(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】繊維プリプレグの含浸装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
B29B 11/16 20060101AFI20240408BHJP
B29C 43/28 20060101ALI20240408BHJP
B29C 43/52 20060101ALI20240408BHJP
B29C 70/50 20060101ALI20240408BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20240408BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240408BHJP
B29K 101/12 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
B29B11/16
B29C43/28
B29C43/52
B29C70/50
C08J5/24
B29K105:08
B29K101:12
(21)【出願番号】P 2022137650
(22)【出願日】2022-08-31
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】518305565
【氏名又は名称】臺灣塑膠工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 翰章
(72)【発明者】
【氏名】歐 志軒
(72)【発明者】
【氏名】楊 杰舜
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ 龍田
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-523834(JP,A)
【文献】特開2012-167260(JP,A)
【文献】国際公開第2016/178399(WO,A1)
【文献】特開2019-199488(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109849219(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2012-0093701(KR,A)
【文献】米国特許第10737411(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0129737(US,A1)
【文献】特開2023-33240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
B29C39/00-39/24
39/38-41/36
41/46-43/34
43/44-43/48
43/52-43/58
70/00-70/88
B32B1/00-43/00
C08J5/04-5/10
5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム層分離部材と、
水平面に垂直な垂直方向に前記フィルム層分離部材の下方に設けられるホットプレス素子と、
前記垂直方向に前記フィルム層分離部材と前記ホットプレス素子との間に設けられる遮熱素子と、
を含
み、
前記遮熱素子は円弧形状を呈し、前記遮熱素子の凹形状は、熱気を前記ホットプレス素子側に収束させるように前記ホットプレス素子のみに対向している、
繊維プリプレグの含浸装置。
【請求項2】
前記フィルム層分離部材は、
第1のローラーと、
前記第1のローラーの上方に設けられるフィルム層巻き取り素子と、
前記垂直方向に前記フィルム層巻き取り素子と前記第1のローラーとの間に設けられる第2のローラーと、
を含み、
前記第1のローラーの前記フィルム層巻き取り素子に向かう方向と、前記第1のローラーの前記第2のローラーに向かう方向との交差箇所は、0度よりも大きい分離角度を呈する請求項1に記載の繊維プリプレグの含浸装置。
【請求項3】
前記第2のローラーの位置は調節可能であり、前記第2のローラーの位置を変えることにより、前記分離角度を変える請求項2に記載の繊維プリプレグの含浸装置。
【請求項4】
前記第1のローラーの上方に設けられる樹脂フィルム送り素子と、
前記フィルム層分離部材の下方に設けられる繊維送り素子と、
をさらに含み、
前記樹脂フィルム送り素子と前記フィルム層巻き取り素子を前記第1のローラーが配置されている水平面に垂直に投影した場合、前記樹脂フィルム送り素子と前記フィルム層巻き取り素子は、それぞれ前記第1のローラーの対向する両側に位置し、
前記第1のローラーが配置されている水平面は前記垂直方向に垂直である請求項2に記載の繊維プリプレグの含浸装置。
【請求項5】
前記遮熱素子における前記ホットプレス素子に近い表面は、熱反射材質である請求項1に記載の繊維プリプレグの含浸装置。
【請求項6】
前記遮熱素子を前記ホットプレス素子が配置されている水平面に垂直に投影した場合、前記遮熱素子の投影が、前記ホットプレス素子の投影と重なり且つ前記ホットプレス素子の投影よりも大きくなり、
前記ホットプレス素子が配置されている水平面は、前記垂直方向に垂直である請求項1に記載の繊維プリプレグの含浸装置。
【請求項7】
フィルム層分離部材と、水平面に垂直な垂直方向に前記フィルム層分離部材の下方に設けられるホットプレス素子と、前記垂直方向に前記フィルム層分離部材と前記ホットプレス素子との間に設けられる遮熱素子と、を含
み、
前記遮熱素子は断熱材質で構成され、円弧形状を呈し、前記遮熱素子の凹形状は、熱気を前記ホットプレス素子側に収束させるように前記ホットプレス素子のみに対向している、含浸装置を提供することと、
離型フィルムと、前記離型フィルムの上に位置する樹脂層と、前記樹脂層の上に位置するフィルム層と、含む樹脂フィルムを提供することと、
前記含浸装置における前記フィルム層分離部材を使用して、前記樹脂フィルムから前記フィルム層と前記樹脂層とを分離させて、前記離型フィルム及び前記樹脂層を含む樹脂複合構造を得ることと、
繊維層を提供することと、
前記含浸装置における前記ホットプレス素子を使用して、90℃を超える温度で、上から下へ前記樹脂複合構造、前記繊維層及び前記樹脂複合構造の順にホットプレスを行って、繊維プリプレグを得、前記繊維プリプレグにおける前記樹脂層が前記繊維層と直接接触することと、
を備える繊維プリプレグの含浸方法。
【請求項8】
前記含浸装置における前記ホットプレス素子を使用する工程において、同時に前記含浸装置における前記フィルム層分離部材を使用して、前記樹脂フィルムから前記フィルム層と前記樹脂層を分離させる請求項
7に記載の繊維プリプレグの含浸方法。
【請求項9】
前記含浸装置における前記フィルム層分離部材を使用して、前記樹脂フィルムから前記フィルム層と前記樹脂層を分離させる工程は、前記樹脂層の粘度が500グラム~2000グラムである場合、前記フィルム層分離部材における前記フィルム層及び前記樹脂層の分離角度を18度~45度の間にするように調整することを含む請求項
7に記載の繊維プリプレグの含浸方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、繊維プリプレグの含浸装置及びその含浸方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維布の成形は、一般に2つの段階に分けられる。まず、樹脂コーティング段階であり、すなわち、樹脂を離型層上にコーティングする段階である。次は含浸段階であり、主に樹脂層と繊維層(ホットプレスの前に糸を伸ばす処理を行ってよい)に対してホットプレスを行って繊維プリプレグを形成する段階である。繊維プリプレグの再加工で製造された生地の応用範囲が広く、例えば、炭素繊維と樹脂が結合した炭素繊維プリプレグで製造された強化複合材料は、軽量で強度と弾性率に優れており、運動、娯楽用品の構造部品、交通輸送工具の構造と内装部品、又は土木建築などに広く応用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の含浸装置は、工程の連続実行に寄与するために、樹脂層の送り素子及び樹脂層とフィルム層とを分離させる分離素子がホットプレス素子に隣接する(例えばホットプレス素子の上方に位置する)。ホットプレス素子の加熱状態で、発生した熱放射と熱気により、樹脂層が送り素子及び分離素子に位置する時に、早すぎて熱軟化して、後続のフィルム層を分離させる時に、樹脂がフィルム層に付着し、含浸効果が不良となる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
したがって、本開示内容の一態様は、フィルム層分離部材と、水平面に垂直な垂直方向にフィルム層分離部材の下方に設けられるホットプレス素子と、垂直方向にフィルム層分離部材とホットプレス素子との間に設けられる遮熱素子と、を含む繊維プリプレグの含浸装置を提供する。
遮熱素子は円弧形状を呈する。遮熱素子の凹形状は、熱気をホットプレス素子側に収束させるようにホットプレス素子のみに対向している。
【0005】
いくつかの実施形態において、フィルム層分離部材は、第1のローラーと、第1のローラーの上方に設けられるフィルム層巻き取り素子と、垂直方向にフィルム層巻き取り素子と第1のローラーとの間に設けられる第2のローラーと、を含む。且つ第1のローラーのフィルム層巻き取り素子に向かう方向と、第1のローラーの第2のローラーに向かう方向との交差箇所は、0度よりも大きい分離角度を呈する。
【0006】
いくつかの実施形態において、第2のローラーの位置は調節可能であり、第2のローラーの位置を変えることにより、分離角度を変える。
【0007】
いくつかの実施形態において、含浸装置は、第1のローラーの上方に設けられる樹脂フィルム送り素子と、フィルム層分離部材の下方に設けられる繊維送り素子と、をさらに含む。樹脂フィルム送り素子と繊維送り素子を第1のローラーが配置されている水平面に垂直に投影した場合、樹脂フィルム送り素子とフィルム層巻き取り素子は、それぞれ第1のローラーの対向する両側に位置する。第1のローラーが配置されている水平面は垂直方向に垂直である。
【0008】
いくつかの実施形態において、遮熱素子におけるホットプレス素子に近い表面は、熱反射材質である。
【0010】
いくつかの実施形態において、遮熱素子をホットプレス素子が配置されている水平面に垂直に投影した場合、遮熱素子の投影がホットプレス素子の投影と重なり且つホットプレス素子の投影よりも大きくなる。ホットプレス素子が配置されている水平面は垂直方向に垂直である。
【0011】
本開示内容の一態様は、以下のことを備える繊維プリプレグの含浸方法を提供する。
フィルム層分離部材と、水平面に垂直な垂直方向にフィルム層分離部材の下方に設けられるホットプレス素子と、垂直方向にフィルム層分離部材とホットプレス素子との間に設けられる遮熱素子と、を含む含浸装置を提供すること。
遮熱素子は断熱材質で構成され、円弧形状を呈する。遮熱素子の凹形状は、熱気をホットプレス素子側に収束させるようにホットプレス素子のみに対向している。
離型フィルムと、離型フィルムの上に位置する樹脂層と、樹脂層の上に位置するフィルム層と、含む樹脂フィルムを提供することと、含浸装置におけるフィルム層分離部材を使用して、樹脂フィルムからフィルム層と樹脂層とを分離させて、離型フィルム及び樹脂層を含む樹脂複合構造を得ること。
繊維層を提供すること。
含浸装置におけるホットプレス素子を使用して、90℃を超える温度で、上から下へ樹脂複合構造、繊維層及び樹脂複合構造の順にホットプレスを行って、繊維プリプレグを得、繊維プリプレグにおける樹脂層が繊維層と直接接触すること。
【0012】
いくつかの実施形態において、含浸装置におけるホットプレス素子を使用する工程において、同時に含浸装置におけるフィルム層分離部材を使用して樹脂フィルムからフィルム層と樹脂層を分離させる。
【0013】
いくつかの実施形態において、含浸装置におけるフィルム層分離部材を使用して、樹脂フィルムからフィルム層と樹脂層を分離させる工程は、樹脂層の粘度(tack)が500グラム~2000グラムである場合、フィルム層分離部材におけるフィルム層と樹脂層との分離角度を18度~45度の間にするように調整する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示内容の上記及び他の目的、特徴、メリット及び実施例をより分かりやすくするために、添付図面の説明は以下の通りである。
【
図1】本開示内容のいくつかの実施形態による繊維プリプレグの含浸方法を示すフロー図である。
【
図2】本開示内容のいくつかの実施形態による繊維プリプレグの含浸装置が含浸方法を実施する時の側面図を示す。
【
図3】本開示内容のいくつかの実施形態による繊維プリプレグの含浸装置が含浸方法を実施する時の側面図を示す。
【
図4A】本開示内容のいくつかの実施形態による遮熱素子の異なる例を示す。
【
図4B】本開示内容のいくつかの実施形態による遮熱素子の異なる例を示す。
【
図4C】本開示内容のいくつかの実施形態による遮熱素子の異なる例を示す。
【
図4D】本開示内容のいくつかの実施形態による遮熱素子の異なる例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
理解すべきなのは、下記説明で、本開示の主題の異なる特徴を実施するために、異なる実施形態又は実施例を提供する。特定の構成又は配列の実施例については、本開示を簡素化するためのものであり、本開示を限定するためのものではない。もちろん、これらの説明は、実施例だけであり、制限することを意図していない。例えば、下記のような第1の特徴を第2の特徴に形成する記述には、両者が直接接触する又は両者の間に別の特徴があり直接接触しないことも含まれる。また、本開示は、複数の実施例において、数字及び/又は符号を繰り返して参照することができる。この繰返しの目的は、簡略化し明瞭にすることであり、且つそれは検討された様々な実施例及び/又は配置の間の関係を代表しない。
【0016】
本明細書に使用される用語は、一般に、当該分野及び使用される文脈において一般的な意味を有する。本明細書に使用される実施例、本文で検討されるすべての用語の例は、説明のためのものだけであり、本開示内容又は如何なる例示的な用語の範囲及び意義を制限しない。同様に、本開示内容は本明細書に提供されるいくつかの実施形態に限定されない。
【0017】
なお、例えば、「下」、「上」のような空間相対用語は、図面におけるある素子や特徴が別の素子や特徴に対する関係を説明しやすくするためのものである。これらの空間相対用語は、図面に示す方位以外、使用又は操作される場合の装置の異なる方位を更に含むことを意図している。装置の方位を別に位置決める(90度回転し又は他の方位にする)ことができ、本文で使用された空間相対用語は、同様に対応して解釈することができる。
【0018】
本文において、正文で冠詞に対して特別に限定されない限り、「一」と「当該」は、単一又は複数を総括して指してもよい。更に理解すべきなのは、本明細書に用いる「備える」、「含む」、「有する」及び類似用語については、それが記載される特徴、領域、整数、工程、操作、素子及び/又は部材を明らかにするが、その記述された又は別の1つ又は複数の他の特徴、領域、整数、工程、操作、素子、部材、及び/又はそれらの群は排除されない。
【0019】
本明細書で参照により引用されたすべての文献は、個別の文献又は特許出願書ごとに、特定され且つ個別に参考文献に組み込まれていると見なされる。引用文献のある用語に対する定義又は用法が、ここでのこの用語に対する定義と一致しないか又は逆であれば、本明細書のこの用語に対する定義を適用する。
【0020】
以下、複数の実施形態を挙げて更に詳しく本発明の繊維プリプレグの含浸装置及びその含浸方法を説明するが、例示的に説明するためだけのものであり、本発明を制限するためのものではなく、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とするものである。
【0021】
図1を参照されたい。
図1は、本開示内容のいくつかの実施形態による繊維プリプレグの含浸方法100を示すフロー図である。繊維プリプレグの含浸方法100は、フィルム層分離部材と、ホットプレス素子と、フィルム層分離部材とホットプレス素子との間に位置する遮熱素子と、を含む含浸装置を提供する工程S110と、樹脂フィルムを提供する工程S120と、含浸装置におけるフィルム層分離部材を使用して、樹脂フィルムからフィルム層と樹脂層とを分離させて、離型フィルム及び樹脂層を含む樹脂複合構造が得られる工程S130と、繊維層を提供する工程S140と、含浸装置におけるホットプレス素子を使用して、90℃を超える温度で、繊維層及び樹脂複合構造に対してホットプレスを行って、繊維プリプレグが得られる工程S150と、を備える。
【0022】
いくつかの実施形態において、一部の工程(例えば工程S130及び工程S150)だけで含浸装置を使用すればよく、例として、人手で、又は他の機械で樹脂フィルム及び繊維層をそれぞれ提供してよい。いくつかの実施形態において、
図1に示す含浸方法100における全ての工程は、単一の繊維プリプレグの含浸装置により実行されてよい。理解しやすくするために、以下、
図2の含浸装置200を例として、繊維プリプレグの含浸方法100のフローを詳しく説明するが、本開示内容の実施態様はこれに限定されない。
【0023】
図2は、本開示内容のいくつかの実施形態による繊維プリプレグの含浸装置200が含浸方法を実施する時の側面図を示す。
【0024】
図2に示すように、樹脂フィルム送り素子210、フィルム層分離部材220、繊維送り素子230、ホットプレス素子240、及び遮熱素子250を含む含浸装置200を提供する。下記文中において特に説明しない限り、素子の間の「上」、「下」の相対関係は、主に水平面に垂直なZ軸方向(垂直方向)に関する。樹脂フィルム送り素子210は、フィルム層分離部材220に隣接する。例えば、樹脂フィルム送り素子210は、フィルム層分離部材220における第1のローラー222の上方に位置するものであって、第1のローラー222が配置されている水平面(X軸上の、Z軸に垂直である平面)に垂直に投影した場合、樹脂フィルム送り素子210とフィルム層巻き取り素子224は、それぞれ第1のローラー222の対向する両側に位置する。ホットプレス素子240は、フィルム層分離部材220の下方に設けられる。繊維送り素子230は、フィルム層分離部材220の下方に設けられ、例えばZ軸方向にホットプレス素子240におけるローラーR1とローラーR2との間に位置してよい。遮熱素子250は、ホットプレス素子240とフィルム層分離部材220との間に設けられる。
【0025】
まず、樹脂フィルム送り素子210を介して、離型フィルムL1と、離型フィルムL1の上に位置する樹脂層L2と、樹脂層L2の上に位置するフィルム層L3と、を含む樹脂フィルムM0を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態において、フィルム層L3は、透明な薄膜状構造であり、樹脂層L2が環境中の浮遊粒子や他の由来の汚染物質と接触することを防ぎ、樹脂層L2の表面をきれいに保つために用いられる。いくつかの実施形態において、フィルム層L3の材質は、例えば高分子ポリマー(例えばプラスチック)を含んでよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、樹脂層L2の材質は、熱可塑性樹脂(例えばエポキシ樹脂)を含んでよい。いくつかの実施形態において、樹脂層L2の融点は、90℃よりも低く、例として、70℃、80℃、90℃、又は前記任意の区間における数値である。
【0028】
次に、樹脂フィルム送り素子210を使用して、樹脂フィルムM0を特定の経路に沿って樹脂フィルムM0をフィルム層分離部材220に運送する。フィルム層分離部材220は、特定の分離角度Aで、樹脂フィルムM0からフィルム層L3と樹脂層L2とを分離させるように配置されて、離型フィルムL1と離型フィルムL1に位置する樹脂層L2とを含む樹脂複合構造M1が得られる。
【0029】
いくつかの実施形態において、フィルム層分離部材220は、第1のローラー222、フィルム層巻き取り素子224、及び第2のローラー226を含む。第1のローラー222は、樹脂フィルム送り素子210の下方に設けられ、樹脂フィルムM0を受けるように配置される。フィルム層巻き取り素子224は、第1のローラー222の上方に設けられ、第1のローラー222から分離されたフィルム層L3(例えばフィルム層L3をロール状に巻き取る)を巻き取るように配置される。第2のローラー226は、Z軸方向に、フィルム層巻き取り素子224と第1のローラー222との間に設けられるものである。第2のローラー226は、第1のローラー222のフィルム層巻き取り素子224に向かう方向、及び第1のローラー222の第2のローラー226に向かう方向との交差箇所に挟まれた分離角度A(0より大きい)で、樹脂フィルムM0から樹脂層L2及び離型フィルムL1(即ち、樹脂複合構造M1)を分離させるように配置される。
【0030】
いくつかの実施形態において、第2のローラー226は、位置が調節可能であり、第2のローラー226の位置を変えることにより、分離角度Aを変える。例えば樹脂層L2の粘度に対応して、X軸方向又はZ軸方向に、第2のローラー226を移動させて、分離角度Aを変えて、より優れたフィルム層L3の分離効果を実現する。
【0031】
例えば
図3を参照されたい。
図3は、同様に本開示内容のいくつかの実施形態による繊維プリプレグの含浸装置200が含浸方法を実施する時の側面図を示すものである。
図2との違いは、
図3における樹脂層L2の粘度が高く、樹脂層L2とフィルム層L3との分離に寄与するために、第2のローラー226の位置が方向D(Z軸方向)に沿って下へ移動し、分離角度Aを大きくすることである。
【0032】
いくつかの実施形態において、樹脂層L2の粘度が500グラム以下である場合、フィルム層L3と樹脂層L2との分離角度を18度以下に調整することができる。例えば樹脂層L2の粘度が100グラム~500グラムである場合、フィルム層L3と樹脂層L2との分離角度を13度~18度(例えば13度、14度、15度、16度、17度、18度、又は前記任意の区間における数値)に調整する。
【0033】
いくつかの実施形態において、樹脂層L2の粘度が500グラム~2000グラムである場合、フィルム層L3と樹脂層L2との分離角度を18度~45度に調整する。
【0034】
例として、樹脂層L2の粘度が500グラム~900グラムである場合、フィルム層L3と樹脂層L2との分離角度を18度~25度(例えば18度、19度、20度、21度、22度、23度、24度、25度又は前記任意の区間における数値)に調整する。樹脂層L2の粘度が900グラム~1300グラムである場合、フィルム層L3と樹脂層L2との分離角度を25度~33度(例えば25度、26度、27度、28度、29度、30度、31度、32度、33度又は前記任意の区間における数値)に調整する。樹脂層L2の粘度が1300グラム~2000グラムである場合、フィルム層L3と樹脂層L2との分離角度を33度~45度(例えば33度、34度、35度、36度、37度、38度、39度、40度、41度、42度、43度、44度、45度又は前記任意の区間における数値)に調整する。樹脂層L2の粘度が2000グラム以上である場合、フィルム層L3と樹脂層L2との分離角度は45度である。
【0035】
説明すべきなのは、樹脂層L2の粘度に応じて分離角度Aを調整しないと、樹脂層L2の粘度が高すぎて、分離効果がよくなくなり、樹脂層L2の樹脂がフィルム層L3の表面に残る。樹脂層L2の粘度が低すぎると、分離角度Aによる分離応力が大きすぎて、フィルム層L3が樹脂フィルムM0から早く分離しすぎてしまい、フィルム層L3の変位を引き起こし、効果的に巻き取ることが難しくなる。且つ樹脂層L2表面の露出時間を増加し、汚染分子が樹脂表面に付着するリスクを間接的に向上させる可能性がある。
【0036】
図2に戻って参照されたい。一方、同時に繊維送り素子230を介して、繊維層Fをホットプレス素子240に提供する。いくつかの実施形態において、繊維層Fは例えば炭素繊維又はガラス繊維等である。いくつかの実施形態において、繊維送り素子230とホットプレス素子240との間には、繊維層Fに対して糸広げを行い、繊維層Fにおける繊維配列及び/又は幅等の性能を調整するように配置される糸広げ素子260が設けられる。
【0037】
次に、ホットプレス素子240を使用して繊維層Fを受け、且つそれぞれ繊維層Fの上下の両側(Z軸方向)から、同時に2つの樹脂複合構造M1(例えば、繊維層Fを対称軸とし、下側の素子と上側の素子が対称に分布し、ここでは図示しない)を受ける。
【0038】
次に、90℃を超える温度(例えば90℃、100℃、110℃、120℃又は前記任意の区間の数値)で、2つの樹脂複合構造M1における樹脂層L2の何れも繊維層Fと直接接触する。且つ上から下へ樹脂複合構造M1、繊維層F及び樹脂複合構造M1の順にホットプレスを行って、繊維プリプレグCが得られ、繊維プリプレグCにおける繊維層Fの上表面及び下表面の何れも樹脂層L2と直接接触する。
【0039】
注意すべきなのは、含浸装置200は連続式装置である。ホットプレス素子240を使用して、繊維層Fと樹脂複合構造M1に対してホットプレスを行うと同時に、フィルム層分離部材220を使用して樹脂フィルムM0からフィルム層L3と樹脂層L2とを分離させる。したがって、ホットプレス素子240とフィルム層分離部材220との間にホットプレス素子240の熱を遮断する遮熱素子250が設けられない場合、ホットプレス素子240に対して90℃よりも低い(例えば70℃~85℃)温度でホットプレスを行っても、フィルム層分離部材220が樹脂フィルムM0を分離させる時に、樹脂が熱によって軟化し、分離時にフィルム層L3に付着して、後のホットプレス用の樹脂層L2を損傷させ、繊維プリプレグCの含浸効果を低下させる。
【0040】
いくつかの実施形態において、遮熱素子250は、断熱材質であり、例えば多孔質材料(例えば発泡綿又は繊維)或いは熱反射材料(アルミニウム箔又はニッケル等)である。
【0041】
いくつかの実施形態において、遮熱素子250は、完全にホットプレス素子240を遮蔽することができる。例えばホットプレス素子240が配置されている水平面(X軸上の、Z軸に垂直である平面)に垂直に遮熱素子250を投影した場合、遮熱素子250の投影がホットプレス素子240の投影と重なり且つそれよりも大きくなり、大きな面積でホットプレス素子240を遮蔽し、熱気流がフィルム層分離部材220及び樹脂フィルム送り素子210に到達することを回避し、比較的良好な熱気遮断効果を達成する。
【0042】
いくつかの実施形態において、遮熱素子250は、ホットプレス素子240に近い表面252Aに熱反射材質(例えば金属(アルミニウム箔又はニッケル等))を使用するか、又は遮熱素子250の形状を調整することで、断熱効果を向上させることができる。
【0043】
例えば
図4A~
図4Dを参照されたい。本開示内容のいくつかの実施形態における遮熱素子250の異なる例を示す。
【0044】
図4A及び
図4B(以下、
図2を同時に参照されたい。)の遮熱素子250は、両層の層状構造であり、ホットプレス素子240に近い側に熱反射層252があり、他方の側に多孔質層254がある。
図4Aと
図4Bとの違いは次のとおりである。
図4Bの遮熱素子250は円弧形状を呈し、円弧形状の凹状設計により同時にホットプレス素子240に向かう熱反射層252と合わせて設置され、熱気をホットプレス素子240側に収束させるものである。
図4Aの矩形の平板式設計に比べ、
図4Bの円弧形状は良好な断熱効果を達成し、フィルム層L3を分離する時に、ホットプレス温度が110℃に上昇しても、樹脂層L2が過度に軟化せずフィルム層L3に残留する効果を実現することができる。
【0045】
図4C及び
図4Dの遮熱素子250と、
図4A及び
図4Bの遮熱素子250との違いは、主に
図4C及び
図4Dの遮熱素子250が熱反射層252により多孔質層254を覆うことである。つまり、
図4C及び
図4Dの遮熱素子250において、熱反射層252が外側の表面に露出し、同様に熱エネルギーを反射する熱気遮断効果を達成することができる。一方、
図4Cと
図4Dとの間の違いは、
図4Cが矩形であるが、
図4Dが円弧形状であることであり、この部分に関して
図4A及び
図4Bの説明を同時に参照することができ、ここに説明しない。
【0046】
したがって、
図2に戻って、遮熱素子250の位置、遮蔽面積、形状、材質及び構造設計を調整することにより、遮熱素子250の熱気遮断効果を調節できる。更にフィルム層L3を分離する時に、フィルム層L3に樹脂が残留しないことを前提として、ホットプレス素子240が許容できるホットプレス温度を上昇させ、更に樹脂層L2における樹脂の種類の選択柔軟性を向上させ、例えば融点の低い(例えば90℃未満)樹脂を樹脂層L2の選択に組み入れることができる。
【0047】
いくつかの実施形態において、繊維層Fの厚さの需要に応じて、繊維層Fの増厚プロセスを選択的に加えてよい。増厚プロセスは、別の繊維層を提供することと、繊維プリプレグCの離型フィルムL1を取り除いて、被加工繊維プリプレグが得られることと、別の繊維層と樹脂層L2とを直接接触させるように、別の繊維層及び被加工繊維プリプレグに対してホットプレスを行って、増厚繊維プリプレグが得られることと、を含む。
【0048】
本開示内容のいくつかの実施形態は、繊維プリプレグの含浸装置及びその含浸方法を提供する。遮熱素子の設置により、樹脂フィルムがフィルム層分離部材で、ホットプレス素子の熱気を受け早すぎて軟化し、フィルム層に付着して、樹脂を損傷させ、繊維含浸不良の状況を招くことが回避される。
【0049】
本開示内容は複数の特定の実施例により前述の通りに開示されたが、本開示内容に対して各種の修飾、変更及び置き換えを加えることができる。理解すべきなのは、本開示内容の精神及び範囲から逸脱しない限り、ある場合、本開示内容の実施例のある特徴を採用するが、対応的に他の特徴を採用しない。従って、本開示内容の精神及び特許請求の範囲は、上記の例示的な実施例に記載されたものに限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0050】
100:含浸方法
200:含浸装置
210:樹脂フィルム送り素子
220:フィルム層分離部材
222:第1のローラー
224:フィルム層巻き取り素子
226:第2のローラー
230:繊維送り素子
240:ホットプレス素子
250:遮熱素子
252:熱反射層
252A:表面
254:多孔質層
260:糸広げ素子
A:分離角度
C:繊維プリプレグ
D:方向
F:繊維層
M0:樹脂フィルム
M1:樹脂複合構造
L1:離型フィルム
L2:樹脂層
L3:フィルム層
R1、R2:ローラー
S110、S120、S130、S140、S150:工程
X:X軸
Z:Z軸