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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】分光技術のための荷電粒子検出
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/02 20060101AFI20240408BHJP
   G01T 1/24 20060101ALI20240408BHJP
   H01J 49/48 20060101ALI20240408BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20240408BHJP
   G01N 23/2276 20180101ALI20240408BHJP
   G01N 23/2273 20180101ALI20240408BHJP
   H01J 37/252 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01J49/02 500
G01T1/24
H01J49/48 400
H01J37/244
G01N23/2276
G01N23/2273
H01J37/252 A
H01J37/252 Z
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022526066
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 GB2020052830
(87)【国際公開番号】W WO2021090029
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-05-06
(31)【優先権主張番号】1916226.2
(32)【優先日】2019-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520284148
【氏名又は名称】ヴイジー システムズ リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】303043704
【氏名又は名称】エフイーアイ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】バーナード ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ステイスカル パヴェル
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-152656(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02998979(EP,A1)
【文献】特開平05-041192(JP,A)
【文献】米国特許第05583336(US,A)
【文献】特開平05-047334(JP,A)
【文献】特表2017-537426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/02
H01J 49/48
H01J 37/244
H01J 37/252
G01N 23/00-23/2276
G01T 1/00-1/16
G01T 1/167-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線光電子分光法における光電子の検出のための方法であって、前記方法が、
静電エネルギー分散型分光分析器から光電子ビームとして受け取られた光電子を検出器に向かって加速することと、
加速された前記光電子を検出画素のアレイにおいて受け取ることであって、前記検出画素のアレイが、前記検出器を形成し、各光電子が前記検出器において前記光電子のエネルギーを表す検出画素の列に入射するように、前記検出器に到達する前記光電子が、エネルギー分散方向における広がりを有する、受け取ることと、を含む、方法。
【請求項2】
各検出画素が、半導体ダイオードを備える能動的検出画素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各検出画素が、増幅器、比較器、および計数器に関連付けられている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記光電子は、少なくとも検出エネルギー閾値まで加速され、前記検出エネルギー閾値は、前記検出器の検出画素に入射する前記光電子の検出のための光電子の最小エネルギーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
加速された前記光電子を前記検出器において受け取る前に、前記方法が、
前記光電子ビームを集束して前記検出器の結像面における前記光電子ビームの倍率を変化させることをさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記光電子ビームを集束して前記光電子ビームの前記倍率を変化させることが、
前記エネルギー分散方向における前記光電子ビームの幅が前記検出器における前記検出画素のアレイの対応する寸法と実質的に一致するように、焦点面において前記光電子ビームの断面積を変化させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記静電エネルギー分散型分光分析器と前記検出器との間に配置された荷電粒子光学系が、前記光電子を加速する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記荷電粒子光学系が、前記光電子を集束するようにさらに構成されている、請求項5又は6に従属する場合の請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記検出器が、N行及びM列の検出画素のアレイを備え、前記方法が、
N×Mの前記検出画素の各々において受け取られた光電子の数を決定することをさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記方法が、
N個の検出画素の各列について、前記検出画素の列内の各検出画素において受け取られたことを決定された前記光電子の数を合計して、N個の検出画素の各列の合計を含む1×M次元データベクトルを決定することをさらに含み、前記1×M次元データベクトルが、前記検出器の結像面の1次元にわたる前記光電子の空間分散を表している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
X線光電子分光法における光電子の検出のための装置であって、
静電エネルギー分散型分光分析器と、
荷電粒子光学系と、
検出器を形成する検出画素のアレイと、を備え、
前記荷電粒子光学系の配置が、静電エネルギー分散型分光分析器から光電子ビームとして受け取った光電子を、前記検出画素のアレイにおいて受け取られるように、前記検出器に向かって加速するように構成されており、
前記静電エネルギー分散型分光分析器が、各光電子が前記検出器において前記光電子のエネルギーを表す検出画素の列に入射するように、前記光電子ビームを、エネルギー分散方向における広がりを有する前記検出器に到達させる、装置。
【請求項12】
各検出画素が、半導体ダイオードを備える能動的検出画素である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
各検出画素が、増幅器、比較器、および計数器に接続されている、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記荷電粒子光学系が、前記光電子を少なくとも検出エネルギー閾値まで加速するように構成されており、前記検出エネルギー閾値が、前記検出器の検出画素に入射する前記光電子の検出のための光電子の最小エネルギーである、請求項11~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記荷電粒子光学系が、前記光電子ビームを集束して、前記検出器の結像面における前記光電子ビームの倍率を変化させるようにさらに構成されている、請求項11~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
荷電粒子光学系が、前記エネルギー分散方向における前記光電子ビームの幅が前記検出器における前記検出画素のアレイの対応する寸法と実質的に一致するように、前記光電子ビームの倍率を変化させるように構成されている、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記荷電粒子光学系が、少なくとも2つのレンズ要素を備え、前記少なくとも2つのレンズ要素が、前記光電子を集束及び加速するように配置されている、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
前記検出器が、N行及びM列の検出画素のアレイを備え、前記装置が、
N×Mの前記検出画素の各々において受け取られた光電子の数を決定するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項11~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記コントローラが、
N個の検出画素の各列について、前記検出画素の列内の各検出画素において受け取られたことを決定された前記光電子の数を合計して、N個の検出画素の各列の合計を含む1×M次元データベクトルを決定するようにさらに構成されており、前記1×M次元データベクトルが、前記検出器の結像面の1次元にわたる前記光電子の空間分散を表している、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
X線光電子分光器であって、
請求項11~19のいずれか一項に記載の装置を備え、
前記静電エネルギー分散型分光分析器が静電半球型分析器であり、
前記荷電粒子光学系の配置が、前記静電半球型分析器から受け取られた光電子を、前記検出器を形成する前記検出画素のアレイに向かって加速するように構成されている、X線光電子分光器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分光装置において荷電粒子を検出または計数するための方法および装置に関する。本発明はさらに、X線光電子分光法のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかのタイプの分光法では、イオンまたは電子などの荷電粒子を検出する必要がある。特に、多くの分光法(X線光電子分光法(XPS)、オージェ電子分光法、飛行時間型分光法、紫外光電子分光法、反射電子エネルギー損失分光法、イオン散乱分光法など)では、検出器に入射する荷電粒子の検出と計数を必要とする。一般に、そのような技術では、検出器は、粒子のエネルギーに従って粒子を分散させるエネルギー分析器とともに使用され、その結果、分析器から出る粒子の位置を使用して、粒子のエネルギーを決定することができる。したがって、最も効率的な検出を提供するには、通常、少なくとも一方向に複数のチャネルを備える検出器が必要である。
【0003】
このような検出技術の課題は、検出器に入射する単一の荷電粒子によって生成される小信号である。使用される従来の検出器の例としては、マイクロチャネルプレートまたは電子増倍管デバイスが挙げられる。どちらのタイプの検出器にも、検出器に入射する単一の電子を複数の電子の信号(例えば、各粒子からの106個以上の電子)に変換する効果があり、この信号は、次いで従来の電子機器によって簡単に計数することができる。次に、マイクロチャネルプレートまたは電子増倍管デバイスを、蛍光スクリーン、レンズ、およびCCD、抵抗性アノード、バックギャモン型アノード、または遅延線アノードに結合して、荷電粒子が受け取られた位置を符号化することができる。このような電子増倍型検出器は、特定の分光技術(例えば、XPS)でエネルギー分析器と一緒に使用できる。これにより検出器に衝突した粒子の位置が静電場における粒子の偏向の程度を示し、したがって粒子の結合エネルギーに関する情報を提供する。
【0004】
これらのタイプの検出器は十分に確立されている。ただし、それらの検出器にはいくつかの欠点がある。例えば、このような検出器の寿命は限られており(これは受け取られた電荷によって設定され、マイクロチャネルプレートの場合は10~20mC/cm2であり得、通常は、通常の使用で約2年である)、計数率は制限され(1秒当たりの最大40メガ計数)、比較的高価である。さらに、マイクロチャネルプレートは、高い計数率でパルスが積み重なってパルスが重なるという問題がある。最後に、そのような技術は、分光装置の真空内の検出器から、真空フィードスルーを通して、真空の外側に取り付けられた電子機器へのアナログ信号の送信に依存している。このような設定での反射および損失を回避することは、困難かつ高価である。
【0005】
高エネルギー素粒子物理学の分野では、事前の電子増倍を使用せずに、検出器に入射する個々の粒子を直接検出できる能動的画素検出器が最近開発された。これらの検出器は、半導体ダイオードのアレイおよび相補型金属酸化膜半導体(CMOS)技術を利用している。これらのデバイスは、画素化された検出器のアレイ(例えば、通常は256×256画素であるが、他のサイズも可能である)とCMOS前置増幅器のアレイが密接に結合されている。各画素の小さな静電容量(通常はわずか約55μmx55μmのサイズを有する)および前置増幅器の各々の個々の画素との緊密な結合により、検出器は各画素に到達する個々の粒子(またはX線)をパルス計数することができる。検出器アレイ内の多数の独立した画素(例えば、64,000)により、非常に高い計数率を実現することができる。このような検出器の例としては、ジュネーブのCERNと共同で高エネルギー物理実験で使用するために開発されたMEDIPIX(商標)およびTIMEPIX(商標)ファミリーの検出器(例えば、米国特許公開第2012/012613号に記載されているTIMEPIX3(商標))が挙げられる。現在、このような検出器は通常、約3keVを検出するための最小粒子エネルギーを有し、低エネルギー粒子を検出するようには設計されていない。このような検出器の将来の設計では、検出のための最小粒子エネルギーが低くなると予想される。
【0006】
これらのタイプの能動的画素検出器は、特に高エネルギーの粒子が検出される場合に、様々な用途で可能性を有することが実証されている。一例では、電子後方散乱パターン(EBSP)結像は、サンプルに入射する加速された一次ビームを使用して、後方散乱電子を生じさせ、これはその後検出される。米国特許公開第2016/054240号は、MEDIPIX(商標)またはTIMEPIX3(商標)検出器を使用したEBSP画像の生成について記載している。これは、検出器を利用して最大30keVの一次ビームエネルギーの電子を受け取るが、他の高エネルギー用途では、検出器を使用してはるかに高いエネルギー(最大約1MeV)の粒子を検出することができる。
【0007】
ただし、説明されている能動的画素検出器は、分光法で使用するのに適した候補ではないようである。上述したものなどの分光技術は、低エネルギー粒子の正確な検出を達成する必要がある。例えば、XPSでは、サンプルからの光電子は、分析器に入る前に、通常100eV以下のエネルギーに減速される。したがって、検出のために分析器を出る粒子は比較的低エネルギーであり、上述した「能動的画素」検出器では容易に検出されない。
【0008】
それにもかかわらず、質量分析において記載された検出器を使用するための1つの選択肢は、Jungmann et al.(Int.J.Mass.Spectrom.(2013),vol.341,p 34-44)に記載されている。ここでは、粒子増倍技術が画素化された検出器で受け取られる前に適用されるため、画素化された検出器は読み出しのみに使用される。特に、Jungmannらは、TIMEPIX(商標)検出器の直前にあるシェブロンマイクロチャネルプレート(MCP)を使用した質量分析結像について記載している。質量分析器を出る荷電粒子はマイクロチャネルプレートに入射し、単一の電子を生成し、この電子は、MCPによって約107電子に乗算されて、検出器で受け取られる。MCP/TIMEPIX(商標)検出器アセンブリは、イオンが放出されるイオン顕微鏡と比較して高電圧に保持されている。これは、運動エネルギー放出の限界を克服するためであり、質量分析で一般的なことである。結像スキームでは、Vallance et al.(Phys.Chem.Chem. Phys(2014),vol.16,p 383-395)は、シンチレータ、1つ以上のマイクロチャネルプレート、および/または蛍光スクリーンを使用して、画素化された検出器の前に荷電粒子信号を乗算する。さらに別の例では、Scienta Omnicron(商標)Argus CU(商標)検出器は、MEDIPIX(商標)ファミリー読み出し電子機器を備えた128チャネルストリップアノード検出器を使用している(https://www.scientaomicron.com/en/products/344/1110#page540を参照、2019年10月31日にアクセス)。この場合、MEDIPIX(商標)チップは検出器として使用されていないようであるが、代わりに読み出し電子機器の一部として実装されている。
【0009】
画素化された検出器を使用するためのさらなる選択肢は、Zha et al.(IEEE Trans.Electron Devices.(2012),vol.59,p 3594)に記載されている。この文書では、特殊な背面照射型CMOS能動的画素センサを使用した電子の検出について記載している。センサは、ラッピング、反応性イオンエッチング、およびレーザアニーリングを含む方法で裏面照射され、ダイオードデバイスの基材を除去し、エピ層を露出させたものである。500eVから2keVまでのエネルギーを有する電子がCMOS検出器の裏側(特にエピ層)で受け取られた。ただし、センサのこのような処理ステップは複雑で、歩留まりが低い可能性があり、市販の検出器に直接適用することはできないであろう。さらに、この設計の検出器を使用して検出された最低エネルギー電子は約500eVであり、XPS用の半球型分析器を通過する光電子の一般的な通過エネルギー(約100eV)よりも大幅に高くなっている。
【0010】
したがって、本発明の目的は、上述した検出器および検出技術の欠点を克服する分光技術において荷電粒子を検出するための方法および装置を提供することである。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、分光技術において荷電粒子を検出するための方法および装置である。本方法では、検出画素のアレイにおいて直接受け取るために、分光分析器を出る荷電粒子の加速が必要である。MCPまたは蛍光プレートなどの荷電粒子の増倍は必要ない。代わりに、本方法および装置は、荷電粒子を、画素化された検出器における検出に最適なエネルギーに加速するように構成される。
【0012】
適用された加速の結果として、画素化された検出器は変更を伴わずに使用でき(デバイス基材の薄型化または除去など)、それでも約100eV(またはそれ以下)の低通過エネルギーで荷電粒子の検出を可能にする。また、検出器チップを物理的に変更するシステムとは対照的に、検出される粒子のエネルギーに応じて、システムの適応および最適化も可能になる。さらに、いくつかの従来技術のシステムで示されるように読み出しのためだけでなく、検出器として検出画素のアレイを使用することは、測定データの分解能を改善し、限られた寿命の構成要素(MCPなど)の使用を回避する。記載された発明はさらに、検出器のサイズに一致するように分光分析器の結像面を調整することを可能にし、検出の効率を改善する。したがって、記載される発明は、XPSなどの分光技術において低エネルギー荷電粒子を検出するために能動的画素センサを使用するための実行可能でかつ改善されたシステムを提供する。
【0013】
本発明に記載される技術は、検出前に荷電粒子の加速を必要とする(例えば、荷電粒子が静電場を通って移動するときに荷電粒子に力を印加することによって)。このため、記載される技術は、このような粒子の質量が小さいことを考慮して、元素粒子分光法(XPS、Auger、または光電子を使用する他の分光法など)に特に有用である。
【0014】
第1の例では、分光法で荷電粒子を検出するための方法が記載されており、本方法は、
分光分析器から受け取られた荷電粒子を検出器に向かって加速することと、
加速された荷電粒子を検出画素のアレイにおいて受け取り、検出画素のアレイが検出器を形成する、受け取ることと、を含む。
【0015】
特に、本方法は、荷電粒子がそれらのエネルギーに従って分析される分光法における荷電粒子の検出のための方法であり得る。
【0016】
記載される方法では、荷電粒子は分光分析器(またはエネルギー分析器)を出て、次いで、検出器に入射する前に加速される。特に、荷電粒子は、検出器の検出画素において直接受け取られる(すなわち、マイクロチャネルプレートまたは傾向スクリーンなどのいかなる介在する構成要素も伴わない)。検出画素のアレイの受け取り面は、検出面、または検出器の結像面を形成する。
【0017】
分光分析器はエネルギー分散型分光分析器であり、分析器を通過した(そしてその後検出器に到達した)荷電粒子は、それらのエネルギーに比例してエネルギー分散方向において広がりを有する。
【0018】
検出画素のアレイは、順序付けられた配置またはグリッドで構成された複数の検出画素を備える。検出画素のアレイは、2つ以上の検出器チップ(各々が複数の能動的画素を有する)の配置を使用して形成することができる。例えば、検出器チップは、「タイル状」であってもよく、例えば、1×2の検出器チップ、または2×2のチップ、または他の配置を含む。例では、検出画素のアレイは、4つのMedipixチップ(2×2)の配置から形成されてもよく、各々が256×256画素を備え、それにより512×512の検出画素の検出器アレイを提供する。複数の独立した検出器を使用するアレイ、または多数の画素を備えた単一の検出器を使用するアレイでは、エネルギー分散方向における多数のエネルギーチャネルを同時に記録する(したがって、より広い範囲の粒子エネルギーを同時に測定する)ことが可能になる。これにより、全体的なデータ取得時間を短縮することができる。
【0019】
好ましくは、各検出画素は、半導体ダイオード、またはより具体的にはpn接合を含む能動的検出画素である。能動的検出画素は、CMOSデバイスであり得る。このように、検出器は、pn接合の二次元アレイを備え、アレイ内の各pn接合は、異なる画素内に含まれる。
【0020】
好ましくは、加速された荷電粒子は、半導体ダイオードの能動的層で受け取られる。言い換えれば、荷電粒子は、最初に、能動的領域を備える誘電体層で受け取られる(pn接合、またはダイオードの他の能動的バンド構造を組み込む)。電子は検出器ダイオードに衝突し、空乏層に電子正孔対を生成し、電子正孔対は、次いで、印加されたバイアス電圧によって収集される。荷電粒子は、半導体ダイオードのエピ層または薄型化された基材で直接受け取られない。
【0021】
好ましくは、各検出画素は増幅器に関連付けられている。各能動的画素は、例えばCCDとは対照的に、pnダイオード(または光検出器)と能動的増幅器の両方を備えている。電荷を取得して転送するだけのCCD画素とは対照的に、各画素は、粒子を検出して計数するために独立して動作する電子機器を備えている。
【0022】
好ましくは、検出器の各検出画素の増幅器は、比較器および計数器に関連付けられている。増幅器(電荷感応性前置増幅器、動作可能なトランスコンダクタンス増幅器、または動作可能な増幅器)は、半導体ダイオードに流入する荷電粒子によって蓄積された総電荷に比例する電圧を生成し得る。比較器は、増幅器から出力されるアナログ電圧を測定およびデジタル化するように機能する(言い換えれば、アナログ-デジタル変換器として機能する)。計数器は、比較器からの出力に基づいて、受け取られた荷電粒子の数の計数を提供することができる。増幅器、比較器、および計数器は、半導体ダイオードに直列に接続されてもよい。各画素の小さな静電容量(通常はわずか55μmx55μmのサイズを有し、100fFの桁数の静電容量を有する)、および増幅器との緊密な結合により、検出器は各画素に到達する個々の荷電粒子(またはX線)をパルス計数することができる。検出器アレイ内の多数の独立した画素(通常は64,000画素)により、非常に高い計数率を達成することができる。
【0023】
好ましくは、荷電粒子は、少なくとも検出エネルギー閾値まで加速され、検出エネルギー閾値は、検出器の検出画素に入射する荷電粒子の検出のための荷電粒子の最小エネルギーである。言い換えれば、分光分析器を出る比較的低エネルギーの荷電粒子は、十分に高い信号対雑音比で検出画素において検出されるために、より高いエネルギーに加速される。理想的には、荷電粒子は、検出画素のアレイに最適な検出効率を与えるためにエネルギーまで加速される。
【0024】
任意選択で、検出エネルギー閾値は3keVよりも大きい、または5keVよりも大きくてもよい。検出エネルギー閾値は、使用される検出器チップのタイプ(およびそれが構成する検出画素)によって異なる。特定の例では、検出エネルギー閾値は、2keVよりも大きい、3keVよりも大きい、5keVよりも大きい、7keVよりも大きい、または10keVよりも大きくてもよい。
【0025】
任意選択で、分光分析器は、500eV未満の通過エネルギーを有するように構成される。通過エネルギーは、分光分析器内の静電場に依存するエネルギーであり、所与のエネルギー(通過エネルギー)に近い電子のみが分光分析器を通過し、出ることができる(したがって、検出器に向かって前進する)。通過エネルギーは、分光分析器の出口を通過する粒子のエネルギーを表すと考えることもできる。通過エネルギーは、一般に、検出エネルギーの閾値よりもはるかに低くなる(例えば、2keV未満、または1keV未満)であろう。特定の例では、分光分析器から受け取られる荷電粒子のエネルギーは、1.5keV以下、1keV以下、750eV以下、400eV以下、300eV以下、200eV以下、または150eV以下であろう。分光分析器から受け取られた荷電粒子は、1eV~500eV、またはより好ましくは10eV~200eVの範囲のエネルギーを有し得る。通常、XPSの場合、分光分析器の通過エネルギーは3~150eVの範囲であるが、他のタイプの分光法(オージェ電子分光法など)では、より高いエネルギー範囲が得られる場合がある。
【0026】
好ましくは、検出エネルギー閾値は、分光分析器の通過エネルギーの少なくとも10倍である。言い換えれば、加速ステップは、検出画素のアレイにおいて受け取られる前に、荷電粒子のエネルギーを少なくとも10倍(一桁だけ)増加させることができる。
【0027】
好ましくは、分光分析器から受け取られた荷電粒子は、荷電粒子ビームを含み、検出器において加速粒子を受け取る前に、この方法は、荷電粒子ビームを集束させて、検出器の結像面におけるビームの倍率を変化させることをさらに含む。結像面は、検出器の受け取り面(または、より具体的には、アレイを構成する複数の検出画素の受け取り面)である。
【0028】
好ましくは、荷電粒子ビームを集束させて荷電粒子ビームの倍率を変化させることは、検出器の焦点面での荷電粒子ビームの断面積を変化させて、検出器における検出画素のアレイの少なくとも1つの対応する寸法に実質的に一致させることを含む。
【0029】
任意選択で、分光分析器はエネルギー分散型分光分析器であり、焦点面における荷電粒子ビームの断面積は、エネルギー分散方向における荷電粒子ビームの幅が検出器における検出画素のアレイの対応する寸法と実質的に一致するように、変化させられる。言い換えれば、倍率は、エネルギー分散方向におけるビームが、エネルギー分散方向に対応する方向におけるアレイのほぼ全幅にわたって受け取られるように変化させられてもよい。理想的には、ビームの幅は、分析器を通過した荷電粒子の損失(すなわち、非検出)を回避するために、同じ方向における検出器アレイの幅よりも大きくならないであろう。例では、エネルギー分散方向の荷電粒子ビームの幅が同じ方向の検出器アレイの寸法と一致するように、ビームの倍率が変化させられる。
【0030】
好ましくは、荷電粒子加速配置(荷電粒子光学系であるか、またはその中に含まれ得る)が、分光分析器と検出器との間に配置されて、荷電粒子を加速する。より具体的には、荷電粒子光学系は、分光分析器への出口と検出画素のアレイとの間に配置され、加速ステップを実行するように構成される。荷電粒子光学系は、荷電粒子を加速するように構成された構成要素の配置(言い換えれば、荷電粒子加速器)である。その配置は、静電レンズを備え得るか、または加速をもたらすために既存の構成要素間に電圧が印加される配置であり得る。
【0031】
好ましくは、荷電粒子光学系は、(荷電粒子を加速することに加えて)荷電粒子を集束させる。言い換えれば、荷電粒子光学系は、分光分析器の出力平面を再結像して、検出画素のアレイの受け取り面に一致させ、荷電粒子を加速するように構成される。
【0032】
好ましくは、荷電粒子光学系は、少なくとも2つのレンズ要素を備え、少なくとも2つのレンズ要素は、集束ステップおよび加速ステップを実行するように配置される。
【0033】
代替例として、荷電粒子光学系は、加速場の透過を防ぎ、場の均一性を提供するためのメッシュ要素を備え得る。この場合、荷電粒子の加速は、分光分析器への出口の領域と比較して、検出画素のアレイにおいて好適に高い電位を維持することによって達成される。高い電位は、検出画素のアレイに向かって、荷電粒子の加速場を引き起こすのに好適である。
【0034】
任意選択で、少なくとも2つのレンズ要素の第2のレンズ要素は、少なくとも2つのレンズ要素の第1のレンズ要素と比較して、荷電粒子ビームの下流に配置され、第2のレンズ要素は、第1のレンズ要素の印加電圧の少なくとも10倍の印加電圧を有する。このようにして、荷電粒子は、第1のレンズ要素と第2のレンズ要素との間を移動して加速される。第2のレンズ要素は、検出器と同じ電位にあってもよい。
【0035】
任意選択で、第1のレンズ要素を使用して、荷電粒子ビームの集束を提供することができる。
【0036】
任意選択で、第1のレンズ要素は、印加電圧、V1=1400+Epass-Ekを有し、式中、Epassは分光分析器の通過エネルギーであり、Ekは電子運動エネルギーである。
【0037】
任意選択で、第2のレンズ要素は、印加電圧、V2=15000+Epass-Ekを有し、式中、Epassは分光分析器の通過エネルギーであり、Ekは電子運動エネルギーである。
【0038】
好ましくは、方法は、分光分析器への出口に抽出場を印加することをさらに含み、荷電粒子光学系は、第1のレンズ要素の上流に、抽出場を印加するように配置された第3のレンズ要素をさらに備える。抽出場は、分光分析器の出口にある静電場であり、荷電粒子が分析器の出口開口部を離れるのを助け、方向付ける。第3のレンズに印加される電圧は、分析器の通過エネルギーに応じてスケーリングされる(通常は5~150eV)。例では、第3のレンズによって提供される抽出場は、10~20V/mmの間である。
【0039】
好ましくは、第3のレンズ要素とは反対の極性の印加電圧を有する第1および第2のレンズ要素。任意選択で、荷電粒子が光電子である場合、第3のレンズ要素は負の印加電圧を有し、第1および第2のレンズ要素は正の印加電圧を有する。任意選択で、第1および第3のレンズ要素は、同じ桁数の印加電圧を有する。
【0040】
任意選択で、第3のレンズ要素は、印加電圧、V3=100-0.5Epass-Ekを有し、式中、Epassは分光分析器の通過エネルギーであり、Ekは電子運動エネルギーである。
【0041】
好ましくは、検出器は、N行およびM列の検出画素のアレイを備え、方法は、N×Mの検出画素の各々において受け取られた荷電粒子の数を決定することをさらに含む。分光器の結像モードでは、N×M画素からの荷電粒子計数を分析器のサンプル表面の二次元画像として表すことができる。例えば、説明した方法(および装置)は、Thermo Scientific(商標)Theta Probe Angle-Resolved X-ray Photoelectron Spectrometer(ARXPS)System、またはThermo Scientific(商標)ESCALAB(商標)Xi+X線Photoelectron Spectrometer(XPS)Microprobeで使用され、このように画像を提供することができる。
【0042】
好ましくは、分光分析器はエネルギー分散モードで動作し、方法はN個の検出画素の各列について、検出画素の列内の各検出画素において受け取られたことを決定された荷電粒子の数を合計して、N個の検出画素の各列の合計を含む1×M次元データベクトルを決定することをさらに含み、1×M次元データベクトルが、検出器の結像面の1次元にわたる荷電粒子の空間分散を表している。このようにして、「スナップショットスペクトル」を分光分析器から取得することができる。特に、分光分析器の少なくとも適切な通過エネルギーおよび他の操作パラメータを設定することによって、荷電粒子は、分光分析器を通過する間、それらのエネルギーに従って分散される(半球型分析器では、粒子は半径方向に分散される)。したがって、荷電粒子は、それらのエネルギーに比例するエネルギー分散方向に広がりを有する検出器の受け取り面に到達する。いくつかの例では、エネルギーの広がりは、通過エネルギーの14%にもなる場合がある。したがって、分散方向に垂直な方向の検出画素の各列において受け取られた荷電粒子計数を合計(またはビン化)することによって、狭いエネルギー範囲にわたるスペクトルを取得することができる。さらにデータ処理を適用することもできる。このようにして、検出画素のアレイを使用して、一次元の位置感知検出器(従来のマイクロチャネルプレートなど)の128チャネルを模倣することができる。このように、分析器の動作パラメータを走査することなく、狭いエネルギー走査でスペクトルを取得することができ、したがって、より低いエネルギー分解能のデータを比較的迅速に取得することができる。これは、時間分解実験、またはサンプルの深度プロファイリングを高速化するのに非常に役立つ。
【0043】
好ましくは、方法は、分光分析器の動作パラメータを調整して、ある範囲のエネルギーにわたって分光分析器に入力された荷電粒子を分析することであって、動作パラメータが、入力された荷電粒子のエネルギーの範囲にまたがるように時間間隔で調整される、分析することと、各時間間隔について、時間間隔中の分析器の動作パラメータについて、検出器の結像面の1次元にわたる荷電粒子の空間分散を表す1×M次元データベクトルを決定することによって、複数の1×M次元データベクトルを決定することと、複数の1×M次元データベクトルのデータ要素をビン化することであって、粒子エネルギーの同じ増分に関連付けられている複数の1×M次元データベクトルのすべての要素を合計することを含む、ビン化することと、をさらに含む。このようにして、走査された分光スペクトルを生成することができる。好ましくは、荷電粒子の加速の程度は、分析器を出て検出器に入射する粒子間の一定の関係を維持するために、分光分析器の動作パラメータの調整に対応する方法で調整することができる。
【0044】
言い換えれば、方法の加速および受け取りステップ中に、ある範囲の荷電粒子エネルギーを「走査」するために、分光分析器の動作パラメータを調整または段階的に増加させることができる。動作パラメータは、間隔または滞留時間中の動作パラメータの各セットにおいて、検出器の結像面の1次元にわたる荷電粒子の空間分散を表す1×M次元データベクトルが取得されるように、段階的に増加させることができる。このプロセスは、複数の1×M次元データベクトルが取得されるまで、操作パラメータの各セットに対して繰り返される。荷電粒子のエネルギー分散を考慮して、1×M次元データベクトルの各データ要素は粒子エネルギーに関連付けられている。したがって、分析器によって走査された粒子エネルギーの範囲にわたって走査スペクトルを提供するために、複数の1×M次元データベクトルにわたって同じ粒子エネルギー(または粒子エネルギーの同じ増分内)に関連付けられたデータ要素の荷電粒子計数をビン化(または合計)することができる。このように、走査された分光スペクトルは、上述したように、多くのエネルギーシフトされた「スナップショット」スペクトルの合計とみなすことができる。
【0045】
一般に、走査された分光スペクトルは、分光分析器で比較的低い通過エネルギーで取得されることになる。分光分析器の操作パラメータのステップサイズは、十分な分光分解能を提供するように設定することができる。調査スペクトルは、走査されたスペクトルと同様の方法で取得され得るが、この場合、測定は、分光分析器における高通過エネルギー(低分解能および大スループットを提供)、および分析器の操作パラメータの比較的大きなステップサイズを使用して実行される。したがって、調査スペクトルは、放出された光電子の可能なエネルギー範囲全体をカバーする低分解能スペクトルを提供することができる。
【0046】
好ましくは、分光分析器は、結像モードまたはエネルギー分散型モードのいずれかで操作される。一例では、分光分析器は、各荷電粒子が、荷電粒子のエネルギーを表す画素の列において検出器に入射するように、荷電粒子を分散させるエネルギー分散モードで動作させられる。代替の例では、各荷電粒子が、荷電粒子が発生したサンプル中の位置を表す画素において検出器に入射するような結像モードで分光分析器が動作する。結像モードでは、電子は分光分析器を通過するため、荷電粒子のエネルギーに基づくある程度の分離が観察される可能性が高い。そのため、結像においてエネルギーの選択が行われる場合があり、場合によっては、エネルギー分散と角度マッピングとが同時に行なわれる。
【0047】
任意選択で、分光分析器は、静電半球型分析器、円筒形鏡型分析器、飛行時間型分析器、平行板型分析器、減速電場型分析器のうちの1つである。荷電粒子をそのエネルギーに従って分散させる任意のタイプの分光分析器(言い換えれば、エネルギー分散型分光分析器)を使用することができる。
【0048】
好ましくは、方法は、検出器の各検出器画素に対してデジタル信号を生成することをさらに含み、デジタル信号は、検出器画素において受け取られた荷電粒子の数を表す。好ましくは、方法は、各検出器画素のデジタル信号を真空フィードスルーを通してプロセッサに渡すことを含む。デジタル信号は、ダイオード、前置増幅器、比較器、および計数器によって生成される。有利なことに、これは、アナログではなくデジタル信号を、検出器が存在する真空チャンバから通過させる必要があることを意味する。特に高速で、任意の真空中のデバイスから、かつ真空フィードスルーを通してアナログ信号を通過させることは非常に困難である。反射および損失を回避するには、各アナログ信号を同軸ケーブルによって運び、同軸真空フィードスルーを通過させる必要がある。これは高価で、大きな空間を占有する。各画素に対してチャネルが必要となる記載された検出器を使用すると、同軸ケーブルの数が多くなり、非常に複雑になる。したがって、デジタル信号の提供は、これらの問題の多くを克服する。
【0049】
任意選択で、検出器はプリント回路基板(PCB)に取り付けられ、増幅器、比較器、および粒子計数器はPCB上に配置される。そのため、検出器は簡単でコンパクトな方法で取り付けることができる。
【0050】
任意選択で、PCBは、分析チャンバ、少なくとも分光分析器および検出器を収容するための分析チャンバに真空シールを提供する。
【0051】
任意選択で、PCBはデジタル信号の真空フィードスルーをさらに提供する。そのため、PCBは、検出器との間の信号に真空シールと電気フィードスルーの両方を提供し得る。
【0052】
任意選択で、デジタル信号をプロセッサに渡すためのインターフェースは、PCBとプロセッサとの間の双方向光ファイバリンクである。有利なことに、光ファイバリンクにより、データを検出器(例えば、約10keVのエネルギー検出閾値で浮動している可能性がある)からプロセッサに転送することができる。有益なことに、光ファイバリンクはUSB3データ転送速度に対応している。
【0053】
第2の例では、分光法における荷電粒子の検出のための装置が記載されており、装置は、
荷電粒子光学系と、
検出器を形成する検出画素のアレイと、を備え、
荷電粒子光学系の配置が、分光分析器から受け取られた、検出画素のアレイにおいて受け取られる荷電粒子を検出器に向かって加速するように構成される。
【0054】
特に、荷電粒子がそれらのエネルギーに従って分析される分光法における荷電粒子の検出のための装置が記載される。
【0055】
荷電粒子光学系(静電、もしくはあまり好ましくない磁気レンズを備える荷電粒子光学系の配置であるか、または荷電粒子加速器とみなすことができる)は、分光分析器から放出される荷電粒子を加速および操作することができる。特に、荷電粒子光学系を使用して、検出画素のアレイにおける検出に最適なエネルギーまで荷電粒子を加速することができる。荷電粒子光学系は、分光分析器と検出器との間に配置される。
【0056】
アレイは、少なくとも1,000個の検出画素を含み得る。いくつかの例では、既存の検出器のエネルギー分解能に一致させるために、アレイは128×128個の画素を含み得る。ただし、256×256個(またはそれ以上)の画素アレイを含む、はるかに大きなアレイを使用できるため、スペクトルにおけるはるかに大きなエネルギー分解能の可能性を提供する。
【0057】
分光分析器はエネルギー分散型分光分析器であり、分析器を通過した(そしてその後検出器に到達した)荷電粒子は、それらのエネルギーに比例してエネルギー分散方向において広がりを有する。
【0058】
好ましくは、各検出画素は、半導体ダイオード、およびより具体的にはpn接合を含む能動的検出画素である。到達した荷電粒子は、各受け取り画素の半導体ダイオードにおいて電子/正孔のペアを生成する。これにより、次いでダイオードにおいて測定可能な電流が生成される。したがって、荷電粒子は、荷電粒子(光電子)の増倍を使用せずに検出される。
【0059】
好ましくは、加速された荷電粒子は、半導体ダイオードの能動的層で受け取られる。言い換えれば、荷電粒子は、ダイオードの機能の一部を形成する層(誘電体層、またはpn接合の一部を形成する層を含む)で受け取られる。荷電粒子は、半導体ダイオードデバイスの基材側またはエピ層側では受け取られない。本発明による装置は、あらゆる複雑な半導体処理ステップ(ダイオードデバイスの裏面照射など)を回避する。検出画素のアレイから形成された検出器の1秒当たりの計数は、マイクロチャネルプレートなどを含む一般的な検出器よりも大幅に高くなっている。
【0060】
好ましくは、各検出画素は増幅器に接続されている。増幅器は半導体ダイオードに密接に結合されている。好ましくは、各検出画素(より具体的には、検出画素に関連付けられた各増幅器)は、比較器および計数器に接続されている。言い換えれば、増幅器はアナログ-デジタルコンバータに接続されている。検出画素、増幅器、比較器、および計数器のアセンブリ全体が真空内に取り付けられているため、デジタル信号のみが真空フィードスルーを通過する必要がある。これにより、検出画素の読み取り速度も向上する。
【0061】
好ましくは、荷電粒子光学系の配置は、荷電粒子を少なくとも検出エネルギー閾値まで加速するように構成されており、検出エネルギー閾値は、検出器の検出画素に入射する荷電粒子を検出するための荷電粒子の最小エネルギーである。
【0062】
好ましくは、検出エネルギー閾値は、3keVよりも大きい、または5keVよりも大きくてもよい。検出エネルギー閾値は、所与の検出画素の最適な検出効率に必要な粒子エネルギーのパーセンテージとして設定することができる。最適な検出効率に必要な粒子エネルギーは、半導体ダイオードの能動的層の厚さ、およびデバイスで電流を生成するために必要な能動的層への粒子の浸透の程度によって決定される。検出エネルギー閾値は、1.5keVよりも多い、2keVよりも多い、3keVよりも多い、4keVよりも多い、5keVよりも多い、7keVよりも多い、10keVよりも多くてもよい。
【0063】
好ましくは、分光分析器は、500eV未満の通過エネルギーを有するように構成される。他の例では、通過エネルギーは、1.5keV未満、1keV未満、750eV未満、400eV未満、300eV未満、200eV未満、または150eV未満であり得る。通常、XPSの場合、分光分析器の通過エネルギーは50~150eVの範囲である。
【0064】
任意選択で、検出エネルギーの閾値は、分光分析器の通過エネルギーの少なくとも10倍(またはそれよりも一桁大きい)である。
【0065】
好ましくは、分光分析器から受け取られた荷電粒子は、荷電粒子ビームを含み、荷電粒子光学系の配置は、荷電粒子ビームを集束させて、検出器の結像面でのビームの倍率を変化させるように構成される。言い換えれば、荷電粒子光学系は、検出器画素のアレイの受け取り面での荷電粒子ビームの断面積を変化させるように構成される。好ましくは、荷電粒子光学系の配置は、荷電粒子ビームの倍率を変化させて、検出器の焦点面における荷電粒子ビームの断面積を、検出器における検出画素のアレイの少なくとも1つの対応する寸法に実質的に一致させるように構成される。有益なことに、これにより、荷電粒子ビームが、検出画素のアレイの可能な最大表面積をわたって受け取られ、したがって、受け取られる荷電粒子の数を最適化することができる。
【0066】
任意選択で、分光分析器は、エネルギー分散型分光分析器であり、荷電粒子光学系の配置は、エネルギー分散方向における荷電粒子ビームの幅が検出器における検出画素のアレイの対応する寸法と実質的に一致するように、荷電粒子ビームの倍率を変化させるように構成される。有利なことに、エネルギー分散された荷電粒子ビームの幅は、検出器アレイにおいて検出画素の列の総数にわたって入射するように一致し、それによって検出器の効率を最大化する。
【0067】
好ましくは、荷電粒子光学系の配置は、少なくとも2つのレンズ要素を備え、少なくとも2つのレンズ要素は、荷電粒子を集束および加速するように配置される。特に、レンズ要素のうちの少なくとも1つは、集束機能を実行して、検出器の結像面における荷電粒子ビーム断面のサイズを変化させることができる。加速機能は、2つのレンズ要素の間、またはレンズ要素のうちの1つと分光分析器の出口との間、またはレンズ要素の1つと検出器との間に電位を印加することによって達成することができる。言い換えると、荷電粒子光学系の配置は、最初に荷電粒子を加速し、次に分析器の出力面を再結像して、検出画素のアレイの受け取り面の寸法に一致させる。レンズ要素は、静電レンズ、またはより好ましくは磁気レンズであり得る。
【0068】
代替例では、加速は、分光分析器の出口と検出画素のアレイとの間に電位を印加することによって、例えば、検出器を比較的高い電位に保持することによって適用することができる。この場合、レンズ要素は使用されず、荷電粒子光学系は、他の方法で説明されている装置の一部を形成する。
【0069】
さらなる代替例では、荷電粒子光学系は、単一のレンズ要素のみを備える。
【0070】
任意選択で、少なくとも2つのレンズ要素の第2のレンズ要素は、少なくとも2つのレンズ要素の第1のレンズ要素と比較して、荷電粒子ビームの下流に配置される。任意選択で、第1のレンズ要素の印加電圧の少なくとも10倍の印加電圧を有する第2のレンズ要素。
【0071】
任意選択で、印加電圧、印加電圧、V1=1400+Epass-Ekを有する第1のレンズ要素、式中、Epassは分光分析器の通過エネルギーであり、Ekは電子運動エネルギーである。
【0072】
任意選択で、第2のレンズ要素は、印加電圧、V2=15000+Epass-Ekを有し、式中、Epassは分光分析器の通過エネルギーであり、Ekは電子運動エネルギーである。
【0073】
好ましくは、荷電粒子光学系の配置は、分光分析器への出口で抽出場を印加するように構成された第3のレンズ要素をさらに備える。
【0074】
好ましくは、第3のレンズ要素とは反対の極性の印加電圧を有する第1および第2のレンズ要素。任意選択で、荷電粒子が光電子である場合、第3のレンズ要素は負の印加電圧を有し、第1および第2のレンズ要素は正の印加電圧を有する。任意選択で、第1および第3のレンズ要素は、同じ桁数の印加電圧を有する。
【0075】
任意選択で、第3のレンズ要素は、印加電圧、V3=100-0.5Epass-Ekを有し、式中、Epassは分光分析器の通過エネルギーであり、Ekは電子運動エネルギーである。
【0076】
任意選択で、装置は、荷電粒子が荷電粒子光学系の配置に向かって出る分光分析器をさらに備える。
【0077】
任意選択で、分光分析器は、静電半球型分析器、円筒形鏡型分析器、飛行時間型分析器、平行板型分析器、減速電場型分析器のうちの1つである。
【0078】
装置は、分光分析器(分析器に印加された静電界を含む)を制御するためのコントローラと、検出画素からのデータの読み取りおよび処理のためのコントローラと、を備え得る。コントローラは、同じコントローラでも2つの別々のコントローラでもよい。コントローラは、コンピュータプロセッサにリンクされているか、コンピュータプロセッサの一部を形成していてもよい。
【0079】
好ましくは、装置は、分光分析器の動作パラメータを調整して、ある範囲のエネルギーで分光分析器に入力された荷電粒子を分析するように構成されたコントローラを備え、動作パラメータは、入力された荷電粒子のエネルギーの範囲を走査するように調整される。場合によっては、一定の関係を維持するために、荷電粒子の加速の程度を分光分析器の操作パラメータの調整と並行して調整することができる。
【0080】
好ましくは、検出器は、N行およびM列の検出画素のアレイを備え、コントローラは、N×Mの検出画素の各々において受け取られる荷電粒子の数を決定するようにさらに構成される。例えば、コントローラは、それぞれがそれぞれの増幅器、比較器、および計数器に結合された、N×Mの検出画素を形成する半導体ダイオードの各々から出力されたデジタル信号を受け取り得る。「結像モード」では、コントローラはN×Mの検出画素から受け取られた計数日を二次元画像としてプロットすることができる。
【0081】
任意選択で、分光分析器はエネルギー分散モードで動作し、コントローラは、N個の検出画素の各列について、検出画素の列内の各検出画素において受け取られたことを決定された荷電粒子の数を合計して、N個の検出画素の各列の合計を含む1×M次元データベクトルを決定するようにさらに構成されており、1×M次元データベクトルが、検出器の結像面の1次元にわたる荷電粒子の空間分散を表している。言い換えれば、コントローラは、画素アレイの列内の各検出画素から読み取られた荷電粒子数を合計するために、個々の検出画素から受け取られたデジタル信号を処理するために使用され得る。このようにして、エネルギー分散方向の荷電粒子ビームの分散を測定することができ、分光スペクトルが取得される。特定の例では、所定の滞留時間中に分光分析器の特定の動作パラメータのセットに対して1×M次元データベクトルが取得される特定の例では、1×M次元データベクトルを「スナップショット」エネルギースペクトルとしてプロットすることができる。
【0082】
好ましくは、コントローラは、入力された荷電粒子のエネルギーの範囲にまたがるように、時間間隔で動作パラメータを調整するように構成される。通常の分光測定と同様に、分光分析器の静電場、通過エネルギー、およびその他の装置変数を調整して、サンプル内の荷電粒子エネルギーの全範囲を分光分析器を通して検出器に渡すことができる。
【0083】
好ましくは、コントローラは、各時間間隔について、時間間隔中の分析器の動作パラメータについて、検出器の結像面の1次元にわたる荷電粒子の空間分散を表す1×M次元データベクトルを決定することによって、複数の1×M次元データベクトルを決定することと、粒子エネルギーの増分について、複数の1×M次元データベクトルのデータ要素をビン化することであって、ビン化が、粒子エネルギーの増分に関連付けられている複数の1×M次元データベクトルのすべての要素を合計することを含む、ビン化することと、を行うようにさらに構成される。言い換えれば、分光分析器の操作パラメータの各セットが滞留時間の間保持され、動作パラメータの各セットに対して、滞留時間中の画素の各列の荷電粒子計数を表す1×M次元データベクトルが生成される。生成された1×M次元データベクトル内の粒子エネルギーの所与の増分を表すデータ要素は、完全なエネルギースペクトルを生成するためにビン化または合計することができる。
【0084】
好ましくは、増幅器、比較器、および粒子計数器は、各検出器画素に対してデジタル信号を生成するように構成されており、デジタル信号は、検出器画素において受け取られた荷電粒子の数を表す。
【0085】
好ましくは、装置は、プリント回路基板(PCB)をさらに備え、検出器は、PCBに取り付けられ、増幅器、比較器、および粒子計数器は、PCB上に配置される。
【0086】
任意選択で、装置は、PCBからプロセッサにデジタル信号を運ぶための双方向光ファイバリンクをさらに備える。
【0087】
好ましくは、PCBは、分析チャンバに真空シールを提供するように構成されており、分析チャンバは、少なくとも分光分析器および検出器を収容するためのものであり、分析チャンバは、真空を格納するようにシール可能であり、PCB基板は、分析チャンバの内側から分析チャンバの外側にデジタル信号を渡すための、デジタル信号の真空フィードスルーを提供するようにさらに構成される。
【0088】
第3の態様では、X線光電子分光器であって、上述した装置と静電半球型分析器と、を備え、荷電粒子光学系の配置が、静電半球型分析器から受け取られた光電子を、検出器を形成する検出画素のアレイに向かって加速するように構成されている、X線光電子分光器が記載される。
【0089】
さらなる例示的な例は、以下の番号を振った節によって説明される。
1.分光法における荷電粒子の検出のための方法であって、方法が、
分光分析器から受け取った荷電粒子を検出器に向かって加速することと、
加速された荷電粒子を検出画素のアレイにおいて受け取り、検出画素のアレイが検出器を形成する、受け取ることと、を含む。
2.各検出画素が、半導体ダイオードを備える能動的検出画素である、条項1に記載の方法。
3.各検出画素が、増幅器、比較器、および計数器に関連付けられている、条項2に記載の方法。
4.荷電粒子が、少なくとも検出エネルギー閾値まで加速され、検出エネルギー閾値が、検出器の検出画素に入射する荷電粒子の検出のための荷電粒子の最小エネルギーである、先行条項のいずれか1つに記載の方法。
5.分光分析器から受け取られた荷電粒子が荷電粒子ビームを含み、検出器で加速粒子を受け取る前に、方法は、
荷電粒子ビームを集束して、検出器の結像面におけるビームの倍率を変化させることをさらに含む、先行条項のいずれか1つに記載の方法。
6.分光分析器がエネルギー分散分光分析器であり、荷電粒子ビームを集束して荷電粒子ビームの倍率を変化させることが、エネルギー分散方向における荷電粒子ビームの幅が検出器における検出画素のアレイの対応する寸法と実質的に一致するように、焦点面における荷電粒子ビームの断面積を変化させることを含む、条項5に記載の方法。
7.分光分析器と検出器との間に配置された荷電粒子光学系が、荷電粒子を加速する、先行条項のいずれか1つに記載の方法。
8.荷電粒子光学系が、荷電粒子を集束するようにさらに構成されている、条項5または6に従属する場合の条項7に記載の方法。
9.荷電粒子光学系が少なくとも2つのレンズ要素を備え、少なくとも2つのレンズ要素が、集束ステップおよび加速ステップを実行するように配置されている、条項8に記載の方法。
10.分光分析器への出口に抽出場を印加することをさらに含む、先行条項のいずれか1つに記載の方法。
11.荷電粒子光学系が、第1のレンズ要素の上流に、抽出場を印加するように配置された第3のレンズ要素をさらに備える、条項9に従属する場合の条項10に記載の方法。
12.第1および第2のレンズ要素が、第3のレンズ要素とは反対の極性の印加電圧を有する、条項11に記載の方法。
13.各荷電粒子が、荷電粒子が発生したサンプル中の位置を表す検出画素において、検出器に入射するような結像モードで分光分析器が動作する、条項1~5または条項7~12のいずれか1つに記載の方法。
14.分光分析器が、各荷電粒子が、荷電粒子のエネルギーを表す検出画素の列において検出器に入射するように、荷電粒子を分散させるエネルギー分散モードで動作させられる、条項1~12のいずれか1つに記載の方法。
15.検出器が、N行およびM列の検出画素のアレイを備え、方法が、
N×Mの検出画素の各々において受け取られた荷電粒子の数を決定することをさらに含む、先行条項のいずれか1つに記載の方法。
16.方法が、
N個の検出画素の各列について、検出画素の列内の各検出画素において受け取られたことを決定された荷電粒子の数を合計して、N個の検出画素の各列の合計を含む1×M次元データベクトルを決定することであって、1×M次元データベクトルが、検出器の結像面の1次元にわたる荷電粒子の空間分散を表している、決定することをさらに含む、条項14に従属する場合の条項15に記載の方法。
17.分光分析器の動作パラメータを調整して、ある範囲のエネルギーにわたって分光分析器に入力された荷電粒子を分析することであって、動作パラメータが、入力された荷電粒子のエネルギーの範囲にまたがるように時間間隔で調整される、分析することと、
各時間間隔について、時間間隔中に1×M次元データベクトルを決定することによって複数の1×M次元データベクトルを決定することと、
複数の1×M次元データベクトルのデータ要素をビン化することであって、粒子エネルギーの同じ増分に関連付けられている複数の1×M次元データベクトルのすべての要素を合計することを含む、ビン化することと、をさらに含む、条項16に記載の方法。
18.分光法における荷電粒子の検出のための装置であって、
荷電粒子光学系と、
検出器を形成する検出画素のアレイと、を備え、
荷電粒子光学系の配置が、分光分析器から受け取られた、検出画素のアレイにおいて受け取られる荷電粒子を検出器に向かって加速するように構成されている、装置。
19.各検出画素が、半導体ダイオードを備える能動的検出画素である、条項18に記載の装置。
20.各検出画素が、増幅器、比較器、および計数器に接続されている、条項19に記載の装置。
21.荷電粒子光学系が、少なくとも検出エネルギー閾値まで加速するように構成されており、検出エネルギー閾値が、検出器の検出画素に入射する荷電粒子の検出のための荷電粒子の最小エネルギーである、条項18~20のいずれか1つに記載の装置。
22.分光分析器から受け取られた荷電粒子が荷電粒子ビームを含み、荷電粒子光学系が、荷電粒子ビームを集束して、検出器の結像面におけるビームの倍率を変化させるようにさらに構成されている、条項18~21のいずれか1つに記載の装置。
23.分光分析器がエネルギー分散型分光分析器であり、荷電粒子光学系が、エネルギー分散方向における荷電粒子ビームの幅が検出器における検出画素のアレイの対応する寸法と実質的に一致するように、荷電粒子ビームの倍率を変化させるように構成されている、条項22に記載の装置。
24.荷電粒子光学系が、少なくとも2つのレンズ要素を備え、少なくとも2つのレンズ要素が、荷電粒子を集束および加速するように配置されている、条項22または23に記載の装置。
25.荷電粒子光学系が、分光分析器への出口で抽出場を印加するように構成された第3のレンズ要素をさらに備える、条項24に記載の装置。
26.第1および第2のレンズ要素が、第3のレンズ要素における印加電圧とは反対の極性の印加電圧を有する、条項25に記載の装置。
27.分光分析器をさらに備え、荷電粒子が分光分析器から荷電粒子光学系に向かって出る、条項18~26のいずれか1つに記載の装置。
28.各荷電粒子が、荷電粒子が発生したサンプル中の位置を表す画素において、検出器に入射するような結像モードで分光分析器が動作する、条項18~27のいずれか一項に記載の装置。
29.分光分析器が、各荷電粒子が、荷電粒子のエネルギーを表す画素の列において検出器に入射するように、荷電粒子を分散させるエネルギー分散モードで動作させられる、条項18~27のいずれか1つに記載の装置。
30.検出器が、N行およびM列の検出画素のアレイを備え、装置が、
N×Mの検出画素の各々において受け取られた荷電粒子の数を決定するように構成されたコントローラをさらに備える、条項18~29のいずれか1つに記載の装置。
31.コントローラが、
N個の検出画素の各列について、検出画素の列内の各検出画素において受け取られたことを決定された荷電粒子の数を合計して、N個の検出画素の各列の合計を含む1×M次元データベクトルを決定するようにさらに構成されており、1×M次元データベクトルが、検出器の結像面の1次元にわたる荷電粒子の空間分散を表している、条項29に依存する場合の条項30に記載の装置。
32.コントローラが、
分光分析器の動作パラメータを調整して、ある範囲のエネルギーで分光分析器に入力された荷電粒子を分析するようにさらに構成されており、動作パラメータが、入力された荷電粒子のエネルギーの範囲にまたがるように時間間隔で調整される、条項30または31に記載の装置。
33.コントローラが、
各時間間隔について、時間間隔中の分析器の動作パラメータについて、検出器の結像面の1次元にわたる荷電粒子の空間分散を表す1×M次元データベクトルを決定することによって、複数の1×M次元データベクトルを決定することと、
複数の1×M次元データベクトルのデータ要素をビン化することであって、粒子エネルギーの同じ増分に関連付けられている複数の1×M次元データベクトルのすべての要素を合計することを含む、ビン化することと、を行うようにさらに構成されている、条項31に依存する場合の条項32に記載の装置。
34.X線光電子分光器であって、
条項18~33のいずれか1つに記載の装置と、
静電半球型分析器と、を備え、
荷電粒子光学系の配置が、静電半球型分析器から受け取られた光電子を、検出器を形成する検出画素のアレイに向かって加速するように構成されている、X線光電子分光器。
【0090】
ここで、本発明は、単に例として、添付の図面を参照して、説明される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
図1】分光法における荷電粒子の検出のための装置の概略図である。
図2】検出器画素のアレイを有する検出器の概略図である。
図3】検出器の各画素に関連付けられている画素電子機器を示す概略図である。
図4】X線光電子分光器の概略図である。
図5A】分光法における荷電粒子の検出のための装置の断面図である。
図5B図5Aに示される分光法における荷電粒子の検出のための装置の異なる断面図である。
図6図5Aおよび5Bの装置の平面図である。
図7】双方向光ファイバUSBインターフェースの概略図である。
図8】記載された装置を使用した例示的な「スナップショット」スペクトルを示すプロットである。
図9】記載された装置を使用した例示的な「走査された」スペクトルを示すプロットである。
図10】記載された装置を使用した例示的な「調査」スペクトルを示すプロットである。
図11】検出器における検出器画素のアレイの概略画像である。
図12】反射電子エネルギー損失分光スペクトルの例を示すプロットである。
【0092】
図中では、同様のパーツは、同様の参照番号によって示される。図面は、正確な比率で描かれていない。
【発明を実施するための形態】
【0093】
図1を参照すると、分光法における荷電粒子の検出のための装置が示されている。装置は、X線光電子分光法、オージェ電子分光法、紫外光電子分光法、反射電子エネルギー損失分光法、飛行時間分光法、およびイオン散乱分光法を含む、多くの異なるタイプの分光法または基本粒子分光技術に適用することができる。装置および関連する検出方法は、以下に説明するように、分光法モード(異なるエネルギー、質量、もしくは電荷特性を有する粒子の時間的または空間的分離をもたらす分析に特に有用である)、または結像モードで使用することができる。
【0094】
荷電粒子(ここでは空間的に分散された荷電粒子ビーム12によって表される)は、分光分析器14から出て、検出器16において直接受け取られる。検出器16は、N×Mの検出画素のアレイを備える。特定の例では、検出器は、256×256の検出画素のアレイを含み、したがって、全体で64,000を超える画素を含む。特定の例では、検出器は、MEDIPIX(商標)またはTIMEPIX(商標)検出器アレイであるが、能動的検出画素のアレイを備える任意の検出器(MEDIPIX(商標)/TIMEPIX(商標)ファミリーの任意の検出器を含む)を使用できる。検出器のさらなる説明については、図2を参照して以下に見出すことができる。
【0095】
分光分析器14の出口と検出器16との間に、レンズ要素の構成が配置され、これらは一緒に荷電粒子光学系を提供し、この例では、静電レンズ配置18である。静電レンズ配置18は、荷電粒子ビーム12の荷電粒子を加速するように構成される。したがって、検出器16の検出画素に入射する荷電粒子の速度は、分光分析器を出る荷電粒子の速度よりも大きい。これは、次いで静電レンズ配置18による加速の結果として、荷電粒子の運動エネルギーが(すべての粒子に対して均一に)増加することを意味する。したがって、荷電粒子は、検出画素における検出に最適なエネルギーに近いエネルギーで、検出器の検出画素に入射する。特定のエネルギーは、検出画素の設計によって決定される。
【0096】
それにもかかわらず、分析器14と検出器16との間で荷電粒子の増幅(または増倍)はない。本発明者らは、検出画素に入射する荷電粒子が十分なエネルギーを有する場合、そのような増幅は必要ないことを認識している。例えば、図1の装置では、検出画素のアレイに到達する前に、分光分析器から受け取った荷電粒子が二次電子などの二次粒子に変換されることはない。したがって、例えば、分析器14と検出器16との間に電子増倍管(例えば、マイクロチャネルプレート(MCP))は存在しない。このような電子増倍管は使用寿命が限られていることが多いため、これは有利である。さらに、MCP(または同様のもの)を使用するには、追加の電圧を印加する必要があり、検出器回路の複雑さが増大する。
【0097】
使用中、静電レンズ配置18は、検出器16の検出画素に入射したときに、荷電粒子を少なくとも最小または閾値エネルギーまで加速するように構成される。最小または閾値エネルギーは、検出画素における信頼性の高い検出のための最小エネルギーである。MEDIPIX(商標)またはTIMEPIX(商標)検出器アレイの特定の例では、荷電粒子の検出のために超えなければならない閾値検出エネルギーは5keVであり、最適な検出効率のためには10keVまたは15keVでさえあることがより好ましい。いくつかの現在の例では、閾値検出エネルギーは5keV~15keVであるが、画素化された検出器の将来の設計では、閾値エネルギーははるかに低くなる(例えば、2keV)可能性がある。
【0098】
図1は、静電レンズ配置18によって荷電粒子に印加される数学的にモデル化された加速および集束静電界を示している(図1に場線として示されている)。図1の特定の静電レンズ配置は、3つの静電レンズ要素20、22、24を使用するが、レンズの数が異なる他の配置を使用することもできる。
【0099】
上述したように、静電レンズ配置は、検出器の能動的画素において直接荷電粒子を検出するために必要な少なくとも閾値検出エネルギーまで荷電粒子を加速するように構成される。さらに、図1の静電レンズ要素18によって生成された場は、荷電粒子ビームの集束および増大を提供するために使用される。より具体的には、集束場は、検出器16の受け取り検出面(検出器の結像面として知られている)に入射する点における荷電粒子ビーム12の幅を変化させるために使用される。理想的には、荷電粒子ビーム12の幅Wは、荷電粒子を受け取ることができる検出器における検出画素の数を最適化(および/または最大化)するために、検出器16の受け取り検出表面の少なくとも1つの寸法に一致するように選択される。したがって、場合によっては、集束場は拡大場(荷電粒子ビームの幅Wを増加させるため)となるが、縮小場(荷電粒子ビームの幅Wを減少させるため)となることもある。分析器14が結像モードで使用される場合、倍率は、荷電粒子ビーム全体が検出器16の結像面内に確実に収まるように変更されてもよい。分析器14が分光法モード(荷電粒子がそれらのエネルギーに従って主に1つの寸法に分散される)で使用される場合、倍率は、エネルギー分散方向における荷電粒子ビームの幅Wが、対応する寸法の検出器16の結像面に一致することを確実にするように変更されるであろう。
【0100】
したがって、静電レンズ配置18の特定の構成は、記載された加速および集束機能を実行するために選択される。図1の特定の例では、円筒形の第1のレンズ要素22は、分析器14を出る荷電粒子ビーム12が円筒形の第1のレンズ要素22の空洞を通過するように、分光分析器14への出口と整列するように配置される。第2のレンズ要素20は、第1のレンズ要素22に隣接して配置され、かつ第1のレンズ要素22から離間して配置される。第2のレンズ要素20は、円筒形部分20aおよび円錐形部分20bを有し、円筒形20aおよび円錐形20b部分を通るボアは、荷電粒子ビーム12が通過する開放空洞を形成する。第2のレンズ要素20は、円筒形部分20aが第1のレンズ要素22からの荷電粒子ビーム12の下流にあり、第2のレンズ要素20の円錐部分20bが円筒形の第1のレンズ要素22の空洞内に突出するように配置される。
【0101】
一緒に、第1のレンズ要素22および第2のレンズ要素20は、上述した加速および集束機能の大部分を実行する。第1のレンズ要素22は、主に、荷電粒子ビーム12を集束させ、検出器16の焦点面で荷電粒子ビーム12の幅Wを変化させるように機能する。第2のレンズ要素20は、第1のレンズ要素22およびシステムの他の部分(第3のレンズ要素24および分析器14を含む)と比較して、第2のレンズ要素20に大きな電位を印加することによって、主に荷電粒子を検出器16に向かって加速するように作用する。通常、検出器チップ16は、第2のレンズ要素20と同じ電位に保持される。一例では、第2のレンズ要素20は、荷電粒子に必要な加速度を提供するために、第1のレンズ要素22における印加電位より少なくとも1桁、好ましくは2桁大きい印加電位を有する。
【0102】
図1はまた、主に抽出場を提供して、分光分析器14の出口から荷電粒子を引き出すための第3のレンズ要素24も示している。第3のレンズ要素24は円筒形であり、荷電粒子が分析器14を出た後に第3のレンズ要素24のボアを通過するように、分光分析器14への出口と整列して配置される。第3のレンズ要素24はまた、第1のレンズ要素22の少なくとも一部が第3のレンズ要素24の空洞またはボアを通って延びるように、第1のレンズ要素22の周りに円周方向に配置されている(ただし、それから離間して配置されている)。円筒形の第1のレンズ要素22は、円筒形の第3のレンズ要素24の空洞の長さの半分未満を通って延びている。第3のレンズ要素24に印加される電圧は、分光分析器14の通過エネルギー(通常は5~150eVの範囲)に関してスケーリングされる。通常、第3のレンズ要素24は、10~20V/mmの間の抽出場を提供する。
【0103】
加速、集束、および抽出機能は、レンズ要素20、22、24の特定の構成に依存し、それらの形状、間隔、および印加される電圧を含む。レンズ要素20、22、24に印加される電圧は、運動エネルギーEkおよび荷電粒子の位置エネルギーでスケーリングされる(言い換えれば、荷電粒子に適用されるリターデーション、したがって分光分析器の通過エネルギー、Epassでスケーリングされる)。図1の特定の例では、第1のレンズ要素に印加される電圧E1、第2のレンズ要素に印加される電圧E2、および第3のレンズ要素に印加される電圧E3は、以下のとおりである。
1=1400+Epass-Ek
2=15000+Epass-Ek
3=100-0.5Epass-Ek
【0104】
特定の例では、通過エネルギーEpass=100eVおよび光電子運動エネルギーEk=1000eVの場合、3つのレンズ要素に印加されるおおよその電位は、E1=500V、E2=14.1kV、およびE3=-950Vである(それぞれ、集束、加速、および抽出のため)。
【0105】
図1の例に関連して円筒形レンズ要素が説明されているが、記載された機能(例えば、ロッドのセット、または他のレンズ構成)を実行するのに十分な任意の形状のレンズ要素を使用できることに留意されたい。また、第3のレンズ要素24は有利であり得るが、記載されたシステムの集束および加速機能を実行する必要はないことにも留意されたい。
【0106】
図2は、分光法における荷電粒子の検出のための上述した装置内で使用するための検出器を示している。検出器には、検出画素の二次元アレイが組み込まれている(言い換えれば、検出器は画素化されている)。好適な検出器アレイの例は、米国特許公開第2012/012613号に記載されているように、MEDIPI(商標)またはMEDIPI(商標)検出器である。このような検出器は、例えば、X線、電子、ガンマ線、アルファ粒子、荷電粒子、イオンまたは中性子などの放射線の検出または感知に使用することができる。
【0107】
検出器は、複数の半導体ダイオード(図3を参照して、以下でさらに説明する)を提供するために、ドープされた半導体材料を組み込んだ変換層26を備える。変換層26は、入射放射線または荷電粒子を受け取り、当該放射線または粒子を電気信号に変換するように機能する。半導体ダイオードの各々は、検出器の画素を表する。
【0108】
変換層26は、電子回路層30に接続されている。電気構成要素は、各半導体ダイオードの真下の回路層に配置される。各検出画素は、各半導体ダイオードによって生成された電気信号の個々の画素の読み出しに使用される、専用の画素電子機器(図3を参照して以下に詳述される)に接続されている。そのため、各画素は「能動的画素」とみなされ、例えば、電荷結合デバイス(CCD)の画素とは異なる。専用の画素電子機器のセットは、変換層26の下の平面アレイに、例えば、図2に示すように、XおよびY方向に沿って規則的に配置されたN×Mの画素回路のアレイに配置される。変換層および電子回路層は、各画素にはんだバンプ32を使用したフリップチップボンディングによって接続されている。各画素(特に、ダイオードおよび能動的増幅器の両方を含む各画素)に関連付けられた専用の画素電子機器を使用すると、単一の画素の読み出しが可能になり、検出器が「能動的画素アレイ」を有するものとして定義される。
【0109】
図3は、各検出画素を備え、それに接続された構成要素の概略図である。各検出画素34は、半導体基板38上のn型またはp型半導体材料拡散層36から形成された変換層26内のpn接合と、基板内の注入領域40(注入領域40は拡散層36と比較して反対型(pまたはn)を有する半導体材料で形成されている)と、を備える。図3の場合、拡散層36は、n型半導体材料を備え、注入領域40は、p型である。拡散層および基材層は一般に平面であり、注入領域が基材内にアレイとして配置されていることが理解されるであろう。注入領域40の各々は、変換層内の検出画素の領域を表す。図2は、正方形の画素のアレイを示しているが、画素は、任意の形状またはアレイの配置を有し得ることが理解されるであろう。
【0110】
使用中、拡散層36の表面に直接入射した荷電粒子(光電子など)は、拡散層36を通って空乏領域38に拡散し、その結果、入射粒子エネルギーに比例する数の電子正孔対が生成される。変換層26にわたって印加されたバイアスを印加すると、電子正孔対が隣接する注入領域40に移動する。したがって、電荷の変化は、各注入領域40に結合された電気回路30で明らかである。
【0111】
各注入領域40は、電子回路層30内の専用の画素電子機器48に(フリップチップ結合を使用してはんだバンプ32を介して)個別に結合される。各注入領域40は、関連するダイオードで入ってくる荷電粒子によって堆積された総電荷に比例する高さの電圧パルスを生成するために、増幅器42に電気的に接続されている。画素電子機器は、例えば、増幅器電荷感受性前置増幅器を備え得る。
【0112】
各増幅器42は、各検出画素に関連付けられた比較器44に直列に接続されている。比較器44は、各増幅器42の電圧出力が、チップ全体に対して任意に設定することができる特定の閾値を上回っているかまたは下回っているかを検出する。そうすることで、比較器44は、増幅器42から出力されるアナログ電圧をデジタル化するように機能することができる。したがって、比較器44は、アナログ-デジタル変換器として機能する。結果として、比較器44への出力は、関連する検出画素34において検出された電荷を表すデジタル信号を提供する。計数器46は、各個々の画素ごとに受け取られた荷電粒子の数の計数を提供するために、各比較器44の出力に接続することができる。
【0113】
図4は、図1~3の装置を組み込んだX線光電子分光法(XPS)のための装置の概略表現を示している。X線52は、X線源50において生成され、好適な光学系54を介してX線モノクロメータ56に渡される。X線モノクロメータ56は、定義された放射線の波長(例えば、アルミニウムKα線)を選択するために使用される。選択されたX線放射は、サンプル58に衝突するように方向付けられ、光電効果の結果として光電子を放出させる。レンズシステム60(静電レンズの配置を含む)は、光電子を静電半球型分析器114のバンドパスエネルギーに遅らせ、さらに、光電子を、狭い集束ビームとして静電半球型分析器114に入力するように方向付ける。静電半球分析器114において半径R1およびR2を有する同心半球型電極に印加される電圧V1、V2は、1/R2依存性(式中、Rは分析器114の中心からの半径方向の距離)を有するそれらの半径の間に静電場を生成する。結果として、分析器114を通過する光電子は、それらの運動エネルギーに応じて放射状に分散される。
【0114】
静電半球型分析器114の出口において、光電子はそれらのエネルギーに従って空間的に分離される。静電半球型分析器114を通して特定の光電子が移動する経路の半径の知識は、分析器によって印加される電場とともに、分析器の出口における特定の光電子の運動エネルギーの決定を可能にする。光電子の運動エネルギーは、Eb=hν-Ek-φの関係に従って、サンプルにおける光電子の結合エネルギーEbに直接関係し、式中、hνはサンプルに入射する放射線のエネルギー、Ekは放出された光電子の運動エネルギー、φは仕事関数(分光器およびサンプル材料に依存する)である。
【0115】
図4では、静電半球型分析器114を出る光電子は、検出器16において受け取られる。検出器16は、図1~3に関連して上述されており、検出画素のアレイを備える。静電半球型分析器114の出口と検出器16との間で、光電子は、図1を参照して上述したように、静電レンズ18の配置を通過する。静電レンズ18は、荷電粒子を加速および集束するように配置される。具体的には、荷電粒子は、荷電粒子の相対位置を維持しながら、粒子のエネルギーを増加させて検出器16の検出エネルギー閾値を超えるように加速される。一般に、X線光電子分光法(XPS)で生成された光電子は、最大1486eVの運動エネルギーでサンプルを離れる。ただし、分析器に入る前に、光電子は分析器の「通過エネルギー」まで遅延される。その後、通過エネルギーの光電子は分析器の周りを通過し、このエネルギーで出る。XPSでは、静電半球型分析器に使用される一般的な「通過エネルギー」は3~200eVである。したがって、静電レンズ配置18は、このエネルギー範囲内で分光分析器を出る光電子を少なくとも検出器の検出エネルギー閾値まで加速するように構成される。このように、サンプルの表面から放出された荷電粒子のエネルギー(図4の点Aにおける)は、レンズシステム60および減速メッシュを通過した後の荷電粒子のエネルギー(図4の点Bにおける)よりも高くなり、その時、分光分析器の通過エネルギーになる。ただし、加速後(図4の点Cにおける)、荷電粒子は、図4の点AまたはBのいずれかにおけるよりも著しく高いエネルギーを有する(例えば、通過エネルギーと比較して約2桁の大きさだけ増加したエネルギーを有する)。
【0116】
静電レンズ18の配置は、図1を参照して上述したように、光電子のビームの幅をさらに変化させる。特に、光電子ビームの幅は、光電子が入射する検出器16の表面の幅に一致するように拡大または縮小される。このようにビームの幅を変化させることは、光電子ビームの出力場内の検出器画素の数を最大化し、分析器から出る光電子の完全な空間的広がりが検出面に入射することを提供することができる。
【0117】
一般に、エネルギー分散型分光法は、ある範囲のエネルギーにわたるサンプルのスペクトルを取得することが求められる。スペクトルが広範囲のエネルギーにわたって必要とされる場合、静電半球型分析器114に印加される電位は、それに応じて調整(または走査)される。本発明の配置において、静電レンズ配置18によって印加される加速度もまた、検出器16において受け取られる前に、分析器114を出る荷電粒子に適切な加速を提供するために、調整または走査され得る。
【0118】
特に、光電子が分光分析器14においてそれらのエネルギーに従って空間的に分散される通常の分光モードでは、静電レンズ配置18は、光電子を少なくとも検出器16の検出エネルギー閾値(ここで、検出エネルギー閾値は、検出器16の検出画素において検出するための入射光電子の最小エネルギーである)まで加速するように構成されなければならない。このモードでは、荷電粒子のエネルギーの分析は、それらが検出器16に入射する相対位置によって可能になるので(静電半球型分析器114によって提供されるエネルギーから空間への分散による)、光電子は、それらが検出器16に入射する点で同じエネルギーまで加速され得る。
【0119】
代替例として、装置は結像モードで使用することができる。この場合、光電子は分光分析器を通過し、検出エネルギーの閾値よりも大きいエネルギーまで均一に加速される。次に、粒子は検出画素のアレイにおいて受け取られ、そこからアレイ全体の各画素の荷電粒子計数が読み出され、二次元画像として提示される。
【0120】
図5Aおよび5Bは、例示的なX線光電子分光器(例えば、図4に示される)で使用される特定の静電レンズ18および検出器16の配置の断面図を示している。図6は、図5Aおよび5Bに示される装置のいくつかの要素の平面図を示している。
【0121】
図5A、5B、および図6では、検出器は、図3を参照して上述した画素電子機器48(増幅器、比較器、および計数器)を備えるプリント回路基板(PCB)に取り付けられている。3つの静電レンズ要素20、22、24(図1に示されるような)は、検出器16に対して配置される。第2の静電レンズ要素20は、検出器の周囲に配置され、第1の静電レンズ要素22および第3の静電レンズ要素24は、第2の静電レンズ要素20の周りに位置付けられ、第2の静電レンズ要素20から離間して配置された同心電極を備える。第3、第1、および第2の静電レンズ要素は、それぞれ、荷電粒子が検出器に向かって移動する方向に直列に配置される。
【0122】
第3の静電レンズ要素24は、主に、分析器114の出口から光電子を抽出してコリメートする役割を果たす。第1の静電レンズ要素22は、主に、荷電粒子ビームを集束する役割を果たし、ビーム幅を調整するために倍率を設定し、好ましくは検出器の検出領域を埋める。第2の静電レンズ要素20は、主に、光電子が検出器16に衝突する前に、光電子に必要な加速を提供する。
【0123】
第1静電レンズ要素22および第3の静電レンズ要素および24は、各々、円筒形電極の形態である。第3の静電レンズ要素24の円筒形電極は、第1の静電レンズ要素22の円筒形電極よりも大きな直径を有し、第1のレンズ要素22と少なくとも部分的に同心である。第2の静電レンズ要素20は、円筒部分および円錐部分を有する電極として構成されており、少なくとも円錐部分は、拳のレンズ要素22と同心である。第1の静電レンズ要素の円錐形の端の形状は、球面収差を最小化するように機能する。使用中、光電子は、第3のレンズ要素24、第1のレンズ要素22、および第2のレンズ要素20のボアをそれぞれ通過する。検出器16は、第2の静電レンズ要素20の円筒形端部の下流に取り付けられている。
【0124】
検出器16が取り付けられている空洞64は、分光器の分析チャンバの一部を形成している。空洞の長さは、レンズの焦点長を分光分析器の出力面または結像面に一致させるように調整できる。分析チャンバはまた、例えば、分光分析器およびサンプルを収容することもできる(図5Aおよび5Bには示されていない)。分析器およびサンプルは、XPSに対して図4に示されるように配置することができるが、当技術分野で知られている他の形態の分光法については異なって配置することができる。スペクトルの測定中、分析チャンバは真空下に維持される。
【0125】
図5Aおよび5Bの特定の例では、PCBは分析チャンバと外気の間に真空シールを形成する。PCBにおいて画素電子機器48(上述した)によって生成された各検出画素のデジタル信号は、真空チャンバからコンピュータプロセッサ(図示せず)に渡すことができる。このようにして、PCBは、デジタル信号のための真空フィードスルー66を提供する。
【0126】
PCBからプロセッサにデジタル信号を運ぶためのインターフェース68も図5Bに示されている。ここでは、図7に示すように、インターフェースは双方向光ファイバユニバーサルシリアルバス(USB)インターフェースとして実装されている。このインターフェースは、光ファイバ接続82を介してコンピュータプロセッサの光ファイバUSBインターフェース84に接続された、光ファイバUSBインターフェース80をPCBボード(したがって画素電子機器)に提供する。光ファイバ接続82は、PCBとプロセッサとの間に15kVの絶縁を提供し、これは、検出器16および静電レンズアセンブリ18の少なくとも要素が、周囲の分光器装置の電位と比較して高い「浮動」電圧で動作する場合に特に必要である。例えば、検出器およびそれに関連する電子機器は、最大15kV(例えば、1~15kVまたは5~15kV)の高電圧でフローティングさせることができる。検出器および電子機器を、高電圧電源を使用してフローティングさせることができる。
【0127】
デジタル信号の生成は、アナログ信号を生成する従来の検出器(マイクロチャネルプレート検出器および電子増倍管など)と比較して大きな利点を提供することに注意されたい。特に高速で、真空中のデバイスから真空フィードスルーを通してアナログ信号を通過させることは非常に困難である。反射と損失を回避するには、各信号を同軸ケーブルによって運び、同軸真空フィードスルーを通過させる必要がある。これは高価で、大きなスペースを占有する。比較すると、デジタル信号は、上述したPCBおよびインターフェースを使用して真空から通過させることができる。これにより、高速で低ノイズのインターフェースが提供されるだけでなく、小さなフィードスルー領域のみを通して多数の異なる信号(検出器アレイ内の複数の能動的画素によって取得される信号など)を送信することもできる。
【0128】
当業者によって理解されるように、図5Aおよび5Bの装置にさらなる変更を加えることができ、例えば、検出器16に関連するヒートシンク70、およびに静電レンズ配置18に関して配置された高電圧絶縁体72を含めることができる。フローティングUSB電源86も接続することができる。
【0129】
XPSでは、X線を照射したときにサンプルから放出される特定のエネルギーの光電子の数を個々に計数する必要がある。対象となるエネルギーの光電子は、半球型分析器によって選択され、分析器を出た後、検出器とパルス計数電子機器によって計数される。分光モードでは、分析器はエネルギー分散型であり、その結果、分析器の出口における光電子の位置を使用して、電子のエネルギーを決定することができる。分析器を離れる電子のエネルギーは、一般にそれらの位置に線形に依存し、したがって、エネルギースペクトルは、検出器の画素のアレイの幅全体に荷電粒子計数をプロットすることによって生成できる。
【0130】
特定の例では、図1~3に関連して上述した検出器アセンブリは、Thermo Scientific(商標)Nexsa(商標)XPS分光器に取り付けられている。具体的には、使用された検出器は、256×256の検出画素のアレイを備えた。光電子ビームは、検出器の表面の幅に一致するように静電レンズ配置によって集束された。したがって、光電子ビームは、検出器の256列の画素すべてに広がった。
【0131】
図8は、XPS分光器の分析器をAg3dダブレットピークの光電子エネルギーに設定して(1486.6eVのX線放射を使用)、この実験装置を使用して取得された「スナップショット」スペクトルを示している。分析器のすべての電圧および静電レンズの配置は一定のままであった。静電レンズ配置18は、光電子を少なくとも10keVのエネルギーを有するように加速するように構成された。
【0132】
スナップショットスペクトルは、検出器の256列の画素にわたるビームの迅速な同時検出の結果である。特に、スナップショットスペクトル(結合エネルギーおよび1秒当たりの光電子の計数のプロット)は、検出器における256列の画素アレイの各々の検出画素において検出された光電子の総数を表す。X軸は、256列の検出画素にわたる光電子の空間分散およびエネルギー分散に関連付けられている。
【0133】
したがって、1×M次元データベクトルを生成することができ、データベクトルの各要素は、N×Mの検出器画素のアレイの列内のN個の画素の各々において検出された光電子の数の合計を含む(図11に示されるように)。図8の特定のケースでは、従来技術の検出器の空間分解能を再現するために、M列のアレイを代表的な128チャネルにさらにビン化した後にプロットが生成された。それにもかかわらず、利用可能なチャネル数の増加によって提供される潜在的な改善は、当業者には明らかである(現在、分解能が分析器の外形によって決定されているとしても)。
【0134】
図9は、Thermo Scientific(商標)Nexsa(商標)XPS分光器に取り付けられた上述した検出器アセンブリを使用して取得された「走査された」スペクトルを示している。走査されたスペクトルを生成するために、静電半球型分析器の操作パラメータのセットおよび静電レンズ配置の電位を調整(または段階的に増加)して、対象の分光位置(または分光ピーク)と一致することが知られている特定の範囲の電子エネルギーを走査した。次に、動作パラメータの各セットの滞留時間中にアレイの各検出画素において受け取られた荷電粒子の計数が記録され、データ処理を受けてプロットが生成される。
【0135】
分析器の動作パラメータが走査されている間、静電レンズ配置の各要素に印加される電圧も同時に調整され、分析器を出る光電子(または荷電粒子)に適切な加速を提供することに留意する必要がある。特に、静電レンズ配置は、分析器から受け取られた光電子(または荷電粒子)が少なくとも検出エネルギー閾値まで加速されることを確実にするように構成される。分析器の動作パラメータの調整と静電レンズ配置の調整との関係は事前に定義されており、一定であり得る。
【0136】
図9の走査されたスペクトルを生成するために、操作パラメータの各セットについて、それぞれの滞留時間中の検出器の画素のM列における荷電粒子計数を表す1×Mのデータベクトルが生成される。このように、複数の1×Mのデータベクトルは、分析器の操作パラメータの各セットに対して計数が繰り返されるときに生成される。各データベクトルの各要素は、分析器による粒子のエネルギーと位置分散との間の既知の関係の結果として、粒子のエネルギーの増分に関連付けることができる。その結果、各データベクトルの各要素は、同じエネルギー増分を表す他のデータ要素とビン化され得る。このようにして、図9の走査されたスペクトルを生成し、入力粒子エネルギーの範囲にわたってプロットすることができる。したがって、走査されたスペクトルは、上述したように、多くのエネルギーシフトされたスナップショットスペクトルの合計とみなすことができる(特に、比較的低い通過エネルギーで測定される)。
【0137】
図9の走査されたスペクトルは、図8のスナップショットスペクトルと比較して、カスタムエネルギー範囲を示している。例えば、スナップショットスペクトルは通過エネルギーの約13.6%(例えば、100eV通過エネルギーの場合は約13eV)であり得る。比較すると、走査されたスペクトルのエネルギー範囲はカスタマイズされており、例えば、一重線を見ると、それはわずか3~4eVであり得る。走査したスペクトルの計数率がスナップショットスペクトルに比べて明らかに高い(100倍にも増加する)のは、各々、分析器の操作パラメータの異なるセットにおける多数の個々の走査の追加の結果である。その結果、より高い分解能が達成され、スナップショットスペクトルと比較して走査されたスペクトルでより詳細が視認可能になる。一般に、図8に示すスナップショットスペクトルは、データ収集のプロセスを高速化するため、または分解能(または化学情報)が不要な場合に使用できる。
【0138】
記載されているスナップショットおよび走査されたスペクトルに加えて、X線光電子分光法(XPS)は、はるかに広い範囲の結合エネルギーにわたる「調査」スペクトルを提供することをよく求められる。ほとんどの場合、XPS調査スペクトルは、約50eV~1486eV(最も一般的に使用されるXPS放射線源のX線エネルギー範囲)の光電子エネルギーのスペクトルをもたらす。このようなスペクトルは、サンプルから放出される光電子の可能な範囲全体をカバーするのに役立つ場合がある。調査スペクトルは、サンプル内の関心のある分光学的特徴を特定するのに役立つ場合があり、その後、特定された関心領域に向けられた、はるかに高い分解能で、走査されたスペクトルを取得することができる。
【0139】
Thermo Scientific(商標)Nexsa(商標)XPS分光器に取り付けられた上述した検出器アセンブリを使用して取得された「走査された」スペクトルを図10に示す。分光器は、利用可能なすべてのXPSピークに対応する広範囲のエネルギーを走査するようにプログラムされ、静電半球型分析器の動作パラメータおよび静電レンズ配置の電位は、それに応じて調整および/または走査された。基本的に、調査スペクトルの生成方法は、記載したデータ処理ステップを含め、上述した走査スペクトルの生成方法と同じである。ただし、調査スペクトルを生成するために、分析器においてより高い通過エネルギーが使用されるため、分解能が低くなり、粒子のスループットが大きくなる。さらに、分析器のパラメータのステップサイズ(分析された粒子エネルギーのステップサイズに相当)は、走査されたスペクトルと比較して増加する。このようにして、調査スペクトルは、走査されたスペクトルをより広い範囲で提供するが、エネルギー分解能は低くなる。
【0140】
XPSなどの分光技術における測定されたエネルギー分解能には多くの要因が寄与しているが(分析器入力スリットのサイズ、および半球型分析器半径などを含む)、スペクトルを生成するために記載された方法および装置を使用することによって、先行技術のシステムと比較して、特に高いエネルギー分解能スペクトルが取得されることが実証された。原則として、記載されたシステムを使用して、検出器表面において受け取られた荷電粒子の位置を、検出器によって提供される画素の列数の分解能(これは、従来技術によって提供されるものよりも潜在的にはるかに高い)にデコードすることができる。さらに、記載された方法および装置は、従来のマイクロチャネルプレート検出器で観察された高い計数率でのパルスの積み重ねおよび重なり合うパルスを伴わずに、非常に高い計数率を達成する。1秒当たり500メガ計数を超える計数率が可能であることが示されている。特に、多数の画素(例えば、単一の一般的な能動的画素アレイで64,000を超える)、および検出器の各画素にある専用計数器の結果として、より高い計数率が達成され、信号の生成および回復が高速になる。さらに、記載された検出器の使用は、XPSで使用される従来の検出器と比較して、別々の隣接する画素への電子の同時到達が問題を提示しないことを意味する。
【0141】
図1~3に関連して上述した装置は、多くの異なるタイプの分光法に有利に適用することができる。さらなる例では、図12は、記載された検出器および静電レンズ配置を使用して取得された反射電子エネルギー損失分光法(REELS)スペクトルを示している。スペクトルは、1秒当たり571メガ計数のピーク計数率を示している。有益なことに、この計数率は、従来のチャネルプレート検出器で達成される可能性があるよりも10倍以上高くなっている。さらに、バックグラウンド計数率は通常、1秒当たり1計数未満であるため、約10億分の1のダイナミックレンジが得られる。
【0142】
記載されたデータ処理(記載された1×M次元データベクトルを生成し、スペクトルを生成するために当該データベクトルをビン化することを含む)は、記載された装置と通信するコンピュータプロセッサで起こり得ることが理解されるであろう。具体的には、プロセッサは、図5Aおよび5B、図6、ならびに図7に示される光ファイバリンクを介して、記載された装置に接続され得る。記載されたデータ処理は、プロセッサにおいて、データ収集期間中またはデータ収集期間後に行われてもよい。
【0143】
当業者には、上述の実施形態の特徴に対する多くの組み合わせ、変更、または改変がすぐに分かり、本発明の一部を成すことが意図されている。一実施形態または一例に関連して具体的に説明された特徴のいずれも、適切な変更を行うことによって、他のどのような実施形態にも使用され得る。
【0144】
例えば、上記の説明の多くでは、検出器は「分光モード」で使用される。分光モードは、サンプルの分析が、荷電粒子のエネルギー分布に応じた分光分析器内の荷電粒子の空間的または時間的分散に依存していることを前提としている。例えば、XPSでの光電子の空間分散により、異なるエネルギーの光電子が異なる位置(より具体的には画素アレイの異なる列)において検出器の検出面に入射されることになる。代替例として、分光分析器による荷電粒子の時間的分散(例えば、飛行時間型分析器)により、異なるエネルギーの荷電粒子が分析器の場で異なる量だけ遅延され、分析器を出て、その後、異なる時間に検出器の検出面で受け取られる。粒子の時間的分散の場合、本明細書に記載の検出器の高速読み出しは、荷電粒子検出の従来の方法と比較して特に有益である。
【0145】
しかしながら、上述したものと同じ検出器(検出のアレイを有する、能動的画素を有する)は、二次元データセットを取得するための「結像モード」などのさらなる適用で使用することができる。具体的な例としては、Thetaprobe(商標)およびThermo Fisher Scientific(商標)のEscalab(商標)システム内でのXPS結像または角度分解分光法での検出器の使用が挙げられる。これらの場合、検出器画素アレイ内の各検出画素からの読み出しを独立して保存およびプロットして、二次元画像またはプロットを取得できる。画像は、特に高い計数率で、非常に高い画像分解能を持っていることを示すことができる。さらに、パラレル結像適用は、ほぼゼロのバックグラウンドを提供する検出器の恩恵を受ける。
【0146】
さらに別の例では、上述した検出器(検出する能動的画素のアレイを有する)を使用して、受け取った荷電粒子のエネルギーを直接測定することもできる(すなわち、「エネルギー感知モード」で)。この場合、画素電子機器は計数器を含まず、受け取られた粒子のエネルギーを表すデジタル信号を提供するように配置される。それにもかかわらず、エネルギー感知モードで検出器を適用する場合、上述した他の構成要素およびデータ処理の方法を使用することができる。特に、分析器を出た後、荷電粒子は、検出器の変換層の表面に直接入射する前に加速する必要がある。具体的には、すべての荷電粒子は、少なくとも閾値エネルギーを超えて加速する必要がある。閾値エネルギーを下回ると、検出器での粒子の検出が信頼できなくなる。
【0147】
「分光モード」では、粒子は、少なくとも検出閾値エネルギーを超えるために、上述した少なくとも1つの静電レンズによって加速されなければならない。ただし、「エネルギー検知モード」では、分光分析器の出口での荷電粒子間の相対速度(またはエネルギー)と、検出器の表面に入射するときの相対速度(またはエネルギー)を、すべての粒子で一定に保つ必要がある(言い換えれば、一定の関係)、また少なくとも検出閾値エネルギーを超えている。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12