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▶ シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】車両用ローラ型フリーホイールユニット
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/067 20060101AFI20240408BHJP
   F16D 41/07 20060101ALI20240408BHJP
   B60K 17/04 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
F16D41/067
F16D41/07 A
B60K17/04 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022533559
(86)(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-06
(86)【国際出願番号】 DE2020100949
(87)【国際公開番号】W WO2021110200
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】102019133200.1
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ライムヒェン
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-185048(JP,A)
【文献】特開2019-196810(JP,A)
【文献】特開2012-159105(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157236(WO,A1)
【文献】特開2002-349677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/06-41/067
F16D 41/07
B60K 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側スリーブ要素(40)と、
内側リング要素(20)と、
ばね/ローラ要素(35)を収容するためのケージ要素(30)と、を備え、
前記内側リング要素が、前記内側リング要素(20)と前記ケージ要素(30)とを相互に接続するために、前記ケージ要素(30)の対応するレセプタクル(31)内に、軸線方向に挿入され得る少なくとも1つの径方向に突出しているスライドシュー要素(21)を含み、
前記内側リング要素(20)が、前記内側リング要素(20)の周囲に配置された複数のスライドシュー要素(21)を含み、前記ケージ要素(30)が、対応して配置されたレセプタクル(31)を含み、前記スライドシュー要素(21)によって前記外側スリーブ要素(40)の中心軸がシャフトの回転軸にくるように配置され、かつ前記外側スリーブ要素(40)が支持されるように、前記外側スリーブ要素(40)が、前記スライドシュー要素(21)の外側表面上に摺動される、車両用ローラ型フリーホイールユニット(10)。
【請求項2】
前記ローラ型フリーホイールユニット(10)を、シャフトに回転不可能に接続するために、前記内側リング要素(20)が、内側に、少なくとも1つのスプライン(22)を含む、請求項1に記載のローラ型フリーホイールユニット(10)。
【請求項3】
前記内側リング要素(20)および/または前記ケージ要素(30)が、端面に少なくとも1つのオイルガイド表面(24)を含む、請求項1または2に記載のローラ型フリーホイールユニット(10)。
【請求項4】
前記ケージ要素(30)が、前記ケージ要素(30)と前記内側リング要素(20)とを軸線方向に固定するために、接続状態において、前記内側リング要素(20)の、対応して形成された接触表面をラッチ留めする少なくとも1つのラッチ手段(32)を含み、複数のラッチ手段(32)が提供され、それぞれが前記ケージ要素(30)の前記レセプタクル(31)の片側に提供され、それぞれが前記スライドシュー要素の接触表面をラッチ留めする、請求項1からのいずれか一項に記載のローラ型フリーホイールユニット(10)。
【請求項5】
前記ケージ要素(30)が、前記ばね/ローラ要素(35)を収容するための、周方向に配置された凹部(34)を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のローラ型フリーホイールユニット(10)。
【請求項6】
前記外側スリーブ要素(40)が、硬化深絞り加工構成要素として提供され、前記ケージ要素(30)が、可塑性構成要素として提供され、前記内側リング要素(20)が、焼結構成要素として提供される、請求項1からのいずれか一項に記載のローラ型フリーホイールユニット(10)。
【請求項7】
ローラ型フリーホイールユニット(10)を組み立てる方法であって、
請求項1からのいずれか一項に記載のローラ型フリーホイールユニット(10)を提供する工程と、
前記内側リング要素(20)の前記スライドシュー要素(21)を、前記ケージ要素(30)の前記対応して形成されたレセプタクル(31)内に軸線方向に挿入することにより、前記ケージ要素(30)を前記内側リング要素(20)に接続する工程と、
前記ばね/ローラ要素(35)を、前記ばね/ローラ要素(35)を収容するための凹部(34)内に配置する工程と、
前記内側リング要素(20)に接続された前記ケージ要素(30)を、前記外側スリーブ要素(40)内に挿入する工程であって、前記スライドシュー要素(21)によって、前記外側スリーブ要素(40)の中心軸がシャフトの回転軸にくるように配置され、かつ前記外側スリーブ要素(40)が支持される、工程と、を含む、方法。
【請求項8】
内燃機関と、電気モータと、を備える、車両であって、前記内燃機関および前記電気モータが、請求項1からのいずれか一項に記載の少なくとも1つのローラ型フリーホイールユニット(10)に連結され、前記ローラ型フリーホイールユニット(10)が、電気のみによる駆動動作中に、前記内燃機関を前記電気モータから切り離すように構成されている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ローラ型フリーホイールユニットと、そのようなローラ型フリーホイールユニットを組み立てる方法と、そのようなローラ型フリーホイールユニットを有する車両と、そのようなローラ型フリーホイールユニットの車両における使用と、に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラ型フリーホイールユニットは、原理的には先行技術から既知であり、とりわけ自動車のトランスミッションにおいて様々な設計で使用されている。フリーホイールユニットの設計においては、フリーホイールの実際の機能に加えて、フリーホイールユニットの、例えば、ハウジング部品、シャフト要素、ベアリング機構などといった周辺の部品との、それぞれの接続選択肢を考慮する必要がある。さらに、十分な潤滑を提供すること、また最後に、最も費用対効果の高い生産方法を提供することも求められる。
【0003】
現在、車両用ローラ型フリーホイールユニットを改良するさらなるニーズが存在するということが明らかになってきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような背景事情を受けて、本発明の目的は、改善された車両用ローラ型フリーホイールユニットを提供することである。以下の説明を読んだ当業者によって言及または認識され得るこれらの目的および他の目的が独立請求項の主題によって実現される。従属請求項は、本発明の中心的な考え方を、特に有利にさらに形成するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用ローラ型フリーホイールユニットは、外側スリーブ要素と、内側リング要素と、ばね/ローラ要素を収容するためのケージ要素と、を備え、内側リング要素は、内側リング要素とケージ要素とを相互に接続するために、ケージ要素の対応するレセプタクル内に軸線方向に挿入され得る少なくとも1つの径方向に突出するスライドシュー要素を含む。
【0006】
換言すれば、本発明は、軸線方向に一緒に使用され得る実質的に3つのピースから構成されるローラ型フリーホイールユニットであって、本発明によるローラ型フリーホイールユニットを比較的容易に組み立てることを可能にするように、中央配置および誘導機能がスライドシュー要素によって提供される、ローラ型フリーホイールユニットを提案するものである。
【0007】
有利なことに、内側リング要素が、内側リング要素の周囲に配置された複数のスライドシュー要素を含み、ケージ要素が、対応して配置されたレセプタクルを含み、外側スリーブ要素が、スライドシュー要素によって中央に配置され、かつ支持されるように、外側スリーブ要素が、スライドシュー要素の外側表面上に摺動される。
【0008】
好ましくは、ローラ型フリーホイールユニットを、シャフトに回転不可能に接続するために、内側リング要素が、内側に、少なくとも1つのスプラインを含む。そのようなスプラインは、ローラ型フリーホイールユニットを対応するシャフトに、特に迅速に接続することを可能にし、提供されるトルクに応じて数本のスプラインが提供されてもよい。
【0009】
さらに、内側リング要素および/またはケージ要素が、端面に少なくとも1つのオイルガイド表面を含むことが好ましい。有利なことに、ケージ要素が、ケージ要素と内側リング要素とを軸線方向に固定するために、接続状態において、内側リング要素の、対応して形成された接触表面をラッチ留めする少なくとも1つのラッチ手段を含み、好ましくは複数のラッチ手段が提供され、好ましくはそれぞれがケージ要素のレセプタクルの片側に提供され、それぞれがスライドシュー要素の接触表面をラッチ留めする。
【0010】
好ましくは、ケージ要素が、ばね/ローラ要素を収容するための、周方向に配置された凹部を含む。好ましくは、外側スリーブ要素が、硬化深絞り加工構成要素として提供され、ケージ要素が、可塑性構成要素として提供され、内側リング要素が、焼結構成要素として提供される。
【0011】
また、本発明は、ローラ型フリーホイールユニットを提供する工程と、内側リング要素のスライドシュー要素を、ケージ要素の、対応して形成されたレセプタクル内に軸線方向に挿入することにより、ケージ要素を内側リング要素に接続する工程と、ばね/ローラ要素を、ばね/ローラ要素を収容するための凹部内に配置する工程と、内側リング要素に接続されたケージ要素を、外側スリーブ要素内に挿入する工程であって、外側スリーブ要素が、スライドシュー要素によって、中央に配置され、かつ支持される工程と、を含む、ローラ型フリーホイールユニットを組み立てる方法に関する。
【0012】
さらに、本発明は、内燃機関と、電気モータと、を備える、車両であって、内燃機関および電気モータが、上述の少なくとも1つのローラ型フリーホイールユニットに連結され、ローラ型フリーホイールユニットが、電気のみによる駆動動作中に、内燃機関を電気モータから切り離すように構成されている、車両に関する。
【0013】
最後に、本発明は、内燃機関と電気モータとを連結するための、車両における上述のローラ型フリーホイールユニットの使用であって、ローラ型フリーホイールユニットが、電気のみによる駆動動作中に、内燃機関を電気モータから切り離すように構成されている、使用に関する。
【0014】
本発明のさらなる特徴、利点、および可能な用途が、以下の説明、例示的実施形態、および図から得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1a】本発明によるローラ型フリーホイールユニットの好ましい一実施形態の概略図である。
図1b】本発明によるローラ型フリーホイールユニットの好ましい一実施形態の概略図である。
図2a】本発明によるローラ型フリーホイールユニットの内側リング要素の概略図である。
図2b】本発明によるローラ型フリーホイールユニットの内側リング要素の概略図である。
図3a】本発明によるローラ型フリーホイールユニットのケージ要素の概略図である。
図3b】本発明によるローラ型フリーホイールユニットのケージ要素の概略図である。
図4a】内側リング要素に接続されたケージ要素の概略図である。
図4b】内側リング要素に接続されたケージ要素の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1aおよび図1bは、本発明によるローラ型フリーホイールユニット10の好ましい一実施形態の2つの概略図を示す。ローラ型フリーホイールユニット10は、内側リング要素20と、ケージ要素30と、外側スリーブ要素40と、を備える。図示されているローラ型フリーホイールユニット10は、とりわけ、ハイブリッド車両において、内燃機関を電気モータに連結するため、とりわけ、電気だけで駆動されるモードにおいて、内燃機関を電気モータから切り離すためのカップリングとして使用され得る。図においては、分かりやすくするために、径方向又は円周方向に配列された要素のそれぞれの1つの要素のみに符号が付されている。
【0017】
図2aおよび図2bは、図1aおよび図1bに図示されている本発明によるローラ型フリーホイールユニット10の内側リング要素20の2つの概略図を示す。内側リング要素20は、外周上に配置された複数のスライドシュー要素21を備え、図示されている好ましい実施形態では、5つのスライドシュー要素21が、内側リング要素20の外周上に均一に設けられている。内側リング要素20は、モータのシャフトの、対応して形成されている歯列に回転不可能に接続するために設けられている複数の軸線方向の内側スプライン22をさらに備える。また、内側リング要素20は、外周に設けられた複数の挟持傾斜部23を備え、これらの挟持傾斜部23を用いて、ローラ型フリーホイールユニット10のローラどうし(図4aおよび図4bを参照)が、既知の様態で互いに相互作用して、外側スリーブ要素40と内側リング要素20とを回転不可能に連結することができるか、または対応するフリーホイールを提供することができる。図2aおよび図2bに明確に見ることができるように、スライドシュー要素21は、非対称の設計になっていてもよい。すなわち、スライドシュー要素21は、例えば、ケージ要素30(図4aおよび図4bを参照)の対応する表面と接触させられるために、面取りがされている脚を有する。スライドシュー要素21の径方向外側表面は、外側スリーブ要素40に対する接触面として機能し、均一に分布されたスライドシュー要素21の配置により、外側スリーブ要素40が中央に配置され、かつ支持され得る。
【0018】
図3aおよび図3bは、図1aおよび図1bに示される、本発明によるローラ型フリーホイールユニット10のケージ要素30の2つの概略図を示す。
【0019】
ケージ要素30は、レセプタクル31を備え、レセプタクル31と、内側リング要素20のスライドシュー要素21とを、軸線方向に互いに対して押すことで、スライドシュー要素21がレセプタクル31に挿入され得る。図3aおよび図3bに明確に見ることができるように、ケージ要素30は、レセプタクル31の片側にラッチ要素32を備え、図示されている好ましい実施形態においては、これらのラッチ要素32は、スナップオン式の突起物32である。これらのラッチ要素32は、スライドシュー要素21の軸線方向裏側に係合し、それによって両部品を軸線方向に固定することができる(図4aを参照)。また、さらなるガイド面又はガイド溝33を、レセプタクル31の、ラッチ要素32とは反対の側に設けることができる。最後に、ケージ要素30は、ばね/ローラ要素35(図4bを参照)を収容するための凹部34を含む。図4aおよび図4bは、内側リング要素20とケージ要素30とによって形成されるプレアセンブリの2つの概略図を示し、プレアセンブリは、組み立て後に、外側スリーブ要素40内に挿入され得るものである。図4bにおいてとりわけ良く見ることができるように、内側リング要素20は、端面に設けられた、潤滑油を導入するように機能するオイルガイド表面24又はオイルガイド幾何学形状24を最終的に備えることができる。
【0020】
本発明によるローラ型フリーホイールユニット10は、好ましくは、まず、内側リング要素20のスライドシュー要素を、ケージ要素30の対応する形状に形成されたレセプタクル中又は上に、軸線方向に摺動させることによって、ケージ要素30を内側リング要素20に接続するように組み立てられる。次に、ばね/ローラ要素が、ばね/ローラ要素を収容するための凹部内に挿入される。最後に、このようにして形成されたプレアセンブリが、外側スリーブ要素40の上に摺動され、スライドシュー要素によって、外側スリーブ要素40が中央に配置され、支持される。
【0021】
しかしながら、本発明は、以下の請求項の主題を含む限りにおいて、ここまでに説明された好ましい例示的実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
10 ローラ型フリーホイールユニット
20 内側リング要素
21 スライドシュー要素
22 スプライン
23 挟持傾斜部
24 オイルガイド表面
30 ケージ要素
31 レセプタクル
32 ラッチ要素
33 ガイド溝
34 凹部
35 ばね/ローラ要素
40 外側スリーブ要素
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4a
図4b