前記基部(9)と組み合わさって平面視で環形状をなすように両端部が前記基部(9)に固定された鋼製のジベル本体部(10)とを含み、前記第1衝撃発生剤(15)は、平面視で前記環形状の内部に、かつ橋幅方向から見て前記ジベル本体部(10)の下方に配置され、前記第2衝撃発生剤(16)は、平面視で前記基部(9)に対して前記第1衝撃発生剤(15)と反対側に配置される。
【0010】
この態様によれば、床版における鋼主桁の上面とブロックジベルのジベル本体部とに挟まれた拘束領域で、第1引張応力波と第2引張応力波とが互いに衝突するため、短時間で拘束領域のコンクリートを破砕することができる。
【0011】
上記の態様において、平面視において、前記第2衝撃発生剤(16)の中心から前記基部(9)までの距離が60mm以下であり、前記第2衝撃発生剤(16)の下端から前記鋼主桁(3)の前記上面までの距離が60mm以下であると良い。
【0012】
この態様によれば、第2衝撃発生剤の起爆によって生じた圧縮応力波が鋼主桁の上面で反射して第2引張応力波を生じさせるところ、この第2引張応力波がブロックジベルに伝わりやすくなるため、拘束領域のコンクリートの破砕が顕著になる。
【0013】
上記の態様において、前記第1衝撃発生剤(15)は、平面視で、前記環形状における略中央に配置されても良い。ここで、「略中央」とは、鉄筋を避けて第1装薬孔を削孔するために必要な分だけ中央からずれている場合も含むことを意味する。
【0014】
この態様によれば、第1引張応力波は、減衰が小さい段階で拘束領域内にて第2引張応力波に衝突するため、拘束領域の破砕が顕著になる。
【0015】
上記の態様において、前記ブロックジベル(4)は、橋軸方向に沿った列をなすように複数配置され、各々の前記ブロックジベル(4)に対して、前記第1衝撃発生剤(15)と前記第2衝撃発生剤(16)とは互いに前記橋軸方向に対向するように1組ずつ配置され、前記第1衝撃発生剤(15)は、平面視で、前記第1衝撃発生剤(15)から前記基部(9)を挟んで隣接する前記第2衝撃発生剤(16)までの距離(L1)と、前記第1衝撃発生剤(15)から前記基部(9)を挟まずに隣接する前記第2衝撃発生剤(16)までの距離(L2)とが互いに近づく方向に、前記環形状の前記橋軸方向における中央からずれて配置され、前記起爆するステップは、互いに共通の前記列に沿って配置された複数の前記第1衝撃発生剤(15)及び前記第2衝撃発生剤(16)を略同時に起爆することを含んでも良い。
【0016】
この態様によれば、互いに隣り合う第1衝撃発生剤と第2衝撃発生剤との間隔が、均等に近づくように配置されるため、基部を介さずに互いに隣り合う第1衝撃発生剤と第2衝撃発生剤との間のコンクリートが破砕され易くなる。
【発明の効果】
【0017】
以上の態様によれば、傾斜して配置されたジベル本体部を含むブロックジベルによって鋼主桁と一体化された鉄筋コンクリート造の床版において、ブロックジベル周辺のコンクリートを効率的に破砕できる方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る方法が適用される
合成桁の床版を含む橋梁の上部を示す斜視図
【
図2】実施形態に係る方法が適用されている途中の
合成桁の床版の平面図
【
図3】実施形態に係る方法が適用されている途中の
合成桁の床版の一部断面正面図(橋幅方向から見た図)
【
図4】A:
図2におけるA-A線に沿った断面図、B:
図2におけるB-B線に沿った断面図
【
図5】実施形態に係る方法が適用される
合成桁の床版の説明図(一部断面正面図)
【
図6】実施形態に係る方法によってコンクリートが破砕される理由を説明するための図(一部断面正面図、コンクリート断面を示すためのハッチングは省略)
【
図7】実施形態に係る方法が適用された供試体の写真
【
図8】実施形態に係る方法が適用された供試体から部分的にコンクリートを取り除いた時の写真
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
図1は、実施形態に係る方法が適用される橋梁1の上部の斜視図であって、床版2が部分的に撤去された状態を示す。橋梁1は、橋軸方向に延在するように下部(図示せず)に支持されたH形鋼を含む鋼主桁3と、鋼主桁3に支持された鉄筋コンクリート造の床版2とを備える。
【0021】
図2及び
図3に示すように、鋼主桁3の上フランジ3aの上面には、ずれ止めとしてブロックジベル4が溶接等により固定されている。床版2のコンクリート5がブロックジベル4を埋設することにより、床版2は鋼主桁3と一体化した
合成桁の床版となっている。床版2は、橋軸方向に延在する縦筋6と、橋幅方向に延在する横筋7と、平面視において2本1組で1つのブロックジベル4を囲むように配置された補強筋8と、ブロックジベル4、縦筋6、横筋7及び補強筋8を埋設するコンクリート5とを含む。
【0022】
ブロックジベル4は、溶接等により鋼主桁3の上フランジ3aの上面に固定された鋼製の基部9と、基部9に両端部が溶接等により固定されたU字形状の鋼製のジベル本体部10とを含む。基部9は、橋幅方向に延在してブロック形状又は板形状をなす。基部9の両端部は、橋軸方向を向くように湾曲していても良い。ジベル本体部10は、両端部が橋幅方向に互いに離間したU字形状の鋼棒を含み、橋幅方向から見て上下方向に対して傾斜しており、平面視で基部9と組み合わさって環形状をなす。ブロックジベル4は、各々の鋼主桁3上で、橋軸方向に沿って1列に並ぶように複数配置される。
【0023】
床版2を解体するにあたって、まず、
図1に示すように、鋼主桁3の幅方向の両端部よりもわずかに広い幅を有する桁上部分11が鋼主桁3上に残るように、非桁上部分12を撤去する。非桁上部分12は、互いに隣り合う2つの桁上部分11の間の部分と、橋幅方向の端部に配置された鋼主桁3上の桁上部分11よりも橋幅方向の外側の部分とを含む。
【0024】
床版2に対して、非桁上部分12を撤去するべく、非桁上部分12を仮設部材(図示せず)で支持した状態で、作業員は、コンクリートカッター等の切断装置(図示せず)を用いて非桁上部分12と桁上部分11との境界を橋軸方向に沿って上下に切断する。また、作業員は、必要に応じて、床版2をクレーン(図示せず)により荷揚げ可能な重量、かつトラック等の運搬機械(図示せず)により運搬可能な重量及び大きさに分割するべく、切断装置を用いて床版2を橋幅方向に沿って上下に切断する。作業員は、分割された非桁上部分12を、クレーンにて吊り上げ、運搬機械に載せて搬出する。
【0025】
次に、
図2~
図4に示すように、作業員は、あらかじめ調査しておいたブロックジベル4、縦筋6、横筋7及び補強筋8の位置に基づいて、第1装薬孔13及び第2装薬孔14を削孔する。その後作業員は、第1装薬孔13内に第1衝撃発生剤15を装薬し、第2装薬孔14内に第2衝撃発生剤16を装薬する。
【0026】
ブロックジベル4、縦筋6、横筋7及び補強筋8の位置は、床版2の配筋図等に基づいて把握できる。必要に応じて、作業員は、鉄筋探査機等を用いてこれらの位置を把握する。
【0027】
第1装薬孔13及び第2装薬孔14は、床版2の上面から下方に向かって削孔される。1つのブロックジベル4に対して、1つの第1装薬孔13と1つの第2装薬孔14が削孔される。平面視において、第1装薬孔13は、基部9及びジベル本体部10によって形成された環形状の内側に設けられ、第2装薬孔14は、基部9に対して第1装薬孔13とは橋軸方向の反対側に設けられる。なお、第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16の配置が所定の条件を満たすならば、第1装薬孔13及び第2装薬孔14は、上下方向に対して傾斜していても良く、また、桁上部分11の側面から削孔しても良い。また、第1装薬孔13及び第2装薬孔14の削孔、並びに、第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16の装薬は、非桁上部分12(
図1参照)の撤去前に行っても良い。第1装薬孔13及び第2装薬孔14に適した位置に縦筋6、横筋7又は補強筋8がある場合、作業員は、これらの鉄筋を切断して第1装薬孔13及び第2装薬孔14を設けても良く、また、第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16の位置が後述する所定の条件を満たすならば、これらの鉄筋からずらして第1装薬孔13及び第2装薬孔14を設けても良い。
【0028】
第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16は、第1装薬孔13及び第2装薬孔14の底部に装薬される。第1衝撃発生剤15は、平面視で基部9及びジベル本体部10によって形成された環形状の内側に配置され、橋幅方向から見てジベル本体部10よりも下方に配置される。
【0029】
平面視において、第2衝撃発生剤16の中心から基部9までの距離は、60mm以下であり、第2衝撃発生剤16は、可能な限り基部9に近づけて配置することが好ましい。このため、第2衝撃発生剤16から基部9までの距離は、第1衝撃発生剤15から基部9までの距離よりも短い。なお、この60mm以下という値は実験結果に基づいて同定された。第2衝撃発生剤16の下端から鋼主桁3の上フランジ3aの上面までの距離は、60mm以下である。図示する実施形態では、第1衝撃発生剤15の下端から鋼主桁3の上フランジ3aの上面までの距離と、第2衝撃発生剤16の下端から鋼主桁3の上フランジ3aの上面までの距離とは、互いに等しい。このため、第1装薬孔13と第2装薬孔14との深さを互いに共通にすることができ、第1装薬孔13と第2装薬孔14との削孔深さを逆にするという施工ミスを防げる。
【0030】
床版2を鋼主桁3から分離するには、コンクリート5の内、鋼主桁3の上フランジ3aとジベル本体部10に挟まれた拘束領域A(
図5参照)を破砕することが重要となる。この拘束領域Aの破砕を重視する場合は、第1衝撃発生剤15は、平面視で、基部9及びジベル本体部10によって形成された環形状の略中央に配置されることが望ましい。ここで、「略中央」とは、縦筋6、横筋7又は補強筋8を避けて第1装薬孔13を削孔するために必要な分だけ中央からずれている場合も含むことを意味する。
【0031】
また、コンクリート5の内の互いに隣り合うブロックジベル4間の部分の破砕を重視する場合には、第1衝撃発生剤15と第2衝撃発生剤16との間隔が、なるべく均等に近づくように配置される。すなわち、各々の第1衝撃発生剤15は、平面視で、基部9及びジベル本体部10によって形成された環形状の橋軸方向における中央よりも、自身から基部9を挟んで隣接する第2衝撃発生剤16までの距離L1と、自身から基部9を挟まずに隣接する第2衝撃発生剤16までの距離L2とが互いに近づく方向にずれて配置される。図示する例では、第1衝撃発生剤15は、平面視で、基部9及びジベル本体部10によって形成された環形状の橋軸方向における中央よりも、基部9から離れた位置に配置されることにより、第1衝撃発生剤15と第2衝撃発生剤16との間隔が互いに均等に近づくようにしている。平面視における、互いに隣接する2つのブロックジベル4の基部9間の距離をL、基部9を挟んで互いに隣接する第1衝撃発生剤15と第2衝撃発生剤16との距離をL1、基部9を挟まずに互いに隣接する第1衝撃発生剤15と第2衝撃発生剤16との距離をL2とすると、0.4L≦L1≦0.6L、かつ0.4L≦L2≦0.6Lであることが好ましく、L1≒L2であることが更に好ましい。
【0032】
標準的な寸法のブロックジベル4(幅:180mm以上250mm以下、高さ:180mm以上220mm以下)が使用されている場合、第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16は、鋼主桁3の上フランジ3aの上面から60mm以内の範囲に、1.8GPa以上2.4GPa以下の最大圧、25マイクロ秒以上35マイクロ秒以下の最大圧到達時間で衝撃を作用させることが好ましい。このような条件を満たす第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16の種類として、ニトロメタン系の衝撃発生剤や、アルミニウム粉末と金属酸化物の粉末との混合物を含む衝撃発生剤が挙げられる。第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16に使用される薬剤の種類は互いに同種であることが好ましい。
【0033】
次に、作業員は、橋軸方向に略整合するように並んだ複数の第1衝撃発生剤15及び複数の第2衝撃発生剤16を略同時に起爆する。これにより、床版2のコンクリート5、特に拘束領域A(
図5参照)が破砕される。作業員は、破砕されたコンクリート5、縦筋6、横筋7及び補強筋8を除去する。
【0034】
既設の床版2の撤去後に、既設の鋼主桁3上に現場打コンクリートで新たに合成桁の床版を設ける場合、作業員は、既設のブロックジベル4をずれ止めとして使用しても良く、既設のブロックジベル4を切断して新たにずれ止めを設けても良い。また、既設の鋼主桁3上にプレキャストコンクリート部材で新たに合成桁の床版を設ける場合、作業員は、既設のブロックジベル4を切断して、プレキャストコンクリート部材を鋼主桁3上に設置した後、プレキャストコンクリート部材に設けられた上下方向に貫通する函抜き孔内にずれ止めを設けて、函抜き孔内にコンクリートを充填する(図示せず)。
【0035】
図6は、第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16の起爆による衝撃波(応力波)の最大圧部分又は最先の部分が伝播する様子を模式的に示す。
図6を参照して、床版2のコンクリート5が破砕される理由を説明する。
図6(A)に示すように、第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16の起爆により生じた圧縮応力波17は、鋼主桁3の上フランジ3aの上面で反射して引張応力波18に変換される。
図6(B)に示すように、引張応力波18は、コンクリート5内部及びブロックジベル4内部を伝播する。コンクリート5内を伝播する引張応力波18は、上フランジ3aの上面と略平行に上方へと減衰しながら伝播する。一般に、金属内を伝播する波は、コンクリート5内を伝播する波に比べて、ほとんど減衰せずに早く伝播する。このため、ブロックジベル4内を伝播する引張応力波18は、ほとんど減衰することなく、コンクリート5内を伝播する引張応力波18に比べて早く伝播し、かつ伝播点が新しい波源となって、コンクリート5内部にも伝播していく。
【0036】
第1衝撃発生剤15に起因する第1引張応力波18aが、上フランジ3aの上面からその上方のブロックジベル4のジベル本体部10に向かう引張応力波18の主要な波源となる。第2衝撃発生剤16に起因する第2引張応力波18bが、ブロックジベル4内を伝播する引張応力波18の主要な波源となる。上フランジ3aの上面で反射してコンクリート5内をブロックジベル4に向かって伝播する第1引張応力波18aの少なくとも一部が、ブロックジベル4内を伝播した後、コンクリート5内を鋼主桁3の上フランジ3aに向かって伝播する第2引張応力波18bの少なくとも一部に衝突する。この衝突によって、コンクリート5に引張力が加わってコンクリート5が破砕される。更に、第1引張応力波18aと第2引張応力波18bとが互いに重なり合い、干渉することで複雑な引張応力波18の伝播経路が形成されることによりコンクリート5が細かく破砕される。第1引張応力波18aと第2引張応力波18bとの互いの衝突、重なり合い、干渉は、主として拘束領域A(
図5参照)で起こるため、拘束領域Aのコンクリート5を短時間で破砕できる。
【0037】
従って、このような第1引張応力波18aと第2引張応力波18bとの互いの衝突が生じるように第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16を配置することが、上述の第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16の配置に関する所定の条件となる。更に、平面視において、第2衝撃発生剤16の中心から基部9までの距離を50mm以下とし、第2衝撃発生剤16の下端から鋼主桁3の上フランジ3aの上面までの距離を60mm以下とすることにより、拘束領域Aのコンクリート5の破砕が顕著となる。
【0038】
また、第1衝撃発生剤15を、平面視で基部9及びジベル本体部10によって形成された環形状の略中央に配置した場合には、第1引張応力波18aは、減衰が小さい段階で、拘束領域A(
図5参照)内にて第2引張応力波18bに衝突するため、拘束領域Aの破砕が顕著になる。また、拘束領域A以外のコンクリート5は比較的大きな塊として残る。拘束領域Aが破砕されることにより床版2が鋼主桁3から分離するため、床版2における拘束領域A及びその近傍の部分以外の部分をクレーン(図示せず)等を用いて容易に撤去することができる。一方、平面視で1列に並ぶように配置された複数の第1衝撃発生剤15と第2衝撃発生剤16が、互いに隣り合う第1衝撃発生剤15と第2衝撃発生剤16との間隔がなるべく均等に近づくように配置された場合には、コンクリート5におけるブロックジベル4間の部分が破砕され易くなる。
【0039】
第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16の衝撃波の最大圧を上記の数値範囲にすることにより、鋼主桁3の損傷を防ぎながら、床版2のコンクリート5を破砕することができる。
【実施例】
【0040】
図7及び
図8は、上記実施形態を適用した供試体の写真を示す。実施例では、1列に並ぶように配置された複数の第1衝撃発生剤15と第2衝撃発生剤16は、互いに隣り合う第1衝撃発生剤15と第2衝撃発生剤16との間隔がなるべく均等に近づくように配置された(符号が指す部分については
図2~
図5参照、以下同じ)。
【0041】
図7は、第1衝撃発生剤15及び第2衝撃発生剤16の起爆直後の状態を示す。ブロックジベル4間の領域でも、縦筋6や補強筋8に沿ってコンクリート5にひび割れが生じている。
【0042】
図8は、ブロックジベル4の近傍以外の部分のコンクリート5、並びに、縦筋6、横筋7及び補強筋8を取り除いた後を示す。拘束領域Aのコンクリート5は、他の部分に比べて細かく破砕されていた。
【0043】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。上記実施形態は、合成桁の床版の取替工事だけでなく、橋梁の解体工事に適用しても良い。
【符号の説明】
【0044】
2 :床版
3 :鋼主桁
4 :ブロックジベル
5 :コンクリート
9 :基部
10 :ジベル本体部
13 :第1装薬孔
14 :第2装薬孔
15 :第1衝撃発生剤
16 :第2衝撃発生剤
18a :第1引張応力波
18b :第2引張応力波
A :拘束領域