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特許7467634接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
H02K15/02 F
H02K15/02 E
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022535343
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2021025452
(87)【国際公開番号】W WO2022009878
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】P 2020117265
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003034
【氏名又は名称】東亞合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】竹田 和年
(72)【発明者】
【氏名】高谷 真介
(72)【発明者】
【氏名】平山 隆
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 賢明
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 真
(72)【発明者】
【氏名】山田 成志
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/123885(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/129813(WO,A1)
【文献】特開2018-038119(JP,A)
【文献】特許第4648765(JP,B2)
【文献】特許第6164029(JP,B2)
【文献】国際公開第2018/116881(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状鋼板を送りながら複数枚の鋼板部品を打ち抜き、前記各鋼板部品を、接着剤を介して積層させることにより接着積層コアを製造する方法であって、
プレス加工油を塗布する前の前記帯状鋼板の片面又は両面に、硬化促進剤を塗布及び乾燥させて硬化促進部を形成する工程と、
前記硬化促進部の表面に前記プレス加工油を塗布する工程と、
を有することを特徴とする接着積層コア製造方法。
【請求項2】
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進部と、前記硬化促進部の前記表面上に配置された前記プレス加工油とを有する前記第1鋼板部品を準備する第1の工程と、
第2面と、前記第2面上に配置された前記接着剤と、を有する前記第2鋼板部品を準備する第2の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第3の工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項3】
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進部と、前記硬化促進部の前記表面上に配置された前記プレス加工油と、前記プレス加工油上に配置された前記接着剤とを有する前記第1鋼板部品を準備する第4の工程と、
第2面を有する前記第2鋼板部品を準備する第5の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第6の工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項4】
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進部と、前記硬化促進部の前記表面上に配置された前記プレス加工油と、前記プレス加工油上に配置された前記接着剤とを有する前記第1鋼板部品を準備する第7の工程と、
第2面と、前記第2面上に配置された前記接着剤と、を有する前記第2鋼板部品を準備する第8の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第9の工程と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項5】
前記接着剤が、嫌気性接着剤または2-シアノアクリレート系接着剤である
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項6】
前記嫌気性接着剤の硬化促進剤が、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される嫌気硬化を促進する有効成分を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項7】
前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤が、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項8】
前記嫌気性接着剤または前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤が、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤等の溶剤により希釈した嫌気硬化を促進する有効成分または前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含む
ことを特徴とする請求項5に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項9】
前記接着積層コアが、回転電機用の固定子である
ことを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法。
【請求項10】
帯状鋼板を送りながら前記帯状鋼板から打ち抜いた複数枚の鋼板部品を、接着剤を介して積層することで接着積層コアを製造する装置であって、
前記帯状鋼板の片面又は両面に硬化促進剤を塗布及び乾燥させて硬化促進部を形成する硬化促進部形成部と、
前記硬化促進部形成部よりも下流側に配置され、少なくとも前記硬化促進部の表面にプレス加工油を塗布するプレス加工油塗布部と、
前記プレス加工油塗布部よりも下流側に配置され、前記帯状鋼板にプレス加工を加えるプレス加工部と、
前記帯状鋼板の前記片面に前記接着剤を塗布する接着剤塗布部と、
備えることを特徴とする接着積層コア製造装置。
【請求項11】
前記帯状鋼板の送り方向に沿って、前記硬化促進部形成部と、前記プレス加工油塗布部と、前記プレス加工部及び前記接着剤塗布部とが、この順に並んでいる
ことを特徴とする請求項10に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項12】
前記硬化促進部形成部を有する第1ステージと、
前記第1ステージから移された前記帯状鋼板を前記プレス加工油塗布部に向かって送る搬送部を有する第2ステージと、
を備え、
前記第2ステージに、前記帯状鋼板の送り方向に沿って、前記搬送部と、前記プレス加工油塗布部と、前記プレス加工部及び前記接着剤塗布部とが、この順に並んで配置されている
ことを特徴とする請求項10に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項13】
前記接着剤が、嫌気性接着剤または2-シアノアクリレート系接着剤である
ことを特徴とする請求項10~12の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項14】
前記嫌気性接着剤の硬化促進剤が、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される嫌気硬化を促進する有効成分を含む
ことを特徴とする請求項13に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項15】
前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤が、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含む
ことを特徴とする請求項13に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項16】
前記嫌気性接着剤または前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤が、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤等の溶剤により希釈した嫌気硬化を促進する有効成分または前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含む
ことを特徴とする請求項13に記載の接着積層コア製造装置。
【請求項17】
前記接着積層コアが、回転電機用の固定子である
ことを特徴とする請求項10~16の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置に関する。
本願は、2020年7月7日に、日本国に出願された特願2020-117265号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば電動機として用いられる回転電機は、積層コアを備えている。この積層コアは、帯状鋼板を間欠的に送りながら複数回に分けて所定形状に打ち抜き、得られた鋼板部品を複数枚積層することで製造される。各鋼板部品間の固定は、溶接、接着、かしめ等により行われるが、これらの中でも、積層コアの鉄損を効果的に抑制できる観点より、接着による固定方法が注目されている。
【0003】
例えば下記特許文献1には、片面または両面にプレス加工油を塗布したフープ材に複数のプレス加工を順次施し、当該フープ材の片面に接着剤を塗布した上で外形打抜き加工を行って金属薄板を得て、当該金属薄板を所定枚数積層接着することによって金属薄板積層体を製造する方法であって、前記プレス加工油に硬化促進剤が添加された金属薄板積層体の製造方法が開示されている。
この金属薄板積層体の製造方法によれば、プレス加工油に硬化促進剤を添加したため、プレス加工油を除去することなく金属薄板間の接着が迅速かつ強固に行われ、製造工程の簡略化や順送金型装置における金型の小型等が可能となって製品品質および生産性の向上や製造設備の小型化等が実現される、と説明されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、断続的に送られる帯状鋼板から所定形状の鋼板部品を打ち抜くとともに該鋼板部品を積層する打抜き積層プレス方法において、上記帯状鋼板から上記鋼板部品を打ち抜くプレス加工位置よりも上流側において、上記帯状鋼板の下面に、接着剤と、該接着剤の硬化を促進するための硬化促進剤とのうちのいずれか一方を塗布する第1塗布工程と、上記プレス加工位置において、上記帯状鋼板の上面に、上記接着剤と上記硬化促進剤とのうちの他方を塗布する第2塗布工程とを含む打抜き積層プレス方法が開示されている。
この打抜き積層プレス方法によれば、第1塗布工程と第2塗布工程とを行うことにより接着剤の硬化時間を大幅に短縮することができ、複数の鋼板部品を積層して製造するコアの生産性を高めることができる、と説明されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特許第4648765号公報
【文献】日本国特許第6164029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の金属薄板積層体の製造方法によれば、硬化促進剤の利用によって金属薄板間の接着を迅速に行えるとしている。硬化促進剤はプレス加工油の添加によって薄められた状態で塗布されるため、より高い硬化促進効果が求められる場合には、硬化促進剤の含有量を相当量まで増やす必要がある。しかしこの場合、今度はプレス加工油の割合が減ってしまうため、金属薄板を打ち抜く際の打ち抜き加工性に影響を及ぼす懸念がある。
また、上記特許文献2の打抜き積層プレス方法によれば、接着剤の硬化時間を大幅に短縮できるとしている。しかし、ここでも、打ち抜き加工に必須であるプレス加工油が硬化促進剤に与える影響については全く検討されていない。
【0007】
このように、接着積層コアの生産性をさらに高めるには、鋼板打ち抜き時におけるプレス加工油の潤滑機能と、鋼板接着時の硬化促進剤利用による接着剤の硬化促進機能とを、より高次に発揮させる必要がある。しかし、従来は、硬化促進剤の塗布形態について十分な検討がなされてこなかった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、接着積層コアの製造に際し、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られる、接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用している。
(1)本発明の一態様に係る接着積層コア製造方法は、
帯状鋼板を送りながら複数枚の鋼板部品を打ち抜き、前記各鋼板部品を、接着剤を介して積層させることにより接着積層コアを製造する方法であって、
プレス加工油を塗布する前の前記帯状鋼板の片面又は両面に、硬化促進剤を塗布及び乾燥させて硬化促進部を形成する工程と、
前記硬化促進部の表面に前記プレス加工油を塗布する工程と、
を有する。
上記(1)に記載の接着積層コア製造方法によれば、帯状鋼板に設けられた硬化促進部が予め乾燥して硬化しているため、その後の工程で塗布されるプレス加工油と混ざり合うことが抑制される。したがって、各鋼板部品間を積層して接着する際に、硬化促進部が高い濃度を維持したまま接着剤と混ざり合えるため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
さらに言うと、硬化促進部の表面をプレス加工油で被覆するため、その後に行われるプレス加工時に、硬化促進部が金型に付着することを抑制できる。もし、プレス加工油で被覆することなくそのまま送ってプレス加工を行った場合、剥き出し状態の硬化促進部が打ち抜き時に剥離して金型(例えば順送金型の下側金型)の特定部位に付着、堆積する虞がある。このような堆積物が生じると、連続プレス中に堆積物が剥がれて各鋼板部品に再付着し、そして堆積物が各鋼板部品の積層間に挟み込まれる虞がある。その場合、接着積層コアの形状が歪み、接着積層コアの構造強度や磁気特性に悪影響を及ぼす虞がある。これに対し、上記態様では、硬化促進部をプレス加工油で予め被覆して保護してから、その後にプレス加工を行っているため、上述した問題の発生を抑制している。
【0010】
(2)上記(1)に記載の接着積層コア製造方法において、以下のようにしてもよい:
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進部と、前記硬化促進部の前記表面上に配置された前記プレス加工油とを有する前記第1鋼板部品を準備する第1の工程と、
第2面と、前記第2面上に配置された前記接着剤と、を有する前記第2鋼板部品を準備する第2の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第3の工程と、
を有する。
上記(2)に記載の接着積層コア製造方法によれば、第1の工程において硬化促進部が予め乾燥して硬化しており、プレス加工油と混ざり合うのが抑制された状態にある。そのため、第3の工程で第1鋼板部品及び第2鋼板部品を重ね合わせて接着する際に、硬化促進部が高い濃度を維持したまま接着剤と混ざり合える。
【0011】
(3)上記(1)に記載の接着積層コア製造方法において、以下のようにしてもよい:
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進部と、前記硬化促進部の前記表面上に配置された前記プレス加工油と、前記プレス加工油上に配置された前記接着剤とを有する前記第1鋼板部品を準備する第4の工程と、
第2面を有する前記第2鋼板部品を準備する第5の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第6の工程と、
を有する。
上記(3)に記載の接着積層コア製造方法によれば、第4の工程において硬化促進部が予め乾燥して硬化しており、プレス加工油と混ざり合うのが抑制された状態にある。そのため、第6の工程で第1鋼板部品及び第2鋼板部品を重ね合わせて接着する際に、硬化促進部が高い濃度を維持したまま接着剤と混ざり合える。
【0012】
(4)上記(1)に記載の接着積層コア製造方法において、以下のようにしてもよい:
前記各鋼板部品が、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を含み、
第1面と、前記第1面上に形成された前記硬化促進部と、前記硬化促進部の前記表面上に配置された前記プレス加工油と、前記プレス加工油上に配置された前記接着剤とを有する前記第1鋼板部品を準備する第7の工程と、
第2面と、前記第2面上に配置された前記接着剤と、を有する前記第2鋼板部品を準備する第8の工程と、
前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、前記第1鋼板部品及び前記第2鋼板部品を重ね合わせて接着する第9の工程と、
を有する。
上記(4)に記載の接着積層コア製造方法によれば、第7の工程において硬化促進部が予め乾燥して硬化しており、プレス加工油と混ざり合うのが抑制された状態にある。そのため、第9の工程で第1鋼板部品及び第2鋼板部品を重ね合わせて接着する際に、硬化促進部が高い濃度を維持したまま接着剤と混ざり合える。
【0013】
(5)上記(1)~(4)の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法において、前記接着剤が、嫌気性接着剤または2-シアノアクリレート系接着剤であってもよい。
上記(5)に記載の接着積層コア製造方法によれば、加工性に影響を与えることなく、相対的に硬化促進剤の量を増やし、硬化時間の短縮と接着強度を向上させることができるという利点が得られる。
【0014】
(6)上記(5)に記載の接着積層コア製造方法において、前記嫌気性接着剤の硬化促進剤が、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される嫌気硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
嫌気硬化を促進する有効成分は、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、クロム、銀、及びマンガン、並びにそれらの組み合わせから選択されてもよい。望ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、及びクロム、並びにそれらの組み合わせであり得る。望ましくは、金属酸化物または塩の形態で提供される。好ましくは、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、ステアリン酸バナジル、バナジウムプロポキシド、バナジウムブトキシド、五酸化バナジウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ヘキサン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅(II)等から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
上記(6)に記載の接着積層コア製造方法によれば、嫌気性接着剤の硬化が速やか、かつ完全に進行するため、特に短時間の製造やアウトガスの抑制等を要求される製造に極めて優れ、生産性が向上することができるという利点が得られる。
【0015】
(7)上記(5)に記載の接着積層コア製造方法において、前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤が、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分の具体例としては、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
上記(7)に記載の接着積層コア製造方法によれば、2-シアノアクリレート系接着剤の硬化が速やか、かつ完全に進行するため、特に短時間の製造やアウトガスの抑制等を要求される製造に極めて優れ、生産性が向上することができるという利点が得られる。
【0016】
(8)上記(5)に記載の接着積層コア製造方法において、前記嫌気性接着剤または前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤は、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤等の溶剤により希釈した嫌気硬化を促進する有効成分または前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
溶剤種としては、上記溶剤種から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが選択される。接着積層コア製造上、好ましくは酢酸エチル、アセトン、エタノール、メタノール、ブタノール、トルエン、ヘプタンから選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0017】
(9)上記(1)~(8)の何れか1項に記載の接着積層コア製造方法において、前記接着積層コアが、回転電機用の固定子であってもよい。
上記(9)に記載の接着積層コア製造方法によれば、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られるので、高い性能を持ちながらも製造コストが低い回転電機用の固定子を製造することが可能になる。
【0018】
(10)本発明の一態様に係る接着積層コア製造装置は、
帯状鋼板を送りながら前記帯状鋼板から打ち抜いた複数枚の鋼板部品を、接着剤を介して積層することで接着積層コアを製造する装置であって、
前記帯状鋼板の片面又は両面に硬化促進剤を塗布及び乾燥させて硬化促進部を形成する硬化促進部形成部と、
前記硬化促進部形成部よりも下流側に配置され、少なくとも前記硬化促進部の表面にプレス加工油を塗布するプレス加工油塗布部と、
前記プレス加工油塗布部よりも下流側に配置され、前記帯状鋼板にプレス加工を加えるプレス加工部と、
前記帯状鋼板の前記片面に前記接着剤を塗布する接着剤塗布部と、
備える。
上記(10)に記載の接着積層コア製造装置によれば、硬化促進部形成部において、硬化促進部が予め乾燥して硬化した状態で帯状鋼板に形成される。したがって、硬化促進部が、プレス加工油塗布部で塗布されるプレス加工油に混ざることが抑制される。したがって、各鋼板部品間を積層して接着する際に、硬化促進部が高い濃度を維持したまま接着剤と混ざり合えるため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0019】
(11)上記(10)に記載の接着積層コア製造装置において、前記帯状鋼板の送り方向に沿って、前記硬化促進部形成部と、前記プレス加工油塗布部と、前記プレス加工部及び前記接着剤塗布部とが、この順に並んでいてもよい。
上記(11)に記載の接着積層コア製造装置によれば、硬化促進部形成部において硬化促進部は予め乾燥して硬化しており、プレス加工油塗布部で塗布されるプレス加工油と混ざり合うことが抑制された状態にある。そのため、第1鋼板部品及び第2鋼板部品を重ね合わせて接着する際に、硬化促進部が高い濃度を維持したまま接着剤と混ざり合える。
【0020】
(12)上記(10)に記載の接着積層コア製造装置において、以下のように構成してもよい:
前記硬化促進部形成部を有する第1ステージと、
前記第1ステージから移された前記帯状鋼板を前記プレス加工油塗布部に向かって送る搬送部を有する第2ステージと、
を備え、
前記第2ステージに、前記帯状鋼板を送る送り方向に沿って、前記搬送部と、前記プレス加工油塗布部と、前記プレス加工部及び前記接着剤塗布部とが、この順に並んで配置されている。
上記(12)に記載の接着積層コア製造装置によれば、第1ステージで硬化促進部を予め形成した帯状鋼板を纏めて作り置きしておくことができる。そして、これら帯状鋼板のうちより必要な数の帯状鋼板を取り出して第2ステージに移し、プレス加工油の塗布、接着剤の塗布、そして第1鋼板部品及び第2鋼板部品間の接着を行える。このように、接着積層コア製造装置を第1ステージと第2ステージに分けた場合も、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0021】
(13)上記(10)~(12)の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置において、前記接着剤が、嫌気性接着剤または2-シアノアクリレート系接着剤であってもよい。
上記(13)に記載の接着積層コア製造装置によれば、加工性に影響を与えることなく、相対的に硬化促進剤の量を増やし、硬化時間の短縮と接着強度を向上させることができるという利点が得られる。
【0022】
(14)上記(13)に記載の接着積層コア製造装置において、前記嫌気性接着剤の硬化促進剤が、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される嫌気硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
すなわち、上記(13)に記載の接着積層コア製造装置において、前記嫌気性接着剤の硬化促進剤としては前記嫌気硬化を促進する有効成分を含むものが挙げられる。
嫌気硬化を促進する有効成分は、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、クロム、銀、及びマンガン、並びにそれらの組み合わせから選択されてもよい。望ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、及びクロム、並びにそれらの組み合わせであり得る。望ましくは、金属酸化物または塩の形態で提供される。好ましくは、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、ステアリン酸バナジル、バナジウムプロポキシド、バナジウムブトキシド、五酸化バナジウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ヘキサン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅(II)等から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
上記(14)に記載の接着積層コア製造装置によれば、嫌気性接着剤の硬化が速やか、かつ完全に進行するため、特に短時間の製造やアウトガスの抑制等を要求される製造に極めて優れ、生産性が向上することができるという利点が得られる。
【0023】
(15)上記(13)に記載の接着積層コア製造装置において、前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤が、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
すなわち、上記(13)に記載の接着積層コア製造装置において、前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤としては、前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含むものが挙げられる。
2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分の具体例としては、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
上記(15)に記載の接着積層コア製造装置によれば、2-シアノアクリレート系接着剤の硬化が速やか、かつ完全に進行するため、特に短時間の製造やアウトガスの抑制等を要求される製造に極めて優れ、生産性が向上することができるという利点が得られる。
【0024】
(16)上記(13)に記載の接着積層コア製造装置において、前記嫌気性接着剤または前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤は、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤等の溶剤により希釈した嫌気硬化を促進する有効成分または前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含んでもよい。
溶剤種としては、上記溶剤種から選ばれる少なくとも一種、組み合わせが選択される。接着積層コア製造上、好ましくは酢酸エチル、アセトン、エタノール、メタノール、ブタノール、トルエンから選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0025】
(17)上記(10)~(16)の何れか1項に記載の接着積層コア製造装置において、前記接着積層コアが、回転電機用の固定子であってもよい。
上記(17)に記載の接着積層コア製造装置によれば、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られるので、高い性能を持ちながらも製造コストが低い回転電機用の固定子を製造することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の上記各態様によれば、接着積層コアの製造に際し、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られる、接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の各実施形態で製造されるステータ用接着積層コアを備えた、回転電機の断面図である。
図2】同ステータ用接着積層コアの側面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
図4】同実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するための、フローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
図6】同実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するための、フローチャートである。
図7】本発明の第3実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
図8】同実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するための、フローチャートである。
図9】本発明の第4実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の各実施形態に係る接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置を説明する。その前に、図1及び図2を用いて、各実施形態で製造されるステータ用接着積層コア(接着積層コア。回転電機用の固定子)を先に説明する。
【0029】
[ステータ用接着積層コア]
図1は、各実施形態で製造されるステータ用接着積層コア21を備えた、回転電機10の断面図である。図2は、同ステータ用接着積層コア21の側面図である。
以下、図1に示す回転電機10が、電動機、具体的には交流電動機、より具体的には同期電動機、より一層具体的には永久磁石界磁型電動機である場合を例示して説明する。この種の電動機は、例えば、電気自動車などに好適に採用される。
【0030】
図1に示すように、回転電機10は、ステータ20と、ロータ30と、ケース50と、回転軸60と、を備える。ステータ20およびロータ30は、ケース50内に収容される。ステータ20は、ケース50内に固定される。
図1の例では、回転電機10として、ロータ30がステータ20の径方向内側に位置するインナーロータ型を例示している。しかしながら、回転電機10として、ロータ30がステータ20の外側に位置するアウターロータ型であってもよい。また、ここでは、回転電機10が12極18スロットの三相交流モータである場合を例示する。しかし、極数、スロット数、相数などは、適宜変更できる。
回転電機10は、例えば、各相に実効値10A、周波数100Hzの励磁電流を印加することにより、回転数1000rpmで回転することができる。
【0031】
ステータ20は、ステータ用接着積層コア21と、図示しない巻線と、を備える。
ステータ用接着積層コア21は、環状のコアバック部22と、複数のティース部23と、を備える。以下では、ステータ用接着積層コア21(又はコアバック部22)の中心軸線O方向を軸方向と言い、ステータ用接着積層コア21(又はコアバック部22)の径方向(中心軸線Oに直交する方向)を径方向と言い、ステータ用接着積層コア21(又はコアバック部22)の周方向(中心軸線O回りに周回する方向)を周方向と言う。
【0032】
コアバック部22は、ステータ20を軸方向から見た平面視において円環状に形成されている。
複数のティース部23は、コアバック部22の内周から径方向内側に向けて突出する。複数のティース部23は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。図1の例では、中心軸線Oを中心とする中心角20度おきに18個のティース部23が設けられている。複数のティース部23は、互いに同等の形状でかつ同等の大きさに形成されている。よって、複数のティース部23は、互いに同じ厚み寸法を有している。
前記巻線は、ティース部23に巻回されている。前記巻線は、集中巻きされていてもよく、分布巻きされていてもよい。
【0033】
ロータ30は、ステータ20(ステータ用接着積層コア21)に対して径方向の内側に配置されている。ロータ30は、ロータコア31と、複数の永久磁石32と、を備える。
ロータコア31は、ステータ20と同軸に配置される環状(円環状)に形成されている。ロータコア31内には、回転軸60が配置されている。回転軸60は、ロータコア31に固定されている。
複数の永久磁石32は、ロータコア31に固定されている。図1の例では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成している。複数組の永久磁石32は、周方向に同等の角度間隔をあけて配置されている。図1の例では、中心軸線Oを中心とする中心角30度おきに12組(全体では24個)の永久磁石32が設けられている。
【0034】
図1の例では、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型モータが採用されている。ロータコア31には、ロータコア31を軸方向に貫通する複数の貫通孔33が形成されている。複数の貫通孔33は、複数の永久磁石32の配置に対応して設けられている。各永久磁石32は、対応する貫通孔33内に配置された状態でロータコア31に固定されている。各永久磁石32のロータコア31への固定は、例えば永久磁石32の外面と貫通孔33の内面とを接着剤により接着すること等により、実現できる。なお、永久磁石界磁型電動機として、埋込磁石型に代えて表面磁石型モータを採用してもよい。
【0035】
ステータ用接着積層コア21およびロータコア31は、いずれも積層コアである。例えばステータ用接着積層コア21は、図2に示すように、複数の電磁鋼板40が積層方向に積層されることで形成されている。
なお、ステータ用接着積層コア21およびロータコア31それぞれの積厚(中心軸線Oに沿った全長)は、例えば50.0mmとされる。ステータ用接着積層コア21の外径は、例えば250.0mmとされる。ステータ用接着積層コア21の内径は、例えば165.0mmとされる。ロータコア31の外径は、例えば163.0mmとされる。ロータコア31の内径は、例えば30.0mmとされる。ただし、これらの値は一例であり、ステータ用接着積層コア21の積厚、外径や内径、およびロータコア31の積厚、外径や内径は、これらの値のみに限られない。ここで、ステータ用接着積層コア21の内径は、ステータ用接着積層コア21におけるティース部23の先端部を基準とする。すなわち、ステータ用接着積層コア21の内径は、全てのティース部23の先端部に内接する仮想円の直径である。
【0036】
ステータ用接着積層コア21およびロータコア31を形成する各電磁鋼板40は、例えば、母材となる帯状鋼板を打ち抜き加工することにより形成される。電磁鋼板40としては、公知の電磁鋼板を用いることができる。電磁鋼板40の化学組成は、以下に質量%単位で示すように、質量%で2.5%~3.9%のSiを含有する。化学組成をこの範囲とすることにより、各電磁鋼板40の降伏強度を、380MPa以上540MPa以下に設定することができる。
【0037】
Si:2.5%~3.9%
Al:0.001%~3.0%
Mn:0.05%~5.0%
残部:Fe及び不純物
【0038】
本実施形態では、電磁鋼板40として、無方向性電磁鋼板を採用している。無方向性電磁鋼板としては、JISC2552:2014の無方向性電鋼帯を採用できる。しかしながら、電磁鋼板40として、無方向性電磁鋼板に代えて方向性電磁鋼板を採用してもよい。この場合の方向性電磁鋼板としては、JISC2553:2012の方向性電鋼帯を採用できる。
【0039】
積層コアの加工性や、積層コアの鉄損を改善するため、電磁鋼板40の両面は、リン酸塩系の絶縁被膜で被覆されている。絶縁被膜を構成する物質としては、例えば、(1)無機化合物、(2)有機樹脂、(3)無機化合物と有機樹脂との混合物、などが採用できる。無機化合物としては、例えば、(1)重クロム酸塩とホウ酸の複合物、(2)リン酸塩とシリカの複合物、などが挙げられる。有機樹脂としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂などが挙げられる。
【0040】
[第1実施形態]
図3及び図4を用いて本発明の第1実施形態を以下に説明する。図3は、本実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。また、図4は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するための、フローチャートである。
図3に示すように、本実施形態の接着積層コア製造装置100は、帯状鋼板供給部110と、硬化促進部形成部120と、駆動部(不図示)と、プレス加工油塗布部130と、プレス加工部140と、接着剤塗布部150と、積層接着部160とを備える。これらのうち、プレス加工部140と、接着剤塗布部150と、積層接着部160との組み合わせにより、順送金型(Progressive Die)が構成される。
【0041】
帯状鋼板供給部110には、電磁鋼板(鋼板部品)40の素材となる帯状鋼板Mを巻回したフープ材Fが軸支されており、図3の紙面右側に向かって帯状鋼板Mを送り出す。以下の説明において、帯状鋼板Mの送り方向である紙面右側を下流側(あるいは下流方向)、その逆方向である紙面左側を上流側(あるいは上流方向)という場合がある。この帯状鋼板供給部110より下流側に向けて送られる帯状鋼板Mは、上述した化学組成を有する鋼板であり、その両面が上述した絶縁被膜で被覆されている。
【0042】
硬化促進部形成部120は、硬化促進剤タンク121と、ノズル122と、乾燥機123とを有する。
硬化促進剤タンク121には、硬化促進剤が貯留されている。嫌気性接着剤の硬化促進剤としては、前記嫌気硬化を促進する有効成分を含むものが、また2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤としては前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含むものが例示される。硬化促進剤は、嫌気性接着剤または2-シアノアクリレート系接着剤と混ざり合うことで、接着剤の瞬時硬化を促す。
硬化促進剤としては、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、エーテル系溶剤、グリコール系溶剤、アミン系溶剤等の溶剤により希釈した嫌気硬化を促進する有効成分または2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含むものである。
【0043】
溶剤種としては、上記溶剤種から選ばれる少なくとも一種、組み合わせが選択される。接着積層コア製造上、好ましくは酢酸エチル、アセトン、エタノール、メタノール、ブタノール、トルエンから選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0044】
後述するが、本実施形態の接着積層コア製造方法では、帯状鋼板Mに塗布した硬化促進剤を予め乾燥硬化させて硬化促進部としてから、その表面をプレス加工油で被覆している。そのため、プレス加工油に硬化促進剤が混ざり込むことが抑制されている。
ここで、硬化促進剤の溶剤として低沸点のアルコール系溶剤を用いても、プレス加工油の塗布前に乾燥させて溶剤成分を予め揮発させてしまうため、プレス加工油へのアルコール系溶剤の混ざり込みを配慮した取り扱いが不要である。このように、本実施形態の接着積層コア製造方法では、硬化促進剤の溶剤がプレス加工油に混ざり込むことによるデメリットを生じないため、使用可能な溶剤として幅広い選択肢が得られる上に、作業性も高い。なお、硬化促進部(硬化促進剤)の乾燥度合いとしては、溶剤が完全に揮発するまで乾燥させることが最も好ましいが、これに加えて、硬化促進剤を、プレス加工油と混ざり合わない程度に乾燥させて硬化促進部とした場合も含めて、「乾燥」と言う。
硬化促進部の乾燥度合いを定量的に調べる手段としては、硬化促進部に塗布した後のプレス加工油に含まれる硬化促進剤の有効成分の含有量を検出することにより、判断できる。
すなわち、プレス加工油に占める硬化促進剤の有効成分の含有量が1重量%を超えるようであれば未乾燥状態にあると判断される。よって、硬化促進剤の有効成分の含有量が1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下であれば、「乾燥」していると判断できる。ここで、嫌気性接着剤を用いる場合における硬化促進剤の有効成分としては、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択されるものが、検出対象になる。また、2-シアノアクリレート系接着剤を用いる場合における硬化促進剤の有効成分としては、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択されるものが、検出対象になる。
【0045】
プレス加工油に硬化促進剤が混ざり込んだ場合、プレス加工油に溶け込んだ硬化促進剤の金属触媒が、本来の硬化促進用途に供されずにプレス加工油に溶け込んだまま排出されてしまう。この場合、排出されたプレス加工油から硬化促進剤の金属触媒を回収して再利用することが困難である上に、プレス加工油を廃棄する前に処理を加える手間も生じる。逆に、硬化促進剤の金属触媒がプレス加工油に完全に溶け込まない種類のものである場合、この金属触媒が金型のプレス加工油排出路に析出して堆積し、目詰まりや残渣の原因となる虞がある。
【0046】
さらに言うと、硬化促進剤と接着剤との間には適切な混合比率が規定されており、その混合比率より高くても低くても接着性能が低下する。もし、硬化促進剤がプレス加工油に混ざり込んでしまうと、その損失分を補うように硬化促進剤を増量させる必要がある。しかし、接着積層コアの鋼板部品は形状が複雑であるため、硬化促進剤の付着量が狙った値となるように調整することは容易ではない。よって、調整が上手くいかずに本来の接着性能を高位に発現 できない虞がある。
【0047】
嫌気硬化を促進する有効成分は、チタン、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、銀、バナジウム、モリブデン、ルテニウム、サッカリン及びそれらの組み合わせから選択される。好ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、クロム、銀、及びマンガン、並びにそれらの組み合わせから選択されてもよい。望ましくは、銅、鉄、バナジウム、コバルト、及びクロム、並びにそれらの組み合わせであり得る。望ましくは、金属酸化物または塩の形態で提供される。好ましくは、バナジウムアセチルアセトネート、バナジルアセチルアセトネート、ステアリン酸バナジル、バナジウムプロポキシド、バナジウムブトキシド、五酸化バナジウム、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ヘキサン酸銅、ビス(2-エチルヘキサン酸)銅(II)等から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが例示される。硬化促進剤は、嫌気性の接着剤と混ざり合うことで、接着剤の瞬時硬化を促す。
【0048】
前記2-シアノアクリレート系接着剤の硬化促進剤は、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン及びN,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類、トリクロルアセトアミド等の酸アミド類、コハク酸イミド等の有機イミド類、テトラメチルアンモニウムクロライド及びベンジルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等、並びにそれらの組み合わせから選択される2-シアノアクリレート系接着剤の硬化を促進する有効成分を含む。好ましくは、ジメチルアニリン、ジエチルアミン、o-フェニレンジアミン、ジメチルパラトルイジン、ジエチルパラトルイジン、N,N-ジエチルアニリン等の有機アミン類から選ばれる1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0049】
ノズル122は、硬化促進剤タンク121に接続されている。ノズル122は、そのノズル口が帯状鋼板Mの上面に向いており、硬化促進剤タンク121内の硬化促進剤を、適量をもって前記上面に塗布する。硬化促進剤は、本実施形態では前記上面に対してその全面を覆うように塗布されるが、この形態のみに限らず、例えば点状など部分的に塗布するように構成してもよい。
【0050】
乾燥機123は、一対のローラー123aと、ドライヤー123bとを有する。
一対のローラー123aは、ノズル122の下流側に配置されている。一対のローラー123aは、これらの間を通過していく帯状鋼板Mが常に水平に保たれるように保持する。
ドライヤー123bは、一対のローラー123a間に挟まれる位置に配置されている。ドライヤー123bは、帯状鋼板Mの上面及び下面に空気を吹き付けることで硬化促進剤を乾燥させる。これにより、帯状鋼板Mは、一対のローラー123aのうちの上流側の方を超えた時点で空気の吹き付けを受けて硬化促進剤が乾燥し始め、そして一対のローラー123aのうちの下流側の方に至る前に乾燥が完了している。したがって、一対のローラー123aの下流側を経た後の帯状鋼板Mの上面には、溶剤が乾燥した硬化促進層(硬化促進部)が均等厚かつ全面にわたって形成されている。硬化促進層の厚みとしては、0.1μmを例示できる。なお、帯状鋼板Mの下面は、硬化促進剤が塗布されていないため、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0051】
前記駆動部は、硬化促進部形成部120とプレス加工油塗布部130との間の位置Dに配置されている。前記駆動部は、帯状鋼板Mを、硬化促進部形成部120からプレス加工油塗布部130に向かう紙面右方向に向けて間欠的に送り出す。なお、硬化促進部形成部120から送り出された帯状鋼板Mの上面には、前記駆動部に入る前に、硬化促進剤が乾燥した硬化促進層が既に形成されている。一方、前記駆動部に入る前における帯状鋼板Mの下面は、硬化促進層がなく、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0052】
プレス加工油塗布部130は、塗布ローラー131とオイルパン132とを備える。
オイルパン132は、塗布ローラー131の下方に配置されており、プレス加工油が貯留されている。塗布ローラー131は帯状鋼板Mをその上下より間に挟み込むように保持する一対のローラーであり、帯状鋼板Mの上面及び下面に接してプレス加工油を塗布しながら下流側に送り出す。プレス加工油塗布部130でプレス加工油を塗布した際、帯状鋼板Mの上面には乾燥済みの硬化促進層が形成されているため、この硬化促進層上に、混ざることなくプレス加工油の層が全面にわたって形成される。すなわち、硬化促進層の表面が、プレス加工油の層により隙間無く被覆される。同時に、帯状鋼板Mの下面(絶縁被膜)上にも、プレス加工油の層が全面にわたって形成される。
【0053】
プレス加工部140は、第1段打ち抜き部141と第2段打ち抜き部142とを備え、前記順送金型の一部をなす。
第1段打ち抜き部141は、プレス加工油塗布部130の下流側に配置され、雄金型141a及び雌金型141bを有する。雄金型141a及び雌金型141bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型141aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型141bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型141aを下方に向けて移動させて雌金型141b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な1回目の打ち抜き加工を行う。この時、帯状鋼板Mの上下面にはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。
さらに言うと、硬化促進層の表面がプレス加工油で被覆されているため、硬化促進層が雄金型141a及び雌金型141bに付着することを抑制できる。よって、硬化促進層が剥がれて雄金型141a及び雌金型141bに堆積する虞を抑制できるので、これから製造するステータ用接着積層コア21の構造強度や磁気特性の低下を抑制できる。
【0054】
帯状鋼板Mを打ち抜き加工した後、今度は雄金型141aを上方に移動させて雌金型141bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0055】
第2段打ち抜き部142は、第1段打ち抜き部141の下流側に配置され、雄金型142a及び雌金型142bを有する。雄金型142a及び雌金型142bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、1回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型142aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型142bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型142aを下方に向けて移動させて雌金型142b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な2回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mの上下面にはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。
この時も、硬化促進層の表面がプレス加工油で被覆されているため、硬化促進層が雄金型142a及び雌金型142bに付着することを抑制できる。よって、硬化促進層が剥がれて雄金型142a及び雌金型142bに堆積する虞を抑制できるので、これから製造するステータ用接着積層コア21の構造強度や磁気特性の低下を抑制できる。
【0056】
帯状鋼板Mを打ち抜き加工した後、今度は雄金型142aを上方に移動させて雌金型142bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0057】
接着剤塗布部150は、プレス加工部140の下流側に配置されている。接着剤塗布部150は、空気圧送機151と、シリンジ152と、ノズル153と、鋼板抑え154とを備える。
シリンジ152は、接着剤を貯留する容器であり、空気圧送機151とノズル153との間に配管を介して接続されている。接着剤のうち嫌気性接着剤としては東亞合成株式会社製「アロンタイト」(商標登録)を、2-シアノアクリレート系接着剤としては東亞合成株式会社製「アロンアルフア」(商標登録)を例示できる。
ノズル153は、吐出口が上方を向いた複数本のニードルを備える。各ニードルは、帯状鋼板Mの下方に配置されている。よって、各ニードルの吐出口は、帯状鋼板Mの下面に対向している。
【0058】
鋼板抑え154は、ノズル153の上方(各ニードルの直上)に配置されている。よって、鋼板抑え154は、帯状鋼板Mの上面に対向している。鋼板抑え154は、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、下方に向かって押し下げられる。これにより、鋼板抑え154の下面が帯状鋼板Mの上面に当接して帯状鋼板Mを下方に押し下げる。これにより、帯状鋼板Mの高さ位置を、ノズル153による接着剤塗布位置まで押し下げて位置決めできる。この位置決め状態では、帯状鋼板Mの下面が各ニードルの吐出口に近接する。
【0059】
さらに、この位置決め状態において、前記空気圧送機151を起動させて適量の空気をシリンジ152へ圧送すると、シリンジ152内の接着剤がノズル153へ送られる。その結果、前記各ニードルから適量の接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの下面に塗布される。その後、前記油圧機構により鋼板抑え154を上昇させることで、帯状鋼板Mの高さ位置を元の高さに復帰させる。
【0060】
積層接着部160は、接着剤塗布部150の下流側に配置されている。積層接着部160は、外周打ち抜き雄金型161と、外周打ち抜き雌金型162と、スプリング163と、加熱器164と、を備える。
外周打ち抜き雄金型161は、円形の底面を有する円柱形状の金型であり、その上端にはスプリング163の下端が接続されている。そして、外周打ち抜き雄金型161は、スプリング163で支持された状態で、スプリング163と共に上下動可能とされている。外周打ち抜き雄金型161は、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ外径寸法を有している。
【0061】
外周打ち抜き雌金型162は、円柱形状の内部空間を有する金型であり、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ内径寸法を有している。
加熱器164は、外周打ち抜き雌金型162に、一体に組み込まれている。加熱器164は、外周打ち抜き雌金型162内に積層された各電磁鋼板(鋼板部品)40をその周囲より加熱する。前記接着剤として加熱硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱器164からの熱を受けて硬化する。一方、接着剤として常温硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱を要することなく室温にて硬化する。
【0062】
上記積層接着部160によれば、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、外周打ち抜き雄金型161を降下させて帯状鋼板Mを外周打ち抜き雌金型162との間に挟み込み、さらに外周打ち抜き雄金型161を外周打ち抜き雌金型162内に押し込むことで、帯状鋼板Mから外周打ち抜きされた電磁鋼板40が得られる。
この時も、硬化促進層の表面がプレス加工油で被覆されているため、硬化促進層が外周打ち抜き雄金型161及び外周打ち抜き雌金型162に付着することを抑制できる。よって、硬化促進層が剥がれて外周打ち抜き雄金型161及び外周打ち抜き雌金型162に堆積する虞を抑制できるので、これから製造するステータ用接着積層コア21の構造強度や磁気特性の低下を抑制できる。
【0063】
外周打ち抜き雄金型161により打ち抜かれた電磁鋼板40は、先に打ち抜かれて外周打ち抜き雌金型162内に積層及び接着された他の電磁鋼板40の上面に積層され、さらに外周打ち抜き雄金型161からの加圧力と、加熱器164からの加熱とを受ける。この時、外周打ち抜き雄金型161から電磁鋼板40に加えられる加圧力は、前記スプリング163の付勢力によって常に一定に維持される。
以上により、今回打ち抜いた電磁鋼板40が、前回に打ち抜かれた電磁鋼板40の上面に対して接着固定される。このような外周打ち抜き、加圧、そして加熱の各工程を各電磁鋼板40の積層枚数分の回数、繰り返すことで、外周打ち抜き雌金型162内にステータ用接着積層コア21が形成される。
【0064】
図3に示すように、前記雌金型141b、前記雌金型142b、前記ノズル153、前記外周打ち抜き雌金型162、及び前記加熱器164は、共通の固定基台171上に固定されている。したがって、これら雌金型141b、雌金型142b、前記ノズル153、外周打ち抜き雌金型162、及び加熱器164は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
同様に、前記雄金型141a、前記雄金型142a、前記鋼板抑え154、及び前記外周打ち抜き雄金型161も、共通の可動基台172の下面に固定されている。したがって、これら雄金型141a、雄金型142a、鋼板抑え154、及び外周打ち抜き雄金型161は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
【0065】
前記駆動部が帯状鋼板Mを下流側に向かって送り出し、一時停止させた時に可動基台172を下降させることで、電磁鋼板40の外周打ち抜き及び積層及び接着と、帯状鋼板Mで次に外周打ち抜きされる電磁鋼板40の位置への接着剤の塗布と、帯状鋼板Mで次に接着剤が塗布される位置への前記2回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記2回目の打ち抜き加工を行う位置への前記1回目の打ち抜き加工と、が同時に行われる。
続いて、可動基台172を上昇させて帯状鋼板Mの上方に退避させた後、前記駆動部により帯状鋼板Mを再び下流側に所定距離だけ送り出し、そして再び一時停止させる。この状態で可動基台172を再び下降させ、各位置での加工を継続して行う。このように、前記駆動部により帯状鋼板Mを前記順送金型内で間欠的に送りながら、一時停止時に可動基台172を上下動させる工程を繰り返すことにより、ステータ用接着積層コア21が製造される。
【0066】
以上説明の構成を有する接着積層コア製造装置100を用いた接着積層コア製造方法について、図4を用いて以下に説明する。
図4に示すように、本実施形態の接着積層コア製造方法は、鋼板送り出し工程S1と、硬化促進剤塗布工程S2と、硬化促進剤乾燥工程S3と、加工油塗布工程S4と、1回目打ち抜き工程S5と、2回目打ち抜き工程S6と、接着剤塗布工程S7と、ステータ用接着積層コア形成工程S8と、取り出し工程S9と、を有する。
【0067】
鋼板送り出し工程S1では、フープ材Fから下流側に向けて帯状鋼板Mを送り出す。
続く硬化促進剤塗布工程S2では、ノズル122から帯状鋼板Mの上面の全面に、硬化促進剤aを塗布する。この時点の硬化促進剤aは液状である。
続く硬化促進剤乾燥工程S3では、ドライヤー123bからの空気を帯状鋼板Mの上下面に吹き付け、液状であった硬化促進剤aを乾燥させて硬化促進層(硬化促進部)a’を形成する。この硬化促進層a’は固体である。
続く加工油塗布工程S4では、塗布ローラー131により、帯状鋼板Mの上下面にプレス加工油bが塗布されて層を形成する。この時、硬化促進層a’は予め乾燥されているので、プレス加工油bと混ざって濃度が下がることはなく、ほぼ元の状態を維持する。
【0068】
続く1回目打ち抜き工程S5では、第1段打ち抜き部141により帯状鋼板Mの1回目の打ち抜きが行われる。この時、帯状鋼板Mにはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型141a及び雌金型141b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
続く2回目打ち抜き工程S6では、第2段打ち抜き部142により帯状鋼板Mの2回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型142a及び雌金型142b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
以上の1回目打ち抜き工程S5及び2回目打ち抜き工程S6により、外形部分を除き、図1に示したコアバック部22及びティース部23が帯状鋼板Mに形成される。
【0069】
続く接着剤塗布工程S7では、ノズル153から吐出された接着剤cが、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油bを介して配置されるように塗布される。この時、接着剤cは、所定の厚み寸法と所定の径寸法を持つ点状に塗布される。ここで、接着剤cはまだ硬化促進層a’と混ざっていないため、液状をなしている。
続くステータ用接着積層コア形成工程S8では、外周打ち抜き雄金型161によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層される。この時、前記他の電磁鋼板40の上面には、プレス加工油bで被覆された硬化促進層a’が形成されている。この上に今回外周打ち抜きをした電磁鋼板40を積層して加圧しながら加熱する。すると、今回外周打ち抜きをした電磁鋼板40の下面にある接着剤cが、先に外周打ち抜きをした前記他の電磁鋼板40の上面側にあるプレス加工油bを押しのけてその下にある硬化促進層a’と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
【0070】
以上の工程を順次繰り返すことで必要枚数の電磁鋼板40を積層及び接着し、ステータ用接着積層コア21が完成する。具体的に言うと、電磁鋼板40の積層枚数が所定枚数に達するまで、鋼板送り出し工程S1~ステータ用接着積層コア形成工程S8の各工程を順番に繰り返していく。そして、ステータ用接着積層コア形成工程S8後における電磁鋼板40の積層枚数が前記所定枚数に達した時点で、鋼板送り出し工程S1には戻らずに取り出し工程S9へと進む。
続く取り出し工程S9では、完成したステータ用接着積層コア21を外周打ち抜き雌金型162内から取り出すことで、接着積層コア製造方法の全工程が終了する。
【0071】
以上説明の接着積層コア製造装置100を用いた接着積層コア製造方法の骨子を、以下に纏める。
本実施形態の接着積層コア製造方法は、両面にプレス加工油bを塗布した帯状鋼板Mにプレス加工を行い、帯状鋼板Mの下面(片面)にプレス加工油bを介して接着剤cを塗布して複数枚の電磁鋼板(鋼板部品)40を得て、各電磁鋼板40を順次、積層接着することによってステータ用接着積層コア(接着積層コア)21を製造する方法である。そして、プレス加工油bを塗布する前に、帯状鋼板Mの片面である上面に硬化促進剤aを塗布及び乾燥させて硬化促進層(硬化促進部)a’を形成する。
すなわち、本実施形態の接着積層コア製造方法は、帯状鋼板Mを前記順送金型内で送りながら複数枚の電磁鋼板40を打ち抜き、各電磁鋼板40を、接着剤cを介して積層させることによりステータ用接着積層コア21を製造する方法である。そして、本実施形態の接着積層コア製造方法は、プレス加工油bを塗布する前の帯状鋼板Mの片面である上面に、硬化促進剤aを塗布及び乾燥させて硬化促進層a’を形成する工程と、硬化促進層a’の表面にプレス加工油bを塗布する工程と、を有する。
【0072】
より具体的には、各電磁鋼板40が、先に打ち抜かれた電磁鋼板(第1鋼板部品)40及び後に打ち抜かれた電磁鋼板(第2鋼板部品)40を含む。そして、本実施形態の接着積層コア製造方法は、鋼板送り出し工程S1~ステータ用接着積層コア形成工程S8を行って接着済みの電磁鋼板(第1鋼板部品)40を得る第1の工程と、鋼板送り出し工程S1~接着剤塗布工程S7を行って接着前の電磁鋼板(第2鋼板部品)40を得る第2の工程と、ステータ用接着積層コア形成工程S8を行って接着前の電磁鋼板(第2鋼板部品)40を接着済みの電磁鋼板(第1鋼板部品)40上に接着する第3の工程とを行う。
【0073】
ここで、前記第1の工程では、上面(第1面)と、この上面上に形成された硬化促進層(硬化促進部)a’と、硬化促進層a’の上面に直接配置されたプレス加工油bとを有してかつ、下面が他の電磁鋼板40の上面に接着済みの電磁鋼板(第1鋼板部品)40を準備する。
また、前記第2の工程では、下面(第2面)と、下面にプレス加工油bを介して配置された接着剤cと、を有する接着前の電磁鋼板(第2鋼板部品)40を準備する。
そして、前記第3の工程では、前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、接着済みの電磁鋼板40に接着前の電磁鋼板40を重ね合わせて接着する。
【0074】
上記接着積層コア製造方法によれば、帯状鋼板Mに設けた硬化促進層a’が予め乾燥させて形成されているため、後加工で塗布されるプレス加工油bと混ざり合うことが抑制されている。したがって、各電磁鋼板40を積層して接着する際に、硬化促進層a’が元々の高い濃度を維持したまま、接着先の電磁鋼板40の接着剤cと混ざり合えるため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0075】
なお、プレス加工油bの塗布は、帯状鋼板Mの両面に限らず、硬化促進層a’が形成された片面だけとしてもよい。同様に、硬化促進剤aの塗布は、帯状鋼板Mの片面に限らず、両面としてもよい。また、硬化促進剤aの塗布は帯状鋼板Mの全面塗布に限らず、点状塗布としてもよい。ただし、この場合は、前記ステータ用接着積層コア形成工程S8で点状の接着剤cと点状の硬化促進層(硬化促進部)a’とが正しく重なって混合するために、後工程で塗布される接着剤cとの相対位置関係を正しく調整する必要がある。
【0076】
本実施形態の接着積層コア製造装置100は、帯状鋼板Mの両面にプレス加工油bを塗布するプレス加工油塗布部130と、帯状鋼板Mにプレス加工を加えるプレス加工部140と、帯状鋼板Mの下面にプレス加工油bを介して接着剤cを塗布する接着剤塗布部150と、プレス加工油塗布部130に至る前の帯状鋼板Mの片面に硬化促進剤aを塗布及び乾燥させて硬化促進層a’を形成する硬化促進部形成部120と、備える。
すなわち、本実施形態の接着積層コア製造装置100は、帯状鋼板Mを送りながら帯状鋼板Mから打ち抜いた複数枚の電磁鋼板40を、接着剤cを介して積層することでステータ用接着積層コア21を製造する装置である。そして、本実施形態の接着積層コア製造装置100は、帯状鋼板Mの片面である上面に硬化促進剤aを塗布及び乾燥させて硬化促進層a’を形成する硬化促進部形成部120と、硬化促進部形成部120よりも下流側に配置され、少なくとも硬化促進層a’の表面にプレス加工油bを塗布するプレス加工油塗布部130と、プレス加工油塗布部130よりも下流側に配置され、帯状鋼板Mにプレス加工を加えるプレス加工部140と、帯状鋼板Mの片面である下面にプレス加工油bを介して接着剤cを塗布する接着剤塗布部150と、備える。
【0077】
そして、帯状鋼板Mの送り方向である送り方向に沿って、硬化促進部形成部120と、プレス加工油塗布部130と、プレス加工部140と、接着剤塗布部150とが、この順に並んでいる。
【0078】
この接着積層コア製造装置100によれば、硬化促進部形成部120において、硬化促進部a’が予め乾燥した状態で帯状鋼板Mに形成される。したがって、硬化促進部a’が、プレス加工油塗布部130で塗布されるプレス加工油bに混ざることが抑制される。したがって、各電磁鋼板40間を積層して接着する際に、硬化促進層a’が高い濃度を維持したまま、接着先の電磁鋼板40の接着剤cと混ざり合えるため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0079】
[第2実施形態]
図5及び図6を用いて本発明の第2実施形態を以下に説明する。図5は、本実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。また、図6は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するための、フローチャートである。
図5に示すように、本実施形態の接着積層コア製造装置200は、帯状鋼板供給部210と、硬化促進部形成部220と、駆動部(不図示)と、プレス加工油塗布部230と、プレス加工部240と、接着剤塗布部250と、積層接着部260とを備える。これらのうち、プレス加工部240と、接着剤塗布部250と、積層接着部260との組み合わせにより、順送金型(Progressive Die)が構成される。
【0080】
帯状鋼板供給部210には、電磁鋼板(鋼板部品)40の素材となる帯状鋼板Mを巻回したフープ材Fが軸支されており、図5の紙面右側に向かって帯状鋼板Mを送り出す。以下の説明において、帯状鋼板Mの送り方向である紙面右側を下流側(あるいは下流方向)、その逆方向である紙面左側を上流側(あるいは上流方向)という場合がある。この帯状鋼板供給部210より下流側に向けて送られる帯状鋼板Mは、上述した化学組成を有する鋼板であり、その両面が上述した絶縁被膜で被覆されている。
【0081】
硬化促進部形成部220は、硬化促進剤タンク221と、ノズル222と、シールボックス223と、拭き取りローラー224とを有する。
硬化促進剤タンク221には、硬化促進剤を溶剤に溶かしたものが貯留されている。この硬化促進剤としては、上記第1実施形態で例示したものが使用できる。硬化促進剤は、嫌気性接着剤または2-シアノアクリレート系接着剤と混ざり合うことで、接着剤の瞬時硬化を促す。
ノズル222は、硬化促進剤タンク221に接続されている。ノズル222は、そのノズル口が帯状鋼板Mの下面に向いており、硬化促進剤タンク221内の硬化促進剤を、適量をもって前記下面に噴霧する。硬化促進剤は、本実施形態では前記下面に対してその全面を覆うように塗布されるが、この形態のみに限らず、例えば点状など部分的に塗布するように構成してもよい。
【0082】
シールボックス223は、内部空間を有する箱であり、この内部空間に通じる入口及び出口を有する。帯状鋼板Mは、その水平状態を保ったまま、前記入口よりシールボックス223の内部空間に送り込まれた後、前記出口からシールボックス223の外へと送り出される。このシールボックス223の内部空間の下方には、前記ノズル222が配置されている。そして上述の通り、帯状鋼板Mのうち、前記内部空間を挿通する部分の下面にノズル222のノズル口が向けられている。ノズル11より帯状鋼板Mの下面に噴霧された硬化促進剤は、溶剤が揮発するため、瞬時に乾燥する。これにより、帯状鋼板Mが前記出口から出る前に、帯状鋼板Mの下面には、溶剤が乾燥した硬化促進層(硬化促進部)が均等厚かつ全面にわたって形成されている。硬化促進層の厚みとしては、0.1μmを例示できる。なお、硬化促進層(硬化促進剤)の乾燥度合いとしては、溶剤が完全に揮発するまで乾燥させることが最も好ましいが、これに加えて、硬化促進剤を、プレス加工油と混ざり合わない程度に乾燥させて硬化促進層とした場合も含めて、「乾燥」と言う。
上述したように、硬化促進層の乾燥度合いを定量的に調べる手段としては、硬化促進部に塗布した後のプレス加工油に含まれる硬化促進剤の有効成分の含有量を検出することにより、判断できる。
帯状鋼板Mの上面は、硬化促進剤が殆ど塗布されていないため、ほぼ、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
拭き取りローラー224は、主に帯状鋼板Mの上面に残った硬化促進剤を余剰として拭き取る。これにより、拭き取りローラー224を経た後の帯状鋼板Mの上面は、硬化促進剤が完全に拭き取られて絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0083】
前記駆動部は、硬化促進部形成部220とプレス加工油塗布部230との間の位置Dに配置されている。前記駆動部は、帯状鋼板Mを、硬化促進部形成部220からプレス加工油塗布部230に向かう紙面右方向に向けて間欠的に送り出す。なお、硬化促進部形成部220から送り出された帯状鋼板Mの下面には、前記駆動部に入る前に、硬化促進剤が乾燥した硬化促進層が既に形成されている。一方、前記駆動部に入る前における帯状鋼板Mの上面は、上述の通り硬化促進層がなく、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0084】
プレス加工油塗布部230は、塗布ローラー231とオイルパン232とを備える。
オイルパン232は、塗布ローラー231の下方に配置されており、プレス加工油が貯留されている。塗布ローラー231は帯状鋼板Mをその上下より間に挟み込むように保持する一対のローラーであり、帯状鋼板Mの上面及び下面に接してプレス加工油を塗布しながら下流側に送り出す。プレス加工油塗布部230でプレス加工油を塗布した際、帯状鋼板Mの下面には乾燥済みの硬化促進層が形成されているため、この硬化促進層上に、混ざることなくプレス加工油の層が全面にわたって形成される。すなわち、硬化促進層の表面が、プレス加工油の層により隙間無く被覆される。同時に、帯状鋼板Mの上面(絶縁被膜)上にも、プレス加工油の層が全面にわたって形成される。
【0085】
プレス加工部240は、第1段打ち抜き部241と第2段打ち抜き部242と第3段打ち抜き部243とを備えた順送金型である。
第1段打ち抜き部241は、プレス加工油塗布部230の下流側に配置され、雄金型241a及び雌金型241bを有する。雄金型241a及び雌金型241bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型241aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型241bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型241aを下方に向けて移動させて雌金型241b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な1回目の打ち抜き加工を行う。この時、帯状鋼板Mの上下面にはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。
さらに言うと、硬化促進層の表面がプレス加工油で被覆されているため、硬化促進層が雄金型241a及び雌金型241bに付着することを抑制できる。よって、硬化促進層が剥がれて雄金型241a及び雌金型241bに堆積する虞を抑制できるので、これから製造するステータ用接着積層コア21の構造強度や磁気特性の低下を抑制できる。
【0086】
帯状鋼板Mを打ち抜き加工した後、今度は雄金型241aを上方に移動させて雌金型241bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0087】
第2段打ち抜き部242は、第1段打ち抜き部241の下流側に配置され、雄金型242a及び雌金型242bを有する。雄金型242a及び雌金型242bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、1回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型242aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型242bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型242aを下方に向けて移動させて雌金型242b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な2回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mの上下面にはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。
この時も、硬化促進層の表面がプレス加工油で被覆されているため、硬化促進層が雄金型242a及び雌金型242bに付着することを抑制できる。よって、硬化促進層が剥がれて雄金型242a及び雌金型242bに堆積する虞を抑制できるので、これから製造するステータ用接着積層コア21の構造強度や磁気特性の低下を抑制できる。
【0088】
帯状鋼板Mを打ち抜き加工した後、今度は雄金型242aを上方に移動させて雌金型242bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0089】
第3段打ち抜き部243は、第2段打ち抜き部242の下流側に配置され、雄金型243a及び雌金型243bを有する。雄金型243a及び雌金型243bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、2回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型243aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型243bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型243aを下方に向けて移動させて雌金型243b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な3回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mの上下面にはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型243aを上方に移動させて雌金型243bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0090】
接着剤塗布部250は、プレス加工部240の下流側にある積層接着部260内に組み込まれている。接着剤塗布部250は、空気圧送機251と、シリンジ252と、ノズル253とを備える。
シリンジ252は、接着剤を貯留する容器であり、空気圧送機251とノズル253との間に配管を介して接続されている。接着剤は、上記第1実施形態で説明したものを使用できる。
ノズル253は、帯状鋼板Mの上方に配置されている。よって、ノズル253の吐出口は、帯状鋼板Mの上面に対向している。
【0091】
積層接着部260は、プレス加工部240の下流側でかつ接着剤塗布部250と同じ位置に配置されている。積層接着部260は、外周打ち抜き雄金型261と、外周打ち抜き雌金型262と、スプリング263と、加熱器264と、を備える。
外周打ち抜き雄金型261は、円形の底面を有する円柱形状の金型であり、その上端にはスプリング263の下端が接続されている。そして、外周打ち抜き雄金型261は、スプリング263で支持された状態で、スプリング263と共に上下動可能とされている。外周打ち抜き雄金型261は、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ外径寸法を有している。外周打ち抜き雄金型261内には、前記ノズル253が内蔵されている。そして、ノズル253の前記吐出口が、外周打ち抜き雄金型261の前記底面に形成されている。
【0092】
外周打ち抜き雌金型262は、円柱形状の内部空間を有する金型であり、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ内径寸法を有している。
加熱器264は、外周打ち抜き雌金型262に、一体に組み込まれている。加熱器264は、外周打ち抜き雌金型262内に積層された各電磁鋼板(鋼板部品)40をその周囲より加熱する。前記接着剤として加熱硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱器264からの熱を受けて硬化する。一方、接着剤として常温硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱を要することなく室温にて硬化する。
【0093】
上記積層接着部260によれば、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、外周打ち抜き雄金型261を降下させて帯状鋼板Mを外周打ち抜き雌金型262との間に挟み込み、さらに外周打ち抜き雄金型261を外周打ち抜き雌金型262内に押し込むことで、帯状鋼板Mから外周打ち抜きされた電磁鋼板40が得られる。
この時も、硬化促進層の表面がプレス加工油で被覆されているため、硬化促進層が外周打ち抜き雄金型261及び外周打ち抜き雌金型262に付着することを抑制できる。よって、硬化促進層が剥がれて外周打ち抜き雄金型261及び外周打ち抜き雌金型262に堆積する虞を抑制できるので、これから製造するステータ用接着積層コア21の構造強度や磁気特性の低下を抑制できる。
【0094】
さらに、この外周打ち抜きの際、前記空気圧送機251を起動させて適量の空気をシリンジ252へ圧送すると、シリンジ252内の接着剤がノズル253へ送られる。その結果、外周打ち抜き雄金型261の前記底面に形成された前記吐出口から適量の接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの上面に塗布される。ここで塗布された接着剤は、次に外周打ち抜きされて積層される他の電磁鋼板40を接着するために用いられる。
【0095】
今回、外周打ち抜き雄金型261により外周打ち抜きされた電磁鋼板40は、前回に打ち抜かれて外周打ち抜き雌金型262内に積層及び接着された他の電磁鋼板40の上面に積層される。この積層により、前記他の電磁鋼板40の上面に前回形成された接着剤が、今回外周打ち抜きされた電磁鋼板40の下面に形成された硬化促進層と混合する。さらに外周打ち抜き雄金型261からの加圧力と、加熱器264からの加熱とが、積層された各電磁鋼板40に加えられる。この時、外周打ち抜き雄金型261から電磁鋼板40に加えられる加圧力は、前記スプリング263の付勢力によって常に一定に維持される。
【0096】
以上により、今回打ち抜いた電磁鋼板40が、前回に打ち抜かれた電磁鋼板40の上面に対して接着固定される。一方、今回打ち抜いた電磁鋼板40の上面に塗布された接着剤は、この時点ではまだ硬化促進層と混合していないため、硬化せず、液状のままになっている。
以上説明のような外周打ち抜き、加圧、そして加熱の各工程を各電磁鋼板40の積層枚数分の回数、繰り返すことで、外周打ち抜き雌金型262内にステータ用接着積層コア21が形成される。
【0097】
図5に示すように、前記雌金型241b、前記雌金型242b、前記雌金型243b、前記外周打ち抜き雌金型262、及び前記加熱器264は、共通の固定基台271上に固定されている。したがって、これら雌金型241b、雌金型242b、雌金型243b、外周打ち抜き雌金型262、及び前記加熱器264は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
同様に、前記雄金型241a、前記雄金型242a、前記ノズル253、及び前記外周打ち抜き雄金型261も、共通の可動基台272の下面に固定されている。したがって、これら雄金型241a、雄金型242a、ノズル253、及び外周打ち抜き雄金型261も、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
【0098】
前記駆動部が帯状鋼板Mを下流側に向かって送り出し、一時停止させた時に可動基台272を下降させることで、電磁鋼板40の外周打ち抜き及び積層及び接着ならびに次工程のための接着剤塗布と、帯状鋼板Mで次に外周打ち抜きされる位置への前記3回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記3回目の打ち抜き加工を行う位置への前記2回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記2回目の打ち抜き加工を行う位置への前記1回目の打ち抜き加工と、が同時に行われる。
続いて、可動基台272を上昇させて帯状鋼板Mの上方に退避させた後、前記駆動部により帯状鋼板Mを再び下流側に所定距離だけ送り出し、そして再び一時停止させる。この状態で可動基台272を再び下降させ、各位置での加工を継続して行う。このように、前記駆動部により帯状鋼板Mを間欠的に送りながら、一時停止時に可動基台272を上下動させる工程を繰り返すことにより、ステータ用接着積層コア21が製造される。
【0099】
以上説明の構成を有する接着積層コア製造装置200を用いた接着積層コア製造方法について、図6を用いて以下に説明する。
図6に示すように、本実施形態の接着積層コア製造方法は、鋼板送り出し工程S11と、硬化促進剤塗布乾燥工程S12と、余剰分拭き取り工程S13と、加工油塗布工程S14と、1回目打ち抜き工程S15と、2回目打ち抜き工程S16と、3回目打ち抜き工程S17と、接着剤塗布及びステータ用接着積層コア形成工程S18と、取り出し工程S19と、を有する。
【0100】
鋼板送り出し工程S11では、フープ材Fから下流側に向けて帯状鋼板Mを送り出す。
続く硬化促進剤塗布乾燥工程S12では、ノズル222から帯状鋼板Mの下面の全面に、硬化促進剤aを塗布及び乾燥させて硬化促進層a’を形成する。この硬化促進層a’は固体である。
続く余剰分拭き取り工程S13では、帯状鋼板Mの上面における余剰の硬化促進剤が拭き取られる。よって、帯状鋼板Mの上面には硬化促進層a’が形成されていない。
続く加工油塗布工程S14では、塗布ローラー231により、帯状鋼板Mの上下面にプレス加工油bが塗布されて層を形成する。この時、硬化促進層a’は予め乾燥されているので、プレス加工油bと混ざって濃度が下がることはなく、ほぼ元の状態を維持する。
【0101】
続く1回目打ち抜き工程S15では、第1段打ち抜き部241により帯状鋼板Mの1回目の打ち抜きが行われる。この時、帯状鋼板Mにはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型241a及び雌金型241b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
続く2回目打ち抜き工程S16では、第2段打ち抜き部242により帯状鋼板Mの2回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型242a及び雌金型242b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
【0102】
続く3回目打ち抜き工程S17では、第3段打ち抜き部243により帯状鋼板Mの3回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型243a及び雌金型243b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
以上の1回目打ち抜き工程S15~3回目打ち抜き工程S17により、外形部分を除き、図1に示したコアバック部22及びティース部23が帯状鋼板Mに形成される。
【0103】
続く接着剤塗布及びステータ用接着積層コア形成工程S18では、外周打ち抜き雄金型261によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層される。この時、前記他の電磁鋼板40の上面には、プレス加工油bを介して接着剤cが塗布されている。また、その上に積層される電磁鋼板40の下面には、プレス加工油bで被覆された硬化促進層a’が形成されている。これら電磁鋼板40が積層及び加圧された状態で加熱する。すると、前回外周打ち抜きをした前記他の電磁鋼板40の上面にある接着剤cが、今回外周打ち抜きをした電磁鋼板40の下面側にあるプレス加工油bを押しのけてその上にある硬化促進層a’と混ざり合いながら瞬時に硬化する。
一方、今回外周打ち抜きを行った電磁鋼板40を前記他の電磁鋼板40に積層すると同時に、今回外周打ち抜きを行った電磁鋼板40の上面に、プレス加工油bを介して、ノズル253から接着剤cが塗布される。この接着剤cは、電磁鋼板40の上面側にあってまだ硬化促進層a’と混ざっていないため、液状をなしている。
【0104】
以上の工程を順次繰り返すことで必要枚数の電磁鋼板40を積層及び接着し、ステータ用接着積層コア21が完成する。具体的に言うと、電磁鋼板40の積層枚数が所定枚数に達するまで、鋼板送り出し工程S11~ステータ用接着積層コア形成工程S18の各工程を順番に繰り返していく。そして、ステータ用接着積層コア形成工程S18後における電磁鋼板40の積層枚数が前記所定枚数に達した時点で、鋼板送り出し工程S11には戻らずに取り出し工程S19へと進む。
続く取り出し工程S19では、完成したステータ用接着積層コア21を外周打ち抜き雌金型262内から取り出すことで、接着積層コア製造方法の全工程が終了する。
【0105】
以上説明の接着積層コア製造装置200を用いた接着積層コア製造方法の骨子は、上記第1実施形態で説明したものと基本的に同じであり、図4のステータ用接着積層コア形成工程S8に示した電磁鋼板40の積層構造と、図6の接着剤塗布及びステータ用接着積層コア形成工程S18に示した電磁鋼板40の積層構造との上下関係を逆さにしたものである。そして、この工程を実現する本実施形態の接着積層コア製造装置200は、硬化促進部形成部220を帯状鋼板Mの下方に配置するとともに、接着剤塗布部250を帯状鋼板Mの上方に配置している。すなわち、本実施形態では、帯状鋼板Mに対する硬化促進層a’の形成位置と、接着剤cの塗布位置とを、上記第1実施形態とは上下逆にしている。
【0106】
本実施形態の場合も、帯状鋼板Mに設けられた硬化促進層a’が予め乾燥させて形成されているため、後加工で塗布されるプレス加工油bと混ざり合うことが抑制されている。したがって、各電磁鋼板40を積層して接着する際に、硬化促進層a’が元々と同じ高い濃度を維持したまま接着剤cと混ざり合えるため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0107】
なお、本実施形態の場合も、プレス加工油bの塗布は、帯状鋼板Mの両面に限らず、硬化促進層a’が形成された片面だけとしてもよい。同様に、硬化促進剤aの塗布は、帯状鋼板Mの片面に限らず、両面としてもよい。また、硬化促進剤aの塗布は帯状鋼板Mの全面塗布に限らず、点状塗布としてもよい。ただし、この場合は、前記接着剤塗布及びステータ用接着積層コア形成工程S18で点状の接着剤cと点状の硬化促進層(硬化促進部)a’とが正しく重なって混合するために、前工程で塗布される接着剤cとの相対位置関係を正しく調整する必要がある。
【0108】
[第3実施形態]
図7及び図8を用いて本発明の第3実施形態を以下に説明する。図7は、本実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。また、図8は、本実施形態に係る接着積層コア製造方法を説明するための、フローチャートである。
図7に示すように、本実施形態の接着積層コア製造装置300は、帯状鋼板供給部310と、硬化促進部形成部320と、駆動部(不図示)と、プレス加工油塗布部330と、プレス加工部340と、接着剤塗布部350と、積層接着部360とを備える。これらのうち、プレス加工部340と、接着剤塗布部350と、積層接着部360との組み合わせにより、順送金型(Progressive Die)が構成される。
【0109】
帯状鋼板供給部310には、電磁鋼板(鋼板部品)40の素材となる帯状鋼板Mを巻回したフープ材Fが軸支されており、図7の紙面右側に向かって帯状鋼板Mを送り出す。以下の説明において、帯状鋼板Mの送り方向である紙面右側を下流側(あるいは下流方向)、その逆方向である紙面左側を上流側(あるいは上流方向)という場合がある。この帯状鋼板供給部310より下流側に向けて送られる帯状鋼板Mは、上述した化学組成を有する鋼板であり、その両面が上述した絶縁被膜で被覆されている。
【0110】
硬化促進部形成部320は、硬化促進剤タンク321と、ノズル322と、乾燥機323とを有する。
硬化促進剤タンク321には、硬化促進剤が貯留されている。この硬化促進剤としては、上記第1実施形態で例示したものが使用できる。硬化促進剤は、嫌気性接着剤または2-シアノアクリレート系接着剤と混ざり合うことで、接着剤の瞬時硬化を促す。
ノズル322は、硬化促進剤タンク321に接続されている。ノズル322は、そのノズル口が帯状鋼板Mの上面に向いており、硬化促進剤タンク321内の硬化促進剤を、適量をもって前記上面に塗布する。硬化促進剤は、本実施形態では前記上面に対してその全面を覆うように塗布されるが、この形態のみに限らず、例えば点状など部分的に塗布するように構成してもよい。
【0111】
乾燥機323は、一対のローラー323aと、ドライヤー323bとを有する。
一対のローラー323aは、ノズル322の下流側に配置されている。一対のローラー323aは、これらの間を通過していく帯状鋼板Mが常に水平に保たれるように保持する。
ドライヤー323bは、一対のローラー323a間に挟まれる位置に配置されている。ドライヤー323bは、帯状鋼板Mの上面及び下面に空気を吹き付けることで硬化促進剤を乾燥させる。これにより、帯状鋼板Mは、一対のローラー323aのうちの上流側の方を超えた時点で空気の吹き付けを受けて硬化促進剤が乾燥し始め、そして一対のローラー323aのうちの下流側の方に至る前に乾燥が完了している。したがって、一対のローラー323aの下流側を経た後の帯状鋼板Mの上面には、硬化促進剤が乾燥した硬化促進層(硬化促進部)が均等厚かつ全面にわたって形成されている。硬化促進層の厚みとしては、0.1μmを例示できる。なお、硬化促進層(硬化促進剤)の乾燥度合いとしては、溶剤が完全に揮発するまで乾燥させることが最も好ましいが、これに加えて、硬化促進剤を、プレス加工油と混ざり合わない程度に乾燥させて硬化促進層とした場合も含めて、「乾燥」と言う。
上述したように、硬化促進層の乾燥度合いを定量的に調べる手段としては、硬化促進部に塗布した後のプレス加工油に含まれる硬化促進剤の有効成分の含有量を検出することにより、判断できる。
帯状鋼板Mの下面は、硬化促進剤が塗布されていないため、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0112】
前記駆動部は、硬化促進部形成部320とプレス加工油塗布部330との間の位置Dに配置されている。前記駆動部は、帯状鋼板Mを、硬化促進部形成部320からプレス加工油塗布部330に向かう紙面右方向に向けて間欠的に送り出す。なお、硬化促進部形成部320から送り出された帯状鋼板Mの上面には、前記駆動部に入る前に、硬化促進剤が乾燥した硬化促進層が既に形成されている。一方、前記駆動部に入る前における帯状鋼板Mの下面は、上述の通り硬化促進層がなく、絶縁被膜が露出したままの状態になっている。
【0113】
プレス加工油塗布部330は、塗布ローラー331とオイルパン332とを備える。
オイルパン332は、塗布ローラー331の下方に配置されており、プレス加工油が貯留されている。塗布ローラー331は帯状鋼板Mをその上下より間に挟み込むように保持する一対のローラーであり、帯状鋼板Mの上面及び下面に接してプレス加工油を塗布しながら下流側に送り出す。プレス加工油塗布部330でプレス加工油を塗布した際、帯状鋼板Mの上面には乾燥済みの硬化促進層が形成されているため、この硬化促進層上に、混ざることなくプレス加工油の層が全面にわたって形成される。すなわち、硬化促進層の表面が、プレス加工油の層により隙間無く被覆される。同時に、帯状鋼板Mの下面(絶縁被膜)上にも、プレス加工油の層が全面にわたって形成される。
【0114】
プレス加工部340は、第1段打ち抜き部341と第2段打ち抜き部342と第3段打ち抜き部343とを備えた順送金型である。
第1段打ち抜き部341は、プレス加工油塗布部330の下流側に配置され、雄金型341a及び雌金型341bを有する。雄金型341a及び雌金型341bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型341aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型341bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型341aを下方に向けて移動させて雌金型341b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な1回目の打ち抜き加工を行う。この時、帯状鋼板Mの上下面にはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。
さらに言うと、硬化促進層の表面がプレス加工油で被覆されているため、硬化促進層が雄金型341a及び雌金型341bに付着することを抑制できる。よって、硬化促進層が剥がれて雄金型341a及び雌金型341bに堆積する虞を抑制できるので、これから製造するステータ用接着積層コア21の構造強度や磁気特性の低下を抑制できる。
【0115】
帯状鋼板Mを打ち抜き加工した後、今度は雄金型341aを上方に移動させて雌金型341bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0116】
第2段打ち抜き部342は、第1段打ち抜き部341の下流側に配置され、雄金型342a及び雌金型342bを有する。雄金型342a及び雌金型342bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、1回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型342aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型342bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型342aを下方に向けて移動させて雌金型342b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な2回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mの上下面にはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。
この時も、硬化促進層の表面がプレス加工油で被覆されているため、硬化促進層が雄金型342a及び雌金型342bに付着することを抑制できる。よって、硬化促進層が剥がれて雄金型342a及び雌金型342bに堆積する虞を抑制できるので、これから製造するステータ用接着積層コア21の構造強度や磁気特性の低下を抑制できる。
【0117】
帯状鋼板Mを打ち抜き加工した後、今度は雄金型342aを上方に移動させて雌金型342bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0118】
第3段打ち抜き部343は、第2段打ち抜き部342の下流側に配置され、雄金型343a及び雌金型343bを有する。雄金型343a及び雌金型343bは、鉛直方向に沿って同軸配置されており、これらの間を、2回目の打ち抜き加工を終えた後の帯状鋼板Mが挿通する。よって、帯状鋼板Mの上面に対して雄金型343aが対向し、帯状鋼板Mの下面に対して雌金型343bが対向する。そして、帯状鋼板Mの送り出しを再び一時停止させた状態で、図示されない油圧機構により、雄金型343aを下方に向けて移動させて雌金型343b内に至らせることで、帯状鋼板Mのうち、電磁鋼板40を形成するために必要な3回目の打ち抜き加工を行う。この時も、帯状鋼板Mの上下面にはプレス加工油が塗布されているので、焼き付き等を生じることなく打ち抜くことができる。この打ち抜き加工の後、今度は雄金型343aを上方に移動させて雌金型343bから引き抜き、帯状鋼板Mを再び下流側に向けて送り出す。
【0119】
接着剤塗布部350は、プレス加工部340の下流側にある積層接着部360内に組み込まれている。接着剤塗布部350は、空気圧送機351と、シリンジ352と、ノズル353とを備える。
シリンジ352は、接着剤を貯留する容器であり、空気圧送機351とノズル353との間に配管を介して接続されている。接着剤は、上記第1実施形態で説明したものを使用できる。
ノズル353は、帯状鋼板Mの上方に配置されている。よって、ノズル353の吐出口は、帯状鋼板Mの上面に対向している。
【0120】
積層接着部360は、プレス加工部340の下流側でかつ接着剤塗布部350と同じ位置に配置されている。積層接着部360は、外周打ち抜き雄金型361と、外周打ち抜き雌金型362と、スプリング363と、加熱器364と、を備える。
外周打ち抜き雄金型361は、円形の底面を有する円柱形状の金型であり、その上端にはスプリング363の下端が接続されている。そして、外周打ち抜き雄金型361は、スプリング363で支持された状態で、スプリング363と共に上下動可能とされている。外周打ち抜き雄金型361は、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ外径寸法を有している。外周打ち抜き雄金型361内には、前記ノズル353が内蔵されている。そして、ノズル353の前記吐出口が、外周打ち抜き雄金型361の前記底面に形成されている。
【0121】
外周打ち抜き雌金型362は、円柱形状の内部空間を有する金型であり、前記ステータ用接着積層コア21の外径寸法と略同じ内径寸法を有している。
加熱器364は、外周打ち抜き雌金型362に、一体に組み込まれている。加熱器364は、外周打ち抜き雌金型362内に積層された各電磁鋼板(鋼板部品)40をその周囲より加熱する。前記接着剤として加熱硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱器364からの熱を受けて硬化する。一方、接着剤として常温硬化型を用いる場合、この接着剤は、加熱を要することなく室温にて硬化する。
【0122】
上記積層接着部360によれば、帯状鋼板Mの送り出しを一時停止させた状態で、外周打ち抜き雄金型361を降下させて帯状鋼板Mを外周打ち抜き雌金型362との間に挟み込み、さらに外周打ち抜き雄金型361を外周打ち抜き雌金型362内に押し込むことで、帯状鋼板Mから外周打ち抜きされた電磁鋼板40が得られる。
この時も、硬化促進層の表面がプレス加工油で被覆されているため、硬化促進層が外周打ち抜き雄金型361及び外周打ち抜き雌金型362に付着することを抑制できる。よって、硬化促進層が剥がれて外周打ち抜き雄金型361及び外周打ち抜き雌金型362に堆積する虞を抑制できるので、これから製造するステータ用接着積層コア21の構造強度や磁気特性の低下を抑制できる。
【0123】
外周打ち抜き雄金型361により外周打ち抜きをする際、前記空気圧送機351を起動させて適量の空気をシリンジ352へ圧送すると、シリンジ352内の接着剤がノズル353へ送られる。その結果、外周打ち抜き雄金型361の前記底面に形成された前記吐出口から適量の接着剤が吐出され、帯状鋼板Mの上面に塗布される。より具体的には、帯状鋼板Mの上面に形成された硬化促進層の全面を覆うプレス加工油上に、接着剤が塗布される。この接着剤は、硬化促進層の上方に塗布されるものの、両者の間にプレス加工油が介在するため、この時点で接着剤の硬化は始まらない。なお、ここで塗布された接着剤は、次に外周打ち抜きされて積層される他の電磁鋼板40を接着するために用いられる。
【0124】
今回外周打ち抜きされた電磁鋼板40は、前回に打ち抜かれて外周打ち抜き雌金型362内に積層及び接着された他の電磁鋼板40の上面に積層される。この積層により、前記他の電磁鋼板40の上面に前回形成された接着剤と硬化促進層とが同上面にあるプレス加工油を押し退けて互いに混合する。さらに外周打ち抜き雄金型361からの加圧力と、加熱器364からの加熱とが、積層された各電磁鋼板40に加えられる。この時、外周打ち抜き雄金型361から電磁鋼板40に加えられる加圧力は、前記スプリング363の付勢力によって常に一定に維持される。
【0125】
以上により、今回打ち抜いた電磁鋼板40が、前回に打ち抜かれた電磁鋼板40の上面に対して接着固定される。一方、今回打ち抜いた電磁鋼板40の上面に塗布された接着剤は、この時点では同上面上にある硬化促進層とまだ混合していないため、硬化せず、液状のままになっている。
以上説明のような外周打ち抜き、加圧、そして加熱の各工程を各電磁鋼板40の積層枚数分の回数、繰り返すことで、外周打ち抜き雌金型262内にステータ用接着積層コア21が形成される。
【0126】
図7に示すように、前記雌金型341b、前記雌金型342b、前記雌金型343b、前記外周打ち抜き雌金型362、及び前記加熱器364は、共通の固定基台371上に固定されている。したがって、これら雌金型341b、雌金型342b、雌金型343b、外周打ち抜き雌金型362、及び前記加熱器364は、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
同様に、前記雄金型341a、前記雄金型342a、前記ノズル353、及び前記外周打ち抜き雄金型361も、共通の可動基台372の下面に固定されている。したがって、これら雄金型341a、雄金型342a、ノズル353、及び外周打ち抜き雄金型361も、水平方向及び上下方向の相対位置が固定されている。
【0127】
前記駆動部が帯状鋼板Mを下流側に向かって送り出し、一時停止させた時に可動基台372を下降させることで、電磁鋼板40の外周打ち抜き及び積層及び接着ならびに次工程のための接着剤塗布と、帯状鋼板Mで次に外周打ち抜きされる位置への前記3回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記3回目の打ち抜き加工を行う位置への前記2回目の打ち抜き加工と、帯状鋼板Mで次に前記2回目の打ち抜き加工を行う位置への前記1回目の打ち抜き加工と、が同時に行われる。
続いて、可動基台372を上昇させて帯状鋼板Mの上方に退避させた後、前記駆動部により帯状鋼板Mを再び下流側に所定距離だけ送り出し、そして再び一時停止させる。この状態で可動基台372を再び下降させ、各位置での加工を継続して行う。このように、前記駆動部により帯状鋼板Mを間欠的に送りながら、一時停止時に可動基台372を上下動させる工程を繰り返すことにより、ステータ用接着積層コア21が製造される。
【0128】
以上説明の構成を有する接着積層コア製造装置300を用いた接着積層コア製造方法について、図8を用いて以下に説明する。
図8に示すように、本実施形態の接着積層コア製造方法は、鋼板送り出し工程S21と、硬化促進剤塗布工程S22と、硬化促進剤乾燥工程S23と、加工油塗布工程S24と、1回目打ち抜き工程S25と、2回目打ち抜き工程S26と、3回目打ち抜き工程S27と、接着剤塗布及びステータ用接着積層コア形成工程S28と、取り出し工程S29と、を有する。
【0129】
鋼板送り出し工程S21では、フープ材Fから下流側に向けて帯状鋼板Mを送り出す。
続く硬化促進剤塗布工程S22では、ノズル322から帯状鋼板Mの上面の全面に、硬化促進剤aを塗布する。この時点の硬化促進剤aは液状である。
続く硬化促進剤乾燥工程S23では、ドライヤー323bからの空気を帯状鋼板Mの上下面に吹き付け、液状であった硬化促進剤aを乾燥させて硬化促進層(硬化促進部)a’を形成する。この硬化促進層a’は固体である。
続く加工油塗布工程S24では、塗布ローラー331により、帯状鋼板Mの上下面にプレス加工油bが塗布されて層を形成する。この時、硬化促進層a’は予め乾燥されているので、プレス加工油bと混ざって濃度が下がることはなく、ほぼ元の状態を維持する。
【0130】
続く1回目打ち抜き工程S25では、第1段打ち抜き部341により帯状鋼板Mの1回目の打ち抜きが行われる。この時、帯状鋼板Mにはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型341a及び雌金型341b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
続く2回目打ち抜き工程S26では、第2段打ち抜き部342により帯状鋼板Mの2回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型342a及び雌金型342b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
【0131】
続く3回目打ち抜き工程S27では、第3段打ち抜き部343により帯状鋼板Mの3回目の打ち抜きが行われる。この時も、帯状鋼板Mにはプレス加工油bが予め塗布されているため、雄金型343a及び雌金型343b間における焼き付き等、プレス加工上の不具合が生じない。
以上の1回目打ち抜き工程S25~3回目打ち抜き工程S27により、外形部分を除き、図1に示したコアバック部22及びティース部23が帯状鋼板Mに形成される。
【0132】
続く接着剤塗布及びステータ用接着積層コア形成工程S28では、外周打ち抜き雄金型361によって帯状鋼板Mから外周が打ち抜かれた電磁鋼板40が、先に打ち抜かれた他の電磁鋼板40の上面に積層される。この時、前記他の電磁鋼板40の上面には、硬化促進層a’が形成され、さらにその上にプレス加工油bを介して接着剤cが塗布されている。したがって、これら電磁鋼板40が積層及び加圧されることにより、前記他の電磁鋼板40の上面におけるプレス加工油bを押し退けて同上面にある硬化促進層a’と接着剤cとが混ざり合い、さらに加熱器364によって加熱されるため、瞬時に硬化する。
一方、今回外周打ち抜きを行った電磁鋼板40を前記他の電磁鋼板40に積層すると同時に、今回外周打ち抜きを行った電磁鋼板40の上面に、ノズル353から接着剤cが塗布される。この接着剤cは、電磁鋼板40の上面にあってまだ硬化促進層a’と混ざっていないため、液状をなしている。
【0133】
以上の工程を順次繰り返すことで必要枚数の電磁鋼板40を積層及び接着し、ステータ用接着積層コア21が完成する。具体的に言うと、電磁鋼板40の積層枚数が所定枚数に達するまで、鋼板送り出し工程S21~ステータ用接着積層コア形成工程S28の各工程を順番に繰り返していく。そして、ステータ用接着積層コア形成工程S28後における電磁鋼板40の積層枚数が前記所定枚数に達した時点で、鋼板送り出し工程S21には戻らずに取り出し工程S29へと進む。
続く取り出し工程S29では、完成したステータ用接着積層コア21を外周打ち抜き雌金型362内から取り出すことで、接着積層コア製造方法の全工程が終了する。
【0134】
以上説明の接着積層コア製造装置200を用いた接着積層コア製造方法の骨子は、上記第2実施形態で説明したものと基本的に同じであり、硬化促進層a’の形成位置を、電磁鋼板40の下面から上面に変えたものである。そして、この工程を実現する本実施形態の接着積層コア製造装置300は、硬化促進部形成部220を帯状鋼板Mの上方に配置している。
【0135】
すなわち、各電磁鋼板40が、先に打ち抜かれた電磁鋼板(第1鋼板部品)40及び後に打ち抜かれた電磁鋼板(第2鋼板部品)40を含む。そして、本実施形態の接着積層コア製造方法は、上面(第1面)と、前記上面上に形成された硬化促進層(硬化促進部)a’と、硬化促進層a’上に配置されたプレス加工油bと、プレス加工油b上に配置された接着剤cとを有する電磁鋼板40を先に打ち抜いて準備する工程(第4の工程)と、下面(第2面)を有する電磁鋼板40を続いて打ち抜いて準備する工程(第5の工程)と、前記上面及び前記下面が互いに対向するように、先に打ち抜いた電磁鋼板40の上に、後に打ち抜いた電磁鋼板40を重ね合わせて接着する工程(第6の工程)とを行う。
【0136】
本実施形態の場合も、帯状鋼板Mに設けられた硬化促進層a’が予め乾燥させて形成されているため、後加工で塗布されるプレス加工油bと混ざり合うことが抑制されている。したがって、各電磁鋼板40を積層して接着する際に、硬化促進層a’が元々と同じ高い濃度を維持したまま接着剤cと混ざり合えるため、高い接着強度を早期に発現できる。よって、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性を得ることが可能である。
【0137】
なお、本実施形態の場合も、プレス加工油bの塗布は、帯状鋼板Mの両面に限らず、硬化促進層a’が形成された片面だけとしてもよい。ただし、片面とする場合には、このプレス加工油bが硬化促進層a’と接着剤cとの間に挟まれるように塗布する必要がある。
また、硬化促進剤aの塗布は帯状鋼板Mの全面塗布に限らず、点状塗布としてもよい。ただし、この場合は、他の実施形態と同様に、前記接着剤塗布及びステータ用接着積層コア形成工程S28で点状の接着剤cと点状の硬化促進層(硬化促進部)a’とが正しく重なって混合するために、前工程で塗布される接着剤cとの相対位置関係を正しく調整する必要がある。
【0138】
[第4実施形態]
図9を用いて本発明の第4実施形態を以下に説明する。図9は、本実施形態に係る接着積層コア製造装置の側面図である。
本実施形態は、図3及び図4を用いて説明した上記第1実施形態について一点だけ変えた変形例に相当するものであるので、以下の説明では、上記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を用いてそれらの詳細説明を省略する。
【0139】
本実施形態の接着積層コア製造装置400は、前記硬化促進部形成部120を有する第1ステージAと、第1ステージAから移された帯状鋼板Mをプレス加工油塗布部130に向けて送り出す搬送部を有する第2ステージBとを備える。第2ステージBには、帯状鋼板Mの送り方向に沿って、前記搬送部と、プレス加工油塗布部130と、プレス加工部140と、接着剤塗布部150と、積層接着部160とが、この順に並んで配置されている。これらのうち、プレス加工部140と、接着剤塗布部150と、積層接着部160との組み合わせにより、順送金型(Progressive Die)が構成される。
【0140】
第1ステージAは、フープ材Fを送り出す搬送部と、硬化促進部形成部120と、硬化促進層を形成した後の帯状鋼板Mを巻き取ってフープ材F1とする巻き取り部とを有する。第1ステージAで製造された中間材であるフープ材F1は、ステージAの巻き取り部から取り外され、他の場所に移動される。これを複数回行うことで、複数のフープ材F1を作り置きすることができる。
第2ステージBは、作り置きされたフープ材F1を受け入れてプレス加工油塗布部130に向けて送り出す他の搬送部と前記駆動部(不図示)と、プレス加工油塗布部130と、プレス加工部140と、接着剤塗布部150と、積層接着部160とを備える。前記他の搬送部から送り出される帯状鋼板Mは、前記駆動部によりプレス加工油塗布部130に向けて送り出される。
なお、第1ステージAにおける硬化促進層(硬化促進剤)は、溶剤を完全に揮発させるまで乾燥させることが好ましいが、プレス加工油と混じり合わず、なおかつフープ材F1から帯状鋼板Mを引き出して使用する際に不都合が生じない程度の乾燥度合いであってもよい。
以上説明の接着積層コア製造装置400を用いた接着積層コア製造方法においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0141】
また、図示を省略するが、上記第1実施形態の他の変形例として、積層先の電磁鋼板40の上面とこれから積層する電磁鋼板40の下面との双方に接着剤cを塗布してもよい。
この場合の接着積層コア製造方法は、先に打ち抜いた電磁鋼板(第1鋼板部品)40を準備する工程(第7の工程)をまず行う。同工程では、上面(第1面)と、この上面上に形成された硬化促進層(硬化促進部)a’と、硬化促進層a’上に塗布して配置されたプレス加工油bと、プレス加工油b上に塗布して配置された接着剤cとを有する電磁鋼板(第1鋼板部品)40を準備する。
続いて、後に打ち抜いた電磁鋼板(第2鋼板部品)40を準備する工程(第8の工程)をまず行う。同工程では、下面(第2面)と、この下面上に塗布して配置された接着剤cとを有する電磁鋼板(第2鋼板部品)40を準備する。
そして、最後の工程(第9の工程)として、前記第1面及び前記第2面が互いに対向するように、先に打ち抜いた電磁鋼板40と後に打ち抜いた電磁鋼板40とを重ね合わせて接着する。
以上の各工程を繰り返し行うことで、ステータ用接着積層コア21が製造される。
【0142】
以上、本発明の各実施形態について説明した。ただし、本発明の技術的範囲は前記実施形態及び実施例のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、ステータ用接着積層コア21の形状は、各実施形態で示した形態のみに限定されるものではない。具体的には、ステータ用接着積層コア21の外径および内径の寸法、積厚、スロット数、ティース部23の周方向と径方向の寸法比率、ティース部23とコアバック部22との径方向の寸法比率等は、所望の回転電機の特性に応じて任意に設計可能である。
各実施形態におけるロータ30では、2つ1組の永久磁石32が1つの磁極を形成しているが、本発明の製造対象はこの形態のみに限られない。例えば、1つの永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよく、3つ以上の永久磁石32が1つの磁極を形成していてもよい。
【0143】
各実施形態では、回転電機10として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、回転電機10の構造は、以下に例示するようにこれのみに限られず、更には以下に例示しない種々の公知の構造も採用可能である。
各実施形態では、回転電機10として、永久磁石界磁型電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれのみに限られない。例えば、回転電機10がリラクタンス型電動機や電磁石界磁型電動機(巻線界磁型電動機)であってもよい。
各実施形態では、交流電動機として、同期電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が誘導電動機であってもよい。
各実施形態では、回転電機10として、交流電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が直流電動機であってもよい。
各実施形態では、回転電機10として、電動機を一例に挙げて説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、回転電機10が発電機であってもよい。
【0144】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の上記各態様によれば、接着積層コアの製造に際し、十分な接着強度を確保した上でより高い生産性が得られる、接着積層コア製造方法及び接着積層コア製造装置を提供できる。よって、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0146】
21 ステータ用接着積層コア(接着積層コア、回転電機用の固定子)
40 電磁鋼板(鋼板部品、第1鋼板部品、第2鋼板部品)
100,200,300,400 接着積層コア製造装置
120,220,320 硬化促進部形成部
130,230,330 プレス加工油塗布部
140,240,340 プレス加工部
150,250,350 接着剤塗布部
A 第1ステージ
a 硬化促進剤
a’ 硬化促進部
B 第2ステージ
b プレス加工油
c 接着剤
M 帯状鋼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9