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特許7467575負圧傷治療の準拠使用を監視するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】負圧傷治療の準拠使用を監視するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20240408BHJP
   G16H 20/00 20180101ALI20240408BHJP
【FI】
A61M27/00
G16H20/00
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022189569
(22)【出願日】2022-11-28
(62)【分割の表示】P 2017519554の分割
【原出願日】2015-10-13
(65)【公開番号】P2023039955
(43)【公開日】2023-03-22
【審査請求日】2022-12-27
(31)【優先権主張番号】62/063,457
(32)【優先日】2014-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】フィリップス,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ロービー,ブライアン
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0092958(US,A1)
【文献】特表2011-528958(JP,A)
【文献】特表2013-521886(JP,A)
【文献】特表2014-507961(JP,A)
【文献】国際公開第2014/151930(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2008/0005000(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0018637(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 20/00
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧源と包帯とを含む組織部位の負圧治療を監視するためのシステムで使用され、前記負圧源の運用データを送信するように構成された通信装置であって、当該通信装置が、
前記負圧源から運用データを受信するように構成された受信器と、
前記運用データを処理して1つまたは複数の第1の使用統計値を計算するように構成されたプロセッサと、
遠隔監視センタに前記1つまたは複数の第1の使用統計値を送信して、所定のプロトコルの準拠性のレベルを示す警告信号を送信するように構成された送信器と、
を含み、
前記遠隔監視センタは利用者に利用者メッセージを送信し、
前記プロセッサは、前記遠隔監視センタが前記利用者メッセージを送信した後、前記運用データを処理して、1つまたは複数の第2の使用統計値を計算するように構成され、
前記送信器は、前記遠隔監視センタが前記利用者メッセージを送信した後、前記遠隔監視センタに前記1つまたは複数の第2の使用統計値を送信して、前記所定のプロトコルの準拠性が改善されていないことを示す警告信号を送信するように構成されていることを特徴とする通信装置
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、前記利用者メッセージは、利用者に関連する電子メールアドレスへの電子メールであることを特徴とする通信装置
【請求項3】
請求項1に記載の通信装置において、前記利用者メッセージは、利用者に関連する電話番号への自動電話メッセージであることを特徴とする通信装置
【請求項4】
請求項1に記載の通信装置において、前記使用統計値は、前記負圧源の利用データを含むことを特徴とする通信装置
【請求項5】
請求項4に記載の通信装置において、前記利用データが17時間/日の閾値を満たすかどうかを判定するために、前記利用データが使用されることを特徴とする通信装置
【請求項6】
請求項4に記載の通信装置において、前記利用データが19時間/日の閾値を満たすかどうかを判定するために、前記利用データが使用されることを特徴とする通信装置
【請求項7】
請求項1に記載の通信装置において、前記運用データは負圧源のオンおよびオフ状態であることを特徴とする通信装置
【請求項8】
請求項1に記載の通信装置において、前記通信装置はセルラモデムを含むことを特徴とする通信装置
【請求項9】
請求項1に記載の通信装置において、前記通信装置はパーソナルエリアネットワーク上で通信するように構成されたラジオを含むことを特徴とする通信装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的には、組織部位を治療するための医療システムとこのようなシステムの使用を監視することとに関する。より具体的には、限定するためではないが、本開示は、負圧傷治療(negative-pressure wound therapy)システムの準拠利用を監視するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
臨床研究と診療は、組織部位近傍の圧力低減が組織部位における新しい組織の成長を増大および加速し得ることを示した。この現象の用途は無数であるが、傷を治療するのに特に有利であるということが証明された。傷の病因にかかわらず(外傷、手術または別の原因にかかわらず)、傷の適切なケアは結果にとって重要である。減圧による傷の治療は通常「負圧傷療」と呼ばれることがあるが、また例えば「負圧傷治療」、「減圧傷治療」、「真空治療」、および「真空支援閉鎖(vacuum-assisted closure)」を含む他の名前により知られている。負圧傷療は、傷部位における上皮および皮下組織の移動、血流改善、および組織の微視的変形を含む多くの恩恵を提供し得る。これらと共に、これらの恩恵は、肉芽組織の発育を増加し、治癒時間を低減し得る。
【0003】
減圧治療の臨床的恩恵は広く知られているが、減圧システム、部品および処理の開発および運用は、製造者、健康管理提供者および患者に対し重大な挑戦を提示し続けている。
【0004】
負圧傷治療を受ける患者が処方治療計画に従って負圧システムを使用しなければ、治療の結果は望むほどには効果的ではないかもしれない。現在、治療プロトコルの準拠を監視するためのこのような利用データを収集する実時間方法が欠如している。
【発明の概要】
【0005】
例示的実施形態によると、組織部位の治療を監視するためのシステムは包帯、負圧源および通信装置を含み得る。包帯は組織部位上に置かれるようにされ得る。負圧源は包帯と流体接続され得る。通信装置は、負圧源へ結合され得、負圧源の運用データを送信するように構成され得る。
【0006】
別の例示的実施形態によると、組織部位を治療するための装置は負圧源と通信装置とを含み得る。負圧源は組織部位と流体接続するようにされ得る。通信装置は、負圧源へ結合され得、負圧源の運用データを送信するように構成され得る。
【0007】
さらに別の例示的実施形態によると、組織部位を治療する方法は、包帯を組織部位へあてがう工程と、負圧源を包帯へ結合する工程と、負圧を包帯へ印加する工程と、負圧の印加に関係する運用データを送信する工程とを含み得る。
【0008】
本明細書に記載の実施形態の他の目的、特徴および利点は、以下の添付図面と詳細説明とを参照することにより明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、例示的実施形態による治療ネットワークの例示である。
図2図2は、図1の治療ネットワーク内の治療ユニットのいくつかの例示的実施形態に関連し得る追加の詳細を示す斜視図である。
図3図3は、例示的実施形態による、治療ユニット電子ディスプレイのグラフィックユーザインターフェース(GUI)の画面ショットを示す。
図4図4は、例示的実施形態による、電子装置上の運用のための利用監視ソフトウェアのグラフィックユーザインターフェース(GUI)の画面ショットを示す。
図5図5は、傷治療システムの利用を監視するための例示的処理の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の非限定的例示的実施形態の詳細な説明では、本明細書の一部をなす添付図面を参照する。他の実施形態が利用され得、論理的、構造的、機械的、電気的、および化学的変形が添付特許請求範囲から逸脱すること無くなされ得る。本明細書に記載される実施形態を当業者が実施できるようにするのに必要の無い詳細説明を回避するために、説明は当業者に知られたいくつかの情報を省略することがある。以下の詳細説明は非限定的であり、例示的実施形態の範囲は添付特許請求範囲により定義される。本明細書で使用されるように、特記ある場合を除き「または」は相互排他性を必要としない。
【0011】
例示的実施形態はまた、様々な要素間の空間的関係または添付図面に描写された様々な要素の空間的配向を参照して本明細書において説明され得る。一般的に、このような関係または配向は、治療を受ける位置における患者に整合したまたは患者に対する基準系を仮定する。しかし、当業者により認識されるべきであるように、この基準系は厳密な規定というよりむしろ単に説明上の便法である。
【0012】
図1は、本明細書による、傷治療の監視を提供し得る治療ネットワーク100の例示的実施形態の概要図である。治療ネットワーク100は、治療ユニット104と包帯106とを含み得る治療システム102を含み得る。包帯106はカバー108と組織界面110とを含み得る。図1に示すように、包帯106は負圧源114へ流体接続され得る。治療ユニット104はまた、包帯106と負圧源114とへ流体接続された容器112などの浸出液容器を含み得る。
【0013】
治療システム102はまた、通信装置116を含み得る。例えば、通信装置116は、治療ユニット104へ電気的に結合され得る、またはいくつかの実施形態では治療ユニット104の一部であり得る。通信装置116は有線または無線で治療ユニット104へ接続され得る。治療システム102の通信装置116は、治療ネットワーク100の1つまたは複数のネットワーク118と通信するように構成され、送信器を含み得る。1つの好適な実施形態では、通信装置116はセルラモデムを含み得、セルラ接続を介しネットワーク118と通信するように構成され得る。他の実施形態では、通信装置116は、Bluetooth(登録商標)無線、ZigBee(登録商標)無線、またはパーソナルエリアネットワーク(PAN:personal area network)またはワイドパーソナルエリアネットワーク(WPAN:wide personal area network)を介しネットワーク118と通信するための他の無線ラジオを含み得る。通信装置116は、患者の家においてまたは病院または医師のオフィスなどの治療センタにおいて発生し得る治療システム102の運用に関係するデータを送信するように構成され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、通信装置116は治療ユニット104の負圧源114の筐体内に一体化され得る。他の実施形態では、通信装置は、負圧源114の外面へ別個に取り付けられ得、負圧源114の運用に関係するデータを受信するように構成された受信器を含み得る。一実施形態では、通信装置116は負圧源114の外面へ取り付けられ得、シリアル通信インターフェースを介し負圧源114へ接続され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、通信装置116は、治療システム102(具体的には負圧源114)の運用に関係するデータを処理するためのアルゴリズムにより構成されたプロセッサを含み得る。プロセッサアルゴリズムは負圧源114の利用時間および状態に基づき利用統計値を計算するようにプログラムされ得る。例えば、プロセッサは所与の患者が治療を開始してからの負圧源114の合計運用時間および毎日の平均運営時間を計算し得る。プロセッサは、どのように毎日の平均運用時間と処方治療プロトコルとが比較されるかを計算するとともに対応処方治療プロトコルの準拠のレベルを計算するように構成され得る。追加的に、プロセッサは、通信装置116の送信器によりネットワーク118などのネットワークを介し伝達され得る処方治療プロトコルの準拠のレベルに基づき警告信号を生成するように構成され得る。
【0016】
治療ネットワーク100はまた、ネットワーク118を介し治療システム102と通信し得る遠隔監視センタ120を含み得る。例えば、治療システム102の通信装置116はデータをネットワーク118を介し遠隔監視センタ120へ送信するように構成され得る。遠隔監視センタ120は自動監視センタ122を含み得る。自動監視センタ122は警告センタ126だけでなく通信センタ124も含み得る。通信センタ124は、治療システム102などの治療システムと遠隔監視センタ120との間の通信リンクを監視するように設計され得る。いくつかの実施形態では、通信センタ124は、治療システム102(より具体的には治療ユニット104と負圧源114)の運用に関係するデータを受信するように構成された受信ユニットを含み得る。受信ユニットは、治療システム102の運用に関係するデータを処理するとともに、治療システム102の運用に関係するデータと1つまたは複数の閾値とをどのように比較するかの出力計算を提供するためのソフトウェアアルゴリズムがロードされた処理装置を含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、閾値は治療ユニット104の特定最小使用量を処方する治療プロトコルに対応し得る。
【0017】
自動監視センタ122の警告センタ126は通信センタ124からだけでなく治療システム102などの治療システムから伝達される警告通知を受信するように構成され得る。いくつかのケースでは、通信センタ124および/または警告センタ126は1つまたは複数の自動コンピュータにより運営され得る。遠隔監視センタ120はまた、コンプライアンスチームセンタ(compliance team center)128を含み得る。コンプライアンスチームセンタ128は、警告センタ126から上申され得る警告通知を送信するだけでなく、患者による治療システム102など治療システムの利用を監視するためのコンプライアンススタッフ、臨床医または他の人員のためのサービスセンターとして機能し得る。
【0018】
治療ネットワーク100はまた、ネットワーク118を介し治療システムおよび遠隔監視センタと通信し得る他のエンティティを含み得る。例えば、治療ネットワーク100は第三者130を含み得る。例えば、第三者130は保険業者であり得る。一実施形態では、第三者130は治療システム102に関係する利用データを取得するためにネットワーク118を介し遠隔監視センタ120と通信し得る。他の実施形態では、第三者130は、治療システムと通信する必要無しに、ネットワーク118を介し治療システムから利用データを直接受信することができるかもしれない。
【0019】
一般的に、治療システム102の部品同士は、直接または間接的に結合され得、いくつかのケースでは分離可能に結合され得る。例えば、負圧源114は、容器112に直接結合されてもよいし、容器112を介し包帯106へ間接的に結合されてもよい。部品同士は部品間に流体(すなわち、液体および/または気体)を送るための経路を提供するために互いに流体接続され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、例えば部品は管と流体接続され得る。本明細書で使用される「管」は広義には、管、パイプ、ホース、導管、または両端間で流体を運ぶようにされた1つまたは複数の管腔を有する他の構造を指す。通常、管はある柔軟性を有する細長く円筒状の構造体であるが、幾何学形状および剛性は変わり得る。いくつかの実施形態では、部品同士は追加的にまたはその代わりに、物理的近接性のおかげで結合され得、単一構造へ一体化されるまたは同じ材料から形成される。結合はまた、いくつかの文脈では機械的、熱的、電気的、化学的結合(化学結合など)を含み得る。
【0021】
動作中、組織界面110は、組織部位内に、またはその上方に、またはその上に、またはそれに近接して配置され得る。カバー108は、組織界面110の上方に配置され、組織部位近傍組織へ密封され得る。例えば、カバー108は組織部位周辺の無損傷表皮へ密封され得る。したがって、包帯106は、外部環境から実質的に隔離された組織部位に近接した密封治療環境を提供し得、負圧源114は密封治療環境内の圧力を低減し得る。密封治療環境内の組織界面110を介し組織部位に印可される負圧は、容器112内で収集され適切に廃棄され得る組織部位からの浸出液および他の流体を除去するだけでなく、組織部位に巨視的歪と微視的歪とを誘起し得る。
【0022】
密封治療環境内など別の部品内のまたは位置における圧力を低減するために負圧源を使用する流体力学は数学的に複雑であり得る。しかし、負圧傷療へ適用可能な流体力学の基本原理は通常、当業者に知られている。
【0023】
一般的に、浸出液および他の流体は流体経路に沿った低圧方向に流れる。したがって、用語「下流」は通常、負圧源に比較的近いまたは正圧源からさらに離れた流体経路内の何かを意味し、逆に、用語「上流」は負圧源から比較的離れたまたは正圧源により近い何かを意味する。同様に、このような基準系において流体「入口」または「出口」という意味合いでいくつかの特徴を説明することが好都合かもしれなく、圧力を低減する処理は、本明細書では例えば減圧を「供給」、「分配」または「生成」することとして例示的に記載され得る。この配向は通常、本明細書における様々な特徴および部品を説明する目的のために仮定される。
【0024】
この文脈における用語「組織部位」は広義には、含むが限定しない骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、被包組織、維管束組織、結合組織、軟骨、腱、または靭帯など組織上またはその内部にある傷または欠陥を指す。傷は、例えば慢性、急性、外傷性、亜急性、裂開性傷、中間層熱傷、潰瘍(糖尿病潰瘍、床擦れ、または静脈不全潰瘍など)、皮弁、および移植体を含み得る。用語「組織部位」はまた、必ずしも傷または欠陥の無い任意の組織の領域を指し得るが、その代わりに、追加組織の成長を増すまたは促進することが望ましいかもしれない領域を指し得る。例えば、負圧は、摘出され別の組織位置に移植され得る追加組織を成長させるためにいくつかの組織領域内で使用され得る。
【0025】
「負圧」は通常、包帯106により設けられる密封治療環境の外の局所環境内の周囲圧など局所周囲圧未満の圧力を指す。多くの場合、局所周囲圧はまた、患者が位置する場所の大気圧であり得る。そうでなければ、局所周囲圧は組織部位において組織に関連する静水圧未満であり得る。特記ある場合を除き、本明細書で述べられる圧力の値はゲージ圧である。同様に、負圧の増加への言及は通常、絶対圧力の低下を指し、一方負圧の低下は通常、絶対圧力の増加を指す。
【0026】
負圧源114などの負圧源は、負圧での空気の貯蔵所であってもよいし、密封容積内の圧力を低減し得るまたは手動または電動の装置(例えば真空ポンプ、吸上げポンプ、多くの健康管理施設で利用可能な壁吸引口、またはマイクロポンプなど)であってもよい。負圧源は、センサ、処理ユニット、警報指示器、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示装置または、減圧治療をさらに容易にするユーザインターフェースなど他の部品内に収容されてもよいし、それと併せて使用されてもよい。組織部位に印可される負圧の量と性質は治療要件によって変化し得るが、圧力は通常、-5mmHg(-667Pa)~-500mmHg(-66.7kPa)の範囲である。一般的治療範囲は-75mmHg(-9.9kPa)~-300mmHg(-39.9kPa)である。
【0027】
組織界面110は通常、組織部位と接触するようにされ得る。組織界面110は組織部位に部分的または完全に接し得る。組織部位が傷であれば、例えば、組織界面110は、傷を部分的または完全に埋めてもよいし、傷の上方に置かれてもよい。組織界面110は、多くの形式を取り得、実施されている治療のタイプまたは組織部位の性質および寸法など様々な因子に依存して、多くの寸法、形状または厚さを有し得る。例えば、組織界面110の寸法と形状は深くかつ不規則に形成された組織部位の輪郭に適応化され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、組織界面110は多岐管であり得る。この文脈における「多岐管」は通常、流体を集めるまたは組織部位全体にわたって配給するようにされた複数の経路を提供する任意の物質または構造体を含む。例えば、多岐管は、負圧源から負圧を受けるとともに、負圧を複数の開口を介し組織部位全体にわたって配給するようにされ得、流体を組織部位全体から集め負圧方向へ吸い込む効果を有し得る。しかしながら、いくつかの実施形態では、多岐管はまた、例えば流体経路が反転されればまたは第2の流体経路が設けられれば流体を組織部位へ供給することを容易にし得る。
【0029】
いくつかの例示的実施形態では、経路は組織部位から供給または除去される流体の分配または収集を改善するために相互接続され得る。例えば、細胞状発泡体、開放型細胞状発泡体(open-cell foam)、多孔性組織集団、およびガーゼまたはフェルトマットなどの他の多孔性物質は通常、流路を形成するように配置される構造要素を含む。液体、ゲル剤および他の発泡体もまた、流路を含み得るまたは含むように硬化され得る。
【0030】
いくつかの例示的実施形態では、多岐管は、負圧を組織部位全体にわたって配給するようにされた相互接続セルまたは細孔を有する多孔性発泡材であり得る。発泡材は疎水性または親水性のいずれかであり得る。1つの非限定的例では、組織界面110は米国テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なGranuFoam(登録商標)包帯などの開細胞型網状ポリウレタン発泡体(open-cell,reticulated polyurethane foam)であり得る。
【0031】
組織界面110が親水性材料から構成され得る例では、組織界面110はまた、負圧を組織部位へ配給し続けながら流体を組織部位から吐き出させ得る。組織界面110の吐き出し特性は毛細管流動または他の吐き出し機構により流体を組織部位から吸い出し得る。親水性発泡体の例は、米国テキサス州サンアントニオのKinetic Concepts社から入手可能なV.A.C.WhiteFoam(登録商標)包帯などのポリビニルアルコール開細胞型発泡体である。他の親水性発泡体としては、ポリエーテルからなるものが挙げられ得る。親水性特性を呈示し得る他の発泡体としては、親水性を提供するように処理または被覆された疎水性発泡体が挙げられ得る。
【0032】
組織界面110は、密封治療環境内の圧力が低下されると組織部位における肉芽化をさらに促進する。例えば、組織界面110の任意またはすべての面は、負圧が組織界面110全体に印加されれば組織部位において微小歪と歪を誘起し得る不規則な、粗い、ぎざぎざのあるプロファイルを有し得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、組織界面110は生体吸収性(bioresorbable)材料で構築され得る。好適な生体吸収性材料としては、限定しないが、ポリ乳酸(PLA:polylactic acid)およびポリグリコール酸(PGA:polyglycolic acid)のポリマブレンドが挙げられ得る。ポリマブレンドとしてはまた、限定しないが、ポリカーボネート、ポリフマル酸エステルおよびカプララクトンが挙げられ得る。組織界面110はさらに、新たな細胞増殖の懸垂足場(scaffold)として働き得る、または懸垂足場材料は細胞増殖を促進するために組織界面110と協力して使用され得る。懸垂足場は通常、細胞増殖のための原型を提供する三次元多孔質組織など、細胞の増殖または組織の形成を強化または促進するために使用される物質または構造体である。懸垂足場材料の例示的例としては、リン酸カルシウム、コラーゲン、PLA/PGA、珊瑚状ヒドロキシアパタイト、炭酸塩、または処理済み同種移植材料が挙げられる。
【0034】
いくつかの実施形態では、カバー108は物理的外傷からの細菌障壁および保護を提供し得る。カバー108はまた、蒸発損失を低減し2つの部品間のまたは治療環境と局所外部環境間など2つの環境間の流体密封を提供し得る材料で構築され得る。カバー108は例えば、所与の負圧源の組織部位における負圧を維持するのに適切な密封を提供し得る不浸透性または半浸透性のエラストマー材料であり得る。いくつかの例実施形態では、カバー108は、水蒸気に対し浸透性があるが液体に対し不浸透性であるポリウレタン膜などのポリマードレープであり得る。このようなドレープは、通常25~50マイクロメートルの範囲の厚さを有する。透過性材料に関し、透過率は通常、所望負圧が維持され得るのに十分に低くあるべきである。
【0035】
カバー108を取り付け面に取り付けるために、無損傷表皮、ガスケットまたは別のカバーなどの取り付け装置が使用され得る。取り付け装置は多くの形式を取り得る。例えば、取り付け装置は、カバー108の周囲、一部またはカバー108全体の周りに延伸する医学的に許容可能な感圧接着剤であり得る。いくつかの実施形態では、例えば、カバー108の一部またはすべては、1平方メートル当たり25~65グラム(g.s.m.)の被覆重量を有するアクリル接着剤で被覆され得る。より厚い接着剤または接着剤の組み合わせが、密封性を改善し漏れを低減するためにいくつかの実施形態において適用され得る。取り付け装置の他の例示的実施形態としては、両面テープ、ペースト、親水コロイド、ヒドロゲル、シリコーンゲルまたは有機ゲルが挙げられ得る。
【0036】
容器112は、組織部位から引き出された浸出液および他の流体を管理するために使用され得る容器、キャニスター、パウチまたは他の格納部品を表す。多くの環境では、流体の収集、格納および廃棄のために硬質容器が好ましいまたは必要かもしれない。他の環境では、流体は硬質容器に格納すること無く適切に廃棄され得、再使用可能容器が負圧傷療に伴う廃棄物または費用を低減し得る。
【0037】
図2を参照すると、一実施形態による治療ユニット204の例示的例が描写されるが、これは治療ユニット104の別の実施形態であり得る。治療ユニット204は治療システム102の部品として使用するのに好適である。治療ユニット204は負圧源214と通信装置216とを取り囲み得る筐体205を含み得る。治療ユニットはまた、ユーザとインターフェースするための電子ディスプレイ217を含み得る。容器212は治療ユニット204の筐体205へ取り付けるように構成され得る。
【0038】
図3を参照すると、治療ユニット204の電子ディスプレイ217の例示的実施形態が示される。電子ディスプレイ217はグラフィックユーザインターフェース(GUI)300を表示するように構成され得る。GUI300は、組織部位の治療に関係する任意の他の特徴へ割り当てられるソフトボタンと共に、「設定」ソフトボタン306、「治療プロトコル」ソフトボタン308、「利用データ」ソフトボタン310および「通信」ソフトボタン312を含む多くの選択可能グラフィック要素を含み得る。ユーザは、選択された機能を行うための別のグラフィックユーザインターフェースを電子ディスプレイ217にユーザへ提示させるためにこれらの機能(すなわち設定、傷タイプ、治療プロトコル、利用データ、通信)のうちの任意のものを選択し得る。加えて、「出口」ソフトボタン314は、現在のGUI300から出るユーザに利用可能であり得る。GUI300は例示的であるということと他のおよび/または別の機能および選択要素がユーザへ提供され得るということとを理解すべきである。
【0039】
GUI300上の情報領域316は、選択可能グラフィック要素を含み、ユーザが関心を持ち得る他の情報を表示し得る。例えば、「ヘルプ」ソフトボタン318は、ユーザが治療ユニット204に関するまたはGUI300上に現在表示されている特定機能に関する助けを得られるように表示され得る。「送信」ソフトボタン320は、利用データをネットワーク118へ送信し始めるまたはそれを中止するためにユーザが治療システム102の通信装置216を選択的に活性化または非活性化できるようにし得る。「オン/オフ」ソフトボタン322は、ユーザが治療ユニット204を選択的にオン/オフできるようにし得る。情報状態領域324はユーザに治療ユニット204の現在の状態を通知し得る。例えば、情報状態領域324は、治療ユニット204が(i)現在オンである、(ii)特別に選択された治療プロトコルに準拠して動作している、および(iii)運用データを遠隔受信器へ送信しているということを示し得る。情報状態領域324はまた、通信装置216が(i)現在活性化されている、(ii)現在非活性化されている、(iii)データを現在送信している、および(iv)データを現在受信しているということを示し得る。情報状態領域324はまた、治療システム102の患者の利用の準拠レベルの可視指標を処方治療プロトコルにより提供し得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、治療システム102は、ユーザの情報状態領域324上に利用準拠性情報を表示するように、または患者などのユーザが処方治療プロトコルに準拠しているということを介護人または他のサービス提供者に通知するように構成され得る。例えば、利用準拠性情報は、負圧傷療が時間の経過に伴って組織部位へ適用されているか否かに関する情報またはデータを含み得る。利用準拠性情報はまた、治療事象ログ追跡に関する情報またはデータ(例えば治療システム102が時間の経過に伴ってオンまたはオフされるかどうか)を含み得る。追加の準拠性解析は、治療システム102が処方治療プロトコル(例えば時間の経過に伴って様々な圧力および/または流速を定義するプロトコル)に準拠して利用されているか否かに関する情報またはデータを含み得る。準拠性解析はまた、時間の経過に伴った傷治癒進展に関する情報またはデータを含み得る。追加の準拠性出力情報は、例えば非準拠性が許容不能レベルまたは閾値に達すると可聴または可視警告を提供する情報などの出力データおよび情報を含み得る。このような準拠性出力情報はまた、このような情報を臨床医など他の人へ提供する前にフィードバックを患者などのユーザへ提供し得、その結果、ユーザは、許容不能レベルまたは閾値に達する前に非準拠状況を是正する機会を有しそのようにするように動機付けられる。追加の準拠性入力情報は、例えば治療システム102に入力される設定または介護人入力に関する情報などの入力データおよび情報を含み得る。このような準拠性入力情報は、例えば治療圧設定、最大および最小標的圧力、流速設定、流体の点滴など任意の補足的治療の強度および/または持続時間、および負圧治療が連続的または間欠的動作モードで適用されているかどうかを示すデータを含み得る。
【0041】
情報状態領域324はまた、間接関係人からユーザへ伝達されるメッセージを表示するように構成され得る。例えば、遠隔監視センタ120における臨床医は、患者へ表示するためのメッセージをネットワーク118を介し治療システム102へ送信し得る。このようなメッセージは、治療システム102がオンされ利用され続けるための指示を含み得る。追加的に、このようなメッセージは、治療システム102へ提示される1つまたは複数の問題をトラブルシュートするための指示を含み得る。トラブルシュート指示は、浸出液容器を空にするまたは交換するためのまたは治療システム102の電池を再充電または交換するための指示を含み得る。
【0042】
図4は、GUI300を含む電子ディスプレイ217であり得る電子ディスプレイを有するコンピュータなどの電子装置上で使用するための利用監視ソフトウェアの例示的実施形態の例示的GUI400またはGUI300の別の実施形態またはGUI300の一部の画面ショットを示す。GUI400のこの例示的実施形態は、利用報告ディスプレイ404内に具現化された利用準拠性情報と、準拠性解析ディスプレイ406と、警告管理ディスプレイ408内に具現化された準拠性出力情報とを含む患者概要ビュー402を提供する。利用報告ディスプレイ404は、治療システム102など患者の治療システムに関する利用データに対応し得る。患者概要ビュー402は、治療システムの装置ログデータからのデータに基づき情報を表示し得る。装置ログデータは、表示に備えて利用監視ソフトウェアにより解釈され操作される。利用監視ソフトウェアは、潜在的非準拠使用統計値を計算するために日時刻印されたデータを解析し得る。
【0043】
利用報告ディスプレイ404は、治療システムが動作する1日当たり全時間量をユーザへ表示し得る毎日の利用概要410を含み得る。利用報告ディスプレイ404はまた、治癒測定結果ディスプレイ412を含み得る。治癒測定結果ディスプレイ412は、患者の1つまたは複数の傷の治癒進展を追跡するためのデータを提供し得る。例えば、治癒測定結果ディスプレイ412は、特定の傷が受けた治癒の百分率に対応するデータを表示し得る。追加的にまたはその代わりに、治癒測定結果ディスプレイ412は、1つまたは複数の傷の物理的測定結果(長さ、幅、深さ、円周寸法その他など)に関係するデータを表示し得る。
【0044】
準拠性解析ディスプレイ406は、治療システム102などの治療システムの患者の利用に関係するデータおよび解析、およびどのようにこの利用が1つまたは複数の治療プロトコルに準拠するかを表示し得る。例えば、準拠性図414は「患者が毎日治療システムを使用する時間量」対「治療プロトコルに従って処方された時間量」の比較を表示し得る。準拠性解析ディスプレイ406はまた、同様な傷の平均治癒時間に対する患者の1つまたは複数の傷の治癒率を比較し得る治癒分析図416を含み得る。または、準拠性解析ディスプレイ406は、治療システムが使用される日中または夜間の特定時間枠に関係する解析を表示し得る。準拠性解析ディスプレイ406はまた、そうでなければ、治療システムの患者の利用または1つまたは複数の傷の治癒の任意の他の態様に関係する統計値を表示し得る。
【0045】
警告管理ディスプレイ408は、治療システム102などの治療システムの使用に伴う様々なタイプの警告または警報に関係する情報を表示し得る。例えば、警告管理ディスプレイ408は警報ウィンドウ418と通信ウィンドウ420を含み得る。警報ウィンドウ418は治療システムの様々な特徴または機能に関係する1つまたは複数の指標を含み得る。例えば、警報ウィンドウ418は、流体漏れが患者の治療システム上で検知されたということをユーザへシグナリングし得る漏れ検知指標422を含み得る。警報ウィンドウ418はまた、流体閉塞が治療システムにより検知されたということをユーザに警告し得る閉塞検出指標424を含み得る。傷浸出液を収集するための容器が存在するかまたは満杯に近づいているかを示す容器満杯指標426も含まれ得る。加えて、治療システムの1つまたは複数の電池が涸渇に近づいているということをシグナリングするための低バッテリ指標428が含まれ得る。さらに、警告管理ディスプレイ408は治療システム102に関する問題を遠隔的にトラブルシュートできるようにし得る。
【0046】
警告管理ディスプレイ408の通信ウィンドウ420は、1つまたは複数の治療システムとの接続状態に関する警告をユーザへ表示し得るだけでなく、治療システムと通信することに関係する設定を見るまたは変更するためのユーザインターフェースを提供し得る。例えば、通信ウィンドウ420は、監視されている治療システムとの通信リンクが遮断されたということをユーザへシグナリングし得る上りリンク故障指標430を含み得る。通信を構成するためのメニューにおよび/または治療システムの遠隔監視機能を設定および維持するためのネットワーク設定にユーザがアクセスできるようにする構成ボタン432もまた含まれ得る。
【0047】
図4の例示的GUI400は個々の患者データに焦点を当てたが、他の例示的GUIは広範囲の患者の概要データに焦点を当てた報告を含み得る。例えば、介入を必要とし得る異常値患者の効率的識別を提供し得る所与の患者集団の概要が提供される可能性がある。このような概要は、例えば患者統計学的データ、支払人グループ、傷タイプまたは併発症により患者データをグループ化することにより患者データをマクロレベルで見ることを含み得る。1つまたは複数の患者集団の概要ビューを提供することで、より広いスケールでの患者のケアに関するより良好な洞察力を可能にし得る。
【0048】
典型的在宅ケア設定では、傷治療を受ける患者は、傷包帯交換のために2~3日毎に一回訪問され、この時、臨床医は、処方治療プロトコルに従う患者準拠性を評価し得る。臨床医は、このような評価をするためにGUI404と治療システム102の上記特徴とを使用しおよび/または追加的に組織部位を視覚的に検査し得る。しかし、患者を2~3日毎に一回訪問することは、患者が処方通りに(例えば、1日当たり推奨治療時間数の間)負圧傷療システムを使用してきたかどうかを判断するための最適タイミングではない。多くの場合、提供者および保険業者は、患者が負圧傷療システムを1日当たり24時間使用していると予想するが、幾人かの患者による実際の使用ははるかに少ないかもしれない。この利用データを収集するいかなる方法も欠くので、準拠性問題の程度は大いに未知である。今日、いくつかの閾値未満の非準拠性が患者治癒に影響を及ぼすと理解されている。
【0049】
本明細書において開示されるように、治療ネットワーク100は負圧傷治療の運営を改善する。例えば、負圧傷療システムの利用準拠性を遠隔的に監視するためのシステムを提供することにより、非準拠利用は、介護人と患者とが治療システムを処方されたように利用するようにより迅速に助言され得るようにより迅速に検知される可能性がある。この結果、治療プロトコルの準拠性の向上が達成され、組織部位のより速い治癒が達成される可能性がある。例えば、臨床ケアチームまたは家庭看護婦は、所与の処方治療に準拠するための指示を提供するために、監視された患者と接触することができるかもしれない。
【0050】
動作中、治療ネットワーク100とその様々な部品および特徴は図5に示す監視方法500の例示的実施形態に従って利用され得る。例えば、治療ネットワーク100の操作は、治療システム102などの治療システムの動作を開始することで開始し得る。治療システム102の包帯106などの包帯は工程502に示すように組織部位へあてがわれ得る。次に、工程504に示すように、負圧は、負圧源114などの負圧源を包帯へ流体接続し次に負圧源を活性化することにより包帯と組織部位とへ印加され得る。工程506は、治療システムの通信能力を活性化して、利用データなどのデータを送信し始めるために1つまたは複数の遠隔監視センタとの通信を確立する工程を提供する。
【0051】
治療システムがデータを送信し始めると、工程508に示すように、利用データは遠隔監視センタなどの遠隔地において受信され解析され得る。遠隔地にいるユーザ(例えば臨床医またはコンプライアンスチームメンバ)は特定患者に関係する治療システムから送信される利用データをGUIにより精査し得る。いくつかの例では、GUIはデスクトップ端末などのコンピュータ装置上で見られ得る。他の例では、GUIは独自開発ソフトウェアアプリケーションを使用してスマートフォンなどのパーソナル無線装置上で見られ得る。
【0052】
いくつかの好ましい実施形態では、このような利用データ特に利用準拠性情報は、治療ユニット204などの治療ユニットがいつオンまたはオフしたかを含み得る。他の実施形態では、このような利用準拠性情報はさらに、通信装置216などの通信装置が所定期間中に活性化されたか非活性化されたか、および/または活性化されると通信装置216はデータを遠隔受信器へ送信しているかどうかを含み得る。加えて、受信された利用準拠性情報は、送信すべき所望利用データに準拠するかどうかを判断するために解析され得る。
【0053】
このような利用準拠性情報を精査すると、工程510に示すように、ユーザは治療システムの患者の利用が1つまたは複数の所定プロトコルに準拠しているかどうかの判断をし得る。いくつかの実施形態では、自動監視能力が採用され得、この準拠性の判断は自動的になされ得る。患者の治療システムが所与の所定プロトコルに従って使用されているということを準拠性評価が判断すれば、工程508はスケジュールを監視するルーチンに従って繰り返され得る。または、工程510において行われる準拠性評価が「患者の治療システムが処方治療プロトコルに準拠して使用されていない」ということを示せば、工程512に示すように、警告が遠隔監視センタにおいてシグナリングされ得る。
【0054】
例えば、傷の負圧傷療の24時間/日を処方された患者が負圧治療システムを約14時間/日だけ使用していれば、遠隔監視センタは処方治療と実治療とのこの相違を検知し得る。いくつかの好ましい実施形態では、閾値警告は、他の治療因子と傷状態に依存して負圧傷療の利用準拠が16時間/日~20時間/日の時間量を下回ると、発せられ得る。例えば、入力準拠閾値は、現在の治療が傷から大量の浸出液を生成しており治癒過程を妨害しているかもしれないということをコンプライアンスチームが判断すれば、18時間/日で設定され得る。別の例では、入力準拠閾値は、流体点滴治療の管理に適応するために16時間/日で設定され得る。実施形態のうちの任意のものでは、警告閾値限度は負圧傷療の管理に影響を与え得る他の因子に対処するために調整され得る。
【0055】
患者はできるだけ24時間/日近くの間傷に負圧傷療を施されているということがしばしば好ましいが、上に論述されたような利用準拠閾値は、利用時間が傷治癒進展にとって極めて重要であるということを示す実験データに基づき設定され得る。傷治癒進展は、1日当たりの傷容積の低減(すなわち傷容積低減)百分率により測定され得る。実験データを生成した研究は「傷容積低減は負圧傷療が施される1日24時間の百分率(すなわち利用百分率)により促進され得る」ということを示した。さらに、いくつかの利用百分率値間には傷容積低減の大きな差があり得、どの利用百分率値または範囲が利用準拠性の標的にされるべき閾値かということを示す。
【0056】
表1のデータから分かるように、1つの臨界閾値は60~69%利用百分率範囲(1日当たり約14.5~16.5時間)および70~79%利用百分率範囲(1日当たり約17~19時間)内に存在し得る。したがって、このデータに基づき、約1.5%を越える1日当たり所望傷容積低減を実現するために、ユーザは少なくとも約70%(すなわち1日当たり約17時間)の負圧傷療準拠閾値に固執するべきであり、これにより非準拠性の警報の警告を回避する。
【0057】
遠隔監視センタにおいてシグナリングされる警告に加え、工程514に示すように、自動利用者メッセージが遠隔監視センタにより開始され、治療システムへ送信され得る。例えば、治療システムにより受信される利用者メッセージは治療システムのGUI上に自動的に表示され得る。いくつかの実施形態では、チャイムまたは他の形式の警告はユーザの注意を引くためにメッセージの表示を伴い得る。他の実施形態では、利用者メッセージは遠隔監視センタにより他の手段を使用してネットワークを介しユーザへ送信され得る。通信の他のメッセージ形式のいくつかの例としては、特定ユーザの記録上の電話番号へテキストメッセージを送信することが挙げられ得る。同様に、電子メールがユーザのファイル上のアドレスへ送信され得る。別の実施形態では、自動電話メッセージがユーザの記録上の電話番号へ配送され得る。
【0058】
ユーザへ配送されるこのようなメッセージに続いて、工程516に示すように、特に治療プロトコルの準拠性の改善の指標を検知するための利用監視が続き得る。工程518は次のことを示す。利用データは、患者が所与の治療プロトコルにより治療システムを使用する自身の準拠性を改善したかどうか(例えば、20時間/日などの指定利用閾値が満たされているかどうか)を判断するために、工程510において行われたデータ解析のタイプと同様に、再び解析され得る。いくつかのケースでは、指定利用閾値が満たされているかまたは越えられたかに関する判断は、一日ベースで評価されてもよいし、複数日期間にわたる平均値として評価されてもよい。例えば、表1に示す1日当たり傷容積百分率低減は数日の期間にわたって傷容積百分率低減を平均化することにより判断され得る。加えて、指定利用閾値は、ある週から別の週へ増加または低減されるなど時間の経過に伴って変化し得る。例えば、特定の組織部位が著しい治癒進展を示した場合、閾値は低減され得る。しかし、一方、恐らく所与の治療プロトコルの準拠性の欠如のために治癒進展が所望未満である場合、指定利用閾値は一定期間の間増加され得る。
【0059】
一実施形態では、警告は1日当たり利用が14時間を下回れば発せられる。別の実施形態では、警告は、1日当たり利用が16時間または18時間を下回ればまたは1日当たり利用が14時間~22時間の範囲内であれば、発せられる。代替的にまたは追加的に、警告は、複数日期間にわたる平均利用が14時間、16時間、または18時間を下回ればまたは平均利用が14時間~22時間の範囲内であれば、発せられ得る。例えば、利用が3日間にわたって平均15時間を下回ればまたは利用が3日間にわたって平均17時間を下回れば。
【0060】
警告を発するための閾値は時間の経過に伴って調整され得る。一実施形態では、閾値は、例えば18時間~22時間など第1のより高い範囲内に設定される。その後、閾値は例えば14時間~16時間などより低い範囲に設定され得る。閾値は代替的に、ユーザまたは介護人の受信された信号に基づき調整され得る。例えば、システムが、例えば治療を初めて始めた患者、感染性創傷を有する患者、1つまたは複数の共存症を有する患者など高危険性患者を示す信号を受信すれば、システムはより高い利用閾値を利用することになる。システムがユーザまたは患者から異なる信号を受信すると、システムはより低い利用閾値を設定し得る。低危険性患者信号は、準拠してきた患者、治癒しつつあるまたは十分に治癒された傷を有する患者、または介護人がしばしば訪れた患者に対し受信され得る。
【0061】
例えば、準拠性が改善したということを示す信号が受信されれば、または準拠性が改善したということをシステムが判断すれば、工程508に示すように、治療システム利用のスケジュールを監視するルーチンが再開され得る。所与の治療プロトコルの準拠性が改善されていないということを解析された利用データが示すと、工程520に示すように、臨床医または他のコンプライアンスチームメンバが警告され得る。例えば、いくつかの実施形態では、警告は、自動監視センタ122の警告センタ126においてトリガされ、次に遠隔監視センタ120のコンプライアンスチームセンタ128へ伝達され得る。警告を精査すると、工程522に示すように、臨床医または他のコンプライアンスチームメンバは治療プロトコルの準拠性を改善しようとして、患者と接触し得る。さらに、所与の臨床医により監視されるまたはそれへ割り当てられた患者は非準拠性の厳しさに基づき優先順位が付けられ得る。
【0062】
本明細書で使用されるように、「利用」は医療装置がオンされる時間を指す。そうでなければ、「利用」は治療が提供される時間を意味し得る。別の態様では、「利用」は装置が標的治療を提供している時間により測定され得る。例えば、システムにより受信される信号は、装置がオンまたはオフされたまたはポンプがオンまたはオフされたというメッセージをセンサが送信することにより利用を示し得る。医療装置は、利用に関するデータを格納し、次に、毎時間、毎日、複数日期間の利用を示す信号をシステムへ送信し得る。
【0063】
臨床医または他のコンプライアンスチームメンバによるこのような接触に続き、工程524に示すように準拠利用監視が続き得る。同様に、工程526は、利用データが工程510、518において行われたデータ解析のタイプと同様に解析され続け得るということを示す。再度、準拠性が改善されと判断されれば、工程508に従って、治療システム利用を監視するルーチンが再開され得る。処方治療プロトコルの準拠性が改善されなければ、工程528に示すように、非準拠性に関する警告が準拠性監視チーム内に上申され得、その結果、患者のケアを改善するために別の行為が採られ得る。
【0064】
本明細書に記載されたシステムと方法は著しい利点を提供し得、そのうちのいくつかは既に述べた。例えば、患者準拠性を監視する現在の方法は患者のベッドのそばでの装置事象ログの本人精査を必要とする。手動計算および解析が非準拠の時間量を判断するために要求される。場合によっては、2~3日の装置利用を判断するために、臨床医は計算および解析を行うのに最大10分費やす可能性があり、これは現代の健康管理環境において実際的ではない。解決策として、上に説明したような遠隔治療ネットワークは、臨床医が患者準拠性情報を見るためのインターネットが利用可能なところ(デスクトップコンピュータ、スマートフォン、スマートタブレットなど)ならどこでも即時アクセスを提供する。治療ネットワーク100は介護人情報を意味あるフォーマットで提供するためにデータ出力の解析を提供し得る。いかなる計算も必要でなく、臨床医は、必要な場合には、準拠性を改善するためにフィードバックを患者へ提供するように警告され得る。研究されたデータに基づき、本発明は標準的スタンドアロン負圧傷治療に増して傷治癒を改善するだろうということが期待される。
【0065】
治療ネットワーク100は改善された患者監視を提供し得る。例えば、装置ログデータは無数の利害関係者により遠隔的に見られ得、これにより所与の患者との相互作用の頻度を増し得る。この結果、提供者は治療プロトコルをより迅速に調整できるようにされ、これにより組織部位の治癒時間の低減と、治療全体費用の低減をもたらし得る。
【0066】
いくつかの説明的、非限定的、例示的実施形態が提示されたが、様々な変更、置換、順序入替、および代替が添付特許請求範囲から逸脱することなくなされ得る。任意の1つの例示的実施形態に関連して記載された任意の特徴もまた、任意の他の例示的実施形態へ適用可能であり得る。
【0067】
さらに、本明細書で説明した方法の工程は、任意の好適な順序で、または適切な場合には同時に実行され得る。
図1
図2
図3
図4
図5