(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】回転サセプタを有する、高精度導波路ガラス線引きのための誘導炉
(51)【国際特許分類】
C03B 37/029 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
C03B37/029
(21)【出願番号】P 2022196017
(22)【出願日】2022-12-08
【審査請求日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515174489
【氏名又は名称】ヘレーウス クオーツ ノース アメリカ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quartz North America LLC
【住所又は居所原語表記】100 Heraeus Boulevard, Buford, GA 30518, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】チウリン、マー
(72)【発明者】
【氏名】カイ、フーエイ、チャン
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0088253(US,A1)
【文献】特開平01-096042(JP,A)
【文献】特開平06-072736(JP,A)
【文献】特開平09-025136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/02-37/029,
G02B 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス要素を線引きするための線引き炉であって、
開口部を含む上端部と、開口部を含む下端部とを有する炉本体であって、
i.上部環状プレートと、
ii.あるレベルの電流を受け入れ、ある周波数で振動する振動電子信号を生成することが可能なA/C誘導コイルと、
iii.あるレベルの熱出力を生成することが可能な円筒形サセプタと、
iv.円筒形石英ビーカーと、
v.前記円筒形サセプタと前記円筒形石英ビーカ
ーとの間に配置された断熱材料と、
vi.前記円筒形サセプタ、前記円筒形石英ビーカ
ー、及び前記断熱材料のうちの少なくとも1つを収容し、支持する下部環状プレートと、を備え、前記炉本体が中心長手方向軸を含む、炉本体と、
環状回転ギアシステムによって前記下部環状プレートに動作可能に接続された回転駆動システムと、を備え、前記回転駆動システムが前記環状回転ギアシステムと係合されると、前記下部環状プレートが、前記円筒形サセプタ
及び前記断熱材料と共に、
又は、前記円筒形サセプタ、前記円筒形石英ビーカ
ー、及び前記断熱材
料と共に、前記中心
長手方向軸の周りを0.01~10Hzの周波数で回転し、前記電流のレベル及び前記振動の周波数が、前記
円筒形サセプタの前記熱出力のレベルを決定する、
線引き炉。
【請求項2】
前記下部環状プレートが、少なくとも前記円筒形サセプタと、前記円筒形石英ビーカーとを収容する同心溝を含む、請求項1に記載の線引き炉。
【請求項3】
前記
円筒形サセプタがグラファイトを含む、請求項1に記載の線引き炉。
【請求項4】
前記ガラス要素が、光プリフォーム、ガラスシリンダ-コアロッドアセンブリ、及びガラスシリンダからなる群から選択される1つである、請求項1に記載の線引き炉。
【請求項5】
前記下部環状プレートが石英を含む、請求項1に記載の線引き炉。
【請求項6】
前記上部環状プレートが石英を含む、請求項1に記載の線引き炉。
【請求項7】
前記周波数が0.05~0.15Hzである、請求項1に記載の線引き炉。
【請求項8】
前記周波数が0.1Hzである、請求項1に記載の線引き炉。
【請求項9】
ガラス要素の線引き中に炉内のサセプタの周りに円周方向に熱を均等に分配する方法であって、
線引き炉であって、
開口部を含む上端部と、開口部を含む下端部とを有する炉本体であって、
i.上部環状プレートと、
ii.あるレベルの電流を受け入れ、ある周波数で振動する振動電子信号を生成することが可能なA/C誘導コイルと、
iii.あるレベルの熱出力を生成することが可能な円筒形サセプタと、
iv.円筒形石英ビーカーと、
v.前記円筒形サセプタと前記円筒形石英ビーカ
ーとの間に配置された断熱材料と、
vi.前記円筒形サセプタ、前記円筒形石英ビーカ
ー、及び前記断熱材料のうちの少なくとも1つを収容し、支持する下部環状プレートと、を備え、前記炉本体が中心長手方向軸を含む、炉本体と、
環状回転ギアシステムによって前記下部環状プレートに動作可能に接続された回転駆動システムと、を備える、前記線引き炉を、A/C電流を供給することによって誘導加熱するステップと、
前記下部環状プレートが、前記円筒形サセプタ
及び前記断熱材料と共に、
又は、前記円筒形サセプタ、前記円筒形石英ビーカ
ー、及び前記断熱材
料と共に、前記中心
長手方向軸の周りを円周方向に0.10~10Hzの周波数で回転するように前記下部環状プレートを回転させるために、前記回転駆動システムと前記環状回転ギアシステムとを係合するステップと、含み、前記電流のレベル及び前記振動の周波数が、前記サセプタの前記熱出力のレベルを決定する、
方法。
【請求項10】
前記ガラス要素が、光プリフォーム、光ファイバ、及び線引きチューブからなる群から選択される1つである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記光ファイバが中空光ファイバである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
回転の前記周波数が0.1Hzである、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記下部環状プレートが石英を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記上部環状プレートが石英を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記周波数が0.05~0.15Hzである、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
炉であって、上部環状プレート、A/C誘導コイル、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー、前記
円筒形サセプタと前記
円筒形石英ビーカーとの間に配置された断熱材料、及び下部環状プレートを有する炉本体と、環状回転ギアシステムによって前記下部環状プレートに動作可能に接続された回転駆動システムと、を含む、炉内で、光学ガラス要素を形成する方法であって、
前記上部環状プレートの開口部を通して前記炉本体内にガラス体を導入するステップと、
前記回転駆動システムを前記環状回転ギアシステムに係合し、前記炉本体を通して前記ガラス体を線引きしながら、前記円筒形サセプタ
及び前記断熱材料と共に、
又は、前記円筒形サセプタ、前記円筒形石英ビーカー、
及び前記断熱材
料と共に、前記下部環状プレートを前記炉本体の中心軸の周りで0.01~10Hzの周波数で回転させるステップと、
前記A/C誘導コイルが電流を受け取ったことによって生じた磁場を介して前記
円筒形サセプタを誘導加熱するステップと、
前記
円筒形サセプタ内の前記ガラス体を加熱するステップと、
生成された
前記光学ガラス要素を、前記下部環状プレートの開口部を通して供給するステップと、
を含む、方法。
【請求項17】
前記ガラス体が、ガラスプリフォーム、ガラスシリンダ-コアロッドアセンブリ、又はガラスシリンダのうちの1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記光学ガラス要素が、光ファイバ、光ファイバプリフォーム、光導波路、又はチューブのうちの1つである、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前
記周波数が0.05~0.15Hzである、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前
記周波数が0.1Hzである、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、光ファイバ、光ファイバプリフォーム、光導波路基材/ジャケットチューブを線引きするための炉及びその方法に関し、特に、大きなガラスプリフォームから光ファイバ、光ファイバプリフォーム、光導波路基材/ジャケットチューブを線引きするための誘導炉、シリンダ-コアロッドアセンブリ、シリンダ、及びこれらのガラス体を線引きするための誘導路に関する。より具体的には、本開示は、サセプタを円周方向に均等に加熱して、線引きチューブ、線引きプリフォーム、線引きファイバ、特に、中空ファイバにおける欠陥を最小化又は解消する装置及び方法に関する。
【0002】
光ファイバ線引きは、光ファイバプリフォームロッドをファイバ線引き炉を通して高温で溶融後、ファイバ線引き及び形成を完了する手順である。既存の光ファイバ線引き炉加熱装置は、主に、炉ケーシングと、炉空洞内に取り付けられた発熱スリーブと、発熱スリーブの周りに取り付けられた断熱層と、誘導コイルとから形成される。一方、光導波チューブ及びプリフォームの線引きは、ファイバ線引きよりもはるかに大きい形成ゾーンを有し、これは、通常、抵抗加熱器によって送達される、ファイバ線引きよりもはるかに高い電力を必要とする。
【0003】
そのような炉を採用する垂直線引きの方法は、任意のツールなしで石英ガラスの中空シリンダを、任意の所望の断面プロファイルのチューブへと形成するのに役立つ。ここで、中空シリンダは、通常、垂直方向に上から加熱チューブに供給され、そこでゾーンごとに軟化され、チューブストランドが軟化領域から線引きされ、線引きバルブが軟化領域に形成される。
【0004】
一方では、この成形プロセスではツールが存在しないことにより、引き出されたストランドは損傷の少ない表面が得られる。しかしながら、他方では、引き出されたストランドの寸法安定性が機械的な介入なしに保証されなければならないという問題が生じる。これは、中空シリンダの既にある寸法のばらつきによって特に困難になり、ばらつきは、引き出されたチューブストランド内で継続する傾向があるか、又はそこで更に増大する。最も頻繁に見られる欠陥は、半径方向断面プロファイルにおける高頻度の直径変動及び楕円率、又は壁の片寄り、すなわち、専門家の間では「サイディング」とも呼ばれる、チューブ壁の厚さにおける半径方向の不規則性である。
【0005】
サイディング欠陥は、大部分が、線引きバルブのゾーンにおけるサセプタの周りの円周方向の非対称な温度プロファイルの結果として形成される。例えば、コイルの螺旋形状、コイルに対するサセプタ軸線のミスアライメント、及びサセプタの不均一な壁厚など、サセプタの円周方向の温度非対称性には多くの原因がある。円周方向温度対称性は、内部形状を含む中空ファイバを線引きするときに特に重要であるが、それは、サセプタの周りのわずかな温度のばらつきが線引きされているファイバの温度のばらつきに変換され、それが中空ファイバの内部の幾何学的形状を変形させ、最悪の場合には破壊する恐れがあるからである。
【0006】
加熱素子としてサセプタを有する誘導炉は、電気通信ファイバ産業において線引き炉として広く使用されている。しかし、それは、主にその制限された電力、加熱ゾーンの制限された長さ、並びにそれがサポートできる制限された線引きスループットにより、チューブ線引き炉又はプリフォーム線引き炉としてほとんど使用されていない。誘導加熱の最近の技術進歩により、約200mmのODシリンダからプリフォーム又はチューブを線引きするのに十分な電力を達成することが可能になった。しかしながら、標準的な電気通信ファイバ線引きよりもはるかに長い成形ゾーンを有するチューブ(又はプリフォーム)線引きの場合、楕円率、サイディング、及び偏心などの対称幾何学的形状の精度は、誘導炉の円周方向温度対称性にはるかに敏感である。更に、新たに開発されたNANF HCFプリフォーム製造プロセス及びファイバ線引きプロセスにおいて、正確なチューブの幾何学的形状及びケーン内部の関連する対称性は、その設計された光導波性能のために十分に維持される必要がある。したがって、線引き歩留まりもまた、オーブンの円周方向の温度非対称性に非常に敏感である。
【0007】
関連する温度範囲(典型的には>2100℃)では、誘導炉の完全な温度プロファイル測定は、大きな技術的課題であり、正確に行うことは非常に困難である。したがって、炉内の温度対称性は、直接測定によって決定することが非常に困難である。
【0008】
よって、ガラスプリフォームから光ファイバを線引きするための装置及び方法であって、線引きされる際にファイバに円周方向温度対称性を付与して、上記の欠陥を実質的に解消する、装置及び方法が当該技術分野において必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、ガラス要素を線引きするための線引き炉であって、開口部を含む上端部と、開口部を含む下端部とを有する炉本体であって、i.上部環状プレートと、ii.あるレベルの電流を受け入れ、ある周波数で振動する振動電子信号を生成することが可能なA/C誘導コイルと、iii.あるレベルの熱出力を生成することが可能な円筒形サセプタと、iv.円筒形石英ビーカーと、v.円筒形サセプタと円筒形石英ビーカー構成要素との間に配置された断熱材料と、vi.円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー構成要素、及び断熱材料のうちの少なくとも1つを収容し、支持する下部環状プレートと、を備え、炉本体が中心長手方向軸を含む、炉本体と、環状回転ギアシステムによって下部環状プレートに動作可能に接続された回転駆動システムと、を備え、回転駆動システムが環状回転ギアシステムと係合されると、下部環状プレートが、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー構成要素、及び断熱材料のうちの少なくとも1つと共に、中心軸の周りを0.01~10Hzの周波数で回転し、電流のレベル及び振動の周波数が、サセプタの熱出力のレベルを決定する、線引き炉を提供することによってこの必要性を満たす。
【0010】
別の態様では、本開示は、ガラス要素の線引き中に炉内のサセプタの周りに円周方向に熱を均等に分配する方法であって、線引き炉であって、開口部を含む上端部と、開口部を含む下端部とを有する炉本体であって、i.上部環状プレートと、ii.あるレベルの電流を受け入れ、ある周波数で振動する振動電子信号を生成することが可能なA/C誘導コイルと、iii.あるレベルの熱出力を生成することが可能な円筒形サセプタと、iv.円筒形石英ビーカーと、v.円筒形サセプタと円筒形石英ビーカー構成要素との間に配置された断熱材料と、vi.円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー構成要素、及び断熱材料のうちの少なくとも1つを収容し、支持する下部環状プレートと、を備え、炉本体が中心長手方向軸を含む、炉本体と、環状回転ギアシステムによって下部環状プレートに動作可能に接続された回転駆動システムと、を備える、線引き炉を、A/C電流を供給することによって誘導加熱するステップと、下部環状プレートが、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー構成要素、及び断熱材料のうちの少なくとも1つと共に、中心軸の周りを円周方向に0.10~10Hzの周波数で回転するように下部環状プレートを回転させるために、回転駆動システムと環状回転ギアシステムとを係合するステップと、を含み、電流のレベル及び振動の周波数が、サセプタの熱出力のレベルを決定する、方法を提供する。
【0011】
別の態様では、本開示は、炉であって、上部環状プレート、A/C誘導コイル、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー、サセプタとビーカーとの間に配置された断熱材料、及び下部環状プレートを有する炉本体と、環状回転ギアシステムによって下部環状プレートに動作可能に接続された回転駆動システムと、を含む、炉内で、光学ガラス要素を形成する方法であって、上部環状プレートの開口部を通して炉本体内にガラス体を導入するステップと、回転駆動システムを環状回転ギアシステムに係合し、炉本体を通してガラス体を線引きしながら、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー、又は断熱材料のうちの少なくとも1つと共に、下部環状プレートを炉本体の中心軸の周りで0.01~10Hzの周波数で回転させるステップと、A/C誘導コイルが電流を受け取ったことによって生じた磁場を介してサセプタを誘導加熱するステップと、サセプタ内のガラス体を加熱するステップと、生成された光学ガラス要素を、下部環状プレートの開口部を通して供給するステップと、を含む、方法を提供する。ガラス体は、ガラスプリフォーム、ガラスシリンダ-コアロッドアセンブリ、ガラスシリンダなどのうちの1つであってもよい。光学ガラス要素は、光ファイバ、特に中空光ファイバ、又は光ファイバプリフォーム、光導波路、チューブなどのうちの1つであってもよい。回転周波数は、より具体的には0.05~0.15Hz、より具体的には0.1Hzであってもよい。
【0012】
本発明の実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示による、光ファイバを線引きするための炉の直径を通る平面における大まかな概略断面図を示す。
【
図2】本開示による炉の直径を通る平面における詳細な断面図を示す。
【
図3】炉内に配置される誘導コイルの実施形態を示す。
【
図5】実施例1からのサセプタの全体的な温度プロファイルを示す。
【
図6】実施例1のサセプタの軸方向CSAの温度プロファイルを示す。
【
図7】サセプタ軸線が実施例2のコイルの軸線から外れているときのサセプタの温度プロファイルを示す。
【
図8】サセプタ軸線が実施例2のコイルの軸線から外れているときのサセプタの軸方向CSAの温度プロファイルを示す。
【
図9】実施例3の、壁厚が均一でないときのサセプタの温度プロファイルを示す。
【
図10】実施例4による、0.1Hz回転でのサセプタの温度プロファイルを示す。
【
図11】実施例4による、0.1Hz回転でのサセプタの軸方向CSAの温度プロファイルを示す。
【
図12】サセプタ軸線がコイルの軸線から外れているときの、0.1Hz回転でのサセプタの温度プロファイルを示す。
【
図13】サセプタ軸線がコイルの軸線から外れているときの、0.1Hz回転でのサセプタの軸方向CSAの温度プロファイルを示す。
【
図14】不均一な壁厚を有するが、0.1Hzのサセプタ回転が加えられている、サセプタの温度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明は、好ましい例示的な実施形態のみを提供するものであり、本発明の範囲、適用性、又は構成を制限することを意図するものではない。むしろ、好ましい例示的な実施形態の以下の詳細な説明は、当業者に本発明の好ましい例示的な実施形態を実施することを可能にする説明を提供する。添付の特許請求の範囲に記載されているように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び構成に様々な変更を加えることができる。
【0015】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的で、「線引き炉」という用語は、例えば、光プリフォームなどのガラス要素を光ファイバへと線引きするために、又はシリンダ-コアロッドアセンブリをプリフォームへと延伸し、圧潰するために、又はガラスシリンダをチューブへと延伸するために使用することができる炉を意味する。
【0016】
本発明を説明する文脈(特に添付の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに類似の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がない限り、又は文脈に明確な矛盾のない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、及び「含有する(containing)」という用語は、別途明記されない限り、オープンエンド型の用語(すなわち、「含むが限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列記は、別段の指示がない限り、その範囲内に含まれる各々の別個の値を個別に指すための簡略な方法としての役割を単に意図するものであり、各々の別個の値は個別に列記されているのと同様に明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別段の指示がない限り、又は別段文脈に明らかな矛盾のない限り、任意の適切な順序で実行することができる。任意及び全ての例又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、単に本発明をよりよく明らかにすることを意図するものであり、別途特許請求されていない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書におけるいかなる文言も、本発明の実施に不可欠なものとして特許請求されていない任意の要素を示すと解釈されるべきではない。
【0017】
中空コアファイバ(hollow core fiber、HCF)、例えばNANF HCFは、ケーン内のチューブの幾何学的形状を維持するために、優れた円周方向温度対称性を必要とする。所望のチューブの幾何学的形状の公差は著しく厳しくなり、楕円率目標はチューブODの0.1%以下であり、サイディング目標はチューブ壁厚さの1%以下であり、CSA変動は1%未満であり、これらの全てが本発明者らのチューブ線引き歩留まりを著しく低下させる。
【0018】
このような要件を満たす又は超えるために、本明細書には、ガラス要素を線引きするための線引き炉であって、開口部を含む上端部と、開口部を含む下端部とを有する炉本体であって、i.上部環状プレートと、ii.あるレベルの電流を受け入れ、ある周波数で振動する振動電子信号を生成することが可能なA/C誘導コイルと、iii.あるレベルの熱出力を生成することが可能な円筒形サセプタと、iv.円筒形石英ビーカーと、v.円筒形サセプタと円筒形石英ビーカー構成要素との間に配置された断熱材料と、vi.円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー構成要素、及び断熱材料のうちの少なくとも1つを収容し、支持する下部環状プレートと、を備え、炉本体が中心長手方向軸を含む、炉本体と、環状回転ギアシステムによって下部環状プレートに動作可能に接続された回転駆動システムと、を備え、回転駆動システムが環状回転ギアシステムと係合されると、下部環状プレートが、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー構成要素、及び断熱材料のうちの少なくとも1つと共に、中心軸の周りを0.01~10Hzの周波数で回転し、電流のレベル及び振動の周波数が、サセプタの熱出力のレベルを決定する、線引き炉が開示される。
【0019】
図1は、本開示による、光ファイバを線引きするための炉の直径を通る平面における大まかな概略断面図である。
図1は縮尺どおりではなく、炉の全ての構成要素を詳細に図示していない。
図2は、炉の直径を通る平面での(
図1に示されるものに対して)より詳細な断面図である。一般に、炉は、炉本体F、上部煙突(図示せず)、及び下部煙突Bを含む。プリフォームは上部煙突を通して炉本体内に導入され、プリフォームがファイバに線引きされるにつれて、ファイバは下部煙突を通して炉から出る。炉本体は、中心を長手方向に通る中心軸CAを有する。
【0020】
本発明による炉の好ましい実施形態を
図2に示す。炉本体Fは、円筒形断熱体3の内部に収容された、あるレベルの熱出力を生成することが可能な円筒形サセプタ2を備える。断熱体3は、好ましくは円筒形石英ビーカー4内に収容される。2つの環状石英プレート25及び27は、サセプタ2の周りの石英ビーカー4の位置合わせを維持する。いくつかの実施形態では、サセプタ2の外面と断熱体3の内面との間には、好ましくは約3~5mmの隙間が設けられてもよい。特定の実施形態では、断熱体3の外面と石英ビーカー4の内面との間にも同様の隙間が設けられてもよい。これらの隙間は、存在する場合、炉本体のアセンブリのより容易な取り付けを可能にし、アセンブリの他の構成要素と干渉することなく、その単一構成要素の容易な取り外し及び取り換えを可能にする。
【0021】
炉本体の高さは、上部煙突及び下部煙突と共に、プリフォームの全長を含有するように寸法決めされる。炉本体の高さは、プリフォームから光ファイバを線引きするために、プリフォームの下端部を加熱するように十分に延長されなければならないが、プリフォームの残りの部分の不必要な過熱を回避するように十分に縮小されなければならない。
【0022】
コイル6は、あるレベルの電流を受け入れ、ある周波数で振動する振動電子信号を生成することが可能なA/C誘導コイルである。コイル6は石英ビーカー4を取り囲み、石英ビーカー4の外面から約5~6mmの距離に位置決めされている。コイル6は電場を発生させ、電場が次に渦電流を発生させ、したがってサセプタ2内が約2200℃もの高温まで加熱される。これらの全ての主要構成要素、コイル6、石英ビーカー4、断熱体3、及びサセプタ2は、ハウジング1内に封入されている。
【0023】
金属、例えば銅、真鍮、又は好ましくはアルミニウムで作製され得るハウジング1は、それぞれが中央に位置する開口を有する環状端部プレート15及び16によって上端部及び下端部が閉じられている。これらの端部プレート及びハウジング1は、例えば、アルミニウムで作製され得る。端部プレートの開口は、上部煙突T及び下部煙突Bと嵌合する。端部プレート及びハウジング1の内壁1bは、炉内部を画定する。
【0024】
図1及び
図2に示す実施形態では、ハウジング1は、外壁1a及び内壁1bの2つの壁を含み、これらは共に環状冷却空洞12を画定する。壁の直径及び長さは炉の用途に依存し、決して限定するものではない。一例として、一実施形態では、外壁1aは620mm径の外径を有し、内壁1bは580mmの外径を有し、ハウジング1の高さは約740mmである。外部ハウジング1を冷却するために、冷却流体が冷却空洞12を通って流れる。例えば、壁1aと壁1bとの間の空間は水の流れによって冷却される。冷却水は、複数の水供給管11を介して空洞12に入る。例えば、3つの供給管11が、ハウジング1外周の周囲に120°の間隔で分配され得る。次に、水は排出管13を通して空洞12から排出される。好ましくは、供給管11及び排出管13の数は等しく、供給管11及び排出管13は、冷却水がハウジング1を均一に冷却するように、ハウジング1の対向している側に位置する。
【0025】
コイル6は、通路23を通して高周波電流源(図示せず)に電気的に接続されている。コイル6内の電流レベルは、著しいレベルの抵抗加熱をもたらし得る。そのような加熱を制御するために、コイル6は、例えば銅チューブで作製することができ、それにより、炉の動作中に水などの冷却流体をコイル6を通して循環させることができる。コイル6を流れる電流によって発生される電場は、サセプタ2に渦電流を誘導する。断熱体及び/又はサセプタを起こり得る酸化から保護するために、好ましくは、調整ガス、例えば窒素が、コイルが収容されている空間43内へと流される。このガスの典型的な流量は、約20~約30L/分である。供給管44及び排出管45が、例えば管11及び13について説明したのと同様に、ハウジング1上に設けられ、当該ガスをハウジング1内に流入させる。
【0026】
ハウジング1内部でコイル6を支持する構造体は、たとえあったとしても、大きな電流を伝導すべきではない。
図3に示す実施形態では、石英ビーカー4(
図3には図示せず)に隣接してコイル6を支持するために、断熱セラミック材料で作製された3つの脚部18が、120°の間隔でハウジング1内に分配されている。コイル支持体18を固定することによってコイル6が炉内でセンタリングされた後、支持体18に設けられた対応する垂直スロット71に挿入されたピン70に対する作用によって、コイル6の中心軸線が炉の中心軸線に対して正確に位置合わせされ、正しい位置合わせが完了すると、コイルは、例えばナットにより各ピンを支持体18に固定することによって、そのような位置に固定される。代替として、支持体18の垂直スロットは、一連の水平スロットで置き換えることができ、各水平スロットは、コイルターンピンが留まると想定される適切な高さに配置される。この後者の実施形態では、取り付け及び位置合わせの作業が一般に容易であり、コイルのセンタリングは、非常に正確かつ経時的に一定である。
【0027】
本開示による炉のサセプタ2は、典型的にはグラファイトで作製される。特に、グラファイトサセプタ材料は、好ましくは約50W/m°Kよりも高い、例えば約100W/m°Kの比較的高い熱伝導率と、好ましくは約1.010-5オーム以下の比較的低い比抵抗とを有するべきである。一実施形態では、サセプタ2は、150mmの内径を有する約6mmの厚さであり、大きなプリフォーム(最大直径約130mm)に適合する。
【0028】
典型的には、炉の内側に制御された加熱雰囲気を提供し、かつ、炉の外側からの空気の偶発的な流入による起こり得る酸化からサセプタ表面を保護するために、調整ガスが、円筒形サセプタの内側に上部煙突から提供される。ヘリウム、アルゴン、及び窒素を含むがこれらに限定されない任意の不活性ガスが調整ガスとして適切であり得、ヘリウムが好ましい。典型的には、当該調整ガスは、約15L/分~約20L/分の流量で炉内に流される。当該調整ガスは、サセプタを通ってサセプタと断熱体との間に設けられたギャップ内に拡散し、次に、断熱体を透過する。ギャップの幅が狭いことにより、当該ギャップ内にある調整ガスは実質的に静止しており、すなわち、このギャップ内では、ガスの実質的に強制的な流れは生じない。
【0029】
また、本開示による炉に適切な断熱材料は、サセプタと断熱体との適合性を改善するために、グラファイト系材料であり得る。断熱材料は、主に密度(又は気孔率)、熱伝導率及び抵抗率において、サセプタに採用されるグラファイト系材料とは異なる。特に、グラファイト断熱材料の密度は、(グラファイトサセプタ材料の少なくとも1.5g/cm3の典型的な密度と比較して)約0.4g/cm3未満、好ましくは約0.2g/cm3未満である。断熱材料の密度が低いことに関連して、見かけ上の気孔率が高く、(サセプタ材料の気孔率の典型的な値が約20%であるのと比較して)約70%よりも高く、好ましくは約85%よりも高い。気孔率が比較的高いことにも起因して、当該グラファイト断熱材料は良好な断熱特性を有する。これらの材料の熱伝導率は、サセプタ材料の熱伝導率と比べると比較的低い。特に、当該熱伝導率は、典型的には、2000℃のアルゴン雰囲気中で約1.5W/m°K未満、好ましくは約1.2W/m°K未満であり、400℃のアルゴン雰囲気中で約0.6W/m°K未満、好ましくは約0.4W/m°K未満である。コイルとの電磁結合の可能性を制限するために、グラファイト断熱材料は、サセプタの比抵抗よりも実質的に高い、好ましくは約1.010-3オーム以上の比抵抗を有するべきである。
【0030】
例えば、SGL(例えば、Sigratherm KFA5又はKFA10)又はUnion Carbide(例えば、National Grade VDG、Grade WDF又はGrade GRI-1)によって市販されているものなど、市販の炭素フェルト又はグラファイトフェルトを、本開示による炉内の断熱材料として使用することができる。前述のように、これらのフェルト状材料は、剛性支持体と結合する必要がある可撓性シートの形態である。典型的には、そのようなフェルト状材料のシートは、約5~10mmの厚さを有し、所望の断熱特性を付与するのに十分な巻数だけサセプタの周りに巻き付けられ、したがって、サセプタは断熱体の支持体として採用される。
【0031】
有利には、本開示による炉の断熱体には、好ましくは、剛性グラファイト断熱材料が使用され、当該材料は、自立シリンダへと容易に成形されるのに十分な硬度を有する。これらの材料は、典型的にはグラファイトファイバを含み、その大部分は好ましい方向に沿って互いに平行に配置されている。十分に固く、自重に耐えるために、当該材料は、ファイバの長手方向において少なくとも0.1Mpa、好ましくは少なくとも約0.5Mpa~約10Mpaの圧縮弾性率を有するべきであり、約1Mpaの圧縮弾性率が特に好ましい。典型的には、断熱シリンダは、所望の厚さの単一シートで作製される。シートはシリンダを形成するように曲げられ、曲げられたシートの対向する2つの端部は、例えば溶接又は縫合によって互いに接触して保持される。このようにして得られた断熱シリンダは、サセプタ上へと圧漬されることなく自重に耐えることができ、したがって、断熱体とサセプタとの間に所望のギャップ(好ましくは約3~5mm)を維持することができる。例えば、サセプタシリンダの消耗を理由にサセプタシリンダの取り換えが必要な場合、当該サセプタは、構造体の全体の幾何学的形状を変えることなく炉本体から容易に取り外すことができ、したがって、断熱シリンダを定位置に残すことができる。
【0032】
所望の特性を有する適切な材料の例は、Sigratherm PR-200-16、PR-201-16又はPR-202-16(SGL)、Morganite製のCBCF(登録商標)(Carbon Bonded Carbon Fiber)、及びUnion Carbide製のUCAR Graphite RIGID Insulationである。断熱体3の好ましい材料は、CBCF(登録商標)である。CBCF(登録商標)は、剛性であり、均一な気孔率であり、容易に機械加工され組み立てられる。前述のように、これらの材料は、好ましい方向に沿って互いに平行に配置されたグラファイトファイバを含む。本開示の実施形態では、グラファイトファイバが主に断熱シリンダの軸線に平行に配置されるように、材料をシリンダへと形成する。
【0033】
本発明による剛性グラファイト断熱シリンダは、約45~60mmの厚さ及び約150~約160mmの内径を有する。好ましい実施形態によれば、厚さは約52mmであり、内径は約156mmである。
【0034】
石英ビーカー4は、約265~285mm、図示された非限定的な実施形態では約275mmの外径を有する円筒形石英チューブであり、断熱体3を取り囲むように配置され、円筒形サセプタ2内の調整ガスとコイル6を取り囲む調整ガスとが異なる場合、それらを分離する。中央開口部26及びその下面に3つの同心溝を有する上部環状プレート25が、ビーカー4の上端部に設けられている。また、中央開口部28及びその上面に同心溝を有する下部環状プレート27が、ビーカー4の下端部に設けられている。下部環状プレートは、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー構成要素、及び断熱材料のうちの少なくとも1つを収容し、支持し、炉本体は、中心長手方向軸を含む。好ましい実施形態では、上部環状プレート25及び下部環状プレート27は石英を含む。サセプタ2、断熱体3及びビーカー4の端部のうち少なくとも1つは、プレート25及び27の同心溝内に収容され、それにより、これらの構成要素は、互いに対して、確実かつ正確に位置決めされ、容易に単独で取り外し可能である。サセプタ2、断熱体3及びビーカー4のうちの少なくとも1つを位置決めするこの方法によって、炉ごとに一貫した性能が保証される。2つのプレート25及び27の中央溝には、断熱体3の端部に形成された環状隆起部29及び30が挿入される。一実施形態では、環状隆起部29及び30は、サセプタ2の周りに断熱体3を同心円状に整列させる。一実施形態では、サセプタ2の端部は、2つのプレート25及び27の最も内側の同心溝内に収容される。したがって、一実施形態では、下部環状石英プレート27は、円筒形サセプタ2と、円筒形石英ビーカー4と、断熱材料3とを収容し、支持する。
【0035】
孔46は、典型的には、ビーカー4と、断熱体3と、ハウジング1とを貫通して作られ、通路39を通して炉内に導入されるパイロメータセットを使用してサセプタ2の外面の温度を測定することを可能にする。断熱体3の機械加工性により、孔を穿設することは非常に容易である。パイロメータによって測定された温度は、炉の電力供給を制御するためのフィードバックパラメータとして使用される。
【0036】
本明細書に開示される線引き炉は、環状回転ギアシステム52によって下部環状石英プレート27に動作可能に接続された回転駆動システム50を備え、回転駆動システム50が環状回転ギアシステム52と係合されると、下部環状石英プレート27は、円筒形サセプタ2、円筒形石英ビーカー4、及び断熱材料3のうちの少なくとも1つと共に、中心軸CAの周りを0.10~10Hz、好ましくは0.05~0.15Hzの周波数で回転し、電流のレベル及び振動の周波数が、サセプタ2の熱出力レベルを決定する。一実施形態では、回転周波数は0.1Hzである。
【0037】
一実施形態では、回転駆動システム50は、駆動モータのギアと係合するギアを含む回転テーブル52を含む。いくつかの実施形態では、回転テーブル52は、少なくとも円筒形サセプタ2と円筒形石英ビーカー4とを嵌合的に受け入れ、したがって収容する同心溝を含む。いくつかの実施形態では、回転テーブル52はまた、円筒形サセプタ2と、円筒形石英ビーカー4と、断熱材料3とが回転テーブル52上に一体的に設置されるように、断熱材料3のための同心溝を含む。好ましくは、回転駆動システム50は、コンピュータ処理ユニット(図示せず)を含む。
【0038】
好ましくは、回転駆動システム50は、回転テーブル52、したがって、円筒形サセプタ2、円筒形石英ビーカー4及び断熱材料3を、中心軸CAの周りで0.01~10.0Hz又は0.05~0.15Hzの周波数で回転周波数で回転させる。いくつかの実施形態では、回転周波数は0.1Hzである。
【0039】
回転駆動システムがないそのような装置の例は、米国特許第7,814,767号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0040】
また本明細書には、ガラス要素の線引き中に炉内のサセプタの周りに円周方向に熱を均等に分配する方法であって、線引き炉であって、開口部を含む上端部と、開口部を含む下端部とを有する炉本体であって、i.上部環状プレートと、ii.あるレベルの電流を受け入れ、ある周波数で振動する振動電子信号を生成することが可能なA/C誘導コイルと、iii.あるレベルの熱出力を生成することが可能な円筒形サセプタと、iv.円筒形石英ビーカーと、v.円筒形サセプタと円筒形石英ビーカー構成要素との間に配置された断熱材料と、vi.円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー構成要素、及び断熱材料のうちの少なくとも1つを収容し、支持する下部環状プレートと、を備え、炉本体が中心長手方向軸を含む、炉本体と、環状回転ギアシステムによって下部環状プレートに動作可能に接続された回転駆動システムと、を備える、線引き炉を、A/C電流を供給することによって誘導加熱するステップと、下部環状プレートが、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー構成要素、及び断熱材料のうちの少なくとも1つと共に、中心軸の周りを円周方向に0.10~10Hzの周波数で回転するように下部環状プレートを回転させるために、回転駆動システムと環状回転ギアシステムとを係合するステップと、を含み、電流のレベル及び振動の周波数が、サセプタの熱出力のレベルを決定する、方法が開示される。
【0041】
方法の第1のステップは、A/C電流を供給することによって線引き炉を誘導加熱することであり、線引き炉は、開口部を含む上端部と、開口部を含む下端部とを有する炉本体を含み、炉本体は、上で詳述された特徴を含む。上述のように、加熱は、A/C電流をコイル6に供給した結果として誘導的に行われ、コイルは、電流によって生じた磁場を介してサセプタ2を誘導的に加熱する。
【0042】
方法の第2のステップは、下部環状プレート27、円筒形サセプタ2、円筒形石英ビーカー4、及び断熱材料3とを中心軸の周りで0.01~10.0Hzの周波数で円周方向に回転させるために、回転駆動システム50及び環状回転ギアシステム52を係合することである。回転駆動システム50を係合するステップは、コンピュータプロセッサを介して、又は回転駆動システム50の電気モータを手動で係合することによって実行することができる。回転駆動システム50及び環状回転ギアシステム52を係合する第2のステップは、同時に行うことができ、又は回転ギアシステムは、加熱ステップの前に係合されてもよい。
【0043】
サセプタ、断熱材料及びガラスビーカーは、正確に機械加工された2枚の環状プレートによってキャップされ位置合わせされる。一実施形態では、環状プレートは石英プレートである。下部プレートは、オーブンジャケットの下の環状回転ギアシステムに正確に接続され、位置合わせされる。オーブンジャケットが水冷され、空間内部が不活性ガスによってパージされているとき、回転ユニットは、サセプタ及び断熱材料を正確に軸方向に位置合わせして回転させることができなければならない。
【0044】
開示した方法は、光ファイバプリフォームロッドを挿入し、光ファイバを線引きするステップ、又はシリンダ-コアロッドアセンブリを挿入してからプリフォームを線引きするステップを更に含んでもよく、又はチューブ線引きのためにシリンダを挿入してもよい。光ファイバは、中実コア光ファイバ又は中空コア光ファイバであってもよい。本開示の方法は、以下に示すように、より均等に分配された円周温度プロファイルをもたらすので、中空コア光ファイバの線引きに特に適している。したがって、方法は、線引きされた中空コア光ファイバの幾何学的形状における欠陥を、解消しないものの、著しく低減する。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は、FEMマルチフィジックス(Multiphysics)モデリングによって誘導炉の温度対称性を理解するために実行された。完全な3Dモデルは、電磁加熱(誘導加熱)、表面間放射熱交換、並びにコイルの水冷を含む、関与する主要な物理学を考慮して、以下に示すように構築された。
コイル及びヒータの設計の前提条件
●コイルの幾何学的形状
○直径=360mm
○高さ=320mm
○ワイヤ幅=15mm
○ワイヤ高さ=20mm
○冷却チャネル幅=8mm
○冷却チャネル高さ=13mm
●グラファイトサセプタの幾何学的形状
○ID=280mm
○高さ=420mm
○壁厚=14mm
主要物理設定の前提条件
●グラファイト特性(電気及び熱伝導率、比熱)の非線形温度依存性を考慮する。
●固体内の熱伝導
●コイル及びグラファイトチューブの両方の電磁加熱
●1000Kの背景温度でのグラファイトチューブ及びコイルの表面間放射BC(ヒータの断熱をシミュレートする)
●実際の冷却水流は、完全結合モデルにおいてシミュレートされる。入口温度は293Kであり、流速は7.95m/s(内部チャネルCSA 8mm×13mm)であり、13.1ガロン/分の電流コネクタ冷却能力に等しい。
●15kHz、1.7kA励起
磁束密度ノルムプロット(
図4参照)
●マクスウェル方程式の解
●コイル内の振動励起電流(15kHz、1.7kA励起)が、振動磁場を発生させ、振動磁場は次に、誘導電流からのジュール加熱によって電流が生じる。
【0046】
上記の結果として、本発明者らは、円周方向温度対称性に著しく影響し得る以下の主要な要因を特定することができた。
実施例1:コイルの螺旋形状に起因する固有の温度非対称性
【0047】
図5に示すように、コイルの螺旋経路に従って、サセプタに方位角温度非対称性が存在する。すなわち、温度等高線はサセプタの端面に対して傾斜している。
【0048】
図6の軸方向CSA温度プロファイルを見ると、壁の左右の間に、特にコイルリードに対して垂直なCSA上に温度等高線の空間オフセットがあることが明らかである。この種の固有かつ持続的な温度非対称性は、ガラスの流れを2つの側で異なるものにする可能性があり、これは、一例としてチューブ線引きを用いると、かなりのレベルのチューブの楕円化又はサイディングをもたらす。また、プリフォーム線引き又はファイバ線引きにおける幾何学的形状の精度にも同様の問題が生じる恐れがある。
実施例2:コイル軸線に対するサセプタ軸線のミスアライメントに起因する温度非対称性
【0049】
図7及び
図8に示すように、サセプタの軸線がコイルの軸線からずれている場合、ミスアライメント問題の深刻さに応じて、著しい方位角温度非対称性が生じる恐れがある。これもまた、チューブ、プリフォーム及びファイバ線引きの軸方向の対称幾何学的形状の精度に大きな影響を与える。
実施例3:サセプタの不均一な壁厚に起因する温度非対称性
【0050】
サセプタが古くなると、ロッディング(ID表面のSiC成長をこすり落とす)などの保守作業により、サセプタが不均一になる可能性がある。
図9に示すように、不均一な壁厚では、壁のより薄い部分にホットスポットが生じ、これは、上述のガラス線引き精度に影響を与え得るかなりの温度非対称性である。
実施例4:本開示による解決策
【0051】
上述の温度非対称性を解消又は著しく低減する解決策は、サセプタを、誘導加熱中に、コイルとサセプタとの間の潜在的な断熱材料と共に回転させることである。シミュレーションは、比較的遅い回転速度である0.1Hzの回転周波数が、温度対称性を著しく改善することができることを示す。
図10及び
図11に示すように、コイルの螺旋形状に起因する固有の温度非対称性はほぼ完全に解消されている。
【0052】
サセプタを0.1Hzで回転させたことを除いて上記実施例2を繰り返したところ、
図12及び
図13に示すように、温度非対称性が著しく減少した。
【0053】
サセプタの回転が0.1Hzで加えられたことを除いて上記実施例3を繰り返したところ、
図14に示すように温度非対称性が著しく減少した。
【0054】
また、本明細書には、炉であって、上部環状プレート、A/C誘導コイル、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー、サセプタとビーカーとの間に配置された断熱材料、及び下部環状プレートを有する炉本体と、環状回転ギアシステムによって下部環状プレートに動作可能に接続された回転駆動システムと、を含む、炉内で、光学ガラス要素を形成する方法であって、上部環状プレートの開口部を通して炉本体内にガラス体を導入するステップと、回転駆動システムを環状回転ギアシステムに係合し、炉本体を通してガラス体を線引きしながら、円筒形サセプタ、円筒形石英ビーカー、又は断熱材料のうちの少なくとも1つと共に、下部環状プレートを炉本体の中心軸の周りで0.01~10Hzの周波数で回転させるステップと、A/C誘導コイルが電流を受け取ったことによって生じた磁場を介してサセプタを誘導加熱するステップと、サセプタ内のガラス体を加熱するステップと、生成された光学ガラス要素を、下部環状プレートの開口部を通して供給するステップと、を含む、方法が開示される。ガラス体は、ガラスプリフォーム、ガラスシリンダ-コアロッドアセンブリ、ガラスシリンダなどのうちの1つであってもよい。光学ガラス要素は、光ファイバ、特に中空光ファイバ、又は光ファイバプリフォーム、光導波路、チューブなどのうちの1つであってもよい。回転周波数は、より具体的には0.05~0.15Hz、より具体的には0.1Hzであってもよい。
【0055】
本方法の第1のステップは、上部環状プレート25の開口部を通して(例えば、炉本体Fに結合された上部煙突を介して)炉本体F内にガラス体を導入することを含む。ガラス体は、ガラスプリフォーム、ガラスシリンダ-コアロッドアセンブリ、ガラスシリンダなどであってもよい。
【0056】
本方法の第2のステップは、回転駆動システム50を環状回転ギアシステム52に係合し、炉本体Fを通してガラス体を線引きしながら、円筒形サセプタ2、円筒形石英ビーカー4、又は断熱材料3のうちの少なくとも1つと共に、下部環状プレート27を炉本体Fの中心軸CAの周りで0.01~10Hz、又は0.05~0.15Hzの周波数で回転させることを含む。いくつかの実施形態では、回転周波数は0.1Hzである。
【0057】
本方法の第3のステップは、A/C誘導コイル6が電流を受け取ったことによって生じる磁場を介してサセプタ2を誘導加熱することを含む。本方法の第4のステップは、サセプタ2の熱出力を使用して、サセプタ2内のガラス体を加熱することを含む。加熱するステップは、ガラス体を軟化させ、生成された光学ガラス要素に線引きされ、光学ガラス要素は、光ファイバ(特に中空光ファイバ)、光ファイバプリフォーム、光導波、チューブなどであってもよい。本方法の第5のステップは、生成された光学ガラス要素を、下部環状プレート27の開口部を通して供給することを含み、開口部は、図示した実施形態において、光学ガラス要素が下部煙突Bを介して炉本体Fから引き出されることを可能にする。
【0058】
本方法の特定のステップは、上記で列挙した順序とは異なる順序で開始されてもよい。例えば、ガラス体は、回転駆動システム50による回転が既に進行した後に炉本体Fに導入されてもよい。同様に、サセプタ2の加熱は、ガラス体挿入の前に開始してもよい。
【0059】
多くの実施形態を本明細書に開示した。それにもかかわらず、本明細書に開示された実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが理解される。したがって、他の実施形態も以下の特許請求の範囲内にある。