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特許7467626皮質下梗塞と白質脳症とを伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)を管理するためのビタミンEトコトリエノールを含有する組成物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】皮質下梗塞と白質脳症とを伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)を管理するためのビタミンEトコトリエノールを含有する組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/56 20060101AFI20240408BHJP
   A61K 31/01 20060101ALI20240408BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 25/06 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20240408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A61K31/56
A61K31/01
A61K31/355
A61P9/00
A61P25/28
A61P9/10
A61P25/06
A61P27/02
A61P25/24
A61P43/00 121
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022529503
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 MY2020050020
(87)【国際公開番号】W WO2021101367
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】PI2019006779
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(73)【特許権者】
【識別番号】522198069
【氏名又は名称】ホヴィッド・ブルハド
【氏名又は名称原語表記】HOVID BERHAD
【住所又は居所原語表記】121, JALAN TUNKU ABDUL RAHMAN, 30010 IPOH, PERAK, MALAYSIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,カー・ヘイ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ジァ・ウォエイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー,デヴィッド・スー・サン
(72)【発明者】
【氏名】フン,ワイ・イェー
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-102313(JP,A)
【文献】特表2019-516805(JP,A)
【文献】Stroke,2014年,Vol.45,p.1422-1428
【文献】The Neurologist,2005年,Vol.11, No.1,p.19-29
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮質下梗塞と白質脳症とを伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)の衰弱させる効果を軽減するための薬剤を製造のための組成物の使用であって、
前記組成物が、スクアレンと、フィトステロールと、薬学的に許容される賦形剤との混合物中に、アルファ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、ガンマ-トコトリエノール、およびデルタ-トコトリエノールを含むビタミンEトコトリエノールと、アルファ-トコフェロールを含むビタミンEトコフェロールとの組合せから実質的になり、
ここで、前記ビタミンEトコトリエノールが、前記組成物の10~40重量%の範囲の濃度で存在し、
前記アルファ-トコトリエノールが、前記組成物の3~20重量%の範囲の濃度で存在し、
前記ベータ-トコトリエノールが、前記組成物の0.7~3.0重量%の範囲の濃度で存在し、
前記ガンマ-トコトリエノールが、前記組成物の6~30重量%の範囲の濃度で存在し、
前記デルタ-トコトリエノールが、前記組成物の1.5~12重量%の範囲の濃度で存在し、
前記アルファ-トコフェロールが、前記組成物の3~15重量%の範囲の濃度で存在し、
前記スクアレンが、前記組成物の2.5~10重量%の範囲の濃度で存在し、
前記衰弱させる効果が、片頭痛を含む、組成物の使用。
【請求項2】
前記薬学的に許容される賦形剤が、前記組成物の0.1~50重量%の範囲の濃度で存在する、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項3】
前記ビタミンEトコトリエノールおよびビタミンEトコフェロールが、パーム油、米ぬか油、大麦、オート麦、ライ麦、小麦胚芽およびアナトーからなる群から選択される植物に由来する、請求項1または2に記載の組成物の使用。
【請求項4】
前記スクアレンが、植物に由来する、請求項1からのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項5】
前記薬学的に許容される賦形剤が、植物ベースの油、水性乳化剤、油性乳化剤、共乳化剤、抗酸化剤、および懸濁化剤のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせである、請求項1からのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項6】
前記薬剤が、カプセル、錠剤、乳濁液、および懸濁液からなる群から選択される剤形に製剤化される、請求項1からのいずれか1項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝性脳卒中疾患の治療的管理に関する。より詳細には、本発明は、皮質下梗塞と白質脳症とを伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)および関連障害の症状を管理するための薬剤の製造に使用するためのビタミンEトコトリエノールを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮質下梗塞と白質脳症とを伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)は、1993年に遺伝学的に定義された。CADASILは、血管平滑筋細胞および周皮細胞に通常発現している19番染色体にあるNOTCH3遺伝子の変異によって引き起こされる、遺伝性の小血管疾患である。CADASILは常染色体優性遺伝の疾患であり、片方の親が欠陥遺伝子を持ち、それが受け継がれることを意味する。ほとんどのCADASIL患者にはこの疾患の家族歴があるが、例外的に、NOTCH3遺伝子の変異が両親のどちらかから伝達されることなくランダムに発生するケースが、いくつか存在する。
【0003】
CADASILの遺伝子変異は、小動脈の筋肉壁を変化させる。細動脈壁の平滑筋層の細胞は徐々に変性し、線維性結合組織に置き換わる。このため、壁の肥厚および内腔の狭窄が進行し、血流が減少する。脳の白質に深く入り込んでいる長い動脈の小枝は、一般に影響を受ける。この微小血管の変化と機能障害は、脳、特に白質領域の低灌流をもたらし、白質および灰白質の深部(大脳基底核)に小さなラクナ梗塞を引き起こす。高血圧や高コレステロール血症などの血管リスク因子が早期に顕著に認められないにもかかわらず、CADASIL患者は、急性虚血イベントを繰り返し、ほとんど、皮質下白質、深部灰白質核および脳幹を侵すラクナ梗塞、びまん性白質脱髄および軸索喪失を起こす(Ayata,2010)。生理学的研究により、加齢に伴う安静時脳血流の低下が示され、低灌流は、白質希薄化(leukoaraiosis)を示す白質領域に、空間的に限定されていた(Ayata,2010)。
【0004】
CADASILは緩やかに進行し、最大50%の患者が数回の一過性脳虚血発作(TIA)または脳卒中に罹患する可能性があるが、個人間でかなりのばらつきがある(Alvesら,2008)。CADASILは、認知障害、ならびに高コレステロール血症、高血圧および糖尿病などの血管性病因の他の交絡リスク因子を伴わない若い患者で発症することから、皮質下虚血性認知症の純粋な形態と見なすことができる。認知症は、皮質下虚血性血管疾患(SIVD)の一般的な合併症であり、死亡時にCADASIL患者の約80%に存在する(Andre,2010)。SIVDは、小血管障害、ラクナ梗塞、虚血性白質病変(WML)という3つの基本的な病理学的疾患単位を包含している。WMLは、認知機能低下の独立した要因であり、最も障害のある領域は、遂行、注意、記憶検索メカニズムであることが指摘されている(Alvesら,2008)。認知機能障害および認知症は、皮質下病変、特にラクナ梗塞負荷および脳萎縮の累積の程度と相関する(Ayata,2010;Viswanathanら、2007)。遂行機能障害(35~50歳ではほぼ100%)と注意欠陥(69%)の兆候は、最も初期の認知機能の変化である(Buffonら、2006;Andre,2010)。CADASIL患者は、虚血エピソード、認知機能低下、片頭痛、および精神疾患に罹患し、その発症と重症度は非常に多様である(Alvesら,2008)。最終段階では、患者は寝たきり、無気力、および完全な依存状態になる。感染症および移動不能に関連した病的状態や臨床合併症の蓄積から、死亡までの期間も10年から30年と大きく変動する(Opherk,2004,Andre,2010)。
【0005】
遺伝的に受け継がれる神経変性疾患の進行または発症を食い止める治療法は、今のところ存在しない。病気の管理は、症候性片頭痛、てんかん、およびうつ病などの精神的問題に対する薬物療法で構成される。脳卒中のリスクを減らすために禁煙とアスピリンによる治療が患者に勧められ、糖尿病、高血圧、高脂血症などの他の血管リスク因子は積極的に治療される。著しい認知障害を有する患者は、中枢作用性コリンエステラーゼ阻害剤または神経変性疾患の他の治療薬で治療される。しかし、CADASILを対象にコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジルを用いた臨床試験(Dichganら,2008)では、プラセボと比較して、認知機能および遂行機能の評価のいずれにおいても治療効果を示すことができなかった。
【0006】
したがって、特に、血管構造の好ましくない変化を緩和し、CADASIL患者における低下した認知機能や蓄積した病的状態の主な原因である虚血イベントのリスクを低減する上で、CADASILの効果的な治療管理の必要性が、存在する。ヒトのCADASIL表現型を完全に再現できる動物モデルは存在しない。したがって、脳病変の蓄積を減らす神経保護剤は、CADASILの病勢進行を妨げる有望なアプローチである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Ayata C (2010). CADASIL: Experimental insights from animal models. Stroke 41(補遺1): S129 - S134.
【文献】Alves GS, Oliveira Alves CE, Lanna ME, Moreira DM, Engelhardt E およびLaks J (2008), Subcortical ischemic vascular disease and cognition: A systemic review. Dementia & Neuropsychologia 2(2): 82 - 90.
【文献】Andre C (2010). CADASIL: pathogenesis, clinical and radiological findings and treatment, Arquivos de Neuro-Psiquiatria 68(2): 287 - 299.
【文献】Viswanathan A, Gschwendtner A, Guiehard IP, Buffon F, Curnurciuc R, O’Sullivan M, Holtmannspotter M, Pachai C, Bousser MG, Dichgans Mおよび Chabriat H (2007). Lacunar lesions are independently associated with disability and cognitive impairment in CADASIL. Neurology 69(2): 172 - 179.
【文献】Liem MK, van der Grond J, Haan J, van den Boom R, Ferrari MD, Knapp YM, Breuning MH, van Buchem MA, Middelkoop HAMおよびLesnik Oberstein SAJ (2007). Lacunar infarcts are the main correlate with cognitive dysfunction in CADASIL. Stroke 38: 923 - 928.
【文献】Buffon F, Porcher R, Hernandez K, Kurtz A, Pointeau S, Vahedi K, Bousser MGおよびChabriat H (2006). Cognitive profile in CADASIL. Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry 77(2): 175 - 180.
【文献】Opherk C, Peters N, Herzog J, Luedtke Rおよび Dichgans M (2004). Long-term prognosis and causes of death in CADASIL: a retrospective study in 411 patients. Brain 127: 2533 - 2539.
【文献】Dichgans M, Markus HS, Salloway S, Verkkoniemi A, Moline M, Wang Q, Posner HおよびChabriat HS (2008). Donepezil in patients with subcortical vascular cognitive impairment: a randomised double-blind trial in CADASIL. Lancet Neurology. 7: 310-318.
【文献】Khanna S, Roy S, Park HAおよび Sen CK (2007). Mechanisms of Signal Transduction: Regulation of c-Src Activity in Glutamate-induced Neurodegeneration. The Journal of Biological Chemistry 282: 23482 - 23490.
【文献】Khanna S, Parinandi NL, Kotha SR, Roy S, Rink C, Bibus DおよびSen CK (2010). Nanomolar vitamin E α-tocotrienol inhibits glutamate-induced activation of phospholipase A2 and causes neuroprotection. Journal of Neurochemistry 112:1249 - 1260.
【文献】Sen CK, Rink Cおよび Khanna S (2010). Palm oil-derived natural vitamin E α- tocotrienol in brain health and disease. Journal of the American College of Nutrition, 29(補遺3): 314S - 323 S.
【文献】Rink C, Christoforidis G, Khanna S, Peterson L, Patel Y, Khanna S, Abduljalil A, Irfanoglu O, Machiraju R, Bergdall VKおよびSen CK (2011). Tocotrienol vitamin E protects against preclinical canine ischemic stroke by inducing arteriogenesis. Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism 31(11): 2218 -2230.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(発明の概要)
本発明の主な目的は、皮質下梗塞と白質脳症とを伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)および関連障害の有効な治療管理のための薬剤の製造に使用するためのビタミンEトコトリエノールを含有する組成物を提供することである。特に、前記組成物は、アルファ-トコトリエノール、ガンマ-トコトリエノール、デルタ-トコトリエノールもしくはアルファ-トコフェロール、またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0009】
本発明の他の目的は、CADASIL、ならびに異常な脳病変、認知障害、記憶力低下、認知症、虚血イベントの発生、障害の発生、多発性脳卒中、片頭痛、発作、視覚障害、および/またはうつ病、アパシーや気分障害などの精神的問題を含む関連する障害、を患う対象における脳血管構造の変化および衰弱性症状のネガティブな効果を効果的に軽減するための薬剤の製造に使用するための組成物を、提供することである。
【0010】
前述の目的の少なくとも1つは、全体または部分的に、本発明によって達成され、本発明の実施形態では、皮質下梗塞と白質脳症とを伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)の衰弱させる効果を軽減するための薬剤の製造のための組成物の使用が記載され、前記組成物は、スクアレンと、フィトステロールと、薬学的に許容される賦形剤との混合物中に、ビタミンEトコトリエノールを含有している。
【0011】
好ましくは、前記衰弱させる効果は、異常な脳病変、認知障害、認知症、記憶力低下、虚血イベントの発生、障害の発生、片頭痛、多発性脳卒中、発作、視覚障害、ならびにうつ病、アパシーおよび気分障害などの精神的問題、のうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせであり得る。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、ビタミンEトコトリエノールは、アルファ-トコトリエノール、ガンマ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、およびデルタ-トコトリエノールのうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせである。前記組成物は、アルファ-トコフェロールをさらに含んでもよい。好ましくは、前記ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、パーム油、米ぬか油、大麦、オート麦、ライ麦、小麦胚芽およびアナトーからなる群から選択される植物に由来する。ビタミンEトコトリエノールは、前記組成物の10~40重量%の範囲の濃度で存在し得る。
【0013】
より具体的には、前記アルファ-トコトリエノールは、前記組成物の3~20重量%の範囲の濃度で存在する。ベータ-トコトリエノールは、前記組成物の0.7~3.0重量%を構成し得る。前記ガンマ-トコトリエノールおよびデルタ-トコトリエノールは、前記組成物中に、それぞれ、前記組成物の6~30重量%および1.5~12重量%の範囲の濃度で存在し得る。アルファ-トコフェロールは、前記組成物中に、前記組成物の3~15重量%の範囲の濃度で存在し得る。
【0014】
好ましくは、前記組成物に使用されるスクアレンは、植物に由来する。スクアレンは、前記組成物の2.5~10重量%の範囲の濃度で存在し得る。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、植物ベースの油、水性乳化剤、油性乳化剤、共乳化剤、抗酸化剤、および懸濁化剤などの薬学的に許容される賦形剤が、使用される。好ましくは、前記薬学的に許容される賦形剤は、前記組成物の0.1~50重量%の範囲の濃度で存在する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
当業者であれば、本発明が、目的を遂行し、言及された目的および利点、ならびにそれに固有のものを得るためによく適合していることを容易に理解するであろう。本明細書に記載された実施形態は、本発明の範囲に対する限定として意図されるものではない。
【0017】
本発明は、皮質下梗塞と白質脳症とを伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)および関連障害の影響を軽減または管理するための薬剤の製造のための組成物の使用を開示し、前記組成物は、スクアレンと薬学的に許容される賦形剤との混合物中に、ビタミンEトコトリエノールを含有する。特に、前記組成物は、認知障害、記憶力低下、認知症、虚血イベントの発生、障害の発生、片頭痛、多発性脳卒中、発作、視覚障害、ならびに/またはうつ病、アパシーおよび気分障害などの精神的問題を含むCADASILの症状を管理または軽減することができる薬剤の製造に使用され得る。
【0018】
ビタミンEトコトリエノールは、前記組成物の10~40%、より具体的には前記組成物の15~35%を構成し得る。本発明の好ましい実施形態によれば、ビタミンEトコトリエノールは、アルファ-トコトリエノール、ベータ-トコトリエノール、ガンマ-トコトリエノール、およびデルタ-トコトリエノールのうちのいずれか1つまたは任意の組み合わせであり得る。好ましくは、前記組成物は、アルファ-トコフェロールをさらに含む。本発明の別の実施形態では、前記組成物は、ベータ-トコフェロール、ガンマ-トコフェロール、およびデルタ-トコフェロールを含むがこれらに限定されないビタミンEトコフェロールを更に含んでもよい。好ましくは、前記ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、天然源に由来する。より好ましくは、前記ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、パーム油、米ぬか油、アナトー、ならびに大麦、オート麦、ライ麦および小麦胚芽などの穀物からなる群から選択される供給源に由来する。
【0019】
好ましくは、本明細書に開示される組成物は、経口消費に適合される。経口投与された組成物中のビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、脳脊髄液および脳に到達する可能性がある。脳内のビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、神経系のメンバーを損傷から保護する。より詳細には、ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、虚血性脳卒中に関連する神経変性に関与することが知られているcSrc制御12-リポキシゲナーゼ経路を標的とし、これを阻害する。12-リポキシゲナーゼ経路では、脳内の脳血管ネットワークにおける虚血イベントおよび低灌流時に、ホスホリパーゼ、特にホスホリパーゼA2によって膜リン脂質から遊離アラキドン酸(AA)が切断・放出される。アラキドン酸は、その後、12-リポキシゲナーゼによって、神経毒性の主要なメディエーターであるヒドロペルオキシエイコサテトラエン酸に変換され、神経変性を引き起こす。ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールによるcSrc制御12-リポキシゲナーゼ経路の阻害により、神経毒性および脳細胞死などの脳血管低灌流誘発傷害からの保護がもたらされ、したがって、ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールが脳神経細胞死に関連する認知機能低下および認知症を予防または遅延させる能力を有していることが、示唆される。
【0020】
また、アラキドン酸は病的条件下で酸化的な代謝を非常に受けやすい。ホスホリパーゼA2(PLA)によってリン脂質二重膜から切断されたAAは、AAカスケードとしても知られている制御不能な酸化的代謝を受ける可能性がある。AAが代謝されると、脳内のフリーラジカルの全体的な生成が増幅され、その結果、脳組織の酸化的障害が引き起こされる。しかし、ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、このAAカスケードを抑制することができる。特に、ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、病的状態にあるときに生成されるフリーラジカルによる酸化的ダメージを阻害する。
【0021】
さらに、ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、脳血管動脈形成を促進する動脈性組織メタロプロテアーゼ阻害物質1の発現を誘導することにより、脳内の低灌流領域への脳血管側副血行を改善し、脳卒中イベント後の白質繊維路接続の喪失を防止することが可能である。これにより、脳内の低灌流部位への血液循環を改善することができる。さらに、前記組成物は、CADASILおよびその関連障害に罹患している患者において、脳血管虚血イベント時に存在する損傷を軽減するのに効果的であり、ここで前記組成物は、脳卒中病変体積を減少させ、血管新生を促進し、脳血管側副血行を改善する。
【0022】
本発明の1つの実施形態では、前記組成物は、3~20重量%の濃度範囲でアルファ-トコトリエノールを含有する。本発明のより好ましい実施形態では、アルファ-トコトリエノールは、前記組成物中に、前記組成物の5~16重量%の範囲の濃度で存在する。ベータ-トコトリエノールは、前記組成物の0.7~3重量%、より好ましくは前記組成物の0.8~2重量%を構成する。ガンマ-トコトリエノールは、本発明の1つの実施形態において、前記組成物の6~30重量%、または、より好ましい実施形態において、前記組成物の8~25重量%の範囲の濃度で存在する。あるいは、デルタ-トコトリエノールは、前記組成物の1.5~12重量%、または、より好ましくは前記組成物の2~10重量%を構成する。本発明の1つの実施形態では、前記組成物の3~15重量%が、アルファ-トコフェロールから構成されている。より好ましい実施形態では、前記組成物の5~12重量%が、アルファ-トコフェロールから構成されている。
【0023】
前の説明で述べたように、ビタミンEトコトリエノールおよびトコフェロールは、スクアレンおよび薬学的に許容される賦形剤と共に前記組成物中に存在する。好ましくは、前記組成物中のスクアレンは、植物ベースのスクアレンである。前記組成物に使用されるスクアレンの供給源としては、オリーブ、アブラヤシの果実、アマランサスの種子、および米ぬかが挙げられるが、これらに限定されない。前記組成物中のスクアレンは、その抗酸化作用により、記憶力の低下を防止するのに有益である。好ましくは、本明細書に開示される組成物は、前記組成物の2.5~10重量%のスクアレンを含有する。より好ましくは、スクアレンは、前記組成物の3~8.5重量%を構成する。
【0024】
薬学的に許容される賦形剤は、他の成分に対して不活性であり、一般に薬理作用を有さない化合物である。それらは、ビタミンEトコトリエノール、ビタミンEトコフェロールおよびスクアレンの長期安定化および/またはバイオアベイラビリティの増強を目的として、本明細書に開示される組成物中に含まれる。本発明の組成物は、植物ベースの油、水性乳化剤、油性乳化剤、共乳化剤、抗酸化剤、および懸濁化剤からなる群から選択される1つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤を含み得る。好ましくは、前記薬学的に許容される賦形剤は、前記組成物の0.1~50重量%の範囲の濃度で存在する。より好ましくは、薬学的に許容される賦形剤は、前記組成物の0.15から40重量%の範囲の濃度で存在する。
【0025】
前記の組成物から製造される薬剤は、好ましくは、カプセル、錠剤、乳濁液、および懸濁液を含むが、これらに限定されない剤形に製剤化される。より好ましくは、前記薬剤は、バイオアベイラビリティを高めるために、ソフトカプセルの剤形で存在する。1年から5年の期間にわたる薬剤の投与により、神経変性疾患の進行を遅らせることが、効果的にもたらされる可能性がある。
【実施例
【0026】
以下の非限定的な実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明するために実施されたものである。
【0027】
(実施例1)
前記組成物の24ヶ月投与下でのCADASIL患者の進行の事例。
【0028】
本発明の組成物は、組成物の投与から少なくとも4年間、虚血性イベント(evens)、障害、認知症、多発性脳卒中、発作、視力障害または精神的問題をさらに発生させることなく、脳の異常病変の進行を軽減し、片頭痛を軽減することが可能である。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】