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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240408BHJP
   A61M 25/10 20130101ALI20240408BHJP
【FI】
A61M25/00 632
A61M25/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022536062
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027625
(87)【国際公開番号】W WO2022014000
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桂田 武治
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152353(JP,A)
【文献】特表2010-527258(JP,A)
【文献】特表2007-530161(JP,A)
【文献】特開2002-204831(JP,A)
【文献】特開2001-149482(JP,A)
【文献】特開2007-089724(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空シャフトと、
前記中空シャフトの外周に配置されるアウターシャフトと、を備え、
前記中空シャフトは、複数の螺旋状に延びるスリットが形成されたスリット部を有し、
前記スリット部において、各スリットの基端は、軸方向の同じ位置および円周方向に等間隔に形成されており、
前記スリット部と前記アウターシャフトとの間に、流体が流れる副経路を備え、
前記副経路は、前記スリット部の先端の外周を介して、前記スリット部よりも先端側且つ前記アウターシャフトの内部に存在する内腔と連通している、カテーテル。
【請求項2】
前記スリット部における前記中空シャフトの径方向の厚さは、基端から先端に向かって減少するように構成されている、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記スリット部は、中空ロープ体により構成され、前記スリット部の基端側に配置される管状体と接続されている、請求項1または請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
各スリットの幅が、基端よりも先端が広く構成されている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカテーテル。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載のカテーテルであって、更にバルーンを有し、
前記中空シャフトは、前記バルーンに連通している、カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管などの体腔内の部位を治療する際、カテーテルなどが用いられる。このようなカテーテルの一つとして、例えば、金属製のハイポチューブと、そのハイポチューブよりも先端側(バルーン側)に設けられる樹脂製のアウターチューブと、ハイポチューブとアウターチューブとに跨って設けられたコアワイヤと、を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなカテーテルの別の一つとして、例えば、金属製のハイポチューブと、そのハイポチューブの先端側(バルーン側)に螺旋状の切込みと、そのハイポチューブを被覆する樹脂製の外側チューブと、を備えるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-111264号公報
【文献】特開2002-253678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のカテーテルでは、コアワイヤは剛性補強材として設けられているが、ハイポチューブの内周面の円周方向における一部分に固定されているため、ハイポチューブおよびアウターチューブの湾曲時に方向性が出てしまい、操作性が良くない。
【0006】
本開示の目的は、湾曲時に方向性が出るのが防止することができ、操作性を向上させたカテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のいくつかの態様は、
(1)中空シャフトと、
前記中空シャフトの外周に配置されるアウターシャフトと、を備え、
前記中空シャフトは、複数の螺旋状に延びるスリットが形成されたスリット部を有し、
前記スリット部において、各スリットの基端は、軸方向の同じ位置および円周方向に等間隔に形成されている、カテーテル、
(2)前記スリット部における前記中空シャフトの径方向の厚さは、基端から先端に向かって段階的に減少するように構成されている、前記(1)に記載のカテーテル、
(3)前記スリット部は、中空ロープ体により構成され、前記スリット部の基端側に配置される管状体と接続されている、前記(1)または(2)に記載のカテーテル、
(4)各スリットの幅が、基端よりも先端が広く構成されている、前記(1)から(3)のいずれか一項に記載のカテーテル、並びに
(5)前記(1)から(4)のいずれか一項に記載のカテーテルであって、更にバルーンを有し、
前記中空シャフトは、前記バルーンに連通しているカテーテル、である。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、湾曲時に方向性が出るのが防止することができ、操作性を向上させたカテーテルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係るカテーテルの概略的縦断面図である。
図2】スリット部近傍の拡大断面図である。
図3】スリット部の基端側の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
当該カテーテルは、中空シャフトと、上記中空シャフトの外周に配置されるアウターシャフトと、を備え、上記中空シャフトは、複数の螺旋状に延びるスリットが形成されたスリット部を有し、上記スリット部において、各スリットの基端は、軸方向の同じ位置および円周方向に等間隔に形成されている。
【0011】
以下、本実施形態に係るカテーテルについて図面を参照して説明する。しかし、本開示は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。以下の実施形態では、カテーテルがバルーンカテーテルであるものを例示して説明する。なお、図面に図示したカテーテルの寸法は、実施内容の理解を容易にするために示した寸法であり、実際の寸法に対応するものではない。
【0012】
また、本明細書において、「先端側(遠位側)」とは、カテーテルの長軸方向において先端チップが位置する側を指す。「基端側(近位側)」とは、長軸方向において先端側に対する反対側を指す。「先端」とは、カテーテルを構成する各部材における先端側の端部を指し、「基端」とは、カテーテルを構成する各部材における基端側の端部を指す。
【0013】
本開示の実施形態に係るカテーテル1について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係るカテーテル1の概略的縦断面図である。
【0015】
当該カテーテル1は、図1に示すように、概略的に、インナーシャフト11と、先端チップ21と、バルーン31と、アウターシャフト41と、中空シャフト51と、コネクタ61とにより構成されている。
【0016】
インナーシャフト11は筒状(中空形状)のシャフトである。インナーシャフト11は、長軸方向に沿って貫通する内腔11aを有している。インナーシャフト11の先端は、例えば、後述する先端チップ21に接続することができる。インナーシャフト11の基端部は、例えば、後述するアウターシャフト41の第2アウターシャフト部43に接続され、内腔11aの基端の開口11bが外部に臨むように配置することができる。インナーシャフト11の後述のバルーン31に覆われている部分の外周には、2つの環状のマーカ12が取り付けられている。マーカ12は、放射線不透過材料で構成されている。
【0017】
先端チップ21は、インナーシャフト11の先端に接続された筒状(中空形状)の部材である。先端チップ21は、長軸方向に沿って貫通する内腔21aを有し、かつ先端部が先端側に向かって略尖鋭形状となるように形成されている。当該カテーテル1は、先端チップ21を備えることで、例えば、体腔内を前進する際の抵抗を減らし、当該カテーテル1を円滑に進行させることができる。
【0018】
ここで、上述した内腔11aと内腔21aとは互いに連通しており、これらによりルーメンL1が形成されている。ルーメンL1には、例えば、ガイドワイヤや治療デバイスなどの医療器具等(不図示)が挿入される。
【0019】
バルーン31は、インナーシャフト11外周の少なくとも一部を覆うように配置された拡縮可能な部材である。バルーン31は、例えば、先端がインナーシャフト11の先端および/または先端チップ21の基端に接合され、基端が後述するアウターシャフト41の先端に接合されている。バルーン31は、内部に液体が注入されることで膨らみ、例えば、血管の内壁を押し拡げたり、ステントを拡張したりすることができる。
【0020】
アウターシャフト41は、インナーシャフト11の基端側部分および後述の中空シャフト51のスリット部52を覆うように配置された筒状(中空形状)のシャフトである。このアウターシャフト41の内部には、インナーシャフト11およびスリット部52との間に長軸方向に沿って延びる内腔41aが形成されている。アウターシャフト41の先端は、バルーン31の基端に接合されている。アウターシャフト41は、先端側から第1アウターシャフト部42、第2アウターシャフト部43の順で構成されている。これら第1アウターシャフト部42および第2アウターシャフト部43は、一体であってもよく、別体を接合したものであってもよい。
【0021】
第1アウターシャフト部42の先端は、バルーン31の基端に接合されている。第1アウターシャフト部42の内部には、インナーシャフト11が挿通されている。
【0022】
第2アウターシャフト部43は、第1アウターシャフト部42の基端側に位置している。第2アウターシャフト部43の先端は、第1アウターシャフト部42の基端に接合されている。第2アウターシャフト部43の基端は、後述の中空シャフト51のシャフト本体部53の先端に接合されている。第2アウターシャフト部43の内部には、インナーシャフト11の基端部およびスリット部52が挿通されている。
【0023】
上述したインナーシャフト11、先端チップ21、バルーン31およびアウターシャフト41を構成する材料としては、これらが体腔内に挿通されることから、抗血栓性、可撓性および生体適合性を有していることが好ましい。上記材料としては、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、シリコーン、フッ素樹脂など樹脂材料等を採用することができる。
【0024】
図2は、スリット部52近傍の拡大断面図である。
図3は、スリット部52の基端側の端面図である。
【0025】
図1、2に示すように、中空シャフト51は、筒状(中空形状)のシャフトである。中空シャフト51は、長軸方向に沿って貫通する内腔51aを有している。中空シャフト51は、スリット部52と、シャフト本体部53とを有する。スリット部52は、第2アウターシャフト部43の剛性を補強する補強体として機能する。
【0026】
スリット部52は、第2アウターシャフト部43内に位置している。スリット部52は、複数本(本実施形態では4本)の平板状の素線を撚り合わせることにより形成された中空ロープ体により構成され、長軸方向に沿って貫通する内腔52aを有している。スリット部52における中空シャフト51の径方向の厚さは、基端から先端に向かって段階的に減少するように構成されている。すなわち、各素線は、その厚さが基端から先端に向かって段階的に減少するように構成されている。スリット部52は、基端側から先端側に向かって先細るテーパ形状をなしている。スリット部52の内径は、長軸方向において略一定に構成されている。各素線は、その幅が基端から先端に向かって略一定に構成されている。
【0027】
スリット部52には、複数の螺旋状に延びるスリット52bが形成されている。すなわち、スリット部52は、隣り合う素線の間に隙間を有するように、複数本の素線が撚り合わされている。各スリット52bの幅は、基端よりも先端が広く構成されている。スリット部52の基端側の端面図である図3に示すように、スリット部52において、各スリット52bの基端は、軸方向の同じ位置および円周方向に等間隔に形成されている。スリット部52の内腔52aは、スリット部52の先端開口およびスリット52bを介して、アウターシャフト41の内腔41aと互いに連通している。
【0028】
シャフト本体部53は、スリット部52の基端側に位置している。シャフト本体部53は、長軸方向に沿って貫通する内腔53aを有している。上述した内腔52aと内腔53aとは互いに連通し、内腔52aと内腔53aとにより中空シャフト51の内腔51aを構成している。アウターシャフト41の内腔41aと、中空シャフト51の内腔51aとは互いに連通しており、これらにより拡張ルーメンL2が形成される。中空シャフト51の内腔51aは、アウターシャフト41の内腔41aを介して、バルーン31に連通している。シャフト本体部53の先端は、スリット部52の基端に、例えば、レーザ溶接またはロウ付け(接合部53b)により接合されている。シャフト本体部53の内径は、スリット部52の内径よりも大きく構成されている。これにより、スリット部52とシャフト本体部53との接続部には、段差53cが形成されている。シャフト本体部53は、管状体に相当する。
【0029】
中空シャフト51を構成する材料としては、特に限定されないが、ステンレス鋼(SUS304)、Ni-Ti合金などの超弾性合金を用いることができる。スリット部52とシャフト本体部53とは、同一の材料で構成してもよいし、異なる材料で構成してもよい。
【0030】
コネクタ61は、オペレータが当該カテーテル1を把持する部材であり、シャフト本体部53の基端に接続されている。コネクタ61には、図示せぬインデフレータが取り付けられる。図示せぬインデフレータからコネクタ61を介して、造影剤や生理食塩水等の液体が中空シャフト51の内腔51aに供給される。
【0031】
次に、カテーテル1の使用態様について説明する。ここでは、カテーテル1がバルーンカテーテルであり、このカテーテル1を用いて心臓の冠動脈中に存する狭窄部(治療部位)を拡張する手技について説明する。
【0032】
まず、カテーテル1(以下、「バルーンカテーテル1」とも称する)の挿入に先立って、図示せぬガイドワイヤを血管内に挿入し、血管に沿って治療部位まで押し進めておく。次いで、バルーン31が縮径した状態のバルーンカテーテル1を用い、ガイドワイヤの基端をバルーンカテーテル1のルーメンL1の開口21bに差し入れてバルーンカテーテル1をその先端から血管に挿入する。
【0033】
次に、バルーンカテーテル1をガイドワイヤに沿って治療部位まで押し進める。バルーン31が狭窄部の内側に達した状態にて、図示せぬインデフレータからコネクタ61を介して、造影剤や生理食塩水等の液体を拡張ルーメンL2に供給する。このとき、図2に示すように、液体は、主経路であるスリット部52の内腔52aを流れる流れF1だけでなく、一部は流れF2で示すように、スリット52bを介して、副経路であるスリット部52と第2アウターシャフト部43との間の内腔41aへ流れる。これにより、インデフレーションタイムを短くすることができる。そして、拡張ルーメンL2に供給された液体は、バルーン31に流れ込みバルーン31を拡張する。この際、拡張したバルーン31の外周面が狭窄部の内壁に当接しながら押し広げることで狭窄部が拡張される。
【0034】
狭窄部の拡張が終了した後、拡張ルーメンL2を介して拡張液をバルーン31内から排出して縮径させる。次いで、バルーン31が縮径した後、バルーンカテーテル1を後退させながら体外に抜去することでバルーンカテーテル1の使用が完了する。
【0035】
以上のように、本実施形態のカテーテル1は、中空シャフト51のスリット部52には、複数の螺旋状に延びるスリット52bが形成され、スリット部52において、各スリット52bの基端は、軸方向の同じ位置および円周方向に等間隔に形成されている。これにより、スリット部52の湾曲時に方向性が出るのを防止することができ、ひいてはアウターシャフト41および中空シャフト51の湾曲時に方向性が出るのを防止することができる。このため、カテーテル1の操作性を向上させることができる。
【0036】
スリット部52における中空シャフト51の径方向の厚さは、基端から先端に向かって段階的に減少するように構成されている。これにより、スリット部52は、第2アウターシャフト部43の剛性を補強しつつ、スリット部52の基端側から先端側に向かって柔軟性を増加させることができる。スリット部52の径方向の厚さが先端に向かって段階的に薄くされる際、スリット部52の外径が段階的に減少し、スリット部52の外周と第2アウターシャフト部43の内周との間の間隔は一定になるように構成されることで、アウターシャフト41は、先端に向かって細径化されることができる。
【0037】
スリット部52は、中空ロープ体により構成され、スリット部52の基端側に配置されるシャフト本体部53と接続されている。このため、当該スリット部52を容易に提供することができる。
【0038】
各スリット52bの幅は、基端よりも先端が広く構成されている。これにより、スリット部52は、第2アウターシャフト部43の剛性を補強しつつ、スリット部52の基端側から先端側に向かって柔軟性を増加させることができる。スリット部52の先端側において、造影剤等の液体がスリット52bを通過しやすくなるので、厚さが薄いスリット部52の先端部に、造影剤等の液体により大きな圧力がかかるのを抑制することができる。
【0039】
なお、本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。上述した実施形態の構成のうちの一部を削除したり、他の構成に置換してもよく、上述した実施形態の構成に他の構成を追加等してもよい。
【0040】
上記の実施形態では、中空シャフト51において、スリット部52とシャフト本体部53とは、別体で構成されていたが、一体に構成してもよい。この場合、スリット部52の各スリット52bは、筒状体にレーザ加工等により形成してもよい。中空ロープ体であるスリット部52は、4本の素線により構成されていたが、2以上であれば何本でもよい。スリット部52の内径は、長軸方向において略一定であったが、長軸方向において段階的に減少してもよい。スリット部52の各素線は、その幅が基端から先端に向かって略一定であったが、先細るように構成してもよい。上記ではカテーテル1はバルーンカテーテルであったが、他のカテーテルであってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 カテーテル
41 アウターシャフト
42 第1アウターシャフト部
43 第2アウターシャフト部
51 中空シャフト
52 スリット部
52b スリット
図1
図2
図3