(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】新規なプロモーター及びそれを用いたグルタチオン生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/81 20060101AFI20240408BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240408BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240408BHJP
C12N 15/52 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
C12N15/81 Z ZNA
C12N1/19
C12P21/02 G
C12N15/52 Z
(21)【出願番号】P 2022529822
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(86)【国際出願番号】 KR2021004115
(87)【国際公開番号】W WO2021201643
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0041184
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12568P
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12659P
【微生物の受託番号】KCCM KCCM12674P
(73)【特許権者】
【識別番号】513178894
【氏名又は名称】シージェイ チェイルジェダン コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハ チョル ウン
(72)【発明者】
【氏名】イム ヨン ウン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ウン ビン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンソ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョン ジュン
【審査官】藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-201508(JP,A)
【文献】国際公開第2020/050273(WO,A1)
【文献】PINEL, Dominic et al.,Biotechnology for Biofuels,2015年,Vol. 8,pp. 1-16
【文献】BIOT-PELLETIER, Damien et al.,Journal of Biological Engineering,2016年,Vol.10,pp.1-5
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1または2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番、103番、249番及び251番ヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換され、配列番号1または2の
ポリヌクレオチド配列と90%以上100%未満の配列同一性を有し、プロモーター活性を有し、前記92番ヌクレオチドの置換がシトシンへの置換であり、前記94番ヌクレオチドの置換がシトシンへの置換であり、前記102番ヌクレオチドの置換がシトシンへの置換であり、前記103番ヌクレオチドの置換がチミンへの置換であり、前記249番ヌクレオチドの置換がアデニンへの置換であり、前記251番ヌクレオチドの置換がチミンへの置換である、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、249番及び251番ヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたものである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、92番、94番、102番及び103番ヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたものである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、92番、94番、102番、103番、249番及び251番 ヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたものである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドが、配列番号3~32の中から選択されるいずれか1つのポリヌクレオチド配列で構成されたものである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む遺伝子発現用組成物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクター。
【請求項8】
前記目的タンパク質が、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)活性を有するポリペプチドである、請求項7に記載のベクター。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチドまたはそれを含むベクターを含む、サッカロマイセス属微生物。
【請求項10】
前記目的タンパク質が、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase )活性を有するポリペプチドである、請求項9に記載のサッカロマイセス属微生物。
【請求項11】
請求項9に記載の微生物を培地で培養する段階を含む、グルタチオン製造方法。
【請求項12】
前記培養された微生物、前記微生物の乾燥物、前記微生物の抽出物、前記微生物の培養物、及び前記微生物の破砕物から選択された1つ以上からグルタチオンを回収する段階をさらに含む、請求項11に記載のグルタチオン製造方法 。
【請求項13】
配列番号1または2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番、103番、249番及び251番ヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドで置換され、配列番号1または2の
ポリヌクレオチド配列と90%以上100%未満の配列同一性を有し、前記92番ヌクレオチドの置換がシトシンへの置換であり、前記94番ヌクレオチドの置換がシトシンへの置換であり、前記102番ヌクレオチドの置換がシトシンへの置換であり、前記103番ヌクレオチドの置換がチミンへの置換であり、前記249番ヌクレオチドの置換がアデニンへの置換であり、前記251番ヌクレオチドの置換がチミンへの置換である、ポリヌクレオチドのプロモーターとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、新規なプロモーター、それを含むベクター、それを含む微生物及びそれを用いたグルタチオン生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
グルタチオン(Glutathione、GSH)は、細胞内で最も一般的に存在する有機硫黄化合物であり、グリシン(glycine)、グルタミン酸(glutamate)、システイン(cysteine)の3つのアミノ酸が結合したトリペプチド(tripeptide)形態である。
【0003】
グルタチオンは体内では還元型グルタチオン(GSH)と酸化型グルタチオン(GSSG)の2つの形態で存在する。一般的な状況で相対的に高い比率で存在する還元型グルタチオン(GSH)は、人体の肝臓や皮膚細胞に主に分布し、活性酸素を分解・除去する抗酸化機能、毒性物質などの外因性化合物の除去などの解毒作用、メラニン色素生成を抑制する美白作用などの重要な役割を果たす(非特許文献1)。
【0004】
老化が進行されるほどグルタチオン生成量はますます減少するため、抗酸化、解毒作用に重要な役割を果たすグルタチオン生成量の減少は老化の主犯である活性酸素の蓄積を促進するため、外部からグルタチオンの供給が必要である。
【0005】
このように多様な機能を有するグルタチオンは、製薬、健康機能食品、化粧品など多様な分野の素材として脚光を浴びており、味素材、食品及び飼料添加剤の製造に利用されることもある。グルタチオンは原物の味上昇と豊富な味の持続性維持効果が大きく、単独で使用したり、他の物質と配合してコク 味(kokumi)香味増進剤として用いられることが知られている。通常、コク味素材は、既存の核酸、MSGなどのウマ味(umami)素材より濃厚感を有し、タンパク質が分解熟成されて生成されると知られている。
【0006】
様々な分野で用いられるグルタチオンに対する需要が増加されているにもかかわらず、高い生産単価により酵素合成工程はまだ商用化されておらず、微生物を培養して菌体から抽出する方法はその収率が低くて、グルタチオンの産業的生産に少なくない費用が必要なため、市場が大きく活性化できない実情である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Sipes IG et al, The role of glutathione in the toxicity of xenobiotic compounds: metabolic activation of 1,2-dibromoethane by glutathione, Adv Exp Med Biol. 1986;197:457-67.
【文献】Pearson et al (1988)[Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85]: 2444
【文献】Rice et al., 2000, Trends Genet. 16: 276-277
【文献】Needleman and Wunsch, 1970, J. Mol. Biol. 48: 443-453
【文献】Devereux, J., et al, Nucleic Acids Research 12: 387 (1984)
【文献】Atschul, [S.] [F.,] [ET AL, J MOLEC BIOL 215]: 403 (1990)
【文献】Guide to Huge Computers, Martin J. Bishop, [ED.,] Academic Press, San Diego,1994
【文献】[Carillo et al.](1988)SIAM J Applied Math 48: 1073
【文献】Smith and Waterman, Adv. Appl. Math (1981)2:482
【文献】Schwartz and Dayhoff, eds., Atlas Of Protein Sequence And Structure, National Biomedical Research Foundation, pp. 353-358(1979)
【文献】Gribskov et al(1986)Nucl. Acids Res. 14: 6745
【文献】J. Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory press, Cold Spring Harbor, New York, 1989
【文献】F.M. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc., New York
【文献】Sambrook et al., supra, 9.50-9.51, 11.7-11.8
【文献】Lee TH, et al.(J. Microbiol. Biotechnol. (2006), 16(6), 979-982)
【文献】Nucleic Acid Research, 20(6), 1425
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願は、新規なプロモーター、それを含むベクター、それを含む微生物及びそれを用いたグルタチオン生産方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は、配列番号1または2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番、103番、249番、及び251番ヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドを提供する。
【0010】
本出願は、前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
【0011】
本出願は、前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子;及びそれを含むベクターのうちいずれか1つ以上を含む、サッカロマイセス属微生物を提供する。
【0012】
本出願は、前記微生物を培地で培養する段階を含むグルタチオン生産方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本出願の新規プロモーター配列はグルタチオン生産を大きく増加させるため、グルタチオンの高生産に有用に利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
これを具体的に説明すると次の通りである。一方、本出願で開示された各説明及び実施形態は、それぞれの他の説明及び実施形態にも適用することができる。言い換えれば、本出願で開示された様々な要素の全ての組み合わせが本出願のカテゴリに属する。さらに、下記記載される具体的な記述によって本出願のカテゴリが制限されると見ることはできない。
【0015】
また、当該技術分野の通常の知識を有する者は、通常の実験のみを用いて、本出願に記載された本出願の特定態様に対する多数の等価物を認知または確認することができる。さらに、そのような等価物は本出願に含まれることが意図される。
【0016】
本出願の一つの態様は、配列番号1または2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番、103番、249番及び251番ヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドを提供する。
【0017】
本出願において、用語、「ポリヌクレオチド」は、ヌクレオチド単位体(monomer)が共有結合によって長く鎖状につながったヌクレオチドのポリマー(polymer)である、一定の長さ以上のDNA鎖である。
【0018】
本出願において、用語、「プロモーター活性を有するポリヌクレオチド」は、発現させようとする遺伝子、すなわち、目的遺伝子の発現のためにRNAポリメラーゼまたはエンハンサーなどが結合する部位を含む目的遺伝子の転写が起こる部位の近くに存在するDNA領域を意味する。
【0019】
本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、汎用的な強化プロモーターとして用いられてもよい。
【0020】
一例として、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)活性を有するポリペプチドの発現を増強させうるプロモーターとして用いられてもよい。また、前記ポリヌクレオチドは、グルタチオンの生産、または生産量の増加させることに関与するポリヌクレオチドであってもよい。本出願のポリヌクレオチドは、プロモーター活性を有するポリヌクレオチド配列であれば制限なく含まれてもよい。
【0021】
本出願において、前記配列番号1及び配列番号2のポリヌクレオチド配列は、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)のプロモーター役割が果たせる配列であってもよい。
【0022】
ただし、配列番号1及び配列番号2のポリヌクレオチド配列は、変異位置を示すための代表的なポリヌクレオチド配列であり、プロモーター活性を有する、これに相応する他のポリヌクレオチド配列も変異を導入することができる配列に含まれる。例えば、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)またはそれに相応する活性を有するポリペプチドのプロモーターの役割ができるポリヌクレオチド配列であれば、本出願の変異を導入することができる配列の範囲に制限されずに含まれてもよい。したがって、このような配列において、配列番号1または2の前記92番、94番、102番、103番、249番及び251番に相応する位置の中で1つ以上の配列を他のヌクレオチドに置換する場合、非置換された(非変形された)プロモーター配列よりさらに高い活性を有するプロモーターを提供することができる。
【0023】
前記配列番号1及び配列番号2のヌクレオチド配列は、公知のデータベースであるNCBI Genbankからその配列を確認してもよく、前記グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)のプロモーター役割ができる配列として前記配列番号1または2に相応する配列はサッカロマイセス属(Saccharomyces sp.)由来であってもよく、具体的には、サッカロマイセス・セレビシエの配列であってもよいが、これらに制限されず、前記ポリヌクレオチドと同じ活性を有する配列は制限なく含まれてもよい。
【0024】
本出願においてプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1、または配列番号2、または前記配列番号1または配列番号2と少なくとも70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%以上の相同性(homology)または同一性(identity)を有するヌクレオチド配列で前記特定位置またはそれに相応する位置を含む1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたポリヌクレオチド配列であってもよい。相同性または同一性を有するヌクレオチド配列は、前記カテゴリーのうち100%同一性を有する配列は除外されるか、100%未満の同一性を有する配列であってもよい。
【0025】
一方、本出願において、「特定配列番号で記載されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」、「特定配列番号で記載されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド」と記載されていても、当該配列番号のヌクレオチド配列で構成されたポリヌクレオチドと同一であるいは相応する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換または付加されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドも本出願で用いられるのは自明である。
【0026】
例えば、前記ポリヌクレオチドと同一もしくは相応する活性を有する場合であれば、当該配列番号のヌクレオチド配列内部または末端に無意味な配列が付加されたり、あるいは当該配列番号のヌクレオチド配列内部または末端の一部配列が欠失したポリヌクレオチドも本願の範囲内に属するのは自明である。
【0027】
相同性(homology)及び同一性(identity)は、2つの与えられた塩基配列と関連する程度を意味し、パーセンテージで表してもよい。
【0028】
用語、相同性及び同一性は、多くの場合、相互交換的に用いられてもよい。
保存された(conserved)ポリヌクレオチドの配列相同性または同一性は、標準配列アルゴリズムによって決定され、用いられるプログラムによって確立されたデフォルトのギャップペナルティが一緒に利用されてもよい。実質的に、相同性(homologous)を有するかまたは同一(identical)の配列は、一般的に、配列全体または全長と少なくとも約50%、60%、70%、80%または90%の中間または高い厳しい条件(stringent conditions)でハイブリッドしてもよい。ハイブリッド化はポリヌクレオチドでコドンの代わりに縮退コドンを含有するポリヌクレオチドも考慮される。
【0029】
任意の2つのポリヌクレオチド配列が、相同性、類似性または同一性を有するかどうかは、例えば、非特許文献2と同じデフォルトのパラメータを用いて「FASTA」プログラムのような公知のコンピュータアルゴリズムを利用して決定してもよい。または、EMBOSSパッケージのニードルマンプログラム(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite、非特許文献3)(バージョン5.0.0またはそれ以降のバージョン)で実行されるような、ニードルマン-ウンシュ(Needleman-Wunsch)アルゴリズム(非特許文献4)を用いて決定してもよい(GCGプログラムパッケージ(非特許文献5)、BLASTP、BLASTN、FASTA(非特許文献6~8を含む)。例えば、国立生物工学情報データベースセンターのBLAST、またはClustalWを用いて、相同性、類似性または同一性を決定してもよい。
【0030】
ポリヌクレオチドの相同性、類似性または同一性は、例えば、非特許文献9に公知されたように、例えば、非特許文献4のようなGAPコンピュータプログラムを利用して配列情報を比較することによって決定してもよい。要約すると、GAPプログラムは、2つの配列のうち、より短いものからのシンボルの全体数で類似に配列されたシンボル(つまり、ヌクレオチドまたはアミノ酸)の数を割った値として定義する。GAPプログラムのためのデフォルトパラメータは、(1)二進法の比較マトリックス(同一性のための1及び非同一性のための0の値を含有する)及び非特許文献10に開示されたように、非特許文献11の加重された比較マトリックス(またはEDNAFULL(NCBI NUC4.4のEMBOSSバージョン)置換マトリックス);(2)各ギャップのための3.0のペナルティ及び各ギャップでの各記号のための追加の0.10ペナルティ(またはギャップ開放ペナルティ10、ギャップ伸長ペナルティ0.5);及び(3)末端ギャップのための無ペナルティを含んでもよい。したがって、本願で用いられるものとして、用語、「相同性」または「同一性」は、配列間の関連性(relevance)を示す。
【0031】
また、公知の遺伝子配列から調製されうるプローブ、例えば、前述のポリヌクレオチド配列の全体または一部に対する相補配列と厳しい条件下でハイブリッド化して、同一の活性を有するポリヌクレオチド配列であれば、制限なく含まれてもよい。前記「厳しい条件(stringent condition)」とは、ポリヌクレオチド間の特異的混成化を可能にする条件を意味する。これらの条件は、文献(例えば、非特許文献12及び13)に具体的に記載されている。例えば、相同性(homology)及び同一性(identity)が高い遺伝子同士、40%以上、具体的には、70%以上、80%以上、85%以上、90%以上、より具体的には、95%以上、さらに具体的には、97%以上、特に具体的には、99%以上の相同性または同一性を有する遺伝子同士でハイブリッド化し、それより相同性または同一性が低い遺伝子同士はハイブリッド化しない条件、または通常のサザンハイブリッド化(southern hybridization)の洗浄条件である、60℃、1×SSC 、0.1%SDS、具体的には、60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より具体的には、68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的には、2回~3回洗浄する条件が挙げられる。
【0032】
混成化は、たとえ混成化の厳密度によって塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であっても、2つの核酸が相補的配列を有することを要求する。用語、「相補的」は、互いに混成化が可能であるヌクレオチド塩基間の関係を記述するのに用いられる。例えば、DNAに関すると、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。したがって、本出願は、また、実質的に類似の核酸配列だけでなく、全体配列に相補的な単離された核酸断片を含んでもよい。
【0033】
具体的には、相同性または同一性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値で混成化段階を含む混成化条件を用い、上述した条件を用いて探知してもよい。また、前記Tm値は、60℃、63℃または65℃であってもよいが、これに制限されるものではなく、その目的に応じて当業者によって適切に調節されてもよい。
【0034】
ポリヌクレオチドを混成化する適切な厳密度は、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は当該技術分野でよく知られている(非特許文献14参照)。
【0035】
本出願で提供するプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、前述したプロモーター活性を有するポリヌクレオチド配列において、特異的位置のヌクレオチドが置換されてプロモーター活性が強化されたものであってもよい。
【0036】
一具現例として、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2のヌクレオチド配列のうちの1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含むものであってもよい。具体的には、配列番号1または配列番号2のヌクレオチド配列のうちの1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換された、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドからなるものであってもよい。前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、本願で「変異型プロモーター」と混用してもよい。前記変異型プロモーターは、前記位置でいずれか1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つの位置すべて、またはそれらの相応する位置で他のヌクレオチドに置換されたものであってもよい。
【0037】
一具現例として、前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1または2の92番、94番、102番、103番、249番、及び251番ヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか1つ以上のヌクレオチドの他のヌクレオチドへの置換を含む、プロモーター活性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0038】
前記「他のヌクレオチド」は、置換前のヌクレオチドと異なるものであれば、制限されない。配列番号1の92番ヌクレオチドであるチミン(T)を例とすると、「配列番号1の92番ヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換された」と記載する場合、チミンを除いたシトシン(C)、アデニン(A)、グアニン(G)に置換されることを意味する。また、特に示さない場合であっても、本出願において、あるヌクレオチドが「置換された」と記載する場合、置換前のヌクレオチドとは異なるヌクレオチドに置換されることを意味する。
【0039】
一方、当業者であれば当業界に知られた配列アライメントを介して任意のポリヌクレオチド配列から本出願の配列番号1または2の92番、94番、102番、103番、249番、251番ヌクレオチドに相応する位置のヌクレオチドを把握することができ、本出願で別途記載しなくとも、「特定配列番号の特異的位置のヌクレオチド」を記載する場合、任意のポリヌクレオチド配列でそれと「相応する位置のヌクレオチド」まで含む意味であることは自明である。したがって、プロモーター活性を有する任意のポリヌクレオチド配列内において、配列番号1または2のポリヌクレオチド配列の92番、94番、102番、103番、249番及び251番に相応する位置のヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたポリヌクレオチド配列も、本出願の範囲に含まれる。
【0040】
前記「配列番号1または2の92番、94番、102番、103番、249番、251番の位置」は、Saccharomyces cerevisiae CEN KSD-Yc、YJM1450、YJM1401、YJM1307、国際寄託番号 KCCM12568P由来のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、すなわち、配列番号2で開始コドンであるATGのAを基準(0)に、それぞれ409nt、407nt、399nt、398nt、252nt、250nt上端に位置するため、通常表記するように記載すると、それぞれORF上段-409番、407番、399番、398番、252番、250番の位置で示すことができる。
【0041】
一方、前記Saccharomyces cerevisiae CEN KSD-Ycのプロモーター配列において、ORF上端74番の位置(すなわち-74番位置)のヌクレオチドが欠失した形態である、Saccharomyces cerevisiae CEN.PK1-D由来のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、すなわち、配列番号1を基準とする場合、前記「配列番号1または2の92番、94番、102番、103番、249番、251番位置」は、それぞれORF上段-408番、-406番、-398番、-397番、-251番、-249番位置に対応される。
【0042】
一具現例として、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番、103番、249番及び251番ヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたものであってもよい。
【0043】
具体的には、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番、103番、249番及び251番ヌクレオチドで構成された群から選択される2つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたものであってもよい。
【0044】
具体的には、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番、103番、249番及び251番のヌクレオチドで構成された群から選択される4つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたものであってもよい。
【0045】
具体的には、前記ポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番、103番、249番、251番の6つのヌクレオチド全てが他のヌクレオチドに置換されたものであってもよい。
【0046】
一具現例として、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2のポリヌクレオチド配列において、249番及び251番のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたものであってもよい。
【0047】
一具現例として、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番及び103番のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたものであってもよい。
【0048】
しかし、これに制限されない。
【0049】
一具現例として、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号1または配列番号2のポリヌクレオチド配列において、
92番のチミン(T)がグアニン(G)、シトシン(C)、またはアデニン(A)に置換;
94番のチミン(T)がグアニン(G)、シトシン(C)、またはアデニン(A)に置換;
102番のアデニン(A)がグアニン(G)、シトシン(C)、またはチミン(T)に置換;
103番のアデニン(A)がグアニン(G)、シトシン(C)、またはチミン(T)に置換;
249番のグアニン(G)がチミン(T)、シトシン(C)、またはアデニン(A)に置換;
251番のシトシン(C)がチミン(T)、グアニン(G)、またはアデニン(A)に置換;または、これらの置換の組み合わせを含むものであってもよい。
【0050】
一具現例として、前記92番のチミン(T)はシトシン(C)に置換されるものであってもよい。これは、92(T→C)または-409(T→C)、基準配列によっては-408(T→C)と表してもよい。
【0051】
一具現例として、前記94番のチミン(T)はシトシン(C)に置換されるものであってもよい。これは、94(T→C)または-407(T→C)、基準配列によっては-406(T→C)と表してもよい。
【0052】
一具現例として、前記102番のアデニン(A)はシトシン(C)に置換されるものであってもよい。これは、102(A→C)または-399(A→C)、基準配列によっては-398(A→C)と表してもよい。
【0053】
一具現例として、前記103番のアデニン(A)はチミン(T)に置換されるものであってもよい。これは、103(A→T)または-398(A→T)、基準配列によっては-397(A→T)と表してもよい。
【0054】
一具現例として、前記249番のグアニン(G)はアデニン(A)に置換されるものであってもよい。これは、249(G→A)または-252(G→A)、基準配列によっては-251(G→A)と表してもよい。
【0055】
一具現例として、前記251番のシトシン(C)はチミン(T)に置換されるものであってもよい。これは、251(C→T)または-250(C→T)、基準配列によっては-249(C→T)と表してもよい。
【0056】
一具現例として、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、92(T→C)、94(T→C)、102(A→C)、103(A→T)、249(G→A)及び251(C→T)のうち1つ以上の置換を含むものであってもよい。
【0057】
一具現例として、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、249(G→A)及び251(C→T)置換を含むものであってもよい。
【0058】
一具現例として、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、92(T→C)、94(T→C)、102(A→C)及び103(A→T)置換を含むものであってもよい。
【0059】
一具現例として、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、92(T→C)、94(T→C)、102(A→C)、103(A→T)、249(G→A)及び251(C→T)置換の全てを含むものであってもよい。
【0060】
一具現例として、本出願でプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、配列番号3~32から選択されるいずれか1つのポリヌクレオチド配列を含むものであってもよい。具体的には、前記ポリヌクレオチドは、配列番号3~32から選択されるいずれか1つのポリヌクレオチド配列で構成されるものであってもよいが、これに制限されない。
【0061】
前述の通り、「特定配列番号で記載されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド」、「特定配列番号で記載されたヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド」と記載されていても、当該配列番号のヌクレオチド配列で構成されるポリヌクレオチドと同一あるいは相応する活性を有する場合であれば、一部の配列が欠失、変形、置換、または付加されたヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドも本出願で用いられることは自明である。
【0062】
また、前述の具現例に制限されず、プロモーター活性を著しく減少させない範囲でポリヌクレオチド配列に様々な変形を含んでもよい。
【0063】
本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドは、プロモーターとして利用してもよい。
【0064】
前記プロモーターは、mRNAへの転写開始部位の5’部位に位置してもよい。
【0065】
前記プロモーターは、従来のプロモーターに比べて増加したプロモーター活性を有することができる。すなわち、宿主細胞における目的遺伝子の発現だけでなく、目的遺伝子によってコードされるタンパク質の発現及び/または活性を増加させることができる。本出願の目的上、生産する産物に応じて発現を強化するための目的遺伝子が変更されてもよく、前記プロモーターは目的遺伝子の強化のための汎用プロモーターとして用いられてもよい。
【0066】
前記「目的遺伝子」は、本出願の目的上、本出願のプロモーター配列により発現を調節しようとする遺伝子を意味する。前記目的遺伝子によってコードされるタンパク質は「目的タンパク質」と表現してもよく、前記「目的タンパク質」をコードする遺伝子は「目的遺伝子」と表現してもよい。
【0067】
また、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)によって、または前記ポリヌクレオチドを発現させようとする生物における優先されるコドンを考慮して、ポリペプチド配列を変化させない範囲内でコーディング領域に多様な変形が行われることがある。ポリヌクレオチド配列に対する説明は前述の通りである。
【0068】
一具現例として、前記目的タンパク質は、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)活性を有するポリペプチドであってもよい。すなわち、前記プロモーターの目的遺伝子は、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子であってもよい。
【0069】
本出願において、「グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)」は、「グルタミン酸システイン結合酵素」、「ガンマグルタミルシステインシンテターゼ(gamma-glutamylcysteine synthetase、GCS)」、または「GSH1タンパク質」とも呼ばれる酵素である。
【0070】
グルタミン酸システインリガーゼは、以下の反応を触媒することが知られている:
L-glutamate + L-cysteine + ATP <-> gamma-glutamyl cysteine + ADP + Pi
【0071】
また、グルタミン酸システインリガーゼが触媒する反応は、グルタチオン合成の最初の段階であることが知られている。
【0072】
前記グルタミン酸システインリガーゼを構成するアミノ酸配列は、公知のデータベースであるNCBIのGenBankからその配列を得ることができる。一例として、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来であってもよい。一例として、配列番号33のアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよいが、前記アミノ酸配列と同じ活性を有する配列は制限なく含まれてもよい。
【0073】
また、本出願の「グルタミン酸システインリガーゼ活性を有するポリペプチド」は、前記グルタミン酸システインリガーゼの野生型、非変異型もしくは天然型だけではなく、これと同じ活性を有するか、それより活性が強化された変異体も含む。
【0074】
本出願において、「変異型ポリペプチド」は、「変異体(variant)」と同じ意味で、1つ以上のアミノ酸が保存的置換(conservative substitution)及び/または変形(modification)において前記列挙された配列(the recited sequence)とは相違するが、前記タンパク質の機能(functions)または特性(properties)が維持されるタンパク質を称する。一例として、前記で説明したグルタミン酸システインリガーゼのうち、配列番号33のN末端から86番目のアミノ酸がシステイン以外のアミノ酸残基に置換された変異体であってもよい。
【0075】
変異体は、数個のアミノ酸置換、欠失または付加によって識別される配列(identified sequence)と相違する。そのような変異体は、一般的に、前記タンパク質のアミノ酸配列のうち1つ以上のアミノ酸を変形し、前記変形されたタンパク質の特性を評価して識別することができる。すなわち、変異体の能力は本来のタンパク質(native protein)に比べて増加されうる。また、一部の変異体は、N末端のリーダー配列または膜貫通ドメイン(transmembrane domain)などの1つ以上の部分が除去された変異体を含んでもよい。他の変異体は、成熟タンパク質(mature protein)のN末端及び/またはC末端から一部分が除去された変異体を含んでもよい。
【0076】
前記用語、「変異体」は、変異型、変形、変異されたタンパク質、変異などの用語(英語表現としては、 modification, modified protein, modified polypeptide, mutant, mutein, divergent, variantなど)を用いてもよく、変異された意味として用いられる用語であれば、これに制限されない。本出願の目的上、前記変異体は天然の野生型または非変形タンパク質に比べて変異されたタンパク質の活性が増加したものであってもよいが、これに制限されない。
【0077】
本出願において、用語、「保存的置換(conservative substitution)」は、一つのアミノ酸を類似の構造的及び/または化学的性質を有する別のアミノ酸に置換させることを意味する。前記変異体は1つ以上の生物学的活性をまだ保有しながら、例えば、1つ以上の保存的置換を有してもよい。このようなアミノ酸置換は一般的に残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性及び/または両親媒性(amphipathic nature)の類似性に基づいて発生することがある。
【0078】
また、変異体はポリペプチドの特性と二次構造に最小の影響を有するアミノ酸の欠失または付加を含んでもよい。例えば、ポリペプチドは翻訳同時(co-translationally)または翻訳後(post-translationally)にタンパク質の移行(transfer)に関与するタンパク質N末端のシグナル(またはリーダー)配列とコンジュゲートしてもよい。さらに、前記ポリペプチドはポリペプチドを確認、精製または合成できるように他の配列またはリンカーとコンジュゲートしてもよい。
【0079】
本出願において、「他のアミノ酸に置換」は、置換前のアミノ酸と異なるアミノ酸であれば制限されない。すなわち、配列番号33のアミノ酸配列のN末端から86番目のアミノ酸であるシステインが「システイン以外の他のアミノ酸」に置換されたのは、「86番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換される」ものとして表現できる。一方、本出願において、「特定アミノ酸が置換された」と表現する場合、他のアミノ酸に置換されたと別に表記しなくても、置換前のアミノ酸と異なるアミノ酸に置換されることであることは自明である。
【0080】
本出願の「グルタミン酸システインリガーゼ変異体」は、「グルタミン酸システインリガーゼ活性を有する(変異型)ポリペプチド」、「GSH1変異体」と記載してもよく、変異前のタンパク質、天然の野生型ポリペプチドまたは非変形ポリペプチドに比べてグルタチオン生産量を増加させることができるものであってもよいが、これに制限されない。
【0081】
前記変異体は、配列番号33のアミノ酸配列で1つ以上のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたものであってもよい。具体的には、前記変異体は、配列番号33のアミノ酸配列の86番目の位置に相応するアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変異を含んでもよい。前記他のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン及びヒスチジンから選択されるものであってもよい。
【0082】
一具現例として、前記配列番号33のアミノ酸配列で86番目位置に相応するアミノ酸がアルギニンに置換されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0083】
本出願において、「配列番号33のアミノ酸配列のN末端から86番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変異体」は、配列番号33のアミノ酸配列のN末端またはC末端、または中間のアミノ酸欠失/付加/挿入などにより86番ではない他の位置に記載される場合であっても、配列番号33のアミノ酸配列の86番位置に相応するアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変異体を含むことは自明である。また、本出願においてグルタミン酸システインリガーゼ変異体の一例として、配列番号33のアミノ酸配列のN末端から86番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変異体を記載したが、本出願のグルタミン酸システインリガーゼ変異体は、配列番号33のアミノ酸配列の変異体に制限されない。また、その他にグルタミン酸システインリガーゼ活性を有する任意のアミノ酸配列において、配列番号33のアミノ酸配列の86番位置に相応するアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変異体も本出願のグルタミン酸システインリガーゼ変異体の範囲に含まれることは自明である。任意のアミノ酸配列内で配列番号33のアミノ酸配列の86番目位置に相応するアミノ酸は、当業界に公知の様々な配列アライメント(alignment)方法により確認することができる。
【0084】
本出願の配列番号33のアミノ酸配列のN末端から86番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたグルタミン酸システインリガーゼ変異体は、配列番号33のアミノ酸配列またはこれと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上の相同性または同一性を有するアミノ酸配列を含むタンパク質であってもよい。また、このような相同性または同一性を有し、前記変異体に相応する効能を示すアミノ酸配列であれば、86番の位置以外に、一部の配列が欠失、変形、置換または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質も本出願の範囲に含まれることは自明である。相同性、同一性については、前述の通りである。
【0085】
本出願のグルタミン酸システインリガーゼ活性を有するポリペプチドをコードする遺伝子を「GSH1遺伝子」と称してもよい。
【0086】
前記遺伝子は酵母由来であってもよい。具体的には、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、より具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来であってもよい。具体的には、配列番号33のアミノ酸配列をコードする遺伝子であってもよいが、これに制限されない。
【0087】
本出願において、「GSH1遺伝子」、すなわち、グルタミン酸システインリガーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)により、または前記ポリペプチドを発現させようとする生物において優先されるコドンを考慮して、ポリペプチドのアミノ酸配列を変化させない範囲でコーディング領域に多様な変形が行われることがある。
【0088】
本出願のグルタミン酸システインリガーゼ活性を有するポリペプチドは、変異体配列も含むため、本出願の配列番号33のアミノ酸配列で86番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換されたタンパク質変異体をコードするポリヌクレオチド配列も制限なく含んでもよい。
【0089】
また、公知の遺伝子配列から調製することができるプローブ、例えば、前記ポリヌクレオチド配列の全部または一部に対する相補配列と厳格な条件下でハイブリット化して、配列番号33のアミノ酸配列、またはその86番アミノ酸が他のアミノ酸に置換されたタンパク質変異体をコードする配列も制限なく含んでもよい。
【0090】
本出願の他の1つの態様は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含む遺伝子発現用組成物を提供する。
【0091】
前記遺伝子発現用組成物は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドにより発現させることができる遺伝子を発現できる組成物を意味する。
【0092】
その例として、前記遺伝子発現用組成物は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含み、さらに前記ポリヌクレオチドをプロモーターで作動する構成を制限なく含んでもよい。
【0093】
本出願の遺伝子発現用組成物において、前記ポリヌクレオチドは導入された宿主細胞で作動可能に連結された遺伝子を発現させるようにベクター内に含まれた形態であってもよい。
【0094】
本出願の他の1つの態様は、前記プロモーター活性を有するポリヌクレオチド、または前記ポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含むベクターを含む。
【0095】
一具現例として、前記目的タンパク質は、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)活性を有するポリペプチドであってもよい。
【0096】
本出願で用いられる用語、「ベクター」は、適合した宿主内で目的タンパク質を発現させるように、適合した調節配列に作動可能に連結された前記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むDNA製造物を意味する。
【0097】
本出願の目的上、前記調節配列には、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドが含まれてもよい。
【0098】
一方、前記調節配列は、転写を開始するプロモーター、そのような転写を調節するための任意のオペレーター配列、適切なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列、及び転写及び解毒の終結を調節する配列などの構成を含んでもよい。ベクターは、適当な宿主細胞内に形質転換された後、宿主ゲノムとは無関係に複製または機能することができ、ゲノム自体に組み込まれることができる。
【0099】
本出願で用いられるベクターは特に限定されず、当業界で知られている任意のベクターを用いてもよい。例えば、酵母発現ベクターとして、 YIp型プラスミド(YIp:integrative yeast plasmid)及び染色体外プラスミドベクター(extrachromosomal plasmid vector)がすべて可能である。
【0100】
前記染色体外プラスミドベクターは、酵母エピソームプラスミド(YEp:episomal yeast plasmid)、複製酵母プラスミド(YRp:replicative yeast plasmid)及び酵母セントロメアプラスミド(YCp:yeast centromer plasmid)を含んでもよい。
【0101】
また、人工酵母染色体(YAC:artificial yeast chromosomes)も、本出願のベクターとして利用可能である。
【0102】
具体的な例として、利用可能なベクターは、pESCHIS、pESC-LEU、pESC-TRP、pESC-URA、Gateway pYES-DEST52、pAO815、pGAPZ A、pGAPZ B、pGAPZ C、pGAPα A、pGAPα B、pGAPα C、pPIC3.5K、pPIC6 A、pPIC6 B、pPIC6 C、pPIC6α A、pPIC6α B、pPIC6α C、pPIC9K、pYC2/CT、pYD1 Yeast Display Vector、pYES2、pYES2/CT、pYES2/NT A、pYES2/NT B、pYES2/NT C、pYES2/CT、pYES2.1、pYES-DEST52、pTEF1/Zeo、pFLD1、PichiaPinkTM、p427-TEF、p417-CYC、pGAL-MF、p427-TEF、p417-CYC、PTEF-MF、pBY011、pSGP47、pSEG46、pSGP36、 pSGP40、 ZM552、 pAG303GAL-ccdB、 pAG414GAL-ccdB、 pAS404、 pBridge、 pGAD-GH、 pGAD T7、 pGBK T7、 pHIS-2、 pOBD2、 pRS408、 pRS410、 pRS418、 pRS420、 pRS428、yeast micron A form、pRS403、pRS404、pRS405、pRS406、pYJ403、pYJ404、pYJ405及びpYJ406を含むが、これらに制限されない。
【0103】
前記ポリヌクレオチドの染色体内への挿入は、当業界で知られている任意の方法、例えば、相同組換えによって行われてもよいが、これに限定されるものではない。前記染色体に挿入されたかどうかを確認するための選別マーカー(selection marker)をさらに含んでもよい。選別マーカーは、ベクターで形質転換された細胞を選別、すなわち目的核酸分子が挿入されたかどうかを確認するためのものであり、薬物耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性または表面タンパク質の発現のような選択可能な表現型を付与するマーカーが用いられてもよい。選択剤(selective agent)が処理された環境では、選別マーカーを発現する細胞のみ生存したり他の表現形質を示すため、形質転換された細胞を選別することができる。 一例として、細胞内染色体挿入用ベクターを介して、染色体内の野生型ポリヌクレオチドを変異されたポリヌクレオチドと交替してもよい。
【0104】
本出願において、用語、「形質転換」は、目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを宿主細胞内に導入して、宿主細胞内で前記目的タンパク質が発現できるようにするものであってもよい。
【0105】
形質転換されたポリヌクレオチドは宿主細胞内で発現することさえできれば、宿主細胞の染色体内に挿入され位置するか、染色体外に位置するかに関係なく、これらをすべて含んでもよい。また、前記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、目的タンパク質をコードするDNA及びRNAを含んでもよい。前記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、宿主細胞内に導入されて発現できるものであれば、あらゆる形態で導入されるものであっても構わない。例えば、前記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、それ自体で発現されるのに必要なすべての要素を含む遺伝子構造体である発現カセット(expression cassette)の形態で宿主細胞に導入されてもよい。
【0106】
前記発現カセットは、通常、前記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されているプロモーター(promoter)、転写終結シグナル、リボソーム結合部位及び翻訳終結シグナルを含んでもよい。前記発現カセットは、それ自体の複製が可能な発現ベクターの形態であってもよい。また、前記目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、それ自体の形態で宿主細胞に導入されて、宿主細胞で発現に必要な配列と作動可能に連結されたものであってもよいが、これに限定されない。
【0107】
また、前記において、用語、「作動可能に連結」とは、本出願の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチドの転写を開始及び媒介させるプロモーター配列と前記遺伝子配列が機能的に連結されていることを意味する。
【0108】
本出願の目的上、前記プロモーターは、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドであってもよい。
【0109】
本出願のベクターを形質転換する方法は、核酸を細胞内に導入するあらゆる方法も含まれており、宿主細胞に応じて当分野で公知のように適合した標準技術を選択して行ってもよい。例えば、電気穿孔法(electroporation)、リン酸カルシウム(CaPO4)沈殿、 塩化カルシウム(CaCl2)沈殿 、微細注入法(microinjection)、ポリエチレングリコール(PEG)法、 DEAEデキストラン法、陽イオンリポソーム法、及び酢酸リチウムDMSO法などがあるが、これに制限されない。
【0110】
本出願の他の1つの態様は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチド及び目的タンパク質をコードする遺伝子を含むポリヌクレオチド、またはそれを含むベクターを含む微生物を提供する。
【0111】
前記目的タンパク質は、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)活性を有するポリペプチドであってもよい。本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド、目的タンパク質、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)活性を有するポリペプチド、及びベクターについては前述の通りである。
【0112】
前記微生物は酵母であってもよく、具体的には、サッカロマイセス属微生物であってもよい。より具体的には、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)であってもよい。
【0113】
前記微生物は、グルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)を発現する微生物、またはグルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)活性を有するポリペプチドを発現する微生物、またはグルタミン酸システインリガーゼ(Glutamate-cysteine ligase)活性を有するポリペプチドが導入された微生物であってもよいが、これに制限されない。
【0114】
一具現例として、前記微生物はグルタチオン生産能を有する微生物、天然的に弱いグルタチオン生産能を有する親菌株にグルタチオン生産能が強化された微生物、またはグルタチオン生産能がない親菌株にグルタチオン生産能が付与された微生物であってもよい。一具現例として、前記微生物は、配列番号33のアミノ酸配列内に1つ以上のアミノ酸変異を含むグルタミン酸システインリガーゼ変異体を発現する微生物であって、前記アミノ酸変異は配列番号33のN末端から86番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変異を含むものであってもよい。しかし、これに制限されない。前記グルタミン酸システインリガーゼ変異体については前述の通りである。
【0115】
本出願において、用語、タンパク質が「発現するように/される」とは、目的タンパク質、例えば、グルタミン酸システインリガーゼあるいはその変異体が微生物内に導入されるか、微生物内で発現されるように変形された状態を意味する。前記目的タンパク質が微生物内に存在するタンパク質である場合、内在的または変形前に比べてその活性が強化された状態を意味してもよい。
【0116】
具体的には、「タンパク質の導入」は、微生物が本来有していない特定タンパク質の活性を示すようになること、または当該タンパク質の内在的活性または変形前の活性に比べて向上した活性を示すものであってもよい。例えば、特定タンパク質をコードするポリヌクレオチドが微生物内の染色体に導入されるか、特定タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含むベクターが微生物内に導入されてその活性が示されるものであってもよい。
【0117】
また、「活性の強化」は、微生物が有する特定タンパク質の内在的活性または変形前の活性に比べて向上されたものであってもよい。「内在的活性」は、自然的または人為的な要因による遺伝的変異で微生物の形質が変化する場合、形質変化前の親菌株が本来有していた特定タンパク質の活性を意味するものであってもよい。
【0118】
本出願の目的上、前記活性の増強は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド配列を目的タンパク質の発現調節配列として用いて行われることであってもよい。前記目的タンパク質は、前述のように天然型または変異型であってもよいため、前記発現調節配列は、タンパク質変異体をコードする遺伝子の発現調節配列であるか、染色体上の天然型タンパク質をコードする遺伝子の発現調節配列であってもよい。
【0119】
その他に、他の活性強化方法も組み合わせて用いてもよい。例えば、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチド配列を目的タンパク質の発現調節配列として用いること以外にも、目的タンパク質をコードする遺伝子の細胞内コピー数増加、染色体上の天然型タンパク質をコードする遺伝子を前記タンパク質変異体をコードする遺伝子に交替する方法、前記タンパク質変異体の活性が強化されるように前記タンパク質をコードする遺伝子に変異を追加導入する方法、及び微生物にタンパク質変異体を導入する方法からなる群から選択されるいずれか1つ以上の方法を用いてもよいが、これに制限されない。
【0120】
本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを微生物で目的タンパク質の発現調節に用いることにより、目的タンパク質の活性を強化することができる。
【0121】
例えば、相応するタンパク質活性または濃度が、野生型または非変形微生物菌株におけるタンパク質の活性または濃度を基準として、一般的に最小1%、10%、25%、50%、75%、100%、150%、200%、300%、400%または500%、最大1000%または2000%まで増加するものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0122】
本出願において、用語、「非変形微生物」は、微生物に天然に発生できる突然変異を含む菌株を除外するものではなく、天然型菌株自体であるか、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含まない微生物、または本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換されていない微生物も含む。
【0123】
本出願の微生物は、グルタチオンを生産する微生物であってもよい。
【0124】
本出願の「グルタチオン(glutathione)」は、「グルタチオン」、「GSH」と相互交換的に用いられ、グルタミン酸(glutamate)、システイン(Cysteine)、グリシン(glycine)の3つのアミノ酸からなるトリペプチドを意味する。グルタチオンは、製薬、健康機能食品、味素材、食品、飼料添加物、化粧品などの原料として用いられてもよいが、これに制限されない。
【0125】
本出願において、「グルタチオンを生産する微生物」は、自然的または人為的に遺伝的変形が起こった微生物の全てを含み、外部遺伝子が挿入されたり、内在的遺伝子の活性が強化または不活性化されるなどの原因により特定メカニズムが弱くなったりまたは強化された微生物であって、目的とするグルタチオン生産のための遺伝的変異が起こったか、活性を強化した微生物であってもよい。本出願の目的上、前記グルタチオンを生産する微生物は、本出願のプロモーター活性を有するポリヌクレオチドを含み、野生型や非変形微生物と比較して目的とするグルタチオンを過量に生産できる微生物を意味してもよい。
【0126】
前記「グルタチオンを生産する微生物」は、「グルタチオン生産微生物」、「グルタチオン生産能を有する微生物」、「グルタチオン生産菌株」、「グルタチオン生産能を有する菌株」などの用語と混用して用いられてもよい。
【0127】
前記グルタチオン生産微生物は組換え微生物であってもよい。前記組換え微生物は前述の通りである。前記微生物は、さらにグルタチオン生産能増加のための生合成経路の強化、フィードバック阻害解除、分解経路もしくは生合成経路を弱める遺伝子不活性化などの変異を含むものであってもよく、そのような変異は人工的に、例えば、UV照射によって起こってもよいが、自然的なものを排除するものではない。
【0128】
本出願の他の1つの態様は、前記微生物を培地で培養する段階を含むグルタチオン製造方法を提供する。前記微生物、グルタチオンについては前述の通りである。菌株培養により、グルタチオンを菌体内に蓄積することができる。
【0129】
本出願の菌株の培養に用いられる培地及びその他の培養条件は、通常のサッカロマイセス属微生物の培養に用いられる培地であれば、特に制限なくいずれも用いてもよく、具体的には、本出願の菌株を適当な炭素源、 窒素源、リン源、無機化合物、アミノ酸及び/またはビタミンなどを含有する通常の培地内で好気性または嫌気性条件下で温度、pHなどを調節しながら培養してもよい。
【0130】
本出願において、前記炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、マルトースなどの炭水化物;マンニトール、ソルビトールなどの糖アルコール、ピルビン酸、乳酸、クエン酸などの有機酸;グルタミン酸、メチオニン、リジンなどのアミノ酸などが含まれてもよいが、これに制限されない。また、澱粉加水分解物、糖蜜、ブラックストラップ糖蜜、米ぬか、キャッサバ、バガス及びトウモロコシ浸漬液などの天然の有機栄養源が用いられてもよく、グルコース及び殺菌された前処理糖蜜(すなわち、還元糖に転換された糖蜜)などの炭水化物が用いられてもよく、その他の適正量の炭素源を制限なく多様に用いてもよい。これら炭素源は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0131】
前記窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどの無機窒素源;アミノ酸、ペプトン、NZ-アミン、肉類抽出物、酵母抽出物、麦芽抽出物、トウモロコシ浸漬液、カゼイン加水分解物、魚類またはその分解生成物、脱脂大豆ケーキまたはその分解生成物などの有機窒素源が用いられてもよい。これら窒素源は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよく、これに制限されない。
【0132】
前記リン源としては、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、またはそれに対応するナトリウム含有塩などが含まれてもよい。無機化合物としては、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化鉄、硫酸マグネシウム、硫酸鉄、硫酸マンガン、炭酸カルシウムなどが用いられてもよい。
【0133】
その他に前記培地にはアミノ酸、ビタミン及び/または適切な前駆体などが含まれてもよい。具体的には、前記菌株の培養培地には、L-アミノ酸などが添加されてもよい。具体的には、グリシン(glycine)、グルタミン酸(glutamate)、及び/またはシステイン(cysteine)などが添加されてもよく、必要に応じてはリジン(lysine)などのL-アミノ酸がさらに添加されてもよいが、必ずこれに制限されない。
【0134】
前記培地または前駆体は培養物に回分式または連続式で添加されてもよいが、これに制限されない。
【0135】
本出願において、菌株の培養中に水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、アンモニア、リン酸、硫酸などの化合物を培養物に適切な方法で添加して、培養物のpHを調整してもよい。また、培養中には脂肪酸ポリグリコールエステルなどの消泡剤を用いて気泡生成を抑制してもよい。また、培養物の好気状態を維持するために、培養物内に酸素または酸素含有気体を注入したり、嫌気及び微好気状態を維持するために気体の注入なしにあるいは窒素、水素または二酸化炭素ガスを注入してもよい。
【0136】
培養物の温度は25℃~40℃であってもよく、より具体的には、28℃~37℃であってもよいが、これに制限されない。培養期間は、所望の有用物質の生成量が得られるまで継続させてもよく、具体的には、1時間~100時間であってもよいが、これに制限されない。
【0137】
前記グルタチオンの製造方法は、前記培養段階の後、追加工程をさらに含んでもよい。前記追加工程は、グルタチオン用途に応じて適切に選択してもよい。
【0138】
具体的には、前記グルタチオンの製造方法は、前記培養段階の後、前記微生物、前記微生物の乾燥物、前記微生物の抽出物、前記微生物の培養物、前記微生物の破砕物から選択された1つ以上の物質からグルタチオンを回収する段階を含んでもよい。
【0139】
前記方法は、前記回収段階の前、または同時に微生物(菌株)を溶菌させる段階をさらに含んでもよい。菌株の溶菌は、本出願が属する技術分野で一般的に用いられる方法、例えば、溶菌用緩衝溶液、ソニケーター、熱処理及びフレンチプレッサーなどにより行ってもよい。また、前記溶菌段階は、細胞壁分解酵素、核酸分解酵素、核酸転移酵素、タンパク質分解酵素などの酵素反応を含んでもよいが、これに制限されない。
【0140】
本出願の目的上、前記グルタチオンの製造方法を通じてグルタチオンが高含量で含まれた乾燥酵母(Dry yeast)、酵母抽出物(yeast extract)、酵母抽出物混合粉末(yeast extract mix powder)、純粋精製されたグルタチオン(pure glutathione)を製造してもよいがこれらに制限されず、目的とする製品に応じて適切に製造してもよい。
【0141】
本出願における乾燥酵母(dry yeast)は、「微生物の乾燥物」「菌株乾燥物」などの用語と交換的に用いてもよい。前記乾燥酵母は、グルタチオンを蓄積した酵母菌体を乾燥させて製造してもよく、具体的には、飼料用組成物、食品用組成物などに含まれてもよいが、これに制限されない。
【0142】
本出願における酵母抽出物(yeast extract)は、「微生物の抽出物」「菌株抽出物」などの用語と互換的に用いてもよい。前記菌株抽出物は、前記菌株の菌体から細胞壁を分離して残った物質を意味してもよい。具体的には、菌体を溶菌させて収得した成分から細胞壁を除いた残りの成分を意味してもよい。前記菌株抽出物はグルタチオンを含み、グルタチオン以外の成分としては、タンパク質、炭水化物、核酸、繊維質のうちの1つ以上の成分が含まれてもよいが、これに制限されない。
【0143】
前記回収段階は、当技術分野で公知の適切な方法を用いて、目的物質であるグルタチオンを回収してもよい。
【0144】
前記回収段階は、精製工程を含んでもよい。前記精製工程は、菌株からグルタチオンのみを分離して純粋精製するものであってもよい。前記精製工程によって、純粋に精製されたグルタチオン(pure glutathione)が製造されることができる。
【0145】
必要に応じて、前記グルタチオンの製造方法は、前記培養段階の後に収得した菌株、その乾燥物、抽出物、培養物、破砕物及びそれから回収したグルタチオンから選択された物質と賦形剤とを混合する段階をさらに含んでもよい。前記混合段階により、酵母抽出物混合粉末(yeast extract mix powder)を製造することができる。
【0146】
前記賦形剤は、目的の用途や形態に応じて適宜選択して用いてもよく、例えば、デンプン、グルコース、セルロース、ラクトース、グリコーゲン、D-マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、マルトデキストリン、炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸一水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、メチルセルロース、コロイドシリカゲル、ヒドロキシプロピルスターチ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール、カゼイン、乳酸カルシウム、プリモジェル、アラビアガムから選択されるものであってもよく、具体的には、デンプン、グルコース、セルロース、ラクトース、デキストリン、グリコーゲン、D-マンニトール、マルトデキストリンから選択される1つ以上の成分であってもよいが、これらに制限されない。
【0147】
前記賦形剤は、例えば、保存剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、緩衝剤、安定化剤または等張化剤などを含んでもよいが、これに限定されない。
【0148】
本出願の他の1つの態様は、配列番号1または2のポリヌクレオチド配列において、92番、94番、102番、103番、249番、及び251番のヌクレオチドで構成された群から選択されるいずれか1つ以上のヌクレオチドが他のヌクレオチドに置換されたポリヌクレオチドのプロモーターとしての用途を提供する。
【0149】
前記ポリヌクレオチドについては前述の通りである。
【実施例】
【0150】
以下、本出願を実施例及び実験例を通じてより詳細に説明する。しかし、これらの実施例及び実験例は、本出願を例示的に説明するためのものであり、本出願の範囲がこれらの実施例及び実験例に限定されるものではない。
【0151】
実施例1:グルタチオン生産能を有するCJ-5菌株の収得
様々な菌株を含有している麹から菌株を収得し、それを改良してグルタチオン生産能を有する菌株を選別した。
【0152】
具体的には、大韓民国京畿道龍仁、利川、平沢、華城地域など合計20地域で米、大麦、緑豆、オート麦など穀物試料を採取して粉砕した後、練って布に包み、しっかり押して形を作った後、わらで包んで10日間発酵した後、ゆっくりと乾燥させて麹を製造した。
【0153】
製造した麹から様々な菌株を分離するために、下記のように実験を行った。5gの麹に45mlの生理食塩水を加えてミキサーで粉砕した。酵母菌株の純粋分離のために、連続希釈(serial dilution)してYPDアガー(酵母エキス10g/L、バクトペプトン20g/L、グルコース20g/L、蒸留水1リットル基準)に塗抹し、 30℃で48時間培養した。そして、コロニー形態と顕微鏡検証により、酵母のコロニーをYPDアガーにストリーキングした。250mlの三角フラスコにYPDブロスを25ml分注して、純粋分離した菌株を接種し、48時間振とう培養(30℃、200rpm)してグルタチオン生産量を確認し、菌株スクリーニングを行った。
【0154】
一次的に分離した菌株の改良のために、分離された菌株に突然変異(random mutation)を誘導した。具体的には、前記麹から分離した酵母中、グルタチオン生産が確認された菌株を分離してCJ-37菌株と命名した。CJ-37菌株を固体培地に培養した後、ブロスに接種して培養液を収得し、UVランプを用いて菌体にUVを照射した。その後、UV照射された培養液を平板培地に塗抹してコロニーを形成した変異菌株のみを分離収得し、これらのグルタチオン生産量を確認した。
【0155】
その結果、変異菌株の中で最も優れたグルタチオン生産量を示す菌株をグルタチオン生産菌株に選別し、CJ-5菌株と命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean CultureCenter of Microorganisms, KCCM)に2019年7月31日付で寄託して寄託番号KCCM12568Pを与えられた。
【0156】
実施例2:CJ-5菌株の追加改良実験を介したGSH1変異配列の開発
【0157】
実施例2-1:突然変異誘導及び変異配列の確認
CJ-5菌株のグルタチオン生産能をさらに改善するために、以下の方法で突然変異を誘導した。
【0158】
CJ-5菌株を固体培地に培養した後、ブロスに接種して培養液を収得し、UVランプを用いて菌体にUVを照射した。その後、UV照射された培養液を平板培地に塗抹してコロニーを形成した変異菌株のみを分離収得し、グルタチオン生産能が最も多く向上した菌株を分離してCC02-2490菌株と命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean Culture Center of Microorganisms、KCCM)に2020年1月17日に寄託し、受託番号KCCM12659Pを与えられた。前記菌株のグルタチオン生産能増加に関して、グルタチオン生合成遺伝子GSH1の塩基配列を分析した結果、GSH1遺伝子がコードするGSH1タンパク質の86番目のアミノ酸であるシステインがアルギニンに置換されたことを確認した。
【0159】
実施例2-2:GSH1タンパク質のC86残基置換の実験
前記実施例2-1の結果から、GSH1タンパク質の86番位置がグルタチオン生産に重要であると判断し、GSH1タンパク質の86番目のシステインアミノ酸が他のアミノ酸に置換された変異タンパク質を発現するようにサッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)CEN.PK2-1D及びサッカロマイセス・セレビシエ(S. cerevisiae)CJ-5菌株の変異菌株を製作し、グルタチオン生産量の増加を確認した。
【0160】
サッカロマイセス・セレビシエのGSH1タンパク質(配列番号33)の86番のシステインをアルギニンに置換した菌株を製作するために、非特許文献15に開示された内容を参考にして、pWAL100及びpWBR100プラスミドを用いた。具体的には、CJ-5菌株のゲノミックDNAを鋳型(template)として、以下のようにPCRを行った。配列番号34と配列番号35のプライマーを用いたPCRを行い、N端末 BamHIフランキング配列、GSH1 ORFの開始コドン及びC86R変異コード配列を含むGSH1 N端末の一部配列を確保し、配列番号36と配列番号37のプライマーを用いて、C末端XhoIフランキング配列、GSH1 ORF終結コドン及びC86R変異コード配列を含むGSH1 C末端の一部配列を確保した。その後、これら2つの配列を鋳型(template)として、配列番号34と配列番号37を用いてオーバーラップPCRを行った結果、86番目のシステインがアルギニンに置換されたGSH1変異タンパク質コード配列、N端末 BamHI、C末端 XhoI制限酵素配列を含むGSH1 ORF切片を確保した。前記ORF切片は、BamHI及びXhoI処理後、同じ酵素で処理したpWAL100ベクターにクローニングしてpWAL100-GSH1(C86R)ベクターを製造した。
【0161】
また、CJ-5菌株のゲノミックDNAを鋳型として、配列番号38と配列番号39を用いたPCRを行い、N端末 SpeI、 C末端 NcoI制限酵素配列を含むGSH1 ORF終結コドン後の500bp断片を確保して、SpeI、NcoI制限酵素を処理した。その後、同じ制限酵素を処理したpWBR100にクローニングしてpWBR100-GSH1ベクターを製造した。
【0162】
最終的に酵母に導入するDNA切片を製作するために、先に製作した pWAL100-GSH1(C86R)ベクターを鋳型として、配列番号34と配列番号40のプライマーを用いてアルギニン変異暗号化配列とKlURA3一部を含むPCR産物を獲得し、pWBR100-GSH1ベクターを鋳型として配列番号41と配列番号39のプライマーを用いてKlURA3一部とGSH1終結コドン後の500bpを含むPCR産物を獲得した。その後、各PCR産物を同じモル比でS. cerevisiae CEN.PK2-1D及びS. cerevisiae CJ-5に形質転換した。PCRは、95℃で熱変性過程5分、53℃で結合過程1分、72℃で重合過程1kb当たり1分の条件で行い、酵母の形質転換はGeitzの論文(非特許文献16)を変形したリチウムアセテート法(Lithium acetate method)を用いた。具体的には、O.D. 0.7~1.2の酵母細胞をリチウムアセテート/TEバッファーで2回洗浄した後、前記PCR産物と一本鎖DNA(Sigma D-7656)を一緒に混合し、リチウムアセテート/TE/40%PEGバッファーで30分間30℃、42℃で15分間静置培養した後、細胞をウラシル(Uracil)を含まないSC(2%グルコース)アガープレートでコロニーが見えるまで培養し、GSH1 C86R変異暗号化配列とKlURA3遺伝子が導入された菌株を獲得した。その後、KlURA3を除去するために、各菌株を2mlのYPDにオーバーナイト培養した後、1/100希釈して0.1%の5-FOAを含むSC(2%グルコース)アガープレートに塗抹してウラシル(Uracil)マーカーを除去したS . cerevisiae CEN.PK2-1D GSH1 C86R変異菌株及びS. cerevisiae CJ-5 GSH1 C86R変異菌株を製作した。アルギニン以外に残りの18種のアミノ酸に置換されたGSH1変異タンパク質を発現できる菌株も配列番号35及び配列番号36のプライマーで配列上の86番アルギニンコーディング配列を他のアミノ酸をコードする配列に置換したプライマー対を用いた点を除いては同じ方法で製作した。
【0163】
【0164】
前記で製作した各菌株を26時間培養して生産したグルタチオン(GSH)濃度を測定した結果を表2及び表3に示した。
【0165】
【0166】
【0167】
実験結果、GSH1タンパク質の86番システインを他のアミノ酸に置換する場合、野生型GSH1タンパク質を含む場合より最大27%以上グルタチオン生産能が増加することを確認した。
【0168】
実施例2-3:グルタチオン生産能を増加させるための追加突然変異の誘導及び変異配列の確認
前記CC02-2490菌株のグルタチオン生産能をさらに改善するために、以下の方法で突然変異を誘導した。
【0169】
CC02-2490菌株を固体培地に培養した後、ブロスに接種して培養液を収得し、UVランプを用いて菌体にUVを照射した。その後、UV照射された培養液を平板培地に塗抹してコロニーを形成した変異菌株のみを分離収得し、グルタチオン生産能が最も多く向上した菌株GSH1のコーディング領域及びアップストリーム領域の配列を分析した。
【0170】
その結果、GSH1 ORF上端-250(C→T)、-252(G→A)、-398(A→T)、-399(A→C)、-407(T→C)、-409(T→C)位置で変異が起こったことを確認した。前記菌株をCC02-2544菌株と命名し、ブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センター(Korean CultureCenter of Microorganisms、KCCM)に2020年2月20日付で寄託し、受託番号KCCM12674Pを与えられた。
【0171】
実施例2-4:GSH1プロモーター変異によるグルタチオン生産能の確認
プロモーター変異の有無によるグルタチオン生産能を比較するために、実施例2-1で製作したCC02-2490菌株及び実施例2-3で製作したCC02-2544菌株のグルタチオン生産能を測定した。対照群として野生型であるCEN.PK1-D菌株とCJ-5菌株のグルタチオン生産能も測定し、下記表4に示した。
【0172】
【0173】
実験結果、野生型であるCEN.PK1-D菌株に対してCC02-2544菌株のグルタチオン生産量は、508%に大きく増加したことを確認した。
【0174】
また、CC02-2544は、親菌株CC02-2490菌株に対して128%以上のグルタチオン生産量が増加することを確認した。
【0175】
結果的に、GSH1遺伝子のプロモーター変異を通じてグルタチオン生産能の増加につながることを確認した。
【0176】
実施例3:菌株別GSH1プロモーター変異導入実験
菌株によるプロモーター変異の効果を確認するために、実施例2-3で確認したプロモーター変異を野生型菌株、CJ-5菌株及び実施例2-1で製作したCC02-2490に導入してグルタチオン生産能を評価した。
【0177】
まず、変異導入のために配列アライメントを行った結果、CJ-5菌株のGSH1 ORF upstream配列(配列番号2)を確認した結果、Saccharomyces cerevisiae CEN KSD-Yc、YJM1450、YJM1401、YJM1307菌株とは同じGSH1プロモーター配列を有することを確認した。ただし、野生型菌株(Saccharomyces cerevisiae CEN.PK1-D)のGSH1 ORF upstream配列(配列番号1)と比較したとき、CJ-5菌株のプロモーターは-74番位置にアデニンが挿入されていることを確認した。
【0178】
これにより、Saccharomyces cerevisiae CEN.PK1-DのGSH1 ORF upstream配列基準において、CJ-5菌株のGSH1 ORF upstream配列基準-250、-252、-398、-399、-407、-409番に相応する位置は、-249、-251、-397、-398、-406、-408番位置であることを配列アライメントにより把握した。
【0179】
次に、Saccharomyces cerevisiae CEN.PK1-D、CJ-5菌株及びCC02-2490菌株のそれぞれのGSH1 ORFアップストリーム領域に、前述の6種の変異を導入した。
【0180】
具体的には、GSH1 ORF upstream領域に前述の6種の変異を導入した菌株を製作するために、非特許文献15に開示された内容を参考にしてpWAL100及びpWBR100プラスミドを用いた。
【0181】
GSH1 ORF upstream領域6種の変異を含むGSH1 ORF upstream~GSH1 ORF領域切片を遺伝子合成した後、配列番号34と配列番号37のプライマーを用いてPCRを行い、N端末 BamHI制限酵素配列及びC末端XhoI制限酵素配列を含む6種の変異が含まれたGSH1 ORF upstream領域切片を確保した。その後、pWAL100と当該切片にBamHI及びXhoIを処理した後、ライゲーションしてプラスミドを製作した。
【0182】
また、CJ-5菌株のゲノミックDNAを鋳型として、配列番号38と配列番号39を用いたPCRを行い、N端末 SpeI、 C末端 NcoI制限酵素配列を含むGSH1 ORF終結コドン以後の500bp断片を確保して、SpeI、NcoI制限酵素を処理した。その後、同じ制限酵素を処理したpWBR100にライゲーションして1種のプラスミドを製作した。
【0183】
最終的に酵母に導入するDNA切片を製作するために、先に製作したpWALプラスミドを鋳型として、配列番号34と配列番号40のプライマーを用いて6種の変異が含まれたGSH1 ORF upstream~GSH1 ORF領域配列とKlURA3一部を含むPCR産物を獲得し、pWBRプラスミドを鋳型として配列番号41と配列番号39のプライマーを用いてKlURA3一部とGSH1 ORF終結コドン以後の500bpを含むPCR産物を獲得した。その後、各PCR産物を同一モル比でS. cerevisiae CEN.PK2-1D、S. cerevisiae CJ-5及びCC02-2490菌株に形質転換した。PCRは、95℃で熱変性過程5分、53℃で結合過程1分、72℃で重合過程1kb当たり1分の条件で行い、酵母の形質転換は Geitzの論文(非特許文献16)を変形したリチウムアセテート法(Lithium acetate method)を用いた。O.D. 0.7~1.2の細胞をリチウムアセテート/TEバッファーで2回洗浄した後、DNAと一本鎖DNA(Sigma D-7656)を一緒に混合し、リチウムアセテート/TE/40%PEGバッファーで30分間30℃、42℃で15分間静置培養した。その後、細胞をウラシル(Uracil)を含まないSC(2%グルコース)アガープレートでコロニーが見えるまで培養し、GSH1 ORF upstream領域内6種の変異とKlURA3遺伝子が導入された各菌株を獲得した。その後、KlURA3を除去するために、各菌株を2mlのYPDにオーバーナイト培養した後、1/100希釈して0.1%の5-FOAが含まれたSC(2%グルコース)アガープレートに塗抹してウラシル(Uracil)マーカーが除去されたS . cerevisiae CEN.PK2-1D由来GSH1 ORF upstream領域6種変異株、S. cerevisiae CJ-5及びCC02-2490由来GSH1 ORF upstream領域6種変異株を製作した。
【0184】
各菌株のGSH生産量を下記表5に示した。
【0185】
【0186】
実験結果、同じ菌株でプロモーター変異有無により最大141%までグルタチオン生産量が増加することを確認した。
【0187】
結果的に、GSH1遺伝子のプロモーター変異を通じてグルタチオン生産能の増加につながることを確認した。
【0188】
実施例4:GSH1プロモーター変異導入実験(1)
先の実施例で確認した内容に基づき、置換位置のうち一部のみ変異を導入してもグルタチオン生産能が増加するかを調べるための実験を行った。
【0189】
具体的には、GSH1のORF上端、-250及び-252の変異2点(-250(C→T)、-252(G→A))、-398、-399、-407及び-409の変異4点(-398(A→T)、-399(A→C)、-407(T→C)、-409(T→C))をCEN.PK1-D、CJ-5、CC02-2490菌株にそれぞれ導入した(CEN.PK1-Dに変異を導入する場合、相応する位置である-249、-251、-397、-398、-406、-408位置に変異を導入し、以下の実施例に記載した内容も同様である)。GSH1 ORF upstream領域内に前記2点または4点変異を含んでいるGSH1 ORF upstream~GSH1 ORF領域切片を遺伝子合成した後、配列番号34と配列番号37のプライマーを用いたPCRを行い、N端末 BamHI制限酵素配列及びC末端 XhoI制限酵素配列を含む2点または4点の変異が含まれたGSH1 ORF upstream領域切片を確保したことを除き、実施例3に記載したのと同様の方法で菌株を製作した。
【0190】
実験結果を下記表6~表8に示した。
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
実験結果、2点変異(-250(C→T)、-252(G→A))または4点変異(-398(A→T)、-399(A→C)、-407(T→C)) 、-409(T→C))それぞれ導入する場合、いずれもプロモーター領域に変異のない菌株に比べてグルタチオン生産能が増加することを確認し、その生産量が最大135%まで増加することが分かった。
【0195】
これにより、本出願で開発したプロモーター変異位置は、最初に確認した変異位置6点全て変異の場合だけでなく、その一部のみ変異してもグルタチオン生産能を大きく増加させることが分かった。
【0196】
実施例5:GSH1プロモーター変異導入実験(2)
先の実施例で確認した内容に基づいて、置換位置のうち一部のみ変異を導入してもグルタチオン生産能が増加するかを調べるための実験を行った。具体的には、-250(C→T)変異(1点変異(1))または-252(G→A)変異(1点変異(2))、及び前記変異の両方をCEN.PK1-D及びCJ-5菌株に導入し、グルタチオン生産能を測定して下記表9及び表10に示した。
【0197】
このために、GSH1 ORF upstream領域内に前記1点または2点変異を含んでいるGSH1 ORF upstream~GSH1 ORF領域切片を遺伝子合成した後、配列番号34と配列番号37のプライマーを用いたPCRを行い、N端末 BamHI制限酵素配列及びC末端XhoI制限酵素配列を含む1点または2点の変異が含まれたGSH1 ORF upstream領域切片を確保した点を除き、実施例3に記載したのと同様の方法で菌株を製作した。
【0198】
【0199】
【0200】
実験結果、変異を一部のみ導入する場合もグルタチオン生産能が増加することが分かった。
【0201】
これにより、本出願で発掘したプロモーター変異位置は、最初に発掘した変異位置6点全て変異させる場合だけでなく、その一部のみ変異されてもグルタチオン生産能を大きく増加させることが分かった。
【0202】
実施例6:GSH1プロモーター変異導入実験(3)
先の実施例で確認した内容に基づいて、置換位置のうち一部のみ変異を導入してもグルタチオン生産能が増加するかを調べるための実験を行った。
【0203】
具体的には、-398、-399、-407、-409の変異4点(-398(A→T)、-399(A→C)、-407(T→C)、-409(T→C))を単独または組み合わせて、変異を導入した。
【0204】
各変異内容は以下の通りである。
1)1点変異(1): GSH1 -398(A→T)
2)1点変異(2): GSH1 -399(A→C)
3)1点変異(3): GSH1 -407(T→C)
4)1点変異(4): GSH1 -409(T→C)
5)2点変異(1): GSH1 -398(A→T)、 -399(A→C)
6)2点変異(2): GSH1 -398(A→T)、 -407(T→C)
7)2点変異(3): GSH1 -398(A→T)、 -409(T→C)
8)2点変異(4): GSH1 -399(A→C)、 -407(T→C)
9)2点変異(5): GSH1 -399(A→C) 、-409(T→C)
10)2点変異(6): GSH1 -407(T→C)、 -409(T→C)
11)4点変異:GSH1 -398(A→T)、 -399(A→C)、 -407(T→C)、 -409(T→C)
【0205】
このために、GSH1 ORF upstream領域内に前記1点、2点または4点変異を含むGSH1 ORF upstream~GSH1 ORF領域切片を遺伝子合成した後、配列番号34と配列番号37のプライマーを用いたPCRを行い、N末端のBamHI制限酵素配列及びC末端のXhoI制限酵素配列を含む1点、2点または4点の変異が含まれたGSH1 ORF upstream領域切片を確保した点を除いては、実施例3に記載したものと同様の方法で菌株を製作した。
【0206】
菌株のグルタチオン生産能を確認した結果を下記表11及び表12に示した。
【0207】
【0208】
【0209】
【0210】
【0211】
実験結果、4点変異を全て導入する場合だけでなく、そのうちの一部のみを導入してもプロモーター領域に変異がない菌株に比べてグルタチオン生産能が増加することが確認できた。 特に、5)2点変異(1):GSH1 -398(A→T)、-399(A→C)、10)2点変異(6):GSH1 -407(T→C)、-409(T→C )を導入した場合、プロモーター領域に変異がない菌株に比べてグルタチオン生産能が大幅に増加した。
【0212】
これにより、本出願で発掘したプロモーター変異位置は、最初に発掘した変異位置6点全て変異される場合だけでなく、その一部だけが変化されてもグルタチオン生産能を大きく増加させることが分かった。
【0213】
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者は本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形で実施されることができることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、制限的なものではないと理解するべきである。本出願の範囲は、前記の詳細な説明ではなく、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【0214】
【0215】
【0216】
【配列表】