(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】記録装置及び記録装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20240408BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240408BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B41J2/175 309
B41J2/01 401
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2023018219
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2018189671の分割
【原出願日】2018-10-05
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敦士
(72)【発明者】
【氏名】中川 善統
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】深澤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 剛
(72)【発明者】
【氏名】時沢 聡明
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-059140(JP,A)
【文献】特開2017-124609(JP,A)
【文献】特開2014-195974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出口を有する記録ヘッドへ供給される液体を貯留する貯留手段と、
前記貯留手段から前記記録ヘッドに向けて液体を加圧する加圧手段と、
前記記録ヘッドから前記貯留手段に向けて液体を流動させる流動手段と、
前記加圧手段と前記吐出口の間に設けられ、前記流動手段の駆動により開き、前記流動手段が駆動されないと閉じる弁と、
前記貯留手段内の液量を検知する検知手段と、を備え、
前記吐出口から液体を吐出していない状態であって、前記加圧手段を駆動し前記流動手段を駆動しない状態において、前記検知手段により検知される液量が変化した場合は液漏れ
エラーを通知することを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記検知手段は、前記貯留手段に貯留されている液体の液面を検知することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記検知手段は、前記貯留手段内の所定の位置に配置され液体との接触により導通状態となる電極を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
エラーを通知する通知手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記記録ヘッドは、記録素子が設けられ液体が充填される圧力室を有し、
前記加圧手段と前記流動手段を駆動することにより、前記圧力室の外部から前記圧力室の内部へ液体が入り、前記内部から前記外部へ液体が流れ出ることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記加圧手段と前記流動手段を駆動することにより、前記貯留手段と前記記録ヘッドとの間で液体が循環されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記記録ヘッドは、記録媒体の幅に相当する長さに亘って吐出口を有するラインヘッドであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記加圧手段は、前記検知手段によって検知された液量に応じて加圧供給する時間を変更することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記加圧手段は、前記検知手段によって検知された液量が第1量の場合、前記第1量より少ない第2量の場合よりも加圧する時間を長くすることを特徴とする請求項8に記載の記録装置。
【請求項10】
液体を吐出する吐出口を有する記録ヘッドへ供給される液体を貯留する貯留手段と、前記貯留手段から前記記録ヘッドに向けて液体を加圧する加圧手段と、前記記録ヘッドから前記貯留手段に向けて液体を流動させる流動手段と、前記加圧手段と前記吐出口の間に設けられ、前記流動手段の駆動により開き、前記流動手段が駆動されないと閉じる弁と、を備える記録装置の制御方法であって、
前記貯留手段内の液量を検知する検知工程と、
前記吐出口から液体を吐出していない状態であって、前記加圧手段を駆動し前記流動手段を駆動しない状態において、前記検知工程により検知される液量が変化した場合は液漏れ
エラーを通知する通知工程と、を有することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
前記記録ヘッドは、記録素子が設けられ液体が充填される圧力室を有し、
前記加圧手段と前記流動手段を駆動することにより、前記圧力室の外部から前記圧力室の内部へ液体が入り、前記内部から前記外部へ液体が流れ出る工程を有することを特徴とする請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
前記加圧手段と前記流動手段を駆動することにより、前記貯留手段と前記記録ヘッドとの間で液体を循環する循環工程を有することを特徴とする請求項10または11に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出して画像を記録する記録装置、及び記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録ヘッドから吐出するインクを貯留するインクタンク内のインク量を検出する液面検知器を備えたインクジェット記録装置のインク漏れ検出方法が開示されている。同方法では、記録動作終了時にインクタンク内のインクの量を所定の量に調整する待機処理と、次回の記録動作開始時に前記インクタンク内のインクの量が前記所定の量を維持しているか否かを検出する検出処理とを行うことによりインク漏れを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のインク漏れ検出方法は、記録動作終了後から次回の記録動作開始までの間に発生したインク漏れのみを検出するものであり、記録動作などのインクの消費動作中に発生するインク漏れについては検出することができない。
【0005】
本発明は、液漏れを検出することが可能な記録装置及びインク漏れ検出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体を吐出する吐出口を有する記録ヘッドへ供給される液体を貯留する貯留手段と、前記貯留手段から前記記録ヘッドに向けて液体を加圧する加圧手段と、前記記録ヘッドから前記貯留手段に向けて液体を流動させる流動手段と、前記加圧手段と前記吐出口の間に設けられ、前記流動手段の駆動により開き、前記流動手段が駆動されないと閉じる弁と、前記貯留手段内の液量を検知する検知手段と、を備え、前記吐出口から液体を吐出していない状態であって、前記加圧手段を駆動し前記流動手段を駆動しない状態において、前記検知手段により検知される液量が変化した場合は液漏れエラーを通知することを特徴とする記録装置である。
【0007】
参考例は、インクを吐出する吐出口を備えた記録手段と、前記吐出口に供給するインクを貯留する貯留手段と、前記貯留手段と前記吐出口とを接続するインク流路と、前記貯留手段から前記記録手段に向けてインクを加圧供給する加圧手段と、前記記録手段の下流に配され前記インク流路に負圧を発生する負圧発生手段と、前記インク流路に設けられ、前記負圧発生手段により前記インク流路の下流側の圧力が所定の圧力より低下した場合に開放される差圧弁と、前記貯留手段内のインク量を検知する検知手段と、を備える記録装置であって、前記加圧手段を駆動し前記負圧発生手段を停止した状態において、前記検知手段により検知されるインク量が変化した場合はインク漏れが発生していると判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
参考例は、インクを貯留する貯留手段と、前記貯留手段から供給されるインクを吐出して記録媒体への記録動作を行う記録手段と、を備えた記録装置のインク漏れ検出方法であって、前記記録動作によって前記貯留手段から消費されるインクの消費量を取得する取得工程と、前記貯留手段内のインク量を検知する検知工程と、前記記録動作前に前記検知工程で検知された前記貯留手段内のインク量と前記記録動作後に前記検知工程で検知された前記貯留手段内のインク量との差分である減少量を算出する算出工程と、前記算出手段で算出された前記減少量と前記取得工程で取得された前記消費量との差が閾値以上の場合はインク漏れが発生していると判定する判定工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
参考例は、インクを吐出する吐出口を備えた記録手段と、前記吐出口に供給するインクを貯留する貯留手段と、前記貯留手段と前記吐出口とを接続するインク流路と、前記貯留手段から前記記録手段に向けてインクを加圧供給する加圧手段と、前記記録手段の下流に配され前記インク流路に負圧を発生する負圧発生手段と、前記インク流路に設けられ、前記負圧発生手段により前記インク流路の下流側の圧力が所定の圧力より低下した場合に開放される差圧弁と、を備え、前記貯留手段内のインク量を検知する検知工程と、前記加圧手段を駆動し前記負圧発生手段を停止した状態において、前記検知工程で検知されるインク量が変化した場合はインク漏れが発生していると判定する判定工程と、を備えることを特徴とする記録装置のインク漏れ検出方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液漏れを検出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】記録装置がメンテナンス状態にあるときの図である。
【
図5】インク循環系の流路構成を説明する図である。
【
図11】第1の実施形態におけるインク漏れ検出処理を示すフローチャートである。
【
図12】2種類の吸引回復処理におけるインク消費量を示す図である。
【
図13】第2の実施形態におけるインク漏れ検出処理を示すフローチャートである。
【
図14】第3の実施形態におけるインク漏れ検出処理を示すフローチャートである。
【
図15】負圧制御ユニットの上流側の加圧時間を設定するテーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明に係る液体吐出装置の実施形態について詳細に説明する。以下の説明においては、インクジェット記録装置(以下、単に記録装置ともいう)を例に挙げて説明する。なお、「インク」とは、上記「記録」の定義と同様広く解釈されるべきものである。従って、「インク」は、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成又は記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば、記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を意味する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態で使用する記録装置1の内部構成図である。図において、x方向は水平方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列される方向、z方向は鉛直方向をそれぞれ示す。
【0014】
記録装置1は、プリント部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、プリント部2とスキャナ部3で個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFによって自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態はプリント部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるが、スキャナ部3を備えない形態であってもよい。
図1は、記録装置1が記録動作も読取動作も行っていない待機状態にあるときを示す。
【0015】
プリント部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシート)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5Bが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットから選択的に記録媒体Sが給送される。
【0016】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19及びフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側及び下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、搬送ローラ7の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、記録ヘッド8の下流側に配される搬送ローラ7及び排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0017】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0018】
本実施形態の記録ヘッド8は、フルラインタイプのカラーインクジェット記録ヘッドであり、記録データに従ってインクを吐出する吐出口が、
図1におけるy方向に沿って記録媒体Sの幅に相当する分だけ複数配列されている。即ち、記録ヘッド8は、複数色のインクを吐出可能に構成されている。
【0019】
記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、
図1のように鉛直下方を向きキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述するプリントコントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。
【0020】
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では、
図3に示す循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0021】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8の吐出性能を維持・回復するためのメンテナンス動作(回復処理)を行う。メンテナンス動作については後に詳しく説明する。
【0022】
図2は、記録装置1における制御構成を示すブロック図である。制御構成は、主にプリント部2を統括するプリントエンジンユニット200と、スキャナ部3を統括するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を統括するコントローラユニット100によって構成されている。プリントコントローラ202は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントエンジンユニット200の各種機構を制御する。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0023】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400から印刷ジョブが入力されると、メインコントローラ101の指示に従って、画像処理部108が受信した画像データに対して所定の画像処理を施す。そして、メインコントローラ101はプリントエンジンI/F105を介して、画像処理を施した画像データをプリントエンジンユニット200へ送信する。
【0024】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から画像データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から画像データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0025】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための機構である。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、印刷モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0026】
プリントエンジンユニット200において、CPUにより構成されるプリントコントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、プリント部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、プリントコントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、プリントコントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した画像データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、プリントコントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、プリントコントローラ202は、搬送制御部207を介して
図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。プリントコントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、印刷処理が行われる。
【0027】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0028】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えばコントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、プリントコントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0029】
図3は、記録装置1が記録状態にあるときを示す。
図1に示した待機状態と比較すると、キャップユニット10が記録ヘッド8の吐出口面8aから離間し、吐出口面8aがプラテン9と対向している。本実施形態において、プラテン9の平面は水平方向に対して約45度傾いており、記録位置における記録ヘッド8の吐出口面8aも、プラテン9との距離が一定に維持されるように水平方向に対して約45度傾いている。
【0030】
記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図3に示す記録位置に移動する際、プリントコントローラ202は、メンテナンス制御部210を用いて、キャップユニット10を
図3に示す退避位置まで降下させる。これにより、記録ヘッド8の吐出口面8aは、キャップ部材10aと離間する。その後、プリントコントローラ202は、ヘッドキャリッジ制御部208を用いて記録ヘッド8の鉛直方向の高さを調整しながら45度回転させ、吐出口面8aをプラテン9と対向させる。記録動作が完了し、記録ヘッド8が記録位置から待機位置に移動する際は、プリントコントローラ202によって上記と逆の工程が行われる。
【0031】
次に、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作について説明する。
図1でも説明したように、本実施形態のメンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17とを備え、所定のタイミングにこれらを作動させてメンテナンス動作を行う。
図4は、記録装置1がメンテナンス状態のときの図である。記録ヘッド8を
図1に示す待機位置から
図4に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向において上方に移動させるとともにキャップユニット10を鉛直方向下方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から
図4における右方向に移動させる。その後、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0032】
一方、記録ヘッド8を
図3に示す記録位置から
図4に示すメンテナンス位置に移動する際、プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を45度回転させつつ鉛直方向上方に移動させる。そして、プリントコントローラ202は、ワイピングユニット17を退避位置から右方向に移動させる。その後プリントコントローラ202は、記録ヘッド8を鉛直方向下方に移動させて、メンテナンスユニット16によるメンテナンス動作が可能なメンテナンス位置に移動させる。
【0033】
(インク供給ユニット)
図5は、本実施形態のインクジェット記録装置1で採用するインク供給ユニット15を示す図である。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14から記録ヘッド8へインクを供給する構成である。ここでは、1色のインクについての構成を示しているが、実際にはこのような構成が、インク色ごとに用意されている。インク供給ユニット15は、基本的に
図2で示したインク供給制御部209によって制御される。以下、ユニットの各構成について説明する。
【0034】
インクは主にサブタンク151と記録ヘッド8の間を循環する。記録ヘッド8では画像データに基づいてインクの吐出動作が行われ、吐出されなかったインクが再びサブタンク151に回収される。
【0035】
所定量のインクを収容するサブタンク151は、記録ヘッド8へインクを供給するための供給流路C2と記録ヘッド8からインクを回収するための回収流路C4に接続されている。すなわち、サブタンク151、供給流路C2、記録ヘッド8、及び回収流路C4によってインクが循環する循環経路が構成される。
【0036】
サブタンク151には複数のピンを有する液面検知手段151aが設けられている。本実施形態では、液面を検出するための3本の電極ピン(第1ピンE1(第1電極)、第2ピンE2(第2電極)、第3ピンE3(第3電極))がサブタンク151内に鉛直方向に沿って配置されている。サブタンク151の底部と第1ピンE1の下端との鉛直方向における距離は、サブタンク151の底部と第2ピンE2の下端との鉛直方向における距離より短い。このため、サブタンク151内にインクが供給されたとき、まずインクの液面がまず第1ピンE1に接触し、その後、所定量のインクが供給された時点で第2ピンE2に接触する。また、第3ピンとサブタンクとの鉛直方向の距離は、第1ピンE1とサブタンク151の底部との鉛直方向における距離以下に設定されている。従って少なくとも第1ピンE1又は第2ピンE2が液面に接触する状態では、第3ピンE3は常に液面に接触した状態にある。
【0037】
第1ピンE1と第3ピンE3、及び第2ピンE2と第3ピンE3との間には、それぞれ所定の電圧が印加されており、第1ピンE1及び第2ピンE2はインクと接触することによって第3ピンE3と導通する。本実施形態において、第3ピンE3はグランド電極の役割を果たす。従って各ピンが導通状態にあるか非導通の状態にあるかに基づいて、インク液面の高さ、即ちサブタンク151内のインク残量を把握することができる。
【0038】
減圧ポンプP0は、サブタンク151の内部を減圧するための負圧発生源である。大気開放弁V0は、サブタンク151の内部を大気に連通させるか否かを切り替えるための弁である。メインタンク141は、サブタンク151へ供給されるインクを収容するタンクである。メインタンク141は可撓性部材で構成され、可撓性部材の容積変化によってサブタンク151へインクが充填される。メインタンク141は、記録装置本体に対して着脱可能な構成である。サブタンク151とメインタンク141を接続するタンク接続流路C1の途中には、サブタンク151とメインタンク141との連通、遮断を切り換えるように開閉するタンク供給弁V1が配されている。
【0039】
以上の構成のもと、インク供給制御部209は、液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量より少なくなったことを検出すると、大気開放弁V0、供給弁V2、回収弁V4、及びヘッド交換弁V5を閉じ、タンク供給弁V1を開く。この状態において、インク供給制御部209は減圧ポンプP0を作動させる。すると、サブタンク151の内部が負圧となりメインタンク141からサブタンク151へインクが供給される。液面検知手段151aによってサブタンク151内のインクが所定量に達すると、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を閉じ減圧ポンプP0を停止する。なお、このサブタンクへのインク供給動作は、インク供給ユニット15内でインクが正常に流動している場合に行われる動作である。後述のインク漏れ検出処理によってインク供給ユニット15内でインク漏れが生じていると判定された場合には、インクの供給は遮断される。
【0040】
供給流路C2は、サブタンク151から記録ヘッド8へインクを供給するためのインク流路であり、その途中には供給ポンプP1と供給弁V2が配されている。記録動作中は、供給弁V2を開いた状態で供給ポンプP1を駆動することにより、記録ヘッド8へインクを供給しつつ循環経路においてインクを循環させることができる。記録ヘッド8によって単位時間あたりに消費されるインクの量は画像データに応じて変動する。供給ポンプP1の流量は、記録ヘッド8が単位時間あたりのインク消費量が最大となる吐出動作を行った場合にも対応できるように決定されている。
【0041】
リリーフ流路C3は、供給弁V2の上流側であって、供給ポンプP1の上流側と下流側を接続する流路であり、リリーフ流路C3の途中には差圧弁であるリリーフ弁V3が配される。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量が、記録ヘッド8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量(インクを引く量)との合計値よりも多い場合は、リリーフ弁V3は自身に作用する圧力に応じて開放される。これにより、供給流路C2の一部とリリーフ流路C3とで構成される巡回流路が形成される。上記リリーフ流路C3の構成を設けることにより、記録ヘッド8に対するインク供給量は記録ヘッド8でのインク消費量に応じて調整され、循環経路内の流圧を画像データによらず安定させることができる。
【0042】
回収流路C4は、記録ヘッド8からサブタンク151へインクを回収するための流路であり、その途中には回収ポンプP2と回収弁V4が配されている。回収ポンプP2は、循環経路内にインクを循環させる際、負圧発生源となって記録ヘッド8よりインクを吸引する。回収ポンプP2の駆動により、記録ヘッド8内のIN流路80bとOUT流路80cの間に適切な圧力差が生じ、IN流路80bとOUT流路80cの間でインクを循環させることができる。記録ヘッド8内の流路構成については後に詳しく説明する。
【0043】
回収弁V4は、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときのインクの逆流を防止するための弁である。本実施形態の循環経路では、サブタンク151は記録ヘッド8よりも鉛直方向において上方に配置されている(
図1参照)。このため、供給ポンプP1や回収ポンプP2を駆動していないとき、サブタンク151と記録ヘッド8との水頭差によって、サブタンク151から記録ヘッド8へインクが逆流してしまうおそれがある。このような逆流を防止するため、本実施形態では回収流路C4に回収弁V4を設けている。
【0044】
同様に供給弁V2とヘッド交換弁V5も、記録動作を行っていないとき、すなわち循環経路内にインクを循環させていないときに、サブタンク151から記録ヘッド8へのインクの逆流を防止するための弁として機能する。
【0045】
ヘッド交換流路C5は、供給流路C2とサブタンク151内の空気層(インクが収容されていない部分)とを互いに接続する流路であり、その途中にはヘッド交換弁V5が配されている。ヘッド交換流路C5の一端は供給流路C2における記録ヘッド8の上流に接続し、他端はサブタンク151の上方に接続して内部の空気層と連通する。ヘッド交換流路C5は、記録ヘッド8を交換する際や記録装置1を輸送する際など、使用中の記録ヘッド8からインクを回収するときに利用される。ヘッド交換弁V5は、記録装置1にインクを初期充填するときと記録ヘッド8からインクを回収するとき以外は閉じるように、インク供給制御部209によって制御される。また、上述した供給弁V2は、供給流路C2とヘッド交換流路C5との接続部と、リリーフ流路C3と供給流路C2との接続部の間に設けられている。
【0046】
次に、記録ヘッド8内の流路構成について説明する。供給流路C2より記録ヘッド8に供給されたインクは、フィルタ83を通過した後、弱い負圧(絶対圧の高い負圧)を発生する第1の負圧制御ユニット81と、強い負圧(絶対圧の低い負圧)を発生する第2の負圧制御ユニット82とに供給される。これら第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82における圧力は、回収ポンプP2の駆動により適正な範囲で生成される。
【0047】
インク吐出部80には、複数の吐出口が配列された記録素子基板80aが複数配置され、長尺の吐出口列が形成されている。第1の負圧制御ユニット81より供給されるインクを導くための共通供給流路80b(IN流路)と、第2の負圧制御ユニット82より供給されるインクを導くための共通回収流路80c(OUT流路)も、記録素子基板80aの配列方向に延在している。さらに個々の記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路が形成されている。このため、個々の記録素子基板80aにおいては、相対的に負圧の弱い共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い共通回収流路80cへ流出するような、インクの流れが生成される。記録素子基板80aで吐出動作が行われると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口から吐出されることによって消費されるが、吐出されなかったインクは共通回収流路80cを経て回収流路C4へ移動する。
【0048】
図6(a)は記録素子基板80aの一部を拡大した平面模式図であり、
図6(b)は、
図6(a)の断面線VIb-VIbにおける断面模式図である。記録素子基板80aには、インクが充填される圧力室1005とインクを吐出する吐出口1006が設けられている。圧力室1005において、吐出口1006と対向する位置には記録素子1004が設けられている。また、記録素子基板80aには、共通供給流路80bと接続する個別供給流路1008と、共通回収流路80cと接続する個別回収流路1009とが吐出口1006毎に複数形成されている。
【0049】
上述の構成により、記録素子基板80aでは、相対的に負圧の弱い(圧力の高い)共通供給流路80bより流入し、相対的に負圧の強い(圧力の低い)共通回収流路80cへ流出するインクの流れが生成される。より詳しくは、共通供給流路80b→個別供給流路1008→圧力室1005→個別回収流路1009→共通回収流路80cの順にインクが流れる。記録素子1004によってインクが吐出されると、共通供給流路80bから共通回収流路80cへ移動するインクの一部は吐出口1006から吐出されることによって記録ヘッド8の外部へ排出される。一方、吐出口1006から吐出されなかったインクは、共通回収流路80cを経て回収流路C4へ回収される。
【0050】
図7は記録ヘッド8に設けられた第1の負圧制御ユニット81を示す。
図7(a)、(b)は外観斜視図である。なお、
図7(b)は、第1の負圧制御ユニット81の内部を示すため、可撓性フィルム232を不図示にした様子を示す。
図7(c)は、
図7(a)におけるVIIc-VIIc線断面図である。第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82は差圧弁であり、制御圧(バネの初期荷重)の差異以外は同一の構成のため、第2の負圧制御ユニット82の説明は省略する。
【0051】
第1の負圧制御ユニット81は、
図7(b)に示される受圧板231とその周囲の空間を密閉する可撓性フィルム232によって、第1圧力室233が内部に形成されている。可撓性フィルム232は、
図7(b)で示す円形状の縁及び受圧板231に対して溶着されている。第1圧力室233内のインクの増減に応じて、可撓性フィルム232と可撓性フィルム232に溶着された受圧板231とが内外(
図7(b)では上下)に変位する。
【0052】
第1圧力室233のインク供給方向における上流側には、供給ポンプP1と接続される第2圧力室238と、受圧板231と連結されたシャフト234と、シャフト234と連結された弁235と、弁235に当接するオリフィス236と、が設けられている。本実施形態のオリフィス236は、第1圧力室233と第2圧力室238との境界に設けられている。弁235とシャフト234と受圧板231はさらに、付勢部材(バネ)237によって外方(
図7(c)では上方)へ向けて付勢されている。
【0053】
第1圧力室233内の圧力(絶対圧)が第1閾値以上であるとき(第1閾値より負圧が弱い場合)は、付勢部材237の付勢力によって弁235がオリフィス236と当接し、第1圧力室233と第2圧力室238との連通を遮断している。一方、第1圧力室233内の圧力(絶対圧)が第1閾値未満となったとき、つまり第1圧力室233に第1閾値より強い負圧がかかったとき、可撓性フィルム232が収縮して内方(
図7(b)において下方)へ変位する。これにより、受圧板231と弁235が付勢部材237の付勢力に抗して下方へ変位して、弁235とオリフィス236が離間し、第1圧力室233と第2圧力室238とが連通する。この連通によって、供給ポンプP1によって供給されたインクが第1圧力室233へ流入する。
【0054】
第1の負圧制御ユニット81は上述した差圧弁の構成になっており、これにより流入圧力と流出圧力を一定に制御する。第2の負圧制御ユニット82は、第1の負圧制御ユニット81より強い負圧を発生させるために、付勢部材237の付勢力が第1の負圧制御ユニットより大きいものを採用している。すなわち、第2の負圧制御ユニット82は、第1閾値よりも低い圧力(絶対圧)である第2閾値未満の圧力(負圧)が発生したときに弁が開放される。従って、回収ポンプP2が駆動すると、まず第1の負圧制御ユニット81が開放され、次いで第2の負圧制御ユニット82が開放される。
【0055】
以上の構成のもと、記録動作を行うとき、インク供給制御部209はタンク供給弁V1とヘッド交換弁V5を閉じ、大気開放弁V0、供給弁V2及び回収弁V4を開き、供給ポンプP1及び回収ポンプP2を駆動する。これにより、サブタンク151→供給流路C2→記録ヘッド8→回収流路C4→サブタンク151の循環経路が確立する。供給ポンプP1からの単位時間あたりのインク供給量が記録ヘッド8の単位時間あたりの吐出量と回収ポンプP2における単位時間あたりの流量の合計値よりも多い場合は、供給流路C2からリリーフ流路C3にインクが流れ込む。これにより、供給流路C2から記録ヘッド8に流入するインクの流量が調整される。
【0056】
記録動作を行っていないとき、インク供給制御部209は供給ポンプP1及び回収ポンプP2を停止し、大気開放弁V0、供給弁V2及び回収弁V4を閉じる。これにより、記録ヘッド8内のインクの流れは止まり、サブタンク151と記録ヘッド8の水頭差による逆流も抑制される。また、大気開放弁V0を閉じることで、サブタンク151からのインク漏れやインクの蒸発が抑制される。
【0057】
記録ヘッド8からインクを回収するとき、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1、供給弁V2及び回収弁V4を閉じ、大気開放弁V0及びヘッド交換弁V5を開き、減圧ポンプP0を駆動する。これにより、サブタンク151内が負圧状態になり、記録ヘッド8内のインクは、ヘッド交換流路C5を経由してサブタンク151へ回収される。このように、ヘッド交換弁V5は、通常の記録動作や待機時には閉じられており、記録ヘッド8からインクを回収する際に開放される弁である。但し、記録ヘッド8への初期充填においてヘッド交換流路C5にインクを充填する際もヘッド交換弁V5は開放される。
【0058】
<インク充填>
次に、
図5を参照して説明したインク循環系のインク充填について説明する。インク充填は、例えば、インクタンクユニット14にメインタンク141が取り付けられた後、サブタンク151、記録ヘッド8及びインクが循環する流路にインクを充填するために行われる。なお、充填動作は記録装置1の着荷時に限らず、記録ヘッド8の交換後や輸送のために記録ヘッド8内のインクをサブタンク151内へ全て回収した後にも行われる。
【0059】
図8は、メインタンク141からサブタンク151へインクを供給する際のインク循環系の状態を示す。ここでは、大気開放弁V0、供給弁V2、ヘッド交換弁V5及び回収弁V4は閉じ(CLOSE)、タンク供給弁V1が開いている(OPEN)。また、供給ポンプP1及び回収ポンプP2は停止している。この状態で減圧ポンプP0を駆動すると、サブタンク151内に負圧が生じ、メインタンク141からタンク接続流路C1を介してサブタンク151へインクが供給される。サブタンク151に所定量のインクが供給されると、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1を閉じ、減圧ポンプP0を停止する。その後、インク供給制御部209は大気開放弁V0を開き、負圧になっているサブタンク151内の圧力を大気開放する。
【0060】
次いで、インク供給制御部209は、サブタンク151からインクを供給し、上流流路にインクを充填する。上流流路とは、サブタンク151と記録ヘッド8との間にある流路の総称であり、供給流路C2、リリーフ流路C3及びヘッド交換流路C5を含む。
【0061】
図9は、上流流路にインク充填する際のインク循環系の状態を示す。ここでは、サブタンク151へのインクの供給が完了した状態から、供給弁V2及びヘッド交換弁V5が開いている。この状態で供給ポンプP1が駆動されると、サブタンク151からインクが供給され、上流流路にインクが充填される。なお、回収ポンプP2は停止しており、差圧弁としての構成を有する第1の負圧制御ユニット81と第2の負圧制御ユニット82には所定の負圧がかからないため、両負圧制御ユニット81、82は閉塞されている。これにより、記録ヘッド8にはインクが供給されない。上流流路のインク充填が完了した後、インク供給制御部209は、記録ヘッド8にインクを充填する。
【0062】
上述の上流流路へのインク充填処理により、インクは記録ヘッド8の手前の供給流路C2まで供給された状態にある。ここで、インク供給制御部209は、キャップユニット10を駆動し、記録ヘッド8のキャップを行う。すなわち、キャップユニット10のキャップ部材10aによって、記録ヘッド8の吐出口面8aを覆う。次に、インク供給制御部209は、キャップユニット10の減圧ポンプP3を駆動する。すなわち、供給ポンプP1でインクを送液しながら、キャップユニット10内に負圧を発生させる。この負圧によって、記録ヘッド8内の負圧制御ユニットが開放され、吐出口までインクを引き込むことで、インクを充填する。インク供給制御部209は、所定時間の経過後、供給ポンプP1及び減圧ポンプP3を停止する。記録ヘッド8のインク充填が完了した後、インク供給制御部209は回収流路C4にインクを充填する。
【0063】
図10は、回収流路C4にインクを充填する際のインク循環系の状態を示す。ここでは、記録ヘッド8へのインクの充填が完了した状態から回収弁V4が開き、大気開放弁V0が閉じた状態で、サブタンク151の減圧ポンプP0が駆動されている。インク供給制御部209は、回収弁V4が開き、大気開放弁V0が閉じた状態で、サブタンク151の減圧ポンプP0を駆動する。減圧ポンプP0の駆動によって発生したサブタンク151内の負圧により、記録ヘッド8から回収流路C4へインクが流れる。インク供給制御部209は、回収流路C4のインク充填が完了した後、減圧ポンプP0を停止する。
【0064】
以上のように、サブタンク151、記録ヘッド8、及び流路内にインクを充填することにより、記録ヘッド8によるインク吐出動作、すなわち記録動作が可能になる。記録動作に際し、インク供給制御部209は、タンク供給弁V1、ヘッド交換弁V5を閉じ、大気開放弁V0、供給弁V2、リリーフ弁V3、及び回収弁V4を開き、供給ポンプP1及び回収ポンプP2を駆動する。これにより、サブタンク151から記録ヘッド8を経て再びサブタンク151に戻るインク循環を行いつつ、記録ヘッド8からインクを吐出させて記録媒体への記録を行うことが可能になる。
【0065】
記録動作及び回復動作が行われることにより、サブタンク151内のインクは消費され、サブタンク151におけるインクの液面は低下する。一方、記録動作中にインク供給ユニット15内においてインク漏れが発生した場合にも、サブタンク151におけるインク液面は低下する。従って液面検知手段151aによってサブタンク151内の液面変化を検出するのみでは、記録動作中に生じたインクの漏出を検出することはできない。そこで、本実施形態では、以下に説明するインク漏れ検出処理によって記録中に生じたインク漏れを検出する。
【0066】
<インク漏れ検出処理>
以下、
図11に示すフローチャートに基づき、本実施形態において実行されるインク漏れ検出処理を、具体的に説明する。
図11に示す処理は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従ってプリントコントローラ202が実行する。なお、フローチャートの各工程番号に付されている「S」はステップを意味している。
【0067】
記録動作を開始するに際し、サブタンク151は、インク供給動作によって所定量のインクが貯留された状態にある。本実施形態では、液面検知手段151aの第1ピンE1に接触するまでインクを供給した後、さらにインクの供給動作を所定時間行う。これにより、サブタンクには所定量のインクが貯留される。
【0068】
この後、記録動作を開始すると(S1)、プリントコントローラ(取得手段)202は記録ヘッド8におけるインク吐出回数のカウントを開始する。そして1ページ分の記録動作が終了すると(S2)、記録動作中にカウントした値を、メモリに格納されているカウント値に加算してカウント値の更新を行う(S3)。
【0069】
また、記録動作中に、吸引回復処理やその他の回復処理を実行した場合には、その回復処理によって消費されたインク量を記録ヘッド8によるインク滴の吐出回数に換算し、その値をメモリに格納されているカウント値に加算する。本実施形態では、記録ヘッド8の使用状況などに応じて、
図12に示す2種類の吸引回復処理(第1吸引回復、第2吸引回復)を行う。第1吸引回復では、1gのインクを記録ヘッド8から吸引し、第2吸引回復では4gのインクを吸引する。これらの回復処理によって記録ヘッド8から排出されたインク量を、記録ヘッド8の各吐出口から吐出されるインク滴のインク量(滴量)で除した値が、インク滴の吐出回数に換算された値となり、これがメモリにカウント値として加算される。
【0070】
このように、プリントコントローラ202によってメモリに格納されたカウント値は、記録動作及び回復処理などのインク消費動作によって消費されるインク量、すなわちサブタンク151に貯留されているインクの減少量を表すこととなる。従って、プリントコントローラ202は、インク消費動作前(例えば記録動作前)にサブタンク151に貯留されているインク量と、インク消費動作後(例えば記録動作後)にサブタンク151に貯留されているインク量との差分である減少量を検出する検出手段として機能を果す。
【0071】
1ページ分の記録動作が終了し、メモリ内のカウント値を更新すると、プリントコントローラ202は、サブタンク151内のインクの液面が、液面検知手段151aの第1ピンE1の下端より下方にあるか否かを判定する(S4)。この判定は、第1ピンE1と第3ピンE3とが導通状態にある否かを検出することによって行う。ここで、サブタンク151内のインクが第1ピンE1の下端より下方に位置し、第1ピンE1と非接触な状態にある場合にはS5へ進む。また、インクの液面が第1ピンE1の下端以上の位置にあり、インクが第1ピンE1と接触している場合にはS9へ進む。
【0072】
S5では、記録動作及び回復動作などによって消費されたインク量に対応するカウント値(メモリに格納されているカウント値(取得量))が閾値を超えるか否かを判定する。このS5の判定基準となる閾値は、記録動作前にサブタンク151に供給された所定量のインクの液面が第1ピンE1の下端まで低下したときの減少量(インク消費量)に対応するカウント値に基づいて設定されている。つまり閾値は、減少量に対応するカウント値と同一の値とすることも可能であるが、カウント誤差などを考慮して、前記減少量に対応するカウント値より少ない値に設定することも可能である。本実施形態では、減少量が16gであるのに対し、閾値は、カウント誤差などを考慮して、10gに対応するカウント値(所定値)が設定されている。
【0073】
S5の判定の結果、インクの消費動作に伴うカウント値が閾値以下であれば、記録動作及び回復動作によって消費されるインク量を超えて、過剰にインクが消費されていることとなる。この場合、インク供給ユニット15におけるインク漏れが予想される。従って、インクの消費動作に伴うカウント値が閾値(10g)以下であると判定された場合には、S8においてインク漏れエラーの通知を行う。
【0074】
一方、S5の判定の結果、インクの消費動作に伴うカウント値が閾値を超える場合には、インクが適正に消費されていることとなるため、次の記録動作に備えて、メインタンク141からサブタンク151へのインクの供給動作を行う(S6)。このインク供給動作によって、サブタンク151には所定量のインクが貯留される。インクの供給動作が終了すると、メモリに格納されているカウント値をリセットする(S7)。
【0075】
以上のように、本実施形態では、記録動作及び回復動作に伴うインクの消費量をインク滴の吐出数としてカウントする一方、サブタンク151におけるインクの液面位置の監視も行う。そして、インク滴の吐出数を示すカウント値が、サブタンク151内のインクの減少量に比べて少ない場合には、インク漏れによってインクが過剰に消費されていると判定し、インク漏れエラーを通知する。従って、ユーザは、記録動作中においてもインク供給ユニット15に生じたインク漏れの発生を早期に認識することができる。これにより、無駄なインクの消費を抑制することが可能になり、ランニングコストを低減することが可能になる。また、漏出したインクによる装置内の汚損を最小源に留めることができる。
【0076】
なお、上記実施形態では、第1ピンE1によってインクが検出された後、メインタンク141からサブタンク151へとインクを供給するインク供給時間を設定することによって、サブタンク151内に所定量のインクを供給するようにした。しかし、サブタンク151に対して所定量のインクを供給する方法はこれに限定されない。例えば、サブタンク151に設けられている液面検知手段151aの第2ピンE2にインクの液面が接触するまでインクを供給する制御を行うことで、サブタンク151に所定量のインクを供給することも可能である。
(第2の実施形態)
次に本発明の第2の実施形態を説明する。なお、本実施形態においても、
図1ないし
図7に示す構成を同様に備える。
【0077】
メインタンク141からサブタンク151へのインクの供給は、大気解放弁V0を閉じ、タンク供給弁V1を開いた状態で、減圧ポンプP0を駆動することによって行う。このインク供給動作では、サブタンク151内の液面が液面検知手段151aの第2ピンE2に接触した後、さらに所定量のインクを供給する。これにより、予め定めた所定量のインクがサブタンク151に貯留される。
【0078】
記録動作中、供給ポンプP1は駆動状態にあり、記録ヘッド8に設けられた第1の負圧制御ユニット81及び第2の負圧制御ユニット82の上流側は加圧される。回収ポンプP1の駆動によって各負圧制御ユニット81、82の下流側の負圧が強まると、第1、第2の負圧制御ユニット81、82は開弁する。これにより、供給ポンプP1によって加圧されているインクが吐出口に供給(加圧供給)される。また、回収ポンプP1を停止すると、各負圧制御ユニット81、82の下流側の負圧が弱まり、負圧制御ユニット81、82は閉弁する。このとき、各負圧制御ユニット81、82が正常に機能していれば、供給ポンプP1の駆動によって上流側が加圧されていても負圧制御ユニット81、82は開弁しない。
【0079】
しかしながら、各負圧制御ユニット81、82内に塵埃などが侵入し、負圧制御ユニッ81、82が適正に閉弁しないような状態が発生した場合、上流側が加圧されると負圧制御ユニットの下流側にインクが流入する。この場合、記録ヘッド8の吐出口内のインクが加圧され、吐出口からインクが漏出するおそれがある。
【0080】
そこで、本実施形態では、上記のような負圧制御ユニット81、82の故障による記録動作中にインク漏れが発生しているかを検出するインク漏れ検出処理を行う。このインク漏れ検出処理は、負圧制御ユニット81、82の上流側を加圧し、サブタンク151内のインク液面の状態変化(液面の低下)を検出することにより行う。すなわち、負圧制御ユニット81、82の上流側を所定時間加圧することによってサブタンク151内のインクの液面が変化した場合、インク漏れによってインク液面が低下していると判定し、インク漏れエラーを通知する。
【0081】
以下、
図13のフローチャートに沿って、本実施形態において実施されるインク漏れ検出処理を説明する。なお、本実施形態においてもサブタンクへのインク供給動作時以外は、サブタンク151とメインタンク141との連通は、タンク供給弁V1によって遮断されている。
【0082】
S21では、インクが第2ピンE2に接触しているか否かを判定する。この判定は、第2ピンE2と第3ピンE3とがインクを介して導通状態にあるか否かを検出することによって行う。第2ピンE2に対してインクが非接触状態にある場合には、S25においてインクの供給動作を行い、第2ピンE2とインクとを接触させる。本実施形態では、第2ピンE2とインクとの接触が検出された後、さらに一定量のインクを供給し、サブタンク151内のインクの液面を第2ピンより上方の一定の位置まで上昇させる。
【0083】
S21の判定によって第2ピンE2とインクとが接触した状態にあれば、供給ポンプP1を所定時間駆動して負圧制御ユニット81、82の上流側を加圧する(S22)。本実施形態では、供給ポンプP1を60秒間駆動する。
【0084】
この後、サブタンク151内のインクが第2ピンE2に接触した状態にあるか否かを判定する(S23)。ここで、インクが接触状態にないと判定された場合には、加圧によってインクが負圧制御ユニット81、82を通過し、下流側に流れていると推測することができる。よって、この場合には負圧制御ユニット81、82が正常に機能していない(故障している)と判断し、インク漏れエラーを通知する(S24)。
【0085】
また、S23においてサブタンク151内のインクが第2ピンE2と接触した状態に保たれていると判定した場合には、インクの液面に変化が生じていないと判断し、インク漏れ検出処理を終了する。なお、上記のインク漏れ検出処理は、記録動作が行われていない所定の期間において実行する。
【0086】
以上のように、本実施形態によれば、負圧制御ユニット81、82の動作不良に起因して、記録動作中にインク漏れが発生しているかどうかを推定することが可能になる。このため、記録動作中のインク漏れによる弊害、例えばインク消費量の増大によるランニングコストの増大などを軽減することが可能になる。さらに、漏出したインクによる装置内の汚損を最小限にとどめることができる。
【0087】
(第3の実施形態)
上記実施形態では、インク漏れ検出においてサブタンク151内に所定量のインクが供給されていることを前提とし、負圧制御ユニット81、82の上流側を供給ポンプP1によって一定時間(60秒)加圧する例を示した。しかし、サブタンク151内に供給されるインク量は記録動作によって減少するため、インク漏れ検出を行う段階でサブタンク内のインクの貯留量が減少している可能性もある。このような場合には、負圧制御ユニット81、82の上流側を加圧する時間を変更することが望ましい。すなわち、サブタンク151内に多くのインクが貯留されている状態で加圧時間を短くした場合、インクが負圧制御ユニット81、82から漏れているにも拘わらず、インクの液面変化を液面検知手段151aで検出できず、インク漏れを検出できない可能性がある。また、インク量が少ない状態において加圧時間を長くすれば液面検知手段151aによるインク漏れを検出することはできるが、検出に要する時間が増大し、効率的な処理を行うことができない。また、必要以上のインクが負圧制御ユニットの下流側に圧送されてしまい吐出口などから多くのインクが漏れる可能性もある。
【0088】
そこで、本実施形態では、インク漏れ検出を行うに際し、サブタンク151内に供給されているインク量を検出し、そのインク量に応じて負圧制御ユニット81、82の上流側を加圧する処理を行う。
【0089】
図14は、本実施形態において実行されるインク漏れ検出処理を示すフローチャートである。
【0090】
S31では、サブタンク151内に供給されているインクが液面検知手段151aの第2ピンE2に接触した状態にあるか否かを判定する。ここで、第2ピンE2にインクが接触した状態にあればS32へ進む。また、第2ピンE2にインクが接触していない状態にあればS37においてインク供給動作を行う。
【0091】
S32では、サブタンク151に貯留されているインク量を算出する。これはインク供給動作によって液面検知手段151aの第2ピンE2に液面が到達した後に、インク供給動作が継続された時間(減圧ポンプP0の駆動時間)と、インク供給後の記録動作によって消費されたインク量に基づいて推定することができる。
【0092】
本実施形態では、液面検知手段151aの第2ピンE2の下端部の位置は、サブタンク151に80gのインクが供給されたときの液面の高さと同一に設定されている。インク供給動作は、第2ピンE2にインクが接触してから4秒間継続して行う。本実施形態では、1秒間のインク供給動作によって2gのインクが供給される。このため、インク供給動作が完了した直後のサブタンク151内のインク量(初期のインク量)は、88gとなる。
【0093】
インク供給後、記録動作や回復動作の実行によってインクが消費されると、サブタンク151内のインク量は徐々に減少する。このときのインク消費量をインク吐出動作回数としてカウントすることにより、記録動作や回復動作で消費したインク量を求めることができる。ここで求めたインク量を初期のインク量から減算すれば、サブタンク内の現在のインクの貯留量を算出することができる。
【0094】
この後S33では、以上のようにして算出したサブタンク内の現在のインクの貯留量に基づき、インク漏れ検出を行う際に、負圧制御ユニット81、82の上流側の加圧時間T1を設定する。この加圧時間T1は、例えば、
図15に示すようなテーブルを参照することによって行うことができる。
図15に示すテーブルを用いた場合、サブタンク151内に供給されているインク量が84g以上であれば、加圧時間T1は60秒に設定され、80g以上84g未満であれば加圧時間T1は50秒に設定される。
【0095】
次にS34では、供給ポンプP1をS33で設定した加圧時間T1だけ駆動する。この後、S35において第2ピンE2とインクとが接触状態にあるか否かを判定する。ここで、第2ピンE2とインクとが非接触状態にあると判定された場合には、加圧によってインクが負圧制御ユニット81、82を通過し、下流側に流れていると判定することができる。よって、この場合には負圧制御ユニット81、82が正常に機能していない(故障している)と判断し、インク漏れエラーを通知する(S36)。
【0096】
また、S35においてサブタンク151内のインクが第2ピンE2と接触した状態に保たれていた場合には、インクの液面に変化が無く、負圧制御ユニット81、82が正常に作動していると判断し、インク漏れ検出処理を終了する。
【0097】
以上のように、本実施形態によれば、弁機能を有する負圧制御ユニット81、82の動作不良に起因して記録動作中に発生するインク漏れを検出することができる。さらに、本実施形態では、サブタンク内(貯留手段内)に供給されているインク量に応じて、負圧制御ユニット81、82の上流側に対する加圧時間T1を調整するため、効率的かつ確実にインク漏れを検出することが可能になる。
【符号の説明】
【0098】
1 記録装置。
8 記録手段
151 サブタンク(貯留手段)
151a 液面検知手段(検知手段)
202 プリントコントローラ(取得手段、判定手段、算出手段)