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特許7467649インピーダンス決定によってバッテリシステムを監視するための方法及びバッテリ管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】インピーダンス決定によってバッテリシステムを監視するための方法及びバッテリ管理システム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20240408BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20240408BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240408BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/389
G01R31/392
H02J7/00 Y
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022550935
(86)(22)【出願日】2021-03-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2021054982
(87)【国際公開番号】W WO2021170866
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】102020105349.5
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522050136
【氏名又は名称】トゥワイス テクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バウマン, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】カルガー, アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】マヘシュワリ, アルピット
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-202654(JP,A)
【文献】特開2009-097878(JP,A)
【文献】特開2019-152575(JP,A)
【文献】特開2015-224919(JP,A)
【文献】特開2014-102111(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0031938(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/367
G01R 31/389
G01R 31/392
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリシステム(202)を監視する方法であって、
- 測定された電流値と測定された電圧値(Imeas,k;Umeas,k)とから成る、時間的に連続する対の有限のシーケンスを提供することであって、電流値と電圧値とから成る前記対(I;U)が、対応する時点における、前記バッテリシステム(202)を通って流れる電流(I)及び前記バッテリシステム(202)に印加される電圧(U)を示す、
測定された電流値と測定された電圧値(Imeas,k;Umeas,k)とから成る、時間的に連続する対の有限のシーケンスを提供することと、
- 前記バッテリシステム(202)の電気等価モデルを準備することであって、前記電気等価モデルが、直列に接続されたインピーダンス(Z、Z、Z、Z)を有する、前記バッテリシステム(202)の電気等価モデルを準備することと、
- 前記電気等価モデルの前記インピーダンスの初期インピーダンスパラメータ値(Rohm,initial;Rct,initial;Reldiff,initial;Rsoldiff,initial)を提供することと、
- 前記初期インピーダンスパラメータ値(Rohm,0;Rct,0;Reldiff,0;Rsoldiff,0に基づく第1のインピーダンスパラメータ、シミュレートされた第1の電圧値(U sim,1 )の前記有限のシーケンスの第1の前記電流値(Iおよび、前記有限のシーケンスの第1の前記測定された電圧値(Umeas,1)と、の間の差に基づいて、前記電気等価モデルのインピーダンス(Z)の第1のインピーダンスパラメータ(Rsoldif)を適合することであって、これにより、最適化された第1のインピーダンスパラメータ値(Rsoldif,optimated)が得られる、前記電気等価モデルのインピーダンス(Z)の第1のインピーダンスパラメータ(Rsoldif)を調整することと、
- 前記電気等価モデルの前記インピーダンス(Z、Z、Z、Z、Z)の少なくとも1つの他のインピーダンスパラメータ(Rohm;Rct;Reldiff)を調整することにより、前記電気等価モデル及び測定された電流値(Imeas,k)の第1のシーケンスに基づき得られた、シミュレートされた電圧値(Usim,k)のシーケンスと、測定された電圧値(Umeas,k)の前記シーケンスと、の誤差を最小化することであって、これにより、前記少なくとも1つの他のインピーダンスパラメータの、最適化された他のインピーダンスパラメータ値(Rohm,optimal;Rct,optimal;Reldiff,optimal)が得られる、
誤差を最小化することと、
を含み、
前記第1のインピーダンスパラメータ(R soldif )が、前記電圧値同士の差と、前記第1のインピーダンスパラメータ値と、定数と、の積を初期の前記第1のインピーダンスパラメータ値に加算することで調整される、方法。
【請求項2】
前記誤差の前記最小化の際には、前記初期インピーンスパラメータ値と、第1の前記測定された電流値と、第1の前記測定された電圧値と、に基づいて計算された圧が使用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのインピーダンスが、電荷移動中の抵抗である電流依存抵抗 ct (I Rct を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記誤差の前記最小化の際には信頼領域法が利用される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記有限のシーケンスが、測定された電流値と測定された電圧値(Imeas,k;Umeas,k)とから成る対の、より長いシーケンスから選択され、
前記電流値が実質的に一定のままであるか、又は電流値前記バッテリシステム(202)の公称容量商の値の大きさが所定の最大Cレート(C max )より小さい、所定数の前記より長いシーケンスの対の後に、より長いシーケンスの対が、前記有限のシーケンスの第1の対として選択される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記有限のシーケンスが、所定長の部分的シーケンスを含み、前記部分的シーケンスについて、電流値前記バッテリシステム(202)の前記公称容量前記商の値の大きさが、所定の最小Cレート(Cmin)より高い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
最適化された前記第1のインピーダンスパラメータ、及び最適化された前記他のインピーダンスパラメータが、後続の有限のシーケンスの初期インピーダンスパラメータ値として利用される、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の方法を実行するよう構成されたバッテリ管理システム(201)。
【請求項9】
- 測定された電流値と測定された電圧値(Imeas,k;Umeas,k)との対を測定するための手段と、
- 前記対の前記有限のシーケンスを格納するメモリと、
を有する、請求項に記載のバッテリ管理システム(201)。
【請求項10】
前記メモリがリングメモリを有する、請求項に記載のバッテリ管理システム(201)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
輸送車両のエネルギー源としてのバッテリシステムが益々普及するのに伴い、当該バッテリシステムの経年劣化挙動の分析がますます重要になってきている。バッテリシステムの経年劣化は、特に、バッテリシステムのインピーダンスの変化及びその周波数応答に示される。従って、動作中に各バッテリシステムのインピーダンスを連続的に監視することが望まれている。
【0002】
M.Baumann、S.Rohr、及びM.Lienkampらは、この目的のために、論文「Cloud-connected battery management for decision making on Second-Life of electric vehicle batteries」(DOI:10.1109/EVER.2018.8362355)において、バッテリシステムの電気的モデルのインピーダンスパラメータの非再帰的決定のためのアプローチを提案している。ここでは、測定ウィンドウと称される、測定パラメータの有限のシーケンスが最初に記憶され、この測定ウィンドウに基づいて、インピーダンスパラメータの決定が行われる。電気的モデルは、電気等価モデルとも称することができる。バッテリシステムの電気的モデルは、特に電気等価回路図によって表すことが可能である。
【発明の概要】
【0003】
本発明の課題は、公知の方法を改良することである。特に、動作中の電気等価モデルのパラメータの改善された決定が望まれる。
【0004】
このために、メインクレームに記載の方法、及びサブクレームに記載のバッテリ管理システムが提案される。有利な構成が従属クレームに記載される。
【0005】
バッテリシステムを監視する方法が提案される。本方法は、測定された電流値と測定された電圧値とから成る対であって、時間的に連続する対のシーケンスを提供することを含む。電流値と電圧値とから成る対は、バッテリシステムを流れる電流、及びバッテリシステムに印加される電圧を示す。さらに、本方法では、バッテリシステムの電気等価モデルを準備することが設けられる。電気等価モデルは、直列に接続された複数のインピーダンスを有する。電気等価モデルのインピーダンスのために、初期インピーダンスパラメータ値が提供される。本方法では、初期インピーダンスパラメータ値と有限のシーケンスの第1の電流値と基づいてシミュレートされた第1の電圧値と、有限のシーケンスの第1の測定された電圧値と、の間の差に基づいて、電気等価モデルのインピーダンスの第1のインピーダンスパラメータを調整することが設けられる。これにより、最適化された第1のインピーダンスパラメータ値が得られる。電気等価モデルのインピーダンスの少なくとも1つの他のインピーダンスパラメータを調整することにより、電気等価モデル及び測定された電流値の第1のシーケンスに基づき得られた、シミュレートされた電圧値のシーケンスと、測定された電圧値のシーケンスと、の誤差を最小化することによって、少なくとも1つの他のインピーダンスパラメータの、最適化された他のインピーダンスパラメータ値が得られる。
【0006】
バッテリシステムは、単一のバッテリセルとすることができる。その場合、電流値と電圧値との対は、当該バッテリセルを流れる電流、及び当該バッテリセルに印加される電圧を示しうる。しかしながら、バッテリシステムは複数のバッテリセルを含むことも可能である。その際には、バッテリセルが並列に接続されうる。この場合、電流値と電圧値との対は、並列接続されたバッテリセルを流れる電流、及び並列接続されたバッテリセルに印加された電圧を示しうる。バッテリセルは、直列に接続することも可能である。その場合、電流値と電圧値との対は、直列接続されたバッテリセルを流れる電流、及び直列接続された全バッテリセルでの電圧降下を示しうる。バッテリシステムが、直列接続された複数のバッテリセルから成る複数の並列に接続された部分システム、又は、並行接続されたバッテリセルから成る複数の直列に接続された部分システムを有することも考えられる。上述の意味でのバッテリシステムは、より大きなバッテリシステムの部分システムであってもよい。
【0007】
電流値と電圧値との対のみならず、バッテリシステムの現在の状態を記述する他の測定値を提供することも考えられる。例えば、電流値と電圧値との対のそれぞれに対して、対応する時点におけるバッテリシステムの温度を提供することも可能である。
【0008】
測定値を提供することは、対応する値を測定することを含みうる。しかしながら、既に測定された記憶された値が使用されることも考えられる。測定値は、例えば最初にバッテリシステムの位置で測定されて、そこで一時的に格納され、続いて、有線又は無線の通信ポイントを介して他のシステムに伝送されうる。
【0009】
初期インピーダンスパラメータ値は、ランダムなインピーダンスパラメータ値とすることができる。しかしながら、初期インピーダンスパラメータ値は、同様の構造を備えたバッテリシステムからの経験値にも基づきうる。特に、初期インピーダンスパラメータ値は、監視されるバッテリシステムと同じ又は類似したタイプのバッテリシステムのラボラトリ測定値にも基づきうる。
【0010】
本方法の枠組みにおいて、誤差を最小化する際には、1つの他のインピーダンスパラメータのみならず、複数の他のインピーダンスパラメータ、特に全ての他のインピーダンスパラメータが調整されうる。1つの他のインピーダンスパラメータ又は複数の他のインピーダンスパラメータは、特に、時定数がより低い電気等価モデルのインピーダンスに割り当てられうる。
【0011】
本方法の一構成において、第1のインピーダンスパラメータは、電圧同士の差と、定数と、の積が初期インピーダンスパラメータに加算されることで得られる。
【0012】
このような簡単な計算によって、本方法をリアルタイムで実行することが可能となりうる。
【0013】
さらに、本方法の一実施例では、誤差の最小化の際に、初期インピータンスパラメータ値、第1の測定された電流値、及び第1の測定された電圧値に基づいて計算された補正電圧を使用することが設けられる。
【0014】
さらに、本方法の一構成において、電気等価モデルの少なくとも1つのインピーダンスが、電流依存抵抗を有する。
【0015】
このことで、バッテリシステムの電荷移動抵抗を表わすことができ、これにより、電気等価モデルがより現実的にバッテリシステムを提示する。
【0016】
本方法の一構成において、誤差の最小化の際に信頼領域法が利用される。このことによって、所与の非線形的最適化の問題における、インピーダンスパラメータ値の決定がさらに簡素化されうる。
【0017】
このことでさらに、少なくとも1つの他のインピーダンスパラメータの最適化された他のインピーダンス値のために誤差を最小化する際に、実際のバッテリシステムをより良好に表すより現実的な値を得ることが可能となりうる。幾つかの構成において、信頼領域方法の使用は、誤差を最小化するための必要な計算時間の削減を助けることもできる。
【0018】
さらに、一実施例において、有限のシーケンスが、測定された電流値と測定された電圧値とから成る対のより長いシーケンスから選択され、電流値が実質的に一定のままであり又は電流値及びバッテリシステムの公称容量からの商(商は、バッテリシステムのCレートとも称される)の値が所定の最大Cレートより小さい所定数のより長いシーケンスの対、の後のより長いシーケンスの対が、有限のシーケンスの第1の対として選択されることが構想される。
【0019】
より長いシーケンスは、特に、測定された電流値と測定された電圧値との対であって、駆動中に連続的に測定され、特に終わりが定められていない駆動の間に連続的なデータフローにおいて測定される測定された電流値と測定された電圧値との対とすることができる。電流値及び電圧値が測定される限り、注目する時系列がほぼ無限に継続される。典型的に、連続的なデータフローからの電流値及び電圧値の対の、所定長のより長いシーケンスのみが常に考慮される。このより長いシーケンスは、有限のシーケンスより多くの、測定された電流値と測定された電圧値との対を含む。
【0020】
このことによって、最適化された第1のインピーダンスパラメータ値と、最適化された他のインピーダンスパラメータ値と、の決定を、有限のシーケンスの一部ではない電流値及び電圧値に可能な限り依存せずに構成することが可能となりうる。
【0021】
さらに、一実施形態において、有限のシーケンスが、所定長の部分的シーケンスを含み、当該所定長の部分的シーケンスについて、電流値及びバッテリシステムの公称容量からの商の値が、所定の最小Cレート(Cmin)より高い。
【0022】
このことにより、バッテリシステムのインピーダンスを決定し電気化学的な等価モデルで表される物理的効果の全てが十分に励起されないというリスクを下げることが可能である。このようにして、電気等価モデルのインピーダンスパラメータ値のより正確な決定が可能となりうる。
【0023】
本方法の一実施例では、最適化された第1のインピーダンスパラメータ及び最適化された他のインピーダンスパラメータが、後続の有限のシーケンスの初期インピーダンスパラメータ値として使用されることが構想される。
【0024】
典型的に、バッテリシステムのインピーダンスパラメータ値の変化は、短期間内ではむしろ小さい。本方法の第1の反復において決定されたインピーダンスパラメータ値を、後続の反復のための初期インピーダンスパラメータ値として使用することによって、後続の反復における最適化されたインピーダンスパラメータ値の決定を加速させることができる。
【0025】
さらに、上述の方法のうちの1つを実行するよう構成されたバッテリ管理システムが提案される。バッテリ管理システムは、バッテリシステムの位置で使用されうる。しかしながら、バッテリシステムから離れた位置にバッテリシステムを設けることも考えられる。例えば、バッテリ管理システムは、バッテリ管理システムから無線又は有線の通信装置を介して測定値を得るサーバによって実現されうる。その際に、測定値はバッテリシステムの位置で又はクラウドで一時的に格納されうる。
【0026】
一実施例において、バッテリ管理システムは、測定された電流値と測定された電圧値とから成る対を測定するための手段と、当該対の有限のシーケンスを格納するためのメモリと、を備える。メモリは、特にリングメモリを有しうる。クラウドに測定値を格納することも考えられる。
【0027】
以下では、実施例が図面を用いて示される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】電気等価システムの一例を示す。
図2】バッテリ管理システムの一例を示す。
図3】電圧と電圧との対の例示的なシーケンスを示す。
図4図3からシーケンスの一部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、バッテリシステムを監視するために利用することが可能な電気等価モデルの一例を示している。電気等価モデルは理想的な電圧源を含み、この理想的な電圧源は、電源電圧UOCと、直列に接続された4つのインピーダンスZ、Z、Z、及びZと、を提供する。
【0030】
インピーダンスZは、純粋なオーム抵抗Rohmであり、インピーダンスZ、Z及びZはRC回路である。電気等価モデルは、より少ない又はより多い量の直列に接続されたインピーダンスを有してもよい。インピーダンスが、RC回路の代わりに又はRC回路に加えて、他のインピーダンス素子を含むことも考えられる。例えば、電気等価モデルのインピーダンスは、CPE(constant phase element)、特にワールブルク要素、及び/又はZARC要素を有しうる。
【0031】
図1に示される実施例では、インピーダンスZ1が、電荷移動中の抵抗を表す電流依存抵抗Rct(IRct)と、バッテリシステムの二重層容量を表す容量Cdlと、を含む。インピーダンスZは、抵抗Reldiff及び容量Celdiffを有し、バッテリシステム内の電解拡散プロセスを表している。インピーダンスZは、抵抗Rsoldiffと容量Csoldiffとを含み、固体拡散効果を表わしている。
【0032】
ここで、電気等価モデルは、物理的過程を正確に記述するのではなく、バッテリシステムを有効にパラメータ化できるために物理的過程に依拠しているだけであることに注意されたい。
【0033】
バッテリシステムによって提供された、負荷で降下した電圧U(t)は、理想的な電圧源の電源電圧UOC(t)と、等価回路の個々のインピーダンスZ、Z、Z、Zでの電圧と、から構成され、以下のように表される。
【0034】
離散的な形で、時点kにバッテリシステムによって提供される電圧UL、kが、以下のように表されうる。
【0035】
ここで、以下のことが有効であり、即ち、
ここで、
及び
並びに
及び
【0036】
従って、電気等価モデルは、以下のパラメータセットを用いて記述されうる。
【0037】
実際に測定された測定値に対して電気等価モデルを適合する際に、時定数τctl、τeldiff、τsoldiffを決定しないことでシステムの数値的な安定性を向上させることができ、これにより、電気等価モデルを、以下の低減されたパラメータセットを用いて記述することが可能である。
幾つかの実施例において、時定数τctl、τeldiff、τsoldiffが、バッテリシステムの劣化の過程ではわずかしか変化しないと仮定することができる。時定数τctl、τeldiff、τsoldiffは、検査されるバッテリシステムのために、ラボラトリ測定の枠組みにおいて予め決定されうる。しかしながら、時定数τctl、τeldiff、τsoldiffが経時的に変化し、このことがバッテリシステムの監視の際に考慮されることも考えられる。
【0038】
図2に示されるように、バッテリ管理システム201は、バッテリシステム202を通って流れる電流Imeas(t)と、バッテリシステム202によって提供される電圧Umeas(t)と、を測定することが可能である。
【0039】
測定は、特に連続的に、離散的な時間tに(但し、n∈[1、N])行うことができ、これにより、測定値対の連続的なシーケンス(Imeas,n;Umeas,n)=(Imeas(t);Umeas(t))が得られる。
【0040】
代替的に、測定値対は、個別に得ることもでき、例えば無線データ送信によってバッテリ管理システムに提供されうる。
【0041】
バッテリ管理システム201とは、バッテリシステムを監視するよう構成された任意のシステムとして理解されうる。バッテリ管理システム201は、例えば、無線又は有線のインタフェースを介して互いに通信する複数の互いに別体の構成要素を有しうる。特に、バッテリ管理システム201は、バッテリシステムの電気等価モデルのインピーダンスパラメータ値を決定するよう構成されたオブザーバ(Observer)を有しうる。バッテリ管理システム201は、例えば、経年劣化の影響による上記インピーダンスパラメータ値の変化を決定するよう構成されうる。
【0042】
図3は、例示的なバッテリシステム202についての、時間t(単位:時間)にわたる電流Iの測定値Imeas、n(単位:アンペア)のシーケンスを示している。バッテリシステム202は、例えば、電気自動車のバッテリシステム202とすることができ、ここで、測定値Imeas、nは、自動車を加速するために使用され又は自動車の制動時の回収の際にバッテリシステム202に再び戻して提供される電流を示す。
【0043】
図4は、時間t(単位:秒)にわたる電流Iの測定値Imeas、n(単位:アンペア)のシーケンスの部分的シーケンスを示している。
【0044】
上述のように、バッテリ管理システム201には、測定された電流値と測定された電圧値との対のシーケンスが提供される。測定された電流値と測定された電圧値との対のこのより長いシーケンスから、測定された電流値と測定された電圧値との対の有限のシーケンスが選択される。
【0045】
図3では、より長いシーケンスから選択された有限のシーケンスの例が点線で示されている。選択された有限のシーケンスはウィンドウとも呼ばれうる。
【0046】
電流値が実質的に一定のままであり又は電流値及びバッテリシステム202の公称容量からの商の値が所定の最大CレートCmaxより小さい、所定の数のより長いシーケンスの対の後に、より長いシーケンスの対が、有限のシーケンスの第1の対として選択されうる。
【0047】
図4は、図3で示されたより長いシーケンスの一部分を示しており、この一部分は、有限のシーケンスを含んでいる。時点tから時点tまで、電流値Iがほぼ一定のままである。特に、電流値及びバッテリシステム202公称容量からの商の値が、所定の最大CレートCmaxより小さいままである。従って、図4に示されるシーケンスの時刻t以降の第1の対が、有限のシーケンスの第1の対として選択されうる。選択された有限のシーケンスは、所定長の部分的シーケンスも含み、当該部分的シーケンスについて、電流値とバッテリシステムの公称容量とからの商の値が、所定の最小CレートCminより高い。
【0048】
有限のシーケンスを選択するために、ウィンドウ決定ユニット203を使用することが可能であり、ウィンドウ決定ユニット203は、インピーダンスパラメータの決定の開始を促すトリガ信号204を生成することが可能である。
【0049】
このために、システムは、モデルユニット205を有することができ、このモデルユニット205は、測定された電流Imeasに基づいて、バッテリシステム202でのシミュレートされる電圧降下Usim(t)を計算するよう構成されている。モデルユニット205によって、先に記載したようなバッテリシステム202の電気等価モデルを表すことが可能である。このために、モデルユニット205には、初期インピーダンスパラメータ値が提供されうる。
【0050】
測定された電圧Umeas(t)と、有限のシーケンスの第1の値の対についてのシミュレートされた電圧Usim(t)と、の間の差が、最適化された第1のインピーダンスパラメータ値を決定するために利用されうる。このために、バッテリ管理システム201は、低周波調整ユニット207を有しうる。
【0051】
第1のインピーダンスパラメータは、先に示した電気等価モデルの抵抗Rsoldiffとすることができる。最適化された第1のインピーダンスパラメータ値を得るために、第1のインピーダンスパラメータは、電圧同士の差と、初期の第1のインピーダンスパラメータ値と、定数と、の積が加算されることで調整されうる。即ち、
【0052】
次いで、最適化された第1のインピーダンスパラメータ値が、更なるインパダンスパラメータ値の適合の際に利用されうる。数式(8)に従った最適化された第1のインピーダンスパラメータ値の計算を、複数回繰り返すことも可能であり、Usim(t)の決定のために、先行する反復において決定された最適化されたインピーダンスパラメータ値Rsoldiff、optと、他の初期インピーダンスパラメータ値と、が利用される。
【0053】
さらに、バッテリシステム201は、高周波調整ユニット208を有しうる。高周波ユニット208は、有限のシーケンスに基づいて他のインピーダンスパラメータ値を決定するよう構成されうる。
【0054】
モデル全体の平均二乗誤差が、以下の数式によって決定される。
【0055】
重畳された拡散パラメータの影響を最小に抑えるために、拡散過電圧が導入されうる。
【0056】
これにより、誤差を最小化する際に、重畳された拡散パラメータの影響を小さく抑えることが可能となりうる。
【0057】
ここで、拡散過電圧Uerr、2は、有限のシーケンスの時間の間一定のままであると仮定することができる。
【0058】
次いで、他の最適化されたパラメータ値を決定するために、以下のコスト関数が最小化されうる。
【0059】
このようにして、他の最適化されたパラメータ値を得ることができる。基本的には、誤差(UL、k-Umeas、k-Uerr、2)を最小化する他のコスト関数を使用して、他の最適化されたパラメータ値を決定することも考えられる。
【0060】
以上をまとめると、提案される方法は、バッテリシステムの監視を可能とし、電気等価モデルのインピーダンスパラメータを決定することができる。その際に、時定数が高いインピーダンスに割り当てられうる第1のインピーダンスパラメータ値の決定を、時定数が低いインピーダンスに割り当てられうる少なくとも1つのインピーダンスパラメータ値の決定から切り離すことによって、インピーダンスパラメータ値のより正確でより迅速な決定が可能となる。
図1
図2
図3
図4