IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サーモ フィッシャー サイエンティフィック (エキュブラン) エスアーエールエルの特許一覧

特許7467608スパークスタンドおよびメンテナンス方法
<>
  • 特許-スパークスタンドおよびメンテナンス方法 図1
  • 特許-スパークスタンドおよびメンテナンス方法 図2
  • 特許-スパークスタンドおよびメンテナンス方法 図3
  • 特許-スパークスタンドおよびメンテナンス方法 図4
  • 特許-スパークスタンドおよびメンテナンス方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】スパークスタンドおよびメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/67 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
G01N21/67 A
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2022515851
(86)(22)【出願日】2020-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 EP2020075513
(87)【国際公開番号】W WO2021048382
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】1913165.5
(32)【優先日】2019-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】511141744
【氏名又は名称】サーモ フィッシャー サイエンティフィック (エキュブラン) エスアーエールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】デマルコ ファビオ
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-197308(JP,A)
【文献】特開平05-190136(JP,A)
【文献】特開2008-157895(JP,A)
【文献】特開2005-026159(JP,A)
【文献】特開平05-256837(JP,A)
【文献】特開平10-188877(JP,A)
【文献】Thermo SCIENTIFIC (Author RTh),ARL easySpark Spare Part Lists (AA83784-00),2016年06月,KOxeS76-00(STAND), pp.1-11,https://www.scientificinstrumentparts.com/attachments/easySpark.pdf
【文献】RTh,ARL easySpark Spare Part Lists,2016年06月,KOxeS76-00 p.1-11,https://www.scientificinstrumentparts.com/attachments/easySpark.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62-21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子放出分光器用のスパークスタンドであって、
スパークチャンバと、
前記スパークチャンバの中にガスを流すためのガス入口と、
前記スパークチャンバからガスを搬送するためのガス出口と、を備え、
前記スパークスタンドが、取り外しおよび別のスパークスタンドとの交換を可能にするように、原子放出分光器ステージから結合解除可能であるように適合されており、
前記スパークスタンドにおける前記ガス入口は、前記原子放出分光器ステージのガス出口に接続するように構成されており、前記スパークスタンドにおける前記ガス出口は、前記原子放出分光器ステージのガス入口に接続するように構成されており、
前記スパークスタンドは、前記原子放出分光器ステージにツールレス結合及びそれからツールレス結合解除するように構成されている、スパークスタンド。
【請求項2】
前記スパークスタンドを前記原子放出分光器ステージに分離可能に結合するように構成されている分離可能なロック機構を備える、請求項1に記載のスパークスタンド。
【請求項3】
前記スパークチャンバの中に突出するように配置された電極をさらに備え、前記電極は、スパークスタンドが前記原子放出分光器ステージに結合されているときに、原子放出分光器において、電源との電気的接触を行うようにさらに構成されている、請求項1又は2に記載のスパークスタンド。
【請求項4】
前記電極と前記原子放出分光器における前記電源との間の電気的接触を提供するための弾性接点をさらに備え、前記スパークスタンドが前記原子放出分光器ステージに結合されているときに、前記弾性接点が、圧縮下にあるように構成されている、請求項3に記載のスパークスタンド。
【請求項5】
上部テーブルおよび下部テーブルをさらに備え、前記ガス入口、前記ガス出口、および前記スパークチャンバが、前記上部テーブルと前記下部テーブルとの間に画定されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のスパークスタンド。
【請求項6】
前記原子放出分光器ステージにおけるそれぞれの1つ以上の空洞または突起との協働のために、1つ以上の突起または空洞をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載のスパークスタンド。
【請求項7】
前記1つ以上の突起のうちの少なくとも1つが、前記スパークスタンドに配置されており、前記1つ以上の突起のうちの前記少なくとも1つが、前記原子放出分光器ステージにおいて、分離可能なロック機構と協働するように適合されている、請求項6に記載のスパークスタンド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のスパークスタンドに分離可能に結合可能であるように適合されている、原子放出分光器ステージであって
前記スパークスタンドにおける前記ガス入口に接続するためのガス出口と、前記スパークスタンドにおける前記ガス出口に接続するためのガス入口と、を備え、
前記スパークスタンドにツールレス結合及びそれからツールレス結合解除するように構成されている、原子放出分光器ステージ
【請求項9】
前記原子放出分光器ステージを前記スパークスタンドに分離可能に結合するように構成されている、分離可能なロック機構を備える、請求項に記載の原子放出分光器ステージ。
【請求項10】
前記分離可能なロック機構が、前記スパークスタンドにおける少なくとも1つの突起と協働するように構成されている、請求項に記載の原子放出分光器ステージ。
【請求項11】
前記スパークスタンドが前記原子放出分光器ステージに結合されているときに、前記スパークスタンドの電極と原子放出分光器における電源との間の電気的接触を行うように構成されている接続接点をさらに備える、請求項8~10のいずれか一項に記載の原子放出分光器ステージ。
【請求項12】
前記接続接点が、弾性接点であり、スパークスタンドの前記電極が、前記原子放出分光器ステージに結合されるときに、前記弾性接点が、圧縮下にあるように構成されている、請求項11に記載の原子放出分光器ステージ。
【請求項13】
前記スパークスタンドが前記原子放出分光器ステージに結合されているときに、前記スパークスタンドにおけるそれぞれの前記ガス入口及び/又は前記ガス出口の対応するコネクタと嵌合するように構成されている、前記原子放出分光器ステージの前記ガス出口におけるリトラクタブルコネクタ、及び/又は前記原子放出分光器ステージの前記ガス入口におけるリトラクタブルコネクタをさらに備える、請求項8~12のいずれか一項に記載の原子放出分光器ステージ。
【請求項14】
請求項1~7のいずれか一項に記載のスパークスタンドに分離可能に結合可能であるように適合されたメンテナンス機器であって、前記メンテナンス機器が、
前記メンテナンス機器に結合された前記スパークスタンドにおけるガス入口に接続するための第1のオリフィスと、
前記メンテナンス機器に結合されたスパークスタンドにおけるガス出口に接続するための第2のオリフィスと、を備え、
前記スパークスタンドが前記メンテナンス機器に結合されているときに、前記メンテナンス機器が、前記第1のオリフィスと前記第2のオリフィスとの間に液体またはガスを流すように構成されており、前記液体またはガスが、結合されたスパークスタンドにおける前記ガス入口、前記スパークチャンバ、および前記ガス出口を通過することによって、前記第1のオリフィスと前記第2のオリフィスとの間を流れる、メンテナンス機器。
【請求項15】
前記液体またはガスを流すように構成されている前記メンテナンス機器が、加圧された液体またはガスを注入するように構成されている前記メンテナンス機器を含む、請求項14に記載のメンテナンス機器。
【請求項16】
加圧された液体またはガスを注入するように構成されている前記メンテナンス機器が、加圧された液体またはガスの連続的なまたはパルス化された流れを注入するように構成されている前記メンテナンス機器を含む、請求項14又は15に記載のメンテナンス機器。
【請求項17】
前記スパークスタンドが前記メンテナンス機器に結合されているときに、前記スパークスタンドの試料位置における前記スパークチャンバへのアパーチャを閉じるためのシールをさらに備える、請求項1416のいずれか一項に記載のメンテナンス機器。
【請求項18】
請求項1~7のいずれか一項に記載のスパークスタンドのメンテナンス方法であって、前記方法が、
前記スパークスタンドを請求項14~17のいずれか一項に記載のメンテナンス機器に結合するステップと、
前記第1のオリフィスと前記第2のオリフィスの間で、前記スパークスタンドにおける前記ガス入口、前記スパークスタンドにおける前記スパークチャンバ、および前記スパークスタンドにおける前記ガス出口に液体またはガスを流すステップと、を含む、方法。
【請求項19】
前記液体またはガスを流すステップの前に、
前記スパークスタンドの試料位置に配置された前記スパークチャンバへのアパーチャをシーリングするステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記スパークチャンバへの前記アパーチャをシーリングするステップの後に、前記方法が、
前記スパークスタンドにおける前記ガス入口、前記スパークチャンバ、および前記ガス出口を既知の圧力に加圧するステップと、
所定の期間の経過後に、圧力を測定するステップと、
測定された圧力を前記既知の圧力と比較するステップと、
測定された圧力と前記既知の圧力との間の大きさにおける差が、事前定義された大きさよりも大きい場合、前記シーリングするステップを繰り返すステップと、をさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記流すステップの後、前記方法が、
前記スパークスタンドの前記ガス入口への電気的接続と、前記スパークスタンドの前記ガス出口における電気的接続との間に電流を印加するステップと、
前記スパークスタンドの前記ガス入口への前記電気的接続と、前記スパークスタンドの前記ガス出口における前記電気的接続との間の抵抗率を測定するステップと、
前記抵抗率を所定の範囲と比較するステップと、
前記抵抗率が前記所定の範囲内である場合、少なくとも前記流すステップを繰り返すステップと、をさらに含む、請求項1820のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記液体またはガスを流すステップが、加圧された液体またはガスを注入するステップを含む、請求項1821のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記加圧された液体またはガスを注入するステップが、前記加圧された液体またはガスの連続的なまたはパルス化された流れを注入するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
体またはガスを流すステップまたは注入するステップを制御するように構成されている、コントローラであって、
請求項1~7のいずれか一項に記載のスパークスタンドを請求項14~17のいずれか一項に記載のメンテナンス機器に結合し、前記第1のオリフィス及び前記第2のオリフィス、前記スパークスタンドの前記ガス入口、前記スパークスタンドの前記スパークチャンバ、および前記スパークスタンドの前記ガス出口の間で液体またはガスを流すことを実行するように構成されている、コントローラ
【請求項25】
前記液体またはガスを流すステップの前に、前記スパークスタンドの試料位置に配置された前記スパークチャンバへのアパーチャをシーリングし、前記スパークスタンドにおける前記ガス入口、前記スパークチャンバ、および前記ガス出口を既知の圧力に加圧するステップと、所定の期間の経過後に、圧力を測定するステップを制御し、測定された圧力を前記既知の圧力と比較し、前記測定された圧力と前記既知の圧力との間の大きさにおける差が、事前定義された大きさよりも大きい場合、前記アパーチャのシーリングを繰り返すように更に構成されている、請求項24に記載のコントローラ。
【請求項26】
前記液体またはガスを流すステップの後に、
前記スパークスタンドの前記ガス入口への電気的接続と、前記スパークスタンドの前記ガス出口における電気的接続との間に電流を印加するステップと、
前記スパークスタンドの前記ガス入口への前記電気的接続と、前記スパークスタンドの前記ガス出口における前記電気的接続との間の抵抗率を測定するステップと、
前記抵抗率を所定の範囲と比較するステップと、
前記抵抗率が前記所定の範囲内である場合、少なくとも前記液体またはガスを流すステップを繰り返すステップと、を制御するように構成されている、請求項24又は25に記載のコントローラ。
【請求項27】
請求項1~7のいずれか一項に記載のスパークスタンドと、請求項8~13のいずれか一項に記載の原子放出分光器ステージと、を備える、原子放出分光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子放出分光法の分野に関し、より詳細には、原子放出分光器、または光放出分光器のための改良されたスパークスタンドに関する。スパークスタンドはメンテナンスおよび洗浄を容易にする。また、スパークスタンドを受容するように構成されている原子放出分光器ステージ、スパークスタンドの洗浄およびメンテナンスのためのメンテナンス機器、およびメンテナンス方法も記載されている。また、スパークスタンドおよび協働する原子放出分光器ステージを備える原子放出分光器についても記載されている。
【背景技術】
【0002】
光放出分光法としても知られるスパークまたは原子放出分光法は、固体試料の分析のためのよく知られた技術である。固体試料は、試料の一部分を気化させてプラズマを形成するスパークまたは放電にさらされ、試料の励起された原子は、試料中に存在する元素の特徴である波長の光を放出する。その後の放電光の分光分析は、試料の材料組成に関する情報を提供する。
【0003】
スパークまたはアーク原子放出分光器(AES)は、一般に、導電性試料を取り付けることができる分析テーブルの試料位置を有するスパークスタンド(またはスパークテーブル)を備える。分析テーブルには、下記のガスまたはスパークチャンバへのアパーチャまたは開口部が含まれている。アパーチャよりも大きい試料は、アパーチャの上に取り付けて、試料と分析テーブルとの間に気密シールを形成することができる。AESの電極は、試料の下のスパークチャンバの中に突出して配置されており、受容プレート内のアパーチャに近接しているが、そこから空間を開けている。電極と分析テーブル(および試料)との間に電圧を印加すると、電極とテーブルまたは試料との間にスパークまたはアークが点火される。これにより、プレートのアパーチャを介してスパークにさらされた試料の一部が気化またはアブレートされ、プラズマを形成する。
【0004】
光学スペクトルの混入を避けるために、試料は気化され、アルゴンなどの不活性ガスの存在下で励起される。典型的には、不活性ガスの流れは、電極を収容し、プラズマが形成されるスパークチャンバを通過する。不活性ガスは、ガス入口を形成する通路または導管を介してスパークチャンバに流入し、ガス(および任意のアブレートされた材料)は、ガス出口を形成する通路または導管を介してスパークチャンバから搬送される。
【0005】
使用中は、スパークチャンバ、ガス入口、ガス出口に破片、埃、アブレートされた材料の残留物が蓄積する可能性がある。その結果、異なる試料(異なる材料マトリクスを有する)が同じスパークスタンド上で分析されるとき、蓄積がプラズマを汚染し、分析結果に影響を及ぼす可能性がある。その結果、スパークスタンドのガス入口、スパークチャンバ、およびガス出口は、特に異なるタイプの試料の分析の間で定期的に洗浄する必要がある。この洗浄プロセスは、労働集約的であり、機器のダウンタイムをもたらす。
【0006】
したがって、これらの問題を解決する原子放出分光器のためのスパークスタンドが必要である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、スパークスタンドを別個のサブアセンブリとして提供することによって、これらの問題を解決することを目指す。特に、スパークスタンドは、可撓性で置換しやすいユニットまたはカートリッジ(破片およびアブレートされた材料の蓄積が起こりやすい分光器のすべての部分を含む)として提供され、これは洗浄およびメンテナンスを可能にするために分光器と容易に結合および結合解除することができる。スパークスタンドカートリッジまたはユニットは、ツールなしで、スパークスタンドと分光器のステージとの間の単純な機械的または磁気的締結またはロックシステムを使用して、分光器の残りの部分から取り外すことができる。分光器からのスパークスタンドの取り外しは、洗浄の容易さを向上させるだけでなく、取り外さなければ(例えば、従来技術のシステムでは)可能ではない、別個のスパークスタンドといっしょに用いられる洗浄の方法を可能にする。さらに、スパークスタンドユニットは交換可能であり、スパークスタンドユニットの並行洗浄を可能にする一方で、別の異なるスパークスタンドを使用して分析が分光器で実行される。実験室では、これにより貴重な科学的ツールのダウンタイムが短縮される。
【0008】
記載されるシステムのいくつかの利点は、a)原子放出分光器のスパークスタンドのより簡単でより効率的な洗浄を提供すること、b)原子放出分光器の全体的なメンテナンス時間を大幅に低減すること、c)計器のダウンタイム(および測定間の周回時間)を大幅に低減すること、およびd)汚染の低減によって、原子放出分光器を介して取得された分析結果の信頼性を向上させることを含む。
【0009】
第1の態様では、原子放出分光器のためのスパークスタンドが記述されており、原子放出分光器が、
スパークチャンバと、
スパークチャンバの中にガスを流すためのガス入口と、
スパークチャンバからガスを搬送するためのガス出口と、を備え、
スパークスタンドが、取り外しおよび別のスパークスタンドとの交換を可能にするように、原子放出分光器から結合解除可能であるように適合されている。
【0010】
特に、スパークスタンドまたはスパークテーブルは、取り外し可能なユニットまたはカートリッジ内に画定されたスパークチャンバ、ガス入口、およびガス出口の各々を含む。取り外し可能なユニットまたはカートリッジは、スパークスタンドとして動作するために原子放出分光器(またはより具体的には、原子放出分光器におけるステージ)に接続するように構成されている。取り外し可能なユニットまたはカートリッジは、原子放出分光器ステージから簡単に取り外しまたは結合解除することができ、原子放出分光器とは別にメンテナンスおよび洗浄を可能にする。有利には、異なるスパークスタンドを交換することができ、分析を使用されたスパークスタンドの洗浄と並行して継続することができ、それによって装置のダウンタイムを軽減することができる。原子放出分光器ステージは、原子放出分光器本体の不可欠な部分であってもよく、または分光器の本体に(永久的または半永久的に)固定されてもよい。
【0011】
スパークスタンドは、原子放出分光器ステージにツールレス結合し、かつそれから結合解除するように構成されてもよい。特に、結合および結合解除手段は、別個のツールを必要とせずに、機械で直接操作者によって作動されてもよい。特に、結合および結合解除のツールレス機構は、スパークスタンドの一部を原子放出分光器の残りの部分に締結するネジなどの半永久的な固定具を回避する。例えば、原子放出分光器ステージからの説明されたスパークスタンドの取り外しは、ねじ回しまたはレンチを必要としない。
【0012】
好ましくは、スパークスタンドは、スパークスタンドを原子放出分光器ステージに分離可能に結合するように構成されている分離可能なロック機構を備える。任意選択で、分離可能なロック機構は、第1の位置に配置されたときにスパークスタンドを分光器に結合し、第2の位置に配置されたときにスパークスタンドを分光器から切り離すように構成されている。好ましくは、ロック機構は、ツールを使用せずに第1の位置と第2の位置との間で移動させることができる。ロック機構は、レバーを含み得、このレバーは、分光器(または自動化システム内のロボットアーム)のオペレータによって作動されると、分光器またはスパークスタンドにおけるロック機構の一部分を移動させて、それぞれスパークスタンドまたは分光器におけるロック機構の一部分と協働または連動する。ロック機構は、スプリングおよびカムを組み込んでもよく、ロック機構の可動部分を作動させるためのボタンまたはレバー(分光器ステージまたはスパークスタンドで)を含んでもよい。
【0013】
スパークスタンドは、スパークチャンバの中に突出するように配置された電極をさらに備えてもよく、電極は、スパークスタンドカートリッジ(または、言い換えれば、スパークスタンド)が原子放出分光器ステージに結合されたときに、原子放出分光器において、電源との電気的接触を行うように構成されている。電極は、スパークステージが原子放出分光器ステージから取り外されるときに、原子放出分光器において、電源から結合解除可能であるように適合され得る。電極は、スパークスタンドで固定されてよく、電極とスパークスタンドの本体または壁(特に、スパークチャンバの壁)との間の電気的接触を防止するために、電極の周囲に円周状に配置された絶縁体を有する。電極は、Oリングを使用してスパークスタンドの壁内に固定され、シール、特に気密シールを形成し得る。
【0014】
好ましくは、電極は、細長く、電極は、第1の端部でスパークチャンバの中に突出するように配置されており、電極は、第1の端部から遠位の第2の端部で電源と結合し、スパークスタンドカートリッジ(またはスパークスタンド)が原子放出分光器ステージに結合されているときに電極と電源との間において、電気的接触を行うように適合されている。電極は、実質的に円筒形であってもよいが、尖った(またはピラミッド状の)第1および/または第2の端部を有してもよい。しかしながら、様々な形状の電極が可能である。特に、第2の端部は、電源への信頼できる電気的接触を確実にする任意の構成で成形されてもよい。
【0015】
任意選択で、弾性接点は、電極と原子放出分光器との間の電気的接触を提供し、弾性接点は、スパークスタンドカートリッジ(またはスパークスタンド)が原子放出分光器ステージに結合されるときに圧縮下にあるように構成されている。言い換えると、電極と電源との間の接点またはコネクタは、金属スプリング、または他の弾性コネクタを含み得る。スパークスタンドが原子放出分光器ステージに結合されるとき、スプリングは、電極と電源での接点構成要素との間で圧縮され得、それによって一定かつ一貫した電気的接触を提供する。
【0016】
好ましくは、スパークスタンドは、上部テーブルおよび下部テーブルを含み、ガス入口、ガス出口、およびスパークチャンバは、上部テーブルと下部テーブルとの間に画定される。すなわち、上部テーブルと下部テーブルが結合されて、スパークスタンドを形成する。ガス入口または通路、スパークチャンバ、およびガス出口または通路は、上部テーブルと下部テーブルとの間に画定される空洞として形成される。
【0017】
任意選択で、スパークスタンドは、ガス入口に引き込み式又はリトラクタブルコネクタ、および/またはガス出口にリトラクタブルコネクタを備え、それぞれは、スパークスタンドカートリッジ(またはスパークスタンド)が原子放出分光器に結合されるときに、原子放出分光器において対応するコネクタと嵌合するように構成される。リトラクタブルコネクタは、スプリング式、プッシュフィット式、またはそれ以外の方法で移動可能であってもよく、原子放出分光器においてコネクタと嵌合する。コネクタは、スパークスタンドが位置決めされ、原子放出分光器においてステージ上にロックされることを可能にするために、例えば、直線的に後退し得る(機械的にまたは磁気的に)。弾性シール(またはOリング)は、接続からのガス漏れを低減するために、リトラクタブルコネクタに配置され得る。代替として、スパークスタンドは、弾性シール(またはOリング)を有し得る、原子放出分光器ステージにおけるそれぞれの出口および/または入口においてリトラクタブルコネクタと嵌合するために、ガス入口およびガス出口に固定されたコネクタを有する。
【0018】
好ましくは、スパークスタンドは、原子放出分光器におけるそれぞれの1つ以上の空洞または突起との協働のために、1つ以上の突起または空洞を備える。例えば、突起は、接続されたときに、原子放出分光器ステージに対向する表面のスパークスタンドの基部から突出する、ロックピンまたは固定ピンであってもよい。任意の適切な数の突起およびそれぞれの空洞が、例えば、1、2、3、4、5、6、またはそれ以上提供され得る。突起(またはロックピンまたは固定ピン)は、原子放出分光器のステージ上に配置されたそれぞれの空洞またはボアで受容され得る。突起または空洞は、原子放出分光器上のスパークスタンドの適切な位置合わせと着座を可能にする。
【0019】
任意選択で、1つ以上の突起のうちの少なくとも1つは、スパークスタンドに配置されており、1つ以上の突起のうちの少なくとも1つは、原子放出分光器における分離可能なロック機構と協働するように適合されている。言い換えれば、突起(またはロックピンまたは固定ピン)はまた、分光器にスパークスタンドを確実に結合するために、分光器ステージでロック機構の一部分を形成し、ロック機構の一部分と協働し得る。
【0020】
第2の態様において、上述のスパークスタンドに分離可能に結合可能であるように適合された原子放出分光器が存在する。より具体的には、上述のスパークスタンドに分離可能に結合可能であるように適合された原子放出分光器ステージが存在し、原子放出分光器ステージは、使用時にスパークスタンドを支持する。使用中、スパークスタンドは、原子放出分光器ステージ上に載置されても、結合されてもよい。原子放出分光器ステージは、スパークスタンドが結合または接続される全体的な原子放出分光器の任意の部分であってもよい。
【0021】
好ましくは、原子放出分光器ステージは、スパークスタンドにツールレス結合し、かつそれから結合解除するように構成されていてもよい。言い換えれば、分光器ステージは、スパークスタンドが、レンチ、ねじ回し、または任意の専門家またはカスタムツールなどのツールの必要なしに取り付けおよび取り外されることができるように構成され得る。これにより、原子放出分光器からスパークスタンドを素早く簡単に取り外すことが可能である。
【0022】
好ましくは、原子放出分光器ステージは、分光器ステージをスパークスタンドに分離可能に結合するように構成されている分離可能なロック機構を備える。分光器ステージでの分離可能なロック機構は、スパークスタンドにおけるロック機構の一部と協働することができる。分離可能なロック機構は、スパークスタンドと分光器ステージとの間の機械的または磁気的結合を含んでもよい。分離可能なロックシステムは、コントローラまたは電動式ロボット機構によって制御されてもよく、原子放出分光器ステージとのスパークスタンドの結合および結合解除の手順を自動化する。
【0023】
好ましくは、分離可能なロック機構は、スパークスタンドで少なくとも1つの突起(別途、ロックピンまたは固定ピンとして説明される)と協働するように構成されている。場合によっては、機械的に分離可能なロックシステムの可動部分(ロックシステムの動作のためのハンドルまたはレバーを含む)は、スパークスタンドにおけるロックシステムの固定部分(1つ以上のロックピンなど)を伴って、分光器ステージに存在し得る。これは、スパークスタンドの嵩、重量、および複雑さを減少させるのに有利であり得る。この理由ではあまり好ましくないが、それでもスパークスタンドは、分光器ステージにおいてロックシステムの固定部分(ロックピンなど)を伴った、そのような分離可能なロック機構の可動部分を含むことが可能である。
【0024】
任意選択で、分離可能なロック機構は、第1の位置に配置されたときに、原子放出分光器ステージをスパークスタンドに結合し、第2の位置に配置されたときに、原子放出分光器ステージをスパークスタンドから切り離すように構成されている。言い換えれば、分離可能なロック機構は、第1の位置にある原子放出分光器ステージにおけるロックシステムの可動部分がスパークスタンドの一部と連動され、第2の位置にある原子放出分光器ステージにおけるロックシステムの可動部分がスパークスタンドの一部と連動されない機械的ロック機構である。代替として、分離可能なロック機構は、例えば、分光器ステージにおいてソレノイドを使用する磁気結合システムであってもよい。一例では、磁気結合システムを作動することは、分光器ステージにスパークスタンドのロックピンまたは固定ピンを保持するための磁力を適用することであり、磁気結合システムを無効にすることは、ロックピンまたは固定ピンを解放するために磁力を除去することである。
【0025】
好ましくは、原子放出分光器ステージは、スパークスタンドの電極と原子放出分光器の電源との間で、スパークスタンドが分光器ステージに結合されているときに電気的接触を行うように構成されている接続接点をさらに備える。接続接点は、電極を電源に電気的に接続する。
【0026】
好ましくは、接続接点は、弾性接点であり、スパークスタンドの電極が原子放出分光器ステージに結合されているときに、弾性接点が圧縮下にあるように構成されている。例えば、接続接点は、金属スプリングなどのスプリング式接点であってもよい。スプリングは、スパークスタンドカートリッジ(またはスパークスタンド)の電極が、スパークスタンドが分光器ステージに結合されているときに、スプリングに圧縮力を加えるように構成されてもよい。特に、電極は、スパークスタンドに固定されてもよく、スパークスタンドが原子放出分光器ステージに結合されているとき、電極は、原子放出分光器ステージにおいて配置されたスプリング接触を圧縮する力を加えてもよい。
【0027】
好ましくは、原子放出分光器ステージは、スパークスタンドにおけるガス入口に接続するためのガス出口と、スパークスタンドにおけるガス出口に接続するためのガス入口とを備える。原子放出分光器ステージにおけるガス出口およびガス入口は、2つの部分が結合されているときに、スパークスタンドにおけるガス入口およびガス出口と位置合わせするように構成されてもよい。
【0028】
好ましくは、原子放出分光器ステージは、原子放出分光器ステージのガス出口のリトラクタブルコネクタ、および/または原子放出分光器ステージのガス入口のリトラクタブルコネクタを備え、リトラクタブルコネクタ(複数可)は、スパークスタンドが原子放出分光器ステージに結合されているときに、それぞれのガス入口において対応するコネクタおよびスパークスタンドにおいてガス出口と嵌合するように構成されている。原子放出分光器ステージにおいてリトラクタブルコネクタを含めることが好ましく、スパークスタンドで固定されたコネクタと嵌合するので、スパークスタンドの複雑さを軽減できる。
【0029】
記載されたスパークスタンドおよび協働する原子放出分光器ステージは、原子放出分光器に含めることができ、多くの利点を有するシステムをもたらす。特に、システムは、以下に記載されるように、いくつかの仕様で分光器の全体的な分析結果を改善することができる。
【0030】
i)同じスパークスタンドに複数の材料マトリクスを使用することによって生じる汚染を排除または低減する。代わりに、本発明は、スパークスタンドユニット全体を1ステップで交換することを可能にし、したがって、専用のスパークの使用は、特定の試料材料タイプのためのものである。
【0031】
ii)スパークチャンバにおけるシーリングを向上させ、不活性ガスの流れを安定させ、分析中のプラズマ安定性を向上させる。一部では、これは、スパークスタンドの洗浄の改善、および乱れたガス流を引き起こす可能性のある破片の除去によって生じ得る。さらに、これは、以下に説明するメンテナンス方法の一部として実行されることができるより効果的な漏れ試験によって生じ得る。
【0032】
iii)分析中および分析前に、試料と電極との間のギャップサイズの精度を増加させ、したがって、プラズマ条件の再現性を向上させる。
【0033】
iv)後述するメンテナンス機器を使用することによって、スパークスタンドユニットの体系的な洗浄および試験を行う(シーリング、インピーダンス、金属化、およびスパークスタンドを通過するガスの流れの試験を含む)。
【0034】
v)後述するメンテナンス機器の使用によって、分光器の洗浄またはメンテナンス時のオペレータエラーのリスクを低減する。
【0035】
第3の態様において、上述のスパークスタンドに分離可能に結合可能であるように適合されたメンテナンス機器が記載されている。メンテナンス機器は、
メンテナンス機器に結合されたスパークスタンドにおけるガス入口に接続するための第1のオリフィスと、
メンテナンス機器に結合されたスパークスタンドにおけるガス出口に接続するための第2のオリフィスと、を備え、
スパークスタンドがメンテナンス機器に結合されているときに、メンテナンス機器が、第1のオリフィスと第2のオリフィスとの間に流体(液体またはガス)を流すように構成されており、液体またはガスが、結合されたスパークスタンドにおけるガス入口、スパークチャンバ、およびガス出口を通過することによって、第1のオリフィスと第2のオリフィスとの間を流れる。流体は、第1の方向(第1のオリフィスを通過し、続いて第2のオリフィスを通過して受容される)、または反対側の第2の方向(第2のオリフィスを通過し、続いて第1のオリフィスを通過して受容される)に流れてもよいことが理解されよう。いずれの場合も、流体はスパークスタンドを介して第1のオリフィスと第2のオリフィスとの間を流れる。第1および第2のオリフィスは、第1および第2の開口部であってもよく、それぞれの第1および第2の導管または通路への開口部であってもよく、この開口部は、流体が向けられる、メンテナンス機器の一部分を通っている。
【0036】
メンテナンス機器は、上述のタイプのスパークスタンドの洗浄および維持に使用される。メンテナンス機器は、原子放出分光器ステージに結合されていないときに、スパークスタンドのサポートまたはホルダーを提供する。さらに、メンテナンス機器は、メンテナンス機器に結合されているスパークスタンドの内部チャンバを通って液体またはガスを流すように構成されている。このようにして、スパークスタンドの内面に蓄積された破片またはアブレートされた材料を除去することができる。有利には、メンテナンス機器は、従来技術の設計よりも少ない労働集約的な様式で、スパークスタンドの効果的な洗浄を可能にする。スパークスタンドは分光器から簡単に取り外すことができ、スパークスタンドの構成要素を解体することなく洗浄を行うことができる。
【0037】
好ましくは、メンテナンス機器は、加圧された液体またはガスを注入するように構成されている。言い換えれば、液体またはガスは、メンテナンス機器(および結合されているスパークスタンド)を高流量で通過する。例えば、流量は、10~40リットル/分、より好ましくは20リットル/分を超えてよい。一実施例では、30リットル/分の流量を使用してもよい。これにより、スパークスタンドの内部空洞の壁に十分な摩擦力が生じ、破片、埃、アブレートされた材料を除去することができる。いくつかの場合では、液体またはガスは、アブレートされた材料との化学反応を起こすように選択することができ、したがって、スパークスタンドの内部空洞を化学的に洗浄する。好適な流体の例としては、高圧アルゴンまたはヘリウムガス、または液体イソプロピルアルコールまたは液体ヘキサン(非極性溶媒)が挙げられる。他の好適な例示的な流体としては、空気もしくは窒素ガス、または液体エタノールもしくはアセトンが挙げられる。
【0038】
好ましくは、メンテナンス機器は、液体またはガスの連続的なまたはパルス化された流れを注入するように構成されている。言い換えると、ガスまたは液体(流体)の流れは、洗浄期間の間、継続することができ、または、ガスまたは液体の噴射は、システムを通して押し出されるか、またはポンプで送られることができる。流体の流れのタイプは、破片およびアブレートされた材料のタイプ、ならびに取り除くべき蓄積の性質に依存し得る。
【0039】
好ましくは、メンテナンス機器は、スパークスタンドがメンテナンス機器に結合されているときに、スパークスタンドの試料位置でスパークチャンバへのアパーチャまたは開口部を閉じるためのシールを備える。これは、スパークスタンドの上面に形成されたスパークチャンバへのアパーチャのためのプラグであってもよく、またはアパーチャをスパークチャンバにクランプ留めするか、または別途取り付けられるシーリング材料であってもよい。シールは、メンテナンス機器を介してスパークスタンドを通過した流体(液体またはガス)が、スパークスタンドのガス入口、スパークチャンバ、およびガス出口を強制的に通過するように、閉鎖されたシールシステムを提供する。これにより、シールはより効率的かつ効果的な洗浄を提供する。
【0040】
任意選択で、メンテナンス機器は、メンテナンス機器に結合されているスパークスタンドから突出する電極の一部分を受容するための空洞を備える。最適には、メンテナンス機器は、スパークスタンドにおけるそれぞれの1つ以上の空洞または突起と協働するための1つ以上の突起または空洞を含む。言い換えると、メンテナンス機器は、スパークスタンドの基部から突出する任意の部分を受容するための空洞、またはスパークスタンドの基部の任意の空洞に係合するための突出部分を受容するように構成されている。これにより、スパークスタンドはメンテナンス機器によってより良好にサポートされる。
【0041】
任意選択で、メンテナンス機器には、スパークスタンドにおける電極の位置を調整するため、より具体的には、電極がスパークチャンバの中に突出する量(または高さ)を調整するための調節機構が設けられてもよい。有利には、これは、電極のより正確な位置決めを提供し得、それによって、特に、スパークチャンバ内の電極の最上部または先端とスパークチャンバへのアパーチャとの間の所定のギャップを有するスパークスタンドを構成する。電極の先端とアパーチャとの間のギャップまたは距離(したがって、測定中にスパークスタンドの試料位置に配置された任意の試料へのギャップまたは距離)は、原子放出分光器および試料をアブレートするために形成されたアークまたはスパークの動作に影響を与える。したがって、電極を移動させるために調節機構を使用することによるギャップの最適化は、分光器の動作および異なる測定値の再現性を著しく改善し得る。特定の例では、所望のギャップは約3mmである。従来技術のシステムにおける電極の位置決めの精度は、約+/-0.03mmである。しかしながら、上述の調節機構を使用することにより、ギャップの電極の位置決め精度を約+/-0.01mmに上げることができる。記載されているメンテナンス機器は、このギャップをより正確に測定することもできる。
【0042】
第4の態様では、スパークチャンバ、スパークチャンバの中にガスを流すためのガス入口、およびスパークチャンバからガスを搬送するためのガス出口を含む、スパークスタンドのメンテナンス方法が記載され、スパークスタンドは、原子放出分光器から結合解除可能であるように適合され、方法が、
スパークスタンドをメンテナンス機器に結合することであって、メンテナンス機器が、第1のオリフィスおよび第2のオリフィスを有するように構成されており、第1のオリフィスおよび第2のオリフィスが、それぞれ、スパークスタンドにおいて、ガス入口およびガス出口に接続するように構成されている、結合することと、
スパークスタンドにおけるガス入口、スパークチャンバ、およびガス出口を通して(またはそれを介して)、第1のオリフィスと第2のオリフィスとの間に、液体またはガスを流すことと、を含む。
【0043】
メンテナンス機器のいくつかの特徴については、上述した。
【0044】
メンテナンス方法は、上述のタイプの原子放出分光器ステージから結合解除され、かつ取り外されたスパークスタンドに適用される。したがって、メンテナンス方法を実行する前に、スパークスタンドを分光器から切り離して取り外す必要がある。有利なことに、記載されたメンテナンス方法は、従来技術のシステムで必要とされているように、分光器内のスパークスタンドのその場での手動による分解および洗浄よりも労働集約的でなく、かつ扱いにくくもない。上述したメンテナンス機器を利用したメンテナンス方法は、前述したスパークスタンドの取り外し可能および交換可能な特質により可能となる。
【0045】
好ましくは、メンテナンス方法は、液体またはガスを流す前に、アパーチャまたは開口部をスパークチャンバにシーリングすることを含み、アパーチャは、スパークスタンドの試料位置に配置される。これにより、スパークスタンドを通過する流体(液体またはガス)は、スパークスタンドのガス出口から出なければならないように、閉鎖されたシステムが作成される。これにより、スパークスタンドを通過する流体の圧力が高まり、洗浄が向上する。
【0046】
好ましくは、本方法は、アパーチャをスパークチャンバにシーリングした後に、スパークスタンドにおける、ガス入口、スパークチャンバ、およびガス出口を既知の圧力に加圧することと、所定の期間が経過した後に、圧力を測定することと、測定された圧力を既知の圧力と比較することと、を含む。測定された圧力と既知の圧力との間の大きさにおける差が、事前定義された量よりも多い場合、シーリングするステップを繰り返す。言い換えると、試験は、アパーチャの漏れ防止シールが、スパークチャンバ、またはシステム内の他のシール(例えば、メンテナンス機器の第1および第2のオリフィスと、スパークテーブル、または電極がスパークチャンバの中に突出する位置でのガス入口および出口との間など)に確実に存在することを確認するために実行される。試験では、特定の圧力が一定期間維持されていることを確認する。そうである場合、スパークチャンバへの(あるいは外への)漏れは存在しないと想定することができる。漏れが確認された場合は、スパークチャンバのアパーチャのシールを再度作成する必要がある。特定の例では、スパークスタンドにおける、ガス入口、スパークチャンバ、およびガス出口は、約150mBarに加圧される。圧力損失が10分間にわたって10mBar未満の場合、(重大な)漏れは存在しないと考えられる。ただし、その期間内に圧力損失が10mBarを超える場合は、システムのシールを確認および/または再作成する。
【0047】
好ましくは、流すステップの後、方法は、スパークスタンドのガス入口への電気的接続と、スパークスタンドのガス出口における電気的接続との間に電流を適用することと、スパークスタンドのガス入口への電気的接続と、スパークスタンドのガス出口における電気的接続との間の抵抗率を測定することと、抵抗率を所定の範囲と比較することと、をさらに含む。抵抗率が所定の範囲内である場合、少なくとも流すステップを繰り返す。特に、抵抗率は、スパークスタンドに蓄積された埃または破片の量に反比例する。したがって、抵抗率が低すぎる場合は、洗浄プロセスを繰り返す必要がある。理解されるように、インピーダンスは、交流電流が使用される場合、抵抗率の代わりに測定され得る。特定の例では、交流電圧が印加され、インピーダンスが測定される。使用される分析条件に応じて、異なる周波数で交流電圧を印加することができる(例えば、200~800Hzの交流電圧を使用することができる)。
【0048】
好ましくは、液体またはガスを流すことは、加圧された液体またはガスを注入することを含む。言い換えると、流体は、高い流量で通過し、スパークスタンドの内側チャンバの壁で破片およびアブレートされた材料に対する摩擦力を生成する。流量は、20リットル/分を超える場合がある。特定の例では、流量は約30リットル/分である。
【0049】
好ましくは、加圧された液体またはガスを注入することは、液体またはガスの連続した流れまたはパルス化された流れを注入することを含む。流体は、例えば、噴射によりシステムを通してポンプで送られ得る。これにより、より効果的な洗浄を提供し得る。
【0050】
流体(液体またはガス)は、スパークスタンドの内部チャンバを洗浄するのに十分な摩擦力を生成するのに好適な任意の流体であってもよい。流体は、スパークスタンドの内壁からアブレートされた材料を除去するために、アブレートされた材料と化学反応するための試薬であってもよい。例示的な流体は、有利には不活性であり、非極性である高圧アルゴンまたはヘリウムガスを含む。別の例では、液体イソプロピルアルコールまたは液体ヘキサンを使用することができ、これらは非極性であり、低い沸点を有するため、短時間後に痕跡または残留物を残さない。
【0051】
任意選択で、流すステップの後、スパークスタンドの内部チャンバ(ガス入口、スパークチャンバ、およびガス出口を含む)の目視確認を行うことができる。目視確認は、スパークスタンドの内部通路およびチャンバに挿入されたカメラを介して行うことができる。カメラをメンテナンス機器に接続し得る。特に、目視確認は、スパークチャンバ内の電極の周囲に円周状に配置された電極および/または絶縁体における金属化(またはアブレートされた試料材料もしくは他の破片の蓄積)を確認するのに有用であり得る。
【0052】
任意選択で、流すステップの後、または上述の抵抗率の比較の後、スパークスタンドを通る流量のさらなる試験を行うことができる。これは、スパークチャンバのチャンバを通過する流体の流量を測定し、スパークスタンドのガス入口およびガス出口で圧力を試験し得る。より遅い流量(および/または入口と出口との間の圧力の差)は、いくつかのアブレートされた材料または破片がスパークスタンドの内壁に残っている可能性があることを示し得る(乱流を引き起こす)。したがって、流量が予想される流量よりも少ない場合、上述の洗浄プロセスを繰り返してもよい。
【0053】
好ましくは、メンテナンス方法は、スパークスタンドのスパークチャンバの中に突出する電極の位置を調整することを含んでよい。このステップは、流すステップの後に、より好ましくは、メンテナンス方法の最終ステップとして行われ得る。調整することは、スパークチャンバの中への電極の突出の範囲を調整することを含み得る。特に、スパークチャンバの中への突出の程度を調整することは、スパークチャンバ内の電極の先端と、スパークチャンバへのアパーチャ(したがって、アパーチャの上のスパークスタンド上に位置決めされた試料)との間の距離またはギャップを変更し得る。この距離またはギャップは、分光器が使用されているときに形成されるアークまたはスパークに影響を与え、試料材料のアブレーションに影響を与える。したがって、スパークスタンドのスパークチャンバの中に突出する電極の位置を調整するステップを使用して、この距離を最適化してもよい。有利には、記載されたメンテナンス方法は、最適なギャップに対する電極のより正確な調整を可能にし、それによって測定値間のギャップサイズの一貫性を増大させ、分光分析のより良い再現性を向上させる。
【0054】
スパークスタンドは、上部テーブルおよび下部テーブルを含み得、ガス入口、ガス出口、およびスパークチャンバは、上部テーブルと下部テーブルとの間に画定され得る。いくつかの実施例では、メンテナンス方法は、メンテナンスおよび洗浄のためにガス入口、ガス出口またはスパークチャンバの壁への容易なアクセスを提供するために、上部テーブルおよび下部テーブルを分離することを含み得る。
【0055】
要約すると、メンテナンス方法は、以下のステップの少なくともいくつかを含み得る。1)ガスまたは液体の流れによるスパークスタンドの内部通路および空洞を洗浄すること、2)スパークスタンドの構成要素間のシールを確認するための漏れ試験を実施すること、3)スパークスタンドの内部通路および空洞の壁に蓄積された試料材料または破片の範囲を特定するためのインピーダンスまたは抵抗率試験を実施すること(ステップ1による洗浄の前および/または後)、4)スパークスタンドの内部通路および空洞における金属化についての目視確認を実施すること(ステップ1による洗浄の前および/または後)、5)スパークスタンドの内部通路および空洞を通るスループットを確認するために流量試験を実施すること(ステップ1による洗浄の前および/または後)、6)スパークスタンドの内部通路および空洞の洗浄のためにアクセスを提供するためスパークスタンドに開口を空けること(上部および下部テーブルの分離による)、および/または7)スパークチャンバへのアパーチャとスパークチャンバの中へ突出する電極の先端との間のギャップを調整すること。
【0056】
第5の態様では、上述のメンテナンス方法に従って、液体またはガスの流れまたは注入を制御するように構成されているコントローラが記載されている。好ましくは、コントローラは、上述の加圧、測定、および比較するステップを制御するように構成されている。好ましくは、コントローラは、上述のステップの適用、測定、および比較を制御するように構成されている。言い換えると、コントローラは、スパークチャンバの洗浄が自動化または半自動化されたプロセスであるように、メンテナンス方法のすべての態様を制御し得る。
【0057】
ある例では、同じまたは別個のコントローラを使用して、スパークスタンドと原子放出分光器ステージとの間のロックシステムの作動を制御することができる。コントローラ(複数可)は、本明細書に記載されるプロセスを制御するための命令を実行するためのプロセッサを有するコンピュータの一部を形成し得る。
【0058】
特定の実施例では、取り外し可能なスパークスタンドがロボットによって操作される完全自動化原子放出分光法システムを使用することができる。例えば、システムは、ロック機構を操作することを含む機械的なロボットアームを使用してスパークスタンドを操作してもよい。システムはまた、スパークスタンドへのガス入口およびガス出口のコネクタを自動的に操作または解放することができる。例えば、これは、アクチュエータを使用して、分光器ステージでの1つ以上のリトラクタブルコネクタの移動を介して行うことができる(機械的に、またはソレノイドを使用して)。自動化された機構を使用して、電極の位置およびスパークチャンバの中へのその突起の高さを調節することもできる。そのような自動化されたシステムは、a)メンテナンス時間を大幅に短縮すること、b)機器のダウンタイムを大幅に短縮すること、およびc)分析される試料の材料に応じてスパークスタンドを自動的に変更することを可能にすること(例えば、専用のスパークスタンドは、分析される異なる材料のためにシステムに利用可能であり得る)を含む、いくつかの利点を提供する。全体的な利点には、より速く、より信頼性が高く、より安定した分析が含まれ、分光器を操作し維持するためのリソースが少なくなる。
【0059】
第6の態様では、上述のスパークスタンドおよび原子放出分光器ステージを含む原子放出分光器が記載されている。原子放出分光器は、試料の分析中にスパークチャンバから発せられる光を分析するためのスペクトログラフなど、分光器の1つ以上の典型的な構成要素をさらに含み得る。
【0060】
添付図面を参照して、例としてのみ、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】原子放出分光器(AES)の典型的な従来技術のスパークスタンドの断面斜視図である。
図2】本発明に従うスパークスタンドおよび原子放出分光器ステージの部分的に分解された斜視図である。
図3図2の原子放出分光器のステージに結合されているスパークスタンドの断面図である。
図4図2および3のスパークスタンドの分解図である。
図5】スパークスタンドおよび関連するメンテナンス機器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図面では、同様の部分は、同様の参照番号で示される。図面は、縮尺通りに描かれていない。
【0063】
本発明の理解を助けるために、原子放出分光器に接続された典型的な従来技術のスパークスタンドの例を断面で図1に示す。特に、これは、下部テーブル1Bと上部テーブル1Aとを備えるスパークスタンドを有する原子放出分光器1を示す。下部テーブル1Bは、全分光器に固定されているか、または一部を備えており、上部テーブル1Aは、半永久的な固定手段(ネジなど)を取り外すことによってのみ下部テーブルから切り離すことができる。
【0064】
ガス入口22、スパークチャンバ11、およびガス出口32は、上部テーブルと下部テーブルとの間に画定される。スパークチャンバ11は、概して円筒形状(すなわち、円筒形チャンバ壁を有する)であり、上部テーブル1Aを通って大気へ至るアパーチャまたは開口部3を有する。使用中、試料は、開口部3の上に配置されており、したがって、上部テーブル上の試料取り付け位置を画定する。概して円筒形の電極7は、下部テーブル1Bを通ってスパークチャンバ11に突出する。電極7は、スパークチャンバへの開口部3の下に配置されたピラミッド形またはピン形のヘッドを有する。このように、電極7の先端は、試料位置で開口部の上に配置された試料に近接しているが、接触していない。絶縁体4は、スパークチャンバ壁への放電を防止するために、電極7と下部テーブル1Bとの間の電極7の周囲に回転対称に配置される。
【0065】
使用中、試料は、スパークチャンバ11のアパーチャ3を閉じるために試料位置に載置される。試料は、上部テーブル1Aとの漏洩防止シールを作るように固定される。次いで、スパークは、電極に電圧(より具体的には、電極と試料との間の大きな電位差)を印加することによって、電極7と試料の最も近い表面との間で点火される。これは、試料の表面から物質をアブレートし、気化させるプラズマを生成し、その光放出は、光学導管5を介して分光器(図示せず)で分析される。
【0066】
スパーク点火は、不活性ガスがスパークテーブルのガス入口導管22を通って流れることによって提供される、不活性雰囲気(アルゴンなど)下で行われる。ガス入口導管22には、上流(図示せず)の供給源からの不活性ガスが供給される。ガスは、図1の矢印2によって示される方向に、ガス入口オリフィス20を通ってスパークチャンバ11の中に流れる。アブレートされた材料は、ガス出口オリフィス30を通ってスパークチャンバ11から、ガス出口導管32を介して排気管6に搬送される。ガス入口オリフィス20およびガス出口オリフィス30は、スパークチャンバ11の対向する壁に配置される。ガス入口22およびガス出口32導管は、上部1Aおよび下部1Bテーブルとの間に形成される、または画定されるチャネルによって提供される。
【0067】
図2は、特許請求された発明によるスパークスタンド200、およびスパークスタンドを受容するための原子放射分光器ステージ240の斜視概観を示す。図2の概観は、部分的に分解されている。
【0068】
図2に示されるように、本発明のスパークスタンド200は、原子放出分光器ステージ240(したがって、原子放出分光器全体)から除去または分離することができる別個のユニットまたはカートリッジを備える。
【0069】
スパークスタンドの適切な接続、固定、および位置合わせのために、様々なコネクタおよび固定機構が提供されている。これらは、特に図3を参照して、以下でより詳細に説明される。参考のために、以下の特徴は、図2の装置の一部として示されており、それは、分光器が使用されているときに、スパークスタンド200内に画定されたスパークチャンバへのアパーチャの上に配置されている試料210と、試料を試料位置に維持し、スパークチャンバへのアパーチャを閉じるために試料テーブルとの良好な接触を確保するための試料ホルダーまたはクランプ215と、スパークスタンド200を原子放出分光器ステージ240に結合して位置合わせするためのスパークスタンド固定ピン220と、スパークスタンドが分光器に結合されているときに、スパークスタンド200から突出し、スパークスタンド200内に固定された電極の一部を受容するためのアパーチャ230と、スパークスタンド200が分光器に結合されているときに分光器ステージ240でスパークスタンド固定具ピン220を受容するための空洞225と、スパークスタンドを通過したガスを受け取るためのガス入口235と、スパークスタンドの中にガスを流すためのガス出口255と、スパークスタンド200において電極に接触し、電圧を供給するための電源245と、スパークスタンド200と原子放出分光器ステージ240と、を結合するために使用されるロックシステムの作動のためのレバーまたはハンドル250と、を備える。
【0070】
スパークスタンド200の構成は、図3を参照してより詳細に説明される。図3は、原子放出分光器ステージ240に結合されているスパークスタンド200の断面概観を示す。図中、スパークスタンドまたはカートリッジの一部を描く線は太字で示されている。
【0071】
スパークスタンドは、上部テーブル305Aおよび下部テーブル305Bを備える。スパークチャンバ300は、上部テーブルと下部テーブルとの間に画定され、上部テーブル内には、スパークチャンバへのアパーチャまたは開口部315がある。ガス入口通路または導管345はまた、上部テーブルと下部テーブルとの間に画定され、ガスをスパークチャンバ300に流入させるように向ける。ガス出口通路または導管350は、上部テーブルと下部テーブルとの間に画定され、ガスがスパークチャンバ300から、原子放出分光器ステージ240におけるガス入口235を通って、その後排気を介して機器から流出することを可能にする。
【0072】
電極330は、スパークチャンバアパーチャ315の直下のスパークチャンバ300内に突出するように配置される。絶縁体310は、電極300を下部テーブル305Bおよびスパークチャンバの壁から絶縁するために、電極の周囲の下部テーブルに配置される。電極330は、細長い(具体的には、実質的に円筒形である)。スパークチャンバ300内に突出する第1の端部332は、ピラミッド状である(すなわち、ある先端で終了する)。電極の尖った第1の端部332は、原子放出分光器の使用中にアークまたはスパークが生成される小さな領域を確保する。電極の第2の端部334(第1の端部から遠位または反対側)では、電極は、スパークスタンドの下部テーブルの下側から突出する。電極の第2の端部334は、分光器ステージでコネクタまたは接点335と電気的接触を行うように構成されている(以下に説明するように)。電極の第2の端部334は、分光器の電源と良好な電気的接触を行うのに適した任意の形状または配置を有することができることが理解され得る。
【0073】
スパークスタンド200は、図3に示すように分光器ステージ240に結合される。分光器ステージは、スパークスタンドにおける電極330を電源(図3には示されていない)に接続する弾性コネクタ335を備える。図3の弾性コネクタ335は、スパークスタンド200が図3に示されるように分光器ステージ240に結合されているとき、少なくとも部分的に、スパークスタンドの下部テーブル305Bに固定された電極330と電源への結合部365との間で圧縮されている金属スプリングを含む。このように、スプリングは、電極と電源との間で良好な電気的接触を作り出す。
【0074】
分光器ステージ240は、スパークスタンドにおけるガス入口345に接続するためのガス出口を備える。分光器ステージは、スパークスタンドにおけるガス出口350に接続するガス入口235をさらに備える。リトラクタブルコネクタ355は、分光器ステージにおけるガス入口に示される。リトラクタブルコネクタは、分光器ステージとスパークスタンドとの間にシール可能で、漏れ防止接続を提供するために、移動可能であっても、または弾性であってもよい。好適なコネクタの例としては、スプリング式コネクタ、プッシュフィットコネクタ、またはネジ式コネクタが挙げられる。弾性Oリングは、コネクタからのガス漏れを低減するために、分光器ステージにおけるガス出口255とスパークスタンドのガス入口345との間(例えば、リトラクタブルコネクタ355の一部として)、およびスパークスタンドにおけるガス出口350と分光器におけるガス入口235との間で使用されてもよい。
【0075】
図3の分光器は、さらに、スパークスタンド(図2にのみ示される)における固定ピン220と協働する機械的ロック機構250を示す。スパークスタンド200は、ロック機構250を介して分光器ステージ240と結合される。特に、装置の使用者によるレバー(図2の250)の作動は、ロック機構がスパークスタンドにおいて固定ピン220と連動していない第1の位置から、ロック機構がスパークスタンドにおいて固定ピン220と連動している第2の位置にロック機構を移動させる。ロック機構250が固定装置ピン220と連動しているとき、スパークスタンド200は、それぞれのガス入口およびガス出口が嵌合するように、分光器ステージ240にしっかりと固定され、スパークチャンバにおける電極は、弾性コネクタと接触する。ロック機構250が固定ピン220と連動していないとき、ユーザは、単に分光器ステージ240からスパークスタンドを持ち上げるだけで、簡単にスパークスタンド200を取り外すことができる。ロック機構250は、ツールまたは追加手段なしで操作され、ユーザによって手動で操作することができる。代替的に、ロック手段250のレバーは、コントローラの制御下で(例えば、コンピュータプログラムを介して)ロボットアームによって操作され得る。このようにして、スパークスタンド200の分光器ステージ240からの結合解除は、自動化または半自動化され得る。
【0076】
試料の分析を行うために、導電性試料210は、スパークチャンバ300へのアパーチャ315を覆って、上部テーブル305A上の試料位置に取り付けることができる。試料クランプ215は、スパークスタンド上の所定の位置に試料210を保持するために下向きの力を加えるように適用され得る。電源245は、電極330と試料210との間に大きな電圧を供給する。したがって、スパークまたはアークは、電極330の先端332と最も近い試料表面との間に形成される。これは、プラズマを生成し、プラズマからの光放出は、光導管で受け取られる(ガス入口通路345と位置合わせされるように位置決めされている)。その後、光放出を分析して、試料の特徴付けを提供する。
【0077】
上記で考察されたように、試料の気化およびアブレーションのプロセスは、試料からの破片および残留物が、スパークスタンド内のガス入口および出口通路345、350およびスパークチャンバ300の表面に蓄積されることをもたらす可能性がある。そのような破片および残留物が別の試料の分析前に除去されない場合、プラズマの汚染が生じ得る(それにより、分析の精度が低下する)。したがって、異なる試料を測定する前に、破片や残留物を慎重に除去する必要がある。
【0078】
上述のように、本発明は、分光器ステージ240からスパークスタンド200を直接的かつ迅速に結合解除および除去することを可能にする。そのような取り外しは、説明されたロック手段250の操作を単に必要とし、別個のツールまたは機器の特定の知識を必要としない。有利には、これは、内部スパークチャンバ300およびガス通路345、350のより簡単な洗浄のためにスパークスタンド200を除去することを可能にするだけでなく、1つ以上の同一のスパークスタンドの交換を可能にする。このように、分光器の過度のダウンタイムが回避される。さらに、特定のタイプの試料材料の測定のために特定のスパークスタンドを予約することができ、汚染および誤った分析結果の可能性をさらに低減できる。
【0079】
図2を参照して理解されるように、使用中、洗浄を必要とするスパークスタンド200は、ロック手段250の作動によって(例えば、分光器ステージでのレバーまたはハンドルを介して)分光器ステージ240から結合解除される。次いで、スパークスタンド200は、分光器ステージ240から離されて持ち上げられ、(例えば、以下に説明する方法に従って)洗浄またはメンテナンスのために外される。別の洗浄されたスパークスタンドを、その代わりに分光器ステージ240に結合することができる。これを行うために、新しいスパークスタンドは、固定ピン220が分光器ステージ240でそれぞれの空洞225と位置合わせするように、分光器上に載置される。この位置合わせは、さらに、ガス出口255のコネクタと分光器ステージ240のガス入口235との間で、それぞれのガス入口345およびガス出口350がスパークスタンドで正しく嵌合することを確実にする。さらに、正しく位置合わせされると、スパークスタンドにおける電極330は、弾性接点335への接触および電源への電気的接続のために、分光器ステージ240内のアパーチャ230を介して受容される。次に、ロック機構250は、例えば、分光器ステージでのロック機構250の一部分を、スパークスタンドにおける固定ピン220と連動させることによって、スパークスタンドを所定の位置に固定またはロックするように作動させることができる。
【0080】
上述されたように、記載されたスパークスタンド200は、分光器から分離可能なユニットまたはカートリッジである。図4は、スパークスタンド200(またはスパークスタンドカートリッジ)の分解概観を示す。上部テーブル305Aは、下部テーブル305Bに接続され、スパークチャンバ300とガス通路345、350との間を画定することができる。上部テーブル305Aは、以下に定義されるスパークチャンバに開口部を提供するように配置されたアパーチャ315を有する。弾性シール425(またはOリング)は、スパークチャンバおよびガス通路をシールするために、上部305Aと下部305Bテーブルとの間に配置される。絶縁体310は、(それらの間に弾性シールまたはOリング415を有する)下部テーブル305Bに固定され、電極330は、絶縁体310を通って延在し、下部テーブル305Bの上側から(スパークチャンバ内に)、および下部テーブル305Bの下側から(分光器で電源に接続するために)突出するように配置される。弾性シール410(またはOリング)は、スパークスタンドが使用されているときにスパークチャンバを形成するガス漏れを低減するために、電極330と絶縁体310との間に配置される。
【0081】
図4はさらに、分光器ステージでロック機構250と協働するために、下側テーブル305Bの下側から突出する固定ピン220を示す。分光器ステージでロック機構と接続するためのさらなる嵌合部450は、下部テーブルに示される。
【0082】
本発明の特定の利点は、スパークスタンドを分光器から完全に結合解除した結果、スパークスタンドをより容易に洗浄することができることである。スパークスタンドは、分光器自体から離れた場所でより容易に洗浄することができるだけでなく、本発明者らは、スパークスタンドの可動性が、特別に設計されたメンテナンスツールまたは機器の使用を可能にすることを認識している。メンテナンス機器500は、洗浄されるスパークスタンド200と共に、部分的に分解された概観で図5に示される。
【0083】
メンテナンス機器500は、洗浄およびメンテナンス中にスパークスタンド200を取り付けることができるプラットフォーム510またはスタンドを備える。プラットフォーム510は、スパークスタンドがプラットフォームに結合されるときに、スパークスタンド200の基部から突出する電極330を受容するための空洞520を備える。プラットフォーム510は、スパークスタンドの下側から突出する固定ピン220を受容するための空洞525をさらに備える。さらに、メンテナンス機器は、スパークスタンドにおいてガス入口345に接続するための第1のオリフィス510と、スパークスタンドにおいてガス出口350に接続するための第2のオリフィス525とを備える。
【0084】
スパークスタンドのガス入口および出口通路345、350およびスパークチャンバ300の洗浄のために、ガスまたは液体(流体)は、メンテナンス機器の第1のオリフィス510とメンテナンス機器の第2のオリフィス525との間を通過することができ、結合されているスパークスタンドのガス通路345、350およびスパークチャンバ300を通って流れる。液体およびガスは、通路およびチャンバの内壁から破片を洗浄および除去するように摩擦力を加えるために、加圧されるか、または高流量で通過されることができる。液体またはガスは、最高の洗浄結果を達成するために、連続的なまたはパルス化された流れで通過することができる。流体は、スパークスタンドを通ってどちらの方向にも通過することができ得る。
【0085】
より具体的には、スパークスタンドを洗浄するために、スパークスタンド200は、メンテナンス機器500に結合され得、メンテナンス機器の第1のオリフィス510および第2のオリフィス525を、スパークスタンドのそれぞれのガス入口345およびガス出口350に確実に接続する。シールは、スパークスタンドの上部テーブルにおいてスパークチャンバに、アパーチャ315を覆って、配置することができる。これにより、ガス入口および出口通路345、350を介したアクセスを除いて、スパークチャンバ300を閉じる、またはシールする。任意の好適なシーリング手段が使用され得る。
【0086】
スパークチャンバ300およびスパークスタンドにおけるガス入口および出口通路345、350を通る加圧された高流量を維持するために、適切なシールが必要とされる。したがって、シールは、接続部またはシールされたアパーチャで漏れを試験することができる。例えば、メンテナンス機器の第1のオリフィス510と第2のオリフィス525との間の領域(したがって、ガス通路345、350およびスパークチャンバ300)は、シールおよび加圧され得る。所与の時間間隔の後、シール部分内の圧力を試験することができ、シール部分内の圧力がかなりの量変化していない場合、スパークチャンバへのアパーチャにおける(およびガス入口と出口コネクタとの間の)適切なシールを想定することができる。ただし、圧力変化が顕著な場合は、スパークチャンバアパーチャのシールおよびコネクタまたは他のシールを確認し、再シールする必要がある。
【0087】
システムが十分にシールされている場合、流体(液体またはガス)は、次いで、高い流量で、メンテナンス機器500の第1のオリフィス510と第2のオリフィス525との間で(連結されたスパークスタンドのガス入口345、スパークチャンバ300およびガス出口350を介して)流れることができる。任意の好適な液体またはガスが使用され得る。例えば、高圧空気は、流体が通過する通路または空洞内の破片を除去するために使用することができる。また、試薬は、メンテナンス機器およびスパークスタンドを通って流れることができ、試薬は、ガス通路ならびスパークチャンバの内面に蓄積されることが知られている材料残留物と化学的に反応するように選択される(それによって残留物を除去する)ことも理解されよう。
【0088】
液体またはガスがシステムを通過した後、洗浄が適切に実行されたことを確認するために、金属化試験を実施することができる。これは、スパークスタンドのガス入口通路345への電気接点と、スパークスタンドのガス出口通路350における電気接点との間で電流を流すことからなる。これらの接点間の抵抗率(またはインピーダンス)を測定し、次いで所定の抵抗率(またはインピーダンス)と比較することができる。接点間の抵抗率(またはインピーダンス)は、スパークスタンドを介して蓄積される埃の量に反比例する。したがって、より低い測定された抵抗率は、スパークスタンド内のガス通路345、350およびスパークチャンバ330における残留物の減少を示す。
【0089】
スパークスタンド200の内部通路およびチャンバを洗浄した後、スパークスタンドの構成要素の構成を再較正することができる。特に、電極330の位置(およびそれがスパークチャンバ300内に突出する程度)を調整することができる。これは、電極330の最上部先端332と、スパークスタンドに配置された試料の最も近い表面との間(スパークチャンバへのアパーチャ315の上)の最適な分離を達成するために必要である。理解されるように、電極300は、上述のメンテナンスおよび洗浄手順の間にわずかに移動され得るので、したがって、洗浄プロセスの後の電極位置の測定および再調整が望まれる。有利には、試料-電極ギャップが異なる測定値間の所定の距離において維持される場合、分析の再現性が改善される。
【0090】
図5に例示されるメンテナンス機器500は、調節アーム530を備える調節機構と、電極の移動軸において移動可能なカプラ部分535とを含む。特に、移動可能なカプラ部分535は、電極330の長手方向(図3のスパークスタンド200に示される、すなわち、垂直方向)に移動してもよい。スパークチャンバアパーチャ315を通してのカプラ部分535の挿入により(スパークスタンド200がメンテナンス機器500に結合されるとき)、カプラ部分535は、例えば、電極330の第1の端部332と結合することによって、電極330と結合することができる。結合されると、カプラ部分535は、絶縁体310に対して電極330をスライドさせるように直線的に(上または下に)移動することができ、それによって、電極330がスパークチャンバ300内に突出する高さを調整することができる。好ましい例では、電極330は、電極先端332と、スパークテーブルの試料位置に配置された試料との間に3mmのギャップを提供するように移動される(アパーチャ315を介して)。有利には、メンテナンス機器500および調節機構530、535は、電極330の調整のより細かく、より正確な制御、ならびに電極の位置のより正確な測定を可能にする。したがって、ギャップの配置の誤差は、従来技術のシステムでは約+/-0.03mmであったのが本発明では約+/-0.01mmに減少する。
【0091】
スパークスタンドのメンテナンス(洗浄および再較正を含む)方法が完了した後、スパークスタンド200は、上述したように、メンテナンス機器500から切り離され、次いで原子放出分光器のステージ240で移動および再結合され得る。
【0092】
上記実施形態の特徴に対する多くの組み合わせ、修正、または変更は、当業者には容易に明らかであり、本発明の一部を形成することが意図される。1つの実施形態または実施例に関して具体的に説明される特徴のいずれかは、適切な変更を行うことによって、任意の他の実施形態において使用されてもよい。
【0093】
図2および3に示されるロック機構250は、レバーおよびハンドルを含む機械的手段を示すが、スパークスタンドを分光器に固定または結合するための任意の適切な(ツールレスの)ロック機構を使用することができる。例えば、スパークスタンド200および分光器ステージ240を固定または接続するための機械的手段の任意の構成を使用することができる。あるいは、2つの装置構成要素の間の磁気カップリングが使用され得る。ロック機構250は、コンピュータプログラムを実行するロボット手段および/またはコントローラを介して制御または操作することができる。
【0094】
記載される特定の実施形態では、ロック機構250の可動部分は、分光器ステージ240に示されるが、機械的ロック機構250の可動部分は、スパークスタンド200に配置され得ることが理解される。しかしながら、これにより、スパークスタンドの重量と複雑さが増加する可能性がある。
【0095】
さらに、電極330は、スパークスタンドの下部テーブル305Bに固定されていることが示されているが、いくつかの状況では、電極330は、分光器ステージ内に固定され、スパークスタンドの開口部を介して受容され得る。しかしながら、これは、電極自体の残留物による汚染のリスクの増加を考慮すると、あまり好ましくない構成であり得る。さらに、これは、スパークチャンバのシール不良のリスクを増加させる可能性がある。
【0096】
場合によっては、コントローラを使用して、ロック機構を制御し、スパークスタンドのメンテナンスおよび洗浄中にメンテナンス機器におけるガスの流れを制御し、上述のシール試験および抵抗率試験を実行することができる。コントローラは、コンピュータに配置されてもよく、コンピュータコードの実行時に制御動作を実行するように配置されてもよい。
【0097】
図5には、調節アームおよびカプラ部分の特定の構成を有する調節機構が示されているが、調節機構の様々な構成が想定され得ることが理解されよう。各構成において、調節機構は、電極がスパークチャンバ内に突出する高さを変更するために電極の移動の機能を実行するように配置される。例えば、図5の代替例では、調節機構は、メンテナンス機器のプラットフォーム510内に構成され得、可動カプラ部分は、スパークスタンドの下部テーブルの底面から突出する電極の一部と結合し得る(例えば、図3のスパークスタンドの電極の端部334は、図5のメンテナンス機器の空洞520に受容され、その中に配置された調節機構と結合し得る)。説明されたいずれかの例では、結合機構は機械的または磁気的であり得る。
図1
図2
図3
図4
図5